○浅田均君
日本維新の会、浅田均です。
私は、我が党を代表して、ただいま
議題となりました両
協定について
安倍総理に
質問いたします。
平成三十年間の
世界経済を振り返ると、中国の飛躍、アメリカの
成長と
日本の停滞が顕著です。
平成元年、
世界時価総額ランキングの上位五十社中、
日本企業は三十二社、アメリカが十七社、中国は一社もありませんでした。ところが、
平成三十一年はどうでしょうか。アメリカが三十一社、中国が七社、
日本は僅かに一社だけです。ここに、中国の飛躍、アメリカの
成長の原因を見ることができます。
我が党は、
自由貿易圏の拡大が
国益にかなうという観点から、この二つの
協定について議論してきました。しかし、いまだ明らかになっていない問題や議論さえされていない課題が幾つか残されておりますので、それらの点に的を絞って
質問します。
まず、
日米貿易協定について
質問します。
この
協定は、
交渉開始から半年足らずで
合意に至りました。
TPPという土台はありましたが、異例のスピードです。とはいえ、現状を見ると、
日本が
米国抜きの
TPP11と日欧
EPAの
発効にこぎ着けたことにより、
米国は
日本市場において競争上不利な立場に置かれていました。ところが、
日本が
TPPの
水準まで農産物の
関税で譲歩したのに対し、
米国は
TPPで約束していた
自動車、
自動車部品の
関税撤廃を先送りしました。明らかに
TPPからの後退です。
そもそも、
日本は、
日米間の
協定を急ぐのではなく、
米国を
TPPの枠組みに引き戻すことを着地点とすべきだったと思います。今回の
協定が
発効すれば、
米国は
TPPに復帰するメリットは小さくなるのではないでしょうか。
米国の
TPP復帰を主張してきた
日本が
米国との
協定締結に動いたことは、他の
TPP参加国にとって決して歓迎できるものではないと思います。
TPP11とアメリカの橋渡しをするつもりはありますか。あるとすれば、どのように進めますか。
総理大臣の答弁を求めます。
次に、
日米デジタル貿易協定について
質問します。
経済産業省によりますと、
世界の
デジタル貿易市場規模は、二〇一四年の二千三百六十億ドルから二〇二〇年には九千九百四十億ドルに、利用者数に関しては、二〇一四年時点では約三億人程度でしたが、二〇二〇年には約三倍の九億人を超える見通しとなっております。
データは今や石油と並ぶ
経済資源に位置付けられています。将来を見据えると、
物品や
サービス貿易よりも
デジタル貿易の方がはるかに重要になると
考えられます。
我が国においても、自由な
データ流通をベースとする新たなビジネスモデルの創出や生産性の向上に取り組むことは急務です。
しかしながら、細心の注意を払うべきは
データの扱いです。誰とでも自由につながる
世界は、私たち
自身が商品化されるのと表裏の
関係です。単なるIDに、住所、氏名、年齢、さらには友人
関係、クレジットカード番号、位置情報、好み、検索情報記録等の付加
データが付けば付くほど高く売れると言われております。安いもので一件一ドル、フェイスブックから流出した個人
データは五千万件と言われています。これだけでも最低五十億円の値が付きます。
データそのものの価値だけでなく、
データを処理し加工することにより、
経済的な側面だけでなく、政治的、社会的な側面からも
人間の行動に強い
影響を与えるメッセージに変質させることができる。それをどう活用できるようにするのか、あるいは規制するのかで
チャンスとリスクが生まれます。
ユーザーは無料あるいは安価にサービスを利用することを優先させるので、いわゆるプラットフォーマーは、提供する便利なサービスと引換えに大量の
データを集めることができます。それらの
データを処理し加工することにより、変化を促したいターゲットの特定化とその拡張、次いで、それらターゲットの思考経路や感情反応の分析、態度や行動を変化させるためのメッセージと伝達手段の開発、ターゲットの変化確率を見て更に手法を
改善。この繰り返しで、人を先導し誘導する。
実際に人の行動を変化させることが可能な
世界に私たちは生きています。二〇一六年のアメリカ
大統領選挙等が明るみに出した問題を思い出してください。だから、
データに値段が付くのです。これは、
データを点や部分でしか得ることのできない既存産業にはできません。人がふだんから日々利用し、その幾らかの時間を占有できるプラットフォーマーにしかできないことです。
データ、特にビッグ
データは、扱い方により人類を救済するものにもなりますし、AIが人類を支配するシンギュラリティーを導くものともなりかねません。
こういう時代を背景に結ばれるのが今回の
デジタル貿易協定ですが、もう一方の巨人、中国は独自の展開で
データ量を激増させています。人民と国家の管理のために
データを活用し、AIでは
世界をリードしています。人民元のデジタル化を進め、ドルに代わる基軸通貨の地位獲得を虎視眈々と狙っております。
さて、
デジタル貿易協定の中に、各
締約国は、個人情報の保護について定める法的枠組みを援用し、又は維持するとあります。他方、公正取引委員会は、ウエブ上で利用者がどんなページを見たか記録するクッキーについて、利用者の同意なく収集して利用すれば独占禁止法違反になるおそれがあるとして規制する方向で検討に入ったと
報道されています。
そこで、
総理に
お尋ねします。
クッキーは個人情報ですか、あるいは、個人
データ、プライバシーのいずれの概念にも含まれるのでしょうか。公取の見解は、
日米デジタル貿易協定にある個人情報保護にも援用されるのでしょうか。
現実問題として、
日本は、デジタル
分野における取引のスケールや技術、蓄積、人材など、どれを取っても
米国に大きく後れを取っています。二周遅れです。こうした中で、
我が国が
米国と真に対等な立場で渡り合っていけるのでしょうか。
日本のプラットフォーマーは、マーケットが
日本中心なので
市場価値が上がらず、アメリカ系や中国系のプラットフォーマーとの差が大きい。この
協定で定める
ルールで
我が国のプラットフォーマーが
成長すると言えるのか、
総理大臣に答弁を求めます。
一方、今回の
協定には、
米国のGAFAなど巨大プラットフォーマーにとって有利な条項が
TPPを
強化する形で定められました。
米国は、自国の
デジタル貿易ルールを
世界標準化することで、最終的にデジタル
分野における国際競争上の脅威とみなす中国の力をそぐことを狙っていると思われます。中国のデジタル戦略も米に劣りません。
米中の戦略に関し、
総理の御
認識をお聞かせください。
デジタル貿易の
ルール化が混沌としていたとき、
安倍総理は六月のG20首脳
会議で国際的な
ルール作りである
大阪トラックを提唱されました。今回の
日米間の
協定について、
茂木外務大臣は国際的な
ルール作りの先駆けになると強調し、
経済界からも
日本がWTOやG20の場で主導する
ルール策定に向けた議論に寄与するものと
期待が示されています。
しかし、デジタルの
流通、保護を含む
電子商取引をめぐる議論においては、ビジネス本位の自由な
データ流通を志向する
米国、
信頼性のある
データ保護を重視する
EU、国家主権に基づく
データ管理を追求する中国など、意見の乖離は大きい
状況にあります。
総理に
質問します。
我が国は、複雑に交錯する
各国の立場をどのように調整し、
ルールの集約化を図っていくお
考えですか。
また、自由なビジネス活動と、そこから副次的に生産される、商品として売買される
データには、どう扱うか明確な
ルールがありません。この
データ、とりわけビッグ
データと言われる新たな価値創造に対し、人権や倫理、消費者保護等をどのようなバランスで
ルール化するのか、
世界各国が模索し続けています。
日本は
世界に先駆けて以下の
ルールを定めるべきと
考えます。以下四点について、
総理大臣の御見解をお聞かせください。
データの利活用が高度化するにつれ、プラットフォーマー業界とそれ以外の業界との適正な競争原理の整備が必要と
考えますが、
総理大臣はどのようにお
考えでしょうか。
データの不正利用を避けるためにガイドラインを作成し、
データの使用がガイドラインどおりに行われているかについて規制やモニタリングが必要と
考えますが、
総理の見解はいかがでしょうか。
プラットフォーマーに関しては、
国内事業者と
海外事業者の格差が大き過ぎます。例えば、保存
データ量に応じ税金を徴収する等の措置を講じる等の競争
政策が必要と
考えますが、
総理の見解はいかがでしょうか。
データ処理が可能にするユーザー行動の先導や誘導行為等について規制を定め、政治、ギャンブル等への先導、誘導行為を規制する必要性を
総理はお感じになりませんでしょうか。
以上
お尋ねいたしまして、私の
質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣安倍晋三君
登壇、
拍手〕