○緑川貴士君 秋田県に住んでいる緑川貴士と申します。
国民民主党・無所属クラブを代表しまして、ただいま
議題となりました
所得税法等の一部を
改正する
法律案について
質疑いたします。(
拍手)
国税の建設的な
議論のために、そして
納税者である
国民の疑念を正面から受けとめるためにも、まず、
経済実態の把握や
政策判断の基礎である
統計がこのたび不正にゆがめられていた問題についてたださなくてはなりません。
統計の
誤りは、
政策判断を誤らせるだけでなく、
判断が誤っていたかどうかの
検証すらも行われなくなり、
誤りに基づいた
判断が将来の
暮らしに禍根を残すことさえあり得ます。
統計の不正という重大な問題がなぜ起きたのか、与野党が協力をして徹底的に究明する必要がありますが、不正発覚当時の担当者であった大西前政策統括官の
参考人招致になかなか同意していただけないなど、
再発防止の上でも重要な真相の究明に
与党がなぜ後ろ向きであるのか、残念でなりません。
安倍政権のもとで新たに発生した問題として、毎月
勤労統計の
調査対象のサンプル事業所を入れかえたり、また、賃金を算出する基準値を変えるなどして、いわば別人の身長を比べるようにして、賃金の伸び率を高く見せておりました。
賃金が上がっていることにしなければ増税しにくい、こうした思惑が仮に働いていたとするならば、これは
国民をだます、国家的な詐欺と言うしかありません。
安倍総理は、名目賃金で見れば、
安倍政権下ではプラスとよく
答弁されますが、名目賃金が伸びたとしても、それ以上に物価が上昇していれば、
生活が苦しくなることは自明です。
安倍総理は、
経済指標として名目さえ上昇すればいいというお考えでしょうか。御
答弁を求めます。
日本
経済の成長のエンジンとして、アベノミクスを更に吹かしていくと総理は息巻いていらっしゃいますが、エンジンを吹かすのであれば、物価の影響を考慮した一人当たりの実質賃金こそ、
国民の購買力が上がっているかどうかを見る重要な指標ではないでしょうか。実質賃金という、エンジンにおいて重要なこの歯車が回り出さなければ、
経済の好循環、そして家計の豊かさの実感は生まれません。
賃金の実態に近づく上で、
総務省と
厚労省は、
景気指標としての昨年の賃金
変化率は、その前の年と比べてサンプルが同じである、共通事業所で見ることが重要であるとの
見解を示しています。この共通事業所の参考値として、昨年の名目賃金と実質賃金の
変化率はそれぞれ何%だったんでしょうか。総理から御
答弁を求めます。
去る一月三十日の玉木代表の
質問に対して、安倍総理は、各省庁で実質賃金の公表の
あり方を検討していると
答弁されました。しかし、それから二週間以上たってもなお、根本厚労大臣が、実質賃金の検討会を立ち上げ、これから検討するときのう発表しているような
状況です。
不都合な
数字は表に出したくない、その気持ちはわかりますが、
景気指標として極めて重要な実質賃金、そのマイナス数値を隠蔽するのはやめてください。アベノミクス偽装はやめてください。
どうしても
お答えできないのであれば、せめて、
景気指標としての昨年の実質賃金の
変化率、つまり、共通事業所の参考値がプラスであったのか、それともマイナスであったのか、政策の今後の方向性を考える上で重要ですので、どうか
お答えください。
また、総理は、家族の稼ぎである、
経済の実態をあらわしている総雇用者
所得を見ると、名目で見ても実質で見てもプラスとも
答弁されています。
総雇用者
所得は賃金に雇用者数を掛け合わせた
数字でありますが、賃金が伸びていないのに、なぜ総雇用者
所得が伸びているのかといえば、それは雇用者数が伸びているからであります。
喜んでいる
議員の方もいらっしゃると思いますが、雇用者数の伸びを手放しで喜ぶことはできません。労働力
調査によれば、六十五歳以上の非正規労働者の数は、二〇一三年時点では二百四万人であったのが、昨年は三百五十八万人に急増しています。
生活が苦しくて、多くの高齢者が働きに出ていかざるを得なくなっている。まさにこれが、総雇用者
所得がプラスになっている大きな要因ではないんですか。総理に伺います。
総雇用者
所得が、おひとり
暮らしの高齢者が働きに出るようになってもふえるわけです。家族の稼ぎであると強調する総理は誤解している、あるいは誤解を招く
答弁であると言わざるを得ません。
本当に世帯当たりの稼ぎが伸びているのであれば、
支出も伸びているはずです。しかし、家計
調査によれば、二〇一〇年には一〇五を超えていた実質
消費支出が、昨年は一〇〇を切る水準であり、また、国全体で見ても、帰属家賃を除く実質家計最終
消費支出は、二〇一二
年度二百三十六兆円であったのが、二〇一七
年度は二百三十七・六兆円と、ほとんどふえていません。
消費支出が伸びていない要因について、総理の御
見解を伺います。
この六年三カ月、戦後最長の
景気回復と言われる中にありながら、家計から見ると、その
恩恵を受けている実感は乏しい
状況です。二〇一四年の
消費増税に加え、食料品の値上がりや、社会保険料も引き上げられ、家計で使えるお金は目減りしています。
このような
状況と、加えて、
景気判断の根幹を揺るがす
統計不正が起こりましたが、本当にことし十月に
消費税率を一〇%に引き上げるんでしょうか。
総理は、十月に
現行の八%から一〇%に引き上げる
予定であると繰り返し申し上げており、この方針に
変更はありませんと先日の衆議院本
会議でも
答弁されましたが、これは現時点で
変更はないという意味でしょうか。それとも、十月まで
変更はあり得ない、確実に
消費税を引き上げるという意味でしょうか。安倍総理の明確な
答弁を求めます。
二〇一四年、
消費税率引上げの延期を表明した際、
国民生活に大きな影響を与える
税制において重大な決断をした、だから
国民の
皆様の声を聞かなければならないといって衆議院を突如解散したのが安倍総理でありました。
ことし十月の
消費税率引上げに際しては、
国民の
皆様の声は聞かなくてもいいというお考えでしょうか。あるいは、参院選で
消費税率の
引上げについて、その是非を問うお考えでしょうか。それとも、衆議院を解散されますか。安倍総理に伺います。
次に、
消費税の
軽減税率制度について伺います。
税の大
原則は、公平、中立、簡素ですが、
軽減税率ほどこの
原則から外れているものはありません。高額な
消費ができる高
所得者ほど
軽減額が大きくなるなど、
逆進性の解消にならない上に、店のレジの入れかえや管理システムの改修費などの膨大な事務コスト、また
商品分類の線引きの複雑さに加え、同じ食料品を持ち帰るかその場で食べるかで
税率が変わることなど、その問題は枚挙にいとまがありません。
政府は、イートインコーナーを利用する場合にはお申し出くださいと掲示すれば、顧客の意思
確認をしなくてもいいとの
見解を示しています。しかし、顧客が掲示をよく見ておらず、申出をせずに休憩スペースで
購入した食料品を食べ始めたら、顧客は罰せられるんでしょうか。あるいは、掲示も見た上で食べ始めたら罰せられるんでしょうか。そもそも、
消費税の納税義務者は事業者であり、顧客は罰せられないと思いますが、念のため麻生大臣に御
答弁を求めます。
また、例えば、店側が顧客とトラブルになるのを避けるために、違反している顧客を見て見ぬふりをした場合には店は罰せられないのか、あわせて
お答えください。
その際、店と顧客、両者ともに罰せられないということであれば、本来のルールを守ってイートインコーナーを利用している正直者が結局ばかを見てしまうような、不公平きわまりない
制度ということになりますが、麻生大臣の御
見解をお聞かせください。
自動車関連
税制について伺います。
自動車産業は日本の産業の基盤であり、
自動車は地方では特に欠かせない
生活の足であります。その
自動車に対して、現在、九種類もの不条理で重い税が課せられています。加えて、今回提案されている
対策は、複雑な
税制を更に複雑にするものであり、
自動車販売会社からは、理解するのも一苦労とのお声も聞かれます。
消費税率引上げによる駆け込み
需要を本当に防ぎたいのであれば、どの車種を買い、また、どれだけ保有すれば
消費税率引上げによる
負担を相殺できるのか、明確にするべきではないでしょうか。
財務大臣に求めます。
また、エコカー減税については、ことし五月に基準が
変更され、対象を絞って増税されますが、一方、
自動車税の引下げは十月の一日に行われます。つまり、五月一日から九月三十日までのこの半年の間に
新車を買う人だけが不利な扱いになり、
公平性に問題が生じるとは思われませんか。麻生大臣に御
答弁を求めます。
続いて、個人事業主の
事業承継税制について
お尋ねします。
個人事業主は、日本の企業の六割近くを占め、地方における
経済、雇用の重要な担い手であります。また、全体で六百二十万人とも言われる従業員のうち、若者や女性など、さまざまな立場や価値観に基づく多様な働き方を包摂する受皿であり、その経営を支える
税制は不可欠であります。
その上で、今回、
贈与税、相続税の納税猶予が認められる事業用の土地面積の上限が四百平方メートルとなっていますが、これよりも広い面積の土地を所有する個人事業主は、特に地方には多く存在します。四百平方メートルを超える事業用の土地についても
事業承継税制の対象とすることで、その後継者の経営の安定にも資すると考えますが、麻生大臣、いかがでしょうか。
最後に、
教育資金の一括
贈与に係る
贈与税の非課税
措置の
見直しについて伺います。
親又は祖父母が子や孫に対し
教育資金をまとめて
贈与した場合に、一人当たり一千五百万円までの分について
贈与税を非課税とする
措置でありますが、それを受けられる子や孫の年齢要件について、三十歳を過ぎても学校に通っている場合や教育訓練を受けている場合には、最長四十歳まで非課税
措置を受けられるように今回見直されておりますが、働き盛り
世代として、四十歳を過ぎてからの教育訓練、学び直しも重要であります。
子や孫が働く現場では、今後、AIやロボットの進化が急速に進むなどして、ホワイトカラーを
中心に、最大で七百三十五万人の方が職を追われるという試算も出ております。
将来の雇用の不安定化や大きく変わる労働需給に
対応できるように、ICTの活用などを含めた技能習得など、幾つになってもこうした学び直しができるような
仕組みづくりがいま一層求められているところであります。
いわゆるリカレント教育の一環で人材に投資をした企業については
税制面で優遇される
改正も昨年行われていますが、そうした企業の枠を超えて、働く人みずからが能力開発に取り組む上で必要な費用を確保しやすくするために、孫や子が四十歳を過ぎている場合でも非課税
措置が継続されるべきであるというふうに考えますが、麻生大臣の御
答弁を求めます。
国内で進む
人口減少、少子化、そして地域の持続可能性、
社会保障制度を揺るがす財政赤字、技術革新や
経済のグローバル化の進展など、取り巻く環境が不確実に
変化する時代の中で、不安を抱えながら暮らす多くのお声、そして多様な主体を支えられる
税制の実現に力を尽くしていくことをお誓い申し上げ、
質問を終わります。
ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣安倍晋三君
登壇〕