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根本国務大臣 厚生労働委員会の開催に当たり、私の所信を申し上げます。
国民の皆様の安全、安心の確保に万全を期すとともに、我が国の
経済社会の発展に寄与すべく、
厚生労働行政の諸課題に全力で取り組みます。
毎月
勤労統計について、本来とるべき
統計調査の変更の手続を行わず、
抽出調査を行う際にとるべき統計的な処理を行わなかった結果、政府の行う統計に対する信頼が損なわれ、
雇用保険や
労災保険の受給者の方に
追加給付が必要な事態を招いたこと等について、改めて国民の皆様に深くおわび申し上げます。
私は、省全体として、統計に対する姿勢を根本から正し、
再発防止の徹底に努め、
厚生労働行政に対する国民の皆様の信頼の回復に努めるとともに、
雇用保険等の
追加給付につきまして、できる限り速やかに、簡便な手続でお支払いできるよう、万全を期して必要な対策を講じてまいります。
本年十月の
消費税率の引上げ及び
社会保障の充実によって、二〇二五年を念頭に進められてきた
社会保障・
税一体改革が一区切りとなります。今後は、
団塊ジュニア世代が高齢者となり、
現役世代の減少が進む二〇四〇年ごろを見据え、全ての世代が安心できる
社会保障制度の構築に向けて取り組みます。
このため、昨年十月に、私が本部長となって、二〇四〇年を展望した
社会保障・働き方
改革本部を
厚生労働省内に設置したところであり、今後、国民誰もが、より長く、元気に活躍できるよう、高齢者を始めとした多様な就労、
社会参加の促進、その前提となる
健康寿命の延伸、労働力の制約が強まる中での医療・
福祉サービス改革による生産性の向上などの検討を着実に進めていきます。
まず、働く意欲のある高齢者がその能力を十分に発揮できるようにするため、七十歳までの雇用と
就業機会の確保について、しっかりと検討を進めてまいります。
あわせて、働く方々の主体的な
キャリア形成や再チャレンジが可能な社会としていくため、中途採用の拡大に取り組んでまいります。
年金制度については、本年に実施する財政検証とその結果を踏まえた
制度改正に向け、受給開始時期の選択肢の拡大や短時間労働者への
被用者保険の
適用拡大、
私的年金の充実など、人生百年時代の到来や国民の多様な働き方に対応した
年金制度を構築するべく検討を進めてまいります。
年金事業運営については、引き続き事務の適切な実施に努めるとともに、本年十月の
年金生活者支援給付金制度の施行に向けて準備を着実に進めます。
健康寿命の延伸等を目指し、予防、
健康づくりを推進していくことが重要です。第二次
健康日本21に基づき、健康無関心層を含めた疾病の
発症予防や
重症化予防に向けた取組を進めるとともに、保険者による特定健診・
保健指導や糖尿病の
重症化予防などの取組について、インセンティブを活用しながら進めます。
また、医療・
福祉分野において、労働力の制約が強まる中で、
専門人材が能力を最大限発揮することができるよう、人材の確保にも取り組みつつ、効率的な業務分担の見直しや効率的な配置の推進、AI、ロボット、
ICT等のテクノロジーの
徹底活用や
組織マネジメント改革等を進めます。
こうした国民の
健康寿命の延伸や医療・
介護サービスの生産性の向上を図るため、健康、医療、介護に関する
データ利活用基盤の構築を軸に、被保険者の予防、
健康づくりなど保険者が果たすべき役割の強化や
ゲノム医療、AI等の
最先端技術の活用など、
データヘルス改革を戦略的、一体的に推進します。また、
医療保険の
オンライン資格確認の導入、その普及等のための
医療情報化支援基金の創設、医療と介護の
レセプト情報等のデータベースの連携、高齢者の
保健事業と
介護予防の一体的な実施、
被用者保険の被
扶養者要件の見直し、
審査支払い機関の改革等を行うための法案を今国会に提出しました。
さらに、本年十月の
消費税率引上げに伴い、
診療報酬等の改定を行います。
地域包括ケアシステムの構築を一層推進します。質が高く効率的な
サービス提供体制の整備や
自立支援、
重度化防止に資する
サービスの実現など、国民一人一人に必要な
サービスが提供され、地域で安心して暮らすことができる体制の構築を目指します。
また、家族の介護のために離職せざるを得ない状況を防ぎ、働き続けられる社会の実現を目指します。このため、介護の受皿五十万人分の整備を進めるとともに、他の産業との
賃金格差をなくしていくための
介護職員のさらなる
処遇改善のほか、
介護分野への
アクティブシニア等の参入促進、介護の仕事の魅力の
全国的発信など、
介護人材の確保に総合的に取り組み、二〇二〇年代初頭までに
介護離職ゼロを目指します。
認知症施策は、国を挙げて取り組むべき課題です。昨年十二月に新たに設置された
認知症施策推進関係閣僚会議において、
関係省庁との連携のもと、
厚生労働省が
中心的役割を果たし、共生と予防を車の両輪として
認知症施策を推進します。
地域医療構想の実現に向け、
医療機関ごとの
具体的対応方針の速やかな策定を進めます。
改正医療法及び
改正医師法に基づき、医師の偏在を可視化できる指標を整備し、都道府県が主体的に
医師確保対策を推進する体制を構築するなど、医師の
地域偏在、
診療科偏在の解消に着実に取り組みます。
待機児童の解消に向けて、
子育て安心プランに基づき、二〇二〇年度末までに三十二万人分の保育の受皿を整備するとともに、そのために必要な
保育人材の確保や
処遇改善等を更に進めます。
放課後児童対策についても、
待機児童の解消等に向けて、新・
放課後子ども総合プランに基づき、二〇二三年度末までに三十万人の受皿整備をしっかりと行ってまいります。
幼児教育、保育の無償化について、内閣府を始めとした
関係省庁とも緊密に連携し、本年十月からの円滑な実施に向け取り組むとともに、保育の質の確保、向上についても一層取り組んでまいります。
妊娠期から
子育て期まで切れ目なく支援する
子育て世代包括支援センターの
全国展開、産婦健診や産後ケアの充実、不妊治療への支援等にも取り組みます。
児童虐待の防止については、今般の千葉県野田市の
虐待事案を受け、
関係閣僚会議を開催し、「「
児童虐待防止対策の強化に向けた
緊急総合対策」の更なる徹底・強化について」を決定しました。痛ましい
虐待事件が繰り返されないよう、昨年末に策定した
児童虐待防止対策体制総合強化プランに基づき
児童相談所と市町村の
体制強化を図るなどの取組を進めるとともに、
児童虐待に関する
相談支援体制の強化及び職員の資質の向上を図るための法案を今国会に提出します。
虐待などの事情により親元で暮らせない子供たちも、温かい家庭的な環境で育まれるようにする必要があります。里親のなり手をふやすため、
里親制度の
広報啓発や
里親家庭に対する
相談援助体制の充実に努めます。また、
児童養護施設等の小規模、
地域分散化や
職員配置基準の強化などを推進してまいります。
子供の
貧困対策については、特に厳しい経済状況にある一人親家庭の支援を充実します。
児童扶養手当について、本年十一月から、年六回の支払いを着実に実施するほか、就職に有利な資格の
取得支援等に取り組みます。
一億総
活躍社会の実現に向けて、働き方
改革実行計画の推進に努めてまいります。働き方
改革関連法については、働く方がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現するため、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、
雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保を着実に推進すべく、円滑な施行に取り組みます。具体的には、働き方
改革推進支援センターにおける
相談支援や幅広い
周知広報などにより、企業と働く方々に対して丁寧な周知を行ってまいります。また、働き方改革の実現、定着に向けて、IT化や
業務効率化など
生産性向上に取り組む
中小企業に対する支援などについてしっかり取り組みます。さらに、長時間労働の事業場への監督指導の徹底等の対応を行います。
医師の働き方改革については、医師の健康を守りつつ、地域の
医療提供体制が維持できる働き方の実現を目指して、時間
外労働規制の具体的なあり方や労働時間の
短縮策等について本年三月をめどに結論を得るべく精力的に検討を行ってまいります。
また、全ての人材がその能力を存分に発揮できる社会や個々人の人生の再設計が可能となる社会を実現するため、
リカレント教育を始めとした
人材育成の強化、女性、若者、高齢者、
障害者等の
就労支援等を実施します。
女性を始めとする多様な労働者が活躍できる
就業環境を整備するため、女性の
職業生活における活躍の推進に関する
一般事業主行動計画の
策定義務の対象拡大、
情報公表の強化、
パワーハラスメント防止のための事業主の
雇用管理上の
措置義務等の新設、
セクシュアルハラスメント等の
防止対策の強化等を内容とする法案を今国会に提出します。
改正出入国管理法に基づく新たな
外国人材の受入れについては、本年四月の施行に向けて、介護・
ビルクリーニング分野における
受入れ環境の整備、適正な
労働条件と
雇用管理の確保、
労働安全衛生対策の実施、適切な
社会保険の
適用促進、安全、安心に
医療機関を受診できる環境の整備などに取り組み、
外国人材がその能力を有効に発揮できる環境を整備してまいります。また、
技能実習制度については、引き続き
受入れ企業における
労働関係法令の遵守の徹底を図ること等により、制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に努めてまいります。
最低賃金については、働き方
改革実行計画等において、年率三%程度をめどとして引き上げ、
全国加重平均千円を目指すとされています。昨年は
全国加重平均で二十六円引き上げ、時給換算になった平成十四年度以降、最大の上げ幅となりました。
中小企業、
小規模事業者が賃上げしやすい環境を整備するため、
生産性向上のための支援を進めます。
また、二〇二三年の
技能五輪国際大会の我が国への招致を通じた
技能尊重機運の醸成に取り組むとともに、
我が国産業の基盤である
物づくり技能の一層の向上に努めます。
昨年、多数の国の機関において障害者の
法定雇用率を満たしていない状況にあったことが明らかとなりました。
障害者雇用施策を推進する立場として、事態を重く受けとめ、昨年十月に
関係閣僚会議で取りまとめた
基本方針に基づき、
再発防止はもとより、
法定雇用率の速やかな達成と障害者の活躍の場の拡大に向け、
政府一体となって取り組んでまいります。
また、公務部門及び
民間企業における
障害者雇用の一層の促進を図るため、短時間労働以外の労働が困難な状況にある障害者を雇用する事業主を支援するとともに、
厚生労働大臣から国等の機関の
任命権者に対する報告徴収の規定を設ける等の措置を講ずる法案を今国会に提出します。
障害のある方々が生き生きと
地域生活を営むことができるよう、生活や就労の支援、グループホームの整備、
文化芸術活動の推進などに引き続き取り組みます。また、
精神障害のある方々が地域の一員として自分らしい暮らしをすることができるよう、包括的な支援を受けられる
仕組みづくりを進めます。さらに、
障害福祉人材のさらなる
処遇改善を行います。
アルコール健康障害対策を始めとする
依存症対策については、
医療相談体制の整備や民間団体の
活動支援等に取り組みます。特に、
ギャンブル等依存症対策は、
ギャンブル等依存症対策基本法の趣旨を踏まえ、
関係省庁とともに必要な取組を進めてまいります。
生活困窮者
自立支援制度及び生活保護制度については、改正生活困窮者
自立支援法及び改正生活保護法に基づき、就労、家計、住まい等に関する包括的な支援体制の強化に向けた取組等を着実に進めます。
自殺対策については、自殺総合対策大綱等に基づき、若者が利用するSNS等を活用した相談対応の強化を図るなど、関係府省と連携し、誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現に向けた取組を推進します。また、成年後見制度利用促進基本計画を踏まえ、全国どの地域においても、成年後見制度を必要とする人が制度を利用できるような体制整備を進めます。
今後とも、地域住民が抱えるさまざまな生活課題を解決につなげていくための包括的な支援体制の構築等を進めることで、地域共生社会の実現を目指します。
医薬品、医療機器産業については、革新的な医薬品等の開発を促進する環境の整備に取り組むとともに、後発医薬品の使用促進やベンチャー企業への支援を実施します。また、医薬品等の安全性を十分に確保した上で、国民のニーズに応えるすぐれた医薬品等がより迅速かつ効率的に提供されるようにするため、先駆け審査指定制度、条件つき早期承認制度を法制化します。あわせて、住みなれた地域で患者が安心して医薬品を使うことができる環境を整備するため、薬剤師による継続的服薬指導の実施の義務化などを内容とする法案を今国会に提出します。
受動喫煙対策については、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて対策を徹底することが必要です。このため、改正健康増進法の円滑な施行に向けた準備等を進め、望まない受動喫煙のない社会の実現を目指します。
がん対策については、第三期がん対策推進基本計画に基づき、がん
ゲノム医療の提供体制の実現、思春期世代や若年成人世代のがん対策、治療と仕事の両立支援、地域での
相談支援体制の充実等を推進します。
風疹については、昨年十二月に追加的対策を取りまとめました。抗体保有率の低い世代の男性に対して、抗体検査を原則無料で受けていただいた上で、三年間原則無料で定期接種を行うなど、さらなる環境の整備に取り組んでまいります。
国際保健の分野においても、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの推進、薬剤耐性菌を含む感染症対策等のグローバルな課題に的確に対応します。
また、改正食品衛生法に基づき、広域的な食中毒事案への対策強化等に取り組みます。
近年、災害の発生が相次いでいることを受け、昨年、国民の生活に欠かせない重要インフラの緊急点検を実施しました。その結果等を踏まえた防災・減災、国土強靱化のための三カ年緊急対策に基づき、災害拠点病院や
社会福祉施設等における自家発電設備の整備や耐震化等に集中的に取り組みます。また、平成三十年度第一次補正予算に基づき、医療施設の災害復旧等の取組を推進します。
水道については、改正水道法に基づき、広域連携、水道事業者の適切な資産管理、多様な官民連携の推進により、老朽化した水道施設の更新、耐震化といった水道事業の基盤強化に取り組みます。
東日本大震災の発生からもうすぐ八年が経過します。私はかねてより被災地の復興に取り組んでまいりましたが、引き続き、私自身も復興大臣であるとの強い意識のもと、被災者の心のケア、医療・介護提供体制の整備、雇用対策などに全力で取り組みます。
本年、我が国はG20の議長国となります。
厚生労働分野においても、九月には愛媛県松山市においてG20労働雇用大臣会合を開催し、十月には岡山県岡山市においてG20保健大臣会合を開催する予定です。開催地の地方自治体と一体となって全力を挙げて取り組み、国際社会に貢献してまいります。
援護施策については、戦没者遺骨収集推進法に基づき、国の責務として、可能な限り多くの御遺骨を収容し、御遺族に引き渡すことができるよう、全力を尽くします。また、慰霊事業に着実に取り組むとともに、戦傷病者や戦没者遺族に対する年金等の支給、中国残留邦人等に対する支援策について、引き続き、きめ細かく実施します。
委員長、理事を始め委員の皆様、国民の皆様に一層の御理解と御協力を賜りますようお願いいたします。(拍手)