運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

2018-10-30 第197回国会 参議院 本会議 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三十年十月三十日(火曜日)    午前十時一分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第二号   平成三十年十月三十日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第二日)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、日程第一  一、永年在職議員表彰の件      ─────・─────
  2. 伊達忠一

    議長伊達忠一君) これより会議を開きます。  日程第一 国務大臣演説に関する件(第二日)  去る二十四日の国務大臣演説に対し、これより順次質疑を許します。吉川沙織君。    〔吉川沙織登壇拍手
  3. 吉川沙織

    吉川沙織君 立憲民主党吉川沙織です。  私は、会派を代表して、総理に対し質問いたします。  今、世界中で、司法を抱き込み、メディアを黙らせ、憲法を変えるなど、合法的な独裁化が静かに進んでいます。米国では、一九八〇年前後から政党極端化先鋭化が進み、民主主義的規範が弱体化し、そして現大統領の誕生に至っています。  これまで米国は、相互的寛容と自制心を持つという寛容と自制の規範は、柔らかいガードレールとして機能し、党派間の闘いを避けるために役立ってきました。しかし、現在は、この柔らかいガードレールが機能せず、米国民主主義危機に直面しているとされています。  翻って、日本でも、政党間の批判は激烈化し、一強体制の下で、国会の重要な討議機能機能不全を起こし、公務員は上を見てそんたくし、政党同士は罵り合い、最終的には選挙制度まで数を頼んで強行採決で成立させるなど、米国と同様に、民主主義危機的な状況に陥っています。  明治憲法制定時の議論では、立憲主義政略主義が対立し、政府憲法の足かせをはめようとする立憲主義を採用し、政府が唱える大義のためには、時には手段を選ばず、憲法がその妨げになる場合にはそれをないがしろにすることも辞さない、外見的立憲主義である政略主義は排除されました。総理政策実現手法は、立憲主義ないがしろにする、明治の先人が排除した政略主義です。  そこで、まず日米民主主義をめぐる現状認識、そして総理自身政略主義に対する見解を伺います。  森友、加計学園問題、官僚不祥事、いびつな国会運営など、過去の政権であれば何度も内閣総辞職するほどの失政を繰り返しながら、一強体制がここまで続いているのはどのような理由によるのでしょうか。疑惑が発生すると、当初は全否定し、関連証拠が徐々に明らかになると、責任を現場あるいは末端にとどめ、客観的証拠がないとして最高責任者は決して責任を取らないという疑惑処理方法は、行政独裁と言われる国家に共通してよく見られる現象です。  そして、一つ一つ政治的行為政治的発言についてじっくり時間を掛けてその適否や意義を吟味するという習慣が、私たち社会から失われつつあります。経済活動における効率性迅速性を優先する論理を、民主主義制度国会運営など、本来じっくり時間を掛けるべきで、数値化になじまない活動に持ち込み、費用対効果を優先し、審議時間さえ消化すれば数に頼んだ強行採決は可能であるとの論理が横行する現状について、総理は全く問題がないとお考えか、御所見を伺います。  以下、具体例に沿って伺っていきます。  まず、加計学園問題で話題となった国家戦略特区です。  アベノミクス成長戦略一つとして、地域分野を限定し、岩盤規制改革の名の下に大胆な規制改革緩和税制面の優遇を行う規制改革制度だとされています。それでは、果たしてどれだけ経済成長効果があったのでしょうか。  国家戦略特区は、アベノミクスの第三の矢である民間投資を喚起する成長戦略一つだと喧伝されました。しかし、その内容が不明確で、理論的根拠も曖昧な国家戦略特区成果とともに、アベノミクスに関する現状での総括について、総理お尋ねします。  今年に入り、財務省の公文書改ざん厚労省裁量労働制に係る不適切データ問題など、行政文書統計信頼性を揺るがす事態が相次ぎました。加えて、今年八月には、国の行政機関全般において障害者雇用障害者数を水増し計上していた事実が発覚し、行政統計等信頼は地に落ちました。民間企業に率先して範を示すべき公務部門において法定雇用率にはるかに及ばない状況が常態化してきたことは、制度の根幹を揺るがす看過し難い事態です。しかも、先国会開会中にこれに気付きながら、立法府たる国会報告が一切なかったことも踏まえ、その責任の所在、取り方について、総理見解を伺います。  次に、外国人材についてです。  所信表明総理は、外国人労働者受入れ拡大に意欲を示されておられます。  これまで政府は、外国人材受入れ在り方について、移民政策と誤解されないような仕組みや国民的なコンセンサス形成在り方などを政府横断的に進めていくとしてきました。今回、移民政策を取らないという立場を維持しながら、それを骨抜きにする事実上の移民受入れにゴーサインを出したということでしょうか。  移民とは、入国の時点でいわゆる永住権を有する者であり、就労目的在留資格による受入れ移民には当たらないという世界に例を見ない移民の定義を厳守しつつ、引き続き労働者不足に対処していくつもりなのでしょうか。  現政権らしい正面突破を避けた政策とも言えますが、外国人技能実習制度現状のまま放置し、安易に在留資格拡大することは、外国人労働者に対する人権保障観点から問題が大きい上、新たな受入れ対象となる職種も全て省令に委ねられます。急場しのぎ労働者不足対策としか思えませんが、総理見解お尋ねします。  外国人労働者受入れ拡大については、労働市場に及ぼす影響も懸念されます。特に、私が一貫して取り組んでいる、現在三十歳代後半から四十歳代前半のいわゆる就職氷河期世代は、今なお非正規労働を余儀なくされている者が多い世代であり、自己責任の名の下に、政治の光は当時一切当たりませんでした。労働者不足の解消を言うのなら、まずは、この就職氷河期世代雇用確保を最優先すべきではないですか。総理見解を伺います。  政府は、最近、現役世代の急速な人口減少という新たな局面対応するため、二〇四〇年頃を展望した社会保障改革について国民的な議論が必要としています。しかし、二〇四〇年は、就職氷河期世代現役世代から高齢者世代に移行する時期でもあります。働き盛り正社員になれなかった世代高齢になれば、年金も十分でなく、生活保護受給者が増大することが懸念されます。  二〇四〇年頃の社会保障を展望するならば、就職氷河期世代高齢者世代に移行する局面への対応は必須であり、生活保護等社会保障給付に与える影響額についても試算すべきではないかと考えますが、いかがですか。  女性活躍と言いながら、第四次改造内閣女性閣僚はたった一人にとどまっており、一億総活躍にも疑問符が付きまといます。一億総活躍を本当に進めるつもりなら、学校を卒業しようとしたときの社会経済状況に翻弄され、能力があるのに非正規雇用でくすぶり続けている就職氷河期世代正社員化雇用確保正面から取り組む必要がありますが、見解を伺います。  総理は、今月十五日、消費税率について、法に定めがあるとおり、現行の八%から一〇%へと引き上げることを表明されました。また、消費税率引上げによる経済的影響を確実に平準化できる規模予算を編成するとしています。この駆け込み需要反動減対策は、相当な規模内容になるとの観測もあります。しかし、それほどまでに消費の冷え込みに敏感となっているということは、まさに、今は消費税を引き上げる経済状況ではないということを自ら認めているということにほかならないのではないでしょうか。総理見解を伺います。  この駆け込み需要反動減対策財政健全化とをいかに両立しようとしているのかも不明です。政府は、従来掲げてきた財政健全化目標達成時期を五年先送りしました。反動減対策規模内容によっては、ただでさえ実現可能性が疑われている財政健全化目標達成を更に困難なものとするのではないでしょうか。反動減対策を講じれば、支出以上に税収が得られると見込んでいるのでしょうか。反動減対策財政健全化目標達成関係をどのように整理しているのでしょうか。見解を伺います。  また、駆け込み需要反動減対策規模が膨らみ、財政再建に充てられる引上げ分消費税収を上回ることになれば、結果として、財政再建なき消費増税が行われるのと同様の効果をもたらすことになります。これを是とするのでしょうか。総理見解を伺います。  今年は大きな自然災害が相次いでいます。改めて、お亡くなりになられた方々哀悼の意を表するとともに、被害に遭われた皆様にお見舞いを申し上げます。  一昨年の熊本地震の際は、約一か月後に補正予算が提出され、成立しています。今回は遅きに失したと言わざるを得ません。補正予算案の提出時期の適切性について、総理所見を伺います。  また、北海道胆振東部地震に際し、政府は、関係機関から報告された被害状況を独自に取りまとめ、死者数を発表しました。しかしながら、北海道が取りまとめた情報と食い違い、政府は二度にわたり訂正する事態となりました。防災基本計画によれば、災害による人的被害を認定するのは市町村であり、市町村からの情報を一元的に集約し、公表するのは都道府県です。今回は、政府北海道情報が食い違うために、ただでさえ大きな被害が発生し対応に追われる道庁に対し、正確な情報を求めて問合せが相次いだとの報道もなされています。  防災基本計画における国と地方役割分担ないがしろにした側面が否定できない今回の被災情報公表について、政府総括を伺います。あわせて、大規模災害時の情報取扱いに関し、国と地方公共団体役割分担はどうあるべきか、総理認識を伺います。  そして、憲法についてです。  憲法とは、権力者の恣意的な行動を抑制する縛りとして制定されたものです。総理所信表明で、憲法とは国の理想を示すものと、全く誤った憲法理解を示しています。総理は、改憲という悲願を達成するため、真正面からではなく、政略主義的に改正しようとしてきました。  総理は、北東アジアにおける安全保障環境の激変を理由として第九十六条の改正手続要件緩和をもくろみ、これが失敗すると、これまで確立した政府解釈を変更するなど、権力のブレーキを次々に外し、集団的自衛権行使容認に踏み切ってきました。そして、総理は、ほとんどの憲法学者が主張する違憲説をかわすため、頻発する大災害で奮闘する自衛隊への配慮を示し、憲法第九条の二を新設しようと考えています。  所信表明では、制定から七十年以上を経た今、国民皆様と共に議論を深め、私たち国会議員責任を、共に果たしていこうではありませんかとされました。なぜ改憲が必要なのか、どこに不都合があるのか、ただ制定から七十年以上経過したというだけで改正しなければならないのでしょうか。総理改憲に対する基本的所見を伺います。  また、所信表明総理は、憲法審査会審査のありように言及されました。これまで総理は、度々、国会のことは国会で決めていただく旨答弁されてきましたが、今回の所信は、これまでの答弁と矛盾し、三権分立観点からも問題があるのではないかと考えますが、総理見解を伺います。  あわせて、憲法第九十九条が規定する閣僚などの憲法遵守義務について、どう認識し、それを全うするために具体的にどのような措置をとるおつもりでしょうか。憲法遵守義務を負う総理は、おのずと改憲に係る発言について自制的、抑制的であるべきと考えますが、見解を伺います。  最後に、唯一立法機関である国会立法行為、そして国会による行政統制という観点から伺います。  立法府行政府関係については、これまで、束ね法案包括委任規定を問題として、議院運営委員会理事会質問主意書等で再三にわたり指摘申し上げてまいりました。  束ね法案は、法律案を束ねることによって国会審議を形骸化するとともに、国会議員表決権を侵害しかねないものであること、包括委任規定を含む法律案は、細目的事項を具体的に明示せずに実施命令根拠規定法律に設けようとするものであり、法律による行政の原理の意義を埋没させるおそれがあるとともに、立法府空洞化を招来しかねないものであるといった問題を抱えているものです。私は、立法府に身を置く議会人の一人として、危惧を抱かざるを得ません。  国会は、憲法上、国権の最高機関であり、国の唯一立法機関として、法律による行政根拠である法律制定するとともに、行政執行全般を監視する責務権限を有しています。国会憲法上の責務権限を侵害しかねないような束ね法案包括委任規定については、立法府行政府関係が改めて問われている今こそ、厳に慎むよう方針を決めるべきではないでしょうか。総理見解を伺います。  これまで申し上げましたとおり、日本民主主義危機的状況に陥っている中、いま一度、民主主義の意味を問い直し、法律による行政を取り戻す必要があるのではないでしょうか。  立憲民主党は、今月三日、結党二年目を迎えました。立憲主義に基づく民主政治の原点に立ち返り、多様性を認め合い、困ったときに寄り添い、お互いさまに支え合う社会実現するため、現政権と明確に対峙する揺るぎない野党第一党としてその責任を全うすることを申し上げまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。(拍手)    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇拍手
  4. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 吉川沙織議員にお答えいたします。  日米民主主義政略主義についてお尋ねがありました。  他国についての言及は控えますが、我が国民主主義を絶えず発展させていく、これは私たち政治家全員責任であります。政治家が激しい言葉で互いの批判に終始したり行政を担う公務員を萎縮させても、それが民主主義の発展に資するとは考えません。それぞれが国民皆様の前にしっかりと政策の選択肢を示すこと、そして建設的な議論を通じて政治を前に進めていくことこそが民主主義の王道であると考えます。  長い民主主義の歴史を持つ英国のチャーチル首相がかつて最悪の制度と評したように、民主主義に完璧などありません。それでもなお、私たち政治家責任を果たさなければならない。現状への不満を言い募るよりも、より良い民主主義を求めて共にたゆまぬ努力を重ねていくべきであります。  お尋ね政略主義という考え方については、立憲民主党の皆さんほど詳しく研究したことはありませんが、全ては国民のため、いかなるテーマについても逃げることなく議論を行わさせていただきたい。与党、野党立場を超えて、国民の負託に応える建設的な議論をさせていただきたいと考えています。  審議時間と採決在り方についてお尋ねがありました。  国会運営については、国会において適切に決められるものと考えております。  政府としては、国会からの求めがあれば誠実に審議対応すべきものであると考えており、今後とも丁寧な対応に努めてまいります。  国家戦略特区成果アベノミクス現状総括についてお尋ねがありました。  国家戦略特区は、岩盤規制改革の突破口として、企業による農地取得などの農業改革や、都市公園内での保育園設置特例による待機児童対策都市計画手続航空法の高さ制限の特例による都市再生など、これまで長年にわたって実現できなかった規制改革実現することで、地方創生経済成長に大きく寄与しています。  こうした取組の中で、例えば、首都圏特区を活用した都市再生プロジェクトについては、東京都は八兆五千億円の経済効果があると試算しています。また、福岡の都市再生開発プロジェクトは、市の試算によれば八千五百億円の経済効果が見込まれるなど、その地域経済成長につながっています。  さらに、農業、医療、エネルギー分野などにおける規制改革法人税を引き下げ二〇%台を実現、TPP、日EU・EPAといった経済連携の推進など、この五年余り、大胆な成長戦略を実行してまいりました。  こうしたアベノミクス三本の矢によって、名目GDPは一二・二%増加し、過去最高となりました。生産年齢人口が四百五十万人減る中、雇用は二百五十万人増加し、正社員有効求人倍率は、調査開始以来、初めて一倍を超えています。さらに、五年連続で今世紀に入って最も高い水準賃上げ実現し、この春の中小企業賃上げ率は、過去二十年間で最高になっています。こうした中で、先般の内閣府の調査でも、現在の生活に満足と回答した方々の割合は、七五%と過去最高となりました。  今後、更にアベノミクス三本の矢を力強く放つことで、更なる景気回復、所得の向上デフレ脱却実現を目指してまいります。  国の行政機関における障害者雇用についてお尋ねがありました。  国の行政機関において雇用している障害者数の計上については、一部の機関に誤りが見られたことから、厚生労働省において点検を開始し、八月二十八日に全ての機関における状況公表したところです。  その上で、その実態の検証を行うことを目的として関係省連絡会議の下に検証委員会を設置し、同委員会報告も踏まえた上で、去る十月二十三日に公務部門における障害者雇用に関する基本方針を決定しました。  その際、私から、各大臣は、今回の事態を深く反省し、真摯に重く受け止め、組織全体として基本方針に基づき再発防止にしっかりと取り組むよう強く指示しました。  基本方針に基づき、再発防止はもとより、法定雇用率の速やかな達成障害のある方が活躍できる場の拡大に向け、政府一体となって取り組んでまいります。  外国人材受入れ拡充就職氷河期世代就労支援についてお尋ねがありました。  安倍内閣においては、いわゆる移民政策を取ることは考えておりません。新たな受入れ制度は、深刻な人手不足対応するため、現行の専門的、技術的分野における外国人受入れ制度を拡充し、真に必要な業種に限り、一定専門性技能を有し、即戦力となる外国人材を、期限を付して我が国に受け入れようとするものであります。  制度の運用に当たっては、国内人材確保生産性向上取組を行ってもなお外国人材受入れが必要と認められる業種に限るとともに、外国人材受入れ・共生のための総合的対応策の検討を進め、在留のための環境整備について、関連施策を積極的に推進することとしております。  いわゆる就職氷河期世代であって、現在も就労に関し様々な課題に直面している方々には、今後の我が国社会経済を支える人材として活躍していただけるよう、マンツーマンによる相談支援などの就労支援全力で取り組んでまいります。  就職氷河期世代方々社会保険給付への影響就労支援についてお尋ねがありました。  平成三十年五月二十一日の経済財政諮問会議において、政府は、高齢者人口がピークを迎える二〇四〇年頃を見据え、社会保障給付負担の姿を幅広く共有するため、議論の素材として、二〇四〇年までの社会保障全体の給付負担に関する見通しをお示ししました。  これは、全世代対象人口経済について一定の前提を置いた長期的な推計であり、御指摘のような特定世代の例えば退職といった一時の局面に限った試算は含まれておりません。  一方、就職氷河期世代方々については、高齢者世代になる前に安定した職を得て、自立を図る支援を行うことが重要と考えています。  政府としては、就職氷河期世代方々がより安定した仕事に就くことができるよう、雇用失業情勢の改善が着実に進んでいるこの時期を捉え、マンツーマンによる相談支援、個々のニーズに即した職場体験就職後の定着、ステップアップ支援などの就労支援を行っていきます。  二〇四〇年を展望し、誰もがより長く元気に活躍できる社会実現に向けて全力で取り組んでまいります。  消費税率引上げに関する対策についてお尋ねがありました。  五年半にわたるアベノミクス取組により、政権交代後、極めて短い期間でデフレではないという状況をつくり出す中で、名目GDPは一二・二%増加し、過去最高となりました。  消費についても、一国全体を捉えるGDPベースで見て、実質で二〇一六年以降、前期比プラス傾向で推移し、二〇一三年の水準を上回るなど、持ち直しています。  来年十月に予定されている消費税率引上げに当たっては、前回の三%引上げの経験を生かし、あらゆる施策を総動員することが必要と考えております。もちろん、無駄な歳出等を行うつもりは全くありません。御指摘駆け込み需要反動減といった経済変動を可能な限り抑制するためにも、万全を期す必要があります。  二〇一九年度、二〇二〇年度の当初予算において臨時特別の措置を講じることにより、消費税率引上げによる経済的影響を平準化するとともに、引き続き、経済再生を図りながら、歳出と歳入、それぞれの面からの改革を続け、二〇二五年度の国、地方を合わせたプライマリーバランスの黒字化を確かなものとしてまいります。  補正予算の編成のタイミング、大規模災害時の情報取扱い及び被災情報公表についてお尋ねがありました。  まず、大阪北部地震西日本豪雨、台風二十一号、北海道胆振東部地震など、大規模災害が相次いで発生しました。お亡くなりになられた方々と御遺族に対し、深く哀悼の意を表しますとともに、被災者皆様に心からお見舞いを申し上げます。  政府としては、一連災害に対し、関係自治体復旧復興事業が進むよう、予備費を十分に活用し、発生後、直ちにプッシュ型支援実施するとともに、生活やなりわいの再建に向けた支援策実施激甚災害の指定などの対策を迅速に講じてきたところです。こうした対策は、予備費の積み増しを主たる内容とする補正予算を編成した熊本地震の際の対応と比較しても十分なものであったと考えております。  今回、一連災害で生じた被害状況地域ごと復旧復興進捗等に応じて必要な財政措置を講ずるため、平成三十年度補正予算案に九千三百五十六億円を計上しているところであり、早期の成立の御理解と御協力をお願いいたします。  災害時における国と地方公共団体役割分担については、災害対策基本法及びそれに基づく災害基本計画等により定められておりますが、いずれにしても、国と地方公共団体が緊密に連携した対応が重要であると認識しています。  政府として、被害規模早期把握観点から、警察庁、消防庁等からの報告を取りまとめ、把握した被害状況公表してきたところです。今後は、都道府県公表した被害状況も踏まえ、より正確な情報発信に努めてまいります。  憲法改正憲法遵守義務についてお尋ねがありました。  憲法改正内容について、私が内閣総理大臣としてこの場でお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。  その上で、その上で、お尋ねでございますのであえて申し上げますと、憲法は、主権者たる国民が、その意思に基づき、国家権力行使在り方について定め、これにより国民基本的人権を保障するものでありますが、同時に、国の未来理想の姿を語るものでもあります。二十一世紀の日本理想の姿を私たち自身の手で描くという精神こそ、日本未来を切り開いていくことにつながっていくと考えています。  また、内閣総理大臣は、憲法第六十三条の規定に基づき議院に出席し、国会法第七十条の規定に基づき、議院会議又は委員会において発言しようとするときは、議長又は委員長に通告した上で行うものとされています。  憲法第六十七条の規定に基づき国会議員の中から指名された内閣総理大臣である私が、議院会議又は委員会において、憲法に関する事柄を含め、政治上の見解行政上の事項等について説明を行い、国会に対して議論を呼びかけることは禁じられているものではなく、三権分立の趣旨に反するものではないと考えています。  憲法第九十九条が憲法遵守義務を定めているのは、日本憲法最高法規であることに鑑み、国務大臣その他の公務員は、憲法規定を遵守するとともに、その完全な実施に努力しなければならない趣旨を定めたものであって、憲法の定める改正手続による憲法改正について検討し、あるいは主張することを禁止する趣旨のものではないと考えています。  法律案の束ね又は実施命令根拠規定取扱いについてお尋ねがありました。  政府においては、従来から、二つ以上の法律の改正を提案しようとする場合においては、一般に、法案に盛られた政策が統一的なものであり、その結果として法案の趣旨、目的一つであると認められるとき、あるいは内容的に法案の条項が相互に関連して一つの体系を形作っていると認められるときは、一つの改正法案として提案することができると考えています。  また、法律等を実施し、又は施行するため必要な事項のうち、罰則を設け、実質的に義務を課し、又は権利を制限する内容を含まない細目的事項について定める実施命令は、憲法国家行政組織法等の規定により、個別の法律等による特別の委任がなくても制定することができるとされております。  したがって、これらの取扱いを変える必要はないと考えています。(拍手)     ─────────────
  5. 伊達忠一

    議長伊達忠一君) 橋本聖子君。    〔橋本聖子君登壇拍手
  6. 橋本聖子

    ○橋本聖子君 自由民主党の橋本聖子でございます。  私は、自由民主党・国民の声を代表して、安倍内閣総理大臣所信表明演説について、総理質問いたします。  初めに、七月豪雨、大阪北部地震、台風二十一号、二十四号、そして北海道胆振東部地震により亡くなられた方々の御冥福を心よりお祈り申し上げます。被災された方々、その御家族に心よりお見舞い申し上げます。また、全力で救援活動復旧復興活動に当たられた皆様にも感謝申し上げます。私どもも、政府・与党一体となって、被災地の復旧復興生活再建に、引き続き、全力を尽くしてまいります。  さて、本年九月二十日、六年ぶりに自由民主党の総裁選挙が行われました。安倍総理・総裁は、この総裁選挙への立候補を表明するに当たり、日本は大きな歴史の転換点を迎える、平成のその先の時代に向けた新たな国づくりを進めていく、その先頭に立つ決意だと強調されました。  私は、常日頃から、政治は次世代のためのもの、そういう観点を持って政治に向き合わなければならないと心掛けてまいりました。ですので、総理発言に、そのとおり、頻発する大規模災害、厳しさを増す安全保障環境、国難というべき人口減少や少子高齢化、深刻化する地球温暖化や海洋汚染、歴史的に見てもかつてないほどの大きな変化を乗り越えて、次世代に、すばらしい日本、すばらしい地球を引き継ぐには、今、この瞬間のことだけではなく、次世代のことを考えて取り組むべきだという思いを強くいたしました。  明治時代、新しい風を吹き込み、次世代のための新しい日本をつくり上げる基盤となったのは、福沢諭吉先生の言う多事争論でした。参議院自由民主党は、多事争論の気風があります。様々な意見を交わした上で、決めるときは決め、その上で一致団結して政策を進めてまいりました。  総理には、是非、日本の新しい時代を切り開いていく政策の推進に強力なリーダーシップを発揮していただきたい。と同時に、しっかりと意見を受け止めていただきたいと思っております。私どもも、総理と共に次世代のための新たな国づくりに向けて進んでまいります。本日は、このような視点で総理質問をさせていただきます。  去る九月六日午前三時七分、北海道胆振地方を震源としたマグニチュード六・七の巨大地震が発生いたしました。今回の北海道胆振東部地震では、今後、早急に対応すべき幾つかの課題が顕在化いたしました。  そのうちの一つが物流の停滞です。地震直後から通行止めなどにより貨物輸送がストップしました。日本の食料基地である北海道の物流が止まったことでスーパーの棚に欠品が出る状況も見られました。その中で、北海道と本州等を結ぶ物流が確保できたのは、港湾での大きな被害の発生を食い止めることができたからであります。物流の拠点となる港湾は災害時に救援物資を受け入れる重要な施設です。その施設の老朽化が懸念されており、災害時に物流を支える港湾施設などの社会資本整備をしっかりと進めるよう強く要望いたします。  更に取り上げたいのは、今回、国内で初めて発生した、電力会社の供給管内全域が停電するブラックアウトです。震源地から離れたところも含め二百九十五万戸の世帯が延べ四十五時間の停電に至りました。漁業や畜産では、保冷庫が動かないことにより水産物や生乳を廃棄せざるを得なくなり、乳牛の乳房炎感染という痛ましい状況にも苦しみました。このような中で、北海道のあるコンビニでは、事前に用意していた、電気や通信回線がなくても使える小型会計端末、ガス厨房器具などで地域住民の皆様生活を支えていました。まさに、危機管理は三百六十五日、日頃からの備えが大切だという言葉のとおりの災害対応と評価されると思います。  そこで、我が国で初めてと言われるブラックアウトを教訓に、将来の災害対応において、広範囲にわたる地域の住民の生活、病院での治療、診療、農林水産業、さらには治安や国防への影響を最小限に抑えるためには何が大切かを早急に検討し、対応すべきと考えます。総理のお考えをお聞かせください。  地震直後のテレビ映像で、最大震度七を記録した厚真町の山肌が至る所で土砂崩れにより茶色となっているのを見て、我が目を疑いました。五十年以上大切に育て上げてきたカラマツの緑は無残な姿になっていました。森林には、国土保全機能や地球温暖化抑制機能、木材資源の供給、人々の心と体への癒やしの効果など多様なメリットがあります。  一方、林業を維持するには、何世代もバトンリレーのように適正な森林管理を引き継がなければなりません。個人の力には限界があります。来年度から森林環境税、森林環境譲与税が創設されることとなっていますが、林業がもたらす国土保全機能等を考えれば、国土強靱化のための視点からも、適正な管理はもちろん、今回の地震のような災害からの復興等についても、国からの財政的支援を更に充実させていく必要があると考えております。  そこで、自然災害が多発する中、どのような方針で、次世代へと健全な森林資源を継承するとともに、災害にも耐え得る強い林業を育成していく政策を展開していくおつもりか、お伺いをいたします。  次に、外交・安全保障、特に日中、日ロ関係、そして北朝鮮について伺います。  本年十月、日中平和友好条約締結四十年を迎えました。この間、改革・開放路線が軌道に乗り、中国の名目国内総生産は世界第二位、二〇一七年時点で日本の約二・五倍となりました。一方、経済成長と並行して、東シナ海、南シナ海等への海洋進出を強め、我が国を含む周辺各国との間にあつれきが生じております。このような動きには強い危機感を抱かざるを得ませんし、到底看過できません。  中国の脅威が強まる中、先月、海上自衛隊が、南シナ海の公海で、潜水艦や護衛艦部隊による潜水艦戦を想定した演習を実施いたしました。この演習後、護衛艦部隊は東南アジア周辺海域で長期訓練を行い、潜水艦は南シナ海でベトナム・カムラン湾の国際港に寄港いたしました。ベトナム外務省担当は、寄港を歓迎し、日越関係がアジア太平洋地区の平和と繁栄のための戦略的協調関係に高まっていると評価をしております。  我が国への挑発行為に対しては、毅然とした態度で臨むことが重要です。中国の動きに懸念を持つ各国と連携していくことも不可欠であります。同時に、平和友好条約締結後四十年間で積み上げてきた財産を礎に、中国と友好関係を次世代へ深めていく必要があります。  先週、総理は、この四十周年の機会を捉え中国を訪れ、習近平国家主席や李克強首相と会談されました。そして、競争から協調へ、互いに脅威とならない協力のパートナーであるという原則を確認いたしました。同時に、東シナ海の問題についても、総理から日本側の問題意識を伝えた上で、現場の状況の改善を求めました。  そこで、訪中で示された方向性を踏まえ、中国の海洋進出によるあつれきの解消のために具体的にどのように臨むのか、その上で、外交、経済、文化などあらゆる分野でどのように日中関係を深めていくおつもりかという点についてお伺いいたします。  戦後外交の総決算、それは北朝鮮問題を解決し、ロシアとの間で北方領土問題を解決して平和条約を締結することです。  そこで、初めに北朝鮮問題について伺います。  北朝鮮情勢をめぐっては、核、ミサイルの廃棄が具体的に進んでいるわけではなく、日本を射程に収める数百発の弾道ミサイルは今も実戦配備されていると分析されております。北朝鮮の脅威のレベルは変わっておりません。  それにもかかわらず、十月上旬、韓国外相は、停滞する米朝核協議の打開に向け、米が北朝鮮に保有核戦力や核施設のリスト開示を求めるのを当面控える一方、北朝鮮が北西部、寧辺の核施設を国際査察の下で解体するのを受けて朝鮮戦争の終戦宣言を行うなどを取り決め、信頼醸成を進める提案をしたとの記事が米紙に掲載されました。これでは、北朝鮮がリストの提示を拒んだまま、一部施設の解体で逃げることを認めてしまうことになりかねません。終戦宣言に応じれば、在韓米軍の撤収を要求する口実に使うおそれもあります。  安易な融和策ではなく、本年六月の米朝首脳会談の朝鮮半島完全非核化の約束の下に北朝鮮の包囲網をしっかりと再構築することが朝鮮半島の非核化と地域の安定につながることを引き続き米韓に強く訴えていくべきです。次の世代、将来に不安定、不透明な状況を残すべきではありません。  同時に、拉致の解決なくして北朝鮮は未来を描けない、この一線を譲ることなく引き続き対応すべきことは当然であります。総理は、次は私自身が金正恩委員長と向き合わなければならないとおっしゃっておられます。全ての拉致被害者の帰国とともに朝鮮半島の非核化を実現すべく、どのような決意と方針で臨まれるおつもりでしょうか、お聞かせください。  もう一つ、戦後外交の総決算である北方領土問題の解決についてお尋ねをいたします。  一昨年十二月の日ロ首脳会談で協議入りが合意された共同経済活動については、この実施を通じて日ロ双方に相互理解が進むことで、領土問題を解決し平和条約を締結する大きな力になることを期待をしております。一方、領土問題については、平和条約締結との順番をしっかりと確認することが大切であります。  北方領土についても、幾つかの懸念があります。新鋭戦闘機スホイ35が試験配備され、次いで新型地対艦ミサイルも配備されました。今年十月には北方領土周辺で射撃訓練を行ったと見られております。演習通告を受け、我が国政府は、外交ルートを通じ、北方四島に関する我が国立場と相入れないなどと抗議を伝えましたが、このような動きは、両国民理解促進、環境整備に逆行しかねません。  本年九月、ウラジオストクで開催された会議では、プーチン大統領は、新しいアプローチとして、平和条約締結後に友人として意見の隔たりがある全ての問題を解決しようと発言をいたしました。このプーチン提案に総理は冷静に対応されておりました。引き続き、元島民の皆様や北方領土隣接地域皆様などの思いを踏まえながら、共同経済活動のそもそもの趣旨を守った上での進展により、北方領土問題の解決、そして平和条約締結へと進めていくべきであります。  そこで、ロシアの演習等の状況を踏まえつつ、共同経済活動を含め、どのように日ロ関係を進め、領土問題の解決を図り、平和条約を締結する道筋を描いておられるのでしょうか、お尋ねをいたします。  次に、我が国が待ったなしに取り組まなければいけない、国難ともいうべき人口減少、少子高齢社会の進展に関して伺います。  七十五歳以上の高齢者は、団塊の世代が七十五歳以上となる二〇二五年に向けて急速に増加し、その後も増加し続けます。他方、十五歳から六十四歳までの生産年齢人口は、二〇二五年以降、更に減少します。  総理は、全世代型の社会保障制度へと三年で改革を断行すると強調いたしました。二〇二五年までの残された僅かな期間に、社会情勢の変化に対応した制度、すなわち、現役世代だけではなく、女性や高齢者を始め、誰もが社会の構成員として活躍できる一億総活躍社会をしっかり実現していかなければなりません。  同時に、将来の社会の担い手である子供たちの健やかな成長を保障し、また、生涯を通じた生活上の困難、リスクを現役世代高齢者も共に国民全体で支えていくことで、全ての国民が安心して暮らせる社会実現を目指していくことも求められております。介護福祉士など現場を支えている皆様の処遇改善などにより、しっかりとした体制の整備を進めていくことも不可欠であります。  このように、年金や医療、介護、少子化対策など、密接に関連し合う広範かつ包括的な政策の下、あらゆる施策を総動員していくためには、財源もしっかりと示す、これが今だけではなく次世代のことも考えるべき政治家責務だと思います。  既に法律上、来年十月には消費税率引上げ規定されているところでありますが、人口減少等を克服し、次世代へと我が国の活力を引き継ぐには、全世代社会保障実現が不可欠であること、その実現のためには消費税率引上げにより負担をお願いせざるを得ないことについて、国民皆様が納得できるよう、いま一度具体的にお聞かせをください。  環境問題も、次の世代のために考えていかなければいけない重要な課題です。  近年、これまでとは異なるパターンの豪雨や豪雪、台風の襲来などが見られます。平成三十年七月豪雨の総雨量は過去の雨量と比べて極めて大きいものでした。本年七月の東日本の月平均気温は統計開始以来の記録となるほど猛暑となり、多くの熱中症患者が発生いたしました。地球温暖化により、平均気温は更に高くなり、より強力な台風の襲来も増えると予測する研究機関もあります。  子供たちに灼熱の地球を手渡すわけにはいきません。パリ協定の枠組みを受けて定められた目標達成のためにも、再生可能エネルギーの導入量を増やすなど、低排出なエネルギーミックスの推進と効率化を追求していくべきです。  さらに、もう一つ、深刻な地球規模の環境問題である海洋プラスチック問題についても指摘をしたいと思います。  近年、五ミリ未満のマイクロプラスチックによる海洋汚染が深刻化しています。北極や南極でも観測されたとの報告があり、全地球規模で広がっております。  残念ながら、重量ベースで見ると、二〇五〇年までに海洋中に存在するプラスチックの量が魚の量を超過するという予測もあります。  今から十年前、私は外務副大臣としてケニアを訪れたことがあります。その頃から、ケニアでは、家畜が誤ってビニール袋を食べるなどの深刻な環境問題が発生しており、いわゆるレジ袋への厳しい規制が議論されておりました。海外からの持込みにも厳しい目が光っていたほどであります。  四方を海に囲まれ、動物性たんぱく質の摂取を魚に依存している我が国では、マイクロプラスチックなどの海洋プラスチック問題に実効性のある対策を率先して進めるべきと思います。本年六月のG7シャルルボワ・サミットで、日本議長を務める二〇一九年のG20でも海洋プラスチック問題に取り組む意向である旨の総理発言がありました。国内での対策はもとより、ASEAN各国を含む途上国を巻き込んだ対策を国際社会に打ち出していくことも求められております。  そこで、来年のG20に向けて、産業界や国民皆様と共に、海の環境を守り、クリーンな海洋資源を次世代に引き継いでいくために、どのような決意でどのような施策を講ずるお考えでしょうか、お聞かせください。  二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて着々と準備が進められています。大会の成功はもちろん、この世紀のイベントを我が国の将来の成長、次世代への遺産につなげていく努力も大切です。その一つが、我が国の優れた食文化、地域の多様な食の魅力を発信するといった視点です。食事は参加選手たちの大きな楽しみであり、メディアも大いに注目をいたします。  昭和三十九年の東京大会では、海外の選手やマスコミは日本の食事について余り知られておりませんでした。しかし、実際は、我が国のバラエティーに富み、おいしい食事に驚いたといいます。和食がユネスコ無形文化遺産に登録されていることからも、今回の東京大会では、相当高い期待感を持って海外から大勢の皆様が訪れます。その期待を裏切ることは許されません。あわせて、我が国の食文化、質の高い食材を世界中にアピールできる絶好の機会として活用し尽くすべきです。  東京大会では、組織委員会が農産物の持続可能性に配慮した調達基準を策定し、食品安全、環境保全、労働安全の三つの要件を設定していますが、その中で、選手村に野菜などを提供する場合には、農業生産工程管理のGAPという認証を受けることとなっております。GAPの認証がもらえなければ、選手村で提供されず、チャンスを逃してしまいます。  選手村で必要となる食材は、GAP認証取得農場の年間出荷量を見れば、量的にはカバーできるでしょう。しかし、その上で、我が国の食の魅力を理解してもらい、大会後にすばらしさを世界に更に伝えてもらうには、将来を見据えて、大会のレガシーとしてGAP認証のメリットを広めていくべきです。  台湾のウエートリフティング選手の合宿が開かれる北海道士別市では、地元のJA北ひびきがGAP認証を取得して、認証取得したブロッコリーやアスパラガスなどを使った料理を選手に提供する取組を進めております。  そこで、GAP認証の普及も含めて、二〇二〇年の東京大会を日本の食材を海外に売り出す絶好の機会とするためにどのような戦略をお持ちでしょうか、お聞かせをいただきたいと思います。  アベノミクスが始まって五年半を超えました。総理は、五年十か月前に、真っ当な経済を取り戻すと訴えて政権を奪還いたしました。それ以降、円高や株安は修正され、多くの大企業が過去最高の収益を上げています。雇用環境も大きく改善し、雇用者の所得も伸びております。アベノミクスの初期目標は確実に実現されたと言っていいと思います。  ですが、それにもかかわらず、足下の成長は、特に地方で力強さに欠けているという声が聞こえます。個人消費もなかなか伸びません。大都市部への人口の集積と地方からの人口の流出も止まりません。近年、多様性は活力を生み出すと言われておりますが、多様な産業、歴史、自然、文化を持つ地方が衰退することは、我が国の活力も損なわれるということであります。  次の世代に、我が国の多様な文化、社会、産業などを形成する地方を引き継いでいくことも、私たち政治家の役割であります。近視眼的、単眼的な経済原理や政策ではなく、二十年、五十年、百年先を見据えて、次世代を担う人々、地方の将来を真剣に考える人々とも膝を突き合わせながら、我が国未来地方から考えることも重要です。人口が多い大都市部からの声が大きく響きがちであるだけに、人口比例だけではなく、地方の小さな声を丁寧に拾って政策に反映させていくべきです。  是非とも、アベノミクスの総決算に当たって、地方創生はどのような成果を上げてきたのか、その成果地方の実感として捉えられてきたのかという点などについて、政府を挙げて地方皆様からの声をつぶさに聞いていただきたい。そして、全国津々浦々の地方の人々がアベノミクスによる経済のぬくもりを肌で実感できるような地方再生を実現してほしいと思います。  そこで、アベノミクスの総決算として、次世代に活力ある地方を引き継いでいくために地方創生にどのように取り組んでいくつもりか、総理の決意とお考えを伺いたいと思います。  最後に、憲法改正に対して一言申し上げます。  日本憲法制定されて七十年が過ぎました。我が国を取り巻く安全保障環境経済社会状況、そして国民の意識などは大きく変わっております。憲法は、国民のものであり、国の形を示すものです。時代が変わり、国民の意識も変われば、議論を重ねて、今の時代に即した憲法の姿を国民の前に提示し、国民の判断を仰ぐことこそ民主主義であると信じております。  次世代にどのような形の憲法を残すべきか。次の世代責任を持つ政治家として、まずは国会憲法審査会を開催し、党派を超え、真に国民のために、憲法改正に向けた議論をするべきです。  このことを皆様に強く訴えて、私の代表質問とさせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇拍手
  7. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 橋本聖子議員にお答えをいたします。  将来の災害対応についてお尋ねがありました。  この夏、大阪北部地震西日本豪雨、台風二十一号、北海道胆振東部地震など、大規模災害が相次いで発生しました。私自身、被災現場を視察し、自然災害の猛威を改めて実感しました。災害から人命、財産を守るため、防災・減災、国土強靱化は喫緊の課題であると痛感しています。  中でも、北海道胆振東部地震においては、ブラックアウトが発生し、住民の生活経済活動に大きな影響を及ぼしました。私たち生活に欠かせないインフラが災害時にしっかりとその機能を維持できるよう、平時から万全の備えを行うことが重要であると考えています。  このため、現在、電力や交通インフラはもとより、災害時に拠点となる病院や警察、自衛隊の施設、さらには酪農や乳業といった施設などの総点検を実施しているところであり、十一月末を目途に取りまとめることとしております。  その点検結果を始め、これまでの災害を通じて培ってきた経験や教訓を踏まえ、国土強靱化基本計画を年内に見直すとともに、防災・減災、国土強靱化のための緊急対策を年内に取りまとめ、三年間集中で実施するなど、必要な予算確保した上で、強靱なふるさと、誰もが安心して暮らすことができるふるさとをつくり上げてまいります。  森林・林業についてお尋ねがありました。  我が国の森林は、戦後植林されたものが本格的な利用期を迎えていますが、十分に利用されず、また適切な森林管理も行われていないという課題に直面しています。  このため、森林バンクを創設し、意欲と能力のある経営者に森林を集約するとともに、経済ベースに乗らない森林については市町村が公的に管理することなどを通じ、間伐を始めとする森林管理をしっかりと加速させていきます。あわせて、山崩れや流木を防ぐ治山事業についても、今後三年間で集中的に推進していきます。  安倍内閣では、こうした林業改革により、切って、使って、植えるというサイクルを定着させることで、災害に強い森づくりを推進し、次世代へ豊かな森林を引き継いでまいります。  日中関係についてお尋ねがありました。  今回の訪中では、東シナ海、南シナ海等の海洋の問題について、私から日本側の強い懸念を改めて伝えました。  その上で、海洋安全保障分野において、五月に合意した防衛当局間の海空連絡メカニズムの初の年次会合の年内開催、防衛大臣、国防部長の相互訪問や艦艇の相互訪問を含む防衛当局間の交流、対話、海上法執行機関間の交流の推進、日中海上捜索救助協定への署名、資源開発に関する二〇〇八年合意の実施に向けた交渉の早期再開に向けた意思疎通の一層の強化等で一致しました。  日中間には隣国ゆえに様々な課題はありますが、大局的な観点から首脳同士が率直に語り合うことで、そうした課題もマネージしていくことが重要であります。五月の李克強総理の訪日、今回の私の訪中に続き、次は習近平主席を日本にお招きし、首脳同士の相互訪問を通じて、あらゆる分野の交流、協力を推し進め、日中関係の新しい時代を切り開いてまいります。  北朝鮮問題についてお尋ねがありました。  六月の歴史的な米朝首脳会談によって、北朝鮮をめぐる情勢は大きく動き出しています。この流れに更なる弾みを付け、日米日米韓の結束の下、国際社会と連携しながら朝鮮半島の完全な非核化を目指してまいります。  次は、私自身が金正恩委員長と向き合わなければなりません。最重要課題である拉致問題について、御家族も御高齢となる中、一日も早い解決に向け、あらゆるチャンスを逃さないとの決意で臨みます。  北朝鮮には、豊富な資源があり、勤勉な労働力があります。北朝鮮が正しい道を歩むのであれば、明るい未来を描くことができます。相互不信の殻を破り、北朝鮮の核、ミサイル、そして何よりも重要な拉致問題を解決するとの決意で、引き続き全力で取り組んでまいります。  日ロ関係についてお尋ねがありました。  御指摘の共同経済活動については、日ロが共に北方四島の未来像を描き、その中から双方が受入れ可能な解決策を見出していくという新しいアプローチであり、その実現に向けた取組を通じ、北方領土問題の解決、そして平和条約の締結にたどり着くことができると考えています。  北方四島におけるロシア軍による軍備の強化は、これら諸島に対する我が国立場と相入れず、政府としては、ロシア側に対して累次にわたり抗議を行ってきています。  こうした問題の根本的解決のためには、北方領土問題それ自体の解決が必要です。北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針の下、引き続き粘り強く交渉を進めてまいります。  全世代社会保障制度実現と、それに向けた消費税率引上げの必要性についてお尋ねがありました。  少子高齢化が急速に進む中、これまでの社会保障システムの改善にとどまることなく、システム自体の改革を進めていくことが不可欠です。  今こそ、少子高齢化という国難に正面から取り組まなければなりません。お年寄りも若者も安心できる全世代型の社会保障制度へと大きく転換し、同時に、財政健全化も確実に進めていきます。  このため、消費税率については、法律で定められたとおり、平成三十一年十月一日に、現行の八%から一〇%に二%引き上げる予定です。  この際、消費税率引上げ分の使い道を見直し、子供たち、子育て世代に大胆に投資します。二兆円規模予算により、来年十月から幼児教育を無償化するとともに、再来年四月から真に必要な子供たちへの高等教育を無償化いたします。  今後三年掛けて、子供から若者、子育て世代現役世代、そして高齢者まで、全ての世代が安心できる社会保障制度へと改革を進めてまいります。  海洋プラスチックごみについてお尋ねがありました。  海洋プラスチックごみによる汚染は、生態系などへの悪影響も懸念される地球規模の課題です。  その解決のためには、G7のような先進国のみならず、プラスチックごみを多く排出する途上国も含めた世界全体での取組が不可欠です。  我が国は、3Rの考え方に基づき、国内の法制度を整え、技術を磨き、循環型社会を築いてきました。今後、我が国として更なるプラスチックごみ対策に取り組むと同時に、我が国のこのような経験と技術を、アジアの近隣国を始め世界各国と共有し、世界全体の取組へとつなげていくことが重要です。来年のG20大阪サミットも見据えながら、廃棄物処理インフラの導入支援など、実効性ある国際協力を推進してまいります。  産業界や国民皆様の協力も得ながら、海洋プラスチックごみに関する国際的取組我が国が力強くリードし、豊かな海を次の世代へとしっかりと引き渡していく決意であります。  日本の食材の輸出についてお尋ねがありました。  二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックは、和食や我が国の高品質な食材を提供し、世界にアピールする大変良い機会であります。  このため、東京オリンピック・パラリンピックの関連イベントを始め、あらゆる機会を活用して我が国の食文化やすばらしい食材について発信を行い、その魅力を世界に積極的に伝えていきたいと考えています。  また、大会の選手村等で提供される食材に求められるGAPの認証取得については、二〇二〇年の東京大会までに現状の三倍以上に、さらに、大会後の二〇三〇年までにはほぼ全ての産地でGAPが実施されることを目指して、しっかりと推進してまいります。  農林水産物の輸出は五年連続で過去最高を更新し、昨年八千億円を超えました。東京オリンピック・パラリンピックを起爆剤として、更なる輸出拡大につなげていく決意であります。  地方創生への決意についてお尋ねがありました。  元気な地方なくしてアベノミクスの成功はありません。その思いの下に、景気回復の実感を全国津々浦々にお届けするため、安倍内閣は、地方創生の旗を高く掲げ、政策を総動員してまいりました。  その結果、農林水産物の輸出は五年連続で過去最高を更新し、生産農業所得は過去十八年間で最高となっています。そうした中で、四十歳代以下の若手新規就農者が初めて四年連続で二万人を超えました。  かつて、年間八百万人で頭打ちとなっていた外国人観光客は、五年連続で過去最高を更新し、昨年は三倍以上、二千八百万人が日本を訪れました。観光立国は地方の新しい活力となっています。  地方経済を支える中小企業の皆さんの倒産も、政権交代前から三割減少し、この四半世紀で最も少なくなりました。  このように、景気回復の温かい風が地方にも届く中で、史上初めて四十七全ての都道府県有効求人倍率が一倍を超えました。地方の法人関係税収も、政権交代前と比べ、ほとんどの都道府県で四割から五割増加し、地方税収は過去最高です。  この地方創生のうねりをもっと力強いものとするため、安倍内閣はこれからも全力を尽くしてまいります。  地方には、豊かな自然、特色あるふるさと名物、地場企業のオンリーワンの技術力、固有の歴史、文化、伝統など、それぞれの強み、魅力があります。その地方ならではの魅力を最大限に引き出すため、地方の皆さんの情熱、独自の創意工夫を全力で後押ししてまいります。  そして、地方にこそチャンスがある、若者たちがそう考え、飛び込んでいくことができる、自らの未来を託すことができる地方をつくり上げてまいります。  橋本議員を始め皆さんと共に、美しく伝統あるふるさとを必ずや守り抜き、次の世代へと引き渡していく決意であります。(拍手
  8. 伊達忠一

    議長伊達忠一君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 伊達忠一

    議長伊達忠一君) 御異議ないと認めます。      ─────・─────
  10. 伊達忠一

    議長伊達忠一君) この際、永年在職議員表彰の件についてお諮りいたします。  議員溝手顕正君及び柳本卓治君は、国会議員として在職すること二十五年に達せられました。  つきましては、院議をもって両君の永年の功労を表彰することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 伊達忠一

    議長伊達忠一君) 御異議ないと認めます。  両君に対する表彰文を朗読いたします。    〔溝手顕正君起立〕  議員溝手顕正君 君は国会議員としてその職にあること二十五年に及び常に憲政のために力を尽くされました  参議院は君の永年の功労に対しここに院議をもって表彰します    〔柳本卓治君起立〕  議員柳本卓治君 君は国会議員としてその職にあること二十五年に及び常に憲政のために力を尽くされました  参議院は君の永年の功労に対しここに院議をもって表彰します    〔拍手〕     ─────────────
  12. 伊達忠一

    議長伊達忠一君) 橋本聖子君から発言を求められました。発言を許します。橋本聖子君。    〔橋本聖子君登壇拍手
  13. 橋本聖子

    ○橋本聖子君 私は、皆様のお許しをいただき、本院議員一同を代表して、ただいま永年在職のゆえをもって表彰されました溝手顕正先生並びに柳本卓治先生に対しまして、一言お祝いの言葉を申し述べさせていただきます。  溝手先生は、平成五年の第十五回参議院議員通常選挙の補欠選挙において初当選をされて以来、連続して五回の当選を重ねられ、この度、国会議員として在職二十五年に達せられました。  この間、溝手先生は、国土・環境委員長、総務委員長議院運営委員長政府開発援助等に関する特別委員長予算委員長国家基本政策委員長等、枢要な役職を歴任され、現在も懲罰委員長の重責を果たされておられます。また、第二次橋本改造内閣の通商産業政務次官、第一次安倍内閣国家公安委員会委員長及び防災担当大臣として国政の中枢に参画され、その卓越した政治手腕を遺憾なく発揮されてこられました。  柳本先生は、平成二年の第三十九回衆議院議員総選挙において初当選をされて以来、六たびの当選を重ねられ、十九年八か月にわたり衆議院議員として御活躍をしてこられました。その後、平成二十五年の第二十三回参議院議員通常選挙において当選され、本院議員に転じ、この度、国会議員として在職二十五年に達せられました。  この間、柳本先生は、衆議院においては、法務委員長、北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員長等、枢要な役職を歴任され、本院においては、現在、憲法審査会会長の重責を果たされておられます。また、第二次橋本改造内閣の労働政務次官、小渕第二次改造内閣及び第一次森内閣の環境政務次官として国政の中枢に参画され、その卓越した政治手腕を遺憾なく発揮されてこられました。  このように、両先生は、高い見識と豊かな政治経験に基づき、我が国の議会政治発展のため多大な貢献をされました。  ここに、我々議員一同は、両先生の二十五年間の御功績に対しまして深甚なる敬意を表しますとともに、本日、栄えある表彰を受けられましたことに対し、心から祝意を表する次第でございます。  現在、我が国を取り巻く内外の諸情勢は誠に厳しく、克服すべき諸課題が山積する中にあって、国民の負託を受けた国会責務は重く、参議院が果たすべき役割に対する関心と期待は高まるばかりであります。  両先生におかれましては、どうか、今後とも御健康に留意され、国民のため、参議院のため、そして我が国の議会制民主主義の発展のため、なお一層の御尽力を賜りますよう切にお願いを申し上げまして、お祝いの言葉といたします。  誠におめでとうございました。(拍手
  14. 伊達忠一

    議長伊達忠一君) 溝手顕正君及び柳本卓治君から、それぞれ発言を求められました。順次発言を許します。溝手顕正君。    〔溝手顕正君登壇拍手
  15. 溝手顕正

    ○溝手顕正君 この度の各地での台風による豪雨災害や地震による災害でお亡くなりになられた方々に心より哀悼の意を表しますとともに、被災された皆様方に心よりお見舞いを申し上げたいと思います。また、災害復旧復興に御尽力をいただいている皆様方に感謝を申し上げます。  そのような中、誠に恐縮でございますが、お許しをいただき、一言お礼の挨拶を申し上げます。  ただいま、院議をもちまして在職二十五年の永年在職議員として栄えある表彰を敬愛する柳本卓治先生と共に賜りますことを大変光栄に存じ、心から御礼を申し上げます。  また、橋本聖子先生より丁重なる御祝辞をいただき、誠にありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  私が参議院議員に初当選いたしましたのは、平成五年十二月の参議院広島県選挙区の補欠選挙であります。当時は政権交代によるまさに激動の時代でありました。細川内閣が誕生しましたときであります。自由民主党は、結党以来、初めての野党となり、その自由民主党が最初に直面した国政選挙が私の選挙でありました。暗闇の中から最初の第一歩を踏み出せたこの一勝の価値をばねにこれまで邁進してまいりました。  私の座右の銘は、人間万事塞翁が馬であります。中国の格言で、人生の禍福は計り知れないという意味とされていますが、私自身としては、いろいろ問題はあっても、現実を厳しく受け止め、くよくよせず努力することが大切だというように解釈をしております。  政治の世界に入る前、造船会社社長の時代、円高と未曽有の造船不況に見舞われ、大変な労苦をいたしました。不況においても地域の安定や従業員の雇用を守るためにあらゆる手段を講じることが私に与えられた使命であり、会社経営を、より強力な営業力、資金力を有する企業に譲渡し、自らは裸一貫で新しい道を切り開くという、まさに苦渋の選択を行ったのであります。  そして、その後二年間は確たる目標を失い、なすこともなく日々を過ごしておりましたが、最終的には、今まで自分が育ち学んだ場所であり、子供たちが成長してきた郷土への思いが沸き立ちました。  歴史、地形、土地柄、その他要因により交通基盤を中心とした都市基盤が大きく遅れていると感じ、政治の流れを変える必要を強く思い、大変な激戦の中ではありましたが、四十五歳の時、幸運にも三原市の市長選挙に勝利することができ、地方政治への道に入りました。このとき最も力を入れたのは、計画を実行に移し執行していくための人材を育てること、地方自治を取り戻すということでありました。  その後、二期目半ばにして、冒頭申し上げました参議院広島選挙区補欠選挙に出馬し、地方の心、広島の心を国政に届け、安心、安全の国づくりを進めるとの志を持って参議院議員への道をつないだものであります。  参議院議員の経歴は御紹介いただきました。その都度、その責任の重さを感じながら、こびず、屈せず、飾らず、自分のスタイルで実直に努めてまいりました。  政治の世界に入ってからは、先輩、同僚、政策集団のお支え等、多くの御支援をいただいて、何とか二十五年を迎えることができ、今こうして表彰をいただくため壇上に立っておりますことに面映ゆい思いもありますが、いろいろな面で運が良かったと思っております。これまで応援していただいている郷里広島の皆様、後援会の皆様、そして家族にも感謝申し上げたいと思います。  今後も皆様の変わらぬ御指導、御鞭撻をお願い申し上げ、お礼の御挨拶とさせていただきます。  本日は誠にありがとうございました。(拍手
  16. 伊達忠一

    議長伊達忠一君) 柳本卓治君。    〔柳本卓治君登壇拍手
  17. 柳本卓治

    ○柳本卓治君 本日は、院議をもちまして在職二十五年の永年勤続表彰として、敬愛している溝手顕正先生と共に賜りました。身に余る光栄に、心よりの感謝を申し上げます。議長を始め、先輩、同僚議員の皆様、本当にありがとうございます。また、ただいまは、橋本聖子会長より御懇切なる御祝辞をいただき、誠にありがとうございます。  また、本日このような栄誉を賜ったのも、ひとえに今日まで私を御支援、御鞭撻をいただきましたふるさとの大阪西成区を始め、旧大阪一区、大阪三区の皆様、大阪市民、府民の皆様のおかげでございます。改めて、ここに心から深く感謝申し上げます。  私は、さきの大戦の終戦前年の昭和十九年十一月十一日、父、柳本松太郎、母、近子の八人兄弟の末っ子の五男坊として生まれました。  上の兄四人は天上界に帰っておりますが、今日はこの議場に、私の姉の長女、次女、三女と、三男の妻、そしてその息子で、兄亡き後、私が実子同然に薫陶してまいりました私の後継者であります柳本顕、さらに、私の最愛の妻、るり子も出席させていただいております。  私の永年勤続のこの議員生活は、こうした親や兄弟姉妹と親族、それと妻の献身的な支えがあったればこそでございまして、本当に感謝でいっぱいでございます。  私は、平成二年の衆議院議員初当選以来、衆議院議員六期十九年八か月、参議院議員一期五年四か月を務めさせていただきました。  衆議院にありましては、平成九年には労働政務次官、平成十一年には環境総括政務次官、平成十五年には衆議院法務委員長平成二十年には衆議院拉致問題特別委員長を歴任いたしました。  特に、法務委員長としては、裁判員制度導入の司法制度改革審議におきまして、憲政史に残るでありましょう審議時間を経て成立させたことは思い出の深いものでございました。  私の国政活動を貫く原点は、実は二つあります。  一つは、私の両親と私が生まれ育った通天閣を見上げる西成区山王町なんです。  大阪市会議員でありました父は、子供の私によく、通天閣のようなどでかい男になれ、通天閣は大阪のシンボルであり、大阪は東洋のマンチェスターだと、よくそういうことを言っておりました。私は、何のことか分からなかった。  父は、毎日のように自転車に乗りまして、西成区の隅々まで回っておりましたことをよく記憶いたしております。  母は、そういう父を助けまして、八人の子だくさんを立派に育ててくれました。そのおかげで、私があるわけです。  私を育ててくれた町、西成区山王町というのは、御存じのない方がたくさんおられるでしょうが、庶民的な人情の温かい町で、釜ケ崎の労働者の方々が仕事を終えて、コップ酒で焼酎をうまそうに飲みながら、今日も一日仕事ができた、そういう話をしているのを見て、子供心に人間の幸せというのはこういうところにあるんだなということを感じたものでございました。  もう一つの私の原点は、私の政治の恩師の中曽根康弘先生との出会いでございます。  今から、古くなりますが、約五十五年前、昭和四十年、私が早稲田大学の三年生のとき、雄弁会の幹事長を務め、その夏、大隈講堂で河野一郎先生の追悼演説会を開催いたしました。  このとき、河野派を継承いたしました中曽根先生のお言葉が、その颯爽とした雄姿とともに、今も私の脳裏に焼き付いています。  恩師中曽根は、我々学生に向かってこう言いました。早稲田出身の政治家は、なべて悲劇の政治家だ、それはなぜか、それはそれだけ大衆と密接していた政治をしていたからにほかならないんだと、こう喝破されたのであります。  その言葉から私は、政治というのは大衆のためにある、喜び、悲しみを分かち合える感激のある政治こそが大切なのだと。それ以来、中曽根先生を敬愛し、父亡き後、先生の門をたたき、当時、佐藤内閣の末期でございましたが、秘書として先生の下で現実の政治を学び、昭和五十年、ふるさと西成に帰り、大阪市会議員となり、三期を務め、その後、衆議院議員に挑戦をいたしたのであります。  私の政治の恩師である中曽根は、本年満百歳、百寿を迎えられ、今なお御健康で日本の指針を示すべく御活躍をされています。私は、約半世紀、中曽根先生のおそばで、その国家観、歴史観に触れ、御指導いただくことを無上の喜びとしてまいりました。以来、私の政治経歴は、全て中曽根カレンダーの中で活動してまいったのであります。  中曽根カレンダーの中には、たくさんのメニューが豊富ですが、その一つは、恩師中曽根が提唱し設立したAPPF、アジア太平洋議員フォーラムであります。私は、国会議員をお辞めになりました後も、中曽根名誉会長のメッセージを預かりまして、事務局長として毎年出席してまいりました。また、中曽根先生設立の日韓協力委員会の副理事長も務め、毎年訪韓しております。  さらに、中曽根カレンダーの最も最たるものは、新憲法制定運動のことであります。  私は、中曽根会長の下、超党派の新憲法制定議員同盟の事務局長を務めております。同時に、参議院執行部の皆様の御配慮で、参議院憲法審査会の会長を連続五期務めるという、憲法をライフワークとしている私にとりまして、無上の天職をいただいております。審査会にありましては、各党の皆さんの御意見を十二分に拝聴し、必ずや未来の子孫にも喜ばれる実りある論議を重ねてまいる決意でございます。  恩師中曽根は、常々、政治家は歴史という名の法廷の被告席に座ると述べ、政治とは文化に奉仕するためにあるとも語っています。こうして自分を厳しく律し、高い理想を掲げて憲法問題にも取り組んでまいる所存でございます。  中曽根恩師は、また、目標なき民族は滅びるとも語り、国政の一番の基軸にあるものは憲法であり、憲法問題とは、日本とは何かと問うことであると、かように指摘しております。  今年は明治百五十年、昭和も終わり、平成の御代も最後の年を迎えております。こういう大きな歴史の節目に、時代が大転換しつつあります。世界情勢も、民族、宗教の問題、覇権主義の台頭など、新たな火種もあります。  このようなとき、政治に携わる私たちは、他人の不幸せの上に自分の幸せを築かない、他国の不幸せの上に日本国の幸せを築いてはならない、他国の幸せが日本国の幸せなんだという信念を新たにしていかなければならないとの思いを強くしているのであります。  この不滅の信念と情熱を持って、明年七月の任期いっぱいまで、この愛する国と国民に私の全身全霊をささげる決意であることを、ここに皆様にお誓いを申し上げる次第でございます。  私が古希を迎えた四年前、恩師中曽根から古希の祝いに色紙をいただきました。それには、「老驥伏櫪 志在千里 烈士暮年 壮心不已」と墨跡鮮やかに書かれておりました。  それには、三国志の魏の曹操の漢詩の一節でございますが、釈迦に説法でありますが、一日に千里を駆けるという駿馬は、老いて厩舎につながれていても、その志は日々千里を駆けている。天下に志を持つ者も、晩年になって年老いても、若々しいチャレンジ精神はやむということはないんだという意味なのであります。  この恩師の激励の下、私もまたこの老驥の精神で与えられた天職を全うしてまいる所存でございます。  結びに当たりますが、私を健康に産み育ててくれた父と母、兄弟姉妹と親族、そして私の政治活動を共に歩んでくれた地元西成を始め浪華の後援会同志の皆様、そして活動をサポートしてくれた秘書の皆さん、そして一番身近で支えてくれた妻、るり子に最大限の感謝をささげまして、私の在職二十五年のお礼の御挨拶といたします。  本日は、皆様、誠にありがとうございます。(拍手
  18. 伊達忠一

    議長伊達忠一君) 本日はこれにて散会いたします。    午前十一時四十二分散会