○稲田朋美君 自由
民主党の稲田朋美です。
私は、
自民党を代表して、安倍
内閣総理大臣の
所信表明演説に対し質問いたします。(
拍手)
我が党は、立党以来、
国民政党として、
国民一人一人に真正面に向き合い、頑張った人が報われ、頑張ろうとして努力しても困難な人を皆が支える
社会、人が人として尊重され、失敗しても、いつからでも、どこからでも、何回でもやり直せる
社会を目指してきました。これは、前回の代表質問で二階幹事長が
指摘された、国に命を吹き込む
政治という
言葉に象徴されており、私
たち自民党が目指すべき
政治の姿であります。
安倍総理は、再チャレンジ、そして一億総活躍
社会の
実現を掲げ、保守の理念を政策
分野においても実行されてきました。
我が党が下野した際、党の再生をかけた真摯な議論を行い、常に進歩を目指す保守政党として新綱領を策定しました。立党以来守り続けてきた自由と民主の旗のもとに、伝統の上に創造を、秩序の中に進歩を求め、
日本らしい保守主義を取り戻すべく再出発することを
国民の
皆様にお誓いしたのです。
ことしは明治維新百五十年、明治の精神ともいうべき五カ条の御誓文は、松平春嶽、横井小楠、由利公正などによる改革の集大成ですが、広く
会議を興し、万機公論に決すべし、更に歴史をさかのぼれば、聖徳太子の和をもってたっとしとなすという多数な意見の尊重と徹底した議論による決定という
民主主義の基本は、
我が国古来の伝統であり、敗戦後に連合国から教えられたものではありません。
この
臨時国会の場では、
野党の
皆様との議論はもちろんのこと、与党も、ただすべきはただし、決したことは
責任を持って断固として行動するという精神を持って、
国民の
皆様の負託に応えてまいります。
ことしに入ってから、三十七年ぶりの福井豪雪、
大阪北部地震、
平成三十年七月
豪雨、台風二十一号、
北海道胆振東部地震、台風二十四号など、全国各地で数多くの激甚
災害に見舞われ、三百名を超えるとうとい命を失い、莫大な
経済的、
社会的、文化的損失をこうむりました。
これらの
災害により亡くなられた
方々に心からの哀悼の意を表しますとともに、
被害に遭われた
方々に心からお見舞いを申し上げます。
東北や熊本もいまだ
復興の途上にあり、それぞれの
被災地の
生活や
経済が一日も早く再建されるよう、
政治の使命として
復旧復興に全力を尽くすことをお誓いいたします。
地球温暖化の進展により、短時間にかつてない
豪雨や異常気象が多発し、首都直下型
地震や南海トラフ
地震などが発生する可能性も高まっています。
このような大
規模自然災害に対して、
自民党は、ハード、ソフトの両面において、
我が国を強くしなやかにするため、
政府とともに、国土強靱化に取り組んでまいりました。例えば北陸新幹線は、本年の豪雪において道路、鉄道が麻痺している中も運行し、リダンダンシーの有用性を証明しました。
内政の基本は、
国民にとって安全、安心な
社会をつくることであり、大
災害から国土を守り抜き、
国民の生命と
生活を守ることなしに
日本の未来はありません。
緊急の
復旧対応等に万全を期すとともに、国土強靱化を加速するため、必要な
予算確保を含めて、
総理はどのように取組を進めるのか、伺います。
次に、外交、
安全保障について伺います。
去る十月二十三日、
政府主催の明治百五十年記念式典が開催されました。明治以降の百五十年は、欧米から学び、欧米と戦い、欧米と協力して自由世界を築いてきた百五十年であったと思います。
自民党は、今後百五十年の
日本にも
責任を持ち、真の保守政党として、
我が国及び世界の平和と繁栄に尽力する
決意です。
世界はますます複雑な情勢に直面しており、法の支配、人権の尊重、
民主主義等を基本的
価値とする国際秩序に対する挑戦はふえています。力による現状変更を排し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を広げていくことが必要であり、そのための戦略的な外交と
安全保障政策の策定が求められています。
安倍内閣は着実に外交の
成果を上げ、国際
会議の場では
安倍総理と話そうとする各国首脳が列をつくる
状況も見られ、この六年間で世界における
日本のプレゼンスは格段に向上しました。
総理の掲げる秩序による平和と繁栄の理念は、確実に世界に広がっているのです。
こうした中で、あえて
懸念を
指摘するとすれば、同盟国
米国の動向です。
トランプ大統領は、これまでの
米国大統領とは異なるアメリカ・ファーストという世界観を有し、従前の
米国外交の延長線上では予測困難な言動も見られます。
総理はこれまでのところ、世界の指導者の中で、
トランプ大統領との個人的
信頼関係の構築に最も成功しておられますが、今後、トランプ政権との間でどのように同盟強化を図られるのか、
米国が朝鮮半島を含む東アジアでのプレゼンスを弱める
懸念はないでしょうか。また、
日米物品貿易協定、
TAGを
FTAとどのように差別化するのか、
総理のお考えを伺います。
日中関係についてお尋ねします。
日本と中国とは、
地域の平和と安定と繁栄に大きな
責任を有する特別な二国間関係です。ことしは日中平和友好
条約四十周年の節目の年。大局的な
観点から友好関係を安定的に発展させる必要があります。
一方で、みずからの軍事力、
経済力を背景に
国際社会の秩序を変えようとするかのような中国の行動に対し、多くの国々が
懸念しています。
そんな中で、
自民党は、日中関係の
改善に最善を尽くしてきました。
例えば昨年五月、一帯一路国際協力ハイレベルフォーラムが開かれましたが、
政府からは閣僚が一人も参加できない中、我が党の二階幹事長が出席されました。その際、習近平主席は、外国首脳以外では極めて例外的に個別会見を行い、
日本重視の
姿勢を強く示しました。さらに、中国共産党と与党間交流は、二〇〇六年に第一回会合を開催して以来、着実に回数を重ね、今月、
北海道と東京で通算八回目を開催することができました。
政府と連携しながらも、党独自の外交が大きな契機となり、さらには、
政府と党を挙げての外交努力が現在の日中関係の
改善の流れにつながっています。
今回の
総理の訪中は約七年ぶりの公式訪問であり、北朝鮮問題についての緊密な連携の確認、インフラを含めた第三国協力、青少年交流イニシアチブの打ち上げなどの
成果が上がったと聞いております。
訪中の具体的
成果について、そして、習近平国家主席の訪日を含め、今後の日中関係にどのような戦略で臨んでいくのか、
総理のお考えを伺います。
朝鮮半島の問題は、北東アジア全体の
安全保障の問題でもあります。史上初の
米朝首脳
会談が開催されましたが、北朝鮮の核廃棄の見通しは立たず、
日本海を隔てたすぐそこに、
我が国を射程に入れた数百発もの弾道ミサイルをいつでもどこでも発射できる
状況が存在することに何ら変わりはありません。
北朝鮮の核、ミサイル、そして
我が国の主権侵害であり最重要課題である拉致問題の解決に向けて、
日本としても主体的に
対応していく必要があります。
韓国に目を転じると、先般の韓国海軍の国際観艦式で、海上自衛隊の護衛艦が自衛艦旗を掲げないように求められるという
事態が起きました。この自衛艦旗の掲揚は
我が国の法令上の義務であること等から、遺憾ながら国際観艦式への参加を見送りました。しかし、結果として、軍艦旗を持つ他国の艦船は全て軍艦旗を掲げていました。しかも、あろうことか、主催国の韓国海軍の艦船には、秀吉朝鮮出兵時の李舜臣将軍を象徴する旗が掲げられていたのです。
さらに、あす、韓国の大法院は徴用工の問題で判決を下します。日韓両国の基本的関係を規定した
条約に反する内容になることが強く
懸念されますが、これは国際法の正義にもとるものです。
また、去る二十二日には、
我が国固有の領土であり、韓国が不法占拠を続ける竹島に韓国
国会議員十三名が上陸しました。
これら韓国の
対応は、先月、日韓首脳
会談において、日韓パートナーシップ宣言二十周年を契機に、改めて日韓関係を未来志向で発展させていくことを確認した
姿勢と明確に矛盾するものであり、強く抗議しなければなりません。
こうした朝鮮半島の動きにどのように取り組んでいくのか、
総理の
見解を伺います。
ロシアは、
日本にとって戦略的に重要な隣国です。
安倍総理は、プーチン
大統領との個人的な
信頼関係に基づいて、日ロ関係を力強く牽引してこられました。
我が党の党外交としても、ことし四月、ロシアを訪問し、党として、メドベージェフ首相らに対し、両国の交流促進の
必要性を訴えました。そして、先日、
自民党観光立国
調査会の訪ロが
実現しました。
日ロ関係のさらなる発展のためには、議員交流を含む日ロ間の人的交流の促進が重要です。
一方で、ロシアからは、領土問題を先送りして、年内に平和
条約を締結しようではないかという声も聞こえています。
北方領土四島の帰属の問題を解決して平和
条約を締結する、これが
日本の基本的立場であると考えますが、プーチン
大統領との交渉に臨まれる
総理の
決意を伺います。
次に、
安全保障についてお伺いいたします。
年末までに防衛計画の大綱を見直し、防衛力を抜本的に強化すると
安倍総理は明言されました。
まず
認識すべきは、
我が国を取り巻く
安全保障環境が急速に厳しさを増していることです。世界の超大国である
米国と、それを追う中国を始めとする新興国のパワーバランスの
変化が加速しています。それに拍車をかけているのが、サイバー、宇宙などの新たな領域の活用と人工知能などの最先端技術です。そして、これらを使用することで、防衛の質も大きく変わってきています。
党の綱領では、「
日本の主権は自らの努力により護る。」と明記されていますが、今こそ、自分の国は自分で守る気概を持つべきです。
なぜ今、防衛力を抜本的に強化する必要があるのか、防衛計画の大綱見直しに向けての
総理の
決意を伺います。
次に、岩屋防衛大臣に、大綱の見直しに当たり重視すべき次の二点について伺います。
第一に、
我が国の平和と安全を守るため、平素から、外交と防衛が一体となって、
日本にとって望ましい安定した
安全保障環境をつくり出すことが重要になっているのではないかという点についての
見解を伺います。
第二に、防衛費拡充の
前提は、防衛省内における自助努力として、組織、装備品の最適化、研究開発、防衛調達の合理化を最大限まで追求することと考えますが、大臣の
見解を伺います。
さて、
日本が、IWC、国際捕鯨
委員会の商業捕鯨モラトリアムを受け入れ、商業捕鯨を停止してから三十年が
たちました。この間、
政府は商業捕鯨モラトリアム解除に向け交渉してきましたが、残念ながら、本年九月のブラジルでの総会で、IWCは、科学的
根拠に基づいた
日本の
提案を、具体的
根拠を示すことなく拒否しました。
商業捕鯨の再開に向けた取組について、
総理の
決意を聞かせてください。
近年、海洋プラスチックごみによる生物や生態系、漁業や観光への
影響が世界じゅうで
懸念されています。
安倍総理は、来年六月大阪で行われるG20でこの問題を取り上げることを表明されました。
自民党は、党の
会議で使用する年間二万二千本のプラスチックストローを廃止しましたが、今後、他党や
政府、
企業等に
意識の
転換を促し、循環型
社会に向けた動きを加速させなければなりません。
海洋プラスチックごみに関する国際的な議論をどのようにリードするのか、
総理のお考えを伺います。
次に、アベノミクス重要課題であります地方創生について伺います。
地方創生に重点を置いて、アベノミクスを進めることで
日本全体の
経済を再生させなければなりません。私は、地方創生を成功させ、飛躍させるキーワードは、組む、すなわちコラボレーションであると考えます。
私の地元の例ですが、ある
企業では、伝統的な繊維
産業の高度な技術を最先端の炭素繊維材料づくりに応用し、世界初の航空機エンジンの炭素繊維製部品の開発に成功しました。
また、曹洞宗大本山永平寺は、福井県、永平寺町、
企業と組み、昔の参道の修復や再開発、民間の知恵と発想を生かした宿坊をつくることなどで、インバウンド誘引の強力なコンテンツとなっています。
さまざまな主体が新たな
分野に臆せず挑戦することで化学
変化が生じ、課題の解決に結びついたり、思いも寄らないイノベーションが生まれたりするのです。中央によるばらまきのような上から目線ではなく、現場のニーズに根差した意欲あるチャレンジを
政府がしっかりと応援していくことが重要です。
真の地方創生に向けた
総理のお考えを伺います。
農業は国の基です。稲作は
日本文化の原点であり、水田は
日本の美の象徴であり、お米は
日本人の主食です。農業を守ることが
日本を守ることであります。
しかしながら、農業従事者の減少や
高齢化を始め、今日の農業は多くの課題に直面しています。農業政策は、かつて、基盤
整備予算を大幅に削減し、戸別補償によるばらまきを行い、真の改革が停滞しました。
政権交代後、
自民党は、必要な基盤を着実に
整備するとともに、さまざまな改革を進めてきました。その結果、若い新規就農者が増加するなど、改革の
成果が実を結びつつあります。
諸外国で
日本の食は高く評価されており、大きなチャンスが広がっています。人工知能やドローンを始め、他
分野での革新的な技術を農業
分野に応用する動きが広がっており、さまざまなイノベーションが起きる環境も整ってきています。
さらに、
安倍総理の指揮のもと、米政策の見直しに向けた取組が進められてきました。各地において主体的に作付を
判断し、取り組んだ結果、米価はこの四年で一俵当たり四千円近く評価を上げるなど、
成果もあらわれています。
今後とも、これまでの
施策の定着を図り、改革を進めていく中で、農業者の
所得の確保に努めていくことが重要です。
また、
我が国の食料自給率は先進国で最低ですが、世界的な異常気象の頻発や人口増加により、食料確保が更に難しくなるおそれがあります。食料確保は
安全保障でもあります。
食料確保の
観点も踏まえつつ、農業を成長
産業にするための政策、いかにして
日本の農業を守り、発展させるのか、
総理の
見解を伺います。
政府は、新たな
外国人在留資格制度を設けるため、入管法の改正等を準備していますが、これはなし崩し的な移民政策につながるのではないかとの
指摘もあります。
一定の
専門性、技能を有する
外国人の
受入れを拡充することは、地方創生の足かせになりかねない
人手不足の
解消に寄与すると期待する地方及び業界団体の要望もある一方で、例えば、治安、雇用、
社会保障等への
影響など、
懸念もあります。
これらの不安、
懸念をどのように払拭されるのか、
総理のお考えを伺います。
我が国の財政や
社会保障の将来を考えたとき、
社会保障において、これまで支えられる側だった
高齢者の増加はもとより、支え手である現役世代の減少は大きな問題です。
高齢者の増加は、いずれ二〇五〇年ごろには頭打ちを迎えると言われていますが、支え手である現役世代の減少は、このままでは歯どめがかかりません。世界に冠たる
我が国の
社会保障制度を維持し、全世代型
社会保障制度に発展させていくには、元気で活躍できる
高齢者に支え手の側に回ってもらうといった視点での改革が不可欠と考えます。
総理は、全ての世代が安心できる
社会保障制度に向けて、三年かけて大改革を行いたいとおっしゃられています。その具体的な
方向性についてのお考えを伺います。
現行
憲法は、占領下に制定されました。法治国家の基本法たる
憲法が、主権が制限されていた時代につくられたことは、厳然たる事実です。一方で、現行
憲法のもとで、戦後の平和で豊かな
日本が築かれてきました。
我が党は、
憲法の自主的改正を党是とする改憲政党です。
総理は、
自民党総裁として、
憲法改正を歴史的チャレンジと位置づけ、
憲法九条改正の
方向性も示されました。
憲法九条については、二項を維持することによって、集団的自衛権はフルサイズでは認めないが、自衛隊を明記することによって自衛隊違憲論に終止符を打つということだと理解しています。
私も防衛大臣時代に南スーダンを視察しましたが、気温五十度を超える灼熱の地で黙々と道路や施設を補修する自衛隊員の姿は、現地の人々から、世界から称賛されていました。自衛隊の、現地の
方々に寄り添った、誠実で丁寧で親切な活動は、まさに
日本らしいものとして誇りに感じます。
災害において、みずからの危険を顧みず救助、
復興作業に当たっているのも自衛隊の
皆さんです。
自衛隊を誰からも
憲法違反などとは言わせない、そのためにも
憲法改正は急務だと思いますが、
総理の御所見を伺います。
冒頭申し上げました
自民党の新綱領では、他への尊重と寛容をうたっております。これは保守政党の基本であり、寛容で多様性のある
社会をつくらなければなりません。私
たちは、党内外で議論を徹底して行い、多様な意見の存在を尊重しつつ、
国民のために最善の選択を行い、実行していく責務を有しています。
この選択と実行のため、果断な決定が必要です。
民主主義の原理に立ち、徹底した議論を経て、最後は多数決で決める。しかし、多数決は、少数であったり、声を上げたくても上げられない人々の意見を十分にすくい上げることが難しいという側面もあります。であるからこそ、私
たち政治家一人一人がさまざまな
国民の
皆様の声を聞き、
政治に生かしていかなければなりません。
昨今、女性、障害者、LGBTなど、
社会的にマイノリティーとされる
方々に対する
国民の
関心が高まっており、
社会の多様性の確保が重要な課題となっています。
また、これらは何よりも人権にかかわる問題であり、世界から尊敬される道義大国を目指すため、そして希望にあふれた
社会をつくるため、与
野党の垣根なく、
政治家として取り組むべき最も基本的な課題です。
安倍総理が、今日の世界の首脳の中で、また
日本の憲政史上においてもトップクラスのリーダーシップを発揮されていることは、紛れもない事実です。他方、世界に目を転じれば、白か黒かという二分法的な考え方が目立ち、各国の
社会にさまざまな分断を生じさせていることを私は大変憂慮しています。
我が国は、寛容な保守の思想を
国民が広く共有してきた、歴史ある
民主主義国家です。
我が国における多様性の尊重はますます重要となってきています。
安倍総理におかれては、新時代にふさわしい新たな保守の国家像を世界に示すべく、国づくりの先頭に立っていただきたいと考えますが、最後に
総理の
決意のほどを伺い、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣安倍晋三君
登壇〕