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2018-01-26 第196回国会 参議院 本会議 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三十年一月二十六日(金曜日)    午前十時一分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第三号   平成三十年一月二十六日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第三日)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  議事日程のとおり      ─────・─────
  2. 伊達忠一

    ○議長(伊達忠一君) これより会議を開きます。  日程第一 国務大臣演説に関する件(第三日)  昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。山口那津男君。    〔山口那津男登壇拍手
  3. 山口那津男

    山口那津男君 公明党山口那津男です。  私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました施政方針演説等政府演説に対し、安倍総理並びに関係大臣に質問します。  少子高齢人口減少社会の波が押し寄せる我が国は、重大な岐路にあります。この大きな変革に、自民、公明の連立政権は果敢に挑戦を続けます。そして、一人一人が輝き、将来にわたって夢と希望が持ち続けられる社会を構築していく決意です。  人が輝き活躍できる社会、それは、高齢者若者も、障害難病を持つ方も、全ての一人一人の持つ可能性能力最大限に発揮できる社会でなければなりません。安倍内閣が進める一億総活躍社会実現、働き方改革人づくり革命生産性革命の目的もそこにあります。  全世代型の社会保障を構築し、持続可能な社会保障制度次世代に確実に引き継ぎます。そして、誰もが生きがいを持って生活ができる、地域が支え合う共生社会を目指します。  安倍内閣発足から五年。公明党は、連立与党にあって、これからも、生命、生活、生存を最大限に尊重する人間主義理念をあらゆる政策の立案、遂行の根幹に据えて、政治を前に進めます。  以下、具体的に質問します。  経済が大きく好循環し始めました。今年は、デフレからの脱却の大きなチャンスです。広く景気回復の実感が得られるよう、更なる賃上げを継続、加速させるなど、あらゆる政策を総動員していかなければなりません。  その重要な課題の一つが働き方改革です。働く人の心身にわたる健康を確保し、日々の生活をより豊かにする、働く人の視点から長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方を実現していくことは急務課題です。罰則付きの時間外労働上限規制の導入、勤務間インターバル制度普及促進などを含む法律案早期成立を求めます。  リカレント教育は、時代の要請であり、一億総活躍社会実現、特に働く意欲のある女性高齢者活躍の観点からも極めて重要です。また、AI、いわゆる人工知能など技術革新スピードの速さにも対応し、時代に即し、一人一人のライフスタイル、年齢に関係なく学び続けられる社会の構築が急がれます。  学び直しは、単に仕事に直結するスキルを身に付けるだけではありません。生きがいや新たな気付き自己発見の場でもあります。こうした視点も踏まえ、継続的に学べる環境を整えるべきと考えます。  働き方改革について、総理答弁を求めます。  昨年末、人づくり革命に向け、新しい経済政策パッケージが策定されました。その中には、私が昨年十一月の本会議で申し上げた様々な理由でスタートラインにすら立てない方に対して温かな手を差し伸べるとの方向性も明確に記されました。本格的な少子高齢化人口減少社会への挑戦の大きな一歩が踏み出せたものと確信します。  政策パッケージには、幼児教育無償化私立高校授業料実質無償化など、公明党の主張が多く盛り込まれています。引き続き、ゼロ歳児から二歳児までの保育の更なる支援などについても着実に検討すべきです。総理答弁を求めます。  日本物づくり社会を支えるのが中小企業です。その中には、世界最高水準技術力を持ち、その企業でしか作れないオンリーワンの製品や世界的シェアを保持する企業も多くあります。まさに、日本経済の屋台骨です。  昨年十一月の本会議で、私は、優れた技術や技能を守り、次世代に継承していく攻めの取組として、事業承継問題について質問しました。  結果、株式の相続税贈与税について、雇用要件見直し対象株式上限撤廃などを図るとともに、今後十年間、承継時の納税を全額猶予し、承継時と売却、廃業時の納税額の差額を免除するなど、事業承継税制抜本拡充が決まりました。  と同時に、ものづくり補助金継続事業承継を後押しする補助金設備投資に係る固定資産税減免措置など、支援策が大きく整備されました。高く評価したいと思います。  今後、事業者視点に立ったきめ細かな対応ができるよう、何でも相談できるよろず支援拠点後継者のマッチングを支援する事業引継ぎ支援センター、そして地域関係機関との事業承継ネットワーク機能強化など、体制整備を急ぐべきです。  また、せっかくの支援策が使われなければ意味がありません。必要とする事業者が確実に支援策を受けられるよう、情報提供周知徹底をしっかりと図っていただきたい。  中小企業支援策強化について、総理答弁を求めます。  人が輝く基盤である地域力強化地方創生が極めて重要です。  二〇一七年、訪日外国人観光者数は二千八百六十九万人となりました。世界に誇れる観光立国へ、更なる飛躍を目指し、様々な施策を総動員しながら、二〇二〇年の四千万人達成へ弾みを付ける一年としていくべきです。  観光潜在需要はまだまだ高い。今はアジア各国からの訪日中心ですが、欧米など幅広い国からの旅行客を増やす施策にも力を入れるべきです。また、休み方改革と連動した国内観光活性化も求められます。  観光の質も大切です。最近は、地方における伝統、文化、自然に触れる体験型、交流型の観光に関心が高まっています。魅力的な観光資源、文化財は全国各地にたくさんあります。観光地域づくりかじ取り役を担う日本版DMO国立公園満喫プロジェクトなど、地方誘客取組と連動させながら、地方の魅力が輝く戦略的な取組強化すべきです。  訪日外国人の急拡大航空会社間の激しい競争、空港二十四時間化などで航空業務は大幅に増大しています。その中でも、特に、空港内の旅客の輸送、手荷物、貨物の積卸しなど、発着を裏方で支える業務の方の労働環境は、下請的な立場でもあり、大変厳しいとの声を伺いました。  観光戦略は国策です。政府として、現場実態を踏まえた適切な対応を求めます。  何度でも訪れたい日本へ。観光立国への取組について、石井国土交通大臣答弁を求めます。  地方創生について伺います。  地方創生取組から三年。依然、地方から東京圏への人の流れは止まっていません。特に若者は、地元で働きたいが希望する職種が地元にはない、企業が少ないなどを理由都市部で就職しているのが実情です。  政府は、地方大学の振興を基軸とする地方活性化に向けた法案提出を予定しています。地方大学、自治体、そして地方拠点とする事業者が連携し、雇用の確保と、そこで活躍できる人材を育て送り出す仕組みが機能するよう、交付金を含めた国の支援が重要と考えます。  地方創生に向けた総理答弁を求めます。  高齢者が住み慣れた地域自分らしく暮らし続けられるよう、医療介護サービスに加えて、地域で見守りや支え合いなどの活動充実が不可欠です。  神奈川県秦野市では、住民ボランティアが運営するデイサービス事業住民主体送迎支援サービスを組み合わせた総合事業が進んでいます。住民ボランティアは七十代の方が中心、八十代も少なくありません。支える側も高齢者中心で、自身生きがいとして活動されています。  一方、車による送迎が欠かせませんが、送迎支援サービスの担い手となったのがNPO法人です。送迎スタッフ利用者を送り届ける車中で健康状態なども確認しながら、心身の変化に応じて地域包括支援センター住民ボランティアなどとも情報を共有し、住民同士の支え合いによる独自のデイサービスを展開しています。  地域の多様な主体が支える側に回ることで、高齢者サービスを利用しながら地域とのつながりを維持する。二〇二五年に向けて、地域の状況やニーズを踏まえつつ、その地域の特性に応じた地域包括ケアシステムの深化、推進を急ぐべきです。  地域で支え合う共生社会について、総理答弁を伺います。  生活困窮者自立支援制度は、生活保護に至っていない生活困窮者に対して包括的な支援を行う第二のセーフティーネットとして創設されました。一億総活躍社会実現への重要な施策です。施行から二年、新規相談者が約四十五万人、うち約六万人の方が就労、増収に結び付いています。  しかし、課題も見えてきました。例えば、就労準備家計支援などの事業が任意の事業であるため、地域間でばらつきが出てしまっています。  生活困窮者社会からの孤立を防ぎ、また、生活上の課題解決による自立社会参加に向けて、自立相談就労準備家計相談に係る支援が一体的に行えるようにするなど、実情を踏まえた支援体制見直し強化を強く求めます。さらに、貧困の連鎖を断ち切るため、子供学習支援のほか、生活習慣環境などの向上にもつながるような支援強化すべきです。  生活困窮者自立支援強化について、総理見解を伺います。  昨年十月、座間市で九名の若者が殺害される凄惨な事件が起こりました。SNS自殺願望を投稿した被害者の心に付け込む極めて卑劣な手口に、怒りを通り越し、言葉を失いました。  死にたいという亡くなった人たち叫びは、生きたいとの裏返しであり、助けを求めるSOSであったと思えてなりません。特に、青少年の行き場のない悩み、心の叫びをきちんと酌み取ってあげられる体制を一刻も早く実現させなければなりません。  昨年、長野県では、LINEを活用したいじめ自殺相談を試験的に実施しました。既存の電話相談が年間二百五十九件であったのに対し、僅か二週間で千五百七十九人の中高生からアクセスがあり、五百四十七件に対応できたそうであります。  注目すべきは、交友関係や恋愛、学業など、身近な相談が多かったことです。これは中高生たちが気軽に相談できたことを示しており、悩みが深刻化する前の早期解消につなげることが大いに期待されます。  サイバーパトロールの強化と併せて、こうしたSNS等を活用した相談事業を始め、悩みを抱える人が相談しやすい環境全国各地に迅速に整備することを強く求めます。  また、SOSの出し方に関する教育を始め、社会全体で子供たちの心の不調に気付き、ケアする体制整備急務です。  自殺対策について、総理答弁を求めます。  今年は、東日本大震災から七年、熊本地震から二年を迎えます。  公明党は、被災者被災地に寄り添いつつ、人間の復興へ総力を挙げるとともに、日本全体での人の命を守る防災減災対策を不断に進めていきます。  東日本大震災からの復興については、引き続き、被災地被災者実情に沿ったきめ細やかな切れ目のない支援が大切です。特に、心の復興事業医療福祉介護など、身近な生活社会保障分野への支援充実を求めます。  あと三年で復興創生期間は終了します。その後、復興はどうなるのか。特に、原発事故被害地域方々の不安な気持ちを払拭するためにも、その先を見据えた復興取組と将来の方向性をできるだけ早くお示しすべきではないでしょうか。  復興に向けた総理決意をお聞かせください。  福島再生の夢と希望プロジェクト福島イノベーション・コースト構想です。この構想は、廃炉研究ロボット、水素、浮体式洋上風力などのエネルギー、さらには農業イノベーションなど、日本未来を開くための新しい産業創出への挑戦です。福島の方のみならず、広く国民の方にも知っていただきながら、着実に実現させていくべきです。  中でも、ロボット産業一大研究開発拠点である福島ロボットテストフィールド内の各施設が順次開所を迎えます。二〇二〇年には、世界ロボットサミット競技の一部が開催される予定となっています。これらを契機としながら、今後の地元企業の参入も含めた企業の呼び込みや雇用創出住民帰還につなげられるよう、国としても全力で後押しをしていただきたい。  一方、福島では、農林水産物の販売不振や観光業への悪影響、また避難児童へのいじめの問題など、原発事故による風評被害偏見差別がいまだ根強いものがあります。特に、福島産の農産物は、世界で最も厳しいレベル安全検査を行い、基準値を超える放射性物質は一切出ていないにもかかわらず、消費者以上に流通業者の間で風評が根強いとの指摘もあります。  また、国民の方に対する福島安全検査実態、放射線に関する正確な情報の周知が不足していることも課題です。  政府は、新たに風評払拭リスクコミュニケーション強化戦略を取りまとめました。大事なことは実行力です。福島方々生活の中で、また農林水産業観光業その他あらゆる産業、なりわいの中で、目に見えての効果が如実に表れてくるよう、強力な風評被害対策取組を求めます。  以上、福島再生風評被害対策について、総理決意を伺います。  地震、豪雨、水害、土砂災害火山災害災害の多い我が国において、国民の命と生活を守ることが政治の最優先課題です。  まずは、補正予算案、来年度当初予算案には災害復旧防災減災対策予算が組み込まれており、早期成立と執行を強く求めます。その上で、さらに、世界一安全な国を目指し、ソフトハードにわたる防災減災対策を強力に推進し、災害に強い国づくりを加速化すべきです。  インフラ老朽化対策推進とともに、インフラの損傷が軽微なうちに計画的に修繕を行うインフラメンテナンス産業育成、発展させることも重要です。さらに、ICT活用研究開発強化推進も求められます。  防災減災対策強化について、総理答弁を求めます。  誰もが訪れやすく、安心して快適に暮らすことができる、そして、誰もが持てる個性能力を発揮できる、そうしたユニバーサル社会実現が今こそ求められています。それはそのまま地域社会活性化にもつながっていくはずです。  公明党は、高齢者障害者を始め、誰もが暮らしやすい町づくりに向け、段差の解消や鉄道駅のホームドア内方線付き点状ブロック等整備促進など、バリアフリー法の制定当時からその取組を強力に推進してきました。  昨年、政府は、障害当事者の意見や要望を十分に踏まえたユニバーサルデザイン二〇二〇行動計画を策定しました。計画は、ユニバーサルデザイン町づくりとともに、障害者への差別偏見をなくす心のバリアフリーが大きな二本柱になっています。この計画を踏まえたバリアフリー法の改正を急ぐとともに、関連施策見直し、実施に当たっては、引き続き、障害者とその家族、関係者など、現場の声、要望に適応したきめ細やかな配慮や工夫が求められます。  東京オリンピックパラリンピックは、世界に誇れるユニバーサル社会実現の大きなチャンスです。開催都市ともしっかり連携しながら、スピード感を持って推進するよう強く求めます。総理決意を伺います。  先日お会いした障害者スポーツ関係者はこう話されました。障害個性です。健常者障害者も差異なく、誰もが普通にスポーツに親しめる社会をつくりたい。私は、胸が熱くなりました。地域で誰もがスポーツを楽しめる共生社会をつくり上げていきたいと決意を新たにしました。  しかし、障害者スポーツには健常者スポーツに比べ多くの課題があることも現実です。自分の住む地域で気軽にスポーツができるよう、施設等環境整備指導者競技を支える方の育成、心のバリアを取り払う教育充実など、総合的な取組が求められます。  障害があってもスポーツに取り組むことで、自らの可能性チャレンジし、仲間との交流コミュニケーションを深め、その結果、人生がより充実したものになる。スポーツの力は絶大です。二〇二〇年、東京パラリンピック大会に向けて、ソフトハード、そしてヒューマンの様々な面から支援策強化していくべきと考えます。  障害者スポーツ推進について、総理答弁を求めます。  また、二〇二〇年に向けては、過去の開催国が大切に引き継いできたたばこのないオリンピックパラリンピックという伝統を継承するため、世界に恥じない実効性の高い受動喫煙対策を進めるための法案を早期に提出し、成立を図るべきと考えます。総理決意を伺います。  次に、外交政策について質問します。  昨年は、北朝鮮による六度目の核実験弾道ミサイルの発射が相次ぐ中、十二月には新たな国連安保理決議全会一致で採択されました。前例にないレベルにまで一層高めた制裁措置であり、改めて、北朝鮮が核・ミサイル開発を続ける限り圧力を高め続けるとの国際社会の意思を反映したものです。国際社会が一致結束し、全ての国連加盟国が、引き続き制裁の実効性を高めながら、北朝鮮核開発を諦めさせ、対話による解決へと導くことが極めて重要です。  対北朝鮮政策について、総理見解を求めます。  核兵器禁止条約は、国際的に核兵器を禁止する規範が確立されたという点から画期的な意義があると考えます。一方、現実には、北朝鮮の核問題がある中で、核保有国と非保有国が共に協力、連携して当面の課題解決しなければなりません。  我が国は唯一の戦争被爆国です。核軍縮核兵器のない世界実現への責任と権利を有します。だからこそ、積極的に核保有、非保有各国間の橋渡し役として主導的な役割を果たし、そして核軍縮の結果を出していくべきではないでしょうか。  我が国の主導により、昨年十一月には、広島で第一回賢人会議が開催され、春のNPT運用検討会議に向けて提言を取りまとめることが決定しました。核兵器のない世界実現へ、各国協力と協調の下、現実的かつ実践的な道筋を示す取りまとめがなされるよう強く期待したいと思います。総理決意を求めます。  日本と中国は、昨年の国交正常化四十五周年に続き、本年は平和友好条約締結四十周年を迎え、関係改善への機運が高まっています。  昨年、公明党訪中団を派遣し、様々な要人との会談を重ねました。私自身総理の親書を習近平国家主席に手渡し、与党の一員として、日中韓首脳会談首脳往来に結び付くよう直接働きかける役割を果たすことができました。  戦略的互恵関係の下、懸案を適切に処理し、様々な分野での交流協力関係拡充強化しながら、未来に向かって新たな日中関係の在り方を模索すべきです。  一方、ロシアとの関係では、今年は相互に日本年ロシア年です。幅広い分野での相互交流、理解が深まることを強く期待したい。  昨年、私はロシアを訪問しました。その際、要人方々から、共同経済活動などを通じた平和条約締結交渉への強い期待が示されたところです。  北朝鮮問題での連携はもちろん、北方四島における共同経済活動、元島民の自由往来、幅広い分野での二国間協力の実行などを進めながら、引き続き、双方が受入れ可能な解決策を見出し、着実に歩みを進めていくことが重要であると考えます。  日中及び日ロ関係について、総理見解を求めます。  地球温暖化対策に関し、温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを目指すパリ協定の下、日本、イタリアを除くG7各国大幅削減に向けた長期戦略を策定し、明確な方向性を打ち出しています。我が国も、この潮流に乗り遅れることなく、長期戦略を早急に策定し、世界をリードする役割を果たすべきです。  また、海洋ごみは、地球上で増え続け、生態系観光、漁業への影響等が懸念されています。美しい海、地球を守るため、地球規模対策が喫緊の課題です。中でも、五ミリメートル以下のマイクロプラスチック回収も困難で、人体への影響も懸念されています。まずは、主要排出源の国や国際社会と連携し、実態把握を急ぐとともに、プラスチックなど海洋ごみ回収発生抑制対策を講じるべきです。  地球規模課題への取組について、総理答弁を求めます。  最後に一言申し上げます。  SDGs、二〇三〇年に向けた持続可能な開発目標への取組が大きなうねりになろうとしています。私は、この理念を、日本はもちろん、世界に広く浸透させることに全力を挙げていきたいと決意しています。なぜならば、誰一人取り残さないとのSDGs理念は、まさに公明党理念とも合致するからであります。  ごみを拾う、捨てない、人を気遣う、思いやる、そうした小さな日常の行動の積み重ねが、SDGs理念を一人一人の心の中に、そして地球全体へと広げていきます。それが平和な社会実現に通じるものと確信するものであります。  こうしたグローバルな視点と併せ、ローカル、いわゆる地域視点も重要です。人が住み、働き、そして日々生活する地域にこそ、様々な政策課題とその解決に向けたヒントがあります。  公明党結党以来、粘り強く訴え続けてきた福祉拡大への挑戦は、まさに地方議会から始まりました。それが今や、政治のど真ん中に福祉が位置付けられました。  公明党は、これからも国と地方ネットワークを生かしながら、地域現場に根差し、国民のための政治を貫くことをお約束し、私の代表質問を終わります。(拍手)    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇拍手
  4. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 山口那津男議員にお答えいたします。  働き方改革についてお尋ねがありました。  安倍政権は、高齢者若者も、女性男性も、障害難病のある方も、誰もが活躍できる一億総活躍社会実現に取り組んでおり、その最大のチャレンジが働き方改革です。  高度成長時代猛烈社員のように、長時間働いたことを自慢するような社会は、根本から改めなければなりません。今回、史上初めて、労働界経済界の合意の下に、三六協定でも超えてはならない、罰則付きの時間外労働の限度を設けます。加えて、勤務間インターバル制度についても、その普及に努めます。  長時間労働を是正すれば、ワーク・ライフ・バランスが改善し、女性高齢者仕事に就きやすくなり、男性子育てを行う環境整備されます。  長年議論だけが繰り返されてきた同一労働同一賃金。いよいよ実現のときが来ました。雇用形態による不合理な待遇差を禁止し、非正規という言葉をこの国から一掃してまいります。  子育て介護など、様々な事情を抱える皆さんが意欲を持って働くことができ、誰もがその能力を発揮できる柔軟な労働制度へと抜本的に改革します。戦後の労働基準法制定以来、七十年ぶりの大改革であります。  また、御指摘いただいたように、幾つになっても、誰にでも、学び直しと新たなチャレンジの機会を確保することが重要です。御党からいただいた提言も踏まえ、雇用保険制度も活用し、長期教育訓練休暇制度普及など、学び直しができる環境整備を本年夏に向けて検討し、リカレント教育の抜本的な拡充を図ってまいります。  新しい経済政策パッケージについてお尋ねがありました。  昨年十一月の本会議では、山口委員から待機児童解消放課後子ども総合プランの前倒し、幼児教育無償化推進大学奨学金拡充、学び直しができる環境整備などについて御指摘をいただきました。加えて、同月には公明党から御提言もいただき、こうした内容を踏まえて、昨年十二月に新しい経済政策パッケージを閣議決定いたしました。  この新しい経済政策パッケージに基づき、子育て安心プランを前倒しし、保育受皿整備を進めるとともに、保育士介護職員について更なる処遇改善を進めます。また、真に必要な子供たちに対する大学専門学校等高等教育無償化実現します。さらに、私立高校授業料実質無償化については、二〇二〇年度までに現行の加算額を大きく引き上げることで実質的な無償化実現します。  幼児教育無償化については、三歳から五歳までの全ての子供たちの幼稚園、保育園、認定こども園の費用を無償化するとともに、ゼロ歳から二歳児についても、待機児童解消取組と併せて住民税非課税世帯対象として無償化を進めることとしました。ゼロ歳から二歳までの更なる支援について、パッケージにおいて、少子化対策及び乳幼児期の育成の観点から、安定財源の確保と併せて検討することとされております。  こうした人づくり革命を断行することによって、女性男性も、お年寄りも若者も、障害難病のある方も、一度失敗を経験した方も、誰もが生きがいを持って、一人一人がその能力を存分に生かせる一億総活躍社会を、公明党の皆様と力を合わせ、つくり上げてまいります。  中小企業支援策強化についてお尋ねがありました。  中小・小規模事業者の皆さんこそがまさに日本経済の屋台骨であり、地方経済の中核であります。その生産性向上や事業承継に向けた支援は極めて重要と考えます。  そのため、今般、事業承継税制を抜本的に拡充し、承継時の贈与税相続税の支払負担をゼロにするとともに、自治体の判断により固定資産税をゼロにする新しい制度を設けるなど、これまでにない大胆な対策を講じることといたしました。  その上で最も大切なことは、山口代表も御指摘のとおり、一つでも多くの中小・小規模事業者の皆さんにこうした施策周知徹底し、そして最大限に利用していただくことであります。  政府としては、事業者の皆さんに寄り添って親身に対応できるよう、御指摘のよろず支援拠点事業引継ぎ支援センターなどの体制強化し、金融機関や税理士、商工会、商工会議所といった支援機関のネットワークも活用しながら、確実に施策が浸透するようしっかりと取り組んでまいります。  地方創生に向けた地方大学の振興のための国の支援についてお尋ねがありました。  近年、東京圏への転入超過数は十万人を超える規模で推移しており、山口代表御指摘のとおり、そのほとんどが若者です。若者の減少率が東京圏よりも地方においてより深刻となる中で、地方から東京圏への転出入の均衡は喫緊の課題であります。  こうした観点から、先端科学、観光、農業といった地域の特性を生かした分野世界レベルの研究を行い、日本全国から学生が集まるような、きらりと光る地方大学づくりを進めます。新たな交付金を創設し、そうした地方大学を核として、地場の企業の知恵を生かしながら、産学連携により地方経済活性化にもつなげてまいります。  さらに、地方拠点強化税制による魅力ある仕事づくりや地方創生推進交付金による起業、創業への支援地方企業でのインターンシップ推進などにより、地方への若者の流れを生み出してまいります。  学びにおいても働く場としても、地方にこそチャンスがあると若者たちが感じられるような地方創生をこれからも力強く進めてまいります。  地域で支え合う共生社会についてお尋ねがありました。  人口減少、地域社会の脆弱化等の変化の中で、人々が様々な課題を抱えながらも住み慣れた地域で暮らしていくためには、高齢者方々も含めた地域住民の方々がそれぞれ役割を持ち、支え合う地域共生社会の構築が重要と考えています。  御紹介いただいた神奈川県秦野市の事例のように、こうした地域共生社会の考え方を踏まえた、時として高齢者の方も支える側に回りつつ地域住民同士で支え合う取組は、どこに住んでいても適切な医療介護を安心して受けられる地域包括ケアシステムの機能を強化することにもつながるものであります。  そうした優良事例等の全国への横展開を図ること等により、それぞれの地域の特性に応じて地域の皆さんが支え合う地域共生社会実現を目指してまいります。  生活困窮者自立支援強化についてお尋ねがありました。  生活に困窮される方々については、その自立就労や家計など多様な面から支援していくことや、貧困の連鎖の防止を図っていくことが必要であります。  このため、自立相談就労準備家計相談に係る支援を一体的に実施する自治体への支援強化を行ってまいります。  また、子供学習支援については、生活習慣環境の向上に資する取組機能強化、高校中退者等高校生世代や小学生に対する支援強化を図ることとします。  これらの取組を行うために、生活困窮者自立支援法の改正法案を今国会に提出するなど、生活困窮者自立支援強化を図ってまいります。  若者自殺対策についてお尋ねがありました。  神奈川県座間市における事件は、犯罪史に残る極めて残忍で凶悪な事件でした。改めて、お亡くなりになられた九名の方々の御冥福を心からお祈り申し上げ、御遺族にはお悔やみを申し上げます。  政府としては、御党の御議論も踏まえ、昨年七月に策定した新たな自殺総合対策大綱により、誰にどうやって助けを求めるのか、つらいときには助けを求めてもよいことを学ぶSOSの出し方に関する教育推進を含め、子供若者自殺対策に重点を置いた取組推進することとしております。  また、昨年十二月に取りまとめた座間市における事件の再発防止においても、御指摘いただいた長野県の取組も参考に、若者が日常的に利用するSNSを活用した相談対応強化等を推進することとしたところです。我が国の将来を担う若者の命を支える対策政府を挙げて取り組んでまいります。  東日本大震災からの復興についてお尋ねがありました。  東北の復興なくして日本の再生なし。あの大震災、困難の日々を胸に刻みながら、被災地の皆さんと力を合わせ、新しい東北の未来を切り開いてまいります。  東日本大震災からの復興に向け、復興創生期間に必要なことは全てやり遂げるという強い決意の下、現場主義を徹底しながら、切れ目のない被災者支援、住まいと町の更なる復興産業、なりわいの再生を進めてまいります。特に、コミュニティー形成支援や見守り体制強化など、心の復興に力を入れるとともに、医療介護サービスの提供体制整備のため、医療機関の再開支援介護福祉の担い手確保対策などに引き続き取り組んでまいります。  復興創生期間平成三十二年度末まででありますが、特に福島の原子力災害被災地域の復興再生には中長期対応が必要であるのは事実であり、国が前面に立って取り組む必要があります。このような観点から、復興施策の進捗状況等も踏まえながら、それ以降の復興の進め方を検討してまいります。  福島再生風評被害対策についてお尋ねがありました。  福島イノベーション・コースト構想は、福島復興の切り札であります。この構想の具体化に向けて政府一丸となって取り組んでおり、この夏までにいよいよロボットテストフィールドが一部開所いたします。引き続き、ロボットなど最先端技術研究開発拠点整備産業集積、人材育成などを進めてまいります。  また、風評の払拭や偏見差別解消は、福島復興再生の大前提であります。これまでも、私自身、首脳会談などの機会に農産品の輸入規制の緩和、撤廃を積極的に働きかけ、既に二十六か国で規制の撤廃を実現しています。また、在外公館における観光誘致やPR、海外プレスの福島への招聘などに取り組み、外国人宿泊者数も増加しています。  さらに、先月、風評払拭リスクコミュニケーション強化戦略を策定いたしました。今後、これを政府の総力を挙げて強力に実行に移してまいります。  私も毎週官邸で福島産のお米を食べておりますが、二十七年度米以降、三年連続して基準値の超過はありません。こうした安全や魅力に関する情報を流通事業者消費者に対して幅広く発信してまいります。また、全国の小中高等学校などにおいて放射線に関する科学的な知識を分かりやすく伝えるなど、正確な情報発信を一層強化してまいります。  福島復興なくして日本の再生なし。この強い決意の下、これからも国が前面に立って公明党の皆様とともに福島の再生に全力で取り組んでまいります。  防災減災対策強化についてお尋ねがありました。  今週も全国各地で大雪となり、また、群馬県の本白根山が噴火しましたが、昨年発生した九州北部豪雨や一連の台風による豪雨災害を始めとして、近年多数の災害が発生しており、防災減災対策我が国にとって重要な課題であります。  このため、防災リスクに関する知識と心構えを社会全体で共有し、あらゆる自然災害に備える防災意識社会を構築するため、ハード対策ソフト対策を組み合わせた対策を総動員していく必要があると考えております。  特に、昨年、九州北部豪雨等により中小河川において水害が頻発したことを受け、今後おおむね三年で治山治水対策を緊急的かつ集中的に推進することとしており、これらに必要な経費を平成二十九年度補正予算及び平成三十年度予算に計上しているところです。  また、インフラ老朽化対策については、引き続き、計画的な維持管理、更新に取り組むとともに、インフラメンテナンス国民会議の場を通じて、新技術の開発、社会実装を後押しするなど、メンテナンス産業育成活性化に取り組んでまいります。  多様な災害が頻発する我が国において、国民の生命と財産を守るため、今後とも、最新の科学的知見を常に取り入れながら防災減災対策全力で取り組んでまいります。  ユニバーサル社会実現についてお尋ねがありました。  パラリンピックは、障害の有無にかかわらず、誰もが生き生きとした人生を享受することができる共生社会実現のための絶好の機会であります。  その実現のため、昨年、障害者団体にも参画いただき、政府としてのユニバーサルデザイン二〇二〇行動計画を決定いたしました。  今後、本行動計画に基づき、学校教育企業等の国民全体に向けた心のバリアフリー普及や、交通施設バリアフリー基準の見直し等のユニバーサルデザイン町づくりに取り組むこととしております。  さらに、公共交通事業者地域におけるバリアフリー取組推進するため、バリアフリー法の改正案の準備を進めているところです。今後とも、障害のある人の視点施策に反映させつつ、政府一丸となって東京大会のレガシーとなる共生社会実現に取り組んでまいります。  障害者スポーツ推進についてお尋ねがありました。  障害者スポーツ推進は、障害を持つ方に対する理解を深め、共生社会実現する上でも極めて重要な課題だと考えております。  このため、これまでも、障害者スポーツについて、身近で気軽に楽しめる環境づくり、全国障害者スポーツ大会の開催、指導者等の育成など、その推進を図るとともに、オリンピックパラリンピックの一体的な競技強化に取り組んでいるところであります。  二〇二〇年に開催されるオリンピック東京大会は、様々な障害障害者スポーツに対する理解と関心を一層深める大きなチャンスであります。我が国が、バリアのない、世界で最も生き生きと生活できる国と実感できるよう、しっかりと取り組んでいきます。  受動喫煙対策についてお尋ねがありました。  二〇二〇年の東京オリンピックパラリンピックを目指し、受動喫煙対策を徹底することが重要です。このため、必要な法案を今国会に提出すべく、現在、与党及び関係省庁において調整を進めています。  大切なことは、望まない受動喫煙をなくしていくことです。受動喫煙に関する普及啓発や事業者への支援措置なども含め、皆さんがしっかりと取り組んでいただけるような実効性のある総合的な対策を進めてまいります。  対北朝鮮政策についてお尋ねがありました。  平昌五輪の成功に向けて、最近、南北間で対話が行われていることは評価しますが、その間も北朝鮮は核・ミサイル開発継続しています。北朝鮮が非核化の約束をほごにしてこれまで核・ミサイル開発を進めてきた経緯を踏まえれば、北朝鮮とは対話のための対話では意味がありません。  北朝鮮に、完全、検証可能かつ不可逆的な方法で核・ミサイル計画を放棄させるため、安保理決議の完全な履行を始め、あらゆる方法で圧力を最大限に高めてまいります。  諸般の事情が許せば平昌五輪の開会式に出席をし、その機会に文在寅大統領と会談を行って、北朝鮮政策を変更させ、核・ミサイル計画を放棄させるため、あらゆる方法で圧力を最大限まで高めていくとの方針からぶれてはならないことを直接訴え、日米韓の緊密な協力を改めて確認したいと考えています。  核兵器のない世界実現に向けた決意についてお尋ねがありました。  我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界実現に向けた国際社会取組を主導していく使命を有しています。  同時に、北朝鮮の核・弾道ミサイル計画の進展が我が国の平和と安定に対するこれまでにない重大かつ差し迫った脅威となっています。政府には、何よりも国民の命と平和な暮らしを守り抜く責任があります。そのためには、日米同盟の下で、通常兵器に加えて核兵器による米国の抑止力を維持していくことが必要不可欠であります。  政府としては、現実の安全保障上の脅威に的確に対処しながら、唯一の戦争被爆国として、米国を含む核兵器国と非核兵器国双方に働きかけ、双方の橋渡し役として主導的役割を果たすことにより、現実的な観点から核なき世界実現するための努力を重ねてまいります。  御指摘賢人会議については、核兵器国及び非核兵器国の有識者、非核兵器国については中道国のみならず条約推進国からも参加を得ています。そして、被爆者の方々の思いも踏まえて議論が行われることが極めて重要との思いから、被爆地広島、長崎からも委員の参加を得ることができました。こうした方々の活発な議論を通じて、有意義な提案が得られることを大いに期待しています。  日中関係及び日ロ関係についてお尋ねがありました。  山口代表には、連立与党のパートナーとして、昨年十二月に訪中された際にも私の親書を再び習近平主席にお渡しいただくなど、これまでの与党交流を通じて日中関係の発展に尽力いただいており、改めて感謝申し上げたいと思います。  日中平和友好条約締結四十周年である本年を、日中関係が大きく改善したと両国の国民が認識できるような一年にしたいと考えています。そのためにも、早期に日中韓サミットを開催して李克強首相を日本にお迎えし、その後、私が適切な時期に訪中し、その後には習近平主席に訪日していただきたい。このようなハイレベルの往来を重ねる中で、日中関係を新たな段階へと押し上げていきたいと考えております。  ロシアとは、日本年ロシア年での相互交流や、北朝鮮問題に関する連携を始め、幅広い分野日ロ関係を国益に資するような形で発展させてまいります。  共同経済活動プロジェクト早期実施や、元島民の方々のより自由な往来に向けて、引き続きロシア側との協議を進めていきます。  北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針の下、粘り強く交渉を進めてまいります。  地球規模課題への取組についてお尋ねがありました。  地球温暖化対策については、日本の強みである環境技術を生かして、国内での大幅な排出削減を目指すとともに、世界全体の排出削減に最大限貢献し、我が国の更なる経済成長につなげていきます。  このため、長期戦略を二〇二〇年の期限に十分先立って策定、提出すべく、しっかりと検討を進めます。  マイクロプラスチックを含む海洋ごみについては、その削減に向け、海洋における実態把握や漂着ごみ回収処理、リサイクルなどによるプラスチックごみの抑制など、総合的に取り組みます。今後も、G7、G20諸国とも連携しつつ、取組強化してまいります。  美しい地球を次の世代に引き渡していくのは、今を生きる私たちの責任です。我が国は、こうした地球規模課題に強いリーダーシップを発揮し、国際社会と手を携えて立ち向かってまいります。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣石井啓一君登壇拍手
  5. 石井啓一

    国務大臣(石井啓一君) 山口那津男議員にお答えをいたします。  観光立国への取組についてお尋ねがございました。  昨年の訪日外国人旅行者数は一九%増の二千八百六十九万人、消費額は一八%増の四兆四千百六十一億円と過去最高となりました。安倍政権発足後、五年間で旅行者数は約三・五倍、消費額は約四倍に拡大をしております。  他方、二〇二〇年、訪日外国人旅行者数四千万人、消費額八兆円等の目標の達成に向けては、更に高次元な観光施策を展開していく必要があります。  このため、明日の日本を支える観光ビジョンに基づきまして、長期滞在の傾向のある欧米豪など、幅広い市場からの誘客に一層取り組むとともに、観光を支える経営人材の育成や宿泊業の生産性向上を図り、観光産業我が国の基幹産業へ変革をしていく。国立公園や文化財等の観光活用の推進日本版DMOの形成促進等を進め、我が国ならではの魅力的な体験等を提供し、地方への誘客と滞在時の満足度向上を図る。さらに、ストレスなく快適に観光できるよう、通信、交通、決済などの受入れ環境整備するとともに、関係省庁と連携したキッズウイークの推進等により、国内観光の振興を図るといった施策政府一丸、官民一体となって実行していかなければならないと考えております。  今般創設予定の国際観光旅客税につきましては、高次元の観光施策に充てるべく、今通常国会において国際観光振興法の改正法案を提出するなど、国土交通省としてもしっかりと対応してまいります。  また、航空の地上取扱い、グラウンドハンドリング業務につきましては、車両運転資格要件の見直し等の規制緩和や、業務の省力化、自動化に向けた先端技術の活用等の取組を通じて、労働環境の改善を図りつつ、航空需要の伸び等に対応した業務体制の確保に努めてまいります。  引き続き、観光先進国の実現に向け、全力で取り組んでまいります。(拍手)     ─────────────
  6. 伊達忠一

    ○議長(伊達忠一君) 小池晃君。    〔小池晃君登壇拍手
  7. 小池晃

    ○小池晃君 日本共産党の小池晃です。  会派を代表して、安倍総理に質問します。  森友問題でも加計問題でも、国民の多数は総理政府の説明に納得していません。とりわけ情報の隠蔽に対する不信と怒りには根深いものがあります。  森友学園への国有地売却をめぐり、当時の財務省理財局長が適切に破棄したとしていた交渉記録が、実は保管されていました。明らかな虚偽答弁ではありませんか。総理は適材適所だと言いますが、このような人物が国税庁長官であることに納税者の理解が得られるとお考えか、しかとお答えいただきたい。  国政私物化の疑惑をこのまま幕引きにすることなどできません。真相解明のため、安倍昭恵氏と加計孝太郎氏らの国会招致を強く求めます。  施政方針演説総理は、アベノミクスで力強い経済成長が実現したと述べましたが、国民には景気回復の実感がないのは、その実態がないからにほかなりません。  第二次安倍政権の五年で、大企業の当期純利益は二・五倍となり、内部留保は八十兆円積み増しされて四百兆円を突破しました。その一方で、労働者の実質賃金は、安倍政権発足前に比べて、年収換算で十五万円も低下しました。金融資産を持たない世帯が五年間で四百万世帯も増加し、全世帯の三五%になりました。  今国会で政府生活保護費の削減を狙っていますが、その理由は、生活保護を受給していない低所得世帯の消費水準が低下したから。これは、アベノミクスによって貧困が一層悪化した何よりもの証明ではありませんか。  アベノミクスで最も恩恵を受けたのは、日銀マネーや年金資金によってつり上げられた株高で潤った超富裕層であります。一億円を超える所得の三三%が株式譲渡益によるものであり、二十億円を超えると実に七六%を占めます。  しかし、株式譲渡益に対する所得税率が住民税も含めて二〇%に抑えられているために、所得が一億円を超えると所得税の負担率が低下するという逆転現象が起きております。昨年、OECDの対日経済審査報告書でもこのことが指摘をされましたが、来年度も是正が見送られました。  アベノミクスの五年間で、株価は二・二倍となり、上場企業の大株主上位三百人の保有時価総額は九・二兆円から二十五・二兆円へ、二・七倍に膨らみました。この三百人の金融資産は、今や日本の全世帯の下位四四%が保有する貯蓄額に匹敵をします。  所得税制の改正というのなら、まずこうした深刻な格差是正のために、株式譲渡益に対して欧米並みに三〇%の税負担を求めるべきではありませんか。お答えください。  健康格差の広がりも大問題です。  全国の大学、国立研究所の研究者による日本老年学的評価研究プロジェクトが二万人の高齢者対象に行った調査で、低所得の高齢者と高所得の高齢者では死亡率が三倍違うという結果が出たことが各界に衝撃を与えました。  年収百五十万円未満の高齢者の中で、具合が悪くても医療機関への受診を控えたことがあるという人の割合は、年収三百万円以上の一・四倍。生活困窮世帯の子供がぜんそくを発症するリスクは、それ以外の世帯の子供の一・三倍。五本以上の虫歯となる割合も、生活困窮世帯の子供とそうでない世帯の子供では二倍の格差。これらはいずれも大学や国の研究機関、自治体などの疫学調査の結果です。  所得、雇用形態などの社会的要因によって食生活やストレスなどに差異が生じ、低所得者や不安定雇用の人ほど疾病、死亡のリスクが高まる健康格差については、広範な研究者、学会の見解が一致しています。WHOなどの国際機関も健康格差の是正を掲げ、厚生労働省も健康日本21で健康格差の解消をうたっています。  総理は、健康格差の根底に、貧困と経済的な格差の深刻な広がりがあることを認めますか。  この間、安倍政権は、派遣労働を恒久化する労働者派遣法改定など、非正規雇用拡大、固定化する労働法制の規制緩和を繰り返してきました。社会保障では、年金の削減、医療費窓口負担の引上げ、要支援者の介護サービスの保険給付外しなど、国民負担増と給付削減を続けてきました。これらの政策は、低所得者や中間層の生活を痛め付け、公的医療介護へのアクセスを妨げ、健康格差を一層拡大したのではありませんか。  社会保障の負担増と給付削減は、家計を苦しめ、現役世代の不安を増大させ、中間層の生活の安定と消費の喚起にも大きな障害となります。社会保障の自然増削減はきっぱり中止し、能力に応じた負担で財源を確保し、充実へ向かうべきではありませんか。  総理は、今国会を働き方改革国会だと述べました。しかし、準備されている法案は、労働者が望む働き方とは正反対であります。  日本の財界は、この二十年間、ホワイトカラーエグゼンプションなど、労働基準法の労働時間の適用を除外することを繰り返し政府に求めてきました。今回の高度プロフェッショナル制度、いわゆる残業代ゼロ制度も、まさに財界の要求そのものです。これの一体どこが、労働者、国民が願う働き方改革なのですか。これまで日本労働団体が労働時間の適用から除外してほしいと要望したことが一度でもありますか。逆に、一貫して反対し続けてきたではありませんか。  さらに、企画型裁量労働拡大は、どれだけ働いてもみなし時間分の残業代しか支払われない労働者を、これまで禁止されてきた営業分野にまで広げるものです。これには年収制限もありません。厚生労働省は、裁量労働制の実態把握すらせずにこの制度を拡大しようとしています。これは、低賃金と過労死の温床を広げるだけではありませんか。残業代ゼロ制度とともにきっぱり撤回することを求めます。  労働時間の上限規制について聞きます。  電通の高橋まつりさんの過労自死の後も過労死の例が後を絶たず、上限規制は待ったなしです。しかし、なぜ残業時間の上限を月百時間までとするのですか。  トヨタ自動車の系列子会社で働き、二〇一一年に三十七歳で突然死した三輪敏博さんは、亡くなる直前に月八十五時間の残業をし、名古屋高裁は、昨年、過重な労働だったと認定。政府も受け入れ、判決が確定をしました。  厚労省の報告では、安倍政権の四年間、三輪さんと同様に月の残業時間が百時間未満で過労死認定された方は、毎年、全体の五二%から五九%と、過半数であります。残業を月百時間まで可能にする政府案は、過労死の合法化ではありませんか。過労死をなくすというのであれば、大臣告示の週十五時間、月四十五時間、年間三百六十時間を、例外のない残業時間の上限として法令化すべきであります。  総理は、柔軟な働き方を可能にすると述べますが、実際には労働者にとっての柔軟な働き方ではなく、経営者にとっての柔軟な働かせ方にほかなりません。  日本共産党は、広範な労働団体や野党各党と力を合わせ、労働法制の歴史的大改悪を阻止するために全力を挙げるものであります。  改定労働契約法により、この四月から、雇用期間の定めのある労働者が同じ会社で通算五年以上働いた場合に、本人が申し込めば無期契約に転換できるようになります。ルールどおりならば四百万人の有期労働者が正社員になれるはずです。しかし、五年になる前に一旦雇い止めし、六か月以上の雇用空白期間を設けることで、無期転換できないようにする脱法行為が広がっています。  昨年末、厚労省が自動車大手十社を調査し、空白期間を設けた七社中五社が労働契約法の施行後に空白期間を六か月に変更していたことが判明しました。このような脱法行為が広がれば、無期転換権を行使できる労働者はいなくなってしまいます。  総理は施政方針演説で、非正規という言葉を一掃すると述べましたが、一掃するのは言葉だけなのでしょうか。総理は、特別国会での私の質問に対し、無期転換ルールを避ける目的で雇い止めすることは望ましくないと答弁しました。ならば、脱法行為を許さない厳格な指導とともに、法の抜け穴を塞ぐ改正に踏み出すべきではありませんか。明快な答弁を求めます。  沖縄では、オスプレイや大型ヘリなど米軍機の事故が相次ぎ、県民の不安と怒りが広がっています。重大なのは、事故原因の究明もされないままに米軍が飛行を再開していることであります。十二月に相次いだ米軍ヘリの部品、窓枠落下事故では、人的ミスで機体には問題ないなどと強弁して、六日後に飛行訓練を再開しました。今年続発したヘリの不時着事故でも、沖縄県の飛行訓練中止要求に耳を貸さず、事故機を含めて直ちに訓練を再開しました。  政府は、なぜ米軍に対して事故を起こした全機種の飛行中止を求めないのですか。沖縄県民や日本国民の安全よりも日米同盟を優先する、主権国家にあるまじき態度ではありませんか。  こうした米軍の横暴勝手の根底にあるのが、屈辱的な日米地位協定であります。ドイツやイタリアなどと比較しても、米軍に治外法権的な特権を与える植民地的なものですが、基地の外での日本の警察権行使まで拒否することは、地位協定上も許されないのではありませんか。米軍の無法を許さないためにも、地位協定の抜本的な改定が必要ではありませんか。  総理は施政方針演説で、辺野古新基地建設を改めて強調し、移設は三つの基地機能のうち一つに限定、飛行経路が海上となることで安全性が向上、普天間では一万数千戸必要だった住宅防音がゼロになどと述べました。  しかし、空中給油機は、岩国移駐後も頻繁に普天間基地に飛来して訓練を継続し、騒音をまき散らしているではありませんか。飛行経路が海上になると言いますが、今でもオスプレイは、沖縄県内に多数の着陸帯があるために、集落上空を縦横無尽に飛び回っているではありませんか。  何よりも、普天間基地所属のオスプレイやヘリは、この一年余りで、名護市、久米島町、伊江村、石垣市、東村、宜野湾市、うるま市、読谷村、そして三日前には渡名喜村と、沖縄全土で事故を起こしています。普天間基地を辺野古に移しても、危険性は除去されないどころか、弾薬搭載エリアを持ち、F35B戦闘機の運用も想定される巨大基地となって、危険性を一層増大させるのではありませんか。  普天間基地の無条件撤去、辺野古新基地建設の中止、海兵隊の沖縄からの撤退こそ、沖縄県民の命と安全を守る唯一の解決策であります。総理見解を求めます。  総理は、昨年、首脳会談後の記者会見で、日米は一〇〇%共にあると述べました。トランプ大統領に言われるままに高額の米国製武器を次々購入し、軍事費は史上最高となり、国民生活を圧迫しています。  しかし、今、世界の主要国は、米国のトランプ政権と距離を置いて付き合っております。トランプ大統領に言われるままに、こういう異常なトランプ・ファーストの外交で我が国はいいのかが問われているのではないでしょうか。  総理は施政方針で、パリ協定の戦略策定に取り組むと述べました。ならば、米国にパリ協定への復帰を求めるべきではありませんか。  中東を不安定化させるエルサレム首都認定も、各国首脳のようにきちんと批判をするべきではありませんか。  北朝鮮の核・ミサイル開発は断じて許されません。経済制裁強化と一体に、対話による解決を目指すべきです。ペリー元米国防長官は、核戦争になった際の被害は朝鮮戦争の十倍に、日本の被害も第二次世界大戦に匹敵すると警告しています。  戦争は絶対に起こしてはなりません。  しかし、総理は、全ての選択肢がテーブルの上にあるという米国の立場を支持すると、先制的な軍事力行使まで公然と支持しています。こうした対応を根本から改めるべきではありませんか。  北朝鮮に核の放棄を迫る上で国際的にも大きな力になるのが、核兵器禁止条約であります。核抑止力論ときっぱり決別し、核兵器を法的に禁止し、悪の烙印を押すことによって、それをてこにして核兵器の廃絶に進もうという、最も抜本的かつ現実的な道を示した歴史的条約への参加こそ、唯一の戦争被爆国政府の責務ではありませんか。  トランプ大統領のすることがどんなに無法であっても批判せずに追随するという態度を根本的に見直し、言うべきことは言う、当たり前の外交政策を取ることを強く強く求めるものであります。  最後に、憲法について聞きます。  総理は施政方針演説で、今年が明治維新から百五十年であることを強調しました。しかし、この百五十年の前半には侵略戦争と植民地支配に向かった負の歴史もあり、戦前と戦後を一くくりにして、良い時代であったなどと言うことはできません。  総理は、そうした戦前の歴史も含めて全てを肯定的に評価しているのですか。  第二次世界大戦が終結し、日本国憲法、とりわけ憲法九条の下で我が国は新たな歩みを始めました。昨年三月のNHKの世論調査では、憲法九条が日本の平和と安全に役立っていると答えた方が初めて八割を超えました。多くの国民が高い価値を見出している憲法九条の下での戦後日本の歩みを総理はどのように評価しているのですか。  総理は、侵略の歴史への反省を語らず、戦後レジームからの脱却を掲げ、憲法九条を敵視し、特定秘密保護法、安保法制、共謀罪、数の力で憲法破壊を積み重ねてきました。こうした姿勢に多くの国民が不安と疑念の目を向けているからこそ、各種世論調査で、安倍政権の下での憲法改定には反対という声が多数になっているのではありませんか。  総理は年頭記者会見で、今年こそ憲法のあるべき姿を示すと述べましたが、憲法九十九条は、大臣、国会議員その他公務員に憲法尊重擁護義務を課しています。多くの国民が憲法改定を望んでいない下で、あるべき姿を示すなどと言うこと自体が憲法と立憲主義を全くわきまえない発言だと言わざるを得ません。  憲法に基づく政治こそ我々の責任です。  日本共産党は、市民と野党の共闘を広げ、憲法九条改悪の発議を許さないために全力を挙げて闘い抜く決意を表明して、質問を終わります。(拍手)    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇拍手
  8. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 小池晃議員にお答えをいたします。  森友学園への国有地売却に係る文書管理等についてお尋ねがありました。  森友学園への国有地売却や加計学園の獣医学部新設に関しては、今後ともしっかりと説明をしていかなければならないと考えています。  文書の管理、保存については、各行政機関が責任を持って行っており、これまでも説明してきたところですが、今後、国会の場において、財務省など関係省庁からしっかり説明させていただきます。  国有地は国民共有の財産であり、その売却に当たっては、国民の疑念を招くようなことがあってはなりません。私としても、国有財産の売却について業務の在り方を見直すことが必要と考えており、関係省庁において今後の対応についてしっかりと検討させているところです。  国税庁長官の人事については、他の全ての人事と同じく、適材適所の考え方に基づき行ったものであります。  生活保護基準の見直しなどについてお尋ねがありました。  今回の見直しでは、年齢、世帯人員、地域を組み合わせた世帯特性ごとに、一般低所得世帯の消費の実態生活保護基準額との乖離を是正するため、基準額が上がる世帯、下がる世帯が生じるものです。一方、モデル世帯では、一般低所得世帯の消費水準と生活扶助基準とがおおむね均衡しており、生活扶助基準を全体として引き下げるものではありません。  なお、減額となる世帯への影響を緩和するため、減額幅を最大でも五%以内としつつ、三年を掛けて段階的に実施することにしています。  金融所得課税についてお尋ねがありました。  金融所得課税については、平成二十六年から上場株式等の配当及び譲渡益について軽減税率を廃止したところですが、これにより、高所得者ほど所得税の負担率が上昇する傾向が見られます。所得再分配機能の回復に一定の効果があったのではないかと考えています。  金融所得に対する課税の在り方については、平成三十年度与党税制改正大綱において、「家計の安定的な資産形成を支援するとともに税負担の垂直的な公平性等を確保する観点から、関連する各種制度のあり方を含め、諸外国の制度や市場への影響も踏まえつつ、総合的に検討する。」とされているところであり、丁寧に検討する必要があると考えています。  健康格差と貧困、経済的格差との関係についてお尋ねがありました。  安倍内閣発足後の格差、貧困を示す指標の動きを見ると、長期的に上昇傾向にあった相対的貧困率については、政権交代後、雇用が大きく増加するなど経済が好転する中で、低下に転じました。特に子供の相対的貧困率については、総務省の全国消費実態調査によれば、ずっと上昇し続けてきたものが、平成二十六年の調査、これは安倍政権ができて初めての調査でありますが、この調査において、集計開始以来初めて低下しました。  また、所得再分配後のジニ係数は、近年の雇用・所得環境の改善や社会保障、税による所得再分配が機能した結果、おおむね横ばいで推移しています。こうしたことから、安倍政権の五年間で貧困と格差の広がりがあったとの御指摘は当たりません。  また、平成二十七年に成立した労働者派遣法改正法については、正社員を希望する方にその道が開けるようにするとともに、派遣を積極的に選択している方には待遇の改善を図るものであり、非正規雇用を取り巻く環境について、不本意ながら非正規の職に就いている方の割合が低下しているなど、着実に改善しています。  さらに、社会保障見直しでは、所得の低い方々が必要なサービスを受けられるようにきめ細かな配慮を行うこととしているほか、保険料軽減などの充実を図っていくこととしています。こうしたことから、これらの政策が公的医療介護へのアクセスを妨げ、健康格差を一層拡大させたとの御指摘は当たらないものと考えます。  引き続き、アベノミクスを更に加速させながら、成長と分配の好循環をつくり上げることで、格差が固定化しない、許容し得ない格差が生じない社会の構築に向けて取り組んでまいります。  社会保障についてお尋ねがありました。  少子高齢化が進行し、社会保障費の伸びが引き続き見込まれる中、社会保障の持続可能性の確保は成長と分配の好循環を実現していく上で不可欠なものです。  医療介護の提供体制改革や、保険者のインセンティブ改革を通じた予防、重度化防止の強化等に取り組むとともに、公平な負担の在り方についても検討し、社会保障制度の持続性確保に向けた不断の改革を進めてまいります。  こうした持続可能性確保の取組とともに、昨年十二月に閣議決定した新しい経済政策パッケージに基づき、子育て世代、子供たちに大胆に政策資源を投入し、我が国社会保障制度をお年寄りも若者も安心できる全世代型の社会保障制度へと大きく転換していくことで、安心できる社会基盤を確立し、成長と分配の好循環を実現してまいります。  高度プロフェッショナル制度や裁量労働制についてお尋ねがありました。  働き方改革は、一人一人の事情に応じた多様な働き方を選択できる社会実現するための、労働基準法制定以来、七十年ぶりの大改革です。  働く方の健康の確保を大前提に、ワーク・ライフ・バランスを改善し、子育て介護など、様々な事情を抱える方々意欲を持って働くことができる社会に変えていく。こうした社会実現するために、労働時間法制の見直し急務です。  このような問題意識の下、昨年三月二十八日、私自身が議長となり、労働界産業界のトップと有識者にお集まりいただいた働き方改革実現会議において、働き方改革実行計画を決定しました。働き方改革は、この実行計画に基づいて行う改革であり、財界の要求そのものであるとの御指摘は当たりません。  また、今回の見直しにおいて、裁量労働制度対象に追加するのは課題解決型の開発提案業務であって、単純な営業は対象になりません。そのことについては、昨年七月に連合の神津会長からいただいた要請を踏まえ、従前お示ししていた案を修正し、より明確な規定とすることとしています。  高度プロフェッショナル制度の創設、裁量労働制の見直しや時間外労働上限規制は、いずれも、健康を確保しつつ、誰もがその能力を発揮できる柔軟な労働制度へと改革するものであり、低賃金と過労死の温床を広げるだけのものではありません。  残業時間の上限についてお尋ねがありました。  過労死、過労自殺の悲劇を二度と繰り返さない。強い決意で長時間労働の是正に取り組みます。  そのため、労使が合意すれば上限なく時間外労働が可能となる現行の仕組みを改めます。史上初めて、労働界経済界の合意の下に、三六協定でも超えてはならない、罰則付きの時間外労働の限度を設けます。具体的には、時間外労働の上限は、月四十五時間、かつ、年三百六十時間と法律に明記します。その上で、労使が合意した場合でも上回ることができない上限を年七百二十時間とし、その範囲内において、複数月の平均では八十時間以内、単月では百時間未満と定めています。  さらに、労使合意を踏まえ、可能な限り時間外労働を短くするため、新たに労働基準法に基づき時間外労働を適正化するための指針を定め、国が使用者及び労働組合等に対し必要な助言、指導を行えるようにすることを予定しています。  このように、今回の改革は長時間労働に対する規制を強化するものであり、過労死の合法化という批判は全く当たりません。  無期転換ルールについてお尋ねがありました。  無期転換ルールを意図的に避ける目的を持って雇い止めを行うことは望ましくありません。無期転換ルールへの対応が円滑に行われるよう、引き続き都道府県労働局における相談対応企業への周知に取り組んでいくとともに、望ましくない事案を把握した場合には、労働局において必要な啓発指導をしっかりと行ってまいります。  また、無期転換ルールについては、改正労働契約法において見直し規定が設けられており、施行状況を勘案しつつ対応してまいります。  米軍機の事故と飛行停止についてお尋ねがありました。  米軍の運用に当たって、地域住民の方々の安全確保は大前提であり、事件、事故はあってはなりません。米軍機の事故後の飛行再開については、我が国としても、米側の事故調査や再発防止策について自衛隊の専門的知見も活用して検証を行い、その合理性を判断してきています。  米軍機の事故や予防着陸、緊急着陸が相次いでいる中、在日米軍の全ての航空機について徹底的な整備、点検を確実に実施し、徹底した再発防止のための対策を講ずるよう米側に強く求めています。  また、米軍機の飛行停止については、事故の態様等を踏まえ、個別に判断の上、米側に対して求めているところであります。  今後とも、安全の確保については最優先の課題として日米で協力して取り組んでいきます。  基地外での日本の警察権の行使と日米地位協定についてお尋ねがありました。  米軍や米軍人に関する事件、事故については、日本関係当局において所要の調査や捜査を行っており、基地の外での日本の警察権の行使が拒否されているとの御指摘は当たりません。(発言する者あり)
  9. 伊達忠一

    ○議長(伊達忠一君) 静粛に願います。
  10. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君)(続) 政府としては、米側に対し、米軍の活動に際し、地元住民への影響を最小限にとどめるよう、引き続き強く求めてまいります。  日米地位協定については、安倍政権の下で、日米地位協定締結から半世紀を経て初めて二つの補足協定の策定が実現しました。今後とも、事案に応じた最も適切な取組を積み上げていくことにより、日米地位協定のあるべき姿を不断に追求してまいります。  普天間の返還、辺野古への移設、沖縄の海兵隊についてお尋ねがありました。  住宅や学校に囲まれ、市街地の真ん中にある普天間飛行場の一日も早い全面返還は、もはや待ったなしの課題です。固定化は絶対に避けなければなりません。これが大前提であり、政府地元の皆様の共通認識であると思います。辺野古への移設が実現すれば、飛行経路は海上となり、安全性は格段に向上します。また、この施設から戦闘機を運用する計画はありません。  辺野古への移設は最高裁判所の判決に従って進めているものです。今後とも、丁寧な説明に努め、御理解、御協力が得られるよう粘り強く取り組んでいきます。  米軍の運用に当たって、地域住民の方々の安全確保は大前提であり、事件、事故はあってはなりません。安全の確保は、最優先の課題として日米で協力して取り組んでいきます。  また、空中給油機については、平成二十六年八月に十五機全機の岩国飛行場への移駐が実現しました。離着陸等の回数については、移駐後の平成二十六年九月は三十回であり、移駐前の前年九月の百六十二回から格段に減少しています。  今後とも、空中給油機を含む普天間飛行場における米軍機の運用状況については、しっかりと把握してまいります。  沖縄の海兵隊については、安倍政権の下、米議会に対する予算の凍結解除の働きかけなどにより、約九千人の要員がグアム等国外へ移転する計画が本格的に進展してきています。  一方、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、日米同盟の抑止力及びその中核である海兵隊の存在は極めて重要です。  今後とも、抑止力を維持しながら、沖縄の方々の気持ちに寄り添い、基地負担の軽減に全力を尽くしてまいります。  トランプ政権の外交に関してお尋ねがありました。  米国は、日本が攻撃を受けた場合、日本と共同対処することを条約上の義務として約束している唯一の同盟国です。  トランプ大統領とは、首脳会談や頻繁な電話会談で、北朝鮮問題に関する深い分析を共有し、方針についても完全に一致しています。政府としては、トランプ大統領が米国は日本と一〇〇%共にあると発言していることを高く評価しています。  パリ協定については、G7タオルミーナ・サミットの際に、G7首脳と共に脱退しないよう強く働きかけました。その後、米国がパリ協定から脱退を表明したことは残念ですが、気候変動問題は国際社会が取り組むべきグローバルな課題です。米国の関与が引き続き重要であることにつき、私も含め、様々なレベルで米国に対し働きかけを行ってきています。  エルサレムに関する米国の発表については、和平合意促進へのコミットメントや二国家解決への支持を評価しており、また、エルサレムの最終的地位への言及に留意しています。  一方、この発表を契機として、今後の中東和平をめぐる状況が厳しさを増したり、中東全体の情勢が悪化し得ることには懸念を表明してきており、引き続き大きな関心を持って注視していきます。  北朝鮮問題及び核兵器禁止条約についてお尋ねがありました。  まず指摘したいのは、北朝鮮問題については、挑発を行っているのは北朝鮮の方であり、私も、世界中の誰一人としても戦争など望んでおりません。  平昌五輪の成功に向けて、最近、南北間で対話が行われていることは評価しますが、北朝鮮が、一九九四年の枠組み合意、二〇〇五年の六者会合共同声明を時間稼ぎの口実に使い、核・ミサイル開発を進めてきたことの反省を踏まえれば、北朝鮮とは対話のための対話では意味がありません。  北朝鮮に、完全、検証可能かつ不可逆的な方法で核・ミサイル計画を放棄させるため、あらゆる手段を使って北朝鮮に対する圧力を最大限にし、北朝鮮の方から、政策を変更するので対話してほしいと言ってくる状況をつくっていくことが必要です。  かかる観点から、我が国としては、全ての選択肢がテーブルの上にあるという米国の立場を今後も支持していきます。  北朝鮮の核・弾道ミサイル計画の進展は、我が国の平和と安定に対するこれまでにない重大かつ差し迫った脅威となっています。政府には、何よりも国民の命と平和な暮らしを守り抜く責任があります。そのためには、日米同盟の下で、通常兵器に加えて、核兵器による米国の抑止力を維持していくことが必要不可欠です。  核兵器禁止条約は、核抑止そのものを否定しており、北朝鮮が参加するという見通しもありません。政府としては、核兵器禁止条約に参加することはできません。  明治維新から百五十年間の歴史の評価についてお尋ねがありました。  十九世紀、植民地支配の波がアジアに押し寄せる中で、急速な近代化を成し遂げることができたのは、身分、生まれ、貧富の差にかかわらず、多くの日本人が活躍した結果であると考えています。  その上で、戦前から戦後にわたる歴史認識については、戦後七十周年の機会に内閣総理大臣談話を発表したところであり、その立場に変わりはありません。  憲法九条と戦後日本の歩みに関する評価についてお尋ねがありました。  戦後、私たち日本人は一つの誓いを立てました。戦争の惨禍を繰り返してはならない。そして、憲法の平和主義の下、一貫して平和国家としての道を歩んできました。  同時に、戦後の日本で平和が保たれたのは、しっかりとした抑止力があったからであり、一つは自衛隊の存在、もう一つは日米同盟です。もちろん、外交によって多くの国々と友好関係を構築してきたことも大きく寄与したと考えています。平和主義の理念と不断の努力によって保たれた七十年以上にわたる平和を、私は誇りに思います。  憲法改正についての世論調査についてお尋ねがありました。  御指摘国民の皆様の声については、私もしっかりと耳を傾け、真摯に受け止めたいと思います。他方、憲法改正について賛成が五割を超える世論調査や、六割以上の方が憲法改正の議論を進めるべきと回答した世論調査も存在をしておりますので、こうした声も排除せず、耳を傾けていただきたいと思います。  小池議員を始め共産党の皆様には、こうした国民の皆様の声にも耳を傾けていただき、国会において是非憲法改正について建設的な議論を行わせていただきたいと思います。(拍手
  11. 伊達忠一

    ○議長(伊達忠一君) これにて午後一時まで休憩いたします。    午前十一時四十一分休憩      ─────・─────    午後一時一分開議
  12. 郡司彰

    ○副議長(郡司彰君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。  国務大臣演説に対する質疑を続けます。片山虎之助君。    〔片山虎之助君登壇拍手
  13. 片山虎之助

    ○片山虎之助君 日本維新の会の片山虎之助です。  私は、我が党を代表して、安倍総理に質問いたします。  まず、この度の草津白根山の噴火により、訓練中に亡くなられた自衛官に謹んで哀悼の意を表しますとともに、被害に遭われた皆様に対し心よりお見舞いを申し上げます。また、身を挺して救助・捜索活動に当たられる消防、警察を始めとする関係の皆様に敬意と感謝をささげます。  安倍総理が政権に復帰して昨年末で五年を経過し、在職日数は戦後で三位、歴代では五位、今年九月の自民党総裁選を乗り越えれば歴代一位、憲政史上最長の政権となる状況も見えてきました。主要七か国、G7のトップのうち、安倍総理はドイツのメルケル首相に次いで二番目に長く、ほかはおよそ二年以下です。首相は、この五年間、地球儀を俯瞰しつつ、世界中を駆け巡り、首脳外交を展開、多くの実績を上げてきたことを評価します。  また、内政については、世界の好景気を背景に、アベノミクス効果を生かし、戦後最長の景気拡大をうかがう勢いですが、一方で、賃金や個人消費が伸び悩み景気回復に力強さがなく、国民の実感が乏しいという指摘が多いのも事実です。  総理は、特別国会の答弁で、次の時代を切り開くための政策実行政治の使命と言われました。今後、更なる長期政権を目指されるならば、何を成し遂げたいのか、次の目標は何なのかを明確に国民に示していただきたい。総理、いかがですか。  また、三選されればそれ以上はなく、後継者の議論が必ず出てきます。後継者につき御所見があればお伺いします。  一方で、長期政権であるがゆえのおごり、緩み、たるみが出、モリカケ問題はその最たるものだと言われています。一時低下した内閣支持率も回復、五割前後を維持しているものの、ひところの勢いは感じられません。長期ゆえの飽きは当然出ますし、民意の移ろいやすさは、昨年の都議選、衆院選を通じても十分に証明されました。長期政権に対する負のイメージをどのように払拭されるおつもりか、併せてお伺いします。  次に、国会運営についてです。  昨年は衆院選もあって国会の実質会期が短かった上、日程闘争やパフォーマンスにエネルギーが割かれ、肝腎の政策論議がおろそかにされた気がします。今の国会は、国権の最高機関としての権威も乏しく、唯一の立法機関としての役割も不十分です。したがって、国会改革急務で、次の提案をいたします。  第一に、強行採決と審議拒否はしないことの与野党間での原則の確立。二つ、国会が閣法の追認機関から脱却するため、議員立法審議のルール化。三つ、与党の事前審査を考慮した上で、議席数を基本とする質問時間の公平な配分。四つ、各省庁の超過勤務の最大の原因である質問通告の遅れの解消。五つ、予算委審議との調整を図った上で党首討論の抜本的な見直し。  これらについて、総理は衆参で単独過半数を持つ自民党総裁としてどうお考えか、答弁を求めます。  今年は、明治維新からちょうど百五十年目に当たります。維新とは、百事一新、全てが改まって新しくなることですが、この節目の年に改めて、維新改革、我々はグレートリセットと呼んでおりますが、その原点に立ち返り、その実現に邁進する決意です。  維新改革の核心は、身を切る改革、徹底行革と地方分権、統治機構改革ですが、そのうちの国会議員の身を切る改革については、既に議員立法で幾つかの提案をしてきました。しかし、他党の同意が得られませんので、一昨年から我が党だけで自主的に実行しております。  主なものは、第一に、議員歳費の約二割、一人月十八万円を拠出して被災地等を支援する。二つ、企業・団体献金は受け取らない。三つ、議員へ支給される文書通信交通滞在費、一人百万円の使途を公開する。四つ、党支部への寄附の税額還付は受けない等です。  改めて伺いますが、総理、一国会議員として、これに賛同されませんか。  また、我が党は、東京圏一極集中是正を目指す大きな柱として大阪都構想推進しています。再度の住民投票への対応を含め、その実現全力で取り組みます。あるべき地方自治の形を中央政府でなくて地方住民自らが決める、そういう新しい潮流をつくっていきたいと考えておりますが、総理の御感想があればお聞かせください。  我が党は、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義など、現行憲法の優れた点を守っていくのは当然として、一方で、憲法制定当時に想定していなかったもろもろの問題が起こり、それを是正する必要のあるいわゆる憲法事実が生じた場合は、憲法改正を国民の同意を得て行うべきだという立場です。その立場から我が党は、一昨年三月に憲法改正原案をまとめ、条文まで発表しました。  第一、国民教育を受ける権利に関し、経済理由によってその機会を奪われない旨を明確にし、教育の機会均等を実現する教育無償化東京圏一極集中を打破し、真の地方分権を実現するため、地域立法権や課税自主権等を拡充する国と地方の統治機構改革。第三、安全保障上の重要法案等の合憲性を的確に判断する憲法裁判所の設置の三点です。  自民党が検討中の第九条改正についても、現在、平和安全法制との関連も含め、真摯に意見集約を図っております。これらについて、総理の御意見をお伺いします。  現憲法は、制定過程で国民投票が行われなかったことが最大の欠陥です。今回、国民投票が行われれば、日本史上初めて憲法に対し国民が主権を行使したことになります。七十年以上も国民の主権を行使する機会を奪ってきたことは、私は国会の怠慢だと思いますが、総理、いかがですか。  我が党は、現憲法に規定されている義務教育無償化拡大し、義務教育の義務を取って教育全体の無償化を憲法に書き込み、これを政権交代や財政状況に左右されない国是としたいと考えています。しかしながら、これは教育全てを直ちにということではなく、特に高等教育機関については慎重に進め、質の確保や向上、再編や統廃合が促進されなければなりませんし、バウチャー制度の導入も検討されるべきです。総理の御答弁を伺います。  総理は、憲法改正を公約に掲げて衆院選を戦われましたが、時期にはこだわらないとも発言されています。しかし、年初の記者会見では、今年こそ憲法のあるべき姿を提示と述べられました。時期にこだわらないとしても、目安がある方が議論が進みます。最大会派の自民党総裁として、目安をいかにお考えですか。  次に、外交・安全保障についてお伺いします。  韓国は中国と接近し、また平昌五輪を足掛かりに北朝鮮との対話も始めました。日米政府は南北対話は五輪での協力に限定されると見て静観し、ただし、圧力路線が分断されることは警戒しています。北朝鮮にとっては今回も単なる時間稼ぎをするためというさめた見方もあります。  文韓国大統領は、平成二十七年の日韓合意が最終的かつ不可逆的な解決としたにもかかわらず、慰安婦合意は受け入れられないとして日本に更なる自主的対応を求めました。一方で、日韓関係全般については本当の友人になることを望むと呼びかけ、歴史問題と安全保障や経済などとの協力を分離するツートラック外交の継続を述べています。一連の韓国の動きをどう評価されますか。平昌五輪で日韓首脳会談が開かれるならば、慰安婦問題での合意の履行を迫るべきです。いかがですか。  慰安婦像は、昨年サンフランシスコに寄贈されたのを始め、フィリピンやオーストラリアなど世界各地で建てられています。史実に基づかない碑文や慰安婦像が世界中に建てられていくことに対しどう対処されるのか、お伺いします。  次に、北朝鮮問題についてです。  日本全土は、弾道ミサイル、ノドンの射程内にあり、日本国民は強い不安を感じています。日本は、矛でなくて盾としても日本独自の防衛努力は必須です。総理はかつて、防衛予算についてはGDPの一%枠にこだわらないと答弁されましたが、北朝鮮のミサイル関連については、防衛大綱、中期防改定などを待たずに積極的に措置すべきだと考えますが、いかがですか。  また、イージス・アショアの二基導入を決定、さらに、長射程のスタンドオフミサイルの配備、導入は自衛隊として初めてのもので、敵基地攻撃を意図したものではないとの説明ですが、いかがですか。  さらに、日本上空の弾道ミサイル通過、EEZへの着弾の事実を踏まえ、領海内へ着弾した場合は武力攻撃切迫事態に認定すべきではありませんか。併せて伺います。  日本着弾に備え、国民の避難訓練、避難場所の準備などはどうお考えですか。また、韓国には約三万八千人の邦人が滞在し、年間二百万人の旅行者が訪れています。こうした皆さんの保護、拉致被害者の救出、武装難民対策、感染症対策など、課題が山積です。これらについていかにお考えですか。  中国は、昨年の共産党大会で習近平総書記の権威が確立、国内の勢力構図が固まり、それを受けてか中国の対日本への対応に変化の兆しが見えてきたように思われます。昨年十一月の日中首脳会談でも、日中国交正常化四十五周年、日中平和友好条約締結四十周年への対応、また、北朝鮮問題への連携が話し合われ、さらに、一帯一路を含め経済協力強化も話題に上がったとされています。ただ、中国は、その後も尖閣諸島、東シナ海について核心的利益として領海侵犯を常態化するなど、日本や東南アジアを牽制、一筋縄ではいかない態度を取っています。経済関係についても、東アジアを中心にその影響力の拡大に引き続き注力しており、日本との関係は微妙です。日中関係は改善の兆しはあるものの、経済、防衛等の面ではまだまだ距離があると私は率直に思いますけれども、総理、いかにお考えですか。  中国とは長らく戦略的互恵関係と言ってきましたが、その成果はどうですか。このままこの方針を貫くのか、日本として別の戦略を立てるのか、総理見解を伺います。  労働人口が減少し、少子高齢化が進む中、労働者の自由な移動を可能とし、個々人の能力最大限に発揮して労働生産を高めることは、今の我が国にとって喫緊の課題です。今回の働き方改革におけるいわゆる高度プロフェッショナル制度、同一労働同一賃金はこうした課題解決に資するので、方向性には賛成です。  一方で、無制限な労働を強いられる、労働者の身分が著しく不安定になる、正社員の賃金の引下げにつながるなど反対意見もありますが、現状を打破し活力を取り戻すためには、マイナス面を抑えつつ多様な働き方を推進していくことが必須です。総理の御所見を伺います。  さらに、日本労働慣行である終身雇用、年功賃金などの見直しも必要だとも指摘されていますが、いかがですか。  我が党は、既に独自に、高プロ制度について政府案より更に対象拡大する法案や、労働者の生産性の高い分野への移動を円滑化するための解雇ルール明確化法案を提案しています。両法案につき御意見があれば伺います。  人生百年時代を見据えて、まず高齢者の定義を実態に合わせる。日本老年学会などは、高齢者は七十五歳以上、六十五から七十四歳は准高齢者にして社会を支える側に回ってもらうことを提案しています。私は検討に値すると考えます。実際に、高齢者就労率が高い地域ほど医療費が少なく、平均寿命も高いという調査結果が出ています。  今や、我が国は人手不足経済に突入、意欲能力ある高齢者の活用も課題になっていますけれども、その実現には、高齢者にふさわしい仕事、柔軟な働き方、雇用環境、さらにそれを支える年金などの仕組みが整わなければなりません。しかし、現状は不十分です。  働き方改革や一億総活躍社会が叫ばれる中、幅広い高齢者活用のシステムを早急に整備世界にモデルを示すべきだと思いますが、総理、いかにお考えですか。  全世代型社会保障を構築するため、子育て世代や子供たちに対する保障を充実させる二兆円の経済政策パッケージ方向性については、一定の評価をいたします。しかし、財源を消費増税に求めることには賛成できません。  我が党は、一〇%への消費増税には、本格的な景気回復、身を切る改革実行等、幾つかの要件が満たされない限り凍結すべきだと主張してきました。今回の財源は、本来社会保障に係る借金の返済に充てられるものでした。この財源を振り替えることは、言わば借金返済を先延ばしし、国債を増発することと同じです。総理は、少子高齢化という最大の課題を克服するため、我が国経済社会システムの大改革挑戦すると宣言されているその挑戦が、付け替えと負担のツケ回しでは説得力がありません。  身を切る改革と徹底した行財政改革を不断に行い、そこに財源を求めるという姿勢こそが今の時代に必須だと私は思いますが、総理の認識をお聞かせください。  来年度予算案の規模は九十七・七兆円と、六年連続で過去最大となりました。安倍政権では予算は膨張の一途で、好景気による果実を毎年食い潰している感がします。毎年の小手先の歳出削減でなく、身を切る改革、徹底した行財政改革による歳出削減の本格的な努力が必要です。  また、当初予算を厳しいシーリングで抑制しても、補正予算で骨抜きになることが常態化し、公共事業補助金など定型的な予算が毎回堂々と補正に計上されています。当然に、二〇二〇年のプライマリーバランス黒字化の目標の達成は困難で、数字を変えながら目標は先へ先へと延びています。それを繰り返しては、国際的信用は低下するばかりではないでしょうか。総理、いかがですか。  これを抜本的に打開するには、我が党が主張するごとく、思い切って国と地方役割見直し、小さな政府を目指す維新改革、グレートリセットを断行すべきです。それができるのは安定した基盤を持つ政権のみです。その意味で安倍政権の今後に期待し、我が党も引き続き、維新改革に邁進、財政再建にも真剣に取り組んでいくことをお約束して、私の代表質問を終わります。  御清聴ありがとうございました。(拍手)    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇拍手
  14. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 片山虎之助議員にお答えいたします。  五年を超えた政権の今後についてお尋ねがありました。  総選挙からまだ三か月しかたっておりませんが、まずはこの通常国会において、総選挙で国民の皆様にお約束した政策を一つ一つ実行に移すことが私の責任であると考えております。その先のことは現時点では全く考えておりません。  少子高齢化北朝鮮の脅威、国難とも呼ぶべき課題に真正面から立ち向かい、我が国未来を切り開くため、昨年の総選挙で国民の皆様からいただいた大きな負託、その責任の重さを胸に刻み、一心不乱に取り組んでいく決意であります。  国会改革についてお尋ねがありました。  日程闘争やパフォーマンスにエネルギーを割くのではなく、政策論議こそが肝腎であるという片山議員の意見に全く同感であります。この国会においても、日本維新の会の皆さんと建設的な政策論議を行わせていただきたいと思います。  具体的な国会改革の在り方については国会がお決めになることであり、各党各会派においてしっかりと議論を行っていただくよう期待しております。  身を切るような改革についてお尋ねがありました。  我々政治家は、政策実現するため真摯に努力を続け、国民の負託に応えていかなければなりません。国民の皆さんに様々な御負担を求める以上、我々政治家も常に自らを省みる必要があることは当然です。日本維新の会が、そうした観点から、具体的な行動に取り組んでおられることについては敬意を表したいと思います。  その上で申し上げるとすれば、政治に要する費用の問題は、議会政治や議員活動の在り方、すなわち民主主義の根幹に関わる重要な課題であることから、国会において国民の代表たる国会議員が真摯な議論を通じて合意を得る努力を重ねていかなければならない問題であると考えております。  大阪都構想についてお尋ねがありました。  大阪都構想については、大阪府と大阪市において、大都市地域特別区設置法に基づく特別区設置協議会が設置され、構想実現に向け協議が行われているものと承知しております。  政府としても、これまで、指定都市と都道府県との間の二重行政の解消や住民自治の拡充を目的として、都道府県から指定都市への権限移譲や、指定都市都道府県調整会議、総合区制度の創設等を進めてまいりました。  いずれも大都市制度改革の選択肢を地方に示すものであり、地方自治は住民の意思と責任に基づき行われるべきとの理念の下、その選択は、地域実情に応じ、それぞれの地域が判断すべきものと考えます。  憲法改正についてお尋ねがありました。  憲法は、この国の形、理想の姿を示すものです。私たちは、時代の節目にあって、まさにどのような国づくりを進めていくのかという議論を深めるべきときに来ていると思います。  御党が憲法改正に熱意を持って取り組まれ、具体的な提言を行われていることに対して改めて敬意を表するところでありますが、国会の憲法審査会において議論される憲法改正の内容について、内閣総理大臣としてこの場でお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。  今後、御党を始め各党による建設的な議論が憲法審査会において行われ、国会における議論が深まる中で、与党、野党にかかわらず幅広い合意が形成され、国民的な理解も深まっていくことを期待しております。  憲法に関し国民が直接主権を行使する機会がなかったとの御認識についてお尋ねがありました。  憲法は、この国の形、理想の姿を示すものであり、最終的にそれを決めるのは国民の皆様です。  自由民主党は、憲法改正を立党以来の党是としてきました。これまで一度も憲法改正を国民に問うことができずに現在に至っていることは、自民党総裁として誠に残念なことです。昨年五月に私が一石を投じる発言を行ったのも、こうした状況の中で議論を活性化したかったからであります。  今後、国会の憲法審査会において各党による建設的な議論が行われ、国民的な理解が深まっていくことを期待しています。  教育無償化についてお尋ねがありました。  日本維新の会が、憲法改正について具体的な考え方を示し、各論に踏み込んで真摯に議論されていることに、まずもって敬意を表します。私は今、内閣総理大臣として答弁しており、御党の改憲案についてこの場でお答えすることは差し控えさせていただきます。今後、御党も含めて、各党が憲法の具体的な案を国会に持ち寄り、憲法審査会において、議論を深め、前に進めていくことを期待しています。  その上で申し上げると、高等教育国民の知の基盤であり、イノベーションを創出し、国の競争力を高める原動力でもあります。今後、連携、統合等の推進を含めた大学改革、アクセスの機会均等、教育研究の質の向上を一体的に推進し、高等教育充実を図る必要があると考えています。  昨年取りまとめた新しい経済政策パッケージでは、消費税の使い道を見直すこととし、所得が低い家庭の子供たち、真に必要な子供たちに限った高等教育無償化を行うこととしました。高等教育無償化に向けた詳細な制度設計については、夏までに結論を出してまいります。  こうした人づくり革命を断行し、子供たちの誰もが夢に向かって頑張ることができる、そのことが当たり前となる社会をつくってまいります。  憲法改正のスケジュール感についてお尋ねがありました。  言うまでもなく、憲法改正は国会が発議し、最終的には国民投票により国民の皆様が決めるものであります。憲法改正の発議の時期等についても、国会における各党の御議論や国民的な議論の深まりの中で決まっていくものと考えております。  韓国との関係についてお尋ねがありました。  平昌五輪の成功に向けて、最近、南北間で対話が行われていることは評価しますが、その間も北朝鮮は核・ミサイル開発継続しています。北朝鮮とは対話のための対話では意味がありません。北朝鮮に、完全、検証可能かつ不可逆的な方法で核・ミサイル開発を放棄させるべく、圧力を最大限まで高めていく必要があります。  慰安婦問題をめぐる日韓合意は、日韓両国が様々な分野協力を進め、未来志向の日韓関係を構築していく上で欠くべからざる基盤です。韓国側が一方的に更なる措置を求めることは、全く受け入れられません。日韓合意は国と国との約束であり、政権が替わっても、約束を守ることは、国際的かつ普遍的に認められた原則です。日本側は、約束したことを全て誠意を持って既に実行しています。韓国側にも引き続き約束を実行するよう強く働きかけてまいります。  諸般の事情が許せば、平昌五輪の開会式に出席をし、文在寅大統領と会談を行って、慰安婦問題に関する日韓合意について、日本政府としての立場を直接明確に伝え、韓国側も約束を誠実に履行していくよう強く働きかけてまいります。北朝鮮問題についても、北朝鮮政策を変更させ、核・ミサイル計画を放棄させるため、あらゆる方法で圧力を最大限まで高めていくとの方針からぶれてはならないことを直接伝え、日米韓でしっかりと連携していく必要性を改めて確認してまいります。  史実に基づかない碑文や慰安婦像への対処についてお尋ねがありました。  御指摘のような動きは、我が国政府の立場と相入れない極めて遺憾なことと受け止めています。我が国としては、事実の歪曲や日本に対するいわれなき主張に対しては、正面から反論し、正しい事実を力強く訴えてまいります。  北朝鮮問題のミサイルに関連した措置についてお尋ねがありました。  北朝鮮の核・ミサイル開発は、これまでにない重大かつ差し迫った脅威です。我が国に対する脅威から国民の命と平和な暮らしを守り抜くため、しっかり備えをしておくことは私たちの大きな責任であります。このような観点から、今般、イージス・アショア及びスタンドオフミサイルの導入を決定したところです。  さらに、年末に向けて防衛計画の大綱の見直しを進めてまいります。専守防衛は当然の大前提としながら、従来の延長線上ではなく、国民を守るために真に必要な防衛力のあるべき姿を見定めていく考えです。  イージス・アショア及びスタンドオフミサイルといわゆる敵基地攻撃についてお尋ねがありました。  イージス・アショアは、弾道ミサイルの脅威から我が国全土を二十四時間三百六十五日、切れ目なく防護する能力を抜本的に向上させるものです。スタンドオフミサイルは、我が国防衛に当たる自衛隊機が相手の脅威の圏外から対処できるようにすることで、隊員の安全を確保しつつ、我が国を有効に防衛するために導入するものです。  いずれの装備も、専守防衛の下、国民の生命、財産、我が国の領土、領海、領空を守り抜くため、自衛隊の装備の質的向上を図るものです。  いわゆる敵基地攻撃については、日米の役割分担の中で米国の打撃力に依存しており、政府としては、今後とも、日米間の基本的な役割分担を変更することは考えていません。  弾道ミサイル我が国領海内に着弾した場合の対処についてお尋ねがありました。  一般論として、弾道ミサイル我が国の領土、領海に飛来するおそれがある場合には、自衛隊法に基づき、弾道ミサイルの破壊措置を講じることとなります。  北朝鮮の今後の挑発行為を予断してお答えすることは差し控えますが、日米の緊密な連携の下、高度の警戒態勢を維持し、いかなる事態にあっても国民の命と平和な暮らしを守り抜いてまいります。  ミサイルの我が国への着弾に備え、国民の避難、在韓邦人等の保護、拉致被害者の救出や武装難民対策などについてお尋ねがありました。  国民の命と平和な暮らしを守るため、いかなる事態にも対応できるよう、様々な準備を行うことは国の責務です。  政府としては、弾道ミサイルを想定した避難訓練の実施、避難場所の指定の促進に取り組むとともに、朝鮮半島において在留邦人や旅行者の保護や退避が必要になった場合など、平素から様々な状況を想定し、必要な準備、検討を行っています。  あらゆる事態において拉致被害者の安全を確保することは極めて重要であり、半島有事の際は同盟国たる米国との協力が特に重要です。政府としては、これまでも米国に対し拉致被害者に関する情報提供をしてきており、拉致被害者の安全が脅かされるような事態に至った場合に、拉致被害者の安全確保のため、協力を米国政府に対して依頼しているところです。  また、我が国に避難民が流入するような場合の対応については、避難民の保護に続いて、上陸手続、収容施設の設置及び運営、我が国が庇護すべき者に当たるか否かのスクリーニング、検疫といった一連の対応を想定しています。これらの対応を適切に行うべく、引き続き関係機関による緊密な連携を図ってまいります。  いかなる事態にあっても、我が国の平和と安全の確保、国民の安全、安心の確保に万全を期していく考えです。  日中関係についてお尋ねがありました。  日本と中国は、北朝鮮問題を始め、アジアの平和と繁栄に大きな責任を共有しています。経済的には、中国の平和的発展は日本にとってチャンスです。一帯一路を含め、中国が地域の平和と繁栄に貢献していくよう、様々なレベルの対話を通じて働きかけていきます。  同時に、日本の領土、領海、領空は断固として守り抜くとの安倍内閣決意に揺るぎはありません。その決意の下、尖閣諸島をめぐる状況については毅然かつ冷静に対処していきます。  本年は、日中平和友好条約締結四十周年であり、日中関係が大きく改善したと両国の国民が認識できるような一年にしたいと考えています。引き続き、戦略的互恵関係の考えの下、大局的な観点から、あらゆる分野協力交流を推し進めてまいります。  そのためにも、早期に日中韓サミットを開催して李克強首相を日本にお迎えし、その後、私が適切な時期に訪中し、その後には習近平主席に訪日していただきたい。このようなハイレベルの往来を重ねる中で、日中関係を新たな段階へと押し上げていきたいと考えております。  働き方改革についてお尋ねがありました。  安倍政権は、高齢者若者も、女性男性も、障害難病のある方も、誰もが活躍できる一億総活躍社会実現に取り組んでおり、その最大のチャレンジが働き方改革です。働き方改革は、社会政策にとどまるものではありません。成長戦略そのものであります。  いわゆる終身雇用などを含め、我が国企業の人事、雇用慣行には、人を大切にするという優れた点があります。そうした点を失うことなく、様々な事情を抱える皆さんが意欲を持って働くことができ、誰もがその能力を発揮できるよう、柔軟な労働制度の選択を可能とする改革を進めます。  さらに、長年議論だけが繰り返されてきた同一労働同一賃金、いよいよ実現のときが来ました。雇用形態による不合理な待遇差を禁止し、非正規という言葉をこの国から一掃してまいります。  安倍政権として、これらの内容を含む働き方改革関連法案早期に提出します。新しい時代を切り開く働き方改革に向け、活発な御議論をいただければと考えております。  高齢化対策についてお尋ねがありました。  御指摘のように、人生百年時代を見据え、意欲能力がある高齢者方々活躍していただける環境を整えることは重要であります。安倍内閣としても、高齢者方々の働き方改革推進するため、年齢に関わりなく働き続けることができる企業などに対する支援充実を行うことなど、一億総活躍社会実現に向けた施策を進めています。高齢者方々が年齢に関わりなく生涯現役で活躍できる社会実現に取り組んでまいります。  経済政策パッケージの財源についてお尋ねがありました。  安倍内閣では、経済再生なくして財政健全化なしとの基本方針の下、これまでアベノミクスを進めることで財政健全化に大きな道筋を付けてきました。国、地方を合わせた税収は約二十四兆円増加し、新規国債発行額は約十一兆円減っています。また、例えば、社会保障関連費の伸びを四年連続で実質五千億円以下に抑制するなど、歳出削減努力を続けてきたところであり、今後とも、徹底的な重点化、効率化など、歳出削減努力に取り組んでまいります。  行政改革についても、これまでも行政事業レビューなどの取組を不断に進めてきたところであり、引き続き行政改革に取り組んでいきます。  他方、急速に進む少子高齢化という国難に立ち向かうべく、人生百年時代を見据え、人づくり革命を断行しなければなりません。大きな改革には大きな財源が必要になります。財源の目当てがないままでは、改革の中身それ自体が小さくなるおそれがあります。  このため、今回、消費税の使い道を見直すこととし、子育て安心プランの前倒しによる保育の受皿確保や、保育士介護職員の更なる処遇改善幼児教育無償化、真に必要な子供たち高等教育無償化など、人への投資を拡充することにより、あわせて、社会保障の安定化にもバランスよく充当することで財政健全化も確実に実現してまいります。  財政健全化についてお尋ねがありました。  繰り返しになりますが、安倍内閣では、経済再生なくして財政健全化なしとの基本方針の下、これまでアベノミクスを進めることで財政健全化に大きな道筋を付けてきました。その結果、二〇一五年度のプライマリーバランス赤字半減目標を達成しています。また、行政改革取組も不断に進めてきたところであり、補正予算についても、緊要性の高い支出を計上するなど、重点化、効率化を図っております。  今般、人づくり革命を力強く進めていくため、消費税率引上げ分の使い道を見直し子育て世代、子供たちに大胆に投資するとともに、社会保障の安定化にもバランスよく充当することとしました。  これにより、プライマリーバランスの黒字化の達成時期に影響が出ることから、二〇二〇年度のプライマリーバランスの黒字化は困難となります。ただし、日本への国際的な信認を確保し、社会保障次世代に引き渡していく責任を果たすため、財政健全化の旗は決して下ろさず、プライマリーバランスの黒字化を目指すという目標自体はしっかりと堅持してまいります。  この目標の達成に向け、これまでの経済・財政一体改革取組を精査した上で、この夏までにプライマリーバランス黒字化の達成時期と、裏付けとなる具体的かつ実効性のある計画をお示ししてまいります。(拍手)     ─────────────
  15. 郡司彰

    ○副議長(郡司彰君) 藤田幸久君。    〔藤田幸久君登壇拍手
  16. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 民進党の藤田幸久です。  私は、民進党・新緑風会を代表し、政府演説に対して質問します。  初めに、草津白根山の噴火により亡くなられた自衛官に衷心より哀悼の意を表するとともに、負傷された方々に心からお見舞いを申し上げます。  本年は明治維新百五十年に当たります。明治以来、順調に近代国家の道を歩んできた日本は、昭和の時代に軍の主導により世界大戦に突入し、史上最大の汚点を残してしまいました。安倍総理は戦後の歴代政権が積み上げてきた平和主義と民主主義を否定し、かつての危険な政治を歩んでいるように思われます。その観点から質問いたします。  安倍総理は、日本を取り巻く安全保障環境の悪化を理由に軍備増強を進めてきました。積極的平和主義の柱は軍事的手段による平和です。暴力の示威により相手国の戦争意思を抑え込む抑止力の理念の下に、戦争手段の優越さを競うことではないですか。総理見解を伺います。  米ソの力が拮抗した冷戦時代とは異なり、核の応酬は地球の破滅となる現在、核を含めた軍事的抑止力という理念は人類全体にとってむしろ危険と思われます。総理の認識を伺います。  積極的平和主義のもう一つの柱は、日米同盟強化による中国包囲論です。安倍総理は、アメリカが尖閣諸島の施政権が日本にあり、日米安保条約第五条の対象区域であることを明記したことを宣伝していますが、アメリカは尖閣諸島の領有権については日中どちらの立場も支持していません。総理、米軍が日本側に立って中国軍に対して対峙することはあり得るのでしょうか。  総理の祖父、岸信介総理が憲法の下で防衛政策を進めるために一九五七年に決定した国防の基本方針には、防衛力整備や日米安保体制に先立ち、国際協調や平和の努力、内政安定による安全保障基盤の確立がうたわれています。しかも、一九七六年版の防衛白書にも、外交等による国際協調などを前提とすることは国防の基本方針の示すとおりと記されています。これに対する総理見解を求めます。また、なぜこのような国防の基本方針に代えて二〇一三年に国家安全保障戦略を閣議決定したのか、見解を伺います。  日本が戦争をさせない国、戦争をあおらない国、戦争に巻き込まれない国であることこそ、真の平和主義と思います。総理見解を求めます。  北朝鮮による度重なる核実験弾道ミサイルの発射は、断じて容認できない暴挙です。安倍総理は、昨年のトランプ米大統領の来日時に、日本は全ての選択肢がテーブルの上にあるとのトランプ大統領の立場を支持し、日米が一〇〇%共にあると述べました。これは米国の軍事行動を支持すると受け取れますが、見解を求めます。  総理は、昨年二月十四日の衆議院予算委員会で、北朝鮮がミサイルを発射した場合、万一撃ち漏らした場合に報復するのはアメリカである、それを確実なものと相手が認識しなければ冒険主義に走るおそれがあると答弁しました。  総理、今や北朝鮮がミサイルをアメリカ本土に到達させる能力を持つ状況で、アメリカが自国民への被害を顧みずに日本のために報復するという意思をトランプ大統領に確認したのですか。また、北朝鮮はアメリカの報復が確実であるならば冒険主義に走らないという根拠を示していただきたい。  最近、米国は、米韓合同軍事演習の平昌五輪・パラリンピック中の延期や南北対話中は攻撃しないとのトランプ大統領の発言など、圧力一辺倒でない動きを見せています。トランプ大統領が日本の頭越しに中国や北朝鮮と妥協し、ICBM開発の中断を条件に既存の中距離核を黙認するディールの可能性は全くないのでしょうか。  日本政府は、朝鮮半島有事で韓国の空港が閉鎖された場合に、海上自衛隊と米軍の艦船が協力して在韓邦人や米国人らを釜山港から対馬に運ぶことを検討中との報道がありますが、在韓邦人救出をどう行うのか、総理答弁を求めます。また、国連と事前に調整を行い、人道目的で韓国の港に入る自衛艦に限り国連旗の掲揚を求める対策も一案と思いますが、総理答弁を求めます。  北朝鮮に関する六者協議で、日本とアメリカを除く中国、ロシア、韓国、北朝鮮は、第二次大戦の終結を決めたサンフランシスコ講和条約に関わっていません。ロシアとは平和条約がなく、北朝鮮とは国交もなく、中国や韓国と安倍政権関係も決して良好とは言えません。ここを正さなければなりません。  一国の最大の安全保障は隣国の信頼を獲得することにあるとも言われます。総理、岸信介総理の国防の基本方針にもあるように、これら近隣諸国との信頼醸成外交に最優先で取り組むべきではないですか。  この信頼醸成外交を展開すべく、河野外務大臣が最近中東を歴訪したことを評価します。  二年前に、中東のシーア派とスンニ派の最高位の指導者たちが来日しました。世界宗教者平和会議、WCRP出席のためで、サウジアラビアとイランが国交断絶直後の両派指導者の初の同席は世界の注目を集めました。岸田外務大臣も夕食会に出席したほか、数年前、外務省もタイのWCRPの仏教とイスラム教との和解プロジェクトを助成しました。WCRPは、国連の諮問資格を持ち、世界九十か国のほとんどの宗教団体が加盟し、人道援助や紛争の和解活動を行っています。  私も民間NGO時代からWCRPの活動支援してきましたが、現場で学んだことは、宗教同士が戦争を起こすのではなく、政治家が宗教を使って戦争を始めるということと、和解活動は、仲介者が表に出、手柄を求めると失敗するということです。宗教団体は、WCRP活動では布教活動は行わず、中立を堅持するので、対立する両派から信頼されます。実際、二〇〇四年のイラクでの日本人人質事件で、地元の自警団が解放して引き渡した日本人人質五人の引取り手はイラクのWCRPの指導者でした。  平和憲法を持ち、欧米などに比べて中立的な日本には和解外交を担う期待が高まっています。こうした和解外交、つまり平和創造外交こそ日本の柱にすべきと考えますが、外務大臣の見解を求めます。  沖縄県では、昨年以来、ヘリコプターの墜落、普天間第二小学校での窓枠落下などの事故が頻発しています。一国の防衛大臣が米軍に再発防止をお願いし無視し続けられるのではなく、飛行中止を命令すべきではないですか。また、米軍任せではなく、米軍機の点検に日本政府が関わるべきです。防衛大臣の答弁を求めます。  普天間第二小学校の事故後もヘリコプター三機がその上空を通過した事実を米軍側は認めていません。総理日本を取り戻すというなら、独立国家としての主権を取り戻すためにトランプ大統領に直談判すべきではありませんか。  事故の原因究明を妨げているのが日米地位協定です。安倍総理は、日本国憲法は占領期に押し付けられた憲法であり、改憲すべきとの考えですが、米兵の刑事裁判権や身柄引渡制限など、国民が米国による押し付けを実感しているのは、憲法よりもむしろ日米地位協定ではないでしょうか。  岸信介総理はかつて、日米地位協定の前身の日米行政協定には極めて不都合な事態が残っており、改定したいと国会で述べています。現在の日米地位協定においても、米兵の刑事裁判権や基地の管理権等の不都合が続いています。総理、岸総理の遺志を引き継ぎ、憲法改正よりも日米地位協定の改定を急ぐべきではありませんか。  平成二十五年に日米両政府が発表した在日米軍施設・区域に関する統合計画では、普天間基地の八つの返還条件が示され、その一つが、普天間飛行場代替施設では確保されない長い滑走路を用いた活動のための民間施設の使用の改善です。昨年、稲田防衛大臣は、私の質問に対して、アメリカ側との調整が整わないことがあれば、普天間飛行場の返還がなされないことになると答弁しました。何と、仮に辺野古の新基地が完成しても普天間飛行場の返還が実現しないことを認めたのです。  普天間基地の返還を実現するために、政府は、まずこうした飛行場の決定と整備を最優先で進めるべきと思います。防衛大臣の答弁を求めます。  安倍総理は、昨年、中国の一帯一路構想協力する姿勢を示す一方で、アジアインフラ投資銀行、AIIBへの加盟については否定的な姿勢を維持してきました。私は、昨年末、AIIBの金立群総裁と単独会談しました。金総裁は、AIIBへの日本の加盟を歓迎すると述べる一方、公正なガバナンスが確立できるか不明との理由で加盟しないならば、八十四の加盟国に対する侮辱ではないかと述べました。また、金総裁は、トランプ大統領もAIIBについて関心があるとの情報を得ているとも述べました。  日中平和条約四十年の今年は、日中関係の更なる強化の好機でもあり、米国に先を越される前にAIIB加盟を検討すべきと考えますが、総理答弁を求めます。  最近の読売新聞の世論調査では、景気回復を実感していない人は七三%です。これは、実感がないというより実体がないからです。第二次安倍政権誕生以来の莫大な金融緩和と財政出動にもかかわらず、消費も収入も減りました。  第二次安倍内閣発足の二〇一二年と二〇一六年を比較した数字では、総世帯の消費支出が一世帯当たり一か月平均で五千二百三十六円の減少、総世帯の年間収入は三万円の減少、一人当たりGDPは世界第十五位から二十位に下落しました。他方、非正規雇用労働者は二百十七万人、年収二百万円以下の雇用者は四十二万も増加しました。これらの事実をどう受け止めるか、答弁を求めます。株価の上昇の主因は、日銀によるETF購入やGPIF、年金運用基金など、六十兆円以上とも言われる官製相場によるものです。この実態に関する認識を伺います。逆に、公的資金投入をやめると暴落の危険があるのではないですか。答弁を求めます。  このように、デフレ脱却に失敗し、実体成果のないアベノミクスの失敗を認めるときではないですか。総理の真摯な答弁を求めます。  二〇一二年の野田内閣による社会保障・税一体改革大綱では、社会保障は需要、供給両面で経済成長に寄与する機能を有している、安定した財源の確保による医療介護子育て分野での雇用創出により経済成長との好循環を実現するとあります。  医療介護分野雇用需要を示す雇用誘発係数が他産業と比べて極めて高く、雇用生活環境の改善に加え、医療福祉業で働く人が多い地域は出生率が高いことも明らかになっています。この雇用誘発係数と出生率の高さについて、厚生労働大臣の答弁を求めます。  アベノミクスが地方にはほとんど恩恵をもたらしていない状況や地域包括ケアシステム推進のためにも、医療福祉施設を増やし、雇用を創出することが極めて重要です。今回の診療報酬、介護報酬の改定も全く不十分でした。地方医療福祉施設や従事者に対する支援をどう拡大していくか、総理答弁を求めます。  総理は、国内景気の低迷に配慮して消費税率の引上げを延期し、平成二十八年の参議院選挙に臨みました。そして昨年、消費税率引上げ財源を教育に充てるという言い訳で衆議院を解散しました。政府は今週、基礎的財政収支の黒字化が二〇二五年から二〇二七年に先延ばしとなる試算を示しました。自らの失政隠しや政治的思惑によって財政悪化を見過ごす総理の姿勢が、財政破綻への道につながるのではないですか。答弁を求めます。  また、日銀が金融緩和、つまり国債の買入れを止めると、国債が暴落し、円と株も暴落する可能性があります。すると、長期金利が上昇し、国の債務返済がますます困難になると思われますが、財務大臣の認識を伺います。  日銀は今週、金融緩和の継続を決めましたが、どこかで円の信用が失われ、円が暴落する可能性があるのではないでしょうか。財務大臣の認識を伺います。  安倍総理は、新年早々、リトアニアの杉原千畝記念館を訪ね、杉原さんの人道的行為を日本人として誇りに思うと述べました。しかし、戦後外務省は、多くのユダヤ人を救った杉原さんを冷遇し、依頼退職という形で事実上解雇、後にイスラエル政府が勲章を与えたのを機に、彼の没後十四年もたった二〇〇〇年になって、河野洋平外務大臣によって名誉回復されたと言われています。その事実関係について、河野太郎外務大臣に伺います。  明日、一月二十七日はホロコースト犠牲者を想起する国際デーで、グテーレス国連事務総長からのメッセージも届いています。ユダヤ人を迫害した独裁政治の再来を防ぐために創設されたのが、アメリカ・ワシントンのホロコースト記念博物館です。ここには、ファシズムの十四の初期警報という政治学者ローレンス・ブリットの言葉が掲示されており、安倍総理政治手法との類似性が話題になっています。  例えば、団結のための敵、スケープゴートづくりは安倍総理による秋葉原でのこんな人たち発言や前川前文部事務次官への人格攻撃、マスメディアの統制はNHK会長などの交代、犯罪取締りと刑罰への執着は特定秘密保護法と共謀罪、労働者の力の抑圧若しくは排除は働き方改革という名の労働者の支配などが指摘されています。総理、こうしたイメージをどう受け止めますか、お答えください。  不正な選挙。ヒットラーは、権力完全掌握の前に選挙を連発し、国民の支持を得たとの口実にしたと言われています。総理、昨年の大義なき解散は、この手法を参考にしたのですか。これらの終着点は、強力な国家主義、軍隊の最優先であり、解釈改憲による安保法制の強行採決ではありませんか、お答えください。  初期警報のもう一つが、身びいきと汚職の蔓延です。これこそ、森友、加計問題のお友達のためのそんたくではないですか。豊中市にある国有地が、安倍総理夫人が名誉校長を務めていた森友学園に、ごみ撤去費が大幅に差し引かれ、法外に安く売却されました。昨年、会計検査院は、この値引き額に関し、十分な根拠が確認できず慎重な検討を欠いていたとする報告書を国会に提出しました。また、昨年以来、学園と近畿財務局の交渉の録音データや交渉に関する内部文書の存在が明らかになりました。  政府はこれまで、事前の価格交渉はしていない、ごみ撤去費は適正に算定した、交渉記録は廃棄したと答弁してきましたが、国民は全く納得していません。関係者の処分や国会招致も含め、疑惑の解明に対する総理見解を伺います。  以上、安倍政治の歩みを見ると、戦後日本が目指してきた民主主義、平和主義、基本的人権を否定しているように思われます。安倍総理による憲法改正を認めることは断じてできません。  来年、平成時代が終わりを迎えます。世界中で紛争、テロ、分断が増大する中、平成の世の後も、平成の名のように、日本が、戦争をさせない国、戦争をあおらない国、戦争に巻き込まれない国であり続けることに全力で取り組むことを国会議員の皆さんと安倍総理に強く求め、質問を終わります。  御清聴ありがとうございました。(拍手)    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇拍手
  17. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 藤田議員にお答えをいたします。  積極的平和主義と抑止力についてお尋ねがありました。  国際協調主義に基づく積極的平和主義は、我が国の国家安全保障の基本理念です。我が国の安全及びアジア太平洋地域の平和と安全を実現しつつ、国際社会の平和と安定及び繁栄の確保にこれまで以上に積極的に関与していくというものであります。  その内容は国家安全保障戦略にも透明性を持って示されており、その戦略的アプローチとしては、まず外交努力の強化を述べた上で、防衛面のみならず、法執行やテロ対策強化を含む幅広い総合的な施策を示したものです。このように、積極的平和主義は、軍事的手段による平和、戦争手段の優越さの競争であるとの議員の御指摘は全く当たりません。  抑止力に関しては、国際社会には核戦力を含む大規模な軍事力が存在し、核兵器を始めとする大量破壊兵器等の拡散といった脅威が存在するなど、引き続き不透明、不確実な要素が存在します。  そのような中、我が国としては、核抑止力を中心とする米国の拡大抑止が不可欠であり、その信頼性の維持強化のために米国と緊密に連携していくとともに、あわせて、我が国自身取組により適切に対処する必要があると考えています。  尖閣諸島への日米安全保障条約第五条の適用についてお尋ねがありました。  尖閣諸島は、歴史的にも国際法上も我が国固有の領土であり、現に我が国はこれを有効に支配しており、我が国の施政の下にあります。  昨年二月の日米首脳共同声明を始め米国は累次の機会に、日米安全保障条約第五条は尖閣諸島にも適用され、尖閣諸島に対する日本施策を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対するとし、日米安全保障条約の下での米国の条約上の義務へのコミットメントを確認してきています。  国防の基本方針と国家安全保障戦略についてお尋ねがありました。  国防の基本方針は、戦後初めて我が国の防衛政策の基礎となる文書として策定されたものであり、政府が国防に関する考え方を透明性を持って文書で示したことは、対外的信頼の観点を含め、様々な観点から意義があったものと認識しています。  国家安全保障戦略は、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増している中、国防の基本方針にある国防の観点に加え、我が国の国益を長期視点から見定めた上で国家安全保障のための方策に取り組む必要があるとの考え方の下、国家安全保障に関する基本方針として策定したものです。  このように、国家安全保障戦略は、安全保障環境を踏まえ、国防の基本方針の内容を包含し、それに代わるものとして策定されたものです。  戦争と平和主義についてお尋ねがありました。  国家安全保障戦略にあるとおり、我が国は戦後一貫して平和国家としての道のりを歩んできており、我が国の平和国家としての歩みは国際社会においても高い評価を得てきています。我が国としては、これをより確固たるものにしていかなければなりません。  一方、我が国の平和と安全は、我が国一国では確保できません。我が国としては、平和国家としての歩みを引き続き堅持しながら、同時に、国際社会の主要なプレーヤーとして、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、国際社会の平和と安定及び繁栄の確保のために積極的に関与していく必要があります。  国家安全保障戦略の策定以来、かかる考え方に従い努力を行ってきた結果、日米同盟はかつてなく強固になり、積極的平和主義についても世界各国から多大な支持と評価を得ています。我が国としては、今後とも、かかる考え方に立ち、平和国家としての歩みをより確かなものとしていきます。  北朝鮮問題についてお尋ねがありました。  まず指摘しておきたいのは、挑発を行っているのは北朝鮮の方であり、私も、世界中の誰一人としても、紛争などを望んでいません。  米国の行動について予断することは差し控えますが、政府としては、他の国・地域体制を力により転換することを目標として掲げたことはありません。  北朝鮮を抑止する上での手のうちを明らかにすることはできませんが、昨年十一月のトランプ大統領訪日の際には、十分な時間を掛けて北朝鮮情勢を分析し、今後の方策について完全に意見の一致を見ました。  北朝鮮が暴発するかもしれないとの議論もありますが、これに乗ること自体、北朝鮮の交渉力を高めてしまうことになります。  日米間では、南北対話を受けた対応を含む対北朝鮮政策について緊密なすり合わせを行ってきており、引き続き日米両国は北朝鮮問題に関し一〇〇%共にあります。  今後とも、日米の協力を一層緊密にし、同盟の抑止力を高め、いかなる事態にあっても国民の命と平和な暮らしを守り抜いてまいります。  在韓邦人の救出と国連との調整についてお尋ねがありました。  海外で邦人が危機にさらされたとき、邦人の保護、救出に全力で当たることは国としての当然の責務であります。  政府としては、平素から在韓邦人の保護や退避が必要となる様々な状況を想定し、関係国や関係機関とも連携しながら必要な準備、検討を行っていますが、具体的な内容については、邦人の安全確保に重大な影響を及ぼし得ることから差し控えます。  近隣諸国との関係についてお尋ねがありました。  北朝鮮の核・ミサイル開発の進展など、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、政府としては、日米韓で緊密に協力し、中国、ロシアを始めとする近隣諸国との連携を進めてまいります。  中国とは、本年が日中平和友好条約締結四十周年であり、日中関係が大きく改善したと両国の国民が認識できるような一年にしたいと考えています。  韓国とは、これまでの両国間の国際約束、相互の信頼の積み重ねの上に、未来志向で新たな時代協力関係を深化させてまいります。  ロシアとは、北方四島の帰属の問題を解決し平和条約を締結するとの基本方針の下、粘り強く交渉を進めてまいります。  米軍ヘリの事故についてお尋ねがありました。  米軍の運用に当たって、地域住民の方々の安全確保は大前提であり、事件、事故はあってはなりません。トランプ大統領には私から直接しっかりと伝え、大統領と地元方々の懸念を軽減する重要性を再確認しました。  ヘリの事故については、マティス国防長官からも謝罪があり、再発防止について重要な課題として取り組むとの表明がありました。  普天間飛行場周辺の全ての学校上空の飛行を最大限可能な限り避けるとの方針については、米国に対してしっかりと遵守するよう求めるのみならず、日本側においてもその状況の確認に努めているところです。  今後とも、安全の確保については最優先の課題として日米で協力して取り組んでいきます。  日米地位協定についてお尋ねがありました。  日米地位協定については、安倍政権の下で、日米地位協定締結から半世紀を経て初めて、環境及び軍属に関する二つの補足協定の策定が実現しました。  刑事分野でも様々な改善の取組を行ってきており、日本側に第一次裁判権がある犯罪の被疑者たる米軍人・軍属の拘禁について、平成七年に、起訴前の拘禁の日本側の移転を可能とする合意を達成し、これに基づき、実際に起訴前の拘禁の移転が行われてきています。  今後とも、事案に応じた最も適切な取組を積み上げていくことにより、日米地位協定のあるべき姿を不断に追求してまいります。  AIIBについてお尋ねがありました。  膨大なアジアのインフラ需要に効果的に応えていくことは重要な課題です。AIIBが国際金融機関にふさわしいスタンダードを備えることにより、アジア地域の持続的な発展に資する機関として役割を果たすことを期待しています。  AIIBは設立から二年足らずであり、運営の初期の段階にあります。したがって、我が国としては、引き続き、AIIBが公正なガバナンスを確立できるのか、借入国の債務の持続可能性環境社会に対する影響への配慮が確保されているかについて、運用を注視していきたいと考えております。  経済認識等についてお尋ねがありました。  五年間のアベノミクスにより、日本経済は足下で二十八年ぶりとなる七四半期連続プラス成長となり、四年連続の賃上げにより経済の好循環は着実に回り始めており、民需主導の力強い経済成長が実現し、デフレ脱却への道筋を確実に進んでいます。  消費支出については、世帯当たりの消費を捉える家計消費では、世帯人員の減少などから長期的に減少傾向となっていますが、一国全体の消費を捉えるGDPベースでは、実質で二〇一六年以降前期比プラス傾向で推移するなど、持ち直しています。  家計の世帯当たり年間収入については、高齢化の進む中、二〇一二年以降横ばい圏内で推移していますが、一国全体で見たGDPベースの家計の可処分所得は三年連続で増加しています。  また、一人当たりの名目GDPは、円ベースで見れば過去最高の水準です。  非正規や年収二百万円以下の方々が増加しているとの御指摘でありますが、正規雇用者数は二〇一五年に八年ぶりにプラスに転じ、二〇一六年と合わせた二年間で七十九万人増加。この増加幅は非正規を上回っています。  年収二百万円以下の給与所得者の数は御指摘のとおり増加していますが、これは、景気が緩やかに回復する中で、パートで働く方が増加したことによるものと考えられます。  また、給与所得者数は全ての所得階層で増加しており、二百万円以下では二三・九%から二三・三%に減少していることも申し上げたいと思います。  今後も、あらゆる政策手段を総動員して、デフレ脱却、力強い経済成長を目指してまいります。  なお、株価に関するコメントは差し控えますが、日本銀行によるETFの買入れは、物価安定目標を実現するため金融政策の一環として行われているものであり、特定の株価水準を念頭に置いているものではないと承知しております。また、年金積立金の運用は、法律に基づき、専ら被保険者の利益のために安全かつ効率的に行うものとされております。  地方医療福祉施設や従事者に対する支援についてお尋ねがありました。  団塊の世代が七十五歳以上になる二〇二五年に向けて、どこに住んでいても適切な医療介護を安心して受けられる地域包括ケアシステムの構築を進めることが重要です。  このため、平成三十年度の診療報酬、介護報酬同時改定においては、診療報酬本体はプラス〇・五五%、介護報酬はプラス〇・五四%と、いずれもプラス改定を行うとともに、地域包括ケアシステムの構築を第一の柱とし、具体的な改定内容の議論を進めています。  さらに、基金の活用による施設整備や人材確保を行っております。特に介護職員については、来年秋から、リーダー級の職員の皆さんを対象に更に八万円相当の給与増を行えるような処遇改善実現することとしております。  財政健全化についてお尋ねがありました。  安倍内閣では、経済再生なくして財政健全化なしとの基本方針の下、これまでアベノミクスを進めることで財政健全化に大きな道筋を付けてきました。国、地方を合わせた税収は約二十四兆円増加し、新規国債発行額は約十一兆円減っています。  急速に進む少子高齢化という国難に立ち向かうべく、人生百年時代を見据え、人づくり革命を断行しなければなりません。  大きな改革には大きな財源が必要になります。財源の目当てがないままでは、改革の中身それ自体が小さくなるおそれがあります。このため、今回、国民の信を問い、理解を得た上で、消費税の使い道を見直すこととしました。失政隠し、政治的思惑との御指摘は全く当たりません。  これにより、プライマリーバランス黒字化の達成時期に影響が出ることから、二〇二〇年度のプライマリーバランスの黒字化は困難となります。ただし、財政健全化の旗は決して下ろさず、プライマリーバランスの黒字化を目指すという目標自体はしっかりと堅持してまいります。  この目標の達成に向け、これまでの経済・財政一体改革取組を精査した上で、この夏までにプライマリーバランスの黒字化の達成時期と、裏付けとなる具体的かつ実効性の高い計画を策定してまいります。  私の政治手法についてのお尋ねがありました。  藤田議員御指摘言葉については、不勉強で存じ上げておりません。また、ファシズムの政治手法についても、藤田議員のようにつまびらかではないことから、比較してお答えすることはできません。  政治において重要なことは、民意にしっかりと耳を傾けた上で、評論ではなく、やるべき政策実行し、結果を出すことであります。三か月前の総選挙で国民の皆さんからいただいた力強い負託、その責任の重さを胸に刻み、これからも全力で結果を出す政治を進めてまいります。  森友学園への国有地売却に係る国会招致等についてお尋ねがありました。  森友学園への国有地売却に関しては、今後ともしっかりと説明を果たしていかなければならないと考えています。  文書の管理、保存については、各行政機関が責任を持って行っており、また、報道された音声データを含め、現場でのやり取りについてもこれまでも説明してきたところですが、今後、国会の場において財務省など関係省庁からしっかり説明させていただきます。  国有地は国民共有の財産であり、その売却に当たっては国民の疑念を招くようなことがあってはなりません。  私としても、国有財産の売却について業務の在り方を見直すことが必要と考えており、関係省庁において今後の対応についてしっかりと検討させているところです。  職員への対応については、国家公務員法上、所管大臣がこれを行うものとされており、関係省庁において適切に判断されるものと承知しております。  また、国会における審議の在り方については国会においてお決めいただくことだと認識しております。  なお、私や妻がこの国有地払下げに、もちろん事務所も含めて、一切関わっていないことはこれまでも申し上げてきたとおりであります。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣河野太郎君登壇拍手
  18. 河野太郎

    国務大臣(河野太郎君) 私に二つ御質問をいただきました。  日本は和解外交を外交の柱にするべきではないかとのお尋ねがまずございました。  日本は、国際社会の平和と安定及び繁栄の確保に積極的に貢献するとの国際協調主義に基づく積極的平和主義の下、様々な国に対し、平和構築、国民和解、民主化支援等の支援を行ってまいります。  例えば、私は重点分野の一つとして中東外交を掲げておりますが、紛争や暴力的過激主義等、中東地域が直面する課題解決のため、宗教的、民族的に中立であり、アメリカと同盟関係にある日本だからこそできる取組として、対話あるいは信頼醸成の促進を行っていく考えです。  引き続き、地球儀を俯瞰する観点に立ち、積極的平和主義の旗の下、世界の平和と安定及び繁栄に貢献してまいります。  杉原千畝元外交官の処遇についてのお尋ねがございました。  杉原千畝氏による命のビザの発給により、多くのユダヤ人の尊い命が救われました。杉原氏の行動は、戦後七十年を経た今日でも、世界に広がるユダヤ人を通じて各国でも高く評価されております。  外務省と杉原家の間で意思の疎通が欠けていた点については、二〇〇〇年十月に外交史料館において杉原千畝顕彰プレート除幕式を行った際に、当時の河野洋平外務大臣がおわびを申し上げるとともに、人道的かつ勇気ある判断により人道的考慮の大切さを示されたすばらしい先輩を持ち、誇りに思うと述べました。  今月、安倍総理がリトアニアの杉原記念館を訪問した際にも述べたとおり、杉原氏の行動は勇気ある人道的行為として世界中で高く評価されており、日本人として誇りに思うものです。  政府として、杉原氏の業績を後世に語り継いでいくことは重要であると考えております。(拍手)    〔国務大臣小野寺五典君登壇拍手
  19. 小野寺五典

    国務大臣(小野寺五典君) 藤田議員にお答えいたします。  まず、相次ぐ米軍ヘリの事故への対応についてお尋ねがありました。  米軍の運用に当たっては、地域住民の方々の安全確保は大前提であり、事件、事故はあってはならないものです。  米軍機の事故や予防着陸、緊急着陸が相次いでいる中、在日米軍の全ての航空機について徹底的な整備、点検を確実に実施するとともに、実効性のある再発防止のための対策を講ずるよう米側に強く求めています。  さらに、再発防止を求める以外にも、事故等の態様を踏まえ、個別に判断の上、米軍に対して飛行停止も求めてきております。  引き続き、米側に対し、安全面に最大限配慮するとともに、地域住民への影響を最小限にとどめるよう、強く求めてまいります。  次に、米軍機の点検への日本政府の関与についてお尋ねがありました。  米軍機の点検、整備については、米軍の部隊における点検、整備に加え、米軍の国際競争入札によって決められた受注企業による定期機体整備が行われており、一部の米軍機については日本企業も定期機体整備を担当しているものと承知をしています。  いずれにせよ、米軍機の点検、整備については、引き続き米側において万全を期すよう求めてまいります。  次に、普天間飛行場の返還についてお尋ねがありました。  最も大切なことは、住宅や学校で囲まれ、市街地の真ん中にある普天間飛行場の固定化は絶対に避けなければならないということであります。これは政府と沖縄との共通認識だと考えております。  普天間飛行場の辺野古への移設は、米軍の抑止力を維持しながら、同時に普天間飛行場の危険性を一刻も早く除去するための唯一の解決策です。平成二十五年に日米両政府で作成し公表した沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画においては、普天間飛行場代替施設では確保されない長い滑走路を用いた活動のための緊急時における民間施設の使用の改善が普天間飛行場の返還条件の一つとして記載をされております。  防衛省としては、一日も早い返還に向けて、緊急時における民間施設の使用の改善を含め、米側と協議を進めるとともに、辺野古の工事を着実に進めることが重要と考えております。  辺野古移設が完了し、米側の運用が開始される段階で普天間飛行場の返還が実現するよう取り組むのは当然のことであり、辺野古移設完了後も普天間飛行場が返還されないという状況は全く想定しておりません。稲田大臣も国会でそのような趣旨で述べたと私は思っております。(拍手)    〔国務大臣加藤勝信君登壇拍手
  20. 加藤勝信

    国務大臣(加藤勝信君) 藤田議員より、医療福祉業の雇用誘発係数と出生率の高さについてお尋ねがございました。  平成二十三年の産業連関表労働誘発係数によると、ある産業において需要が発生したときの労働需要への効果を示す雇用誘発係数は、医療福祉業では十億円当たり百三十四・九人と、対個人サービス業、建設業、商業に次いで高い水準となっております。また、医療福祉業に従事する労働者の割合が高い都道府県は出生率も比較的高いという研究者の指摘があることは承知をしておりますが、これについては、理由も含め、必ずしも明らかになっているものではございません。  いずれにしても、地域医療福祉分野で働く人が多くいて必要な医療福祉サービスが提供されることは、子供を産み育てる環境整備にもつながり得るものと認識をしております。(拍手)    〔国務大臣麻生太郎君登壇拍手
  21. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) 藤田議員から日銀の金融緩和に係る財政の持続可能性及び通貨の信認についてのお尋ねが二問あっております。  まず、日銀の金融緩和と財政の持続可能性についてお答えをいたします。  日銀は物価安定目標の実現に向けて努力をしており、その金融政策について、仮定に基づく質問への回答は差し控えさせていただきます。  一般論としては、日本の公的債務残高につきましては、御存じのように、GDPの二倍程度に累積するなど、厳しい状況にありますので、財政の持続可能性に対する信認を確保することは極めて重要であると存じます。  現政権では、経済再生と財政健全化に取り組み、これまでも、過去最高水準の名目GDPを背景に国の税収を約十七兆円増加させる、また、歳出削減努力を積み重ねて、一般歳出の目安を三年連続達成をし、かつ、新規国債発行額を六年連続で減額、合計約十一兆円縮減をいたしております。  引き続き、こうした取組を着実に進めることが重要と考えておりまして、財政運営に関しましては、具体的かつ実効性の高い国民の信頼を得られる計画を今年の夏の骨太方針において示したいものと考えております。  次に、日銀の金融緩和と通貨の信認についてのお尋ねがあっております。  日銀は、先般、一月の二十三日の金融財政決定会合において、長短金利操作付き量的・質的金融緩和を維持、金融緩和を継続していくことを決定をしております。今後とも、経済・物価情勢を踏まえつつ、物価安定目標の実現に向けて努力することを期待をいたします。  御指摘の通貨に対する信認というものに関しましては、経済のファンダメンタルズの強さに加えて、物価の安定、財政規律の維持など、総合的なものによってなされるものだと考えております。これまで現政権が取り組んできた経済再生と財政健全化の取組を今後とも着実に進めていかなければならないものだと考えております。(拍手)     ─────────────
  22. 郡司彰

    ○副議長(郡司彰君) 松村祥史君。    〔松村祥史君登壇拍手
  23. 松村祥史

    ○松村祥史君 自由民主党の松村祥史です。  私は、自由民主党・こころを代表して、安倍総理の施政方針演説について、総理並びに関係大臣に質問いたします。  我が国災害が多い国です。今週火曜日、二十三日には群馬県草津白根山が突然噴火しました。お亡くなりになられた方の御冥福を謹んでお祈りし、被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。  また、先週一月十七日で阪神・淡路大震災が発生してから二十三年がたち、その後も、中越地震東日本大震災など、様々な震災が発生しました。そして、一昨年四月には、九州熊本地方を震度七の地震が二度襲いました。これは観測史上初めてであり、まさに想定外の被害の大きさでした。  熊本地震対応の初動において、安倍総理はすぐに陣頭指揮を執られ、また同時に被災地にも入られました。その際総理は、先手先手で、できることは全てやると全力支援に当たる決意を述べられ、甚大な被害を前に現場で奮闘する我々に安心感を与えていただきました。このとき、トップリーダーの一言は危機的状況下で大きな影響力があると肌で感じた瞬間であり、これほど言葉の重みを感じたことはありませんでした。  当時の安倍総理言葉は、被災者や震災対応に当たった皆様の心に今でも深く刻み込まれており、改めて総理に感謝申し上げたいと思います。  そして、その言葉どおり、総理からの指示で、水、電気、ガスといった生活インフラ早期復旧を始め、自治体の財政負担軽減、病院や診療所、社会福祉施設へのグループ補助金の適用拡大、直轄代行制度による阿蘇大橋や道路の早期復旧等に速やかに着手していただきました。新たな財政支援の枠組みによる第三セクター南阿蘇鉄道の全線復旧の決定も全国の先例となるものでありました。  また、全国津々浦々から心温まる励ましをいただきました。今までの義援金は五百十三億円に上り、今なお寄せられています。国民の皆様の温かい思いは熊本の支えです。厚く御礼申し上げたいと思います。  おかげさまで、復興のシンボルである熊本城の天守閣の復旧など、様々な事業が少しずつではありますが、進んでおります。  しかし、復旧復興において、課題は時々刻々と変化します。今も四万二千人もの被災者方々が応急仮設住宅等の生活を余儀なくされており、その方々の住宅再建も急務ですし、さらには自治体の財政負担等の更なる支援の必要性など、様々な課題現場では抱えています。  どれほどやっても、それでも課題は必ずあり、復興の難しさを痛感しています。熊本の真の創造的復興に向け、安倍総理には引き続き御支援を賜りたいと思います。  被災地からの一日も早い復旧復興を願う声に応えるには、災害が起きてから復旧復興事業の迅速化のために工夫をするのではなく、事前に政府において改善すべき点や更に工夫できることについて検証し、改善策を共通化、一般化することで、東日本大震災熊本地震などの復旧復興事業の加速化、ひいては将来の迅速かつ円滑な実施に生かすことができるのではないかと考えます。  この点も含めて、迅速な災害復旧復興に対する総理決意をお聞かせください。  昨年九月、衆議院解散に当たって、総理は、少子高齢化、緊迫する北朝鮮情勢、まさに国難とも呼ぶべき事態に強いリーダーシップを発揮する、自らが先頭に立って国難に立ち向かっていくと国民の皆様に訴えました。まさに今、我が国は、外交・安全保障環境の激変、そして人口減少、生産年齢人口減少という国難に直面しています。選挙から三か月、この難局に安倍内閣はどう立ち向かっているのか、これこそが国民の皆様が心底知りたいと思っていることではないでしょうか。    〔副議長退席、議長着席〕  本日は、この外交・安全保障、そして人口減少に関連する課題について、総理関係大臣お尋ねしたいと思います。  昨年十月の中国共産党大会で、習近平国家主席は、今世紀中頃までに社会主義現代化強国の建設を目指すことを明らかにしました。二〇三〇年には中国が経済力で米国を上回るという予測があり、中国の国際的な影響力は極めて大きなものになると考えられます。  さらに、米軍のより優れた防衛ミサイル、いわゆるTHAADの韓国配備に対する経済的圧力、尖閣諸島の接続水域への潜水艦の航行などを見れば、我が国を含む周辺各国との緊張感が高まりかねないという懸念は否定できません。  しかし、我が国と中国は、歴史的に見て長い友好往来の期間があります。また、北朝鮮問題などへの対応でも、中国との良好な関係の構築、発展が欠かせません。  一帯一路構想についても、インフラの開放性や透明性の確保など、地域世界の平和への貢献や我が国の国益を図る観点から見た柔軟な対応が必要ではないかと思います。  同時に、安倍総理が提唱する自由で開かれたインド太平洋戦略、すなわちインド太平洋地域における法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序の維持強化のために、どのように中国と連携していくのかという戦略も重要です。  この自由で開かれたインド太平洋戦略の考え方は、二〇〇七年の第一次安倍政権の頃から安倍総理が提唱されてきたものだと承知していますが、日本国際社会をリードする形で大きな外交ビジョンを示し、それを実行していくということは極めて画期的なことです。  日本の外交戦略に米国が賛同し、これを共同で進めていくということは、過去の歴史でも類を見ないものです。これまでも総理は、この外交戦略実現のために各国協力を呼びかけ、その結果、米国のトランプ大統領やインドのモディ首相などとの間でも緊密に連携協力していくことで一致しています。  本年は、日中平和友好条約締結四十周年でもあります。是非とも、この四十周年という絶好の機会を生かして、日中関係の一層の発展のみならず、自由で開かれたインド太平洋地域実現に向けて、中国に協力を呼びかけるという懐の深い外交を展開していくべきと考えております。  そこで、総理に、日中関係を今後どのように一層発展させていくおつもりか、お伺いします。加えて、中国との協力も含め、どのように自由で開かれたインド太平洋戦略を進めていくおつもりか、お尋ねします。  続いて、安全保障関係についてお伺いします。  安倍総理は、この度、日本の首相として初めてバルト三国を訪問し、北朝鮮の核・ミサイル開発に対する圧力強化や、拉致問題の解決への協力を引き出しました。二〇一四年のクリミア危機以降、国防費を大幅に増額し、NATO加盟諸国の対GDP二%目標を達成したエストニアを含むバルト三国は、安全保障上の緊張感に直面しています。各国と価値観を共有するとともに、平和の維持に対して応分の負担と責任を分かち合うことは極めて重要と考えます。  第二次安倍政権発足以降、我が国の防衛費は着実に伸びていますが、対GDPではいまだ一%以下です。装備品の調達も、米国防省からの対外有償軍事援助が政権発足時に比べ約四倍にも増加し、防衛部門からの撤退を余儀なくされる国内企業も出るのではと懸念されています。  また、任務の多様化と活動の活発化に伴い、各部隊の疲労も限界に達しています。慢性的に人員不足に加え、少子化や景気の向上の影響もあり、隊員募集は厳しい状況にあります。隊員の抜本的な処遇の改善と退職後の再就職等のトータルライフケアを国を挙げてサポートすることも重要です。  そのような中、安倍総理は施政方針で、次期防衛大綱について、従来の延長線上ではなく、国民を守るために真に必要な防衛力のあるべき姿を見定めていきたいとの強い意思を示されました。  そこで、政府として新たな防衛大綱と中期防衛力整備計画についてどのような方針で策定に臨まれるのか、総理のお考えをお伺いいたします。  さて、ここからは、人口減少、特に生産年齢人口の減少がもたらす問題にどう対応していくのかという観点から質問いたします。  現在、生産年齢人口は大きく減少しており、これまで想像すらできなかった状況にあります。しかも、減少度合いは大都市より地方の方が激しくなっています。この事実だけを見れば、我が国、とりわけ地方は、もう成長できないという悲観論があふれてしまうことになります。しかし、アベノミクスにより、名目GDPは過去最高の五十六兆円の増加、若者の就職内定率も企業収益も過去最高です。生産年齢人口減少下でも、正しい政策を展開すれば経済は伸びているという希望が示されたと思います。  では、生産年齢人口減少時代の中で、経済の前向きな循環を加速し、地方創生を進めるに当たって欠くことのできない視点は何でしょうか。私は、中小企業・小規模事業者であると確信しています。  中小・小規模事業者は、我が国企業の九九・七%を占め、従業員数でも約三千四百万人と大企業の約二・三倍の雇用を担っています。特に、地方雇用に、より大きな役割を果たしています。地方経済は、業種、企業規模、地域によってはいまだ厳しい状況にある中、経済の力強さを地方の隅々にまで浸透させ、経済再生の完遂と地方創生実現には、中小・小規模事業者の持続的な成長が不可欠です。  ただ、大企業と中小・小規模事業者との生産性には格差が存在し、一人当たりの付加価値額で見れば大企業の約半分しかありません。経常利益率も低く、資金的余裕が少ないため、新たな情報技術の導入に踏み切ることができないという声が上がっています。賃金ギャップなどが広がりつつあり、ますます人手不足に陥るという悩みも耳にします。これでは、生産性向上がより必要な中小・小規模事業者生産性革命が進まないということになりかねません。  こうした状況を打破するために、政府は、ものづくり補助金を始めとする予算措置の拡充や、攻めの設備投資に対する固定資産税の半減など、あらゆる支援措置を集中的に講じてきました。平成二十六年には小規模企業振興基本法を制定し、五十五万者の中規模企業と三百二十五万者の小規模事業者企業規模で分け、ターゲットを絞り込んだ上で、それぞれの実態に合わせた施策実行することとしました。これは、小規模事業者もアベノミクス加速のエンジンにしようとしたことであり、大いに評価できます。  総理は、税制、予算、規制改革、あらゆる政策を総動員するとおっしゃっていますが、まさしくそのとおりであります。今国会では生産性向上の実現のために立法措置を検討されていると聞いていますが、生産性革命の確かな実現のために、中小企業・小規模事業者の生産性向上に向けてどのように取り組んでいかれるのか、総理のお考えをお聞かせください。  また、固定資産税については、今回の税制改正大綱においても、市町村の条例で定める割合次第では課税標準をゼロとすることも可能としています。固定資産税は自治体の基幹税ですが、事業者にとっては税負担が下がり、非常にメリットが大きく、画期的な取組です。生産性革命のうねりを全国津々浦々に広げていくためには国と自治体が一体となって支援していくことが重要だと考えますが、このような状況でいかに自治体へ協力を促していくのか、総理にお考えを伺います。  加えて、中小企業・小規模事業者は、経営者の高齢化や後継者不足の深刻化により、事業の将来性にかかわらず廃業せざるを得ないという事業承継の問題に直面しております。経済産業省が示したシナリオでは、日本企業の三社に一社、百二十七万者が二〇二五年、廃業危機を迎えるというものであり、このまま廃業問題を放置すれば、雇用六百五十万人、GDP二十二兆円が消失してしまうというものであります。  これについては、我が党は大いに議論し、今国会に提出される税制改正には事業承継税制による相続税等の緩和が盛り込まれることとなり、思い切った予算上の措置も講じられることとなります。この施策により円滑な事業承継が進むものと期待していますが、日本経済地方創生を支える中小・小規模事業者が健全に次世代に引き継がれるようどのように支援策を力強く進めていくのか、世耕経済産業大臣のお考えをお聞かせください。  続いて、農林水産業について質問します。  我々は、農家の所得を向上させ安心して農業に取り組めるようにするため、農政全般にわたる改革を進めてきました。この中で、本当に農家のためになるのか疑問の多い政策、例えば、土地改良事業を半分に減らすとか、戸別所得補償で主食用の米にも交付金を支払うといった政策については、きっちりと見直しを進めてきました。  この結果、今年から米の直接支払交付金はなくなり、不安を感じる農家の方もいらっしゃるでしょうが、幾ら交付金をもらっても、その分米価が下がってしまえば農家にとって意味がないのです。安倍内閣で米政策改革を進めてきた結果、ここ三年、米価は着実に回復しています。交付金を十分に上回る米価の回復が実現しているわけであります。  また、農家の手取りを意味する生産農業所得も、平成二十七年、二十八年と二年連続で増加し、平成十一年以降で最も高い水準になっています。私は、農家の皆様の不安に寄り添いながらも、これまでの改革の成果も丁寧に説明していくことで改革への理解も広がっていくものと考えています。  その際、十分に目を配るべきは、中山間地における農業の重要性です。  中山間地農業は、生産額や農家数で我が国農業の約四割を占めるだけでなく、国土保全や水資源涵養、豊かな自然景観の提供といった公益を担っています。しかし、中山間地は、傾斜地であったり、人口減少、高齢化、担い手不足に直面したりするなど、耕作放棄が起きやすくなっています。中山間地の衰退は日本の衰退につながります。中山間地農業が元気になるようしっかりと取り組んでいく必要があります。  もう一つ、農林水産業方々に寄り添って考えるべきことは、TPP、日EU・EPAの発効への不安です。経済連携協定により、我が国の優れた農産物の輸出など、海外での市場開拓や経済投資活動は容易になりますが、やはり農林漁業に携わる方々は、海外からの輸入増などにより影響を受けるのではないかと不安を抱いています。  食は国の基本です。我々は、農林水産業に従事する方々の懸念を払拭し、将来に夢と希望を持てるよう、体質強化のための予算を協定発効を待つことなくどんどんと実行すべきと訴え、実現してきました。  そこで、総理は、若者が将来に夢や希望の持てる農林水産新時代を切り開いていくとおっしゃっていますが、この農林水産新時代を切り開くため、TPP、日EU・EPAへの対応も含めて、農林水産業全般にわたる改革をどのように進めるおつもりなのか、総理のお考えをお聞かせください。  間もなく二月、いよいよ平昌冬季オリンピックパラリンピックが開催されます。そして、この五輪が終われば、次は二〇一九年ラグビーワールドカップ、二〇二〇年東京オリンピックパラリンピックです。我が国への注目度が世界的にますます高まり、更に多くの外国人観光客の皆様が訪れるのではないかと期待しています。  さきの東京オリンピック、一九六四年は、OECDに加盟し、先進国の仲間入りをした年でした。この東京五輪に合わせて、東海道新幹線が開業、首都高速道路が開通し、我が国の高度経済成長を支えました。五輪に参加し、観戦のために訪れた外国の皆様は、日本の成長に目をみはったと思います。五輪の成功はまさに我が国経済の新しい幕開けとシンクロし、国立競技場に鳴り響くファンファーレは日本の第一創生期の幕開けを告げるものだったと感じています。  二〇二〇年も、自動運転、人工知能の活用など、これからを実感できるテクノロジーがますます身近になり、日本の先進性やすばらしさをアピールできる絶好の機会としなければなりません。伝統的、文化的から先端性、独自性、世界の人々を魅了するクールジャパンも同様です。この機会に更に世界中に広くPRできれば、クールジャパン自体が一層大きな市場へと成長し、インバウンド観光にも大きく貢献することとなります。まさに日本の第二創生期の幕開けという年になることが期待できます。  そこで、松山担当大臣にお伺いいたしますが、クールジャパンをどのように進め、我が国経済成長や地方創生を成し遂げるためにどのように工夫するおつもりか、お聞かせください。  最後に、参議院選挙区における合区について申し上げます。  憲政史上初めて導入された二県合区により、いわゆる一票の較差は縮小されましたが、同時に、様々な深刻な問題点も浮き彫りとなりました。例えば、二県合区となった四つの県のうち三県では選挙区の投票率が過去最低、しかも無効票が前回より約六割も増加した県もありました。また、選挙中、二県で一人前という扱いを受け、誇りを傷つけられたという有権者の厳しい声も聞かれ、結局、党派を超えて候補全員が合区反対を主張した県もあったとの報道もありました。  二県合区の選挙では、政策よりもどこの出身なのかという点が注目されがちで、そうなれば、人口の少ない方の県では候補者すら出すことができないとも言われています。これでは、人口の少ない県、減少している県から地方の声を国政に反映させることができなくなってしまいます。これでは地方創生実現もどんどん遠くなるだけです。  このように、二県合区という手法は一部の県に不平等感を募らせるという問題点があるという声が、参議院における議論の中でも少なからぬ会派から聞かれていると承知しています。  二県合区の対象県以外でも、全国知事会を始めとする地方六団体は、合区の早期解消を訴える要望を決議しています。既に全国三十三の県議会でも同様の意見書等を採択しています。地方議会での動きは更に広がりつつあります。  昨年九月に出された最高裁の判決では、平成二十八年参議院選挙の選挙区の一票の較差三・〇八倍を合憲としました。その中で、投票価値の較差を考えるに当たっては、同判決の中で、参議院には、国民各層の多様な意見を反映させて独自の機能を発揮させること、半数改選など考慮すべき参議院に固有の要素があることを示しています。  であれば、参議院においては、やはり歴史的、文化的、社会的、経済的にも一体性を有し、我が国政治や行政の多くの場面で現実的に重要な役割を果たしている広域地方自治体としての都道府県という単位をしっかりと位置付け、各都道府県から選挙ごとに少なくとも一名の代表を選ぶ選挙制度であるべきだと考えております。  現在、参議院では、参議院の在り方について、本院が衆議院とは異なるところの独自の使命をいかに果たし得るかなど、活発かつ真摯な議論が行われています。こうした参議院の在り方も踏まえながら、顕在化した二県合区の不具合に対処して、全ての都道府県からの声をしっかりと国政に届けるためにはどのような仕組みがよいのか、速やかに議論を進めていくことが是非とも必要であると確信をしております。  このことを皆様にお訴えをし、私の質問を終わります。(拍手)    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇拍手
  24. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 松村祥史議員にお答えいたします。  災害からの復旧復興についてお尋ねがありました。  今週も全国各地で大雪となり、また、群馬県の本白根山が噴火しましたが、我が国は、その自然条件から、場所を問わず様々な自然災害が起こりやすい環境にあります。  政府としては、大規模災害に対して、応急段階から復旧復興段階まで政府一丸となって取り組んできておりますが、御指摘のとおり、発生した災害を検証し、将来の災害に備えた災害対策、復旧復興の枠組みを構築することも大変重要です。  例えば、熊本地震の際には、東日本大震災の教訓を踏まえて構築した災害応急対策復興の基本的な枠組みを適用することにより、被災自治体からの要請を待たないプッシュ型の物資供給や、県道及び村道の災害復旧事業の国による代行等を初めて行うことができました。熊本地震後には、それまでの経験を踏まえ、従前まで災害ごとに措置されていた災害関連の税制上の措置を常設化いたしました。  熊本地震については、国の代行事業による村道の開通などにより、南阿蘇村では昨年十月に長期避難が解除されました。復興のシンボルである熊本城についても、平成三十一年には天守閣を復旧するとの熊本市の取組を、天守閣の耐震化等に対する防災・安全交付金技術的助言により支援してまいります。  今後とも、被災者に寄り添いながら、一日も早い被災地の復旧復興全力で取り組むとともに、その経験を今後の災害対策に生かしてまいります。  日中関係及び自由で開かれたインド太平洋戦略についてお尋ねがありました。  日中平和友好条約締結四十周年である本年を、日中関係が大きく改善したと両国の国民が認識できるような一年にしたいと考えています。そのためにも、早期に日中韓サミットを開催して李克強首相を日本にお迎えし、その後、私が適切な時期に訪中し、その後に習近平主席に訪日していただきたい。このようなハイレベルでの往来を重ねる中で、日中関係を新たな段階へと押し上げていきたいと考えております。  法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋を全ての人に分け隔てなく平和と繁栄をもたらす公共財とするため、米国はもとより、欧州、ASEAN、豪州、インドなどと共に協力してまいります。こうした考え方に賛同してもらえるのであれば、中国を含め、いずれの国とも協力していけると考えており、関係国と連携しながら、自由で開かれたインド太平洋戦略を推進していきます。  防衛計画大綱見直しと中期防衛力整備計画策定の方針についてお尋ねがありました。  国民の命と平和な暮らしを守り抜くことは、政府の最も重要な責務です。北朝鮮がこれまでにない重大かつ差し迫った新たな段階の脅威となっているなど、我が国を取り巻く安全保障環境は現在の防衛大綱を策定した際に想定したよりも格段に速いスピードで厳しさを増し、今や戦後最も厳しいと言っても過言ではありません。  このような認識の下、新たな中期防衛力整備計画の策定と併せ、防衛計画の大綱についても見直すこととしたものです。見直しに当たっては、まず何よりも、現実から目をそらすことなく、真正面から向き合うことが不可欠です。  その上で、サイバー空間や宇宙空間など、新たな領域の活用が死活的に重要になっていることを踏まえれば、もはや陸海空という従来からの区分で発想するだけでは不十分です。これまで進めてきた南西地域の防衛態勢や弾道ミサイル防衛の強化にとどまらず、新たな領域分野について本格的に取り組んでいく必要があると考えています。  防衛力を支える生産、技術基盤や人的基盤の維持強化についても重要な検討課題と考えています。従来の延長線上ではなく、国民を守るために真に必要な防衛力のあるべき姿を見定めてまいります。  中小・小規模事業者の生産性向上に向けた支援についてお尋ねがありました。  賃金上昇、景気回復の温かい風を全国津々浦々へと広げていくためには、地方経済の中核を担う中小・小規模事業者の皆さんの生産性向上が極めて重要です。深刻さを増す人手不足の問題に対応するためにも、攻めの投資を力強く支援してまいります。  今後三年間で百万者のIT導入を支援するほか、持続化補助金を活用して、商工会、商工会議所のお力も借りながら、来年度、二万者の小規模事業者の皆さんの生産性向上に向けた努力を応援してまいります。  さらに、赤字など厳しい経営環境の下で新たな設備投資チャレンジする中小・小規模事業者の皆さんを後押しするため、自治体の判断により、固定資産税をゼロにする新しい制度を設けます。国としては、自治体の理解と協力を得るべく丁寧な説明に努めるとともに、固定資産税ゼロに取り組む自治体にはものづくり補助金などによる支援を重点的に実施してまいります。  国と地方が一体となってオールジャパンであらゆる政策を総動員することで、全国津々浦々、我が国の宝である中小・小規模事業者の皆さんの生産性革命実現してまいります。  農林水産業改革についてお尋ねがありました。  安倍内閣においては、農業を成長産業化させ農家の所得向上を実現するため、米の生産調整の見直しや輸出促進など、農政全般にわたる抜本的な改革を進めてまいりました。また、中山間地域に対しても、日本型直接支払制度による地域の共同活動への支援や、中山間地農業ルネッサンス事業による地域の特色を生かした取組支援など、地域を元気にする施策を展開してまいりました。  これにより、四十代以下の若手新規就農者が統計開始以来初めて三年連続で二万人を超え、農林水産物・食品の輸出は五年連続で過去最高を更新するペースで伸び、生産農業所得も過去二年で約九千億円も伸び、直近で三兆八千億円になるなど、着実に成果が表れ始めています。  こうした農政改革に加え、意欲ある林業経営者に森林経営を集積、集約させる森林バンクの創設など、戦後以来の林業改革に挑みます。水産業についても、資源管理と成長産業化を両立させ、漁業者の所得向上を実現する改革を確実に実行してまいります。  さらに、農林漁業者の方々の不安や懸念にもしっかり向き合い、TPPや日EU・EPAによる新たな国際環境の下でも安心して再生産できるよう、総合的なTPP等関連政策大綱に基づき十分な対策を講じてまいります。  安倍内閣では、引き続き、農林漁業者の皆様と真摯に向き合い、改革の成果も丁寧に説明しながら、農林水産業全般にわたって改革を力強く推し進めます。若者が夢や希望を持てる農林水産新時代を構築してまいります。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣世耕弘成君登壇拍手
  25. 世耕弘成

    国務大臣(世耕弘成君) 中小企業・小規模事業者事業承継についてお尋ねがありました。  前経産副大臣でもある松村議員は、御自身の経営の経験を基に長く事業承継問題に取り組んでこられましたが、今まさに事業承継問題は待ったなしの課題となっています。  こうした中、平成三十年度の税制改正では、中小企業の円滑な世代交代を図るため、松村議員がその制定に御尽力をされた経営承継円滑化法、これを根拠とする事業承継税制を抜本的に拡充し、承継時の贈与税相続税の支払負担をゼロにすることとしたほか、親族以外への承継についても優遇措置を盛り込みました。  また、平成二十九年度補正予算及び平成三十年度当初予算でも、後継者事業承継や世代交代をきっかけに取り組む経営革新や新事業展開に対する補助、事業承継の重要性についての気付きの機会の提供、後継者難の事業者とビジネスを拡大しようとする事業者のマッチングを支援する事業引継ぎ支援センター体制相談窓口の強化などのための経費を計上しております。  引き続き、事業承継の円滑化と世代交代の促進を通じた中小企業活性化実現するため、全力を尽くしてまいります。(拍手)    〔国務大臣松山政司君登壇拍手
  26. 松山政司

    国務大臣(松山政司君) 松村祥史議員から、クールジャパンについてのお尋ねがございました。  世界の注目が集まる東京オリンピックパラリンピック大会を契機として、クールジャパンを生かした経済成長を加速化するため、クールジャパン戦略のグランドデザインを改めて見詰め直す、まさに今がそのときであると考えています。  そこで、昨年十二月に、総理を本部長とする知的財産戦略推進本部の下に専門調査会を立ち上げまして、将来にわたりクールジャパンを再生産し、経済成長につなげていくための基本戦略を今年の五月を目途に取りまとめる予定でございます。こうした戦略を実践することによりまして、地域の様々なクールジャパン資源を発掘し、磨き上げ、海外展開することを通じて地方創生に大きな成果を生むことが期待をされます。  このように、我が国経済成長、そして地方創生実現する戦略を集中的に議論して練り上げて各省庁の施策に反映させていくことで、二〇二〇年とその先を見据え、国を挙げてクールジャパン戦略を推進してまいります。(拍手)     ─────────────
  27. 伊達忠一

    ○議長(伊達忠一君) 福島みずほ君。    〔福島みずほ君登壇拍手
  28. 福島みずほ

    福島みずほ君 社民党の福島みずほです。  自由党、社民党の統一会派、希望の会を代表して質問をします。  まず、森友学園、加計学園問題について質問をします。  財務省は、森友学園への国有地売却問題に関して価格交渉はしていないと答弁をしてきました。しかし、その後、音声データが出てきて、財務省側がゼロに近い額まで努力すると言っていたことが明らかになりました。虚偽答弁であることを総理は認めますか。  今治市に獣医学部をつくることについて、事業主体が加計学園であることを安倍総理が知ったのは二〇一七年一月二十日であるという答弁は、それ以前の答弁や、私の質問主意書に対する答弁書において構造改革特区のときから知っていた旨答えていることと明らかに矛盾をしています。二〇一七年一月二十日に初めて知ったというのは虚偽答弁ではないですか。  事実の究明をするために、安倍昭恵さん、加計孝太郎さんの証人喚問が必要だと考えますが、いかがですか。  次に、税金の取り方と使い方についてお聞きします。  まず、税金の取り方です。  逆進性の強い消費税ではなく、所得税の累進課税について一九八〇年代の税率を目指すことをなぜやらないんですか。収益を上げ、内部留保をため込む大企業にこそ税金を払ってもらうべきだと考えますが、いかがですか。  税制改正において、個人所得課税は七百三十億円増、消費課税は千六百億円増であるのに対し、法人課税は十億円の減税です。取りやすい個人には増税、家計への増税をし、法人税は減税というのは不公平ではないですか。公平な税制の実現こそ必要であると考えますが、いかがですか。  税金の使い道の問題について聞きます。  二〇一八年の防衛予算は五兆千九百十一億円と過去最高であり、補正予算分を加えると五兆四千二百五十六億円になります。当初予算案で、社会保障費の自然増分を千三百四十六億円も削減をしました。  総理、防衛費は青天井の一方で社会保障が削減ありきというのは、税金の使い道として間違っているのではないですか。  生活保護基準の見直しをすることによって六七%の世帯で減額になるのは、命綱である生活保護の切捨てではないですか。  また、母子加算の減額も大問題です。母子で子供一人の場合、現行の平均月二万千円から平均月一万七千円への減額、年間で四万八千円の減額です。これは全体で二十億円の圧縮です。二十億円の予算の減額で、なぜ弱い者いじめをするんですか。削るのはここではないと思いますが、いかがですか。  安倍政権の諸外国に対する援助について質問します。  第二次安倍内閣以降、安倍総理が外遊した際に諸外国に対して約束をした援助の合計額は幾らですか。外務省に問い合わせたところ、総理が表明した額を機械的に加算した場合、円借款や一部重複部分を含め五十四兆三千六百二十一億円になるという回答が昨日ありました。これでよろしいですか。五十四兆三千六百二十一億円は、余りに膨大ではないですか。社会保障を削って、なぜこの大盤振る舞いなのですか。誰のための政治ですか。誰のための税金なんですか。税金は安倍総理のポケットマネーではありません。総理答弁を求めます。  貧困の固定化と中間層の没落は大きな問題です。この問題は、まさに政治がつくってきました。労働者派遣法を始めとした労働法制の規制緩和で雇用を壊しました。非正規雇用が四割を突破し、年収が二百万円以下の人の数は、通年勤続者と一年未満勤続者を合わせると千八百三十三万人に上ります。年金、介護医療生活保護の切捨てと負担増は人々の暮らしを疲弊させています。  今やるべきことは、社会民主主義的な政策実現であり、雇用の立て直し社会保障充実ではないですか。そもそも、雇用政策を論ずるときに、人づくり革命生産性革命という言葉が使われることに大きな違和感を感じます。人々は、生活を、人生を政治が応援してほしいとは思っていますが、政府に上から目線の人づくりなど頼んではいません。労働政策を論ずるのに、生産性の向上が第一なのではなく、持続可能な社会、安心して生きられる社会こそ望んでいます。  なぜ、働き方改革一括法案の中に、この二年間国会に提出されながら多くの人たちの反対によって廃案になったホワイトカラーエグゼンプション、残業代ゼロ法案や裁量労働制の対象拡大が盛り込まれているんですか。混ぜてしまえば分からないということでしょうか。  労働時間規制が一切ない労働者を誕生させてはなりません。なぜ、これが働き方改革なのですか。また、繁忙期には月百時間未満まで残業することを認めることは過労死を促進することになりますが、いかがですか。  沖縄では、この十三か月の間、三十四件もの米軍航空機関連事故が起きています。度重なる事故が起きているにもかかわらず、直後に学校の上を米軍機が飛行しています。沖縄では、一九五九年、宮森小学校に米軍機が墜落し、十七名もの人が亡くなりました。このような人命軽視がいつまで続くんですか。  沖縄県議会は、昨年十一月、海兵隊の沖縄からの撤退を求める決議を採択しました。総理はこの声をどう受け止めますか。  また、貴重なサンゴ礁の海を壊し、ジュゴンのいる海を潰して、なぜ辺野古に新基地を建設するんですか。辺野古への新基地建設は直ちに中止すべきだと考えますが、いかがですか。  日本国憲法、とりわけ憲法九条は、日本人の三百万人以上、アジアでの二千万人以上の犠牲者の上に獲得をしたものだという理解はありますか。総理見解を求めます。  安倍総理は、憲法九条三項に自衛隊を明記すると言います。この憲法九条三項に明記する自衛隊が行使する自衛権には集団的自衛権が入るということでよろしいですか。安倍総理は、予算委員会の私の質問に対する答弁で、憲法九条一項、二項の解釈を変えて集団的自衛権の一部を行使できるようにしました、そのままですと答弁をしました。  つまり、九条三項に明記する自衛隊とは、災害救助のための自衛隊ではありません。国土防衛のための自衛隊でもありません。集団的自衛権の行使をする自衛隊の明記です。これは、憲法九条一項、二項の完全な破壊です。安倍総理が九条三項に自衛隊を明記すると言っていることは、戦後の出発点と戦後の七十二年間を否定するものです。  集団的自衛権の行使は憲法違反です。歴代の自民党政権はそう明言をしてきました。安倍政権の下で、憲法九条一項、二項の解釈を変えて、違憲の集団的自衛権の行使ができるように、安保関連法、戦争法を成立させました。その後に明文改憲をして集団的自衛権の行使ができる自衛隊を憲法に書き込もうとすることは、立憲主義に対する重大な侵害であり、冒涜ではないですか。  女性などの人権についてお聞きします。  性暴力は魂の殺人です。野党で性暴力被害者支援法案を国会に提出しましたが、廃案になりました。病院拠点型の性暴力被害者支援センターなどは必要です。  総理、性暴力被害者支援法の必要性についてどう考えますか。選択的に別姓を認めるべきだと考えますが、いかがですか。また、子供に対する全ての暴力をなくす政策を取るべきだと考えますが、いかがですか。  野党でLGBT差別解消法案を提出をしましたが、廃案になりました。法案は必要だと考えますが、いかがですか。  脱原発と核兵器廃絶についてお聞きをします。  核と人類は共存できません。原発の稼働の差止めを認める広島高裁決定などの判断を、総理はどう受け止めますか。  電源構成の最新データでは、原発の占める割合は僅か一・七%です。既に事実上の脱原発状態です。原発ゼロは可能です。原発ゼロを決定すべきではないですか。  日本企業がイギリスに輸出する原発について、事故が起きたとき、一・五兆円もの債務保証を日本政府が行うことはやめるべきです。いかがですか。  また、唯一の戦争被爆国である日本が、なぜ核兵器禁止条約に賛成をしないのですか。日本政府は、国連で核兵器廃絶決議を主導してきたではないですか。それを裏切り、被爆者の思いを裏切るものではないですか。理解ができません。答弁をお願いします。  最後に、憲法九条改悪を許さず、日本国憲法が規定する生存権、表現の自由、幸福追求権、個人の尊重、法の下の平等などを実現していく政治を行うために全力を尽くすことを申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇拍手
  29. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 福島みずほ議員にお答えをいたします。  森友学園への国有地売却、加計学園による獣医学部新設についてお尋ねがありました。  森友学園への国有地売却に関しては、今後ともしっかりと説明をしていかなければならないと考えています。  報道された音声データを含め、現場でのやり取りについては、これまでも説明してきたところですが、今後、国会の場において、財務省など関係省庁からしっかり説明させていただきます。  加計学園の獣医学部新設の計画を私が知った時期に関する御指摘答弁等については、昨年夏の閉会中審査及びさきの特別国会において、改めて整理の上で御説明をさせていただいたとおりであります。  構造改革特区における今治市の提案について、私は実際には全く認識しておりませんでしたが、その対応方針は私が本部長を務める構造改革特区本部で決定しているところから、知り得る立場にあったことを申し上げようとしたものであります。  国会における審議の在り方については、国会においてお決めいただくことだと思います。  税制の在り方についてお尋ねがありました。  所得税については、安倍内閣において、これまで最高税率の引上げ等を講じてきたところです。  今般の見直しにおいても、働き方の多様化を踏まえるとともに、所得再分配機能の回復を図る観点から各種控除を見直し、その結果、税収増となりますが、子育て世帯等に配慮することにより、九六%の給与所得者は負担増とならない見込みとなっているなど、家計への配慮を行っています。  法人課税については、過去最高の企業収益をしっかりと賃上げや設備投資につなげていくため、賃上げ等に積極的な企業の税負担を引き下げる一方、収益が拡大しているにもかかわらず投資に消極的な企業には優遇税制の適用を停止するなど、めり張りを付けた見直しとしています。  また、御指摘の消費課税の増収は、主にたばこ税の見直しによるものですが、これは厳しい財政事情を踏まえて税率を引き上げることとしたものであり、税率の引上げに当たっては、消費者の負担が急激に増えることとならないよう、三回に分けて段階的に実施することとしております。  いずれにせよ、税制の在り方については、公平、中立、簡素の三原則の下、経済社会の情勢の変化等も踏まえつつ判断してきたものであり、今後もこうした観点から検討してまいります。  税金の使い方についてお尋ねがありました。  防衛関係費については、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増していることを踏まえ、国民の生命、財産、我が国の領土、領海、領空を守るため、必要となる予算を計画的に編成しています。  社会保障については、国民の皆様のニーズに的確に応え、地域医療介護福祉といった必要なサービスはしっかり確保できるように予算を計上しています。  これらの予算については、厳しい財政状況に鑑み、それぞれ必要となる事業に必要な額を計上しているところであり、間違った使い方を行っているという御指摘は当たりません。  生活保護基準の見直しについてお尋ねがありました。  今回の見直しでは、年齢、世帯人員、地域を組み合わせた世帯特性ごとに、一般低所得世帯の消費の実態生活保護基準額との乖離を是正するため、基準額が上がる世帯、下がる世帯が生じるものです。  一方、モデル世帯である夫婦子一人世帯では、一般低所得世帯の消費水準と生活扶助基準とがおおむね均衡しており、生活扶助基準を全体として引き下げるものではありません。  また、減額となる世帯への影響を緩和するため、減額幅を最大でも五%以内としつつ、三年を掛けて段階的に実施することにしています。  生活保護の母子加算についてお尋ねがありました。  今回の見直しでは、母子加算の見直しは行いますが、児童養育加算の支給対象者を高校生に拡大するなどにより、母子世帯の約六割では基準額が増額となる見込みです。例えば、地方に暮らす母一人、中学生と高校生の子供二人の母子世帯の場合、年間で十一万一千円の増額となります。  また、大学等への進学準備の一時金として、自宅から通学の方は十万円、自宅外から通学の方は三十万円の給付を創設します。さらに、自宅から大学等に通学する場合に行っていた住宅扶助費の減額を取りやめるなど、生活保護世帯の子供に対する支援強化してまいります。  外国に対する援助についてお尋ねがありました。  外国を訪問して表明する援助には民間資金を含む場合もあり、支援対象となる地域も様々です。例えば、ヨルダンに行き、ヨルダンの人道支援について額を公表します。また、例えばその後、エジプトのカイロで中東地域全体の人道支援の額を公表します。それは、それぞれ重複しているものでありますし、また、国連において人道支援全体について私が表明したものは、このヨルダンに行ったもの、あるいは中東地域について行ったもの、世界全体で行っているものが全部重複をしているということになるわけでございまして、異なる時期に表明されているわけでありまして、表明した金額を単純に足し上げると、同じ援助が何重にも重複して計算されることとなります。  したがって、単純に金額を足し上げた議員御指摘の五十四兆三千六百二十一億円は、民間資金と重複計算により額が膨大に膨らんでおり、極めて誤解を招く数字です。  そこで、二〇一二年から二〇一六年までの五年間の外務省のODAの年平均は約五千七百億円でありまして、五年間の総額は、五年間の総額は今言われたように、今言われたようにですね、これは五十四兆ではなくて二兆八千五百億円であります。(発言する者あり)
  30. 伊達忠一

    ○議長(伊達忠一君) 静粛に願います。
  31. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君)(続) 雇用社会保障についてお尋ねがありました。  アベノミクスにより、国民生活にとって最も大切な雇用は大きく改善しており、就業者数は百八十五万人増加し、正規雇用についても、平成二十七年、八年ぶりにプラスに転じ、平成二十八年と合わせて七十九万人増加し、この増加幅は非正規を上回っています。  また、非正規雇用を取り巻く雇用環境について、不本意ながら非正規の職に就いている方の割合は十五四半期連続で前年から低下、働き盛りの五十五歳未満では、十九四半期連続で非正規から正規に移動する方が正規から非正規になる方を上回っていますなど、着実に改善しています。  さらに、中小企業を含め、今世紀に入って最も高い賃上げが四年連続で実現し、家計の可処分所得が三年連続で増加するなど、全国津々浦々で確実に経済の好循環が生まれています。  今後とも、生産性革命人づくり革命の二つの大改革を断行することによって、経済の成長軌道を確かなものとし、雇用環境整備全力で取り組んでまいります。  なお、平成二十七年に成立した労働者派遣法改正法については、正社員を希望する方にその道が開けるようにするとともに、派遣を積極的に選択している方については待遇の改善を図るものです。施行状況についてはしっかりと注視し、その目的が達成されるよう努めてまいります。  社会保障については、所得の低い方々について保険料を軽減するなどの配慮を行っています。さらに、昨年十二月に閣議決定した新しい経済政策パッケージに基づき、子育て世代、子供たちに大胆に政策資源を投入し、我が国社会保障制度をお年寄りも若者も安心できる全世代型の社会保障制度へと大きく転換していくことで、安心できる社会基盤を確立し、成長と分配の好循環を実現してまいります。  働き方改革についてお尋ねがありました。  働き方改革は、一人一人の事情に応じた多様な働き方を選択できる社会実現するための、労働基本制定以来、七十年ぶりの大改革です。  過労死、過労自殺の悲劇を二度と繰り返さない。強い決意で長時間労働の是正に取り組みます。  働く方の健康の確保を大前提に、ワーク・ライフ・バランスを改善し、子育て介護など、様々な事情を抱える方々意欲を持って働くことができる社会に変えていく。こうした社会実現するために、労働時間法制の見直し急務です。  そのため、労使が合意すれば上限なく時間外労働が可能となる現行の仕組みを改めます。史上初めて、労働界経済界の合意の下に、三六協定でも超えてはならない罰則付きの時間外労働の限度を設けます。具体的には、時間外労働の上限は、月四十五時間、かつ、年三百六十時間と法律に明記します。その上で、労使が合意した場合でも上回ることができない上限を年七百二十時間とし、その範囲内において、複数月の平均では八十時間以内、単月では百時間未満と定めています。  また、高度プロフェッショナル制度の創設、裁量労働制度見直しや時間外労働上限規制は、いずれも、健康を確保しつつ誰もがその能力を発揮できる柔軟な労働制度へと改革するつもりであり、一つの法案でお示しすることが適当と考えています。  米軍ヘリの事故、沖縄県議会の決議及び普天間の辺野古移設についてお尋ねがありました。  戦後七十年以上を経た今もなお、なぜ沖縄だけが大きな基地の負担を背負い、また、米軍の事故、事件により安全、安心が脅かされているのか、そのような沖縄県民の方々のお気持ちは十分に理解し、また、真摯に受け止めています。  米軍の運用に当たって、地域住民の方々の安全確保は大前提であり、事件、事故はあってはなりません。安全の確保については、最優先の課題として日米で協力して取り組んでいきます。  昨年十一月に沖縄県議会が米側への抗議を全会一致で決議したことは、重く受け止めています。沖縄の海兵隊については、安倍政権の下、米議会に対する凍結解除の働きかけなどにより、約九千人の要員がグアム等国外へ移転する計画が本格的に進展してきています。  一方、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、日米同盟の抑止力及びその中核である海兵隊の存在は極めて重要です。  住宅や学校に囲まれ、市街地の真ん中にある普天間飛行場の一日も早い全面返還は、もはや待ったなしの課題です。固定化は絶対に避けなければなりません。これが大前提であり、政府地元の皆様の共通認識であると思います。辺野古への移設が実現すれば、飛行経路は海上となり、安全性は格段に向上します。  辺野古への移設は、最高裁判所の判決に従って進めているものです。引き続き、丁寧な説明に努め、御理解、御協力が得られるよう粘り強く取り組んでいきます。  今後とも、日米同盟の抑止力を維持しながら、沖縄の方々の気持ちに寄り添い、基地負担の軽減に全力を尽くしていきます。  憲法九条とその改正についてお尋ねがありました。  我が国は、戦後、再び戦争の惨禍を繰り返すことのないように決意し、不戦の誓いを立てました。恒久の平和は日本国民の念願です。平和主義は憲法の基本原則であり、憲法第九条は平和主義の理念を具体化した規定であると考えています。  平和安全法制においては、集団的自衛権の限定的な行使を容認することとしましたが、憲法との関係では、昭和四十七年の政府見解で示した憲法解釈の基本的論理は全く変わっていません。これは、砂川事件に関する最高裁判決の考え方と軌を一にするものであり、憲法に合致したものです。  国会の憲法審査会において議論される憲法改正の内容について、私が内閣総理大臣としてこの場でお答えをすることは差し控えさせていただきたいと思います。  憲法改正は、国会で発議し、最終的には国民投票で国民が決めるものであります。各党が憲法の具体的な案を国会に持ち寄り、憲法審査会において、議論を深め、前に進めていくことを期待しています。  性暴力被害者への支援、選択的夫婦別氏、児童虐待対策、LGBT差別解消についてお尋ねがありました。  性暴力被害者への支援については、既に、男女共同参画基本計画に基づき、病院拠点型を始め、四十一の都道府県においてワンストップ支援センターが設置されているところであり、引き続き、更なる設置促進と安定的な運営に対する支援充実させてまいります。  夫婦の別氏の問題は、家族の在り方と深く関わるものであり、国民の間に様々な意見があることから、慎重な対応が必要と考えております。  児童虐待については、決して許されるものではなく、児童相談所や警察など関係機関が連携して、発生予防、早期発見、迅速、的確な対応などに引き続き全力で取り組んでまいります。  性的指向や性自認については、その正しい理解を促進し、社会全体が多様性を受け入れる環境づくりを進めてまいります。  なお、御党の御提案については、国会において御議論いただければと思います。  脱原発についてお尋ねがありました。  徹底した省エネ、再エネの最大限の導入に取り組み、原発依存度を可能な限り低減する、これが安倍内閣の一貫した方針です。  その上で、資源に乏しい我が国にとって、電気料金のコスト、気候変動問題への対応、エネルギーの海外依存度を考えれば、原発ゼロということは責任あるエネルギー政策とは言えません。  原発の稼働差止めを命じる広島高裁決定については、国は当該裁判の当事者ではなく、同決定についてのコメントは差し控えますが、原発については、いかなる事情よりも安全性の確保が最優先であります。  政府としては、高い独立性を有する原子力規制委員会が、科学的、技術的に審査し、世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認めた原発のみ、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら再稼働を進めてまいります。  また、我が国の原子力に関わる国際協力は、我が国の原子力技術、人材の基盤を維持強化していくことを通じ、世界における原子力の平和利用、気候変動問題への対応我が国としてしっかりと責任を果たしていくとの観点に立ち、行うものであります。ただし、英国における原発建設計画については、現時点で、政策支援を含め、具体的に何らかの決定がなされた事実はありません。  核兵器禁止条約についてお尋ねがありました。  我が国は唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界実現に向けた国際社会取組を主導していく使命を有しています。  一方、北朝鮮の核・弾道ミサイル計画の進展は、我が国の平和と安全に対するこれまでにない重大かつ差し迫った脅威となっています。政府には、何よりも国民の命と平和な暮らしを守り抜く責任があります。そのためには、日米同盟の下で、通常兵器に加えて核兵器による米国の抑止力を維持していくことが必要不可欠であります。  核兵器禁止条約は、核抑止そのものを否定しており、北朝鮮が参加するという見通しもありません。政府としては、核兵器禁止条約に参加することはできません。  政府としては、現実の安全保障上の脅威に的確に対処しながら、唯一の戦争被爆国として、米国を含む核兵器国と非核兵器国双方に働きかけ、双方の橋渡し役として主導的役割を務めることにより、現実的な観点から核なき世界実現するための努力を積み重ねてまいります。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣野田聖子君登壇拍手
  32. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) 福島議員にお答えいたします。  まず、性暴力被害者への支援についてお尋ねがありました。  性犯罪や性暴力は、女性の人権を著しく踏みにじる、決して許されない行為です。  政府では、性犯罪・性暴力被害者への支援について、第四次男女共同参画基本計画及び第三次犯罪被害者等基本計画に基づき、関係省庁が連携して各般の施策推進しています。  具体的には、被害者の負担をできるだけ少なくするため、被害直後から医療面、心理面などの支援を可能な限り一か所で提供するワンストップ支援センターを全国各地整備することとしており、現在四十一都道府県で設置されています。  今後とも、男女共同参画基本計画等に基づき、今年度創設した性犯罪・性暴力被害者支援交付金を活用し、支援センターの全国整備推進とその安定的な運営を図るなど、引き続き、性犯罪・性暴力被害者支援にしっかりと取り組んでまいります。  次に、選択的別姓を認めるべきだと考えるがいかがかとのお尋ねがありました。  選択的夫婦別氏制度については、平成八年の法制審議会の答申を受け、同年及び平成二十二年に民法等の改正法案を準備しましたが、国会に提出することができなかったと承知しています。  この問題は、国民の間に様々な意見があることから、最高裁判決における指摘国民的議論の動向を踏まえながら、法務省において対応の検討を続けられている状況と承知しており、今後一層議論が深まることを期待しています。  なお、旧姓の通称としての使用の拡大については、女性活躍加速のための重点方針二〇一七等に基づき、マイナンバーカード等への旧姓併記の推進、旅券への旧姓併記の拡大に向けた検討、銀行口座における旧姓使用に向けた働きかけ等の取組を進めています。  次に、子供に対する全ての暴力をなくす政策を取るべきだとのお尋ねがありました。  子供を含め、女性に対する暴力を根絶するためには、暴力を生まないための予防教育を始めとした暴力を容認しない社会環境整備等に取り組んでいくことが重要であり、内閣府としても、女性に対する暴力の根絶に向けた理解を深めるための周知啓発を充実させてまいります。  最後に、LGBT差別解消についてのお尋ねがありました。  この問題に関して、内閣府特命担当大臣として閣内でお答えする立場にありませんので、答弁は控えますが、政府の考え方は、総理からお答え申し上げたとおりです。(拍手)     ─────────────
  33. 伊達忠一

    ○議長(伊達忠一君) 福山哲郎君。    〔福山哲郎君登壇拍手
  34. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 立憲民主党の福山哲郎です。  会派を代表して、総理に対して質問いたします。  草津白根山の噴火によって亡くなられた自衛官に心から哀悼の意を表します。  さて、立憲民主党は、総選挙公示日の僅か一週間前に結党したにもかかわらず、このままでは選択肢がない、何とかしてほしいという国民の声に支えられ、望外の約一千百万票という御支援を賜りました。選挙戦を通じて訴えた、立憲主義を守り、草の根からの真っ当な政治を取り戻すため、うれしいことに、この通常国会から参議院においても、蓮舫さん、江崎さん、風間さん、有田さん、川田さんという五名の一騎当千のつわものに仲間に加わっていただき、新しい会派としてスタートすることになりました。どうかよろしくお願い申し上げます。  私たちは、新しい綱領を策定し、多様性を認め合い、困ったときに寄り添い、お互いさまに支え合う社会、日々の暮らしや働く現場の声を立脚点とするボトムアップの政治実現をうたっています。  そして、いち早く立憲民主党つながる本部を立ち上げました。全国には、待機児童子供の貧困、障害者、LGBT、SDGs、エネルギー、差別等々、あらゆる課題に向き合い、活動している多くの方々がいらっしゃいます。これらのNPO、NGOなどの方々と積極的につながり、現場の声を継続的に受け止め、市民と協働の場を展開していきたいと考えています。  時間が限られていますので、課題を絞って質問させていただきます。  北朝鮮による核・ミサイル開発は、深刻な脅威であり、到底容認できません。私たちは専守防衛の下、現実的な安全保障政策推進していきます。  一方、最近、安倍政権では、突然、長射程巡航ミサイルの導入を決め、護衛艦「いずも」の空母化案まで浮上しています。この動きは、歴代の自民党政権を含めて積み重ねてきた専守防衛を逸脱する懸念があると言わざるを得ません。  これまで政府は、長距離戦略爆撃機あるいは攻撃型空母を保有することはできない、必要最小限度と答弁してきました。今回、政府は敵基地攻撃能力を目的とするものではないと説明していますが、問題なのは目的の有無ではなく実際の能力であり、最小限度を逸脱すると考えられます。これまでの答弁との整合性についてお答えください。  一方で、概算要求になかった装備が突然予算案に盛り込まれたことは極めて異例です。なぜでしょうか。中期防には入っているのでしょうか。  長射程巡航ミサイルをスタンドオフミサイルと防衛省はあえて説明していますが、さきの総選挙でも自民党はこの問題に触れておらず、国民の目をごまかそうとしているのは明らかです。また、配備は五年から七年後になると言います。本当に現下の島嶼防衛の充実を目指すのであれば、海上保安庁の装備の充実、人員確保、領域警備法の制定の方が急務だと考えますが、見解をお聞かせください。  そして、結果として、日米同盟における矛と盾の関係も変質しようとしています。国際社会の理解を得られず、無用の緊張と懸念を与えることになります。こちらが緊張を与えないと幾ら主張しても、国際政治では余り意味がありません。  そんなさなか、昨年の八月、我が国航空自衛隊の戦闘機が米空軍戦略爆撃機B52と共同訓練していたことが明らかになりました。B52は核兵器搭載可能な爆撃機です。北朝鮮に対する抑止力が必要という考え方は理解しているつもりですが、唯一の被爆国であり、非核三原則を持つ我が国が米国と核攻撃まで共に行動するつもりなのでしょうか。それは最小限度を超えていないのか、お答えください。  また、米国が核兵器の所在を明らかにしないNCND政策が原則であることも承知の上ですが、そのときのB52の核の搭載の有無についてもお答えください。また、防護の任務は付与されていたのかどうか。その場合、アメリカからの要請はあったのか。さらに、NSCは開催されたのでしょうか。総理が明らかにされたように、B1Bとの訓練は度々公表してきたのに、なぜB52の場合は即時かつ適切に公表しなかったのか。理由をお答えください。  総理と防衛大臣は専守防衛はいささかも変わらないと繰り返すものの、実態は変質しつつあります。安倍政権は、安保法制に続いて、立憲主義をないがしろにし、なし崩し的に専守防衛を変えようとしています。安倍総理の考える専守防衛とは何なのか。さらに、敵基地攻撃能力についてはどうお考えでしょうか。  一方、沖縄では在日米軍ヘリの墜落、不時着事故が相次いでいます。今月に入って既に三件、異常事態です。  普天間第二小学校の上空を米軍のヘリコプター三機が飛行したか否か、政府と米国側の主張は真っ向から対立しています。事実は一つなのに、なぜこのような事態が起こるのでしょうか。こんな事実確認に一体何日掛かっているのでしょうか。沖縄の皆さんの不安と怒りは想像に余りあります。主権国家として矜持ある対応を求めますが、総理見解を伺います。  昨年十一月、森友学園への国有地売却問題で会計検査院の検査結果が公表されました。この検査は、本院予算委員会で与野党が全会一致で会計検査院に求めたものです。  その報告書によれば、売却について、合規性、経済性等から適切とは認められない、ごみの量や撤去費用も根拠が確認できない、文書管理についても会計経理の妥当性について検証を行えないと指摘されています。  政府は、法令に基づき適切に処理したと繰り返してきましたが、まさに野党が指摘してきたとおりの結果となりました。また、売却交渉の音声データが出てきており、価格の交渉はしていないという当時の佐川局長の答弁が虚偽である疑いが濃厚です。言わば、安倍総理を始め政府のこれまでの国会での説明が、説得力も根拠も乏しく、何の説明にもなっていなかったということです。  総理、この指摘は、野党でも何でもありません、参議院議長に提出された会計検査院からのものです。これからどうするのではなく、この森友問題の責任の所在はどこにあるのか、お答えください。  昭恵夫人の関与もいまだに強く疑われています。まずは総理自ら国民に謝罪するべきではありませんか。そして、この報告書の結果、どのように責任を取るおつもりでしょうか。  今年になって、驚くべきことに、財務省から交渉関連文書なるものが出てきました。会計検査院に確認したところ、参議院議長に報告する何と前日に、財務省から当該記録があったとの連絡が入ったそうです。検査中に記録を提出せず、アリバイのように報告前日に連絡するという極めて不誠実な対応です。このやり取りをどう思われますか。  総理、これでも佐川長官人事を適材適所と強弁を募るつもりですか。私は、佐川長官も総理と昭恵夫人へのそんたくで被害を被った一人と考えますが、それでも長官にはふさわしくありません。更迭を求めます。  安倍政権は原子力と石炭火力をベースロード電源とし、二〇三〇年、原子力は二〇%台と、震災発生前とほとんど変わっていません。徐々に低減していくという総理の発言は実態とは異なっています。過度な石炭依存もパリ協定に逆行しています。  民主党政権が導入したFITにより、震災後六年間の再生可能エネルギーの拡大は目覚ましく、二〇一〇年に九%だったものが二〇一六年度には一五%まで伸びており、稼働率を勘案しても、原発約二十基分の再生可能エネルギーの設備認定がされています。震災直後は一時的に増えたCO2も、原発稼働がほぼゼロだったにもかかわらず、現在は減少しています。  アップル、グーグルなどの世界の大企業や自治体は、次々と再生可能エネルギー一〇〇%という野心的な宣言をし始めています。原発ゼロはもはやリアリズムです。こういった動きをどう評価されますか。今の政府の姿勢とは異なる積極的な後押しを求められると考えますが、いかがでしょうか。  私たちは、原発ゼロ基本法案を三月に提出する予定です。総理は、特別国会で枝野代表に、原発ゼロということは責任あるエネルギー政策とは言えませんと答弁されました。先般、小泉、細川両元総理が参加されている、いわゆる原自連とも意見交換をさせていただきました。我が党の菅元総理も含めて、党派を超えて三人の元総理が原発ゼロを訴えていることに対して、総理はそれでも無責任だと言い放つのでしょうか。世界の潮流にも福島の厳しい現実にも、廃炉や使用済核燃料処理にも目をつむり原発再稼働に突き進む姿勢こそが無責任と考えますが、いかがでしょうか。  働き方改革については、政府案の時間外労働上限規制月百時間は過労死ラインを大きく超えるもので、過労死容認法案になりかねません。私たちが検討している対案においては、いわゆるインターバル規制の導入も提案していくつもりです。見解を求めます。  昨年時点では、共謀罪に基づく任意捜査、強制捜査は共にゼロでした。不当な人権侵害が発生する前にこの法律を廃止するべきと考えます。既に共謀罪廃止法案を提出しています。  さらに、多様性ある社会を目指して、LGBT差別解消法案、夫婦別姓の選択を可能とする民法改正案、手話言語法案、農業者戸別所得補償法案などを今回に提出する予定です。各会派各党の御協力をお願いします。  日本政治に対する信頼を取り戻し、内政、外交、共にビジョンを提示し、徹底的に国民とつながる新しい政党の在り方を模索していく決意です。春頃には党員に代わる立憲パートナーシップメンバー制度を創設し、国民に広く呼びかけていくつもりです。
  35. 伊達忠一

    ○議長(伊達忠一君) 福山君、時間が超過しております。簡単に願います。
  36. 福山哲郎

    ○福山哲郎君(続) 試行錯誤の繰り返しかもしれませんが、草の根から、日本政治に大きな一石を投じられるよう、懸命に努めてまいることをお約束し、質問を終わります。  御清聴ありがとうございました。(拍手)    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇拍手
  37. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 福山議員にお答えいたします。  護衛艦「いずも」及びスタンドオフミサイルについてお尋ねがありました。  まず、これまで政府として「いずも」の空母化に向けた具体的な検討を行ってきた事実はありません。  スタンドオフミサイルは、我が国防衛に当たる自衛隊機が相手の脅威の圏外から対処できるようにすることで、隊員の安全を確保しつつ、我が国を有効に防衛するために導入するものであります。  専守防衛の下、あくまでも国民の生命、財産、我が国の領土、領海、領空を守り抜くため自衛隊の装備の質的向上を図るものであり、自衛のための必要最小限度のものです。  このような能力に関しては日頃より不断の検討を行ってきたところであり、所要の調整等の結果、今般導入の見通しが立ったことから中期防の枠内で予算案に盛り込んだものであります。  スタンドオフミサイルの導入と島嶼防衛の充実についてお尋ねがありました。  多くの島嶼を有している我が国にとって、島嶼防衛は極めて重要です。このため、自衛隊の能力向上を図ると同時に、海上保安庁の装備、人員の充実など、領海警備のための海上保安体制強化にも取り組んでいます。  スタンドオフミサイルは、我が国防衛に当たる自衛隊機が相手の脅威の圏外から対処できるようにすることで、隊員の安全を確保しつつ、我が国を有効に防衛するために導入するものであり、島嶼防衛のためにも極めて重要です。  国民の生命、財産、我が国の領土、領海、領空を守り抜くため、政府としては、島嶼防衛を含むあらゆる事態に対応できる体制強化充実を着実に進め、万全を期してまいります。  また、政府としては、いかなる不法行為に対しても切れ目のない十分な対応を確保するため、海上警備行動に係る手続の迅速化のための閣議決定を行い、関係機関対応能力の向上等の取組も進めてきており、現時点で領域警備法といった新たな法整備が必要とは考えておりません。  航空自衛隊と米空軍との共同訓練についてお尋ねがありました。  我が国は、非核三原則を国是として堅持しつつ、専守防衛に徹する考えであり、このような考え方に全く変わりはありません。また、いわゆる敵基地攻撃については、日米の役割分担の中で米国の打撃力に依存しています。その上で、北朝鮮の核・ミサイルの脅威から我が国を守るためには、米国の核及び通常戦力による抑止力は不可欠と考えています。  御指摘の航空自衛隊と米空軍のB52との共同訓練は、日米同盟全体の抑止力、対処力を一層強化するものです。自衛隊の行動が自衛のための必要最小限を超えるといった御指摘は当たりません。  なお、米側は我が国の非核三原則に係る立場を十分理解していることから、米側が核兵器搭載の戦略爆撃機を我が国に飛来させたり、領空を通過させたりするようなことは現状において想定されません。  自衛隊法に基づく米軍警護の個別具体的な実施の状況、警護の要請、国家安全保障会議での審議の有無等については、米軍の活動への影響や相手方との関係もあり、お答えすることは差し控えますが、これまで艦艇及び航空機に対して実施してきたところであります。  共同訓練の公表については、個々の訓練ごとに相手国との関係を始めとする様々な要素を総合的に考慮し、公表の有無や時期等を判断しており、本訓練についてもこのような考え方の下対応したものと承知しています。  専守防衛と敵基地攻撃能力についてお尋ねがありました。  専守防衛とは、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略であり、我が国防衛の基本方針です。専守防衛に関する政府の考え方は、これまでも一貫したものであり、今後ともいささかの変更もありません。  いわゆる敵基地攻撃については、日米の役割分担の中で米国の打撃力に依存することとしており、今後とも、日米間の基本的な役割分担を変更することは考えていません。  また、平和安全法制は、その内容においても手続においても、憲法の下、適切に制定されたものです。立憲主義をないがしろにしたとの御指摘は全く当たりません。  米軍ヘリの事故と普天間第二小学校の上空の飛行についてお尋ねがありました。  米軍の運用に当たって、地域住民の方々の安全確保は大前提であり、事件、事故はあってはなりません。米軍機の事故や予防着陸、緊急着陸が相次いでいる中、在日米軍の全ての航空機について徹底的な整備、点検を確実に実施し、徹底した再発防止のための対策を講ずるよう米国に強く求めています。  米軍ヘリの普天間第二小学校の上空飛行については、現在、日米双方において、それぞれが確認した記録等について検証しているものと承知しています。重要なことは、小学校の上空を飛行しないことであり、引き続き、米側に対して、普天間飛行場周辺の全ての学校上空の飛行を最大限可能な限り避けるとの方針をしっかりと遵守するよう求めるとともに、日本側においてもその状況の確認に努めてまいります。  今後とも、安全の確保については、最優先の課題として日米で協力して取り組んでいきます。  森友学園への国有地売却等についてお尋ねがありました。  森友学園への国有地売却については、私自身、さきの衆議院選挙における各種の討論会やこれまでの国会においていただいた質問に丁寧に説明してきたところであり、今後ともしっかりと説明をしていかなければならないと考えています。  他方で、かねてから、国有地の売却価格については、会計検査院がきっちりと厳正に調査をするものと思っているということを申し上げてきたところです。その後、政府から独立した機関である会計検査院が検査を行い、さきの国会において報告が提出されました。その報告については、真摯に受け止める必要があると思っております。  さきの国会において、財務省から、この報告の内容を重く受け止め、これをしっかり検証した上で、国有財産の管理、処分の手続等について必要な見直しを行っていくことに尽きるという答弁がありました。  国有地は国民共有の財産であり、その売却に当たって、国民の疑念を招くようなことがあってはなりません。私としても、国有財産の売却について、業務の在り方を見直すことが必要と考えており、関係省庁において今後の対応についてしっかりと検討させているところです。  文書の管理、保存については、各行政機関が責任を持って行っており、また、報道された音声データを含め、現場でのやり取りについてもこれまでも説明してきたところですが、今後、国会の場において、財務省など関係省庁からしっかり説明させていただきます。  国税庁長官の人事については、他の全ての人事と同じく、適材適所の考え方に基づき行ったものであります。  なお、私や妻がこの国有地払下げに、もちろん事務所も含めて、一切関わっていないということはこれまでも申し上げてきたとおりであります。  再生可能エネルギーの拡大と原発ゼロについてお尋ねがありました。  資源に乏しい我が国にとって、電気料金のコスト、気候変動問題への対応、エネルギーの海外依存度を考えれば、原発ゼロということは責任あるエネルギー政策とは言えません。  他方で、原発依存度を可能な限り低減するとの考え方の下、徹底した省エネルギーの推進、再生可能エネルギーの最大限の導入に取り組むことは、安倍内閣の一貫した方針です。  こうした中で、民間企業においても、自主的に再エネ導入拡大に向けた様々な取組が行われていることは歓迎すべきことであり、引き続き、政府においても全力で取り組んでまいります。  原発の再稼働についてお尋ねがありました。  現在、多くの原発が停止している中で、震災前に比べ、一般家庭では平均で約一〇%電気代が上昇し、国民の皆さん、経済的に大きな御負担をいただいている現実があります。  原発の再稼働については、御指摘のような様々な御意見を表明する方がおられますが、こうした国民的な負担を踏まえれば、原発ゼロということは責任あるエネルギー政策とは言えません。  同時に、廃炉や使用済燃料の処分などの課題に真正面から取り組んでまいります。そして、原発については、いかなる事情よりも安全性が最優先であります。  東京電力福島原発事故について、政府及び原子力事業者が、いわゆる安全神話に陥り、あのような悲惨な事態を招いたことを片時も忘れず、真摯に反省し、その教訓を踏まえつつ、二度と事故を起こさないことは当然のことです。  今後も、高い独立性を有する原子力規制委員会が科学的、技術的に審査し、世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認めた原発のみ、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら再稼働を進めていく考えであります。  働き方改革についてお尋ねがありました。  過労死、過労自殺の悲劇を二度と繰り返さない。強い決意で長時間労働の是正に取り組みます。  そのため、労使が合意すれば上限なく時間外労働が可能となる現行の仕組みを改めます。史上初めて、労働界経済界の合意の下に、三六協定でも超えてはならない罰則付きの時間外労働の限度を設けます。具体的には、時間外労働の上限は、月四十五時間、かつ、年三百六十時間と法律に明記します。その上で、労使が合意した場合でも上回ることができない上限を年七百二十時間とし、その範囲内において、複数月の平均では八十時間以内、単月では百時間未満と定めています。加えて、勤務間インターバル制度についても、その普及に努めます。  このように、今回の改革は長時間労働に対する規制を強化するものであり、安倍内閣として、働き方改革関連法案早期に提出し、法案成立全力を傾注していきます。  また、政府としては、労働基準法等の遵守を徹底するため、労働基準監督署の人員や体制整備に取り組んでいきます。(拍手
  38. 伊達忠一

    ○議長(伊達忠一君) これにて質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十三分散会