○松村祥史君 自由民主党の松村祥史です。
私は、自由民主党・こころを代表して、
安倍総理の施政方針
演説について、
総理並びに
関係大臣に質問いたします。
我が国は
災害が多い国です。今週火曜日、二十三日には群馬県草津白根山が突然噴火しました。お亡くなりになられた方の御冥福を謹んでお祈りし、被害に遭われた
方々に心よりお見舞い申し上げます。
また、先週一月十七日で阪神・淡路大震災が発生してから二十三年がたち、その後も、中越
地震、
東日本大震災など、様々な震災が発生しました。そして、一昨年四月には、九州熊本
地方を震度七の
地震が二度襲いました。これは観測史上初めてであり、まさに想定外の被害の大きさでした。
熊本地震対応の初動において、
安倍総理はすぐに陣頭指揮を執られ、また同時に
被災地にも入られました。その際
総理は、先手先手で、できることは全てやると
全力で
支援に当たる
決意を述べられ、甚大な被害を前に
現場で奮闘する我々に安心感を与えていただきました。このとき、トップリーダーの一言は危機的状況下で大きな
影響力があると肌で感じた瞬間であり、これほど
言葉の重みを感じたことはありませんでした。
当時の
安倍総理の
言葉は、
被災者や震災
対応に当たった皆様の心に今でも深く刻み込まれており、改めて
総理に感謝申し上げたいと思います。
そして、その
言葉どおり、
総理からの指示で、水、電気、ガスといった
生活インフラの
早期復旧を始め、自治体の財政負担軽減、病院や診療所、
社会福祉施設へのグループ
補助金の適用
拡大、直轄代行制度による阿蘇大橋や道路の
早期復旧等に速やかに着手していただきました。新たな財政
支援の枠組みによる第三セクター南阿蘇鉄道の全線復旧の決定も全国の先例となるものでありました。
また、全国津々浦々から心温まる励ましをいただきました。今までの義援金は五百十三億円に上り、今なお寄せられています。
国民の皆様の温かい思いは熊本の支えです。厚く御礼申し上げたいと思います。
おかげさまで、
復興のシンボルである熊本城の天守閣の復旧など、様々な
事業が少しずつではありますが、進んでおります。
しかし、復旧
復興において、
課題は時々刻々と変化します。今も四万二千人もの
被災者の
方々が応急仮設住宅等の
生活を余儀なくされており、その
方々の住宅再建も
急務ですし、さらには自治体の財政負担等の更なる
支援の必要性など、様々な
課題を
現場では抱えています。
どれほどやっても、それでも
課題は必ずあり、
復興の難しさを痛感しています。熊本の真の創造的
復興に向け、
安倍総理には引き続き御
支援を賜りたいと思います。
被災地からの一日も早い復旧
復興を願う声に応えるには、
災害が起きてから復旧
復興事業の迅速化のために工夫をするのではなく、事前に
政府において改善すべき点や更に工夫できることについて検証し、改善策を共通化、一般化することで、
東日本大震災、
熊本地震などの復旧
復興事業の加速化、ひいては将来の迅速かつ円滑な実施に生かすことができるのではないかと考えます。
この点も含めて、迅速な
災害復旧復興に対する
総理の
決意をお聞かせください。
昨年九月、衆議院解散に当たって、
総理は、
少子高齢化、緊迫する
北朝鮮情勢、まさに国難とも呼ぶべき事態に強いリーダーシップを発揮する、自らが先頭に立って国難に立ち向かっていくと
国民の皆様に訴えました。まさに今、
我が国は、外交・安全保障
環境の激変、そして人口減少、生産年齢人口減少という国難に直面しています。選挙から三か月、この難局に
安倍内閣はどう立ち向かっているのか、これこそが
国民の皆様が心底知りたいと思っていることではないでしょうか。
〔副議長退席、議長着席〕
本日は、この外交・安全保障、そして人口減少に関連する
課題について、
総理、
関係大臣に
お尋ねしたいと思います。
昨年十月の中国共産党大会で、
習近平国家主席は、今世紀中頃までに
社会主義現代化強国の建設を目指すことを明らかにしました。二〇三〇年には中国が
経済力で米国を上回るという予測があり、中国の国際的な
影響力は極めて大きなものになると考えられます。
さらに、米軍のより優れた防衛ミサイル、いわゆるTHAADの韓国配備に対する
経済的圧力、尖閣諸島の接続水域への潜水艦の航行などを見れば、
我が国を含む周辺
各国との緊張感が高まりかねないという懸念は否定できません。
しかし、
我が国と中国は、歴史的に見て長い友好往来の期間があります。また、
北朝鮮問題などへの
対応でも、中国との良好な
関係の構築、発展が欠かせません。
一帯一路
構想についても、
インフラの開放性や透明性の確保など、
地域と
世界の平和への貢献や
我が国の国益を図る観点から見た柔軟な
対応が必要ではないかと思います。
同時に、
安倍総理が提唱する自由で開かれたインド太平洋戦略、すなわちインド太平洋
地域における法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序の維持
強化のために、どのように中国と連携していくのかという戦略も重要です。
この自由で開かれたインド太平洋戦略の考え方は、二〇〇七年の第一次
安倍政権の頃から
安倍総理が提唱されてきたものだと承知していますが、
日本が
国際社会をリードする形で大きな外交ビジョンを示し、それを
実行していくということは極めて画期的なことです。
日本の外交戦略に米国が賛同し、これを共同で進めていくということは、過去の歴史でも類を見ないものです。これまでも
総理は、この外交戦略
実現のために
各国に
協力を呼びかけ、その結果、米国のトランプ大統領やインドのモディ首相などとの間でも緊密に連携
協力していくことで一致しています。
本年は、日中
平和友好条約締結四十周年でもあります。是非とも、この四十周年という絶好の機会を生かして、
日中関係の一層の発展のみならず、自由で開かれたインド太平洋
地域の
実現に向けて、中国に
協力を呼びかけるという懐の深い外交を展開していくべきと考えております。
そこで、
総理に、
日中関係を今後どのように一層発展させていくおつもりか、お伺いします。加えて、中国との
協力も含め、どのように自由で開かれたインド太平洋戦略を進めていくおつもりか、
お尋ねします。
続いて、安全保障
関係についてお伺いします。
安倍総理は、この度、
日本の首相として初めてバルト三国を訪問し、
北朝鮮の核・
ミサイル開発に対する圧力
強化や、拉致問題の
解決への
協力を引き出しました。二〇一四年のクリミア危機以降、国防費を大幅に増額し、NATO加盟諸国の対GDP二%目標を達成したエストニアを含むバルト三国は、安全保障上の緊張感に直面しています。
各国と価値観を共有するとともに、平和の維持に対して応分の負担と責任を分かち合うことは極めて重要と考えます。
第二次
安倍政権発足以降、
我が国の防衛費は着実に伸びていますが、対GDPではいまだ一%以下です。装備品の調達も、米国防省からの対外有償軍事援助が政権発足時に比べ約四倍にも増加し、防衛部門からの撤退を余儀なくされる国内
企業も出るのではと懸念されています。
また、任務の多様化と
活動の活発化に伴い、各部隊の疲労も限界に達しています。慢性的に人員不足に加え、少子化や景気の向上の
影響もあり、隊員募集は厳しい状況にあります。隊員の抜本的な処遇の改善と退職後の再就職等のトータルライフケアを国を挙げてサポートすることも重要です。
そのような中、
安倍総理は施政方針で、次期防衛大綱について、従来の延長線上ではなく、
国民を守るために真に必要な防衛力のあるべき姿を見定めていきたいとの強い意思を示されました。
そこで、
政府として新たな防衛大綱と中期防衛力
整備計画についてどのような方針で策定に臨まれるのか、
総理のお考えをお伺いいたします。
さて、ここからは、人口減少、特に生産年齢人口の減少がもたらす問題にどう
対応していくのかという観点から質問いたします。
現在、生産年齢人口は大きく減少しており、これまで想像すらできなかった状況にあります。しかも、減少度合いは大都市より
地方の方が激しくなっています。この事実だけを見れば、
我が国、とりわけ
地方は、もう成長できないという悲観論があふれてしまうことになります。しかし、アベノミクスにより、名目GDPは過去最高の五十六兆円の増加、
若者の就職内定率も
企業収益も過去最高です。生産年齢人口減少下でも、正しい
政策を展開すれば
経済は伸びているという
希望が示されたと思います。
では、生産年齢人口減少
時代の中で、
経済の前向きな循環を加速し、
地方創生を進めるに当たって欠くことのできない
視点は何でしょうか。私は、
中小企業・小規模
事業者であると確信しています。
中小・小規模
事業者は、
我が国企業の九九・七%を占め、従業員数でも約三千四百万人と大
企業の約二・三倍の
雇用を担っています。特に、
地方の
雇用に、より大きな
役割を果たしています。
地方経済は、業種、
企業規模、
地域によってはいまだ厳しい状況にある中、
経済の力強さを
地方の隅々にまで浸透させ、
経済再生の完遂と
地方創生の
実現には、中小・小規模
事業者の持続的な成長が不可欠です。
ただ、大
企業と中小・小規模
事業者との生産性には格差が存在し、一人当たりの付加価値額で見れば大
企業の約半分しかありません。経常利益率も低く、資金的余裕が少ないため、新たな
情報技術の導入に踏み切ることができないという声が上がっています。賃金ギャップなどが広がりつつあり、ますます人手不足に陥るという
悩みも耳にします。これでは、生産性向上がより必要な中小・小規模
事業者で
生産性革命が進まないということになりかねません。
こうした状況を打破するために、
政府は、
ものづくり補助金を始めとする予算措置の
拡充や、攻めの
設備投資に対する
固定資産税の半減など、あらゆる
支援措置を集中的に講じてきました。
平成二十六年には小規模
企業振興基本法を
制定し、五十五万者の中規模
企業と三百二十五万者の小規模
事業者を
企業規模で分け、ターゲットを絞り込んだ上で、それぞれの
実態に合わせた
施策を
実行することとしました。これは、小規模
事業者もアベノミクス加速のエンジンにしようとしたことであり、大いに評価できます。
総理は、税制、予算、規制
改革、あらゆる
政策を総動員するとおっしゃっていますが、まさしくそのとおりであります。今国会では生産性向上の
実現のために立法措置を検討されていると聞いていますが、
生産性革命の確かな
実現のために、
中小企業・小規模
事業者の生産性向上に向けてどのように取り組んでいかれるのか、
総理のお考えをお聞かせください。
また、
固定資産税については、今回の税制改正大綱においても、市町村の条例で定める割合次第では課税標準をゼロとすることも可能としています。
固定資産税は自治体の基幹税ですが、
事業者にとっては税負担が下がり、非常にメリットが大きく、画期的な
取組です。
生産性革命のうねりを全国津々浦々に広げていくためには国と自治体が一体となって
支援していくことが重要だと考えますが、このような状況でいかに自治体へ
協力を促していくのか、
総理にお考えを伺います。
加えて、
中小企業・小規模
事業者は、経営者の高齢化や
後継者不足の深刻化により、
事業の将来性にかかわらず廃業せざるを得ないという
事業承継の問題に直面しております。
経済産業省が示したシナリオでは、
日本の
企業の三社に一社、百二十七万者が二〇二五年、廃業危機を迎えるというものであり、このまま廃業問題を放置すれば、
雇用六百五十万人、GDP二十二兆円が消失してしまうというものであります。
これについては、我が党は大いに議論し、今国会に提出される税制改正には
事業承継税制による
相続税等の緩和が盛り込まれることとなり、思い切った予算上の措置も講じられることとなります。この
施策により円滑な
事業承継が進むものと期待していますが、
日本経済と
地方創生を支える中小・小規模
事業者が健全に
次世代に引き継がれるようどのように
支援策を力強く進めていくのか、世耕
経済産業大臣のお考えをお聞かせください。
続いて、
農林水産業について質問します。
我々は、農家の所得を向上させ安心して農業に取り組めるようにするため、農政全般にわたる
改革を進めてきました。この中で、本当に農家のためになるのか疑問の多い
政策、例えば、土地改良
事業を半分に減らすとか、戸別所得補償で主食用の米にも
交付金を支払うといった
政策については、きっちりと
見直しを進めてきました。
この結果、今年から米の直接支払
交付金はなくなり、不安を感じる農家の方もいらっしゃるでしょうが、幾ら
交付金をもらっても、その分米価が下がってしまえば農家にとって意味がないのです。
安倍内閣で米
政策改革を進めてきた結果、ここ三年、米価は着実に回復しています。
交付金を十分に上回る米価の回復が
実現しているわけであります。
また、農家の手取りを意味する生産農業所得も、
平成二十七年、二十八年と二年連続で増加し、
平成十一年以降で最も高い水準になっています。私は、農家の皆様の不安に寄り添いながらも、これまでの
改革の成果も丁寧に説明していくことで
改革への理解も広がっていくものと考えています。
その際、十分に目を配るべきは、中山間地における農業の重要性です。
中山間地農業は、生産額や農家数で
我が国農業の約四割を占めるだけでなく、国土保全や水資源涵養、豊かな自然景観の提供といった公益を担っています。しかし、中山間地は、傾斜地であったり、人口減少、高齢化、担い手不足に直面したりするなど、耕作放棄が起きやすくなっています。中山間地の衰退は
日本の衰退につながります。中山間地農業が元気になるようしっかりと取り組んでいく必要があります。
もう一つ、
農林水産業の
方々に寄り添って考えるべきことは、TPP、日EU・EPAの発効への不安です。
経済連携
協定により、
我が国の優れた農産物の輸出など、海外での市場開拓や
経済投資
活動は容易になりますが、やはり農林漁業に携わる
方々は、海外からの輸入増などにより
影響を受けるのではないかと不安を抱いています。
食は国の基本です。我々は、
農林水産業に従事する
方々の懸念を払拭し、将来に夢と
希望を持てるよう、体質
強化のための予算を
協定発効を待つことなくどんどんと
実行すべきと訴え、
実現してきました。
そこで、
総理は、
若者が将来に夢や
希望の持てる農林水産新
時代を切り開いていくとおっしゃっていますが、この農林水産新
時代を切り開くため、TPP、日EU・EPAへの
対応も含めて、
農林水産業全般にわたる
改革をどのように進めるおつもりなのか、
総理のお考えをお聞かせください。
間もなく二月、いよいよ平昌冬季
オリンピック・
パラリンピックが開催されます。そして、この五輪が終われば、次は二〇一九年ラグビーワールドカップ、二〇二〇年
東京オリンピック・
パラリンピックです。
我が国への注目度が
世界的にますます高まり、更に多くの外国人
観光客の皆様が訪れるのではないかと期待しています。
さきの
東京オリンピック、一九六四年は、OECDに加盟し、先進国の仲間入りをした年でした。この東京五輪に合わせて、東海道新幹線が開業、首都高速道路が開通し、
我が国の高度
経済成長を支えました。五輪に参加し、観戦のために訪れた外国の皆様は、
日本の成長に目をみはったと思います。五輪の成功はまさに
我が国経済の新しい幕開けとシンクロし、国立
競技場に鳴り響くファンファーレは
日本の第一創生期の幕開けを告げるものだったと感じています。
二〇二〇年も、自動運転、
人工知能の活用など、これからを実感できるテクノロジーがますます身近になり、
日本の先進性やすばらしさをアピールできる絶好の機会としなければなりません。
伝統的、文化的から先端性、独自性、
世界の人々を魅了するクールジャパンも同様です。この機会に更に
世界中に広くPRできれば、クールジャパン自体が一層大きな市場へと成長し、インバウンド
観光にも大きく貢献することとなります。まさに
日本の第二創生期の幕開けという年になることが期待できます。
そこで、松山担当大臣にお伺いいたしますが、クールジャパンをどのように進め、
我が国の
経済成長や
地方創生を成し遂げるためにどのように工夫するおつもりか、お聞かせください。
最後に、参議院選挙区における合区について申し上げます。
憲政史上初めて導入された二県合区により、いわゆる一票の較差は縮小されましたが、同時に、様々な深刻な問題点も浮き彫りとなりました。例えば、二県合区となった四つの県のうち三県では選挙区の投票率が過去最低、しかも無効票が前回より約六割も増加した県もありました。また、選挙中、二県で一人前という扱いを受け、誇りを傷つけられたという有権者の厳しい声も聞かれ、結局、党派を超えて候補全員が合区反対を主張した県もあったとの報道もありました。
二県合区の選挙では、
政策よりもどこの出身なのかという点が注目されがちで、そうなれば、人口の少ない方の県では候補者すら出すことができないとも言われています。これでは、人口の少ない県、減少している県から
地方の声を国政に反映させることができなくなってしまいます。これでは
地方創生の
実現もどんどん遠くなるだけです。
このように、二県合区という手法は一部の県に不平等感を募らせるという問題点があるという声が、参議院における議論の中でも少なからぬ会派から聞かれていると承知しています。
二県合区の
対象県以外でも、全国知事会を始めとする
地方六団体は、合区の
早期解消を訴える
要望を決議しています。既に全国三十三の県議会でも同様の意見書等を採択しています。
地方議会での動きは更に広がりつつあります。
昨年九月に出された最高裁の判決では、
平成二十八年参議院選挙の選挙区の一票の較差三・〇八倍を合憲としました。その中で、投票価値の較差を考えるに当たっては、同判決の中で、参議院には、
国民各層の多様な意見を反映させて独自の機能を発揮させること、半数改選など考慮すべき参議院に固有の要素があることを示しています。
であれば、参議院においては、やはり歴史的、文化的、
社会的、
経済的にも一体性を有し、
我が国の
政治や行政の多くの場面で
現実的に重要な
役割を果たしている広域
地方自治体としての都道府県という単位をしっかりと位置付け、各都道府県から選挙ごとに少なくとも一名の代表を選ぶ選挙制度であるべきだと考えております。
現在、参議院では、参議院の在り方について、本院が衆議院とは異なるところの独自の使命をいかに果たし得るかなど、活発かつ真摯な議論が行われています。こうした参議院の在り方も踏まえながら、顕在化した二県合区の不具合に対処して、全ての都道府県からの声をしっかりと国政に届けるためにはどのような仕組みがよいのか、速やかに議論を進めていくことが是非とも必要であると確信をしております。
このことを皆様にお訴えをし、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣安倍晋三君
登壇、
拍手〕