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参考人(
安部川元伸君)
日本大学の
安部川でございます。
参議院の
先生方、本当に日頃から努力、大奮闘されておりまして、
我が国のために努力されていることを心より敬意を表したいと思います。そのために、私もできることがありましたら何でもしますので、今日はそういう
意味でここに参加させていただきました。ありがとうございます。
私の話は、
国際テロが今どういう
状況であるか、あるいはこの
アジア太平洋地域においてどういう
影響力を持ち得るかということについてお話し申し上げたいと思います。
私は
日本大学で
国際テロの教鞭を執っております。まず、
スライドを見ますと、
東南アジアにおける
イスラム国の
影響。特に、
日本に関わりのある国で考えますと、やはり
インドネシア、
マレーシア、
フィリピン、この三国が一番
日本に近いんじゃないかと。そうしますと、ここに
テロリストが入り込んで、それが
日本に輸出されるというようなことが一番警戒すべきことでありまして、私ども、こういうところにいる
テロリストの動向をウオッチしているわけでございます。
三枚目に参りますと、
イスラム国に
忠誠を誓っている
アジアの
テロ組織。これだけの数の
現地の
テロ組織がIS、
イスラム国に
忠誠を誓っていると。これは見逃せない事実だと思います。特に、
フィリピン、
パキスタン、
インドネシア、
インド、
アフガニスタン、中央
アジア。まあ、アフガンとか
パキスタンは、もう御案内のように、アルカイダの時代からさんざん
テロも起きましたけれども、注目されるのはこの
フィリピンなんですけれども、これは後で述べたいと思います。
それから次は、
イスラム国に
忠誠を誓っている
アジアの
テロ組織が起こした主な
事件。最近です。この表にあるとおりでございますけれども、これは
現地の
テロ組織が自発的に
テロを起こしているという形になります。
次のページに参りますけれども、五ページでございますが、
イスラム国絡みの
テロ事件。これだけ起きておりますが、これは
イスラム国が指示をして
現地が服従して起こした
テロと言われております。これは公安
調査庁の
国際テロリズム要覧に載っている絵でございますが、ここに緑で囲んであるとおり、
マレーシア、ジャカルタ、それから、
インドネシアですね、こういう
テロが起きております。これも
イスラム国が指示した
テロでございます。
それから、特に、
東南アジアあるいは
南西アジア、危険な国と申しますと、
先ほどの
パキスタン、
アフガニスタンを除きまして、これはまあ当然のものとして皆さんも、
先生方も御了承願っていると思うんですが、まず
バングラデシュ、これは
東南アジアと言えるかどうか分かりませんけれども、この
バングラデシュで一昨年
事件があったことを御記憶だと思います。ダッカというところで、
日本人も七人、あるいはイタリア人十人ぐらい、
アメリカ人もおりました。ここのレストランを
イスラム国というか
現地の
テロリストが襲って、
日本人七名全部殺されましたですね、一人だけ助かった人がおりましたけど。そういう
事件が一昨年の七月、
日本時間でいうと二日ですけれども、発生いたしました。そういう凄惨な
テロが起きているということで、
東南アジアにも
イスラム国、
テロリストの手が忍び寄っているということは間違いなく言えると思います。
それから、
フィリピンにつきましては、アブ・サヤフという
グループがあります。これは非常に危険な
グループで、特にキッドナッピングというか、誘拐とか身の代金誘拐、あるいは海賊、山賊、そういったことをしまして、人質を取って多額の身の代金を請求すると。それで、身の代金を払わなければ遠慮なく首を切る、容赦なく首を切って殺してしまうと、そういうような危険な
グループです。この
グループと
イスラム国が結託して、この間、昨年ですね、
フィリピンのミンダナオ島で
事件を起こしました。後で詳しく申し上げます。
インドネシアにつきましては、ジェマー・イスラミア、御存じだと思うんですが、これは二〇〇二年にバリ島で
事件を起こしました。バリ島の爆弾
事件、二回ございましたけれども、そのときの首謀者、犯人がジェマー・イスラミアという
グループから出ております。このジェマー・イスラミア、現在も
活動しております。
テロ事件そのものは余り起きておりませんけれども、これは地元の警察が、かなり優秀な警察がありまして、抑えることにある程度成功していると言えると思いますが、
インドネシアは非常に危険だと思います。
インドネシアの
テログループ、多くの
テログループが
イスラム国に対して
忠誠を誓っていると、いつ大きな
テロを起こすか分からないというような
状況だと思います。
それから、シンガポールもございます。シンガポールは非常に経済的に発展した国でございます。安全だということなんですが、周囲の
影響が避けられません。特に、
マレーシア、
バングラデシュ、そういったところから
テロリストあるいは支援者が入り込んでいるということがございます。シンガポールからシリアやイラクに行った
人間はそう多くありませんけれども、その周辺国、
インドネシア、
マレーシア、
バングラデシュ、
パキスタン、そうした国から、
フィリピンも含めて、帰還した
人たち、帰還した外国人戦士と申しますけれども、そういう
人たちがいろんな危険な
状態にあるということは、我々も心に留めておくべきことだと思います。
次のページに行きますと、これは
フィリピンの話でございます。
フィリピン南部にミンダナオ島がございます。その中にマラウィという小さい市があるんですが、そこの人口はほとんどイスラム教徒です。ミンダナオと申しましても、大半はカトリック教徒でありまして、ムスリムが多いとは申しますけれども、このマラウィという市はムスリムが多いところです。ムスリムが悪いとは決して申し上げませんが、
テロリストがムスリムを
利用して
テロを起こす、あるいは拠点をつくると、そういうような事例がかなり散見されます。
昨年の五月頃から、
フィリピンのマラウィ市、ここに
イスラム国のメンバーが乗り込みまして、
現地のアブ・サヤフ・
グループ、それからマウテ・
グループというのがあるんですが、その
現地の
グループたちと結託しまして、そのマラウィ市を占拠いたしました。それで、
イスラム国と同じような体制を敷きまして、そこで一般市民千百人ぐらい殺されております。
そのちょうど時期に、
フィリピンの大統領、ドゥテルテ大統領ですね、その方は
ロシアにいたんですけれども、急遽帰国しまして、この反乱を何とか抑えなきゃいけないということで、空軍も
利用しまして、国軍を投入しまして何とかこの鎮圧に努めました。そして五か月ぐらい掛かりました。相手も、
イスラム国は戦闘にたけています。シリア、イラクで相当、外国軍、シリア軍に対して戦闘しておりますので、戦闘慣れしておりますのでなかなか鎮圧が難しいということでして、五か月掛かって十月頃にようやく鎮圧できました。もう大統領は必死でした。十一月の十六日からASEANの
会議が始まるということでして、それで何とか安全な体制にしなければいけないということでございました。
ここには三人ありますけれども、このマウティ兄弟二人、左の二人ですけれども、この二人がマウティ・
グループのリーダーです。右にいますのが、アブ・サヤフといいます危険な
グループの分派の幹部でございますが、いずれも三人とも国軍に殺されて、今は存在しません。
問題は、これでこの
グループが消滅したということではないんです。残党がいます。あちこちに逃れています。ましてや、
フィリピン南部の情勢、地形に詳しい、海岸地帯の
状況に詳しい、そういった海賊をやっていたような
人間もおりますから、そういった者たちが潜伏しております。いつ再燃するか分からない
状態だというのが今の危険な
状態で、私どもはウオッチを続けているわけでございます。
それから、
バングラデシュです。その次のページですけれども、
バングラデシュにつきましては、
先ほども申し上げました一昨年七月の
テロ事件ございました。これは、
イスラム国が
バングラデシュに入り込んで
テロをしたと自分で宣言をしておりますが、
バングラデシュ政府の方はまだ
イスラム国の
影響はないんだと、そういうふうに言い張っておりますけれども、私どもの分析あるいは情報によりますと
イスラム国が入り込んでいるのは間違いありません。
現地で
テロ組織長くやっておりますJMBという
グループがあるんですが、そこと
関係のある
グループが
日本人ほかを殺害したと言われております。彼らは、
マレーシアの大学を出たり、
地域のほかの国とも関わりがありまして、
地域に
バングラデシュ人による
テロ細胞もできておりますので非常に危険な
状況だと思っております。ですから、この辺りから
日本に
影響がないとは絶対に言えないと思って、そのチェックをしているところでございます。
バングラデシュにつきましては非常にイスラムが多い国ですので、
先ほども申し上げましたように、イスラムが悪いということでは決してありません。
マレーシア、シンガポール、シンガポールもムスリムがおります、それから
フィリピン、それから
インドネシア、そういった国々、やはり
テロリストが狙う、
利用しようと。
テロの
インフラを彼らを
利用してつくろうというのが今までのパターンで、アルカイダもやってきたことです。
次のページですが、
東南アジアにアルカイダが、オサマ・ビン・ラディンのアルカイダですが、アルカイダがどうやって
東南アジアに浸透してきたか。オサマ・ビン・ラディンは、
アフガニスタンのソ連との戦争で大活躍して、それを追っ払った張本人というか実力者であったわけですけれども、そのオサマ・ビン・ラディンが死にましたけれども、その死ぬ前ですけど、バリ島などの
事件とか、そういうのと関わっていることがありました。
ここの写真にありますハンバリという男ですけど、これはジェマー・イスラミアのメンバーですけれども、アルカイダにも
関係しております。アルカイダはこの男を使ってバリ島
事件を起こし、
インドネシアでマリオットホテルの
事件、オーストラリア大使館の爆弾
事件、それから第二回のバリ島の
事件、こうした
事件を起こしております。この男は既に捕まっております。生きて捕まっております。
次なんですが、このオサマ・ビン・ラディンの義弟というのがおります。これも死んでおりますけれども、これは歴史の話になりますけれども、九〇年代、八〇年代、この頃にオサマ・ビン・ラディンは
フィリピンに送り込んでおりました。この男は、オサマ・ビン・ラディンの妹と結婚して、義理の弟というわけですけれども、非常に仲が良くて、
テロリストとしての素養を十分備えていて、ラディンが信頼していた男です。
ところが、ラディンは
フィリピンでは
テロ事件は起こしませんでした。なぜかといいますと、
フィリピンは重要な資金稼ぎの場あるいは
インフラを形成する場所と、そういうふうに捉えておりまして、
事件を起こさないと。その代わり、さっき言いましたアブ・サヤフ、そういった地元の
グループに資金提供をして、地元の
グループに
テロを起こさせると、そういった感じでやっておりました。
ですから、アルカイダの支部がここにあったとしても、
テロをしていないものですから彼らを捕まえるわけにいかなかったということで、誰かに殺されました。アフリカのマダガスカルというところでこの男は殺されております。非常にビジネスにたけておりまして、アルカイダの資金
活動では相当活躍した男だと言われております。名前は、ここにありますモハメド・ジャマル・カリファと申します。
次に参ります。もうアルカイダは過去の
グループと思われる方もいると思いますけれども、どっこいアルカイダはまだ生きております。そして、アルカイダのラディンは死にました、
アメリカ軍に殺されました。それは二〇一一年五月二日のことでございましたけれども、そのときに一緒にいた息子も殺されております。奥さんたちや娘たちもおりましたけれども、
パキスタン政府に逮捕されております。
ここに、左にある男、これはオサマ・ビン・ラディンの子供で、最愛の子供です。特に、ハムザ・ビン・ラディンと申しまして、この男はまだ生きております。これは、オサマ・ビン・ラディンが難に遭っている頃、イランにかくまわれておりまして、イランにおった男でございます。それが、ラディンが死ぬ前に
パキスタンに行って合流しようとしたんですが、その前に
アメリカ軍に急襲されまして、危うく命を助かったという男です。
この男が去年、今年と声明を出しておりまして、父親を殺した
アメリカ、西洋、見ていろと、必ず報復するという宣言を出しております。それから、もう
一つ大事な動きは、この男が主張していること、アルカイダと
イスラム国、仲たがいしておりましたけれども、手を打とうじゃないかというような案を出しております。もう
イスラム国も大分消耗しまして昔のような力はないと思いますけれども、アルカイダがこうやって手を差し伸べれば乗ってくると。また恐ろしい
テロ組織になってくるんじゃないかと、そういう警戒があります。
実際、アルカイダは
日本の
攻撃をたくらんでおりました。
日本では韓国と共催するサッカーのワールドカップがございましたけれども、それを狙ったという情報が
アメリカのCIAから来ておりました。これはどうか分かりませんけど、ここの写真にありますハリド・シェイク・モハメド、これは九・一一
テロを企画した、立案した男でございますが、この男が
日本を
攻撃しようと
計画を立てておりました。
ところが、尋問によりますと、
日本は
テロの
インフラがない、つまり
テロを支援してくれる
グループがない。例えば、イスラム教徒も少ない、ほかの国と比べると。まあ十万人ぐらいいると言われておりますけれども、それでも十分に機能がないと。それから、
日本の警察、
日本の入管、
日本の政府、非常に優れている、なかなか入り込めない。そういった中で
テロをやることは非常に難しいということでオジャンになってしまったといういきさつがあります。
これはただし、CIAがグアンタナモというところで水責めによる拷問をして吐かせた内容ですから、これは法律的に合法かどうかは分かりませんので、この供述自体が法的に正しいかどうかは分かりませんけれども、供述したことは確かでございまして、そういった証拠も数々残っております。
ハリド・シェイク・モハメドは
日本に来ていたことがございます。昔ですが、アフガン戦争の頃、アジトを造るために、
アフガニスタンの山の中で、穴を掘るための削岩機ありますけれども、それを
日本で大量に仕入れて、その研修もしておりました。静岡県の
企業で実際、数週間の研修をしておりました。そういったいきさつもありますので、
日本に
テロリストが入らないということは決して言えないと思います。
最後に、東京五輪・パラリンピック、これに対する脅威について申し上げたいと思います。
これの脅威を測るにはどうしたらいいか。私どもは、まず、二〇一六年のリオ・オリンピックを見ておりました。
イスラム国は一年前に、今度の標的はリオ五輪だと、必ず
攻撃するからと宣言をいたしました。そして、もう
世界中が
協力して治安体制を守るようにブラジル政府に
協力いたしました。そして、
イスラム国はリクルートしたんです。十人ほどブラジルの国内から徴募して、
テロリストを募集しました。そうしたら、十人ぐらい集まりました。そして、それが
テロをしようとして武器を調達するまで行きました。ところが、オリンピック開幕の二週間前に、彼らはブラジルの警察に全員逮捕されました。これは、ブラジルには
テロ法というのがございまして、
通信傍受も可能なんですけれども、
現地の警察あるいは情報
機関の活躍によりまして未然に防ぐことができました。
ですから、この
日本もどうなるか。私は
テロリストの声明を必ずチェックしております。声明で次は
日本だ、東京だというような話がありましたら、まず何か必ずやってくると思います。リクルートすると思います。
日本人をリクルートする、
日本語を使ってリクルートするようにしてくると思います。そういう危険性がありますので、
先生方も、なるべく御
協力、警察や公安
調査庁、情報
機関、内調、そういったところに御支援を賜りたいと是非思っております。
以上で私のお話は終わらせていただきます。ありがとうございました。