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上川国務大臣 國重委員におかれましては、先回と同様またこの
法務委員会で大きな御指導を賜ることになりますが、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
また、先ほどは、私の先回のときの
辞任のメッセージを、その中を御
紹介いただきまして、大きなエールをいただいたものと、心して頑張らせていただきたいというふうに思っております。
私は、三年前でありますが、
平成二十六年の十月二十一日から二十七年の十月の七日までの間、
法務大臣を約一年務めさせていただきました。
前回の就任時でありますが、
法務省が地方支分部局も含めまして約五万三千人の職員を抱えるということにつきましても知らない状態からのスタートでございました。とにかく、起こり得るさまざまな出来事、例えば無戸籍者の問題、また、女子刑務所におきまして受刑者の出産の問題など、
法務行政の各現場で日々起こる
現実的な大きな
課題につきまして、各部局課の専門性の高いプロの職員の
皆さんの力をかりながら、職員とともに、現場目線、
国民目線を大切に、がむしゃらに取り組んだ一年でございました。
その中で、私が、
法務省の今後の
課題としても大切にしていきたいと思うことでありますが、当時印象に残ったことということで、ちょっと二点お話をさせていただきたいと思っております。
まず
一つ目でありますが、
法務省の横の
連携が弱いという点でございます。
その一例として、当時、
矯正施設で勤務するお医者さんの不足の問題が深刻でありまして、これは
法律改正もしていただいたところでございますが、この
矯正施設での医師不足の問題は、実は同じ問題が入国者収容所でも起きていたのでございます。
しかし、
矯正施設と入国者の収容
施設では所管が異なりまして、それぞれ所管する矯正局と入国管理局の間で、同様の問題を抱えながら、その解決に向けて
情報交換、情報共有をするなどして
連携していこう、こうした姿勢が足りないのではないかということを感じました。
私は、
法務官署で勤務する医師が足りないというのは
法務省全体の問題として扱うべきものではないかというふうに考えておりますし、また、その方がよりよい解決につながるものというふうに考えましたので、その折、
関係機関に、この医師不足の問題解消のために御
協力をいただきたいとお願いに伺った際には、両局長をぜひということで同行していただきましてお願いに行ったことがございました。
このように、
組織の縦割りが強いことはそれぞれ結束が強いということであります。その意味で大変いい面もございますが、同時に、問題の抜本的な解決を難しくする、また、これは地方における問題解決においてより顕著になるのではないかということも感じた点でございます。
地方におきましては、
法務省の各局部課の所管業務につきまして、例えば刑事局の所掌事務は検察庁、そして矯正局の所掌事務は刑務所や少年院、また民事局の所掌事務は
法務局で行っておりまして、オール
法務官署として横串型に
連携をして
対応すべきである案件につきましてもそのような発想になかなかなりにくいということでありまして、したがって、それぞれの機関が別々に
対応しがちであるということによって、トータルとして見るとまとまりを欠き、また、政策や問題解決の先細りが生じかねないということも感じたところであります。
ですから、日々の重要
課題に対しまして迅速で力強い
取り組みを行うためには、これまで以上に
法務官署間の、つまり、五万三千人の方が働いているそれぞれの部署、そのしっかりとした
組織の中での
仕事と同時に情報の共有と
連携、これについて強化していくということが重要ではないかというふうに考えたところでございます。
また、もう
一つということでありますが、
法務省が
社会のグローバル化におくれをとっているのではないかということを感じたことでございます。
前回就任時におきましても、国際案件につきましては、各局部課がそれぞれの所管の範囲の中で大変質の高い
取り組みを極めて地道に行っておりました。しかし、さきに述べましたとおり、
組織が縦割りでありまして、この国際案件につきまして戦略的に取り組む上での司令塔の機能が弱いために、政策の有機的
連携が余りとられておらず、戦略的な視点に欠ける側面があるようにも感じたところでございます。
そこで、私、前回退任後でありますけれども、自民党の司法
制度調査会長として、
国民に頼りがいのある司法の実現に向けて、法の支配を国際的に浸透させる新しい日本のソフトパワーとして、司法外交、これを国の施策に明確に位置づけることなど、さまざまな問題提起をしてきました。
私は、日本企業の国際進出に代表される
社会のグローバル化の中で、質の高い日本の司法
制度あるいはその運用ノウハウ、また指導
人材等のソフトパワーを生かし、それを生かし切る、そしてそれによって国際
社会で日本がこの
分野におきましてもリーダーシップを発揮して、プレゼンスを高めていく。そして、このことにおきまして
法務省また
法曹実務家の
役割は極めて重要でありまして、その意味で、省内に国際的な司法戦略を担う司令塔機能をつくり、オール
法務省で司法外交を展開し、国際案件に取り組む必要があるというふうに考えているところでございます。
今回、第百代目という節目の
法務大臣に就任をいたしまして、前回の
経験ということで御
質問をいただきましたので、そのときからの問題意識も含めまして、そうした問題意識を大切にしながらこの重責に当たりたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。