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矢島参考人 皆様、こんにちは。
三菱UFJリサーチ&
コンサルティングの
矢島と申します。
本日は、
参考人としてお招きいただきまして、ありがとうございます。
私は、シンクタンクで、
女性の
活躍ですとかワーク・ライフ・バランスに関する
調査研究、そして
コンサルティングを行ってきております。そうした
立場から、きょうは、近年当社が実施したさまざまな
調査の
データをもとに、
育児・
介護休業法に関する
現状と
課題について
お話をしたいと思います。
皆様、お手元の
資料をお配りさせていただいております。まず、きょうの
育児・
介護休業法関係の
改正案の
部分について、
議論の
前提と、
女性の
就業継続、
活躍と
育児休業に関する問題、それから、
男性の
育児休業、
育児目的休暇取得等の問題、そして
最後に、
改正法案の
意義と
留意点について
お話ししたいと思います。
まず、
議論の
前提ですけれども、こちらは、もう既に
労働政策審議会の建議で出されておりますけれども、やはり
一つ目には、
育児休業を取得した
労働者が安心して
職場復帰できるよう保育所等の整備を一層進めるということが何より重要だということは間違いのないことではないかというふうに考えております。そして、今は、
年度初めの四月に入れるようにというところがまだ実現しない
状況があるわけですけれども、今後は、さらにそれを一歩進めて、四月に限らず、復帰を希望する時期に
子供を預けられる環境の整備と保育の質の確保、これも建議に書かれておりますけれども、こういったところが目指すところであるかと思います。
それから二つ目に、やはり安倍
政権の最重要
課題の
一つが
女性が輝く
社会の実現ですし、
女性活躍推進法が施行されたところで、多くの
企業がこの問題に真摯に取り組み始めています。
女性の
就業継続から
活躍へということで、さまざまに今、かなり本当に
企業は取り組みに苦慮しながら、試行錯誤しながら取り組んでいる。そして、そういった取り組みをしないとマタハラという問題で訴えられてしまうリスクも抱えながら、何とか、単に
仕事を続けさせるだけではなくて、
活躍できるような環境づくりということに取り組んでいるということを
前提に、そういった、長く休むというよりは、どちらかというと、
職場復帰して、両立支援
制度をうまく使いながらキャリアを積めるような環境をつくるということが今大きな
課題である。これは間違いなく
議論の
前提ではないかというふうに考えております。
その上で、
女性の
就業継続、
活躍と
育児休業の
現状と
課題について、
データでお示ししたいと思います。
次の
ページ、第一子出生年別に見た第一子出産前後の妻の就業変化、こちらの
データは、皆さん、もうよく御存じだと思いますけれども、出産後の
継続就業率が、二〇一〇年から二〇一四年に生まれた子について、五三・一%というところまで来ています。
ただ、これを正規の職員とパート、派遣に分けて見ますと、正規の職員は六九・一%、そのうち
育休を使っての
就業継続が五九%まで来ています。一方、パート、派遣は二五・二%、うち
育休を利用した
就業継続は一〇・六%と、かなり格差がある
状況です。
ただ、
育休を使った
就業継続というのは、こちらのグラフを見ていただきますとわかるとおり、二〇〇五年—九年に生まれた
子供のところから、この五年間に、かなりぐっと伸びているということはわかると思います。
そういう背景の中で、その下のグラフは、二〇〇九年の育介法
改正後の五年間の変化というものを捉えたものです。これを見ますと、
企業調査なんですけれども、
企業の認識としても、
育児休業の利用は、
女性の利用が特にふえているというところがわかります、正
社員の
女性ですけれども。有期契約
労働者については、対象者がいないという答えが多いんですが、有期契約
労働者について
企業アンケートをとると、対象者と認識している方についてはほぼ一〇〇%とれているという答えが多いんですね。ですので、対象者として
企業が認めるかどうかというところが有期契約
労働者については大きいんですけれども、こちらも、
女性の利用者は有期契約
労働者でもふえてはいるというような
状況です。
次の
ページに参りまして、では、結婚、出産での
女性の離職
状況というのはどうなっているのかというのを、やはり同じ平成二十七年の
調査で見ますと、正
社員の全体としては、結婚、出産で離職する
女性はほとんどいないと回答する
企業が四七・六%、それから、少数派だが離職する
女性もいるというところで三〇・七%、合わせて八割以上が、大分離職をしなくなってきているというような認識を持っている。
これは、この
調査だけではなくて、私、さまざまな
企業で
コンサルティングや研修をさせていただいたり人事の方とお目にかかりますが、現場の人事担当者あるいは
女性労働者自身が実感として持っているところではないかなというふうに感じております。
その中でも、その下のグラフは、では、こういう
状況の中でもやめている人はどういう
理由でやめているんだろうかということを見ています。
仕事を続けたかったが両立が難しくてやめたという人が二五・二%います。その二五・二%の内訳を見ると、一番多いのは勤務時間が合いそうになかったということで、
育児休業そのものよりも、復帰後の働き方、復帰後の労働時間の懸念というところが示されているところです。ただ一方で、
育休の
制度が
会社になかったという答えもまだ二二・六%ございますし、
保育園に
子供を預けられそうもなかったという答えも一七%ある
状況です。
さらに、では、
育児休業が十分とれたら
就業継続は可能なのかというところなんですけれども、九
ページのグラフは、もう少し昔にさかのぼりまして平成二十三
年度にやった
調査で、ちょうど平成二十二年の、
改正法の前後五年間で
企業における
就業継続がどう変化しているかというのを見てみますと、大
企業を中心に、結婚、出産を機に離職する
女性がかなり減っているという
状況がこの時点でも見られます。
この離職が減った原因というのを
企業の人事担当者に聞いてみますと、その下のグラフなんですけれども、一番多いのは、やはり短時間勤務
制度を利用できるようになったこと。二〇〇九年の
育児・
介護休業法の
改正で、短時間勤務
制度が三歳までの子を持つ親には義務化されました。この
効果を
企業の人事担当者は実感しているということが見てとれます。ですので、子が一歳までの
育児休業プラス短時間勤務
制度というものが普及してきたことが、確実に
女性の
就業継続を進めているのではないかというふうに認識しております。
次の
ページ、では実際の
育児休業期間の希望というのはどんな
状況なんだろうかというのを見ますと、休業
期間が希望どおりだったかどうかというのを
男性正
社員、
女性正
社員、
女性非正
社員に聞いているんですが、特に
女性正
社員で見ますと、六九・一%が希望どおりだった。
男性でも六九・三%ですけれども。一方で、希望よりも実際の取得日数が短かったという方が二五・三%、
女性の正
社員でいます。つまり、四分の一は
自分の希望したよりも短くしか
育児休業がとれていないというような
状況です。一方で、希望よりも長くなった方もいます。それは、やはり保育所に入れない等の
理由で、
自分の希望よりも長くなっている方も五・六%いるという
状況です。
では、一番
自分の取得したかった休暇、休業
期間はどれぐらいなのかというと、やはり一年から一年半未満のところが一番多いというような
状況です。
希望より少ない
期間で休業
期間を取得した
理由なんですけれども、
男性の正
社員では、
男性の両立支援
制度に対して
会社や
職場の
理解がないですとか、残業が多い等業務が繁忙というあたりが、
職場の働き方の問題あるいは
制度の認知
状況が問題になっております。そして、
女性の正
社員で見ますと、実は一番多いのが、休暇を長くとると保育所に入れなくなるためというのが多くなっているということです。ですので、今までの
状況ですと、入れないので短くする、あるいは長くしても入れないというふうな、両方八方塞がり的な
状況があるのではないかというところも見てとれます。
では、実際に一歳を超えてとる人というのは、どういう
状況で一歳を超えて
育児休業をとっているんだろうかというのを十三
ページで見ますと、こちらも、保育所に入れない、または法に定める
理由で休業を
延長した人がいる。これは
企業の人事担当者に聞いたのですけれども、大
企業では五〇・二%が、保育所に入れないなどの
理由で、一歳を超えて
育児休業を実際に取得する従業員がいるというような
状況です。
こういった
状況で、
育児休業で保育所に入れない
期間を補いながら、今までの、一歳を超えて一歳半までは
育児休業を
延長できるという仕組みを使いながら、それと、
育児休業と短時間勤務の組み合わせで
女性の
就業継続というのが進んできているというのは間違いなく言えるんですが、では、今安倍
政権で言っている、
就業継続だけではなくて、
女性の
活躍というところの面でどんな
課題があるのかを見ますと、
育児休業復帰後の配属の問題、ここに大きな
課題があるのではないかと思われます。
十四
ページなんですけれども、
育児休業復帰後の配属というのは、原則もとの
職場にということでマネジメントされているケースが多いんですが、ほとんどもとの
職場に配属しているというのが全体で六九・六%、もとの
職場に配属している場合が多い、そうでない人もいるというような
状況が一八・一%というところです。中小
企業ほど、もとの
職場に配属しているということが実施されてはいるんですけれども、大
企業では、それプラス、もとの
職場に配属している場合が多い、一部はそうではないというようなところの組み合わせで、九割近いところになっているわけです。
では、もとの
職場に戻っていない
理由はどうなんだろうかというと、これは本人の希望というのは二三・五%と少なく、本人の希望と
職場のニーズが一致しないということで、もとの
職場に戻れない
状況があるというのが七五%を占めるというような
状況になっています。
やはり、出産後に新しい
仕事を覚える、新しい環境になれるというのはなかなか厳しいものがありますので、場合によっては自宅の近くの支店に移るといったような形で
就業継続にプラスになっているケースもありますけれども、
職場がかわるということは、
女性が復帰後に
活躍するという面ではなかなかハードルなのではないかというふうに考えています。
十五
ページには、では、
育休からの復帰時期によって復帰後の
仕事の内容がどう変わるんだろうかというのを見ています。
これを見ますと、もちろん産後休暇後すぐに戻ればほとんど変化はないんですが、
育児休業をとった場合で見ますと、末子六カ月未満と末子六カ月以上一歳未満までで復帰したところでは余り大きな変化が見られません。末子一歳以上になりますと、休業前と同じ内容に復帰できるという割合がぐっと下がるというような
状況です。そして、末子一歳半以上になりますと、休業前と異なるだけではなく、職責や能力に見合わない簡単な
仕事になってしまうという割合がふえるということが見てとれます。
また、こういう簡単な
仕事になってしまうということが、本人の希望と一致していればまだよいという面もあるのではないかと思いますけれども、次の
ページ、十六
ページに参りますと、
自分の希望どおりだったかどうかということも、
育休からの復帰がおくれると、
自分の希望どおりだったという割合が徐々に下がっていくというようなことも見てとれるわけです。
十七
ページには、こうした
状況の中で、今、
企業はどんな対策をしているんだろうかというところを皆さんに御紹介したいと思います。
今、
企業では、
育休から復帰した後の本人と、そして上司に対する働きかけというものを通じて、先ほども
お話にありました
マミートラックといったような
状況に陥ることを防ごうという取り組みがさまざま行われております。一番多いものは、今後の職務や働き方に関する面談を実施するといったものですけれども、こちらが、大
企業では五八%行われており、中小
企業でも四一・五%までふえてきているような
状況です。
ただ、まだこうした取り組みを特に行っていないという
企業も多い
状況でして、就業を継続するだけではなく、
育休復帰後にしっかり
女性が
活躍していくというところで、
企業はまだ対策が十分打てていない
状況、これからますます取り組んでいかなければならない
状況にあるということを確認していただければと思います。
また、
企業の人事担当者に聞いた、
育休や短時間勤務
制度を利用した場合の長期的なキャリア形成への影響というところで見ますと、どの規模の
企業でも、多くの職種で長期的に影響しないという答えが一応多いんですけれども、大
企業では、多くの職種では余り影響しないが一部の職種で影響するというような割合が二〇%。そして中小
企業では、どちらとも言えない、わからない。
企業の人事担当者に聞いているんですが、
育休から復帰した後、
制度を利用したことで長期的なキャリア形成への影響がわからないというような回答が多くなっている。これは、利用する本人たちからすると、かなり不安な
状況ではないかなというふうに考えています。
ということで、
育児休業というものの普及、それから、
育児休業と短時間勤務の組み合わせによる利用が
女性の
就業継続を確実に伸ばしていて、
企業もそうした
就業継続に対応した
女性の
活躍支援ということに取り組み始めたところなんですけれども、やはり
育休が余り長くなり過ぎると、そのあたり、
課題が多くなるということは見てとれるかと思います。
それから次に、
男性の
育児休業、
育児目的休暇等の取得に関する
お話です。
育児休業取得率の推移については、皆さん御承知のとおり、
男性では、近年上昇傾向にはありますが、二・六五%とまだ低い
状況です。
二十一
ページには、妻の就労形態別に
男性の
育児休業取得率を見ています。
男性全体では五・四%ですが、妻が無業の方は四・四%、また、妻が正
社員の方は八・八%。余り差が大きくないんですが、妻が正
社員の方だと若干多い。ただ、問題は、利用希望をしているが利用できていない割合が三割に及ぶというところではないかと思います。
そして、次のグラフは、
育児を
目的とした休業の取得率と取得日数ということで、実は、
育児休業以外の年次
有給休暇や配偶者出
産休暇の方が、
男性の場合はやはり取得しているというような
状況があるということです。
次の
ページに参りまして、では、
男性が
育児休業を取得しなかった
理由は何なのかというのを見ますと、最も多いのは、
職場が
育児休業制度を取得しづらい雰囲気だったということで、
職場環境というのが一番多く挙げられていますし、次に、
会社で
育児休業制度が整備されていなかったからということです。
この整備されていなかったからということについて言うと、さらにその下のグラフで、
育児休業とか両立支援
制度が
会社に整備されていなくても、法律上、
制度の対象であれば利用できるという
状況があるわけですが、これを知っていたかどうかと聞きますと、
男性の正
社員の六七・九%は知らないというような
状況です。
そして、
企業における性別に見た
育児休業の利用しやすさで見ますと、やはりまだまだ、
女性は利用しやすいが
男性は利用しづらいというふうに
企業の人事担当者が直接答えるという割合が高い
状況というのも見てとれます。
こうした
状況の中、
企業は、
男性に向けた
育児休業取得促進の取り組みとして、配偶者出
産休暇
制度を整備するといったことや、上司や人事部から働きかける、それから、取得率や取得の人数を目標として定めているということをやっているわけですが、いずれも、これまでのところは大
企業が突出して多い、中小
企業との間に大分差があるというような
状況です。
参考までに、次の
ページに、非正
社員の
女性の
育児休業取得率というのも低いわけですけれども、この取得率というのが、実際に
企業から直接働きかけた場合と働きかけなかった場合でかなりの差があるというところを見ています。ですので、
男性の
育児休業についても、
企業からの働きかけというのが取得率に影響があることが期待できるのではないかなというふうに考えています。
最後に、
改正法案の
意義と
留意点ですけれども、
育児休業の再
延長については、
現状、一歳を超え、さらに一歳六カ月を超えても保育所に入所できず、離職を余儀なくされる人の
セーフティーネットとして
一定の、今の
状況でいうとニーズがあるのではないかというふうに考えております。しかも、従来の一歳六カ月までの
延長では、生まれ月によって入所
可能性の高い四月のタイミングに届かない人がいるという
状況があります。こうしたことから、今回の
延長というのはニーズがあるのではないか。
ただし、
年度の初めに届かないという問題と、
年度を越えて、
年度頭にさらに入れないという
状況は、これは実は大きく違います。今回の
延長は、今の保育環境下では、一時的に、四月に入れない人の受け皿になる
可能性も考えられます。こうした
状況については、やはり早急に解消していただかなければならないのではないかと考えています。
それに関しまして、待機児の問題について言いますと、待機児問題というのは、保育所の整備の問題もありますが、また、整備の問題だけではなくて、今検討されているコンシェルジュやマッチングの問題というのも非常に大きいわけです。一方で、整備の問題というのは、待機児だけを見ているとおくれてしまう、後で後でになってしまう。
実際に、平成二十年から、国は、潜在保育ニーズに基づく保育
計画というものを自治体に求めてきました。しかし、自治体の中では、この潜在保育ニーズというものに対応するという意識が十分広まっていないのではないかというふうに感じています。というのは、保育が整備されたことで働く
女性がいるということを、ネガティブに言う自治体関係者がいるからです。
ですので、潜在保育ニーズに基づく整備ということをしていただくと同時に、ことしの待機児の問題については、マッチング機能等を高めることで早急に解消していただくことが大事かと思います。
そして、
女性のキャリア形成ということについては、
企業が現在、
活躍ということでさまざまな取り組みをしておりますので、そうしたことに対して、保育に入れないことで
女性間の復帰時期の格差がつくという
事態、これが早急に解消される必要があるかと思います。
そして、
男性の
育児休業取得の促進については、やはり、
男性が両立支援
制度の存在や
制度を把握していないということが顕著に見てとれますので、こうしたことを個別に周知していただく取り組みというのは非常に
意義があるのではないかと思いますが、ただ、
留意点としては、やはり働き方改革とあわせて進めていただいて、実際に
代替要員や
周囲の環境など、とりやすい環境整備ということとあわせないと、なかなか厳しい
状況ではないかと思います。
最後に、
育児目的休暇につきましても、
男性が
育児休業以外の
制度を利用して実際に休暇を取得しているということ、また、
企業がさまざまな支援をしている
状況から、
育児目的休暇を努力目標としていただくのはよいことなのではないかというふうに評価しております。
ただ、
留意点としては、国が把握する
育児休業取得率の算出方法です。
企業はこれを非常に気にしていますので、他の休暇をとっても
育児休業取得率と同じような認識をされるのかということが、非常に
企業にとってはモチベーションになるのではないかというふうに思います。また、先ほどの話にもありましたが、
企業間格差が拡大する懸念がありますので、この点を留意していただければと思います。
済みません、長くなりました。以上です。(
拍手)