○
参考人(
廣木克行君)
廣木と申します。よろしくお願いいたします。
不
登校への
支援活動の経験を踏まえてお答えいたします。
不
登校の
子供の
支援で最も大切なことは、不
登校になった
子供の心を理解することです。不
登校支援の難しさは、
支援する人の関心が不
登校という当事者の
状態に向けられやすく、心に関心を持つ人が非常に少ないという点にあります。しかも、心の理解を伴わない
支援が当事者にとって新たな苦しみの
原因になることが、審議をされた議員の皆さんにも余り知られているとは思えません。
不
登校の
子供は二重の苦しみを抱えます。二重というのは、一つは、不
登校になる前に競争的で管理的な
学校生活や
人間関係のもつれなどを通して抱え込まされた根源的な苦悩です。もう一つは、不
登校状態に陥った後、親や親族あるいは教員などが示す反応に追い詰められ、行くべき
学校に行けないことで
自己否定の感情を深めていく二次的な苦悩です。
重要なのは、この二重の苦悩を抱えた
子供が陥る精神
状態です。それは、自らの過去と現在と未来の深刻なる切断と表現できます。現在の自分から過去と未来を切断することで、崩れ落ちそうな現在の自分を守りつつ、辛うじて生きている
状態と表現できます。
この話をすると、不
登校を経験した青年たちの多くが、自分が経験した苦しさの意味がよく分かると言ってくれます。そして、青年たちが取り戻す時間の順番は、まず現在、そして未来、そのずっと後に過去ということです。
その現在を取り戻すための葛藤
状態にある不
登校の
子供に未来志向を促す
学校や勉強の話をすることは、それだけで自らを守るために固く閉ざした未来への扉が無理にこじ開けられることに等しく、同時に、その話を拒絶している自分自身への絶望感を強めることにつながります。また、思い出すのも怖い過去の扉をこじ開ける
原因追及の問いかけは、辛うじて維持しているアイデンティティーを壊されるような苦痛を
子供に与えます。
不
登校の
子供の家庭内暴力は、このような働きかけを受けた後に多く見られる命懸けの
自己防衛の反応であることを知っていただきたいと思います。不
登校の
子供が学習への
意思、つまり未来への関心を示し始めるのは、安心して自分のままでいられる家庭などの居場所で安らかな時間を必要なだけ過ごすことを保障された後に訪れる、安全で安心な現在を実感できた後のことです。
ここで、
法案についてですが、理解し難いのは、不
登校対策法でありながら、現在を取り戻す
段階にいる最も苦しい
子供に対する対応がほとんど明示されず、
附帯決議や何々などの等の解釈の中で主に
説明されていることです。そのことに不
登校関係者の多くが深い危惧の念を抱いていることを議員の皆さんには是非念頭に置いていただき、最後まで慎重には慎重に審議を尽くしていただきたいと思っています。