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2015-05-14 第189回国会 参議院 法務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十七年五月十四日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  五月十三日     辞任         補欠選任      柳本 卓治君     馬場 成志君  五月十四日     辞任         補欠選任      有村 治子君     二之湯武史君      馬場 成志君     柳本 卓治君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         魚住裕一郎君     理 事                 熊谷  大君                 三宅 伸吾君                 有田 芳生君                 真山 勇一君     委 員                 猪口 邦子君                 鶴保 庸介君                 二之湯武史君                 馬場 成志君                 牧野たかお君                 溝手 顕正君                 柳本 卓治君                 足立 信也君                 江田 五月君                 小川 敏夫君                 矢倉 克夫君                 仁比 聡平君                 田中  茂君                 谷  亮子君    国務大臣        法務大臣     上川 陽子君    副大臣        法務大臣    葉梨 康弘君    大臣政務官        法務大臣政務官  大塚  拓君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局総務局長   中村  愼君        最高裁判所事務        総局人事局長   堀田 眞哉君        最高裁判所事務        総局民事局長        兼最高裁判所事        務総局行政局長  菅野 雅之君        最高裁判所事務        総局家庭局長   村田 斉志君    事務局側        常任委員会専門        員        櫟原 利明君    政府参考人        内閣大臣官房        審議官      久保田 治君        警察庁長官官房        審議官      露木 康浩君        総務大臣官房審        議官       時澤  忠君        法務大臣官房司        法法制部長    萩本  修君        法務省民事局長  深山 卓也君        法務省刑事局長  林  眞琴君        法務省人権擁護        局長       岡村 和美君        外務大臣官房審        議官       岡田  隆君        外務大臣官房参        事官       鈴木 秀生君        国税庁課税部長  藤田 博一君     ─────────────   本日の会議に付した案件政府参考人出席要求に関する件 ○法務及び司法行政等に関する調査  (人種差別に対する法規制に関する件)  (子供のDV被害情報収集体制に関する件)  (通信傍受法におけるメール受信に関する件)  (裁判官の人事評価に関する件)  (外国人等の土地取得問題への対応に関する件  ) ○裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付)     ─────────────
  2. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、柳本卓治君が委員辞任され、その補欠として馬場成志君が選任されました。     ─────────────
  3. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  法務及び司法行政等に関する調査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、内閣大臣官房審議官久保田治君外五名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 法務及び司法行政等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 有田芳生

    有田芳生君 おはようございます。民主党・新緑風会の有田芳生です。  今日は、日本人権状況について、国際基準からどのような現状にあるのかということを中心に質問をさせていただきたいというふうに思います。  もちろん、法の厳格な解釈、執行を基本としながらも、大臣、副大臣そして政府参考人皆さんには、人間的に率直なお気持ちについても吐露していただきたいというふうにお願い最初にしておきたいというふうに思います。  一番最初にお聞きをしたいのは、昨年の十一月十一日のこの委員会でも質問をいたしましたけれども、北海道北星学園大学の教師をやっている元朝日新聞記者とその家族に対する異常で異様な脅迫がいまだ続いているということについてお聞きをしたいというふうに思います。  昨年の質問では、インターネットを通じてその元朝日新聞記者の娘さんに対して異様な記述が頻繁に書き込まれていました。家族についても、例えば、お父さんは売国奴です、お母さんは密入国朝鮮人売春婦です、その後に娘さんの名前あるいは写真までが掲示をされて、こいつ死ねばいいのに、この餓鬼にも塗炭の苦しみを与えないとな、一族、血を絶やすべき、自殺するまで追い込もうと、そういうものが去年の十一月に問題としてこの委員会でも問うたわけですけれども、それがいまだ続いている。  さらには、脅迫状が、例えば一月三十一日の消印北星学園大学学長宛てに、自筆で全部、脅迫文が来ておりまして、その冒頭には北星学園大学学長並びに教職員一同ということで、非常に長い文面が送られてきました。  まず、警察庁にお聞きをいたします。この一連の脅迫行為というものは、例えば白い粉がこれまで送られてきたり、あるいは脅迫文が送られてきたり、あるいは検挙者が出たりという経過があったと思いますが、まとめてこれまでの事実をお示しください。
  7. 露木康浩

    政府参考人露木康浩君) お答えいたします。  お尋ねの件でございますけれども、昨年の五月から今年にかけまして、複数回にわたりまして元朝日新聞記者の方が非常勤講師を務めておられる大学に対して、その元記者を辞めさせなければ危害を加えるなどの脅迫文が送られた事案でありますとか、あるいは昨年十月には、同じような内容脅迫電話大学に掛かってきたというものを認知をいたしております。  脅迫電話の件につきましては、大学業務を妨害したといたしまして、威力業務妨害罪北海道警察被疑者を逮捕いたしております。  また、その他の脅迫状の件につきましては、北海道警察において現在捜査を進めているものと承知をいたしております。
  8. 有田芳生

    有田芳生君 最初にお聞きをしました一月三十一日付け消印の入っている脅迫文、これについてはどのように認識されていますでしょうか。
  9. 露木康浩

    政府参考人露木康浩君) お答えいたします。  今委員指摘の件につきましても、北海道警察において現在鋭意捜査を進めているものでございます。
  10. 有田芳生

    有田芳生君 脅迫文、これまで以上にエスカレートしていると私は考えております。脅迫文の最後のところにはこう書かれております。国賊、その下に元新聞記者のお名前があります、の娘である、その下に娘さんのお名前、十七歳ですけれども、その名前があります。必ず殺す、期限は設けない、何年掛かっても殺す、どこへ逃げても殺す、地の果てまで追い詰めて殺す、絶対に殺すと、こういう異常、異様なことがずっと続いている。確かに、一人検挙はされているわけですけれども、こういう事態に対してやはり厳格に、検挙にまで結び付けていただきたいと強くお願いをしたいというふうに思います。  この脅迫状が来たときに学校もびっくりしました。そして、この元新聞記者もびっくりしました。娘さんに果たして伝えていいものかどうか大分悩んで、伝えていなかった。だけれども、娘さんが学校から家に帰ろうとすると何か自分の近くに変な雰囲気がしたので、じっと観察してみると、パトカーがずっと付いてきている。それでびっくりしてしまって、家に帰ってからお父さんにこういうことがあったんだということを伝えたところ、もうこの脅迫状について語らざるを得なかったという状況があるので、以前、昨年の委員会でも、二人の娘さんがいらっしゃる上川法務大臣、こういう事態についてどのようにお感じになるかということを聞いたところ、大臣は、そのままにおいていてはいけないという思いだと、これは新しい人権侵害であるというふうに答弁なさいました。  さらに、このように脅迫がエスカレートしているという状況の下で、これは単に刑法二百二十二条の脅迫に当たるというレベルではなく、やはり人間的な感情問題として、十七歳の少女がどれほど社会的に追い詰められていっているかという極めて重要な人権問題だと思いますが、大臣、もう一度お気持ちを、法務大臣立場として、母親の立場として、お考えを述べていただければと思います。
  11. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) ただいま御質問をいただきました案件ということで、今捜査中という状況もあって、進行しているというそうした事態ということに対して法務大臣としてということでございましたけれども、個別の案件ということになりますとなかなかお答えがしにくいところではございますが、若いこれからの方が今のような形で執拗な脅迫を受けているというようなことについては、これはあってはならないことであるというふうに強く感じるところでございます。  今の日常生活の中で突然そうした事態に追い込まれたときに、それぞれの方がどんなふうに思っているのかということ、そういう事態に遭遇しないとなかなか分かりにくいことではありますけれども、今お話をいただいた事態については、大変残念なことでもあるし、また、こうしたことがあってはいけないというふうに思うところでございます。  そういう意味で、こうしたことについて、さらに人権擁護観点から申し上げましても、絶えず皆さんに寄り添う形で対応していくということが大事であるということを強く感じているところでございます。
  12. 有田芳生

    有田芳生君 こういう卑劣な行為に対しては、やはり検挙をするということが抑止力になると思いますので、警察当局の更なる厳正なる捜査お願いしたいというふうに思います。  今のケースは個別、元新聞記者、あるいはその御家族、あるいは大学当局関係者に対する脅迫でしたけれども、しかし一方で、この委員会でも何度もお聞きをしてきましたけれども、いわゆるヘイトスピーチ差別扇動というのは、特定個人ではなく、集団に対する差別扇動がずっと行われてきました。  もう何度も繰り返しますけれども、例えばここ二年、三年前の東京新大久保では、殺せ殺せ朝鮮人、首つれ毒飲め朝鮮人、あるいは新大久保を更地にしてホロコーストをやるぞ、あるいは大阪の鶴橋では、鶴橋大虐殺をやりますよ、十四歳の少女が叫ぶ、大人たちがそれに、そのとおりだと言って唱和する、共感をする、そういうことが続いてきたわけですけれども、それが社会的な批判が広がりつつある、法務省啓発なども含めて努力をしていただいているということは十分に承知をしているんですけれども、ずっと続いているんです。この五月十日には神戸で同じようなデモがありました。そして、五月十七日、今度の日曜日には秋葉原でそういう集会、デモ準備をされております。  皆様方にお示しをした資料写真の下を見ていただきたいんですけれども、「ヘイトスピーチ、許さない。」これは、法務省啓発の中でポスター、リーフレットを作ってくださり、さらには神戸法務局では建物にこれだけ大きな「ヘイトスピーチ、許さない。」という垂れ幕が掲げられて、神戸に住む外国人あるいは差別扇動に反対する人たちには物すごく大きな励みになっているわけですけれども、まず人権擁護局長に伺いたいんですけれども、こういう取組、これは神戸法務局の独自の努力ということで理解してよろしいんでしょうか。
  13. 岡村和美

    政府参考人岡村和美君) 神戸地方法務局が、独自に創意工夫地域実情に応じた啓発活動として提案したものであります。
  14. 有田芳生

    有田芳生君 じゃ、人権擁護局長あるいはその周りの方々から、こういう形でこれからも進めていこうよという、そういう提案されたというわけではないんですね。  それから、そういった独自のイニシアチブでヘイトスピーチ許さないというものを広げていってもらうという、そういう方針をお出しになる予定はないでしょうか。
  15. 岡村和美

    政府参考人岡村和美君) 常日頃から地域実情に応じた啓発活動を工夫するように法務省から各法務局地方法務局には指導しているところですが、今回の件につきましては、「ヘイトスピーチ、許さない。」というポスターを作り、各地で工夫してその地での啓発活動に力を入れるようにと指示をしたところですので、法務局の外壁に掲示するという提案については、神戸地方法務局からこういうことをやりたいという連絡がありまして、法務局考えどおりにやってくださいということで、各地でそれぞれ工夫して啓発活動は進めております。
  16. 有田芳生

    有田芳生君 五月十七日、千代田区ですけれども、秋葉原で午後やはりヘイトスピーチデモ準備をされております。その目的というのは、秋葉原地域というのは、今御存じのように中国人の方々観光客としていっぱい来ていらっしゃる。そこで外国人排斥というデモ準備をされております。  私は、昨日、千代田区役所に行って、こういう差別扇動デモについては厳格な対処を毅然として行っていただきたいという申入れを行いました。そのとき、千代田区役所に行きますと、この「ヘイトスピーチ、許さない。」というポスターが大きく貼られていて、やはり物すごく目立つんですよね。だから、そういう方向はもっと強めていただきたいということが一点。  そして、もう一つ、この千代田区というのは、自民党から公明党さん、それから民主党全会一致ヘイトスピーチ対策の検討を求める意見書というものが三月十一日に採択されました。それは安倍晋内閣総理大臣宛て上川陽子法務大臣宛てに送られているというふうに思います。  そこでも明らかになっておりますように、やはり日本は、昨年八月、スイスのジュネーブで行われた人種差別撤廃委員会日本勧告、それに基づいてもっと差別問題について対処すべきだということが一点。さらには、京都朝鮮学校襲撃事件についての最高裁の決定が行われましたから、そういうものを踏まえて、我が国の品位と名誉が傷つくことのないように、国においても法整備を検討することを求めるという意見書なんです。こういう意見書は、全国各地東京の国立をきっかけにしまして広がっておりますけれども、今、百近くの地方自治体で国に対して新しい対応をすべきだという意見書が採択をされました。  そこにありますように、人権擁護局長にお聞きをしたいんですけれども、ヘイトスピーチについては現行法では対処できないですよね。ならば、どのようにこれから対処されようということをお聞きしたいと思うんです。
  17. 岡村和美

    政府参考人岡村和美君) 御指摘のような、ヘイトスピーチと言われるような言動への対応としては、現行法の適切な運用を行うとともに、社会全体にこのような言動が許されないとの認識を醸成することが重要であると考えております。  こうした観点から、法務省人権擁護機関では、平成二十六年十一月からヘイトスピーチに焦点を当てた啓発活動を開始しているところですが、今後も状況を注視しながら、引き続き、粘り強くかつ地道な啓発活動を着実に実施してまいる所存でございます。
  18. 有田芳生

    有田芳生君 特定集団に対する殺せとかそういう差別扇動というのは現行法では対処できないんですよ。それを前提に次の問題をお聞きしたいというふうに思います。  一番大事なのは、今ヘイトスピーチについてお尋ねをしましたけれども、問題はヘイトスピーチだけではないんですよね。人種差別撤廃委員会日本勧告、二〇〇一年、二〇一〇年、そして二〇一四年に行われましたけれども、そこにおいては日本政府に対して実態調査をせよということが求められております。  一つはマイノリティーの構成はどうなっているのか、もう一つは就業や教育状況はどうなっているのか、経済的、社会的な指標について明らかにするべきだということがもう二〇〇一年から一四年まで十三年間行われているんですが、これも人権擁護局長にお聞きをしたいんですけれども、この日本において差別についての実態調査というのはこれまで行われましたでしょうか。
  19. 岡村和美

    政府参考人岡村和美君) 人権擁護に関する国民の方々の意識を把握することを目的として内閣府が実施した人権擁護に関する世論調査というものがございまして、その結果を今後の人権擁護施策参考としているところであります。なお、この調査は、直近では平成二十四年八月に実施しております。
  20. 有田芳生

    有田芳生君 それは日本人に対する調査ですよね。
  21. 岡村和美

    政府参考人岡村和美君) はい、そのとおりでございます。
  22. 有田芳生

    有田芳生君 日本人に対しての調査をやっても、日本で暮らしていらっしゃる外国人人たちがどのような思いをしているかというのは分からない。  そこで、お示しをしたいんですけれども、実は川崎市で、一九九六年、ですから平成八年ですか、外国人市民代表者会議というものがつくられました。そこにおいていろんな調査を行って、その外国人市民代表者会議による調査が二十一年ぶりに川崎市で実施されました。これは、川崎市で今住んでいらっしゃる外国人というのは三万人を超えて人口の二%に達していると。そして、川崎でも、この委員会でも何度か質問をしましたけれども、ヘイトスピーチデモというものが頻繁に行われている。そういう状況の下で一体どのような実態があるのかということについて調査がありました。結論だけ言いますと、入居差別の問題もありますけれども、差別を経験したことがある人は四〇・九%に上っております。この一年以内にも一九・七%の方々差別感じているということを調査結果として出ております。  こうしたことをやはり、今の日本人権状況からして、調査国レベルでも今後検討しなければいけないというふうに私は考えておりますけれども、人権擁護局長はどのようにお考えでしょうか。
  23. 岡村和美

    政府参考人岡村和美君) 外国人の人権問題に関する今後の施策を検討するに当たっては、委員指摘のような調査を実際に行おうとする場合に、調査対象者をどのように選ぶか、調査項目を具体的にどのようなものとするか、調査の方法をどうするかなどの問題がございます。  こうした点を踏まえまして、調査の実施の要否について見極めつつ、適切に対処してまいりたいと考えております。
  24. 有田芳生

    有田芳生君 私も去年、人種差別撤廃委員会日本審査出席、傍聴をいたしまして、日本感じている以上に、海外から今の日本状況を見たときに、人権問題というのはかなり遅れているという数々の指摘があったことに驚きを持って受け止めました。  いろんな調査がありますけれども、それも資料としてお示しをいたしました。移民統合政策指数による各国定住外国人に対する差別撤廃取組評価順位、上の方のグラフですけれども、これは移住政策集団といいまして、ヨーロッパ国際NGOで、研究者たちとともに調査をした二〇一〇年版の指数の結果です。これは、差別撤廃取組各国でどのように行われているか。見ていただいて分かりますように、そこには三十九か国ありますけれども、日本は突出して最下位なんですよね、一番下にある。本当に、先進国日本であるにもかかわらず最下位にあるという数字が出ている。それは、差別禁止の包括的な法や制度が欠如していることからこういう結果になっております。  もう少し具体的にお示しをしておきますと、日本は、差別撤廃分野の三十四の評価項目があるんですけれども、三十四の項目のうち二十七項目で百点満点中のゼロ点なんですよね。三十四個の評価項目のうち二十七項目でゼロ、つまり取組をやっていないということなんです。こう結論が出されております。日本は致命的に取組が遅れており、改善の動きもない僅かな国の一つだという現実です。  参加国平均点が七十点以上の項目のうち日本が零点となった項目、つまり多くの国で取組をやっているんだけれども、日本で何もやっていないというのが何かというと、三点指摘されております。一つ差別を禁止する法律がないということ、それから差別加害者を罰する多様な仕組みがないということ、三点目に差別被害者を救済するための制度がない、その三点が指摘をされて、非常に低い位置に結果として残念ながら出ていってしまっているわけですけれども、これは確かに一つヨーロッパ国際NGO調査の結果なんですけれども、しかし海外から日本がこう見られているということに対して、副大臣、どのように率直にお感じになられますでしょうか。
  25. 葉梨康弘

    ○副大臣葉梨康弘君) この調査資料を見させていただきまして、私自身もちょっと詳細をよく承知をしていないということで誠に申し訳ない限りですが、よく勉強をさせていただきたいと思います、インターネット等を通じて資料を見まして。  その上でですけれども、やはり海外に対しては、まず国内でその人権状況を、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックに向けて外国人の人権問題というのを、先ほど局長からも答弁があったように、国内啓発というのをしっかりやると同時に、国際的にも日本はこういうような取組をしているんだよということをしっかりと理解をしていただくような努力というのが併せて必要なのかなというような率直な感じを持ちました。
  26. 有田芳生

    有田芳生君 今日の新聞各紙に記事が出ておりますけれども、昨日の午後、日弁連日本弁護士連合会記者会見を行いました。国に対する意見書を発表したわけですけれども、人種等理由とする差別撤廃に向けた速やかな施策を求める意見書、これは五月七日付けなんですが、昨日の午後、記者会見が行われまして、昨日の記者会見の前に、衆参両院の議長、それから各政党、内閣府、そして法務省にも郵便で送られておりますから今日到着するというふうに思います。  この日弁連意見趣旨というのは、大きく言うと二点あります。  これ、昨日大臣にも既にお届けをさせていただきましたけれども、一点は、国に対して、人種差別理由とする入店・入居拒否などの差別的取扱いや、人種的憎悪人種的差別扇動又は助長する言動ヘイトスピーチですよね、それらの人種差別に対する実態調査を行うことをお願いしたい、それが一点。二点目に、国に対して、人種的差別禁止理念並びに国及び地方自治体人種的差別撤廃に向けた施策を実施するに当たっての基本的枠組みを定める法律基本法、その制定を求めるという、大きく言って二点なんですよね。実態調査、それから基本法理念法日弁連としても国に求めたいという内容です。  これ、先ほど申しましたように、大臣には昨日お届けしてありますけれども、ざっとお読みになって、どのような感想をお持ちになりましたでしょうか。
  27. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 昨日いただきまして読ませていただきまして、今御指摘いただきましたとおり、実態調査をするということ及び基本法を制定するようにと、こうした趣旨内容であったというふうに思っております。背景としては、様々委員が先ほど来御指摘になったようなこと、あるいは条約に係ることにつきましても踏まえた上でというような内容であったというふうに思っております。  実態調査について、先ほど川崎の事例がございました。川崎の場合には、二%という人口の中で外国人の方を対象にして、共生していくという中で、差別のところについては一項目ということで、様々な、教育とか厚生とか、いろんなレベルについての質問がございまして、恐らく全国の中の多文化共生に取り組んでいらっしゃるところ、特に外国人の方が集中しているような地域につきましては、こうした同種のもしかしたらアンケート調査等を含めた実態調査をしているのではないかというふうに思うところでありますので、そういった面につきましては早速に情報収集をしてまいりたいというふうに思っているところでございます。  また、基本法のところにつきましては、これは新たな立法措置ということになるわけでございまして、ただいま各党におきましての検討が進められているということでもございますので、そうしたところの動きにつきましては十分に注視しながらまいりたいというふうに思っております。  いずれにいたしましても、人権擁護、こうした行政にあずかる法務省といたしましては、ヘイトスピーチという形の中で、今回特に力強く進めていこうということで、先ほどポスターのお話も触れていただきましたけれども、しっかりと取り組むということの姿勢の中で今全国で頑張っているところでございますけれども、なお様々な施策のことがあるかもしれませんけれども、そういったことにつきましても幅広く取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  28. 有田芳生

    有田芳生君 昨年の四月に、超党派で人種差別撤廃基本法を求める議員連盟というものができました。小川敏夫会長で発足をいたしました。そして、自民党の中にも御承知のようにヘイトスピーチ問題についてのプロジェクトチームができ、あるいは公明党にもそういうプロジェクトチームができ、検討を進めていただいております。  私たち議員連盟も、昨年の秋に人種等理由とする差別撤廃のための施策の推進に関する法律案というものを作りました。それで、今国会での提出というものを準備しておりますけれども、そのように、やはり日弁連も含めて、あるいは立法府も含めて、今の日本の現実を少しでも前に進めていって、二〇二〇年、あと五年後の東京オリンピック・パラリンピックまでにやはり外国人を排除するというような日本の現状というものをなくしていく、そういう努力を更に強めていかなければならないというふうに思っております。  この人種等理由とする差別撤廃のための施策の推進に関する法律の中では、先ほど質問させていただきました実態調査についても、内閣府に新しい組織をつくって、つまり具体的には人種等差別防止政策審議会というようなものをつくって更に進めていくべきだという法律案の形になっております。  今後、各党の間でもいろんな協議がなされていくと思いますけれども、屋上屋を架すようになるかも分かりませんけれども、もう一度、大臣、最後に、こうした各党の取組が行われている現状の下で、いわゆるヘイトスピーチについては現行法では対処できないんだということを踏まえて、今後の法務省対応についてもう一度お答えいただきまして、質問を終わりたいと思います。
  29. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 人種等理由といたしました差別的取扱いの問題ということで一連の御指摘がございましたけれども、やはり法務省の今取り組んでいる人権に対しての様々な取組につきましては、これを更に充実させていくべく努力をしていかなければいけないというふうに考えております。  また、東京オリンピック・パラリンピックの二〇二〇年という、そうした時期の中で、この間、外国からのたくさんの皆様もお迎えをするということでございますので、そういった状況の中で、この偏見とか差別の解消ということにつきましては大変大事な視点だというふうに思っております。  新たな立法措置につきましては、先ほど申し上げたとおり、各党の御議論ということを注視してまいりたいと思いますし、また国民的な議論ということにつきましても注視してまいりたいというふうに思っておりますので、そうした流れの中で考えてまいりたいというふうに考えております。
  30. 有田芳生

    有田芳生君 終わります。
  31. 真山勇一

    ○真山勇一君 維新の党、真山勇一です。よろしくお願いします。  私は、この委員会で、このところ何回かDV防止法をめぐる問題、取り上げてまいりました。この問題、取り上げていろいろ細かいことが分かってくると、そのままにちょっとしておいていいのかなという問題が幾つか出てきているんですね。やっぱりそういう問題は運用の中で起きているわけですけれども、これは解決していくべき問題であると、そういうふうに思いますので、その辺りの問題点、課題について伺っていきたいというふうに思っておりまして、今日もそれについて伺っていきたいというふうに考えております。  まず、いわゆるDV被害者の住居、住所の非開示というこの問題、先日も取り上げさせていただいたんですが、これは、DVの加害者から逃れるために自分の居どころを知られては困るということで、地方自治体の窓口で住所を公開しないようにする、非開示にするという措置をとってもらうということなわけですけれども、これは確かに被害を受けている人にとってはその追及を逃れるということで必要なことですし、加害者にとっては、これは追いかけていってまた更に何かあるということは困るので、この非開示というのは、それ自体は私はDVを防止するために十分効果のあるものであるというふうに理解をしているんです。  ただ、その一方で、一旦住所非開示という措置がとられてしまうと、もうこれは加害者というふうに言われている人が、どうやっても、その被害者、つまりかつては自分の配偶者だったかもしれない人と連絡を取って何とか話をしたいという意思があってももうどうにもならないという、加害者にとっては全くなすすべがないという形になってしまうというところがどうしても気に掛かるわけです。  その加害者と言われる人の中にもいろんなものがあると思います。本当にやっぱり住所を調べて徹底的に追っかけて何かしてやろうと、これはもう問題外のことなんですけれども、そうでなくて、やはり加害者となったけれども、その後いろいろ反省して、例えば配偶者との関係修復したいというふうに思っている人もいるでしょうし、それから子供が原因でそういうことになったので子供に会いたいという、そういう一心で連絡取りたいという人もいるでしょうし、それからもう一つ、やはり問題なのは、前回も取り上げたんですが、いわゆる虚偽DVと言われるものですね。  つまり、DVの事実がなくても、やはり取りあえず配偶者と離れたいということで、DVがあるということを相談センターに緊急避難として相談すれば、それがDVということになって、窓口がそのまま受け付けて住所非開示措置をとってしまうということがあるわけですね。そうすると、本来DVないんだから、その話を例えばしたいと思っていても、そういうふうなことが全く閉ざされてしまうということが一つあるわけです。  これについて、やはり何とかいわゆる救済というか、加害者と言われる人の方にも言い分はあるので、その部分をどうやって救済するのかということをお伺いしましたら、先日の答弁の中で、不服申立て制度がありますよということがありました。  今日は、この不服申立て制度というものについてはどういうもので、どんなふうにすればできるのかということから、まず伺いたいと思います。
  32. 時澤忠

    政府参考人時澤忠君) 住民基本台帳法に基づきまして行いました市町村長の処分に不服がある場合には、住民基本台帳法第三十一条の四の規定によりまして、市町村長に対して異議申立てを行うことができます。また、当該異議申立てに対する決定に不満がある場合には、都道府県知事に対しまして審査請求を行うことができるとされております。また、審査請求の裁決を経た後でありましたら、処分の取消しの訴えも提起することができることとされております。  なお、昨年六月に成立いたしました行政不服審査法の改正に伴いまして、住民基本台帳法におきましては、不服申立てに関する先ほど申し上げました条文が削除されておりまして、住民基本台帳法に基づく事務につきまして市町村長の処分に不服のある者は、行政不服審査法の適用によりまして、当該市町村長に対して審査請求を行うこととされておりますし、また審査請求を経なくても処分の取消しの訴えを提起することが可能となる改正が行われておりますが、この改正につきましては六月十三日公布となっておりまして、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行されるということになっているところでございます。
  33. 真山勇一

    ○真山勇一君 幾つかの方法があるということと、それから、六月ですか、六月十三日、これからですね、これからそういうふうなのが始まるということですね。要するに、そういうふうに改善するということでよろしいんですか。
  34. 時澤忠

    政府参考人時澤忠君) お答えいたします。  現行法におきましては、先ほど最初に申し上げましたように、住民基本台帳法三十一条の四の規定がありますので、まず異議申立てができます。異議申立てに不服がある場合には都道府県知事に対して審査請求ができる、審査請求を経た後であれば訴えの提起もできるというふうになっております。これが現行でございます。  先ほど申し上げました、六月十三日に公布されました行政不服審査法が施行されますと、異議申立てはできませんで、市町村長に対して審査請求を行うことができますし、審査請求を経なくても処分の取消しの訴えが提起することができるというふうになるものでございます。
  35. 真山勇一

    ○真山勇一君 少しずつその辺改善されているなという私も認識をいたしておりますけれども、ただ、現状でやはり、DVの加害者とされてしまった人が何とか配偶者の方あるいは子供たちとの接触あるいは連絡を取りたいといったときに、これが全くできなくて閉ざされているということで、例えば自治体の窓口、つまり住所非開示にしている現場でそれどうしたらいいんだろうかということを聞いても、自治体の方では全く、何というんですかね、答えをもらえない、どうしたらいいのか指示がないということで、これはもう被害者の方から取り下げない限り住所の非開示ということは取り消すことができませんということを言われて取り付く島がないというようなこと、随分そういう訴えを聞いてきているわけですね。  今おっしゃったような方法があるとすれば、やはり地方自治体の窓口に、こういう場合はこういう方法がありますよという案内があってしかるべきだと思うんですけれども、そういうものというのは自治体の例えば窓口でされているのでしょうか、現状として。
  36. 時澤忠

    政府参考人時澤忠君) 現行法におきまして、今、不服申立て制度がございますので、窓口におきましても関係規定に従って対応しているというふうに考えております。  もう一つ申し上げますと、不服申立てができる処分をする場合には、不服申立てをすることができるということについて書面でそれを教示するという制度がございます。ただ、住民基本台帳の場合は口頭が多いということでこれには当てはまりませんが、ただし、利害関係人、申立人も含めまして、その処分が不服申立てをすることができる処分であるかどうか、あるいは、期間がございますので、そういう期間につきまして教示を求められたときにはこの事項を教示しなければならないということも行政不服審査法上に規定されておりますので、それに従って実務上の取扱いがなされているものと考えております。
  37. 真山勇一

    ○真山勇一君 そうすると、異議の申立てあるいは不服申立てした場合、現状では都道府県知事のところでということなんですが、そうすると、都道府県のどういうところで例えば申立てに対する審査というか、そういうものを行うのかどうか。それから、これから適用されてくる市町村長の場合では、地方自治体のどういうところがそういうことを話をして、それで加害者にどういうような対応を取っていくのかという辺りをお伺いしたいと思います。
  38. 時澤忠

    政府参考人時澤忠君) 現状におきましては、市町村長にまず異議申立てがあります。市町村長の異議申立ては、処分をしたところでございますので、処分をした中ではございますけれども、もう一度再考をするという手続になります。  それから、審査請求は、都道府県知事、したがいまして処分をしたところではないところが、客観的に当該処分が妥当であったかどうか、不服申立てに理由があるかどうかというのを審査するということになるわけでございます。  一方、法改正が施行されましたならば、今度は市町村長に対してのみの審査請求になります。ただし、この場合には立て付けが若干変わりまして、市町村長の下に審理員というのが置かれまして、その審理員がいろいろな観点から検討すると。さらに、その審理員が裁決の案を作りまして、第三者機関であります不服申立て審査会に諮問して答申をして、それに基づいて市町村長が最終判断をするというふうな手続に法改正が行われて施行されれば変わってくるということになるものでございます。
  39. 真山勇一

    ○真山勇一君 いろいろ詳しく説明いただきまして、ありがとうございました。  多分、DV加害者にそういうことがきちっと情報として知らされているのかどうかということがあると思うんですね。例えば、知らされたかどうか以前に、行政のところでそういうきちっと相談あった人に対して説明ができるのかどうかというちょっと問題点が感じるんですけれども、今おっしゃったようなことはその担当のところで周知されていると考えてよろしいんですか。
  40. 時澤忠

    政府参考人時澤忠君) 住民基本台帳法に基づく一連の流れ、手続でございますので周知をされていると思いますし、また先ほど言いましたように、今度は制度が変わりますので、その制度が変わる際に、どういうふうに制度が変わっていくのかということも更に周知をしていきたいというふうに考えているところでございます。
  41. 真山勇一

    ○真山勇一君 これ以上は細かいことになってしまうので、ですから、やっぱりDV加害者とされる方がそういうことで相談に行ったときに、いや、もう住所は非開示になっているからあなたがどう言っても何もできませんよと突っぱねられるような状況が起きないということを私は期待して、そういう改善を今目指しているんだというふうに、取りあえずそういう認識にさせていただきたいというふうに思っております。  次の問題ですが、これもやはり私、気に掛かるんですけれども、先日伺った配偶者への暴力というDVの中でいろいろなことが発生する、その統計、資料をいろいろ取られているということはいただいて分かったんですが、その中で気になったのは、夫婦の問題としての統計、数字は出ているんだけれども、その中に子供ということを対象にした統計というのはありますかと伺ったら、ないということだったんですけれども、これはないんですね。もう一回ちょっと確認させてください。
  42. 久保田治

    政府参考人久保田治君) お答え申し上げます。  配偶者に対する暴力は、子供に対しても非常に重大な影響を与えるものでございます。子供の面前で行われる配偶者からの暴力は児童虐待に該当し得るものだと考えております。配偶者暴力防止法に基づきます基本方針におきましては、児童相談所等との十分な連携を図るという観点を盛り込んでおります。  また、委員指摘の統計につきまして配偶者暴力防止相談支援センターに相談が参ります状況を申しますと、相談の件数のうち非常に多くの部分が電話相談の現状がございまして、その電話相談の中で御家族状況だとかというものはなかなか確認できないところがございます。したがって、相談センターで受けた相談について網羅的に統計的に家族状況を把握するということは難しい点がございます。  一方、厚生労働省の婦人相談センターで対応しています一時保護に当たりましては、実際に一時保護をする方についての家族状況を確認しておりますので、そちらでは、相談全体ではないですが、その一部につきまして家族状況を把握しているところでございます。
  43. 真山勇一

    ○真山勇一君 その辺りが私はどうも何かちょっと納得できないというか。DVというのは家庭内暴力ですよね。配偶者同士の問題であると同時に、家庭内ということは、家庭ということはやっぱり、二人しか、夫婦しかいない家庭もあるかもしれませんけれども、子供がいることの方だって多いわけで、子供がそのDVに巻き込まれるという形は必ずあるわけですし、場合によっては子供のことが例えばいろいろな形の原因ということになってDVが起きることだってあるわけですから。  ですから、今おっしゃったように、児童虐待というのはあるのは分かりますけれども、DVという問題を捉えた場合、やはり子供がいるかいないか、それから子供と関わり合いがあるかどうかということも、それはなかなか調べにくいとはおっしゃっていますけれども、逆に言えば、これからのやっぱり家族の中でそれもやっていくべきじゃないかというふうに思うんですよ。  今やはり家族、このDV防止法で、確かに防ぐために接触を断つとか分離させるということはあるんですが、じゃ、家族というのはそのまま分離した、ばらばらにさせたままでいいんですかというふうに私は思うんですね。例えば更生したり、あるいは全く事実に基づかないことでそうなったことを受けている人というのは、やっぱり何とかして家族というものを、配偶者との関係あるいは家族を修復したいと思っている場合、それをどうやってやっていったらいいかということも、やはりこれは考えるべき大事な問題だというふうに思うんですね。  ですから、そういう意味でいうと、DV防止法の、例えば配偶者DVあるいは家庭のDVといっても子供の問題もやはり把握していく必要があるというふうに思うんですけれども、その辺り、把握する必要があるという認識はどうなのか、それを伺いたいと思います。
  44. 久保田治

    政府参考人久保田治君) お答え申し上げます。  基本方針でも明示しているとおり、児童相談所等との十分な連携というのは必要だと考えておりますので、配偶者暴力相談支援センターの方でも可能な限りこれは把握していく話であろうと考えています。  ただ、先ほど申しましたように、電話相談等が多いという状況、あるいは緊急の対応が必要な方々が多いということで、きちんとした統計的な数が把握できるかということはちょっと難しい点があることを御理解いただきたいと思います。
  45. 真山勇一

    ○真山勇一君 電話だから難しいというのは、私はちょっとよく分からない。電話だって、一言、お子さんはいらっしゃいますかとか、何人いらっしゃいますかということを聞いてそういう統計を取ればいいんじゃないかということが一つと、緊急だというふうにおっしゃいますけど、これは、緊急事態は取りあえず回避して、例えば住所非開示ということが取られていて、それでその後、例えば子供との関係を修復したいとか、配偶者との関係を回復したいということがあるんだから、緊急というよりはその後の、DVがあったということのその後の家族の問題をどうするかというところに掛かってくるんじゃないかと思うんですね。  ですから、内閣府でやって、そして子供の虐待、児童虐待については厚生労働省でやるという、そういう縦割りじゃなくて、やはり家族全体という問題を考えてDVを解決していくというのがこれからの形であって、このままにすると、DVでどんどんどんどん家族をばらばらにするのは幾らでもできるけれども、じゃ、そのばらばらになった家族をやはり一緒にできるものならする、それは何よりも私はやっぱり子供のために必要ではないかというふうに思っているんですよ。  ですから、子供のことを考えたら、DVがあったからと子供を連れ去っちゃうんじゃなくて、このままだと子供のことを置き去りにしたDV防止法、まさにその辺が問題だなという気が私はしているんですね。ですから、これからやっぱり統計取るのなら子供の問題というのも、児童虐待は厚生労働省の問題です、DVは内閣府の問題ですじゃなくて、やはり、連携というふうにおっしゃいましたけど、連携というか縦割りというか、それは一つ統計の問題なんだから、こういうものというのはやっぱり新しい家族の形をきちんと把握するためにも必要じゃないかと思うんですが、もう一回繰り返しになりますが、いかがでしょう。
  46. 久保田治

    政府参考人久保田治君) 御説明申し上げます。  配偶者暴力防止相談センターの機能について言いますと、まず配偶者から暴力を受けた方が電話で例えば相談されます。そうすると、その方の状況に応じて、シェルターを確保して要するに一時避難をされる必要があるとすれば、そういった機関につないでいくということが大きな役割になっておりまして、したがって、相談支援センターがずっと対象者を最終的に見るというよりも、関係機関につなぐ役割が大きいということでございます。  したがって、その入口になりますところでできるだけ把握するということは委員指摘のとおりでございますので、今後検討してまいりたいと思います。
  47. 真山勇一

    ○真山勇一君 最後のところの言葉がちょっと聞き取りにくかったんですが、やはりその辺、是非、事態を正確に網羅的に把握するためにはそういうことも私は必要じゃないかというふうに思っています。DVの加害者というのは、言い方を換えると、やっぱり、自分では例えば夫婦いい関係だなと思っていても突然そういうことになってしまうことも起きるということがよく言われていますので、やはりその辺、対応する方も多角的、そして時代に合わせた形というものを取っていかなくてはいけないというふうに私は考えております。  まだ何点かちょっと伺いたいこと今日ありましたけれども、済みません、時間がなくなりました。また次回にお願いしたいと思います。  ありがとうございました。
  48. 仁比聡平

    仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。  今日は、政府が今国会に提出した盗聴拡大法案に関わって、まず警察庁に通信傍受の体制や運用について明らかにしていただきたいと思っております。  どうも、通信傍受の現行法平成十二年、二〇〇〇年の八月に施行されてから、通信傍受の装置というのが、携帯電話や固定電話の通話を傍受する装置とメールなどパケット通信の傍受令状が出たときにこれを傍受する装置、大きくこの二つということのようなんですね。  まず、携帯あるいは固定電話を傍受する装置の配備は、法施行後、どんなふうに配備をされてきているんでしょうか。
  49. 露木康浩

    政府参考人露木康浩君) お答えいたします。  携帯電話等の音声を傍受するための装置の整備状況でございますけれども、平成十二年度、六十二式、これ予算額四億三千六百三十万円でございますけれども、続いて、平成十三年度、八式、予算額二千二十二万円、平成十六年度、七式、予算額二億二千二百五十二万円、平成二十一年度、五十七式、予算額一億四千四百五十九万円、そして今年度でございますけれども、二十二式、予算額七千七百四十六万円でございます。
  50. 仁比聡平

    仁比聡平君 メールのみを記録する装置の方はどのように推移しているんですか。
  51. 露木康浩

    政府参考人露木康浩君) お答えいたします。  メール傍受装置でございますけれども、平成十三年度に十六式、平成十五年度に二式の整備をいたしまして、平成二十七年度には一式を整備する予定でございます。
  52. 仁比聡平

    仁比聡平君 その予算額は、平成十三年度において一億三千二百二十三万円であり、平成十五年度九千二百八十三万円、そして今年度六千二百三十一万円と衆議院で答弁をされておられます。  このメールのみを傍受する装置について伺いたいと思いますけれども、〇一年にまず配備をされた十六式というのは、これ附属装置もあるけれども、イメージとしては、特別のコンピューターが一台というのが一式ということなんだと思うんですね。これは既に廃棄をされたというふうに聞きますけれども、これはいつ、なぜ廃棄をされたのでしょうか。
  53. 露木康浩

    政府参考人露木康浩君) お答えいたします。  まず廃棄の時期でございますけれども、平成二十四年度までに廃棄をすることといたしたものでございます。その理由でございますけれども、機能を向上させました更新機器二式を平成十五年度予算において整備をいたしましたので、平成十三年度の今お尋ねの十六式の機器については使用する見込みがなくなったという時点でそのように廃棄の判断をしたというものでございます。
  54. 仁比聡平

    仁比聡平君 今お話しの機能の向上というのは、つまり、平たく言うとスペックの向上というようなことになるんだと思うんですね。つまり、様々なパケット通信があるわけです。携帯のメールというふうに一言で言っても、ドコモだとかauだとかソフトバンクだとか、会社によってその方式はいろいろだし、グーグルだとかヤフーだとかというそういうメールもまた別の形になっていると。  近時、SNSというふうに総称されるツイッターやフェイスブックやLINEなどなど、それぞれの通信方式に対応するために機能を向上させてきたその対応が更新だと、そういうことであり、今の二台というのは、それが傍受できる仕組みになっているということですね。
  55. 露木康浩

    政府参考人露木康浩君) お答えいたします。  今委員からお話もございましたけれども、インターネット回線では、例えばですけれども、時間当たりに送信可能なデータ量が年々拡大をいたしております。そのように技術的な発展が大変著しいという分野でございます。したがいまして、メールを傍受するための装置につきましても、その時期時期の状況に応じて実効的に傍受ができるように処理能力の向上を図っているというものでございます。
  56. 仁比聡平

    仁比聡平君 そうしたことで、二〇〇一年度に配備した十六台は廃棄をして、今スペックが向上した二台、それから今年度もう一台を配備するということになるわけです。日本中にこの二台ないし三台ということになるわけですが、どこに配備して、どう運用するのかと。実際のそういう傍受の必要性というのは、捜査本部というか都道府県警などで起こってくるわけでしょうけど、これはどんなふうにするんですか。
  57. 露木康浩

    政府参考人露木康浩君) お答えいたします。  現有の二式につきましては、現在、警察庁において保有をいたしております。実際に使用するという場合には、その使用する都道府県警察において、通信事業者のところにその機械を警察庁の方から持っていくわけでございますけれども、それを使用して傍受をするということになるということでございます。
  58. 仁比聡平

    仁比聡平君 警察庁が保有している、管理しているその二台の傍受装置を言わば現場に持っていって、通信事業者のどこかにつなぐわけですよね。そのつなぎ方について、九九年からの国会の議論でも随分な議論がありました。今はどんなつなぎ方をされているんでしょうか。
  59. 露木康浩

    政府参考人露木康浩君) お答えいたします。  メールなどのインターネット上のデータを処理するサーバーにつきましては、その構成ですとか機能は事業者ごとに様々でございます。したがいまして、一概にこの方式によるというふうに申し上げることはできないのでございますけれども、いずれにいたしましても、私どもの保有しているメール傍受装置を用いてメールの傍受を行う際には、事業者の協力を得た上で、令状に記載された傍受対象のメールを確実に捕捉できるような設備等にその装置を接続するということになるものでございます。
  60. 仁比聡平

    仁比聡平君 つまり、確実に今お話しのように捕捉をするために、衆議院の答弁でこんな御答弁されていますね。法的、技術的には二つほど考えられる、メールが電気的に通過する伝送路上において、傍受令状に記載された特定の通信手段に係るメールを構成するデータを選別して傍受する方式と、サーバーなどに設けられたメールボックスにおいて、当該メールを受信する都度、即時に当該メールデータを捕捉する方式のその二つがあり、前者の方式を取っているという答弁があるわけですが。  このメールが電気的に通過する伝送路上において選別して傍受するというのは、つまり通信事業者の大きなサーバー、ここの入口の辺りとか、素人的にはそんな感じがするわけですけど、ここに通信傍受装置をつないで、ここを通過する全てのデータの中から、令状対象になっているアドレスなりアカウントなり、そういうものを選別していくという、そういう仕組みだということですか。
  61. 露木康浩

    政府参考人露木康浩君) お答えいたします。  今委員がおっしゃったようなこともあるのかもしれませんけれども、事業者ごとにメールの伝送の仕方、受信をしそれを伝送するという仕方は様々でございますので、一概に、大きなサーバーに私どもの機械を差し込んで傍受をするという方式になるのかどうかについては、これはちょっとそのようになるとは申し上げられないものでございます。
  62. 仁比聡平

    仁比聡平君 いや、おかしいですよね。今私が紹介した答弁は、露木審議官の御答弁なんですね。つい先日といいますか、今年四月十七日の衆議院の法務委員会での答弁を私は前提にしているんです。  先ほど申し上げた、伝送路上、素人的にはサーバーの近くで取るんじゃないかなと思うんだけれども、という方式と、メールボックスから把握する、捕捉するという方式の二つを挙げて、現在私どもの機器におきましては前者の方式を取っておりますと御答弁されているわけですよ。  だから、メールボックスから捕捉するんじゃなくて、私が申し上げているような形になっているんだ、そういう答弁でしょう。
  63. 露木康浩

    政府参考人露木康浩君) お答えいたします。  私どものメール傍受装置の方式につきましては、今委員がおっしゃったように、メールが電気的に通過する伝送路上において、令状に記載された特定の通信手段に係るメールを構成するデータを選別して傍受をする方式のものでございます。  先ほど私が一概に申し上げられないと申し上げたのは、事業者のメールサーバーに直接私どもの機械を差し込むという方式が、必ずしもそのように今運用されているといいますか、そういう機械であるとは限らないということでございまして、例えばメールサーバーから事業者の方がケーブルを傍受をする場所まで延ばしていただいて、そのケーブルと私どものメール傍受装置を接続するといったこともございますので、その接続の仕方を一概に特定のものに限定してこうであるということを申し上げることはできないという趣旨でございます。
  64. 仁比聡平

    仁比聡平君 お手元に警察庁平成二十二年四月三十日付けで発されている通信傍受法の運用に当たっての留意事項という通達を抜粋してお配りしましたが、電子メールの傍受については、警察庁が開発した電子メール用記録等装置を用いて行うものとするというのが原則とされているわけですね。これがサーバーの近くと私が申し上げている件。今審議官がおっしゃったのは、その次のただし書のところの例だと思います。  このつなぎ方の問題について、警察庁が開発をして今配備をしている通信傍受装置のその方式というのは、九九年の当時、法務省刑事局長の答弁とこれ全く違いますよね。  九九年、平成十一年の七月二十九日の当委員会質疑において、当時の松尾刑事局長は、特定のメールボックスが受信したメールを自動的に転送するような設定を用いて傍受を実施するということが傍受の方法としては適当だという答弁を示されています。これは、通信事業者、プロバイダーのサーバーは余りいじられたくないとか、様々な不安、疑問、そうしたものを反映した、世耕弘成自民党議員の質問に対する答弁ですね。  ちなみに、このときの松尾当時局長は、警察署に転送して傍受することはあり得ません、また捜査官からそのような要求が出た場合には通信事業者の側がそれを断るというのは当然のことでございますと。どれほどこの通信の秘密を侵すことが重大なことかということを前提になった議論がされているわけです。  国会答弁でここまで立法提案者が述べながら、これとは全く違うシステムが開発されている。これ、林局長、どう思われますか。
  65. 林眞琴

    政府参考人(林眞琴君) 今御指摘のこの法制定当時の議論との関係で申し上げますと、このメールを傍受する方法というものにつきまして、当時の議論の中では、当時の技術を前提に最も考えられる方法というものに関してそのようなお答えをされたものと思います。実際にそういった形で伝送路の中で傍受できるのか、あるいは一旦メールボックスに入ったものを即時に取り出すというような形で行うかということにつきましては、当時の技術を前提に行われておりますけれども、実際にその当時の議論の中でも、その後の技術の発展により、法的に許される範囲で技術的に可能な方法がほかにあれば、それを否定する趣旨ではないというような議論もなされていたと考えております。
  66. 仁比聡平

    仁比聡平君 その後の技術の発展というふうにおっしゃるけれども、平成十一年にかんかんがくがくの議論の中で申し上げたような答弁をして、十三年度予算で配備している。その十三年度予算で配備したものが申し上げてきたような仕組みなわけでしょう。一応確認です、警察庁
  67. 露木康浩

    政府参考人露木康浩君) お答えいたします。  十三年度整備のメール傍受装置についても先ほど申し上げた方式でございます。
  68. 仁比聡平

    仁比聡平君 電磁的に記録するとかあるいは暗号を掛ける、鍵を掛けるなどというけれども、それがどんな仕組みになるのかというのは、それはもちろん技術の発展というのがいろいろあるでしょう。その下でいわゆる素人にはブラックボックスになってしまうんですよね。現に、法をどう具体的に実施する施設を造るか、整備をするかということについては、警察庁が開発をし、警察庁が運用している。  しかも、私が今お配りしているこの資料警察庁から御提供いただいたものですが、ここの傍受のための機器等とか、あるいは二枚めくっていただいたスポット傍受という項目は、ホームページ上は掲載をされていない、非公開ということになっているわけです。メールを傍受をするというときに、会話を傍受するのと違って、一覧で全部見えてしまうわけですから、どう令状対象の通信と選別をするのか、識別をするのか。これについてはスポット傍受のやり方ということになるわけですが、この提供いただいた通達では、メール傍受についてはスポット傍受の仕方、書いていませんけど、これ、別に何かルールがあるんですか。
  69. 露木康浩

    政府参考人露木康浩君) お答えいたします。  この通達には記載はございませんけれども、当然メールにつきましても、通信傍受法の定めるところに従いまして、令状に記載された傍受対象のメールのみを傍受するというものでございます。
  70. 仁比聡平

    仁比聡平君 時間が迫ってきましたから、はしょって最後問いたいと思うんですが、国会に報告されている傍受の中身を聞くと、今申し上げているメール傍受は現には行っていないというわけです。それはどういうことを意味するのか。捜査の必要が一切なかったということだったら、もうこんなメール傍受のシステムなんて開発もやめて、こんな法案の提出なんてやめちゃったらいいんですよね。  私は、国民世論と現行法によって、使い勝手が悪いものにはなったものの、傍受の法的根拠ができたと。これ予算を取って、一件も令状請求はしないけれども、IT技術の発展に沿って開発をどんどん進める、そして事業者などとの運用調整も進める、ずっと積み重ねてIT化に対応しながら今回の改正案の提出を念願にしてきたというのが警察庁のこの問題での取組なんじゃないかなと思うんですね。  法案で、現行法の常時立会い、そしてその常時立会人による封印に代えて暗号でやれるんだというふうになっているわけですが、林局長、そうしたシステムというのは存在、完成をしているんですか。
  71. 林眞琴

    政府参考人(林眞琴君) 今回の改正法案におけます改正法の通信傍受法の中で特定電子計算機という概念を設けまして、それが具備すべき機能というものを詳細に法律で定めることとしております。それを使った場合には、立会人を立ち会わせた場合と同様の通信傍受の適正を確保することができるというものとしての機能を詳細に定めておるわけでございます。  この機能につきましては、現在の暗号技術等を踏まえるとそのような機能を有する機器を整備することは十分実現可能なものとして規定するものでございます。もとより、現時点においてそういった実際の機器の試作機でありますとかシステム、プログラム等を作成しているわけではございません。
  72. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 仁比君、時間です。
  73. 仁比聡平

    仁比聡平君 いや、だったら、結局、暗号が解かれて、本当は見てはならないはずのものが捜査機関の手のうちになるのではないかとか、そうした犯罪とは関係のない人のプライバシー情報も丸ごとどんどん蓄積されて、これがあらゆる角度から解析されるのではないかとか漏えいするのではないかとか、こうした問題がないという保証はどこにもないということでしょう。  私は、この通信傍受の現実についてこの委員会でしっかりとつかむ、視察をするということも大切だと思います。是非、委員長、御検討いただきたいということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  74. 田中茂

    ○田中茂君 日本を元気にする会・無所属会、無所属の田中茂です。  今日午後、裁判所職員定員法質疑がありますが、この間その資料を読んでいましたら、かなりいろいろとお聞きしたい点がありますので、この一般質疑の場を借りて関連の質問をさせていただきます。  まず最初に、今回は判事の増員ということの改正案だったんですが、判事補の現在員についてちょっとお聞きしたいと思っております。判事補の現在員は、定数千名に対して平成二十六年現在八百三十二名と、欠員状況になっております。この判事補は過去もずっと欠員状態が続いてきたわけでありますが、司法制度改革によって司法試験合格者が増加した二〇〇六年以降も一貫してこの状態は続いております。司法修習終了後、一括登録日現在の弁護士未登録者数も増加していると聞いております。判事補任官数が横ばい状態でありますが、特に不足しているのはどの地域なのか、地裁と家裁ではどうなのか、教えていただけませんでしょうか。
  75. 中村愼

    最高裁判所長官代理者(中村愼君) お答えいたします。  判事補の欠員は、千人の定員に対しまして、先ほど御指摘ありましたように、平成二十六年十二月一日の時点では百六十八名欠員がございましたが、その後、二十七年の一月十六日に新任判事補百一人を採用したことから、欠員は六十七人程度ということになっているところでございます。  この六十七人程度というのは、判事補の任期が十年であることを考えますと、単年度五、六人というものでございまして、ここ数年の採用実績に照らしましても十人程度の増減があるということ、また出向による出入りがあるということがありますので、欠員がある程度生じるということはやむを得ないことを御理解いただきたいというふうに思います。  全国的な配置の問題でございますが、現在の現在員をバランスを欠くことないよう人員配置をしているところでございます。判事補が裁判所権限が行使できるものについて、判事ではできない、すなわち判事補でなければできないというものはございませんので、どの地域ということはなく、判事補が特に不足して裁判事務に支障が来しているところはないというふうに承知しているところでございます。  引き続き、充員には努めてまいりたいと考えているところでございます。
  76. 田中茂

    ○田中茂君 定員がもう決まっていまして、それで不足しているというのであれば、どこかに負担を来しているんではないかと、これは当然そう思うわけでありまして、そこで次の質問をさせていただきますが。  司法改革以前と比較して、先ほども言いましたように、司法試験の合格者数が倍増しておるわけであります。それにもかかわらず、判事補への採用人数が年間百人前後、先ほどおっしゃっていましたが、推移しておりますが、平成二十五年三月の衆議院法務委員会で、修習生は二千人ほどに増えたが裁判官の採用人数は減っていることに対して、司法制度改革を行って新司法試験に受かった人たちの成績が余り期待できていないという意味なのかとの質問に対し、当時の最高裁判所事務総局人事局長が、裁判官になってほしいと思う者であっても弁護士事務所の方に行くという者もいるし、その一方で、やはり裁判官として仕事をしていく上では裁判官にふさわしい資質、能力を備えた者でなければならないということもあるので、修習生の数が増えたからといって直ちに判事補として採用する者が増加するという関係にはないと見ているとの答弁をされております。  確かにそのとおりだと思うんですが、ただ、合格者が増えたといってもその質が見合わない、そういう意味に受け取れますので、判事補の欠員が続くという状態に、先ほどおっしゃったんですが、判事になる、確かに判事補から判事になる方は相当多いわけですが、一番多いわけですが、そういう中で欠員があるというのは事実であります。  そこで、ほぼ判事全員が判事補から昇格することを考えると、優秀な人材を判事補として確保することが必須であると思っております。司法試験合格者が増えても、慢性的に判事補、判事など法曹人材が不足するということであれば、今後の人材確保、優秀な法曹人材の安定的な確保についてはどのような施策を講じる必要があるとお考えなのか、お聞かせください。
  77. 堀田眞哉

    最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) お答えを申し上げます。  裁判所といたしましては、裁判官としてふさわしい人につきましてできる限り任官してもらいたいと考えているところでございますが、委員も先ほど御指摘ございましたとおり、司法修習生の側におきましても、弁護士としての活躍分野の広がりといった事情もございまして、裁判官としてふさわしい人でも、裁判官への任官を希望する者が大きく増加しているという状況には必ずしもないという事情もございます。また、裁判官にふさわしい資質、能力を備えているということが必須でございますので、結果として現在の採用数で推移しているというところでございます。  判事補にふさわしい資質、能力を有する司法修習生が、裁判官の職務のやりがいや魅力を理解して任官を志してもらえるよう努力を重ねてまいりたいと考えておりまして、今後とも、司法における需要も勘案しながら、裁判の運営に必要な体制を確保できるよう努力してまいりたいと考えております。
  78. 田中茂

    ○田中茂君 先ほども言いましたように、欠員が生じているということはどこかで負担があるのか、どこかで支障を来しているとかというふうに普通は思いますので、そういう誤解がないようにできるだけの取組をやっていただきたいと、そう思っております。  次に、判事と判事補の人事査定方法についてお聞かせいただきたいと思います。  平成十六年、判事に対する人事評価制度が大幅に変更されておりますが、その導入後十年が経過しております。そこで、現状の総括をお伺いしたいと思いますが、よろしくお願いいたします。
  79. 堀田眞哉

    最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) 裁判官の人事評価につきましては、平成十六年四月以降、裁判官の資質、能力を高めるとともに、国民の裁判官に対する信頼を高め、人事評価の透明性、客観性を確保するという観点から、裁判官の人事評価に関する規則、最高裁の規則でございますが、に基づいて新しい人事評価制度が実施されてきているところでございます。  この人事評価制度によりまして、人事評価の透明性、客観性が高まっただけではなく、裁判官の主体的な能力向上に資するものとして、制度として定着し、安定的に運用されてきているものというふうに認識しております。
  80. 田中茂

    ○田中茂君 この評価制度、非常に私自身評価しているんですが、ただ、その基本理念の中に透明性について書いてあります。それは、人事制度に対する透明性の要請が高まってきていることを考慮し、人事評価の仕組み等を裁判官のみならず国民に対しても明らかで分かりやすいものとしなければならないと。そういうことで、国民は一般的に、裁判官がどのような人物でどのような評価項目でいかに評価されているのか、そういう知る機会は少ないと思います。  そこで、国民に対して分からせるという意味でどのような取組を行っているのか、お聞かせください。皆さんのお手元にも資料を配付していますが、その点、御説明をよろしくお願いいたします。
  81. 堀田眞哉

    最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) 新しい人事評価制度におきましては、最高裁規則に基づきまして、人事評価を行う評価権者を所属の庁の長、すなわち地家裁所長あるいは高裁長官等と明確に規定をいたしまして、さらに評価項目を定めて評価基準が明確化されているなど、人事評価制度としての透明性を向上させてきているというところでございます。  このような裁判官の新しい人事評価制度の概要につきましては、裁判所のウエブサイトにも掲載いたしまして公開しているところでございます。そういう意味においても、国民に対する透明性も向上しているものというふうに考えております。
  82. 田中茂

    ○田中茂君 裁判員制度の法案も次に出てくるんですが、そういうこともあるので、国民にはなるべく分かりやすいシステムというか、どういう取組をやっていらっしゃるのか、その辺は積極的に国民の方に告知できるような体制をつくっておいていただきたいと、そう思っております。  そこで、人事評価制度の変更によって透明性の向上という観点から、評価権者は、裁判官から申出があったときは、その人事評価を記載した書面、評価書を開示するとなっております。そして、不服がある場合には申し出ることが可能となっております。このような形での申出、人事評価を記載した書面を交付した例は何件あるんでしょうか、お聞かせいただけませんか。
  83. 堀田眞哉

    最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) お答え申し上げます。  平成二十六年度の数字で申し上げますと、評価書の開示の申出件数は二百十七件でございまして、当然ながら全部について写しを交付して開示をしております。
  84. 田中茂

    ○田中茂君 不服申出が少ないのは、それにこしたことはないんですが。  次に、評価情報の把握として、裁判所の独立に配慮しつつ、多面的かつ多角的な情報の把握に努めなければならないとしておりますが、評価権者は、評価情報の把握の一環として、裁判所外部からの情報についても配慮するとされております。  そこで、実際に外部情報としては、どのような場合にどういった情報を入手し評価に用いておられるのか、お聞かせください。
  85. 堀田眞哉

    最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) 裁判所外部からの情報の多くは、訴訟等の場で日常的に裁判官に接しております弁護士からのものでございます。具体的には、裁判官の法廷等における言動等に関する情報などでございます。  受け付けました外部情報を人事評価に取り入れるに当たりましては、当該情報の的確性について検証する必要がございますので、原則として提供者の名前が明らかにされており、かつ具体的な根拠事実が明らかになっているものに限って活用をしております。  もっとも、個々の裁判の結論の当否を問題にするというものなど、裁判官の独立に影響を及ぼすおそれのあるような情報については考慮することができないというふうに考えております。
  86. 田中茂

    ○田中茂君 今弁護士のような多角的な情報ということでしたが、民間では多角的な評価を行うために上司、部下、同僚などから三百六十度評価というのが一般的には行われております。  先ほどおっしゃったように、裁判官の独立という問題もありますが、評価項目として、事件処理能力、部などを適切に運営する能力、あと裁判官としての職務を行う上で必要な一般的資質及び能力の三点が評価基準として設定されていることを考えますと、評価情報の一つとしてこのような三百六十度評価というのも導入の検討の余地もあるのではないかと思いますが、その点お聞かせいただけませんか。
  87. 堀田眞哉

    最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) 裁判官の人事評価に関する規則におきましては、評価権者は、人事評価に当たり、裁判官の独立に配慮しつつ、多面的かつ多角的な情報の把握に努めなければならないというふうに規定をされております。  評価権者であります地家裁所長、高裁長官等は、裁判官、その他の裁判所職員からの裁判所内部の情報のほか、先ほど申し上げましたような裁判所外部からの情報についても配慮するものとされておりまして、それらを活用して評価を行ってきているところでございます。
  88. 田中茂

    ○田中茂君 裁判官、判事というのは極めて重要な人物であるということはもう皆さんよく分かっているわけで、その方を評価するというのはなかなか難しいと思いますが、いろんな意味での多面的な評価というのは必要だと思っておりますので、その辺検討していただきたいと思います。  そこで、判事補は十年で判事に任命されるわけですが、最高裁の下級裁判所裁判官指名諮問委員会による審査によって再任不適当となった場合は、判事に任命されなければ退官しなければならないと、そのように聞いております。過去十年間に再任不適当者数を教えていただけませんでしょうか。
  89. 中村愼

    最高裁判所長官代理者(中村愼君) 下級裁判所裁判官指名諮問委員会が設立して十一年、正確に言うと、十六年からでございますから、十六年から平成二十六年までの間で合計四十一名の人間が再任又は判事任命が適当でないと答申されているところでございます。
  90. 田中茂

    ○田中茂君 ちょっと私、これ少ないというのか多いというのか、この辺は微妙なんですが、案外この再任不適当という方がいらっしゃるんだなと。  実は、私、この表を見てちょっと驚いたんですが、実は本来なら何でこういう理由になったのかとお聞きしたいところなんですが、多分それはお答えできないと思うんですが、なぜこういうことを聞くかというと、十年に一回こういうことをやられると。再任不適当だという判事がいる、そういうことになると、何年かにわたってもう不適当であったということが分かるわけですよね。そういう意味で、果たしてこの十年というのが再任にとっての審査が適当な期間なのか、そういうことも検討する余地が出てくるのではないかと思っておりますが、その辺よくまた検討していただきたいと、そう思っております。  次に、判事補の外部経験についてお聞きいたします。  昨今の事件の多様化や複雑化を考えると、正確で時宜にかなった判断を行うためには司法以外の分野における知識、経験も積むことが極めて重要であると思っております。このような観点から、過去十年間にわたり、どのような外部経験が判事補に対しては行われたのか。弁護士事務所の執務であればその期間、海外留学先と期間、民間企業、行政官庁、在外公館、その受入先と人数について、資料皆さんにはお配りしていますが、お聞かせください。
  91. 堀田眞哉

    最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) 判事補の外部経験といたしましては、民間企業等への派遣、弁護士職務経験、海外留学、行政官庁への出向等などを行ってきているところでございます。  概要を申し上げますと、民間企業等は、毎年十五人程度を一年間派遣をしております。弁護士職務経験につきましては、毎年十人程度を二年間派遣をしております。また、海外留学は、毎年三十五人程度が一年又は二年間の期間派遣をされてきているところでございます。さらに、行政官庁等には、毎年三十五人程度が、これは行き先によっても期間、長短ございますが、原則として二年間出向をしております。  今後も、より多くの若手の裁判官がこれらの外部での様々な経験を通じて幅広い視野あるいは柔軟でバランスの取れた考え方というものを身に付けることができるよう、新たな外部経験先の確保等も含めた充実というものを検討してまいりたいというふうに考えております。
  92. 田中茂

    ○田中茂君 判事補が外部経験を積まれていくことは大いに結構なんですが、この民間企業等に関する選択というのはどういうふうな選択基準でやっていらっしゃるんでしょうか。
  93. 堀田眞哉

    最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) お答え申し上げます。  民間企業研修の意義あるいは必要性について御理解をいただいております日本経団連加入の企業等の中から、毎年、業種あるいは業態のバランスなども勘案しながら研修先を選定しているというところでございます。
  94. 田中茂

    ○田中茂君 民間企業の場合は、変な意味での誤解を受ける可能性もあるので、多分ずっと定期的に変えていらっしゃるとは思うのですが、その点はいかがなんでしょうか。
  95. 堀田眞哉

    最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) 委員指摘のように、派遣先の企業等との関係で、公平性と申しますか中立性と申しますか、の担保が必要でございますので、そのようなことも配慮して、行き先を変えますとか、あるいは同一の業界の中で不均衡がないようにするとか、そういったようなことも検討しているところでございます。
  96. 田中茂

    ○田中茂君 先ほどの質問にもちょっと関連するんですが、民事訴訟事件などかなり困難化、専門化が進めておれば、当然ながら裁判官も専門性を高める必要に迫られていると思っております。  そういう中で規制環境の変化やサイバー空間の進展などもいろんな意味で変化をしておりますが、今後それに対応すべくどのような施策考えておられるのか、お聞かせください。
  97. 堀田眞哉

    最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) 委員指摘のとおり、近時、社会経済活動の高度化、あるいは国民の権利意識の高揚に伴いまして、事件の複雑、困難化、あるいは専門化というような状況がございます。今後、こうした複雑、困難化、専門化した訴訟に適切に対応するために、裁判官には専門分野への知見が求められる状況にあるというふうに考えております。  そこで、裁判官の研修を担当いたします司法研修所におきましては、裁判官の自己研さんを支援し、裁判官に専門的な知見を身に付けさせるため、例えばIT、金融経済、医療等といいました専門的な知見を要する分野をテーマとする研究会を実施しておりまして、こういった研究会には当該分野の専門家を講師として招いて裁判官との意見交換などを行っているところでございます。  今後とも、このような取組を行いながら、専門的な事件に対応できる裁判官の確保ということに努めてまいりたいというふうに考えております。
  98. 田中茂

    ○田中茂君 時間が来ましたので、私の質問はこれで終わりにします。  どうもありがとうございました。
  99. 谷亮子

    ○谷亮子君 谷亮子です。  本日は、午前中は一般質疑ということでございまして、以前より取り上げさせていただきたいと思っておりました、外国人や外国資本等による土地の取得に関する法務省所管の外国人土地法について、今日は質疑をさせていただきたいと思います。  外国人土地法の現況に関しましては、我が国における外国人や外国資本等による土地の所有、そして、利用に関する法律は、明治時代当初の外国人等に土地の取得を認めない時期を経て、大正十四年に制定され、翌年施行されました法務省所管の法律でございます外国人土地法がございます。これは外国人等に土地取得を解禁することを目的として制定されたものでございますが、大きく二つの例外を規定しております。  一つ目は、同法第一条において、外国人等に権利を与える際、その外国人の本国が自国民に同等の権利を与えることを条件とする相互主義を採用し、外国が日本人による土地取得を制限する場合には政令を制定して当該外国の外国人等について日本における土地取得の制限をすることができる旨を規定していること、そして例外の二つ目は、国防上必要な地区についてのこれは例外でありまして、同法第四条において、こうした地区については政令によって外国人等による土地取得を制限できる旨を規定していることでございます。  しかしながら、このような例外について、一つ目の相互主義に基づく政令はこれまで制定されたことはなく、また、二つ目の国防上必要な地区を定めた政令は、これは戦前に一度制定されたものの、昭和二十年に廃止をされておりまして、それ以降はこの件に関する政令も定められたことはないという現状にございます。  こうした現状を踏まえまして、外国人土地法が現在もなお我が国における外国人や外国資本等による土地の所有の法体系の一翼を担っているという現状について、法律を所管しております法務省としてはどのようにお考えでいらっしゃるのか、また、この外国人土地法が現在どのように機能しているとお考えか、お伺いさせていただきたいと思います。
  100. 深山卓也

    政府参考人(深山卓也君) 今委員から詳しく御紹介があったとおり、外国人土地法は、大正十四年に旧大日本帝国憲法下で成立した法律ではございますが、現在も効力を有する法律ということになっております。この法律の歴史的経緯は今御説明のとおりで、外国人、外国法人に土地所有を原則として許すけれども、一定の場合に、当時は勅令をもって、今で言う政令をもって制限ができるというルールがあって、その類型が二つあるというのも御指摘のとおりでございます。一つ目は、相互主義に基づく規制があり得る、それから、さらにもう一つは、国防上の必要な地区についての規制があり得ると、こういう内容です。  いずれにせよ、規制をするには、法律の条文では勅令、現在では政令と読み替えていますが、政令による指定が必要ですけれども、この勅令についても一つしか今まで例がなくて、大正十五年に国防上必要な地区について勅令で指定して、陸軍大臣、海軍大臣の取得の許可を義務付けるというふうな勅令が大正十五年にできたことがありますが、それはもう戦後廃止されていますし、現行憲法が昭和二十二年に制定された後は政令ということになるわけですが、政令化された例はございません。  じゃ、現在、全く政令の指定がないものですから、外国人土地法による土地取得規制というのはないわけですけれども、政令さえ作れば外国人や外国法人についての土地取得が制限できるかといいますと、今申し上げた二つの類型に当たる場合で仮にあっても、この外国人土地法による規定の仕方というのは、現行憲法に照らしてみると、制限の対象となる権利や、あるいは制限の態様について政令に白紙的あるいは包括的に委任していると、そういう法律でございます。  こういった点がやや憲法上も問題がある嫌いがありまして、したがって、政令さえ作れば外国人や外国法人の土地取得を外国人土地法で制限できるというわけにはなかなかいかないんではないかというふうに思っております。
  101. 谷亮子

    ○谷亮子君 御丁寧に御答弁いただきました。今、現行はそのような状況であるというふうに私も認識いたしております。  そこで、ただいま御答弁いただきましたことを踏まえた上で、外国人等による日本の土地また不動産取得、購入をめぐる現況について取り上げたいと今日は思っております。  昨年の海外法人による日本の不動産取得購入額は九千七百七十七億円と、前年比で三倍に増えておりまして、過去最高となり、日本不動産市場に占める外国人取引比率も二〇%に達しております。こうした不動産取得、購入の具体的事例としては、東京都内の現況を調べてみたんですけれども、東京駅前のパシフィックセンチュリープレイス丸の内のオフィス部分を千七百億円、そして品川にある日本たばこ産業の複合施設である品川シーサイドフォレストのオフィスビル三棟を七百億円、そして中野駅前の中野セントラルパークの複合ビルを三百八十億円で取得し、購入したというケースもございました。  また、総合不動産サービスの大手JLLグループが二〇一五年一月に取りまとめた投資分析レポートによりますと、日本の二〇一四年の年間不動産投資額は、前年同期比一八%増の四兆六千九百億円となっておりまして、円建ての投資額としてはリーマン・ショックが起きた二〇〇八年とこれは同程度の水準となるという、不動産取引というのが、土地も含めて非常に活発化してきているという現況にございました。  また、人気のある場所としては、二〇二〇年に開催される東京オリンピック・パラリンピックの会場に近い湾岸地区や、六本木、赤坂、麻布といった港区のブランド力のあるエリアでありまして、販売価格が一億円を超える、言わばそういう億ションと言われることも多いということでありました。  また、日本不動産研究所が公表した情報も見てみますと、東京の元麻布のマンションの価格を一〇〇として、アジア各地とこれは比較をしてみましたところ、上海で一二九、香港で二一三、シンガポールで一四五、ソウルで七三、ロンドンは三二三、ニューヨークは一五五となっておりまして、元麻布の物件は香港と比較しますと半分以下となるということから、外国人にとっては日本のマンションは購入しやすいという現状にあるということであります。  また、外国人の勢いを示す事例としましては、例えばこれは東京都心部で建設されている大型タワーマンションについて、大手ディベロッパーは、マンションの販売に関し、完成後の円滑な管理を考慮して、外国人に売るのは全住戸の三割といった一定の自主基準をこれは設けられたんですけれども、結局その物件については外国人への販売が半分を超えたという現状でございます。  そこで、こうしたことを踏まえまして、先ほども触れましたとおり、東京駅前の物件のような都心部のやはり一等地を始め、日本の不動産が外国人等によって、土地の取得そして購入をされていくというような現況について、政府としてはどのように捉えていらっしゃるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  102. 深山卓也

    政府参考人(深山卓也君) 先ほど御説明したとおり、外国人土地法による外国人等の土地取得規制は現在はないという前提でございますが、そうすると、大原則の民法に戻りまして、民法上は、外国人及び外国法人は法令又は条約に別段の定めがない限り、日本人及び日本法人と同一の権利を有する旨が規定されております。そして、現在、外国人、外国法人による土地取得を禁止した法律や条約というのはありませんので、民法においては、我が国において外国人や外国法人が不動産を取得することは、日本国民、日本企業と同様に自由であるというのが原則でございます。  したがって、この不動産の取得自体について、少なくとも法的観点から問題があるというわけではないというのが現状でございます。
  103. 谷亮子

    ○谷亮子君 私もそのように感じているところでございます。  今後、やはり外国人による、二〇二〇年に開催される東京オリンピック・パラリンピック以降も、土地やそうした不動産取得、購入の拡大が見込まれると思いますので、国内の不動産市況への影響等を考慮した上で、こうした不動産、土地を購入することが、外国人の方がすることが悪いと言っているわけではなくて、やはり公的利益の害があるおそれがある場合もあるというようなことが、今回の、現行法であります外国人の土地法には盛り込まれていないという現状でありますので、こうした問題を提起させていただいているところなんですけれども。  そこで、外国人等がマンションを購入された後、現行の外国人土地法の下で、ただいま申し上げました公共の利益を害するおそれのあるようなこともこれは当然想定しておかなければならないということは先ほどから御答弁いただいておりますとおり、法務省におかれましては当然お考えになられていると思いますけれども、今後更に外国人における日本の不動産・土地購入が表面化することに備え、法務省として何らかの措置をお考えになられる予定があるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  104. 深山卓也

    政府参考人(深山卓也君) 今お話がありましたように、外国人の不動産取得によって公共の利益が害される場合、例えば大都市部ですと、都市の再開発に支障を来すとか、そういった具体的な阻害要因となるという場合に、そのような土地取得を規制するということが立法政策上およそあり得ないというふうには思ってはおりません。  ただ、そうした個別の規制目的を実現するために不動産取得を規制するということになりますと、その目的がまず正当であること、さらに、その手段が目的達成の上で必要かつ合理的な範囲であるというようなことが要件になると考えられますけれども、法務省立場というのは民事基本法を所管しているのみですので、こうした様々な公共の利益、規制目的に関する事務を所管しておりませんので、そういった、各省庁がそれぞれの所管事務の範囲内での規制目的に基づいて規制をするということについて、法務省がやるとかやらないというわけにはいきません。むしろ法務省立場は、基本法を所管する立場からその協議に応じて意見を述べたりすることでございます。  ただ、さはさりながら、外国人であるということだけ、あるいは外国法人であることだけで規制をするということの目的の合理性や必要性が認められるかというと、そこはなかなか難しい問題があるのではないかと思ってはおります。
  105. 谷亮子

    ○谷亮子君 まさにおっしゃられるとおりだと思います。本当に真摯な御答弁をいただいたというふうに思います。  ですから、そうしたことを踏まえた上で、次に、外国人土地法に代わる新法について、これは御検討されてはいかがでしょうかという観点から伺いたいと思いますが、外国人土地法に基づく政令を新たに制定して外国人等による土地取得を規制できるかどうかについては、現行の外国人土地法ではその規制の対象となる、先ほど申し上げられましたけれども、権利、制限の様態、そして制限違反があった場合の措置などについて、これは具体的に規定しておらず、これらを全て政令で定めることとされているわけでございます。  しかし、このような委任は、国民の権利を制限し、義務を課すことは国会の立法によって行われなければならないという憲法の原則に抵触するおそれがございまして、具体的な委任なしに新たな政令を制定すれば憲法上の問題がこれは起こりかねないものと考えられていることから、同法に基づく新たな政令を制定することによって外国人等による土地取得を規制することは困難という状況にあるということは承知いたしております。  こうした中で、他国においては、国内法の規定に従い、外国人等による不動産取得に制限を加えている国もございます。土地の使われ方が国益に反しないように規制されている国々としましては、アメリカ、フランス、イギリス、ドイツ等がございました。アメリカの場合は連邦法で規制されておりまして、これは違反すると罰金を科せられるほか、連邦法に加えて各州の州法による規制が加わるようになっておりました。  これに対し、世界の土地面積は、一億三千六百十二万七千平方キロメートルのうち日本の土地面積は三十七万八千平方キロメートルと、世界の土地面積の中では日本の占める土地面積の割合というのは〇・二八%と狭い国土の我が国におきましては、現在、外国人等による土地・不動産取得、購入等が急激に進展しておりますが、外国人等による日本の不動産取得、購入が原則自由であるという、こうした状況に現状を照らし合わせてみると、やはり私がここで申し上げたいのは、問題意識として持っておりますのは、現行の外国人土地法の下では、公共の利益を害するおそれがあるような、またそうしたことがあった場合、現在の現行法の下では規制等をするような仕組みが盛り込まれておりませんので、大正十四年に制定されたままであるということでございます。ですから、今後におきましては、しっかりとその辺も含めて取組考えていっていただきたいなというふうに思っています。  そして、安倍総理におかれましても、かつて、政府として、個人の財産権を尊重しつつ国土の望ましい利用を図るため、適正な土地利用を確保していくことが重要であると考えており、外国人土地法に代わる新たな法を整備することを含め、安全保障上の必要性や個人の財産権の保護の観点等の諸事情を総合的に勘案した上でしっかり研究していきたいとの御答弁を国会でもされていらっしゃいます。  やはり、このことを基本姿勢とした法務省を始めとする政府として、今後、研究そして検討状況というものを期待しているわけなんですけれども、現況そのようなことはなされていらっしゃいますでしょうか。
  106. 深山卓也

    政府参考人(深山卓也君) 今、まさに委員が御指摘になったように、現行法上は我が国では外国人や外国法人が土地を取得することは自由であるという原則になっております。  ただ、国内法で不動産の取得を制限するということは、他の法文、法令においてもあるわけですから、制限の目的が正当で、その制限の態様が必要かつ合理的な範囲のものであればその可否を検討するということは十分あり得ると思うんですが、今まさに言われたように、何の目的で、例えば国防上の目的で、あるいは水源地確保の目的でと、いろんなことがこの間一般に言われております。そういうそれぞれの規制目的に関わる行政事務を所掌する省庁において、国防上の観点から一定の制限、これは何も取得を禁止するだけが制限ではありません。届出とか調査をするとかそういうのも含めてですけれども、そういった目的と態様に応じてそれぞれの所管行政事務を担っている省庁において検討がされるもの、つまり法務省として一般的に駄目だというのは先ほどから申し上げているとおりちょっと合理性を欠くと思われますが、特定の行政目的で、その目的達成に必要な範囲での規制というのはあり得ることだとは思っておりますけれども、それは法務省として考えるというよりは、国防なら防衛省、水源地の確保だったら分かりませんが国土交通省、それぞれの各省庁でお考えいただいたときに我々は誠実に協議に応じるという立場です。  ただ、ここで一言だけ申し上げておきたいのは、これは今まさに委員が言われた、安倍総理もかつて答弁をされたことがあるんですが、外国人又は外国法人であることだけを理由として不動産取得を制限することは、我が国が締結している諸条約において内国民待遇が規定されているということとの関係で条約違反になって許されないという可能性もありますので、そういったところにも目配りをして議論は進められるべきだろうと思っております。
  107. 谷亮子

    ○谷亮子君 ありがとうございました。  やはり、この外国人土地法自体の法律に対する国会での委員会での質疑、審議等は行われたケースが非常に少なかったということもございまして、長年の期間がもう既に経過をして、いろいろな現況が変わってきているという現状もございますので、今後におきましては、法務省が所管されているこの外国人土地法でございますので、ただいまおっしゃっていただきましたように、関係省庁と緊密に連携を取りながら、これからにふさわしい外国人土地法であるためにそのことを是非考察していっていただきたいということを申し上げまして、質疑を終えたいと思います。
  108. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 本日の調査はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十四分休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  109. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、馬場成志君が委員辞任され、その補欠として柳本卓治君が選任されました。     ─────────────
  110. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、法務大臣官房司法法制部長萩本修君外三名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  111. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  112. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  113. 三宅伸吾

    ○三宅伸吾君 自由民主党の三宅伸吾でございます。質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。  本日は、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案でございます。この狙いにつきまして、一昨日、上川法務大臣より、下級裁判所の事件を適正かつ迅速に処理するためというふうに御説明がございました。その迅速の観点で今日は若干質問をさせていただきます。  今から十三年前でございますけれども、司法制度改革推進本部顧問会議というものがございまして、平成十四年の七月五日のことでございましたが、総理大臣官邸大会議室におきまして、当時の小泉純一郎総理がこういう川柳を御紹介されました。思い出の事件を裁く最高裁。英米流に申しますと、ジャスティス・ディレイド・ノー・ジャスティス、遅い判決に正義なしと、こういう意味ではなかろうかと思います。  翌年の平成十五年七月十六日、法律第百七号におきまして、裁判迅速化法というのがございます。その迅速化法には、「裁判の迅速化は、第一審の訴訟手続については二年以内のできるだけ短い期間内にこれを終局させ、その他の裁判所における手続についてもそれぞれの手続に応じてできるだけ短い期間内にこれを終局させることを目標として、充実した手続を実施すること並びにこれを支える制度及び体制の整備を図ることにより行われるものとする。」というふうに明記されております。  先ほどの川柳は最高裁のことを言っておりましたけれども、本日の主にテーマといたしますのは、下級裁判所の迅速化の状況についてまず最高裁にお聞きしたいと思います。民事、刑事、そして行政、大まかな迅速化の状況につきまして御説明をお願いいたします。
  114. 中村愼

    最高裁判所長官代理者(中村愼君) お答えいたします。  司法制度改革審議会の意見書が提出されました前年の平成十二年のデータと、直近であります平成二十六年のデータで比較して御説明させていただきたいと思います。  まず、地方裁判所の民事一審訴訟事件全体の平均審理期間でございますが、平成十二年は八・八か月でございました。平成二十六年は八・五か月と若干短縮しているところでございます。そのうち、実質的な審理を行ったものとして人証調べを実施いたしました対席判決の平均審理期間で見ますと、二十・三か月から十九・七か月へ短縮しているところでございます。  審理が長期化した事件の割合で見ますと、既済の事件のうち平均審理期間が二年を超える割合は平成十二年の八%から平成二十六年の五・八%に低下しておりますし、未済事件のうち二年を超える長期未済事件の割合も一二・四%から七・六%に低下しているところでございます。  専門訴訟についてもお尋ねがありました。  医事関係訴訟につきましては、平成十二年、平均審理期間三十五・六か月でございましたが、平成二十六年には二十三・三か月、知的財産訴訟全般につきましては二十一・六か月から十五か月、行政事件につきましては二十・〇か月から十四・七か月に短縮しております。  地方裁判所の刑事通常第一審訴訟事件につきましても御説明します。  平均審理期間は、平成十二年の三・二か月から平成二十六年の三・〇か月ということで若干短縮しております。終局人員のうち平均審理期間が二年を超える割合は〇・四%から〇・一六%に低下しているところでございます。  このように、司法制度改革の後、相応規模で増員を認めていただいたこともありまして、民事一審訴訟事件等の審理期間については、まだまだ課題はありますものの、民事、刑事を問わず、審理期間が二年を超える事件は減少し、相応の効果が出てきているものと考えております。  迅速化に関する法律におきましては、第一審の訴訟手続を二年以内のできる限り短い期間で終局させることなどが目標とされているところでございまして、裁判所といたしましても、訴訟関係人の理解と協力を得つつ、争点中心型の審理の実践に努めるとともに、裁判官が適切な訴訟指揮権を行使し、終期を見通した計画的な審理の実践を図るなどして、合理的期間内に適正な裁判を実現するため、引き続き努力してまいりたいと考えております。
  115. 三宅伸吾

    ○三宅伸吾君 おおむね迅速化が進んでいるということは確認できたわけであります。  複雑専門訴訟、今、医療と行政とそれから知財と御紹介ありました。その行政事件の中で租税関係訴訟というのがございます。お手元に配付いたしております二ページ目に租税関係訴訟の状況というのがございます。一番左が各年度の期首の件数でございまして、一番右が期末の件数でございます。  期末の件数を見ますと、平成六年度六百五十一件からずっと来まして、平成二十五年度になりますと三百三十六件と、大体半分になっているわけでございますけれども、この背景につきまして、財務省、御説明をお願いできますか。
  116. 藤田博一

    政府参考人(藤田博一君) お答えいたします。  各年度期末に係属しております訴訟件数は、その年度中に発生した件数と終結した件数の状況によって変動するわけでございますけれども、直近十年間の発生件数と終結件数とを比較いたしますと、終結件数が発生件数を上回っている年度が多いものですから、御指摘のように、平成二十五年度の期末件数は平成六年度に比してほぼ半減という状況になってございます。  租税関係訴訟の発生、終結それぞれの件数は、一件ごとの個別性が強く、様々な要因に左右されますので、その増減の要因を特定することは困難であることを御理解いただきたいと存じます。
  117. 三宅伸吾

    ○三宅伸吾君 先日のこの委員会で、税務訴訟の場合、長引きますと、国が利子を付けて納税者にお金を、還付加算金でございましたか、返さなきゃいけないものですから、余りにもずさんな、単に早いだけでは意味がございませんけれども、できる限り、負けそうな裁判だと思われれば早めに判決を受けて利子を減らすというような訴訟の方法も大事ではないかと思っております。  次に、専門訴訟のもう一つの知的財産の関連でございます。平成十七年の四月一日、知的財産高等裁判所というものが創設をされております。東京高裁の特別の支部として創設をされたわけです。知財関係訴訟の管轄の集中化それから大合議制というのを導入いたしまして、いわゆるプロパテント化を目指したというふうに私は理解しております。  最高裁にお聞きをいたします。知財高裁、十年の軌跡を振り返って、その評価とそれから課題につきまして御意見をお聞かせください。
  118. 菅野雅之

    最高裁判所長官代理者(菅野雅之君) お答えいたします。  まず、知財高裁の大合議制についてでございますけれども、これまでに審理された事件は計十四件でございまして、うち十三件におきまして判決及び決定がされております。いずれも社会経済への影響が大きい重要な法律上の争点を含んだ事件でございまして、例えば世界中で共通する最先端の法律問題が対象となったアップル・サムスン事件については、知財高裁におきまして平成二十六年五月十六日に判決及び決定がされておりまして、その判断は国際的にも注目を集めたものと聞いております。  また、審理期間について御説明いたしますが、知財高裁が第一審として専属管轄を有します審決取消し訴訟の平均審理期間につきましては、知財高裁設立直前である平成十六年には十二・六か月でございましたが、平成二十六年には八・二か月となっております。また、知財関係民事事件控訴審の平均審理期間につきましても、同様に、平成十六年には九・〇か月であったわけですが、平成二十六年の知財高裁における平均審理期間は七・一か月となっております。  このように、審理期間の短縮化に加えまして、知財高裁を中心とする日本の知財訴訟は、先ほど御紹介いただきましたように、管轄を集中させることによりまして専門的なノウハウを蓄積しており、知財紛争に精通した多くの弁護士の皆様方などから判決の正確性、信頼性あるいは公平性といった面で積極的な評価を頂戴しております。  また、海外との関係におきましても、知財高裁のウエブサイトなどを通じた英語での情報発信が強化されてきておりますし、外国からの知財高裁への訪問やあるいは国際会議等を通じた国際交流も盛んに行われております。  今後の課題につきましてですが、先ほどアップル・サムスン事件を御紹介いたしましたが、知財訴訟は専門性、国際性が特に強い事件類型と考えております。知財高裁としては、今後とも、そういった知財訴訟の特質、あるいは営業秘密への意識の高まりなどの諸情勢もしっかり踏まえつつ、各事件の適正かつ迅速な審理と判断に努めて国内外からの信頼を高めていく必要があると考えております。  以上でございます。
  119. 三宅伸吾

    ○三宅伸吾君 知財高裁、十年たちまして評価が実は分かれているように私は思っております。今日は時間の関係で詳細には入りませんけれども、一つ今日お取り上げしたいのは損害賠償額でございます。  お手元に配付しております最初の紙に、特許権侵害訴訟における損害賠償額の日米比較というのがございます。米国を見ますと一千億円を超える評決額が出ているわけでありますけれども、日本を見ますと大きいものでも十七億八千六百二十万円でございまして、一桁、二桁、少なくとも判決ベースで見ますと、損害賠償の認容額は、日本は極端に低いということでございます。他の先進諸国と比べても日本は一番下か二番目ぐらいのところではなかったかと思います。  これは知的財産戦略推進事務局が作った資料でございますけれども、どうしてこのような差が生まれるのか御説明を、最高裁の方、いただけませんでしょうか。
  120. 菅野雅之

    最高裁判所長官代理者(菅野雅之君) お答え申し上げます。  個別の事件における裁判所の判断としての損害賠償額の大小についてコメントを申し上げる立場にはございませんが、一般論といたしましては、我が国の特許権侵害訴訟における損害賠償額の算定につきましては、特許法百二条に損害の額の推定等に関する規定が置かれております。このような規定に基づく損害賠償法制の下で、当事者の主張、立証等を踏まえて適正な損害賠償額の算定を行っているものと考えております。  ただいま委員から御指摘いただきましたように、その結果として、算定された損害賠償額が米国と比べて小さいという御指摘があることは私どもも承知しておりますが、特許権侵害訴訟における損害賠償額は、例えば米国における懲罰的賠償制度ですとかあるいは陪審制度、こういうものの存在といった前提となる法制度が違う、あるいはマーケット規模自体が違うなど、様々な要因に左右されるものと認識しておりますので、このような点につきましても御理解を賜れればというふうに考えております。  以上でございます。
  121. 三宅伸吾

    ○三宅伸吾君 損害賠償額の日米の差がその仕組み、制度の違いから来るというところは当然あろうかと思います。問題は、日本の現行の制度は妥当かどうかという点でございますけれども、時間の関係で、今後の機会に譲りたいと思います。  今日はありがとうございました。
  122. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 民主党の小川敏夫でございます。  まず、基本的なというか、この仕組みについてお尋ねしますけれども、司法研修所を終了しまして法曹資格を与えられますと、検察官は検事になり、弁護士は弁護士になるわけですけれども、裁判官の場合は、なぜか判事と言わずに判事補ということになっていまして、裁判官だけが検察や弁護士と違って判事補、判事ではない判事補という特別な職名を付けて行っているわけですけれども。  判事補も裁判官ですから、別に判事と判事補というこの区別はなくてもいいのではないかと、そのように思いまして質問させていただきますけれども、何でこの判事と区別した判事補という、こういう職名、職名というのか官名というのかな、これを設けているんでしょうか。まず、最高裁の方から御説明いただければと思いますが。
  123. 中村愼

    最高裁判所長官代理者(中村愼君) 判事と判事補につきましては、法律でその権限が違うというふうに定められているところでございます。判事補は、例えば他の法律に特別の定めがある場合を除いて一人で裁判ができないでありますとか、同時に二人以上の合議体に加わり、裁判長となることができないというふうな規定がありまして、判事と比べてその職責が限られている。  これはやはり十年間、裁判官として経験を積んだ者で、それなりの経験、あるいは事件の処理というものを踏んだ者がやはり一人で重大な裁判ができるということを考えてこのような規定が設けられて、そういう意味で権限が違うということで理解しているところでございます。
  124. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 経験が浅いと、職責、判事としての全般的な権限を与えられないというような趣旨だと思うんですけれども、しかし、検事の方は検事として始めから言わば一人前でありますし、弁護士も弁護士として、別にベテランの弁護士も新米の弁護士も差はないんですけれども。研修所で法曹たる者としての十分な能力を判定されて資格を得ているわけですから、裁判官だけが、一人前の裁判官が判事とすると、一人前じゃない、ちょっと七掛けか半人前の裁判官なるものを設けて判事補というのも何か釣合いが取れないのかなという気もするんですが、そこはまあ私の意見としましてですね。  法律で権限が制限されているから判事補というものが設けられているというんだけれども、でも、それは判事補というものを特別に設けなくても、要するに、今は判事補は単独事件をできない、裁判長にはなれないということでしたけれども、これは別に、例えば判事補という職名を設けなくても、判事であるけれども、資格を取ってから十年以内の者は単独事件を扱えない、あるいは裁判長になれないというふうにすれば済む話だと思うんですよね。  だから、特別、判事補という、これ官名というんですか職名というんですかね、そういうものを設けなくても、ただ単にそうした扱いで対応できるんじゃないかと、こういうふうに思うんですが、そういう扱いじゃ対応できないんでしょうか。
  125. 中村愼

    最高裁判所長官代理者(中村愼君) 今の御質問は、裁判官の数という観点でその判事補、判事と分ける必要があるかという趣旨でお答えした方がよろしいのか、わざわざ判事補という官名をつくらなくてもいいという御趣旨で……(発言する者あり)そうだとしますと、やはり裁判官のところというのは十年という任期が憲法で定められているところでございまして、判事へ任命という資格も裁判所法で判事補等を十年やった者という形で決まっているものでございます。  そういう意味で、トータルの法律の仕組みがやっぱり判事補と判事というのを峻別した形で裁判所法等の基本法がそういう形で定まっているということで、一つの官にした上で、その中で区別をするということについてはなかなか難しいものがあろうかというふうに思っているところでございます。
  126. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 今、裁判所法などでそういう規定になっているというのは、そういうふうになっていることはよく承知していますけれども、要するに、法律を変えてしまって、判事補という官名をなくして全部判事に統一してしまっていいんじゃないかという観点、ですから、そういうふうに法律を変えたらどうかという観点で聞いているわけですよね。  ですから、法律を変えて、判事補という官名をなくして全部判事にしてしまって、ただ、なりたての判事には少し、いきなり単独事件は任せられないというのであれば、それは官名ではなくて別の規定の仕方によって対応できるんじゃないかなと。ですから、そういうふうに法律を改正する考えもあってもいいんじゃないかという観点からお尋ねしただけです。
  127. 中村愼

    最高裁判所長官代理者(中村愼君) 法律の改正という観点でいいますと、これは立法政策の問題でございますので、なかなか、裁判所としてコメントを差し控えたいと思いますが、ただ、裁判所としての立場を申し上げますと、先ほどの権限が違うという観点からいたしますと、その人員管理等につきましても、判事補と判事を分けて行うというのは合理的でありますし、また現実の配置につきましても、判事補と判事というのを分けて配置を考えているというところでございますので、今の法制度自体、裁判所としては合理的なものと考えている次第でございます。
  128. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 現実問題として判事補はそういう権限がない、単独事件は担当できないという法律の建前だけれども、一方で特例判事補というのがあって、判事補で五年経験すると判事補ではあるけれども判事の権限を全部持つことができる判事補というのがあるわけでして、しかも、五年たつと、どうも統計的に見ると優れている人とかなんとかじゃなくて、全員一律に五年たつと特例判事補になっているようでありまして、だから、そうしたことからすると、立法は国会のお仕事だというから、確かにそうなのかもしれないけれども、でも、その国会のお仕事をやる上において、現場の裁判所において判事補という官名を残さなくてはいけない絶対的な合理的な理由なり必要性があるならそれは変えちゃいけないけれども、特別そうした合理的な理由もなくて、ただ昔からそういうふうになっているんだというだけでずっと来ているんだというだけだったら、判事補という官名をなくして全部判事で、いずれにしても、判事補も判事も裁判官なんだから、全部判事一本でいいんじゃないかなと私は思ったわけであります。  この質問からちょっと入ったのは、実は判事補は欠員が生じている、五十数名ですか、午前中のどなたかの質疑でもありました。そして一方、判事の方は、今回、判事補が判事に変わる人を含むと定員が三十幾つ足りなくなっちゃうと。だから今回、判事の定員を増やしてくれというふうに言ってきているように見えるんですけれども。  だから、そうすると、判事補と判事という何か余り必要がないような枠組みにしているから、判事補という枠では五十何人欠員が生じていると。定員を埋めていない。一方、判事の方は定員が足らなくなっちゃって、追い付かないから増員してくれという。これは、判事補も判事も分けるからそういうことになるんで、判事補と判事をくっつけちゃえば、元々五十幾つの欠員があるんだから、今回のその判事の三十二の増員は要らないんじゃないかと、こういうふうに考えられるものですから、そうした観点お尋ねしているわけです。  例えば、法律の立て方として、今回裁判所の定員法の定員の決め方ですけれども、判事と判事補の両方とも裁判官なんだから判事補という官名をなくしてしまえというのも私、今述べましたけれども、もう一つ考え方として、判事補という官名を残しても、今判事が何人、判事補が何人というふうに分けて定員を決めているわけでして、これ分けないで判事と判事補で何人というふうにひっくくっちゃえば、また今言ったように、判事補で欠員が五十幾つ生じているけれども、判事の枠が足らなくなるので判事だけ増員してくれという必要がなくなると思うんですよね。  ですから、この定員法で判事と判事補を一くくりにしちゃって定員を出すというような決め方はできないんでしょうか。
  129. 中村愼

    最高裁判所長官代理者(中村愼君) 決め方については、また繰り返しになりますけれども、ちょっと、立法政策の問題でございます。  ただ、先ほども申し上げましたように、判事、判事補の権限の違いから、裁判所としての人員配置あるいは人員管理という観点で申しますと、やはり判事、判事補を現実には分けてその数というところを考えている。判事補の場合は、採用するというところで判事補全体の定員も考えながら考えているというようなところもございます。  そういう意味で、今の判事補と判事を分けているこの定員法の仕組みということについては、繰り返しになりますけれども、合理的なものではないかというふうに考えているところでございます。
  130. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 ちょっと結論部分が、判事と判事補を分けている仕組みが合理的なものであるという、そういうふうに答えられているんですか。何かちょっと語尾が聞こえなかったので。  どうです、法務大臣、今のお話聞いていて。判事補という官名なくてもいいので、むしろ私は、裁判所も、判事補という制度、仕組みがあって、最初の十年間は全部判事補だと。そうすると、十年たつと判事補の人はほとんどの方が判事になるという中で、判事と判事補というふうにこの定員を分けて固定化すると、今回のように判事補は定員を余している、判事は定員が足らなくなっちゃうから増員してくれというような結果が出てきちゃうようにも思うんですけれどもね。  どうでしょう、法務大臣のお考えとして、この判事補という官名をなくしちゃうか、あるいは定員を判事と判事補と分けないで、両方とも裁判官なんだから判事と判事補を一くくりにしちゃって定員を決めちゃった方が最高裁の方も人事もやりやすいと思うんですが、こんな考えを私は持っているんですが、いかがでしょうか。
  131. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 裁判所の仕組みそのものに関わる大変重要な御指摘というふうに承っておりますけれども、今国家試験を受けて司法修習生になられて、そして判事補に任用されるというところからキャリアが始まっていると。十年たって判事になる、あるいは五年たって特例の判事になっていくというような形で、一つずつ広げていくというような形の仕組みになっているということでありますが、十年たって判事補から判事になっていくということを決めたときの恐らく様々な御議論があった上で、国民に信頼される司法を実現するためにどうあるべきかということの中でこの資格制度についても決められてきたものではないかなというふうに思うところでございます。  ここまで私が言うこと自体、専門の分野ではございませんけれども、一応国民の側から見たときの、同じ裁判官といえども、やはりキャリアを積んでいただきながら様々な事案に即してしっかりとした判断をしていただくという意味で、信頼に応えるための制度としての役割を私は果たしてきていたのではないかなというふうに思うところでございます。  今、後半の御質問の中に、裁判官という形で総枠を養成すればいいということで、その中での裁判官、あるいは判事補という形で分けていく形で最高裁の中での人事を柔軟にしていけばいいのではないかという、こういうお考えだったというふうに思うんですけれども、これについては今人的な体制そのものは最高裁が実態に即して決めていらっしゃるということでもございますので、やはり現場のお考えということについては十分に意向を踏まえなければいけないということもございまして、大変慎重にというか、考えていくべきことではないかというふうに思うところでございます。
  132. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 今日は定員を増やすというこの法案の審議ですけれども、これからある意味では質問の本質に入っていきたいと思うんですけれども。  平成十三年、十四年、司法制度改革が議論されました。このとき最高裁の方は、裁判官の増員に関しまして司法制度改革審議会の方に意見を述べて、そのほぼ意見どおりに司法制度改革審議会の意見がまとめられておるわけですけれども、それを概略申し上げますと、その平成十三年の時点で、事件数が変わらなければ今後十年間で五百人程度ですか、の裁判官の増員が必要であるという意見でございました。事件数が増えれば更にそれにプラスアルファして裁判官の増員が必要であると、このような意見が最高裁から述べられて、司法制度改革審議会もほぼその意見を入れまして、意見が出ておるわけであります。  それで実際に増員が始まったわけですけれども、昨年までで大体五百人の増員は達しているんじゃないでしょうか。この点、いかがでしょうか。
  133. 中村愼

    最高裁判所長官代理者(中村愼君) 司法制度改革以降の増員数ということで申し上げますと、平成十四年度から平成二十三年度までの十年間で裁判官六百七人の増員を認めていただきました。この中には裁判員制度の体制整備というようなものも含まれておりますが、その人数を認めていただいています。  また、平成二十四年度以降も、平成二十六年度までの三年間で判事九十二人の増員を認めていただいているところでございます。
  134. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 ですから、司法制度改革によって、裁判の迅速化、あるいは様々な分野の、専門分野の拡充とか、そうしたことを十分全部踏まえて、十年間で五百人増員すればいいという計画であって、裁判所からもそういう要望が出たものを司法制度改革がそれを全部受け入れて意見をまとめて、それは現実にもう実現されておるわけでありまして、その頃の計画の五百人よりも更に多い人数が裁判官として増員されておるわけです。  この意見の際には、平成十三年当時、事件数がそのまま推移すれば五百人という話でして、事件数が増えれば更に裁判官の増員が必要であるという意見でございました。この意見の中に、事件数が減った場合には増員は少し減らしてもいいという意見があってもいいと思うんですが、事件数が減った場合にはということについては全く意見は述べられておりません。  現実に、では、その意見書が出された平成十三年それから直近の平成二十六年、比較しまして、事件数は増えているんでしょうか減っているんでしょうか。
  135. 中村愼

    最高裁判所長官代理者(中村愼君) 事件数としては、最近減少をしているというのが民事事件については実態でございます。  済みません、先ほど九十二人と申し上げたのは九十四人の間違いでございます。訂正いたします。
  136. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 いや、そうなんですよね。ですから、今後十年間で五百人の増員が必要だと、その平成十三年の事件がそのまま後推移すればというんだけれども、事件は当時に比べて減っておるわけであります。特に、刑事事件などは大きく減っておる。  そうすると、じゃ、何で増員するのかな、もう十分増員しているんじゃないですかという考えも当然出てくるわけでありますが、そこら辺のところはどのように御説明をされるんでしょうか。
  137. 中村愼

    最高裁判所長官代理者(中村愼君) 先ほど先生から御指摘がありましたけど、平成十三年当時のプレゼンにおきましては、当時の事件数を前提に、民事裁判について、争いある事件の審理期間を十二か月程度に縮め、合議体で審理する事件の割合、合議率を一〇%程度に高めるという目標を立てて、そのために必要な人員ということで、十年間に四百五十人程度というような御説明をさせていただいたところでございます。  民事、刑事事件共に事件数は減ってきているところでございますし、また増員の結果、審理期間につきましても二年を超える事件は減少してきているというふうに、相応な効果は出ているところでございます。  ただ、民事一審訴訟事件の二年を超える事件も、平成二十六年末の時点で依然八千百件程度ございますし、人証調べのある対席判決事件の審理期間はいまだ十九・七か月ということで、なお十分とは言えない状況にもございます。  目標や考え方という点におきましては、現時点におきましても、司法制度改革審議会のプレゼンで述べさせていただいたところを踏襲しているところでございますが、その後の事件動向、これは全体の事件は減っているものの、民事事件の中で過払い事件が激増した後、その部分が減って落ち着いているというような状況、あるいは審理期間の状況、また事件の複雑困難化等を背景として、納得性の高い丁寧な審理判断を求める声も高まっている中で、合議体による充実した審理がいまだ十分には行われているとは言えない状況にあること、また審議会当時の想定を超えます後見事件の急増といった新たな課題というものへの対応ということも必要であると、そういうことも考えまして、この法案におきましても判事の増員ということをお願いしているところでございます。
  138. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 確かに、後見事件等増えるというようなこともありますけれども、やはりそうはいっても、裁判の件数あるいはその扱う事務量ですか、そうしたものを考えると、やはり民事裁判、刑事裁判が圧倒的だと思うんですが、その圧倒的な部分の民事裁判、刑事裁判でやはり減少しているといいますと、どうも増員を求める人の方は、当然のことながら職務上必要であるというふうにおっしゃられるんでありましょうけれども、それだけの必要が本当にあるのかなというふうに疑問を持ってしまうわけでありますが。  それで、今回のこの定員法のことに当たりまして、最高裁の事務総局の方からこのようなペーパーが出ていまして、三十二人を増員した場合の充員見込みについてと。判事については、平成二十六年十二月一日現在の欠員補充四十五人、その後の退官等により見込まれる減少分、これに増員分三十二人を加え、百人強の補充が必要になるが、本年十月に判事補から判事に任命される者や弁護士からの任官者などにより、おおむね充員が可能と見込んでいると。こんなような説明書が出されました。  私、これ読んで、間違いとは言わないけど、何か視点が全然違うんじゃないかと思うんですね。つまり、増員というものがあって、それで百十人の補充が必要になるけれども、判事補がなるから充足されるよというんだけど、どうも私が見ると、そういう意味じゃなくて、視点が逆で、判事補から判事になる人が百人強いると。判事補から判事になる人が百人強いるのに、その百人強の人を判事として受け入れるための判事の定員枠が足らないと。だから、判事補百人強のこの人たちを受け入れるために、判事の定員枠を三十二人増やすんだと。これが、私、実際の実情の姿だと思うんですよね。だから、何か説明を見ると、ちょっと視点が違う言い方だなというふうに思うんですけれども。  どうなんでしょう。実際これ、判事補が判事になる方が、予定なんでしょうけど百人強いらっしゃるわけですよね。これ、現実にこの法律が通らないと、判事の定員が枠がないんで、何人、判事補を判事に採用できない人が出てしまうのか。結局、三十二人を予定しているんじゃないですか。だから、予定している判事補を全部採用するために、その分だけ、三十二人だけ判事の枠を増やしてくれと、こういうふうに思うわけであります。  裁判所としても、はい、そうだとはなかなかお答えにくいかもしれませんけれども、それについて私、意見を言わせてもらいますと、判事補というのは採用すれば十年後に基本的には判事になるわけです。そうすると、平成二十七年に判事になる予定の判事補の方は平成十七年に判事補に採用した方ですけれども、そのときに余り将来の計画性もないまま多過ぎる判事補を採用した、そのツケが十年後に回ってきてしまったと、こういうような見方を私はしているんですけれども、こんな私の見方についてはいかがなものでしょうか。
  139. 堀田眞哉

    最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) 判事補の採用につきましては、もちろん裁判所における事件処理の体制を確保するという観点もございますけれども、同時に、判事補として必要な資質、能力を持った人材を確保するという観点もございまして、そういった点、総合考慮して、毎年ごとの新任判事補の採用というのを行ってきているところでございます。  その採用した判事補が十年後判事になったときに判事の人員状況がどのようなことになっているのかということについての予想は非常に難しいところはあるわけでございまして、ただ、極めて抽象的ではございますけれども、十年前に採用された段階にあっては、将来的にある程度の司法需要があって一定の裁判官が必要であるんではないかと、そういった抽象的な見通しというものはある程度あったところではないかと思いますけれども、具体的に正確な人員見通しを立てて、それに基づいて計画的に採用せよということについてはなかなか難しいと申し上げるしかないわけでございます。
  140. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 裁判が日本の社会あるいは国家の中で司法というものを担っている、その重要性やその責任を果たしてきている、そうしたことの評価は私は高く持っておりますので、別に裁判所をけなすつもりは全然ないんですけれども、ただ、どうも司法制度改革のときには、十年間で五百人を増やすということで一つの長期的な視野に立ってやってきたわけですけれども、それが達成された後も、そういう長期的な視野、長期的な展望とか長期的な計画がないまま、毎年毎年何かずるずると増やしているんじゃないかと。しかも、増やしている事情については、どうも本当に裁判の実務を担う上で必要かというよりも、判事補を判事にするための枠を広げなきゃ判事補の首を切らなくちゃいけないと、首を切るんじゃなくて、再任を拒否しなくちゃいけないという事情で増員しているんじゃないかと。  ですから、これですと、例えばまた来年、判事補から判事になる人の数に見合うだけの判事の枠がないとまた来年もこれ増員になってくるわけでありますから、ここのところをもっと長期的な枠組みをつくって、一つの方法とすれば、判事補の官名をどうするか、あるいは定員を判事と判事補を一緒にしちゃうかとか、少し総合的に裁判官の定員の在り方というものを組立てして、そして取り組んでいただきたいなと、このように考えております。  そうしたことを述べさせていただきまして、私の質問を終わります。
  141. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 公明党の矢倉克夫です。よろしくお願いいたします。  今日議題になっております裁判所職員定員法の一部を改正する法律案、こちら、様々な趣旨、御説明を事前にもいただいているんですが、その一つが家庭事件の処理の充実強化であります。とりわけ、先ほども少し話題になりました成年後見事件、非常に増加をしている。これ、以前も私も質問させていただいたところであります。    〔委員長退席、理事熊谷大君着席〕  まず、最高裁にお伺いしたいんですが、裁判所が、成年後見事件、これ増加をしていることに対してどのように対応されているのか、一般的にまず御説明をいただきたいと思います。
  142. 村田斉志

    最高裁判所長官代理者(村田斉志君) お答え申し上げます。  委員指摘のとおり、成年後見関係事件の事件数は増加しているところでございまして、裁判所としても、これに対応するため、様々な取組に努めているところでございます。  その一例を申し上げますと、東京や大阪といった大規模庁におきましては、成年後見関係事件の適正、迅速な処理を目的といたしまして、これを専門的に取り扱う部署を設置するなどしてノウハウの蓄積を図っております。また、必要な情報を的確に収集し、適正、迅速かつ合理的に手続が進行できるよう、申立てに関する書類につきましては定型書式を整備いたしているところでございます。さらに、職員が手続を御案内するという際に、効果的、効率的に説明が行えるよう、制度内容あるいは手続などを分かりやすく説明したパンフレット、さらにはDVDなどを作成いたしまして利用をしております。  このほか、後見人等による不正行為をできるだけ防止して、かつ御本人の財産を適切に管理していただくという観点からは、御本人に一定額以上の財産がある場合には、弁護士、司法書士等の専門職を後見人又は後見監督人に選任したり、通常使用しない預貯金等を信託するという後見制度支援信託という仕組みを活用するなどしておりまして、これが結果的に後見監督の合理化にもつながっているというところでございます。  今後も、成年後見関係事件の適切かつ合理的な運用のためにこのような取組を続けていくとともに、更なる運用上の工夫を検討してまいりたいと考えております。
  143. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 今、一般的に御説明いただきました。  これとはまた違う観点で、成年後見事件が増えることで裁判所の業務がどういうふうに増えているのかというところもまた質問したいと思います。  今、私の手元のみでちょっと恐縮です、資料はあるんですが、家庭裁判所が成年後見に関わる部分、主に三つあると思います。後見人の成年後見の開始が一つ目。もう一つが後見等監督処分。もう一つが後見人等の報酬を決定する過程。  一番、裁判所の業務がこれからまた増えるであろうということを表す端的な部分がやはり後見等監督処分であると思います。手続が開始した後、裁判所が定期的に財産管理等がなされているのかをチェックをするこの手続がやはり必要になってくる。これについては、やはり特色としては、以前の、二年、三年ぐらい前に開始をされた後見事件であっても、その後定期的にチェックをするわけですから、やはり以前の事案についての業務であっても累積的にどんどん増えていくというのが、これが一つの特徴であると思っております。  具体的な数値が、平成十五年には後見等監督処分一万八千二百五十だったのですが、平成二十四年には四万三千四百四十八まで増えて、その二年後の平成二十六年には九万三千六百五十八。この二十四年から二十六年ではこれは二倍になっているぐらい、これぐらい、その時々の変動はあると思いますが、やはり増え続けるということは確かな傾向であると思います。  今回、法律趣旨一つ、また内容一つが裁判所書記官、これが三十九名、四十名弱増えているというところ。これが今回大きな、この点に関しては意味もあるかと私は評価もしたいと思っております。これに関しまして、成年後見制度、増加に対しての今回のこの法案の対応、効果がどのようなものであるのか。成年後見事件についての裁判所書記官の役割等も御説明いただきながら、改めて御説明いただきたいと思います。
  144. 中村愼

    最高裁判所長官代理者(中村愼君) 御指摘のとおり、裁判所では、成年後見の中でとりわけ監督というところをしっかりやっていかなければならないというふうに考えているところでございます。  その意味で、書記官のどのような関与をしているかという御質問でございますが、もちろん申立て等の関係でも一定の役割を果たしているのは当然でございますが、監督の段階におきましては、それぞれ後見人等から提出される書類を審査をしたり、あるいは裁判官からの指示を受けて関係者と連絡調整を行ったりするなど、実効的な後見監督のために極めて重要な役割を果たしているというふうに考えているところでございます。  人的体制というところでございますが、成年後見事件、また監督事件が増えている状況の中で、昨年の書記官につきましても、後見監督事務を行う部門に内部シフトを含めて相当程度配置し体制の強化を図ってきたところでございますし、今回の増員を認めていただくことによりまして、運用上の工夫ということも併せて不断に行っていく中で、現有人員の有効活用と相まって適切な事件処理に必要な体制整備に寄与するものというふうに考えているところでございます。
  145. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 裁判所書記官は、後見事件に関しまして、申請書の形式審査等だけに限らず、判事の判断をされるに当たっての前提の調査であったりそういう部分もやはりされている、実質上非常に多く関与をしている方であると思います。その方々が、職員数を増やすということは非常に時代の傾向にも合ったものであると思うし、改めて評価もしたいと思っております。  その上で、こういう、これだけノウハウのある書記官の方々のやはり知見というのも広く一般に国民の方に共有もしていただくことも大事であると思います。前回、三月二十六日に私質問したとき、市区町村長申立てがやはり長く手続が掛かる、その理由がそれぞれの地方公共団体のノウハウ不足である、この旨も指摘もさせていただいたところです。  そういった点も踏まえて、例えば地方公共団体が主催をしている後見事務についての研修会などにもやはりこういう裁判所の書記官がまた入っていって、講師としていろいろ手続的なものも教えていくような環境整備みたいなのもこれは積極的に進めていく部分はあるかと思いますが、この点について当局から御意見をいただきたいと思います。
  146. 村田斉志

    最高裁判所長官代理者(村田斉志君) お答え申し上げます。  委員の御指摘の点に関しまして、例えば、お話ございましたとおり、自治体等が市民後見人の養成事業を実施するというような場合に、家庭裁判所がそれについての講師の派遣等の協力を要請されるという場合がございます。成年後見制度に関して家庭裁判所が関係機関と適切に連携していくということは重要なことだと考えておりまして、市民後見人の養成事業を実施する自治体等から講師の派遣や検討会等への参加の要請があれば、司法機関としての公正中立性には留意しつつ、裁判所書記官等を講師として派遣するなど、庁の実情に応じて積極的に協力しているものと承知をしております。  このような協力は今後も続けられていくものと考えておりまして、そうした連携が、委員のお話にありましたようなノウハウの共有ですとか地域に開かれた司法を進めるといった観点からしても意義を有しているものというふうに考えております。
  147. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 なかなか、裁判所書記官といってもどういう勤務をされているのかなじみがない部分であると思いますが、市民生活に非常に密接に関わっているところ、こういうところでも関わっていることを国民の皆様にも知っていただいて、開かれた司法を実現する上でも大事な部分だと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。  続きまして、もう一点、この法案の趣旨として挙げて御説明いただいたのが、女性の活躍を推進するというところであったと思います。国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進というところ、本案がどのような部分でこれに関係するのか、この点御説明をいただきたいと思います。
  148. 中村愼

    最高裁判所長官代理者(中村愼君) 政府におきましては、女性職員活用・ワークライフバランス推進協議会におきまして、国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針を決定いたしまして、これを踏まえて、仕事と育児の両立支援の制度の利用促進や育児休業からの復帰後の支援等の観点から、試行的に行政府省の本省において定員上の措置を行うというふうに承知しているところでございます。  裁判所は同協議会の構成員ではございませんので、この取組指針の直接の対象ということにはなりませんが、取組指針の趣旨等を参考にしながら検討してまいりました結果、裁判所におきましても、取組指針に準じまして、行政府省の本省に当たり、司法行政事務を行っております事務総局におきまして同様の取組を試行的に行うということで、事務官一人の増員をお願いしたところでございます。  今回の定員措置は行政府省においても試行的な取扱いということでございますが、この一名の定員増を十分に活用して、育児のための制度を積極的に取得しながら仕事の面で活躍できるような体制整備に効果が出るように努めてまいりたいと考えているところでございます。
  149. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 今御説明ありました事務官一名、ちょっと一名だけですと、やはりなかなか、試験的な部分もあるというところではありますが、その趣旨もまた踏まえて、これはさらに、そういう形での増員というのをやはり考えていかなければいけないところであるかと思います。  ワーク・ライフ・バランスと、また女性の活躍というところから考えると、やはり育休等も踏まえて、休む部分での体制というのも必要かと思うんですが、やはり女性の方が働きやすい環境をつくっていくというのは、もうこれは非常に大事な部分であると思います。  とりわけ、私もいろいろ資料、統計見ていて一つ面白いと思ったのが裁判官以外の職員の育児休業取得率で、男性が育児休暇を取られている、これ平成二十五年なんですが、一五・五%いらっしゃるんですね。平成二十一年が七・四%だったのに比べれば、これは倍になっている。民間などが男性の育児休業取得率が二%であり、また一般公務員も三・七%であるのに比べれば、裁判所に関しては非常に多いんだろうなというふうに思っております。こちらについてはさらに、もっともっと高めていけるような政策を進めていただいて、模範となるような形を取っていただくことがやはり大事だと思っています。  これに加えて、例えばテレワーク、在宅勤務などの推進などもやはりしっかり考えていく必要もあると思います。環境整備等も含め、また予算的に研究開発、また施設の形状などもやっぱり考える必要な部分も含めて、先ほどの男性の育児休業取得の推進とともに、テレワークの推進、これをしっかり進めていくことについての裁判所の御意見をいただきたいと思います。
  150. 堀田眞哉

    最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) お答え申し上げます。  裁判所におきましては、次世代育成支援対策推進法に基づきまして、特定事業主行動計画、いわゆるアクションプランを策定いたしまして、仕事と育児の両立を支援する諸制度の周知を積極的に行ってきております。  中でも、委員指摘の男性職員の育児休業につきましては、平成二十七年度からの第三期の行動計画におきましても更なる利用促進を図っているところでございます。今後も、引き続き、全ての職員がワーク・ライフ・バランスを実現できる勤務環境の整備に努めてまいりたいと考えております。  また、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた働き方改革の一環としまして、政府におかれては、国家公務員のテレワークの推進に向けた取組がされていることを承知しております。  裁判所におきましては、法廷等での裁判及び事件当事者との窓口対応などの業務があるという職務の特性や、職場環境において行政府省とは異なる面があることも踏まえながら、裁判所におけるテレワークが裁判事件等への影響をどのような形で持つのか、あるいはワーク・ライフ・バランスに与える効果、職員のニーズはどういったものであるのかというようなところも含めて、十分に考慮しながら今後検討を進めてまいりたいと考えております。
  151. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 裁判所はそこに在庁をしてやらなければいけない業務がやはりあるという部分では特殊な部分もあるかと思います。国家全体でテレワーク推進、閣議決定も平成二十五年にしている部分もありますので、その特殊性も踏まえた上でいろいろ工夫もして、それぞれワークのシフトなどもしっかり考えながらやっていただくことは引き続きお願いしたいと思います。  ちょっと時間もありませんので、最後一言、質問しようと思っていたんですが、やはり裁判所の判事の方も、先ほど小川委員から再任等も御質問もあった、そこの部分はまた別途検討する必要はあると思うんですが、私としては、事件が減った部分もあるんですけれども、過払い請求の、それぞれ今まで少し定型的な判断でできたような事件が減った一方で、やはり複雑な事件も増えているのは確かであると思います。裁判員制度など刑事の方でも更にこれから発展をしていく、判事が関わっていく部分も多くなってくると思う。また、医療関係や労働関係など専門的なものも増えている。そういう部分では判事の増員という部分、実態をよく見ながらではあるんですが、一方でやはり考えなければいけないと思っております。  ちょっと時間がありませんので意見だけですが、その部分についてはやはり最高裁もしっかり予算をまた取っていくというところをより積極的な意識を持っていただいて、更に調整をしていただきたいということを要望申し上げまして、私から質問、終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございます。
  152. 真山勇一

    ○真山勇一君 維新の党、真山勇一です。よろしくお願いします。  裁判所職員定員法改正、これについては賛成という立場を表明させていただいて、そして質問を何点かさせていただきたいというふうに思っております。  ハーグ条約、例の国境を越えての子の連れ去りをめぐる条約ですけれども、これが去年の四月の一日、発効しました。これと同時に、それに対応する国内法、国内の手続を定めた法律というのもできまして、ちょうど一年というのが経過したわけですね。  一年経過したところで、国境を越えての子の連れ去り問題についてどんな状況なのか。例えば、裁判上の問題あるいは調停上の問題で、この一年間でどんな動き、実績があったかということを一点お伺いしたいことと、それから、やっぱり国際結婚が増えれば離婚も増えるということで、こうしたケースも増えてきているというふうに思われますので、この国際化しているあるいは複雑化している家事をめぐるケース、こうした裁判所の体制も当然、これは新しい事態だと思いますので、取っておられると思うので、この辺りをお伺いしたいと思います。
  153. 村田斉志

    最高裁判所長官代理者(村田斉志君) お答え申し上げます。  まず、御指摘の条約の実施法の施行後、平成二十七年三月末まで、この一年間に当事者から申し立てられました子の返還申立て事件は十六件ございました。このうち三月末時点で審理が終了いたしましたものは十一件ございまして、うち九件では当事者の申立てが認められました。一件では申立てが却下され、残りの一件では調停が成立したという具合でございます。高等裁判所に不服が申し立てられました事件は三件ございましたが、抗告が取り下げられた一件を除きましては、いずれも原審であります家庭裁判所の判断が維持をされております。なお、この条約実施法施行後、平成二十七年三月末までの一年間において、この法律が適用される面会交流事件の新受件数は十一件という具合になっております。  次に、委員から御指摘のありましたとおり、国際化、複雑化している事件がございまして、この適正、迅速な処理のためには家庭裁判所における体制を整備しておく必要があるというふうに考えております。  この点につきましては、裁判所といたしまして、これまでも東京、大阪を含む家庭裁判所における事件処理の充実強化のために裁判官及び書記官を相当数増配置するなどして人的体制の整備を図ってきているところでございます。これらの人員を有効に活用するなどして、家事事件等の適正、迅速な処理に努めております。また、司法研修所及び裁判所職員総合研修所におきまして定期的に研究会や協議会を開催し、最高裁からは新たな法制度等について適宜情報提供等をしているところでございます。  裁判所といたしましては、今後も、事件数の見込みや新受件数の動向、事件処理の状況等を注視するとともに、的確な事件処理が図れるよう、必要な体制の整備に努めてまいりたいというように考えております。
  154. 真山勇一

    ○真山勇一君 ありがとうございました。  一年たって、実情がどうなっているかということがかいま見えた気はいたします。特に、やっぱり子の連れ去りというのは突然結構起きてくるし、どこでそのケースが審理されるかとかいろいろなことがあるので、その体制とか準備というのはなかなか大変じゃないかというふうに思っているんです。  全体で十六件ということで、これが多かったのか少なかったのかということがあるんですが、私が評価するのではなくて、今報告いただいたことで、順調に、ハーグ条約の関係というのは国内法も含めて運用がスムーズにいっているのかどうかということと、それから、これからケースがやっぱり増えるんではないかなというような予想もあると思うんですが、その辺りどう見ていらっしゃるのか。それから、この場で大分今までも出ていましたけれども、やっぱり迅速化ということが大事だと思うんで、そういう辺りも含めて今後の予想なんかもどのように見ておられるか、その辺りを聞かせていただきたいと思います。
  155. 村田斉志

    最高裁判所長官代理者(村田斉志君) なかなか今後の事件の予測というのは難しいところがございますけれども、先ほど申し上げた十六件につきましては、施行後前半、九月ぐらいまでは申立てがございませんでして、その後、秋以降、このような件数になっているというところがございます。  また、外務省の方からは、その前提として援助申請をしておられるケースの数をお聞きしておりまして、その数によれば、今後やはり一定数の申立てがあるのではないかという予測はしておるところでございます。  審理の状況につきましては、これまで審理が終了いたしました事件の審理期間は大体六週間強というところになっておりますので、大体想定していたとおりかなと考えております。そういったところからして、順調に処理が進んでいるものというふうに認識をしております。
  156. 真山勇一

    ○真山勇一君 国際的な子の連れ去りについては、日本がこれまでやはりかなり海外、特にアメリカから批判も受けていたわけですね。解決する意思がないんじゃないか、それから、何かいろいろやってもなかなか処理が進まないみたいなことがあったんで。今お伺いして、あった件数、やはりこれ後半から増えてきたというのは、こういうことがいわゆる社会的に認知されてきたこともあるんじゃないかなというふうに思うんですが、一か月半ぐらいということで、六週間、一か月半ぐらいですね、そんなに遅いという感じでは私はないというふうに思うんです。  こういう国際的なケースですので、これからもそういう体制づくりというのは是非やっていっていただきたいというふうに思います。先ほどの話の中で、海外留学も裁判所は年間三十人余り出ているということで、是非こういうことも生かしながら、裁判の国際化ということも大事だと思いますので、これ、是非体制をしっかりとつくっていただきたいというふうに思います。  ところで、こういうことがある中で、実は先月ですけれども、安倍総理大臣がアメリカを訪問しました。その際、議会で演説をしたんですが、これに合わせて、下院にクリス・スミスさんという議員の方がいらっしゃるんですが、この人が人権とか子供の連れ去り関係の委員会委員長を何かなさっている方のようなんですが、このクリス・スミス下院議員が、国際的な子の連れ去り問題で日本に対して速やかな解決をするようにということを求める書簡というんですか、あるいは要望というんですかね、そういうものを出したというふうに報道されているんですけれども、この辺の事実関係は、外務省だと思うんですけれども、つかんでおられるでしょうか。
  157. 鈴木秀生

    政府参考人(鈴木秀生君) お答え申し上げます。  先生御指摘の書簡については、米国から日本への子の連れ去りに関して、いろいろ個別の事案にも言及しつつ、主としてハーグ条約発効以前の事案に対する我が国による対応を求める内容だと、そのように承知しております。  我が国は、昨年四月の条約発効以来、子の常居所地国への返還及び国境を越えた親子間の面会交流の実現に向けて、ハーグ条約実施法に基づいて、当事者間の連絡や協議のあっせんを始めとする援助を当事者に実施してまいりました。ハーグ条約発効前に連れ去られた子についても、このような子との面会交流を求めることは可能であります。そのような援助も生かしつつ、当事者間の問題の解決に向けた取組を後押ししていきたいと考えておるところでございます。    〔理事熊谷大君退席、委員長着席〕  ちなみに、スミス議員側に対しては、これまでも我が国の子の連れ去り問題に関する取組を説明してきているところでございまして、今後もきちんと説明を行っていきたいと考えております。
  158. 真山勇一

    ○真山勇一君 一年よりも前の問題ということで、当然それになるとなかなか処理が進まなくて、かなりアメリカからも批判を受けておりましたし、あるいは連れ去った親が犯罪に問われるようなケースもあったというふうに伺っておりまして、やはりそれだけアメリカの方は、要するにハーグ条約が発効する以前の問題については、まだかなりその扱いをどうするかということで日本政府に対して厳しく迫ってきている部分があるのかなというふうに思います。  現実的なちょっと問題でお伺いすると、日本側の受入れ仲介機関である中央当局がございますね。その中央当局で、ハーグ条約が実施された以降で国際的な子の連れ去り問題についての状況、どんなふうになっているのか、これをお伺いしたいと思います。
  159. 岡田隆

    政府参考人(岡田隆君) お答え申し上げます。  ハーグ条約の発効後、本日までの間に外務省中央当局が受けました申請の件数でございますが、日本に所在する子の外国への返還を求める申請が二十七件、外国に所在する子の日本への返還を求める申請が二十件ございます。  面会申請でございますが、日本に所在する子との面会を求めるものが五十八件、外国に所在する子との面会を求めるものが十八件ございまして、計百二十三件の申請を受け付けてございます。  その中で、日本に連れ去られた子の外国への返還が五件実現しております。また、外国に連れ去られた子の日本への返還も五件、それぞれ実現しているところでございます。  また、面会交流でございますが、ほぼ全ての事案につきまして当事者間の連絡の仲介は実現いたしました。その中には、子供が国境を越えて長期渡航する形で面会が実現した例、又はビデオ通話による面会が実現した例、子供が元の居住国への帰国へ向けて調整中ということに至りました例等がございます。  全体といたしまして、我が国といたしましては、ハーグ条約の着実な履行というものを進めてきたというふうに考えております。  こうした我が国の取組につきましては、米国を始めとしまして他の締約国やハーグ国際私法会議事務局等にるる説明してきております。我が国の条約履行については一定の評価を得ているというふうに考えております。  特に、米国に対しては緊密に連絡を取っておりまして、三月には私も訪米いたしまして、国務省の担当大使にこの実施状況について説明を詳しく行ってきたところでございます。米国との関係においても、よく我が国のこうした取組については理解を得られているというふうに考えているところでございます。
  160. 真山勇一

    ○真山勇一君 今伺っている範囲では、やはりかなり対応もきちっとしているふうに思われますし、説明、これはやっぱり大切だと思うんですね。これまでの日本の姿勢が、やはり条約が発効したこと、整備したことによって変わってきているということをきちっと説明するということが大事だと思います。  ただ、ちょっと気になるのは、クリス・スミスさんのところの中で、十二か月以上未解決のままのケースが増えるようなこと、ここでは具体的にケース全体の三〇%以上あった場合、解決しようとする意思の欠如とみなして、国務省に何らかの対応、制裁というような言い方もあるんですけれども、それを取るように求めているということが言われているんですけれども、この辺りについてはどういうふうに理解をされているでしょうか。
  161. 岡田隆

    政府参考人(岡田隆君) お答え申し上げます。  今御指摘ございました件でございますが、米国におきましては、二〇一四年に、ショーン・デービット・ゴールドマン、国際的な子の奪取の予防及び返還に関する法律というものが通っております。これに基づきますと、国務省は米国からの子の連れ去り事案に関する年次報告書を作成し議会に提出するということになっておりまして、その中で、ハーグ条約や米国との二国間の枠組み上の義務を履行しない国に対しては、国務長官が一定の条件の下で、例えば公的非難、それから人的交流の延期、停止といった措置をとれるということになっております。  この報告書でございますが、近々発表されるということを聞いておりますが、まだ公表には至っておりません。他方では、先ほど御説明申し上げましたような米側への説明というものを私ども努めてきておりますので、報告書の内容はこうした我が国の取組を踏まえたものになるということを期待しているところでございます。
  162. 真山勇一

    ○真山勇一君 ありがとうございました。  ハーグ条約発効一年ということで、現状がどうなっているのかということを伺って、非常にアウトラインがはっきり分かりましたし、これからの日本の遅れていると言われている部分についての処理も、先ほどの御答弁にもありましたけど、一定の評価も出てきていると思うし、それから説明もしっかりやっているということなので、是非これからも体制を整えると同時に、迅速化ですね、今の裁判のやっぱりキーワードは迅速化ということだと思うので、それへ向けて是非今後も努力をしていただきたいというふうに思います。  終わります。ありがとうございました。
  163. 仁比聡平

    仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。  裁判所職員の定員合理化がこの間続く中で、私、昨年も、物には限度があると中村局長にも厳しく申し上げたんですが、今度の法案について、裁判所書記官で見ますと三十四人の増員ということになっているんですが、昨年夏の最高裁判所の増員要求では書記官で四十人の増、速記官からの振替はプラス五で、つまり四十五人増というのが元々最高裁の昨年夏の要求なんです。ところが、法案では三十四人、マイナス六人となっているのは、中村局長、なぜですか。
  164. 中村愼

    最高裁判所長官代理者(中村愼君) 書記官につきましては、民事訴訟事件、家庭事件につきましてその適正、迅速な解決を図るためということで、概算要求の時点では四十人の増員が必要と考えていたところでございます。その後、概算要求後、財務省とも意見交換する中で、政府が国家公務員の定員についてこれまで以上に厳しい姿勢で合理化に取り組んでいるということや、他の行政機関が定員の再配置により業務の増大に対処し増員を抑制しているということの情報も得られましたので、裁判所といたしましても、国家機関の一つの機関といたしまして、現有の人的体制の有効活用を更に図れるかということを精査いたしまして、改めて増員必要数を検討したところでございます。  その結果、今年の一月十三日に、書記官三十四人の増員ということで改めて要求させていただいたということでございます。
  165. 仁比聡平

    仁比聡平君 昨年夏の増員要求は十分ではないと私は思うんですけれども、元々最高裁として、それぞれの裁判所が役割を果たしていくために、現場、職場の実態から積み重ねてまとめた要求のはずなんです。その認識、つまり現場がこういう増員を必要としているというこのニーズについての認識は、私、変わらないと思うんですけれども、局長、いかがですか。
  166. 中村愼

    最高裁判所長官代理者(中村愼君) ニーズと申しますか、こういう、書記官を増員することで適正、迅速な裁判の一助にするという認識については変わりはございません。  ただ、先ほど答弁させていただきましたけど、その必要人員ということにつきまして、夏から翌年一月までの間、十分に精査したところ、三十四人、四十人から三十四人の増員ということで的確な事件処理が図れるものと判断した次第でございます。
  167. 仁比聡平

    仁比聡平君 結局、的確なというよりも、痩せ我慢するという話なのではないのかと私は思うんですね。司法の独立、裁判所の独立というのはそんなことではないはずです。  この定員に関して、政府の定員合理化計画があり、これに協力するという説明も受けてまいりました。この定員削減計画への協力というのはどういう意味かということを私、確認しておきたいと思うんですね。  といいますのは、昨年夏の閣議決定によりますと、年二%、五年で一〇%定員を削減する、その後は内閣人事局が合理化目標数を定めて各府省に通知するというのが政府の定員合理化計画の枠組みです。  この枠組みに、まさか裁判所もその中にあるというわけではないと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  168. 中村愼

    最高裁判所長官代理者(中村愼君) 裁判所は行政機関でございませんので、政府の定員合理化計画に直ちに拘束されるものではございません。  ただ、国家公務員の定員をめぐる情勢が厳しさを増す中で、裁判部を充実強化を図っていくという観点からは、他の行政庁と同様に事務の効率化が必要な部分についてはできる限りの内部努力を行って、定員合理化する協力をすることは必要であると考えている次第でございます。
  169. 仁比聡平

    仁比聡平君 確認をしますけれども、つまり年二%、五年で一〇%という合理化枠だとか、あるいはその後の合理化目標数を定めて、削減ありきで今後進めていくということではないということですねということが一つと、その下で、今事務系職員の話をされましたが、裁判部の充実はもちろんのことですけれども、司法行政に当たる裁判所職員、これまでも効率化だとかIT化だとかいって合理化を進めてきたわけで、その中で繁忙だとか過密という実態というのは本当に深刻になっていると思うんですね。その認識はいかがですか。
  170. 中村愼

    最高裁判所長官代理者(中村愼君) 司法行政事務の合理化につきましても、裁判事務への支障の有無ということをも慎重に検討してまいりたいということは申させていただいたところでございますし、このことに何ら変わりはないところでございます。際限なしの事務の合理化、効率化ということは行えるわけではないというふうに考えているところではございます。
  171. 仁比聡平

    仁比聡平君 目標枠についてはどうですか。
  172. 中村愼

    最高裁判所長官代理者(中村愼君) 直接この定員合理化計画の拘束されるものではございませんので、これに協力するということでございます。
  173. 仁比聡平

    仁比聡平君 つまり、職場の実態から見て積み重ねていかなきゃいけないということですし、その裁判所の増員を支える予算の確保は我々政治の責任だということだと思うんです。  少し家裁について伺いたいんですが、先ほどの御議論の中でも、成年後見事件を中心に、申立て件数、それから開始決定がされた後の係属件数がこれ累積していく、増加をしていくということ、かつ複雑困難化しているというお話がございました。けれども、家裁の調査官で見ますと、二〇〇九年までは増員をされたんですが、二〇一〇年以降は増員ゼロが続いているわけですね。  実際に現場を見るとどうかと。先ほども話題になりました、例えば後見人による不正な財産管理をめぐる事件などについても、書記官が提出される書類と実際の口座とのそごなどをチェックするなどの気付きと、そして裁判官も含めたコーディネートをやりながら、調査官がここで役割を果たすという場面も相当あると思います。特に、親族後見人が後見されている高齢者、例えば高齢者の財産管理にいろいろ危ういところがあるときに、親族間の調整もやりながらその後見人の適正をちゃんと援助し指導していくというときに、調査官がその役割を果たしていくというようなやり方もしておられると思うんですね。  これ、書記官もそして調査官も抜本増員が必要なんだと思うんですけれども、いかがですか。
  174. 中村愼

    最高裁判所長官代理者(中村愼君) 調査官の御指摘がございました。  調査官につきましては、その特色であります科学性、後見性といいますか、専門職種としての知見というものを、これ、とりわけ子の意思というようなところの子供の関係でその専門知見を活用していただくということが極めて重要なんだろうというふうに思っております。  そういう意味で、成年後見事件におきまして、調査官の活躍分野というところにつきましては一定の限界はあると思いますが、ただ、調査官のそういう専門知識が生かせるような運用ということはこれからも十分考えていかないといけませんし、書記官、家裁調査官を含めまして、人的体制の充実ということは極めて重要なことであるというふうに考えているところでございます。
  175. 仁比聡平

    仁比聡平君 調査官の中での言わばシフトみたいなものを全体の枠を限る中では考えざるを得ないというような悩みが今の局長の御答弁ににじみ出ているように思うんですけれども、子の意思の確認のために家事事件手続法が施行されたのは〇九年以降のことでございまして、そのために調査官の役割が大きくなるというのは当然。けれども、成年後見事件においても現場でそうしたニーズがある以上はやっぱり増員によって対応する、それを私たちも含めて財務当局にも認めさせていくことが必要なんだと思うんです。  こうした家裁の繁忙化の中で、別の角度で伺いたいのは、地裁や簡裁から家裁への定員のシフトが行われている結果、地裁や簡裁が、書記官、事務官が大変になっていると。やっぱりそれは全国的に見られる傾向だと思うんですね。もう一つは、大都市部の民事事件など、あるいは家事事件もそうだと思いますが、極めて繁忙化、複雑化をする中で、地方から大都市部へのシフトというのがここ三年ほどの間見られると思うんです。  そのことが地裁、簡裁をどんなふうに限界に追い込んでいるかということの象徴的なものが、お手元に資料をお配りしましたが、裁判所職員が三人しかいない三人庁、そして裁判所職員が二人しかいない二人庁の存在だと思うんです。  かつてから、三人庁というのは、庶務課長さんの役割を果たす書記官さんと、もう一人書記官と、そして事務官、この三人しかいない裁判所で、裁判官はもちろん必要なときに填補してくるわけですね。この三人庁だって大変だと思っていたんですけど、伺うと、二人庁が広がっていると。最高裁から資料を提供いただいて御覧いただいているとおりですけれども、何と二十八庁も職員が二人しかいない裁判所があるわけですよ。インフルエンザにかかったらもう裁判所閉鎖かと。年休は取れないし、まして、女性、産休だったり、あるいは男性も育休だったり取れるはずがない。  これ、全て裁判所職員はほかの裁判所から必要に応じて填補してこなきゃいけないというそんな事態になっているわけですが、私、これはもう限度を超えていると思うんですね。増員していくということが本来の筋ではありませんか、局長
  176. 中村愼

    最高裁判所長官代理者(中村愼君) 二人庁が増えているという御指摘がございました。このいわゆる職員が二人しかいない二人庁、これは独立簡裁でございますが、これにつきまして事件動向を見ますと、ここ三年間の民事訴訟事件で見ますと、二人庁につきましては平均で年間三十件という程度にとどまっているところでございます。三人庁でも平均年間八十件という程度にとどまっているところでございまして、人員の有効活用という観点から、やはりこの事件数を見た執務体制ということになっているということは御理解いただければと思います。とはいいましても、利用者に対する司法サービスの低下につながるおそれがないかどうか、休暇取得、緊急時の応援体制が的確に組めるかどうか、これは業務体制の確保という観点から十分に検討しているところでございます。  今後も、人員の有効活用という観点から、全国的な配置を考えていく中で司法サービスの低下あるいは現場の職員に過度な負担が掛からないように、こういうことに注視してまいりたいというふうに考えております。
  177. 仁比聡平

    仁比聡平君 あまねく、どの地域に暮らしていても、司法の独立と、そして全ての国民に裁判を受ける権利を保障するということがこの問題の出発点の議論であるべきです。日本の裁判所予算というのは、国家予算の〇・四%を割って〇・三四%という、半ばシーリングでもあるのかという状態が八〇年代から続いておりまして、私、これを打ち破って抜本増員の予算を確保するために大臣の決意を一言伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  178. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 裁判所の予算の原案につきましては、最高裁判所がそれぞれの実態の中で御判断をいただいて、それに基づいて内閣に提出をするという、そうしたものであるというふうに考えております。  ただ、裁判所の予算も含めまして、最終的に予算案ということを作成するのは内閣の責務ということでございますので、その意味で、内閣としての意思決定の段階におきまして、裁判所を取り巻く様々な状況を適切に予算に反映できるようにということにつきましては、内閣の一員として努力してまいりたいというふうに考えております。
  179. 仁比聡平

    仁比聡平君 終わります。
  180. 田中茂

    ○田中茂君 日本を元気にする会・無所属会、無所属の田中茂です。  午前中の質問に引き続き、また裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に関して質問をさせていただきます。  今回の判事増員の趣旨にもあるように、民事訴訟事件の審理充実、企業の国際的かつ専門的、経済的活動と、また国民の価値観の多様化など、裁判官側にもそれに対応した人材が求められると、そのように言われているわけですが、そこで弁護士からの判事への任官についてお伺いしたいと思います。  平成三年に発足した弁護士任官制度に基づく弁護士任官が現状では余り機能されていないのではないかと思われます。それで、先ほど言いましたように、今回の判事増員の趣旨考えれば、様々なキャリアを持つ弁護士による弁護士任官を強化する意義も大きいのではと、そのように思っております。弁護士任官制度の現状を見ると、これをより一層活用することも検討すべきかと思いますが、この点について見解をお伺いいたします。
  181. 堀田眞哉

    最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) お答え申し上げます。  現在の複雑で多様な事件に裁判所が適切に対応してまいるためには、多様な給源から裁判官の人材を得ることが重要でございまして、弁護士として豊富な実務経験を有する優れた法律家が裁判所部内で裁判官として活躍することは有意義なことと考えております。このような観点から、日弁連との協議を経まして判事の採用選考要領を策定し、裁判所といたしましても弁護士任官の推進を図ってきたところでございます。  今後とも優れた弁護士が多数任官できるよう、引き続き改善に向けた検討を進めてまいりたいと考えております。
  182. 田中茂

    ○田中茂君 弁護士からの任官者を見ると五十三人ということになっておるんですが、私の資料では。判事補からの任官者が千二百七十八人に比べれば余りにも少ないんではないかなと思うんですが、こちらにも弁護士の先生お二人いらっしゃるんですが、判事になるのがそんなに魅力がないのかもしれませんけど、是非ともそういう意味では弁護士からの任官者を増やしていただきたい、もう少し増やしていただきたいと、そう思っております。  あと、技能職の人員の大幅削減について質問させていただきます。  今回、技能職について大幅に減員することが法案に含まれております。庁舎管理業務の合理化で七十一名減となっていますが、これについて具体的にその内訳を教えていただけませんでしょうか。
  183. 中村愼

    最高裁判所長官代理者(中村愼君) 定員の削減を行っております技能労務職員には、庁舎の清掃を行っている庁務員、警備を行っている守衛、電話交換を行っている電話交換手といった職種がございます。このような技能労務職員の定員の削減は、定年等の退職に際しまして、裁判事務への支障の有無を考慮しつつ、外注化による合理化等が可能かどうかを判断し、後任等を不補充とした上、問題が発生していない状態が継続していることが確認できた場合に定員の削減を行っているという次第でございます。
  184. 田中茂

    ○田中茂君 昨年度は六十五名減となっておりまして、これまでに百数十名の人員減を図ってきたということですが、今後の人員計画、今からの状況を見て判断されるということですが、これ以上削減してもこれまでの業務対応していけるという状況なのか、その辺ちょっと確認したいんですが、お聞かせください。
  185. 中村愼

    最高裁判所長官代理者(中村愼君) 先ほど答弁させていただきましたが、定員の削減については、退職者数等を踏まえ、外注化等の代替措置の状況も見つつ計画的に実施していく必要があると考えているところでございます。外注化等の代替措置がどこまで進めていけるかどうかというところについて、現時点で確実なことを申し上げることはできないことは御理解いただきたいと思います。  もっとも、政府において行政の効率化というのが推進されておりまして、アウトソーシングが広い範囲で行われているところは承知しているところでございます。裁判所におきましても、このような取組状況、そして裁判事務への影響の有無といったことを考慮しながら計画的に実施していきたいというふうに考えているところでございます。
  186. 田中茂

    ○田中茂君 実際、代替のものを進めていらっしゃる、外部発注というかそういうこともやっていらっしゃるということですが、大体コスト削減効果というのはどのぐらいあるとお考えなんでしょうか。
  187. 中村愼

    最高裁判所長官代理者(中村愼君) 例えば清掃業務につきましては外注、あるいは電話交換の場合にはダイヤルイン化といったことが代替手段として考えられるわけでございますが、先ほども申し上げましたけど、例えば清掃業務を外注する場合におきまして、その際に庁務員が減員になるということがある場合におきましても、その職員が行っていた業務をそのまま外部委託するというものではありませんで、庁全体の業務をどうやって合理化、効率化するかということを考えて、全体として外部委託をしているところでございますので、切り出して人員の削減とコスト減というものの対応関係というのを明確に申し上げることは難しいと思います。  とはいいましても、先ほどの庁舎の清掃業務の委託費というのはここ数年大きく変わっておりません。そういうようなことを考えますと、削減されました技能労務職員の人件費を総じて考えると、トータルとしてコスト削減の効果は出ているというふうに考えているところでございます。
  188. 田中茂

    ○田中茂君 削減するのは、それは合理化のために削減というなら全く賛成なんですが、それによって何らかの弊害が起こったり、また削減効果が余りないというのであれば、一体どういう意味なんだろうというふうになりますので、この辺はしっかりした明確な方針を持ってやっていただきたいと思っております。  そこで、次に、先ほど矢倉先生からもありましたが、成年後見制度の在り方、これは非常に重要なことだと思っております。成年後見事案、急増していると思っております。ここ十年、ある意味では制度は着実に普及して、利用件数も増えていると。先ほどほとんど矢倉先生の方から質問がありましたので、ダブるのは、これは避けたいと思うんですが、一点だけ、その中でも矢倉先生が主張されていた、判事よりも事務方の作業負荷が大きくなっているというのを私も聞いたことがあります。  特に事務作業を行う書記官の定員、これは今回三十四人増員する計画ですが、平成二十六年は四十七人欠員となっておりますが、増員幅は年々減少しています。これに関してはどういうお考えを持っていらっしゃるのか。先ほども先生の質問にありましたが、お答えはありましたが、もう一度この辺に関してはお聞かせいただけませんでしょうか。
  189. 村田斉志

    最高裁判所長官代理者(村田斉志君) お答え申し上げます。  委員の御指摘のとおりでありまして、成年後見関係事件の事件数、これは増加しております。これに対する対応として、裁判所として様々な取組に努めておりまして、書記官の増員のみならず、それ以外の取組も進めておるところでございます。その例を申し上げますと、大規模庁における専門部署の設置によるノウハウの蓄積ですとか、あるいは事件の開始の際を中心に必要となる情報を的確に収集するために、申立てに関する書類について定型書類を整備しているというようなところもございます。  また、先ほど委員の御指摘で職員の負担というお話もございましたが、職員が制度を利用される方に手続を御案内する際に効果的、効率的に説明ができますよう、制度内容や手続等を分かりやすく説明したパンフレットやDVDを作成して説明に利用しているというような取組もしております。  それから、そのほかに、不正防止策としての面が強いわけですけれども、申立てのまずスタートの段階で適切な管理のできる弁護士さん、司法書士さんといった専門職の方を成年後見人に選任をしたり、あるいは預貯金等のうち通常使用しない部分を信託銀行に信託するという後見制度支援信託、こういった仕組みを利用して適切な財産管理がされるように努めているところでございますけれども、これも結果的には後見監督の合理化ということにもつながっているものと承知をしております。  裁判所といたしましては、今後も事件数の見込みや新受件数の動向、事件処理の状況等を注視しつつ、的確な事件処理が図れるよう必要な体制の整備に努めていくとともに、あわせまして、成年後見関係事件の適切かつ合理的な運用のために、今申し上げましたようなその他の取組を続けて更なる運用上の工夫も検討してまいりたいと、こう考えております。
  190. 田中茂

    ○田中茂君 ありがとうございます。  高齢化社会が進んで認知症の予備軍も今後増加の一途をたどっていくと思うので、是非ともそういう意味でも成年後見人の監視体制は強化していただいて、それに伴う事務方の作業負荷がないように、そういう体制で是非とも臨んでいっていただきたいと、そう思っております。  次に、女性活用の取組について質問いたします。  女性を積極的に活用していくためには、まず法曹人材の女性の絶対数を増やしていくと、それが重要ではないかと思うんですが、近年、女性判事は二割近くになった、新規採用の判事、女性判事補は三割近くにも増えていると聞いております。  そこで質問なんですが、最新の状況について教えていただけませんでしょうか。また、裁判官以外の事務官等で過去十年の事務官人員の推移についても教えていただけませんでしょうか。
  191. 堀田眞哉

    最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) お答え申し上げます。  まず、裁判官でございます。直近の平成二十六年度におきます裁判官に占める女性の比率は二〇・〇%でございます。裁判官の給源として大きい司法修習生からの判事補の採用でございますけれども、それに占める女性の割合は近時約三割で推移しているところでございまして、そういったこともありまして、裁判官の女性比率は高まってきているところでございます。  それから、裁判官以外の一般職員に占める女性比率は、二十六年度においては三八・九%でございます。手元にございます数字が過去五年間でございますけれども、この五年間三〇%台後半を推移しておりまして、徐々に増えてきておりまして、直近は三八・九%という状況でございます。
  192. 田中茂

    ○田中茂君 かなり一般職員で増えているというのは、それは大変喜ばしい数字なんですが、例えば、政府が今発表しているようなクオータ制の導入を検討しているのは御存じのとおりだと思っておりますが、女性の活躍を大きな目標の一つに掲げて、各界にも女性幹部職の数値目標の遵守を要求する方向性だと、そのように認識しております。  平成二十二年に政府が策定した第三次男女共同参画基本計画の実施では、裁判官における女性の採用の促進として、女性裁判官採用の二〇二〇年三〇%目標達成に向けて積極的に取り組むように要請をされていると承知しております。  そこで、政府ともちろん最高裁では立場が異なるのは理解しておりますが、目標達成への要請を受けて、現状の女性判事の人数から考えると、二〇二〇年、残りあと五年でありますが、二〇二〇年に全体の三〇%を女性にするという目標についてはどのように考えておられるのか。また、これに関して、能力、資質を基本とする最高裁の体制の中でクオータ制の導入は困難を伴うかもしれませんが、現在、先ほど確認しておっしゃったように、判事補の採用は三割を超えていますが、女性判事の割合は二割であります。仮に判事でクオータ制を導入しようとした場合にはどのような問題点が生じるのか、御意見をお伺いしたいと思います。
  193. 堀田眞哉

    最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) お答え申し上げます。  政府から、第三次男女共同参画基本計画におきまして、裁判官における女性のこれは採用というふうに私どもは理解してございますけれども、について、二〇二〇年には三〇%の目標達成に向けた取組を要請されてきているところでございます。  採用に関しましては、先ほども申し上げましたとおり、既に約三割で推移してきているところでございまして、この目標の達成についてはおおむね果たしているというところでございます。  裁判官全体数につきましては現在二割でございますが、若い裁判官の採用数が約三割で推移していることを考えますと、今後、裁判官全体の女性比率は更に高まっていくものというふうに考えているところでございます。  クオータ制に関してでございますが……
  194. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 時間ですので、答弁は簡潔に願います。
  195. 堀田眞哉

    最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) はい。  裁判官の採用につきましては、それにふさわしい資質、能力を備えた者を採用するということが何より重要というふうに考えてきておりまして、現在の採用の率が約三割になっているということ、他方で修習生の女性割合がそれを下回る二五%前後にとどまるということを考えますと、クオータ制の採用についてはそういった事情を慎重に検討していく必要があろうかというふうに考えております。
  196. 田中茂

    ○田中茂君 ありがとうございます。  最後にワーク・ライフ・バランスについて質問する予定でしたが、一点だけ、この一名という数字、先ほども矢倉先生おっしゃっていましたが、余りにもこれちょっとおかしな数字じゃないかなと思っておるので、このワーク・ライフ・バランスの推進に考えて、余りにも少な過ぎるし、変な誤解を与える可能性もあるので、この辺の説明を一点だけ短くちょっとしておいていただけませんか。
  197. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 簡潔に。
  198. 中村愼

    最高裁判所長官代理者(中村愼君) 最高裁の事務官約八百人のうち、この数年間の産前産後休暇の時間、育児時間等の取得実績を通算いたしますと、それが合計約一人当たりの勤務時間になるということでこの一名の増員をお願いしたというところでございます。
  199. 田中茂

    ○田中茂君 ありがとうございました。     ─────────────
  200. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、有村治子さんが委員辞任され、その補欠として二之湯武史君が選任されました。     ─────────────
  201. 谷亮子

    ○谷亮子君 谷亮子です。よろしくお願いいたします。  午前の一般質疑に続きまして、本日午後からの議題となっております裁判所職員定員法の一部を改正する法律案につきまして質疑をさせていただきたいと思います。  本改正案は、民事訴訟事件及び家庭事件の適正かつ迅速な処理を図るため、判事の員数を三十二人増加し千九百五十三人にするとともに、裁判所書記官等を四十人増員する一方で、裁判所の事務の合理化及び効率化に伴い、技能労働職員等を七十六人減員することを通じ、裁判官以外の裁判所の職員の員数を三十六人減少し二万千九百五十四人にしようというものでございます。今回の法改正により、下級裁判所における事件の適正かつ迅速な処理を図る取組が期待されているところでございます。  そこで、司法の中核を担う裁判所の体制整備について今日は伺いたいと思います。  平成十二年の司法制度改革以降、これまで判事の定員の増員は、これは毎年といいますか、例年行われてきております。振り返りますと、平成十三年六月の司法制度改革審議会意見書におきましては、裁判所の人的体制の現状を見てみますと、例えば、裁判官数が足りないことにより、裁判官の負担過多、大型事件等の長期化などの深刻な事態が生じているなどの指摘があるとこれはされているほか、様々な制度改革等に対応するためには裁判官を大幅に増員することが不可欠であるといった記述が盛り込まれておりました。このように司法制度改革では、司法需要に対応した体制の整備が、これは求められてきたところでございます。  こうした審議会の意見書趣旨にのっとって行われる司法制度改革を総合的かつ集中的に推進するため、その基本的な理念及び方針や国の責務等を定める司法制度改革推進法が平成十三年十一月に制定されましてから十五年近くが経過したところでございますが、司法制度改革における要請に応えるために、裁判所においてはこれまでどのように体制整備を図ってこられたのか。また、裁判官の増員という観点から、司法制度改革以降の体制整備をされてきた現状について、これは最高裁判所にお伺いしたいと思います。
  202. 中村愼

    最高裁判所長官代理者(中村愼君) 委員指摘のとおり、司法制度改革審議会におきまして、訴訟の迅速化、専門化への対応など、裁判に対する要請ということが厳しく指摘されたところでございます。  その中で、裁判所といたしましても人的体制の充実強化、特にその中心となる裁判官の増員を図ることがとりわけ重要であるということで、その後十年間で裁判官約五百人プラスアルファの増員が必要であるという意見も述べさせていただいて、司法制度改革を着実に実行するために平成十四年度から平成二十三年度まで、十年間ですが、計画性を持って合計六百七人の裁判官の増員を認めていただいたところでございます。この十年間の増員に加えまして、平成二十四年度以降も三年間で判事九十四人の増員をお認めいただいたということもございまして、民事、刑事事件共に審理期間が二年を超える事件は減少しているなど、相応な効果が出ているところでございます。  ただ、二年を超える民事第一審訴訟事件は、平成二十六年末の時点で依然八千百件というかなりのボリュームがありますし、人証調べのある対席判決事件の平均審理期間は十九・七か月ということで、なお十分とは言えない状況にあると考えているところでございます。  近時、民事事件の事件動向は落ち着いてきているところではございますが、事件の複雑困難化、専門化が進んできているところであり、そのより納得性の高い丁寧な審理判断を求める声が高まってきている中で、合議率を見ましても司法制度改革当時目標とした一〇%には至っておりませんで、合議体による充実した審理というのも十分に行われているとまでは言えない状況にあるように思います。  裁判所といたしましては、本法案で判事三十二人等の増員をお願いしているところでございますが、改革審議会後に生じている課題にも対応し、適正、迅速な裁判を実現していくために、不断に審理運営上の工夫に努めるとともに、短期的な事件の増減だけではなく、中長期的な事件動向も見て、さらには事件の複雑困難化、専門化の状況を踏まえまして、引き続き人的体制の充実強化を図っていきたいと考えているところでございます。
  203. 谷亮子

    ○谷亮子君 引き続き、人的強化の体制を今後取られていくということでございまして、こうした適正な推進といいますか、そうした人員の増加というのは非常に求められているところもありますし、今後また検討していかなければならないということもあるというふうに思います。  また、司法制度改革審議会意見書の中では、二十一世紀の我が国社会においての司法の役割として、法の支配の理念に基づき、全ての当事者を対等の地位に置き、公平な第三者が適正かつ透明な手続により公正な法的ルール、原理に基づいて判断を示す司法部門が、多数決原理を背景に政策をまとめ、最終的に法律という形で将来に向かって規範を定立し執行するということを通じて秩序形成を図ろうとする国会、そしてまた内閣の政治部門と並んで公共性の空間を支える柱とならなければならないとされていたところもございまして、こうした司法の役割の重要性は現在においてもこれは変わらないものと私も考えます。  また、裁判所の体制整備等につきましても、実際にこうして国会でも法案の審議をしっかりと行っている現在でございますけれども、そこで、司法における中核を担っている裁判所の体制整備を進めていくに当たっての法務大臣の御所見をお聞かせいただきたいと思います。
  204. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 司法の重要性ということにつきましては、これまでも、またこれからも大変大事であるということでございまして、とりわけ法の支配の下で自由かつ公正な社会を実現する、この目的に照らして司法権を担う裁判所が事件を適正、迅速に処理していくということが何よりも必要であるということでございます。  そのための体制ということでありますが、裁判官を含めた裁判所の体制が充実をしていくということが極めて大事であるというふうにも思っているところでございます。裁判所の体制の充実につきましては、まずは裁判所におきまして判断されるべきところでございます。法務省といたしましても、裁判所の御判断を踏まえまして、政府の立場から引き続き適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
  205. 谷亮子

    ○谷亮子君 大臣、ありがとうございます。  やはり法の支配の理念に基づいて自由かつ公正な社会の実現を図っていくためには、裁判所がその機能を十分に果たすということが求められていると思いますし、その体制を充実させていくための取組を今後とも適切に行っていただきたいというふうに思っております。  次に、裁判官以外の裁判所職員の定員について伺いたいと思います。  政府においては、平成二十六年六月二十四日、女性職員の採用、登用の拡大及び職員の仕事と生活の調和を図るための取組を総合的かつ効果的に推進するとともに、関係行政機関相互の緊密な連携を確保するため、女性職員活躍・ワークライフバランス推進協議会を設置し、同年十月、同協議会におきまして国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組の指針を決定されていらっしゃいます。  これを踏まえまして、仕事と育児の両立の支援促進や育児休業からの復帰後の支援の観点から試行的に各府省において定員上の措置を行うこととされまして、裁判所におかれましても、今回、国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進を理由として、先ほどから他の委員の先生からもお話出ておりますが、裁判所事務官を一名増員するということでございますが、今回の法改正においてこうした措置がとられるに至った背景についてお聞かせいただきたいと思います。
  206. 中村愼

    最高裁判所長官代理者(中村愼君) 裁判所といたしましても、委員指摘の、政府において決定されました取組指針の趣旨参考にしながら女性の活躍の場ということを考えてまいりました結果、この取組指針に準じまして最高裁の事務総局で同様の取組を行うということで、今回事務官一名の増員をお願いしたというところでございます。  試行的な取扱いでございますので、まだまだその活用について未知数な部分もございますが、人数も一人ということでありますけれども、貴重な一名の定員を十分に活用いたしまして、子育てをしている女性職員であっても、育児のための制度を積極的に利用しながら仕事でも活躍できる体制整備ということで、その効果が出るように努めてまいりたいと考えております。
  207. 谷亮子

    ○谷亮子君 ありがとうございました。  取組指針の中にもあるとおり、少子高齢化の進行とともに生産年齢人口が減少する中で、我が国の経済社会が持続的に発展していくためにも、我が国最大の潜在力である女性の力を最大限発揮できるように、女性が輝く社会を実現することが大変重要であると私も考えております。  そのためにも、国が率先して今後更に女性職員が活躍できるような環境を整備し、ワーク・ライフ・バランスを推進していく必要があると思われるところでございますので、裁判所におけるこれまでの、あるいは今後の女性職員の採用、そして積極的登用、またワーク・ライフ・バランスの推進のための取組についてお伺いしたいというふうに思います。
  208. 堀田眞哉

    最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) お答え申し上げます。  裁判所におきましては、これまでも女性職員の採用、登用の拡大や職員のワーク・ライフ・バランスの推進に取り組んできたところでございます。これからも女性職員の登用拡大や職員のワーク・ライフ・バランスの推進に向けまして、職場での仕事の進め方の見直しや職員の意識の改革、仕事と家庭生活の両立に向けた支援のための環境整備、女性職員の活躍推進に向けての意識啓発や職務経験の付与など、女性職員の登用拡大やワーク・ライフ・バランスの推進に取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  209. 谷亮子

    ○谷亮子君 ありがとうございました。  裁判所におかれましては、育児休業また配偶者出産休暇、育児参加休暇、子の看護休暇、そして介護休暇等、ワーク・ライフ・バランスを推進するための各種制度が設けられておりまして、裁判所におかれましては男女共に働きやすい環境づくりに取り組んでおられることも承知いたしておりますし、今後とも、その取得や推進、そして女性職員の積極的登用による活躍の場の拡大も含めましてお願いをさせていただきたいというふうに思います。  以上です。ありがとうございました。
  210. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  211. 仁比聡平

    仁比聡平君 私は、日本共産党を代表して、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。  本法案は、判事三十二人、書記官を速記官からの振替五人を含めて三十九人、事務官一人を増員しようとするものですが、一方で、速記官からの振替を含めて書記官四十五人の増員をという最高裁の元々の増員要求から六人減らし、さらに速記官、技能労務職員合わせて七十六人の定員を削減するという極めて不十分なものです。  司法権の独立の下、国民の裁判を受ける権利に存分に応えるためには、裁判官及び裁判所職員の抜本的増員こそ必要です。最高裁は政府の定員合理化計画への協力を言いますが、新たな政府の定員合理化計画とは、今年度から二〇一九年度までに一〇%以上、毎年二%以上の定員削減を求め、その後五年ごとに内閣人事局が各府省の合理化目標数を決定し通知するという、これまでの定員削減を更に深刻化し、国民の権利保障機能の後退を招くそれ自体が不当なものであり、裁判所がこれに協力すべきものではありません。  裁判所職員の定員は現場のニーズに基づき積み重ねていくべきものであり、これを壊す削減ありきの合理化は許されないことを厳しく指摘し、反対討論を終わります。
  212. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  213. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  214. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四分散会