○渡辺喜美君 みんなの党代表、渡辺喜美です。(
拍手)
まず、冒頭、会派問題で、伊吹
議長、逢沢議運委員長初め各会派
関係各位の真摯な御指導、御助言を賜り解決を見ましたことを、心から感謝申し上げます。
冷戦が終結して二十五年近くが
たちました。
フランスの
政治学者レーモン・アロンの定義では、冷戦とは、平和も不可能であるが、戦争も不可能な時代です。ポスト冷戦時代は、平和も可能となりましたが、戦争もまた可能となったということであります。
そうした時代においては、
日本が、平和を守るため、一人前のプレーヤーとして国家戦略を持ち、さまざまな
課題に対処していかなくてはなりません。
算命学の大家、高尾義政氏の言葉をかりれば、人間が生きていくためには、その時代が平和であれ動乱であれ、常に何かに向かって戦い続けることが必要であります。
平和のための戦い、家族を初めとする愛する者のための戦い、時には、黙して語らず、無言の戦いもあります。決して、戦争だけが戦いであり、戦い即破壊なのではありません。本来、生きることそのものが戦いなのであり、ここに登場してくる思想が軍略であります。
難病と闘ってこられた
安倍総理は、この東洋の思想がよくおわかりのことと
思います。
みんなの党は、
結党以来、増税の前にやるべきことがあると申し上げてまいりました。
増税の前にやるべきこと、それは、
デフレとの戦い、不公平との戦い、
国民に
負担を強いる側である
政治家、公務員の定数削減や報酬カットなど、身を切る戦いです。残念ながら、全て道半ばであります。みんなの党は、今
国会でもこれらの議員提案をしてまいります。
総理は、今
国会を好
循環実現国会と位置づけられました。そのためには、アベノミクス一丁目一番地である
デフレとの戦いが不可欠であり、正しい現状認識が求められます。
しかし、
経済演説においては、物価動向は、もはや
デフレ状況ではない、
デフレ脱却に向けて邁進しているという、
デフレなのかそうでないのかよくわからない、まさに霞が関文学らしい曖昧な表現となっております。
確かに、
消費者物価指数(CPI)はプラスに転じました。しかしながら、エネルギーや生鮮食品を除いた、いわゆるコアコアCPIの動きはいまだ弱く、直近の新興市場に端を発した
世界的なマーケットの変調を見ても、高度の警戒が必要であります。
ちなみに、IMFのラガルド専務理事は、一月十五日、
世界経済の
デフレ危機を指摘しています。
四月には
消費税増税が行われることが決定しています。
総理、
我が国経済の現状認識と、改めて、
デフレ脱却に向けた強い御
決意をお聞かせください。
二〇一三年七—九月期のGDPギャップはマイナス一・六%となりました。これは、四—六月期のマイナス一・七%からほぼ横ばいであり、依然として
我が国経済が供給過剰
状態にあることを示しています。このままでは、
デフレから
脱却する前に
消費税増税を迎えることはほぼ確実です。
金融緩和には効果ラグがあることから、私は、昨年秋より、増税に備えた追加
金融緩和が必要であると指摘をしてまいりました。
総理が
消費増税を最終決断する
過程で、それに肯定的な
見解を示した黒田日銀総裁には、増税によるマイナスの
影響を
金融政策でカバーする
責任があります。
総理、遅くとも、やらないよりはましです。日銀に追加
金融緩和を求めるお考えはございませんか。
また、
金融政策を通じて
我が国経済成長を
実現する責務を持つ
日本銀行には、物価安定
目標に加えて、
雇用にも配慮する必要があると考えます。
物価が二%から三%のマイルドインフレになれば、失業率は一%近く下がるはずであります。
雇用がふえれば賃金も上がる。こうした好
循環を
金融政策でつくるには、二年かかります。
日本銀行の目的や
責任を明確化し、こうした
目標を盛り込んだアコードを
政府と日銀が締結するなどの日銀法
改正は、ぜひとも必要です。
総理の御
見解をお伺いいたします。
現在、失業率は四%で横ばいとなっております。また、給与は前年同期比でマイナスが続いております。
総理は
経済団体に
賃上げを要求され、経団連は春闘におけるベアを容認しましたが、こうした民間
企業任せで解決できない問題もあります。
今、労働者の最低賃金について、産業ごとの格差が大きくなっています。求人と最低賃金のミスマッチが発生しており、有効求人倍率が高いにもかかわらず、賃金が上がっていない例があるようであります。都道府県別、産業別にもっと細かく見れば、最低賃金を
引き上げることができる業種も必ずあります。
最低賃金は、国の政策として、労働市場の
改善や
国民全体の
所得向上、
経済への好
影響が期待されるものです。
国として、ミスマッチのある最低賃金の
引き上げに取り組むことも検討に値すると考えますが、御所見はいかがでありましょうか。
アベノミクスとは全く異質のスケジュールでありますが、来年十月には二回目の増税が控えています。
消費税を一〇%にしたら、
軽減税率を
導入すべきという議論もあります。
みんなの党は、これは筋の悪い政策だと考えます。どの物品に
軽減税率が適用され、どれには適用されない、これはまさしく利権の温床となることが目に見えています。
イギリスでは、二〇%の付加価値税に複雑怪奇な
軽減税率を組み合わせたことにより、国税収入に占める割合が、
税率五%の
日本と大差がないという結果に陥っております。
軽減税率は、逆進性の
緩和効果が少ない上に、税務行政上の非効率性をもたらすことが、諸外国の経験から既にわかっているのではないでしょうか。
消費税の逆進性を
緩和するためには、
軽減税率より給付つき税額控除の方が正しい政策と考えます。いかがでしょうか。
たくさん集めてたくさん配るという歳出権の
拡大は、大きな
政府をますます大きくいたします。
増税のダメージ回避のためには、減税をすればよいのです。理想は、
家計にダイレクトに反映される
所得税の恒久減税です。それが難しいのであれば、期限を区切った
所得税特別減税も考えられます。また、収益の高い
企業は、短期間で償却できる自由償却
税制があれば、
設備投資を積極化いたします。利益
調整になるからだめというのは、目先の税収が減るからだめという発想で、中長期的には、税収はニュートラルのはずです。
総理の御
見解はいかがでありましょうか。
みんなの党は、
現行の三八%の法人実効
税率を二〇%に引き下げ、国際競争力の
向上と産業構造
改革の
促進を目指すことを
主張しています。
総理は、ダボス
会議の基調講演で、法人税
改革を国際的にお約束されました。
総理は、異次元の
税制措置という言葉で強い
決意を示されましたが、先日の財政
演説や
経済演説では、法人実効
税率の大胆な引き下げが盛り込まれていませんでした。
総理の国際公約がストレートに
施政方針演説とならないところが、
日本の
政治の弱点であります。財務省や自民党税調と戦わなければなりません。
みんなの党は、こうした構造
改革につながるテーマは真摯に協力をいたします。
総理の考える異次元の
税制措置を御
説明いただき、その覚悟のほどをお聞かせください。
昨年の通常
国会で
成立したマイナンバー
関連法案は、さまざまな
改革の可能性を秘めています。
その
一つが歳入庁です。歳入庁の設置を通じて、税や保険料の取りはぐれを解消していくことが可能となります。
税や保険料の徴収窓口が、一体幾つあるでしょうか。ざっと数えただけでも両手に余ります。これは、
国民のために分かれているのではありません。役所の都合で分かれているだけです。であれば、
国民の利便性
向上のためにも、窓口は一本化すべきであります。
基本的に、こうした
改革はシステム統合の問題に行き着き、
総理の言う、やればできる
改革ではありませんか。税や保険料徴収の不公平是正をするため、各役所の既得権と戦って、歳入庁の設置を考えてはいかがでしょうか。
総理は、ダボスで、向こう二年間、いかなる既得権益といえども、私のドリルから無傷でいられない、国家戦略特区などを突破口に、岩盤規制を集中
改革すると表明されました。大変頼もしい言葉であります。
みんなの党は、電力、
農業、
医療の三分野で、戦う
改革を進めてまいりました。すなわち、電力自由化であり、農協の
経済事業と
金融事業の分離や、
農業への株式会社参入
拡大、混合診療解禁などの
改革です。
総理の既得権益打破に向けた
決意は大歓迎いたします。でも、医薬品のインターネット販売解禁も、厚労省の抵抗で九割を占める処方薬が骨抜きになった現状を見ると、よほどの覚悟と戦略が必要でありましょう。
岩盤規制という言葉が登場したのは第一次安倍内閣のときでありました。そのときの規制
改革担当
大臣は私であります。
総理、岩盤規制とは何でしょう。それを二年で
処理するためにはどうすればよいとお考えでしょうか。
世界の食料・食品産業は、二〇二〇年までに、今の三百四十兆円から六百八十兆円産業になると言われています。和食がユネスコ
文化遺産に登録された今、
日本の農産物や食品産業がグローバル市場に乗り出す絶好のチャンス到来であります。
しかし、
日本には原料問題という岩盤があります。つまり、国内産品も輸入品も、原料のコストが高過ぎるという問題であります。これを一挙に解決していくことが、TPPなどへの参加と、直接支払いへの転換を含めた農政の大
改革です。米価を高く維持して手数料を稼ぐ農協のビジネスモデルも変えていかなければなりません。
TPPなどへの参加と農政・農協
改革は、ワンセットでやる必要があります。
総理の御所見をお伺いいたします。
公務員
制度改革に関しては、自公民で三党修正合意していますが、これは、官僚機構と労働組合の意向を酌んだ
法案であります。麻生内閣当時のいわゆる甘利
法案からも大幅に後退をしています。
現在の
法案では、例えば官邸の意向を酌んだ局長をつくったとしても、その
もとの部隊編成が思うに任せないという難点があります。また、一度選んでしまったら最後、局長には身分保障がついて降格されません。天下りも、この
法案ではなくならないでしょう。
かつて、野党時代の自民党は、みんなの党とともに公務員
制度改革法案を提出しました。人事院や財務省、総務省の人事部門を一元的に統合した内閣人事局や、幹部公務員の身分保障をなくして、抜てきや降格、解任ありの実力主義にするといった強力な
法案を
実現させ、公務員
制度改革を進めなくてはなりません。
岩盤規制は公務員
制度と裏腹の
関係にあり、国家経営のイノベーションを行っていくためには、公務員
制度改革が不可欠であります。
昨年修正合意された
法案は、あるべき公務員
制度の最終的な姿であるとお考えでしょうか。
総理の公務員
制度改革に向けた御
決意をお聞かせください。
東京都知事選で大きな争点となっているのが原発問題です。
みんなの党は、市場メカニズムを通じて原発ゼロを
実現していく
経済的アプローチをとってきました。これは、時間をかけて原発をゼロにしていく考えです。
これに対して、倫理的アプローチをとる論者は、原発即ゼロとなります。
電力が自由化されれば、必ず、コスト高の原発は市場から淘汰され、電気料金の値下げにつながっていきます。
原発事故は、超優良
企業であった東京電力ですら実質破綻に追い込みました。すなわち、原発は、民間
企業で扱うにはリスクが大き過ぎる代物であり、原発への公的関与は公共
経済学の初歩であります。
稼働できない原発は、電力会社にとっては大きな不良資産です。かつて、民間
金融機関の手に負えない不良債権を整理回収機構などに集めたように、不稼働原発を、原発整理機構をつくって集約してはいかがでしょうか。お値段は、今後の相談です。
みんなの党は、まず、東電の不稼働原発から国の一括管理としていくことを検討しております。
国鉄民営化の際の清算事業団と同様、新旧分離を行うことで、電力会社のバランスシートも
改善されてまいります。国が原発を管理すれば、民意を踏まえて原発の将来を決めることも容易になります。
総理の御
見解をお伺いいたします。
日本を守るという
観点からは、集団的自衛権の議論も避けて通れません。
世界標準のルールでは、個別的自衛権とともに、集団的自衛権が認められるのは当たり前の話です。国連憲章五十一条にも定められた、国家が
国民の生命や財産、領土などを守るために、当然に有している権利です。
日本では、集団的自衛権については、戦後、個別的自衛権と集団的自衛権を殊さらに区分して議論を行う神学論争が繰り広げられてまいりました。
現在の東アジア情勢には、緊張感を持って臨まなくてはいけません。戦争を抑止し、平和を
構築していくためには、すきを見せない一人前のプレーヤーとして、軍略を磨いていかなければなりません。
みんなの党も、現在、党内議論を進めておりますが、改めて、
総理の集団的自衛権行使容認に向けた
決意をお伺いいたします。
みんなの党は、当たり前の自由
社会と、一人前の国家の
構築を目指します。
日本のゆがみは、本来民間や
地域に任せるべき業務を中央
政府がやり過ぎていることであります。これは、一九四〇年前後の戦時
体制の
もとで完成した官僚統制、中央集権
体制が、占領時代をかいくぐって戦後レジームに引き継がれたものであり、その劣化が
我が国衰退の根本原因となっております。
みんなの党は、自由民主主義の原点に立ち戻り、こうした
歴史のゆがみを正してまいります。各省割拠主義を排し、真の
政治主導、すなわち、
総理官邸主導
体制を確立して、輝ける成長国家
日本をつくることを目指します。
政党の使命は、政策の
実現にあります。政界再編はそのための手段です。
安倍総理がみんなの党を、政策の
実現を目指す
責任野党と正しく御
理解いただいていることを心から歓迎いたします。
安倍総理の戦う覚悟と戦略が我々と共通のものであれば、みんなの党は、真摯かつ柔軟な協力を惜しみません。
みんなの党は、
改革を
促進する政策を提言し続けてまいります。
御清聴ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣安倍晋三君
登壇〕