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1955-06-25 第22回国会 衆議院 外務委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月二十五日(土曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 菊池 義郎君 理事 須磨彌吉郎君    理事 北澤 直吉君 理事 福永 一臣君    理事 穗積 七郎君 理事 戸叶 里子君       高岡 大輔君    夏堀源三郎君       並木 芳雄君    山本 利壽君       福田 篤泰君    稻村 隆一君       高津 正道君    細迫 兼光君       松岡 駒吉君    岡田 春夫君  出席政府委員         防衛政務次官  田中 久雄君         防衛庁次長   増原 恵吉君         防衛庁参事官         (防衛局長)  林  一夫君         外務政務次官  園田  直君         外務省参事官  矢口 麓藏君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君  委員外出席者         運輸事務官         (大臣官房観光         部業務課長)  福永 正美君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 六月二十二日  委員小島徹三君及び松岡松平辞任につき、そ  の補欠として芦田均君及び松本俊一君が議長の  指名委員に選任された。 同月二十三日  委員久保田豊辞任につき、その補欠として川  上貫一君が議長指名委員に選任された。 同月二十四日  委員川上貫一辞任につき、その補欠として岡  田春夫君が議長指名委員に選任された。 同月二十五日  委員松本俊一辞任につき、その補欠として夏  堀源三郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 六月二十二日  日本海外移住振興株式会社法案内閣提出第一  三六号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法の一  部を改正する法律案内閣提出第一二一号)  日本海外移住振興株式会社法案内閣提出第一  三六号)  航空業務に関する日本国とカナダとの間の協定  の締結について承認を求めるの件(条約第七  号)  船舶の滅失又は沈没の場合における失業の補償  に関する条約(第八号)の批准について承認を  求めるの件(条約第八号)  海員の雇入契約に関する条約(第二十二号)の  批准について承認を求めるの件(条約第九号)  海上で使用することができる児童の最低年齢を  定める条約(千九百三十六年の改正条約)(第  五十八号)の批准について承認を求めるの件(  条約第一〇号)  船員の健康検査に関する条約(第七十三号)の  批准について承認を求めるの件(条約第一一  号)  商品見本及び広告資料輸入を容易にするため  の国際条約への加入について承認を求めるの件  (条約第一二号)  観光旅行のための通関上の便宜供与に関する条  約の批准についての承認を求めるの件(条約第  一三号)  観光旅行のための通関上の便宜供与に関する条  約に追加された観光旅行宣伝用資料輸入に  関する議定書批准について承認を求めるの件  (条約第一四号)  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 植原悦二郎

    植原委員長 これより会議を開きます。  日本海外移住振興株式会社法案議題とし、政府側より提案理由説明を求めます。園田政務次官
  3. 園田直

    園田政府委員 日本海外移住振興株式会社法案提案理由及び内容説明いたします。  まず提案理由説明いたします。  戦後中南米諸国に対する移住者送出は、昭和二十七年度末より開始され、政府送出しましたいわゆる計画移民の数は、昭和二十七年度五十四名、二十八年度一千四百九十八名、二十九年度三千七百四十一名と、年とともに増加しており、昭和三十年度は約五千五百名を送り出す予定であります。このように海外移住事業が進展して参りました直接の原因は、戦後中南米諸国の対日感情が好転し、単にブラジルのみならず、アルゼンチン、パラグアイ、ボリビア等もわが移民を歓迎するに至ったためでありますが、政府昭和二十七年移住者送出開始とともに渡航費貸付を行なったことも、あずかって力があったことと考えます。  しかしながら、わが移住者受け入れに対する国際情勢の好転に即応して大量移民送出を可能ならしめるためには、戦後の中南米諸国工業化の傾向に呼応し、最近独伊等中南米移民政策重点資本と技術を持つ企業移民育成強化に向けている趨勢にもかんがみ、移住者の行う事業及び移住者を受け入れる事業助成拡大にまで乗り出すことが必要となってきたのであります。  政府は、かねてより米国の民間銀行との間に、移民借款交渉を進めて参ったのでありますが、話し合いは有利に展開し、三行は借款を供与する意向を表明して参りました。よって予算の許す範囲内でなし得る財政出資を基とし、これに民間資本を加え、海外移住振興業務を行う機関を設立し、これに目下交渉中の移民借款を受け入れ、もって移住促進のため移住者現地渡航後の事業資金に事欠かぬよう、移住者及びその団体の行う事業資金を貸し付けるほか、必要あるときは、移住者を受け入れる現地事業に投融資し、さらにまた場合によっては、移民を受け入れる現地事業を経営できるようにして、移住者受け入れ現地側の基盤を積極的に拡大し、培養する必要があります。  かかる見地から、移住振興業務を行う機関の形態としては、各界各方面の御意見を十分に承わった上、移住振興国家的事業への奉仕を確保するため、政府監督のもとに資金を効率的に使用できる組織とすることを適当と認め、これがため、この組織特別法に基く株式会社とする方針のもとに、ここに会社設立根拠法として日本海外移住振興株式会社法案を作成した次第であります。  以上が、本法律案提案理由であります。  次に、本法律案内容説明いたします  まず第一に、日本海外移住振興株式会社を設立する目的とその業務範囲であります。  先ほど提案理由説明で申し上げました通り、この会社は、海外移住振興のため次の業務を行う株式会社でありますが、その業務とは、渡航費貸付移住者及びその団体現地で行う事業資金を貸し付けること、必要のあるときは、移住者を受け入れる現地事業に投融資し、または会社みずからもかかる事業を経営すること、なお、渡航費貸付事務外務大臣の指定する団体に委託できること等になっております。  第二に、資本関係規定であります。  政府出資額予算範囲内となっており、三十年度においては政府は一億円出資することを規定しています。  第三に、役員に関しては、取締役四名以内、監査役二名以内とする規定になっております。  第四に、社債発行額の限度は、資本及び準備金総額または純財産額いずれか少い額の五倍以内と規定しています。  第五に、政府会社外債償還を確保するため、会社振り出し外貨手形をその満期前一日までに、政府相手方外国銀行から買い取る旨の契約をなすことができ、また、会社利息債務政府が保証する規定となっています。  第六、監督関係規定を申し上げますと、外務大臣会社監督することとなっておりますが、社債募集、定款の作成変更、毎営業年度事業計画、一年以上の資金借り入れ重要財産処分等については、外務大臣大蔵大臣と協議して認可をすることになっております。  最後に、本会社は、一般的に本法律案規定する場合のほかは、もとより株式会社として商法その他の民事法の適用を受けるわけでありますが、会社業務公共性にかんがみ、会社に対する政府監督業務にまで及び、また役員その他の職員の不正行為に対しては重く罰する規定となっております。  以上をもちまして、本法律案提案理由及び内容の概要の説明を終ります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御採択あらんことを御願いいたします。
  4. 植原悦二郎

    植原委員長 これにて提案理由説明は終りました。本案に対する質疑次会に譲ります。     —————————————
  5. 植原悦二郎

    植原委員長 次に、本日の日程中、条約第七号より条約第十四号までの八件を一括して議題といたします。  ただいまの各件につきましては、前会において一応の質疑を終了しておるのでありますが、山本利壽君より質疑の通告がありますので、この際これを許します。山本利壽君。
  6. 山本利壽

    山本(利)委員 観光客誘致して外貨をかせぐということは、わが国現状からして特に大切なことであり、天然及び人工の美に恵まれているわが国としては、この事業発展に十分の努力を払うべきであると思うのでございます。今回提出された観光旅行のための通関上の便宜供与に関する条約批准について承認を求めるの件、及び観光旅行のための通関上の便宜供与に関する条約に追加された観光旅行宣伝用資料輸入に関する議定書批准について承認を求めるの件という二法案の可決が、わが国観光事業発展に貢献することが大であり、また、観光旅行宣伝用資料海外に向けて容易に輸出することができ、またわが国への観光客誘致運動を従来より一層活発に実施し得る利益があるということでありますから、これはまことにけっこうなことであると思うのでありますが、この際、わが国国際観光事業に対する各方面現状を承わりたいと思うのでございます。  まず第一に、最近数年間海外よりわが国に参りました観光客の数及びそれらの人々わが国で消費した費用について承わりたいと思います。
  7. 下田武三

    下田政府委員 最近におきますわが国への外国旅行者の数を申し上げますと、昭和二十七年に七万二千百三十八人、翌昭和二十八年に七万五千四百三十五人、昭和二十九年におきまして八万六百十一人と、年々逐次累増いたしております。  これらの旅行者わが国内で消費いたします金額につきましては、もとよりこれを詳細に調べる手段はないのでございますが、大体のところを推定いたしてみますと、昭和二十七年におきまして二千八百万ドル、昭和二十八年におきまして三千三百万ドル、昭和二十九年におきまして三千六百万ドルという推定をいたしております。
  8. 山本利壽

    山本(利)委員 ただいまあげられた数字は、観光のために日本に来た人々のみでございますか、あるいは商用とかあるいは一時途中で上陸した客数等も含んだものでございますか。
  9. 下田武三

    下田政府委員 旅券で入国許可申請の際に、あるいは一時上陸者とし、あるいは滞在者として申請して参りますが、その申請名目だけでは必ずしも実はわからないのでございまして、親類がおるから相当長期日本におるというても実は目的滞在でありますし、アメリカからたとえばタイその他の東南アジア諸国に行くという場合に日本に立ち寄るという者も、これは観光客もおりますけれども、またそうでない者もおるわけでございまして、先ほど申し上げましたものの内訳を大つかみにいたしますと、入国申請の際の名目に分けますと、一時上陸の者と滞在の者とは半々という比率になっております。半々でございますが、その半分だけが観光客だとは実は限らないわけであります。
  10. 山本利壽

    山本(利)委員 一時上陸というのは期間はおよそ何日間くらい滞在するのが一時上陸ですか。
  11. 下田武三

    下田政府委員 七十二時間ということになっております。
  12. 山本利壽

    山本(利)委員 そういたしますと、先ほどわが国で消費したと思われる金額についての御報告をいただきましたが、これは一時上陸客も含めてのことでございますか。
  13. 下田武三

    下田政府委員 その通りでございます。
  14. 山本利壽

    山本(利)委員 かりに純粋の観光客でないにしても、つまり商用で来ようと一時上陸であろうと、日本に立ち寄った者は各地観光地を見ることでございましょうし、いろいろな日本の品物を買うことでございましょうから、この際はこれは一括してお聞きしてけっこうでございますが、三千八百万ドルからの金額に達しておるということは、日本金額に直すと約百四十億円近いかと思うのであります。これだけの金を日本観光事業から獲得することができるということは、貿易から収入を得るのと比べて、消費しない商品によって得る外貨でありますから、この点については今後非常な努力をする必要があると思うのでございますが、この観光方面をお扱いになっておる政府当局の方では、今後どの程度まで日本に来るところの観光客をふやす見込みがあるか、そういうことについての計画はあるかどうかということを承わりたいと思うのであります。
  15. 福永正美

    福永説明員 私運輸省観光部の者でございますが、将来の外客誘致について、ただいま運輸省の方で検討しております数字について御説明を申し上げますと、先日の最高輸出会議下部機構でありますところの貿易外輸出会議におきまして、昭和三十五年を目的といたします五ヵ年計画を策定いたしたわけでありますが、この数字によりますと、昭和三十年度におきましての外客数字は、一時上陸を含めまして十九万五千人、約二十万人であります。従ってその方々の消費される外貨獲得目標額は約九千二百万ドルであります。現在の昭和二十九年の数字に比べて約二倍半くらいの数字になっておるのでございます。
  16. 山本利壽

    山本(利)委員 先ほどのお話で、約百四十億円という金額をこの観光客から得ることができるとすると、それを貿易品日本から輸出する品目と比較した場合に大体どういう順位になりますか。
  17. 福永正美

    福永説明員 正確に覚えておりませんが、商品貿易のおもなものに比べましても、これは順位におきましては十番以内に当然入ると思うのであります。
  18. 山本利壽

    山本(利)委員 イタリアであるとかスイスであるとかいうような国は、われわれがよく観光国として聞き及んでおるのでありますが、それらの国が外国からのお客を引き入れておる数字と、日本観光事業成果といいますか、それらを比較することのできる何か資料をお持ちであれば承わりたいと思います。
  19. 福永正美

    福永説明員 御質問ございましたイタリア外客数は大体年間におきまして七百万人から八百万人でございます。スイスは三百万から三百五十万人でございまして、現在日本に参ります外客数は先ほど申し上げました九万人足らずでございますので、非常に大きな差があるようでございます。
  20. 山本利壽

    山本(利)委員 今のお話を承わって、今後日本も十分この観光事業というものには力を入れていかなければならず、その余地があるように考えるのであります。現在日本観光事業を取り扱っているところの機関はどういうところでありますか。いろいろ各省にわたっていると思うのでありますけれども、それぞれ分担がございましょうし、とかくあらゆる問題で日本官庁というものはなわ張り争いをするものであって、非常にその成果を傷つけているのでありますが、この観光事業におきましても、そのなわ張り争い等によって阻害されている向きはないかどうか、その点について承わりたいと思います。
  21. 福永正美

    福永説明員 観光事業につきましては非常にその所管が広うございまして、観光と申しますと、見る人と、見る人が見るものと、見る所に行きますところの交通関係施設と、そこで宿泊する施設と、いろいろな段階に分れると思います。現在観光客が見るべきものにつきましては、そのうちの天然資源につきましては大体厚生省の国立公園部で、主として国立公園育成ということを中心にして仕事をやっているように思っております。文化財につきましては文部省の文化財保護委員会が大体所管に当っておりますが、そういうものは必ずしも観光だけの面で関係しているわけでございませんので、それ以外に国民の厚生なりあるいは学術上の問題もございまして、仕事そのもの観光だけの目的であるということは申し上げることができないわけでございます。そういう意味におきまして観光プロパー仕事につきましては、現在運輸省大臣官房の中の観光部がこれを所管しております。この所管内容は大体交通関係施設宿泊関係施設、それから外客説明します旅行業者通訳案内業者の取締り、その育成、それらの仕事をやっております。それ以外に交通施設につきましては道路関係におきまして、一部運輸省所管しておりますが、それ以外の大部分につきましては建設省の所管であります。しかし道路におきましてもこれが全部観光関係があるということを申し上げることはできないかと思いますから、そういう意味で他の省が所管するところは、観光関係ある行政というふうに私どもは解釈しております。そういうように各省で分担しておりますので、それを総合するために内閣総理府観光関係担当者がございまして、各省のいろいろな施策につきましてそれの総合調整という仕事をやっているのでございます。
  22. 山本利壽

    山本(利)委員 そういたしますと、ただいま総理府の方で統轄しているということでございますが、観光事業審議会というものがあると思うのでありますが、その管轄はどこか、その審議会の構成と機能について承わりたいと思います。
  23. 福永正美

    福永説明員 内閣観光事業審議会といいますのは、総理大臣に対しまして、観光事業に対する諮問に応じ、あるいは意見を述べるところでございまして、いわゆる執行機関ではございませんので、そのメンバー官庁の方がもちろん入っておりますが、それ以外に一般の民間学識経験のある方が大体メンバーになっておりまして、そこで審議会を開いて、日本観光事業に対するいろいろの施策につきまして、内閣の方に建議をすることになっております。内閣の方ではその意見に従いまして、それを実行に移すというような段取りになっております。その事務局総理府で引き受けてやっております。
  24. 山本利壽

    山本(利)委員 そういたしますと、その観光事業審議会は、かりに事務局総理府にありましても、外客誘致事業を扱っておられる運輸省のことでありますから、審議会運営についても御存じだと思いますが、これは一体どういう間隔を置いて開かれておるのか、最近においてはどういう議題について審議されたか。つまりこういうことをお聞きするのは、一体この審議会は、日本観光事業を発達させるためにほんとうに活躍しておるのかどうか、ただ名目上の飾りものだけに終っておるかどうか、この点について承わりたいと思うのであります。
  25. 福永正美

    福永説明員 内閣観光事業審議会は、定例的に開かれるものではございませんけれども、その下にそれの連絡をやっておりますところの各省関係課担当官が、月に何回か集まって相談をしております。最近の内閣観光事業審議会答申で一番大きなものは、日本国際観光事業を促進するために、政府は総合的な観光事業実行の五ヵ年計画を早急に作成せよということで、現在内閣観光事業審議会事務局中心として、その草案を作成いたしておるわけであります。それ以外のことでは、審議会は特に国際観光重点を置いておるわけでありますが、いろいろの答申をしておる中でも、たとえば日本国内道路整備につきましては、ガソリン消費税目的税的にといいますか、それに見合う金額道路整備に使うということの答申をいたしました。その結果、ガソリン消費税に見合うところの金額を特に道路整備のために使うことができるという特別の法案ができまして、現在それに基く五ヵ年計画によって道路整備を行なっております。それ以外にも日本国内海上観光を促進せよという答申がございましたが、それに基きまして、たとえば瀬戸内海におきましては、新たに外客向きの航路を設定したりするようなこともございます。事実その答申は相当重要なものを含んでおりまして、それに従いまして政府もできるだけのことをやって参ったわけであります。
  26. 山本利壽

    山本(利)委員 その五ヵ年計画というものを承わりたいのでありますが、本日は時間もございませんし、資料を持ってないと困りますので、これに関する五ヵ年計画案というものを書類として御配付いただきたいと考えます。それはもちろん審議権審議会にあるのでありますけれども、われわれの方でも参考として承わりたいと考えます。  この観光事業については、民間でもたくさんな団体があると思うのでございますが、観光事業振興のための民間団体指導監督ということはどこでおやりになっておるか、そしてその民間団体も相当な活動をしておるのかどうか。私の憂えるところでは、ただ誇大なる宣伝をしたり、あれこれして、観光客から不当な手数料その他を取るというようなことがありましては、わが国観光事業振興を妨げるから、こういうことをお尋ねするのでありますが、その民間観光事業に対する団体の模様について承わりたい。
  27. 福永正美

    福永説明員 ただいまの御質問でございますが、内閣観光事業審議会政府に対して五ヵ年計画を作れということでございまして、それについて目下関係当局と折衝中でございます。その目標額は先ほど申し上げました数字で、それに対する具体的な政策については現在各省で立案中でございます。ある程度成案がまとまりましたならば、御連絡申し上げたいと思います。  もう一つは、民間団体でございますけれども、私ども運輸省関係でございますと、海外に対するところの日本観光宣伝中心にいたします団体といたしまして、現在国際観光協会というものがございます。これがニューヨークとサンフランシスコに宣伝事務所を二ヵ所持っておりまして、年間政府補助金を合せて約一億円前後で、海外に対する日本経常的宣伝、それから外国の種々な貿易運輸その他の催しものの参加に要する宣伝、そういう関係仕事をやっております。国内受け入れ態勢整備についても、それと同様にその団体がこれを担当しております。それから日本国内観光事業の総合的な連絡調整機関といたしましては、全日本観光連盟というものが、各地のかつての観光協会を統合した総合的な団体といたしまして、主として国内観光事業振興のために施策をやっております。両方とも運輸省が認可している公益法人でありますが、監督運輸省でやっております。
  28. 山本利壽

    山本(利)委員 観光事業があまり進まない一つ理由は、やはり資金難だと思うのであります。いろいろ設備を整えるにしても、その資金の面から、観光事業のために外資導入ということは考えられることであるかどうか。もしこの方面外資を導入したら、国策上これは得策になるのではないかという点、及び昭和三十年度において、観光事業のために運輸省ではどのくらいの予算を要求されて、それが今審議にかかっている予算の上ではどの程度計上されておるかといったようなことも承わりたい。
  29. 福永正美

    福永説明員 観光事業に対しまして外資を導入するという問題でございますが、たとえば先ほど申し上げました国際観光協会宣伝事業につきましては、これは使う目的が、たとえば印刷物を作りましたり、宣伝映画を作りましたり、あるいは海外事務所運営ということが主でございますので、これに対しまして外国から融資を仰ぐという問題ではないと思います。外資導入の問題につきましては、国内のいろいろな観光関係施設固定資産に対する融資でございますが、その点国内観光施設といたしましては、交通機関もございますし、宿泊施設、その他があるわけでございます。現在われわれといたしましては、交通関係施設について外資を導入するということは考えておらないわけでございますが、ホテルその他の宿泊施設に対して外資導入ということがございますならば、これはできるだけ促進したいと思っております。  それから運輸省の三十年度の予算につきましての御質問にお答え申し上げますと、われわれ運輸省といたしましては、昭和三十年度の海外に対する観光宣伝国内外客受け入れ態勢整備ということで、国際観光協会への補助金といたしまして約二億五千万円の要求をいたしたわけでございますが、現在ではその数字が約五千二百万円程度になっております。
  30. 山本利壽

    山本(利)委員 時間の関係がございますので、簡単にいたしたいと思うのでありますが、観光事業を盛んにしなければならぬということは、わが国現状から当然なことであり、しかもそれをするのには金が要るという問題と、もう一つ、私が考えるのは、国民全体に日本のために観光事業を盛んにしなければならぬという啓蒙が必要だと思うのであります。その点についてわが国民はあまりに関心が薄いように思う。たとえば外人に対するところの態度、あるいは観光資源の愛護とか、そういう点については外客誘致される当局においては、文部省その他の機関連絡をとられて、これを十分にするということが、私は日本観光国にする一つの大きな目標であると考えるのであります。  さらに、今回提出されております二法案の要点について一、二お尋ねしたいのでありますけれども、これは配付願った条約文をいろいろ調べてみるとわかることでもございますし、他の法案審議関係もございますから、委員長の顔を立てまして、私の質問はこれくらいにしておきたいと思います。
  31. 植原悦二郎

    植原委員長 他に御質疑はありませんか。——御質疑がなければ、これにてただいまの八件の条約に関する質疑は終了することといたします。  ただいまの各件につきましては、別に討論もないようでありますので、直ちに採決いたします。条約第七号より条約第十四号までの八件を、いずれも承認すべきものと議決するに御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  32. 植原悦二郎

    植原委員長 御異議なければ、さように決定いたします。     —————————————  なおただいまの八件に関する報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
  33. 植原悦二郎

    植原委員長 御異議がなければ、さように決定いたします。
  34. 植原悦二郎

    植原委員長 次に、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法の一部を改正する法律案議題といたします。質疑を許します。戸叶里子君。
  35. 戸叶里子

    戸叶委員 秘密保護法質問をする前に、外務政務次官がいらっしゃるから、ちょっと伺いたいのですけれども、六月二十三日の朝日の夕刊で見たのですけれども、高層気象観測に痛手という見出しで、台風シーズンを控えていながら、アメリカが三ヵ所の高層気象台を突如として日本側に移譲するというのですか、アメリカ側がすることを廃止するというのですか、どういうことか知りませんが、出ておったと思うのですが、この点の真相を伺いたいと思います。
  36. 園田直

    園田政府委員 まだ聞いておりません。
  37. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは朝日新聞の夕刊をごらんにならなかったのですか。
  38. 園田直

    園田政府委員 ちょっと気づいておりませんが、あとで調査をして御報告申し上げます。
  39. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは条約局長がいらっしゃるのですけれども、十三ヵ所ですか、気象観測地があって、そのうちの三カ所を米軍があまり大して日本連絡なしにここをやめるというような記事が出ていたのですけれども、この点御存じないですか。こういうものは、どういうふうな協定なり、話し合いのもとにこの観測所を設けて、どういうふうな協定なり話し合いで、これを取り除くことができるか、この点についても伺いたい。
  40. 下田武三

    下田政府委員 気象観測等は、やはり合同委員会の下部の専門の分科会でやっておると思います。これはもちろん、いろいろな米軍が使っておる国内施設なりファシリティをできるだけ日本側に移してもらいたいということを、各方面の分野において申しておるのでありまして、その部面において日本側の要請が実現されたということの現われだろうと存じております。
  41. 戸叶里子

    戸叶委員 日本側に移譲されたという面から見ると、大へんいいことなんですけれども、台風シーズンを控えて急にそれをやめてしまうということができるものかどうか。初めに約束をしてアメリカ側にファシリティを提供しておいたのに、アメリカの一方的な都合で急にそういう重大なものを取り除くことができるかどうか、この点を承わりたい。
  42. 下田武三

    下田政府委員 日本側の都合を無視して突然やめるというようなことは、私はあり得ないと思います。これはかねがね日本側から申していることを向うが承諾したことだろうと思います。アメリカ側自身もまだ日本で飛行機その他たくさん飛ばしているのでありますから、日本に移して不安であるようなら、アメリカ側が第一放すはずがないわけでございますから、私は突然そういうことをやるということはちょっと考えられないと思います。
  43. 戸叶里子

    戸叶委員 そういたしますと、朝日新聞の記事に出ているのは、あまりよく話し合いがついていなかったようにしるされているのですけれども、前から話し合っていたというふうに了解するわけでしょうか、この点を伺いたい。もう一つ今度打ち切りになった場所は、三沢と小牧と板付というふうに、三ヵ所になって出ておりますけれども、これは何か航空滑走路との関係がないか。この点は防衛庁の方に伺いたいと思います。
  44. 増原恵吉

    ○増原政府委員 いわゆる滑走路の延長問題としてやっておりますのは、調達庁の所管でやっておりまして、防衛庁の所管ではございません。また今御指摘になりました記事は私も読みましたが、その真相はよく承知をしておりません。しかし私の想像するところで、この滑走路の延長の問題とこれが関係があるようには想像はできないところでございます。
  45. 戸叶里子

    戸叶委員 私、新聞の記事を読んだところが、三沢と板付が今度打ち切りになっているというのと、それからほかの資料で読みましたときに、何か滑走路を改良するのがちょうど小牧と板付だというふうに、外務省かどこかから出している情報機関雑誌で読んだわけです。ですから、何かそこに関係があるのではないかと考えたわけですが、この点もしおわかりにならなかったならば、この次までに調べておいていただきたいと思います。
  46. 増原恵吉

    ○増原政府委員 よく調べてお答えいたしますが、板付は今度の滑走路延長の中に入っておりません。
  47. 戸叶里子

    戸叶委員 秘密保護法質問は、あとで長官がお見えになってから伺うことにいたしますから……。
  48. 植原悦二郎

    植原委員長 穗積七郎君。
  49. 穗積七郎

    穗積委員 園田さんにちょっとお尋ねしますが、今度あなたは政府の次官におなりになりましたが、同時に長年野にあられて、アメリカ軍の撤退の問題については強く主張してこられたわけですが、日本の増兵計画とアメリカ軍撤退との関連または方針について、次官になられてからのいろいろな実情や御方針を、この際率直に伺っておきたいと思います。
  50. 園田直

    園田政府委員 占領軍の撤退は、日本自体の防衛を漸次充実をしながら、それにつれて漸次米軍と日本の防衛隊と交代するというような形式をもって、防衛の漸増とともに米占領軍の撤退をわれわれは希望しておるわけでございまして、そういう点について逐次そういう方向に具体的に前進していっておると考えております。
  51. 穗積七郎

    穗積委員 私どもは外交問題についてあえてひが目をもってあなた方の所論を批判するわけではございませんが、あなた方が国民に対して、再軍備の必要を納得させるための理由のうちの大きな理由が、この米軍撤退問題であるとわれわれは見受けております。これは主義、主張、党派を超越いたしまして、アメリカ軍なんかいつまでも日本におられては国の名誉にも関するし、完全な独立も達しないし、そして七日余カ所の基地において、ことごとに生活問題とからみ、文教問題とからんで、至る所で問題を起しており、だれ一人としてこれを歓迎しておるものはない。あなた方や自由党に投票する島原の島民といえども、この軍事基地問題に対しては、みな反対をしておられる。そういう感情がありますから、再軍備を納得せしめるための一つ理由としての米軍撤退ということは、これはある意味で国民の要望に訴えるところがあると思うのです。しかしあなたは外務次官におなりになってみて——野にあるときはもとよりそういうふうにお考えになったでしょう、それはあなたのお人柄やお考えから見て、偽わりだとは申しません。ところが外務次官におなりになり、しかも政務次官でありますが、その衝にお当りになって、アメリカ軍またはアメリカの外交当局と接しられて、果してその可能性があるという認識をいまだにお持ちでございましょうか、正直なところを一つ言ってもらいたい。
  52. 園田直

    園田政府委員 その可能性は十分あると考えております。
  53. 穗積七郎

    穗積委員 私はそれは何というか、今までの立場上言わざるを得ないということでおっしゃっておるのだろうと思うのです。私ども推測するのに、たとえば今問題になっております沖繩基地にいたしましても、そのほか国内におきましては主要な空軍基地は、ことごとく最近また問題を起しておるわけですが、なるほどアメリカは朝鮮戦争を契機といたしまして——その前におきましても御承知の通りアメリカの軍の方針というものは、空軍に主力を置き、海軍並びに空軍を従属国に対するアメリカ軍の主力として考えて、陸上軍はその肩がわりをさせたいという考えを持っているということは明瞭だと思います。私どもの見るところでは、すでに朝鮮戦争の起きる前におきましても、アメリカ軍部の中において、陸軍と特に空軍との間における意見の対立、一体いずれを戦闘力の主力とするかということについては、空軍がずっと優勢を占めてきておるわけです。あなたも軍隊へ行っておられた。私は陸軍の幹部候補生で行っておりましたが、日本はかつては主力は陸軍であり、空軍、海軍は補助戦闘力として考えられておったわけです。アメリカにおいては、特に前の戦争の経験と国内における世論等々から見ることと、もう一つ大きくは、戦争によりまして従属国化した諸国との作戦計画から見て、空軍を主力にしたい、海軍も主力にしたい、陸軍はこれは不得意でもあるし、従属的に考えていきたいという考え方がずっとあるわけです。ところが朝鮮戦争によって苦い経験をして、ますますその考えを強くして、そうして一番消耗が多くて、一番費用がかかって、そうしてアメリカ国内の国民に一番人気の悪い陸軍は、現地調弁をやっていきたいという考え方に変っておることは、これはあなたもお認めにならざるを得ないと思う。私どもはそういうふうに見ておるのです。そういたしますと、陸軍はなるほど北海道初め撤退を始めております。これは日本の再軍備ができたからやがてすべての軍隊を引き揚げるための撤退ではなくて、今申しました、従来の第二次大戦後のアメリカ軍部内における方針、特に極東におきましては朝鮮戦争によってその認識が強化された、それを行なっておるにすぎないのでありまして、アメリカ軍の主力、すなわち空軍、海軍は私どもは永久に撤退しないと思うのです。今度の協定でも、この日米間における軍事協定、安保条約その他をとりましても、これが期限が切ってないというようなべらぼうな話は、当時私どもは国会に発言権のないときでありましたから、切歯扼腕をいたしました。また最近における沖繩基地に対するかの国の軍部の人たちの態度等は、もう半永久どころか、永久基地だという考え方であり、しかもそれを実行しております。そのときに、陸軍についてはなるほど肩がわりはするでしょうが、空軍、海軍を撤退するなんという考え方は、これは国民を欺くもはなはだしいものだと私どもは思うのです。そういうことについて私の考えが間違っており、偏見であり、誤解であれば仕合せでございますから、その考えが誤まっておるということなら、あなたが次官になってかの国と一体どういう交渉をなさり、一体どういう材料によって、われわれの考え方が間違っておって、あなた方の考え方、すなわち一個師団や二個師団の陸軍の撤退をしたからやがて全部撤退するんだとおっしゃるその立論、つまり意見の食い違いですが、それを外交的材料の中から実証していただきたいのです。
  54. 園田直

    園田政府委員 日本の防衛が充実するにつれて、日本を防衛しておる米軍が撤退するという米軍側の意向は、各種の折衝もしくは各種の会談によって明瞭なところでございまして、永久にとどまるというような意見はなくて、むしろ米側は早く撤退したいという気持を十分持っておるようでございます。ただし空軍は陸軍と違いまして経費が非常にかかりますので、ただいまは米側に依存する必要がございまして、他の陸軍に比してその撤退の時期がおそくなることはやむを得ない事情であると考えております。
  55. 穗積七郎

    穗積委員 空軍並びに海軍につきまして、一体アメリカ側が撤退する意思表示をし、またはそれを実証する材料を、一つ最近の交渉の中から示していただきたいのです。そんなものはわれわれはどこにも発見することができない。なおかつ幾日に、だれがそういうことを言っておるのか、どういう話合いでそういうことを、責任の地位におられるあなたがわれわれを通じて国民に確約できるのか。われわれは国民を欺くもはなはだしいものだと思っておるのです。空軍は金がかかるなんということは、アメリカの将校諸君が常におためごかしに言い、それを口移しにしてあなた方がおっしゃるだけであって、そういうところに問題があるのじゃないのです。
  56. 園田直

    園田政府委員 御承知のごとく、安保条約締結当時から、米軍の駐留は暫定的のものであるということは判明しております。なおその後の折衝、会談等におきましても、具体的に述べるわけには参りませんが、日本の防衛が、アメリカと提携をして防衛をやっておることは御承知の通りでございまして、そういう意味から、許された範囲内において防衛力を充実して、その充実につれて米軍が撤退しようということは明瞭にわかっております。今日憲法または皆さん方の御意見によって、日本の防衛の限界というものがきまっておりますので、航空母艦あるいは空軍等、経済的な面からもあるいはその他の面からも、これを持つことがいいか悪いかは別として、持つということは許されておりません。従って、これは仮想でありますが、もしかりに日本の防衛が充実して、そういう段階に来て、日本が航空母艦なり飛行機を持つという段階に来たならば、彼らはそれにつれて空軍といえども引き揚げるということは、私ははっきりした確信を持っております。
  57. 穗積七郎

    穗積委員 私はあなたの確信を、主観的にはあえてごまかしだというわけではございませんが、客観性を示してもらいたいということを今言っているのです。最近の日米間の外交なり彼らの態度の中に、どこにそういう客観性があるか。あなたも次官になられてから、そういうことを強く主張された一人でございますから、公約の手前上そういう態度でお臨みになったのかもしれませんが、その交渉の過程において、一体どういう事実からそういうように確信をお持ちになったのか、その点を先ほどから伺っておるので、あなたの主観的な答弁を伺っているのではありません。あなたの野にあるときの政論を伺っておるのではありません。あなたが責任のある局にお当りになって、その交渉の過程において、そういうあなたの所論、あなたの主張が、納得のできる客観性がどこにあるか、その具体的な事実を伺っておるのでございますから、私の質問の焦点に答えていただきたいと思います。
  58. 園田直

    園田政府委員 最近行われた防衛分担金の折衝にいたしましても、分担金の金額が当面の焦点ではございましたが、その論議の過程を聞いておりますと、むしろ金額の問題ではなくて、日本自体がみずから守る意思があるかどうかということが重点であって、日本みずからがこれを守るの意思があり、守るの形態をとれるならば、その他の問題は、金額の問題にしてもあるいは撤退の問題にしても、日本国民の希望に従ってやるということは、各所に歴然とわかっております。具体的な折衝の内容を申し上げることは、その自由がありません。
  59. 穗積七郎

    穗積委員 あなたは今、防衛分担金の削減が米軍撤退の一つの客観的証左だとおっしゃいましたが、冗談を言っては困る。防衛分担金に伴う日米共同声明というものは、私もこの間農産物協定でも皮肉を申し上げましたが、エビでタイをつるようなものであって、こちらはつられたのです。あの中にはっきり書いてあるではありませんか。これからわれわれは日本国民の経済的負担において——防衛分担金は今年度限りだ、だがしかし、三十一年度から、いわばわれわれは自己負担における防衛義務をアメリカに対して負ったのが防衛分担金交渉の結末なんだ。そのことによって、どこにもわれわれは米軍の空軍または海軍が撤退する——しかも私が言うまでもないことでありますが、最近の近代的なあれにおきまして、空軍も海軍も持たざる部隊などというものは独立軍ではない。あなた方のいう軍隊が必要だという論理に立ったとしても、最近において空軍、海軍の自主的な体制とそれからあれを持たないものは、あくまで植民地軍です。従って、アメリカの経済的または戦闘的な消耗を負担せしめられるだけの植民地軍を作っているにすぎないとわれわれはいわざるを得ないのです。防衛分担金の削減は、あなた方の望むところの日本の独立軍を作るための、何もそういうことの客観的証左にならないので、むしろ植民地軍陸軍の増強の義務を負わされたのが、防衛分担金交渉の結末であったといわざるを得ないではございませんか。そのほかに何がございましょうか。そういうことは資料にございませんか。
  60. 園田直

    園田政府委員 防衛分担金の折衝中、いろいろな会談の内容に現われてきますことは、米軍が日本の自衛力の増強を強く要請しておりますが、その要請をする理由としては、米軍が撤退し得るような情勢を早く作りたいということが、各種の言葉にも、各種の申し出等にも明瞭に出ております。
  61. 穗積七郎

    穗積委員 それは陸軍のことであって、しかも陸上軍が国内随所におきまして国民の反感を買い、反米的な世論を引き起すための媒介体になっておるということは、これはもうアメリカの軍の諸君ですらそういうことを感知しておるわけでございます。ですからそういう意味で、国民に対する一つ宣伝としてもそういうふうに考えて、そうして米軍撤退のためだということで、国民のある意味の米軍撤退の要求、すなわち独立の要求の何かにこたえる、そういう国民の何かに訴える、そういう世論指導の効果をねらった言葉であって、一方において沖縄、小笠原に対するかの国の態度、並びに日本国内における空軍、海軍基地に対する彼らの態度、これらを見ますならば、みじんもそういう態度は出ていないので、いよいよ永久基地化をねらってやっていることはしごく明瞭だと私は思うのです。一体どこにそういうことがございましょうか。もしお差しつかえがあって言う自由がないというならば、秘密会にして話していただきたいのです。どういう会談で、どういう速記録に残っているのか、議事録がありますならば、その必要が客観的にあるとするならば、われわれもその秘密を守りますから、この問題は大事な問題ですから、ぜひ示していただきたい。特に秘密保護法は、われわれが昨年これを論議するときにも言われたことだが、これが萠芽だ、この核がやがて芽を吹き枝を伸ばすならばえらいことになります。しかもあなたの属する民主党の議員の諸君の中には、日本独自の軍機並びに軍作戦の秘密保護法を作るべきだという主張を強くされた事実が、昨年ですらあるのでございます。そういう萠芽としてこれを考える、もう一つは、撤退どころか逆に原子力爆撃機も可能になるような巨大な航空基地の拡張に伴い、国民の生活を脅かし、国民の文教または生活感情に大きな悪影響を及ぼしている最近の事実、この二つは、米軍の最近の長期撤退問題にからんで、将来の国民生活にとって深刻な問題だと思いますから、この際一つ基本的なお考えをよく伺っておきたいのです。ですから、あなたも良識と良心をお持ちになった園田政務次官ですから、一つ正直に答えていただきたいのです。
  62. 園田直

    園田政府委員 日本の防衛力の漸増に従って撤退したいということは、必ずしも陸軍ばかりではございません。米国は海空の自衛力の増強も強く要請をしておりまして、その状況によっては逐次撤退したいという意思を持っております。お話中の沖繩、小笠原の返還等の問題も、日本がこれらの島を戦略的に防御し利用し得るようになることがこの返還の前提となっているようなわけでございます。
  63. 穗積七郎

    穗積委員 それは一体どこに、どういう事実の中にそういうことを実証するものがあるのですか。
  64. 園田直

    園田政府委員 各種の折衝等によって、米軍の考え方の基本方針を私が判断した確信でございます。
  65. 穗積七郎

    穗積委員 だから、その確信をさっきから伺っているのですからお示し下さい。
  66. 園田直

    園田政府委員 それは、各種の会談や折衝の全般的な問題の中で、いろいろそれを取捨選択してそのように判断をいたしております。
  67. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、きょうはそういう材料をお持ちになっておりますか。
  68. 園田直

    園田政府委員 本日は資料を持ってきておりません。
  69. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、今の二点は大事でございますから、この審議に当りまして、もし客観的妥当な理由がありますならば、次回に、秘密会にしていただいてもよろしゅうございますから、ぜひわれわれの納得のいくような御答弁をお願いいたしたいと思います。きょうはこの程度でやめておきます。
  70. 植原悦二郎

    植原委員長 次に、国際情勢等に関する件について政府当局質疑を行います。並木芳雄君。
  71. 並木芳雄

    ○並木委員 園田外務次官に日ソ交渉のことについて質問をいたします。昨二十四日第五回の日ソ交渉の会談が行われました。松本大使は抑留者の引き揚げについて先方と交渉したということを言明されておりますが、その通りと思います。その他この内容について、われわれは政府当局に聞く以外には何も手がかりがないのですから、この際親切に御報告をしておいていただきたいと思います。
  72. 園田直

    園田政府委員 二十四日の日ソ会談の内容の全貌はまだ見ておりません。本日の正午から午後二時ごろにかけて翻訳が終了して見れると考えますので、内容はわかっておりませんが、多分そのような点を主張しただろうということを、前々回からの経緯によって想像いたしております。
  73. 並木芳雄

    ○並木委員 抑留者の数字に先方と日本政府側との間に大きな食い違いがありますが、これは終局において解決の見込みはあるものとわれわれは期待しておりますが、それでよろしゅうございますか。
  74. 園田直

    園田政府委員 わが方の主張いたしました数字は、終戦当時の在ソ同胞の数から推定いたしましたものばかりではなくて、日本国内に残っておる各家族の方々からの意見を聴取をして、それを参考にし、またソ連から帰ってこられた方々からの資料等も聴取をした的確な数字でございます。ただいまのところ、ソ連側とわが方との意見の中に数字の食い違いが確かにございますが、これは逐次折衝されて、この問題が両方とも了解のうちに取り入れられることになれば、行方不明並びに死亡者の調査等においては、わが政府の持っております資料をもちましてこれに協力方を申し出ておりますから、その点は両方の意見が了解されることになるだろうと考えております。
  75. 並木芳雄

    ○並木委員 それならば非常にけっこうでございます。それについてお伺いをしておきたいのは、中共からの引き揚げの問題であります。これが同時に出てきたいきさつについては、政府は何かそこに裏があるとお考えになっておるかどうか。それともざっくばらんに、この問題はけっこうなことなのだ、だから今までは政府が直接これに手をつけませんでしたけれども、これからは政府の責任において中共からの引き揚げを完了したいという御意思を持つようになったのかどうか、その点はっきりしていただきたい。
  76. 園田直

    園田政府委員 先般衆議院の海外同胞引揚特別委員会におきまして御同様の意見と御質問を承わりまして、政府としては他の中共と日本との国交の問題、あるいは貿易、通商の問題とは、これは別個の問題で、人道上の問題でございますから、引き揚げ問題だけは、ただいままで三民間団体に委嘱をしてやっておりましたが、この段階にくれば、政府みずからが責任を持って引き揚げの促進なり事務をやることが当然であると考えて、そのような方針でおることを御答弁いたしましたが、本日の読売新聞では、部内において意見の対立があるかのごとき記事でございますが、さようではございません。意見が一致をして、政府が責任をとって、これは直接引き揚げの問題として解決すべきであるという意見に大体一致をいたしております。ただその具体的なやり方の事務的な問題等について、どこで会談をやったがいいか、あるいはどういうふうな申し入れをやったがいいか、こういう具体的な問題を検討中でございますから、これは衆議院全会一致の御意見でもございますから、正式に政府として近く申し入れをする決心をいたしております。
  77. 並木芳雄

    ○並木委員 その点は非常に力強い答弁を得て意を強くした次第であります。これは私は非常に前進だと思うのです。従来の、ことに吉田内閣時代のあの態度から見れば、さすがに鳩山民主党内閣の一大進歩であると思いますから、ぜひ今の御答弁のように勢いよく前進をしていただきたいと思います。  次にお伺いをいたしますのは、漁業問題の解決の点であります。これは、園田次官が参議院で漁業問題の解決も条約以前のものであるというふうに答弁されたるやに聞いております。私はそれがもっともじゃないかと思うのです。これは漁業条約とかあるいは通商航海条約そのものをさしてまで言われておるのか、それとも目下紛争中のものがございますが、この紛争中に抑留されておる船舶とか、それから領海三海里、十二海里説ですか、それとの矛盾撞着なども解決することが先決だというような意味でおそらく言われたのではないかとも私は思うのですけれども、その点をこの際はっきりしていただきたい。
  78. 園田直

    園田政府委員 私が参議院の内閣委員会において答弁いたしましたのは、漁業の問題が国交調整もしくは条約前のものであるとかあとのものであるとかいうことを申し上げようとしたわけじゃございません。この点一部誤報がございまして、APにも間違った記事が載っておりましたから、訂正を申し込んでおります。申し上げました意味は次のようなことでございます。条約前、国交調整前というわけではございませんが、漁業問題は、御承知の通り領海の問題あるいはその他防衛上の問題等いろいろ論争の種になっておりますから、これは当然国交調整の条約あるいはその他の問題で最後的に決定はされるでございましょう。ただ私が申しましたのは、その国交調整の話し合いにかかる前に、わが方はこうこうこういう問題だけは、一つ早急に何とか解決をしてくれという諸懸案を提示いたしております。その中に引き揚げの問題も入っておることはすでに御承知の通りでございますが、そのほかに当面の問題である、たとえば内閣委員会の木下源吾委員から言われた漁期を前にした領海における日本の自由操業の問題、あるいは拿捕されておる船並びに漁夫の返還の問題、あるいはそのほか避難その他に関する危急の問題だけは、早急に話し合いをしてもらいたいという意味を御報告申し上げたわけであります。
  79. 並木芳雄

    ○並木委員 ただいま早急に解決すべき問題を例示されましてけっこうですが、そうすると、引き揚げの完了と漁業問題と、そのほかに何か二国間条約に至る前に解決しておきたいという希望で政府から申し入れをした項目はございませんか。
  80. 園田直

    園田政府委員 問題として提示した点はそのほか二、三件ございます。大体新聞に載っておりますような問題でございまして、国連加入の問題や領土の問題等もつけ加えております。
  81. 並木芳雄

    ○並木委員 それはやはりわれわれは正式にはこの委員会であるいは本会議で聞く以外にはございませんから、国連の加盟と、それからまだ言われましたね、それを全部言って下さい。
  82. 園田直

    園田政府委員 大体その辺でごかんべんを願いたいと思います。
  83. 並木芳雄

    ○並木委員 ソ連側からもいろいろ話し合いが出たそうでございますが、これについて先般重光外務大臣は、例のサンフランシスコ条約会議のときにグロムイコ代表が演説をしたあの線で先方の申し入れが行われたようだという言明をされております。しかしその後の情報は必ずしもそうでもないようであります。昨年の暮れでしたか十一月でしたか、モロトフ外相が、サンフランシスコ条約と日ソ交渉との結果結ばるべき条約との間には矛盾はない、この二つは併存し得るのだという演説をしておりますが、どちらかということを私どもは知りたいのであります。おそらく外務大臣も正確に検討した結果ではないだろうと思いますが、もうだいぶ日にちもたちましたから、この際もしグロムイコ代表の線であるならば、取りつく島はない、この会談は物別れになる。これはわれわれは非常に遺憾である。やはりモロトフ外相の線で行われておるものと思いますので、その点をはっきり言明していただきたいと思います。
  84. 園田直

    園田政府委員 日にちがたっておりますけれども、まだ発表をするというソ連との申し合せの段階になっておりませんから詳細に御報告は申し上げられませんが、今の御質問に対して簡単に基本線だけを申し上げますと、元来が申し上げました通りにグロムイコの修正案を基本としたソ連の線でございますが、モロトフが演説で言っております通りに、これを全般的、理論的に言うと、必ずしもサンフランシスコ条約あるいは行政協定等に抵触するものではなくて、併存し得るような解釈がとられます。しかし日本に対する関係からいいますと、たとえば将来の問題や日本のいろいろの政策等から考えると、やはりグロムイコの言った線に実質的には当てはまるようでございます。
  85. 並木芳雄

    ○並木委員 この点は非常に重要な問題ですから、会談が漸次進むに従ってまた後日質問をいたすことにいたします。  それからソ連側の提案の中にあったと報道されておりますものの中にこういうのがございます。日本と戦争状態にあった国との間で軍事同盟を結んではいけないということでございますが、そういたしますと、今アメリカとの間にある日米安全保障条約は、ソ連の言う軍事同盟の範疇に入ってくるかどうかということが問題になってくるわけです。私は今までの政府の答弁では、これは軍事同盟でない、従ってソ連が言うところの日本は戦争をやっておった国と軍事同盟を結んではいけないという、あの禁句に入ってこない、差しつかえないというふうに解釈するのでありますが、いかがでございますか。
  86. 園田直

    園田政府委員 ただいまの問題は非常に重大な問題でありますから、答弁を御容赦願いたいと思います。
  87. 並木芳雄

    ○並木委員 それでは次に、ソ連が日本の国連加盟を支持するとの言明をしております。これも私は非常にけっこうだと思いますが、ただこれにはひもがついてはいけないと思うのです。その反対給付として中共の国連加盟を日本が支持すべしという交換条件がついてはいけないと思いますが、この点はいかがなものでございますか。
  88. 園田直

    園田政府委員 これもお答えができませんが、ひもはついておりません。今折衝中の問題で、実は委員会その他における日ソ関係に対するわれわれの答弁は、ソ連の方でも非常に重要視をしておって、信義を守っておるのかどうかということになるおそれもございますから、答弁をごかんべん願いたい。
  89. 並木芳雄

    ○並木委員 答えられないなら答えられないでいいのです。要するに答えられるのか答えられないのか、答えられるならどうだということをわれわれは国会議員として、ここで確かめておく必要があるから質問をしておるのであります。  次に賠償の請求権も放棄するのだという報道がありますが、この点もそういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  90. 園田直

    園田政府委員 それも御答弁ができません。
  91. 植原悦二郎

    植原委員長 並木芳雄君、先の外交上のことを想定しての答弁を政府に求めることは無理だと思いますから、あなたの質問は少し御注意を願います。
  92. 並木芳雄

    ○並木委員 想定でなく、報道されているのだから……。
  93. 植原悦二郎

    植原委員長 今外交は日ソの間において進行中です。質問であろうとも少し御注意を願います。
  94. 並木芳雄

    ○並木委員 それはよくわかりますが、政府当局で答えられなければ、それは答えられないと御答弁を願えば……。
  95. 植原悦二郎

    植原委員長 常識上、答えられない質問をする必要はないと思います。
  96. 並木芳雄

    ○並木委員 最後に政務次官に伺いますが、宗谷海峡、根室海峡、津軽海峡など、日本海に面する諸国に属する軍艦のみの通行のために開放されるという項目がありますが、国際法上こういうことが許されるものであるか、法律上の見解でけっこうです。
  97. 園田直

    園田政府委員 それもグロムイコの修正案を基本にしたものだというさっきの答弁で御勘弁を願います。
  98. 並木芳雄

    ○並木委員 法律上はいかがですか。
  99. 植原悦二郎

    植原委員長 済んだことならいいですが、外交問題で、今重要な問題であるのに、ただ新聞に出ておることで想定しての質問は……。
  100. 並木芳雄

    ○並木委員 法律上の解釈を聞いておるのですから……。
  101. 園田直

    園田政府委員 今の問題は新聞に書いておることを基本にした御質問でありまして、正式に申し上げられません。またこれについて両方からの見解が述べられておりませんから、御答弁はできません。
  102. 下田武三

    下田政府委員 一般的に法律の理論を申し上げることも、実はこれから日本側の考えを言おうというやさきでございますから、ここで申し上げることはできません。
  103. 穗積七郎

    穗積委員 最初に園田さんに敬意を表しておきます。というのは、さっき並木君が御質問になりました、中国におります邦人の引き揚げ問題を、日本政府と中国政府との間で話し合いをして処理するということは、現内閣の外交方針として私は一歩前進として賛意を表するものでございます。  それについてちょっと関連してお尋ねしたいのは、先般御承知の通り日本の漁夫が難船をいたしまして、数個の死体がソ連領に漂流いたしました。これを向う側から未条約国の日本国民であるが、人道上の立場に立ってぜひ受け取ってもらいたいという申し入れを日本政府に対していたされたのに対して、未条約国であるという理由によって日赤をしてやらして、政府はそれに全然触れようとされないで、関係者並びにその遺族に対しましては非常な冷たい、暗い印象を与えたわけですが、国交回復または国交改善という問題を超越いたしました人道的な問題として、当然日本政府が当時漂流いたしました死体の受け取りを、責任を持って積極的に、しかも早くやるべきものを、相手にされなかった理由は一体どこにあるのか、中共との間において今言った理由によって政府政府の間でこの帰還問題を解決したいということであるなら、当然そのときにおいてもなすべきであったにかかわらず、一体どこに違う理由をお認めになったのか、その間のことを明らかにしておいていただきたいと思います。
  104. 園田直

    園田政府委員 今資料を持っておりませんから数字に間違いがあるかもわかりませんが、多分六月の四日ごろだったと思います。狸穴の元ソ連代表部の方からの、日本の難破船の破片——その破片には金栄丸と書いてある、それと死体が漂流してきたから、これは埋葬してあるという手紙が、外務省の某局長の机の上に置いてあったそうでございます。従いましてこれは私個人の意見から申し上げますと、人道上の問題は国交とかあるいは通商の問題と別個にして、直ちに政府が責任を持ってやるのが当然であると私は考えております。しかしその場合に、たとい死体になって埋葬されております問題といたしましても、日本の外務省としては狸穴を代表部として認めておりません。代表部として認めるかどうかということは重大な問題でございまして、暗号並びに電報発送の権限並びに自動車の権限等、これは外交上の折衝の一つの特権でございまして、ただいまのところ正式に認めておりません。認めていないが、これは人道上の問題であるから、これで直ちに政府がその申し入れによって特別どうこうするという相談や会議をしておると、それはまた一日や二日で解決できる問題じゃございません。そこでとりあえず人道上の問題で、いろいろ事務処理上は難点はあるが、早急に解決しなければならぬ問題であるというので、日赤と水産庁にその日に通報しまして、日赤並びに水産庁の方から向うに打電してもらい、そして向うからしからば死体を引き取る意思があるならば、それに関する通知をしろというので、こちらから通知をして、そうして二十一日だったと思いますが、樺太南端で海上保安庁の船で、向うの軍艦から死体を受け取ったわけでございます。
  105. 穗積七郎

    穗積委員 ですから、どういうわけで政府がみずからおやりにならなかったか。あれは日赤へ責任を持たして日赤でおやりになったのでしょう。それを政府は、日赤などをお使いにならないで、向うの本国政府——狸穴は認めないとおっしゃいますが、鳩山さんの今度の交渉には、狸穴を通じてドムニツキー氏とお会いになったり、そうしてそれが向うの政府の正式な意見であるかどうかをはっきり確かめておやりになった、それとも矛盾いたします。矛盾いたしますが、もしまた一部事務当局で、狸穴の国際法上の地位についていろいろ法理論をおやりになる方があるとしても、人道上の問題ですから、その通告に対してすぐ向うの本国政府へ照会して、ドムニツキー氏から申し入れのあったことは事実であるかどうか。それに対してこちらは日赤などをお使いになった。そういうおかしな手の混んだことをなさらないで、当然政府は直接責任をもってお引き取りになるべきであり、その方が早く、しかも遺漏なく解決ができると思うのに、そういうことをなぜなさらなかったか。それを今度中共の引き揚げの場合には、日本政府が向うの政府と直接の交渉で責任をもって解決するという、この違いの理由を明らかにしていただきたいと思うのです。
  106. 園田直

    園田政府委員 それは狸穴を正式の代表と認めるかどうかということの議論によって、おくれたわけじゃ決してございません。中共の引き揚げも、ソ連の問題も、ただいままでは日赤もしくは第三国を通じて折衝をやっておった事務慣例に従って、一番早い方法をやったのであって、責任をのがれて日にちを延ばしたわけではございません。時間的には直接やるのと同じにやったわけであります。ただ政府が直接向うに呼びかけずに、日赤を通じてやりましたことは、これはただいままでの事務慣例に従ってやったわけでございます。
  107. 穗積七郎

    穗積委員 それでは今まで中共の残留邦人の引き揚げ問題を日赤を使ってやってこられた慣例を破って、今度政府政府の間でやろうという理由は、どこにありますか。
  108. 園田直

    園田政府委員 それは御承知の通りに、日本と中共が直接話し合いをする機会は、今のところ全然ないわけでございます。しかもそういう問題ばかりでなくて、人道上の問題であるから、やはり直接政府が責任をもってやることが当然であろうと考え、今まで各種の国際情勢からそういうことが踏み切られなかったのでございますが、人道上の問題であるから、いろいろな方面においてもこれを種々理解納得する自信と事務的な準備ができたから、そういうことをしたいというわけでございまして、ただいまの遭難死体の問題も、政府がみずから直ちにやった方がいいということは当然でございますので、今後はそういうことでおしかりを受けることはないと考えております。
  109. 穗積七郎

    穗積委員 御答弁感謝いたします。すなわちソ連であるから日赤を使い、中共であるから政府がやるという意味ではなくて、時間的にそういう方法と態勢がきまらなかったから、中共の引き揚げ問題以後になったのだ、これからはそういう問題については、相手がソ連であろうとあるいは北鮮であろうと、どこの国であろうとを問わず、政府が直接おやりになるという方針が確立されたと理解してよろしゅうございますね。
  110. 園田直

    園田政府委員 そういう意味で中共の引き揚げ問題は取り上げたわけでございますので、ソ連の問題に対しましても、すでに交渉も始まったことでございますから、そういうことで御注意を受けることはないと考えます。ただしこれは人道上の問題であるから取り上げるという意味と、国際情勢上これは種々納得を受けるという両方の面がございますので、北鮮の問題については、まだ今のところ検討しておりません。
  111. 穗積七郎

    穗積委員 それから一つあなたの、次官といいましても事務次官ではない、政務次官としての御自覚において御答弁をいただきたいことがあるのです。それは何かと言いますと、私は今の人道上の死体引き取りまたは残留者引き揚げ問題等は、未条約国でありましても、政府日本人民の生活と利益のための責任を持っておるわけですから、当然直接やるべきだというふうに思っておるのです。そのお考えに、ようやくにしておくればせながらお達しになったことに対しては、われわれは喜びにたえない。文化交流または経済交流の問題についても、これは未条約国であっても、やって差しつかえないと思うのですよ、そこで先般日中間におきまして——こちらは民間団体でございますが、向うは政府機関——貿易協定ができました。その中でわれわれの理想としては、無条約前においても両国政府間において貿易協定を結んで、そうして本格的にこれを進めるべきである、こういう約束をお互いにしたわけです。それに対してあなたの属される鳩山内閣の責任者である鳩山さんが、われわれに対してお答えになりましたことは、条約前においても、中国との間に政府貿易協定を結ぶことはできるならば差しつかえないと考えておるという考えを主張された。ところがその後あなたの管轄下にある事務当局の方々は、それはちょっと困る、なぜかといえば、国交回復をしなければ、そういう問題について政府が締結するわけにいかない、文化交流等についてもそういう考えをお持ちのようで、せっかく鳩山さんがそういう方針を示されたにかかわらず、事実はそれを事務当局の御解釈によってチェックされて、そうして今日までそれが停滞いたしておるわけです。あなたは政務次官として、このお考え方に対してどちらをおとりになるのか、われわれは当然鳩山さんのお考えが正しいと思うし、あなたも同感だと思うのですが、今後の日中間の貿易または文化交流促進のために努力していただかなければならないあなたですから、あなたの基本的なお考えをこの際伺っておきたいと思うのです。
  112. 園田直

    園田政府委員 御質問の趣旨は、十分平素からよくわかっておりますので、大いに推進したいと考えております。ただし未条約国との文化活動並びに貿易の問題と、共産主義圏内にある未条約国との間の問題とは、文化活動、政治活動というものがからみ合って参りますので、この点のけじめがつけがないために、いろいろな問題が起っておるわけでございます。従いまして本格的な政府政府との交流というものは、これはなるべく早く平和条約等を結びまして、それ以後のことになるでしょうが、それまでの間政府としてやりますいろいろな点は、ただいままでもやっておりますので、なるべく早くそのような方向に前進したいと考えております。
  113. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、あなたのお考えは、大体事務当局のお考えではなくて、鳩山さんのお考えと基本的には同じであるから、これから事務当局を駆使して、それを前進するように努力したいというお答えをいただいたと理解しまして、今後ともそういうふうにお願いしたい。  続いて関連してお尋ねいたします。実は先般も通商局長にちょっとお尋ねしたのですが、ついせんだって、この協定の第一回の初取引といたしまして、大豆五万トンに対するオファーが参っております。そのオファーは、大豆は、御承知の通り、甲類物資でございますから、見返りとして船舶その他必要なる商品を九ヵ月以内に受け取りましょうという記載があって、それで申し入れがあった。それに対して事務当局のお考えは、LCにそのことを明記していただかないと、バーター取引の形式に当らないから、LCに記載することを絶対条件とするという御答弁であったわけです。従って今度の大豆の取引に対しては、今の形ではこれを許可するわけにはいかぬということで、今停滞いたしまして、非常に日本の消費生活の将来に対して不安を与えておるわけでございます。同時にせっかくあなたも協力を惜しまない日中貿易促進に対しまして、実は最初の取引であるにかかわらず、これがつまずいたまま今日あるわけです。これは当然あなたは認めていただくべきだと思いますが、認めていただけない理由について、この際あなたのお考えを一つ伺っておきたいのです。
  114. 園田直

    園田政府委員 ただいまの御質問は、これを許可するのは外務省の管轄ではなくて通産省だろうと心得ておりますが、貿易の問題に対しては通産省にこれを許可するに際しまして外務省の意見を問い合しては参ります。しかし許可するのは通産省でございまして、外務省の意見を、たとえばどこどことの契約は、これを許可することが外交上何か問題が出てくるかあるいは出てこないか、こういう問い合せがあるだけだと私は考えておりますが、さらに詳細なことはあとで調査をして御報告を申し上げます。  今の問題は、私の考えとしては価格と品質さえよければ、この買付を許可することに問題はないと考えておりますが、LCの件は調べて御報告をいたします。
  115. 穗積七郎

    穗積委員 これで質問を終りますが、あと岡田委員からも質問がありますからお譲りいたしますが、これは実は信用問題なのです。オファーの中に書いてもLCの中に書いても同じことなのです。しかも相手は世界随一信用の置ける取引相手であって、中共政府貿易の今までの実績からいきますと、LCの上で見るとストレート決済、片道決済のように見えますけれども、実際はオファーの中に明記して、そして九カ月以内に甲類物資その他必要物資を受け取りますから同額のものをと言っておるのですからこれは認めていただいていいし、今までもそういうことを認めた例が昨年度、一昨年度の取引の中にございます。従ってこの問題は、この許可権を握っておるのはむしろ通産省であるということは私も承知しておる。承知しておるにかかわらず特に外務省の政務次官にそのことをお尋ねしてあなたのお考えを伺ったのです。おそらくあなたはこれは促進すべきだというお考えであろうとわれわれは期待したのですが、大体その基本方針だけ伺っておいて、そしてあなたの所管ではないからその許可をすることを約束してもらうということを求めておるわけではございません。事外交に関し貿易に関することです。許可権は官庁所管の手続上通産省にございましても、貿易問題を無視した外交なんというものは今日ございませんよ。経済外交を無視した貿易というものは今日ない。従ってこの問題についてはあなたの方の経済局を中心にして、これは重大な国際問題でございますから、ぜひとももう一ぺんあまりつまらない形式にとらわれないで——昨年度、一昨年度にもそういう例が幾つかあるのです。大豆のみならず塩、米等についてもございますから、それを調べた上でそういうふうに努力していただけるかどうか、私の申すことが事実であるとしますれば、その線に沿って努力を惜しまないかどうか、その基本的な態度を伺っておきたいのです。
  116. 園田直

    園田政府委員 努力するのは当然でございます。
  117. 岡田春夫

    ○岡田委員 ちょっと関連して。今の穂積君の質問に対する答弁ですが、特に中国の、向うに在留している邦人の帰国の問題については、政府間で交渉するという構想があるようなお話ですが、これは重大な問題です。この問題についてはどういう具体的な構想を持っておいでになるか、まず第一に、この点もう少し詳しく承わりたいと思います。
  118. 園田直

    園田政府委員 人道上の問題でございますから、あまり重大な問題とせずにいたしたいと考えております。具体的な問題はただいま検討中でございまして、大体二週間か三週間以内に正式に申し入れをするなり御報告を申し上げたいと考えておりますが、まだ具体的なやり方を事務当局内で調整中でございます。
  119. 岡田春夫

    ○岡田委員 現在中国にいる在留邦人の大半は、あなたも昨年中国に行かれて十分御存じの通り、戦争犯罪人としての扱いを受けている者が大半であります。従いましてこれは単に人道上の問題といいましても、これを日本に帰すという問題になって参りますと、相当いろいろな関係が出て参ると思いますし、その交渉政府が話をしたからそのままできるというような、そう簡単な問題とは私考えておらないのです。特に在留邦人の問題で政府間の交渉になって参りますと、向うにやはり日本の外交特権を持っておる者が派遣されていくことが前提になってこなければ、政府間の交渉というものは私はできてこないと思う。そういう意味ではどういう形で政府間の交渉をされるか、こういう点についてもう少し詳しく伺いたい。
  120. 園田直

    園田政府委員 ただいまおっしゃったことはもちろんでございまして、相当困難な問題もあるし、中には戦争犯罪人が含まれていることもよく承知をしております。これは中国に、帰せという抗議を申し込むつもりではございません、申し出をしてその数字なりその取扱い等について、両方相談をして話合いをしようということでございまして、従いまして当然正式の外交官を派遣することになりましようが、これをどこで話をいたすか、あるいはその申し入れをどういうふうにやるか、その数字はどういうふうにやるか、こういう問題で検討中でございますから、この辺でごかんべんを願います。
  121. 岡田春夫

    ○岡田委員 どこにいたすかという点であいまいにしてしまったわけですが、条約の未締結国にしても、人道上の問題として在留邦人を日本に帰すことになってくれば、当然人道上の問題の観点に立ってだけでも、中国に対して領事を常置してこの問題を解決するということは、もし政府が真剣にこの問題にとっ組んでいくとするならば必要になってくると思います。こういう点からいって、領事派遣問題についてはどういう見解を持っておいでになりますか。
  122. 園田直

    園田政府委員 ただいまのところ、そこまでは考えておりません。
  123. 植原悦二郎

    植原委員長 次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時十九分散会