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1953-11-03 第17回国会 衆議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十一月三日(火曜日)     午前十時二十二分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 田嶋 好文君 理事 吉田  安君    理事 古屋 貞雄君 理事 井伊 誠一君       大橋 武夫君    押谷 富三君       林  信雄君    本多 市郎君       野田 卯一君    牧野 寛索君       飛鳥田一雄君    木原津與志君       木下  郁君    中村 梅吉君       館  俊三君  出席国務大臣         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         検     事         (刑事局長)  岡原 昌男君         検     事         (刑事局総務課 津田  實君         長)  委員外出席者         国税庁長官   平田敬一郎君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 十一月二日  委員木原津與志君辞任につき、その補欠として  山本幸一君が議長指名委員に選任された。 同月三日  委員山本幸一君及び岡田春夫辞任につき、そ  の補欠として木原津與志君及び館俊三君が議長  の指名委員に選任された。 本日の会議に付した事件  日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約  第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法の一部  を改正する法律案内閣提出第五号)  日本国における国際連合軍隊に対する刑事裁  判権行使に関する議定書実施に伴う刑事特  別法案内閣提出第一一号)  法務行政に関連する保全経済会等特殊利殖機関  の調査に関する件     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法の一部を改正する法律案並びに日本国における国際連合軍隊に対する刑事裁判権行使に関する議定書実施に伴う刑事特別法案、以上二案を一括議題となし、質疑を続行いたします。質疑の通告がありますから、順次これを許します。館俊三君。
  3. 館俊三

    館委員 ちようど大臣がお見えになりましたので、大臣お尋ねをいたします。法務委員会は私初めてですし、法律はわかりません。それで大臣の顔だけしか、あとの方は覚えがありませんが、幸いに出ていらしたので、ほんの少しだけお尋ねいたしたいと思います。私の尊敬している犬養木堂さんの息子さんの大臣、そういうことも頭に置きながら、さらにまたこれはいや味になるかもしれませんけれどもゾルゲ事件のときに犬養さんの名前なんかも出たりひつ込んだりしたことも私は覚えております。そういうような雰囲気で大臣の人柄というものを私は考える。  そこでこの刑事特別法ですか、これで属人主義属地主義にかわつたということは、われわれの待ち望んだことであつて、非常にいいことだと考えておるのでありますが、私しつかりしたことはわかりませんけれども、その場合であつても、向う軍人あるいは軍属が公務を帯びて属地から離れた場合における犯罪のときには、何か特別な取扱い方をするようになつているというふうに考えている。そういうふうになつて来ますと、その特別な取扱い方は、政治的な立場で特別な取扱いをいたされるのか、従つてまた実際の裁判あるいは検察の立場においてそれをとられるのかという点が、私は概念的に非常に不明確であるように考えられる。もしそういう私の考え方のようなくあいでありますと、そのような事故が起きたときにおける法治国としての日本立場として、検察庁においてもあるいは裁判所においても、あるいは政治的な考え方としても、非常にあやふやな形がそこに現出して来るように考えられて、この点を吟味しておく必要があるのではないかと、私は一般論として考える。そういうことで大臣にお会いをしたがつたのであります。  なぜ私がこういうことを考えるかというと、こういう法律のなかつた時代のことを言うてはいけませんけれども、今問題になつている、松川事件判決状態なんでございますが、これは七月の終結討論公判のときですか、裁判長お話で十一月の五日に判決を下されるというお話があつたのだそうでして、これに対しては被告人たちも、及びその被告を取巻く家族人たちも非常に早く判決をしてもらいたい、無罪であると主張しており、るるそういうことを懇請しておつたのでありますが、そのときに裁判長は第一審の裁判長と違いまして物やわらかく非常に親切に、そういう懇願をする人たちと話し合つてくれておつたのでありまして、この点はみな非常にいい感じを持つてつたのであります。もちろん御承知通りこの判決も、裁判をめぐりあらゆる方面から被告たちあるいはその家族たち支援するという形で、国内的な輿論が高まつて、これは思想のいかんや政党のいかんにかかわらず国民的にも助けてやらなければならない、そういう支援が非常に多いので、この裁判については国民はどちらかというと、第一審の判決については、判決いかんはとにかくも疑念を持ち、何か割切れないものを持つてつたようであります。従つて第二審の判決については非常な期待を持つてつた。そこで被告あるいはその家族人たち裁判長に早く結審をしてもらいたいというお話行つた、そのときに親切にものやわらかくつき合つていただいておつた、こういうことであつたのでありますが、七月に話があつて十一月の五日ですか、結審を待つていましたところが、突然十月の二十何日かになつて、十二月の二十二日まで結審を延ばすということになつたのであります。そこで待ちかねた被告たちあるいは家族たちは、もう一度どういうわけかと裁判長にお会いに行つた。ところがこのときの裁判長態度が、以前に数回会つたときの態度と非常にかわつてしまつて、そういう家族た知の顔を見るのをいかにもつらそうにして、顔面を引きつらせるというようなことで、いつもいすに腰かけて話し合つたのですが、その日はいすにも腰かけないで、神経質というか、親切さもなかつた。そういう形で応待された。どうしてお延ばしになつたのかと聞いたところが、これは厖大なる調書があるので、その厖大なる調書を読了しなければ判決ができないが、それがまだできない、そういうわけで被告たちが非常に心配をしておるのであります。もしそういう厖大なものを読まなければならぬといたしましても、七月からすでに十月ごろまでの間に読み通せることでありますし、それから自分自身裁判に携わつておられることだからということを考えまして、調書それ自身自分の携わつた調書それ自身であると私は考える、そこに何か割切れないものが私はあると思いますので、この裁判に対して不審の念を抱いておる国民的な立場から見ますというと、何かそこに政治的な圧力裁判に加わつておるのではないかという感じ世間一般に持つておるのであります。こういうことが今度の属地主義の場合にも現われて来るというようなことがあつては私はいけないと思う。私疑いを持つのですが、この裁判を延ばしておるということは、単にそういう書類の点検がまだ完了しないということよりも、もう少し深く考えて、政治的なものが何かあるんじやないか、たとえば今一生懸命に締結を急いでおられるところのMSAの問題、これらがもし締結されれば、そこに当然の帰結として軍機保護法が国内的に施行されなければならないような状態になつて来るのじやないか、軍機保護法がこしらえられることになると、今度はいろいろの方面で取締りが厳重になつて来る。その軍機保護法の中に、どういうものが入つて来るかわかりませんが、もしこの判決が延びておつて軍機保護法ができてから結審ということになりますと、その軍機保護法にまた少しひつかけられて来て、動きのとれない状態になるのではないか、うがつたものの言い方ですけれども、そういうことのためにこの判決が延ばされておるのではないかという気持がしてなりません。世上これは共産党の陰謀だとか何だとかいつておりますけれども、たといそういうことであつてもいけないので、裁判法治国では公正にやられることが大事であることは申すまでもありませんが、そのできた裁判国民から信頼される結論が出なければ裁判の価値がない。裁判は単に被告裁判するのではなくて、被告を通して全国民を納得させる裁判結論が出ることが大事だと私は考えております。
  4. 小林錡

    小林委員長 館君、今の法案関係した質問をしてください。あなたのようなのはこれが済んでからやつてもけつこうですから。
  5. 館俊三

    館委員 もうちよつとです。これは新聞共同デスクとして、アメリカ人が殺したんだ、それを見ておつた者がCICにひつぱられた結果おかしくなつてなくなつたとか、かなりのスペスを使つた記事が各新聞に出ておる。こういうことになりますと、日本裁判に対して日本国民に非常な不信がわいて来る、そういうことが私は心配になりますので、属地を離れた属人主義が今もなお残つてつたのでは、その場合にまたまたこういうことがあつてはいけないと思いまして、私はこれを特に大臣お尋ねをしておるのであります。これは決して今の刑事特別法関係しない質問ではないと私は考えております。こういう事例をあげて、その事例について国民考えておるように、あるいは全般的に望んでおるように無罪にできなかつたり、あるいはまた判決がありましても何か属人主義の陰みたいなものが残つておりまして、そうしてそれに政治的な措置あるいは圧力が加わつて来るようなことがあつてはいけない。この松川事件判決というものはローゼンバーグ夫妻が殺されたように、世界中あげてこれを見ておるのであります。ローゼンバーグ夫妻はああいうふうにさばかれましたけれども、しかし世界輿論というものはあの裁判には服しておりません。松川事件のときにもローゼンバーグ夫妻の死刑のようなあと味の悪いものを残すようなことがあつたのでは、独立して行こうとする日本法治国としての権威に関する、これが一番大事なことだ。そういう目的のためにようよう属人主義属地主義にまで獲得できた熱意はそこにある。そこでまた属地主義ばかりでなく、まだまだ獲得して行かなければならない裁判権の問題も残されている。この基本的な考えをここに確立しないでは、せつかく属地主義にまで追い込んだ根本の建前が将来伸びないことになりますので、松川事件のようなことについて私はお聞きしておるのですが、世論は松川事件被告をかわいそうだと思つておる。私、鉄道から出たのですが、たつた七寸か八寸のスパナで継目板がとれる道理はございませんということだけしか私は知りません。ほかの深いことはしりませんが、そこだけは私考えております。どうか法務大臣におかせられては今日の独立した司法権というものを一歩踏み込んで属地主義まで獲得した、このことを念頭に置いて――それは一歩一歩日本独立を獲得する一段階である、これだけで満足するのではない、そういうことから押してこの松川事件について政治的圧力がないように、そうして公正に、日本裁判が法廷以外の人民大衆あるいは世界大衆を納得せしめ得る裁判、これが裁判目的であろうと思うのです。被告をさばくことが裁判目的ではない、国民全部をさばくことが目的なのだ、そうして独立のための正しい裁判が与えられるように、属地主義がなつた機会に松川事件を例にあげてお尋ねをするわけであります。
  6. 犬養健

    犬養国務大臣 まず最初の刑事特別法のことについて申し上げます。これは御承知のようにNATO協定が批准されました結果、かねての日本アメリカ国との間の申合せのように、こちらからNATO協定の線と同じような体裁に刑事裁判権を獲得したい、こう申し込んだわけであります。それがこのたび実現いたしました。その事務上の必要から刑事特別法改訂の御審議をお願いしておるわけであります。従つて米国西欧諸国とのとりきめとまつたく同じなのでありまして、ある点は日本の方がずつと権利が進んでおる点があるのであります。それはほかの国では米軍施設区域犯罪を犯した者が逃げ込んだときでも入れないのであります。こちらでは警備をしていないところには入れるというようなところまで獲得しておるわけであります。舘さんの御指摘の公務執行中はどうかといいますと、アメリカと諸外国とのとりきめのように、公務執行中であつた公務を命令してあつたという証明書がありますならば、こちらは疑わしいときは反証をあげる、どうもほんとうだというときは公務執行中として、その犯罪向うで調べるということになるわけであります。しかしそれにも非常に厳格な意味をつけてありまして、もつときびしくいえば公務執行上といいますか、公務に必然伴う仕事をしている間の犯罪ということでありまして、たとえば公務の間にタバコに火をつけて、それを枯れ草にほうつて火事が出て家が燃えた場合、それは公務中であつて公務に伴う仕事ではないというので、こちらが調べることになるわけであります。そういうように非常に厳格にやつております。私はこの問題は、国力を回復し、国の地位を回復するためには、その国民は必ず刑事裁判権について自尊心の満足するものを要求するのは、どの時代でもどの国でも例でありますから、この点は一歩も譲らずに参つたと思つております。この精神をひとつ御了承願いたいと思います。  次に松川事件の問題でございますが、私は御承知のように個々の裁判を監督する立場ではございませんが、立会検事の上司としてこの種の事件にはすこぶる関心を持つております。また世間でいろいろ雑誌などにおいて、あるいは新聞紙上松川事件についでの批判が行われておりますので、私は自発的に各種の材料、資料を取寄せまして、みずからも検討いたしております。十分に非常識のないようにいたしたいと思つております。  それから検察庁を監督しておるものとしましては、政治的な意味合いをこの種のものに入れないということは、就任以来厳守いたしているつもりでございます。ことにことしですが、岡田春夫君が多分その事件を御承知と思いますが、ある県である人がある人をなぐつた。なぐつた方は与党の幹事長の親類でありまして、なぐられた方は社会党の左派の人なんでありますが、いかにも地方のだにのような感じが私はいたしますので、この者を起訴いたしました。そのように、私の在任中はそういう問題に政治色を入れないということを信条にいたしておりまして、舘さんの御心配になつておられます松川事件については、政治的色彩などを入れては後世恥が残りますから、そういうことは断じてしないつもりでおります。いろいろ批判が行われておる事件でありますから、十分資料を取寄せて検討いたしたいと思つております。
  7. 館俊三

    館委員 ひとつ話をして終ります。属人主義を払拭してしまうという改訂については、アメリカ国会で非常にいやがつたという新聞報道を見ております。そのいやがつたというアメリカ国会をとりなさんがために、公務によつて軍人属地を離れる場合にこういう形をとつたのではないかという考えを私は持つてつたの、だということを一言つけ加えておきます。  それからもう一つ共同デスクから来た、アメリカ人がそれをやつたのを目撃したという、スぺースを費した各新聞大々的記事、これについては大臣はとういう言うにお考えになるか、こういうことがほんとうであるか、うそであるかは知らぬが、そういうことがどんどんと港間に行われておるという状態では、日本法治国の手の届かない底流に、何か国民の割切れないものが動いておるというようなことを国民全部は今残念ながら意識しておるのであります。鹿地事件のごときにいたしましてもその通りでありますが、今度の事件にいたしましてもそういう国民政治に対する疑惑の念が底の底でうかがわれるから、そういう気持を持ちながら動いておるということが考えられる。  それからもう一つ、振り返つてみますと、下山さんは私は懇意でしたが、下山事件があつた三鷹事件があつた松川事件があつた、そういうものがそろつて出たときにはちようど労働攻勢が一番ひどいときでありまして、そういう労働攻勢とマツチしながらそういうものが起きて来たようにも考えられるということは、非常に遺憾のきわみであります。労働運動をやつてつたり、労働運動立場に立つ政治運動をやつてつた場合に、どうもそういうふうに、関連して考えるのはよろしくないかもしれぬけれども考えられる。定員法でやられたときにそういうものが三つそろつて出て来ておる。私は非常にいやな感じがするのであります。今度の松川事件判決が十二月にあるでありましようが、そういうふうに深い考え方を持ちますといやな気持がいたしますので、私ども心配しておることのないように、家族たち心配しておることのないように、ことに支援をしておる人たち、あるいはそれに関心を持つて底流に何かが動いておるという信頼感を持てない国民信頼感をとりもどすことのできるような立場で、日本裁判所があつていただきたいこれをお願いいたしまして私の質問を終ります。
  8. 犬養健

    犬養国務大臣 十分御心配の点は了承いたしております。ただ公務執行中という問題ですが、これはNATO協定で特に早くからアメリカがどこの国とも公務執行中についてはそういうとりきめをしておるのでありまして、アメリカ上院がやかましいからこれを譲つたという種類のものでないことを御了承願います。アメリカ上院ではなるほど議論が相当ありましたが、その議論のよつて来るところは、簡単に申し上げますれば、アメリカの兵隊のおつかさんたちが、自分たちのむすこは日本を守るために朝鮮に行つて死んでいるんじやないかというような一種の素朴な国民感情からそういうことを言つたわけであります。日本を守つているのにその日本裁判を受けるというのはおかしいじやないかというような素朴な国民感情から申しまして、それが若干アメリカ上院にも反映しておるようであります。ただいま申しましたように、すべての時代のすべての国民が、その国力を回復するときには、刑事裁判権というものは根本の問題でありまして、このプリンシプルは断じて譲れないということを主張したわけでございます。そしてアメリカもこれをついに快く了承した次第であらます。ですから、かけひきに公務執行中という問題を使つたのではございません。どうかその点を御了承願いたいと思います。
  9. 館俊三

    館委員 デマみたいな、巷間流布されたものについてはお調べになりましたか。
  10. 犬養健

    犬養国務大臣 松川事件については、それはいろいろありますが、刑事局長もその都度資料を集めて調べております。私はこの国会の始まる少し前に松川事件に関するすべての資料を手元にもらいたいと申しましたが、実はこの通り忙しいもので全部読んでありませんけれども輿論一種疑惑を持つているということを十分に念頭に置きながらこの事件に処している次第でございます。きよう御了承願いたいと思います。
  11. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 この法律にいう国際連合軍というものはそもどんなものであるか、法理的の性格を伺いたい。
  12. 犬養健

    犬養国務大臣 定義については津田課長から申し上げます。
  13. 津田實

    津田政府委員 国際連合軍と申しますものは、一九五〇年六月二十五日、六月二十七日及び七月七日の国際連合安全保障理事会決議、一九五一年二月一日の国際連合総会決議に従いまして朝鮮軍隊を派遣しておる国、その中でアメリカを除きますが、そういう国の軍隊でありまして、それが具体的に朝鮮に派遣いたしました陸軍及び海軍で日本国内におるものをさすわけであります。
  14. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 そうすると、国際連合機関でありましようか。
  15. 津田實

    津田政府委員 国際連合機関とは申し上げかねると思いますが、これらの決議によりまして、朝鮮軍隊を派遣した国の軍隊でございます。こういうことになると思います。具体的に申しますれば、当該国機関と言わざるを得ないと思うのであります。
  16. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 もう一つ国際連合軍日本滞在する数と、それによる一年の犯罪の数は、どのくらいでありましりようか。
  17. 津田實

    津田政府委員 昨年の五月から本年六月までの統計でございますが、英連邦関係軍軍人犯罪人員が四百一名、それからその他の諸国の者が四十名、合計四百四十一名であります。
  18. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 犯罪種類は、大体おも立つたものはわかりませんか。
  19. 津田實

    津田政府委員 一番多い数字に上つておりますのは、窃盗でございまして、これが四分の一の百一人を占めております。その次が暴行でありまして七十六名、そのあとは、それぞれ大した数字にはなつておりません。
  20. 小林錡

    小林委員長 古屋君、外務大臣外務委員会の方へ行かれることになつておるそうでありますから、すぐひとつ外務大臣に対する質疑をしてください。
  21. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 それでは外務大臣お尋ねいたしたいと思います。ただいまも法務省から承つたのでありますが、国際連合軍と称するものが日本滞在しておりまする根拠、私ども平和条約が締結されました後九十日以内に日本から撤退すべきものであると心得ておるのございますが、ただいまも日本に駐留しておるのでございましてその根拠を承りたいことが一つと、それからただいま法務省から承つたのですが、国際連合軍と称するものは外務省としてはいかなるものを考えておるか、この二つを承りたいと思います。
  22. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 国際連合軍日本滞在しておりまする根拠は、サンフランシスコ条約と同時に交換されましたいわゆる吉田アチソン交換公文があります。これは形は交換公文でありまするが、政府としては条約一種であると認めまして、国会に提出してその承認を求めたのであります。これは平和条約安保条約とともに国会の多数によつて承認されましたので、これに基いて国連軍日本滞在の便宜を供与しております。  それから国連軍と称するものはどういう種類のものであるか、これにつきましては、国際連合総会勧告に基きまして韓国側軍隊を派遣しておる、これらの国々に所属する韓国側に派遣された軍隊、これをもつて国連軍日本側考えております。
  23. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 そういたしますと、朝鮮の戦争が終つてしまえば国連総会において勧告された軍隊というものは解散するかしからざれば撤退しなければならぬことと心得ておるのでありますが、それが日本滞在をいたしております。ただいまのお話では吉田アチソン交換文書に基いてやつておるのだということであります。なお平和条約の五条に基くところの日本国連に協力する義務、これは二つだと思いますが、それがございます。しかしながらすでに朝鮮休戰になりますと同時に勧告に基く軍隊というものは国連軍隊としてはなくなるのではないか。この点の見解を承りたいと思います。
  24. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは国連総会勧告によつてなされたものでありますから、将来政治会議等が円滑に終結いたしますれば、おそらく国連総会でまた勧告――これはもう済んだというか、あるいはまた何か別のことをやるのかもしれません。ただいまのところは国連総会勧告はそのまままだ続いております。続いている限りにおきましては、国連軍は引続き国連協力の趣旨から軍隊をとどめておくものと考えておりますが、政治会議の動向によつてはかわるであろうかと考えております。
  25. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 そうしますと政治会議において完全に平和関係にもどりますならば、もうないということになりますか。そういう臨時的な期間付関係に置かれておるものでありましようか。
  26. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は当然そうだと考えおります。
  27. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 なお一つお尋ねしたいのは、この議定書でございますが、議定書を結ばなければならない理由を承りたいと思います。私どもから考えまずならば、この議定書かございませんければ当然日本属地主義で、日本刑事訴訟法に基く適用か受けられること存じるますが、ただいま御答弁のに対することを、最初から特に議定書によつて条約が締結され、刑事特別法をつくつてやらなければならないということのその理由と必要性をひとつ承りたいと思います。私どもは改悪と考えられるのでございますが、改悪を御承知の上でやられておるわけですか。
  28. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 一国のうちに外国の軍隊が駐留しておる例は、国際慣習上から見ますとしばしばあるのであります。ところがその軍隊が、一国の軍隊が外国におりますときは軍隊としての特別の特権は与えられますけれども、その特権の内容につきましてはいろいろ区々でありまして、国際慣習上もしくよ国際法上一致したものがありません。特権を与えらるべきものであるということは確立しておりますが、その内容については一致しておりません。従いまして国際法上もしくは国際慣習上はつきり具体的にこれをきめるような基準ができておりません。従いましてその国々によりましてその軍隊を置くということを承認しますと、大体普通におきまして常に当該国間に協定をいたしまして、その軍隊の地位をいかに取扱うかということを決定しております。そこでわれわれの方も国連軍に対しましては刑事裁判権のみならず、ほかの点につきましてもこの軍隊の地位に関する協定をつくる必要があると思ひまして、従来から交渉いたしておりましたが、双方の主張がややかけ違つておりまして、今日まで協定に到達しなかつたのであります。しかし幸いにしてNATO協定アメリカについて効力を発生しましたから、これに基いてNATO協定と同趣旨の協定を結ぶことについて合意が成立したわけでありますが、これは刑事裁判権のような特殊のものであつて裁判所もしくは法務省その他いろいろ関係する向きがありますから、たとい一時的のものであつてもはつきり協定をつくつておくことが双方のために必要であると考えまして、今度の規定をつくつたわけであります。内容についてこれが利益であるとか不利益であるとか御意見はいろいろありましようけれども、従来国会におきましても私どもは常に各党の議員からすみやかにNATO協定と同趣旨のものを裁判管轄権としては設定すべきものであるという主張を聞いておつたのでありまして、幸いにして今度は各議員の御意見の趣旨に同趣旨のものかできたことをけつこうなことだと思つております。
  29. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 特に基本となるべき条約が締結されないにかかわらず、この刑事訴訟法だけを先にきめなければならなかつた必要性があつたかどうか。それが日本のためにどういう利益があつたか。私どもから申しますならば、むしろ逆に日本に不利益な、いわゆる日本独立権を侵害されるような、さような制限を受ける形の議定書であり、刑事特別法であると思うのです。基本法の条約がいわゆる無条約状態であるにかかわらず、この刑事訴訟法だけ特にかような議定言によつて制定しなければならなかつたという理由は、どうなんでしようか。
  30. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 先ほど申しました通り、外国の軍隊が国内におりますときの享有すべき特権につきましては、公務執行中とかあるいはその使つております施設、区域内における犯罪については、その軍当局が第一次の裁判権を持つということは、大体国際法の学者がいずれも認めておるところでありますが、公務執行中以外の犯罪とかあるいは施設、区域外の犯罪については、必ずしも国際法の規定が定まつておりませんし、また各国における慣習も違つております。従いましてこの点は双方で主張はいたしましよう。もし条約がなければどちらに裁判管轄権があるということを主張いたしましようが、これはどちらの主張も条約のない限りは一方的になかなか貫徹することは困難であります。そうしてNATO協定はようやく今回発効いたしたのでありますが、それまではセンデイング・ステートといいますか、軍隊を送る国、つまりアメリカ等が非常に反対をいたしておりましたが、リシーヴイング・ステートであるヨーロツパ諸国は、ぜひこれでというようなことで、ほとんど多数の国が、これが最も新しい観念に基く裁判管轄権、その他の軍隊を駐留せしめるやり方であると認められて来ております。従つて今回これに基いてはつきり具体的方針をきめたわけでありまして、御意見の相違はありましようが、日本の主権等がこれによつて特に侵害を受けることはないと考えております。また国連軍を国内に置くということは、先ほど申しました通り交換公文国会が承認したことによつてこれが認められたことになります。そういたしますと、その中で現定いたすべき軍隊の地位に関する条項は、裁判管轄権以外には、ただいまのところ税金であるとか、あるいは施設内におけるPXの施設をどうするかとか、消費税をどうするかというような問題、主として財政、経済問題に限られると思います。そこでアメリカの駐留軍との間の行政協定は十月二十九日に発効いたしましたので、これと同時に、あるいはできるだけ早く裁判管轄権を確定することと、そうしてアメリカの駐留軍に対する取扱いと、国連軍将兵に対する取扱いを同一にすることが必要であると考えましたので、今回協定を結んでその措置をとつたような次第であります。
  31. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 外務大臣はいつも秘密外交をやつて、最初にきめてしまつて、そうして国会にこれを押しつけるというような態度でこれまでもしばしば行われておりますが、本件もただいまの御答弁によりますと、二十九日に効力を発生する、従いましてこの議定書の外部的国家関係においては二十九日に効力を発生しておるものを国会に持つて来てこれを承認させよう、こういうことでありまして、私どもから申しますならば、国会を非常に軽視しておるような結果になる。この点はわれわれは承服できないのでございます。なおただいまの御説明によりましても私ども大体承服できませんけれども外務大臣は時間がないそうですからこれくらいにしておきます。
  32. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私遅れて来ましたので質問があつたかもしれませんが、国連軍との刑事特別法案を見ますると、第一条では朝鮮に派遣した軍隊に限るといつておりますが、これは現在朝鮮におるものだけに限つておるものと思いまするが、ほかにおる国連軍がもし日本に来たら適用はないものと解釈してよろしゆうございますか。
  33. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは先ほど古屋君に申し上げましたように、ただいまのところでは休戦協定ができて今政治会議をやろうとしていますから、これでもつて事態は円満に収拾されるものと信じておりますが、りくつから言いますと、国連総会勧告はまだ生きておるわけであります。もし将来――そういうことはありますまいが、万一紛争が続くという場合には、将来朝鮮国連軍が新たに派遣されるという場合もりくつの上では考えられるわけでありますから、今派遣しておりまする国連軍と、将来派遣されるべきことがある場合には、その国連軍もこの協定に入ることによりまして同様の取扱いを受けますが、朝鮮に派遣されている軍隊以外のものは、これには適用はありません。また日本としましてはそういう軍隊を国内に何かの都合で便宜供与をするというような場合には、やはり新たなる条約がいりまして、それは国会の承認を必要とすると考えております。
  34. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 今の場合は朝鮮におる国連軍とだけの条約です。従つて条約のないところの派遣軍に対しては、この特別法は適用されない、こう心得るが、過去の経験において見ておりますると、なくても同様に取扱うべきものだという主張をされるようにわれわれは懸念をいたします。そういうことはありませんか。
  35. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この条約朝鮮に派遣された国連軍に限つておりますから、将来また新たに朝鮮に何か国連軍として派遣されるものがありますれば、この条約に加入することによつて同様の取扱いをすべきは当然だと考えております。しかしそれ以外のものは、第一日本に派遣されるについては日本政府の承認を必要といたします。日本政府が承認するためには国会の承認を必要といたします。その手続なくしては、外国の軍隊日本に派遣できません。けれども特殊の、たとえば軍艦が親善の意味で訪問するというような、ごく数日間滞在するという例は国際間にありまして、これはほんの行政事務として行います。この点に関しては国際法も確立しておりますから新たに法律をつくる必要はないと考えますが、それ以外の比較的長期の何箇月か滞在することは、新たなる条約がなければできません。またそういうことになりますから何もなしてもつて同様の取扱いを受けるというような主張はあり得ないと考えます。
  36. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 ただいまの最後の点ですが、議定書の調印が十月二十六日に行われておるようですが、その当時はすでに二十九日がら臨時国会が召集されることが閣議で決定された後であります。従いまして臨時国会召集が行われることが明確になつておりますならば、この調印も国会承認後にされることが、当然国会の意思を尊重される態度だと思うのですが、それをあえて二十六日にやつた理由を承りたい。これば国会無視ということになると思います。外務大臣のお気持をひとつ伺いたい。
  37. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 日米行政協定は九月二十九日に調印をいたしました。これは準備その他の必要がありますので、一月後、つまり十月二十九日に発効することにいたしました。九月二十九日ごろにはまだ国会がいつ召集されるかということはわからなかつたのであります。従いまして行政協定は十月二十九日発効ということにきめて調印をいたしました。そこでアメリカ軍と国連軍の将兵との間に取扱いの差別がない方が好ましいということと、先ほど申したように裁判管轄権等は一日も早くはつきりしてしかもその趣旨がNATO協定であるならば、私としては日本側に有利な協定であろうと思いましたから、これは変則でありましたけれども、一日も早く裁判管轄権を日本側に獲得することと、国連軍将兵とアメリカ軍将兵との間に差別待遇をしないようにという意味から、二十九日に発効させることにしてこの調印をいたしました。従いまして、これは例としては異例に属するものでありますが、今言つたような事情で国会開会も承知いたしておりましたけれども、そういうような事情がありましたので特に調印を先にいたしまして、国会の承認を後から求めるということにいたしました。この点は御了承願いたいと存じます。
  38. 小林錡

    小林委員長 ほかに御質疑はありませんか。――ほかに御質疑がなければ両案に対する質疑はこれをもつて終局いたしました。  これより両案を一括して討論に付します。討論の通告がありますから、これを許します。古屋貞雄君。
  39. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 私は本法案に反対をするものであります。  その理由は、まず第一に、国際連合との間に日本が無条約状態に置かれておるということであります。それからもう一つは、ただいま外務大臣からも御答弁がございましたように、朝鮮に派遣された軍隊だけに対して、基本となるべき条約が締結されておらぬのにかかわらず、特に刑事特例だけの問題を取上げて決定するということは、審議の上から申しましても、審議の反則であるから、私どもは反対であります。  それからなお、無条約状態であり、本法案が締結されないということが、むしろ独立国家としてのいわゆる日本法律をもつて国際連合軍の処罰をし、取扱いをする一つの権力が保持されておりますのに、本法案が通過いたしますと、その日本独立国家としてのバロメーターである刑事裁判権に対する制限を、変則的な審議にかかわらず、日本がみずから進んで認めるということになるのでございまして、この点については私どもは絶対に賛成をしかねるのであります。  なお、外国の軍隊日本滞在しておる。しかも占領軍当時からのそのままの状態において平和条約発効後においても継続して滞在しておる。これに対するところのいろいろな経費の問題などについても、すべて日本が負担をしておる。たとえば演習場の問題とかあるいは兵舎の問題であります。特に日本法律に基きまして適用せられる状態に置かれるべきものが特別な制限を受けておつた。ところがNATO方式によるこの法案の内容そのものについては、なるほど従来よりもよくなつておることは認めますけれども、その前提となるべき滞在するということはけしからぬ。われわれ独立国家といたしましては、無条約状態に置かれておるのにかかわらず滞在すること自体に対して反対である。かようなことから考えまして、私どもはこれに対して絶対に反対をする次第でございます。  なお、アメリカとの問題につきましては、これまたただいま申し上げたような理論から申しまして、平和条約の五条、六条そのものが、日本独立を制限する、完全独立国家の姿でないので、この条約に対して私ども根本から反対をして参つておるのであります。しかもことに、この五条に基く安保条約そのものによる行政協定は、従来いろいろ日本独立に障害、制約を与えました。これは私どもは憲法違反だという確信を持つておりますので、憲法違反の現在の状況よりも多少よりよくなるということはわれわれ認めますが、その根本の問題といたしまして、さような安保条約が結ばれておりますこと自体がわれわれ反対でございますから、さような意味合いからいたしましても、この法案に対しましては反対をするわけでございます。
  40. 小林錡

    小林委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決を行います。日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法の一部を改正する法律案、並びに日本国における国際連合軍隊に対する刑事裁判権行使に関する議定書実施に伴う刑事特別法案、以上一案に賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  41. 小林錡

    小林委員長 起立多数。よつて両案は原案の通り可決すべきものと決しました。  この際お諮りいたします。ただいま議決いたしました二法案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 小林錡

    小林委員長 御異議なしと認め、さようとりはからいます。     ―――――――――――――
  43. 小林錡

    小林委員長 次に法務行政に関連する保全経済会等特殊利殖機関の調査に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますからこれを許します。木下郁君。
  44. 木下郁

    ○木下委員 国税庁長官に伺いたいのですが、保全経済会のことが問題になつております。最近起つた新しいえたいの知れない金融機関、これには匿名組合方式と株主相互金融の二つ種類がありますが、これが世上問題になつております。これは金融保護の部面からも大蔵省で御検討こなつて来たことと思いますが、税金をとる立場からはこの点をどういうふうにお考えになつて来たか。銀行局あたりは、問題の保全経済会に限つて純然たる匿名組合ではないと申しておりますが、純然たる匿名組合ではないが、これに準ずる一種の無名契約のものだという解釈で、金融、預金、その他の関係の取締りのための権力の発動はしないで来たというような話でありました。国税庁といたしましてはこれをどういうふうにお考えになつて来たか伺いたいと思います。
  45. 平田敬一郎

    ○平田説明員 お答え申し上げます。保全経済会につきましては、従来から国税庁といたしましても、地方の税務機関をいたしまして、いろいろ調査をさせていたのでありますが、今御指摘のように、その法律上の性格がなかなかはつきりしないとこりがありまして、課税関係も相当複雑なところがあつたわけであります。しかし私ども税務当局としましては、こういう仕事をやつている一種の団体の法的性格につきましては、なるべく銀行局それから法務省等との見解と歩調をそろえまして課税をするのが、課税の適正を期するゆえんではないかということで、実は早くからその方面の見解が一致し、きまるのを待つていたのでございますが、本年度になりまして、大体におきまして、今お話通り、匿名組合かあるいはこれに準ずべき一種の無名契約と見るべき節が多いのではないかということに意見が一致したように、私ども拝承していたのでございます。これに対応いたしまして、税務当局といたしまても、いろいろ調査をし、さらに課税関係を明らかして来たわつけでございます。まず法人でございませんので、なかなか会自体の所得というものは、法人の形でつかむことができない。そこに非常に問題がございまして、結局二つに課税関係はわかれて参るのでございます。一つは代表者でありまする伊藤氏に対する課税をどうするかという問題、いま一つは出資者に対する課税がどうなるか、この二つの問題にわかれて来るかと思います。  前者の問題につきましては、今まで一応給与その他の賞与の形で伊藤氏個人としまして会から所得を受けておりまするので、この方はそれぞれ課税いたしております。その課税実績は簡単に申し上げますと、昭和二十六年分が所得金額で百三十九万円、税額で五十七万八千円、これはすべて納税済みになつております。それから二十七年分は、これも税務署等でよく調べまして、本人の追加申告を得て確定した額が、所得で二百三十七万一千余円、それに対しまして税額が七十一万一千余円ということになつておりまして、この方も納税済みになつております。しかし問題はこれだけには実はとどまらないわけでありまして、保全経済会の所得を、結局匿名組合あるいはこれに準ずべきものであるということになりますると、その内容をよく調べましてもしも伊藤氏自体が得ておりまするこのほかになお余剰がある場合におきましては、これは伊藤氏の所得になるということになるかと思いますが、その辺のところにつきまして実は先般来いろいろ調査をいたしているわけでございますが、これにつきましては先般のようなこともありまして、目下資料を整理いたしまして、今後はつきりした結論を下すべくなお調査を継続中でございます。法律関係その他の問題もなかなかございますので、結論が出るのにはもう少しかかるのではなかろうかと存ずる次第でございます。  いま一つは、出資者に対する配当の課税の問題でございます。実はこの問題は預金と見るかということに一つ問題があつたわけでございますが、これは結局預金とは見れない。しかも出資者が保全経済会という組織を通じて所得を得ているということは事実でございまして、この所得をどのようなものとして課税するかということに問題があつたわけでございます。預金と見ますれば、これは源泉課税ができ、従来もできたわけでございます。法人形態でありますれば、法人の配当といたしましてこれも源泉課税ができたわけでございます。ところがそのいずれの形態もとつておりませんので、結局この出資者に対する配当に対しましては、その他の所得としまして今まででございますと申告で納めさせるよりはかなかつたわけでございます。ところがいろいろ調べてみまと、なかなか正確な調査ができない。口数が多いのと氏名、住所等が不明でございまして、普通の申告で納めさせるという方法ではとうてい適正な徴税ができないという大体の結論を得ましたので、大蔵省といたしましては、これはやはり配当や預金と同じように源泉課税をした方が一番いいじやないかという趣旨で、去る二月の国会に実は源泉課税をする法律案を提案いたしたわけでございます。ところが解散等の関係もありまして、四月に成立を見ないで、やつと先般の七月に成立を見まして、八月からこれを実行することになつた次第でございます。従つて八月分からは匿名組合員に対しまする配当にいたしましても、二割の源泉課税をする、この法的措置が成立を見まして実施に移したわけであります。その課税の結果は、八月分と九月分、この二つにつきまして実績がございますが、八月分は課税額で九百五十五万八千余円でございます。これは配当の二割に相当する所得税額でございます。このうち二百万円ほどは納まつておりまするが、残余のものは未納になつております。それから九月分が千七百五十八万一千円、これがやはり源泉課税といたしまして一応税額はきまつておりまするが、この分も納まつていないようであります。税務署といたしましては督励をいたしたようでございまするが、ごく最近になりましておそらくこのころから大分金繰りが苦しかつたと見えまして、未納になつておる次第でございますが、私どもといたしましては、少くともこの分につきましては、適切な方策を講じまして徴収はしたい、このように考えておる次第でございます。  以上が一応課税の状況でございます、先ほどのお尋ねは、若干こういうことに対するお尋ねもあつたようでございますから、ちよつと触れてみたいと思います。私ども税務当局といたしましても、性格なり構成なり責任関係等がはつきりしない相当大きな事業体があるということは、課税の上から行きましても、実はいろいろ問題がございまして、はつきりしないところがあつて、解釈あるいは事実の調査等につきましても困難をする場合も多いのでございます。従いましてできますればこういう相当大きな事業体に対しましては、はつきりした立法措置ができまして、それによりまして明確に課税ができるということになりますれば、適正な課税を期する上におきましても、非常にいいことではないか、このように考えておる次第でございます。
  46. 木下郁

    ○木下委員 事実の調査には数が多いのですから、多少のひまがかかりますけれども、それが匿名組名であるかどうかとか、あるいはこの事業が伊藤個人の事業であるかどうかというようなことの法律的判断は、やはり税金を取立てる方の大事な地位におれば、そう長く考える必要もないことであるし、またそう長く考えられては国民はかなわぬと思う。そういう点についてかれこれ申し上げたいこともありますが、この保全経済会にまた附属して仏教保全経済会というものが、大谷参議院議員の名においてやつているというのですが、それの税金はどういうふうになつているのですか。
  47. 平田敬一郎

    ○平田説明員 今の保全経済会に関連した関係におきましては、あわせて調査いたしておりまして、その部分は保全経済会の所得の調査と同様に、それぞれ課税すべきものは課税し、調査を進めた上で決定して行きたい、こういうふうに考えております。
  48. 木下郁

    ○木下委員 今の税金の点ですが、保全経済会が大ざつばに計算して約五十億近くの金を、出資を集めておる、そうしてこれに対して低いところで月二分、高いところでは月八分という利益配当をしておる、それに対してならしにして、低く見て三割の利益配当をしている、そうすると一年に五十億として、三割にして十五億、これに対して今のお話のような税金ということは、これはじようたんみたいな話である、これは私から繰返して言わぬでもよく御承知と思いますが、親子そろつてつておるような小さな商工業者、そこには税務署の連中が朝からすわり込んで帳簿の端から端まで、領収書の末まで調べてやつて来ておる、税金の重いのに国民は弱り切つている、そのときに、常識的に考えて一年に十何億というもうけの利益を配当しておるというものに対して、普通ならとれるやつの何百分の一というようなわずかな税金をとつて、三年も四年もほつたらかして来たというような点についてはどういうふうにお考えになりますか。常識的に判断してそれは匿名組合だということで御解釈になつて取締りの方をなさらなかつたのか、それも五十億からの預金に対して――預金と申しますか、出資金に対して十五億近くも配当しておるということを御承知になつてつたのかおらないのか、まずその点から伺います。
  49. 平田敬一郎

    ○平田説明員 従来の出資者に対しまして配当をされた総額は、昭和二十五年が二千二百万程度、二十六年が二億一千万程度、二十七年になりまして七億円程度になつているようなわけであります。もちろん従来といえども配当の受領者に対しまする課税につきましては、できる限りの調査をいたしまして、課税しておるものもございます。ただいかにも非常に口数が多いのと零細である、それから先ほども申し上げましたように、調査をいたしましても、住所、氏名がはつきりしない、こういう点がございますのて、私どもといたしましてはやはりなるべく早くこれは源泉課税にした方がよいということで、ことしの一月初めにそういう方針をきめまして、国会に提案いたしまして、先ほど申し上げましたようなことをいたした次第でございます。法律関係その他がはつきりしないために遅れましたことにつきましては、私どもももう少し早く適切な措置をとるべきであつたかどうか、それは御批判があると思いますが、よく調べました上で適当な結論を下しまして、それぞれ課税上も妥当な結果を得るように努めておる次第でございまして、それがどうも最近になりましてそれぞれ適切な課税ができるようなときになりましてかような事態になりましたので、現在のところでも未納となつて、この措置をどうするかということを問題にしておる、こういうのが現況でございます。
  50. 木下郁

    ○木下委員 住所氏名がはつきりしないというようなお言葉がありましたが、これはまつたくふに落ちないことなんです。税務署が普通に一般人に対してやるくらいのやり方をなせば、帳簿をごらんになれば何の苦労もなくしてすぐわかる。これを大きいものだからということで係の者がいいかげんなことをした。そういうやり方だから、先日もこの委員会で話がありましたが、上の方では国会の大蔵委員会に涜職的な行動があつた、あるいはまた本人は、自分が金を政治的に使つておるから大丈夫だというようなことを言つておるというふうに世間にとられておる。そういう点は十分帳簿を各地にわたり、また本店には帳簿が全部あることと思いまするが、そういう点はお調べになつたのでありまするか。それともそういうところはこまかくは調べなかつたのではありませんか。その点をちよつと……。
  51. 平田敬一郎

    ○平田説明員 もちろん出資者の配当の受領先につきましては調査いたしましたことは、先ほど申し上げた通りでございます。ただこの契約の内容は必ずしも住所を記載する必要もないと申しますか、氏名だけでもいいような契約になつておるようでございます。それから住所がありましても、調べてみたが正しい住所が記載されていない、こういうのが非常に多うございます。従いまして従来のものにつきましては、今申し上げました通り課税がうまく行かない。そこで私どもの方はどうしても源泉課税が一番いい道だということで今年からそういう措置をいたした次第でございまして、もちろん従来といえどもほうつておいたわけではありません。相当いろいろな角度から調べまして、その調べました結果が、こういうものに対しては今申し上げましたような措置をとつた方がよろしいということでそれぞれ措置をとることにいたした次第でございます。
  52. 木下郁

    ○木下委員 支店、出張所だけでも二百近く日本全国にわたつてつておる。しかもそれがりつぱな建物を建築してやつておるのですが、それは全部どういう名義でやつて来ておりますか。そういう点はお調べになつておりますか。伊藤何がしの名前で全部やつて来ておりますか。そういう点については、伊藤に対して税金をとる意味においては当然調べなければならぬことだと思いますが、ただ法律的にそれが少しあいまいな、自分のところの腹かきまらぬからというようなことでほつたらかしておくべき筋合いのものではないと思いますが、そういう点はどういうふうになつておりますか。
  53. 平田敬一郎

    ○平田説明員 全部の財産につきまして所有関係まで調べたわけではございませんが、御承知通ります所得をどういうふうに調べるか、これが一番大事な問題でございまして、それに一番重点を置いておるわけでございます。従いまして全部の財産がどういう名義になつておりますか、今ここで申し上げるだけの資料はございませんが、先ほど申し上げましたように未納になつておる分につきましては、これは今財産関係を調べておりまして、御承知通り相当厖大な財産を持つておりますので、この分は間違いなく収納することができるのではないかと思つておりまするが、名義の関係を具体的にどういうことにつきましては、今ここで申し上げるだけの資料を持つておりません。
  54. 木下郁

    ○木下委員 だがしかしあれだけ大きく発展したのだから、それだけ伊藤の営業が発展したという御解釈であつたのですか。それとも法人格のない社団がそれだけもうけて来ておるというふうにおとりになつたのですが、この点お伺いしておきたい。
  55. 平田敬一郎

    ○平田説明員 その点は一番最初に申し上げましたように、匿名組合かあるいはこれに準ずべき一種の契約で伊藤が代表者としまして事業をしている、こういうふうに見えるのが一番事実に近いのではなかろうかということで調査を進め、今までのところそういう趣旨で課税をいたしておるわけでございます、従いましてその収益の課税につきましては、それぞれその収益が出資者に行つた分につきましては出資者に対して課税する。代表者が取得した分につきましては代表者に課税する。こういうことで行きまするのが、こういう事業体に対する課税の方法としましては一番適当ではなかろうかということで、今までのところはいたして来た次第であります。
  56. 木下郁

    ○木下委員 そうしますと、これは保全経済会の問題ではありませんが、今後国民の中で親子兄弟出し合つていろいろ仕事をして、その営業はおじさんの名前でやつておるというような場合にも、やはりそれがおやじ個人の仕事であるか、あるいは子供、親戚、友人が出した出資であるかは不明だという場合には、やはり匿名組合に準じて保全経済会と同様な課税のお取扱いをする御方針でございますか。
  57. 平田敬一郎

    ○平田説明員 親族間でやつております場合におきましてどうするか、これはなかなか事実の認定について問題があると思いまするが、かりに小規模で違つた人々が集まりまして類似のことをやつておる場合には、現在出しております所得税の取扱い通達におきましてはやはりそれぞれ各人ごとに利益の帰属するところへわけて課税する。法人格のないもの及び匿名組合等につきましてはそのような通達にしておりますので、もちろんそれによるべきだと思います。親族間におきましてどうするかということになりますると、おそらく事実の認定の問題がより一層複雑困難でございまして問題が多いと思います。しかし最近のように民法で所有権が各人ごとにはつきりわかれておりまして現在所得税も分離課税をしておるような状態でございますので、はつきりした証拠書類がありまして、共同事業だといつたようなものが立証できるような場合におきましては、これは考えなくちやいかぬのじやないかと思いまするが、実際問題としましては、そのような実体を備え、形態を備えた企業体曇るということは、なかなかむずかしいのじやないかと考えまするが、そういう問題につきましては、具体的ケースにつきまして判断をすべきではないかと考えます。
  58. 木下郁

    ○木下委員 私は親族の問のいうことを問題にしておるのではありません。親族の間ではよくそれが事実上あることです。しかし税務署の取扱いではそういう問題を全然無視して、やはりおやじ一人の営業だ、おやじ一人の事業だということでやつて来ております。それははたしてほんとうに親族間であるかどうか、親族の間であるからそれはうそだというふうに予断を抱いてやるということのお取扱いがあつてはいかぬと思います。その点はただ参考に申し上げただけですが、ただそういう意味で今後日本国中の小さな商売をしておるようなものがやれば、やはり保全経済会と同じようなお取扱いにせざるを得ないと思いますそういうことにやはりなりますか。
  59. 平田敬一郎

    ○平田説明員 所得税は今申し上げましたように、家族の合算制度をやめまして、今は各人ごとに課税するという大原則を実は戦後に打立てましていたしておりますので、内容が非常にはつきりしましておやじさんの事業と奥さんの事業と明瞭に区分すべき十分な資料、証拠があるというような場合におきましては、それぞれ別々に調べまして別々な所得として課税する。これは私どもといたしましても当然そうあるべきことだと実は考えております。
  60. 木下郁

    ○木下委員 今これが非常に世間で問題になつております。これは今までぐずぐず法律的な判断を確信をもつてやり得なかつたというところに大半の責任が私はあると思います。私は月七分とか八分とかいう高利を取ろうとしておる連中にも不心得な点があると思う。しかししろうとが考えても、何年か後には必ず行き詰まると思われるような問題を大蔵当局の法律的な判断がどうも確信を持つてできなかつたから、ほつたらかしておつてこういうことになつた。これは言い訳にならぬと思う。この際匿名組合なら匿名組合ということで、税金の面では普通の小さな連中をどんどん誅求される、あの気組みで、こういう問題こそほんとうにはつきりさせて、国民の前に一点の疑いもないような姿にすることが必要だと思う。その点を希望しましてこれで私の質疑を打切ります。
  61. 平田敬一郎

    ○平田説明員 御趣旨の点はまことに私どもそのように感じておる次第でありまして、適正課税はあくまでもすべきだ、これは私どもの終始一貫してかわらない考え方でございます。ただ昨年一年の間に大分発展しておるようでありますが、課税におきまする解釈をきめる場合におきまして、匿名組合と見るべきか、預金と見るべきか、そのへんのところはやはり国税庁だけの見解で独断的にきめるのはどうであろうかと実は考えまして、各方面ともよく打合せまして、今年二月でございましたか、私どもの方針としては解釈をきめましてそれに従いまして先ほど申し上げます必要な立法措置もし、あるいは調査もいたしまして、適正課税に努めておるわけでございます。なお今後におきましてももちろんよく実際の内容等につきまして取調べまして、十分課税上遺憾なきを期したいと考えておる次第でございます。
  62. 木下郁

    ○木下委員 その独善的にきめるのがいかがだろうかという臆病さ、その態度が私はいけないと思います。かんじんな国税庁長官というような責任の地位におるなら独自の見解ではつきりやらなければいけない、それを私は言つておる。右顧左眄するこの官僚の責任回避の姿、このために日本の国政を今日の沈滞の中に陥れておる点が非常に多いと思う。末端の小役人ならとにかく、役人の中では相当上の方の国税庁長官という地位におられるなら、独自の識見と独自の政治的な考えをもつてただ政治的にやれというのではない、法律の解釈だからあくまで厳格にやらなければいけませんが、そういう点を右顧左眄して責任回避の結果にそれがなる。そういう点は十分反省していただきたい。
  63. 小林錡

    小林委員長 他に御発言はありませんか。――他に御発言がなければ、次会の開会日時は公報をもつてお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午前十一時五十分散会