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1952-12-16 第15回国会 参議院 大蔵・労働連合委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月十六日(火曜日)    午後二時二十四分開会   —————————————  委員氏名   大蔵委員    委員長     中川 以良君    理事      大矢半次郎君    理事      伊藤 保平君    理事      菊川 孝夫君    理事      木内 四郎君            岡崎 真一君            黒田 英雄君            西川甚五郎君            平沼彌太郎君            小林 政夫君            小宮山常吉君            杉山 昌作君            森 八三一君            野溝  勝君            大野 幸一君            波多野 鼎君            松永 義雄君            菊田 七平君            堀木 鎌三君            木村禧八郎君   労働委員    委員長     吉田 法晴君    理事      安井  謙君    理事      波多野林一君    理事      村尾 重雄君            愛知 揆一君            大屋 晋三君            九鬼紋十郎君            野田 卯一君            早川 愼一君            山内 卓郎君            重盛 壽治君            片岡 文重君            櫻内 辰郎君            一松 定吉君            堀  眞琴君   —————————————  出席者は左の通り。   大蔵委員    委員長     中川 以良君    理事            大矢半次郎君            伊藤 保平君    委員            岡崎 真一君            黒田 英雄君            西川甚五郎君            小林 政夫君            杉山 昌作君            森 八三一君            松永 義雄君            堀木 鎌三君            木村落入郎君   労働委員    委員長     吉田 法晴君    理事            安井  謙君            波多野林一君    委員            愛知 揆一君            九鬼紋十郎君            野田 卯一君            早川 愼一君            重盛 壽治君            片岡 文重君   政府委員    大蔵政務次官  愛知 揆一君    日本専売公社監    理官      今泉 兼寛君   事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎君    常任委員会専門    員       小田 正義君    常任委員会専門    員       磯部  巌君    常任委員会専門    員       高戸養太郎君   説明員    日本専売公社副    総裁      勝田雄次郎君   参考人    全国専売公社労    働組合中央闘争    委員長     平林  剛君    公共企業体等仲   裁委員会委員長  今井 一男君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○公共企業体等寸労働関係法第十六条  第二項の規定に基き、国会議決を  求めるの件(内閣送付)    〔中川以良君委員長席に着く〕   —————————————
  2. 中川以良

    委員長中川以良君) これより大蔵労働連合委員会開会いたします。  先例によりまして私が委員長の職務を行います。公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件を議題といたします。先ず提案理由説明聴取いたすことにいたします。
  3. 愛知揆一

    政府委員愛知揆一君) 只今議題となりました公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件について、その提案理由を御説明申上げます。  本年三月二十二日に、全専売労働組合は、本年四月以降の賃金改訂に関する要求日本専売公社に対して提出し、両当事者間で団体交渉を重ねましたが、妥結に至らず、調停段階に入り、七月三十一日、専売公社中央調停委員会調停案を提示いたしました。これに対しては双方共に受諾しがたい旨を回答し、組合の申請により、八月二十三日公共企業体等仲裁委員会仲裁手続に移行し、委員会裁定を十一月二十七日下したのであります。  右裁定によれば、その第一項及び第二項の実施及びこれに関連する追加経費として昭和二十七年度予算に対し、更に約九億三千万円を要することとなります、この追加経費は本年度予算に含まれておらず、給与総額につきましては予算総則第六条の金額を超過することは明らかでありますので、これを支出することは予算上不可能であります。従つてこの裁定は、公共企業体等労働関係法第十六条第一項に該当するものと認められますので、本件国会に上程いたし、御審議を願う次第であります。  なお、現在御審議頂いております本年度予算補正案においては、本年十一月以降基準給与を一万三千七十四円として総額約十億円の給与改善に必要な経費を計上いたしましたが、これによつてもなお裁定第一項及び第三項の実施並びにこれに関連する追加経費として約三億六千万円を必要といたします。  以上本件提案理由を御説明申上げましたが、何とぞ慎重御審議の上、国会の御意思を表明願いたいと存ずる次第であります。
  4. 中川以良

    委員長中川以良君) 引続きまして、本件の経過その他につきまして補足的説明聴取いたしたいと存じます。今泉日本専売公社監理官
  5. 今泉兼寛

    政府委員今泉兼寛君) 詳細につきましては、お手許に差上げてあります公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件、この初めのほうに詳細に記載してございまするので、そのほうで御了承願いたいと思いまするが、只今政務次官から提案理由説明申上げました通り仲裁裁定は七項目ほどになつております。  第一項は、基準賃金は八月以降月額平均一万三千百円とする。第二項は、その八月から十月までの分については、公社は十二月中に一時金として支払うことができる。こういう規定になつておるのでございまするが、今政府といたしまして御提案申上げた、予算上、資金不可能だという点は、この前の専売裁定のときも予算上、資金上不可能とはどういう意味かということで議論があつたのでございまするが、現在政府見解といたしましては、予算上、資金上不可能だということは、成立予算に対して予算上、資金上不可能だ、こういう解釈をとつております。従つて当初今成立いたしております予算に比べまして、この一万三千百円を八月に遡つて実施いたしまするとすると、先ほど申上げました通り、九億三千百万円余の予算が要るわけでございます。仮にこれを補正予算、今御提出申上げてあります補正予算に対して然らばどういうふうになつておるかと申しますと、補正予算につきましては、その基準給与を一万三千七十四円というベースで組んでおります。従つてその差額が、これはもう三月までの不足分も含んでおりまするが、二億六千百万円余りというやはり補正予算に比べても予算が不足する、こういう結果に相成ります。その関係でどうしてもこの基準給与としては認められるけれども、八月から十月まで支給するという問題は現行成立予算に比べても、それから仮に今度今御審議願つておりまする補正予算通つたという仮定に立つてこれを比較して見てもやはり予算的に不足すると、こういう結果に相成るわけであります。それから三項、四項についてはこれは問題ございません。それから五項につきましては、夏季に支給した報償金のほかに当初予定された報償金の額を支給するもので、この改訂は御承知通り報償金給与総額のうちに入つておりません。従つて予算上これが給与額として総額から縛られる点はございませんので、今度の御提案申上げました中にも、この五項については触れておりませんが、結局政府資金的に可能であれば、これは公社総裁限りにおいて出し得る資金でございますれば、この五項は政府としては公社総裁裁定に任せるというこういうことに相成りました関係上、予算上、資金上不可能だという項目の中には入つておらない状況でございます。第六項の、本年度末において予定以上の利益を生じた場合は、公社はその一部を業績賞与として職員に支給せよと、この問題は今年度末になりまして決算をいたしました後において、そういつた業績賞与に相当するものが出るか出ないかという問題は具体的に申上げますと、明年の六月頃になつて見ないとわからない問題でございまするから、今から一体その金額が出るか出ないかということはまだ決定しかねる状況でございます。ただこういつた制度をとることが適当か不適当かという問題は現在でもあるわけでございまするが、折角こういつた仲裁委員会裁定もございまするので、公社といたしましてもそれから大蔵省といたしましても、勧告の御趣旨に副いまして、折角この問題については現在検討中でございます。七項についてはこれは問題ございません。さような状況で御審議を願つておる次第でございます。
  6. 中川以良

    委員長中川以良君) 次に、各当事者からそれぞれ説明聴取いたしたいと存じまするが、この際お諮りをいたします。公益企業体等仲裁委員会委員長今井一男君は追つてここに見えるはずになつております。それから専売中央闘争委員長平林剛君は只今ここに見えておられます。いずれも参考人といたしまして発言を許可いたしますることに御異議ございませんか。   (「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 中川以良

    委員長中川以良君) 御異議ないも  のと認めます。   それでは先ずこれらのかたがたより意見を聞きたいと存じまするが、最初専売公社側意見聴取をいたしたいと存じます。本日は専売公社総裁は病気のため不参をしておりまするが、副総裁が見えております。副総裁より御説明お願いいたします。勝田日本専売公社総裁
  8. 勝田雄次郎

    説明員勝田雄次郎君) 十一月二十七日に、かねて紛争中の賃金問題につきまして仲裁委員会裁定が下されまして、私ども公社の数回の裁定が常に実施されない状況に鑑みまして、現在我が専売公社におきまして労使双方非常な熱意を以て仕事を励んで相当の収益を上げておる現状におきまして、この裁定は全面的に実施を願いたいと、かように考えておりまするから、どうか皆様におきましても、よろしくお計らいを願いたいと思います。
  9. 中川以良

    委員長中川以良君) それでは次に組合側より意見聴取をいたします。平林専売委員長
  10. 平林剛

    参考人平林剛君) 私は全専売労働組合中央執行委員長平林剛であります。今回議題となつておりまする裁定の問題につきまして、そのあらましを申上げて御理解を得たいと思います。  私どもがこの裁定を出される最初としては、この四月に現行賃金基準賃金で一万四百円程度でありましたので、この額では十分な生活を維持することができないと考えまして、一人平均月額六千二百円を増額することを公社要求をいたしたのであります。昨年裁定では一万四百円と基準賃金定められましたが、組合員生活は私どもにいろいろ訴えて来る実状を考えましても、非常に困難な生活状態でありまして、これを改善するためにはどうしても基準賃金の増額が必要であつたのであります。同時に私どもといたしましては、国会でおきめになりましたように我々に対して年間約千九百四十流億円に及ぶ専売益金達成を指令いたしてありますので、私どもといたしましてはこの計画達成の基盤である専売公社職員生活労働力の再生産保障してもらいたいと思いまして、このような要求をいたしたのであります。特に専売公社職員労働生産性というものは戦前昭和九年乃至十一年当時に比較いたしますと、約戦前を一〇〇とすれば今日は二二五から一四〇の生産を上げておるのであります。ただ専売公社職員賃金が当時、昭和九年乃至十一年当時五十二円二十銭程度でありまして、それから今日の物価に引直して参りましても一万六千六百円以上の数字が出て参ります。而もこれは戦前と同じ程度生活を達するだけで、一万六千六百円の要求はまだ戦前の九〇%にしかならないという状態でありましたので、私どもはせめて戦前水準に近い生活水準を確保することにお願いをいたしまして、この要求案を提出いたしたのであります。この組合要求に対しまして結局妥結することができませんで、調停委員会或いは仲裁委員会手続を得まして今日に至つたのであります。御承知のように仲裁裁定は八月以降一万三千百円の基準賃金ということでございまして、これは途中におきまして調停委員会から提票をされました調停案は八月以降一万四千円でありまして、それより遥かに低い数字が出されておるのであります。而も調停委員会から提示された調停案には一時金として一万九百円を可及的速かに支給するようにという案が出されたのでありますが、今回の裁定にはこの数字も消えてしまつたということで、我々は今度の裁定につきましては大変不満に思つておるのであります。我々は調停案が一万四千円より低くまわつてまつ仲裁裁定不満であるばかりでなくて今度の問題については要求を提出してから仲裁裁定が出るまでに八カ月の期間を経過してしまいました。これは我々の生活保障するために公社側団体交渉して、最終的に賃金がきまるまで八カ月の期間を経過したということは、我々の生活が常にいつまでも保障されないでしまつておるということを示しておるものと思います。裁定が提出されたのちにおきましても、いろいろと紛議がありまして一向に解決をしない、こういう状態について我々としては大変残念に考えておるのであります。特に八カ月も経過した裁定、八カ月も待ちに待つた裁定でありながら一万三千百円にしかならなかつたということは、大変組合員の期待を裏切つたものとして裁定につきまして不満な気持を抱いております。私は今この低い裁定につきまして、直ちにかような不満のものであるから服従をしないというようなことを申上げるのではありません。公労法定めによりまして労働組合はどんなに不満であつてもこれには服従をすべきであるとありますので、我々としては法律定め従つてこの裁定を以ちまして紛争解決いたしたいと思つておるのであります。同時にこのような裁定でありますから、私どもとしては仲裁裁定が完全に実施をされることをお願いいたしたいと思うのであります。これは公労法建前から言いまして当然のことではないかと思うのであります。ところが今までの政府裁定に対する態度を見ますと、最終的に紛争解決すべき裁定出発点となつて、それから後に改めて大きな紛争が起り、而もその紛争が拡大して行くような事態にありまして、これらの責任政府にあるように思うのであります。特に裁定に対する政府考え方は、公労法が提示されてから何回も態度決定を行いましたが、その都度正常な運営を阻害するような決定をいたしまして、政府裁定に対する態度をめぐつて紛争が起つておることは、私どもとしても公労法について十分再検討しなければならんように思つておるのであります。又裁定についての政府態度の誤りであることは、昨年もやはり同様に基準賃金一万四百円という裁定が出されましたが、昨年の国会において、国会の結論としてはこの専売裁定は尊重すべきであるという院議を頂きました。然るに今年度提出されました補正予算を見ますと一その国会でおきめになりました裁定は尊重すべきであるという決定にもかかわらず、今度の政府国会に提出をいたしました補正予算は少しもそれを尊重する建前をとつておらないのであります。これは国会裁定を尊重すべしという決定をしたのにこのようなことであるということは、私は重要に考えておるのであります。昨年の裁定の一万四百円だけでなくて、昭和二十四年にやはり専売に対しては裁定第二号が提示されておりまして、そこには今回提示をされました業績賞与のことが昭和二十四年にすでに裁定をされておるのでありますが、これも未だに実現しないでいるということも、政府大変裁定というものに対して無関心であるか、或いは公労法裁定はどう取扱うべきかということを間違つて解釈をしておるように思われるのであります。そして昭和上十四年に裁定をされて、すでにこれに服従し、実施されていなければならないはずのものが未だに解決をしないで、そして今度の裁定に改めてやり直しをしたというのは誠におかしな恰好になつておるのでありまして、この点につきましても、政府が少しも裁定についての尊重する態度をとつておらないことが結局今日の紛争を呼び起しておるもののように考えるのであります。それでは政府が言うように、裁定予算上不可能であろうかということになるのでありますが、先ほどの説明にありましたように、裁定国会に出されたのは第一項と、第二項でありまして、これが予算上不可能であるという理由が付けられております。併しこの第一項、第二項を裁定通り実施するためには約二億六千百万円でありますか、これについては決して予算上不可能であるということはあり得ないと思うのであります。専売公社もと裁定服従するために大蔵省に対して今後のたばこ売払い増加分、或いは予備費流用等の措置をとつて裁定実施することができる、こういう考えを以ちまして所要の手続をとつておるのでありますが、これを阻害しているのは大蔵省並びに政府でありまして、両者はこの裁定服従し、交渉予算上実現できるものと考えてその修正増加手続をしており、双方裁定を以て紛争解決いたしたいという熱烈な希望があるにかかわらず、これを阻害しているのはただ大蔵省政府でありまして、私どもといたしましては、決してこれは予算上も不可能ではないと思うのであります。  今回衆議院のほうにおきましても、この問題についてはなかなか予算上不可能であるから裁定通り実施できないというような意見自由党内にもあるようでありますが、これは要するに全般的なバランスの上に立つて専売裁定を犠牲にしてしまえ、こういうことだなるのではないかと思うのであります。私は裁定ぶ若しこのような取扱を受けるならば専売労働者生産に対する熱意を著しく喪失する虞れがあるように思います。今度の国会に提出してあります補正予算でも、我々に対して当初予算よりも二百十七億の専売益金を稼ぎ出せということを提出いたしてあります。こういう案が提出されておりますけれども、若しも裁定取扱がございます場合の建前通りに行われないならば、私どもは働く者といたしましてこの二百十七億がすべて超輝労働を基礎にしておる建前から、この超過労働に対しては応じない、こういう態度をとらざるを得ません。従つて如何に国会が二百十七億というものをおきめになろうといたしましても、賃金に対する保障がないときには、専売労働者熱意大変喪失をしてしまう。これについても私ども責任を持つことができないように思うのであります。又国会としてもこのような決定をいたすならば、若しも裁定を尊重できないというような態度をとるならば、公労法建前を誤ることになるのではないかと思いまして、どうか参議院におきましては、十分この点につきまして慎重なる御検討を願い、公労法建前通り専売裁定実施できるようにお願いをいたしたいと思うのであります。  以上が組合側意見であります。
  11. 中川以良

    委員長中川以良君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止
  12. 中川以良

    委員長中川以良君) 速記をつけて。暫らく休憩をいたすことに御異議ございませんか。   (「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 中川以良

    委員長中川以良君) それじや暫らく休憩いたします。    午後二時五十四分休憩    ——————————    午後三時十九分開会
  14. 中川以良

    委員長中川以良君) 休憩前に引続いて開会をいたします。  この際今井委員長に特に申上げたいのでございまするが、本委員会は、先ほど来委員長の御出席のないために、休憩をしてお待ちをいたしておつたのでありますが、どうぞ今後は所定の時間にお出ましを賜わりまするように、特に御注意を申上げます。  それでは、これから今井仲裁委員長意見聴取いたします。今井仲裁委員長
  15. 今井一男

    参考人今井一男君) 誠に申訳のない次第でございまして、御審議を妨げたことについては重々お詫び申上げる次第であります。あいにく社会保障制度審議会の小委員会で私の立案の説明をやらされておつたもので、つい遅れまして、申訳のないことをいたしました。  今回の専売裁定につきましては、相当理由書にも書いておきましたので大体御承知と思いまするが、まあ成るべくこの理由書の文章の中に載つておりませんような点につきまして着手私どもの考えましたことを申上げまして、御審議の御参考に資したいと思います。  先ず第一に、私ども仲裁委員会立場でございますが申すまでもなく労使問題は労使間の自主的な話合いによりまして、お互いに責任を持つて判を押し合うとそういつた結果によりまして行われます経営、勤労でありますれば、これは産業の発展のためにも極めて有効と考えられまするが、これに対しまして第三者が口出しをする、まあ時には口出しのほうがいい場合もございましようが、特にそれが権力的な形における口出しをするとこういつたことは、結果的に非常に面白くないようなことになる慮れが多分にございます。仲裁裁定は御承知通り当事有意思にかかわりなくこれを拘束いたしまするが故に、法律建前からいたしましてもこの出動の範囲は極めて限られるように、少くとも仲裁委員会がそのイニシアチブをとつて発動するようなことは一切禁止されるような仕組になつております。私どもその法律の精神を受けまして、成るべく両者意見を中心にしてものを判断して行く、両者意見の合わない部分だけを何とか合わせるように工夫上、どうしても合わない部分について我々の意見を挿入すると、そういう考え方に相成つて参るわけであります。即ち、例えば賃金で申しますれば、すでに我々のほうでは賃金はかくあるべしだとこういつたような仮に観念がございましても、その観念の下に出て来だ問題に対して答えを出すというような方法はわざわざ控えております。即ち労使意見を十分聞き、十分闘つて頂いて、そのうちで合理一的なものを取上げて行つて、そこに一つの線を出そう、従いまして、私どもは言い換えれば一個の企業体におきましての労使問題、一個の企業体におきましての賃金問題を解決して行くという立場からこの仲裁を行なつてつて来ておるのであります。勿論その意見の合致しない部分につきまして私どもが独自の見解を加えます際には、極力世間の良識なり輿論なりというものを頭に置いて考えることは申すまでもございませんが、少くとも両者意見の一致した部分に我々が割つて入るということは絶対にいたさない建前をとつておることを冒頭に御了解願つておきたいと存ずるのであります。  それともう一つ、特に今回の専売裁定で申上げておきたいことは、これは二人の仲裁委員によつて行われておる極めて異例な、いわば前例のない裁定であるということであります。この七月に公労法改正になりますまでは、仲裁委員会には補欠委員という制度がございまして、一人に事故があるときにほすぐ補欠の人が代つてその手続に遺憾なからしめておつたのでありますが、公労法改正によりまして、この補欠委員制度がこの八月からなくなりました。仲裁委員の二人であります福井盛太氏が衆議院議員に立候補のために八月末辞職されました。その後任は公労法によりまして中央調停委員会が推薦しなければならん。従来の公労法では中労委が推薦しておつたのでありますが、今度は中央調停委員会にその権限が移りました。ところが中央調停委員会が十月の十七日まで任命されない、即ち福井委員がやめられてから一カ月半以上も推薦すべき委員会がない、こういう事態にぶつかりまして、而も推薦した候補者につきまして、労使双方がお互いに意見を闘わしてこれが合致すればよろしうございますけれども、なかなか一致しませんというと更に一カ月間の期間をとりました上でそこで総理大臣が任命する、かような法律に相成つております。従来の公労法でありますれば、二人の委員裁定は明かに私どもは無効と考えます。この公労法改正によりまして補欠委員制度がなくなつたということは、果して二人の委員でやることが合法的かどうかということにつきまして、私ども非常に疑問を持つたのであります。少くともそれほどまでの趣旨で公労法改正なつたものとはどうしても認めがたいのであります。而もこれに対しまして、我々といたしましてはやはり一つの又独立機関ではありましても一個の行政機関でありますので、権威ある何が法制局等から頂けるならば、又考えようもあつたのでありますが、そのほうも頂くことができませんでしたが、併しながら労使問題の解決は決して時間的に延ばすことが適当でないことは申上げるまでもないのでありまして、その間に非常な苦慮をいたしたのでありますが、結局十一月の八日になりまして、労使双方から書面で二人の委員だけでやつてくれとこういつた公式の意思表示がございました。私ども法律解釈から申しますれば、疑問を感じたのでありますけれども仲裁手続というものが労使のためにあるという見地から、利害関係者がそれでよろしい、即ち拘束を受ける利害関係者がその二人の出した裁定でよろしいとこういつたことでありますならば、労働常識として他の面から苦情が出る筋もあるまいとかように考えましてあえて二人で取り急ぎまして裁定いたした次第でございます。恐らく今後も例のないことかも知れませんが、非常に異例な例として特にお耳に入れておきたいと思います。  次に賃金でありまするが、賃金につきましては、組合は当初からマーケット・バスケット方式によられたのでありますが、我々は一般に世間で言われますように、マーケット・バスケット方式は頭から排斥しようという考え方は持つておるものではございませんが、まあ併しながら公社側からこの意見は全面的に容れられなかつたのでありますが、それにいたしましても、一つ企業体におきましてのペース、賃金の基礎としては適当でなかろう、即ちこの立場生産性の変化でありますとか、労働条件でありますとか、或いは企業の支払能力でありますとかいうものが考慮の中に入れられない意味におきまして私ども両者意見の合致しないこの問題につきましては、これはとり淡だばと認めたのであります。併しながら組合側が一部において主張されました、すでに専売の一切の事業成績、労働生産性等が戦前水準まで戻つている以上、賃金も少くとも戦前の姿までは戻つてもよろしいのではなかろうかというような主張に対しましては、合理的な根拠があるものと考えまして、その線に従いましてそろばんを置いて参つたのであります。又一方公社のほうからは具体的には幾ら幾らまでは出したい、当然だ、こういつたような意見は遂に聞くことができなかつたのでありますけれども、それにいたしましても、賃金の基礎としてどういうような裁量が先ず一番よろしかろう、こういつた見解はこれを得ることができましたので、その線に従つでも一応の検討をいたしました。結局我々といたしましては、本来申せば両者が具体的な数字を出し合つて、その根拠を明らかにしてその食い違いを解明にして行くのが一番都合のいい手続でありますけれども、遂に公社側からは公式に具体的た数字が得られなかつたのでありますが、それにいたしましても公社補正予算の作成に際しまして、大蔵省との折衝の結果、内定した数字は少くとも公社側の公式の意思表示に代るものと、こういつた推定はいたしたのであります。そういつた三者の数字をひつくるめまして出しました数字が今回の調停案のペース賃金の基礎になつております。問題はこれを何月から支給するかという点でありますが、公労法の古い規定には、七月までの規定には労使は必ず年に一回は団体交渉をやらなければならないという明文がございました。この明文は今回の改正によりまして現行法では削除されておりますけれども、恐らくその意味はそういつたことまで干渉するのは余計なことであるといつた意味合いだろうと想像するものでありますが、それにいたしましても年一回ずつ必ず団体交渉をやれと、こういつた法律の趣旨は少くとも賃金につきまして毎年一回は必ずお互いに再検討してみようと、こういつた趣旨であろうと考えられます。組合側が三月の末に問題を提起いたしました関係から、これを直ちに四月遡及ということも若干労働常識上問題かとも考えるのでありますけれども、それにいたしましても、本来ならばもつと早く処理さるべき問題がいろいろの事情のために裁定が遅れた、遅れた不利が組合側にかかるようではこれは決して公正な扱いとは考えられないのであります。その間に立ちまして、私どもといたしましては、本年から新たに少くとも実質的に夏季手当が半月分だけ組合側に渡されたと、こういつた点、これは生産報償金が払われたものでありまして、見方によつて生産報償金とも言えるのでありますが、実態を調べますというと、実質的には夏季手当とも十分考えられるものであります。これに着目いたしまして、若干組合側に気の毒な感を持ちながらも、先ず八月という即ち調停案を示しました月というものでまとめるのが妥当と、こういつた結論になつた次第であります。この配分関係その他につきましてはいろいろ議論があつたのでありますけれども、私どもとしては大体におきまして、両者間の話合いが多分つくであろうという線を出したのでありまして特に申し上げることもございませんが、最近になつて問題になつております年末手当につきましては、これは実は年末手当というものが労使間の紛争の対象になつておりませんので、両者いずれからも御意見がなかつた関係上、冒頭申上げました調停委員会の原則に立返りまして、我々としてなんらこれに触れるところはなかつたのであります。併しながら先ほど申しました夏季手当の問題は、生産報償金をもらつておるに過ぎませんので、少くともその分だけは生産報償金を穴埋めすべし、そうしなければ八月遡及というバランスを失する、こういつた見地に立ちまして生産報償金の問題につきまして一項を加えておいた次第であります。  その他特に今回第六項として業績賞与の一項を加えたのでありますが、今回の補正予算に見られますように、専売公社に与えられました下半期の課題は極めて大きいものがございます。恐らく私どもの推算では月々二十時間を超える超過勤務をやらなければこの国家の要請に応えることができないのではなかろうか、こういつた非常に皺寄せということは、これは労務者にとりまして気の毒な面も若干考えられますし、更に先ほど申上げました四月遡及の関係からいたしましても、私どもといたしましては多少不足気味の点も感じましたので、そこで一案といたしまして、若し国から与えられた課題以上の責任を遂行し、それ以上の利益を上げた場合、その利益というものを或る程度組合に還元することによりまして、その穴を埋めてもらうという制度によつてこれを解決しようという案を考えて入れたのであります。実はこういつた性質のものは専売に対しましての第一次裁定、丁度今から三年前の裁定の中にも抽象的ながら一個条入つていたのでありますが、これは未だに何ら実現の緒についておりません。まあこのついておらないことは、労使間でよろしいと投げ出されたのか、研究中なのか、その点は我々としても詳らかにしないのでありますが、少くとも今回の本年度賃金については、これだけのものは埋める必要があるという見地から前の裁定と離れまして、又仮にこれが二重になりましても別に何らの弊害はないと認めまして、こういつた項目を特に一個条加えた次第であります。これらの賃金の支払に要します資金は、まあ大ざつぱに申すと四億内外かと考えられるのですが、この四億内外と申しますものは、すでに補正予算案に計上されております数字以外のものでありまして、補正予算に加えるに四億程度という数字を生み出して頂けば十分支払い得られるであろう、こういう見通しであります。歳出予算の規模が八百億でありますから大体二百分の一という数字であります。従来の専売公社の事業実績等から考えまして、私どもとしてはこれだけのことは専売の事業運営上少々努力をいたしたならば十分やりくりはつくであろう、又のみならずこのことによりまして毫も専売事業の運営には支障はあるまい、のみならずこういつたことによつて労使ともに努力が重ねられるならば、却つて国家の要請する専売益金以上のものを生み出し得る基礎にもなるのではないか、その意味においてはこの経費は国家的に見ても却つて有効に使われ得るものではないか、こういつた見地におきまして、我々としてはこの点はいわゆる企業の支払能力の面から見ましても問題はないし、又是非考慮さるべき数字であるといつた考え方に立ちまして、特に詳しく経理関係検討するという手続はとりませんでした。  ただ最後に一言申上げたいのでありますが、まあ今回は、実に先ほど申上げました事情から相当の長期間を要しておりますけれども、由来仲裁委員会仲裁は政令によりまして三十日以内に出せといつた建前になつております。私どもとしてもこういう異例の場合を除けましては、原則としてその建前を厳守して参りました。片手間にやります仕事でもございますし、又極めて僅かな十名ばかりの職員を使いまして出します裁定でございますので、これが裁判所の行います判決等のように自分たちの納得の行くまで問題を掘下げるという余裕はございません。その意味におきまして私ども裁定の内容自身がそうく威張れるもの、こういつたうぬぼれは持つてはおらないのであります。批判の余地は十分あるものと考えておるのであります。併し私に言わせますと、賃金というものは恐らく本質的にいつてそういう虞れのある問題ではないか。見方によつては高いと言う人、安いと言う人が必ず出て来得る問題ではないか。従つて止むを得ないからこういう公労法建前のときは最後に誰かにきめてもらう、即ち結論よりも手続の民主化によりましてこういう労働秩序を保つて行こう、こういう意図であろうと考えるのであります。無論今申上げましたように、私どもは私ども裁定自身につきまして決して自慢がましいことは申上げ得ないのでありますが、そういつた見地に立ちますというと、この数字に対してはやはり単に両者間の拘束のみならず、世間的にも形式的な尊重は是非頂かないというと、これは調定案や人事院の勧告と違いまして、両当事者のイエス・ノーを許さない建前になつておるものでありますので、少くとも権衡論からする議論は私の考えでは、これも差出がましくなつて恐縮でありますが、これは皆さんがたというよりも、世間によくあることでありますので申上げるのでありますが、おかしいのではないかと思います。但し私どもは何も専売の経理問題なり何なりにつきまして決してそう権威のあるものではありません。こういつた点につきましては公労法定めがありますように、国会が特にその予算審議されるお立場にありますので、その見地におきまして然るべき御判断を頂くことにつきましては、これは別に何らの意見を申上げようというつもりはございません。  甚だまとまらんことを申上げましたが、若し何らかのお足しになれば仕合せでございます。
  16. 中川以良

    委員長中川以良君) それでは各当事者よりの説明聴取はこれを以て終りたいと存じます。なお質疑は次回にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり)
  17. 中川以良

    委員長中川以良君) 御異議ないものと認めます。次回の日程につきましては、労働委員長と追つて御協議を申上げた上公報を以て御通知申上げたいと存じますから、さように御了承頂きたいと思います。  それでは本日はこれを以て散会いたします。    午後三時四十四分散会