○衆議院議員(田中角榮君)
只今議題となりました
公営住宅法案につきまして、提案の理由及び要旨を御説明申上げます。御
承知のごとく政府は戦後毎年地方
公共団体に建設費の半額に当る補助金を交付して低家賃の庶民向賃貸住宅を建設させているのでありますが、これは、ただ年々
公共事美質予算のうちに国庫補助金を計上するという予算措置だけに依存するものでありまして、恒久的に国策として確立されたものではないのであります。外国の例を見ますると、イギリスでは、今から百年前、即ち一八五一年に早くもシヤフツベリー法と称する「労働者住宅法」が制定されて、地方団体が低家賃の賃貸住宅を労働者に供給する途を聞き、この
法律に基く方策は今日まで承継されております。アメリカでも、一九三七年の「合衆国住宅法」によりまして、地方当局による低家賃公営住宅の供給方策を確立しているのであります。西ドイツ、イタリー、オランダその他のヨーロツパ諸国においても公営住宅に関する
法律を持つ国が多いのであります。これらの外国の例を待つまでもなく、我が国におつきましても、特に戦後の困難な住宅問題を解決するためには、国の助成による公営住宅の供給方策について速かに立法措置を講じてこの方策を恒久的に確立する必要があるのであります。
公営住宅法案は、以上の
観点に立
つて国の補助による公営住宅の建設、補修及び管理に関して
規定いたしまして、公営住宅の計画的供給に関する国と地方
公共団体の責任及び公営住宅の建設に要する費用の両者の負担の限外を明確にすると共に公営住宅の管理の適正化を図
つた次第であります。
次にこの
法案の条文の説明を簡単に申上げたいと思います。
この
法案は、四章二十九条と附則五項から成
つております。第一章総則。本章は法の目的、用語の定義、国及び地方
公共団体の責任に関する
事項を
規定いたしております。
第一条は、日本国
憲法第二十五条の
趣旨に則りまして、法の目的を明らかにしたものであります。第二条は、法文中にしばしば出て参ります用語の定義を定めたものであります。第一号の地方
公共団体というのは、普通
公共団体である市町村及び
都道府県を言います。第二号に公営住宅の定義をいたしております。この定義によりますと、国の補助によらないで建設し又は今後建設する賃貸住宅はこの
法律でいう公営住宅ではありません。ただ後に附則第三項のところで御説明いたしますが、この
法律による公営住宅でない公営の賃貸住宅につきまして国の補助を受けたものにつきましてはこの
法律による公営住宅とみなして、この
法律を適用することにいたしました。なおここで住宅の附帯施設というのは、住宅に設ける電気、ガス、給水、排水その他の住宅の機能保持上必要な施設を指しております。第三号の第一種公営住宅と第四号の第二種公営住宅は、公営住宅を二種類に区別したものであります。第二種公営宅は、家賃を第一種公営住宅より安くして、家賃の負担能力がないために第一種公営住宅に入り得ない者、又は災害により住宅を失
つた低額所得者に提供することとしたわけであります。家賃に関する
事項は後の条文で
規定しまして、ここでは入居者の所得と住宅の規格について政令で
規定するということにいたしたのであります。入居者の所得は、経済
事情の推移と共に変動することが予想されますし、又家族
構成の如何によ
つても家賃負担能力に差が生じますので、政令で定める入居者の収入の基準は
相当幅を持たせて
規定すべきものと考えております。第五号に公営住宅の建設を定義いたしまして、公営住宅の建設に必要な
土地の取得又はその
土地を宅地に造成することを含ませましたのは、住宅の建設がその敷地と不可分の
関係にありますので、この点を
注意的にせん明したものであります。第六号の公営住宅の供給と申しますのは、公営住宅の建設と管理をすることを言うのであります。公営住宅の建設と管理は、多くの場合同一の地方
公共団体が行うのでありますし、又それが適当であると考えられますので、この
法律では同一の者が建設と管理の両面を担当することを予想し、
従つて便宜上供給という用語を用いた次第であります。第七号の共同施設と申しますのは、公営住宅の入局者の共同の福祉のために必要な施設を言うのでありまして、
法案の第五条に
規定するように公営住宅を大体一団地に五十戸以上集団的に建設する場合には共同施設を建設することが望ましいのであります。共同施設は、住宅の附帯施設のように個々の住宅の機能上必要なものでなく、住宅を集団的に建設経営するときに初めて必要と認められるものでありまして、その種類は政令で定めることにいたしたのであります。第九号の
事業主体というのは、公営住宅の供給を行う地方
公共団体に便宜上つけた名称であります。
第三条は、公営住宅の建設と管理が地方
公共団体の責務であることを
規定した条文であります。これは元来住宅問題は市民なり県民なりの問題であり、又住宅
事情の実態を最も把握しやすいのは市町村又は
都道府県であり、且つ住宅建設
事業の実施機関としても地方
公共団体が適当であるという
趣旨に基いて、地方
公共団体に住宅供給についての義務を負わせた
規定であります。第四条は、前条の公営件宅の供給に関し必要がある場合に国及び
都道府県が援助しなければならん旨を
規定したものであります。公営住宅の供給は地方
公共団体の義務でありますから、
事業主体たる地方
公共団体がその費用を負担すべきであるは勿論でありますが、地方の財政力には限度があ
つて、その費用の全部を負担するのは不可能であり、
従つて深刻な住宅不足の解決を地方
公共団体だけの責任とすることは民生の安定上、又国民保健上由々しい問題であります。そこで国が費用の一部を負担すると共に、金融上及び技術士の援助を与える義務を負うという
趣旨であります。第二項で市町村が公営住宅を供給する場合に必要があるときは
都道府県もその供給を援助すべき旨を
規定しましたのは、特に財政
事情のよくない市町村については国の援助だけでは不十分な場合があり得るのでこの
規定を設けた次第であります。
第二章公営住宅の建設。本章は公営住宅の建設基準、建設計画、補助金、貸付金等に関する
事項を
規定いたしております。第五条は、公営住宅及び共同施設の建設の建設基準に関する条文であります。建設基準を
建設大臣が定めることにいたしましたのは、財政
事情や建築技術の発達或いは国民の
生活水準の向上によ
つてしばしばこれを改善することが必要であるからであります。
従つて公営住宅の建設基準は政令で定める規格の
範囲内でその規模、構造、配置等について必要に応じて改善を加えることにいたしたのであります。第五条第二項は公営住宅を集団的に建設する場合に共同施設をも併せて建設せしめようという
趣旨でありますが、これは従来我が国の団地住宅の経営において比較的困却せられていたものでありまして、今後は住宅の建設ばかりではなくいわゆるコミユニテイーの形成に努力を払うことが必要であると考えますので、この点を強調したいために設けた
規定であります。第六条の公営住宅建設三箇年計画と申しますのは公営住宅建設
事業を或る程度長期の見通しに立
つて計画的に行う
趣旨であります。これによ
つて国も地方
公共団体も長期的に或る程度の予算的見通しをつけ得るのであります。又住宅の建設は
土地の取得を前提といたしますが、年度だけの建設計画では
土地の取得が困難なために折角の建設計画も完成しないことがあり得るのでありまして、国会の承認があ
つた公営住宅建設三箇年計画の
範囲内においては次年度以降に建設すべき公営住宅に必要な
土地を手配することができるというのが大きな狙いであります。第六条第一項及び第二項の
規定にありますように、計画は昭和二十七、八、九の三カ年を第一次といたしまして、以後三年を一期として定められるのでありますが、その際
都道府県知事の作成する計画資料には市町村長との
協議を通じて地元の意向も十分反映させるようにしております。第三項の
規定により三箇年計画の大綱は国会の承認を必要とします。国会の承認があ
つた公営住宅建設三箇年計画は、第四項の
規定により
建設大臣が
都道府県の区域ごとに計画を細分して
都道府県知事に通知することにな
つており、
都道府県知事は第五項の
規定により市町村の区域ごとに細分して市町村長に通知することになります。以上の公営住宅建設三箇年計画は予算計画ではありませんが、第六項の
規定により内閣は計画実施に必要な経費をできるだけ予算に計上しなければならないことにな
つております。
第七条は国の補助に関する条文であります。第一項において公営住宅に対する国の補助の割合を第一種公営住宅については建設費の二分の一、第二種公営住宅については建設費の三分の二と区別して
規定いたしております。これは、国庫補助金は家賃で償却する額に算入しない建前でありますので、第二種公営住宅を特に低家賃にするためには第一種公営住宅より高率の補助を行う必要があるからであります。第二項は共同施設についても建設費の二分の一以内を補助し得るという
規定であります。共同施設の建設は前にも御説明しました通り、公営住宅の団地経営に必要なものでありますが、共同施設の種類によ
つては独立の企業として成立つものもあり、或いは地方によ
つて入居者のために特別のサービスとして特殊の施設をする場合もありますので、国があらゆる場合に必ず補助金を交付する必要はなく、国の財政
事情、共同施設の緊要性の程度などを睨み合せて補助し得ることとしたわけであります。第三項は補助金額の算定
方法に関する
規定であります。第四項は次年度以降に建設すべき公営住宅又は共同施設の
土地の取得に要する費用をも補助するという
規定でありまして、これにより前条の公営住宅建設三箇年計画の遂行が効果的になるものであることは申すまでもありません。第八条は、前条の特例でありまして、公営住宅建設三箇年計画に基いて公営住宅を建設する場合以外に本条第一項第一号及び第二号に掲げる程度の災害が突発し、前記計画の枠外で緊急に公営住宅を建設する必要が生じた場合の国の補助に関する
規定であります。第一項は第一号及び第二号に掲げる災害が突発した場合にその滅失戸数の三割に
相当する戸数については第二種公営住宅の建設に対し国が必ず補助するというのでありまして、これは災害の場合に地方
公共団体が政府との折衝に時間を費すことなく、迅速に住宅の復旧建設に取りかかり得るようにするために設けた
規定であります。但書の「滅失した住宅の戸数の三割に
相当する戸数をこえる分については、この限りでない。」というのは、滅失戸数の三割に
相当する戸数以上に
事業主体が第二種公営住宅と同種の住宅を建設する場合には
事業主体は必ずしも国の補助を期待し得ないという
趣旨であります。例えて申しますれば、A市において地震で千戸の住宅が倒壊した場合に四百戸の第二種公営住宅を建設しようとするときは、三百戸までは国は必ず補助するけれ
ども、あとの百戸の分については国の財政
事情その他によ
つて必ずしも補助は期待できないわけであります。尤も従来の例を見ましても、三割程度の住宅復旧を
公共的に解決すれば他の七割は自力で
復興するから、実際上は三割分で補助を打切られてもさして不都合は生じないと思われます。第一項の第一号及び第二号は補助対象となるべき災害一件の大きさを
規定したものでありまして、この種の程度ならば地方
公共団体として大きな痛手であると共に政府としても住宅政策上救済の必要があると考えられる戸数であります。第二項はこの
法律により建設された公営住宅又は共同施設が災害によ
つて滅失又は著しく損傷した場合の補助
規定であります。災害によ
つて公営住宅又は共同施設が滅失した場合は
事業主体の大きな損害であり、入居者にと
つても折角安住し得た住宅が失われれば他に自力で住宅を求め得ない
人々なので、これを復旧建設するのが当然であり、公営住宅又は共同施設が著しく損傷した場合これと補修することは第十二条の家賃の算定
方法で修繕費を普通の修繕を行う程度にしか見込んでないために、
事業主体の実質的な財政負担になること当然でありますので、いずれの場合においても補助することができることにいたしたのであります。なお地震による火災以外の火災によるものを除外いたしましたのは、火災保險の対象になるから補助することは不適当と考えたからであります。第三項は補助金額の算定
方法に関する
規定であります。第九条は、国の補助金の交付の
申請手続に関する
規定でありましてその書式並びに提出
手続は建設省令で定めることといたしております。
第十条は、
都道府県の補助に関する条文でありますが、これは市町村の財政
事情がよくない場合に国の補助金のみでは不十分であることが、予想されるので
規定した次第でありまして、第四条に見合う
規定であります。第十一条は国の貸付金に関する条文であります。地方財政の現状では、補助金のみによる国の援助で公営住宅を建設することは不可能であり、従
つて事業主体の負担する分については起債又は借入金を必要とするのでありますが、いずれにせよ民間資金の利用は困難且つ不適当な面がありますので、国が通常の条件により
事業主体に有利な条件で必要な建設資金の貸付をなし得ることといたしたわけであります。
第三章公営住宅の管理。本章は公営住宅の家賃及び修繕並びに入居者に関する
事項を
規定いたしております。第十二条は家賃の算定
方法を
規定し一条文であります。家賃の算定
方法は公営住宅の建設費のうちから補助金を控除した額の元利均等償却額に修繕費、管理事務費及び損害保險料を加えた額を限度として
事業主体が定めるのでありますが、算定
方法の細部については政令で
規定することといたしました。この場合、建設費の償却の条件を期間二十年以上利率年六分以下といたしましたことは、特に
事業主体が、補助金以外の建設資金を起債又は借入金に依存する場合その償還の条件が本条による償却の条件より厳しい場合には
事業主体に負担を強いることになりますが、入居者の家賃負担能力を考慮に入れる以上止むを得ない措置と考えます。又地方
公共団体としても自己の区域内の住宅問題解決のためには当然この程度の負担をするのが至当であると考えられます。第二項は
借地の場合には前項の家賃は更に地代を加えた額を限度とすることを
規定したのでありまして当然のことであります。第三項は個々の入居者に対する家賃の減免
規定でありまして、入居者が入居の後に病気とか失業等によ
つて所得が減少する場合を予想して設けた特例
規定であります。第四項は、家賃の問題が公営住宅の管理に関する重要
事項でありますので、これを必ず条例で
規定すべきことといたした次第であります。第十三条は、前条の特例
規定でありまして、物価の変動の著しい場合又は公営住宅相互の家賃が著しく不均衡と
なつた場合において家賃の限度を
制限し、又は一度
決定した家賃の変更を認めないとすると、不都合を生ずる虞れがありますので設けた
規定であります。即も建築の時期により又は
地域によ
つて物価が異なる場合があり、又同程度の質の住宅でも建設年度により建設費が異なり、
従つて家賃も異なることがあり得るので、地方の実情を
尊重して家賃の
決定方法又はその変更について
事業主体の自主性を認めたおけであります。又敷金につきましてもそれが家賃額を基準としている
関係上同様の取扱といたしました。これらの場合においても、その取扱について全国的に或る程度の統一をとる必要がありますので、
建設大臣の承認を求めることとし、その場合の
手続をも
規定しております。第十四条は
事業主体が公営住宅の入居者に対して不当な金品を賦課することを禁止した条文でありまして、公営住宅に入居する場合に
事業主体が特別な反対給付を受けて特定人に優先入居を認めたりすることのないよう、その住民に対して平等に入居の
機会を与えるために
規定した次第であります。但し敷金については慣行上広く行われておりますし、家賃の不払の場合や住宅を毀損した場合の担保となるものでありますので、これを徴収し得ることとしたのであります。なお公営住宅の家賃不払の場合には敷金を債務に充当するほか
地方自治法第二百二十五条による滞納処分をなし得ることは勿論であります。
第十五乗は公営住宅の修繕に関する条文であります。公営住宅が地方
公共団体の営造物であることは明らかでありますが、これの
使用関係は
事業主体と特定入居者との間の契約に基くものであり、この契約
関係は
法令又は条例で特別の規制をする場合のほか
一般の賃貸借契約
関係を
規定する
民法借家法等の民事法の
規定に従うべきことは申すまでもありません。第十五粂の
規定は賃貸人としての
事業主体は特約を似てするも公営住宅の建物の主要構造部の修繕義務を免かれることができないという
趣旨であります。勿論入居者の責に帰すべき事由によ
つて修繕の必要が生じた場合は免責事由となります。これは
事業主体が家賃に含める修繕費には少くとも建物の主要構造部の修繕費を計算に入れねばならぬことを意味することになり、このことは契約当事者の衡平という点から考えても当然であります。第十六条は入居者の募集に関する
規定であります。公営住宅の
公共性に鑑み特別の場合を除くほかは住民全体に周知徹底させ入居の
機会を平等に与えるという
趣旨の条文であります。第十七条は入居者資格に関する
規定であります。入居資格については低額所得者の住宅難の深刻な今日公営住宅の需要は供給を遥かに超過することが予想されますので、初めから一定の
制限を設けて置くことが妥当であると考えられる次第であります。第一号は二人以上の家族
構成でなければならぬということでありまして、独身者を除外いたしたのは現在の情勢では公営住宅の供給は当分そこまで手が伸び得ないと予想したからであります。括弧内は
法律上の親族ではないが親族とみなして差支えない婚約者とか内縁の妻を指しております。第二号の政令で定める基準と申しますのは前に説明いたしました通り、政令で
相当の幅を持たせて収入の基準を定めるわけであります。この収入基準額は
法律の目的から考えて高額所得者を除外することと、他面家賃の負担能力との
関係を考慮して
決定すべきものと考えております。第三号の住宅の困窮については具体的にいろいろ予想されまして、
法律で細かに定めることは困難且つ不適当である
関係上抽象的に
規定した次第であります。
第十八条は入居者の選考
方法を
規定した条文であります。入居者の
決定に関しましてはややもすれば不明朗な問題を起しやすいのでありまして、これを適正に行うために設けた
規定であります。この場合単なる
機会均等というような悪平等でなく、住宅の困窮度に応じて優先順位を定め、然る後優劣の差のつかない者については抽せん等の
方法によることにするわけであります。選考基準の具体的
事項は
法律で
規定するのが不適当であるため政令に譲り、政令で同居、過密居住、立退を要求されている者、遠距離通勤、家賃として不当な負担を余議なくされている者等について具体的に
規定されるものと予想されます。なお選考の問題は家賃に関する
事項と同様に公営住宅の管理に関する重要
事項でありますのでこれも必ず条例で定めることといたした次第であります。第十九条は家賃等の報告義務を
規定した条文であります。第二十条は家賃及び選考
方法に関する
建設大臣の
監督について
規定したものでありまして、住宅
対策上の必要から設けた
規定であります。
第二十一条は公営住宅の
公共的性格に鑑み入居者に対して特別の義務を課した条文でありまして、公営住宅の保全を図るためにも必要な
規定であります。第二項は公営住宅の転貸とか
権利譲渡を禁止したものでありまして、貸借
関係の錯綜を避けると共に入居者が不当な
利益を得ることを防止するための
規定であります。第三項は公営住宅は住宅の不足を緩和するために供給されるものでありますから、住宅以外の用途に供することは原則として禁止する
趣旨であります。併し特定の場合は、その一部を他の用途に使うことは必ずしも不適当ではないので但書を設けたわけであります。第四項は公営住宅を模様替したり増築したりすることは公営住宅の機能を損
つたり原状回復を困難にすることがありますので、
事業主体の長の承認がない限り禁止したのであります。
第二十二条は明渡に関する条文であります。第一項各号に列記された
事項に該当するような場合には、
一般の賃貸借契約
関係の場合にあ
つても明渡を請求し得る場合が多いでありましようが、公営住宅の
公共的性格から本条において
明文を以て
規定したわけであります。なお明渡を請求しても明渡さない場合には、勿論民事
訴訟法の
手続によ
つて解決を求めねばなりません。第二十三条は公営住宅監理員の設置及びそり任務に関する
規定であります。ここに言う監理員とは、単に家賃の取立てに当るいわゆる「差配」のようなものではなく、公営住宅及びその環境を良好な状態に維持するため、入居者を指導し得る識見と知識を持合せる者で、
事業主体の長の命ずる職員でなければなりません。この職員は成るべく専任として任命することが適当と考えられるのであります。
第四章補則。本章は、公営住宅の処分及び
建設大臣と
都道府県知事の指導
監督等に関する
事項を
規定いたしております。第二十四条は、公営住宅の処分に関する条文であります。公営住宅が建設後一定年数を経過し、入居者も安定した暁には、公営住宅としての使命を一応果したものと考えられますし、無理に地方
公共団体の管理下に置くこことは、住宅そのものの保全上からも上策ではないのでありまして、入居者の
希望によ
つては譲渡し得るという途を開くことは適切なことと思われます。そこで第一項では、公営住宅又は共同施設がその耐用年限の四分の一を経過したときは、入居者に適当な価格で譲渡することを認めたわけであります。第二項は、譲渡した場合の売却代金の使途を明示したものでありまして、公営住宅の再生産の費用に充当せしめようというわけであります一政令では売却代金を、建設資金について起債償還残額があればその返済に充て、その残額を公営住宅の建設費に充当するように
規定することが適当と思われます。第三項は、災害の場合に住宅を補修することが不適当であるようなときには、公営住宅としての用途を廃止し得るという
趣旨であります。第四項は
手続規定であります。
第二十五条は公営住宅の管理に関して
事業主体に対し条例を制定すべきことを義務付けた
規定でありまして、
地方自治法第二百十三条の
趣旨からい
つても当然のことであります。第十二条及び第十八条では家賃と入居者の選考に関しては条例で定めることを義務付けてありますが、ここではその他の
事項についても必要なものを条例で定めることといたしたわけであります。公営住宅の使命から申しましてもこれに関する条例を制定すべきことは申すまでもないことであります。第二項は条例の報告義務に関する
規定。第三項は報告の
手続に関する
規定であります。第二十六条は
建設大臣及び
都道府県知事の
事業主体に対する指導
監督に関する条文であります。
都道府県知事にも指導
監督の
権限を与えたのは管下
事業主体の公営住宅の供給については常時
監督指導するのはむしろ
建設大臣よりも
都道府県知事のほうが適当であるという考えに基いております。
第二十七条は
都道府県知事が指導
監督を行う場合に、その費用を国が負担するという
規定であります。
都道府県知事はこの
法律の
規定に基いてその
権限を行使するものでありますが、その指導
監督の費用は国が負担するのであります。その負担の率は政令により二分の一以内に定めることが適当と考えられます。指導
監督に要する費用の算定
方法については建設費を基準として政令で
規定することといたします。第二十八条はこの
法律を適正に実施するために国の補助金の交付に関して一定の
制限を加えた
規定でありまして、この
法律の
趣旨に鑑みいやしくも適正でないものに対しては補助金を交付しない、又は交付した補助金の返還を命ずるというのは、他の国庫補助
事業にも共通の
事項であります。第二十九条は地方
公共団体の実情により全部事務
組合が
事業主体となる場合を予想して設けた
規定であります。
附則。第一項は施行期日に関する
規定であります。第二項はこの
法律の施行期日の
関係で昭和二十七年度を初年度とする公営住宅建設三箇年計画の資料の提出についてだけその提出期日を延期した
規定であります。第二項はこの
法律による公営在宅だけを
法律で規制し、従来の国庫補助賃貸住宅についてこの
法律の適用を排除することは不適当でありますから、いやしくも国庫補助賃貸在宅である以上は、その
公共的性格に鑑みこの
法律による公営住宅とみなして、この
法律を適用することにいたした次第であります。第四項は、家賃については、この法施行のときにすでに
決定しているものは、この
法律の
規定によ
つて定めたものとみなしまして、改めて定める必要がないこととしたのであります。第五項はこの
法律の施行に関する事務の所管について
規定いたしたのであります。
以上で逐条の御説明を終ります。よろしく御審議の上速かに可決せられんことをお願いする次第であります。