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1951-03-15 第10回国会 衆議院 文部委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月十五日(木曜日)     午前十一時六分開議  出席委員    委員長 長野 長廣君    理事 岡延右エ門君 理事 佐藤 重遠君    理事 若林 義孝君 理事 小林 信一君       柏原 義則君    甲木  保君       東井三代次君    飛嶋  繁君       圓谷 光衞君    平島 良一君       笹森 順造君    受田 新吉君       渡部 義通君    浦口 鉄男君  出席政府委員         文部政務次官  水谷  昇君         文部事務官         (大臣官房会計         課長事務代理) 相良 惟一君         文部事務官         (大臣官房宗務         課長)     篠原 義雄君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     辻田  力君         文部事務官         (大学学術局         長)      稻田 清助君  委員外出席者         文部事務官         (管理局教育施         設部教育用品課         長)      宮川 孝夫君        專  門  員 横田重左衞門君         專  門  員 石井つとむ君     ――――――――――――― 三月十五日  委員坂本泰良君辞任につき、その補欠として受  田新吉君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 三月十五日  教育職員免許法の一部を改正する法律案内閣  提出第一〇七号)(予)  教育職員免許法施行法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一〇八号)(予) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  国立学校設置法の一部を改正する法律案内閣  提出第七八号)  昭和二十六年度に入学する兒童に対する教科用  図書の給与に関する法律案内閣提出第九八  号)  市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する  法律案内閣提出第一〇五号)  教育職員免許法の一部を改正する法律案内閣  提出第一〇七号)(予)  教育職員免許法施行法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一〇八号)(予)     ―――――――――――――
  2. 若林義孝

    若林委員長代理 これより会議を開きます。  国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題とし、残余の質疑を許します。  本案に対する質疑は、昨日申しあげました通り時間を制限いたしたいと存じます。御異議なければ、一人十分以内にとどめていただきたいと存じます。小林信一君。
  3. 小林信一

    小林(信)委員 あるいはほかの方から質問されておるかもしれませんが、一応了解したいと思いますから、御説明願います。やはり問題になるのは、附則の第二項であります。こういう規定をつくるについて、非常に心配されておられる方たちが多いのですが、昨年旧制高等学校廃止になつた際の法律は、どんなふうにつくられたか、まずそれをお伺いしたいと思います。
  4. 稻田清助

    稻田政委員 昨年高等学校廃止ぜられました場合におきましては、今回のような附則はつけなかつたのであります。と申しますのは、その際廃止せられまする高等学校は、今回この三条廃止いたしまする学校の数から比べまして、はるかに少い数でございまして、なおまた高等学校職員は、大体において大学教授たる適格者が多かつたというような点もございまするし、また人事の処置といたしまして、当時大学に行けない高等学校職員は、かたわら専門学校あるいは師範学校青年師範学校が、なお残つておりましたので、そちらに転換いたす道もございましたので、事務上こうした附則をつけないで処置ができる、こういう見通しのもとに、昨年はつけなかつたのであります。
  5. 小林信一

    小林(信)委員 そうすると、性質からいえば同じ性質のものであつた。こうして新しく特につけるというふうな場合には、何か事情があるからつけるというふうに解釈してよろしゆうございますか。
  6. 稻田清助

    稻田政委員 事情と申しますのが、この法律的の理由でございまして、御承知のように、国家公務員法第七十八条第四号の規定によりまして、いろいろ国家機関廃止せられるとか、定員の減少の場合におきましては、本人をその意に反して免官し得るという規定があるわけであります。国家機関廃止になる場合にも、廃止にいろいろななり方があります。同じ性質のものが同時にできる場合もあり、異なつた性質のものが同時にできる場合もあり、あるいはまた廃止しつぱなしになる場合もある。国家公務員法といたしましては、一々そうした場合を予測できませんので、そうした場合の処置は、それぞれの官庁設置法の制定のときに讓つておるわけであります。従いまして、たとえば商工省が通商産業省になるような場合には、職員が継続するような規定も置きまするし、あるいは行政機関職員定員法改正というような場合におきましては、これに対する規定を置くというのが常例でございます。この場合におきましても、これだけ多数の学校廃止せられ、別に性質の違う学校が拡充せられるという時期でございまするので、廃止せられる学校職員処置を法的に明らかにするということが、必要であろうと思います。もしこの附則が設けられないといたしますれば、そこに法的の不備が論ぜられるすきが生ずる、こういうふうに私ども考えます。
  7. 小林信一

    小林(信)委員 同じ性質のものでありながら、前には特別な事情があつたからつけなくて、今回は事情が違うからつける、そうしないと非常に不備な点が出て来るというのですが、やはりこの前つけなかつたということは、国家公務員法七十八条の四号という御説明がただいまあつたのですが、そういうふうなものがあればそれで処置するというふうに、基本的に決定できないものかどうか、お伺いしたいと思います。
  8. 稻田清助

    稻田政委員 前回の場合には、御承知のように、同種の他の学校が併存いたしておりましたので、究極の場合におきましても、そちらに転換するという見込みが非常に強かつたので、つけなかつたわけでございます。つまりこうした附則を設けましても、その附則の適用を受けます事例が、なくて済むじやないかという見込みを持つてつたわけであります。
  9. 小林信一

    小林(信)委員 ただいま国家公務員法の問題が出たのですが、大学等の問題を考えますと――大学に限らずですが――やはり特例法等関係考慮しなければならぬと思いますが、その点は法的に何らさしつかえないのですか、お伺いしたいと思います。
  10. 稻田清助

    稻田政委員 もしこの附則がないといたしますれば、その意に反する罷免でございまするので、罷免事由といたしましては、こうした学校廃止せられたから、あなたは職を離れなければならぬという事由本人に示すわけであります。形式的には、そうした場合には特例法五条の事前審査を請求することはできるのであります。なおまた、国家公務員法によりまする事後審査も、受け得るのでございまするけれども、かりに審査した場合に、何を審査するかという問題であります。つまり審査いたしまする事実というのは、何月何日に学校がなくなつたということしか争えない。またかりに本人の申立があつたとしても、なくなつた学校にもどすわけには行かない。結局事前審査事後審査も、やりましたところで、実益がない。実益がないのに、そうした手続に移り得るように考えさせることは、これは法の不備であろうかと思うのであります。そうしたいろいろな疑念を去る意味におきまして、この附則二項をつけまして、それによつて当然免官になるのだということにいたしますれば、そうした手続もなく、学校廃止伴つて職を失うという処置ができる、こういう趣旨でございます。
  11. 小林信一

    小林(信)委員 大体私たちも、そういうふうに特例法考えなければならぬと思います。しかし特例法そのものからすれば、やはり特例法だけで、こういうふうな場合も措置できるように、特例法に対して検討を要するのじやないかと思うのです。それから公務員法との関係におきましても、公務員法にあらゆる場合を網羅して、こういう措置の問題が出ておるのですから、そういう規定されておる法律を整備することによつて、こういうところにあるいは附則をつけたりつけなかつたりするというふうな、法の建前からしても一般の納得の行かない点が出て来るのじやないかと思いますが、その点について伺いたいと思います。
  12. 稻田清助

    稻田政委員 その点でございます。先ほどちよつと申し上げましたが、昨年の行政機関職員定員法改正によつて減員になりました場合には、国家公務員法事後審査を、この場合は適用しないという条文をはつきり表わしております。それと同じような趣旨でございまして、こうした場合に、事後審査なり事前審査をいたしましても、先ほど申し上げましたように、争いまする事実があまりにはつきりしている、官庁廃止という一事にすぎないような場合には、そうした争いをしいて起させる必要がないという意味規定いたすのが、常例だと考えております。
  13. 小林信一

    小林(信)委員 そこで問題は、ここで職を失うような人たちの実際の問題を考えて来るわけなんですが、大学定員は、各種類によらずに、大学全体で定員を定めておると思いますが、その点はいかがですか。
  14. 稻田清助

    稻田政委員 大学全体におきましては、明年度において総計六万二千六百人でございまして、本年度より五百八十一人の増と相なつております。しかしながら、その内容、つまり質の問題がございます。全体の定員については、むしろ増でありましても、専門学校程度職員が、そのまま大学程度職員になり得ないことは、明らかでありまするので、自然新制大学に移行できない先生方が生じて参るわけであります。救済の処置といたしましては、大学に移行すべき人の審査については、大学設置審議会において慎重に審査し、大学管理機関において、大学の良識において審査をいたしておるわけでございます。     〔若林委員長代理退席委員長着席〕  さらにまた、その選に漏れまする方方につきましては、大学当局において、公立学校その他の学校への転換を、いろいろごあつせんになつております。また文部省に御依頼があります分につきましては、文部省としても、いろいろ御紹介申し上げるのに骨を折つております。さらにまた、どうしてもこの際退官せられる方々に対する退職金の扱いにつきましては、特に優遇の方法を講じたいと考えております。今関係庁と折衝いたしておりまするが、成立する見込みは持つておる次第であります。
  15. 小林信一

    小林(信)委員 私は、その定員の問題から、こういうことをお伺いしたかつたのです。各省等におきましては、官制改革があつたような場合、部局改廃せられるようなことがあつた場合、これは省全体の問題でありますから、その内部においていろいろ配慮して、特にこの二項のようなものをつけ加えるということは、おそらくないと思いますが、大学であるからこういうふうなことが特に行われるというのは、ただいまもお話があつたように、免許法というふうなものがあつて、必ずしも他に流用することができないというような、特別な事情があるために、設けるのかもしれませんが、そういう点、他の省なんかの機構の改廃とこれとを考えますと、何か矛盾するようなものを感ずるのです。事情はよくわかりますけれども、法的に何か矛盾があるような気がしますが……。
  16. 稻田清助

    稻田政委員 省の改廃の場合等におきましては、すべてこうした規定を置くことが、常例であるように私は考えます。商工省が通産省にかわり、あるいは逓信省がわかれて電気通信省と、もう一つ郵政省にかわりました場合、逓信省の何局は郵政省に入り、何局は電気通信省に入るというふうに明示いたすのが、常例であります。すべてこうした官庁改廃の場合には、その設置法において、明らかにすべき性質のものだと考えております。
  17. 小林信一

    小林(信)委員 もちろん、省が二つにわかれるとか、ある一つの省がなくなるという場合には、当然のことだと思いますが、その省の中の部局改廃というような場合と、これが同じように考えられるから、私は質問したのです。そういう場合にも、やはり二項と同じような法的措置があるかどうか、こういうわけです。
  18. 稻田清助

    稻田政委員 各省設置法におきましては、省全体の定員を掲げておつて部局定員は別に法律に現われないのが常例でございまするし、国立学校につきましても、学校全体の総計法律に出ておるわけであります。法律の面といたしましては、内部部局改廃による定員の異動というものは現われて参りません。従つて問題は、先ほどお話のように、事の性質によつて考えるべきだと思つております。もしこれが同種学校廃止になり、同時に設立するのであれば、移行する旨を規定すべきである。異種の学校廃止になり、設立する場合におきましては、移行せざる旨を明記すべき性質のものだと考えております。
  19. 小林信一

    小林(信)委員 先ほどお話があつたのですが、大体これによつて身分を失うものが当然出て来るのであるけれども、その点はいろいろな配慮をしておるというふうにお伺いしたのですが、これによつて身分を失わなければならない該当者は何人であつてそしてそのうち救い得られる人は何人であるということを具体的にお話願いたいと思います。
  20. 稻田清助

    稻田政委員 その前に申し上げますが、附則二項で身分を失うのではなくて、むしろ三条学校廃止をいう原因で、そういうことが起つて来るということでございます。大体本年度專門学校として残つておりましたものは、おおよそ定員として四千六百名ばかりでありますが、実人員としては三千五百名ぐらいだつたと思います。それがすでにこうした学校廃止見込みまして、年度初めから、各大学でいろいろ処置を講ぜられておりますし、しかもまだ学年進行中でありますために、最後の決定を文部省としてはつかんでいないのでありますけれども、いろいろ大学に配置がえをするとか、他に転換せられる方を除きまして、附則二項のような形式をとります方として私ども見込みといたしましては、三十名出ないではないかと思つております。これらの方々についても、今大学当局においていろいろ御配慮中でありますので、今月の終りまでには、また相当数が片づくのではないかと思つております。
  21. 小林信一

    小林(信)委員 そうすると、私たちが非常に心配しておる点は、杞憂にすぎないような状態になつたわけですが、それでもなお残るような人に対して、何らか文部省としても、特に御考慮なさるようなことがありますか。
  22. 稻田清助

    稻田政委員 どうしてもこの際退官せられなければならない方につきましては、退職金につきましての、特別の処遇を講じたいと思つております。従来の行政整理の例にならいまして特別に厚い退職手当を出したいと考えております。実現の十分な見込みを持ちながら、目下関係省と折衝中でございます。
  23. 小林信一

    小林(信)委員 当然そういう処置がなさるべきだと思うのでありますが、さらに私たち考えとしましては、特別の退職金をもらつたとしても、生活的には非常に不安なのです。やはり新たに職を求めなければならぬと思うのでありますが、そういう点からしまして、一年くらい休職期間を与えて、就職する期間考慮する、その上退職手当を十分にやる。これは数からお聞きしてもわずかなんですから、そういう処置をされたら、一般方たち心配しておるようなことが、なくなるのじやないかと思うのですが、その点どうですか。
  24. 稻田清助

    稻田政委員 ほかの官庁で、よく廃止が突然起る場合がございます。今回の場合におきましては、すでに昭和二十四年の学制改革におきまして、こうしたことが三年目に起るということは、はつきり予測せられておりましたので、前もつていろいろ教員資格審査等も行われておりますし、前もつてまた大学当局におきましても、十分御本人意向を聞きつついろいろ転換の御処置をとつて参りました。ただいまのお話のように、これから先猶予期間というものを置くまでもなく、従来におきまして、十分努力せられる余地があつたと、私ども考えております。また、もちろん大学当局におきましても、今後こうした方々の身の振り方については、御努力にもなりましようし、またもし文部省がいろいろごあつせん申し上げることが必要ならば、幾らでもごあつせん申し上げようということは、大学当局にも申し上げておるような次第でございます。
  25. 小林信一

    小林(信)委員 私が心配するのは、他の官庁に勤められる方とか、あるいは教員以外の公務員というものは、教員とは職務的の性格が違うという点を考えておるわけなんです。と申しますのは、免許法というようなものがありまして、非常に範囲が狹められておる。そういう点からして、たとい三年前にそういう情勢がわかつてつたとしても、いまさらどうすることもできないような状態に追い込まれるのじやないかと思うのです。そういう点も、やはり休職という制度もあるのですから、考慮をしたら、今後官制改廃というようなことで、心配先生方に与えないと思うのですが、いかがですか。
  26. 稻田清助

    稻田政委員 六万人に余る教育職員転換問題を、三年間にわたつていろいろ大学当局考慮ぜられまして、先ほど申し上げましたように、いよいよここに残りますものは三十何人というような状況でございますので、考えられる方法というものは盡されたものと考えております。あるいはここに一年なり半年猶余を置きましても、今まで三年間かかつて努力いたしました処置に比べて、どれほどいい方法が見つかるかは、疑問であります。その辺については、従来の大学当局のいろいろな態度というようなものに、私どもといたしましては信頼いたしまして、なおこの際やむを得ず退職せられる方については、せめて処遇をよくする、あるいはまた何らかいろいろ御相談に応ずるという方法しかとれないのじやないかと思つております。
  27. 小林信一

    小林(信)委員 それから別の問題をお聞きいたしますが、短期の夜間部設置されたところがあるのですが、こういう制度は、私たち考えて働く青年諸君、こういう人たちのために非常に有意義なことだと思うのです。文部省としては、こういう制度は今後もつと拡張して行く御意思であるかどうか、なおそれに対して文部省の特に考えておられるような点をこの際承つておきたい。
  28. 稻田清助

    稻田政委員 お言葉のごとく、教育機会均等ということを大学制度において考えまする場合に、どうしてもこうした夜間課程というものが必要であると存じます。また晝間の設備なりその他を、夜間課程に利用いたしますることは、国家経済から見ましても、非常に有意義だと考えまするので、文部省といたしましても、今後財政その他の事情の許す限り、こうした夜間短期大学課程というものを、各大学にだんだん広く及ぼして参りたいと存ずるのであります。それからいま一点は、わが国技術教育振興というような点から考えまして、四年制大学に並びまして、短期大学において、こうしたセミ・プロフエツシヨナルな教育を与えるということも、わが国産業振興上、非常に大事だと考えます。そういうような点からいたしまして、将来技術的なこうした学部等につきましては、優先的に短期大学設置考えて参りたいと考えております。
  29. 小林信一

    小林(信)委員 文部省財政といたしましては、そういうような御意図を持つておられても――全国的にまず分散の方法、そういう御意向があると思うのですが、しかし財政的には、その意図が実現できないから、地方の協力とか、あるいは地方の積極的なるものに、文部省が追随をして行くというようなことが、われわれにはうかがわれるのですが、そういうことをしておつたのでは、やはり教育機会均等とか、そういう今の御意思のように、青年諸君の便宜をはかるというようなことは事実行われないのです、その点今の方針として、地方に盡力するような資力があれば、これに文部省が応じて行くような態度とか、あるいは全国的に均等に分散して行くような計画をもつて着々進行されておるのか、そういう点もお伺いしたいのです。できるならば、来年度あたりは、またこういうふうに拡大して行く予定であるというふうなところがありましたらお伺いしておきたい。
  30. 稻田清助

    稻田政委員 新制大学制度といたしまして、特に米国の第二次教育使節団の報告にもありますように、でき得る限り地方要望に即した大学たらしめたい、これが一つ趣旨でございます。と同時に、わが国全体を見渡しまして、全体の国土計画、あるいは産業計画というような見地から見ましての考慮も、必要だと思つております。これらを調節する意味におきまして、今日国会に御審議を願つております国立大学管理法案におきましては、中央に特別の審議会を置きまして、その審議会におきまして、全体の大学のそうした計画をいたすわけでございますが、文部省といたしましては、もしこの法律が成立いたしますれば、そうした審議会の御協議を経まして、ただいまお話のような方針を決定して参りたいと思つております。
  31. 小林信一

    小林(信)委員 その問題は一部に偏することなく、地方財政のいかんによることなく、この点は、私たちとしては非常に期待の大きいものでありますから、文部省としては、ぜひともこれを普遍的に実現していただきたいということを希望いたします。  それから学部のいろいろな改廃があるのでありますが、こういうふうに決定されるのは、その大学意向が主になるのか、あるいは文部省あるいは審議会意向というふうなものが主になるのか、その辺をちよつとお伺いしたいのです。
  32. 稻田清助

    稻田政委員 もとより大学当局意向というものは、非常に重要な要素として考慮いたさなければならぬと思います。同時に、地方要望でございます。ごらんの通り、かなりの県立大学の合併であるとか、あるいは地方にございました民間研究施設の吸収であるというような点において、拡張いたしております。これらは、やはり地方要望から見るわけでございます。と同時に、大学設置審議会あたりにおきまして、総合大学のあるべき形というような点からも考えまして、そうした專門的考慮も加えまして、文部省として予算を要求し、認められた予算に照応いたしまして、ここに法律改正案提出したわけでございます。
  33. 小林信一

    小林(信)委員 これはほんとうに地方に限らず、大学という制度を充実して行くために考慮されるなら、地方によりましては、現在の制度というものに対して、文部大臣あたりがある一つの意見を持つておる。短期大学の形にこれから縮小されるようなものもあるかもしれぬ、それに自分たちは該当するかもしれないから、今のうちにこういうものは弱めても、こつちの方は強化しようというようなことから、非常に学部改廃というようなことでもつて、不安を持つておるのです。それはあながち地方の実情でなくして、文部大臣あるいは文部省が、何か意図するものにおびえているような傾向があるのです。そういうふうな場合に、やはり審議会あたりが、この改廃については、とにかくまだ発足して間もない制度なのですから。十分検討する問題として、決してそういうふうなことは心配ないというような、確固たるこれに対する考えを持つてつていただかないと、地方にはこれに対して非常に心配しているところがある、そしてみだりに学生等に不安を与えるようなところがあるのですが、そういう点は十分考慮していただきたいと思います。  それからもう一つ、各府県とも大学設置されたのですが、いろいろ分散しておりまして、分校というふうな形であるので、非常に教授上不便を感じておるようです。もちろんこれには財政的にむずかしい問題が付随するわけですから、一概に私どもが、文部省早くやれということは、いけないかもしれませんけれども、これに対して、今のところ教育上重大な問題だと思つておりますが、文部省の現在のお考えをお聞きいたします。
  34. 稻田清助

    稻田政委員 お話通りでございまして、従来の專門学校師範学校を包括いたしまして大学をつくりました関係上、大学の各学部、あるいは分校施設が、非常に散在いたしております。これは教育的に見ましても、また経済的に見ましても、考え直さなければならないという観点からいたしまして、大学設置審議会に特別の委員会を設けまして、特に土地、建物、施設という観点に立脚いたしまして、将来そうした施設を統合いたしまして、あるべき形を研究しようということで、目下いろいろ同委員会において御審議中であります。いずれ答申を得ましたならば、文部省といたしましては、将来その線に沿うて予算を充実し、また地方の御協力も得まして、大学のあるべき形を、でき得る限りすみやかに将来つくつて参りたい、こういう考えを持つております。
  35. 小林信一

    小林(信)委員 そうすると、今のところは、現在分散しておるものを統一するのに何箇年かかるとか、第一年においてはこの程度にするとかいうふうな、まだ具体的な計画はないのですか。
  36. 稻田清助

    稻田政委員 大学設置審議会の答申が、近い機会に提出せられるであろうと考えております。それを見まして、それによつていろいろ必要予算なりその他の点を考慮いたしまして、年次計画をでき得る限りすみやかに樹立いたしたいと思つております。
  37. 小林信一

    小林(信)委員 その点が、地方におきましては、自分たちにいち早く分散するものを統合して行きたい。ところが文部省に聞きますと、あなたたちに相当これに対する援助する力がなければ、やつてやることはできないというふうに、各地方では聞いて帰つて、まことに文部省計画というようなものは、信頼できないというふうに言つておるのですが、文部省ではそんなことはありませんか。
  38. 稻田清助

    稻田政委員 国が設立者でございますから、もとよりこの究極の責任は国にございますし、国がその責任において計画を立てるわけであります。しかしその実現をすみやかならしめ、容易ならしめる意味におきましては、やはり地方の御協力を得たい、こういう意味合いでございます。單に地方が協力すればできる、あるいはしなければやれないというような性質には、私ども考えていないのであります。
  39. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 この設置法の中には、千葉大学の工芸学部を工学部にするという問題がございます。千葉の工芸学部というのは、日本にただ一つあるのであつて、工学部というのは、ぼくの考えですれば、理論工学をもてあそぶ工学部が多過ぎると思う。どういうわけで工芸学部としての特色を失わしめるのか、その点を局長に聞きたい。
  40. 稻田清助

    稻田政委員 お話のように、千葉大学の工芸学部を工学部に名称変更いたしております。これはもと東京の工芸專門学校が千葉に移りましてから、従来の工芸学科以外に、建築とか機械とか、その他の学科を増設して参つたのであります。それをもとにいたしまして、一応新制大学学部として出発いたしまして、さらにこれを大学教育というような観点から考えまして、学科を整頓いたしまして、今日のところ工業意匠科と建築学科と機械工学科、電気工学科、工業化学科というような学科を包容する学部になつた次第でございます。そういうような学科構成を考えますれば、やはりこれは工学部と申すのが適当だと考えまして、名称変更の提案をいたしたわけでございます。もとより、この工業意匠科と申しますものは、従来わが国に非常に欠けておりました製品の製造から配給いたします過程におきまして、工業意匠を加味するというような点につきまして、いろいろ将来の輸出工業その他を考慮いたしまして、工業意匠科というものを大学程度学部に新たに設け、将来これを充実いたして参りたいと考えた次第でございます。この点につきましては、千葉大学の工業意匠科も、将来充実いたしたいと思つておりますし、また短期大学程度のいわゆる工芸の問題につきましては、将来極力この大学なり、あるいは他の大学に、文部省といたしましては、充実を努めて参りたいと思つております。名称を変更いたしましたのは、現実の千葉大学の構成が、こういう学科組織になりましたので、それに照応するように、設置審議会意向もくみまして、ここに提案いたしたにほかならないのであります。
  41. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 この千葉大学の工芸学部というものは、その淵源はきわめて古く、これは芝浦の高等工芸から変形したものでございます。日本にたつた一つの異色ある学部であつて、今度工学部としてその下に学科が隠れてしまうということになりますと、これは工芸学部という名称があつたから、全国からきわめて熱心なるその道の志願者が殺到したのでありますけれども、かかる工学部の名前のもとに隠されてしまうことによつて、そういつたような志望者も、その問題に特に興味を持つて集まるところの人々も、少くなるのではないかということが、憂慮されるのでありますが、その点はどうなんですか。
  42. 稻田清助

    稻田政委員 新しい産業なり、また輸出向き製品の産業というような意味におきまして、大学程度の工業意匠科というものをここに設けたわけでございまして、この点につきましては、まだ一般の認識が、設けたばかりで薄いかと考えておりますが、十分これは学校当局の御配慮によりまして、将来こうした点について、優秀な学生をもつと招致いたしたいと考えております。従来芝浦の專門学校程度に志願せられておつた方々としては、その最も純粋な工芸的な面の希望者は、芸術大学の方に道もございましようし、また短期大学程度課程を履修せられる方方としては、現在のところないのでございますが、将来文部省といたしましても、十分そうした程度の工芸方面の教育も、施設して参りたいと考えております。
  43. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 この工芸学部を工学部に名称を変更する理由の一つとして――これは個人的に話したことでありますから暴露するわけでもありませんけれども教授陣営の素養の点が低いの、どうのこうのということが、あげられておつたようでありますが、私はこの点はどうかと思うのであります。なるほど東大の法文科系統を出た局長あたり考えられますとき、要するに試験勉強によつてある程度の学科のレベルに達しない人は、その教授でない、東大を出ないような人は、教授の資格がない。東大というのは極論ですが、要するに昔のりつぱな官立大学を出ないような人は、教授の資格がない。こういうようなアカデミツクな考え方が、局長の頭を支配しておるのではないかというように私はそんたくする。そういうようなものではないと思う。芸術大学におきましては、たとえば三味線の道の権威者であるならば、あなた方がいうところのそういつた筆頭試験がどうであろうと、その特色を生かして教授にするというのが妥当である。この工芸学部におきましても、その道の権威者で、その道の技術優秀なる者を教授に任用する道を開きさえすれば、さしつかえないと思うのでありますが、この点どういうお考えでありますか。
  44. 稻田清助

    稻田政委員 この工芸学部の名称変更に伴いまして、人事の問題が多少あるわけでございますが、それは新しく立てました工業意匠科というものの性質が、従来工芸專門学校で持つておりました印刷工業、あるいは写真工業、化学工業というような、いわゆるセミ・プロフエツシヨナルな教育と違いまして、ほかの建築学科、機械工学、電気工学その他と関連いたしました意味においての、その程度の教育でありますので、従来非常に技術的に教えることによつて専門学校の先生でありました方々が、そのまま学部教授たり得なくなつた、こういうことになつたのであります。それは何と申しますか、学科編成の方針によつて教授ではみ出る方が出て来た次第であります。お話のように純粋な工芸である、あるいは技術であるというような意味合いにおいての学校考慮いたしますれば、そうした点については、お話のような性質方々が、十分お働きになるような機会が得られるだろうと思います。
  45. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 それから説をなす人は、この工芸学部の学科の、たとえば芸術大学のあれと抵触する点があるというようなことを言う者もあるのでありますが、これは私をして言わしむればまことに当を得ない考え方だと思う。というのは、芸術大学におきましては、一つの芸術品をつくるにいたしましても、一生に一個つくつていいというようなものでありますれば、きわめて気品の高い芸術品であります。ところが、なぜ私が工芸学部等を、またそういつたような学問を尊重しなければならぬかと申しますと、これは今後における輸出工芸品の相当の重要部分を占めるものであるという確信を私は持つております。そういう意味合いにおいて、奨励しなければならぬという次第であります。これは産業の基礎なんです。ですから、芸術大学等において、一生に一個の芸術品をいじくりまわすというのとは、全然趣は違うと思うのでありますが、局長は一体どういう考えを持つておりますか。
  46. 稻田清助

    稻田政委員 その点はまつたくお考えと同一で、ございまして、一芸一品をつくつて行くというような性質の手工芸的なものは、これは芸術大学の芸術学科あたりでやるべきものだと思つております。この千葉の工学部に置いております工業意匠科でいたしますものは、その他の種々の産業と密接な連関を持ちながら、製品の製造なりにデザインを加味して行く、そういう意味において将来輸出産業の振興に資しよう、そういう程度の教育をこの工業意匠科でいたしておるわけであります。そこにおいてもう一つの面が抜けておるかもしれないと思います。その抜けております面は、従来の専門学校程度でいたしておりましたその中間のもの、これは将来におきまして、教育としては短期大学の程度において、われわれといたしましても、充実を期したい、こういう考えでおるのでございます。
  47. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 実はこれは本委員会においての説明でなく、他の機会においての説明でありますが、千葉の学長の御説明によりますと、あそこの現在の工芸学部の学科のあり方は、八〇%が一般工学であつて、二〇%が工芸学部の分野だ、かるがゆえに工学部とすべきである、こういう説明でございました。私直接承つた次第でありますが、さなきだにそちらの一般学部教授等が多いために、この工芸学部教授連が圧迫されておるという。今日でさえもそうであるのに、今度ははつきりと工学部と改称した場合においては、一般工学に偏重され、この大事な、たつた日本に一つしかないところの特色ある工芸学部の面が、圧迫されるであろうということは、容易に想像される。あの教授たちというものは――そう言つてははなはだ失礼でありますが、相当学閥もあれば、派閥もあります。私はそれを憂える。たつた二〇%にすぎない。しかも局長の言われるように、教授陣営の素質が低いのどうのこうのと言われておるので、この人たちは太刀打ちができなくなる。そうすると、ますますこの大事な工芸学部学科の方面が圧縮され、圧迫されるということを私は憂えるが、あなたはこれをどうお思いでありますか。
  48. 稻田清助

    稻田政委員 工業意匠科をつくりました以上、また先ほど申し上げましたように、こうした面がわが国の輸出産業という面から見まして、一つの重要な課程であるというような点から、われわれといたしましては、将来にかけてこの面の充実、拡張ということこそ考えますけれども、これを逆に縮小するとかなんとかいうことは、毛頭考えておらないのであります。また教授陣容といたしましても、この四年制の課程に必要な有用な方々を、将来網羅して行きたい、こういう念願でございます。
  49. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 稻田局長は、非常に巧妙に答弁される方でございますけれども、実際は、私は必ずしもそういうふろに行くかということを憂慮するものであります。御承知通り局長というものは、相当これは重要なポストであります。長い目から見て、あなたはこの面を保護育成助長して行く立場の人だと思います。現在の学校制度のもとにおいては、観念や理論だけをもてあそぶような、妙な学者のなりそこないのような、そういう者ばかり輩出する。この狭い日本には、そういう人はたくさんはいらない。そういう考えから、私は職業教育法案、産業教育法案なるものを、実はこの議会に提出してこれを通過するようにしたが、その観点と同じであります。これは国を憂えるからであります。あなたは、必ずわれ誤てりということを考えるに違いない。私は劔木次官とよく話したことがあるが、はたしてその点において、文部当局の首脳部間に意見の食い違いがないかどうか、ここではつきり断言していただきたい。
  50. 稻田清助

    稻田政委員 先ほど来提案いたしました改正の理由について、御説明申し上げておるわけでございまして、御意見に対しまして、私別に反対する意見を述べておるのではないのでありまして、こういう案を提出いたしまするに至つた、その理由を申し述べたにすぎないことを御了解を願います。
  51. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 これは大体卒業生が四千名おります。この人たちは、ああいう特殊というと、はなはだ失礼でありますが、ああいう特殊の教育を受けた人でありますから、あまり政治運動は得手ではございません。ところが御承知通り、学長は、ほとんど毎日のように国会に来ております、あるいは文部省に行つて多くの人に会い、委員長にも陳情しております。ところが、この四千名の人は、陳情は一つもしておりません。おかしな表現でありますが、この声なき声を聞いてやる必要がある。運動しないから、そんなのは圧迫しておけというような考え方は、いけないと思う。もう少し信念を持つて――それは必ず悔いを残すことがあると思う。ある関係方面においても、職業教育を非常に軽視し、補助金をゼロにしたことを、われ誤てりと白状しているということでありますが、必ず局長も、後悔する時代が来ると思います。そこであなたは、今後あの特色あるところの工芸学科の面を拡充して、それを母体として、そこに一つ学部を将来独立せしめる、一般の工学部と併置することもお考えになつていないかどうか。
  52. 稻田清助

    稻田政委員 お話の点は、非常に理想的な問題でございますが、私どもといたしましては、まず段階的にこの工業意匠科というものを充実いたして参りたい。また同時に、先ほど申し上げましたように、従来の専門学校程度教育に相応いたしまする意味におきまして、短期大学程度課程を創設して、拡張するというようなことが必要だと思つております。その上の問題といたしましては、他の一般課程の拡充に伴いまして、そういうものにつきましては、この大学のみならず、他の大学におきましてもだんだん拡充して参りたい、こういうふうな順序に考えております。
  53. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 それでは、局長は短期大学をつくるというお考えでありますか。
  54. 稻田清助

    稻田政委員 念願として、そういうことを考えております。
  55. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 一局長の念願では、はなはだ心細いから、もう少しその点コンクリートして、文部省の御方針としてお示し願いたい。
  56. 稻田清助

    稻田政委員 将来こうした各学部を創設するとか、あるいはまた短期大学課程を置くとかいう問題になつて参りますと、今日御審議つておりまする国立大学管理法案が、もし制定せられますれば、中央審議会において、そうした点は審議せられると思つております。われわれといたしましては、いろいろ研究いたしまして、そうした審議の際に、ただいまの念願が実現いたすことを希望しつつ、いろいろな資料を提供いたしたいと考えております。
  57. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 これで一応質疑は終ります。但し賛否の態度は別にしておきます。
  58. 長野長廣

    ○長野委員長 私よりこの際一言御希望を申し上げたいと思います。この学校教育というものは、現在の教職員のみにおいてなすべきものではありません、学校教育の根幹は、校風、学風にあると思います。しかして学風は、その学校の校名及び創立以来の学校、校長、職員ほか学生及び同窓生の建設したものであると思うのであります。従いまして、学校名を動かす場合には、それらの点をよく考えて、教育においてさらに一段の飛躍をせしめるに適当な、校風を啓培するに適当な名称を案出するということが、必要ではないかと思うのであります。この大義に立ちますときにおいて、本問題について、なお同窓生その他の御要求もあるかのように聞きます。しかし、また一面において学校の拡張が行われまして、一種の美術的な訓練をする学科以外の学科も、相当できておるということで、これが改名を要望しておるようでもあります。従いまして、この慎重な問題を本日ここで質疑を打切るということは、やや不穏当のように考えますから、当局並びに委員各位におかれましても、さらに一層御検討をいたされまして、同校の発達のために、また在学生、卒業生が、歓喜をもつて校運の開発を達成せしめる意味において、どうかひとつ御考慮、御研究を願いたいと存じますから、あらためて次の機会に讓りたいと思います。
  59. 佐藤重遠

    ○佐藤(重)委員 議事進行について一言したいのですが、今論議されております国立学校関係のことは、もうこの程度で盡きていると思います。岡さんは、たいへん御熱心に御意見をお述べになつておりますが、私は実は文部委員が専門で、ほかの委員はいたしておりません、一貫して専門に文部委員だけしていて、いろいろな方面から事情も聞き、調査、研究もいたしております。ただいまの問題は、もうこの程度で十分盡きておると思うのですが、どうでしようか。このくらいで打切つて早く――岡君のいつも言われるベターでなしに、早くやつてもらいたいと思うのです。私が公平な立場から調査したところによりますと、政府もまじめに研究され、また学校の当局者もまじめに研究されて、これが一番いい、国家百年の計のために、これが一番いいという見地から出された政府原案でありますから、これは私は信頼していいと思います。私はたいていのことはがまんして、黙つて若い人たちの議論を拝聴しておりますけれども、こういう問題は、いたずらに議論にばかり走つても始まらぬと思います。だから、このくらいで質疑を打切つて、どんどん議事を進行してもらいたい。会期も余すところわずかしかありませんので、――私少し急ぎ過ぎるかもしれませんが、どうもあまりしつこ過ぎると思うから、私はこの辺で質疑を打切つていただきたいと思います。
  60. 長野長廣

    ○長野委員長 私がただいま申し上げましたのは、何も日を重ねる意味ではありません。双方非常に熱烈なものでありますから、ここでちよつと間を置いて、御協議を願つて、円満に午後までに解決するようにするというのが、私の真意であります。今ここでやつては、かえつて委員のほんとうの志を達するゆえんではないと思いますから、佐藤委員におかれましても、どうぞこれを午後引続き行うことを御了承願いたいと思います。  この際文部政務次官から、本問題につきまして御意見の開陳がございます。お願いいたします。
  61. 水谷昇

    ○水谷政府委員 ただいま問題になりました、千葉大学の工学部の問題でありますが、非常に御熱心に御討議になつたので、御意向のほどは、私ども十分了承をいたしました。つきましては、工学部という名前に変更いたしましても、工業意匠科の内容充実につきましては、今後十分文部省の方においても注意いたしまして、その発展を期したいと思います。なおこれに関係した教授方々に対して、工学部とすることによつて教授の方が圧迫せられるようなことがないかという御心配もありましたが、この点につきましては、特に私どもの方で心配いたしまして、決してそういうことのないように、十分その教授方の意思が実現できるようにいたしたいと考えております。なおまた、特に工芸部門につきましては、将来短期大学等の創設も私ども考えておりますので、皆さんの御協力によつて、これが実現を期したいということを考えております。いろいろ熱心なる御審議に対して、深く敬意を表するとともに、委員長の御心配もありますので、十分今後御意向のほどは実現をしたいと考えております。     ―――――――――――――
  62. 長野長廣

    ○長野委員長 次に、昭和二十六年度に入学する兒童に対する教科用図書の給与に関する法律案を議題とし、前会に引続き質疑を続行いたします。
  63. 渡部義通

    ○渡部委員 政府側の提案の説明によりますと、憲法二十六条第二項の規定による、義務教育の無償という立場と、兒童の公共心の涵養ということを考慮をしてという、両面から、なされておるように見えますが、これは一体どちらに重点が置かれているのか。義務教育の無償、言いかえれば、被教育者の側の負担をなくするという見地に、重点を置いているのか、兒童の公共心の涵養という点に重点を置いて、この無償給与をやるのか、どちらなんですか。
  64. 辻田力

    ○辻田政府委員 お答え申し上げます。この法律意図しておりますところ、希望しておりますところは、憲法に定めてあります義務教育の無償の理想を達することを重点といたしまして、兼ねて公共心の涵養を考えておる次第でございます。
  65. 渡部義通

    ○渡部委員 この法案は、二十六年度に関するものでありますが、この計画として、政府の方に二十六年度以後もこれを続けるという方針であるのか。さらに二十六年度以後は、科目を拡大して行つて、やがて計画として全科目にわたるような具体的な方針を立てておられるのかどうか、その点を……。
  66. 辻田力

    ○辻田政府委員 政府といたしましては、先ほど申しましたような趣旨で、この法律案考えておりますので、将来におきまして、この義務教育の全部が無償になるということを念願としておる次第でございます。しかしこれにつきましては、財政上の都合その他も、いろいろございますので、その実情に応じてこれを実施して行きたいというふうに、考えておる次第であります。
  67. 渡部義通

    ○渡部委員 将来というようなことでなくて、たとえば直接の問題としても、二、三学期にわたるものも、一学期だけにするのか、二、三学期にわたつてもやるのかという問題もあるし、さらに来年度はどうするかという具体的な案がないと、ここだけからは、私は結論が出ないと思うのです。やはり具体的な体系的な腹案というものができておつて、その腹案に基く一部分としてこれが出されるのなら意味があるが、将来のことはわからない、将来のことは單なる念願であるというならば、ここにこれを出された意味がなくなつてしまう。だから、これを体系的なものの一部として出されているのかどうか、その体系がどんなものであるかという点を、ぼくは聞いているのです。
  68. 辻田力

    ○辻田政府委員 文部省といたしましては、義務教育無償の理想を、できるだけすみやかに達したいと考えまして、最初はできれば一挙にこの問題を、少くとも教科書について解決したいというふうな考え計画を進めたのでございますが、諸般のいろいろな事情がございまして、本年無償の実現の試みとして、これを実施するということになつたのであります。しかし本年度の問題につきましては、前期、後期にわたりまして、これを実施したいという考えでございます。それから明年、二十七年度以降の問題につきましては、本年度の実績にかんがみまして、諸般のことも考慮に入れまして、具体的に審議会を設けてやつて行きたいというふうに考えております。
  69. 渡部義通

    ○渡部委員 それではこの法案というものは、單なる二十六年度だけに限る試みにすぎないというような見地から、出されているのですか。
  70. 辻田力

    ○辻田政府委員 この法律案は、二十六年度限りの臨時の立法でございます。
  71. 渡部義通

    ○渡部委員 これは文部省は、まあ日本の文部省は、このくらいの程度かもわからぬけれども、私はおかしいと思います。教員組合なんかでは、三箇年計画でこれを実現するというふうに具体的な案を立てておる。文部省において單なる試みとしてやつてみるというようなことで、地方財政にも重大な関係があり、国家の財政にも重大な関係があるというような問題が、單なる試みというような形でなされるということでは、はなはだわれわれとしては了解できないと思います。やはり一つの体系という方針があつて、その体系の中のこういうものとしてなされるんだというふうな体系が示されないならば、われわれとしては、ほとんど審議するに値しないような法案であると思います。その点をもう少し具体的に、できているのかどうかという点を聞きたいのです。
  72. 辻田力

    ○辻田政府委員 先ほど申し上げましたように、文部省といたしましては、義務教育無償の理想を達するために、具体的に計画を樹立いたしまして、この実現をはかつているのでございますが、財政上の理由等によりまして、一応本年度限りということになつた次第でございます。しかし、明年度以降は全然考慮しないというようなことは、もちろんないのでありまして、われわれといたしまして、逐次これが実現するように、財政上の理由も考えまして、努力したいと考えているわけであります。
  73. 渡部義通

    ○渡部委員 それでは具体的な一つの腹案として立てられたものは、どういうものであつたか。これは教員組合等で立てている方針等もありますので、一応聞いておきたい。
  74. 辻田力

    ○辻田政府委員 私たちの方で研究いたしましたのは、いろいろな案がございますが、最初は本年限りで、本年においてこれを全部実現するということを考えましたが、また第二の案といたしましては、小学校・中学校九年間を、三箇年計画で実施するというような考えを持つたこともございます。しかしいろいろ財政上の理由がございますので、まず最初に一年生から実施いたしまして、これを九箇年間に完成するということも一応考えたのでございますが、やはり地方財政あるいは国家財政の両方の観点から現在の段階におきましてはこれを本年限りにおいて一応試みとしてやる。しかし、これは單に試験的にやつてみるというだけのことではないのでありまして、この義務教育無償の理想実現を奨励するというために、今後何らかの方法で、これを実現したいというように考えている次第であります。
  75. 渡部義通

    ○渡部委員 そうすると、方向としましては今後これを続けて行く。それで、その方向を拡大して行くと、やがてやはり單に地方公共団体に対して一つの刺激を与え、これを勧奨して行くという方向に行くのか、全額国庫負担というような形で、これが実現されるような方向に進まれるのか、その点はどうですか。
  76. 辻田力

    ○辻田政府委員 着々実施するように努力したいと思いますが、ただいま御質問のありました奨励のやり方で行くのか、あるいは全額国庫負担の関係で行くのかという問題がございますが、これはこの法案におきましては奨励の形で行つている次第でございます。これを全額国庫負担にするかどうかということにつきましては、十分研究してみたいと思います。
  77. 長野長廣

    ○長野委員長 ただいま議題といたしております昭和二十六年度に入学する兒童に対する教科用図書の給与に関する法律案質疑は、本日はこの程度にとどめます。     ―――――――――――――
  78. 長野長廣

    ○長野委員長 次に、先ほど議題といたしました国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題とし、討論に入ります。     〔委員長退席、若林委員長代理着席〕
  79. 渡部義通

    ○渡部委員 議事進行について……。これは採決になりますと、今五分の一ほどしか人がいないと思うのです。五分の一の採決ということは、できないと思いますのみならず、社会党が二人とも出ていない。委員が出ていないことについては、理由があると思うのですが、社会党には、やはりこの重要な問題について、意見がないはずはないのであつて、單なる棄権だとも考えられない。ちようど自由党がこれだけしか出ないと同じように、社会党は二人出ないのかもしれないけれども、その点もやはり社会党に交渉して、社会党の方からも出てもらい、少くとも各党から出てもらつた形において、出すべきだと思うのです。
  80. 若林義孝

    若林委員長代理 国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題として討論に入ります。岡延右エ門君。
  81. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 私は自由党を代表いたしまして、本法案に対して賛成の討論をいたさんとするものであります。こういう設置法改正等におきましては、これはきわめて厖大なる改正でございますが、こういう場合には、全国の学校のあり方のバランスを考えて、一校々々のそれぞれの立場というよりも、今後は全体のバランスを十分考慮してやられるように希望いたします。なおまたこの設置法によりまして、多少でも、ごく少数ではあつても脱落する教員等がございましたならば、それらの方に対しましては、手厚い処置をしてやるという考慮を払われんことを希望いたします。  それからもう一つ、先ほど問題となりました千葉の工芸学部を工学部にする問題でありますが、先ほど水谷政務次官から意思表示がありました。水谷政務書は、議員としては、われわれ同僚でございますから、かれこれ言いたくありませんけれども、もしそれ官僚を代弁するものならば、そのときその場で、これが通りさえしたらよろしいということが、往々にしてあり得るのでありますから、どうかそういうことでなしに、二十七年度からは、その具体化に向つて予算措置を講ずるという熱意を示されるように、ひとつおとりはからいを願いたい。  以上をもちまして私の討論を終ります。
  82. 若林義孝

  83. 小林信一

    小林(信)委員 国民民主党は、この法案に対しまして賛成いたすものであります。ただ多少意見があるのでありますが、いろいろと質問いたしまして、今後の要望をいたしておきましたから、その点で了解していただいているわけでありますが、先ほど問題になつております学部の新設の問題であります。これは單に千葉大学の工芸学部を工学部にしたというだけの問題ではなくて、これは氷山の一角であります。各地方大学におきまして、こういう問題が、その学校事情とか、地方の実情等によりまして、今後いろいろと意見が出て来るのではないかと思います。もちろん大学の自主性というものは、大いに尊重して行かなければならぬのでありますが、そういうような点から生れて来る改廃であつては、出発して間もない新しい学制に対して、非常に憂慮すべき問題が考えられるのでありますが、これは今後私はたくさん出て来る問題といたしまして、單に千葉県だけの問題でなく、十分文部省当局といたしましても、また審議会等におきましても、学制に対する確固たる信念をもつて善処せられたい、こういうことを私はこの新設にあたつて要望するものであります。  さらにその他の問題におきましても、新制大学の性格なり、あるいはその置かれておる地方事情なり、また日本の産業経済というふうな面から考えましても、今回ここに上程されております案に、私たちは一応賛成しますが、もつとそういうことを重点的に考えられて、日本の教育のあり方というものは、日本の実情に即して行かなければならぬということを要望するものであります。とかく財政的な理由で左右されるのでありますが、日本の産業経済の計画に対して、積極的にこの教育が乘り出して行つて、これに即応するような強力な教育行政を、こういう面に強化していただきたいという点を、私は要望するものであります。もちろん、これに並行しまして、研究所の設置等も、そういう点から見ますと、きわめてまだ偏した傾向がありまして、それが地方全般の実情に即するというような形がとられていないのでありますが、もつと文部省といたしましては、積極的に善処していただきたい。  それから短期大学の問題は、私は憲法の精神から行きましても、また青年諸君が置かれておる現在の経済事情、あるいは地方事情等を考えますときに、まことによい案でありまして、これが望むならば、もつと全般的の設置がほしい、一部に偏することなく全般的にこれを実施していただきたい。要するにもつと財源を獲得して、こういう点に強力に文部省が働いていただきたいということを要望するものであります。  さらに国立大学に包括されましたために、旧制の諸学校廃止されまして、これに伴いまして、その身分を失わなければならないような人が出て来るために、その措置として附則の第二項が設けられてあるのでありますが、これは昨年旧制高等学校廃止されたときには、こういう条項はつくられなかつたのに、今回はこれがつくられた。事情のいかんによつてこの法律を制定する場合に、異なつた措置がとられるということは、非常に不可解に存ずるものでありますが、こういう点においても、立法措置としまして、一貫した方針をとつて行かなければ、ある場合には不当な措置によつてその身分が憂慮されるというようなことがあつては、教員諸君のあり方からして、免許法というようなものに拘束されて非常に狹くされておる実情からいたしまして、非常に不安でならないのであります。できるならば、私はこういう条項は削除して、国家公務員法なり、あるいは特例法なりによるような方法が講ぜられて、将来不安のないようにして行きたいのであります。いろいろとお伺いしますと、そういう点につきましては、事実上支障がない、全部が必ず救済されて、生活的に不安は与えられない。そういう点に対しては、文部省としては極力努力して来られたし、今後もこれに努力するというようなお話を承つたので、まず了承するわけであります。  以上の点からしまして、意見を申し上げて本案に賛成いたします。
  84. 若林義孝

    若林委員長代理 渡部義通君。
  85. 渡部義通

    ○渡部委員 共産党はこれに反対であります。学校の再編成あるいは改廃の内容については、大体異存はありません。しかし、この附則第二項が問題であります。これは、当局の説明によると、單なる立法技術であるというふうなことでありましたが、今小林君が言われたように、これは昨年の設置法案にはついていないものが、今回つけられた。これによつて学校再編成あるいは改廃の機会に、多数の人たちが職を失うというだけではなくて、これあることによつて身分上の不当な措置をとられるような教授が出て来る可能性がある。單に可能性があるばかりではなくて、これを機会に、思想的あるいは政治的理由によつて、不当な措置のための利用にさえ、この機会がなされるという危險性も十分に含まれていると、われわれは考えざるを得ません。というのは、この前の新制大学設置の際にあたりましても、水戸の梅本教授、それから神戸の小松教授なんかは、あるいは解職され、あるいは解職されようとしているという事柄が、非常に多数あるわけです。しかも、こういう附則がつけられることによつて、今申し上げたような事例が今後も出、そうして、それがこれによつて合法化されるという憂いがあるのであつて、この点に、附則第二項の非常に重大な、危險な意味があると思うのです。しかもこれあるがために、日教組等を初めとする学界では、非常に反対をしておる。こういう理由から、われわれとしても、この附則が付せられておる限りは、これに賛成することができないわけであります。これによつて共産党は反対であります。
  86. 若林義孝

    若林委員長代理 これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  87. 若林義孝

    若林委員長代理 起立多数。よつて原案の通り可決せられました。  なお報告書の作成については、委員長に御一任を願います。  これにて暫時休憩をいたします。     午後零時三十五分休憩      ――――◇―――――     午後二時三分開議
  88. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員長代理 休憩前に引続き、会議を開きます。  市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する法律案を議題とし、政府の提案理由の説明を聽取いたします。水谷政務次官。
  89. 水谷昇

    ○水谷政府委員 今回政府より提出いたしました市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する法律案について御説明いたします。  市町村立学校職員給与負担法は、市町村立の小学校及び中学校並びに盲学校及びろう学校、すなわち義務教育を行う学校の教職員及び市町村立の高等学校の定時制の課程の授業を担当いたしております教員給与を、都道府県の負担とした重要な法律でございますが、昭和二十三年に制定されてから今日まで、教育委員会法の制定、学校教育法の改正給与関係諸法令の改廃等がございましたので、従来も給与の名称等について若干改正を要する点がございましたが、最近に至つて退隠料及び公務災害補償の負担区分、小、中学校教員の定数等につきまして、解決を要する問題を生じましたので、この法律案提出することにいたした次第でございます。  次に、この法律案の骨子について御説明いたしますと、まず第一に、従来都道府県が負担して参りました年末手当、寒冷地手当及び石炭手当が、都道府県の負担であることを明らかにし、また新たに都道府県が負担するのを適当といたします退職年金及び退職一時金並びに公務災害補償を加えました。  第二に、高等学校の定時制課程のうちに、従来の夜間課程が含まれることを明らかにいたしました。これは昨年、学校教育法の一部を改正いたしました際に、同様の改正が行われ、また地方財政平衡交付金制度におきましても、これに伴つて必要な措置がとられているからであります。  第三に、都道府県が給与を負担いたします職員の定数を、都道府県の条例で定めることとし、その範囲内におきまして、教育委員会設置されている市町村については、その教育委員会が、都道府県の教育委員会に協議して定めることにいたしました。これは、都道府県が市町村立学校職員給与を負担いたします場合に、その財政上の見通しがつかなくなるようなことのないようにしたわけであります。  第四に、都道府県が負担いたします給与につきましては、都道府県の条例で定めることとし、その議案の作成及び提出につきましては、教育委員会法第六十一条に規定する事件の例によることにいたしました。  最後に義務教育費国庫負担法は、地方財政平衡交付金制度が創設されましたので、廃止することにいたしました。  以上、この法律案の提案理由及びその骨子について、概略を御説明いたしました。何とぞこの法律案の必要を認められまして、十分御審議の上、すみやかに御賛成くださるようお願いいたします。
  90. 辻田力

    ○辻田政府委員 市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する法律案の詳細につきまして、逐条御説明申し上げます。  市町村立学校職員給与負担法は、市町村立の小学校及び中学校並びに盲学校及びろう学校の教職員並びに市町村立の高等学校の定時制の課程の授業を担任する教員給与を、都道府県の負担としたものでありまして、この法律規定によりまして、本来ならば設置者である市町村が負担すべき約六百億円の経費を都道府県の負担としている重要な法律でありますが、最近に至りまして、これから御説明いたしますような問題を生じましたので、ここにその一部を改正する法律案提出した次第であります。  まず、第一条の改正につきましては、給与の名称等で、旧法令の規定によるものを整備いたしましたほか、年末手当、寒冷地手当、石炭手当、退職年金及び退職一時金並びに公務災害補償を新たに加えることにいたしました。このうち、年末手当、寒冷地手当及び石炭手当は、実際上、従来も都道府県が負担しておりましたものでありますし、また地方財政平衡交付金法に基く地方財政委員会規則におきましても、これを都道府県の財政需要としておりますので、ここにこれを明文化したものであります。退職年金及び退職一時金は、従来の恩給でありまして、これも都道府県が負担していたわけでありますが、教育公務員特例法施行以後に採用いたしました教員につきましては、恩給法の規定の準用がなく、市町村の退隠料条例の適用を受けることになつているのであります。しかし、これでは教員身分の保障も完全ではなく、しかも教員の異動を妨げることにもなりますので、これを都道府県の負担としたわけであります。なお、退職年金及び退職一時金の制度は、地方公務員法におきましても、いまだどういうものになるか明らかでなく、また少くとも今年一ぱいは、採用後三年になる者は、いないわけでありますから、教員でこの制度の適用を受ける者は予想されないのであります。  公務災害補償は、この法律規定がなく、都道府県は、これを負担する義務がなかつたわけでありますので、多くの市町村はその不測の負担に耐えられないために、公務により災害を受けた者の保護が十分でなく、いろいろ問題を生じておりました。一昨年富山県にあつた事例として、三十人以上の校長及び教員が、公務災害を受けたことがありましたが、その公務災害補償の額は約一千万円に上つておりますので、もしも一市町村内でそのようなことが起りました場合には、市町村財政は破綻してしまうわけであります。従つて、政府といたしましては、都道府県でこれを負担するように指導し、これを負担した場合には、特別平衡交付金で考慮することにいたしておりましたが、今回制度的にこの点を明らかにし、これを都道府県の負担とすることにいたしたのであります。  第二条の改正は、高等学校の定時制の課程のうちに、夜間課程を含めたものであります。従来、定時制の課程のうちには、夜間課程が除かれていたのでありますが、昨年四月学校教育法の一部改正の際に、夜間に授業を行うことも一定の時間に授業を行うことにほかならず、また、勤労青少年を対象とすることにかわりはないわけでありますので、これを定時制の課程のうちに含めることにしたわけであります。これに伴つて地方財政平衡交付金法に基く地方財政委員会規則におきましても、その財政需要を都道府県の財政需要として見ておりますので、この法律におきましても、同様の改正を行つた次第でございます。次に、二条ほど新しい規定を設けましたが、第三条は、市町村立学校職員の定数を、都道府県の条例で定めることにいたしました。教育委員会法第四十九条によりますと、市町村の教育委員会は、教職員の採用等の人事を自由に行うことができることになつておりますが、その給与を自動的に都道府県が負担するということになりますと、都道府県といたしましては、財政上不測の事態が生じ、財政計画が立たないわけであります。そこで、その定数の大わくを都道府県の条例で定め、その範囲内において、教育委員会設置されている市町村の定数につきましては、その教育委員会が都道府県の教育委員会と協議して定めることとし、その他の市町村の定数につきましては、都道府県の教育委員会が定めることにいたしたわけであります。第四条は、さきに提出いたしました教育公務員特例法の一部を改正する法律案におきまして、大部分の給与は都道府県の条例で定めることにいたしたわけでありますが、退職年金及び退職一時金並びに公務災害補償は、地方公務員法にいう「給与」のうちに入つておりませんので、これらの給与につきましても同様の措置をとつた次第であります。  なお、議案の原案は、教育委員会法第六十一条の例により、教育委員会がこれを作成し、知事を通じて議案を議会に提出することにいたしました。  最後に、義務教育費国庫負担法は、地方財政平衡交付金一部概算交付暫定措置附則第二項において、その効力が停止されていたわけでありますが、地方財政平衡交付金制度の創設に伴い廃止すべきものでありますので、廃止することにいたしたわけであります。  以上がこの法律案の要旨でございます。     ―――――――――――――
  91. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員長代理 次に教育職員免許法の一部を改正する法律案及び同法施行法の一部を改正する法律案の両案を一括議題とし、提案理由の説明を聽取いたします。水谷政務次官。
  92. 水谷昇

    ○水谷政府委員 ただいま議題となりました教育職員免許法の一部を改正する法律案及び同法施行法の一部を改正する法律案につきまして、一括してその提案理由を申し述べます。  教育職員の資質の保持と向上とをはかるため制定されました教育職員免許法及び同法施行法は、施行以来一年有半を経過いたしました。この間において、各都道府県における新免許状の交付事務も着々と進行し、また全国各地には、各方面の理解ある協力により、認定講習、大学の公開議座、通信教育等の現職教育施設が設けられるとともに、これらの現職教育施設における指導者についても、米国の好意により、アイフエルの数次の開催によつて、指導能力の充実をはかることができ、免許法の所期する目的が、着々実現されつつありますことは、まことに御同慶の至りであります。  元来免許法及び同法施行法の規定の影響するところは、大学における教育職員の養成制度、現職教育の基準、現職者への新免許状の交付等、その範囲すこぶる広くかつ深いものがあり、また教育職員の需給状況とも密接な関連を持つているのであります。  政府は、免許法及び同法施行法のかかる性格と、同法施行後の状況とにかんがみ、これらの法律規定を実情に即せしめるよう常に研究を続け、すでに一昨年、昨年と二回にわたり、改正案を提出したのでありますが、その後、教育刷新審議会の建議や、教育職員免許等審議会の答申もありましたので、さらに各方面の意向をも勘案し、愼重に研究いたしました結果、ここに、第三次の改正案を提出することといたした次第であります。  今回の改正をもつて、現下の教育界の実情にも応じ、また免許法上における不均衡は、ほとんど排除されるものと考えるものであります。  次に、両法案の主要点について簡單に説明いたしたいと思います。初めに免許法の一部改正について申し述べます。  第一は、私立の中学校及び高等学校における宗教教育振興に資するため、私立学校においてのみ有効な宗教の教科についての免許状を新設したことであります。  第二は、大学における教職課程担当の教員不足の実情並びに芸能科及び実業科の教員の養成の困難な実情にかんがみ、当分の間の特例的措置として、教職に関する專門科目の單位のうち、若干の單位を、教科に関する專門科目について、修得し得る道を開いたことであります。  第三は、臨時免許状の有効期間は、一年が原則でありますが、教員需給の状況等地方の実情に応じ、その期間を二年とすることができるという特例を設けたことであります。  次に、施行法の一部改正について申し述べます。  第一は、上級免許状授与に関する特例を定めた施行法第七条の規定の有効期間を延長したことであります。この有効期間につきましては、前国会において三箇年間延長されたのでありますが、今回さらにこれを五箇年間延長し、昭和三十六年三月三十一日までとしたのであります。これは、師範学校等旧制学校卒業者に、ひとしくこの規定の適用を受け得る機会を与え、教育界に安定を与えようという趣旨に基くものであります。  第二は、僻陬地の校長の供給を容易にするため、教員の一級普通免許状所有者のみでなく、教員の二級普通免許状所有者であつても、十年以上の教職経験があれば、校長仮免許状を受けられるようにしたことであります。  第三は、前国会で成立した国立学校設置法の一部改正により、商船高等学校設置され、この四月一日から発足する状況にありますので、商船高等学校教員の免許状に関する規定を整備したことであります。またこの際、電波高等学校教員の免許状授与の根拠規定をも整備いたしました。第四は、施行法第一条に規定する旧教員免許状所有者に対する新免許状の交付は、従来省令の規定によつて実施して参りましたが、今般これを法律において明確にいたしたことであります。これに伴い、旧資格のままで教員たり得る期間規定いたしました施行法第八条の規定改正して、昭和二十七年三月三十一日まで一年間延長し、この期間内に旧資格の現職教員が新免許状の授与または交付を受け得るよう措置いたしたのであります。  以上申し述べましたのが、教育職員免許法並びに同法施行法の一部を改正する法律案の提案理由並びにその要点であります。何とぞ慎重審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
  93. 稻田清助

    稻田政委員 両法案の改正の内容につきましてただいま説明がありましたが、私はこの条文につきまして、御説明申し上げました内容がどういうふうに配列しておるかという点だけを簡單に申し上げたいと存じます。  第一に免許法の点であります。免許法の第二条第二項の改正――これは第七条第二項と附則第二項の改正が関連いたしておりますが、この第二条第二項と申しますのは、勤務成績の証明をいたします所轄庁の定義をいたしたものであります。従来の規定におきましては本則において所轄庁の大学管理機関が附属学校の校長、教員について証明するとありまして、その「大学の管理機関」とあるのを附則で「大学の学長」といたしておつたのを、本則の中に書き加えることにいたしたのであります。  第四条第六項の改正――これは、第九条第一項の改正及び別表第一備考第一の改正と関連いたしておりますが、ただいま申し上げましたように、新たに高等学校の実業科の中に「商船」が設けられましたので、それに対応いたしまして、免許科目に「商船」を加えたのであります。また私立の中学校高等学校要望にこたえまして、今般新たに私立学校においてのみ効力を有しまする「宗教」の免許状を設けまして、私立の中学校高等学校における正科としての宗教教育を容易ならしめようといたしたのであります。  第七条の改正――これには、附則第三項の削除、別表第一備考第一号の改正が関連いたしておりますが、この法律をつくりました当時においては、まだ短期大学が発足いたしておりません。專門学校も、新制大学と並んで相当永久に存続する見込みをもちまして、大学の中には專門学校を含める規定を設けたのでありますが、その後に短期大学制度ができまして、專門学校はあるいは新制大学になり、また短期大学になりつつありますので、将来に向つて專門学校大学の中に含めて、大学の基準によらせるという必要がないと考えたのであります。なお申し上げますが、旧專門学校の将来の卒業者につきましては、施行法第二条の規定によりまして、免許法による場合よりも、有利に免許状が与えられるようになつております。  次に第十八条の改正であります。この改正は旧外地引揚者等に対しまして、新免許状を与える根拠を明らかにするため「外国」とあるところに旧外地を含めたのであります。  附則第八項の備考を新たに設けましたのは、予科一年、本科三年の專門学校がございますが、これを四年制の專門学校卒業者に相当するものと認めたのであります。  附則第七項を新たに設けましたのは、臨時免許状の有効期間が一年であつたことについて、いろいろ問題があつたのでありますが、地方の実情に応じて、これを二年とすることができるようにいたしたのであります。  附則第八項を新たに設けましたのは、免許法第五条に、免許状を得られない者といたしまして「高等学校を卒業しない者」という条項でありますが、特に養護教員の供給が非常に困難であるという状況にかんがみまして、乙種看護婦、旧看護婦の免許状を持つております者は、たとい高等学校を卒業しない者でも、養護助教諭の免許状を与え得るようにいたしたのであります。  それから別表第一備考第四号、第五号を新たに設けましたのは、大学における教職課程を担当する教員が、非常に不足であるという現状にかんがみまして、教員の養成を容易ならしめるという意味から、中学校教諭一級普通免許状または高等学校教諭二級普通免許状を与えます場合に、大学において修得すべしと規定いたしております教職科目の單位二十單位のうち五單位は、当分の間、教科に関する專門科目でとれることにいたしたのでございます。  それから五号の方は、中学校及び高等学校の芸能科及び実業科の教員の供給を容易にいたしますために、これらの教科の免許状を与えます場合には、大学において修得すべき教職科目の單位のうちの半分までは、当分の間教科に関する專門科目の方で修得してもよいようにいたしたのであります。  別表第三の改正は、養護教諭の供給を容易にいたしますために、養護教諭養成機関に入学する資格を持つております者の中で、旧制高等女学校卒業者で、旧制看護婦または乙種看護婦の免許を有する者を追加したのであります。  別表第四備考の追加は、少年院、教護院等、他省所管の教育施設における教職経験年数を、小学校または中学校等における教職経験年数に含めることを規定いたしたのであります。  別表第五の改正は、内容としては、改正前のものとかわつておりませんが、明確にいたす意味で整理いたしたのであります。  別表第六の改正は、これは養護教諭の供給をたやすくいたしますために、養護教諭の仮免許状の授与を受けることのできる者の中に、旧保健婦及び旧看護婦の免許状を有する者を加えたのであります。  別表第七の改正――これは特殊教育教員養成施設が、現行法制定の場合におきましては、あまり充実していなかつたという事情にかんがみまして、特別の考慮を払つたのでありますが、その後において養成施設あるいは現職教育施設が強化いたして参りましたので、ほかとの均衡も考えまして、相当の單位修得を必要とすることといたしたのであります。  別表第七備考を改正いたしましたのは、別表第四の備考第四号の追加の場合と同様の趣旨によるものでありまして、校長、教員の経験年数に、他省所管の教育施設の経験年数を含めて計算いたすことにいたしたのであります。  次に、施行法の一部改正についてでありますが、第一条第一項第九号を改正いたしましたのは、旧幼稚園教員免許状を持つている者に対しまして、幼稚園教諭二級普通免許状のほかに、小学校教諭仮免許状をあわせ与えようとするものであります。  第一条第三項、第四項を設けましたのは、第一条第一項の規定によつて、旧教員免許状を持つておる者は、それぞれ相当の新免許を有するものとみなされておりますが、それらの者に対する新しい免許状の交付については、従来省令で規定いたしておつたのでありますが、法律規定するのが適当であると考えまして、ここに規定いたしたのであります。  それから第二条第一項の表中第三号を改めましたのは、実業補習学校教員養成所あるいは青年学校教員養成所の卒業者の中に、旧令の規定でこれと同等の資格を認めておつた者を含めようとするものであります。  また同表七号の改正でありますが、これは旧教員免許令による指定学校または許可学校以外の專門学校等の卒業者で、三年以上の教職経験のある者に小学校、中学校のほかに高等学校教員の場合にも、教諭二級普通免許状を与えようとするものであります。  同表第七号の三及び四でありますが、この改正は、旧国民学校專科教員免許状または旧国民学校初等科教員免許状の所有者で、五年以上教職経験のある者に対しては、それぞれ中学校または小学校の教諭二級普通免許状を与えようとするものであります。  同表第九号の改正は、青年学校は、昭和二十三年学年末をもつて廃止されたのでありますが、それ以前に、この学校教員で配置転換された、者も相当ありますので、これらの者にも、この規定の適用を受けさせようとするものであります。  同表第十四号の改正は、新たに設ける第二十号の三の規定との重複を避けるためのものであります。  同表第二十号の二の改正は、電波高等学校教員の資格を整備したものであります。  同表第二十号の三、第二十号の四及び第二十号の五でありますが、これらの条項は、前の国会で制定せられました国立学校設置法の一部を改正する法律によりまして、来る四月一日から、国立の商船高等学校設置せられることになりますので、商船に関する相当免許状を授与するために設けたものであります。  同表第二十四号の改正は、さきに申し上げました第一条第一項の表の第九号の改正と同じ趣旨のものであります。  同表第二十五号の改正は、僻陬地の学校の校長の供給を容易にいたしますため、教員の一級普通免許状所有者ばかりでなく、教員の二級普通免許状所有者にも、十年以上の教職経験があれば、校長の仮免許状を与えようとするものであります。この号中の「ハ」は、従前の例によつて、商船高等学校の校長についても、同様の規定を設けたのであります。  同表第二十九号、第三十号の改正でありますが、これは昨年五月の人事院規則の改正によりまして、従来一般職の官吏にありました一級、二級の区別がなくなりましたが、まだこれにかわるべき制度が確立しておりませんので、経過的な規定として、「これらに相当する職員」というものを加えたのであります。  同表第三十一号の改正でありますが、大学教員や、旧制の大学大学予科、高等学校高等科、專門学校あるいは教員養成諾学校等の教員で、五年以上教育に関する科目を担当した経験のある者に対しまして、指導主事の仮免許状を与えようとするものであります。  第七条第一項本文を改正いたしましたのは、第七条の有効期間の延長に伴つて新制大学並びに他省所管の教育施設における教職についての経験年数を、教育職員の経験年数に勘定しようとするものであります。  第八条を改正いたしましたのは、第一条の改正に伴うもので、従来、省令の規定によつて、免許状の切りかえを行つて来たのでありますが、現職者中には、まだ新しい免許状を受けていない者もあり、そういうような点を考えまして、その事務処理の期間として、免許法三条第一項の規定の適用の猶予期間を、さらに一年間延期しようとするものであります。  附則第三項、第四項削除――これは免許法施行の際、現職にあつた無資格の教育長、指導主事を救済する意味規定でありましたが、すでにその期間が切れておりますので、これを整理しようとするものであります。  附則第五項を改正いたしましたのは、先ほど提案理由で御説明申し上げましたように、認定講習の特例を定めた施行法第七条の有効期間を、さらに五年間延長しようとするものであります。  以上概略御説明申し上げました。
  94. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員長代理 次に、昭和二十六年度に入学する兒童に対する教科用図書の給与に関する法律案を議題といたします。質疑を続けます。渡部義通君。
  95. 渡部義通

    ○渡部委員 引続いて質問します。文部省の説明によりますと、無償配給する教科書の單価は、最低価格に見積つているわけですね。そうじやないのですか。十六日の参議院の文部委員会で文相はそういうふうに答えているが、その点どうですか。
  96. 辻田力

    ○辻田政府委員 最初二十六年度予算を編成いたしまする当時におきましては、ただいまお話がございましたように、その当時発行されておりまする教科書の最低価格を調べまして、それによつて積算をしたのでございます。しかし、その後諸種の事情が起りまして、用紙の値段、マル公等も非常に上つて参りましたので、それでは地方財政に過重の負担をかけるということになりますので、これらの予算編成当時から後に起りました事情を勘案いたしまして、現在におきましては、大体二十六年度におきまして使用する教科書の個々の値段もはつきりして参りましたので、その値段を中心にいたしまして、計算をしたわけでございます。従つて最低価格をとつたのじやありません。
  97. 渡部義通

    ○渡部委員 そうすると、検定書の平均価格ですか、あるいは新たに換算されたもので、しかも最低価格になつておるのですか。
  98. 辻田力

    ○辻田政府委員 今回提案申し上げました法律の中で、国語と算数について給与することになつておりますが、この際ただいまの御質問に関連して少し詳しく御説明申し上げておきたいと思いますが、国語については現在発行会社が七社ございます、算数については九社ありますが、これらの社の発行する国語、算数の教科書を全部当りまして、それぞれの教科書の需要部数を計算いたしまして、それによつて、それの実質的な平均單価をもとにいたしたのでございます。従つて、最低單価をとつたのではございません。
  99. 渡部義通

    ○渡部委員 そうすると、ある学校、あるいはある地方で、他の検定書を用いたいというような場合には、その検定書の価格についての二分の一を国庫から出すことになるのか、あるいは規定されたものだけしか出さぬことになるのですか。
  100. 辻田力

    ○辻田政府委員 予算編成当時におきましては、十分わからなかつたのでありますが、今日になつてみますれば、各学校におきまして使用する教科書が具体的にはつきりしておるわけでございます。従つて、その価格の大体半額は行くということになります。
  101. 渡部義通

    ○渡部委員 そうすると、その予算編成当時において、価格の点が必ずしも具体的にはつきりしてなかつた、ところが最近でははつきりして来た、そうしますと、予算編成当時約一億四千万円の国庫補助というものが、現在どういうふうにかわる予定ですか。
  102. 辻田力

    ○辻田政府委員 そこで予算におきまして大体一億四千万円というものがきまつておりますので、この点を考慮いたしまして、最初編成当時におきましては、国語、算数・理科の三科目について補助をする予定でございましたが、これを実施する場合には、国語と算数の二科目についてやらざるを得ないという結果になつたわけでございます。従つて、一億四千万円で国語と算数については半額を補助することができるということになります。
  103. 渡部義通

    ○渡部委員 そうするとそれは一学期分ですか、あるいは二学期、三学期をも含めて、そういうふうになつておるのですか。
  104. 辻田力

    ○辻田政府委員 二十六年度において使われます教科書全部についてでございます。一、二、三学期全部でございます。
  105. 渡部義通

    ○渡部委員 これが実際に地方で採用される場合になつて来ると、地方の負担というものは、事実上決して二分の一だけに納まるものじやなくて、三分の二くらいになるだろうということが、教員組合その他の調査によつても、言われておりますし、それから参議院の地方行政委員会においても、このことが問題になつたと思うのです。そういう点の見通しはどうですか。
  106. 辻田力

    ○辻田政府委員 ただいまのお話は、国語、算数、理科の三科目について出す予定の場合のお話でございまして、その後計画がまたかわりました。そこで今日におきましては、二分の一出せるはずでございます。
  107. 渡部義通

    ○渡部委員 別な問題ですが、文部省発行の教科書は、現在どんな種類の科目が、どのくらい印刷されておるか。
  108. 辻田力

    ○辻田政府委員 文部省発行と申しますか、現在では文部省で編修して、文部省が特定の社に発行をさせている場合と、それから民間から検定を求められて、文部省が検定をしまして、教科書会社が発行しておる場合とありますが、ただいまの御質問は、国定教科書の問題でございましようか、御趣旨がわからなかつたのですが。
  109. 渡部義通

    ○渡部委員 国定及び文部省著作です。
  110. 辻田力

    ○辻田政府委員 小学校・中学校の義務教育課程におきまして使用する教科書の全般については、今ちようど資料を持ち合せておりませんが、今回対象となつております小学校の一年生が使います教科書のうちで、現在はつきりいたしておりますのは、算数は国定のものは全然なく、全部検定でございまして、国語の中で一種類約七万冊の国定教科書を使用されることになつております。その他の二年生以上、またほかの科目につきましては、もし御必要がありますれば、あとから資料を提出いたしたいと思つております。
  111. 渡部義通

    ○渡部委員 事情がどうなつておるか、具体的にわかりませんが、配給に際して、値段とか、あるいはその他の事情から、地方によつて検定書類の自由な採用が、制約されはしないかという懸念がありますが、その点どうですか。
  112. 辻田力

    ○辻田政府委員 今日の教科書行政の制度については、よく御承知のことと思いますが、概略申し上げますと、検定教科書も国定教科書も、まつたく平等に扱つておりまして、大体検定が終りますと、それを展示会にかけまして、展示会におきまして、各教育委員会方々、あるいは教職員方々がそれを見まして、最も適当だと思う教科書を選び、それを今度教育委員会の名において採択するわけであります。従つてその採択しましたものの需要部数がそこでわかりますので、それを文部省に報告して参ります。文部省におきましては、国語なら国語の、どの教科書はどのくらい需要があるかということがわかりますので、そのわかつた数字につきまして、発行会社に対して発行指示をいたしまして、その発行指示を受けたものについては、用紙の裏づけをするということになつております。
  113. 渡部義通

    ○渡部委員 そうすると、地方によつて比較的値段の高い教科書を採用するというふうにきまつた場合に、その二分の一を国庫の方で負担をするということになるわけですか。
  114. 辻田力

    ○辻田政府委員 さようでございます。
  115. 渡部義通

    ○渡部委員 私の方でまだ保留はありますけれども、受田君がやりたいと言つておりますから……。
  116. 受田新吉

    ○受田委員 今渡部君からのお尋ねに関連して、この法律を施行した場合における予算的な裏づけについてお伺いしたいのですが、政府としては、最初三科目について無償配付したいという計画が、後に二科目に変更された。そしてさらに私どもが憂いることは、後半期の教科書を出すときになると、教科書の製造單価が上つて来て、最初の文部省考えられた通りにこれが運ばない憂いが、私たちの当面抱いている点なのであります。それともう一つは、この教科書の地方委譲に伴つて、各府県、各学校が任意の教科書を採択する場合に、今までのように一律に発行しでいたときとは違つて、部数が三万とか、四万とが少くなつて来ると、製造單価が自然に高くなつて来る。そうした場合の文部省予算措置についての構想を、お伺いしたいと思います。
  117. 辻田力

    ○辻田政府委員 最初三科目として計画いたしました場合と、今回の法律におきまして、国語と算数の二科目に限ることにいたしました事情につきましては、ただいま渡部委員の御質問にお答えした通りでございますが、現在では大体本年度中に発行される教科書の九〇%ぐらいは、定価がもうきまつております。後期分につきましては、定価のきまつておらないのが一割ぐらいございます。従つて、その一割のものについて、今後の物価高その他によつて、用紙が上つた場合にどうなるかという問題は残るのでございますが、そういうふうな事態が起りました場合には、文部省といたしましては、これに対して何らか予算上の措置を講ずるように努力したいというふうに、考えている次第であります。できるだけ地方に御迷惑をかけたくないというふうに、考えております。
  118. 受田新吉

    ○受田委員 この教科書の予算の單価は、百五十二円ぐらいじやなかつたですか。
  119. 辻田力

    ○辻田政府委員 小学校の生徒については、算数・国語・理科、一年生百五十二円十銭、盲学校につきましては、一年生国語・算数・社会・音楽その他といたしまして、九百三十円、聾学校につきましては、小学校の單価に百三十円を加えまして二百八十二円というふうに、小学校、盲学校、聾学校で單価が違いますが、概略的に申しますと、百五十二円十銭ということになつております。
  120. 受田新吉

    ○受田委員 それでこの予算をおきめになつた立場から、三科目を二科目に減らされて、理科を今度削られましたが、理科は冊数も少いし、またページ数も総括的に少い。三科目のうちで、小学校の場合、一番定価が低いわけですが、この理科を削つて、他の二科目を存置することに御計画がきめられたわけです。そうすると、実際に、定価は九〇%までは本年度中はきまつているからという構想のようでありますが、この單価そのものが非常に低い線できめられている。特に昨年一年の教科書の場合を考えてみても、二百円以上の価格に計算されはしないか、こう思うのでありますが、この値上りが、このまま九〇%の約束通りに実行される見通しがついているのか。後半期の教科書についても、非常にこうして無理をして計算をしておられ、最低線を考えておられる。これが後半期の教科書にも計画通り行くことをお約束できるのか。もう一つは、この教科書の価格が、非常に低い線できめられた立場から、まだうんと高かるべきこの価格を、非常に低い線で見た立場から平均すると、残された一〇%というまだ定価のきまつていないものが、非常に高いものになるというおそれはないか。この点について、今後計画通りに行く確信を持つておられるかどうかをお伺いしたいと思います。
  121. 辻田力

    ○辻田政府委員 先ほど小学校の一年生について、合計して三科目の場合に百五十二円十銭と申したのですが、これはその当時発行されておりました教科書の最低価格をとつたのであります。しかし今日二科目にいたしました場合に、先ほど申しましたような計算をいたしますると、国語については一人当り單価が百十二円三十五銭、算数について五十二円九十八銭、合計二科目が百六十五円三十三銭という計算になつております。それで今日現在では一応間に合うことになつております。今後用紙等の値上り等のために、どのくらい価格が上るかということにつきましては、明確な数字はわかりませんが、後期分は、発行される部数も比較的少いことでございまするし、またそれについての費用も、従つて前期分よりはずつと少くなる。われわれといたしましては、現在補助金の八割程度を四月に交付してしまう、あとの二割ぐらいは来年の二月ごろに出すというような計画でおりますが、第二回分の補助金を出す場合に、著しく値上りしたというような場合には、そこに何らかの予算措置を講じたいというふうに考えておる次第でございます。
  122. 受田新吉

    ○受田委員 この用紙の統制撤廃というような事態が発生した場合においては、私たちは憂うべき事態を考えざるを得ないと思うのであります。こういう問題について、文部省として、仮定のもとに立つところの意見は、お述べにくいかと思いますが、そういう場合における対策は一応考えて、これをお考えになられたのでしようか。
  123. 辻田力

    ○辻田政府委員 用紙割当制撤廃の問題は、まだ確定いたしませんから、はつきりとしたことは申し上げかねるのでありますが、そういうようなことが起つた場合にどうなるかということにつきましては、その所管は管理局になつておりまして、管理局とも緊密に連絡いたしておりますし、また管理局の方では、経済安定本部その他と緊密に連絡いたしておりまするので、われわれとしましては、その間に遺漏のないように万全の措置をとりたいと思つておるのであります。
  124. 受田新吉

    ○受田委員 教科書だけは、用紙の割当について、絶対にこれを確保したいとわれわれは念願しておるのですが、こういう法律をつくつた手前からも、文部省としては、最後まで教科用図書に対して、絶対に手をつけさせないという確信のある努力をせられることを、私は切望しておく次第です。  もう一つは、教科書の今後の動きであります。先ほどちよつとお尋ねして御答弁願えなかつたのですが、各地方で自由に教科書の選択が許されるようになつて来て、そこで二万とか三万とか、わずかの單位の教科書が莫大に要求される場合に、大量に生産するのと、少量に生産するのとの生産コストは、非常に違つて来ると思う。そういう小さな区分になつて来ることを考えておかなければならぬのですが、それに対する対策はできておりましようか。
  125. 辻田力

    ○辻田政府委員 現在当面の問題になつておりまする一年生の国語と算数につきましては、国語は七社、算数は九社ということになつておりまして、義務教育関係の教科書を作成しておりますのは、大体七十社に上つております。その七十社のうちには、基礎の非常に強固なものもございましようし、また比較的そうでないものもあると思います。ただいまお話のありましたように、発行部数等が少いために、従つてコストが割高になり、経営が成り立つて行かないために、やめてしまわなければならぬようなことが起るということも、考えられたいことはないと思いますが、そのとき、そういう会社に対して、どういうふうな補助をするかとか、あるいはまた別の何らかの援助策をとるかというようなことについては、まだ文部省としてはきまつておりません。
  126. 受田新吉

    ○受田委員 私たちが憂えている問題は、六・三制の出発にしましても、結核教員の療養所の問題にいたしましても、その出発においては、ごくわずかの予算で出発したのでありますが、その後これが莫大な予算に進んで来たわけであります。そうして学制改革に伴うその後の動きを例にとつてみましても、非常な難関にぶつかりながら、今進んでおるのであります。この出発も、これは憲法に保障された事柄を、こうして法律に進めて行くということは、非常に喜ぶべきごとだと思うのですけれども、最初の出発において、すでに非常な難航を予想されていることは、はつきりしておるのです。これが今申し上げたように、用紙の値上りとか、今のように生産コストが高くなるとか、こういつた問題から、さらに二年、三年、四年、五年と進んで来た場合に、これから二年、三年、四年と後の予算的な裏づけというものは、非常に大きなものになると思うのです。こういうことに対して、出発はよかつたが、そのあと維持し発展させることが非常に遅々として進まなかつたとかいうようなことになつては、せつかくこういうよいスタートに立つ法律が、泣くおそれがあると思うのですが、こういう問題について、これから先の年次計画というものに対して、文部省としては、確固たる自信を持つてこれを進めるという決意を持つておられるかどうかを、お伺いしたいのです。
  127. 辻田力

    ○辻田政府委員 文部省といたしましては、憲法に定めておりまする義務教育無償の理想を、短かい期間に、できるだけすみやかに達成いたしたいと願つておるわけでございます。従てて、今回の法律案を出すまでと申しますか、またそれより前に予算をいろいろ折衝する場合におきましても、文部省としましては、二十六年度において、義務教育無償の理想のうちで、一挙に教科書だけでも無償にしたいという気で一応計画も立てましたし、また、たとえば、義務教育は九年でございますが、その中で三年、三年、三年でやつて行くというふうな、三箇年計画というものも考えましたし、また一年から始まつて九年間でこれを完成するという案も、いろいろ考えまして、これらにつきまして、種々地方財政、国の財政等をにらみ合せて、研究を進めて来たのでございますが、遺憾ながら今回提出したような形になつたわけでございます。われわれといたましては、最初申しましたように、できるだけすみやかにその理想を達成いたしたいというわけでございますので、それについて、今後とも万全の努力をいたしたいと思つておる次第でございます。ただ財政上の種々の関係もございまするので、この法律案といたしましては、二十六年度において、義務教育無償の理想の実現のより広範囲な試みとして、本年一年生にだけやつてみ、その結果を十分考慮しまして、次の二十七年度以降の問題を、一層強力に進めて行きたいというふうに考えておる次第でございます。
  128. 受田新吉

    ○受田委員 文部省のその努力をしようというお意気込みに対しては、敬意を表します。しかし実際問題として、すでに二十六年度予算案は、衆議院から参議院にまわつておるのです。それから、わずかに一億四千万円でスタートした、このわずかな予算の補助にすぎないために、すぐ問題となることは、地方一般の寄付を要求するような事態が起ると思うのです。そうしたときに、この事態を一応本筋に返す努力は、文部省としてもされるであろうと思いますが、予算の裏づけの点においては、非常な難航を続けるだろうと思います。従つて、今後補正予算を要求するとか、いろいろな手もあるでありましようが、少くとも今後用紙の値上りなども計算に入れて、もう一つは生産コストが高まるという――つまり教科書の種類が非常に分散するという立場から、生産コストが高まるということの対策を立てるというような鋭い手を打つて行かれないと、今七十社によつて、強固な基礎が築かれており、もう一つは、四月で約八割をなし遂げようとしておるというような御計画ではあるようでありまするが、実際は後半期の教科書を出すころになつて、今の八割を四月にということが実現されないで、後半期にそのままずれて行くような心配はないかと思うのです。こういう問題について、初年度だけは、この二科目については徹底的に後半期までも――先ほど仰せられた一〇%の、例のまだ不徹底な部分、そういうものを除いて、あとの九〇%は確信をもつて実現できるというたいこ判は押せましようか、この点私は非常に心配をしているのであります。  もう一つ、ついでに……。この予算の裏づけに対して、先ほど来申し上げた通り、今後常に文部省が努力を続けて、今度二十六年度予算に出されている案も、できればただちにねり直す準備を進めるというような御努力を用意されておるかどうかということ、この二つをお尋ねしたいと思います。
  129. 辻田力

    ○辻田政府委員 二十六年度内の問題につきましては、ただいまの計画では、さつき申しましたように、補助金の八割程度を四月に出したいと思つております。前期、後期といろいろありまするけれども、大部分は前期で出る場合が多いのです。後期で出るものは比較的少いのでありますから、われわれとしましては、いろいろな困難がありましようとも、あらゆる努力を傾けてその実現を期したいと思つております。  二十七年度以降の問題につきましては、先ほど申しましたように、文部省としては、決心を持つておるわけでございますが、どうも文部省だけで独善的な立場に陥つてはいけませんから、審議会をつくりまして、関係各省あるいは学識経験者の知識も十分いただいて、よりりつぱな案をつくつて、その実現に努力したいと思つておる次第でございます。
  130. 渡部義通

    ○渡部委員 関連質問を一つだけ……。今お話を聞いたところによりましても、文部省としては、数次の計画財政上の関係から挫折してしまつて、最低の計画によつて一億四千万円の予算をひねり出したわけですが、その結果二分の一を国庫から補助することになり、地方では従つて、かりにその二分の一だけ地方負担としましても、七千万月の負担をしなければならぬという状態になるわけです。しかも單価が最低に基準されておるので、單価が上つた場合には、地方の負担は、さらに大きくならなければならぬと思います。そうなつて来ますと、ここで問題になるのは、今地方行政委員会に平衡交付金法の一部改正に関する法律案というものが出ておるわけです。これは御存じでしよう。これによりますと、平衡交付金というものが、従来国庫から三割方交付されたものが、二割方交付されるにすぎないような結果になるかもしれません。現在二千億の平衡交付金によりますと、約一割方少くなり、二百億というものを地方で多く負担せなければならぬというような状態になつて地方財政がますます困難になつて来ると思うのです。現に平衡交付金が少い結果、しかもそれが教育関係においてことに圧迫されておる結果、地方では十九県にわたつて教員の首切りが起きている。しかも昨日助教員たちの陳情がありましたけれども、停年を四十歳にきめてしまつて、四十歳以上の助教員学校から退職してもらうというふうな動きさえ、ある地方には起きている状態なんです。このような状態のときに、国庫補助という名のもとに二分の一以上を地方に負担せしめるというようなことになりますと、意図は確かに義務教育の範囲を拡大するのだという意図であつても、地方財政を非常に圧迫する結果になりまして、実際上地方教育関係の破綻を来すような憂いが十分にあると思う。そうだとすれば、現在立てられている構想というものが、義務教育の拡大というような形において方針がとられながら、実質的には義務教育を非常に困難ならしめて、地方財政を破綻させてしまうような結果になる憂いがあるのであつて、こういう形における義務教育無償の範囲拡大ということは結局においてそういう結果になるとすれば、今後こういう形をとつて、実際上地方に義務教育の負担を負わせてしまう方法をとつて行かれるのか、あるいはそうではなくて、現在非常に広汎な国民が望んでいるように、むしろ全額国庫負担の方向に進められようとするのか。この決定的な点について、文部省の基本方針というか、そういう点はどういうふうに考えられておりますか。
  131. 辻田力

    ○辻田政府委員 今般この法律は、御存じでありますように、義務教育の無償を奨励するということになつておりますが、この義務教育費の負担はどこでするかという問題につきましては、小学校、中学校高等学校等については、それぞれの設置者で負担する。すなわち市町村立の場合には、市町村で負担するというのが建前になつております。これは地方財政法によつてそうなつておるわけであります。従つて国としましては、国の政策の必要の上で、やむを得ない場合には、それに補助することができるというふうな形になつております。従つて建前といたしましては、市町村においてこれを負担して、それで国の政策の実施のために必要であるからという意味で、国としては奨励をするというふうな奨励補助というふうな形が、現在の建前としては正しいのではないかと思います。しかし午前中もお話がございましたが、全額国庫負担の問題につきましては、教育財政の確立の見地から、十分に研究してみなければならぬものであると思つておる次第でございます。
  132. 渡部義通

    ○渡部委員 現在は、法律に基いて、地方負担という建前にあるということはわかります。そうではなくて、私の言つているのは、そういう建前のもとで、現在とられているような国庫補助によつて、一方的な教育費の負担を勧奨するというようなことも、意味はわかるのです。意味はわかるけれども、それによつて地方財政というものが破壊されているというような状態のもとで、ほんとうに義務教育というものの公共的な負担を完成するためには、現在のような状況のもとでは、全額国庫負担の方向に持つて行く方が完成しいいのか、あるいは地方財政に押しつけてしまつていいのか、それについて現在の法令ということを離れて、文部省の見解を私は聞いているわけなんです。
  133. 辻田力

    ○辻田政府委員 われわれといたしましては、現在の国家で定められております法律に基いて、その法律の範囲内でいろいろ計画を立てる以外に、方法はないと思いますが、ただいまの今後の立法論の問題として、全額国庫負担というふうなことも、十分研究をしてみなければならぬと思つておる次第でございます。先ほど来お話のありましたように、政府の政策を実施するために、地方に過重な負担をかけないようにするということは、われわれといたしましては、この場合に限りませんが、常に心がけておるようなつもりでおるのでございます。今後ともこの点については一層留意いたしまして、政策の実施のために必要な財源措置等については、遺漏なきを期したいと思つておる次第でございます。
  134. 笹森順造

    ○笹森委員 この法律提出態度について、大臣にお尋ねしたいと思つたのですが、お見えになりませんから、次官にお尋ねしたいと思います。この法律の目的は「義務教育の無償の理想のより広範囲なる実現への試みとして」とうたつてありますが、この法律以外に、どういうことを現政府は試みておるか、あるいはこの法律の適用を、さらにどう広めて行こうかという御構想を持つておるか、この点についてお尋ねしたいと思います。
  135. 水谷昇

    ○水谷政府委員 お尋ねにお答えいたしますが、これはただいま笹森委員のおつしやつたように、憲法で規定せられました義務教育無償の精神を実現したいつもりで、文部省といたしましては、義務教育九年間を全部無償にしたい、こういう理想でもつて出発したのでありますが、財源の関係でだんだんこれが縮小されて、文部省が初めに考え通りに参つていないのでございます。先ほど局長から御説明申し上げましたように、最初は小学校も中学校も、全部の教科書を無償にしようという計画でありましたが、それを財政の都合から、小学校だけ、こういうことにも一応改案してみたのでありますが、これも財政の都合上うまく行かない。三年生までということに改案してみたのでありますが、これもやはり思わしく行かないで、結局一年生ということに相なつたわけであります。しかしながら、せつかくこの憲法の精神を実現させるべく出発したのでありますから、一年でもこれを続けてやり得るならばまことにけつこうだ、こういう精神のもとに出発して参つたのでありますが、さらに財政状態、また教科書の値段の問題等から、ここに提案したような法案になつたような次第であります。でありますから、私どもが最初計画しておつたようには参つていないので、まことに遺憾でありますが、実情やむを得ないのであります。先ほど来受田君、渡部君から、微に入り、細に入つての御注意の御質問もありましたが、私どもも同感でありまして、まことに遺憾でありますが、現在の状況ではかような状態でありまして、この法案にもありますようにこれを実施いたしまして、そうしてさらに審議会において、この実施の経過等を審議いたしまして、将来善処したい、こう考えておるわけであります。
  136. 笹森順造

    ○笹森委員 ただいまの御答弁で、政府当局の御苦心はよくわかるのでありますが、私の特にお尋ねしましたのは、根本の態度であります。それはここには目的に「無償の理想」ということを言つており、ただいまのお答えでも、無償の精神ということを言つておりますが、憲法では明確に「これを無償とする」と決定的に示しておるのであります。従つて、これは一つの理想であるとか、精神であるとかいうようなものではなくて、法律で定めたことなのであります。その根本に対する政府の確信なり態度が確立しないから、ただいま渡部君なり受田君なりからいろいろと御質問があつて、不満足なお答えを聞かなければならないのではなかろうか。これに対する政府の態度をまずお尋ねしたわけなのであります。ただいまのお話で、国家財政の都合でここへ来たという事情は、よくわかります。しかし問題は、理想とかあるいは精神というのではなくて、憲法ではつきりしたそういう法律上の規定である。つまり無償とするのだ、こういうぐあいにきめておることに対する確信が、ただいまのお話とは大分距離があるようであります。その点について次官の確信のほどをもう一ぺん伺わなければ、これからのお尋ねのことが進んで参りませんから、それをもう一ぺんお尋ねいたします。
  137. 水谷昇

    ○水谷政府委員 私の言葉が足らなかつたのでありますが、笹森委員のおつしやる通りであります。憲法にそういうふうにしてあるから、これを具体的に実現させる第一歩に、この法案を提出したわけであります。
  138. 笹森順造

    ○笹森委員 ただいまのお答えの通りに、今後とも御努力を期待するのでありますが、先ほどお話の中で、單にこれを一年ばかりでなく、あるいは三年ばかりでなく、小学校全部、できるならば中学校にもという構想のありましたことを承つたので、これをやることは当然なことでありますから、やはり私ども予算審議する場合にも、この立場から、委員会としては主張して行かなければならぬということを考えておるがゆえに、実はお答え願つたわけであります。ところで、問題をもう少し狹めてお尋ねしたいのでありますが、元来義務教育というものは、国家なりあるいは公共団体なりが、その責に任ずるのが当然でありますが、現在義務教育を、私立学校が行つておる機関もあります。しかしこれも、私立学校でありましても、義務教育を担当するという場合においては、やはり政府当局が、どういうぐあいにこれを認識しておいでになるか。私立学校であるから、それは義務教育としてこの憲法が考えておるようなことから、国家的な態度がそこに公立学校と左右さるべきかどうか。もとより私立学校といえども、これは公の支配に属しておるものと、私どもは最近憲法の条章の理解を持つておるのであります。この意味において、私立学校が担当しております義務教育に対する政府当局のものの考え方が、公立学校の持つております義務教育に対するものの考え方と、何らか相違があるのならばその相違、あるいは相違がないのならばその相違がない、その点についてお尋ねしたいと思います。
  139. 辻田力

    ○辻田政府委員 義務教育を担当しておるという点におきましては、差別はないと思いますが、ただこの法案におきましては、特に私立学校あるいは国立学校の場合を除きまして、公立学校の兒童を対象にいたしておるのであります。その理由は、学校教育法によりまして市町村はその区域内の学齢兒童を当然収容しなければならない義務を持つております。また収容し得るだけの規模を持つておる学校をつくらなければならぬ義務を持つております。また兒童の父兄は、一応公立学校に入れる義務があるわけであります。ただ、私立学校とか、あるいは国立学校に行く場合には、特別の許可を受けて行くということになつております。従つてこの場合におきましては、いわば法律的な意味でないことでありますが、当然公立学校に入り得るにかかわらず、私立学校に行き、あるいは国立学校に行くということになりますので、いわば一種の法律的の権利の、放棄というと、少し言い過ぎるかもしれませんが、そういうふうな考え方で、当然無償で行けるものを捨てて、国立学校あるいは私立学校に行くということになりますので、その点は、両者の間に区別があり得ると考えております。従つて、この教科書無償の場合におきましては、公立学校に入学する兒童を対象とした次第でございます。
  140. 笹森順造

    ○笹森委員 ただいまのお答えでは、私十分了解をしにくいのであります。公立学校は、その自治体がそれをつくる義務があり、またその人数を収容しなければならぬことは、よく承知をしております。また公立学校に入らずに、私立学校に行く者は、自己の自由選択であるという点についても、決して不同意はありません。ただ私の最初お尋ねした点は、義務教育を私立学校にやらせておるということは、国家が今日認めておることであります。従いまして、義務教育という大きな点から考えて、それは自己の意思において行つたのでも、義務教育はこれをのがれたのではございません、義務教育を同時に受けておるのであります。この点において、やはり国家というものは、義務教育を受けるものとしてこれを大きく見るのがよいのではないか。これは局長にお尋ねするよりも、大臣なり次官にお尋ねする方が、政治的な解決だろうと思いますので、そういう意味で先ほどから質問の段階をそういう点から持つてつたのであります。今のお答えは、すでにそれは片方は無償であり、片方は無償でないのを、それを選択して行つたのだからというようなお話でありますけれども、私のお尋ねはそうでなくて、義務教育を私立学校に許しておる以上は、義務教育というものに対する国家的な態度がどうであるか、実はこういう質問をしたのでありまして、それを最初から私立学校は無償でないのだということをお答えなさるから、そうでない質問を展開しようと思つて、実は私がお尋ねしたのでありまして、その辺に関することを今のように率直にお話なすつて、それで十分責任をとれるか、あるいは考え直していただくことができるものか、もう一ぺんお尋ねしたいと思います。
  141. 辻田力

    ○辻田政府委員 憲法におきましては、御承知通り、義務教育を無償とするということだけを書いてございますが、それを受けまして、教育基本法の中には、国または地方公共団体において設置する場合のことを、特に書いておりまして、その場合にも、授業料を無償とするというふうに書いております。現在では私立学校は、義務教育を担当しておられる学校でも、授業料は実はとつておられるわけでございます。そういう意味において、現状において無償でないわけでございまして、義務教育無償の線からはずれておるわけであります。われわれといたしましては、そういうこともございますので、特に教科書だけを全部無償にするということについては、この際は対象の外に置いたのでございますが、これは十分研究してみなければならぬ問題だと思います。
  142. 笹森順造

    ○笹森委員 この法律でも、学問に対して生徒を委託した場合には、やはりこの法律が適用されるように了解しておりますが、それでよろしゆうございますか。
  143. 辻田力

    ○辻田政府委員 さようでございます。
  144. 笹森順造

    ○笹森委員 その思想の段階を、もう少し大きく政治的に考えますると、ただいま私の申し上げましたことは、研究していただくこと――この法律を適用していただこうとは、私は申し上げておりません。従つて、最初尋ねしましたこの精神の適用の範囲を、どこまで広げるお考えがあるかないかということをお尋ねしたのは、そこまでこの義務教育というものを、私立学校であろうがそうでなかろうが、尊重するという方面の御研究を、一体していただかなければならぬのじやないか、その御研究の態度を実はお尋ねしておるのであります。それについてのお答えを願いたいと思います。
  145. 水谷昇

    ○水谷政府委員 お説の点は、大いに考慮を要すると思います。ただいまの文部省態度といたしましては、先ほど局長の申し上げましたように、これは私立学校の方は対象にしておりませんが、将来大いにこれは研究しなければならぬと思いますから、研究いたします。
  146. 笹森順造

    ○笹森委員 最初お尋ねしましたように、次官のお答えで、現政府としましては、この憲法の規定に従つて努力しつつあるということを承つたのでありまするが、今日これを審議する委員といたしましても、ぜひすみやかにこの憲法の条文の通りに行くという態度を文部当局がおとりになりまして、私ども予算審議する者も、その方向に向うということで、初めて先ほどからのいろいろなこまかいお尋ねの問題も、解決するのではなかろうかと思いますので、願わくば当局において、一層御努力あらんことを希望いたしまして、私の質問を一応終ります。
  147. 小林信一

    小林(信)委員 ただいま笹森委員の方から言われたように、この法文の劈頭に、きわめて大きく書かれてあります「義務教育の無償の理想のより広範囲な実現への試みとして」と、法文の頭書は非常に大きく強い印象を受けるのでありますが、中に入りますと、非常に情ないものになつておるので遺憾なのですが、しかし文部省としましてこういう意図があることは、私たちもうなずけるわけであります。ただいまのお話でも、それは主として教科書の問題に触れておつたようでありますが、私としましても、この無償の理想のより広範囲な実現というのは、これは單に教科書ばかりに限るのでなくて、他方面にも相当計画があるだろうと思いますし、ただいまの憲法の問題からして、当然あるべきだと思うので、そういう点をこの際具体的にお伺いしたいと思うのですが、それがこの教科書に至つた線を、ぜひともこの際お話願いたい。
  148. 水谷昇

    ○水谷政府委員 小林君の御意見のように、教科書だけではなくて、私ども考えたのは、学用品等も無償にしたいという構想を持つたのでありますが、財源の都合で、まずもつて教科書、こういうことで出発をいたしたのであります。そして先刻申しましたように、義務教育たる小学校、中学校を通じて全部やつてみたい、こういう構想を持つたのでありますが、財源の都合によりまして、だんだん縮小せざるを得ないという遺憾な状態になつたことは、先刻申し上げた通りであります。教科書だけでなくて、学用品等にまで及ぼしたいという考えを持つております。
  149. 小林信一

    小林(信)委員 いろいろとお考えを持つておられると思いますが、学用品はこれは当然のことと思いますが、そのほかにはないのですか。これは私は、一様に全部に無償でやるという――これはちよつと考えると、全部にやらなければ無償の理想は実現しないように考えられるかもしれませんが、やはり財政の問題もあるし、そして受ける対象の兒童生徒の実情もあるわけであります。財産のあるものとないものと、こういうものもあるのですから、やはりそれに適応した無償を実施することも、これもやはり今日の段階としては、私はとつてしかるべき問題だと思つております。必ずしも一様でなくてもいいと思うのです。そういう点から考慮すれば、その他いろいろな構想が練られると思うのですが、そういう点に対しましては、文部省はいかがでしようか。
  150. 水谷昇

    ○水谷政府委員 それもお説の通りでありまして、学用品以外に、給食の問題とか、あるいは交通費の問題とかも考えてはおるのでありますが、これはただいま申しましたように、日本の財政の現状から申しますると、一ぺんには参りませんので、教科書ということに出発をしたわけでありまして、今後御審議を願つて、これを御可決いただきますならば、ここに審議会というものができるのですから、審議会においてよく調査研究をして、そうして御意思のようなふうに範囲を広めて行きたいと考えてります。
  151. 小林信一

    小林(信)委員 こういうことは、とにかく理想なんですから、いつかの機会に、文部省はかかる構想を持つておるというような範囲を、一応世間に明白に文部省としての態度を表明することが必要じやないかと思うのです。とかく今回あたりの印象からして、無償というのは、教科書に限るものであるということにしか思われておらぬのですが、憲法の条章から申すならば、もつと深い、広い――できるできぬの問題は、これは財政に左右されるでしようけれども、そういう問題を、文部省としてもこの際公表することはいかがなんですか。
  152. 水谷昇

    ○水谷政府委員 お説のように、公表することはさしつかえないと思いますが、案現の点を考えると、あまりに理想的なことを発表して、それに実現が伴つて行かないと、どうも調子が悪い、堅実に進んで行つた方がいいと考えております。けれども文部省の構想はどうだというお尋ねがあれば、こういうような考えを持つておるということを、申し上げていいと考えております。
  153. 小林信一

    小林(信)委員 これはただ国民だけでなくて、事教育行政を検討する立場からして、一般政治家、あるいはもつと局限してその財源を扱うところの大蔵省というようなところが、無償といえば、小学校の一年の、しかもその中の一部分の教科書を配付するというふうな小さいもので無償の範囲を考えられたのでは、憲法の条章というものは、いよいよ縮小されてしまう。これはやはりそういうことを発表すれば、影響するところが大きい。実現が不可能であるのに、いたずらに広言を吐くことはどうかというような御意見のように承るのですが、しかし憲法というものがはりきり明示しておるのですから、そういう構想を発表するのは、何らさしつかえない。そういうことを堂堂と発表して、至るところに印象づけておいて、その点からして財政をあずかる者の考えをより発展させることが、私は必要だろうと思うのです。今回あたりでも、政府の提案するものは、言つておることはなかなか大きいのですが、こういうことをやはり言うべきでありまして、その内容等も具体的に何らかの機会に発表することが、私は必要だと思う。そういう態度を確立することが、そうしてその意欲を積極的に持つことが大事である。今回のようなことに終ることを、私は非常に遺憾に思つておるものであります。そこで先ほど教科書を無償にする構想も、政府当局としては最初はいろいろ考えた、こうおつしやつたのですが、当初計画されましたものは、小学校・中学校全体にわたつて、教科書を無償で配給するというような構想だつたと承るのですが、それにはどのくらいの予算考えられたか、それが小学校だけに狹められた場合に、どのくらいの予算になつたか、さらに三年以下にこれを給与するという構想の場合にはどのくらいの予算であつたか、さらに一年生という、その段階を追つて詳しくこの際承りたいのです。そしてできるならば、そういう大きな構想を持つたけれども、なぜそれがだんだん縮小されなければならなかつたか、その経緯をこの際つまびらかにしていただきたいと思います。
  154. 辻田力

    ○辻田政府委員 義務教育無償を完全に実現するために、どれくらいの経費がいるかということについては、いろいろの見方があると思いますが、私たちの方計画いたしましたのは、最初教科書、学用品、給食、なおそのほかにも交通費の関係がございますが、大体それらのことを研究いたしました。そのために相当厖大な額がいるのでありますが、その中でいろいろ研究の結果、教科書ということになつたのであります。教科書を義務教育の全兒童生徒に対して補助をする場合に、どれくらいの経費がいるかということでございますが、これは單価のとり方によりまして、先ほど申し上げましたように、最低單価をとる場合、実質上の單価をとる場合と、いろいろ計算の仕方はございますが、最初計算いたしましたのは、その当時、昨年の予算編成当時におきまして、出ている教科書の中を克明に調べて、その中の最低單価をとつたのでありますが、その計算で今後行くものだと仮定いたしますと――その仮定は、全部おそらくできない仮定でございますが、そういうような計算で行きますと、四十八億七千二百四十七万八千余円というようになります。これは小学校・中学校・盲学校・聾学校の義務制をしいている部分についての、全教科書についての無償給与の経費でございます。
  155. 小林信一

    小林(信)委員 それからその構想を順次縮小された経緯と一緒に、その額を御説明願いたい。
  156. 辻田力

    ○辻田政府委員 少しこまかくなり過ぎてはなはだ恐縮でございますが、それでは数字を申し上げます。小学校だけの教科書について無償にいたしました場合は、これも先ほどの前提がございまして、その当時の最低單価をとつたわけでございますが、その前提のもとに計算いたしますると、小学校だけにおきましては、一年生から六年生までの間に二十八億六千七百六十五万三千余円、中学校一、二、三年だけをとりますると、十九億九千九百三万五千余円、盲学校は二百三十七万三千余円、聾学校は二百四十一万七千余円ということでありまして、小学校・中学校・盲学校・聾学校を全部実施することになりますと、先ほど申しましたように四十八億七千二百四十七万八千余円ということになるわけであります。それを三年生までやるか、あるいはどこまでやるかによつて、それぞれ数字がかわつて来るのであります。
  157. 小林信一

    小林(信)委員 この法案を初めて提出されて審議するわけですから、どの辺の数字がほしいかということを私は聞いておるので、ひとつめんどうでもお尋ねにお答え願いたいと思います。小学校の一年生全体を負担した場合には幾らになるか、数字をお伺いいたします。
  158. 辻田力

    ○辻田政府委員 先ほどの前提のもとにおける計算におきましては、一年生全部で三億一千五百二十八万六千余円ということになります。
  159. 小林信一

    小林(信)委員 とにかく今度の問題は、新聞等におきましては、地方の小学校全体が教科書の給与を受けるので、これからほんとうに義務教育の実が上つて行くのだというふうに、相当国民を喜ばせておつたのです。それは政府の責任であるか、あるいは与党の責任であるか知りませんけれども、とにかくそういう点からしまして、実際は非常に小さなもので行われるということは、国民も裏切られておるような状態なんですが、その経緯は、どういうわけでそういうふうになつておるのか。これは新聞紙等で大きく発表されたのですから、政府としても相当責任があると思います。なぜかかる見本程度に終つたか、その経緯をお話願いたい。
  160. 辻田力

    ○辻田政府委員 先ほど来いろいろ申し上げましたように、政府といたしましては、できるだけこれをすみやかに広範囲に実施したいという、考えでありましたが、国家財政地方財政両者の財政状況を十分にらみ合せまして種種研究の結果、今回のような案に、なつた次第であります。
  161. 小林信一

    小林(信)委員 そういうふうに言われればそれきりのようですが、そこに文部省として、單に文教政策だけの問題でなく、国家全体の政策の中で問題を考えなければいけないという点を私は指摘したいのです。先ほどお話の中に、奨励という問題が出ておつたのですが、この奨励という意味を、私はよく文部省からお伺いしたいと思うのです。はたしてこういう奨励という言葉を使つていいかどうか、私も疑問なんですが、たといこの奨励ということがいいとしましても、單に文部省の方で一億四千万を獲得したから、それで奨励という仕事ができたというふうに考えておられるとすれば、これは非常に問題だと思うのです。最近の平衡交付金の中で問題になります教育費等の問題を根本的に検討して行くならば、もつと平衡交付金の内容、平衡交付金に対する政府全体の見解というものを根本的に改めてもらつて、憲法の条章にはつきりしておる義務教育の無償という点を、もつとはつきり根本的に打立ててもらつて、そして地方財政にこれに対して理解が行く態勢をとらせて、この奨励をするべきであつて、單に一億四千万円獲得したから、これをもつて地方もこれと同じだけの負担をせよというような奨励の仕方で、はたして妥当であるかどうか、非常に私は疑問に思うものでありますが、要するにこの奨励ということは、政府はどういうところに見解を置いてなさつておるか。今後もこういうことはさまざまあると思うのですが、その奨励の今後の方策等について、お伺いしたいと思うのです。
  162. 辻田力

    ○辻田政府委員 この奨励という意味は、強制しないということでありまして、強制するということも、場合によれば、法律で何でも規定できることがあるかもしれませんが、しかしこの場合におきましては、強制するのではなくて無償が実現するように奨励するということであります。その奨励のために政府は、第二条以下に書いてありますように、必要の額の二分の一は補助するということでありまして、強制しないという考え方であります。
  163. 小林信一

    小林(信)委員 それは政府が地方財政に対してなされなければならぬ措置を講じておらないで、地方財政に対して、ある一つ意向を強制すると言わなくても、実現すべきであるということが言い得られないような措置をとつておるからである。この事柄から言うならば、先ほどから憲法の問題をとられているが、單にそれが理想であるとか、あるいは信念であるとかいう問題でなくて、すでになさなければならない既定的なものであるという点からするならば、奨励というような言葉を使うことは、これは非常に問題だと思う。やはりこの奨励という言葉の裏には、政府が地方財政に対して、憲法の精神を生かすべく考慮しておらないということがあるからこそ、自分の責任をのがれるために使うという結果になる。今後、文教政策に限らず、地方行政に対してこれは一つの大きな無責任な言葉になると思うのですが、この点いかがですか。
  164. 辻田力

    ○辻田政府委員 義務教育の無償を完全に実施するということは、非常に重要な問題でございます。また非常に経費を要する問題でありますので、憲法に書いてあるようにこれを一遽に実施するということは望ましいのでありますが、しかしだんだんに順を追つて行かざるを得ないという現在の国力でありますので、今日の段階といたしましては、これを奨励するというふうなことで、やむを得ないと思つておる次第であります。
  165. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員長代理 ちよつと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  166. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員長代理 速記を始めて。
  167. 小林信一

    小林(信)委員 今お話の雑談の中に、発行所の問題が出たのですが、これもやはりわれわれは相当考えてやらなければならぬと思うのです。はたして現在の地方財政の実情では、発行所が金の回収のために困りはしないかと思うが、その点は御心配ございませんか。
  168. 辻田力

    ○辻田政府委員 この点は、心配はあるわけでございますが、従来の制度によりますと、早期販売をやつておりました関係上、たとえば二月ごろに出して、三月ごろに金が入つて来るということでありますと、その間に金融措置がつくわけですが、今回、ほかの点は別として、国語と算数につきましては、無償の理想の実現のために、市町村がこれの経費を負担するわけでありますので、市町村といたしましては、どうしても四月以降でなければ支払うことができません関係上、その間に時間的にギヤツプができるわけであります。それにつきましては、私たち心配いたしまして、実は大蔵省、日銀、勧銀等に話しまして、日銀の方から、特別のわくを勧銀の方に融資してもらいまして、その範囲内において、金融措置をすることにきまりました。ただ、個々の会社との関係は、信用状況とか、いろいろなことがありますので、いろいろな事情があると思いますが、一応のわくとしては、そういうふうに金融措置をすることに決定いたしました。
  169. 小林信一

    小林(信)委員 そうすると、大体の建前からしますと、地方の負担額というものは、いつごろ発行所へ入る予定になつておりますか。
  170. 辻田力

    ○辻田政府委員 政府の補助金は、大体八割程度、四月の早々に出したいと思います。なお地方自身といたしましては、半額を負担しなければならぬわけでありますので、これをあるいは外部から借り入れるか、あるいは財政収入によつてこれを支払うか、あるいはまた繰越金で支払うかというような問題もありますが、大体五月の初めごろには、一応支払うということになるのではないかと思います。それが中央の発行所等に返つて来るのは、五月中には返つて来るのではないかという一応の見通しを立てでおります。
  171. 小林信一

    小林(信)委員 今後この理想を実現して行くためには、そういう問題が、文部省としては一番重大な問題になつて来ると思うのです。ただいま、五月には大体回収できるというようなお話なんですが、これが紙の問題に関連して参りまして、割当制度がなくなるということになれば、発行所は、常時紙を用意しなければならぬ。今までは割当をもらうと、その割当で銀行から金を借りるということができたそうですが、そういうこともできない状態に追われて行つて、今度は、政府の方では、五月には回収できるというふうに言われるけれども地方の実情からして、また初めての試みであるから、来年の三月までに回収できればいいのではないかというところまで心配しておるようなんです。これは心配です。別にそうなるとは、私も断言はしませんが、とにかくそういうことは、こういう状況下においては相当に心配されることだと思うのです。それがひいては文部省のせつかくの意図も、来年度においては残念ながら実施することができないという、そういう障害を、もしこんなところから受けるとすれば、重大な問題です。そこでもう一つ心配することは、最近の地方平衡交付金の内容からして、教育財政の問題を、地方では非常に重大視しておるわけです。たとえば、給与ペースの引上げなんかの問題についても、大蔵省で、平衡交付金の中には千円しか組んでおらぬ。ところが、地財委で計上したものには、すでに千百十七円になつておる。それに給与推定表の額を合せると、幾ら幾らになつて、これは地方財政ではまかない切れない状態にあるということが、片一方にあるわけです。そういう中で、教科書の財源というものがまた問題になつて来て、結局は、町村が出すのも父兄が出すのも同じだから、まあ父兄から出してくださいというようなことになつたら、これは重大な問題ですが、そういうふうなことには絶対にならないという確信を持つておいでになるのか、そして発行所等に対しても、そんな心配はさせないという確信を持つておられるのか。そこら辺をしつかりきめてかからなければ、せつかくのこれも、前には何十億出すというような大きな宣伝をしておいて、結局一億四千万円になつてしまつて、非常に情ない状態になつたというようなものと、同じ結果を招来しはしないかと思うのです。そういう点に対しても、文部省としてはいろいろ検討されておると思うのですが、御見解を承りたいと思います。
  172. 辻田力

    ○辻田政府委員 この教科書の半額を市町村が負担します場合に、PTAその他から寄付を受けて、それによつてまかなうということは、義務教育無償ということ自体に反するものでございますので、さようなことの起らないように、万全の措置をしておるわけでございます。たとえば、最近におきましても、この法律案としましては確定はいたしませんが、大体こういう法律案提出する考えであるということで、各府県の庶務課長、あるいは教育委員会関係者を集めまして、その場合に、ただいまお話のありましたようなことの起らないように、あらかじめ準備をしておくということについて、ずいぶんお話合いはしてあるわけであります。従つて、そういうことの起らないことを、われわれとしては期待しておる次第であります。  なお発行業者に対する関係は、先ほど申しましたように、政府としては日銀を通じ、勧銀に直接には話合いをしておりますが、一定のわくの中で融資をいたしまして、業者の金融上のギヤツプをなくするようにして、その間に支障がないようにいたしたいと思つておる次第であります。
  173. 小林信一

    小林(信)委員 そこで紙の割当の問題は、教科書をなるべく低廉にし、しかも発行所が今後これに協力できてつぶれないようにというような、そういう態勢に置くためにも、割当の制度撤廃の問題が考えられて来るわけなんです。それについてひとつ御見解を承りたいと思います。
  174. 宮川孝夫

    ○宮川説明員 ただいまの御質問に、お答えいたします。紙の割当制度が続いておりますことは、紙の確保の面におきましても、また価格の維持の面におきましても、われわれとしては望ましいことである、かように考えまして、統制の解除問題が出て参りましたときにも、現在でもさようでございますが、できるだけ教科書の紙については統制を継続いたしますように、関係各方面と折衝を続けておる次第でございます。ただ、いまのところでは、紙の全体の面から申しまして、現在統制を続けておりますものが、新聞用紙、教科書用紙、それから下級印刷の三十五、三十六、この面だけでございますために、統制紙の方になかなか紙がまわつて来ないというようなあれがありまして、その面から、むしろ自由にした方が、紙の入手がよくなるのではないかということが、相当強い意見でございますが、われわれとしては、現在でさえも相当困つておる状況でございますから、統制を続けないということになれば、より以上困るのではないか、こういうことが私どもの反対の理由であります。
  175. 小林信一

    小林(信)委員 そうすると、あなたの見解でいうと、紙がない。ないから割当制を継続して行きたい、こういう御見解ですか。
  176. 宮川孝夫

    ○宮川説明員 紙がないからというのではないのでありまして、現在のところ入手がなかなか困難な状態にあるわけです。これは御存じの通り、輸出する方が非常に値段が高くて、その方によけい流れる。従いまして輸出抑制ということが考えられれば、教科書の方面は大体確保できるのではないか、かように考えております。
  177. 小林信一

    小林(信)委員 輸出の抑制は、やつておるじやないですか。
  178. 宮川孝夫

    ○宮川説明員 措置をするというようなことは聞いておりますが、具体的なことは承知いたしておりません。
  179. 小林信一

    小林(信)委員 あなたのおつしやつておることと、参議院で通産大臣が説明したことと大分意向が違うようです。今紙は余つておるから、かえつて統制をはずした方がいいというような説明だつたと思いますが、政府自体においても、この問題をまちまちに考えておるようなことになる。そのうちで視野の狹いところから、この紙ということを根拠にした教科書の問題を考えておられると、せつかくここで予定を立てたこれだけのものすらも、本年度中途において挫折するようなことになるのです。今の御答弁では、私たちは非常に安心しかねるのです。次官も、前に何とかこれに対しては措置を講ずるというふうにおつしやつたのですが、もう少し具体的な問題を、その事前においてなるべく早くわれわれはお伺いしたいと思います。  そこで、私はこういう問題を一つ考えるのです。発行所は、まあ政府を対象にするわけでしようが、つくつた現品を引渡すのは、これは必ず四月一日から使うものですから、三月中に取引が行われるわけですね。そうすると、昭和二十六年度予算昭和二十七年度分を確保するという形にすることが、私は正しいと思うのですが、そういうことを考慮されたことがありますか。
  180. 辻田力

    ○辻田政府委員 二十五年度、二十六年度関係におきましては、そういうことはできませんけれども、二十七年度以降の問題につきましては、いわゆる審議会においていろいろ論議があると思いますが、われわれとしましては、あるいは二十七年度の補正予算というものが組まれますような場合には、そういうふうな運営上の若干の措置が必要じやないかというように考えております。
  181. 小林信一

    小林(信)委員 私は教科書が、とかく四月一日すぐに子供の手に渡るというような今までの行き方というものが、最近、発行の問題もあるでしようし、いろいろな財源の問題もあるでしようが、非常に遅延しがちなんです。最近これがやや回復されたのですが、またこういうような制度を実施する上からして、いろいろな点で遅延するようなことがあつては、また教育上大きな問題だと思うので、できるならば、これはやはり来年度の分は、もう三月中に一切すべてが完了するような態勢に持つて行くことが、四月一日から仕事が発足できる態勢だと思うので、本来ならば本年度予算の中に、もう来年度の分が考慮される形がいいと思うのです。本年においてはそういうことが不可能であるとするならば、おつしやるようにもし補正予算等を組む場合には、強力にこの問題は主張していただいて、ほんとうに喜んで、なるほど新しい制度だ、これでいいのだというように、四月一日に子供も父兄も喜んでこの本を手にとるようにしてもらえば、この法案の持つ公共性というものも、子供が真に理解してくれるのではないかと思います。やり始めたがいろいろな支障があつて、これじややはりお母さんやお父さんに買つてもらつた方がよかつた。現に親の責任としましても、つくろつた服は着せても、満足でないはきものははかせてやつても、親が新しく入学する者に新しい本を買つてやるということは、何か親の子に対する義務、あるいは情を盡しているというようなものに、われわれの生活からは大きな慣習になつているわけです。それを政府がこういう制度によつて取上げる――と言つては失礼ですが、こうなつた以上、それ以上の利益、またこれに対する感情がもたらさなければならぬ問題だと思うのですが、来年度はぜひともそういうふうに御考慮を願いたいと思います。大分まだ質問があるようですから、私の質問は終ります。
  182. 辻田力

    ○辻田政府委員 本年三月から四月にかけての措置といたしましては、実は教科書自体は、最末端といいますか、まで届いているわけであります。そのように手配しております。この法律がきまりましたら、すぐ手配ができるようにしております。それでその間に支障はないと思つております。
  183. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員長代理 本法案に対する質疑は、これにて打切るに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  184. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員長代理 御異議なしと認めます。よつて明後十七日討論採決を行いたいと存じます。  それでは本日はこれで散会いたします。     午後四時十九分散会