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参考人(
嶋津暉之君) 水源
開発問題
全国連絡会の
嶋津と申します。今日は、
意見陳述の機会を与えていただきましてありがとうございます。
今日、私の方の
資料で二種類ございます。ワードで書いた四
ページ物と、それからもう
一つ、
スライドを二つ並べたものですね。済みません、ちょっと
資料が多過ぎるんですけれども。このワードの方は後でお読みいただくとしまして、今日は、この
スライド形式のもの、こちらを御覧いただいて私の話を聞いていただければと思います。
今回この
法案が提出されたわけですが、その前に、今日お話しする内容は、十五分しかありませんけれども、この目次に書いてある内容をざっとお話をさせていただきたいと思っております。
とにかく、今回のこの
特定都市河川浸水被害対策法等の
改正案は、非常に内容は多岐にわたっております。まず、この特定
都市河川浸水被害対策法の
改正の中でもいろいろなことが書いてありまして、
流域水害対策計画の策定、雨水貯留浸透
施設の整備
計画の認定、貯留機能保全
区域の指定、それから
浸水被害防止
地域の指定と建築物の規制と、いろんな内容が入っております。そのほかにほかの
法律も
改正するよということで、主なものを取り上げると、
河川法の
改正、利水
ダムの
事前放流の拡大ということですね。こういうように非常に盛りだくさんの
改正法案であります。
まず、次の
三枚目の
スライド、二枚目を御覧いただきたいと思います。
まず、この利水
ダムの
事前放流ですね。今回のこの
河川法の
改正でこれが入れるということですが、これは、実は内容的には既に始まっておりまして、二〇二〇年度、昨年度から、国交省の通達でこれが既に始まっております。四月二十二日に
事前放流のガイドラインの策定というのが、国交省が作りまして、これは、菅首相が官房長官時代に非常にこれに取り組まれまして、それで、当時の官房長官の指示の下にこのガイドラインが作られたわけであります。これを今回法制化するということですね。
ただ、この
事前放流、どこまでこれは有効なものかということを少し考えてみたいと思います。
先ほど
小池先生からお話があったこの球磨川
水害、昨年七月、熊本県の球磨川が大
氾濫しまして、大変な
被害をもたらしました。ここで、今、川辺川
ダムの是非をめぐって議論がされているわけでありますが、既設の
ダムがあります。一番大きいのは国交省の市房
ダムであります。
では、この場合、
事前放流どうだったかということですが、次の五つ目の
スライドは、これは
被害の状況ということで、本当にすさまじい
被害でありました。新聞等とかいろいろなニュースでお読みになって知っておられると思いますけれども。当然、これはもうガイドラインができた後です、先ほどの
事前放流の。だから、当然、この市房
ダム等もこのガイドラインに沿って
事前放流をしなきゃいけないわけですね。
ところが、この場合、この下の新聞記事、六枚目の
スライドです。
この雨の降り方が急であったために、
事前放流、間に合わなかったんですよ。だから、六つの
ダム、いずれも
事前放流ができなかったということです。
事前放流はこういうものであって、急な雨には
対応できないものだということを知っておかなきゃいけないと思います。次の七枚目の
スライドを御覧ください。
最近は大きな本当に
洪水があって、本当に
氾濫がすさまじいんですけれども、今から三年前、
西日本豪雨、
西日本の各地で大雨が降って大変な
被害をもたらしました。愛媛県、肱川という川があります。ここも大
氾濫しました。ここには国交省の
ダムが二つあります、野村
ダムと、それから鹿野川
ダムであります。これが緊急放流しましてもう
ダムがいっぱいになって、それによって下流が大
氾濫しました。鹿野川
ダムでも四人の方が死亡し、大変なことになりました。
では、この
ダム、まだこれはガイドラインできる前ですけれども、
事前放流はどうだったかということです。それを見たのが九
ページ目であります。九枚目の
スライドでございます、済みません。
これは、鹿野川
ダムを例に取って、この
ダムの貯水量の
変化を見たものです。この場合、
事前放流はそれなりにやっているんですよ。だけれども、雨の降り方がすさまじくて、この鹿野川
ダムも野村
ダムもそうなんですけれども、
事前放流でとても
対応できるものでなかったということですね。だから、
事前放流をすればかなり
対応できると、必ずしもそうではないケースが多いと、あるいは
事前放流ができないケースもあるんだということを御承知いただきたいと思います。
それから、ちょっと
事前放流の話と離れますけれども、
ダムがどこまで
治水対策の役に立っているのかということで、少し例を見ておきたいと思います。
今から六年前、鬼怒川で大
水害がありました。利根川の支流の鬼怒川であります。この関連死を含めると十四人の方が亡くなっているわけであります。こういう形でヘリコプターで人が救助されるという、そういう
事態でありました。
次の十一枚目の
スライドを御覧いただきたいんですが、ここは、鬼怒川というのは、これは上流に国交省の大きなの四つもあります。五十里、川俣、川治、湯西川です。この
ダムの集水
面積は、この鬼怒川全体の三分の一もあります。だから、ここはもう
ダムで
洪水をためれば十分大丈夫と思われた
河川でありました。しかし、そうではなかったんですね。下流で大
氾濫しました。
なぜそうなったかということですね。それが十二枚目の
スライド。
ちょっと分かりにくいですけれども、赤い方が
ダム地点の流入と放流を示しております。白抜きの方が流入量、塗ってある方が
放流量ですけど、
ダム地点では毎秒二千トン以上のカットをしました。
ダムはきちんとこのぐらい働いておりました。ところが、その
ダムの
効果というのは、下流の水海道、そちらに行きますと僅か二百トンぐらいになっちゃうんですね、この国交省の
数字から計算しますと、十分の一に落ち込んでしまうと。
ダムの
効果というのはこういうもので、
ダムの直下では
効果があったとしても、その
効果というのは下流に行くとかなり減衰してしまうんだということです。
なぜそうなるかというのは、ちょっと説明を今日はする時間がありませんけれども、十
三枚目の
スライドに少し書きましたけれども。
洪水というのは、上流から下流に流れていくにつれて、河道の割合勾配の緩いところ、そこで貯留されます。それによって
洪水のピークが落ち込んでいきます。ということで、上流や
ダムでそのピークをカットしても、その
効果というのは下流の方ではかなり小さくなってしまうということですね。そのほかの要因もあります。
ということで、鬼怒川に関しては、上流に大きな
ダム四つあって、そこできちんと
洪水調節したけれども下流の
氾濫を防ぐことはできなかったということです。それを踏まえてやっぱりこれからの
河川事業を進めるべきじゃないかと思うわけであります。
今、この
ダム事業はどれぐらいの予算が使われているかと見たのが十四枚目の
スライドです。
最近三年間、
ダム建設以外のお金も入っておりますけれども、
ダム関係の予算としては、年間で二千五百億円前後ということですね、この三年間を見ますと。一方、
河川事業の予算はどうかというと、次の
スライド十五を御覧ください。大体、これにまた三千億から四千百億円ということで、
ダム事業のウエートは結構高いということですね。
今でも
ダム事業にかなりの予算が使われていると、こういう状況でよいのかということを問題提起したいと思います。やはり
河川事業の方に、
河川の予算をより多く回すようにすべきじゃないかということが私の考えであります。
ということで、この十六、
一つのまとめですけれども、限られた
治水効果しか持たず、あるいは、時には緊急放流で
災害を引き起こす、先ほどの肱川ですね、野村
ダム、それから鹿野川
ダム、そういうことがある
ダム事業の予算を少しやっぱり縮小すべきじゃないかと、極力ですね、私の考えでは。
河川改修、
河川維持の予算に回すべきじゃないかと思うわけであります。
それから、ちょっと話が横にずれますけれども、今、低コストで堤防を強化できる耐越水堤防強化工法というのがあります、これはもう随分前に
開発されているんですけれども。これは、ずっと封印されてきたんですけれども、二〇一九年の
水害で決壊した千曲川の決壊地点、穂保にようやく昨年導入されました。二十年ぶりの復活であります。この技術を是非
全国に広めてほしいと思います。
あと、それから、この
河川管理も、
河川のこの河床、
河川というのは河床がどんどん上昇していきます、通常ですね。それによって
氾濫しやすい状態がつくられていきます。ですから、
河川の河床のしゅんせつが非常に大事であります。その費用につきましては、地方管理
河川に限られますけれども、昨年度から総務省の方で、緊急浚渫
推進事業費における四千九百億円、これを付けて、今、各
河川で行われております。これを是非国管理
河川でもやるように、是非その辺もこれから進めるべきだと思います。
次の
スライドで、この上の十七は今申し上げた耐越水堤防工法の話で、ちょっとこれは省略させていただきます。
今回、この
流域治水の
推進ということで法制化されていくわけですね。非常に大事なことであります。これについては、先進的な事例があるということですね。御承知かと思いますけれども、滋賀県の
流域治水の
推進に関する条例であります。
これは、二〇一四年三月、ですから今からもう七年前ですかに作られたものであります。当時の知事は、今参議院議員をしておられる嘉田
由紀子さんでありました。これはかなりよくできた条例であります。これを
参考にして、今後、この
流域治水推進法が今度できますので、その実施に当たっては、この滋賀県のやり方を十分に取り入れて進めるべきじゃないかと私は考えております。その内容を少し紹介したいと思います。
まず、十九枚目の十九の
スライドですね。
浸水警戒
区域というのを設定します。今回の
法案では
浸水被害防止区域、ちょっと名称が違いますけど、そういうことを、そういう場所を指定して、そして、近くに
避難所とか、地盤のかさ上げをしない場合は原則として新しい家は駄目だということですね。そういう
浸水区域の指定が行われてきているわけであります。
ここで、滋賀県の場合の特徴なんですけれども、二百年に一回の雨を想定していると、非常に大きな大雨を想定してこの
浸水警戒
区域が設定される、これが今回の
法案との違い、大きな
一つの重要な違いじゃないかと私は思っております。
ちょっと二十の
スライドは飛ばしまして、次の二十一の
スライドは、それを、今お話ししたようなことが図示されております。要するに、そういう
浸水警戒
区域においては二階建てにして、それか三メーターの高さを持たなきゃ駄目だという、そういう規制が行われているわけですね。
それから、もう
一つ重要なことは、既設の住宅は当然かさ上げが必要です。その場合に費用を補助しようという、そういう
制度を作っているんですよ。これは二〇一七年にできたものですけれども、
水害に強い安全安心なまちづくり
推進事業費補助金交付要綱というので、四百万円を上限として、かさ上げなどの費用の二分の一を県が補助するという画期的なものです。
次の二十三の
スライドは、それを図で分かりやすく説明したものです。
是非、今回の
法案ができた場合、これは成立するんですけれども、こういう補助
制度を是非これも考えていただきたいと思います。
それからもう
一つ、この滋賀県で非常に重要なところは、地先の安全度マップということです。
ちょっと分かりにくいですけど、これは、十分の一、十年に一回の雨、それから百年に一回、二百年に一回の雨でそれぞれ地先の安全度マップが作られているんですけれども、そのうちの二百分の一の雨が、二百分の一の地先の安全度マップが先ほどの
浸水警戒
区域の指定
対象になります。ここの地先の安全度マップの作り方が非常に特徴的で、非常に重要であります。次の二十五の
スライドを御覧ください。
まず、普通の
氾濫といいますと、
一つの
河川の
氾濫しか考えませんよね。国の場合は大体そうなんですよ。ところが、こちらの場合は複数の
河川の同時
氾濫を考慮すると。それは、ある
地域に近い
河川幾つもあるわけですね。それを
一つの
河川ごとに考えるんではなくて、複数の
河川の同時
氾濫を考慮する、それから内水
氾濫、降った雨が、川からの越流ではなくて、降ったのがそこであふれてしまう内水
氾濫がありますね、これも考慮すると、さらに未完成堤防の破堤条件も厳しく考慮するということで、そういう形で地先の安全度マップを作り、そして先ほどの
浸水警戒
区域を設定するという、非常にユニークな方法を取っております。
今の地先の安全度マップの作り方を図示したのがこの二十六の
スライドであります。
最後の
スライドの二十七を御覧いただきたいんですけれども、滋賀県の
流域治水とそれから今回の
流域治水関連法案を比較いたしますと、今の三点で整理いたしますと、まず、
浸水警戒
区域、
法律の方は
浸水被害防止区域という
名前ですけれども、まず滋賀県の方は、二百年確率の
降雨による
浸水を考えている、非常に大きな雨を考えるということですね。一方、今回の
法案は、何年と書いておりませんけれども、国交省に聞いたところ、数十年に一回ぐらいかなということを言っておりました。ということで、今回の
流域治水関連法案でこの
浸水被害防止区域を設定しても、やや大きな
降雨には
対応できないことがあるんじゃないかということを心配せざるを得ません。
それから、
浸水警戒
区域内での既存住宅の建て替えの補助
制度ですね。これは、先ほどお話ししたように、滋賀県では四百万を上限としてかさ上げなどの費用の二分の一を補助すると、この補助
制度は今回の
法案では書いてないように思うんですよね。是非、これからこの
法案を進めていくに当たってはこの補助
制度を同時にお考えいただきたいと思います。
それからもう
一つ、
氾濫域の設定の仕方も、滋賀県の場合は複数の
河川の同時
氾濫、内水
氾濫を総合的に考慮すると、今回の
法案はどうもそれが書いてありませんけれども、今までのやり方を見ますと、各
河川の
氾濫を個別に考え、それから内水
氾濫を別々に想定をするというもので、もっと総合的に考慮することが必要ではないかと思います。
ということで、この今回の
流域治水関連法案はできるわけですけれども、
法案ができるわけですけれども、この
流域治水の先進的な取組事例である滋賀県、その条例とその取り組み方を大いに
参考にして今後充実をしていただきたいと思います。
以上で私の話を終わります。御清聴ありがとうございました。