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三原じゅん子君 ありがとうございます。
厚生労働省としても全力で
被災者の
皆様に寄り添っていただきたいと心から
お願いを申し上げます。
それでは、
法案質疑に入らせていただきたいと思います。
本日は、
がんサバイバーとして質問させていただきたいと思います。
今、この
健康増進法の改正案の審議に立ち会わせていただいておりますが、このときのために私は国
会議員を志した、こう言っても決して過言ではないと、そう感じております。今まで当たり前だったことが、その日々の生活にこそ大事にすべき幸せがある。午前中の
参考人質疑の中で
長谷川参考人がこのようなお話をしてくださいました。全く同感であります。
命を守りたい。一人一人の小さな幸せ、大切にしている幸せを守りたい。弱きを助け強きをくじく、そういう政治家でありたい。そう願って私は政治の道に入ろうと決意しました。私が政治を志したとき、自由民主党は野党でありました。でも、弱い者の声をしっかりとすくい上げてくれる、そして
日本の将来をしっかり見通して責任ある政治ができる、そういう懐の広い党は自民党しかないと、そう考えておりました。
平成二十二年のことです。初当選後、
厚生労働委員会での初質問では、
がん対策基本法の成立に文字どおり命を懸けて取り組んだ山本孝史先生の思いを引き継いで政治に取り組んでいきたい、そう決意を申し上げました。
二期目の選挙戦でも、私は、岩手県の旧沢内村が昭和三十七年、地域包括医療実施計画で掲げた目標、いつでもどこでも誰でも健やかに生まれ、健やかに育ち、健やかに老いるという目標に学びたいということを申し上げました。
今から半世紀以上前、豪雪の寒さの中、早死にする赤ちゃんたち、貧しくてお医者さんにかかることができなくて亡くなっていくお年寄り、こうした光景を目にした当時の沢内村の深澤村長は、命に格差があってはならない、生命尊重こそ政治の基本という理念を掲げて、大きな実績を残されました。その深澤村長の姿勢に学んで、私は、命の政治というものを国全体で展開していく、命のための安心、安全という軸で政策を転換して、強くてしなやかな
政府を実現していく、そう訴えてまいりました。
少々長い話になりましたが、このような私の初心というものはそれ以来一切変わっていないということを、まず冒頭、はっきりと申し上げておきたいと思います。
健康増進法改正における議論に関して、自民党に属する議員の一人として深い反省を申し上げておかなければなりません。
健康増進法の改正は、単に
たばこの吸える公共の
場所を規定するというものではありません。お年寄りや病気を抱える人、子供、妊婦の皆さんなどにとっては凶器そのものである副流煙を阻止する、つまり
受動喫煙を根絶していこうというのが本当の趣旨です。
事実、
たばこによる
健康被害については、我が国も批准、加盟しているFCTCの前文にこう書かれております。「
たばこの消費及び
たばこの煙にさらされることが死亡、疾病及び障害を引き起こすことが科学的証拠により明白に証明されていること並びに
たばこ製品の煙にさらされること及び
たばこ製品を他の方法により使用することと
たばこに関連する発病との間に時間的な隔たりがあることを認識し、」、また、「出生前に
たばこの煙にさらされることが児童の健康上及び発育上の条件に
悪影響を及ぼすという明白な科学的証拠があることを認め、」と、このようにはっきりと書かれております。
つまり、この
法案は、
健康増進法という名称ではありますが、救えるはずの命を救えるようにするための
法律というのが真の姿なのではないでしょうか。
受動喫煙で
肺がんを患い、現在、ステージ四にありながら
受動喫煙対策に力を尽くしておられる
長谷川参考人、救える命は救ってほしい、そう願いますとおっしゃっています。その切実な思いを私たちは本気で受け止めてきたのかどうか、いま一度深く反省しなければいけないと思います。
ただでさえ今国会では、閣僚の
答弁が御飯論法だなどとやゆされているように、国会運営における自民党の傲慢な態度に批判が寄せられております。そのような中、我が党は、
健康増進法改正案の論議においても痛恨のエラーをしでかしました。これらのエピソードは報道によっても大きく取り上げられました。
一つには、昨年の五月、
受動喫煙対策を議論した自民党の
厚生労働部会の席上で、同僚議員の
発言に対し、
がん患者は働かなくていいなどという耳を疑う
発言をした議員がおられました。その議員は、自らの
発言で
がん患者らの気持ちを傷つけたとして陳謝しましたが、
発言そのものは撤回せず、
喫煙可能の店で無理して働かなくていいのではないかという趣旨だと釈明したと報道されております。当初は様子をうかがって、そして世間からの批判が大きくなって初めて言い逃れのような釈明を行うというのも潔くないなと感じました。
がん患者の
方々も、
がん患者の就労はまだまだ厳しい中、危機感を持っている、
患者らからも怒りや悲しいという声が寄せられたと述べておられました。私も全く同感です。
さらに、先月のこと、この
健康増進法改正案の衆議院の
委員会審議中に、
委員として出席している我が党議員の、お招きした
参考人の
長谷川参考人に対して、いいかげんにしろというあり得ない
発言を投げ付けたという事案がございました。その後、この議員は
参考人の方に対し、
喫煙する
機会が狭まれていくことへの思いが出てしまった、不快な思いを与えてしまったとする謝罪文を送付したと報道されているところであります。特にこの件に至っては全く弁護の余地がありません。
長谷川参考人に私からも心からおわびを申し上げたいと思っております。
たばこの煙を凶器としておびえている
患者さんの声、まだ投票権を持っていない将来世代の声、おなかの中で間もなく生まれようとしている胎児の声、そしてまた、山本孝史先生のように、
がんとの壮絶な闘いの末にこの世に別れを告げなければならなかった方たちが私たちに残した悲痛の声、そういった弱き国民の声にこそ素直に耳を傾けるべきではないでしょうか。
一体どこを見て政治をしているのか、いいかげんにしろと責められるべきは、むしろおごり高ぶった我々の方ではないかと思っております。自民党を愛し、党籍を持つ者の一人として、深い自戒の念を込めてそう申し上げなければなりません。
今日、私の質問の冒頭でも申し上げましたが、
平成二十二年の当時、自民党の、野に下っている最中でありましたが、そのときには、長期政権の中で緩みやおごりがなかったかどうか自らを振り返り、その結果を
平成二十二年綱領として世に問いました。そうした謙虚な姿勢からの再チャレンジで国民の信を再度得ることができて、政権の座に復帰することができたのではないでしょうか。自民党は、二〇一〇年当時の反省を忘れず、そうした謙虚さを取り戻す。再度の自戒の念を込めて、そう申し上げたいと思います。
今、私たちは
健康増進法改正のような問題で、参議院の存在理由、そして参議院議員としての良心が改めて問われているのだと思います。この
法案は、午前中に
長谷川参考人もおっしゃったように、
受動喫煙を阻止して救える命を救う
法律でなければならないということは既に申し上げました。御本人に
喫煙歴が全くないにもかかわらず、親御さんの
喫煙からの
受動喫煙によって
肺がんを患うことになったというような痛ましい事例。副流煙の危険性に関する科学的データなどは枚挙にいとまがありませんので、ここで
一つ一つ申し上げることはいたしません。
ここで我々参議院議員が忘れてはならないのは、参議院は衆議院のカーボンコピーではないのだということです。政権
選択としての民意を問うのは衆議院の役割です。衆議院での審議の結論を参議院が追認するだけなら、参議院など無駄だと言われてしまっても仕方ないかもしれません。しかし、イギリス型の民主主義を目指す、あるいは国政選挙は政権
選択の
機会として位置付ける、あるいは急激な社会変化に対応するための迅速な政策立案を重視する、もしそう考えるならば、
日本国憲法を改正して、参議院を廃止して一院制に移行するのがいいということになってしまいます。しかし、ここは参議院です。参議院独自の役割を国民の皆さんに御覧いただいて、納得して、参議院の存在理由を示すべきだと考えます。皆さん御案内のとおり、参議院は良識の府、再考の府、審議の府であります。
このほど参議院も規則を改定して、十歳
未満の小
学生にも原則として傍聴を認めることを決めたとのことです。とてもいいことだと思います。私も、十歳
未満の小
学生に見てもらっても恥ずかしくない国会での論議を行っていきたいと思います。
衆議院では拾い切れない様々な国民の声を束ねていく。個別の利害だけではなく、良識と良心に照らしながら、様々な角度から問題点や解決の在り方を掘り下げる。神ならぬ
人間が間違いを犯す可能性を考慮しながら、より慎重に考える。もし残余の論点や長期的な観点から検討が必要なことがあるならば、将来、再度議論し直すべきことを整理して、宿題としてきっちり指摘しておく。野党からの対案や問題提起にも真摯に耳を傾けて、時間の許す限り審議を尽くす。人の命に関わるような
法案であるならば、個々の議員の良識による判断を尊重して、党議拘束の掛け方についても柔軟に考える。そういったことが参議院で実施されているのかどうか、それが今、我々に問われているのだと思います。
今回の
法案の
内容そのものについて、私は必ずしも納得のいくような
内容だとは考えてはおりません。半歩でも一歩でも進めることができるですとか、少なくとも現在よりは望まない
受動喫煙を防ぐことにつながるといったような御
意見があることは承知をしております。しかし、
法案の
内容では、せっかく子供が参議院を傍聴できるというふうになったにもかかわらず、公共
施設としての国会の
取扱いが甘いと言わざるを得ませんし、学校において
屋外の
喫煙場所の
設置を許すという点に至っては、私の理解を超えております。
かつてスペインで実践された
飲食店の面積規定にこだわった
受動喫煙対策を
参考にしてしまったデンマーク、ポルトガル、クロアチア、ギリシャ、スイスではむしろ
従業員の
受動喫煙が悪化してしまったスパニッシュ・モデルというような知見が、この
法案に全く生かされていないとしか思えません。このスパニッシュ・モデルを研究した二〇一一年のシュナイダー論文によれば、このように結論付けられております。スペインの経験によれば、
部分的な
喫煙禁止は国際レベルで失敗した取組であり、しばしば特定産業の戦略と似通っている。研究者、政策立案者はこの政策が無効ということに気付くべきであると。
この
法案は、人に寄り添うという大事なことを見落としているのではないでしょうか。むしろ、今回のこの
受動喫煙対策によって、何平方メートル以下なら
対策は不要だというふうに
政府が
喫煙のお墨付きを出しているような印象を与えてしまうこと、あるいは、これで
日本の
受動喫煙対策が万全になったかのような誤解が広まってしまうことを私は深く懸念しています。
この
法案もいずれ採決のときを迎えると思います。しかし、私は良識の府の一員として申し上げたいのは、この
法案は完璧には程遠いということであります。できれば、
施行後早急に、
実態に基づいて
受動喫煙の
被害をもっと削減できるように、何回でも改善を加えていかなければならないんだということです。
受動喫煙対策はこれで終わりだということでは決してありません。そのことを改めて申し上げます。
以上を踏まえ、
大臣に御所見を伺います。
まず一点目、
厚生労働大臣とは、健康、医療、子供、子育て、福祉、介護、そして雇用、労働、年金といった国民の生き死にや人生全体に一番近くで寄り添う役所のトップにあるわけです。言い換えれば、人の命を一番救うことができるポジションです。それができずに、あたかも
たばこ業界の言いなりになっているのではないかと国民から思われるとすれば、それは
大臣としても不本意なことではないかと思います。
受動喫煙に関しては、国民の命と健康を守ることを所管とする厚労
大臣ならば、
大臣の考えるところの最終形として、
受動喫煙による死亡者ゼロを目指すとおっしゃっていただきたいと思います。望まない
受動喫煙をなくす、これが
受動喫煙による死亡者ゼロと同じ
意味であるならば、はっきりゼロとおっしゃるべきではないでしょうか。
がん対策推進基本計画の第二期計画には
施設ごとに数値目標の記載がありましたが、第三期計画には数値目標がなくなりました。
がん対策推進協議会ではゼロと目標値を明記することで全会一致していたにもかかわらずです。
大臣のお考えとして、
受動喫煙による死亡者ゼロを目指すとお考えならば、是非この際、そのようなお考えをお聞きしたいと思います。それとも、この
法案が
受動喫煙対策の最終形だとお考えなのでしょうか。お答えいただきたいと思います。
二点目、もし国が本気を出して取り組まなければ、地方が本気を出してくるでしょう。東京都を始めとして、心ある
全国の知事や市町村長が国の施策を上回るような取組を展開していくことになっていくと思います。そうなったとしても、
大臣、命に格差があってはなりません。
受動喫煙対策を地方の独自の
対策に委ねてしまうことはしない、国の責任、リーダーシップとして
受動喫煙対策を進めていくんだと、
大臣にここで明言していただきたいと思います。
第三点目、我が国もFCTCの加盟国でありますが、これまでの
法案審議の中で、二〇〇七年第二回FCTC締約国
会議、第八条のためのガイドラインの中で、
受動喫煙による
被害をなくすには完全
禁煙以外の方法はないと言われている以上、この
法案は全く別物じゃないかと指摘がございました。これに対して厚労省は、FCTCのガイドラインにおきましては、直ちに屋内全面
禁煙ができない場合は最小限の例外を設けて、この例外をなくすよう継続的に努力をすることを求めていくというものでございまして、そういった観点からも本
法案がこれに違反するものではないというふうに考えておりますという
答弁をしておられます。仮にFCTCのガイドラインに違反していなくとも、いろいろと言い訳をしているばかりで
規制を前進させようとする姿勢を見せなければ、そもそも
日本はなぜFCTCに加盟したのか、
日本は本気なのかというふうに、その不誠実さが問われてしまうことにもなりかねません。
今後の
受動喫煙対策の推進に関して、国内法があるので
受動喫煙対策を進めるのは難しいといったような後ろ向きの言い訳はしない、また、
日本のこれからの
受動喫煙対策の進展について、世界に向けて御飯論法のような言い訳はしないということを
大臣に約束していただきたい。
受動喫煙死亡者ゼロ、国の責任、言い訳無用、以上の三点について、
大臣の率直なお考えをお聞かせください。