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上川国務大臣 おはようございます。第四次
安倍内閣において
法務大臣に再任されました
上川陽子です。
このたび、節目となる百代目の
法務大臣に就任することになり、改めて責任の重さを感じています。
法治国家である我が国において、憲法を初めとする法体系のもと、法の支配を貫徹し、
国民生活はもとより、
経済的活動や
社会的活動、さらには
司法外交を推進し、
国際分野に至るあらゆる活動に法が適用されることが重要であり、今後、
法治国家としての基本的な土台をさらに強固にしていきたいと考えています。
また、
法務行政は、国民の皆様の生命、身体、財産、そして安全、安心を預かる国の礎となる職務であるため、多くの国民の皆様の声に真摯に耳を傾け、そして、まさに澄み切った心で予断なくそれを受けとめ、次代を見越した施策に生かしていくことが必要です。
さらに、これを踏まえ、職務に当たっては、二〇一五年九月、国連で採択された持続可能な
開発目標、
SDGsにおいてうたわれている誰一人取り残さない社会を実現するため、
大平正芳先生が好まれました着々寸進
洋々万里を心に刻んで、一歩一歩着実に職務を遂行したいと考えています。
私は、こうした視点や理念を取り入れて、法務省の
所掌事務の遂行に当たり、公平公正に対処し、国民の
権利利益の擁護に努めてまいりたいと思います。
そして、これまでの経験を生かしながら、
葉梨康弘副大臣及び
山下貴司大臣政務官と協力し、職員とともに明るく前向きに
法務行政の諸課題に立ち向かい、また、
国会審議においては、所管する事項につき真摯に説明に努めてまいる所存ですので、委員長を初め委員の皆様の御理解、御協力をよろしくお願い申し上げます。
まず、国民に身近で
頼りがいのある司法を実現するため、次の
取り組みを行いたいと考えています。
認知機能が十分でない高齢者や
障害者等に対する
日本司法支援センター、
通称法テラスの
法的支援の拡充を図る
総合法律支援法の一部を改正する法律について、その円滑な施行及び適切な運用に向けた準備を進めております。また、
法テラスでは、
福祉機関等と連携して、高齢者や障害者の潜在的な
法的ニーズについて、総合的な
問題解決を図る
司法ソーシャルワークと呼ばれる
取り組みも推進しています。今後も、こうした
法テラスの
取り組みの支援と
業務体制の充実等を図ってまいります。
法的な物の考え方を身につけるための法教育は、自由で公正な社会の担い手を育成する上で不可欠なものであり、多様な人々が共生する安全、安心な社会の実現にも資するものです。我が国の未来を担う若者への期待が高まる中で、多様な意見をさまざまな角度から検討し、みずから考える力を身につけることがこれまで以上に求められており、法教育の重要性はますます高まっています。このような期待に応えるべく、
関係機関とも連携しながら、より一層法教育の充実に努めてまいります。
次に、差別や虐待のない人権に配慮した社会を実現するため、次の
取り組みを行いたいと考えています。
インターネットを悪用した
名誉毀損、プライバシーの侵害、障害を理由とする差別、虐待、ヘイトスピーチを含む外国人に対する
人権侵害、
部落差別などの
同和問題等のさまざまな人権問題を解消するため、引き続き
人権啓発、調査・
救済活動等に丁寧かつ粘り強く取り組んでまいります。また、二〇二〇年
東京オリンピック・
パラリンピック競技大会の開催に向けて、外国人、障害者の人権の尊重をテーマとした
人権啓発活動に取り組むことにより心のバリアフリーを推進し、国籍や障害の有無等にかかわらず誰もがお互いの人権を大切にし支え合う誰一人取り残さない
共生社会を実現します。
親によって出生の届け出がされておらず、無戸籍となっている方々について、実態の把握を行うとともに、
全国各地の法務局において常時相談を受け付け、無戸籍の方に戸籍をつくっていただくための丁寧な
手続案内をする等の無戸籍の方に寄り添った
取り組みを行っております。このような
取り組みを開始して三年が経過しましたが、いまだ多くの無戸籍の方がおられる現状を踏まえ、今般、
市区町村における無戸籍の方に関する情報の集約の強化や、地方における
関係機関との協議会の設置に向けた働きかけなどの新たな
取り組みを始めたところです。今後、さらに、無戸籍となっている方々への支援、無
戸籍状態の解消に取り組んでまいります。
難民問題については、世界的に深刻な状況にあります。他方、我が国においては、
難民認定申請者が急増する一方で、その中には、専ら我が国での就労等を意図していると思われる事案が多く含まれていることにより、真の難民の迅速な庇護に支障が生じかねない事態に至っています。これらの状況を踏まえながら、引き続き、我が国における
難民認定手続の適正な実施に努めてまいります。
次に、世界一安全な国日本をつくるため、次の
取り組みを行いたいと考えています。
国内外で脅威となっているテロを含む
組織犯罪、
凶悪犯罪への対策を初めとする治安の確保のための対策を、
関係機関とも連携し、さらに万全に講じてまいります。
さきの
通常国会で成立し、既に施行されている
テロ等準備罪の創設を含む組織的な犯罪の処罰及び
犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律及び性犯罪に対処するための刑法の一部を改正する法律については、国民の皆様が安全に安心して暮らせる社会の実現に寄与するため、その趣旨及び内容等を周知するなどして適正な運用がなされるよう努めてまいります。
現在、アレフ及びひかりの輪を中心に活動するオウム真理教については、引き続き、
団体規制法に基づく
観察処分を適正かつ厳格に実施することにより、
地域住民の不安感を解消するとともに、公共の安全の確保に努めてまいります。
再犯防止については、再犯の防止等の推進に関する法律に基づき策定する
再犯防止推進計画の本年中の
閣議決定に向けた検討を着実に進めてまいります。
関係省庁との連携を一層推進し、
刑事手続のあらゆる段階において、犯罪や非行をした者の
立ち直りに必要な指導、支援を適切に実施するとともに、
立ち直りを支える保護司、
更生保護施設、
協力雇用主等の民間の方々の活動に対する支援を行い、地域の連携の拠点となる
更生保護サポートセンターの設置を進めていきます。また、
再犯防止の推進に当たっては、犯罪や非行をした人を社会の一員として受け入れることが不可欠であり、そのためにも
地方公共団体との連携が極めて重要であると考えています。
私は、これまで、犯罪に巻き込まれ、苦しみに耐えながら困難に立ち向かっておられる多くの
犯罪被害者やその御家族、御遺族の方々のお声に寄り添い、活動を進めてまいりました。
第三次
犯罪被害者等基本計画でも明記されている、
犯罪被害者等は我々の隣人である、そして、社会に生きる我々の誰もが犯罪等に遭い、
犯罪被害者等になり得る立場にあるとの意識を持って、
犯罪被害者やその御家族、御遺族の方々に寄り添ってまいります。
性犯罪に対処するため、さきの国会で成立した刑法の一部を改正する法律については、その審議において、
性犯罪被害者の御負担に関するさまざまな指摘をいただいており、
附帯決議においても、被害者の二次被害の防止や、その心情に配慮することが求められているところであります。
今後も、こういった経緯や
犯罪被害者等基本法の理念にのっとり、
犯罪被害者等の
権利利益の保護を図るための
各種制度を適切に運用し、きめ細やかな対応に努めてまいります。
昨年の
通常国会で成立した新たな
刑事司法制度を構築するための
刑事訴訟法等の一部を改正する法律について、その趣旨を踏まえた適正な運用を図るなど、
検察改革のための
取り組みを引き続き実施してまいります。
次に、我が国の領土、領海、領空の
警戒警備等について、次の
取り組みを行いたいと考えています。
近年、
世界各地で凄惨な
テロ事案が発生しており、我が国を取り巻く
テロ情勢が非常に厳しい状況である中、二〇一九年にはG20サミットや
ラグビーワールドカップ大会が、二〇二〇年には
東京オリンピック・
パラリンピック競技大会が開催される予定です。島国である我が国では、これらの
国際イベントにおいては、多くの外国人が
全国各地の空港から入国することから、空港におけるより一層厳格な
水際対策が求められています。
その一方、
観光立国推進に向けた
各種取り組みが進められ、昨年の
訪日外国人旅行者数は約二千四百万人と、一昨年に引き続き過去最高を更新している中、テロの
未然防止を含む厳格な
入国管理と
観光立国推進に向けた円滑な
入国審査を高度な次元で両立させる必要があります。
そこで、必要な人的、
物的体制の
充実強化並びに業務の合理化及び重点化にも計画的に取り組んでおります。本年十月十八日には、日本人の
出帰国手続を合理化して、より多くの
入国審査官を外国人の審査に充てることを目的として、
顔認証技術を活用した
自動化ゲートを羽田空港に新たに導入しました。まずは日本人の
帰国確認について運用を開始し、現在、順調に運用が行われているところですが、今後とも
入国審査のさらなる高度化の実現に努めてまいります。
北朝鮮によるたび重なる核実験や、
大陸間弾道ミサイル級を含む
各種弾道ミサイルの発射は、我が国の
安全保障にとって深刻かつ重大な脅威であり、
アジア太平洋地域の平和と安全を脅かすものです。今後も、北朝鮮に対する
人的往来の
規制強化措置等を適切に実施していくとともに、北朝鮮の核・
ミサイル開発に関する動向、日本人拉致問題に加え、
金正恩体制下の
対外動向や
国内状況等について、
公安調査庁を中心として、
関連情報の収集、分析等を進めてまいります。
尖閣諸島関係については、我が国の主権にかかわる事案の相次ぐ発生を踏まえ、
関係機関と連携し、
関連情報の収集、分析に尽力するなど、遺漏のない対応をしてまいります。
次に、
国土強靱化、国民の
社会経済活動の重要な
インフラ整備のため、次の
取り組みを行いたいと考えています。
民事基本法について、国民の意識や
社会情勢の変化に対応し、必要な見直しを進めてまいります。
人事訴訟事件及び
家事事件の
国際裁判管轄法制の整備や、商法のうち運送、
海商関係を中心とした規定の見直しについて、
法制審議会における審議結果を踏まえて、必要な法整備を行ってまいります。
選挙権年齢の
引き下げ等の
社会経済の変化への対応を図るため、民法が定める
成年年齢を二十歳から十八歳に引き下げるとともに、女性の
婚姻開始年齢を十八歳に引き上げること等を内容とする
民法改正については、できる限り早い時期に
関係法案を国会に提出できるよう準備を進めてまいります。
近時、所有者を特定することが困難ないわゆる
所有者不明土地の存在が社会問題化しており、その要因の一つとして、
相続登記が未了のまま放置されていることが指摘されております。
相続登記が未了の土地の問題は、今後も相続が繰り返されるにつれ、さらに深刻なものとなることが懸念され、
関係省庁が一体となって対応していかなければならないものと認識しております。
そこで、法務省では、
法定相続情報証明制度等による
相続登記の促進に引き続き取り組むとともに、長期間
相続登記が未了の土地の解消に向けた
取り組みを推進してまいります。
また、今後、
人口減少に伴い、所有者を特定することが困難な土地が増大することも見据えて、
登記制度や
土地所有権の
あり方等の
中長期的課題についても検討を進めてまいります。
東日本大震災からの
復興支援については、
住宅再建・
復興まちづくりの加速化の観点から、地震によって筆界が不明確となっていた地域の登記所備えつけ地図の
修正作業を平成二十七年度までにほぼ完了し、
登記嘱託事件等の適切かつ迅速な実施に努めるとともに、全国的に取り組んでいる登記所備えつけ地図の整備についても積極的に行ってまいりました。また、
法テラスにおいて、被災者が抱える
法的紛争の解決のため、被災地に出張所を設置し、
無料法律相談を実施するなどの支援を行ってきたほか、
人権擁護機関において、風評等に基づくさまざまな人権問題に対し、
仮設住宅等における相談を実施するなど、相談、調査・
救済活動を行ってまいりました。
平成二十八年
熊本地震からの
復興支援についても、倒壊等するなどした建物の登記官の職権による
滅失登記、地震によって土地が移動している地域の登記所備えつけ地図の
修正作業、被災地の
人権擁護委員を中心とした避難所や
仮設住宅等を訪問しての
相談活動を行っています。
今後も引き続き、震災からの復興を推進するための各
取り組みを進めてまいります。
我が国が本格的な
少子高齢、
人口減少時代を迎える中、
我が国経済社会に活力をもたらす外国人を積極的に受け入れていく必要があります。このため、
未来投資戦略等に掲げられた施策の実現により、
高度外国人材のさらなる受け入れの促進等に努めてまいります。
昨年十一月に成立し、先般施行された外国人の
技能実習の適正な実施及び
技能実習生の保護に関する法律につきましては、
開発途上地域等への技能等の移転による
国際貢献という
技能実習制度の趣旨を念頭に、
主務大臣として、
監理団体の許可を厳格に行っていくとともに、
外国人技能実習機構における、
技能実習計画の認定等の
管理監督業務及び
技能実習生からの相談、申告への対応や援助等の
技能実習生保護業務が適切に運用されるよう、本制度を共管する
厚生労働省とともに努めてまいります。
また、同じく昨年十一月に成立し、先般施行された
出入国管理及び
難民認定法の一部を改正する法律では、本邦の
介護福祉士養成施設で介護を学び、
介護福祉士の資格を有することになった
外国人留学生が引き続き活躍できるよう、
在留資格「介護」を創設し、
介護施設において介護または介護の指導を行う業務に従事することを可能としました。この
改正入管法につきましても、適切に運用してまいります。
次に、法の支配を貫徹し、
国際分野に至るあらゆる活動に法が適用されるように、
司法外交を推進してまいります。
犯罪の防止や
法制度整備等に関する
国際協力について、まず、
刑事司法分野においては、法務省が運営する
国連アジア極東犯罪防止研修所において、昭和三十七年の設立以来約五十五年間にわたり、アジア、
アフリカ諸国等の
刑事司法実務家に対し、犯罪の防止や犯罪者の処遇等に関する
国際研修等を行い、それぞれの国や地域における
刑事司法制度の向上に尽力してまいりました。
次に、
民商事法分野においては、平成六年以来約二十三年間にわたり、ベトナム、カンボジア、ラオスなどアジアを中心とする開発途上国に対し、
基本法令の起草、
司法制度整備及び
司法関係者の
人材育成等の
法制度整備支援を行ってまいりました。我が国の
法制度整備支援は、日本の法制度を押しつけるのではなく、相手国の実情に合った法律や制度を相手国とともに考える手法をとっています。
さらに、近年、インドネシアや
ミャンマー等において、
ビジネス環境整備の観点からの支援も行っております。こうした支援は、海外進出する
日本企業にとって有益であるとともに、これらの地域での
経済成長の基盤につながるものであり、大変重要であると考えています。
これらの
国際協力は、根本的な理念として、我が国が尊重してきた法の支配を各国が実現することに貢献するものであり、冒頭申し上げた
SDGsの達成にもかなうものであることから、今後も積極的に推進してまいります。
我が国の利害に重大な影響を及ぼす国内外における
法的紛争に対し、適切かつ迅速な対応をとるために、国の利害に関係する訴訟に対する
指揮権限をより適切かつ効果的に行使するとともに、国内外の
法的紛争を未然に防止するための
予防司法機能の充実や、
国際訴訟等への対応について
外務省等の関係府省庁との連携を進めるなどして、訟務機能の
充実強化に
取り組み、国民の皆様の
権利利益の保護に寄与できるよう努めてまいります。
第十四回
国際連合犯罪防止刑事司法会議、
コングレスの京都における開催が二〇二〇年四月に控えております。この会議では、
SDGs達成に向けた
犯罪防止、
刑事司法及び法の支配の推進に関し、世界じゅうの
司法関係者等による議論が行われます。この
コングレスを
司法外交の晴れ舞台とし、参加してくださる方々に、我が国のたゆまぬ努力の結実としての国家の成熟や法の支配の浸透を体感していただくとともに、安全、安心な社会の実現や
再犯防止、そしてそれらを支える法遵守の文化についての
国民的関心を高める機会としたいと考えております。今後、
関係省庁、
関係機関と連携し、十分な準備を進めてまいります。
最後に、司法、
法務行政を支える人材、施設等を含む
環境整備のため、次の
取り組みを行いたいと考えています。
法曹養成制度については、質、量ともに豊かな法曹が輩出されるよう、
法曹養成制度改革推進会議決定「
法曹養成制度改革の更なる推進について」に掲げられた各
取り組みについて、
文部科学省と連携をし、他の
関係機関、団体の協力も得ながら、引き続き進めてまいります。
今国会においては、一般の
政府職員の給与改定に伴い、裁判官の
報酬月額及び検察官の
俸給月額を改定するための裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案を提出いたしましたので、十分に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
再犯防止の
取り組みの基盤となる刑務所などの施設については、現行の耐震基準が定められた昭和五十六年以前に建設された施設が約半数に上るという現状を踏まえ、老朽化の問題を解消するための整備を推進してまいります。
女性が輝く社会を実現するため、これまで女性が活躍しやすい環境の整備に
取り組み、本年十月からは、各府省庁間の申し合わせも踏まえ、
法務省職員による旧姓使用を拡大する運用を開始したところです。
引き続き、法務省・
公安審査委員会・
公安調査庁特定事業主行動計画、
通称アット・ホウムプランに基づき、より一層働き方改革を進め、女性の活躍とワーク・ライフ・バランスの推進に努めてまいります。
委員長を初め委員の皆様方には、日ごろから
法務行政の運営に格別の御尽力を賜っております。
今後も、さまざまな課題に対し全力で取り組んでまいりますので、より一層の御理解と御協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。(拍手)