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参考人(
若林秀樹君) 今日は、このような機会をいただきまして、本当にありがとうございます。
実は、私は、
特別委員会の
委員になったこともありまして、実際にそちら側から質問をしたことがあるということで、今日は十年ぶりにこの
委員会室に足を踏み入れて、逆に景色はまるっきり違うので、ちょっと緊張しておるところでございます。
今は
認定NPO法人国際協力NGOセンターの
事務局長ということで、
JANICと呼ばれているんですけれど、
国際協力をやっている
NGOを
支援する
NGOなんですね。ですから、
中間支援組織ということになります。また、
グローバル・
コンパクト・
ネットワーク・
ジャパン、この後に陳述されます
上野参考人、
次長をされているんですが、その理事もしているということでございますので、今日は、お題は
政府と
NGOとの
連携の
現状、
課題、今後の
方向性について話をさせていただければなというふうに思っています。
今日の私の
メッセージは、
SDGs達成に向けて
ODAを組み替えて、そして
NGOを
戦略的パートナーとして
支援し、活用していただきたいというのが私の
メッセージです。繰り返しますが、
NGOを
戦略的パートナーとして
支援し、活用していただきたいということであります。
元々、
国際開発における
NGOの
役割というのは、やはり普遍的な
人道主義あるいは
人権を守るという、
市民社会としての独立したあるいは中立的な立場での
活動であります。それがゆえに、
政府との
役割としての
補完機能を持っておりますし、
代替サービスを提供できるのが
NGOではないかというふうに思っております。
ODAが
政府対
政府の
援助に対して、我々はニーズに合わせたあるいはコミュニティーに合わせた、
人々のやはり豊かさ、幸せのために
サービスを行うのが
NGOではないかなというふうに思いますし、ある
意味では、
政治状況に左右されず、
首尾一貫して中長期の視点で平和と
人権を強化し、
社会を豊かにするという
役割を持っているんではないかなと思います。
ここで言う
政治状況に左右されずというのは、例えば
トランプ大統領が就任したことにより、いきなり
ODA予算三割
カットとか、
緊急援助については六割
カットとか、あるいは
援助のやり方について、やはり伝統的にアボーションの問題とか、人口、エイズの問題がありますので、いきなりそこには
支援しないとか、これをしますと恐らく国際的な
社会的な
信用性を失われかねない。
しかし、
NGOは
首尾一貫として
人道主義に立って
援助をするという
意味における、国としての
安定性を私はもたらすのではないかなというふうに思いますので、そういう
意味では、
一定程度日本の
ODAの中に
NGOを組み入れるということが非常に私は政治的にも重要じゃないかなというふうに思っておりますし、
NGOが入ることによって、そこにやはり
市民の
ODAに対する
サポートが生まれるんではないかなというふうに思っております。
私の説明、ちょっと後になりましたけれど、この
レジュメに沿って
お話をさせていただきますので、
資料を開けていただきますとそこに
レジュメがありますので、それだけ取り出して、あとは
資料に沿って見ていただければなというふうに思います。
その中で、
NGOの厳しい
現状について
お話をしたいと思います。
実は、
政府による
NGOへの
活動規制や
弾圧、あるいは
強制失踪と拘禁、あるいは
NGOが海外から受け取る資金に対する
規制がどんどんどんどん強まっているところであります。
お
手元の
資料の一番目に、G20のハンブルク・
サミット議題における
市民社会の取扱いに関する要請を付けておるところでございます。やはり、
市民社会が
政府による
人権侵害あるいは
汚職等を明らかにするという
役割もあると思います。そういう
意味では、
政府を脅かす存在として見られている国も多いんですね、実は。それがゆえに
弾圧がある、
市民社会スペースを狭めているというところがあります。
しかし、自由な
市民社会というのは平和で公正な
社会であるというのが前提でありますし、それがなければ、公平で公正な持続可能な
社会の実現はやはり不可能ではないかなというふうに思っております。
これは
世界的なことですけど、実は
日本でも、例えば報道の
自由度ランキングがどんどんどんどん下がってきている、今は、ある
調査によれば七十二まで下がって
先進国では最低という
状況になっておりますので、必ずしも
世界だけのことではないということは言えるのではないかなというふうに思っております。その
意味で、
SDGsにおける
ターゲットの、
目標の十六ですね、平和と公正を全ての
人々にという、基本的な自由、司法へのアクセスということも我々
JANICとしても取り組んでいるところであります。
そして、厳しい
NGO財政、三番目ですが、国際的にも低い
日本の
NGOによる
援助水準というのが
資料の三と四にございます。
資料の三の方に、
ODAによる
NGO支援の推移が書いてあります。二〇一六年度で百二十億円ということですので、これが多いか少ないかという
議論はいろいろあるかと思いますが、
世界的には極めて低い
水準であります。
もう一枚開けると、そこに
NGO補助金の
割合がパーセンテージで書いてありまして、
日本は一%ということなんですが、二〇一七年度の
ODA予算が
円借款を含めると二兆円、その中の百二十億ということは、もう〇・五%
程度なんですね、非常に低いんです、これは。
例えば、
アメリカ、
アメリカに、
日本大使館にいたということもありますが、
アメリカでは、彼らのデータを見ますと、二〇一三年度の数字ですが、約三千億、三千億が
NGOを通して流れているんです。これは、戦略的な
パートナーとして
NGOを使ってきめ細かな
援助をする、そのことが
ODAに対する
サポートであるということを位置付けて、八〇年代からずっと戦略的な投資をしていたということも経緯としてもありますが、やはりまだまだ、昔から比べれば確かに上がってはきているんですけれど、まだまだ低い
レベルにとどまっているんではないかなというふうに思います。
そしてまた、四番目が、
渡航制限による、
世界から取り残される
日本NGOの
緊急人道支援ということで、
資料五を見ていただきたいんですが、
レベル4という
退避勧告が出ている国に対しては原則渡航できません、
NGOであっても。
例えば、
南スーダン、アフガニスタン、
緊急人道援助が必要なのはこういう国なんですよね。しかし、
NGOは
一般市民と同じような扱いで渡航できないということに対して、私は、やっぱり
世界から取り残される
可能性があるんじゃないかと、既にそういう
状況が起きていると言っても過言ではないというふうに思います。
NGOというと、何かボランティアというイメージがありますけれど、基本的には
援助のやっぱりプロなんですね。やっぱり
専門集団なんで、しっかり
セキュリティーを対応している、そういう基準を持ったり訓練をしている、そういう
NGOに対してはどんどんやはり渡航して、
自己責任において渡航してもらうということも必要だというふうに思います。
なぜそれが起きているかというのは、分かるんです。何かあった場合に、
日本人に何かがあった場合に
政府批判になるんです、何で許したんですかという。
日本は非常にその
セキュリティーに対する、何というんですかね、やはり
安心感の下で
日本はありますが、何か起きたときに何で許したんだということに対する
批判を恐れてなるべく慎重にしているというのは分かるんですけど、しかし一方では、この
現状を見れば、本来この
専門家集団が
セキュリティーの問題に対応しているにもかかわらずなかなか行けないということによって、
世界から見た
日本が取り残されているという
状況もありますので、是非それに対する配慮もお願いしたいなというふうに思っています。
それから三番目に、
NGOと
政府との
対話の促進でございます。
これは一から五まで、それぞれある
協議会をそこに示しております。これは結構、
協議会としてはいろんな
レベルでの
政府との
対話が行われておりますし、昨日も
外務省との
定期協議会で全体
会議が行われました。ここでは、
対話の枠組みもありますので、より実のある
対話にしていただきたいということですが、まだまだ実質的な
対話という
意味では不十分ではないかなというふうに思います。
会議のための
会議ではなくて、日頃からの
信頼関係に基づく実のあるやっぱり
議論をできる限り今後とも進めていきたいなというふうに思っておるところでございます。
そして、四番目が、
SDGs時代における
NGOとの
協働と
課題であります。
実は、
NGOと
ODAに関する
連携中期計画というのを
外務省との間で確認しておるところであります。そこには明らかに
市民社会との
連携が記載されております。五年
計画の三年目ということで、残念ながら
計画どおりには進んでいない
状況も散見されるんではないかなというふうに思いますので、是非、
援助効果の向上のためにも、
当該国の公正で安定的な発展にとっても非常にこの
市民社会との
連携は重要でありますし、更に充実させていく必要があるんじゃないかなというふうに思いますし、
NGOの例えば
活動環境整備支援事業なんですが、これは
能力強化のために
支援をしていただいているんですけれど、その
予算もどんどんどんどん今減ってきているという
状況ではないかなというふうに思いますので、是非この
連携中期計画に沿った
内容について進めていただきたいなというふうに思います。それがお
手元の
資料の六の中に、大体
個別項目がそこに書いてあるところでございます。
それから、五番目が、二〇一七年度の
開発協力の
重点方針と
予算の
課題について
お話をしたいと思います。
本体のこの
資料のグリーンの表紙が付いたところの十一ページ目に、
平成二十九年度
開発協力の
重点方針がそこに書かれております。若干やっぱり懸念するところは、
国益に資する
開発協力というのを前面にここには打ち出されております。何をもって
国益かということもこれは
議論の対象になるかなというふうに思います。
ODAの第一の目的というのは、やはり
途上国の
人々のためであり、
貧困、格差解消、公正な
社会の実現であります。当然、
日本外交にとって
ODAというのは外交のツールである、そのことは否定しません。しかし、
国益を前面に出してやることによって、被
援助国も、あっ、
国益のためにやっているんだ、
日本はと、じゃ、もらって当然だというような関係にはなりはしないかと。
中身を見ますと、やはり昔とは違って、九〇年代に関わっていた人間としては、もう全面的に企業、中小企業の海外進出とか、インフラ
支援で
円借款をここ数年増やしているというところもありますし、そこにタイドという、言葉は良くないんですけど、ひも付き
援助的なものも
割合として増えているんですね。九〇年代は、有償資金協力のタイドの借款はほとんどゼロでした。しかし、今は全面的にやはり
政府としてもそういうところを、企業を
サポートしたいというのも分かりますけれど、本来、
日本が競争力ある
支援であれば、タイドにしなくても当然
日本も落札の中で勝てるわけですよね。しかし、最初からタイドを前提に
円借款が行われているというのはここ数年の非常に大きな
特徴ではないかなというふうに思いますので、申し上げたいことは、狭義の
日本の
国益増進への傾斜が、国際公益の観点からは若干後退することがちょっと懸念材料ではないかなというふうに思います。
いずれにせよ、その
重点方針である人道
支援、難民
支援、人間の安全保障等については、これは
NGOが得意とするところでございますので、是非御活用いただければなというふうに思っております。そしてまた、
ODAの非軍事主義の徹底というものでも、
NGO側としては是非これを貫徹していただきたいなというところにございます。
そして、六番目、今後に向けた提言ということで、三つだけ皆さんに御
支援をお願いしたいなというふうに思っております。
ODAは外交のツールではあります。その中で、伝統的に
日本はインフラ
支援、
円借款がやっぱり多かったのはこれ事実なんですよね。しかし、どうでしょうか、今。確かにアジア諸国においてもインフラのニーズはあるんですが、アジア
開発銀行があります。もう一方では、AIIBというインフラ
支援の銀行ができ、これから本格的な稼働をします。そうすると、必ずしも
円借款のニーズというのはそれほど高くないんではないか。そうであれば、もう少し
社会開発に向けた
支援に少しやはりシフトしていくべきではないか。それに伴って、
社会開発支援を行っている対
NGO支援に少しその
支援を増額も含めてお願いしたいと思いますし、資金提供に関するルールについてももう少し柔軟にしていただくと
援助効果も上がるんではないかなというふうに思っております。
それから、二番目に、
ODAの本体事業の無償資金協力枠への
NGOの参入促進と
政府、
NGOの人材交流の実現であります。
これ、何のことか分からないですが、今の資金協力のスキームというのは、助成なんですね、
NGOがプロポーズするのに対してはお金を付けると。そうじゃなくて、
ODA本体の業務に対して一緒に
NGOも加わって
ODAを供与するという、そういう枠組みまでまだ進んでいないんです。ですから、ここをワンステップアップして、本体事業にもどんどんどんどん組み入れていただきたいというのが、我々の要望でもございますし、
政府と
NGOの人材交流の実現というのも是非していただきたいなと思います。
実は、私は、九〇年代に
日本大使館のワシントンで
ODAの担当官をしていました。身分も全部
外務省職員で、三年間やっておりました。そうすると、
外務省の立場って非常によく分かるんですね。ああ、こういうところだから、それなりに
理由があってやっているんだと。そのときは私は
NGOに非難をされる場でありましたけど、やっぱりこういう人事交流というのが本来行われるといいと思うんですよね。
日本はその人材の流動性が少ないものですから、なかなかこういう機会というのはないんです。そうであれば、一時的に人材交流ということで、半年とか一年、
政府の役人の方が
NGOへ来るとか、
NGOが
外務省へ行くとか、そういうことの人材交流というのを、是非短期的に進むと、お互いに着地点がその段階でどんどん見えてくるんではないかなと思います。
それぞれに論理あるんです。しかし、たどり着くところは
一つなので、そこに対して、やっぱり相手の立場で考えるという
意味での人材交流は是非進めていただきたいと思いますし、私もそれが経験があったもので、いろんな
意味で話が私は進むんじゃないかなというふうに思っているところでございます。
そして最後に、持続可能な
開発に向け、
政府の重要な
パートナーとしての
NGOとの
協働を促進させる、
国際協力基本法の制定と独立した
開発援助庁の設置ということで、今もJICAがあるじゃないかというふうに思われますが、実は、実施の部分については一元化されていないんですね。ここは、
外務省が無償資金協力の一部を担っていて、一方ではJICAはそれ以外というところとか技術協力とかをやっているんですが、ややそこに対して少し私はいびつな感じもしないわけでもないですし、もっと
援助効果を高めるためには、将来的ですよ、将来的には一元化することが必要なんじゃないかなと思います。
例えば
アメリカ、皆さん、先生方よく御存じだと思うんですが、国務省が無償資金協力をやるというイメージあるでしょうか。多分ないですよね。やっぱり、
援助政策とか外交方針をつくるのが
外務省であって、
援助は一元化するというのは基本的に自然の流れだと思います。そのために独立した
援助庁をつくるということも、将来的にはこれは
外務省との関係を整理した上で私は必要なことではないかというふうに、これまでも
議論をしていますけれど、一応プロポーズさせていただきたいというふうに思います。