○
坂村政府委員 農業共済についての御
質問でございますが、先般の当
委員会におきましても、これに関します御
質問がございまして、荒筋につきましては申し上げたわけでございますが、ただいま御指摘のように、農業共済の会計検査の結果といいますものは、非常に不正、不当といいますか、多いわけでございます。この点は非常に遺憾でございまして、年々いろいろの指導をやって参りますけれ
ども、これが数年前まではだんだん減って参りました。しかし、またこの一、二年ふえておるというような
状況でございまして、これは小川
委員御指摘のように、この制度について根本的にやはり
農民に不満があるわけでございます。その不満あるいは不平というようなものは、いろいろこれはそういう欠陥があろうかと思いますが、第一に、私
ども考えてみますと、制度自体が非常にむずかしいということがあるわけでございます。この点は、そういう意味からいたしまして、私
ども、ずっとこの制度の不評判、あるいは運営がうまくいかない点等を
検討いたして参ったのでございますが、結局根本的には、この制度が中途の段階で切れちゃっているんじゃないか、非常に端的に申し上げますと、
農民にほんとうに浸透していない、こういう感じがするわけであります。そこで
農民が、自分の制度としてこの制度の中にほんとうに入り込んでいない、こういう面があろうかと思うのです。その点は、第一に、この制度は、御承知のように、末端に町村段階の共済組合がございまして、それが県段階に連合会を作っておりまして、それで町村の共済組合の事業をやっておりまして、その共済
責任を県の連合会に保険をしておるわけでありまして、その連合会は、国の再保険特別会計に再保険をしておる、こういう仕組みになっておるわけでございますが、大体末端の共済組合では、
責任の一割しか持っていないというような
状況でございます。従いまして、
農民が掛金をかけましても、一割だけが自分の末端の組合に保有されて、
あとはみんな上の方に上げられてしまう、こういう格好になるのでございます。そこで災害が起こりました場合も、一割分については共済組合がその支払いの
責任に応じますけれ
ども、これも非常に災害が大きい場合には、減額して削減してしまうというようなことができることになっていますので、大体末端の共済組合が無
責任状態にあるということが言えるんじゃないかと思うのです。そこで現在のようにだんだん災害が片寄って参りまして、それから少なくなって参りますと、
農民は毎年金をかけておっても、この金の大部分はどこへ行ってしまうかわからぬという不満が、そこに出てくるわけでございます。そういうようなことで、いろいろこの問題はございますけれ
ども、突き詰めていいますと、その制度が
農民と遊離をしておるということと、末端の事業をやっておる組合が無
責任態勢にある、非常に率直にいいますと、そういう感じがするのでありまして、この問題を根本に解決しなければ、幾ら制度の枝葉末節なところを直しても、これは
農民がほんとうに喜んで利用する制度にならないのじゃないかというような感じがするわけでございます。
しかも、一面においては、この災害補償制度というものは、日本の農政の上からいえば、どうしてもこれは育てておかなければいかぬ問題でございますので、そこで現在国会に提案をいたしまして御審議をいただいております案では、いろいろな改正点はございますが、根本は、この制度を
農民にくっつける、
農民の末端に今まで遊離している面を
農民に密着をさせるということ、それから末端の共済組合に事業の
責任を負わせる、こういうところに重点を置いたわけでございます。通常災害の
責任は、全部末端の共済組合が負う、こういう原則で制度の改正を行なったわけでございます。それに基づきまして、たとえば基準反収をきめる場合におきましても、あるいは損害評価をする場合におきましても、そのほかいろいろな組合の運営、それから事業の運営におきましても、末端の組合の自主性というものが相当強くなって出て参るのでございます。そういうようなことで運用するよりほか、今までの現われましたようないろいろな欠陥を直すわけにいかぬじゃないかというふうに
考えておるわけでございます。それが今度の制度改正の中心のねらいになっておりますわけでございます。
それからもう一点の、農協と農業共済団体とが、建物共済についていろいろの相剋摩擦のありますことは、これはもう仰せの
通りで、非常に見苦しい争いをやっておるのでございまして、私
どもも農政の上からいって、決して好ましい姿ではないというふうに
考えておるのでございますが、数年前に、
昭和三十二年か三十一年でございまするが、この問題を何とかすっきりさせようということで、いろいろ国会におきましても御議論等もございまして、ずいぶん
農林省も努力したのでありますが、とうとうこれもまとまりませんで、結局そのときの扱いといたしましては、現在までの扱いで、県知事が地方の実情によって裁定をする、その裁定によって
農林省は認可をしていく、こういうことで現在まで扱ってきておるわけでございます。それで大ざっぱに申し上げますると、全国的に見まして、大体短期の共済、いわゆる一年期限の普通の火災保険と同じようなかけ捨ての短期の共済は、これはどちらかといいますれば、大部分が共済団体がやっている。それから長期の積立式のもので、満期を持っておりまして、積み立てておりまして、十五年なり二十年なりの満期が参りましたら、満期金がとれる、その間に災害が起こった場合には、その災害のときの保険金を払う、そういう方式のものでございます。その長期のものは、どちらかといいますれば、大部分のものが農協系統でやっている、こういうことで大ざっぱに事業
調整ができておるわけでございますが、しかし、その末端では、その間にもいろいろな出入りがございます。従いまして、この点は、今度の農業災害補償制度の改正と同時に、
一つ何とか解決したい、こういうことで、農業災害補償制度
協議会等におきましても、いろいろ
検討して参りましたわけでございますが、御承知のように、そのもとが、何といいますか、団体問題になっておるようなわけでございまして、それに応じましていろいろ相当深刻な政治問題にもなっている
状況でございまして、これはなかなか簡単には
——一元化といいましても、あるいは事業
調整といいましても、むずかしい問題がございまして、この際は、農業災害補償制度の改正案を提案するにあたりましては、非常な両方の団体間の争いになって、この補償制度自体にもいろいろ影響を与えるようなことがあると、この補償制度のためにもよろしくない、こういうような意味をもちまして、農業災害補償制度とは切り離しまして、
農林省におきましても、できるだけ早くこの問題だけを取り上げて、
一つ具体的な
調整案を作りたい、こういうようなことで、預かったような形になりまして、今
検討を始めておる段階でございます。非常にむずかしい問題でございまして、時間がかかるのでございますが、そういうようなことで御了承願いたいと思うのであります。