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2021-04-21 第204回国会 衆議院 法務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    令和三年四月二十一日(水曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 義家 弘介君    理事 伊藤 忠彦君 理事 稲田 朋美君    理事 奥野 信亮君 理事 宮崎 政久君    理事 山田 賢司君 理事 稲富 修二君    理事 階   猛君 理事 大口 善徳君       安藤 高夫君    井出 庸生君       井野 俊郎君    大塚  拓君       神田  裕君    黄川田仁志君       小林 鷹之君    武井 俊輔君       出畑  実君    中曽根康隆君       野中  厚君    深澤 陽一君       藤原  崇君    村井 英樹君       盛山 正仁君    山下 貴司君       吉野 正芳君    池田 真紀君       寺田  学君    中谷 一馬君       松平 浩一君    屋良 朝博君       山花 郁夫君    吉田 宣弘君       藤野 保史君    串田 誠一君       高井 崇志君     …………………………………    法務大臣         上川 陽子君    法務大臣        田所 嘉徳君    法務大臣政務官      小野田紀美君    政府参考人    (出入国在留管理庁次長) 松本  裕君    政府参考人    (外務省大臣官房審議官) 長岡 寛介君    参考人    (慶應義塾大学名誉教授)    (弁護士)        安冨  潔君    参考人    (特定営利活動法人難民を助ける会会長)     柳瀬 房子君    参考人    (日本弁護士連合会人権擁護委員会委員長)    (弁護士)        市川 正司君    参考人    (弁護士)        児玉 晃一君    法務委員会専門員     藤井 宏治君     ――――――――――――― 委員の異動 四月二十一日  辞任         補欠選任   国光あやの君     安藤 高夫君   武井 俊輔君     村井 英樹君 同日  辞任         補欠選任   安藤 高夫君     国光あやの君   村井 英樹君     武井 俊輔君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本国籍を離脱した者等出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案内閣提出第三六号)      ――――◇―――――
  2. 義家弘介

    義家委員長 これより会議を開きます。  内閣提出出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本国籍を離脱した者等出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  本日は、本案審査のため、参考人として、慶應義塾大学名誉教授弁護士安冨潔君、特定営利活動法人難民を助ける会会長柳瀬房子君、日本弁護士連合会人権擁護委員会委員長弁護士市川正司君及び弁護士児玉晃一君、以上四名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人各位委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多忙の中、御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜れれば幸いでございます。よろしくお願いいたします。  次に、議事の順序について申し上げます。  まず、安冨参考人柳瀬参考人市川参考人児玉参考人の順に、それぞれ十五分程度意見をお述べいただき、その後、委員質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  なお、御発言の際はその都度委員長許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。  それでは、まず安冨参考人にお願いいたします。
  3. 安冨潔

    ○安冨参考人 安冨でございます。よろしくお願いいたします。  この度、参考人として意見を述べる機会を与えていただきましたこと、誠に光栄に存じます。  私は、刑事法を専攻しておりますが、現在、難民審査参与員を務めており、また、第七次出入国管理政策懇談会座長代理、同懇談会の下に設置されました収容送還に関する専門部会部会長を務めておりました。  今回の改正法案は、我が国への在留が認められる外国人かどうかを適切にかつ速やかに判別し、在留が認められない者の速やかな送還を図り、併せて収容長期化を解消し、退去強制手続を一層適切かつ実効的なものとすることを基本的な考え方としていると承知しております。  改正法案内容について意見を述べます前に、私が部会長を務めました収容送還に関する専門部会における議論の経過についてお話をさせていただきたいと思います。  送還忌避長期収容の問題を解決する方策を検討するため、令和元年十月、法務大臣私的懇談会である第七次出入国管理政策懇談会の下に収容送還に関する専門部会が設置されました。専門部会では、様々な分野から九人の有識者が委員となって幅広い観点から御議論をいただき、令和二年六月、提言報告書を取りまとめました。  専門部会では、基本的な考え方として、送還前提として、在留を認め又は庇護すべき者を適切に判別すべきであること、送還すべきとされた者の送還促進すべきであること、長期収容を解消するための方策を講ずるべきであること、被収容者処遇人権に配慮して適正に行うこと、この四点について委員の間で認識が共有されました。  本日は、時間の関係もございまして、専門部会における議論の全てを御紹介することはできませんが、その中で、送還すべきとされた者の送還促進長期収容を解消するための方策に係る議論の概要を御紹介させていただきます。  専門部会では、送還すべきとされた者の送還促進ということで、本邦から退去しない行為に対する罰則創設議論されました。現行退去強制手続では、退去強制を受ける者に直接退去を義務づける規定、あるいは退去に応じない場合に制裁を科す規定というものはございません。  そこで、専門部会では、正当な理由なく送還を拒む者に対し、一定の期日までの退去を義務づける命令を発し、命令違反に対する罰則を設けることが相当である旨の意見が述べられ、多くの意見がこれを支持いたしました。これに対しましては、委員から、退去が困難な事情は様々であり、命令罰則対象範囲を適切に定めることは困難であることなどの理由で、これに反対する意見も示されたところでございます。  そこで、専門部会といたしましては、このような反対意見があったことを明記した上で、多数の委員支持があった内容として、退去命令制度やその違反に対する罰則創設を検討することを提言した次第であります。その上で、退去しない者に一律に罰則が適用されるような制度は好ましくないということなどの指摘もあったことから、命令罰則対象者が適切に限定される制度とすることも併せて提言いたしました。  次に、専門部会では、送還の回避を目的とする難民認定申請に対処するための措置について議論がなされました。  現行入管法では、退去強制を受ける者が難民認定申請を行った場合、難民認定手続が終了するまでの間は、申請理由や回数を問わずに一律に送還を停止することとされています。送還を忌避する者の中には、送還を回避するための手段として難民認定申請を繰り返し行う者が相当存在しており、速やかな送還の大きな障害となっているとのことでした。  そこで、専門部会では、送還停止効一定例外を設けることを提言いたしました。なお、提言留意点として、送還が禁止される国への送還を行わないとするノン・ルフールマン原則を遵守することなどについても併せて提言をした次第であります。  さらに、専門部会では、収容長期化を防止するための措置として、収容令書退去強制令書発付後から送還時まで収容することが原則とされている現在の制度を改め、仮放免とは別に、新たな収容代替措置創設を検討することを提言いたしました。  この新たな収容代替措置では、例えば、第三者支援又は補助等により、適切に生活状況が把握され、当該外国人が違法な就労に及ぶことなく生活手段を確保することが可能となることを前提として、被退去強制者について、送還の実施を担保するために、逃亡防止出頭確保を図り、収容施設外で起居するものとすることを認める、こういう措置を想定しております。  以上のほか、専門部会におきましては、収容の在り方について、収容期間上限収容についての司法による審査を論点として議論もいたしました。この点に関しては、委員から、外国立法例などを踏まえ、収容期間上限を定めるとともに、収容の開始又は継続時に司法審査を経ることを提案する意見が示されました。  しかし、これに対しては、諸外国立法例が必ずしも一致を見ているわけではないということ、収容期間上限を定めると、逃亡のおそれが否定できない者であっても収容を解かれることになり、送還の実現が困難になるということ、そして、現行法上、行政訴訟制度を通じた司法審査機会が確保されているということ、これらのことなどを理由として、提案に従って制度を改めることは困難であるという意見が多数でした。  そこで、専門部会におきましては、収容期間上限を設け、あるいは司法審査を要するとすることを提案する意見委員から示されたということを明記しつつ、多数の委員支持があった内容として、一定期間を超えて収容を継続する場合にその要否を吟味する仕組みを設けることなど、行政手続の一層の適正確保を図るための方策を検討することを提言いたしました。  それでは、改正法案についての意見を述べさせていただきます。  改正法案は、出入国在留管理庁において、専門部会提言を受けて立案されたものと承知をしております。  改正法案では、退去強制を受ける者を送還先送還することが困難である場合に、その者の意見を聞いた上で、相当と認めるときは、その者に対し、本邦からの退去命令を発して退去を義務づけることを可能とし、この命令違反した場合の罰則を設けております。  この点、退去命令を発することができるのは、退去の意思がない自国民送還に協力しない国を送還先とする者、送還を妨害したことがあり、再び同様の行為に及ぶおそれがある者のいずれかにより送還が困難な場合と改正法案ではされており、命令対象者が限定されております。また、難民等認定申請により送還が停止される場合、それから退去強制処分効力に関する訴訟が係属し、かつ、当該訴訟退去強制処分執行停止決定がされた場合、これらの場合には命令効力が停止するとされております。  このように、退去命令は、専門部会におきまして、命令罰則対象者が適切に限定される制度とすることという提言を踏まえ、極めて厳格な制度となっていると考えます。  次に、改正法案では、送還停止効例外を設け、原則として、三回目以降の申請の場合は、難民等認定申請中であっても送還を可能とするとしております。この三回目以降の申請の場合に送還を可能としている趣旨は、より慎重を期して、申請中の者の法的地位の安定を図るということにあると考えられます。さらに、三回目以降の申請においても、二回目までの不認定処分後に難民等認定すべき新たな事情が生ずることがあり得ることに鑑み、難民等認定を行うべき相当理由がある資料を提出した場合には送還を停止することとしています。  この点、専門部会におけるノン・ルフールマン原則を遵守することという提言を踏まえて、送還を回避するための手段として申請を繰り返し行う者について、速やかに送還する必要性難民認定申請中の者の法的地位の安定を図る必要性、これを調和させようとするものであり、妥当なものであると考えます。  次に、改正法案では、収容の要件を満たす者について、逃亡のおそれの程度等を考慮して、相当な場合には、収容しないで監理人による監理に付す監理措置創設することとしております。  この点、現行法では、退去強制事由に該当し、又は該当すると疑うに足りる相当理由があると認められる外国人は、退去強制事由に該当するかどうかを判断する違反審査段階から最終的に送還されるまでの間、収容されることとされています。  これに対し、改正法案では、違反審査最初段階から監理措置に付すことができることとしており、その場合、収容令書発付されず、収容されないまま退去強制手続が進むことになります。そして、退去強制事由に該当し、在留特別許可難民等認定もされないとして退去強制令書発付された場合でも、直ちに監理措置に付すことができることとしており、その場合も、退去強制手続最初から一度も収容されないまま送還に至るということもあり得ることになります。  監理措置収容長期化を解消することを目的としていますが、その対象は、基本的には送還されるべき者であります。そのため、収容しないとしても、その者が逃亡するなどして円滑に退去強制手続を進めることができない、あるいは最終的に送還することができない、こういうことになれば、監理措置という制度に対する国民の信頼が失われ、公正な出入国管理という入管法目的を達成することができないということとなります。  改正法案では、監理人は、被監理者生活状況を把握し、被監理者に対する指導監督を行い、被監理者逃亡等した場合は入管当局に届け出なければならないとされています。これは、外国人収容長期化を解消しつつ、収容施設外における外国人の適切な在留管理を図るものとして必要な仕組みであると考えます。  送還忌避収容長期化という問題は、出入国在留管理行政の幅広い領域に関連しており、一つの施策だけで全てを解決できるというものではありません。また、これらの問題は、現場で勤務する職員に多大なる負担と苦労を強いているということは想像に難くありません。専門部会において、職員処遇について提言をいたしましたが、殊に適正な処遇のための環境整備について、今後、不断の見直しを行い、改正法案趣旨をこれからの運用に生かしていただきたいというふうに考えているところでございます。  本日は時間の関係がございまして触れませんでしたけれども改正法案には、在留特別許可申請手続創設等専門部会提言よりも踏み込んだとも思われる内容も含まれておりまして、全体的にバランスが取れた内容となっていると思います。  冒頭でも少し申し上げましたが、外国人の円滑な受入れと、在留が認められない外国人の厳格な送還とは、いわば車の両輪として相互補完的に機能することにより、我が国における外国人出入国在留管理行政はより適切なものとなると考えます。この点、今後、出入国在留管理庁において、更に周到な検討を進めていただくことを願う次第であります。  今回の改正は、入管法が制定されてから約七十年間、大きく変わっていないという退去強制手続をより一層適正なものとするためのものであります。これにより我が国出入国在留管理行政がよりよいものとなるよう、充実した御審議をお願いして、私の意見とさせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)
  4. 義家弘介

    義家委員長 ありがとうございました。  次に、柳瀬参考人にお願いいたします。
  5. 柳瀬房子

    柳瀬参考人 難民を助ける会の柳瀬でございます。柳瀬房子と申します。難民審査参与員も務めております。また、収容送還に関する専門部会委員でもございました。  本日は、法務委員会での参考人としてお招きいただき、貴重な機会を与えていただきまして、ありがとうございます。  初めに、私が会長の任にある難民を助ける会についてお話しいたします。  この会は、一九七九年に、難民支援目的としてつくられたもので、政治宗教、思想に偏らない、人道的見地に立った市民団体です。インドシナ難民の定住や教育の支援からスタートし、現在、四十一年目の活動になります。私自身も創設当時から関わり、責任ある立場で会の企画や運営に携わりました。また、紛争災害現場に赴いて方針を出すなどしてまいりました。  現在は、世界の紛争地災害における緊急支援を始め、対人地雷感染症水対策障害者自立支援などの活動を継続しております。例えば、シリア難民避難民が生活しているトルコにおいて、また、ロヒンギャ難民が避難しておりますバングラデシュや、ウガンダ、ケニアなどを始め、内外十五か国に拠点を置きまして、それは、個人個人の御寄附を始め、日本政府国連国際機関その他の内外助成機関から資金を年間約二十億円いただいて、その予算で運営をしております。  なお、難民条約、これは皆様御存じのように、一九五一年の難民地位に関する条約と六七年の難民地位に関する議定書のことですが、条約ができてから約三十年もの間、日本はこの条約に加盟していませんでした。七九年当時、会の創設当時ですが、私ども政府に対して、早急な加入をと働きかけておりました。  それでは、まず、日本難民手続についてお話しいたします。  例えば、ある外国人難民認定申請をした場合に、まず、入管難民調査官事情を調査し、そして認定するかどうかを判断します。ここまでを一次審、一回目の一次審と呼びます。  この一次審で難民認定をしないという判断が出た場合、申請者は不服の申立てをすることができます。この不服の申立て審査請求といいます。この審査請求に対して、難民認定に関する意見を提出するのが難民審査参与員の役割です。  つまり、専門的知識や豊かな経験を持つ第三者として意見を述べます。参与員は、元判事や検事、弁護士、また元外交官や、国連難民支援のNGOの役員、また地域研究者国際法行政法国際政治などを専門とする学者の先生、そしてジャーナリストなどから成り立っています。これは法務大臣が任命します。実際には、三人一組でこれまでの案件や記録を検討し、必要があれば証拠を求め、また、申請者本人意見を聞き、質問して、その意見を踏まえて審査請求に対する判断がされます。  審査請求から法務大臣判断までを不服審査と呼びます。  それでは、私が難民審査参与員として経験したことについてお話しいたします。  参与員制度が始まったのは二〇〇五年からですので、私は既に十七年間、参与員の任にあります。その間に担当した案件は二千件以上になります。二千人の人と一対一で、一対一じゃなくて三対一ですね、そういう形で対面でお話ししております。一次審の難民調査官による結論を覆したい、難民認定すべきと判断できたのは六件だけです。二千件に対して六件だけです。また、難民とは認められないものの、人道上の配慮が必要と考え、在留特別許可を出すべきと意見を出しましたのは十二件あります。  皆様、いかがでしょうか。二千人に対して、在留を認めたのは全体として十八人という数字を聞いて、とても少ないとお感じになったのではないでしょうか。  実は、私も、参与員になるまでは、入管はどのようにして難民認定を行っているのか、詳しく知りませんでした。入管最初インタビューを簡単に済ませてしまっているのではないかとか、難民認定すべき人を認定しなかった、わざとではないでしょうけれども認定しなかったのではないかとさえ思っていました。日本政府はやはり難民に冷たいのではないかと考えていました。  ですから、私は、申請者一人一人に丁寧に話を聞き、難民蓋然性、いわば難民らしさですが、というものを尋ねて、何とか難民蓋然性のある人を必ず見つけて救いたいという思い参与員の職務に当たってまいりました。しかし、難民認定すべきという意見書が出せたのは、先ほど申し上げた僅かな数にとどまっています。  まず、入管が行う一次の審査においてですが、調査官は、申請書を、それぞれに時間をかけて、しっかりと話を聞き、その膨大な内容を調査しています。数日にわたり話を聞いている案件も少なからずありますし、また、インタビューをするためには通訳の方が必要です。そのインタビューをした調書を通訳の方を介して申請人に読み聞かせ、内容に間違いないかを確認してもらって、サインをもらっています。時間と費用をかけた丁寧な審査という印象を持っております。  さて、私ども参与員による審査ですが、改めて、第三者として、申請者意見を聞き、徹底的に聞き直します。しかし、実際には、入管認定しなかった申請者の中から、新たに難民だと思える人はほとんど出会えないのが実態です。  その人たちは、おおむね以下の五つに分類できるかと思います。  まず一つ目参与員の前で、一次審に言った主張と全く違う主張を繰り返す方です。  調査官審査では、迫害を受けた時期や場所、その状況に、ある特定の時期や地名を明確に主張していましたが、参与員の前では全く違う時期や場所主張している、そんなケースがしばしば見られます。しかも、パスポートを確認しますと、もうその時期は日本に着いているという、時期的な矛盾も少なくありません。また、迫害主体母国や警察だと主張していたのに、参与員審査では、その主体は元の仲間だとか、地元の暴力団であるとか、選挙で勝った候補者の相手の側だとか、その主体も変わっています。  私は、入管調査官の前では、一次審では、緊張していて本当の話ができなかったかもしれないとか、何か言いたくない事情があったのかもしれないと考え、違う主張になった理由を聞いてみますが、結局は、参与員の前でも、難民と思われるような話はしてもらえませんでした。  次に、他の人と全く同じ主張をする申請者です。  通訳の方の都合で、同じ国の人を二人、審理を入れる場合があります。一人目の人が、例えば、同性愛者で、母国に戻ると迫害される、そういう話をします。私は、もしかしたら、それが迫害に当たるかもしれないと考えていましたところ、二人目の人も全く細部まで同じ主張をします。また、提出されている申請書がコピペではないかと思われるような、そういう文書が幾つも続くケースもあります。宗教上の迫害主張するケースでも、同様な例がよくあるのです。  こういう主張をすれば認定されるはずだという、ブローカーの誤解が申請者の間に出回っていることだと思わざるを得ません。  三つ目の、本人主張が真実なら、当然説明できることが説明できない申請者です。  例えば、迫害を受けた自分の国からよその国に逃げ込んだと主張する申請者に対して、たどり着くまでの時間ですとか、それから、通過した都市や地名、そういったことを覚えている範囲でいいのでと聞きます。明らかに何日もかかる距離を数時間で着きましたと答えたり、その大都市や町を通過しなければ絶対にたどり着けないという場所に対しても、全く地名一つも答えないなんという人はたくさんいます。  私は、ある意味で、何とか、こうやって答えてほしい、この地名さえ言ってくれればとか、そういう思いがあってそういうふうに質問するんですが、なかなかそれを答えてもらえません。  また、母国から逃げて難民キャンプにたどり着いたと主張している人がいましたが、その難民キャンプには私どもの事務所があり、申請者がいたと主張している時期にちょうど私も行ったことがある場所で、広大な敷地にあり、難民がひしめき合うような状況にもなかったにもかかわらず、狭い場所に多くの難民がごちゃごちゃいて地獄のようでしたと答えられたこともあります。  また、キリスト教改宗について、熱心に教会に通っていますというので、例えば、クリスマスはどういうときですかと聞きますと、サンタクロースの誕生日ですと答えられたり、本当に、イースターはと問いますと、ええっと、イースターとウエスターがありなどと返答されますと、本当に改宗を認めるべきか迷います。  そして四番目は、条約上の迫害とは全く異なる内容難民であると主張する申請者です。  よくある主張としては、借金取りに殺されるという主張や、不倫をして、不倫の相手の夫や妻、また親から殺される、だから自分は難民だという方ですとか、お隣の家との敷地の争い、相続に関する家族間の争いという主張は大変多く見られます。  また、単に日本で働きたいから難民申請した、この難民申請を提出することが就労の手続と聞いていた、ですから、私は難民ではありませんと主張するケースさえもしばしば見られます。  そして最後は、合理的な理由がなく難民認定申請を繰り返している申請者です。  その主張内容は、一次審で難民とは認定されず、また、私どもも、参与員認定しないと判断して、再度、何度も、何も事情が変わっていないのに、同様の主張で新たに申請を繰り返して、何年も日本に残り続けるケースでございます。  私自身、参与員が、入管として見落としている難民を探して認定したいと思っているのに、ほとんど見つけることができません。先ほどの、難民で六件、在留特別許可が十二件と申しましたが、この中に複数回申請申請者はおりませんでした。  また、複数回申請の場合に、最初の、一回目の申請には弁護士先生がついています。二回目、三回目になるともうついていらっしゃらないというケースが多いということも申し上げます。  私だけではなくて、ほかの参与員の方、約百名ぐらいおられますが、難民認定できたという申請者がほとんどいないのが現状です。  日本には航空機か船舶で来日するしかすべはありません。  また、観光、留学、技能実習などの正規のビザで入ってきた後に、本来の目的から外れた段階難民申請をするケースや、また、中には不法滞在や犯罪で退去強制手続に入ってから難民申請するケースも多く、その中から真の難民を見出すのには時間がかかってしまいます。  また、UNHCRは、世界各地の難民は女性や子供が多いという統計を出していますが、我が国難民申請する人の多くは青年、壮年の男性であるということも事実です。  したがって、難民認定率が低いというのは、分母である申請者の中に難民がほとんどいないということを、皆様、是非御理解ください。  私が参与員になったばかりの二〇〇〇年代後半の頃は、申請者は三百人ぐらいでした。しかし、申請者に対して一律の就労可能な在留資格を認める運用を始めた二〇一一年からは、申請者がぐっと増えました。  これまで述べましたように、申請者の中に難民がほとんど見出せないのですが、それでも入管調査官は一件一件時間をかけて丁寧に調査しています。そのために審査が大変時間がかかっています。待つ時間が長ければ長いほど、申請者は、もしかしたら認定されるのかもしれない、やはり二年ぐらい待たされます、申請して二年待っていたら、何も言ってこなければ、認定されるかもしれないと、やはり希望を抱くのは当然だと思います。  さて、今回の改正法案では、難民認定申請中の送還を停止するといういわゆる送還停止効例外を設け、まずは三回目以降の難民等申請者、また外国人テロリスト等、暴力主義的破壊活動者、そして三年以上の実刑を受けた者は、難民認定認定申請中であっても送還できることとしています。私は、この送還停止効例外を設けることは必要なことだと考えております。  以上、今回の改正法により、送還されるべき人が迅速に送還できるようになれば、審査期間の短縮にもつながり、真の難民の一刻も早い保護が可能になると思います。私は、今後も、丁寧な審理を続け、難民蓋然性が認められる方を絶対見逃さないという気持ちで参与員の職務を行ってまいりたいと思います。  ありがとうございました。(拍手)
  6. 義家弘介

    義家委員長 ありがとうございました。  次に、市川参考人にお願いいたします。
  7. 市川正司

    市川参考人 日本弁護士連合会人権擁護委員会委員長市川正司と申します。よろしくお願いいたします。  私も、過去に、難民審査参与員制度設立当初でございましたけれども、二年、実質的には、当初でしたので、実務が始まったのは半年後でしたので、一年半ほど仕事をさせていただきました。その中で、月に一件ぐらいずつの当時は審理をしておりましたけれども、最終的に、一年半で数名の難民認定をしました。それから、在留特別許可も与えました。  彼らの難民申請は、一次審で言っていなかったこと、あるいは言っていたんだけれども十分に語り尽くせないこと、こういったことがたくさんあります。彼らは、学歴であったり、それから実際の言葉の不十分さ、こういったことを考えますと、参与員がきちんと話を聞いてあげるという態度が極めて重要でございまして、例えば、本人にかかってきた大使館からの電話、その一本について、どういうことだったのか、これを丁寧に聞くことから難民該当性が明らかになってくる、あるいは、刑務所に行ったそのときの処遇状況を丁寧に聞くことから、拷問のおそれ、こういったものが出てくるという経験をさせていただきました。  なお、本論に入らせていただきますが、本日は、本法案に対する日弁連の意見を中心に意見を述べさせていただきます。日弁連の意見の詳細は、お配りした法務資料三百四十六ページ以下に記載されております。概要につきましては、本日お配りしたA4の一枚の表を配付させていただいておりますので、この項目の順番にお話しいたします。  第一に、法案の目的とされる長期収容の解消のために、いかなる方策が必要かという点でございます。  出入国管理政策懇談会収容送還に関する専門部会で提出された資料によれば、二〇一九年六月末時点で、収容期間が二年以上三年未満の被収容者は計百七十六名、三年以上の収容者は七十六名に上っております。いつまで収容されるかということが分からないままに、このような長期にわたって収容されるということの肉体的、精神的負担は想像するに余りありまして、収容長期化を防ぐための施策が必要であることは論をまちません。  日弁連は、収容長期化を防ぐためには、より端的に、収容の要件を明確にして不必要な収容をなくすこと、収容期間上限を設けることが必要であると考えております。また、収容必要性相当性を判断するについては、身体を拘束することは極めて大きな人権の制約でございますので、刑事手続における身体拘束と同様、裁判所による審査を経るべきものと考えております。  第二に、監理措置制度についてであります。  今回の改正案は、対象者収容しない方法として、基本的には、新たに創設される監理措置制度を想定しております。これまで様々な場面で使われてきた仮放免という制度については、健康上などの理由がある場合に限って適用することになっております。  このように、収容するかしないかの二つの分かれ道のところにある制度として監理制度を機能させるのであれば、収容の可否の判断は厳格に判断し、裁判所の審査を経るべきという収容制度全般の問題点がここでも同様に妥当することとなり、不必要、不相当収容が生じないような制度たてつけとするべきであると考えます。  そして、実務上の大きな問題として、監理人の監督、届出義務の問題がございます。  監理人となる者として想定されているのは、家族や友人、難民認定手続在留特別許可手続、それらに関係する裁判をする代理人の弁護士、また支援団体、こういったところと想定されております。  この監理人は、監理措置対象者からの相談に応じて、支援や助言その他の援助を行うよう努めると規定されておりまして、被監理者の相談に乗りながら彼らを支援することが予定されています。これらの支援は、これまで弁護士支援団体がケースワーカーとして行ってきたことではあります。  しかし、他方で、監理人は、対象者を監督して、その動静を定期的に国に届け出る義務を国に対して負うこととなっております。また、被監理者逃亡すると疑うに足りる相当理由があるときや、条件に違反して働いているときなどにも届出しなければなりません。この届出義務に違反すると、監理人に過料の罰則が科されます。  具体的な場面を想定いたしますと、例えば、着のみ着のままで本国から逃げてきた難民申請者避難民には、日本に知人はおりません。また、報酬を払って監理人になる人を依頼する力もありません。そこで、監理人になるのは、難民申請者支援団体や、難民認定申請弁護士会の財源などで支援する弁護士であります。  ところで、弁護士は、依頼者の秘密を守り、依頼者の利益のために働くことを弁護士倫理上求められております。実際に、難民申請在留特別許可申請支援している中で、有利なことも不利なことも全て話してください、ここで話したことの秘密は守りますから、そう言って、本国にいたときのこと、今の生活状況などを率直に話していただいております。そうでなければ、弁護士にもたらされる情報は偏ったものになり、判断を誤りかねません。  ところが、監理人である弁護士に今の生活状況を正直に全て話すと、自分の知らないうちに、監理人である弁護士によって入管に遵守事項違反の疑いありとして届出されてしまうかもしれないということになりますと、依頼者は弁護士に対して慎重に言葉を選んで話すようになります。守秘義務を一部解除することに同意していたとしても、実際に生活をしていく中で、対象者弁護士の利害が対立し、信頼関係の維持が難しくなっていくおそれがあります。  支援するNGOも、支援者の相談に乗り、適切なアドバイスをするという基本的な役割を担う中で、このような届出、監督をする義務を国に対して負うとなると、やはり対象者との信頼関係の維持が難しくなります。  ですから、この監督、届出の義務があるとすれば、監理人になることは難しいと言わざるを得ません。現に、先日NGOが支援者、弁護士に対して行ったアンケートでも、約九割の方が監理人になることをちゅうちょしています。監理措置は、必ず監理人を選定しなければならないので、監理人が見つからないために収容されることになれば、本来の制度目的は達せられず、窮状につけ込んで不当な報酬を取るような業者も現れかねません。  ですから、このような罰則を伴う届出義務に関する規定は修正し、支援を中心とした制度に変えていただきたいというのが現場の切実な考えでございます。  次に、退去強制令書発付される前の段階での監理措置について、就労を許可することができるとしたことは今回の法案の前進であると考えますが、この就労許可は、退去強制令書発付後には一切認められないということになっております。  退去強制令書発付後であっても、その取消し訴訟難民に関する訴訟などが行われて、裁判は数年かかることも珍しくありません。裁判の結果、処分が取り消されて在留が認められることもあります。その間、生活の手段がないということでは、裁判を受ける権利が事実上制約されることになりかねません。ですから、退去強制令書発付後も就労を認めることができる制度としていただきたいと考えます。  また、現行の仮放免の規定を変更せずに広く使えるものとして残しておくこと、現行の仮滞在や仮上陸許可制度を積極的に運用することも必要なことと考えます。  第三に、在留特別許可申請制度でございます。  法案は、退去強制手続とは別に在留特別許可申請手続を設けて、また、在留特別許可を行うに当たっての考慮要素を例示しています。問題は、この在留特別許可をするかの考慮要素、基準はどうかという内容面と、申請手続の適切さという手続面の問題になります。  内容面から見ますと、在留特別許可をするかどうかの諸事情として、在留を希望する理由、家族関係、素行、内外の諸情勢及び本邦における不法滞在者に与える影響その他の諸事情が挙げられております。これらを総合的に考慮すると規定しております。  諸事情は、並列的に書かれておりますけれども、法的に見ますと、優先されるべき要素があるというふうに考えます。具体的には、日本も批准している人権に関わる諸条約から、在留を認めなければならない要素です。特に、子どもの権利条約三条が規定する子供の最善の利益という規範、子どもの権利条約九条や自由権規約十七条などが規定している家族の統合という規範が重要であります。  日本で育った子供について、最善の生育環境としての日本での在留を認めること、その際に、子供は在留を認めるけれども親は帰国しろというような、家族の分離を強いないという取扱いは条約上も求められるものであります。  今回の条文に「家族関係」という言葉が入っておりまして、この中には、子供の最善の利益や家族の統合という規範が含まれているものと解釈し得るのかもしれませんが、規定上も明確にするべきというふうに考えます。また、種々の考慮要素の中で、この条約上の要素は考慮要素の中でも重みのあるものであるということを示すべきと考えます。  また、懲役一年を超える実刑判決を受けた者については、原則として在留特別許可をしないこととなっておりますが、これまでに許可されたケースや裁判で在留特別許可が認められた例の中にも、これに当たる者は珍しくはないので、原則許可とまではせず、消極的な要素の一つとして挙げるにとどめるべきと考えます。  申請手続面ですが、現行法上、在留特別許可を求める人は、退去強制手続の中の口頭審理という手続で、意見を述べたり、代理人弁護士を選任して手続に立ち会ってもらうなどして、在留特別許可を認めるべき事情を説明することが認められております。しかし、在留特別許可申請手続では、これらの機会が権利として認められておらず、現行法よりも手続的な保障が後退していると言わざるを得ません。弁護士としても看過できない点なので、明文上の手当てをしていただきたいと考えます。  第四に、補完的保護対象者認定手続です。  難民条約で定義されている難民以外にも、政府説明にもあるとおり、紛争地から避難してきた方など、保護が必要な方たちがおります。ヨーロッパ諸国やオーストラリア、カナダなどは、彼らを補完的保護の対象者として在留を認めて保護しております。  今回、補完的保護対象者の定義を定め、その認定をする制度創設することは、この国際的な流れに沿おうとするものと思います。しかし、この補完的保護の定義が、難民条約難民の、迫害理由の部分の定義を外すというだけで、後段の部分の、迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する者という、この定義はそのまま残しております。  しかし、現在の日本難民認定の実務では、この後段の要件について、出身国政府が特にその人について迫害対象としていることが明らかになるような個別的で具体的な客観的な事情があることを要するという極めて厳格な解釈をしておりますので、無差別の暴力や攻撃の対象となって避難した方たちについては救済されなくなるおそれがあります。  難民条約の文言にとらわれず、EU指令が規定するような、国際又は国内武力紛争状況における無差別暴力というようなキーワードを入れた定義を参照しながら、定義を改めるべきだろうと考えます。  第五に、三回以上の難民申請者などについて、申請中の送還停止効原則として解除するという改正内容についてです。  二〇一〇年から二〇一八年までに難民認定を受けた二百十二名のうちの十九名が、複数回の難民申請者でした。複数回の難民認定申請を行っている者の中にも、難民認定がされる者がいるのが現状であります。  出入国管理政策懇談会の下に設置された難民認定制度に関する専門部会の二〇一四年十二月の報告書は、UNHCRの解釈、勧告等の基準にものっとった判断基準を明確にすること、難民認定実務に携わる者の専門性の向上などを課題に挙げましたが、この課題の実現はまだ緒についたばかりでございます。このままで送還停止効例外を設けると、真の難民を本国に送還してしまうという極めて重大な結果を生じさせる危険があります。  また、法案では、三回目の申請であっても難民などに当たる相当理由がある資料を提出した者については、例外的に送還停止効を解除しないとしております。しかし、この例外に当たるという措置は行政処分としては定められていないので、本人は、退去強制令書の執行を受けて送還に着手されるまで、停止効解除の例外に当たったかどうかが分かりません。また、処分ではないので不服申立ての方法もありません。さらに、送還停止効の解除の適否について、UNHCRなども含めた第三者機関によってモニタリングする制度も設けられておりません。少なくともこれらに対する手当ては必要であろうというふうに考えております。  第六に、退去命令等の違反に対する刑事罰の制定については、退去命令を出す要件を一定程度限定してはいるものの、なお、相当と認めるときはなどの要件が不明確で、刑罰をもってしてまで強制する必要はないと考えております。  第七に、被収容者処遇に関する規定の整備について、これまで省令で定められてきたものを法律によって処遇の在り方を規律すること自体は意味のあることと考えます。しかし、国連被拘禁者処遇最低基準規則や国連の拷問禁止委員会からの日本政府に対する総括所見と比較したとき、不十分な点があります。詳細は日弁連の今回の意見書に記載しておりますので、参照していただきたいと存じます。  以上のとおりですが、今回の入管法改正のきっかけになったのは、二〇一九年六月に大村の入国管理センターで発生した被収容者の死亡事故でありまして、このような事故の再発は何としても防がなければならないということが出発点であったと認識しております。  日弁連としては、退去強制手続対象となる人の安全や自由が切り下げられるようなことがなく、国際的な基準に基づく検証にも耐えられるよう、今回の改正法案について抜本的な見直し、修正が行われるべきものと考えておりますので、参考としていただきますようお願いいたします。  御清聴ありがとうございました。(拍手)
  8. 義家弘介

    義家委員長 ありがとうございました。  次に、児玉参考人にお願いいたします。
  9. 児玉晃一

    児玉参考人 私が最初に出会った難民は、当時十二歳だったイラン人の少女でした。彼女は、私の前で入管収容されていきました。そして、日本政府からは難民として認定してもらえませんでした。二十五年ぐらい前の話です。その後、私は、入管収容問題、あるいは難民問題、在留特別許可の問題に携わってまいりました。その立場から、本日はこの法案について反対の意見を述べさせていただきます。  私は、これから主に三つのことをお話しします。一つ目はこの法案の問題点。二つ目は長期収容、その問題についての解決の方針、あるべき方策三つ目はこちらにいらっしゃる国会議員の先生方へのお願いです。  まず一つ目です。法案の問題点です。  既に問題点は幾つか指摘がありますが、監理措置についてお話をします。  監理措置は、収容に代わって、一定の場合に社会生活が送れる制度として、あたかもよくなるような説明もありました。ですが、判断主体は、これまでと変わらない主任審査官です。そして、要件も、逃亡のおそれなどその他の事情を考慮して、主任審査官が相当判断したときに初めて収容されない。今の入管収容とはっきり言って変わりはないんです。判断主体も変わらない。要件も正直、曖昧なままです。  この主任審査官がやることに関しては、実際の令書を執行する職員ではなくて上級の職員がやるのだから大丈夫だという説明がされることもありますが、それは、国連などからは、その組織でやるのはもう公正さを欠くから第三者の目を入れるべきだ、司法審査を入れるべきだと言われているのに、いや、うちの上司がやりますから大丈夫です、部長がやるから、専務がやるから、だから大丈夫です、そう言っているようなものです。弁明になっていないと思います。ちなみに、名古屋のスリランカの女性が亡くなりましたが、彼女の仮放免を不許可にしたのもこの主任審査官です。  行政訴訟があるから大丈夫だという御意見もありました。行政訴訟の平均審査期間、御承知でしょうか。司法統計によると十五・七か月、一年四か月かかります。仮に勝ったとしても、決して迅速な救済とは言えません。しかも、国選弁護人の制度、刑事のようなものもありません。弁護士は自分で探さなくてはいけません。法テラスが使えません。費用も自分で払わなくてはいけません。制度的な保障、手続の保障が何もないような状況です。  収容の執行停止という制度があります。これは、本案の裁判が長くかかるので、仮の救済としてできるものがあります。ですが、この十年間で、執行停止で収容が解かれたのは一件もありません。つまり、行政訴訟ができるというのは、単に機会があるという、それだけのことを言っているだけにすぎません。効果的でもない、迅速でもない。  この点について、私は入管職員の方に質問したことがあります。答えは、それは裁判所の判断ですから、そういうものでした。入管だけの話をしているんじゃないんです。国家の制度として収容を適正にできるかどうかを話し、そして、それに対しては行政訴訟があるからということを説明しているのに、いざ行政訴訟はどうなんですかと聞いたら、それは裁判所の判断ですというのは、これは無責任ではないんでしょうか。  監理措置については、監理措置が認められなければ無期限の長期収容が続くのは今と変わりありません。上限を設けてしまうと強制送還が機能しなくなる、そのような説明もありました。ですが、この黄色い資料集の三百九十ページに諸外国制度が表になって出ています。これによりますと、少なくともアメリカ、フランス、ドイツ、この三か国では収容上限があります。この三か国は、送還ができないんでしょうか。送還が機能不全になっているんでしょうか。  あるいは、国連は一九九八年から、この長期収容に対して懸念を示し続けています。こちらに書いてある資料を後で御覧ください。二十何年間も、国連は、日本送還が不能になるような勧告をし続けている、そういうことなんでしょうか。そんなわけはないと思います。このような、上限を設けても送還をきちんとできているところの実務を学び、上限を設けるのが、長期収容解消のための非常に端的な方法ではないかと考えます。  続いて、在留特別許可です。  この点は、先ほど、市川先生の方から話がありました。一年を超える懲役刑、実刑判決を受けた人については原則除外すべきではないという点です。  いろいろな背景を持って刑務所に行き、それから入管に行っている人がいらっしゃいます。例えば、日系人の子供として家族に、親に連れてこられて、だけれども日本語教育もきちんとされない、言葉が分からない、勉強が分からない、周囲にもなじめない、友達もいない、そういう子供たちが少年事件を起こし、長じては刑事事件、成年になってから刑事事件を起こして、刑務所を出てから入管に行っている人、私は何人も会ってきました。  もちろん、全員が全員、そういうわけではありません。本人の責任というのもあるんでしょうけれども、そこにはやはり日系人を受け入れるところの無策、その被害者という側面もあろうかと思います。彼らは、家族全員、日本に来ています。本国に帰されても、誰も家族もいない、友達もいない、言葉ももう分からなくなっている、読めない、書けない、そういう状況で、日本に残りたいと言っている人を、私は何人も見てきました。  この場合に考慮するのは、原則として排除するのではなく、様々な要素の一つとして考慮するにとどめるべきです。  この一番下に比例原則と書きました。また、海外の事例で、資料の九というのをおつけしました。こちらは、ヨーロッパ人権裁判所や、あるいは国連の規約人権委員会の見解で出された代表的な例を三つ挙げました。最初のベレハブ事件というのは、かなりの、百何十件前科があったりとか何十件事件を起こした、そういう人がモロッコに帰された事件ですが、それでも、ヨーロッパ人権裁判所は、家族のきずなの方が大事だという判断を下しています。  ここでやられるのは、強制送還によって得られる国の利益と、引き裂かれることによって失う家族のきずな、そのどちらが大事なのかというのを同じてんびんで量って、こういう事件であっても家族の方が大事なんだという判決を下しているんです。  少なくとも、この原則排除という規定は削除すべきだと思います。  続いて、難民の話です。  柳瀬先生の方から、濫用の事例の話がかなり紹介されていました。私も、濫用が全くないというふうに申し上げるつもりはございません。ですが、非常に不思議なのは、日本難民認定率は一%あるいはそれを切るぐらい、海外で、カナダとかですと五〇%を超えるような認定率があります。何で日本だけ九九%の人が、濫用者が来るんでしょうか。本当にそうなんでしょうか。  難民の話ですと、ちょっと大きな話、海外の事情も絡みますから、分かりにくいかもしれません。  最近、本当に毎年のように豪雨災害があります。それで、避難所に駆け込む方、難を逃れて避難を求める方、たくさんいらっしゃいます。例えば、こう考えてください。千人規模の避難所があります。ある村が運営しています。ここは、避難してきた人たちの半分以上、五百人を収容します、保護します。もう一方で、日本村が運営している避難所があります。千人入れます。ここには、たった四人しか入れません。残りはみんな濫用者だ、災害に遭っているなんかうそだ。そんな人がどうして日本村だけ九百九十人も来るんですか、ほかは半分入れるのに。  濫用者もいるかもしれません。こちらも全員を入れているわけじゃありません。ですけれども、二桁、三桁も違うというのは、それは申請者側の問題だけではなく、運営する側がおかしいのではないか、厳し過ぎるのではないか、そこに問題はないのか、そういうのを確認するのが普通なのではないでしょうか。  難民認定の問題も同じです。同じ条約の下で、同じ基準を使うべきで、そうであれば、これほどの、二桁も三桁も差がつくというのは考えにくい。日本だけ濫用者が集まるということについて、私は納得のいく説明を聞いたことがありません。やはり、見直すべきなのは、まずは制度の方、運用がきちんとできているのか、国際標準に従ってできているのか、そちらを先にすべきです。  資料の十に、ミャンマーの統計を出しました。二〇一六年から二〇二〇年までの間、日本でミャンマー出身の人で難民認定された人はたったの一人です。二〇一六年には、ミャンマーは、アウン・サン・スー・チーさん率いるNLDが政権を取りました。それまで、日本難民認定をされていた人の圧倒的多くはミャンマーの国籍の人でした。それが、NLDが政権を取ったことで、迫害を受ける恐怖が払拭されたと判断したようです。以後、難民認定は全くされていません。ほかの国はどうでしょうか。数十人、百人以上、認定は続いています。  この違いは、本国の政府状況に関する把握の仕方です。  国際難民法の通説的な考え方で、本国に変化があっても、それが本質的な変化に至っていなければ、迫害の恐怖は払拭されない、そういう理論があります。恐らく、ほかの国は、NLDが政権を取ったけれども、まだ軍事政権が途絶えたわけではない、そのようなことで、本質的な変化に至っていない、だから難民として認定している、そのような実務を取っているんだろうと思います。  日本政府が早々に迫害の危険がないというふうに方針を変えて、帰ってしまった人はどれぐらいいらっしゃるんでしょう。今どうなっているんでしょうか。日本政府がきちんとほかの国と同じような基準を使って、解釈を取って、難民認定を慎重にしていれば、もしかしたら失われないで済んだ命もあったかもしれない。  まずやるべきなのは、難民条約に入っている以上は、ほかの国と同じような基準を使い、難民の受入れに関して、加入している国として、当然の責任を分担する、まずはそれをすべきです。  先ほどの避難所の例でいいますと、入れないから何回もドアをたたくんです。一回目できちんとドアを開けてくれれば、複数回申請は激減すると思います。  次に、退去命令に関してです。  こちらについては、まず、特定送還に協力しない国の方を退去命令対象としていますが、これは、人種差別撤廃条約の、こちらに書いたところに反するおそれがあると思います。また、退去命令対象は確かに限定はされましたが、もう一つ、旅券取得命令というものが新たに法案に出ています。これは、送還停止効がある人だとか、あるいは、執行停止決定が出ている人、そういう人は関係ありません。退去強制令書が出ている人については、送還の準備のためにパスポートを取れと命令することができ、これに反した場合には、刑事罰、同じ刑事罰に科すことができる条文が入っています。  退去命令は絞られたかもしれませんが、この旅券の取得命令で、家族と一緒にいたい、迫害を逃れたい、それで送還に協力しない人が刑事罰に問われる可能性が出てきます。  さらに、国連の恣意的拘禁作業部会の文書では、そもそも、非正規滞在は犯罪とすべきではないというのがうたわれています。  今の日本入管法では、これらも既に刑事罰の対象になっていますが、今回の法案では更にそれに上塗りをする、加重するようなことが提案されているわけです。この無限のループ、退去命令が出たけれども帰れない、刑務所に行く、刑務所の刑期が明けたらまた入管に来る、入管でまた退去命令が出て、違反したら刑務所に行く。このループはいつやむのか、これについてどう説明するのか、私は今まで合理的な説明を聞いたことがありません。  では、どのような方策を取るべきかということをお話しします。  難民認定について適正にまずすべきということは、先ほどお話ししました。  もう一つは、在留特別許可の柔軟な運用をすべきだと考えます。詳しくは、この資料の二、共同提言を御覧いただければと思うんですが。  あるいは、資料の八番、今日お配りしたものの中に、A3になっている、カラーのこの表があると思います。  諸外国では、何十年も前から、非正規滞在者を、数千人から、多いところで何百万人、アメリカは二百七十万人というデータもあります、一斉に正規化し、在留資格を与えています。  これは、もちろん、その非正規滞在者の人権という観点もありますけれども、これによって、税金の担い手を増やす、社会保障の担い手を増やす、人手の不足している労働のところへの人材を確保する。確かに、もう既にオーバーステイという形で法に反しているかもしれないですけれども日本の社会に溶け込んで、言葉もできて、友達もおり、職場もあり、そういう人たちを有効に活用しようということがこれだけの国で実施されているんです。  まさにこれは政治家の皆さんの判断ではないかと思います。大所高所に立った懐の深い政策が求められ、それが長期収容送還忌避者の増大についても、解消のところにつながるのではないでしょうか。  最後に、先生方へのお願いを申し上げます。  こちらにいらっしゃる議員の先生方、一人でも多くの人を幸せにしたいという志をお持ちで、本当に日頃大変な職務に就かれているんだと思います。  人権外交に関する超党派議連というのができたと報道で聞きました。人権は普遍的な価値だから、国内の問題にとどまらず、外国にいる外国の市民を助けるために日本の国会議員の先生方が力を尽くそう、そういう趣旨と私は受け止めています。非常に崇高なことだと思います。であれば、日本にいる外国人人権にも是非、目を届けていただきたい。  私には夢があります。国籍在留資格とかに関係なく、全ての人が家族と一緒に暮らす、迫害の恐怖から逃れる、不当な身体拘束から解放される、あるいは、収容されていても適切な医療を受け、命を維持できる。いわば当たり前の世界が私の夢です。残念ながら、今回の法案はこの夢とは真逆の方向に向かっていると思います。  私は、この法案が通って笑顔になる外国人の姿が全く思い浮かびません。むしろ、既に苦痛に満ちている状況にあるのに、苦痛を更に加える、そういう内容になってしまっていると思います。  先生方へのお願いは、一人でも多くの人を幸せにしたい、笑顔にしたい、そのようなお気持ちをお持ちの皆さんだと思います。与党とか野党とかも関係なく、本当に多くの人を幸せにするためにはどういう法改正が必要なのか、妥当なのか、そこを改めて、立ち止まって考えていただければと思います。  以上から、私はこの法案に反対いたします。  ありがとうございました。(拍手)
  10. 義家弘介

    義家委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。     〔委員長退席、伊藤(忠)委員長代理着席〕     ―――――――――――――
  11. 伊藤忠彦

    ○伊藤(忠)委員長代理 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申出がありますので、順次これを許します。井野俊郎君。
  12. 井野俊郎

    ○井野委員 自由民主党の井野俊郎でございます。  今日は、お話、ありがとうございました。  まず一点、私は少し自己紹介かたがた、お話しさせていただきます。  私は、群馬二区というところの選挙区でございまして、伊勢崎市というところに住んでいます。地元の、二十一万の人口ですけれども、約一万人は外国人でございます。元々、ベトナム難民の方がいらっしゃって、たまたまそういう、受け入れた結果、どんどん増えていったという経緯。外国人技能実習生等ももちろんいらっしゃいますし。私の肌感覚だと、ある学校に至っては半分ぐらいが外国人の子供かなという実感を持ったりする地域であります。  もちろん、外国人の方が多いからといって、治安が悪いとか住みにくいとか、私は思っていません。当然、いろいろな工夫をされて、共生を図りながら、私の町は、市長が理解ある人で、運営しているのかなというふうに思っています。  ただ、他方で、やはり、もちろんトラブルというものがなくはないかというと、そうではないわけです。  例えば、ある外国人は、どうしてもヤードなんというものを建てて、空いている土地にどんと、いきなりこういう壁みたいなものを建てて、そこに、変な話、我々から見るとごみに見えるんですけれども、そういうものを運び込んで何かやっている、がちゃがちゃやっているなという例があり、そして、それが近所にとってみると騒音があったりごみが飛んできたりというトラブルがある。それを行政に言うと、いや、あそこは許可でも何でもない、勝手にやっていることだから、我々としては行政処分でも何にもできないんですよと言われて、そういうことを地元の区長さん、町会長さんからもお話をいただいたりということも、実際問題としてあるところであります。ちょっとそこら辺は、済みません、自己紹介かたがた、こんな状況もあるということでお話をさせていただきましたけれども。  まず一つ、安冨先生と児玉先生にお伺いしたいんですけれども柳瀬先生と市川先生は参与員という、難民認定審査の参与をされていましたけれども、お二人は難民認定審査に参与されたことはあるんでしょうか。経歴上はちょっと見当たらなかったので、一応確認だけ、お聞かせください。
  13. 安冨潔

    ○安冨参考人 お答えいたします。  最初に申し上げましたように、私、難民審査参与員も務めておりまして、正確にいつからであったかはちょっと定かではございませんが、現在務めております。
  14. 児玉晃一

    児玉参考人 児玉です。  私は、参与員になった経験はありませんが、参与員の方がやられる手続で、代理人として手続に関与したことは何度もございます。
  15. 井野俊郎

    ○井野委員 じゃ、まず御経験があるお三方にお伺いさせていただきます。  先ほど、難民認定審査難民認定率が低い、これは外国と基準が違うからじゃないかなんというお話がありましたけれども外国と基準が違うから難民認定審査ないし難民認定率が低いという御認識はお持ちでしょうか。
  16. 安冨潔

    ○安冨参考人 お答えいたします。  私の認識としては、外国との要件に関しての基準というものが著しく違うというふうには認識しておりません。
  17. 柳瀬房子

    柳瀬参考人 お答えいたします。  私もそのように感じております。
  18. 市川正司

    市川参考人 私は、数に、認定率にどういう影響があるかということは、なかなか軽々には言えないと思っておりますけれども、ただ、基準としてどうかと言われると、要件の解釈の問題と、それから立証のハードルの問題で、やはり厳しい部分はあるのではないかなというふうに私は考えております。
  19. 井野俊郎

    ○井野委員 是非、そこら辺、解釈とおっしゃいましたけれども、待ってください、質問させていただきますので。  そこら辺のどういう事情なのかというのをちょっとお聞かせいただき、私も、実は、法務大臣政務官という役職をやらせていただきまして、その当時、実は一件、難民認定申請は何件かあったんでしょうけれども、私自身どうしても納得いかなくてサインを拒否した難民認定法務省の役人から上がってきた段階では、この方を難民認定したいと思いますということで事務方から上がってきたんですけれども、説明を聞いても、この方がなぜ難民なのかというのが理解できない。というのも、客観的証拠がないんですよね、難民認定に当たっては。  はっきり言って、先ほど柳瀬先生がおっしゃったとおり、ほぼ何か供述の迫真性のみに依拠している。かつ、あと客観的に、外務省から問い合わせて、この国に対してはそういう政治的な事情があるというような状況があるというぐらいで、じゃ、実際問題として、確かにその国でそういう政治的な事情がある、若しくは迫害を受ける可能性もあるかもしれない、だけれども、じゃ、この人が実際にそういう政治活動をしていたとか、この人がそういう事情をお持ちなのかどうなのかというのは、はっきり言って客観的証拠はないんですよね。  そういう状況で、かつ、その供述にしか頼らざるを得ない中で、かつ、通訳も入れなきゃならない、そういう中で、どうしてこの人が難民認定対象になり得る人なのかどうなのか。私も弁護士をやっていたものですから、証拠がないものを認定しろというのは難しいと思うんですね。何でそれによって基準が違うのかどうなのかという、そこら辺をもうちょっと詳しく教えていただけませんか。
  20. 市川正司

    市川参考人 難民認定の難しさというのは、一つには、まさに先生おっしゃられたとおりでございまして、難民というのは、本国から逃げてくる、着のみ着のまま逃げてくるわけで、この証拠とあの証拠とその証拠を持って逃げてくるということは、基本的にはございません。ですから、どうしても客観証拠というのはなかなかなくて、あるのは、その国の、本国の情勢がどうなっているのか、これはある程度、文献とかそういったもので認定できます。ただ、その人の体験してきたことというのは、基本的にやはりその方の供述に頼らざるを得ないという証拠構造になっていまして、その供述の信憑性、ここがまさに難民認定の肝になると思います。  その供述の信憑性については、様々な文献、あるいはUNHCRの考え方、それから難民認定ハンドブックというのもございますけれども、そういったものの中で、例えば旅券を所持していないことをどういうふうに評価するかとか、いろいろな基準を設けております。  ですから、そういう客観的証拠のない中で、供述をどう評価してその信憑性を認定していくかということが大事だと思うんですけれども、この点についての訓練、こういったものがまさに認定官に必要なことだと思います。  そこはUNHCR等がいろいろなガイドラインを作ったりハンドブックを作って、また日本でもいろいろ研修させておりますので、そういったことの中で、供述の信憑性というものをいかに評価していくかということが極めて大事だと私は思っております。
  21. 井野俊郎

    ○井野委員 結局、信用するかどうかということに、結局は判断の要素としては依拠せざるを得ないのかなというふうに感じましたけれども、実際問題、私も本当に、信用してあげたいところもなくはないのかもしれないけれども、それこそ先ほど柳瀬先生がおっしゃいました、コピペのような話が出てきたり、客観的事実と実は違った話が出てきたりというと、そういうことになってくると、いや、信用してくださいということの方がやはりちょっと難しいのかなと思うんですね。  ちなみに、じゃ、市川先生、基準が違って、私、ちょっとこの資料を出しましたけれども、大体申請一万人のうち、定住難民だとか条約難民で四十四人とか二十人とかですけれども、どれくらい、基準が違うことによって救われる人がいるんですか。     〔伊藤(忠)委員長代理退席、委員長着席〕
  22. 市川正司

    市川参考人 これはなかなか、私もつまびらかに全記録を見ているわけでもないので、何人ということは申し上げられません。ただ、数十人とかという規模感ではないだろうな、桁は違ってくるのではないかなと思っております。  私が申し上げるとすれば、率直に、何%になれば基準が満たされるんだとかという、そういう話ではないだろうなというふうに思っています。
  23. 井野俊郎

    ○井野委員 まあ、そこは多分、私とは、安冨先生、柳瀬先生と市川先生の認識というか、私もちょっと、そこまでいくのかなという気はしています。法務大臣政務官という、確かに一年間、私も難民認定の、ちょっとだけかじったという程度ですけれども、本当にこの人たちが、救われるべき人がもっと多くいたか。むしろ僕は、逆にもっと少なかったんじゃないかとは思っています。  最終的に、先ほどの、ちょっと事のてんまつを申し上げますと、事務方から上がってきて、私は拒否しましたけれども大臣許可したので、じゃ、大臣判断に私は従いますという形で最後は難民認定されましたけれども、そういうこともありました。  ちょっとこの裏面を見ていただければ、ああ、裏面じゃない、ごめんなさい、ちょっと今日は資料として出していませんでしたね。送還忌避者が約二千四百四十人、これは法務省から聞いた回答なんですけれどもね。仮放免逃走中、手配中の者が約四百二十人。要は、仮放免が、逃走した、ある意味保釈みたいなものですよね、保釈中に逃走して、それが取り消されている人が四百二十人いる。  これはちょっと柳瀬先生にお伺いしたいんですけれども、ある意味、我が国に滞在する許可がない人、法律的な根拠がない方が逃走しちゃっている。これって、犯罪を犯すおそれ等、そういう治安の悪化等の御懸念ってございませんか。どうですか、柳瀬先生。
  24. 柳瀬房子

    柳瀬参考人 お答えいたします。  確かにその心配はあるとは思いますけれども、やはり、入管収容所において、その方を仮放免しても大丈夫だろうと、あるいは、その方の、きちんと保証してくださる家族がいらしたり、あるいは、代理人の、弁護士さんの方がついていてくださったりするケースですので、それを信頼して仮放免をしているというふうに私は考えております。
  25. 井野俊郎

    ○井野委員 私は正直不安なんです、やはり。だって、逃走しちゃっているということは。  じゃ、カルロス・ゴーンが、日本の刑事司法制度は信用できない、だから逃走していいんだということを言ったら、我々の刑事司法制度、どういう意味なんだと。はっきり言って、我が国入管制度、逃走していいんだということになってしまったら、我が国入管制度外国人管理制度、治安の観点からして問題だと私は思いますよ。逃走しても、一応仮釈放を出したからいいんだというのは、私の感覚からすると、ちょっとどうなのかなという感覚ではございます。  それはそれとして、だから、法務省は、今回、監理人制度というものを設けて、その逃走、今、これは年々増えているんですよね。仮放免中の忌避者は、今、年々増えています、はっきり言って。だから、これに対して何とかしなきゃならないということで監理人制度というものができているんだなというふうに私は認識をしております。  もう一個、最後に、これも、私も愕然とというか、法務大臣政務官のときに思っていたのは、この裏面の、送還費用額の推移というのがあるんですよね。これは送還忌避者が、外国人が帰ってくれない、かといって日本で勾留するわけにもいかないし、長期収容するわけにもいかない。挙げ句の果てに何しているかというと、チャーター機を借り上げている。簡単に言うと、わざわざ、その外国人が帰ってもらうために我々の税金でチャーター機を用意して、その外国の方に帰っていただいているという、大変、誠に親切なやり方で、チャーター機を用意してあげて御帰国いただいているということも、実際、それが約四千万で、上のその他の経費を含めると年間約二億、毎年かかっているということがあるんですね。果たして、これも本当に国民の理解が得られるのかなという気はしておりますけれども、これについて、安冨先生、最後に、こういった経費、多少、この法改正によって減っていくことが期待できますか。
  26. 安冨潔

    ○安冨参考人 お答えいたします。  委員御指摘のように、チャーター機送還等々で多額の費用がかかっているというのは承知しておるところでございますが、送還そのものは、御本人在留することができないということで本国にお帰りいただくということが本来あるべきところではあろうかと認識しております。  しかしながら、帰ることが嫌だ、つまり送還を忌避されるということになりますと、在留できない外国人の人を国費を使って送還をするということにならざるを得ない。そのための手段として、今、チャーター送還にしろ、護送官つきの送還というのが行われているというのが現状でございます。  このような状況が長く続くということは、費用がまた高くかかるということは、決して健全なことではないというふうに認識するところでございます。
  27. 井野俊郎

    ○井野委員 ありがとうございました。
  28. 義家弘介

    義家委員長 次に、吉田宣弘君。
  29. 吉田宣弘

    ○吉田(宣)委員 おはようございます。公明党の吉田宣弘と申します。  今日は、四人の参考人皆様に本当に大変貴重な御意見を賜りましたことに、心から感謝を申し上げたいと思います。  私、先日の本会議におきまして、この入管法改正について代表質問をさせていただきました。その際に、最後の問いとして、私は上川法務大臣に、入管法改正に向けての決意という形で所見をお伺いいたしました。  その際の上川法務大臣の答弁でございますけれども法務省は、現在、誰一人取り残さない社会の実現という持続可能な開発目標の理念を踏まえて、入管法による外国人の受入れを推進するとともに、庇護すべき外国人は適切に保護しつつ、日本人と外国人がお互いに尊重し、ルールを守りながら共生する社会の実現を目指す取組を進めています、そして、今回の入管法改正により、在留を認めるべき外国人を社会の構成員として受け入れるとともに、ルールを守らず、最終的に在留が認められないと判断された外国人退去をさせるということを一層確実に実現することが可能となり、これによって、日本人と外国人が安心して暮らせる共生社会の実現につながっていくものだというような決意をお述べになられておられます。私も、率直に申し上げて全く同感でございます。  今回の法案というものは、入管行政においての課題というもの、送還忌避者が多くなっておるということ、それから収容長期化しているということ、これは日本国にとっても、その対象になっておられる外国の方にとっても非常によくないことだというふうに認識をしております。そのために、この課題については適切に解決に導いていかなければいけないことであろうと思っております。そのための様々な法的な整備が今回の入管法趣旨であって、その先の目指すべきところは、先ほどの上川法務大臣思い、決意、共生社会の実現ということであろうと私は思います。そういった意味におきましては、四人の参考人皆様も、実はそういったところについては思いは全く同じなんだろうと思います。  私も、実は最近経験したことなんですけれども、出身大学が九州大学という福岡の大学でございますけれども、私が学生の頃に外国の留学生の方というのはほとんどおられなかったですね。特定の研究室におられる方が少しおられるぐらいで、お会いすることはほとんどありませんでしたが、今、新しいキャンパス、ちょっと引っ越しをして伊都キャンパスというところに、私がいたときのキャンパスはなくなっちゃったんですが、そこに行くと、大抵、少し歩けば外国の留学生の方がおられて、にこにこしながら、挨拶とかをすると本当ににこにこして挨拶を返してくれて、とても豊かな気持ちになります。こういうふうな豊かな気持ちになる、やはり日本における外国の方との共生のための法案だというふうに私は思っているんですね。  ただ、皆様方の御意見を様々お聞きするに当たって、これから、柳瀬参考人にまずお聞きをしたいと思います。  先ほど、難民審査参与員としての御経験上、いろいろな難民の方に携わってこられた、難民支援もこれまで多く、長い間していただいたという御経験の下、対応された難民申請者の方に、一次審査の話と全く違うことを話す方がおられたりとか、他の人と全く同じ主張を繰り返す方がおられたりとか、当然説明できることが説明できない方もおられたりとか、その他条約上の迫害の方ではない、また申請を繰り返す方というふうな方がおられたと思うんですけれども、特に、五つの立て分けの一、二、三、違うことを言う人、同じことを繰り返す申請者が何人も来るということ、当然説明できることができない申請者、この方々は一体何の目的日本に来ておられるのか、とても私は不思議に思います。  御経験上、この方々に特有な、日本にいたいと思われる事情というものをどのようにお感じになられておられるか、捉えられておられるか、御意見としてお聞かせいただければと思います。
  30. 柳瀬房子

    柳瀬参考人 お答えいたします。  おおむね仕事がしたいということであると思います。  ただ、難民というふうに私どもが考えて、難民として考えますと難民蓋然性がない方たちですけれども、私自身は、本当はこういう人はいてほしいなと思うような難民申請者にはたくさん会います。日本語もできて、お仕事もできて、いろいろな、日本人の中でも、日本の社会の中でもリーダーになれるような人、そういう申請者もおります。でも、難民条約上の難民ではないので、それは認められないということになります。  以上です。
  31. 吉田宣弘

    ○吉田(宣)委員 ありがとうございます。  仕事をしたいというお気持ちの方が多いというふうなお話でございますけれども、そうでありますれば、その方は、別の手続に従ってきちっと、仕事をする目的日本にお越しになるべきかなというようなことも思います。難民というふうな範疇に入らない方について、残念ながら難民認定できないということは、これは当然のことわりであって、致し方ないのかなというように私は今感じました。  次に、先ほどこの法案に反対ですと大変はっきりとおっしゃられた児玉参考人に、私、一問ちょっとお聞きしたいんです。  お聞きしたいのは、準難民、すなわち補完的保護対象者という文言で規定をされた方々、今回の規定があります。新設です。これまでも、難民在留特別資格の許可のところで弾力的な運用は果たされてきたのかもしれませんけれども、非常にそういった方が法的に不安定な地位に置かれていたのではないかというのが私の印象です。先ほど申しましたように、ちゃんと守ってあげたい人についてはちゃんと守ってあげるというふうなことの下に、その方が法的に地位を与えられたという意味で、私は前向きな改正だと実は思っているんですけれども児玉参考人の御意見もいただければと思います。
  32. 児玉晃一

    児玉参考人 御質問ありがとうございます。児玉です。  補完的保護の対象者は、条文上の定義ですと、難民条約に定める五つの理由以外で迫害を受けるおそれがあるという十分理由のある恐怖を有する者、これが補完的保護対象者の定義でございます。  長年難民の事件に携わってきた者としましては、人種、宗教国籍特定の社会的集団、政治意見、この五つの理由がネックになって難民認定になっているというのは余り考えられません。むしろ、迫害を受けるおそれがあるという十分理由のある恐怖、これを認定するために、先ほど御質問もありましたが、例えば客観的証拠がなければその十分理由のある恐怖が認定できないだとか、あるいは迫害主体政府に基本的に限定されるとか、そういうところで狭い解釈を取ってきたがゆえに、難民として認定されるべき人が認定されていないという理解でおります。  そういうところからしますと、今回の補完的保護対象者が、一番ハードルになっているところはそのままにして、従来そんなに問題になっていないところを広げたというのでは、正直なところ、保護の範囲が広がるとは考えられません。  先ほどちょっと時間の関係で資料を御説明できなかったんですが、私の方で御用意させていただいた資料の十一番、補完的保護対象者資料という全国難民弁護団連絡会議が調査をしたものがございます。これは、現在保護されているのは人道的な配慮で保護されているという、今御指摘のあった、若干不安定、不明確でいろいろな類型が入るところですが、人道的配慮で保護した者として入管庁が公表している二〇一七年から二〇一九年のデータ十八件のうち、この補完的保護対象者という定義になってしまうと、十三件は保護されないだろうというふうに分析しております。  以上です。
  33. 吉田宣弘

    ○吉田(宣)委員 御意見ありがとうございました。  続きまして、今度、市川参考人に少しお話をしたいと思います。本当は、たくさんの論点がありますので、たくさんの論点について私は触れさせていただきたいのですが、時間の関係上、特定の論点にとどめることをお許しください。  市川参考人にお聞きしたいのは、難民認定申請送還停止効例外についてでございます。  公明党は、迅速な送還及び送還忌避者の長期収容の問題の解決のために、送還停止効一定例外を設けることは必要であるというふうに考えました。ただ、送還停止効例外を設けることは、ノン・ルフールマンの原則に反するおそれがあるというふうな懸念が示されていることも認識をしております。  ただ、やはり守ってあげなきゃいけない人、庇護を要する方を誤って送還してしまうと、生命や身体の危険にさらされるなど取り返しのつかない結果が生じるおそれがあるという意味では、送還停止効例外を設ける場合でも、例外中の例外として、その対象を慎重かつ明確に定めるということを求めました。その結果、ちょっと説明するつもりだったんですけれども、時間がありませんので、法案もそのように反映されたかと思っております。  この点に関して、御意見がありますれば是非お聞かせいただければと思います。
  34. 市川正司

    市川参考人 例えば三回目の難民申請者については送還停止効を解除するという原則を立てながらも、今先生がおっしゃられたとおり、そうはいっても、三回目であってもそれなりの資料を出した方については送還停止効は解除しません、送還はしないという例外例外を設けていただいた、これは配慮されているということだろうというふうに私も考えてはおります。  ただ、先ほど申し上げましたように、申請者の側からすると、三回目の場合に送還停止効が解除されたのかされていないのか、その方本人は分からないんですね。退去強制令書を執行しますよと言われたときに、ああ、何だ、私は例外じゃなかったんだ、例外例外じゃなくて、やはり送還停止していなかったんだというふうになってしまう。  そういう意味では、やはり不安、三回目の方たちは不安定な気持ちでずっと過ごしていくということになってしまうので、そこのところを外からも分かる、申請者からも分かるような形で、あなたは送還停止効を解除されています、あなたはされていませんということが明確に分かるような形にしていただきたいというのが、仮にこれを設けるとすれば、そういうやり方にしてほしいというふうに私どもとしては考えているということです。それで、そこが何らかの形で争える、あるいは不服申立てできるような形にしていただきたいということでございます。
  35. 吉田宣弘

    ○吉田(宣)委員 御意見ありがとうございます。  最後に、安冨参考人にお聞きしたいと思います。  在留特別許可申請創設について、先ほどの御意見の中で、検討会よりも踏み込んだ内容規定をしていただいたというような御発言がございました。その踏み込んだ内容によってより適切になったんだろうと私は思いますが、法務省はいわゆる手続保障というふうなことを説明しております。  その点に関して、御意見がございますればお教えいただければと思います。
  36. 安冨潔

    ○安冨参考人 お答えいたします。  踏み込んだ内容と申しますのは、具体的に在留特別許可の要件、実体要件ですね、これを明確に法律事項に定めたというところ、今まではそれは裁量の中であった、ここは進んでいる。私ども専門部会でも、そこを明確に、裁量事項じゃなくて法律事項としてくれというところまでは申し上げておりませんので、そういう点、踏み込まれた内容になっているというふうに認識しております。  それから、手続要件についても、申請することができる権利といいましょうか、そういう形で取り扱われているということも、より踏み込んだ在留特別許可の保障が進んだというふうに認識しております。
  37. 吉田宣弘

    ○吉田(宣)委員 四人の参考人皆様、御意見いただきましたことを心から改めて、重ねて感謝を申し上げて、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  38. 義家弘介

    義家委員長 次に、串田誠一君。
  39. 串田誠一

    ○串田委員 日本維新の会の串田誠一です。  最初に安冨参考人柳瀬参考人にお聞きをしたいと思うんですけれども、安冨参考人は先ほど、監理措置によって、収容されない機会が増えるような手続にとありました。  柳瀬参考人の資料をいただいたんですけれども、二〇一六年二月二十一日の朝日新聞では、我が国難民の力を生かせない国であると。これは二〇一六年のことなんですけれども、出稼ぎ労働者が日本で働くために難民申請制度を利用している側面が大きいということで、今、難民申請されなかったとしても、こういう優秀な人を何で採用しないんだろう、そういう問題提起があったかと思うんです。これが入管庁の設立によって解消されたのかどうかということもあるんですけれども。  収容されないと生活費に非常に困るということでありまして、先ほど安冨参考人の話ですと、支援だとかいろいろあるんですが、例えば短期のバイトだとか、生活費を稼ぐというような手段がないと、非常に生活が危うくなってしまってよくないことをするのではないかというような面もあるということもあります。  先ほど柳瀬参考人の紹介もさせていただいたんですが、難民申請する人、難民なのか、されないのかというのもあるんですが、国内での仕事を認めていくというか、認めないというか、そこら辺の境というか、そこら辺についてはどのような見解というかお考えでしょうか。
  40. 安冨潔

    ○安冨参考人 お答えいたします。  監理措置創設によりまして、いわゆる収容令書による収容という段階退去強制令書発付した段階収容段階には二つ段階があるわけですが、収容令書による収容段階というのは、まだ、入管法の二十四条に規定されております退去強制事由、これがあるのかないのか、該当するのかどうかということを審査するという段階でございます。それから、退去強制令書発付されるということは、その二十四条違反の該当性があるというふうに認定されたという段階です。  今回の監理措置においては、その前段といいましょうか、収容しないで、まず入国警備官の違反調査、この段階から収容しないで、そして、その場合には就労を認める。もちろんこれは、何をやってもいいですよということであるのは、違反の疑いがある人が無作為に何でもできるというのは本来あるべき姿じゃないので、一応そこは主任審査官の就労許可という形にはなっています。その中で、どこでどういう形での就労、働くということは、一応そこで調整をして、確認をして、これならばいいでしょうということで認めるということになっておりますので、委員御指摘のような、どこが限界かというところは、いろいろなケースがありますので一概にはお答えしかねますけれども、少なくとも、こういう仕事をしたい、それが適当だということになれば、その段階では仕事ができることになるというふうに考えております。
  41. 柳瀬房子

    柳瀬参考人 お答えいたします。  先ほど例に挙げてくださったように、私自身、有能な外国人の方たちに一緒に働いていただきたいという思いはずっと持っております。また、すばらしい人たちがいることも事実でございます。  昨年の四月から、特定技能の資格ができるようになりました。それによって、これまでよりは少しはまた、単純労働といいますか、労働の、例えば建設業者の下請の方たちとか、様々な業界で活動していただくことができるようになりましたけれども、それでも、全く単純労働者という形では受け入れていません。既に難民申請をした人に関しては、一度国に帰って、また新たにそのためのテストを受けてからではないとその資格が取れないという状況になっております。  やはりそこら辺が、日本の国の外国人の労働者の問題と、それから、日本国民人たちが、もう既にこれだけ日本の中でたくさんの外国人の方にお世話になっている、また、その人たちがいなければこの国が成り立っていないということを、皆さんがありがたいなと、ある意味感謝してという思いがどの程度あるのか。外国の労働者の方に対してどういう思いを持つか、あるいは、そういう意味での日本国民のいろいろな教育ですとか、お互いにどういうふうに理解し合うかということは、まだまだ足りない状況だと思っております。  そんな考えでよろしゅうございますでしょうか。
  42. 串田誠一

    ○串田委員 非常に難しい問題なのかなというふうに思いました。  次に、市川参考人児玉参考人にお聞きをいたします。  先ほど、児玉参考人の、小さな娘さんのお話も非常につらい話だなと思いましたけれども市川参考人が先ほど子どもの権利条約の話をしていただきました。私も法務委員会で子どもの権利条約というのをよく取り上げているんですが、二〇一九年でしょうか、国連の勧告が子どもの権利委員会からありまして、そこにも、Iというところで、収容される親から子が分離されることを防止するような整備をしなければならないという勧告をされておりますし、ノン・ルフールマン原則を維持しなければならないというようなこともあります。  その点で、今回、親と子が引き離されるというようなことが、この改正案で実現できるのか、条約との関係で、条約を遵守したというふうに言えるのかどうか、言えないのであれば改善点は何かあるのか、お二人にお聞きをしたいと思います。
  43. 市川正司

    市川参考人 ありがとうございます。  今回の在留特別許可の条文の中で、考慮要素としまして、先ほどありました家族関係という言葉が入っております。この家族関係という言葉の中に、家族の統合という、子どもの権利条約に書いてあることは、九条ですけれども、この言葉の意義が含意されている、含まれているという解釈をした場合には、今先生がおっしゃられたように、子供と親を分離して、親は帰りなさい、子供はかわいそうだから残しましょう、こういうことは避けられてくるのではないかというふうに思います。  ただ、ちょっと条文上はそこが必ずしも同じ言葉遣いになっておりませんし、明確に解釈をしていただくということがやはり必要だし、弁護士としては明記していただくというのが一番いいんですけれども、そういったことが必要ではないかなというふうに思います。  実際の在留特別許可の場面で、本当に、十五、十六ぐらいになった子供はいいんだけれども、親は帰りなさいよ、これは結構場面としてはあって、非常に弁護士としては切ない思いをすることが多いので、この点でいい方向にしていただきたい、こう思っております。
  44. 児玉晃一

    児玉参考人 御質問ありがとうございます。  ただいま御指摘の子どもの権利条約に関しましては、私のお配りした資料の5にも二〇一九年の勧告を載せさせていただいております。  御質問ですが、どちらとも言えないというのが率直なところかと思います。基本的には市川先生のおっしゃったとおりなんですが。  家族関係という文言があります。私は、やはり親子の分離ですとか、裁判をやっていますと、例えば、日本で生まれたタイ国籍の、高校生までなった家族の事件をやったことがありますが、日本から一回も外に出たことがないんですね。ですけれども、裁判になりますと、入管は、いや、タイにおばあちゃんがいるじゃないか、タイにおじさん、おばさんがいるじゃないか、そういう言葉も通じない、会ったこともない人も、これも家族関係ということで、裁判では帰っても大丈夫だという理由にされてしまいます。  ですので、今、市川先生が言われたとおり、ここに、子供の最善の利益というのであれば、あくまで子供の利益のために解釈するという形の明確化が必要なのではないかと思います。  以上です。
  45. 串田誠一

    ○串田委員 子どもの権利条約の九条もそうですし、十八条もそうですけれども、親と子ができる限り引き離されないというのが子どもの権利条約で、日本も一九九四年に批准しているわけでございますので、条文の解釈上は子どもの権利条約を遵守する方向で解釈をしていただきたいというふうに思っています。  安冨参考人にちょっとお聞きをしたいんですが、法務委員会でも答弁されている中で、通訳人がついた数が二千四百四十五人ということがございまして、私、刑事事件でも通訳人を調達するのはすごく大変なんじゃないかということを質問させていただいているんです。  要するに、自分自身の意思がしっかりと伝達できないと、それだけで権利を保障されていることにはならないんじゃないかというようなことがありまして、現状、この通訳人というものの調達方法、そして、今非常に機械が優秀になってきて、それこそ、非常に僻地だとかというようなときは、通訳人が何人も、AからBは通訳できるけれども日本語には通訳できないから、BからC、CからDで、Dから初めて日本人という、何人も伝達するリレーというものもあるわけでございますので、そうなると、もう百五十何か国、二百とか三百とかという言語が今機械化されている状況なので、こういったようなものも活用していく必要があるのではないかというふうに私は思っているんですが、安冨参考人の御意見をお聞きしたいと思います。
  46. 安冨潔

    ○安冨参考人 お答えいたします。  通訳は、入管手続を進めていく上では不可欠であります。ただ、どの場面でどう使われるかというのはいろいろと違ってくると思います。  例えば、難民に関して言いますと、難民認定最初申請段階難民調査官インタビューをします。そのときに、難民調査官申請者通訳人という形で、いろいろと聞きながら通訳をして、意味が分からないところは繰り返し聞いてという形で多分進められているんだろうと思います。そこででき上がってくる調書なんです。こういう場面で使われることになります。  それから、審査請求なんかですと、申請者の方、それから参与員、そして通訳人、これはいわば裁判のような場面に近い場面であります。そこではもちろん、質問し、答えてもらう、分からなければ改めて聞くということをやりますけれども、やはり通訳の方の緊張感というのは、日頃から難民認定手続での調査官インタビューの中で加わっているのと、会ったこともない参与員がいて、その人の質問を、ある意味で緊張してやらなきゃいけないという場面もあったりすると思います。いろいろな場面があろうかと思います。  それから、もちろん強制退去手続の中でも、その理由であるとかを説明するという場面でも通訳の方は必要になってくるだろうと思います。  その意味では、いろいろな場面で入管では通訳というのが必要であることは、これはもう言うまでもないこと。そこで、いろいろな場面に、じゃ、どういうレベルの方と言ったら大変失礼ですけれども、どのレベルまで、どういう形で通訳していただくのが適切な意思疎通が図れるのか、これはかなり難しい問題だと思います。  そういうことを前提としますと、先ほど委員御指摘になられましたように、いろいろな科学技術が進んでいる中で、そういう機械を使って、用いてできるところはどんどん進めていくというのは合理的な方法だというふうに考えております。  ただ、一番難しいと思うのは、医療の関係であります。例えば、被収容者の方が治療を受けたい、そのときに、医療の言葉を通訳できる、医療の用語を通訳できる、これはまた通常の通訳の方よりもっとレベルが高いといいましょうか、専門に特化しているだけに、それだけに大変です。  そういう意味では、先ほどとちょっと繰り返しになってしまいますけれども、いろいろな面で適材適所で通訳の方を確保するというのは入管にとっても大変負担だし、大変な作業だとは思います。しかし、これは不可欠、入管業務においては通訳人がいなければできないことでありますので、いろいろな今後の方策を考えながら、通訳人の確保ということが十分なされるように願っているところでございます。
  47. 串田誠一

    ○串田委員 時間になりました。本当にありがとうございました。
  48. 義家弘介

    義家委員長 次に、屋良朝博君。
  49. 屋良朝博

    ○屋良委員 立憲民主党の屋良朝博でございます。ありがとうございます。  質問に入る前に、委員長にお願いがあります。  先ほど、井野委員質疑の中で、委員が、御自身が法務省の政務官であったときに、難民申請認定をすべきという書類が現場から上がってきたんだけれども、客観的な事実がどうも欠落しているんじゃないかという御判断で、御本人はそれを許可しないという判断をされたらしいんですけれども、それを大臣が最終的には許可したというふうな事例を御紹介していただいておりました。  その資料の提出を、申請書類も含めて、資料の委員会提出を求めたいと思います。
  50. 義家弘介

    義家委員長 ただいまの件については、理事会で協議いたします。
  51. 屋良朝博

    ○屋良委員 この事例はまさに興味深くて、制度運営が関わる人によって、その判断によって大きく変わってしまう。難民認定するかしないかという大きな大きな、申請者の運命を決めるような判断が、非常に、関わる人の個人的な見解だとか客観性の受け止め方、それについて大きく制度が変わってくるんだなということを再確認させていただきましたので、この委員会審議でとても参考になる資料になるというふうに受け止めましたので、是非御配慮をお願いいたします。  それでは、参考人の先生方、今日は本当に貴重な御意見をありがとうございます。  質問させていただきます。  今般政府がまとめた入管改正法ですけれども、これに対して、今年の三月に、国連人権委員会とか国連高等弁務官事務所が相次いで懸念を表明しております。さらに、アメリカ国務省の人権報告も、日本難民認定率の低さを指摘されております。  そこで、安冨参考人市川参考人に伺います。  こうした国連機関や米国務省の指摘をどう受け止め、政府はどのように対処すべきかということを、御意見をお聞かせいただければありがたいです。よろしくお願いします。
  52. 安冨潔

    ○安冨参考人 お答えいたします。  国際機関からいろいろな指摘を受けているということについては承知しているところでございます。  ただ、いろいろな見方といいましょうか、いろいろな立場といいましょうかがございます。国際機関として、国際的なスタンダードという目で日本入管制度を御覧になったときに懸念があるというお話だと思います。他方で、我が国は、公正な在留管理ということで入管法を定めており、その中でいろいろな制度を設けている。それぞれの国にはそれぞれの主権がありますし、その中でいかに日本外国人の方の受入れ政策というものを考えるかということで、在留という制度を検討している、つくっているんだというふうに思います。  そうしますと、一つのスタンダードで全ての国が同じだということには決してならないんだろうと思います。もちろん、いろいろなところで御批判があることは承知しておりますが、できるだけそれに近い形で進めていくのが合理的なのかなとは思いますけれども、批判は批判として、今後、入管庁において御検討されるものというふうに考えます。
  53. 市川正司

    市川参考人 例えば、昨年の八月に、国連人権理事会の恣意的拘禁作業部会が二人の個人通報に対しての意見を述べておりまして、恣意的な拘禁に当たるという結論を出しております。日弁連としても、これを受けて会長声明を十月二十一日に出しておりますけれども、この作業部会の委員は、国連理事会で任命された、独立した人権専門家でございまして、彼らの国際人権法に準拠した意見というのは、これは真摯に受け止めるべきであろうというふうに思っております。それが度重なっているという事実も重く受け止めるべきだろうと思っております。
  54. 屋良朝博

    ○屋良委員 市川参考人政府としてこれをどのように対処すべきかということについては、御意見はございますでしょうか。もし御意見があればお聞かせください。
  55. 市川正司

    市川参考人 収容の恣意性というようなところが問題なんだろうというふうに思いますので、今回の法案で、収容が恣意的なものであるのかどうか、期間であるとかそういったことも含めてやはり吟味する必要があるだろうと思います。そういう意味で、収容期間上限の問題、それから審査期間なり、こういったものを改めて見直す必要があるだろうなというふうに考えます。
  56. 屋良朝博

    ○屋良委員 ありがとうございます。  次に、柳瀬参考人児玉参考人に伺わせていただきます。  最近、スリランカの女性が入管収容所で死亡するという痛ましい出来事があったばかりですけれども外国人が残留期間を超過して国内にとどまるいわゆるオーバーステイ、それが収容所で身体の自由を奪うほどの違法行為なのかどうかということが、私自身、どうも理解が及ばなくて、どのように考えたらいいのかというのがよくのみ込めていないというか。  今回の審理でも、直接的な、法改正の中では、制度化というか、考え方とかというのは別の問題であるかもしれませんけれども、一体これが、仮に、例えばスリランカの女性だったら六か月ぐらいですよね、身体を拘束され、しかも健康を害してまでそこから出られないという状況を国がつくっているということについて、私、ちょっと疑問がございまして、どう理解していいのかがよく分からないということなんですけれども柳瀬参考人児玉参考人、お二人、もし御意見がありましたらお聞かせください。お願いします。
  57. 柳瀬房子

    柳瀬参考人 お答えいたします。  私自身も、大変痛ましいことと思っておりますし、とても心を痛めております。  ただ、私自身が直接その方のことを存じ上げているわけではなくて、話を、伝聞として状況を聞いただけですので、それは弁護していらっしゃる方たちのお話しか聞けておりませんので、実際に収容所でどういう状況だったかということも、聞いていますけれども伝聞だけですので、そこまで詳しく分かりません。  以上です。
  58. 児玉晃一

    児玉参考人 ありがとうございます。まさに御指摘のとおりだと思います。  先ほど御質問のあった国連意見とかでも、収容というのはあくまで必要最小限でなくてはならない、そして、その目的送還をするために認められるものであります。その意味で、収容に必要最小限でなくてはならないからこそ、上限を定めろとか、そういう指摘があるわけです。  今回のスリランカの方の件は、上限が例えば何か月と定められていたり、あるいは送還のめどが立っていない状態なのだから収容する必要がない、そういうスタンダードに従っていればこういう悲劇にはならなかったのではないかと思います。  そもそも身体拘束を続けるべきかどうかという点について、私が説明させていただいた中でも、犯罪とするべきではないというのが国連の恣意的拘禁ワーキンググループの意見でもありますし、実際に犯罪にしていない国も多々あるというふうに考えております。  よろしいでしょうか。以上です。
  59. 屋良朝博

    ○屋良委員 犯罪とするかしないかというところで判断というか対応が大きく分かれるところだと思いますけれども、その点について、安冨参考人はどのようにお考えなのでしょうか。よろしくお願いします。
  60. 安冨潔

    ○安冨参考人 不法残留を犯罪とするかどうかということについてですが、不法残留というのは、要は、在留することが認められないという方の行為ということになります。  ですので、我が国の場合は、在留目的に応じて在留資格というものを定めて、その中で外国人の方を受け入れているということになりますので、在留資格がない形を、いわゆるオーバーステイ、不法残留もそうですが、その場合にはやはり我が国在留を認めるものではないという立場ですので、これを犯罪とするということには一定の合理性があるというふうに考えます。
  61. 屋良朝博

    ○屋良委員 ありがとうございます。  先ほど柳瀬参考人が非常に興味深いお話をなさっておりまして、これほど労働者として日本で滞在したいという方々がいるんだけれども、その手続が一旦帰国しないといけないだとか、受入れの受皿、体制がなかなか整備されていないのではないかという御指摘だったと思っておりまして、そして、その受皿を整備するにも、これは参考人日本人の覚悟だよと、最終的には。  今の現状を、現実をどう受け止めて、労働者が不足しているという現実をどう受け止めて、どのように彼らに感謝しながら国内で働きやすい環境をつくってあげたり、国内の地域で受け止めやすい環境をつくったりするということも一つ考えるべきではないのかというふうな御発言だったと思いますけれども、私のこのような理解で正しいのでしょうか。柳瀬参考人にお伺いします。
  62. 柳瀬房子

    柳瀬参考人 お答えいたします。  私もそのように考えております。
  63. 屋良朝博

    ○屋良委員 ありがとうございます。  大変重要な論点をずばり一言でお答えいただきまして、ありがとうございました。  やはり受皿というか、外国人とどう向き合っていくのかという、戦後七十五年、国際社会の中で日本として戦後の独立の後に生きてきて、この議論もなかなかちょっと早いところクリアしておかぬと、この国際社会の中でどう生きていくのかということを、改めて日本のアイデンティティーとかそういったところが問われるような、そんな大きな論点になっているのかなというふうな気がいたしました。  市川参考人、国際的な状況と比べて、今の論点、どのように受け止められていたのか、もし御感想があればお聞かせください。
  64. 市川正司

    市川参考人 日弁連として何か定まった見解を持っているということはございませんけれども退去強制手続に乗ってきた人の人権をどう守っていくかということ、これは一つ大事な視点であると同時に、あと、日本がこれから向かっていく方向として、外国人をどう受け入れていくのかということを議論することも必要だと思います。  その点でいきますと、少子高齢化の中で労働能力を持つ人口がどんどん減っていく中で、日本がどういうふうに向かっていくのか、労働力が不足していく中で、外国人の方の労働力というのも必要になってくるのではないか、こういった点について正面から国会等で御議論いただいて、そして、彼らを受け入れた場合に、社会の外にはみ出ないで、社会の中に包摂して生活できるようなやり方をつくっていくということが、一つには大きな政策課題としてはあるんだろうなと思います。そのことが、本当に大きな意味でいえば、先ほど言ったような目的外で就労したりとかそういうことを広い意味では防いでいくということにはなっていくのではないかなというふうに思っております。
  65. 屋良朝博

    ○屋良委員 就労者をどういうふうに受け止めるかということが一つと、大変大きな論点をいただいたと思います。ありがとうございます。  それからもう一つ、特別在留許可と組み合わせて解決策を探っていくというふうな御提言をいただきました児玉参考人、最後に一言、この問題、要は不法在留者、オーバーステイの人たちをどのように減らしていくかということに尽きると思っているんですけれども、特別在留許可を工夫しながら対処していくべきだというふうなお考えをもう一度、済みません、時間が来てしまいまして、端的にお願いします。
  66. 児玉晃一

    児玉参考人 実は、入管庁が警察庁と合同でやりました不法滞在者半減計画というのがございました。五年間で半分に減らす。このときに、毎年一万人ずつ在留特別許可を、約一万人ですが出しています。実は、日本でも何万人単位で一斉正規化というのはされているというふうに私は評価しております。  この在留特別許可は、現行法ではもちろん法律に反する人を特別に在留を認めるということですが、本来的に人の移動というのは、違法ということには僕はならないと思っています。例えば、江戸時代でしたら、坂本竜馬や吉田松陰は脱藩で罪に問われましたが、今、高知から東京に来る、山口県から東京に来る、これで罪に問われる人は誰一人いないわけです。  グローバル化して、人の移動というのがどんどん範囲が広がり、情報もいろいろ取れるようになる中で、それはその時々に応じた移動の制限等も、国境がある以上は何らかの制限が必要でしょうけれども、それに対する対応の仕方というのはおのずと変わってくるのではないかと思います。  オーバーステイの人を犯罪という意見もあります。現行法ではもちろん刑罰法規違反ではありますけれども、例えば人を殺すとか人から物を取る、そういうような私たち法律家で言う自然犯とはまた違って、ボーダーの線の引き方によって、ここからここは移動すれば犯罪、違法になるけれども、時代によっては変わる、その程度の違法性の問題で、それを前提とした移動の自由に関して考えるべきではないかと思います。  以上です。
  67. 屋良朝博

    ○屋良委員 ありがとうございます。終わります。
  68. 義家弘介

    義家委員長 次に、藤野保史君。
  69. 藤野保史

    ○藤野委員 日本共産党の藤野保史です。  今日は、四人の参考人皆様、本当に貴重な御意見をありがとうございます。  まず、四人の参考人全員にお聞きしたいと思うんですが、今回、法改正で、退去命令制度そして旅券発給申請命令制度創設されまして、罰則もつくということなんですが、この制度をつくる理由がいわゆる送還忌避者への対応のためとされるんですが、しかし、送還の機能不全というのは本当に起きているのかというところをお聞きしたいと思うんです。  というのも、そもそも在留外国人というのは、もう二百九十万人に達して、九〇年代後半からすると百万人増えているわけですね。  その中で、二〇二〇年の出入国在留管理白書を見ますと、例えば不法残留者数というのは大きく減少していまして、九三年には三十万人いたんですけれども、二〇二〇年には八万人強まで減っています。在留外国人数に占める不法残留者の割合も、九五年は二二%あったんですけれども、二〇一九年は二・五%、十分の一になっています。送還だけで見ても、各年の退去強制令書発付件数と送還件数、これはほぼ同じで、九割以上の方は帰られているんですね。その帰っている帰り方も、実は、自費、自分で出国して、自費出国が九割以上に、九三%とか四%とか五%とかそんな感じであります。これは白書の数字であります。  濫用があることは私も否定はしないんですが、しかし、何か送還の機能不全というのは本当に起きているのか。これは皆さんどのようにお感じなんでしょうか。
  70. 安冨潔

    ○安冨参考人 お答えいたします。  一言で送還の機能不全というふうに評価するのはなかなか難しいと思います。いろいろな場面があると思います。そういう意味で、委員御指摘のような、数という意味でいうと、一見、送還の機能不全というふうに言えないんじゃないかというふうに評価されるのは理解できるところでございます。  しかし、もう少し細かくいろいろな場面を見てまいりますと、先ほども御質問にありましたけれども、国費送還はしなけりゃいけない、それからチャーター機も用意して国費送還をやらなきゃいけない、これに対する費用負担も大きいものがある、そういう場面もございます。これを送還の機能不全と言うかどうかは評価の問題ですから別ですが、ここに大きな負担がかかっているということは言えると思います。  一方で、今回の退去命令あるいは旅券の発給の命令、これに間接罰をつけております。この点は、むしろ御自身で、在留が認められない、本邦から退去しなければならないという立場にある方、この方々が自ら退去していただく、そうすることによって、費用的な面も含めて少し前進できるのではないかというような意図でございますので、そのように私は考えております。
  71. 柳瀬房子

    柳瀬参考人 お答えいたします。  私は、学者や法律家ではないので、厳密な法的な観点から申し上げることはできないんですけれども送還しなくてはならない人を送還するという観点で考えますと、それは、しなければならない人は早く送還しなくてはならないと思うんですが、それは、本当の真の難民を早く救いたいという、それが一心でございます。  それから、先ほどの例えばチャーター機を利用してという件でございますけれども、ちょっと一言申し上げますと、一人一人を入管職員がついて安全な国に送り返すというケースがありますけれども、チャーター機を利用しないで、個人個人の場合ですね。乗った途端に暴れてしまって飛行機から降ろされるとか、それから、そこでほかのお客様に失礼なことがあって降ろされてしまうとか、そういうことが度々起きたケースがあります。そこで、致し方なくチャーター機を利用してという、数人集まったので利用しているというケースがありますので、その方がほかの方にも迷惑をかけないし、様々なことを考えたことでそういうふうになったことと思っております。  以上です。
  72. 市川正司

    市川参考人 今御指摘がありましたとおり、退去強制令書発付件数と送還の件数を見ますと、それほど大きな食い違いというのはございません。そういう意味での機能不全はないのではないかということは言えると思います。  ただ、さはいいながらも、発付した退令と、退去強制令書とその年に送還した人が必ずしも一致するわけではなくて、何年か滞留している方といいますか、訴訟もしていないけれどもそのまま残ってしまっている方というのは、確かにいることは事実です。ただ、それを送還の機能不全とまで、そこまで言う必要があるかというところは、私は若干疑問を持っております。  それで、そういった人に対する手当てとして考えられることとしては、今回一つ法案の中にある、自主的に帰った場合には再入国の期間を短くしてあげましょう、こういうやり方を取る。それから、あと、IOMという国際移住機構が現に今、日本でやっておりますけれども、帰国のための準備をお手伝いして、送還で、何年も日本に暮らしていれば帰国すること自体にちゅうちょがあるので、向こうで暮らせるかどうか、帰国の環境をアドバイスしたり援助したりするというやり方で帰国を支援している。いろいろなやり方があるわけですね。  ですから、まずは、そういうソフトなやり方というか、罰則によるやり方ではない別のやり方でのアプローチというのをもっと検討するべきであろうというふうに思っております。そういう意味で、罰則というところまでやるのは行き過ぎではないかというのが私の考えでございます。
  73. 児玉晃一

    児玉参考人 私も、機能不全というところまでには至っていないと思っております。  入管法上、強制送還は、本来、国費送還原則でございます。むしろ、自費で出国する場合には許可を取らないといけない。そういう建前からしますと、国費がかかるのは法律が予定している当たり前の話であります。  そうはいっても、それで帰国を拒否する方はいらっしゃるわけですけれども、例えば、今、市川先生の方からIOMの話もありましたが、フランスの例ですと、フランスの場合は、なるべく自発的な帰国を促す、そのために旅費も渡し、帰った後に使えるようになるマネーカードにお金をチャージして帰国後使えるようにして、当面の費用を使えるようにして、それを渡して自分で帰ってもらうような促す制度があるというふうに聞いております。  それは、一見すると、そこまでやるのかということになるのかもしれませんけれども、トータルで見ると、チャーター機をチャーターしたりとか職員が付添いで行く場合よりもはるかに合理的になりますし、それは、本来この国にいてほしくない人を排除する、それは国家の作用として、国権の発動としてやるわけですから、それに国の費用がかかるのはやむを得ないことなのではないかと思います。  以上です。
  74. 藤野保史

    ○藤野委員 ありがとうございます。  専門部会、私も読ませていただいたんですけれども、この専門部会で、先ほど市川参考人収容するかしないかの分かれ目とおっしゃった監理措置制度前提として、仮放免の運用方針について繰り返し議論がされております。  今日持ってきたんですけれども、今の仮放免の運用というのは、こういうふうに真っ黒で全然見えないんですね。このことが専門委員からも指摘をされまして、例えば、第三回、二〇一九年十一月二十五日に宮崎真弁護士から、議論するに当たって、この仮放免運用方針、黒塗りの部分が多過ぎて判断できないのでお出しいただきたいという意見が出ていますし、第五回、二〇二〇年一月十六日には、論点整理として宮崎委員が、繰り返しになるが、仮放免運用方針の開示は議論前提であり、現在マスキングがされたものが開示されているにすぎないと。第八回でも同じように、繰り返しの要請にもかかわらず開示されていない、仮放免に関する罰則議論する以上、最低限の情報であり、かつこのように非開示したままで罰則規定を設けることはあり得ない、こういう意見が繰り返し表明されているんですね。  安冨参考人と、あと第五回に参加された児玉参考人にも、ちょっとこの点について、こういう議論のやり方そのものについてどのようにお感じになったんでしょうか。
  75. 安冨潔

    ○安冨参考人 お答えいたします。  確かに、仮放免の運用指針について、マスキングされている資料が専門部会に提出されたというのはそのとおりでございます。  仮放免の運用指針が全て開示されないと仮放免の在り方について議論ができないかというと、私は必ずしもそういうふうには思いませんでした。  したがいまして、今後の仮放免というものをどういう位置づけでやっていくのかという大きな議論として専門部会では取り上げたことなので、どこまで情報開示するかという話と、仮放免を今後どういうふうに整理していくのか、新たな収容代替措置との関連づけをどうするのか、位置づけをどうするのか、これについて、情報が全て開示されないと議論することができないというふうには認識しておりませんでした。
  76. 児玉晃一

    児玉参考人 委員御指摘のとおりだと思います。  実は、先日いただいたこの黄色い資料にも仮放免運用指針が入っておりまして、さすがに国会の議論になりますので全て開示されているのかと思って拝見しましたら、三百ページに非公表、非公表と、黒塗りの部分が全て非公表となっています。現状の仮放免の運用の非常に重要な部分を占めるものを国会で審議していただくのに、議員の先生方に対してまでこれを非公表とするのは非常に不誠実なやり方ではないかと考えます。  実は、この不開示になった件に関しましては情報公開の裁判を起こしておりまして、一審が敗訴してしまいましたが、現在、控訴審で係属中です。
  77. 藤野保史

    ○藤野委員 実際、仮放免は、二〇一五年には三千六百六件あったんですが、二〇一九年には二千二百十七件まで減っているんですね。だから、減っているという事実があって、こういう真っ黒けの方針が出ているという下で、仮放免の運用の厳格化にどういう方針を出されたのかというのは大事な前提になるわけでして、どうもその前提となる立法事実や、今提案されている制度前提となる資料そのものの分析が本当にされたのかなというのは大変疑問に感じております。  そして、児玉委員にお聞きしたいんですが、先ほど監理措置の話で、監理人についてのところが、私としては、今やはり信頼関係が基になっていると思うんですが、それがああやって義務が課される関係になると、支配、被支配の関係になるという指摘も資料にありました。この点についてはどのようにお考えでしょうか。
  78. 児玉晃一

    児玉参考人 おっしゃるとおりだと思います。  私も、仮放免の保証人を何人もやっております。本人を一刻も早く出したい、外に出してあげたいので、知り合いの方とか親族とかがいればそちらになってもらうんですけれども、どうしてもいないような場合には代理人の弁護士が保証人になることもございます。それは、何としてでも身体拘束から早く解放してほしい、そのために保証人が必要ならば自分がやろう、そういう関係性なわけです。  ところが、これが監理人制度になってしまいますと、先ほど市川先生の方から話もありましたが、その人を監視しなくてはいけなくなってしまう。これはもう前提関係が崩れてしまいます。その報告をしなければ、あるいは虚偽の報告をしたら、自分自身が刑罰というか過料の制裁を加えられる可能性がある。これではとてもできません。ですが、監理人がつかないと外に出られないという前提だとすると、じゃ、逆に、入っている人のことを考えないで、おまえは監理人にならないのかという物すごい葛藤が生じる制度になっていると思います。
  79. 藤野保史

    ○藤野委員 ありがとうございます。  重ねて児玉参考人にお聞きしたいんですが、先ほどトレンドとしては不法残留は減っていると言ったんですが、今、政府は足下で増えているみたいなことを言うんですけれども、しかし、法務省の政策評価懇談会というのが今年の二月十六日にやられていまして、ここでインバウンドの関係というのも、政府がインバウンド政策を取っているということも指摘をされているんですが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
  80. 児玉晃一

    児玉参考人 御質問ありがとうございます。  私の今日配付させていただいた資料の中の七番、資料七を御覧いただきたいんですが、こちらは議事録を一部取らせていただいています。十八ページと記載のあるところの下の方に出入国在留管理庁の回答がございます。  近年、不法残留者が増えた原因でございますけれども、私どもの見立てといたしましては、政府全体で観光立国実現に向けた取組が進められてきた結果、外国人入国者数が大幅に増加した、これが不法残留者数の増加に少なからず影響しているものと考えておりますという回答がされています。  もう一つ、後ろの方ですが、十八ページの下の方ですね。失礼しました。あとは、技能実習生が現場から耐え切れなくなって失踪してしまった、そういう人たちが不法残留の数に加わって増えているのではないかという質問に対しては、それは事実として存在する問題だというふうに理解してございますと回答されているのを承知しております。
  81. 藤野保史

    ○藤野委員 時間が参りましたので、終わりたいと思います。  しっかりと法案審議に生かしたいと思います。今日はありがとうございました。
  82. 義家弘介

    義家委員長 次に、高井崇志君。
  83. 高井崇志

    ○高井委員 国民民主党・無所属クラブの高井と申します。  今日は、四人の先生方、本当に貴重な御意見、ありがとうございました。  皆さんの陳述は全て聞かせていただいたんですけれども、実は、ほかの委員会で私は質疑に立ったものですから、途中の質疑のところがちょっと抜けているものですから、もし重なったことを聞いていたら大変申し訳ありません。お許しいただきたいと思います。  それでは、四人の皆さんに私もそれぞれお聞きしたい、同じ質問をしたいと思うんですけれども、私は、余り細かな制度のことというよりも、大きな方向性というかを是非お聞きしたいんですけれども、今回のというか、日本の入国管理制度が諸外国と比べてどうなのか。とりわけいろいろ問題になっているのは、やはり難民認定が非常に低いということと、あと、収容施設の問題ですね。やはり非常に劣悪であったり、なかなか、私からすると、何かちょっと人権意識が日本は低いんじゃないかと思わざるを得ないような状況なんですけれども、この辺りを、諸外国と比べて日本の入国管理制度をどのようにそれぞれ見ておられるのか、それでは陳述の順でお答えいただけたらと思います。
  84. 安冨潔

    ○安冨参考人 お答えいたします。  出入国在留管理制度は、それぞれの国それぞれ、また地域によってもいろいろな考え方制度があるというふうに承知しております。  したがいまして、諸外国と比べてという御質問にはなかなかお答えするのが難しいんですけれども我が国は、少なくとも入管法施行以来、適正、公正な在留管理と、そして、近年はそれに共生社会という観点からの支援ということで、非常に多岐にわたる制度設計がされ、それを実施しているというふうに認識しているところでございます。  基本的に、外国人の受入れあるいは在留についてどのような施策を取っていくのか、これは国の大きな方針に基づくものであるというふうに考えますので、今後、外国との関係においてどのように出入国在留管理制度を動かしていくのかということは真剣に議論していかなきゃいけないものというふうに承知しております。
  85. 柳瀬房子

    柳瀬参考人 お答えいたします。  私も、出入国在留管理の点については、きちんと日本政府は行っておると思います。  諸外国というのは、それぞれの国の地域や特性がございますので、それぞれの国で決めなくてはならないこととされておりますので、控えます。  以上です。
  86. 市川正司

    市川参考人 これも私の個人的な意見でございますが、国際的にどう信頼される国になっていくのか、それから、外国人の方がこれから日本に入ってくるに当たってどういう国であるべきかという視点は必要だというふうに思います。  そういったことから考えると、日本に入ってくる基準はどうなのか、どういう方を受け入れていくのかということを明確にして、どういう方向性を持っていくのかということを明確にしていくこと、これは一つ大事だと思いますが、同時に、そこからどうしてもドロップアウトする、出ていかざるを得ない方というのもいらっしゃる。  その出ていくときに、出口のところも、やはり外から見て、ある程度きちんとした権利の保障。外国の方は、やはり自分が不服申立てをきちんとできますかとか、手続的に保障されるんですかということも当然気にして見ていらっしゃるわけでありまして、そういう意味で、出口のところでも人権保障というのをきちんとやっていますよということが、ほかの国、これから入ってくる人たちに対するメッセージとしては非常に重要だろうというふうに思いますので、そういう視点での見直しというのは必要、していただきたいというふうに思っております。
  87. 児玉晃一

    児玉参考人 御質問ありがとうございます。  私も全ての国について知っているわけではないんですが、二〇一二年と二〇一四年にイギリスの収容制度を視察に行かせていただきました。そこで見ましたのは、収容所は基本的にはこの塀から出る自由はないけれども、それ以外の自由を制限する必要はない、制限する根拠はむしろない、だから、できるだけの自由を保障しなくてはいけないという理念にのっとって、あちらの視察委員が勧告をし、施設をそのようにしています。例えば、中から携帯電話が使えます。中でパソコンが使えて、外部の人、弁護士とか家族とかとメールの交換ができたりとかします。中に何かゲームセンターみたいなのがあったりします。  それと、裁判所の収容に関する関与として、事前の、イギリスも収容する段階では司法審査はないんですが、外に出る段階で裁判所による保釈の制度がございます。これは、中から本人申請をして、三営業日以内に公開の法廷で保釈をするかどうかの決定をし、私も目の前で見ていましたけれども、一時間ぐらいの審理で保釈の決定が出ていたりしました。  難民について言いますと、日本ですと、難民申請をするのに物すごく細かい複雑な文書を書かないといけない。それは実は申請者の方に大変なハードルになっていますが、イギリスで話を聞きましたら、申請段階では名前と連絡先ぐらいしか聞かない。何でですかと聞いたら、いや、そんなの、弁護士も抜きで詳しい話を聞いたらそれは裁判所でひっくり返されてしまうから、そんなことはしないんだというようなことをおっしゃっていました。  あと、私の知っている範囲ですと、台湾では、収容上限がなかったのが、最高裁判所で憲法違反とされて、今、上限が設定されました。韓国でも、収容上限がなかったのを、憲法裁判所が五対四で、違憲の見解が五でしたが、韓国では六対三にならないと無効にはならないそうなので、法律としては残っていると言っています。先ほど労働の関係の御質問があったんですが、アイルランドの最高裁では、難民申請者一定期間過ぎても労働できないのは憲法違反だとして、違憲無効になっています。  是非、日本もそのような国際水準に近づいていただきたいと思います。  以上です。
  88. 高井崇志

    ○高井委員 ありがとうございます。  それでは、比較的、今の入国管理制度に問題ないんだ、しっかり日本はやっているんだという御意見が、安冨参考人柳瀬参考人がそういうお立場だったと思うんですけれども、お二人に聞きたいんですけれども、それでは、日本難民認定ですね、この数がやはり諸外国に比べて圧倒的に低い、このことの理由、あるいはこれは別に問題ないと考えておられるのか、お二人、お聞かせください。
  89. 安冨潔

    ○安冨参考人 お答えいたします。  日本における難民認定制度について、私は問題はないというふうに考えております。  理由は、日本難民というのは、委員御案内のとおり、難民条約に基づいて、五つの類型、そしてそれを通じての迫害の恐れがあると認められる十分な理由、こういうしっかりした要件がございます。それに当たるか当たらないかということについては、申請者の方との面接、認定の一次審の面接ですね、そして認定室の判断、更に法務大臣までの判断が入ります。その上で不服があるということであれば、審査請求審で審査をする。この際には外部の参与員も関与する。その上で判断されて、最終的に難民かどうかということの判断がされるわけです。  いろいろなケースがありますので、今、仕組みのお話を申し上げましたけれども、個々のケースで見ていきますと、最初柳瀬参考人もお話しになりましたけれども、いろいろなケースの中でも、やはり難民として認定するのは難しいだろう、そういうケースもあることは、私も参与員をしていて感じるところです。そういう意味では、今の制度として、しっかりした制度ができていて、適切に難民認定申請が、手続が進んでいるというふうに認識しております。  今回の法改正においては、更に補完的保護という形でその枠を広げる。これをどの範囲でどのような形にするのかというのは、法律の条文はありますけれども、今後の運用には任されますが、できるだけ国際水準に近づけよう、そういう考え方だというふうに考えているところでございます。
  90. 柳瀬房子

    柳瀬参考人 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、そもそも日本に来る方がほとんど難民ではない。それでも、私自身は、十七年間やって六案件難民として意見書を書きましたし、認められました。五案件はかなり前なんです。ところが、六件目はつい最近です。  ですから、ほとんど難民じゃないと思っていても、異議申立てといいますか審査請求があった場合に、参与員が関わることで、聞き逃していたことをまたお話を伺ったりすることによって、難民としての蓋然性が認められるケースがあります。  ですから、おおむね難民じゃない人たちが来ているとは分かっていても、一人一人丁寧に意見を聞くということを続けていきたいと思っております。
  91. 高井崇志

    ○高井委員 ありがとうございます。  それでは、市川参考人児玉参考人に同じ質問をしたいと思うんですが、難民認定制度も、もし御意見があったら伺いたいと思いますが。  私は、やはりこの間の法務委員会での質疑なんかを見ていても、法務省の姿勢も、何か本当に人権擁護というかそういう視点があるんだろうかと。あるいは、今、外国の、海外の人権外交みたいな点でも、なかなか諸外国に比べると日本の意識が低い。中国のウイグルの問題とか、香港の問題とか、ミャンマーの問題などを見ても、非常にやはり政府が後ろ向きというか。ある意味、制度を厳格に運用しているといえばそうかもしれません。例えば、国内法がないからできないんだとかいうことを法務省も答弁するんですけれども。  この辺、日本政府あるいは日本国民も、人権擁護の意識が私は何か薄いんじゃないかなとちょっと最近感じるんですけれども、お二人の参考人の御意見をお聞かせください。
  92. 市川正司

    市川参考人 まず、難民認定に関しては、先ほど少しお話ししたんですが、私は、認定率というのは一つ一つの審理の結果の積み重ねでありまして、何%であればいいとかというふうには必ずしも考えてはおりません。  ただ、今の審査の在り方からすると、例えば迫害の態様についても、身体、生命に対するものにかなり限定して迫害の態様も取られていたりとか、その人が迫害を受けているんですかという、かなり厳しく高いレベルの立証まで求めるとかというところは、ちょっと国際的なスタンダードからすると高きに失する。これは、やはりUNHCRなり何なりの認定基準をもう少し身につける作業といいますか、これが必要だろうなと思っています。  それから、日本の法政策の基礎にある国民の理解といいますか、そういう点につきましては、これは本当に私の個人的な意見でございますが、確かに、単一民族であるとかいろいろな言い方で、外国の方に対する抵抗感みたいなものがございますけれども、この五年ぐらいの状況を見ますと、やはり外国人の方の受入れというのは、流れの中でやむを得ない、前向きに受け止めていかざるを得ない状況になっていて、それも、しかも東京だけではなくて全国のいろいろな生産現場の中に外国の方が入ってきている時代ですので、全国の生産現場外国の方が入っている、それでその地域に住んでいくということについて、もっと我々は、これがあり得べき姿なんだというふうに受け止めて、一緒にどうやって暮らしていくのかということを考えていくという。これは自治体もそうでしょうし、教育もそうでしょうし、そういった取組というのは国として是非やっていただきたいし、今、閣僚会議もつくってやっていただいておりますけれども、これをどんどん推進していただかなければいけないなというふうに思っております。
  93. 児玉晃一

    児玉参考人 まず、難民認定についてですが、これは、出入国在留管理庁という取締りを主管とするところが難民認定もしているところに最大の問題があると思っています。これはいろいろなところが御指摘されているところです。  今、難民調査官をやられている方々も、元々難民認定をしたくて入管に入っているのではなくて、国境の管理、それを通じた治安の維持という、それはそれ自体でとても大事なことですが、そういう意識で入られている方が、ある日、辞令で、君、難民調査をやってと指示をされるわけです。元々のマインドが違います。  入国審査の方ですと、偽造パスポートを持って入ってきたらそれは排除しなくちゃいけないということになるでしょうが、難民調査の場合ですと、パスポートを偽造でしか取れなかったんだから、むしろこれは難民性としては認める方向で考えなくちゃいけない。その切り分けが、同じ組織がやっている以上はなかなか難しい。根本的にはここに問題があるのではないかと思います。  そして、難民認定に関して基準という話もありましたが、私は、東日本大震災が起きた後に、ボランティアで岩手県あるいは宮城県の避難所を回りました。そのときに、例えば、支援金が出るのは、法律では同じなんですね、大規模半壊だったりとか全壊とか。ですが、法律上の文言は全壊となっていますけれども、例えば、じゃ、岩手県で全壊と認定されるのが床上浸水まで、宮城県でだったら一階の天井までとなったら、これは同じ法律に入っていることにならないんです。  難民条約も同じで、国あるいは担当者による多少の解釈のずれというのはそれは当然出てくるでしょうけれども、余りに違うことになると、これは同じ難民条約に入っていることにならない。だからこそ、同じ、同程度の標準でやらなくてはいけない。そういう意識が残念ながらちょっと欠けているのではないかと思います。  二番目の外国人に対する人権意識というところに関しては、これはいろいろあると思いますが、最近は非常に関心をお持ちいただいている方が多くなっていると思います。そこは、今回の入管法審議に当たっても、そういう意識というのは出てくると思います。大変重要な問題ですので、ここでどれだけ時間をかけ、慎重に審議し、妥当な結論を導くのか、まさにそれが、この国の外国人に対する人権意識が問われているのではないかと思います。  以上です。
  94. 高井崇志

    ○高井委員 大変参考になりました。審議にしっかり生かしたいと思います。  どうもありがとうございました。
  95. 義家弘介

    義家委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。  参考人皆様には、貴重な御意見をお述べいただき、誠にありがとうございました。委員会を代表して御礼の御挨拶を申し上げます。ありがとうございました。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  96. 義家弘介

    義家委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続き、内閣提出出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本国籍を離脱した者等出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、お諮りいたします。  本案審査のため、本日、政府参考人として出入国在留管理庁次長松本裕君及び外務省大臣官房審議官長岡寛介君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  97. 義家弘介

    義家委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  98. 義家弘介

    義家委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。大口善徳君。
  99. 大口善徳

    ○大口委員 公明党の大口善徳でございます。  本入管法改正法案は、昨年六月に収容送還に関する専門部会が取りまとめた送還忌避長期収容問題の解決に向けた提言等を踏まえ、作成されました。  本法律案については、我が党は、法務部会と難民政策PTで合同で外国人支援団体や学者からヒアリングを行うなど検討を行い、昨年九月には当時の法務大臣に申入れをいたしました。また、法務部会におきましても、種々問題点を指摘をさせていただきました。  本日は、党内論議や外国人支援団体からのヒアリングで指摘された事項について質問したいと思います。  まず、昨日の法務委員会でも指摘されました、名古屋入管におけるスリランカ人女性死亡事案についてお伺いします。  この件、死因の解明が未了とのことでありますが、スリランカ人女性の体調が非常に思わしくなかったことは中間報告でも明らかであり、支援者が支援を申し出ている状況を踏まえると、仮放免を許可して、外部の医療機関により継続的な治療を受けさせる必要があったのではないかと考えます。また、収容施設内で医療従事者でない看守勤務員がバイタルチェックを行っているなど、医療体制も十分でなかったと考えます。  直ちに改善を講ずることが必要ではないかと思っておりますし、真相解明を大臣がどう取り組んでいかれるのか、この点についてもお伺いしたいと思います。
  100. 上川陽子

    ○上川国務大臣 今回の事案についてでございますが、亡くなられた方が体調不良を訴えられ、また、支援者の方からも様々な申入れがあった中で、医師による診療を行っていたものの、死亡に至ったことにつきましては大変重く受け止めております。亡くなられた方に心からのお悔やみを申し上げたいというふうに存じます。  私は、今回、事案が発生したことを受けまして、出入国在留管理庁に対しましては、三つのことを特に迅速にやってほしいということを指示をいたしました。  一点目は、まさに真相解明ということに至るその事実がどうなっているのかということについて、正確な事実関係をしっかりと速やかに調査をするということでございます。  そして、二点目は、コロナ禍ということもございまして、なかなか体調については、そうでなくても状況がなかなか難しいということでございますので、現に収容中の方々に対しましては、そうした背景もございまして、一層手厚い診療、また健康管理などを行うこと、これについても指示をいたしました。  さらに、三点目でございますが、常勤医師の確保、これは長年の問題でもございましたし、また、外部医療機関としっかりと連携をしていくということは、これはコロナ禍でも大変求められてきたことでございましたので、そうした今の制度の中でもでき得ること、これについては全てやるようにという形で、努力を指示をしたところでございます。  事実関係の調査は、今般、現時点で判明している診療経過等の客観的な事実関係、これは中間報告としてなるべく早く取りまとめるようにということでございまして、お示しをさせていただきました。  事案に関しての対応の適否でありますとか必要な改善策につきましては、そうしたことを踏まえた、今後、最終報告においても示したいと思いますが、今はまず事実関係をしっかりと把握していき、皆様に、忘れるような状況にならないように、早く早くまとめるようにということで指示をしております。  また、被収容者の診療と健康管理につきましては、各施設、収容施設で体調不良等を訴えている方がいらっしゃるかどうかということについては、改めて確認を指示をしておりまして、個別の状況に応じまして、やはり外部の医療機関にしっかりと受診していただく、このことを対応を進めている状況でございます。  また、コロナ禍の状況も踏まえまして、仮放免が適当でない特段の事情がある場合、これを除きまして、仮放免につきましては積極的に行う方針で対応を進めていくということでございまして、特に、体調不良の方の対応につきましては迅速な対応をするように、こんなところでございます。  三点目の医療体制の充実の努力ということでありますが、何といっても常勤医師の確保ということでありますので、ホームページ等の募集、また医師会への働きかけにつきまして積極的に行いまして、連携強化が本当に進むようにということも含めまして、その体制については充実してまいりたいというふうに思っております。  今回の改正法案でございますが、収容に代わる選択肢として監理措置創設するとともに、仮放免につきましては、監理措置に付されない場合に、健康上の理由等により収容を一時的に解除する必要がある場合の措置として整理をすることといたしました。  治療費等の負担が可能な外国人の方、第三者による支援が期待できる外国人にとりましては、この監理措置、また改正後の仮放免の手続につきましては、収容されることの負担の軽減とともに、施設外の病院におきまして継続的に治療を受ける可能性を広げるものと認識をしているところでございます。  法務省といたしましては、この改正法案が成立した場合に、また新たな制度を適切に運用するところでございますが、まず、今できること、これにつきましては万全で臨みたいということで、努力をしているところでございます。
  101. 大口善徳

    ○大口委員 事案を重く見まして、しっかり対応をお願いしたいと思います。  次に、退去強制手続において、庇護、在留を認めるべき外国人を適切に判別、認定した上で、送還すべき外国人を迅速に送還し、送還忌避長期収容問題を解決する観点から、在留特別許可申請手続創設等入管法改正を評価いたします。  在留特別許可の運用の一層の適正化を図るために、我が党は、この考慮事情の具体的な考え方について、新たなガイドラインの策定の必要性も指摘したところであります。実際に、法務大臣出入国在留管理庁に対し、新たなガイドラインの策定、公表を指示していることも承知しております。  新たなガイドラインの検討状況と基本的な考え方をお伺いします。  また、在留特別許可判断において、児童の最善の利益や父母との非分離も重要な視点だと考えますが、検討中の新たなガイドラインへの記載を含め、どのような対応を考えているのか、お伺いします。
  102. 上川陽子

    ○上川国務大臣 委員御指摘の在留特別許可判断ということでございますが、これまでも個別の事案ごとに子の利益等の様々な事情を考慮して行ってきたところではございますが、法律上、これらの考慮事情につきましては明示されてこなかったところでございます。  改正法案でございますが、在留特別許可申請手続創設をいたしまして、考慮事情、これを明示をするということでございます。その上で、それぞれの考慮事情の具体的考え方につきましては、御指摘のとおり、運用上のガイドラインという形で策定することによりまして、退去強制事由に該当する外国人のうち、どのような者を我が社会に受け入れるのかを明確に示すこと、このことについては検討を進めているところでございます。  新たなガイドラインにつきましての考え方について御質問ございましたけれども、現在検討中というところでございますが、具体的には、我が国に不法に滞在している期間が長いこと、このことが在留管理秩序侵害の点において消極的に評価されることを明示する一方、本邦で家族とともに生活をするという子供の利益の保護の必要性を積極的に評価をすること、また、その間の生活の中で構築された日本人の地域社会との関係であるとか、あるいは将来の雇用主等の第三者による支援内容が十分なものであること、こうしたことを積極的に評価をするなど、明確に規定する必要があるというふうに考えております。  新たなガイドラインにつきましては、改正法が成立し、同法の施行日を踏まえた適切な時期に策定をし、公表をする予定でございます。
  103. 大口善徳

    ○大口委員 改正案の施行前に、在留特別許可がされず、退去強制令書発付された外国人について、また、今後、法改正の施行前に自ら出頭した者、摘発され退去強制手続中の外国人についても、新たなガイドラインの内容を踏まえた対応が必要ではないか。さらに、約三千人の送還忌避者や約八万人の不法滞在者も、新たなガイドラインの内容を踏まえた対応となるということなのか、確認をしたいと思います。
  104. 上川陽子

    ○上川国務大臣 現時点で既に退去強制令書発付を受けている約三千人余りの送還忌避者でございますが、在留特別許可判断におきまして、改正法案が意図する手続的な保障が与えられていなかったと言えます。そのことは、約八万人の不法滞在者のうち、今後、改正法施行前に摘発され、あるいは自ら出頭をしてくる者につきましても当てはまるものと考えます。  そのため、これらの者につきましても、新たなガイドラインの内容を踏まえまして、あるいはその内容に基づき、改めて在留特別許可判断をするということを検討しているところでございます。なお、その場合におきましても、既に不法滞在期間が長くなっている点につきましては、特例としてマイナスとしての考慮事情に含めないことも考えているところでございます。
  105. 大口善徳

    ○大口委員 それによって、不法滞在期間が長くなって、そのことを気にして出頭できない外国人もいらっしゃいますので、出頭を促す効果にもつながる、こういうふうに考えております。  それから、この改正法案の第五十条三項では、在留特別許可申請できるのは退去強制令書発付前となっています。  この点、現行法下においても、退去強制令書発付された外国人在留特別許可を求める事実上の行為として、いわゆる再審情願が行われていますが、改正法案では退去強制令書発付後の在留特別許可はどうなるのか、お伺いしたいと思います。
  106. 松本裕

    ○松本政府参考人 お答えいたします。  再審情願とは、法令上の手続ではなく、退去強制令書発付を受けた者が、その後の事情変更等を理由に改めて在留特別許可を求めることの実務上の呼称として運用がなされているところでございます。  そして、今回の改正法案におきましては、委員御指摘のとおり、退去強制令書発付前の者について在留特別許可申請手続創設しております。  もっとも、退去強制令書発付後に在留特別許可をすべき新たな事情が生じることもあり得ます。そこで、今回の改正法案におきましても、このような事情が生じた場合には、法務大臣が職権により在留を特別に許可することができることとしております。
  107. 大口善徳

    ○大口委員 入管法案の第五十条の一項ただし書において、一年を超える実刑を受けた者を在留特別許可原則的な不許可事由としています。ただ、ここには、在留許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情がある外国人についてはその限りではないということでございます。この対応についてお伺いします。
  108. 松本裕

    ○松本政府参考人 お答えいたします。  無期又は一年を超える懲役、禁錮、実刑でございますが、これらに処せられたとして退去強制事由に該当する者は、類型的に、我が国での在留例外的、恩恵的に認めることが好ましくないものであると考えております。そのため、これらの者に対しましては、テロリストや暴力主義的破壊活動者と同様、原則として在留特別許可をしないことを法律上明示しております。  他方、御指摘のとおり、在留を希望する事情は様々でございまして、御指摘のような者でございましても、個別の事案によってはなお在留を認めるべき事情例外的に認められるケースはあり得るところでございます。  そのため、改正法案では、例えば、本邦で家族とともに生活するという子供の利益の保護の必要性等の積極的に評価すべき事情が消極的に評価すべき事情を明らかに上回るときとか、難病や重篤な病気に罹患し、本邦における治療が困難であり、本邦の医療機関において治療を受けることを必要とするときなど、本邦への在留許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情があると認めるときに限り、在留特別許可ができるものとしたところでございます。
  109. 大口善徳

    ○大口委員 我が国における難民認定数、認定率のいずれについても諸外国に比べて低いことが指摘されています。午前中の参考人の御意見ですと、認定基準については、安冨、柳瀬参考人は、外国とは違わない、市川参考人は、日本は解釈と立証が厳しい、こういうふうに述べられてもおります。  補完的保護対象者認定制度創設することと併せて、難民認定制度自体を一層適正化する取組を進める必要があると考えますが、難民該当性に関する規範的要素を明確にする運用指針の策定、難民認定申請者の出身国情報の集積、分析を行い、難民調査官難民審査参与員に提供する体制を整備し、研修等により難民調査官の調査能力の更なる向上など、どのような取組を進めていくのか、また、取組を進めるに当たってはUNHCR等の協力を得る必要もあると考えますが、どのように連携を図っていくか、大臣にお伺いします。
  110. 上川陽子

    ○上川国務大臣 委員御指摘いただきました規範的要素の明確化ということでございますけれども、この難民該当性に関する規範的要素の明確化のために、我が国及び諸外国のこれまでの実務上の先例のほか、UNHCRが発行している諸文書等を参考にさせていただきながら、その検討を行っているところでございます。  規範的要素の明確化は、難民及び補完的保護対象者のより適切かつ迅速な認定、また判断の透明性の確保にもつながることでございまして、申請者サイドにおきましても、適切、的確な申請を行うことが可能となると考えております。策定後、できるだけ早期に公表をしたいと考えております。  さらに、職員の調査能力等の向上ということで御指摘がございました。UNHCRとの協力連携を通じた研修や提供を受ける外国情報等を積極的に活用させていただきまして、入管職員の能力向上をさせるとともに、早い段階難民等につきましてより適切かつ確実に判断することが可能となるというところでございます。  さらに、在留期間を超えて在留を希望する外国人につきましては、その状況、意図を的確に把握し、適切な助言、また入管法上の対応につなげて、不法滞在者になることを防止することも必要でございます。仮に不法滞在となった後でありましても、早期に適切な指導等を行うことによりまして、濫用、誤用的な難民等認定申請を可能な限り防止することも重要と考えております。  これらの点につきましては、入管庁と支援団体、また外国人コミュニティーの皆様との連携が不可欠である、こういうことも認識をしているところでございます。
  111. 大口善徳

    ○大口委員 難民条約上の難民ではないものの難民に準じて保護する、今回、補完的保護対象者認定制度が法案に盛り込まれたわけでありますが、この対象を拡大すべきとの指摘があります。どのような対応を考えているのか、伺います。
  112. 松本裕

    ○松本政府参考人 お答えいたします。  補完的保護対象者は、難民条約における難民の要件のうち、迫害理由が、人種、宗教国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治意見であること以外の全ての要件を満たすものであることを明文で規定しているところでございます。そのため、難民条約上の迫害を受けるおそれがある者は、その理由を問わず、難民か補完的保護対象者として保護することが可能となります。  さらに、難民と同様に在留資格を認めるべきものとの視点からも、その対象範囲は適切であると考えているところでございます。  なお、補完的保護対象者とは認定できない場合でございましても、本国情勢等を踏まえて、人道的な配慮を理由我が国への在留を認めることが相当判断される場合には、在留特別許可をすることなどにより適切に対応したいと思っております。
  113. 大口善徳

    ○大口委員 また、入管法改正法案における送還停止効例外は、これは我が党も、ノン・ルフールマン原則に照らして、この例外ということを相当議論させていただきました。その結果、例外中の例外とすべきだという申入れを行わさせていただきまして、三回目以降の難民認定申請者を送還停止効例外とすることになったわけであります。  ただ、三回以上の難民認定申請の場合においても、しっかりやはり考慮すべきであろうということで、この難民認定された例、それについて、一つは、三回以降の難民認定申請難民認定とされた例があるのかということを確認したいということと、他方で、三回目以降の申請については、認定を行うべき相当理由がある資料が提出された場合には、この送還停止効は続くということですので、このことを的確に確認することが非常に重要であると考えております。  現時点でどのような手続、方法を考えているのか、お伺いします。
  114. 松本裕

    ○松本政府参考人 お答えいたします。  まず、これまでに、三回目以降の申請に対しまして難民認定手続難民認定された事例は、確認可能な限りでは承知しておりません。  また、三回目以降の申請者が提出した資料が、難民又は補完的保護対象者認定を行うべき相当理由があると認められるか否かは、申請者の陳述を始め、申請者が提出をした申請書等の資料の内容難民等認定を行うべき事情が含まれるかどうかを個別に検討した上で判断することとなります。  そして、その判断の慎重を期すため、地方の入管局ではなく、出入国管理庁本庁においてもその点を確認する予定でございます。  なお、相当理由がある資料の提出があった場合は、速やかに難民等認定手続を進め、難民等認定を行うことになります。
  115. 大口善徳

    ○大口委員 この送還停止効例外に該当すると判断された場合、外国人本人に速やかに告知されるのかということをまず確認をしたいと思います。  そして、また、行政訴訟の係属中や二度目の難民認定処分に係る取消し訴訟の出訴期間中の送還停止といった、裁判を受ける権利を保障するための仕組みは設けられているのか、お伺いしたいと思います。
  116. 松本裕

    ○松本政府参考人 お答えいたします。  当庁といたしましても、難民認定申請を行っている外国人がその申請中に送還され得る立場にあるか否かを認識できるようにすることは、送還を適正かつ円滑に行う観点から重要であると考えているところでございます。  この点、改正法案におきましては、退去強制令書発付後、早期に、当該外国人を直ちに送還することができない原因となっている事情を把握した上で、退去のための計画を定めることとしております。  この退去のための計画につきましては、例えば、送還停止効の適用等といった、送還を妨げる事情がなくなった場合には、その後の適切な時期に送還を行うものとして送還予定時期を定め、本人に説明するなどの運用を考えております。退去のための計画の内容やその変更等につきましては、当該外国人送還され得る立場にあるか否かを常に認識することができるよう、運用上、当該外国人に適時かつ丁寧に説明することを予定しており、その具体的方法について、現在検討を行っているところでございます。  また、退去強制令書発付された場合、入国警備官は、退去強制令書発付された外国人を速やかに国外退去させる行政上の義務を負うところでございます。  もっとも、この当該外国人が行政訴訟を提起し、これを受けて、裁判所が送還に関する執行停止の判断、これは決定でございますが、これを行った場合、法律上、送還は停止されます。この点、例えば、退去強制令書発付されたときは、当該処分に係る取消し訴訟の出訴期間などを教示しなければならず、退去のための計画と併せて、本人訴訟により処分の効力を争う機会は確保されていると考えているところでございます。
  117. 大口善徳

    ○大口委員 また、この改正法案においては、収容期間上限、あるいは事前の司法審査を設けていません。  それで、この点について、いろいろと、支援団体や日弁連等からも意見がございます。収容期間上限については、期限が来ましたら全員の収容を解かなきゃいけない、収容が解かれることを期待して退去を拒み続ける人も出てくると。  事前の司法審査については、行政訴訟手続があるというようなことは説明は受けているわけでありますけれども、ただ、これは専門部会でも議論になったと承知しておりますけれども一定の期間を超えて収容を継続しようとする場合、その要否をできる限り公平公正な立場から適切な判断がなされることを十分に担保する仕組みを検討すべきであると、我が党も申し入れたところでございますけれども、現時点でどのような対応を考えているのか、お伺いいたします。
  118. 松本裕

    ○松本政府参考人 お答えいたします。  改正法案による監理措置退去命令制度等の創設によりまして、被収容者数、中でも長期被収容者数につきましては減少するものと認識しております。  具体的には、長期に収容されることとなる者は、一定の犯罪を犯した者と、逃亡のおそれが極めて高く、かつそれぞれの個別事情により迅速な送還を妨げる要因が存在する者に限られると考えているところでございます。  その上で、御質問の仕組みといたしましては、例えば、一定期間を超えて収容されている被収容者につきまして、地方官署、地方の入管局でございますが、地方官署に報告を求め、退去強制令書発付する主任審査官よりも上位かつ独立した立場の者である出入国在留管理庁長官が、被収容者の個々の事情を踏まえ、収容継続の要否を検討した上、監理措置に付する旨の決定をし得るのかを審査することなどを現在検討しているところでございます。
  119. 大口善徳

    ○大口委員 長官が自らしっかり責任を持って判断するということでよろしいんですか。
  120. 松本裕

    ○松本政府参考人 御指摘の内容での運用を検討しております。
  121. 大口善徳

    ○大口委員 次に、監理措置に付された外国人の方がどのように生活をし、医療を受けられるのかということで、これについても、支援団体の皆さんからも、例えば、国民健康保険の適用というのは考えられないのか、あるいは、特に退去強制令書発付後においては、要するに、就労ができない、生活ができないんじゃないかというような御指摘をいただいているわけです。被収容者の場合は生活費とか医療費というのは国が負担するのであるわけだから、同様に、国が監理措置に付された方の生活費とか医療費について負担をすべきだ、こういう指摘もあるわけであります。  この点についてどのように入管庁は考えておられるのか、お伺いします。
  122. 松本裕

    ○松本政府参考人 お答えいたします。  監理措置に付されて社会内で生活しながら退去強制手続を受ける外国人は、適法に在留する外国人と同様、自ら又は家族、親族等の援助により生計等を維持すべきものと考えております。そして、退去強制令書発付前の者につきましては、一定の要件の下、生計を維持する範囲内での就労を認めているところでございます。  当庁といたしましても、監理措置対象者につきまして、必要に応じて、大使館、領事館に対し、自国民保護の視点からの支援を要請することも考えております。また、退去強制手続を迅速的確に進めることは、被監理者我が国における生活、医療上の負担の軽減にもつながるものと認識しております。  その上で、当庁といたしましては、正規在留者が不法在留者とならないために、あるいは不法滞在となった場合でも、可能な限り早期に適切な対応を取るためにも、ふだんから、外国人支援しておられる組織、団体、あるいは外国人コミュニティーとの連携というものは非常に重要であると認識しております。そのような組織等との適切な連携の在り方につきましては、引き続き積極的に検討する予定でございます。
  123. 大口善徳

    ○大口委員 支援団体の皆さんは、本当に献身的に支援をされているわけであります。支援団体の方々と連携をしていくというのは分かるんですが、やはり、財政的な確保等、常々、支援団体の方々も苦労されておるわけです。そこら辺について、どう認識され、どう考えているのか、お伺いします。
  124. 松本裕

    ○松本政府参考人 お答えいたします。  委員御指摘のとおり、監理措置という中で監理人に就かれることを予定されておられる支援団体、あるいは支援組織の方々が財政的な支援等を求めておられるというところは、当庁といたしましても認識しておるところでございます。  その点につきまして、どのような当庁としての対応があり得るのか、現在検討しているところでございます。
  125. 大口善徳

    ○大口委員 これは大臣にも、通告していないんですが、ちょっとお伺いしたいと思います。
  126. 上川陽子

    ○上川国務大臣 新しい制度も組み込まれた新たなこの改正案が成立した暁には、それが適正に運用されること、そしてまた、持続可能な形でこの日本の社会の中でもしっかりと息づくことというのは極めて必要なことでございますので、様々な御指摘を今もいただいておりますが、その一つずつについては検討するということ、そして、その部分について、関係する皆さんの声もしっかりと伺いながらということで、この間やってきましたので、こうした姿勢で、今答弁したとおりでございます、検討をさせたいと思っております。
  127. 大口善徳

    ○大口委員 本当に前向きにこれから検討していただきたい、こういうふうに思います。監理措置が成功するかどうかは、やはりそこにかかっている要素が非常に強いと思っております。  次に、監理人の義務が過度な負担となると監理人のなり手がいなくなり、監理措置がうまく機能しないおそれがあります。違反した場合、過料の制裁が科される届出義務が負担となる旨の指摘もあります。  届出事項の具体的な内容や、この届出の方法、例えばオンラインなどの簡便な方法についてどのような対応を考えているのか、入管庁にお伺いします。
  128. 松本裕

    ○松本政府参考人 お答えいたします。  当庁といたしましては、監理措置に付された者による逃亡等の条件違反行為を未然に、かつ適切に防止するとともに、仮に何らかの支障が生じた場合は監理人と適切に連携して対処するため、生活状況等の必要な事項について監理人からの届出を受けることにより、対象者状況を的確に把握することが、本制度上、監理措置上、必要かつ重要であると考えておるところでございます。  このように、監理人の届出義務は監理措置制度の中核を成すものでございますので、その違反については一定の制裁を設けて、その履行を担保することも必要であると考えております。もっとも、届出人の届出事項は、その負担を考慮し、法律上、必要最小限度のものとしております。  さらに、簡便な届出の方法等、これは委員の御指摘も含めまして、その運用の在り方につきましても、監理人の負担の軽減の観点から、積極的に検討してまいりたいと思っております。
  129. 大口善徳

    ○大口委員 次に、これは日弁連の皆さんからの意見なわけでありますけれども難民認定処分取消し訴訟退去強制令書発付処分取消し訴訟を受任している弁護士は、つまり依頼人の監理人となった場合に、届出義務との関係で守秘義務違反や利益相反とならないか、また、そうならないための何らかの手続的な工夫を考えているのかということについてお伺いしたいと思います。
  130. 松本裕

    ○松本政府参考人 お答えいたします。  弁護士の方が監理人になられて届出義務を履行するなどされた場合、その行為弁護士の守秘義務等に違反するかどうかは個別の届出の内容等を踏まえて判断されるものでございまして、一概にお答えすることは困難でございます。もっとも、一般的に、弁護士の守秘義務は、当該秘密の主体の同意があれば解除されると考えております。  また、当庁におきましては、既に訴訟等を受任しておられる弁護士を含め、監理人として選定された者に対しまして、運用上、監理人の届出義務の内容等を御説明する予定でございます。  さらに、当庁におきましては、外国人監理措置に付そうとする際には、監理人が法律上必要な事項を入管庁、当庁に対して届け出ることにつきまして、当該外国人から事前に書面で同意を得ることも予定しているところでございます。
  131. 大口善徳

    ○大口委員 書面で監理人の仕事の内容をしっかり確認した上で、同意書を取るということをしっかりやっていくということですね。  次に、監理措置のこの監理という言葉についても、これは何といいますか、支援団体の方々としては、非常にこの監理という言葉に抵抗がある、こういう議論もありました。  この監理措置制度監理について、法律上の用語としては監理人という用語を用いることとなったわけでありますけれども対象外国人に対する必要な情報の提供や助言、援助等を行うよう努めることとされているわけであります。そのため、監理人になっていただく方々や対象外国人にその役割が的確に伝わるようにするために、例えばサポーターというような呼称を運用上定着させることが重要であると考えます。  法務大臣にお伺いします。
  132. 上川陽子

    ○上川国務大臣 監理措置における監理人につきましては、外国人の家族やまた親戚などの方々だけではなく、支援者や支援団体、あるいは行政書士や司法書士等、可能な限り多くの方たちに引き受けていただける環境の整備ということが必要ではないか、必要というか、重要であるというふうに認識をしているところでございます。  今、呼称ということでございますが、例えば日本司法支援センターという法律がございますが、その愛称として法テラスという、これが今や多くの方々に親しみとともに定着してきた、こういうこともございますので、監理措置制度におきましても、先ほど委員御指摘のように、対象外国人の方々への指導助言等を担当する地方入管職員と密接に連携していただくなどの観点から、委員御指摘のサポーターというフレーズにつきましては、そうしたことを取り入れた呼称といったことを用いることも考えられるところでございます。
  133. 大口善徳

    ○大口委員 次に、監理措置制度が機能するためには、監理支援を担当する職員監理人が手を携えて被監理者である外国人の方に寄り添っていく、そして助言や支援を行うことが求められるわけです。その際には、やはり入管庁の職員監理人、被監理者とが対立する構造は、これは望ましくないわけでございます。  そういう点で、この監理支援を担当する職員には、外国人収容等する入国警備官とは別に、どのような立場職員を充てることを考えているのか、これをまずお伺いしたいと思います。  それから、この監理措置というのは、入管庁にとっては新たな取組になるわけでありますので、職員に対する研修やノウハウの蓄積が重要になってくるわけであります。どのような体制を構築していくのか、入管庁にお伺いしたいと思います。
  134. 松本裕

    ○松本政府参考人 お答えいたします。  改正案におきましては、監理措置に付され、社会内で生活しながら退去強制手続を受ける外国人に対しまして、監理人が、当該外国人からの相談に応じ、必要な情報の提供、助言その他の援助を行うよう努めるものとされているところでございます。  そして、当庁におきましても、外国人収容等する入国警備官とは別の職員が、監理人と緊密に連携して当該外国人生活状況等を把握し、外国人に対し必要な助言をするなど適切に対応することを予定しております。  また、退去強制令書発付後におきましては、入国警備官が、当該外国人の意向を聴取するなどして、退去のための計画を定めますところ、その際、当該外国人につきまして支援を要する事項等を把握した場合には、当該外国人の了解を得た上で、監理人と当該担当職員にその情報を提供することを予定しております。  監理措置に付された外国人への必要な支援は、これらの法律上の制度や運用上の措置により図られるものと認識しております。  また、運用上参考となる事例や、逆に対応上問題や課題が認められる事案につきましては、これを適切に蓄積し、組織内における情報共有とともに職員の研修にも活用することとしたいと考えております。
  135. 大口善徳

    ○大口委員 監理支援を担当する職員なんですけれども、具体的にはどういうふうに考えていますか。
  136. 松本裕

    ○松本政府参考人 お答えいたします。  保護の分野で、保護観察官と保護司さんと対象者という取組がございますが、それを念頭に置きまして、入管庁の職員は、対象外国人の生活上のいろいろな課題等々につきまして監理人とともに適切な指導助言を行う、そのようなことをイメージし、それにふさわしい職員を充てることを想定しております。
  137. 大口善徳

    ○大口委員 もう時間もありませんので、最後にお伺いしますけれども、この送還忌避長期収容問題を解決するため、本改正法案は私は必要だとは思います。  他方で、この入管法改正案に対しては、支援団体、外国人支援組織の皆さんでありますとか、あるいは国際機関等から様々な指摘や懸念の声が示されていることも事実であります。  この入管法改正案を円滑に施行していくためには、こういう支援組織、団体や機関等の理解や協力を得ることが極めて重要だと考えております。本当に、監理人にしっかりなっていただくということが非常に大事なわけであります。  そういう点で、今後どのように対応していかれるのか、大臣にお伺いしたいと思います。
  138. 上川陽子

    ○上川国務大臣 改正法下におきましては、例えば、新設する監理措置等の円滑な運用、先ほども御質問がございましたけれども難民認定制度の一層の適正化のための様々な手続、こういったことの充実を図るためには、何と言っても支援団体やまた国際機関でありますUNHCR等の国際機関に御協力をいただくことが必要であるというふうに考えております。  これまでも出入国在留管理庁におきましては、支援団体やUNHCR等とは累次にわたりまして協議をしてきたところでございますので、さらにまた、改正法案内容やまた懸念事項、こうしたことにつきましても考え方を説明し、また様々な指摘もいただいてきたところでございます。  今後も、引き続き、この支援団体、国際機関の理解をしっかりと得た上で、しっかりと御協力をいただいて、この新たな制度そのものも含めましてこれが我が国に定着することができるようにするためには、そのための環境整備というのが極めて重要であるというふうに考えておりますので、丁寧に説明を尽くしながら取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  139. 大口善徳

    ○大口委員 時間が来ましたので、以上で終了いたします。  ありがとうございました。
  140. 義家弘介

    義家委員長 次に、小林鷹之君。
  141. 小林鷹之

    ○小林(鷹)委員 自由民主党の小林鷹之です。  本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。  まず、前回の入管法改正時を振り返りますと、そのとき、たしかポイントは、深刻な人手不足があって、その人手不足を解消するための外国人労働者の特定技能の創設、これがポイントだったと捉えております。  当時、自民党内の会議におきましてもいろいろな議論が行われておりまして、私自身も常に参加をさせていただきまして、外国人労働者の方のオーバーステイですとかあるいは逃亡などの様々な問題につきまして毎回意見を述べさせていただいておりましたが、今回、入管法違反をした外国人長期収容に関する問題に関連して提出されました入管法改正案につきまして、できるだけ提案する形で、政府とやり取りをさせていただきたいと思います。  最近、入管法が何度も改正されていますけれども、その最近の経緯を追っていきますと、二〇一四年改正時には高度専門職が創設された。二〇一六年改正時には偽装滞在対策の強化、そして二〇一八年改正時は今申し上げたとおり特定技能の創設、そして今回と至っているわけでございますけれども、通して見たときに、これは私の個人的な所感でもあるんですけれども、経済成長のために高度人材が必要になったり、あるいはその結果として人手不足になったりすると出入国管理政策が緩む、緩める。一方で、偽装滞在等の問題が大きくクローズアップされ出すとそれを逆に締める、そういうことを繰り返しているように私には映ってしまうところがあるんです。  そうすると、私は、外国人の受入れ政策というのは我が国の国柄に関わる重要な問題であるというふうに捉えておりまして、本来であれば、私たち、立法府に所属する国民の代表たる私たち議員が、かんかんがくがくと議論をして、この国が本当にどうあるべきなのか、そういうことを議論した上で、国民皆様にその姿をお示しした上で、じゃ、外国人の受入れ政策って個々にどうすべきなのかね、制度ってどうすべきなのかねということを議論するのが本来の筋だというふうに私自身は思っているんです。  ただ、しかしながら、前回の例えば特定技能制度の導入時などを振り返りますと、中身は私も賛成はしているのであれなんですけれども、プロセス論ですね、プロセス論としまして、そうした議論が若干乏しいまま制度改正に突き進んだという印象が私にはあって、若干場当たり的な感じも否めなかったというふうには個人的に感じる部分があったんです。  そこで、上川大臣に伺いたいんですけれども、よく共生社会と言われます。受け入れた外国人と共生するということは当然のことだと思うんですけれども、そもそも、大臣は、中長期的に我が国はどういう姿を目指していくのか、どのように考えていらっしゃるのか、その点について見解を教えていただきたいと思います。
  142. 上川陽子

    ○上川国務大臣 外国人の方々を我が国にどのように受け入れ、また在留をしながら、つまり外国人にとっては在留ということでありますが、社会の中では共生ということでありますけれども、社会全体を進めていくのかということについては、これは本当に、委員御指摘のとおり、基本的な考え方に関する問題でございまして、私自身も、絶えずこの問題につきましては向き合いながら、今の法務大臣としての職責も果たしていく覚悟で、今臨んでいるところでございます。  日本の社会、日本の国、あるいは、今これから、このコロナ禍でありますけれども、国際的に非常にグローバルになり、また、人の移動も非常に密度が濃くなっている国際的な状況でございます。こういったことをストップするということはできません。さらに、インバウンドの方々も、六千万人を受け入れるというところも、政府の目標として掲げてきているところであります。  在留資格はいろいろございますが、その在留資格の範疇の中で、出入国在留管理庁におきましては司令塔機能を果たしているわけでありますが、いろいろな方々が日本の社会の中で関わっていく、あるいは関わろうとしている、その気持ちについては、私はとても大事なことであるし、また、日本人も同じように海外に出て対応するということでありますので、そういった意味で、新しい時代に入ったという認識を私自身は持っております。  法務省としても、これまで外国人の受入れという形で進めてきましたけれども在留資格を有する全ての外国人の方々を孤立させることのないように、また、生活者としての外国人という、そうした一人だった、そういうことで、日本の今の社会を構成する一員として受け入れていくということであるというふうに思っておりまして、その意味では、多様性も、同時に包摂性も含めて、これを両輪として整備をしていくことが必要ではないかと思っております。  前回の法改正のときに、皆さんは入管入管とおっしゃいまして、そこのところに大変厳しいハードルを設けながら在留資格を与えてきたという長い歴史がございました。入管と同時に、出国もございます。同時に在留も、実は所掌しているわけであります。これをフルに、入国、まあどっちがスタートか分かりませんが、入国、在留、そして出国も含めて、トータルに出入国在留管理庁がその任に当たるということ、このことをしっかりと明示するということで、長い庁の名前を、ある意味では残している状況でございます。  まさに、一つずつの法案を通してこうした本質的な問題も含めて議論を重ねていくこと、そして、制度そのものも、先ほど来申し上げたように持続可能なものとしていくためには、やはり、それぞれの立場に立った、いろいろな課題について向き合っていかなければいけないというふうに思っております。  その意味で、今回の法案の改正ということでございますが、いろいろな角度から御審議をいただくことができるように、説明としても尽くしてまいりたいというふうに考えております。
  143. 小林鷹之

    ○小林(鷹)委員 大臣、ありがとうございました。  是非、今、政治家としておっしゃっていただいた、その点を踏まえまして、引き続き御対応いただきたいと思います。  法案の具体的な内容について質疑に入る前に、一点伺いたいと思います。  現在、私は、自民党内におきまして、経済安全保障について関心を持って取り組んでいる一人であります。入管法は、その経済安保の観点からも極めて重要な法律であるというふうに認識していまして、すなわち、留学生ですとか、あるいは正規の就労資格を有した在留外国人による先端技術、あるいは機微情報、こうしたものの窃取、盗み取るですね、これが企業の利益や国益を毀損する、そういった事例が、近年、数多く顕在化しています。  例えば、昨日来の報道によりますと、システムエンジニアとして日本に滞在していた中国共産党員の男性が、中国人民解放軍の指示によって、中国のハッカー集団とともに、JAXAを始め、およそ二百もの研究機関や企業にサイバー攻撃をしかけたとのことです。  例えばJAXAは、現時点では情報の漏えいはなかったというふうに広報の方がおっしゃっているんですけれども、そのほかの企業を含め、多くの機微情報が窃取された可能性というのは排除できないと私は思っています。  こうした事案に対する規制強化、特に国内滞在中にそういう行動が判明した場合には厳しい対処ができるように、法律を整備しなければならないと私は思っているんですけれども、同様の事案が頻発していることも踏まえまして、入管法の枠内においても、観光等の短期滞在以外の在留資格で入国する外国人の方については、経済安保の観点から、ビザの発給ですとかその更新に関する審査を厳格化すべきと考えているんですけれども、その見解を教えていただきたいのと、加えて、このような事案を早期に発見し、対処するためにも、我が国のインテリジェンス機能を強化することが重要であると考えますし、また、入国後のこうした行為をした外国人に対する措置について、より厳しく対応する措置が必要だと私は考えていますが、出入国管理政策上も、国外退去策ですとか、あるいは再入国を認めない措置を含め、様々な措置を検討すべきではないかなというふうに思っているんです。  伺いたいのは、入管法第二十四条に規定される退去強制事由にこうした経済安全保障に関する事由は明示的には含まれていないんですけれども、今申し上げたことについて、政府の見解を教えていただきたいと思います。
  144. 松本裕

    ○松本政府参考人 お答えいたします。  委員御指摘の先端研究情報の国外流出に関しましては、昨年の統合イノベーション戦略二〇二〇におきましても関係省庁が連携して対策を推進していくこととされておりまして、当庁におきましても、これを前提に、適切、厳格な入国、在留審査を実施しているところでございます。  まさに、この点は当庁単体で対応できる問題ではございません。特に、インテリジェンスという御指摘でございましたが、それらの機関との適切な情報連携、それを踏まえた個別事案における対応というものが必要であり、そのような関係を当庁といたしましても強化していきたいと考えております。  その上で、さらに、個別の事案に応じての対応ということになりますが、御指摘の退去強制事由、最後に包括的な規定もございます。事案に応じて、そのような規定の活用も視野に入れて、適切に対応したいと思っております。
  145. 小林鷹之

    ○小林(鷹)委員 念のため確認なんですけれども、今、最後、包括的な事由というふうにおっしゃいましたけれども、それは入管法第二十四条の第四号のヨというところに「イからカまでに掲げる者のほか、法務大臣日本国の利益又は公安を害する行為を行つたと認定する者」というふうにありまして、そこで読むことができるというふうに、そういう事案があるというふうに捉えていいということでしょうか。確認させてください。
  146. 松本裕

    ○松本政府参考人 お答えいたします。  個別事案ごとの判断だということを前提として、委員御指摘の条文、二十四条の四号のヨを想定しております。
  147. 小林鷹之

    ○小林(鷹)委員 明確にしていただいてありがとうございました。  先ほど大臣から、入国、出国、在留という、幅広いというお話ありましたけれども、今のその二十四条だけではなくて、入管法には第五条というのがあって、上陸の拒否事由というのがずらっと書いています。今回のコロナのときにもそこで読んだというふうに理解しているんですけれども、入国するときにも、その第五条の第一項第十四号に包括的な規定、先ほど申し上げた規定と似たような規定がありまして、そうした規定でしっかりと経済安全保障の観点から国益を守っていけるように、法務省の方でしっかりと対応していただきたい、水際対策も強化していただきたいというふうに期待をいたします。  それでは、今回の改正案について具体的に伺ってまいりますけれども、私個人としては、今回の政府案の考え方には基本的に賛同するところが多いです。この上で、更なる改善点もあり得るんじゃないかというふうに考えておりますので、その観点から、順次、伺っていきます。  入管法上、退去強制を受ける外国人につきましては、そもそも、日本の法律に違反している者であると。法律の厳格な施行の観点からは速やかに送還先送還しなければならないんだけれども退去強制令書発付を受けたにもかかわらず、様々な事情主張し、退去を拒んでいる者が存在していますと。その送還忌避者と呼ばれる人たちへの対応が困難であって、そのことが収容長期化を招き、今回の改正に至っているものと認識をしています。  まず伺いたいのは、課題となっている送還忌避収容者についてなんですけれども法務省の資料によると、令和元年十二月の時点で六百四十九名いらっしゃると。その中で、国籍別では、スリランカ、イランの順に多いというふうにされておるんですけれども、そもそも彼らの入国時の在留許可別の内訳というのを教えていただきたいと思います。
  148. 松本裕

    ○松本政府参考人 お答えいたします。  委員御指摘の数字は収容者の数という認識でおりますが、御指摘のいわゆる送還忌避者につきましては、令和二年十二月末時点で約三千百人存在しているところでございます。  その内訳という視点で申し上げますと、統計として把握しているものではございませんが、取り急ぎ可能な範囲で確認しましたところ、この三千百人のうち、入国時に短期滞在の在留資格を決定された者が約三分の一、短期滞在以外の在留資格を決定された者が約三分の一、そして不法入国、不法上陸及び不退去であって、そもそも在留資格を有していなかった者が約三分の一という状況でございます。
  149. 小林鷹之

    ○小林(鷹)委員 ありがとうございます。  三分の一が短期滞在ということで、予想されるところであるんですけれども、短期滞在がそれだけいるということは、オーバーステイになる確率が当然高いですし、また、その帰結として不法就労に結びつくというふうに考えられるんだと思います。  こうした不法残留、不法就労を含めました偽装滞在者への対策の強化としまして、平成二十八年の改正では、偽装滞在者対策強化としまして、罰則の整備と在留資格取消し制度の強化がなされたということです。  その在留資格と異なる活動をした場合に適用される在留資格取消し制度、これによって取り消された件数が増えているというのも背景にはあると思うんですけれども、不法残留者の統計を見ると、平成二十九年以降も増加しているんです。  なので、強化対策の効果についての分析を教えていただきたいのと、もう一つ令和二年三月から在留カード番号と外国人の雇用状況届出書のひもづけ、これをやったことによって偽装滞在者の把握の確度が上がったとされて、また、それによって、所在不明の留学生あるいは失踪技能実習生などの在留管理にもその情報を活用することがあるというふうに聞いております。  具体的にどの程度、その確度が上がったのかというのは存じ上げないんですけれども、そもそも雇用主側、事業者側はこうした制度をどの程度知っているのか、また、知っていたとしてもあえて提出しない事業者に対する罰則はあるのか、実際に罰せられた方がどれぐらいいらっしゃるのか、もし分かれば教えていただきたいと思います。
  150. 松本裕

    ○松本政府参考人 お答えいたします。  まず、外国人雇用状況等の届出の関係からお答えいたしますが、これは非常に大事な制度で、当庁にとっても非常に活用が期待されている制度でございます。そういう意味で、様々な機会に、外国人を雇用している、あるいは雇用する予定がある事業主に対しまして、外国人の雇用の際の注意点を説明しておりますところ、例えばリーフレットなどを活用して、御指摘の在留カード番号を含む外国人雇用状況の届出が義務づけられている旨を周知しているところでございます。  さらに、毎年、不法就労外国人対策キャンペーン月間といたしまして、事業主に対する啓発活動をより積極的に実施しておりますところ、本年度もこれらの予定をしておりまして、そこでの周知も図りたいと思っております。  要は、あり得ない在留カード番号の方の届出があれば、即座に我々も把握できて、適切な対応が取れるという状況でございます。  申し訳ございませんが、罰則関係等につきましては厚労省で、ちょっと現時点では把握できておりません。  さらに、不法滞在者の増加の要因でございますが、これは様々な要因があろうかと思います。入国される外国人の方の数が増えたということ、あるいは、その間における経済状況等々、それらの状況の総合的な、複合的な要因と考えておりますが、いずれにしても適切に対応する必要があると考えております。
  151. 小林鷹之

    ○小林(鷹)委員 前回の入管法改正議論の際も、失踪技能実習生の把握ができていないことなどが大きな問題となりました。  私自身も、在留カード番号とマイナンバーをひもづけるべきだというふうにずっと申し上げ続けているんですけれども、現在、参議院で法案が審議中ではありますが、九月に設置予定のデジタル庁、これが設置されたら、是非こうしたところと連携していただいて、個人的には、マイナンバーカードに在留情報もしっかり入れて確実な在留管理ができるようになることを望んでいます。  続いて行きますと、観光目的など短期滞在者として入国した後に、オーバーステイですとか不法就労などで収容されるケースが先ほど、多いという話もありました。そうであるとすると、入国時に、例えば、そういう外国人の方に、不法残留した場合の罰則ですとか、収容措置の存在ですとか、あるいは、難民認定のある意味難しさなどについて事前に説明した誓約書に署名、サインをしてもらうということも私は考えてもいいんじゃないかなというふうに思っているんです。  なぜかというと、そうすることによって不法残留への抑制効果が一定程度期待できるかもしれませんし、また、退去強制手続に仮に至ったときには、国の立場としてやはり説明責任がその分、果たしやすくなると考えるんですけれども、その見解についてどう思われるか、教えていただきたいと思います。
  152. 松本裕

    ○松本政府参考人 お答えいたします。  複数の視点がございますが、まず、難民に関しましては、難民の要件等が分かりづらいという御指摘がございまして、その点についての考え方について、運用指針的なものを今、UNHCR等の協力を得て準備をしているところでございます。そういう点を公開することによって、日本に来られる外国人も、我が国難民についての考え方というのをあらかじめ理解していただけることにつながるのではないかと思っております。  さらに、入国審査官は本人の申出に基づき厳格に入国審査をしているところでございますが、我が国における入管法上の仕組み、特に不法滞在あるいは不法就労が禁止されていること、当然のことでございますが、それには罰則があること等につきましての広報の在り方につきましては、御指摘を踏まえ検討していきたいと思っております。
  153. 小林鷹之

    ○小林(鷹)委員 例えば、飛行機の中で署名するような紙に加えれば、それほど、やることは難しいことじゃないんじゃないかなというふうにも思ったりしますので、是非そういうことも含めて御検討いただければと思います。  続きまして、政府入管法改正のQアンドAを読みますと、そこには、退去すべき外国人は、収容されることに不服があれば、行政訴訟を提起して、裁判所の判断を仰ぐことができるとあります。しかし、その平均審理期間は一年を超えるとの声も聞くんですけれども、実際どうなのかということを教えていただきたいです。  また、刑事事件とは違って、入管収容では、先ほど少し話も出ましたけれども、国選弁護人を選任する仕組みはないと聞きますし、また、法テラスも、在留資格がないと使えないと言う人もいます。収容について争おうとすると、自分で弁護士を探すか、あるいは自分でやるしかないということになると思うんですけれども令和元年入管関係訴訟訴訟係属中の方が六百四十九人中二十五人、率にして一二%とのデータもあるんですが、こうした点について政府がどのように捉えているのか、教えていただきたいと思います。
  154. 松本裕

    ○松本政府参考人 お答えいたします。  行政訴訟におきます審理期間につきましては、まさに個別の事件における当事者の訴訟活動等によるものでございまして、その長短を一概に評価することは困難でございます。  その上で、委員御指摘のように、行政訴訟を提起するに当たりましても、法律の専門家へのアクセスというのは非常に重要であると認識しております。  当庁におきましては、被収容者が行政訴訟を提起する意向を有する場合も当然ございますことから、収容所等の被収容者の目につきやすい場所に、弁護士会による無料法律相談に関する案内を多言語で表示しているところでございます。  さらに、中には、弁護士をつけたいんだけれども心当たりの弁護士がいないという方もいらっしゃると思います。そのような場合には、その外国人の意向も踏まえて、適切な弁護士会につなぐなどの取組も行っております。
  155. 小林鷹之

    ○小林(鷹)委員 ありがとうございます。デュープロセスの観点から、しっかり御対応いただきたいと思います。  次に、在留特別許可について伺います。  今回の改正によって、本人による申請を認める手続を整備されるということですけれども在留特別許可対象者であることの証明を本人からの申請のみをベースに行うことについては、私はやや疑問もまだ残っているんです。  というのは、入管法第五十条第一項に該当する者の要件を見ると、すなわち、永住許可を受けていることですとか、かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあること、こうした要件というのは法務省自身が容易に確認できることだと思うんですけれども、今回新たに設けられた第五十条第五項の考慮事項というのを見ると、ここには、例えば、いろいろ書いてあるんですよ、家族関係ですとか入国の経緯、こうしたことについてはなかなか、本人申請のみでその正しさ、信憑性というものをどこまで担保できるのかというのは、なかなか難しいところがあると思うんですね。  なので、在留特別許可申請の実効性を担保するという意味では、例えば国内に日本人の配偶者がいる場合などについては、その配偶者側からの申請又は共同申請みたいなものを求めてもよいんじゃないかなとも考えるんです。そうすることで、その配偶者も共同で責任を負うことになるとも考えられるんですけれども政府としての見解を教えてください。
  156. 松本裕

    ○松本政府参考人 お答えいたします。  まず、法律で規定することを予定しております在留特別許可の考慮要素そのものでは考え方が分かりづらいという御指摘はいただいておりまして、さらに、その考え方につきまして新たなガイドラインを作成する予定でございます。  その上で、在留特別許可申請は、手続上、申請者本人から在留特別許可を求める理由等を直接確認をすることによってその内容の信憑性等々を確認をするということが大前提となっておりまして、そういう意味合いにおきまして、原則として代理になじまないというふうに考えておるところでございます。  ただ、申請内容等につきまして、例えば、行政書士や弁護士の方々等、ふだん入管手続等に関与しておられる専門家の方々にあらかじめ相談して、これを踏まえて申請や資料を提出することは、もちろん可能でございます。
  157. 義家弘介

    義家委員長 ここで、参議院本会議出席のため、大臣は退席いたします。
  158. 小林鷹之

    ○小林(鷹)委員 ありがとうございます。  次に、難民認定などについて伺ってまいります。  まず、我が国難民認定率が低いということはこの委員会でも何度も指摘をされているところなんですけれども、世界の統計を見ると、難民認定する数についてはトルコやコロンビアなどが多いです。また、認定する率としては、例えばアメリカだと二九・六%、ドイツは二五・九%ということで、比較されるんですけれども、当然、それらの国は他国と国境を接しておりますし、その隣接する国の政治状況が不安定な国もあるという、地理的要件も異なるわけです。また、再度の難民申請条件が厳しくなる諸外国と、同じ条件で何度も申請できる日本とでは、単純に認定率で比較をすることは私は適切ではないんじゃないかというふうに思うんです。  さはさりながら、難民認定申請につきましては、適切かつ早急に判断することが申請者のために、その利益にかなうものだと思いますので、今回の法案では難民認定在留特別許可申請を分離するということになっています。  令和二年の難民認定申請者のうち、人道配慮による在留特別許可が出た割合は僅か一%にすぎない。庇護数も二・三%でしかないということです。  こうした状況の中で、今回の改正では、これまでと違って、難民認定申請から在留特別許可申請を分離させる、つまり在留特別許可申請を一本化することとされていますけれども、これによってどの程度難民認定手続の迅速化が図れるのか、その難民認定申請数への影響も含めて、政府の見通しを教えていただきたいと思います。
  159. 松本裕

    ○松本政府参考人 お答えいたします。  現行法では、難民認定手続において、難民に該当しない場合であっても、日本人との婚姻や日本人の実子の監護等を理由として在留特別許可判断も行っているところでございます。そのため、在留特別許可のみを目的とした難民認定申請も間々見受けられるところでございます。  そして、本法律案では、委員御指摘のとおり、在留特別許可申請という手続を新たに創設することといたしました。これによりまして、在留特別許可目的とした難民認定申請は減少するものと考えております。  さらに、先ほどもちょっと申し上げましたが、難民該当性に対する規範的要素の明確化、運用方針的なものをUNHCRの御協力も得て今策定をしているところでございますが、これによりましても、要件等がより分かりやすくなりますことから、誤用、濫用的な難民認定申請も防止することにつながるものと認識しております。
  160. 小林鷹之

    ○小林(鷹)委員 ありがとうございます。  今のお答えとちょっと関連することなんですけれども、これまでは、紛争避難民などを保護対象として法律上認定する制度がなくて、どのような場合に保護されるか不明確だった。今回、難民については規範的要素を明確化する、補完的保護対象者というカテゴリーを創設すると。  で、今いろいろお答えがありましたけれども、少なくとも法案の条文を見ても、私が見つけられなかっただけかもしれないですけれども難民とか補完的保護対象者としての具体的な認定要件というのが見当たらなくて、今、UNHCRの話とかをされていましたけれども、具体的にどのような要件を考えているのか、今お答えできる範囲で教えていただきたいのと、それとまた、現下の国際情勢を見渡したときに、難民や補完的保護対象者対象となる国は具体的にどんな国なのか、また、外務省の渡航に関する情報と同様に、難民認定し得る国をホームページで明示することなどについてどのようにお考えなのか、見解を教えていただきたいと思います。
  161. 松本裕

    ○松本政府参考人 お答えいたします。  補完的保護対象者は、迫害の要件が難民条約上の難民以外の理由による者ということ以外は、難民と全て要件は一緒でございます。そういう意味におきまして、先ほど申し上げました規範的要素の考え方を運用指針で示すことは、例えば、迫害とはこういうことをいうというようなところを、コンメンタール的な意味合いのものを用意することによって、要件の明確化が、難民及び補完的保護対象者いずれについても明確化が図られるのではないかと考えているところでございます。そういう意味でも、この運用指針は非常に重要なものと認識しております。  さらに、補完的保護対象者対象となる国ということでございますが、これはやはり個別の事案ごとに判断すべきものでございまして、一律に○○国がその対象国であるという取扱いをしていないところでございます。
  162. 小林鷹之

    ○小林(鷹)委員 おっしゃることも十分分かります。  ただ、いずれにしても、やはり予見可能性を高めていただきたいし、できる限り、人によって判断が分かれるとか、恣意性をやはり排除するような仕組みというのが必要だと思いますので、御検討いただきたいと思います。  次に、在留が認められない者の迅速な送還に関しまして、退去を拒む外国人を強制的に退去させる場合に、入国警備官がその外国人を本国に連れていって、本国政府に受け取ってもらう必要がある、ただ、例えばイランのような国は自国民の受取を拒否するため、退去させられないというふうに聞きました。  これについて、外交上の対応というのは取れないのか。また、ほかの諸外国も対イランとの関係では同じだと思うんですけれども、諸外国はどのように対応しているのか、分かる範囲で教えてください。
  163. 長岡寛介

    ○長岡政府参考人 お答え申し上げます。  日本政府として、イラン政府が、自国の憲法に定める移動の自由に抵触するとの理由から、自主的な帰国意思を有していない送還忌避者の受入れに消極的な態度を示しているため、イラン人送還忌避者の受入れを求めて、イラン政府との間では随時交渉を行ってきております。  その際、日本側としては、特に優先的に、送還の実現を希望している送還忌避者について、具体的な情報をイラン側に提示し、彼らの送還受入れを求めているところでございます。  一方、イラン側は、国内の関係機関による委員会を設けて、送還受入れに向けた検討を行っております。  このような取組もありまして、これまで十五名のイラン人の自主的な帰国が実現しましたけれども、引き続きイラン政府との間では、送還忌避者の受入れを強く求めて交渉を継続していく所存でございます。  また、諸外国につきましては、日本政府として、その事情について網羅的には把握できておりませんし、また、イランと各国との対応についても十分分かっているわけではございませんが、欧州の複数の国が同じような問題に直面し、イラン政府との間で交渉を行っているというふうに承知しております。  以上です。
  164. 小林鷹之

    ○小林(鷹)委員 ありがとうございます。  対イランとの関係では、各国それぞれ状況は違うと思うんですけれども、共有できる問題はあると思いますので、是非、こうした点については引き続き幅広い調査をしていただくのが適切かなというふうに思います。  委員長、もう外務省の方は、ここで結構でございます。
  165. 義家弘介

    義家委員長 外務省は御退席いただいて結構です。
  166. 小林鷹之

    ○小林(鷹)委員 ありがとうございます。  次に、監理措置について聞いていきたいと思います。  収容するのか、あるいは監理措置によって日本社会の中で生活させるのか、これは入国審査官が慎重に判断するとされています。監理措置に実効性を持たせることは大変重要なことであって、法律、入管法第四十四条の二に、「住居及び行動範囲の制限、呼出しに対する出頭の義務その他逃亡及び証拠の隠滅を防止するために必要と認める条件を付す」とあります。  そこで、例えば、諸外国の法律だと、特定の住居に居住させる、あるいは定期的に出頭させる、あるいは電子的監視まで求めている国も何かあるようなんですけれども、今回の改正案にある、条文に規定している、今私が読み上げた条件というのは具体的にどのようなものなのか、より詳細な政府の御見解を教えていただきたいと思います。
  167. 松本裕

    ○松本政府参考人 お答えいたします。  監理措置に付された外国人逃亡等を防止するため、当該外国人に対しましては、住居の指定、行動範囲の制限、呼出しに対する出頭の義務その他逃亡等を防止するために必要と認める条件を付すことになります。  この場合、その他逃亡等を防止するために必要と認める条件といたしましては、例えば、監理人との定期的な面談、あるいは、犯罪組織の構成員の場合、当該組織関係者との接触禁止等を想定しているところでございます。
  168. 小林鷹之

    ○小林(鷹)委員 入管法第四十四条の三に、監理人について、その責務を理解し、当該被監理者監理人となることを承諾している者であり、その任務遂行能力を考慮して適当と認められる者の中から主任審査官が選ぶとあって、また、監理人の職務については、当該被監理者生活状況の把握、出頭の確保、住居の維持に係る支援云々とあって、被監理者に対する指導及び監督、こうした責務が課されていると承知していますが、どのような人物が監理人に選定されると想定しているのか、教えてください。
  169. 松本裕

    ○松本政府参考人 お答えいたします。  例えば、対象外国人の家族や親族の方々、支援者や支援団体の方々、あるいは入管実務上、様々な手続について相談等の対応をされておられる行政書士の方々、さらには司法書士や弁護士の方々を想定しているところでございます。
  170. 小林鷹之

    ○小林(鷹)委員 先ほど来出ていますけれども、例えば弁護士などの代理人の場合は、今回、逃亡の刑事罰を設けるということで、共犯とされるおそれがあるんじゃないか、これはこうした方々の活動というのを著しく萎縮させるのではないか、そういう指摘もなされておりますし、先ほど大口先生の質問でも出ましたけれども弁護士の守秘義務との利益相反みたいな話というのもやはり当然考えていかなければいけない話ですので、先ほど答弁は伺いましたので、この点については伺いませんが、しっかり対応していただきたいと思います。  次に、収容期間上限設定について伺います。  法務省は、上限を設定すると、その上限を経過した外国人全員の収容を解かねばならない、退去させるべき外国人退去させることがますます困難になる、そうした外国人日本社会で生活できることとなるため上限は設けないとしているというふうに認識していますけれども、一方で、諸外国の法律を見ると、上限設定の有無については様々です。  日本入管法は元々アメリカの法律に倣ったというふうに認識しているんですけれども、例えば、アメリカと同様に上限を設定するということは本当に考えられないんでしょうか。その代わり、その上限の期間内に退去しなかった者については更に厳しい罰則を科すということももちろんセットで行う、こうしたことも考え方としてはあり得るんじゃないかと思いますが、見解を教えていただきたいのと、また、逆に、今回、インセンティブの話も幾つかありますけれども、渡航旅費を支給するという、出国する更なるインセンティブを国として与えるということについてどう考えるのか、教えていただきたいと思います。
  171. 松本裕

    ○松本政府参考人 お答えいたします。  委員御指摘のとおり、この点につきましての法制は各国様々でございます。我々といたしましては、出入国管理という意味合いにおきましての制度について、その制度の一部分のみの比較で検討することは適切ではないんじゃないかというふうに考えているところでございます。  その上で、我が国入管法仕組み前提といたしました場合には、長期収容の解決等々という点につきましては、上限を設けることではなくて、監理措置、あるいは退去が確定した者は迅速に退去させるための方策を講じる、そういうことを総合的に対処することによって取り組んでいきたいと思っているところでございます。
  172. 小林鷹之

    ○小林(鷹)委員 時間が迫っているので、ちょっと先にもう行きたいと思いますけれども、仮放免制度について伺います。  仮放免を目的としたハンストなどが生じているわけですよね。仮放免中に逃亡する者が少なからずいる。こうしたことに鑑みれば、逆に、こうした事態を避けるためにも、今回、監理措置というものを創設したんだから、今回設けた措置をしっかり実効性あるものにした上で、仮放免の制度を廃止するということも検討してもいいのではないかと考えるんですけれども、それは、いいという答えは多分返ってこないと思いますけれども政府としての考え方を教えていただきたいと思います。
  173. 松本裕

    ○松本政府参考人 お答えいたします。  改正法に基づきましては、監理措置という制度創設し、当庁といたしましても、可能な限り、この監理措置を積極的に活用したいと考えているところでございます。  ただ、その場合でも、いろいろな要因で、逃亡等のおそれ等々から監理措置に付すことができない者が存在します。そのような者につきましても、仮に病気等の一定事情が生じた場合には、収容を解いて、社会で治療行為を受けさせる等の対応が必要になることも想定されるところでございまして、そういう点に備えるために、仮放免という制度改正法においても規定しているところでございます。
  174. 小林鷹之

    ○小林(鷹)委員 継続するということですので、今回の法改正事項にある強制治療の手段というものを適切に活用していただきたいと思いますし、今日は時間が来たので、入国警備官の確保、育成についても伺いたかったんですが、そこはしっかり法務省で御対応いただければと思います。  最後に、いずれにしても、今回の法案というのは、社会的にかなり関心が高い法案でもあります。法務省におかれては、丁寧な説明に努めていただきながら、上川大臣のリーダーシップの下で、出入国管理政策を適切に進めていただくことを期待をして、質疑を終わらせていただきます。  ありがとうございます。
  175. 義家弘介

    義家委員長 次回は、来る二十三日金曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時三十分散会