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2021-04-07 第204回国会 衆議院 法務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    令和三年四月七日(水曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 義家 弘介君    理事 伊藤 忠彦君 理事 稲田 朋美君    理事 奥野 信亮君 理事 宮崎 政久君    理事 山田 賢司君 理事 稲富 修二君    理事 階   猛君 理事 大口 善徳君       井出 庸生君    井野 俊郎君       上杉謙太郎君    大塚  拓君       神山 佐市君    神田  裕君       黄川田仁志君    国光あやの君       小林 鷹之君    武井 俊輔君       出畑  実君    中曽根康隆君       野中  厚君    深澤 陽一君       藤原  崇君    盛山 正仁君       山下 貴司君    吉野 正芳君       池田 真紀君    寺田  学君       中谷 一馬君    松平 浩一君       屋良 朝博君    山花 郁夫君       北側 一雄君    吉田 宣弘君       藤野 保史君    串田 誠一君       高井 崇志君     …………………………………    法務大臣         上川 陽子君    法務大臣        田所 嘉徳君    法務大臣政務官      小野田紀美君    最高裁判所事務総局家庭局長            手嶋あさみ君    政府参考人    (警察庁長官官房審議官) 檜垣 重臣君    政府参考人    (法務省大臣官房審議官) 山内 由光君    政府参考人    (法務省刑事局長)    川原 隆司君    政府参考人    (法務省矯正局長)    大橋  哲君    政府参考人    (法務省保護局長)    今福 章二君    政府参考人    (文部科学省大臣官房審議官)           蝦名 喜之君    法務委員会専門員     藤井 宏治君     ――――――――――――― 委員の異動 四月七日  辞任         補欠選任   黄川田仁志君     神山 佐市君   山下 貴司君     上杉謙太郎君   吉田 宣弘君     北側 一雄君 同日  辞任         補欠選任   上杉謙太郎君     山下 貴司君   神山 佐市君     黄川田仁志君   北側 一雄君     吉田 宣弘君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  少年法等の一部を改正する法律案内閣提出第三五号)      ――――◇―――――
  2. 義家弘介

    義家委員長 これより会議を開きます。  内閣提出少年法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、お諮りいたします。  本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官檜垣重臣君、法務省大臣官房審議官山内由光君、法務省刑事局長川原隆司君、法務省矯正局長大橋哲君、法務省保護局長今福章二君及び文部科学省大臣官房審議官蝦名喜之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 義家弘介

    義家委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  4. 義家弘介

    義家委員長 次に、お諮りいたします。  本日、最高裁判所事務総局家庭局長手嶋あさみ君から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 義家弘介

    義家委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  6. 義家弘介

    義家委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。盛山正仁君
  7. 盛山正仁

    ○盛山委員 おはようございます。  今日は、こうやって質問の機会を頂戴しまして、誠にありがとうございます。  それでは、早速ですけれども、少年法改正法案につきまして質疑を始めさせていただきます。  昨日の参考人質疑川出参考人ほか四人の方々との質疑が行われたところでございますけれども、十八歳、十九歳の者は、平成二十七年六月の公選法改正によりまして、平成二十八年の参議院選挙から選挙権が認められるようになりました。また、平成三十年六月の民法改正によりまして、来年四月一日からは民法上も成年となります。その結果、十八歳、十九歳の者は、我が国社会において大人としての権利を認められ、同時に、大人としての責任を負うべき立場になります。  こうした変化を踏まえ、少年法在り方について、自民党の中で、あるいは自公の与党間でも議論を重ねてまいりました。  上川法務大臣には、自民党司法制度調査会長、また、与党プロジェクトチームの座長として、約二年間にわたって議論を主導していただき、この後質問される自民党宮崎議員山田議員、公明党の北側議員大口議員と御一緒に私も検討に参加をいたしました。  そのような自民党与党内の議論を踏まえて質問をさせていただきます。  先週二日の委員会提案理由説明を伺ったところでございますが、改めて、本法律案趣旨概要について、上川法務大臣の本法案に対するお考え、お気持ちをお伺いいたします。
  8. 上川陽子

    上川国務大臣 今般の法律案につきましては、様々な御議論を踏まえた上で、また、法制審議会審議を尽くしていただいた上で、そして、それに基づいての提案ということになるわけでございますが、その趣旨でございますけれども、公職選挙法選挙権年齢や、また、民法成年年齢引下げなど、十八歳及び十九歳の者を取り巻く近年の社会情勢変化に鑑みますと、これらの者につきましては、少年法適用においても、その立場に応じた取扱いをすることが適当であると考えられるところでございます。  そこで、本法律案につきましては、少年法を改正し、十八歳及び十九歳の少年に対する特例を整備するなどの措置を講ずるものでございます。  具体的な概要でございますが、十八歳以上の特定少年につきまして、全ての事件家庭裁判所送致をした上で、家庭裁判所原則として保護処分を行うという現行法の基本的な枠組みを維持する。その上で、いわゆる原則逆送対象事件死刑無期又は短期一年以上の懲役禁錮に当たる罪の事件を加える。保護処分は、犯情軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内でしなければならないこととするとともに、虞犯をその対象から除外をする。検察官送致決定後の刑事事件特例に関する規定原則として適用しないこととする。十八歳以上の少年のときに犯した罪により公判請求された場合には、いわゆる推知報道禁止に関する規定適用しないこととするなどの措置を講ずるものでございます。
  9. 盛山正仁

    ○盛山委員 ありがとうございました。  西田典之先生刑法総論では、刑罰には犯罪防止、抑止する効果がある、責任あれば刑罰あり、責任なければ刑罰なしと述べられています。他方川出敏裕先生少年法では、少年法基本理念は、少年が行った過去の犯罪に対する応報として少年を処罰することを目的とするものではなく、将来二度と犯罪ないし非行を行わないようにその少年を改善教育することを目的とする、少年に対しては応報主義ではなく保護主義適用することが、単に制裁として刑罰を科すよりも、少年本人にとっても利益が大きいと述べられています。  本法律案では、十八歳、十九歳の者について、引き続き少年法対象とし、保護教育観点から、家庭裁判所へのいわゆる全件送致を始め、二十歳以上の者とは異なる手続処分適用することとしています。  昨日の参考人質疑川出参考人から御発言がなされましたが、十八歳、十九歳の者は、民法改正により成年となるにもかかわらず、今回、責任、処罰よりも保護教育を重視した手続処分対象とすることとした理由について、上川法務大臣から御説明をお願いします。
  10. 上川陽子

    上川国務大臣 少年法適用対象とする年齢、この在り方につきましては、成長過程にある若年者をどのように取り扱うか、また、どのように改善更生再犯防止を図るかに関わる問題であると認識をしております。  したがいまして、民法上の成年年齢が引き下げられたからといって、論理必然的にこれを下げなければならないというものではないというふうに考えております。  民法成年年齢引下げは、十八歳及び十九歳の者が大人として完成されたことを前提とするものではなく、これらの者はいまだ成長過程にあり、しかし、社会参加の時期を早めて様々な分野で積極的な役割を果たさせること、このこと自体が我が国社会にとりまして大きな活力をもたらすと考えられたことによるものと承知をしております。  このような認識前提といたしまして、本法律案におきましては、十八歳及び十九歳の者が、選挙権等を認められ、また民法上も成年として位置づけられるに至った一方、成長途上にあり、また可塑性を有する存在であるということを踏まえまして、これらの者に対しまして、引き続き少年法適用対象としつつ、その立場に応じた取扱いをするための特例等を定めることとしたところでございます。
  11. 盛山正仁

    ○盛山委員 成長過程途上にある、あるいは可塑性がある、そういうような御説明でありましたが、少年法在り方については、昨日の参考人質疑でも述べられましたように、民法改正によって成年になり、保護者はいなくなるのであるから、当然大人として扱うべきである、いやいや、十八歳で、大学生になって大人として扱われるようになるといっても、精神的には大人とは言えず、まだまだ子供だよ、国民の皆様の中には様々なお声があると私も考えます。  さて、本法律案は、全会一致で採択された法制審議会答申に基づくものと承知しておりますが、法制審議会での議論の経過、そして、あわせて、全会一致による答申に対する受け止めについて、上川法務大臣のお考えを伺いたいと思います。
  12. 上川陽子

    上川国務大臣 本法律案につきましては、令和二年の十月の法制審議会総会におきまして、全会一致で採択された答申に基づくものでございます。  少年法在り方につきまして、法務省では、法制審議会への諮問に先立ちまして、若年者に対する刑事法制在り方に関する勉強会を開催いたしました。法律教育医療等関係分野実務経験者研究者、また犯罪被害関係者報道関係者等合計四十名の方々からのヒアリングを行いまして、その結果を取りまとめた上で、法制審議会に提供をしているところでございます。  法制審議会の部会におきましては、法律研究者少年事件実務に精通した弁護士、元裁判官、少年犯罪被害者報道関係者など、様々な立場方々委員、幹事として御参加をいただきました。少年矯正保護等実務に携わっている合計十六名の方々からのヒアリングも実施したところでございます。  さらに、家庭裁判所少年院、少年鑑別所少年刑務所保護観察所更生保護施設等の視察なども行った上で、約三年半にわたりましての幅広い観点から調査審議を行っていただきました。  その上で、この法制審議会答申につきましては、今申し上げたとおり、法律実務家刑事法研究者等専門家だけではなく、法律学以外の学問分野研究者実業界言論界方々など、多様なバックグラウンドを有する委員によって構成された法制審議会総会におきまして、全会一致により採択されたところでございます。これは、この答申内容が、様々な立場から見てバランスの取れた内容と評価された結果であるというふうに受け止めているところでございます。  本法律案は、このような経緯で取りまとめられた答申に基づくものでございまして、法務省といたしましては、本法律案趣旨内容につきまして、十分な御理解を得られるよう、丁寧な説明に努めてまいりたいというふうに考えております。
  13. 盛山正仁

    ○盛山委員 ありがとうございました。  国民の中に様々なお声があり、そしてまた法制審議会のメンバーもいろいろな立場の方がいらっしゃる中で、全会一致で結論を得られたということは、これは大変大きな成果だな、そんなふうに私も考えます。  少年法少年年齢を引き下げるべきという立場がある一方で、そのままとすべきという立場ももちろんあるわけでありますが、年齢区分によって全面的に適用する、適用しないという二項対立の議論ではなく、どのような取扱いをするべきかという具体的なケース、こういったものを踏まえての実質的な判断をしていくこと、これが重要であると私は思っているところでございます。  次に、特定少年についてお尋ねをしたいと思います。  本法律案では、少年の中でも十八歳以上の少年については、特定少年の呼称を付した上で、少年法に「第五章 特定少年特例」として特別に一つの章を設け、七条を規定しております。これによって十八歳以上の少年は十七歳以下の少年とは異なる立場であることが法形式上も明確になり、国民に分かりやすい法改正になっていると考えます。  他方現行少年法第二条第一項は、満二十歳以上の者を成人と定義しております。民法改正により十八歳以上が成年となった場合、成人成年という言葉が併存することは、混乱を招くというか、なかなか分かりにくいことになると思います。  今回の法律案では、少年法二条第一項を改正し、成人定義規定を削除することとしていますが、その理由について刑事局長からお答えいただきたいと思います。
  14. 川原隆司

    川原政府参考人 お答え申し上げます。  委員指摘のとおり、現行少年法二条一項は、満二十歳以上の者を成年と定義しております。  そして、本法律案でこの定義規定を削除する理由でございますが、委員も今御指摘されましたが、今般、民法改正により成年年齢が引き下げられ、民法上の成年少年法上の成人とは年齢が一致しないことになるため、少年法成人と類似する成年との異同について国民理解混乱が生じることも懸念されるところでございます。また、少年法上は、現在は、成人の文言は、少年成人を分離しなければならないという第四十九条三項で用いられているにすぎないものでございます。  以上のことから、本法律案におきましては、十八歳以上の少年に対する刑事事件特例適用に関する規定を整備するのに伴い、成人定義規定は削除することが適当であると考えたところでございます。
  15. 盛山正仁

    ○盛山委員 ありがとうございました。  これによって、成年成人、こういった混乱がなく、一般の人に分かりやすくなっていると思いますし、今後ともその周知を図っていただきたい、そんなふうに思います。  次に、逆送についてお尋ねをいたします。  本法律案では、十八歳以上の少年について、原則逆送事件拡大しております。十八歳、十九歳の者の立場に鑑み、重大犯罪に及んだ場合、大人として適切に刑事責任に向き合わせることが、本人に自覚を促すことになり、犯罪抑止のためにも必要なことであると私は思います。  原則逆送の拡大範囲について、この法律案では、短期一年以上の懲役禁錮に当たる罪の事件としています。これによって、現住建造物等放火罪強制性交等罪強盗罪などが新たに原則逆送の対象となりますが、当然、議論過程ではほかの選択肢も検討されていたことと存じます。十八歳以上の少年に係る原則逆送事件範囲として、より限定的に、例えば裁判員制度対象事件としなかった理由などについて、刑事局長から御説明をいただきたいと思います。
  16. 川原隆司

    川原政府参考人 お答え申し上げます。  十八歳及び十九歳の者が公職選挙法及び民法改正等により重要な権利、自由を認められ、責任ある主体として積極的な社会参加が期待される立場になるに至ったことを踏まえると、これらの者が重大な犯罪に及んだ場合には、十八歳未満の者よりも広く刑事責任を負うべきものとすることがその位置づけに照らして適当であり、刑事司法に対する被害者を含む国民理解信頼確保観点からも必要であると考えられるところでございます。  そこで、本法律案では、十八歳以上の少年について、一定重大事件に及んだ場合に刑事処分が適切になされることを制度的に担保するため、原則逆送対象事件範囲拡大することとしております。  御指摘裁判員制度対象事件は、死刑又は無期懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件及びいわゆる法定合議事件のうち故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係る事件とされているところでございます。そのため、仮に十八歳以上の少年に係る原則逆送対象事件範囲裁判員制度対象事件と同じとすると、例えば、強制性交等罪強盗罪対象とならない結果となります。  しかしながら、強制性交等罪は、被害者の人格や尊厳を著しく侵害し、その心身に長年にわたり多大な苦痛を与え続ける悪質、重大な犯罪であり、近年、実態に即した厳正な対処が強く要求されているところでございます。また、強盗罪は、被害者の反抗を抑圧するに足りる強度の暴行、脅迫を加えて金品を奪い取るという反社会性、悪質の高い典型的な重大犯罪でございます。いずれの罪も、五年以上の有期懲役という非常に重い法定刑が定められているところでございます。  これらのことなどからいたしますと、これらの罪を原則逆送の対象から除外することは、対象事件拡大する趣旨に照らして適当でないと考えられるところでございます。以上のことから、十八歳以上の少年に係る原則逆送対象事件範囲につきまして、裁判員制度対象事件とは同じものとしなかったところでございます。
  17. 盛山正仁

    ○盛山委員 ありがとうございました。  今局長が御説明されたように、強制性交等罪あるいは強盗罪、こういったものは国民の安全、安心を脅かす典型的な重大犯罪と言え、これらを対象に含めるというのはもう当然のことだろうと思います。しかし、短期一年以上の懲役禁錮に当たる罪としますと、傷害罪窃盗罪詐欺罪が含まれなくなると考えます。  先ほども申しましたが、ケースバイケースということで、これらの罪名でも様々なケースがあろうかと思います。傷害の結果が重篤な事案、あるいは常習的な侵入、窃盗事案、組織的な巨額詐欺事案など、悪質、重大で刑事責任を追及すべきケースもあると思います。原則逆送の対象外だとはいえ、十八歳以上の少年に係る傷害罪窃盗罪詐欺罪事件、こういうものについても、原則逆送の対象とならないということではあっても、悪質、重大なケースにつきまして適切に刑事処分をどのように行っていくつもりであるのか、刑事局長から御説明をいただきたいと思います。
  18. 川原隆司

    川原政府参考人 お答え申し上げます。  本法律案では、十八歳以上の少年に係る原則逆送対象事件範囲拡大につきまして、死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役禁錮に当たる罪の事件対象とすることが、犯罪の類型的な重大性を表す法定刑や該当する個々の犯罪性質等に照らし適当であると考えたところでございます。  委員指摘のとおり、傷害罪窃盗罪詐欺罪等についても、個別の事案によっては、その態様、結果等から、悪質、重大性が高く、刑事処分を相当とすべきものも存在するところでございます。  他方で、傷害罪は、傷害結果の軽重を問わず対象となるものでありまして、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金という幅の広い法定刑が定められているところでございますが、検挙事案の多くは、被害者の受傷が軽度にとどまるものであると承知をしております。  また、窃盗罪詐欺罪は、いわゆる財産犯でございますが、被害軽重を問わず対象となり、その法定刑も、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金、十年以下の懲役とされ、いずれも傷害罪よりも軽いものとなっているところでございます。  以上のことから、御指摘傷害罪窃盗罪詐欺罪等については原則逆送対象事件に含めることはしなかったところでございます。  もっとも、本法律案では、原則逆送対象事件以外の事件につきましても、少年法第六十二条第一項において、現行法と同様に、家庭裁判所は、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、検察官送致決定をしなければならない旨を規定することとしており、御指摘傷害事件等事件についても、悪質、重大な事案については、家庭裁判所判断により、逆送決定も含めて適切な処分が行われるものと考えているところでございます。
  19. 盛山正仁

    ○盛山委員 ありがとうございました。  今御説明いただきましたけれども、やはり、ケースバイケースでの適時適切な判断というのが今後とも大変重要になってくるんじゃないかなと考えます。  次に、刑事事件特例についてお尋ねをしたいと思います。  本法律案は、十八歳以上の少年について、家庭裁判所の逆送決定後は、少年法が定める刑事事件特例原則適用しないとしております。少年法上の刑事事件特例には様々なものがありますが、十八歳以上の少年に対して不定期刑特例、あるいは、労役場留置禁止特例適用しないこととする理由について、刑事局長から御説明いただきたいと思います。
  20. 川原隆司

    川原政府参考人 お答えを申し上げます。  十八歳以上の少年について、家庭裁判所により検察官送致決定がされ、刑事責任を追及される立場となった場合にまで、なお少年健全育成のために設けられている刑事事件特例をそのまま適用することは、責任ある主体としての立場や、刑事司法に対する被害者を含む国民理解信頼確保観点から適当でないと考えるところでございます。  その上でまず、少年法第五十二条の不定期刑特例でございますが、これは、少年に対して、改善更生度合いに応じた弾力的な処遇を実現するため、懲役禁錮刑期について、責任に対応する長期とそれを短縮した短期を設けて、短期を経過すれば刑の執行を終了できるようにするものであります。  しかし、十八歳以上の少年不定期刑適用し、年齢のみを理由に一律に寛大な取扱いをすることは、その立場等に照らして適当ではないと考えられる一方、刑法規定により、有期刑につきましては、刑期の三分の一を経過すれば仮釈放可能であることから、定期刑を科すとしても、本人改善更生度合いに応じた弾力的な処遇を行うことも十分可能であると考えるところでございます。  次に、少年法第五十四条の労役場留置禁止特例についてでございますが、これは、少年情操への影響を考慮し、罰金科料を完納しない場合でも労役場留置を行わないとするものであります。もっとも、この特例については、少年は、罰金科料を納めなくても済むという風潮を生み出しかねないという指摘もあり、これを十八歳以上の少年適用することは情操保護観点を過度に優先するもので適当ではないと考えられるところでございます。  以上のことから、本法律案では、十八歳以上の少年に対しては、不定期刑及び労役場留置について特例適用しないこととしているものでございます。
  21. 盛山正仁

    ○盛山委員 ありがとうございました。  十八歳、十九歳の者というものをどういうふうに扱うのか、そういうようなことを十分お考えになった上で、責任主義保護主義、これをバランスを取って案をまとめられているということだろうな、そんなふうに考えます。  全体としまして、本法律案は、十八歳以上の少年につきまして、十七歳以下の者とは異なる取扱い、いろいろな議論がありますけれども、異なる取扱いを定め、いわゆる家庭裁判所への全件送致、あるいは保護処分の仕組み、これを維持するという点では、これまでの少年法に基本的に同じような、それを維持する内容となっているところでございます。  ただ、他方、第五章を設ける等ということで、全体として、大人としての権利責任、そして改善更生のための保護教育的配慮の調和の観点から、バランスを取った内容となっているんだろうと思います。  家裁への全件送致ということで、今までの少年法のところをベースにしながら、原則逆送の部分について一定のルールを作り、そして、そこで入り切らないものとでもいうんでしょうか、そういったものについても、個別のケースに応じて裁判所判断をして検察官に逆送するといったような、そういうことをミックスすることによって、十八歳、十九歳の者に対して、事案内容に応じては厳しい刑事手続にするといったようなことを考えたということになろうかと思います。  他方少年犯罪被害者方々を含めまして、民法上の成年となる以上、少年法適用対象外とすべきであるとの意見もまだまだ根強くあると私は思っております。少年法適用対象年齢を含めまして、十八歳、十九歳の者に対する刑事司法制度の在り方については、今後とも不断の見直し、検討、これを続けていく必要があると思います。この法律案でも、附則の第八条で、施行後五年を経過した場合のいわゆる検討条項を設けていることは当然のことであると考えます。  まずこの改正法案を成立させまして、着実に運用を積み重ねていくことが重要だと考えます。そして、その際、罪を犯した十八歳、十九歳の者の改善更生だけではなく、犯罪を未然に防止し、犯罪被害者を生まないという観点も極めて重要であると考えております。  十八歳、十九歳の者の大人としての自覚を促し、犯罪抑止につながるよう、これらの年齢層を中心に本改正の趣旨内容を分かりやすく周知、教育していくこと、そして、多くの幅広い御意見がある中で、国民の皆様に今回の少年法の改正の趣旨、いろいろなお立場があると思います、適当であるという方ばかりではないと思います、甘過ぎるという方もいらっしゃれば、いや、厳し過ぎる、こういう御意見もあろうかと思います。法制審議会では幾ら全会一致の結論であるということになったとはいえ、国民の皆様の中にはなかなかそういうふうにはなっていないのが現状ではないかと私は思いますので、今後、法務省としては、この少年法改正の趣旨というものをよく周知して理解をしていただくことが必要になるのではないかと考えているわけでございます。  最後に、本改正についての周知、教育にどのように取り組むおつもりであるのか、上川法務大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  22. 上川陽子

    上川国務大臣 今般の本法律案につきましては、改正の趣旨またその内容につきまして、これを、十八歳、十九歳の者のみならず広く国民の皆様一般にも周知をし、そして理解を深めていくということは大前提であるというふうに思っております。  法務省といたしましては、本改正案が成立した場合には、例えば、十八歳前後の者に対しまして、効果的な周知の観点から、高等学校等に対しましての、高校等に対しましてリーフレットの配布をいたしますとか、また、保護観察所少年鑑別所等による関係機関とも連携をして、各地域におきまして説明会等も実施するということも考えております。また、少年鑑別所及び少年院への収容者及び若年の保護観察対象者等に対しましても周知し、また指導をしていくこと。また、若年者の多くが利用するインターネットやまたSNSを活用した情報発信を図るなど、幅広い媒体また手法を活用して、効果的な周知広報活動を徹底してまいりたいというふうに考えております。  その際も、若年者理解をしやすい、分かりやすい内容ということを十分に心がけてまいりたいというふうに思っております。
  23. 盛山正仁

    ○盛山委員 ありがとうございました。  私も役所に長くおりましたし、法務省でも御厄介になっておりましたが、どうも役所というのは、なかなかPR、広報というのがそれほどうまくないんじゃないかなと、私自身の反省も兼ねて考えております。どうぞ国民の皆様によく御理解をしていただけるよう、周知について工夫をしていただければということを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  24. 義家弘介

    義家委員長 次に、宮崎政久君。
  25. 宮崎政久

    宮崎委員 自由民主党の宮崎政久です。  少年法の改正につきましては、自民党の政務調査会でも取りまとめをさせていただきました。本日、このような質問の機会をいただきましたこと、感謝を申し上げまして、質疑に入らせていただきたいと思います。  平成二十七年、選挙権年齢が二十歳から十八歳に引き下げられる改正公職選挙法が成立をして、これは二十八年から施行されています。平成三十年には成年年齢を十八歳に引き下げるという民法の改正が成立をして、これが令和四年四月一日から施行する予定であります。  公選法、民法、そして少年法、これは国家の基本法とも呼べる法律であります。公職選挙法民法選挙権年齢成年年齢が十八歳とされる一方で、少年法では少年の上限年齢を二十歳のまま維持するのであれば、国家の基本法における取扱いに整合性、統一性を欠いて、国民にとって分かりにくい制度にならないかという御指摘もあるところであります。  資料を配付させていただきました。平成二十七年に自民党の政務調査会で取りまとめをさせていただきました、成年年齢に関する提言です。これはまだ民法の改正が成立する前にまとめたものであります。これの一枚目の四角囲みのところで、二番項として、満二十歳以上(未満)を要件とする法律についての基本的な考え方というのを取りまとめさせていただきました。  ちょっと読み上げさせていただきますと、国民投票の投票年齢及び公職選挙法の選挙年齢が一致して十八歳以上の国民に参政権としての投票権(選挙権)を付与したことと併せて民法成年年齢が十八歳となることを前提とした場合、我が国においては十八歳をもって「大人」として扱うこととなり、大人と子供の範囲を画する年齢は、それまで二十歳であったものが十八歳となる。  このことは、十八歳以上の国民が、現在及び将来の国つくりの担い手であることを意味し、大人としてその責任を分担し、大人としての権利、自由も付与されるべきこととなる。社会的にも国民意識においても「大人」は十八歳からと移り変わる。  法は、社会規範として、分かりやすく社会活動の指針となることが求められることから、大人と子供の分水嶺を示す各種法令には国法上の統一性が必要である。併せて、我が国の将来を支えるのは十八歳からの若者であり、将来の我が国を活力あるものとし、その決意を力強く示すためにも、満二十歳以上(未満)を要件とする法律においては、その年齢要件を原則として十八歳以上とすべきである。  というふうにまとめまして、次、めくっていただきますと、少年法についても取りまとめをさせていただきまして、少年法についても、最初のパラグラフでありますけれども、今述べたことと同様ですが、少年法についてということで、民法を始めとする各種法律において、我が国における「大人」と「子供」の範囲を画する基準となる年齢が満十八歳に引き下げられることを踏まえ、国法上の統一性や分かりやすさといった観点から、少年法適用年齢についても、満十八歳未満に引き下げるのが適当であると考える。  ただ、様々な刑事政策上の措置を講ずるための法制は不可欠であろうということをその後に足しているわけであります。  国民投票法、公職選挙法、そして民法成年年齢が十八歳となったことから論理必然的に少年法適用年齢が決まるというふうには言っていないし、誰もそういうふうには考えていないと思います。  ただ、少年法は国家の基本法の一つであります。この国にあるたくさんの法律、よく諸法令などと言われますけれども、諸法令とは一線を画すとも言える基本法は、国の法体系の中心を成すものとして、法体系全体として規範形成機能を働かせるという要請もございます。それが、国法上の統一性の要請であったり、少年を含む国民にとっての分かりやすさ、理解の促進という考えであります。  まず、基本的なところでありますが、こういう国家の基本法とも呼べる法律の間で十八歳、十九歳の者の法的立場が異なるということについて、整合性、統一性に欠けて国民にとっては分かりにくいのではないかという御意見もあります。  上川法務大臣の御見解を伺いたいと思います。
  26. 上川陽子

    上川国務大臣 ただいま委員から御指摘をいただきました、基本的な法制度間の整合性の問題、また国民にとっての分かりやすさという観点から、法制度の検討に当たりまして考慮すべき事柄ではないか、こういうお考えの中での御質問かと思います。  確かに、基本的な法制度間の整合性、国民に対しての分かりやすさという観点からは、この法制度の検討に当たりましては考慮すべき事柄であるというふうに考えておりますが、少年法適用対象年齢在り方につきましては、成長過程にある若年者をどのように取り扱い、またどのように改善更生を図るか、このことに関わる問題でもございます。  公職選挙法選挙権年齢、また民法成年年齢、こうした基本的な制度におきまして年齢引下げがなされたからといって、今御指摘いただきましたけれども、論理必然的にこれを引き下げなければならないというものではないというふうに考えております。  本法律案でございますが、十八歳及び十九歳の者につきまして、責任ある主体として積極的な社会参加が期待される立場となる一方で、成長途上にあり、また可塑性を有するということを踏まえまして、一定特例を設けた上で、全事件家庭裁判所送致し、原則として保護処分を行うという少年法の基本的な枠組み、これを維持するということとした次第であります。  そこで、本法律案では、少年法における少年の上限年齢、これを二十歳のまま維持し、十八歳及び十九歳の者につきまして、引き続き少年法適用対象とすることが適当であると考えたものでございます。
  27. 宮崎政久

    宮崎委員 大臣、ありがとうございます。  次に、ちょっと世論のことについて指摘をして、質問させていただきたいと思います。  各種メディアの世論調査の数字、例えば、幾つかだけですけれども、平成二十七年の産経新聞の世論調査は、少年法適用対象年齢引下げに賛成が八二%、反対は一四%。平成二十八年の朝日新聞は、引下げ賛成七一%、反対二六%。平成二十九年の毎日新聞は、引下げ賛成七二%、反対一二%。平成三十年の読売新聞でも、引下げ賛成八五%。  こういったことで、これは新聞社の世論調査でありますが、世論調査の結果から、国民の多くの皆さんは、少年法適用年齢引下げについては賛成であるというところが見えてくると思います。  こういった世論と本法律案内容との関係について法務省はどういう見解でいるのか、お尋ねをいたします。
  28. 川原隆司

    川原政府参考人 お答え申し上げます。  新聞の世論調査につきましては、今委員指摘のとおりであると承知しているところでございます。この世論調査の結果によれば、少年法適用年齢を十八歳に引き上げることについて、賛成する方が相当の多数に上っているところでございます。  ただ、今般の改正につきましては、先ほど大臣からも御答弁がありましたように、公職選挙法あるいは民法の改正、こういったものを踏まえて、少年法という法律分野におきまして十八歳、十九歳の者についてどのように取り扱うのが適当かという考えに基づいて本法律案の立案をしたものでございます。
  29. 宮崎政久

    宮崎委員 次に、被害者の方のお考えについても少し触れてみたいと思います。  昨日の参考人質疑で、少年事件被害者でいらっしゃる武参考人からもこんな発言がありました。今回の改正案で少年法適用年齢が十八歳に引き下げられなかったことについて、十分な結果だと思っていません。そして、そのお考え理由として、こういうふうに述べられておられました。どんな事件でも、まずは全てを家庭裁判所に送るということは、改正民法で十八歳、十九歳は大人として認めるのに、国は、罪を犯したときだけ子供として扱うことです。罪を犯したときだけ少年法で扱われるというのはどうしても納得できないんですとお述べになっておられました。また、加害少年可塑性については大切なことだと御指摘をされた上で、そのことを理解するには被害者の視点が欠けている、加害少年の罪の裏側には被害者がいることが多く、命を奪われたり、傷つけられた被害者がおり、生きたかったのに生きることのできなかった子供たちもいるという御指摘がありました。  川出参考人も、昨日の参考人質疑の中で、民法成年年齢が十八歳になったということとの関係で考えると、少年法保護原理が適用されないということですので、そこからすると、少年法適用から外すというのが、私自身は最初はそれが論理的だろうと思っていましたと述べておられます。川出参考人はその後の経緯も述べておられるわけでありますけれども、最初のお考えも述べておられました。  他方、昨日の参考人質疑では、犯罪被害者の声にも多様なものがあるという御指摘ももちろんありました。それももちろん理解をしております。  また、何でも国民世論の多数で決めろということを申し上げているわけではございません。  実は、私自身も、弁護士としての経験の中で、被害者の側の代理人をしたことも幾度かあります。更に言えば、複数少年によるリンチ殺人事件の加害少年の一人の付添人をやって、その後もずっと長いことその加害少年とつき合い続けたという経験もございます。様々な立場から様々な意見が出てくるということは、私自身も、これまでの大人として生きていく中で、仕事をしていく中で経験をしてきたことであります。  だから、その上で申し上げるわけでありますけれども、国民の中にはこんな意見がないでしょうか。法理論としての整合性はおいておいて、さらに、被害者の切実な訴えや国民が求めていることに背を向けて、何やら、国民少年可塑性について十分分かっていないだけだから、被害者国民世論が何と言おうと、少年法適用年齢引下げに手を触れてはいけないんだというふうに言っているようには聞こえないか、そんな不安があります。  この法案が、被害者の方を含む国民理解、納得、どうやって取ろうとしているのかということについて、法務省の見解を聞きたいと思います。
  30. 川原隆司

    川原政府参考人 お答えいたします。  十八歳及び十九歳の者は、公職選挙法及び民法の改正により、重要な権利、自由を認められ、責任ある主体として積極的な社会参加が期待される立場となるに至ったものであります。  こうしたことに鑑みますと、十八歳及び十九歳の者が罪を犯した場合には、このような立場に応じた取扱いとすることが適当であり、また、刑事司法の存立基盤である被害者を含む国民理解信頼確保という観点からも必要であると考えられるところでございます。  そこで、本法律案におきましては、十八歳及び十九歳の少年につきまして、全事件家庭裁判所送致するなどの少年法の基本的な枠組みを維持することとしつつ、いわゆる原則逆送事件範囲拡大する、検察官送致決定がなされた後の刑事事件特例に関する少年法規定原則として適用しない、公判請求がなされた後はいわゆる推知報道禁止を解除するなどの取扱いをすることとしているところでございます。  以上申し上げましたとおり、本法律案におきましては、十八歳及び十九歳の者が重大な犯罪を犯した場合の取扱い等について、被害者を含む国民理解、納得という観点をも踏まえた制度としているところでございます。
  31. 義家弘介

    義家委員長 しばしお待ちください。  大臣、四十五分から参議院の出席になりますので、タイミングを見て退席して結構でございます。
  32. 宮崎政久

    宮崎委員 この国民理解というのは、非常に重要だと思っております。  今日、資料でお配りをした中で、国法上の統一性という言葉を書いて、政務調査会の中でまとめる起案をさせていただいたりしました。  法律というのは、全体として国民の皆さんに対して指針を示す規範形成機能というものを欠いてはいけないと思っております。こういったことについての要請もあり、また、弱い立場というか、困った立場というか、そういうところで苦しい思いをされている方もいるということに触れながら、是非、この法案審議をしていきたいと思っております。  少し個別の論点に入りたいと思います。  本法律案では、少年法適用対象年齢引下げが行われない一方で、これまで一章「総則」から四章「雑則」の四章構成であったものを、五章で「特定少年特例」を新設したわけでありまして、この新しい章を設けた理由と、十八歳以上の少年特定少年と呼称することにした経緯について、法務省から説明をお願いします。
  33. 川原隆司

    川原政府参考人 お答え申し上げます。  本法律案におきましては、少年法の法文上、十八歳以上の少年という表現が繰り返される事態を避けるため、十八歳以上の少年の略称を定めることとしております。  そして、十八歳以上の少年は、二十歳未満の者を指す少年のうちの一部の者であることから、その略称については、法制技術的な観点から、特定少年とすることとしたものでございます。  また、本法律案において設けることとしている特定少年対象とする特例には、家庭裁判所における保護処分の特則のほか、刑事事件の特則など、多くのものがあることから、新たに章を設けてまとめて規定することが、その取扱いの全体的な把握に資するものであり、法制的観点から適当であると考えられるところでございます。  そこで、本法律案におきましては、少年法に第五章として「特定少年特例」と題する章を設けることとしたものでございます。
  34. 宮崎政久

    宮崎委員 次に、虞犯、保護処分についてちょっとお聞きしたいと思います。  十八歳、十九歳の者は、先ほどから繰り返しているとおり、令和四年四月一日から、未成年から成年に区分されることになるわけです。  民法では、未成年者は親の親権に服するとされています。親権者は、子供の利益のために子の監護権を有して、監護義務を負う。つまり、民法の改正で成年年齢が十八歳に引き下がった以降は、十八歳、十九歳の者は親の監護権の対象から外れるということになります。  これは、昨日、川出参考人がおっしゃっておられたように、十八歳、十九歳の者について、立法者が、自律的な判断能力を有するものとする政策的判断を行ったということであります。つまり、特定少年に該当する者は、自律的な判断能力を有するとされ、親の監護権から外れたことから、未成熟性を根拠として、保護原理に基づく国家の後見的な介入を認めることは、法制度全体としての整合性の観点から疑問があるという指摘があります。  特定少年に対しては、不利益処分は犯した罪に対応する責任範囲で行うべきという責任主義適用すべきであるという御指摘もあるところであります。  この点、本法律案では、特定少年に対しては、いまだ罪を犯していない段階での虞犯による保護処分はしないこととし、また、罪を犯した場合の保護処分について、犯情軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲で行うこととしております。その趣旨について、法務省から説明をお願いします。
  35. 川原隆司

    川原政府参考人 お答えいたします。  現行少年法の虞犯制度は、保護者の正当な監督に服しない性癖があること、正当な理由なく家庭に寄りつかないことなどの事由に該当し、その性格、環境に照らし、将来罪を犯すおそれのある少年について保護処分を課すことができるとするものでございます。  また、現行法上の保護処分については、一般に少年の要保護性に応じて課すものであり、要保護性の程度が高い場合には、当該少年に対して、犯した罪の責任に照らして許容される限度を超える重い処分を課すことを制約する規定はなく、制度上可能であると解されているところでございます。  法制審議会議論でも指摘されたところでございますが、保護処分対象者の権利、自由の制約という不利益を伴うものであることからすると、十八歳以上の少年について、虞犯による保護処分現行法保護処分を行うことや、犯した罪の責任に照らして許容される限度を超える保護処分をすることについては、民法上の成年とされ、監護権の対象から外れる十八歳及び十九歳の者に対して、保護の必要性のみを理由に後見的介入を行うことが、成年年齢引下げに係る民法改正との整合性や責任主義の要請との関係で許容されるか、民法成年となる十八歳及び十九歳の者に対し、罪を犯すおそれがあるというだけで処分を行うことは国家による過度の介入とならないかといった問題点があり、法制度としての許容性、相当性の点で慎重であるべきと考えられるところでございます。  そこで、本法律案におきましては、民法上の成年となる十八歳以上の少年については、虞犯による保護処分は行わないこととし、また、保護処分は犯した罪の責任に照らして許容される限度を超えない範囲でしなければならないものとする趣旨で、保護処分犯情軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内においてしなければならないこととしているものでございます。
  36. 宮崎政久

    宮崎委員 今御説明のあった六十四条、特定少年に関する保護処分特例のところについて質問したいと思います。  これは、特定少年である場合には、審判を開始した事件について、犯情軽重を考慮して相当限度を超えない範囲内において、保護処分のいずれかをしなければならないという規定であります。  この保護処分特例について、昨日の参考人質疑で須藤参考人から御指摘がありました。保護処分を、犯情軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲で行うこととした場合、要保護性に応じた処分選択が困難となり、保護処分の機能が減退するのではないかというのが須藤参考人の御指摘でありました。  保護処分特例について、保護処分の機能との関係からどう考えるのか、法務省の見解を伺います。
  37. 川原隆司

    川原政府参考人 お答えいたします。  保護処分対象者の権利、自由の制約という不利益を伴うものであることから、民法上の成年とされ、監護権の対象から外れる十八歳以上の少年について、犯した罪の責任に照らして許容される限度を超える処分を行うことは、法制度としての許容性、相当性の点で慎重であるべきと考えられるところでございます。  その上で、現在の少年事件における実務の運用上も、一般的には犯罪事実の軽重処分との間の均衡を考慮して処分選択が行われているとされており、また、一般的には犯罪事実の軽重と要保護性は対応、相関しているとの指摘がなされているものと承知しております。  そういたしますと、犯罪軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内で行うこととしても、実務上、要保護性に応じた適切な処分選択を行い、処遇機関が処遇を行うことに直ちに支障が生じるものではないと考えております。
  38. 宮崎政久

    宮崎委員 次に、人の資格に関する法令の適用の六十七条について質問させていただきます。  まず、大前提少年法の六十条は、少年のときに犯した罪により刑に処せられてその執行を受け終わった者や、執行の免除を受けた者は、人の資格に関する法令の適用については、将来に向かって刑の言渡しを受けなかったものとみなすと規定をしている。その一方で、刑法の三十四条の二は、禁錮以上の刑の場合、刑の執行を終わった者や執行の免除を得た者は、罰金以上の刑に処せられないで十年を経過したときに初めて刑の言渡しの効力を失うと規定されていることと比較しまして、違いが大きいわけであります。  本法律案の六十七条において、特定少年については、刑事処分相当を理由とする検察官送致決定がされた後は、刑事事件特例に関する少年法規定原則として適用しないと規定しておりますが、その趣旨理由法務省に伺います。
  39. 川原隆司

    川原政府参考人 お答えいたします。  十八歳及び十九歳の者は、公職選挙法及び民法改正等により、重要な権利、自由を認められ、責任ある主体として積極的な社会参加が期待される立場となるに至ったものであります。  そこで、十八歳及び十九歳の者が罪を犯した場合には、このような立場に応じた取扱いをすることが適当であり、また、刑事司法の存立基盤である被害者を含む国民理解信頼確保という観点からも必要であると考えられるところでございます。  少年法における少年刑事事件特例は、刑事事件手続及び処分においても少年の健全な育成を図るために設けられているものでございます。もっとも、家庭裁判所により、保護処分による改善更生の見込みがないか、保護処分によることが相当でないと判断されて、刑事処分相当を理由とする検察官送致決定がなされた場合には刑事責任を追及する立場となることからすると、そのような場合にまで、十八歳以上の少年について、なお健全育成を図るための特例をそのまま適用することは、先ほど申し上げましたように、責任ある主体としての立場に照らし、また、被害者を含む国民理解信頼確保観点からも適当ではないと考えられるところでございます。  そこで、本法律案におきましては、十八歳以上の少年につきましては、刑事処分相当を理由とする検察官送致決定がなされた後の少年法刑事事件特例規定は、原則として適用しないこととしているものでございます。
  40. 宮崎政久

    宮崎委員 ありがとうございます。  今日は、委員会での法案審議の最初でありますから、少し骨太なところで議論をさせていただきました。  私は、少年可塑性があるということを全く否定するものではありません、当たり前でありますけれども。可塑性は、人が教育や訓練を受けて変化する伸び代のようなもので、確かに年少者であれば脳に柔軟性があるため可塑性を発揮しやすいのでありますけれども、実は心理学とか教育学では、年齢を問わず訓練や教育によって成長していく可塑性は残されている、こういうふうに整理をされております。生涯教育などの分野でも、こういうことが活用されているわけです。私たちの経験の中でも、御高齢の方が、様々な環境の中で出会われた出来事に直面をして、いろいろな変化をもたらされていることを知っているところであります。  つまり、少年可塑性を発揮できるかどうかも、犯した事件に真摯に向き合うかどうかというところにかかっていると思います。  昨日の参考人質疑で、武参考人が、推知報道の関係で示唆に富んだ発言をされておられました。  こういうことを武さんはおっしゃっていた。悪いことをして、何かを起こした少年であるわけですから、ハンデはあると思うんですよね。だったら、やはり悪いことをしたんだから、より努力が大事だと思うんです。それを教えていないことに問題があると思います。あなたは悪いことをしたんだ、それだけのことをしたんだから、より努力をしなさい、それでなければ社会は受け入れないんですよという厳しさを、やはり教育の中で取り入れていくべきだと思う。こういうことを武さんはおっしゃっておられました。  まさに、このように、事件に真摯に向き合うことによって、初めて少年可塑性が発揮できるものだと思います。そうであれば、この事件ということで、社会全体の中で、選挙権が付与されて、民法上も成年として扱われ、権利義務主体となって、義務ももちろんあるけれども自由も与えられる立場に立つ十八歳、十九歳の者が犯罪を犯した場合に、これにしっかりと向き合う、責任をしっかり取るという意味でも、責任主義観点もしっかり持って、バランスの取れた少年法の法整備がされることが私は不可欠だと思っております。これは、今日いろいろな意見を出させていただきましたが、適用年齢の問題についても同様だと思っております。  最後になりますけれども、五年経過後の検討について伺います。  本法律案の附則では、成年年齢引下げに関する改正民法施行後の状況や、それによる社会情勢国民意識の変化などを踏まえて、改正法の施行から五年経過後に、特定少年に関する手続処分処遇在り方を検討すべき旨が規定されています。その趣旨について、法務省から説明をお願いします。
  41. 川原隆司

    川原政府参考人 お答えいたします。  本法律案は、公職選挙法選挙権年齢民法成年年齢引下げにより、十八歳及び十九歳の者が社会において責任ある主体として積極的な役割を果たすことが期待される立場となるに至ったという社会情勢変化を踏まえて、少年法等を改正し、これらの者について、その立場に応じた取扱いを定めようとするものであります。本改正によって、罪を犯した十八歳及び十九歳の者に係る事件手続処分等の在り方は、現行制度と相応に異なるものとなるところでございます。  また、罪を犯した十八歳及び十九歳の者に係る事件手続処分等の在り方については、社会情勢国民の意識の動向を踏まえた検討が必要であるところ、本法律案による改正後の少年法等成年年齢引下げに係る改正民法が施行された場合、それに伴って、十八歳及び十九歳の者を取り巻く社会情勢国民の意識が更に変化していく可能性もあるところでございます。  以上のことからいたしますと、より適切な制度を構築していくという観点から、施行後一定期間を経過した段階で、それまでに蓄積された運用実績とともに、その時点における社会情勢国民の意識の動向を踏まえて、制度の在り方について検討する機会を設けることが適当であると考え、御指摘規定を附則第八条に設けることとしたものでございます。
  42. 宮崎政久

    宮崎委員 ありがとうございました。  少年健全育成を図る、そして、罪を犯すことがないようにし、また、起きてしまったときにしっかりとこれを正していく、もちろん可塑性前提とした上で。これは当たり前のことでありまして、そういったことはしっかりやっていく。  それと同時に、我々はやはり立法機関に身を置いている者でありますので、国の法律全体としてどうあって、国民の皆様に何をお示しをしていくのか、こういったことをしっかりと一つ一つ考えながら、この少年法に関しても法案審議を進めてまいりたい、その決意を申し述べまして、質疑を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  43. 義家弘介

    義家委員長 次に、山田賢司君。
  44. 山田賢司

    山田(賢)委員 自由民主党の山田賢司でございます。  三月二十五日の本会議における本改正法案趣旨説明の際、上川大臣に対して御質問をさせていただきましたが、本日は政府参考人を中心に踏み込んだ質問をさせていただきたいと思っております。  まず、少年法改正の議論の中で、少年犯罪は減少しているというふうに言われております。  今お手元にお配りをさせていただいております資料一を御覧ください。確かに、犯罪白書等を見れば、少年刑法犯の検挙件数は減少しております。肌感覚としましても、昔の不良漫画に出てくるような、いかにも悪そうな若者を町中で見かけることは少なくなったような気がいたします。  他方で、見えない犯罪行為も隠されているのではないかという疑問を持っております。資料二を御覧ください。これは、内閣府広報室世論調査少年非行に関する世論調査によれば、七八・六%が、少年による重大な事件が五年前に比べて増えていると感じておられます。  少年刑法犯の検挙件数は減少していますが、実際には少年犯罪は増えているのに検挙ができていないだけではないかという疑問が生じます。このギャップについて警察庁はどのようにお考えか、お聞かせください。
  45. 檜垣重臣

    檜垣政府参考人 お答えいたします。  刑法少年の検挙人員は、平成十六年以降一貫して減少しており、令和二年には一万七千四百六十六人となっております。しかしながら、特殊詐欺や大麻事犯の検挙人員につきましては依然として高い水準にあるなど、少年非行に係る情勢については引き続き注意を要する状況も見られるものと認識しております。  警察としましては、こうした最近の少年非行をめぐる情勢を踏まえつつ、今後とも非行少年に係る事件捜査等を適切に推進してまいります。
  46. 山田賢司

    山田(賢)委員 ありがとうございます。  少年犯罪を論じるときは、えてして大人の目線で、未熟な少年、幼い少年大人社会に対して犯罪行為を行っているから、大きな目で見守ってあげようという視点が語られることがあります。しかし、子供が子供の命を奪ったり傷つけるというものもあります。いじめと呼ばれる犯罪です。  資料三を御覧ください。文部科学省、令和元年度児童生徒の問題行動・不登校生徒指導上の諸課題に関する調査結果によれば、小中高等学校における暴力行為発生件数は最近急増しております。この表は学校の管理下、管理下以外を合わせたものですが、学校の管理下における暴力行為の発生件数も急増しております。  そこで、文部科学省にお尋ねします。  令和元年度の暴力行為発生件数と警察への通報、告発件数は何件か、お聞かせください。
  47. 蝦名喜之

    蝦名政府参考人 お答えを申し上げます。  令和元年度の児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸問題に関する調査結果における暴力行為の発生件数は、委員から今資料としてお示しをいただきましたとおりでありますが、小学校は四万三千六百十四件、中学校が二万八千五百十八件、高等学校が六千六百五十五件となってございます。  このうち、学校管理下におきます暴力の発生件数は、小学校、四万一千七百九十四件、中学校、二万七千三百八十八件、高等学校、六千二百四十五件、合計しますと七万五千四百二十七件となってございまして、例えば十年前と比較をいたしますと、この総数というのは増加傾向にございます。  参考までに学校別に申し上げますと、特に小学校におきましては大変な増加傾向がございます。一方、中学校、高等学校ではそれぞれ減少傾向にあるという特徴でございます。  なお、この調査におきましては、暴力行為につきまして、当該暴力行為によってけががあるかないかといったことや、あるいは、けがによる病院の診断書、被害者による警察への被害届の有無などにかかわらず、幅広く暴力行為として捉えるということとしてございまして、これらのうちの警察への通報、告発の件数そのものについては把握はしておらないところでございます。
  48. 山田賢司

    山田(賢)委員 ありがとうございます。  ここが世の中のギャップではないかと考えております。  先ほど警察庁からは、少年による刑法犯というのは一万数千件というふうな御報告がありました。しかし、学校における暴力行為は七万五千件を超えております。  暴力行為というのは犯罪だと思うんですね。しかし、今驚いたのは、警察への通報件数を言っていただけるんだと思ったんですけれども。以前委員会でも御質問させていただいたんですが、公務員には犯罪の告発義務というものがあって、いじめのうち犯罪があったものについては適切に警察等へ通報すると聞いていたんですが、その通報、告発件数を把握されていないというのは、これはまさに、いじめという名の学校における犯罪行為をちゃんと把握していないということにつながるのではないでしょうか。これはこれできちんと把握しておいていただきたいというふうに思います。  続きまして、学校現場では、他の児童生徒に暴力行為を振るうなどの犯罪行為があっても、加害者の健全育成観点から、穏便に済ませようと考えているのではないかという疑問があります。  少年法では、罪を犯した少年はもちろん、罪を犯していなくても、犯すおそれがある少年であっても保護処分ができるというふうに定められております。加害少年健全育成のためにも、少年法を活用して、早い段階で、ちゅうちょせず、警察と連携して保護処分を積極的に行うように徹底していただきたいと思いますが、文部省の御見解をお聞かせください。
  49. 蝦名喜之

    蝦名政府参考人 お答えを申し上げます。  学校内における犯罪行為に対しましては、被害児童生徒を徹底して守り通すという観点から、教職員が毅然と適切な対応を取ることが重要であると考えてございます。  文科省といたしましては、加害児童生徒について、その児童生徒の行為が犯罪行為として取り扱われるべきと認められる場合や、あるいは児童生徒の生命、身体又は財産に重大な被害が生じるおそれがあるときは、警察への通報を含め、適切な関係機関との連携が重要であるということを周知をしているところでございます。  他方、児童生徒の問題行動については、教育的な指導により改善が見込まれ、そのような指導が児童生徒の将来のためにも効果的であると認められる場合もある、これは事実だと考えてございます。  いずれにしましても、そういった場合でも、警察等の関係機関と連携をしながら、学校において教育的な指導によって改善措置を講ずるということも含めまして、連携というものは大変重要であるというふうに考えてございます。引き続き、全ての子供たちが安心して学べる環境を確保するために、学校内における犯罪行為に対する教職員の毅然とした、かつ適切な対応を促してまいりたいと考えてございます。
  50. 山田賢司

    山田(賢)委員 犯罪と認める場合は警察と連携して毅然とした対応を行うように周知しているのに、なぜ警察に通報、告発した件数を把握していないのか。これは、言うだけ言って、言いっ放しになっているのではないか。こういうところをしっかりと把握していただきたいと思います。  加害少年健全育成というのも大事ですけれども、被害を受ける少年たち、この子供たちの健全育成という観点を忘れないでいただきたいというふうに思います。  そこで、少年法における健全育成という意味についてお聞かせいただきたいと思います。  刑事処分を科されると、人は健全に育たないのか。成長過程において犯罪行為を行い、他人を傷つけても処罰されないという誤った認識を持たせることの方が健全育成に反するのではないでしょうか。健全育成とは、処罰しないということではなく、罪を犯させないこと、間違ったことをしたときには処罰を受けて責任を自覚させることが健全育成につながるのではないかと考えますが、法務省、いかがでしょうか。
  51. 川原隆司

    川原政府参考人 お答えいたします。  現行少年法は、その第一条に規定されておりますとおり、少年の健全な育成を目的としているところでございますが、その意義につきましては、将来二度と犯罪ないし非行を行わないように、その少年を改善教育することを目的とすることを意味するなどと説明されているものと承知しております。  この目的の下、少年法は、全ての少年事件家庭裁判所送致し、原則として少年改善更生のための保護処分を行うという仕組みを採用しつつ、家庭裁判所が個別の事案において刑事処分相当と判断した場合には逆送決定がなされることとなるものでございます。  このような少年法に基づく家庭裁判所の審判、処分といった現行制度は、少年の再非行防止と立ち直りに一定の機能を有しているものと認識しております。
  52. 山田賢司

    山田(賢)委員 ありがとうございます。  そのとおりなんですね。私も、これまでは少年法というのは物すごく甘いんじゃないかと思っていたんですが、こうやっていろいろな議論を重ねさせていただいているうちに、少年法には様々な有効な機能があるということを勉強させていただきました。  しかし、問題は、こういった機能があるのにしっかりと使っていないということなのではないかと思います。少年法趣旨を踏まえて、非行少年犯罪を犯さないように、しっかりと早い段階での保護処分ないしは措置を取っていただくようにお願いをしたいと思っております。  また、未成年者は少年法に守られているから、犯罪行為を行っても捕まらないとか処罰されないという誤った認識犯罪に手を染めてしまうことがあるのかもしれません。こういったことがないように、刑事処分は受けないけれども保護処分を受けるんだということを学校現場でも教えて、規範意識を身につけるよう徹底していただきたいと思いますが、文科省の見解をお聞かせください。
  53. 蝦名喜之

    蝦名政府参考人 お答え申し上げます。  学校における教育活動を通じて児童生徒の規範意識を育成するということは、暴力行為のない安全、安心な学校づくりのためにも大変重要であると考えてございます。  文部科学省といたしましては、発達段階に応じまして自分を律することなどの成長を促す生徒指導の充実を図るとともに、新しい学習指導要領におきましても、例えば中学校では、道徳や社会の授業の中で、人が互いに尊重し、協働して社会を形づくっていく上で共通に求められるルールや法の意義の理解を促すといったこと、また、高等学校では、法の支配や、法や規範の意義及び役割、司法制度の在り方について学ぶ機会がございます。その中で、例えば刑罰の意義でありますとか、犯罪被害者の救済や犯罪者の更生に触れるなどの指導を工夫することを求めるということとしているところです。  文部科学省といたしましては、こうした、特に道徳や社会科の時間が中心になると考えてございますけれども、学校活動の様々な場面を通じまして児童生徒の規範意識の育成に努めてまいりたいと考えております。
  54. 山田賢司

    山田(賢)委員 是非よろしくお願いいたします。  次に、少年は未熟で、可塑性に富むのかという点についてお尋ねをしたいと思います。  何歳であろうと、およそ罪を犯す者は、規範意識が欠けているなど未熟な部分があるから犯罪に手を染めるのだと考えます。未熟だから罪を許されるものではありません。  また、少年可塑性があって大人可塑性がないというものではありません。少年であっても、少年院で教育、矯正を行ったはずが、何度も犯罪を繰り返している者はいます。他方で、大人でも、初犯で刑務所に入り、罪を償った後、立派に更生されています。  一律に年齢可塑性の有無を語るのではなく、加害者本人の性質に着目して論じるべきではないかと考えますが、法務省、いかがでしょうか。
  55. 川原隆司

    川原政府参考人 お答えいたします。  委員指摘のとおり、可塑性については、それぞれの人ごとに差異が生じ得ると考えられるところでございます。  他方で、罪を犯した場合にどのような処分が科されることとなるか、また、いかなる手続によって取り扱われることとなるかの基準につきましては、法律上、客観的かつ明確に定める必要があるところでございまして、少年法では、その適用対象を一律に年齢で画することとしているところでございます。
  56. 山田賢司

    山田(賢)委員 ありがとうございます。  様々な立場の方から様々な御意見をいただいて、私は、異なる立場方々の御意見にも目を通させていただいて、自分なりの考えを整理させていただいております。  更生保護の点から御質問させていただきたいと思うんですが、刑事処分を科すと更生できないという考え方は成人の更生保護制度の否定につながるのではないかと考えております。我々が持っている保護司に代表されるような更生保護制度、これは先日の京都コングレスでも世界に向かって発信したところです。  成人の刑務所出所者は更生できていないという認識を持っているのか、お聞かせください。
  57. 今福章二

    今福政府参考人 お答えいたします。  刑事処分を科された成人につきましては、現在、刑事施設から仮釈放されている者や保護観察つきの執行猶予判決を受けた者に対して保護観察を実施しております。  具体的に申し上げますと、犯罪処遇専門家である保護観察官が、民間の篤志家である、先ほど御紹介のありました保護司と協働いたしまして、その者の特性や犯罪傾向等に応じ指導監督を実施するとともに、自立した生活を営むことができるよう、就労支援などの各種の補導援護を実施するなどいたしまして、対象者の再犯防止及び改善更生を図っております。  これらの取組の結果、例えば刑務所出所者等の二年以内再入率は近年着実に減少しておりますなど、成人に対する更生保護制度は一定の効果を上げているものと考えており、引き続きその充実に努めてまいりたいと存じます。
  58. 山田賢司

    山田(賢)委員 ありがとうございます。  少年に対する保護処分だけでなく、成人に対する刑事処分であっても更生にはしっかりと機能しているということでございますので、先ほどの可塑性の話と関連して、一律に年齢でこっちは可塑性があるからということではなく、それぞれの加害者、少年成人問わず、本人の特質に着目して更生を図っていただきたいというふうに思っております。  そこで、この保護司なんですが、大変すばらしい制度であるものの、現在、保護司のなり手が大変不足しております。本来行政がやるべき役割を民間のボランティアの方々に担っていただいている点に、そろそろ構造的に限界が来ているのではないかと考えております。  小手先の対応策ではなく、持続可能な制度とするために根本的に改善を図る必要があるのではないかと考えますが、法務省のお考えをお聞かせください。
  59. 今福章二

    今福政府参考人 お答えいたします。  ただいまありました保護司さんは、罪を犯した者の再犯防止改善更生に多大な貢献をしてくださっておりまして、我が国の刑事政策にはなくてはならない存在でございますが、近年は御指摘のとおり減少傾向にありまして、また、全体に占める高齢者層の増加傾向が認められます。その背景には、地域の人間関係の希薄化ですとか、若い世代を中心に保護司活動に時間を割くことへの負担感があることなどが考えられます。なり手確保が困難となってきている保護司さんにつきまして、将来に向かって安定的に確保していくということは現下の重要な課題と認識しております。  そこで、法務省におきましては、保護司組織と一体となりまして、更生保護サポートセンターの設置や、保護司活動インターンシップあるいは保護司候補者検討協議会の開催、経済団体と連携した広報活動などを推進してまいりましたが、これに加えまして、今後、保護司が自宅以外で面接することのできる場所の確保、あるいは保護司活動のICT化、保護観察事件などにおける保護司の複数指名、そして地方公共団体を始めとした関係機関との連携の強化などの取組を進めて、一層積極的に推進してまいりたいと思います。  ただいま委員指摘になりました京都コングレスにおきましても、大きな注目を浴びたところでございます。この機を捉えまして、幅広い層からの適任者を確保して保護司制度を持続可能なものとするために、活動環境の整備ですとか保護司活動への支援の充実強化に全力を尽くしてまいりたいと思います。
  60. 山田賢司

    山田(賢)委員 是非よろしくお願いいたします。世界に向かってすばらしい制度だと言っていたら、実は日本でなくなっていたということでは話にならないので。昔は、地域の名士みたいな方が地域のことをやろうということでやっていたんですが、最近ではサラリーマンをやっている方々を含めた普通の方々がやっております。やはり、負担も含めて、是非制度の抜本的な改善を図っていただきたいというふうに思っております。  さて、少年法は有効に機能しているという意見が多数寄せられている反面、昨日の被害者家族の武るり子参考人からは、加害少年は、謝罪もせず、賠償金も払わず、再犯を犯している、加害少年自身が少年法によって守られていることを知って犯行に及んでおり、少年法が抑止力どころか引き金になっているとの発言もありました。  この発言について、法務省としてどのように受け止められているでしょうか。
  61. 川原隆司

    川原政府参考人 お答えいたします。  委員指摘のように、昨日、武るり子参考人が、少年法が抑止力になっていないどころか犯罪の引き金になっているケースもある、凶悪犯罪を起こした少年ですら少年法で許されると思うのだから、軽微な犯罪を起こした少年であれば、なおさらその気持ちが強いのではないかという趣旨の御意見を述べられたところでございます。  武参考人は、少年事件の御遺族の立場で、御遺族の立場というのは、大変深い悲しみを経験されたお立場で、御経験に基づき率直な御意見をいただいたものでございまして、少年法を所管する法務省としては重く受け止めているところでございます。
  62. 山田賢司

    山田(賢)委員 是非よろしくお願いします。やはり、司法制度というのは、被害者理解があってこそ納得が得られるものでございます。被害者にこんなことを言わせないように、是非お願いします。  同じく、関連して、同参考人からは、家裁では、事件の事実関係を行うのではなくて、少年が今後生きていくことを考えるところだと言われたとか、あるいは、警察でも、少年犯罪は点数にならないから捜査に力が入らないと、殺された子供の命が軽く扱われたと語っておられます。  裁判所においては、様々な制度改正で被害者の視点が取り入れられておりますが、取締りの現場では、少年犯罪は点数にならないから捜査に力が入らないという認識を持っているのか、お聞かせください。
  63. 檜垣重臣

    檜垣政府参考人 お答えいたします。  警察におきましては、犯罪を認知した場合には、法と証拠に基づき適切に捜査等を行っているところでございます。  少年事件の捜査につきましても、引き続き、少年の健全な育成を期する精神を持ちつつ、的確に対応してまいりたいと考えております。
  64. 山田賢司

    山田(賢)委員 ありがとうございます。  当然のことでございますので、間違っても被害者にこんなことを思わせるようなことがないように、しっかり取り組んでいただきたいと思っております。  加害少年が、遺族に対し、本心からの謝罪を行わず、賠償金も支払わない、こういったケースがないよう、保護観察において被害者に対する謝罪や被害弁償に向けた指導、これを充実強化すべきであると考えますが、いかがでしょうか。
  65. 今福章二

    今福政府参考人 お答えいたします。  現状におきます保護観察におきましては、重大な犯罪をした保護観察対象者に対しまして、被害者やその遺族のお気持ちや、被害の状況等の実情を理解させ、謝罪や被害弁償等の責任があることを自覚させることなどを内容とする贖罪指導プログラムを実施しております。  今後は、その対象及び内容の更なる充実を検討していくことに加えまして、先般の法制審議会答申にも盛り込まれましたとおり、被害者等に対する慰謝の措置に関する生活行動指針の運用について規律を設け、その指導の充実を図るとともに、さらに、被害者等の心情等の理解被害回復の指導に対しまして本人が実施した事実を申告させることなどを保護観察における遵守事項の類型に追加させるための法整備につきましても、所要の作業を進めることなどによりまして、被害者に対する謝罪や被害弁償に向けた指導の充実強化に努めてまいりたいと存じます。
  66. 山田賢司

    山田(賢)委員 ありがとうございます。  被害者にとってはもちろんですけれども、加害少年にとっても、自分が傷つけた相手の痛みや苦しみ、悲しみといったものを深く理解をさせることがその少年の将来の健全育成につながると思いますので、是非こういった指導を徹底していただきたいと思います。  また、刑事裁判においては、犯罪被害者等による損害賠償手続を刑事手続の成果を利用して簡易迅速に解決する損害賠償命令制度というものが設けられておりますが、少年事件家庭裁判所で扱われる場合、少年犯罪被害者は損害賠償命令制度を利用できるのか、できないとすればそれはなぜか、教えていただけますでしょうか。
  67. 川原隆司

    川原政府参考人 お答えいたします。  損害賠償命令制度は、犯罪被害者等による民事上の損害賠償請求に係る紛争を、刑事事件の証拠が利用できるようにして刑事裁判所が賠償を命じている裁判を行う制度であり、その対象事件は、殺人、傷害等の故意の犯罪行為により人を死傷させた罪など一定の罪の刑事被告事件とされているところでございます。  したがって、いわゆる少年事件、すなわち罪を犯した少年に係る事件であって、家庭裁判所の審判に付されているものにつきましては、その後、公訴を提起されて一定の罪の刑事被告事件とならない限り、損害賠償命令制度の対象とはならないものでございます。
  68. 山田賢司

    山田(賢)委員 ありがとうございます。  被害者にとっては、加害者が少年であるか大人であるかというのは関係ないんですね。ただ、刑事手続になったらある程度救済の道があるけれども、家裁に持っていかれたらその救済の道がないということでは、大変取り残された思いになるのではないかと思います。  家庭裁判所における少年犯罪事件についても、被害者が損害賠償命令制度を利用できるように、制度の改正を考えていただけないでしょうか。
  69. 川原隆司

    川原政府参考人 お答え申し上げます。  少年審判に損害賠償命令制度を導入することにつきましては、少年審判と刑事裁判では、その趣旨目的が異なっているほか、少年審判は家庭裁判所において非公開で行われ、証拠法則の適用もないなど、刑事裁判とは異なる観点からの考慮が必要と考えられるところ、損害賠償命令制度を導入し、少年審判における少年や関係者の供述等の証拠が民事上の損害賠償のために利用されることとなりますと、少年審判において少年や関係者から非行事実等に関する十分な供述や資料を獲得することができず、少年に対する教育効果を減殺することとならないかなどの懸念がございますことから、慎重に検討すべきものと考えられるところでございます。
  70. 山田賢司

    山田(賢)委員 ありがとうございます。  法制度の壁が高いということはよく分かりましたが、今言ったように、被害者の方というのは、誰に殺されたのか、あるいは誰に傷つけられたのかということにかかわらず、同じ痛みを持っておられます。加害者が少年であるがために道が閉ざされるということがないように、是非引き続き検討していただきたいと思います。  続きまして、虞犯についてお聞かせをいただきたいと思います。  十八歳、十九歳の者について、罪を犯していなくても保護処分を可能とする虞犯の対象にしておくべきだという意見がありますが、私は、成人に対して罪を犯してもいないのに自由を制限するということは、むしろ人権の観点からも問題ではないかと考えます。  ふだん国家の統制に反対される方々ほど、成人に対して国家が保護観察を行うなどの介入をせよと言うところにやや違和感があるのですが、この点、法務省はいかが考えておられますでしょうか。
  71. 川原隆司

    川原政府参考人 お答えいたします。  御指摘の点につきましては、法制審議会での議論でも指摘されたところでございますが、保護処分対象者の権利、自由の制約という不利益を伴うものであることからいたしますと、十八歳以上の少年について虞犯を保護処分対象とすることにつきましては、民法上の成年とされ、監護権の対象から外れる十八歳及び十九歳の者に対して、保護の必要性のみを理由に公権的介入を行うことが成年年齢引下げに係る民法改正との整合性や責任主義の要請との関係で許容されるか、民法成年となる十八歳及び十九歳の者に対し、罪を犯すおそれがあるというだけで処分を行うことは国家による過度の介入とならないかといった問題点があり、法制度としての許容性、相当性の点で慎重な検討が必要であると考えられるところでございます。  法制審議会におきましては、さらに、保護の必要性は二十歳や二十一歳の学生でもほとんど変わりはなく、ほかにも高齢者など保護、支援が必要な者は存在するから、本人のためになるという理由だけで民法上の成年となる十八歳及び十九歳の者への処分を認めると、本人のためになる限り、より広く不利益を伴う処分を課すことにつながりかねないといった強い懸念も示されたと承知しております。
  72. 山田賢司

    山田(賢)委員 この虞犯については、罪を犯していなくても、犯罪に巻き込まれるおそれがあるから、犯罪集団に引き込まれたりしないように保護するんだという考え方を取られているようなんですが、犯罪に巻き込まれないようにという意味であれば、これは十八歳、十九歳に限らず、むしろ、別の枠組みとして犯罪者から守るんだということを考えるべきだと思っております。  犯罪に巻き込まれないようにするために、政府としてどのように支援していくのか、お考えをお聞かせください。
  73. 川原隆司

    川原政府参考人 お答えいたします。  本法律案では、十八歳以上の少年について、家庭裁判所が虞犯を理由とする保護処分はできないこととしておりますが、これらの者の健全育成のためには、関係機関による対象者の任意に基づく支援、措置が重要であり、また、問題を抱える少年が非行に及んだり巻き込まれたりすることを未然に防止するためには、一般に早期の段階における働きかけが有効であると認識しております。  少年の非行防止につきましては、これまでも、内閣府に置かれた子ども・若者支援推進本部の下に設置された少年非行対策課長会議等において、法務省を含む関係省庁が連携を図りつつ、様々な取組を実施してきたところでございます。  法務省の取組といたしましては、少年鑑別所において、法務少年支援センターとして、非行、犯罪に関する問題等に関するノウハウ等を活用し相談、助言を行うほか、教育機関、民間団体等との連携を図り、地域における非行、犯罪防止のための活動を行う全国に設置された更生保護サポートセンターに保護司が駐在し、学校、警察等と協力し、非行防止セミナーや住民からの非行相談等を実施するなどの取組を行ってきたところでございます。  法務省としては、今後とも、先ほど申し上げました少年非行対策課長会議等の枠組みも活用して、関係府省等とも連携しつつ、少年健全育成、非行防止の取組を推進していきたいと考えております。
  74. 山田賢司

    山田(賢)委員 ありがとうございます。  少年法第一条の目的は、「この法律は、少年の健全な育成を期し、」と書いて、以下、非行のある少年に対して性格の矯正だとか環境の調整に関する保護処分などを行うということを書いております。  前段部分の「少年の健全な育成」というのは、加害少年だけではなくて、被害少年にとっても、真面目に生きている少年健全育成についても考えていただきたいと思っております。被害を受ける少年、命を奪われたり、一生消えない傷を負わされる、こういった被害少年健全育成という観点はどこにあるのか。真面目に生きている少年健全育成にもしっかりと取り組んでいただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。  本日はありがとうございました。     〔委員長退席、宮崎委員長代理着席〕
  75. 宮崎政久

    宮崎委員長代理 次に、北側一雄君。
  76. 北側一雄

    北側委員 北側一雄でございます。  まず最初に、京都コングレス、国連犯罪防止刑事司法会議、先月に京都で開催をされまして、無事大きな成果を上げられた、そのように思っております。心からお祝いを申し上げたいと思います。  本来、昨年の四月に開催される予定だったんですけれども、一年延期をされました。コロナ禍の中で、この京都コングレスの開催に至るまで、大臣始め本当に多くの関係者の皆様の御苦労、御尽力に心から敬意を申し上げたいと思います。犯罪防止に向けた国際連携を更に強化していくということでございまして、京都宣言も採択をされました。大きな成果を上げられたと私は評価をしております。  上川大臣、本当に御苦労があったかと思いますけれども、この京都コングレスについての無事終えられた所感を一言、お話しをいただきたいと思います。
  77. 上川陽子

    上川国務大臣 第十四回国連犯罪防止刑事司法会議、京都コングレスでございますが、ちょうど一か月前でございますけれども、無事、六年ぶりということでありますが、開催をされました。コロナ禍でございまして、ハイブリッド型でございましたけれども、百五十二か国、五千六百人の皆さんにエントリーされて、そして世界中の、地球が一つになったという実感を、私も議長を務めまして、強く感じたところでございます。  その過程の中の六年間のやり取りの中では、各国が参加をして、京都宣言という形で最終的な合意文書がまとめられたところでございますが、法の支配が持続可能な開発、そして誰一人取り残さない社会の実現のために極めて重要であるという認識が共有をされ、文字で起こされたということでございます。  SDGsの達成ということが国際的な大きな共通の目標でございますので、この中のゴール十六、十七、あるいは他のゴールの法的な基盤としての位置づけ、こういったことについても意見集約がなされて、宣言にまとめられたと認識をしております。  一人の感染者も出さずに無事に終わったということも、国連にとりましても、また日本にとりましても、大変大きな成果であったと思っているところでございます。  これから、この司法外交の取組というものの産声を上げたということでございますので、この京都宣言をこれから実施をしていくという、これからの計画の中でしっかりと日本がリーダーシップを発揮するべく、私もまた微力ながら頑張ってまいりたいというふうに思っております。  この間、委員におかれましては、京都コングレスの成功を導くための議員連盟を立ち上げていただきまして、代行としての大きな御指導を賜りましたこと、また、開会式にも御参加をいただくことができまして、そして、議員もプレーヤー、ステークホルダーの一つとしてしっかりとした存在を示していただきましたこと、改めて心から感謝申し上げます。
  78. 北側一雄

    北側委員 京都コングレスの成果を、是非これから着実に実行をお願いしたいと思います。  それでは、少年法等の改正法案について質疑をさせていただきます。  もう言うまでもございませんけれども、なぜ今回少年法の改正なのかということなんですが、二〇〇七年に、憲法改正国民投票法での投票権年齢、これは十八歳にさせていただきました。そしてさらに、公職選挙法についても、これは二〇一五年でございますけれども、選挙権年齢を十八歳にしました。現在もう実施をさせていただいております。これは議員立法でございましたけれども、私も提出者の一人として名前を連ねさせていただいております。さらに、民法についても、成年年齢が十八歳、これは二〇一八年に成立をいたしまして、来年の四月から施行をされるということになっております。  この年齢を定める法律というのはいっぱいありまして、三百四十八本の法令があるそうです。これについて年齢条項の見直しをずっとさせていただいたわけでございまして、その中には、年齢引下げをしたもの、逆に引下げは行わないもの、多様なんですけれども、例えば、未成年者飲酒禁止法とか未成年者喫煙禁止法については二十歳というのを維持をしているわけですね。それで、こうした年齢条項、各種法令の年齢条項についての見直しがなされる中で唯一残っているのが、この少年法適用年齢をどうするのかということでございまして、こうした議論が法制審で議論をなされてきたわけでございます。  なかなか法制審でも意見がまとまらない中で、自民党、公明党の与党としてもチームをつくらせていただきまして、少年法の、特に適用年齢在り方をどうしていくのかという議論を精力的に、自民党、公明党、させていただきました。数えてみましたら、二〇一九年の十一月から始めているんですね。おととしの十一月から始めて去年の七月まで合計で十四回、与党協議をいたしまして、最終は今年の一月二十八日、法案がきちんと出てきまして、それを与党プロジェクトとして了承する、こういう流れでございます。  皆様のお手元に、この与党協議、精力的に行いました与党PTの合意文について、一枚紙を資料として提出をさせていただいておりますが、非常に密の濃い議論ができたというふうに思っております。その後、この合意の後に、法制審で与党合意を受けた形で最終答申がなされる。これも全会一致でなされました。全会一致で最終答申が了承をされたわけでございます。  この与党協議の中で、少年法改正に向けての基本的な考え方について、私は、大きく二点、恐らく認識を共有したんだと思っています。与党協議の中で大きく二点、認識の共有があったかと思う。  その一つ目は、少年法の第一条に定める目的少年保護については、十八歳、十九歳の者にも基本的には当てはまるんだ、こういう認識共有が私はあったと思います。民法少年法とは、そもそも法の目的が異なっております。少年法観点からは、十八歳、十九歳の者については、いまだ成長途上にあり、可塑性に富んでいる、その更生や再犯防止のための教育的な処遇が必要かつ有効である。さらに、家庭裁判所のこれまでの役割、調査、審判による保護処分というのは非常に有効に機能していて、少年事件は現に減少している。こういう認識の下で、今申し上げたように、十八歳、十九歳の者についても少年法の基本的な骨格は適用していこう、こういう共通認識を私は持ったというふうに思っております。  その上で、今回の法改正では、少年法の二条一項、これは触っておらないんですね。少年法の二条一項は、この法律において少年とは、二十歳に満たない者をいうということでございまして、十八歳、十九歳の者は少年法上の少年としての位置づけをしたわけでございます。  これは念のために申し上げておきますが、年齢によって三分類をしたわけじゃございません。三分類というのは、二十歳以上、十七歳以下、その間の十八歳、十九歳。三分類をしたわけではなくて、あくまで少年というのは、少年法上は、二十歳に満たない者、二十歳未満、その中に十八歳、十九歳という位置づけをしたということでございます。あくまで少年、これが一つ。  全件、全事件家庭裁判所送致する、全件家裁送致、これを維持をしていく。少年保護教育処遇のためには、専門的なスタッフを備えております家庭裁判所の機能、役割を全面的にこれからも活用するのがふさわしい、こういう判断をしたんだと思っております。これが一つです。  もう一つの共通認識は、そうはいっても、十八歳、十九歳の者の社会的地位というのが変化している、変化させたんですね。十八歳、十九歳の者の社会的地位の変化によって、重大犯罪を犯して、かつその罪状が重い場合には、十七歳以下の少年とは一部異なる取扱いをする必要があるのではないか、こういう共通認識を私は持ったというふうに思っております。  選挙権年齢が十八歳になり、民法上の成年年齢についても、引下げによって十八歳、十九歳の者の社会的地位に変化が生じて、社会からの見方もより厳しくなってくるわけでございまして、刑事司法制度も、当然のことながら、被害者を含む国民理解がその基礎になければいけないわけでございまして、このような重大犯罪を犯す、そして罪状がかつ重い、こういう場合には、保護主義よりも、むしろ責任ある主体として責任主義が重視されていく、こういう認識を私たちはしたのではないのかなというふうに思っております。  ただし、原則逆送の対象拡大をする、後で詳しくお話をしますけれども、原則逆送の対象拡大をしましたが、これまでも、原則逆送規定ではなくて、二十条二項の規定ではなくて、二十条一項の規定で、家庭裁判所検察官送致、逆送することが実際は多かったわけでございまして、これまでも家庭裁判所は、これはやはり重大犯罪で、罪状が重いねという場合は、これまでも、原則逆送の規定適用ではなくて、二十条一項の規定検察官送致をしていたというのが実務の運用であったと私は思っております。  また、家裁が、家庭裁判所刑事処分が相当と判断して逆送した後は、少年法で定める刑事事件に関する様々な特例があるんですが、それはもう原則適用しないで、これは逆送された後のことですけれども、これは二十歳以上の者と同様に取り扱っていく、このような判断を私どもしたわけでございます。  以上二点、我々、与党協議の中で認識を共有したと私は思っております。  少年法の基本的な骨格について、十八歳、十九歳の者は少年として少年法適用対象とする、家庭裁判所に全件これからも送致をしていくということについて、また一方で、十八歳、十九歳の者については十七歳以下の者と一部異なる取扱いをした、ここの理由、これについて、法務大臣、総論的な話でございますが、御答弁をお願いをしたいと思います。     〔宮崎委員長代理退席、委員長着席〕
  79. 上川陽子

    上川国務大臣 この少年法適用年齢対象年齢在り方につきましては、委員指摘いただきましたとおり、成長過程にある若年者をどのように取り扱い、また、どのように改善更生を図るかに関わる問題であるというふうに認識をした上で、民法成年年齢が引き下げられたからといって、論理必然的にこれを引き下げられなければならないというものではないという考えの上で、今般の基本的な枠組み、これにつきましては、少年法に基づく家庭裁判所調査、審判などの現行制度が、これまで十八歳及び十九歳の者を含む少年の再非行の防止、また立ち直りに一定の機能を果たしてきた、こういう認識の上で、今般、本法律案におきましては、十八歳、十九歳の者が、公職選挙法及び民法改正等により重要な権利、自由を認められ、責任ある主体として積極的な社会参加が期待される立場となるに至った一方で、成長途上にある、そしてまた可塑性を有する、こういうことを踏まえまして、引き続き、全ての事件家庭裁判所送致をする、全件家裁送致というこの原則につきましてはしっかりと維持した上で、原則として保護処分を行う、そして少年法の基本的な枠組みを維持した上で、少年法適用対象とするということを認定しているところでございます。  本法律案におきましては、十八歳、十九歳の者を特定少年という形で位置づけているところでございますが、これは、原則逆送事件範囲拡大するとか、あるいは、公判請求された後は十七歳以下の少年とは異なる様々な特例を設けるというふうな形で位置づけたということでございまして、この少年法の大きな枠組みの中の、先ほど委員から御指摘いただいた二つの大きな方向性については、この中の基本的な考え方として位置づけているものと承知をしております。
  80. 北側一雄

    北側委員 それでは、原則逆送の対象拡大を今回するわけでございますけれども、これについて、これまでの運用も含めてお聞きをしたいと思います。  この逆送規定については、まず、現行の二十条一項に、家庭裁判所は、死刑懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らし刑事処分を相当と認めるときは、決定をもって検察官送致しなければならない。こういうのが一項でまず規定があるわけですね。  二項で、家庭裁判所は、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であって、こちらの方は十六歳以上の少年に係るものについては、これは原則逆送決定をしていかないといけない。こういう規定が二項にあるわけです。  ただ、一方で、ただし書もございまして、調査の結果、犯行の動機、態様等々、様々な罪状等を考慮して、刑事処分以外の措置を相当と認めるときはこの限りではないと。家庭裁判所調査の結果、またその判断に委ねているわけでございます。  今回の法律の改正案では、この逆送の規定については六十二条の二項に規定がございまして、この六十二条二項で原則逆送の範囲拡大をしております。死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪の事件であって、十八歳、十九歳に係るものについては原則逆送をしていく。ただ、同じくただし書、先ほどの二十条の二項のただし書と同趣旨のただし書規定が、この新しい六十二条二項にもただし書が付せられている、こういう改正になるわけでございます。  それで、これまでの検察官送致事件、逆送事件の運用の実態といいますかについてお聞きをしたいと思います。  刑事局長に御答弁いただきたいと思いますが、まず、十八歳、十九歳の少年事件について、最近三年間の総件数がどれぐらいであったか、また、刑事処分相当として逆送された件数がどれぐらいか、その割合がどれぐらいか、さらに、二十条二項本文によって原則逆送事件として逆送された件数についてお答えをいただきたいと思います。
  81. 川原隆司

    川原政府参考人 お答えいたします。  最高裁判所事務総局の資料に基づきましてお答えを申し上げたいと存じます。  平成二十九年に家庭裁判所で終局した終局時年齢十八歳及び十九歳の少年に係る一般保護事件につきましては、総人員数は九千六百三十九人であり、そのうち刑事処分相当による逆送人員数は百五人で、総人員数に占める割合は約一・一%でございます。  平成三十年につきましては、総人員数は八千八百五十九人であり、そのうち刑事処分相当による逆送人員数は百六人で、総人員数に占める割合は約一・二%でございます。  令和元年につきましては、総人員数は八千四百五十一人であり、そのうち刑事処分相当による逆送件数は九十八件で、総人員数に占める割合は約一・二%でございます。  そして、平成二十九年から令和元年までの各年に原則逆送事件により逆送された行為時十八歳又は十九歳の少年の人員数は、平成二十九年は六人、平成三十年は九人、令和元年は四人でございます。
  82. 北側一雄

    北側委員 今の数字で分かりますとおり、これまで少年事件の中で実際に逆送されている件数というのは、この十八歳、十九歳に限って申し上げますと、少年事件総件数の約一%という今御答弁でございまして、大半は保護処分になされているということでございます。  また、逆送そのものも、今、原則逆送事件の件数をおっしゃっていただきましたけれども、この三年間全て一桁の数字でございまして、逆送されている事件は百件前後あるわけでございますが、そのうち原則逆送対象事件というのは一桁なんですね。逆送も、二十条一項による逆送が大半でございまして、二項による原則逆送事件というのはごく僅かであるということが示されたと思っております。  さらに、十八歳、十九歳の原則逆送対象事件について、原則逆送なんですから、検察官送致をしなければいけないものが多いと思うんですけれども、検察官送致されずに、ただし書の適用保護処分となった件数、その割合について御答弁いただきたいと思います。
  83. 川原隆司

    川原政府参考人 お答えを申し上げます。  済みません、その前に、先ほど私、答弁を申し上げた数字につきまして、令和元年について、逆送件数が九十八件と申し上げましたが、済みません、逆送人員数は九十八人という人の誤りでございますので、訂正させていただきます。  それから、今のお尋ねについてお答え申し上げます。  これも最高裁判所事務総局の資料に基づいてお答え申し上げたいと存じますが、平成二十九年に家庭裁判所で終局した原則逆送対象事件のうち、行為時十八歳又は十九歳の少年に係る事件の人員総数は九人でございまして、そのうち逆送以外の処分がなされた人員数は三人で、人員総数に占める割合は約三三・三%でございます。  同じく、平成三十年につきましては、行為時十八歳又は十九歳の少年に係る事件の人員総数は十一人であり、そのうち逆送以外の処分がされた人員数は二人で、人員総数に占める割合は約一八・二%でございます。  同じく、令和元年につきましては、行為時十八歳又は十九歳の少年に係る事件の人員総数は六人でございまして、そのうち逆送以外の処分がなされた人員数は二人で、人員総数に占める割合は約三三・三%でございます。
  84. 北側一雄

    北側委員 今の御答弁で分かるとおり、原則逆送事件においても、その罪状等によりまして、ただし書が適用されて、そのうちの約三割が逆送されずに保護処分がなされているという報告でございまして、このただし書規定というのが機能しているなというふうに思っております。  今回、改正されて、拡大される原則逆送規定なんですけれども、短期一年以上の懲役禁錮に当たる罪の事件件数、割合について、もし分かったら教えてください。
  85. 川原隆司

    川原政府参考人 お答えいたします。  令和元年十二月一日から令和二年二月二十九日までの三か月間に、処分罪名の内訳を調査した最高裁判所事務総局の資料によりますれば、全国の家庭裁判所において終局した刑法犯の少年保護事件のうち、終局時十八歳又は十九歳の少年の人員総数は一千七百八人であり、そのうち死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役又は禁錮に当たる罪の事件の人員数は五十二人でありまして、人員総数に占める割合は約三%でございます。
  86. 北側一雄

    北側委員 短期一年以上の懲役といっても、全体の約三%程度なんですね、少年事件の中で。これはあくまで十八歳、十九歳の者でございますけれども。  そういう意味では、改正後も、十八歳、十九歳の者の少年事件について、その多くは検察官送致、逆送されず、保護処分対象となるというふうに私は理解をしております。したがって、一部、何か、今回の少年法の改正で厳罰化、少年の厳罰化というのがなされているんだというふうな報道ぶりがありますけれども、そういう指摘は当たっておらないというふうに私は理解をしております。  それで、もう時間がございませんけれども、先ほどの与党合意の文書にございますが、ちょっと御覧になっていただきますと、この2ポツの、十八歳、十九歳の者の取扱いについて、(2)のところでなお書きをつけています。「なお、とりわけ強盗罪については、犯情を十分に考慮して逆送の当否が判断される運用とすべきである。」というふうに与党で合意をしたわけでございます。  強盗罪というのは、非常に凶悪な事件もあれば、単に指示されて見張りだけをしていたというふうな事件もあって、非常に罪状等の幅が広い強盗罪だと思います。そういう意味で、強盗罪については、是非家庭裁判所の方で、この運用についてはよく事件内容調査していただいて御判断いただきたいと思います。  法務大臣、また最高裁の、いらっしゃったら御判断をお願いしたいと思います。
  87. 上川陽子

    上川国務大臣 家庭裁判所におきましては、実務上、原則逆送事件についても、十分な調査を尽くした上で、刑事処分相当として逆送決定をするか否かを慎重に判断をしているものと承知をしております。  ただいま委員の方から、現行法につきましては、少年法第二十条の第二項のただし書の運用等につきまして、一連の数値についても御質問いただいたところでございますが、個別の事案に応じた最も適切な処分をするということ、このことについては、家庭裁判所がしっかりと判断をし、そして送致、逆送せずに保護処分を選択できる、こういう枠組みになっているところでございます。  今般、御指摘強盗罪を含めまして、新たに原則逆送の対象となる事件につきましても、家庭裁判所では、個々の事案におきまして十分な調査を尽くし、犯情軽重を含む様々な事情を考慮した上で適切な処分判断が行われるものと想定をしております。  今回、新しく、少年法の第六十二条第二項のただし書というところに、その趣旨が明記されているところでございます。
  88. 手嶋あさみ

    ○手嶋最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  ただいま上川大臣からも、改正法の趣旨等につき御答弁があったところでございますが、裁判所としましては、本法案が成立しました場合には、十八歳以上の少年に係る、強盗罪も含め、原則逆送事件につきまして、改正法の趣旨を踏まえ、引き続き、家庭裁判所調査官による必要な調査を尽くし、犯行の結果など、犯情軽重観点も十分に踏まえた上で、適切な処分選択がされるよう努めてまいりたいと考えております。
  89. 北側一雄

    北側委員 最後に、今回、虞犯による処分は行わないといたしました。また、資格制限の在り方につきましても、逆送された場合、検察官送致された場合には、二十歳以上と同じように扱う、このような合意をしたわけでございますし、そういう法改正になっているわけでございます。  先ほどの与党合意にありましたとおり、2ポツの(3)については、虞犯による処分は設けないんですが、十八歳、十九歳の者の更生、保護のために、行政による保護、支援の一層の推進を図るべき、また、(5)で、なお書きで、刑事処分に付された者の社会復帰の促進を図るため、資格制限の在り方について、政府において別途検討し、早急に結論を得る、このような合意をさせていただきました。  是非、この趣旨をしっかり盛り込んでいただきまして、今後、政府部内の中でしっかり検討を進めていただきたいというふうに思います。  以上です。
  90. 義家弘介

    義家委員長 次に、大口善徳君。
  91. 大口善徳

    大口委員 公明党の大口でございます。  今、我が党の北側からも質問がありましたように、与党PTで、上川座長、また北側座長代理の下で、十四回、この少年法について議論させていただきました。そして、法制審議会は三年半かかったわけでありますけれども、与党合意についても参考にしていただいたんじゃないかな、こう思っております。  そういう中で、法制審議会全会一致答申がなされたということが、ここには、法律関係者も、実務の方も、被害者団体の方も、あるいはマスコミの方もいらっしゃったわけでありますけれども、こういう形での答申に基づいて、今回、少年法の改正案が出されてきた、こう思っております。  そして、とにかく、この少年法の第一条の目的がしっかり十八歳、十九歳にも適用される。それから、「「少年」とは、二十歳に満たない者をいう。」ということで、少年の定義についても維持をする。そして、家庭裁判所への全件送致ということで、今、家庭裁判所のこれまでの仕事がしっかり機能しているということから、家庭裁判所に、非行少年をどうするかということを基本的に決めてもらう。そしてまた、逆送につきまして、今回、特定少年については新たに拡大をするわけでありますけれども、一時、必要的逆送ということ、ある一定事件についてはもう例外なく逆送する、こういう考えもあったわけでありますが、これについても、原則逆送という形で対応を拡大した、こういう観点は、私ども、評価をしているところでございます。  そこで今回、昨日、少年犯罪被害を受けられた遺族の方々の武参考人、あるいは片山参考人、本当にその痛みというものを、参考人として直接お話をいただきました。少年犯罪被害者の視点というものも本当に大事だな、このように実感した次第でございます。  そういう中で、川出参考人も、少年法の下での手続及び保護処分に付された者に対する処遇が十八歳、十九歳の非行少年の改善教育再犯防止のためにも有効に機能してきたということは、法制審の部会のメンバーの意見が一致をしている、こういうこともお話をされているところでございます。  今回のこの法改正について、今、北側委員からもありましたように、報道では、十八歳、十九歳の少年の厳罰化を図るものなのかと、また、厳罰化を図るものだ、こういう主張をされている方もいらっしゃいますけれども、改めて、法務大臣にこの点について所見をお伺いしたいと思います。
  92. 上川陽子

    上川国務大臣 本法律案におきましては、十八歳、十九歳の少年選挙権等を認められ、民法上も成年として位置づけられるに至った一方で、成長途上にある、そして可塑性を有する存在であるということを踏まえまして、これらの者につきまして、いわゆる原則逆送対象事件範囲拡大しているところでございますが、全事件家庭裁判所送致をし、そして原則として保護処分を行うというこの枠組みは維持をする、そして、家庭裁判所による保護処分につきましては、犯した罪に対応する責任を超えない範囲内で行うというものとしたところでございまして、虞犯による処分は設けないなどとしているところでございます。  このように、本法律案でございますが、十八歳、十九歳の者を取り巻く社会情勢変化を踏まえまして、少年法適用について、その立場に応じた取扱いを定めようとするものでございます。これらの者に対し、より重い処分、あるいは処罰の実現を追求しようとするものではございません。
  93. 大口善徳

    大口委員 次に、今回、六十二条の二項で、二十条の二項とは別に、死刑無期若しくは短期一年以上の懲役禁錮の者につきまして、これは原則逆送するということが追加されたわけであります。  これについて、少年法改正案の六十二条の二項ただし書において、二十条二項のただし書とは異なり、刑事処分以外の措置を相当と認めるか否かを判断するに当たって、考慮事情として犯行の結果を加えるということになったわけですが、その理由についてお伺いしたいと思います。
  94. 川原隆司

    川原政府参考人 お答えいたします。  現行少年法第二十条第二項のただし書は、原則逆送対象事件につきまして、家庭裁判所が、調査の結果、犯行の動機及び態様、犯行後の情況、少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは例外とする旨を規定しておりまして、委員指摘のとおり、この同項ただし書には、逆送決定するか否かの考慮事情として犯行の結果が記載されていないところでございます。これは、原則逆送対象事件が故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件に限られているため、犯行の結果は被害者の死亡であり、これが重大なものであることは当然であることによるものであると考えられるところでございます。  他方で、本法律案では、少年法第六十二条第二項におきまして、十八歳以上の少年につきまして、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件のほか、死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役禁錮に当たる罪の事件原則逆送の対象とすることとしております。そのため、十八歳以上の少年に係る原則逆送対象事件には様々な罪種が含まれることとなり、また、それに伴って、原則逆送事件における犯行の結果も、重大なものから比較的軽微なものまで様々なものが含まれることとなります。  そこで、逆送決定をするか否かの判断に際して、犯行の結果が重大か軽微かが重要な事情となり得ることから、同項ただし書におきまして、これを考慮事情として法文上明記することが適当であると考えたものでございます。
  95. 大口善徳

    大口委員 逆送した場合、それが刑事裁判になって、執行猶予つきの判決が見込まれるような事案がありますよね。それは大体、初犯であるとか、いろいろなところから想像がつくわけです。そういう場合、むしろ家庭裁判所保護処分にした方がよいというような判断がなされることがあると私は考えております。  昨日の片山参考人も、少年院では、様々な作文を書かせたり、いろいろな指導の中で、二十四時間、法務教官がつきっきりでその子たちのことを考えている、表面上の謝罪や言い逃れはできないような仕組みになっており、非常に厳しいプログラムがそこにある、こうなっています。  本当に、やはり真に謝罪し、真に反省をさせるためにどうすべきかということが私は大事だと思っていまして、この点についてお伺いしたいと思います。
  96. 川原隆司

    川原政府参考人 お答え申し上げます。  原則逆送事件拡大は、十八歳以上の少年に対しまして、一定重大犯罪に及んだ場合には十八歳未満の者よりも広く刑事処分対象となるという原則を明示することにより、その自覚や規範意識を高め、再犯を含む犯罪の予防に資すると考えられるところでございます。  また、刑の執行猶予は、それが取り消された場合には刑の執行を受けるという心理的強制によって対象者の改善更生を図るものであり、執行猶予つき判決にも相応の再犯防止機能がある上、より積極的な働きかけが必要な場合には、執行猶予期間中、対象者を保護観察に付することもできるところでございます。  加えて、本法律案では、十八歳以上の少年に係る原則逆送事件についても現行法と同様の例外規定を設けることとしておりまして、現行原則逆送事件と同様に、家庭裁判所において十分な調査を尽くした上で、処遇の有効性の観点も考慮して、個別の事案に応じた適切な処分選択が行われることとなると考えております。
  97. 大口善徳

    大口委員 少年が真に謝罪し、そしてまた反省をするよう、適切な対応をお願いをしたいと思います。  また、新たに原則逆送の対象となる事件についても、外形的事実のみを重視し、特定少年の生育歴や家庭環境など、要保護性に関する家裁の調査官の社会調査、また少年鑑別所の心身鑑別が形骸化することなく、十分な調査、鑑別が行われるのか、これについてお伺いします。
  98. 川原隆司

    川原政府参考人 お答えいたします。  原則逆送の例外を定める現行少年法第二十条第二項のただし書の運用に関しては、一般論として、家庭裁判所は、原則逆送事件が基本的に重大な事件であり、少年が根深い問題を抱えていて、丁寧な調査が必要となることが多いとの認識の下、少年鑑別所による鑑別を含め、十分な調査を尽くした上で、刑事処分相当として逆送決定をするか否かを慎重に判断しているものと承知しております。  本法律案では、十八歳以上の少年に係る原則逆送対象事件について、少年法第六十二条第二項のただし書として現行法と同様の例外規定を設けることとしておりまして、新たに原則逆送の対象となる事件におきましても、現行原則逆送対象事件と同様に、家庭裁判所による適切な処分判断前提として、十分な調査、鑑別が行われるものと想定しております。
  99. 大口善徳

    大口委員 次に、保護処分についてお伺いします。  少年法第一条の目的、この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対し性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行う。これは、特定少年と十八歳未満の少年のいずれにも適用されるわけです。  特定少年に対する保護処分と十八歳未満の少年に対する保護処分の主な異同について、法務省にお伺いしたいと思います。
  100. 川原隆司

    川原政府参考人 お答えいたします。  十八歳以上の少年に対する保護処分と十八歳未満の少年に対する保護処分は、いずれも家庭裁判所調査、審判を経て、少年法第一条の目的の下、犯した罪に対する応報としてではなく、専ら少年健全育成、再非行防止を図るために課すものである点は同じでございます。  他方で、両者の違いといたしましては、保護処分の要件につきまして、十八歳未満の少年に対する保護処分少年の要保護性に応じて課すものであるのに対し、十八歳以上の少年に対する保護処分は、犯罪軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内において、要保護性に応じて課すものであるということがございます。  また、保護観察処分につきましては、十八歳未満の少年に対する保護観察処分の期間は二十歳に達するまでであるのに対し、十八歳以上の少年に対する保護観察処分は、少年院への収容可能性のない六月の保護観察と、少年院への収容可能性のある二年の保護観察であることがございます。  また、少年送致処分につきましては、十八歳未満の少年に対する少年院の収容期間は原則として二十歳に達するまでであるのに対し、十八歳以上の少年に対する少年院の収容期間は家庭裁判所が三年以下の範囲内において定めることとしております。  こういったことなどが違いとして挙げられるところでございます。
  101. 大口善徳

    大口委員 次に、少年法改正案の第六十四条の一項において、犯情軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲において保護処分決定することとしています。  例えば、犯情一定程度重い場合には必ず少年送致としなければならず、たとえ試験観察の結果が良好であってもより軽い処分である保護観察にはできないといったように、より軽い処分の選択にも制約を課す趣旨か、お伺いします。
  102. 川原隆司

    川原政府参考人 お答えいたします。  本法律案におきましては、十八歳以上の少年に対する保護処分は、犯情軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内、すなわち、犯した罪の責任に照らして許容される限度を超えない範囲内でしなければならないこととしております。  限度を超えないとは、限度を上回らないという趣旨でございまして、裁判所は、犯した罪の責任に照らして許容される限度を上回らない範囲内であれば、対象者の要保護性に応じて処分を選択することとなります。すなわち、十八歳以上の少年に対する保護処分は、応報としてではなく、専ら少年健全育成を図るために課すものであることから、犯した罪の責任に見合うほど重く処分をすべき要請はなく、要保護性が小さければ、それに応じた軽い処分を選択すべきことになります。  このように、お尋ねの、犯情軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内においてという規定は、十八歳以上の少年に対する保護処分決定について、犯した罪の責任に照らして許容される限度を上回る重い処分を選択してはならないという趣旨でございまして、より軽い処分を選択することに制約を課すものではございません。
  103. 大口善徳

    大口委員 昨日の参考人の御意見の中に、試験観察は減少するといいますか、試験観察についての言及がございましたが、いかがでございましょうか。
  104. 川原隆司

    川原政府参考人 お答え申し上げます。  少年法六十四条一項の、犯罪軽重を考慮して相当な限度の範囲内においてという趣旨は、今申し上げたとおりでございます。  したがいまして、改正法の下におきましても、試験観察の運用が現行法と大きく変わるとは想定していないところでございます。
  105. 大口善徳

    大口委員 現行制度では、家庭裁判所は、単に少年送致決定するのみで、少年送致の収容期間は定めない。短期、相当長期等の処遇勧告はあります。実際、少年院の収容期間については、少年院が通常一年弱の個別矯正教育計画を立てて、進級制度の下、成績評価によって、少年院が出院の時期、仮退院、退院を判断することになっております。  少年法改正案第六十四条第二項及び第三項において、保護観察の遵守事項に違反した場合に少年院に収容することができる期間については一年以下の範囲内、少年送致における少年院に収容する期間については三年以下の範囲内で、犯情を考慮して期間を定めることとしていますが、これはいずれも、犯情を考慮して少年院に収容可能な期間の上限を定めるという趣旨理解してよろしいでしょうか。
  106. 川原隆司

    川原政府参考人 お答えいたします。  本法律案におきましては、先ほども御答弁申し上げましたとおり、十八歳以上の少年に対する保護処分は、犯した罪の責任に照らして許容される限度を超えない範囲内でしなければならないこととしているところでございます。  そこで、十八歳以上の少年に対する保護処分につきましては、犯した罪の責任に照らして許容される限度を超える収容が行われることがないよう制度的に担保する仕組みとして、少年法第六十四条第二項、第三項におきまして、家庭裁判所が、犯情を考慮して少年院に収容することができる期間及び少年院に収容する期間を定めることとしております。  したがって、これらはいずれも、御指摘のとおり、犯情を考慮して少年院に収容可能な期間の上限を定めるという趣旨でございます。
  107. 大口善徳

    大口委員 少年院に収容可能な期間の上限を犯情軽重を考慮して定めるという点について、犯情軽重以外の要素、例えば、保護処分決定時点で、要保護性の程度や今後の見込みを考慮して、より短い期間を定めることができるのか、お伺いします。
  108. 川原隆司

    川原政府参考人 お答えいたします。  本法律案少年法第六十四条第二項及び第三項におきまして、犯情軽重を考慮するとしておりますのは、家庭裁判所が、対象者を少年院に収容することができる期間の上限を定めるに当たって考慮すべきは、主として犯情軽重であるという趣旨でございます。  先ほども御答弁申し上げましたとおり、本法律案におきましては、家庭裁判所が、保護処分決定と同時に、犯した罪の責任に照らして許容される限度を超えない範囲内で少年院に収容することができる期間の上限をあらかじめ定めておくこととしております。  その上で、保護処分に付された対象者の問題性は、その可塑性ゆえに処遇中も随時変化していくと想定されることからいたしますと、家庭裁判所が、保護処分決定時に、それまでに収集された資料のみに基づき、要保護性の程度や今後の見込み等の処遇の必要性に関わる事情をも考慮して、将来予測的な判断により少年院に収容することができる期間の上限をあらかじめ限定する場合には、その後の対象者の変化により、少年院において、対象者の状況等に応じた必要な処遇期間を確保できなくなる事態が生ずるおそれがあります。  そのため、家庭裁判所は、処遇の必要性に関わる事情を基本的に考慮せず、犯した罪の責任に照らして許容される限度を上回らない範囲内で、許容されるだけ長く少年院に収容することができる期間の上限を設定することとした上で、処遇機関において、家庭裁判所の定めた期間の範囲内で、対象者の状況等に応じて必要な期間の施設内処遇及び社会処遇を行うこととする方が、より適切かつ柔軟な処遇を行うことが可能となり、対象者の改善更生につながると考えられるところでございます。  このような仕組みは、保護処分について、家庭裁判所少年院に送致するか保護観察に付するかという処分選択を行い、処遇機関は対象者の問題性を解消するために必要な期間処遇を行うという現行制度における運用の蓄積を活用することができ、円滑な制度運用に資するものと考えられるところでございます。
  109. 大口善徳

    大口委員 次に、少年法改正案の第六十四条の四項において、家庭裁判所が二年の保護観察処分の遵守事項に違反した場合の収容期間や少年送致処分における収容期間に未決勾留日数を算入することができるとした趣旨と、どのような基準で算入することを想定しているのか、お伺いします。
  110. 川原隆司

    川原政府参考人 お答えいたします。  現行法少年法第五十三条により、観護措置のため少年鑑別所に収容中の日数も未決勾留日数とみなされるところ、本法律案少年法第六十四条四項では、観護措置による収容日数及び未決勾留日数の日数について、その全部又は一部を少年院における収容期間に算入できることとしております。  その趣旨を申し上げますと、まず、保護処分は、少年健全育成目的として保護教育的な処遇を行うもので、本人の利益となる側面を有しており、捜査や裁判の適正な遂行のために身柄を確保する未決勾留等とは性質が異なることから、現行少年法においては、その日数を保護処分の日数に算入できることとはされていないところでございます。  しかしながら、本法律案では、十八歳以上の少年に対する保護処分は不利益を伴うことに鑑み、犯した罪の責任に照らして許容される限度を超えない範囲内でするものとしていること、少年院への収容が身体の拘束という不利益を伴うことからいたしますと、十八歳以上の少年に対する少年送致処分決定に至るまでの手続に特に長期間を要し、その間未決勾留等の身柄拘束が継続したような場合にまでその期間を少年院への収容期間におよそ算入できないとするのは、衡平の観点から適当でないと考えられるところでございます。そこで、本法律案では、家庭裁判所少年院への収容期間の上限を定めるに当たり、未決勾留等の日数を少年院への収容期間に算入できることとしているところでございます。  その上で、算入の基準をお示しすることはその性質上困難なところでございますが、先ほど申し上げた規定趣旨からいたしますと、実際に未決勾留等の日数を算入することとなるのは、例えば、家庭裁判所による逆送決定検察官による公訴提起を経て刑事裁判となったものの家庭裁判所に移送された事件で、一連の手続の間、観護措置及び勾留による収容が長期にわたって継続したような場合などに限られるのではないかと考えております。
  111. 大口善徳

    大口委員 資格制限についてお伺いしたいと思います。  今回、与党PTにおきましても、「刑事処分に付された者の社会復帰の促進を図るため、資格制限のあり方につき、政府において別途検討し、早急に結論を得るべき」、こういう合意をさせていただきました。  少年法改正案の六十七条の六項によって、少年法第六十条の資格制限排除規定、執行猶予がつけば資格制限は将来にわたってないということでございますので、すぐ資格を取得できるわけです、例えば、介護福祉士になりたい、あるいは看護師になりたい、栄養士になりたい、あるいは調理師になりたい、こういう資格が、今回、少年法六十条の規定が十八歳、十九歳の特定少年については適用されないということになる。高校三年生もいるわけでございます。  ただ、再犯防止が国の重要な政策課題とされている今日、再犯防止のために就労の可能性を拡大していくことが重要であるということは異論がないわけです。  この資格制限に関しては、平成二十九年の十二月十五日の閣議決定再犯防止推進計画が決定されたわけでありますが、そこで、法務省は、犯罪を犯した者等の就労の促進の観点から需要が見込まれる業種に関し、前科があることによる就業や資格取得の制限の在り方について検討を行い、二年以内を目途に結論を出し、その結論に基づき、各府省は、所管の該当する資格制限等について、当該制限の見直しの要否を検討し、必要に応じた取組を実施するということで、アンケート調査も取っているわけです。  今回、少年法改正案の第六十七条の六項で、少年法六十条の規定特定少年には適用されなくなったわけでありますので、ここはしっかり、与党PTの合意もあります、そしてまた法制審議会答申においても、「再犯を防止する上で就労の確保は重要であり、罪を犯した者の改善更生及び社会復帰を促進するため、前科があることによる就業や資格取得の制限の在り方について、再犯防止推進計画に基づいて検討が行われているが、早期に必要な措置が講じられること。」を附帯事項として挙げられているわけであります。  こういう経緯を踏まえますと、罪を犯した者、とりわけ十八歳、十九歳の者等の若年者社会復帰を促進するためには、前科による資格制限の在り方について、政府全体として速やかに検討を進め、法改正を含め必要な措置を講ずるべきと考えますが、法務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  112. 上川陽子

    上川国務大臣 本法律案におきましては、十八歳以上の少年のとき犯した罪により刑に処せられた場合につきましては、資格制限の特則を適用しないこととしております。  これは、十八歳及び十九歳の者について、業務の性質や実情等を問わず資格制限規定適用を一律に緩和することは、責任ある主体としての立場等に照らし適当ではないと考えられたことによるものでございます。  もっとも、委員指摘のとおり、十八歳、十九歳を含む若年者再犯防止社会復帰を図る上で、就労の促進ということは重要であるということを強く認識をしております。  また、御紹介いただきました、平成二十九年十二月十五日の閣議決定されました再犯防止推進計画におきましても、犯罪をした者等の就労促進の観点から需要が見込まれる業種に関しまして、前科による資格制限の在り方につきまして検討を行い、必要に応じた措置を実施することとされているところでございます。  本改正を機に、前科による資格制限の在り方につきましては、関係府省と連携をし、政府としてしかるべき検討の場を設けた上で、若年者社会復帰に際してのニーズ調査、また有識者を交えた検討など、必要な取組を責任を持って進めてまいります。
  113. 大口善徳

    大口委員 大臣大臣が先頭に立って、よろしくお願いしたいと思います。  時間が来ましたので終了いたします。ありがとうございました。
  114. 義家弘介

    義家委員長 次に、中谷一馬君。
  115. 中谷一馬

    ○中谷(一)委員 立憲民主党の中谷一馬でございます。本日もどうぞよろしくお願いを申し上げます。  私からも、今回提出をされた少年法等の一部を改正する法律案について、るる伺ってまいります。  犯罪被害に遭うことは、大変つらく悲しいことです。先日も、少年犯罪被害を受けた当事者の方々のお話を伺い、胸が締めつけられる思いでありました。私にも一歳十一か月になる娘がいますが、この子が理不尽な事件に巻き込まれて亡くなってしまったらと考えるだけで、本当に胸が締めつけられるような感情があふれ出す、そんな思いであります。だからこそ、犯罪被害者をなくしていく、犯罪被害に遭う方をなくしていくということがまさに私たちに課せられている責務であるということを考えておりますので、こうした観点からるる質問をさせていただきたいと思います。  私からは、まず大臣に、本法案を改正することによる大局観について伺っていきたいということを思っています。  犯罪被害者をなくすことに必要な事項に関する見解について伺っていきたいと思いますが、犯罪被害者をなくすために最も必要なことは、シンプルに犯罪をなくしていくことだと考えているのですが、この考えに相違はありませんか。御見解を伺います。
  116. 上川陽子

    上川国務大臣 犯罪被害に遭う方がいなくなるということ、このための方策として、これは大変難しい事柄であると認識しておりますが、そもそも犯罪が起きないようにするという、まさに委員指摘の極めてシンプルなメッセージだというふうに考えます。
  117. 中谷一馬

    ○中谷(一)委員 ありがとうございます。  私も同感でありまして、犯罪をなくしていく、起きないようにするということをしていくという趣旨に立ち返って、今回提出をされた少年法改正案について議論をしていきたいということを思っているんです。  概要説明において、成年年齢引下げ等の社会情勢変化を踏まえ、十八歳及び十九歳の者について、少年法適用において特例規定を整備するなどの措置を講じると趣旨が書かれているんですが、この法が施行された結果、どのような社会になるのか、何を理想としているのか、目的が少し分かりづらいなということを思っています。  なので、大臣に伺いますが、本改正は、少年健全育成と非行少年の矯正につながり、犯罪を予防することで、結果として犯罪をなくすという目的に資するとお考えでありますか。御見解を伺います。
  118. 上川陽子

    上川国務大臣 本改正の趣旨に係るところでございますが、十八歳及び十九歳の者が選挙権を与えられる、また民法上も成年として位置づけられるということに、こうした状況に至った一方、十八歳及び十九歳の者は、成長途上にありまして可塑性を有する存在であるということを踏まえ、少年法適用において、その立場に応じた取扱いをすることとしているところでございます。  今回、具体的に、今現在、家庭裁判所少年院、保護観察所等の専門的な知見あるいはノウハウ、これを引き続き活用して、対象者の改善更生再犯防止を図るため、十八歳以上の少年が罪を犯した場合につきましても、現行制度と同様に、いわゆる全件送致の仕組みを維持し、原則として保護処分を行うこととしているところでございます。  また、現行原則逆送の仕組みにつきましては、少年であっても刑事処分対象となるという原則を明示することによりまして、自覚と自制を求めて少年の規範意識を育てる、また健全な成長を図るとの趣旨で設けられたものでございます。十八歳以上の少年について原則逆送事件範囲拡大することも、自覚を高め、規範意識を向上させるとともに、再犯を含む犯罪の予防、抑止に資するものと考えられるところでございます。  そして、刑に処せられてその執行を受けることになった者についても、法制審議会答申におきましては、若年受刑者に対する処遇の充実を図るための運用上構ずべき施策として、刑事施設におきまして、少年院の知見そして施設を活用して、おおむね二十六歳未満の若年受刑者に対しましてその特性に応じた処遇の充実を図ること等が掲げられておりまして、法務省といたしましても、その速やかな実施に向けまして調整を進めているところでございます。  委員の御質問、直球の御質問でございますが、本改正が、十八歳以上の少年につきまして、刑事司法全体としての再犯を含む犯罪の予防、抑止機能を、むしろ資するものというふうに考えております。
  119. 中谷一馬

    ○中谷(一)委員 その辺りを議論させていただきたいと思いますが、一橋大学の葛野尋之教授が立命館大学時代に公表した論文によれば、これまでの経験科学的な研究において、保護処分の場合よりも刑事処分の場合の方がより強い抑止効果を有するとの見解は示されていない、むしろ、アメリカでは、過去行われた研究の中では消極的所見を示してきた、しかし、厳重な処分はより強い厳罰効果を持つという強い信念があるためか、保護処分より刑罰の方がより強い抑止効果を持つと広く信じられている、しかし、規範意識の確認、強化による一般予防効果は、それ自体検証されていない仮説である、未検証の仮説としての規範意識の確認、強化による一般予防効果を、刑罰全体ないし刑罰制度一般を理論的に正当化するための根拠として用いることはできないという趣旨の論述をされておりまして、ここの辺りの話を踏まえて伺いたいんです。  少年法第一条の目的に、「少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする。」と記載をされているんですが、これはすなわち、少年法は、非行を犯した者に対して、刑事処分とは異なり、単に刑罰を与えるのではなく、教育的な処分を行うことによって、非行のある少年が健全に成長し、再び犯罪を起こさないようにする少年保護目的としているという理解をしているんですが、大臣は、今回の少年法改正において、この目的を達成するにより近づく法改正であると考えているんですかということを教えていただきたいと思っています。
  120. 上川陽子

    上川国務大臣 少年法の第一条、基本的な規定でございますが、「この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする。」と規定されているところでございます。  本法律案におきまして、同条の改正をしておりません。十八歳以上の少年につきましても、引き続き少年法目的が及ぶところでございます。  その上で、本改正につきましては、十八歳及び十九歳の少年につきまして、刑事司法全体としての再犯を含む犯罪の予防、抑止機能を低下させるものではございませんで、今申し上げた少年法の第一条の目的そのものを阻害するものではないと考えております。
  121. 中谷一馬

    ○中谷(一)委員 私、恩師からこういうことを教えてもらったことがあるんです。その行動は世の中を幸せにするものであるか。要するに、僕もこれを基本的な行動指針にしているんですけれども、自分が進めている行動というのは世のため人のためになっているのかなという尺度を持って行動することというのはとても重要なことだと思っているんです。  その中で、今回の少年法改正が可決されることによって、日本社会が、日本国民がどうよくなっていくのかということが私にはちょっと見えづらかったんですね。なので、そのビジョンをまさに大臣に示していただきたいと思っているんですけれども、これが通ったら社会はどうなりますかね。
  122. 上川陽子

    上川国務大臣 今回の改正につきましては、少年法の基本的な枠組みというものを維持しているというこの基本原則にのっとって、子供たちの可塑性また成長途上にあるということを前提にしながら、しかし、今、民法成年年齢引下げも含めまして、大人としての、契約も含めて行為責任を持つということについては、やはり一歩社会が大きく動いている状況であります。  社会全体として、今その制度が変わるということについての認識を意識としてしっかり持っていただくということで、成年年齢引下げに関しましても、幅広く、しかも十八歳、十九歳のみならず、さらに高校生、その前の年、法の教育とかいろいろな形で今動いているところでございまして、そういう若い世代の皆さんが社会で活躍をしていくということ、このことについて周り全体として期待をしている中で今動きがあるというふうに認識をしております。  今申し上げたとおり、少年法の基本的な考え方、理念につきましては、一条に掲げてある目的についてはこれを変えるものではございませんので、そういうものの中で、今改正する内容につきましては御理解をしっかりいただきながら、しっかりとした運用をしていくということ、このことが大事ではないかというふうに考えております。
  123. 中谷一馬

    ○中谷(一)委員 今の大臣の答弁の前提でお話をさせていただきますが、令和二年度の犯罪白書によれば、非行少年は近年急激に減っておりまして、検挙者数は、一九八三年の二十六万千六百三十四人というピーク時に比べて二〇一九年は二万六千七十六人と、約九〇%減少しています。少子化の影響に関する指摘というのもあるんですけれども、少年人口十万人当たりの発生数を比べても、ピーク時の一九八一年と比べて二〇一九年では八三・七%減少しているという現実があります。そして、近年は、二〇〇三年以降、十六年連続で減少を続けておりまして、八四・二八%減っているという現状があります。また、少年の重大凶悪犯罪事件も減少傾向にありまして、例えば殺人は、一九六一年の四百四十八人のピーク時と比べると二〇一九年は四十七人でありまして、八九・五%減少しているという現実があります。  このように、少年事件の検挙者数や重大凶悪事件は大幅に減少を続けてきた時代背景があると思っているんですけれども、その中で、大臣に伺わせていただきますが、成人刑法犯と比べても少年事件が減少している事実は、責任の重さで罰を決めて終わりにするのではなくて、全件を家庭裁判所で取り扱い、専門家少年とその生育環境などを調べた結果に基づき、何らか教育、指導、監督のための措置を講じる現在の少年法に基づいた運用が有効に機能しているからではないかと考えているんですが、いかがでしょうか。大臣の御所見を伺います。
  124. 上川陽子

    上川国務大臣 先ほども答弁の中で申し上げたところでございますが、少年法は、第一条に目的規定がございます。「少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年刑事事件について特別の措置を講ずること」としているところでございます。  このような少年法に基づく現行制度は、十八歳及び十九歳の者も含め、少年の再非行の防止と立ち直りに一定の機能を果たしているというふうに理解をしておりまして、その意味で、この少年法の骨格の中で位置づけるという今回の改正につきましては、基本的な目的を変えるものではございません。
  125. 中谷一馬

    ○中谷(一)委員 その骨格部分の話で、推知報道の話に入らせていただきたいと思うんですけれども、少年法六十一条は、非行を犯した少年の氏名、住所など、本人を推知できるような情報を報道することを禁止をしています。これは、未熟な少年の立ち直り、社会復帰の妨げになる情報を制限することで、少年社会から排除され、再犯、再処分に至るようなことがないようにするためのものだと理解をしています。  しかしながら、少年法改正案では、記事等の掲載の禁止特例が定められ、十八歳及び十九歳の少年のとき犯した罪により公訴を提起された場合には、略式手続による場合を除き、記事等の掲載の禁止に関する少年法規定適用しないこととする内容を定めようとしており、起訴された場合には、少年の実名など本人を推定できるような情報を報じる推知報道禁止を解除する意向とのことでありますので、これに関連してるる伺ってまいります。  大臣に伺いたいと思いますが、少年たちは、実名が出ないからやってしまおうという計算ずくで犯罪を行っているわけではなく、精神的に未成熟で社会経験も乏しいため、自己の行為の結果を的確に予測し、それに基づいて行動をコントロールすることが困難で、予想外に重大な結果を発生させているという専門家の意見がある一方で、少年の実名が報道されないことが犯罪の引き金になっているので、実名報道をしていくことが抑止力につながるという趣旨の意見を述べる方がおられますが、政府においても、推知報道拡大を行うことが犯罪抑止につながると考えていますか、そうではありませんか。大臣の御所見を教えてください。
  126. 上川陽子

    上川国務大臣 ただいま委員から、そうした御指摘内容につきまして御紹介をいただきましたけれども、推知報道を解禁することについて、犯罪の抑止につながるとの意見があるということも承知をしているところでございます。  もっとも、推知報道の一部解禁によりまして、犯罪抑止効果の有無、程度を実証的に検討するということは性質上なかなか難しいということでございまして、一概に答えるということはなかなか難しいなというふうに思います。いろいろな考え方があろうかと思います。
  127. 中谷一馬

    ○中谷(一)委員 私も難しいと思っているんです。  それで、実名報道、推知報道の幅を広げることが犯罪抑止効果につながるという論に対して、私自身も、国会図書館などに依頼をして、国内外における科学的根拠、特に統計学的な根拠を調査をしていただいたのですが、残念ながら、そうしたエビデンスを発見することはできませんでした。  そこで、大臣に伺いますが、推知報道拡大犯罪抑止につながるという論証がなされたエビデンス、これ自体は御存じですか。もしあれば教えてください。
  128. 上川陽子

    上川国務大臣 先ほどの御質問のときに御答弁させていただきましたけれども、なかなかエビデンスということになりますと、いろいろな意見は御紹介をいただいているところでございますが、例えばそれを数値的に表すとかそういうもの、あるいは論文がというようなことになりますと、意見としてのものなのか、論文として実証的に立証されたものなのかというふうに更に突き詰められていくとするならば、なかなかそういうものを発見するのは難しい状況です。
  129. 中谷一馬

    ○中谷(一)委員 ありがとうございます。  私も、犯罪をなくしていくという目的をベースに物事を考えていきたいと思っていますので、やはりその背景にあるもの、議論の背景にあるものというのはしっかりと科学的根拠があるものであるかということを大切にしていきたいと思っていますので、その趣旨で政府の見解を伺わせていただきました。  その中で、私自身、推知報道拡大が再犯や再処分を増加させる懸念について心配をしています。  令和二年度版の犯罪白書によれば、学生生徒及び有職である者に比べて無職である者の再処分率はおおよそ二・五倍から五倍程度となっており、顕著に高い状況があります。また、二〇一九年に検挙された再犯者の七〇・八%が無職であった現状を鑑みれば、再犯、再処分を減らすためには出所者、退院者の就労支援が極めて重要になると思います。  そうした中で、出所後の就職活動において百社以上断られたという事例もありまして、出所者、退院者の就職が大変な状況がある中で十八歳及び十九歳への推知報道禁止を解除することは、就職のハードルを更に上げて、再犯率、再処分率にはマイナスの影響を与え、結果として公共に不利益を招くんじゃないかという懸念を持っているんですが、大臣はどのようにお考えですか。
  130. 上川陽子

    上川国務大臣 ただいまの御質問は、少年法の第六十一条、まさに推知報道禁止を定めているものでございますが、この趣旨でございますけれども、少年の特定に関する情報が広く社会に伝わり、その社会生活に影響を与えることを防ぐということによりまして、その更生に資することにあるというものでございます。  十八歳以上の少年のとき犯した罪により公判請求された場合にこうした推知報道禁止規定適用しないことにつきましては、御指摘の就職の点も含めまして、実名報道された者の社会復帰が阻害されるという御指摘があるということにつきましても承知をしているところでございます。  もっとも、この推知報道禁止ということでございますが、これは憲法上の表現の自由の下に保障されている報道の自由という重要な自由を制約する例外規定である上、例えば、犯罪被害者などの他の関係者につきましては推知報道禁止する規定は設けられていないところでもございます。  十八歳以上の少年につきまして推知報道を一律に禁止することは、その立場に照らし、また、刑事司法に対する被害者を含む国民の皆様の理解信頼確保観点からも適当ではないと考えられるところでございます。
  131. 中谷一馬

    ○中谷(一)委員 結果として犯罪をなくしていくということが、僕は国民の利益に資すると思っているんですね。その中で、推知報道在り方というのが日本の中でどう考えられていくかということを僕自身はベースに考えていきたいなということを思っているんです。  一九五八年に新聞協会が発表した少年法第六十一条の取扱いの方針では、少年法六十一条は、未成熟な少年保護し、将来の更生を可能にするためのものであるから、新聞は少年たちの親の立場に立って法の精神を実践すべきであり、罰則がつけられていないのは、新聞の自主的規制にまとうとの趣旨によるものなので、新聞は一層社会責任を痛感しなければならないと述べられており、このような社会責任を自覚をしているそうそうたる報道各社が主として社会への情報発信を行われた時代であれば、報道機関の自主規制に委ねるべきという論調というのは僕はあり得たんじゃないかなと思います。  ただ、今のまさにインターネットが普及した現代社会においては、一つのメディアがインターネット上に情報発信を行った際には、世界中の人たちが一瞬で検索をかけてその情報を入手することが可能となった時代です。なおかつ、過激な投稿を行って世論の注目を集めることで、PVを稼いで広告収入などを得るビジネスモデルがスタンダードになったインターネットメディアにおいて、そもそも運営者の実名や住所、連絡先が公開されておらず、異議申立てを行うにしてもサイト運営者が特定できず、発信者情報開示請求を起こしても開示に数か月から数年かかることがあります。また、海外サーバーでの運用が行われていたときには、訴訟を起こすことにも多大な労力を要する上に、最終的には適切に対応がなされない事案も容易に想像できる現状があり、現代社会においては、これらの自主判断に任せるということは、残念ながら実態には即していないんじゃないかなと思います。  だからこそ、EUにおいては、一般データ保護規則、GDPRの中で消去権、いわゆる忘れられる権利規定しており、先日衆議院で可決したデジタル関連法案においても、自己情報コントロール権であったりデータの保護権について激論が行われたという背景があります。  少年の実名報道の禁止被害者の実名報道とのバランスを欠いているとの意見もあるんですが、本来的には、犯罪被害者とその遺族のプライバシーや名誉が尊重されるのはある種当然でありまして、これを侵害するような情報発信が当然のように行われている現状について、時代に即した個人情報保護在り方について適切な改善を図るべきじゃないかなと私自身は考えています。  そこで、大臣に伺いますが、インターネットの掲載がそもそも少年法六十一条では直接的に禁止対象になっていないなど、こういったことをまず改めて適当にちゃんと変えていくということが重要だと思います。その中で、こうしたことがむしろ求められている中で更に十八歳、十九歳まで推知報道禁止解除の範囲拡大するというのは、世界の潮流や時代の流れには大きく逆行するんじゃないかなと考えているんですが、いかがでしょうか。大臣の御所見を伺います。
  132. 上川陽子

    上川国務大臣 まず、先ほど来申し上げているところでございますが、いわゆる推知報道禁止を定める少年法の第六十一条の趣旨でございますが、少年の特定に関する情報が広く社会に伝わり、その社会生活に影響を与えることを防ぐことにより、その更生に資することにあるということでございます。  今般、推知報道を一部解禁することによりまして、実際に報道機関がどれだけ実名報道をするかということにつきましては、先ほど新聞協会さんの覚書というかを御紹介いただきましたけれども、そして、実名報道された者が実際にどれだけ再犯に及ぶかにつきましては、これはなかなか申し上げるということは難しいことでございます。  一方で、推知報道禁止につきましては、先ほど来申し上げているところでありますが、憲法上の表現の自由の下に保障されている報道の自由という重要な自由を制約する例外規定ということで位置づけられておりますので、報道の自由の制限は必要最小限のものであるということが求められるわけでございます。  先ほど、被害者の方も含めまして、国民理解ということも申し上げたところでございますので、そういった意味で、このことにつきましては、様々な観点からの判断ということでございます。  その上で、インターネット上での情報の流通の、今の本当に現代的な課題ということでございまして、これにつきましては、まさに事件関係者のプライバシーの侵害によりまして、社会復帰が阻害されたり、また命まで失うというようなことに、奪うということにもつながるという、大変喫緊の課題であるというふうに認識をしております。  これは少年事件ということに特有の問題ではなく、社会全体として、今まさに直近の、喫緊の課題として検討し、そして対処していかなければならない課題であるというふうに思っておりますので、この問題があるから少年法との関わりの中でということも御指摘の中にありましたけれども、こちらと、むしろ全体の問題としてこれを位置づけるという形の中の対応ということが求められているのではないかというふうに考えております。
  133. 中谷一馬

    ○中谷(一)委員 実名報道の禁止被害者保護は両立し得るものだと思います。被害者のプライバシー保護少年法六十一条の趣旨、これは共に実現をされるべきであると考えておりますのと、先ほど大臣がおっしゃっていただいたとおり、推知報道が行われることによってデジタルタトゥーの烙印を押される例というのが散見されます。その中には、犯罪加害者の家族で自殺をされた方もいれば、子供が非常に大きな被害を被っているという事例もございますので、こういったことを鑑みていただきながら、本当にこの推知報道というものが拡大していくことが正しいのかということを、私自身はいま一度振り返っていただきたいなということをお願いをさせていただきます。  そして、最後に法制審の話を少し触れさせていただきたいと思うんですけれども、令和二年九月九日に閉会をした法制審議会少年法・刑事法部会で、少年犯罪被害当事者の会の代表である武るり子さんが委員として名を連ねておりました。法務大臣の諮問に応じて、民事法、刑事法などに関する基本的な事項を調査審議する法制審議会の部会において、犯罪被害者家族が加わることは当事者視点を鑑みる上でとてもよいことだと思いました。  その上で提言をいたしますが、犯罪加害者家族、特に子供、若者の視点を代弁する者が先般の部会には名を連ねられていないように見受けられましたので、今後、少年法や刑事法に関わる少年犯罪犯罪処遇関係の部会が設置される際には、当事者団体の代表者又は専門的な知見を有する者に加わっていただいた方が、結論ありきではなく、不偏不党、厳正、公正かつ多様な立場から、幅広い観点で総合的、俯瞰的に少年法、刑事法の在り方を検討できるのではないかと考えますので、御一考いただきたいと考えますが、いかがでしょうか。最後に大臣の所見を伺います。
  134. 川原隆司

    川原政府参考人 お答えいたします。  法制審議会は、法務大臣の諮問に応じて、民事法、刑事法その他法務に関する基本的な事項について調査審議することなどを目的とする諮問機関でありまして、その部会は、専門的見地から、より詳細で綿密な調査審議を行うことを目的に設置されるものでございます。  そして、部会の委員は、諮問事項に関する分野における専門的な学識、知見等を勘案して、法制審議会長が総会の承認を得て指名するものとされておりますので、法務省として、将来の部会について、あらかじめどのような方を委員とすべきかについて申し上げることは困難であるということを御理解賜りたいと存じます。  なお、本法律案の作成に先立って調査審議が行われました部会におきましては、刑事事件の被疑者、被告人の弁護人、あるいは少年事件少年の付添人としての経験、専門的知見を有する弁護士の方が委員、幹事として加わっていたところでございます。
  135. 中谷一馬

    ○中谷(一)委員 時間が来たので終わりますが、大臣に尋ねましたのと、政府参考人の方は、衆議院規則の中でも、細目的や技術的な事項について伺ったときに出ていただくという話になっていると思いますので、最後は大臣に答弁いただきたかったなということを申し上げて、質問を終了させていただきます。  ありがとうございます。
  136. 義家弘介

    義家委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  137. 義家弘介

    義家委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。階猛君。
  138. 階猛

    ○階委員 前回の質疑に引き続きまして、法務大臣の資質を問いたいと思います。  前回の私の質疑の中で、黒川氏が罰金刑を受けたことに関し、約六千万円の退職金について自主返納を求める交渉をするつもりはないのかということをお尋ねしました。  これに対する大臣の答弁は、黒川氏は既に退職していて、人事上の処分を改めて行うことができないので、自主返納の交渉すらしないということでありました。  法律上、退職後に人事上の処分ができないのは分かっておりますので、強制返納ではなく、自主返納の要請をしないのかということを尋ねているわけです。  なぜ自主返納を求める交渉すらしないのか、前回、答弁がはっきりしませんでしたので、改めて確認させてください。
  139. 上川陽子

    上川国務大臣 ただいま、退職手当を自主返納するかどうかにつきまして、私自身が大臣として求めるべきではないか、こういう御質問だと思います。  この点につきまして、先回も答弁をしたところでございますが、退職手当を自主返納するかどうかは、まさに本人判断すべきものというふうに考えております。私自身が今の立場でそのことについて求めるという行動につきまして、これはあくまで本人判断という事柄であると考えております。
  140. 階猛

    ○階委員 別に、直接、返還を求めよと言っているわけではなくて、しかるべき人にその交渉に当たらせればいいと思っていますけれども。要は、言いたいことは、法的根拠がなければ自主返納の要請ができないというのはおかしいと思うんですね。  コンプライアンスというのは、法律に照らして正しいかどうかだけじゃなくて、社会常識に照らして、社会の要請に応えるような組織とするために何をするべきかということを考えなくちゃいけないと思うんですね。  コンプライアンス意識を尋ねて、大臣も明確なお答えがなかったので、改めて聞いておりますけれども、法律規定がないからといって、放置していい問題ではないと思うんですよ。  黒川氏は、それこそ、国民は法的な義務もないのにいろいろな自粛を求められていた時期に、政府が求めていた自粛の要請の時期にああした行為をしていたわけだから、そのことを考えると、当然、自主的な返納を求めるべきだと思いますよ。  それは大臣がリーダーシップを取ってやらないと、多分、あの方の部下であった人たちには到底できないと思いますので、大臣がリーダーシップを取って、自主返納を求める交渉をしていただけませんか。大臣、お願いします。
  141. 上川陽子

    上川国務大臣 階委員から、今の社会の要請に照らして考えると、階委員のお言葉でいきますと、自主返納はすべきである、こういう御意見だというふうに思います。その御意見については、受け止めさせていただきたいと思います。
  142. 階猛

    ○階委員 受け止めるだけではなくて、行動に移していただきたいんですよ。過去には、別に刑罰を食らったわけでもないのに自主返納している人もいますよ、幹部の方々で、法務省じゃないですけれども、財務省であったり、元国税庁長官であったり。そういう当たり前のことをしてくださいと言っているわけです。  それで、今回、少年法改正案に関連しますけれども、後で触れますけれども、十八歳、十九歳の特定少年については、罰金刑以下の罪も検察送致対象にしていますよね。つまり、これからは、単純賭博罪を犯した十八歳、十九歳も検察の訴追対象になるわけですよ。その訴追する側の検察の幹部が単純賭博罪を犯して、これを当初、検察は訴追せずに、起訴猶予としていました。十八歳、十九歳の若者に罰金刑を科すというのであれば、まず隗より始めよで、黒川氏には厳しく対応すべきじゃないですか。この点からも、黒川氏に退職金の自主返納を求めるべきだと思いますよ。  受け止めるだけじゃなくて、やってください。明確にお答えください。
  143. 上川陽子

    上川国務大臣 ただいま冒頭に申し上げたことの繰り返しでございますが、本人判断をすべきものでございます。退職手当の自主返納という大変、こういうことでございますので、本人判断すべきものというふうに考えております。それは本人が、もろもろの社会の要請ということに照らして、しっかりと判断するということであるというふうに考えます。
  144. 階猛

    ○階委員 であれば、本人の自覚をまちたいと思いますけれども、これはインターネットで全国で見られますからね、当然、黒川氏も見ていらっしゃるでしょう。それで返納しないということであれば、検察組織というのは何なんだと。  少年には賭博罪で罰金を科しておきながら、自分たちの上司は起訴猶予にしておいて、いざ罰金刑になりましたといった場合でも、過去にもらった退職金は、自主返納もさせず、そのまま受け取っていますということだと、まさに示しがつかないということだと思いますよ。  これ、自主返納、恐らく、私は、黒川氏も、検察のあそこまで幹部に上り詰めた方だから、当然、自覚を持って返納されると思っています、信じています。もし返納されることがあったら、ちゃんとこの場で報告していただきたいんですが、そこをお約束できますか。
  145. 上川陽子

    上川国務大臣 私、国会のいろいろな御質問に対しましてはしっかりとお答えをするというそうした立場で臨ませていただいております。これはいかなることもそうでございます。  先回の御質問に対しても、自主返納しているかどうかという有無につきましても、その旨お伝えをさせていただきました。御質問にはお答えいたします。
  146. 階猛

    ○階委員 ということは、今後、もし自主返納したという場合であれば、ちゃんとそれは国会に報告していただけるということでよろしいですか。
  147. 上川陽子

    上川国務大臣 御質問ということでございます。仮定の御質問でございますが、この立場にある者としては、御質問に対してお答えをするということだと思います。
  148. 階猛

    ○階委員 一々聞かせないでください。  自主返納されるのは本人の意思だと言っているわけだから、自主返納した、今後したということがあれば、報告してください。別に、大臣からじゃなくても結構ですから、事務方からでも結構ですから、国会に報告していただくことを約束していただけますか。
  149. 上川陽子

    上川国務大臣 今の御質問に対しては、そのように対応いたします。
  150. 階猛

    ○階委員 はい、承知しました。  それと、検察に対する国民信頼を損ねたのは、黒川氏が賭博罪で刑事処分を受けたことにとどまらないんですね。一緒に賭けマージャンを行ったのが報道関係者だったわけです。検察とマスコミの癒着によって捜査情報が漏えいしているのではないかという疑惑も検察への信頼を損ねたと思います。  また、黒川氏に加え、菅原元経産大臣についても、検察の起訴猶予処分が検察審査会によって覆されました。検察の訴追権限の行使が公正中立に行われていないのではないか、そういう疑惑も検察への信頼を損ねています。  信頼回復のためには、こうした疑惑を晴らす必要があると思います。そのためには、黒川氏の略式起訴に関する先行報道の情報源について内部調査をしたり、国会に対してもマスコミに対するのと同等以上の情報開示をしたり、不起訴記録は積極的に開示したりすべきだと思います。  ところが、大臣が決裁して当委員会理事会に提出された回答、今日の資料四ページ目から六ページ目にかけてつけさせていただきましたけれども、これはいずれもやる気が見られないわけです。  大臣が本気で検察の信頼回復を図るつもりがあるのでしたら、黒川記事に関する情報源の内部調査、国会へのマスコミと同等以上の情報開示、不起訴記録の積極開示、この三つを検察に行わせるべきだと思います。大臣の見解を伺います。
  151. 上川陽子

    上川国務大臣 ただいま紙に、配付していただいているところでございますが、その上で申し上げるところでございますけれども、検察当局におきましては、従来から、捜査上の秘密の保持につきまして格別の配慮を払っているものというふうに承知をしております。  他方、報道各社につきましては、独自の取材活動に基づいて得た様々な情報につきまして、報道機関各社の判断において記事にしているものと思われます。報道機関におきまして、いかなる取材、情報に基づいて当該報道を行っているかについては承知をしていない、こういうことにつきましては先回も報告したとおりでございます。  御指摘のように、特定の報道の報道経緯またその根拠につきまして調査等を行うということでございますが、報道機関の取材の自由等に対する影響があり得るのみならず、捜査、検察当局の活動を不当に制約することとなりかねない、そしてまた、事件関係者等の行動の自由また防御活動に不当な影響を及ぼしかねないなどの問題がありまして、一般的には相当でないものと考えております。  今回の一連の報道の経緯また根拠につきまして捜査を行うかどうかにつきましては、まさに法と証拠に基づく捜査機関の判断でありますし、また、調査を行うことについては、今申し上げたような理由から考えておりません。
  152. 階猛

    ○階委員 今述べられた点は、山花委員からも前回指摘があったところで、理事会協議事項にもなっていますので、ここは改めてお聞きしたいんですが、私が申し上げた残りの二つですね、要するに、資料五ページ目でいう、検察がマスコミとの間で行ったブリーフィング等の記録を提出すること、つまりマスコミに出した情報は国会にも出してくださいということですよ。それから、資料六ページ目で、不起訴記録についてもっと開示すべきだということで、開示方法をちゃんと示せということ。この二つについても消極的な回答しかされていませんよね。こうしたことをちゃんとやらないと、検察の信頼回復につながらないんですよ。  なぜ、五ページ目、六ページ目に書いてあるようなことで大臣はよしとしたんでしょうか。大臣の決裁でこんな消極的な回答になっていますよ。本当に検察の信頼回復、やる気があるんですか。そこを問うているんです。お答えください。
  153. 義家弘介

    義家委員長 速記を止めてください。     〔速記中止〕
  154. 義家弘介

    義家委員長 速記を起こしてください。  上川法務大臣
  155. 上川陽子

    上川国務大臣 まず、三点目ということでございますが、個別事件の公表の在り方については、これは検察当局において判断すべきものというふうに考えておりまして、改めて調査をするということについては先ほどのとおりでございます。  マスコミと検察との間で行ったブリーフィング等の資料ということでございますが、これは記者会見の内容に係ることでございますが、行政文書として作成、保存されているものではないというふうに承知をしております。  それから、四点目についての、不起訴記録の開示についてということでございますが、ちょっと失礼します。五点目の、国会議員から求めがある場合の不起訴記録の開示方法ということでございます。  不起訴記録につきましては、関係者の名誉、プライバシー保護観点とともに、将来のものも含めた捜査、公判に対する不当な影響を防止するため、刑事訴訟法四十七条によりまして、原則として公開が禁じられているところでございます。  他方で、同条のただし書によりまして、公益上の必要その他の事由があって、相当と認められる場合はこの限りではないとされているところでございます。  その上ででございますが、不起訴記録の開示の可否につきまして、個別の事案ごとに、公益上の必要があって相当と認められる場合に該当するか否かにつきましては、諸般の事情も踏まえまして個別に判断することとなるものというふうに承知をしております。
  156. 階猛

    ○階委員 これは大臣が決裁した回答なんですけれども、文書を見て答えられているということは、やはり、検察、というか法務官僚の言っていることをそのまま決裁して、そして今国会でも読んでいるということなんですが、大臣のやはりリーダーシップがないと信頼回復できませんよ。検察は、自分たちのことを正当化するために、なるべく我々の情報提供要求には応えないし、不都合な記録は出さないということだと思うので、大臣がしっかりやらないと信頼回復につながりませんよ。  もう一つ、検察に対する国民信頼を損ねている事案、これも言わなくちゃいけないんですけれども、河井前法務大臣とその夫人の選挙買収事件について、克行氏は、公判で犯罪事実を認め、案里氏については有罪判決が確定しているにもかかわらず、必要的共犯である買収を受けた地方議員らについては、いまだ刑事処分がどうなったのか当局は明らかにしていません。被買収者は、有罪となれば公民権が停止されて、選挙運動も禁止されるわけです。ちょうど明日から、選挙無効となった案里氏の補欠選挙が始まるわけです。再び選挙の公正が害されないように、選挙が始まる前に、起訴するのかしないのか、結論をはっきり示すべきだと思います。  三月十日、もう一か月前になりますけれども、三月十日にこの委員会で今のことを指摘して、大臣からは、指摘されたことの意味については、私自身は受け止めさせていただいたとの答弁がありました。受け止めた結果、今までの間、何か行動を起こしましたか。お答えください。
  157. 上川陽子

    上川国務大臣 お尋ねの件でございますが、まさに捜査活動の活動内容に係る事柄でございまして、お答えにつきましては控えさせていただきたいと存じます。
  158. 階猛

    ○階委員 結局、信頼回復のために何もしていないじゃないですか。だから、法務大臣の資質はどうなんだと問うているわけですよ。  法務大臣は、先日も言いましたとおり、検察庁法十四条、ちょっとお断りしますけれども、三月二十四日にこの委員会で十四条一項と私が申し上げたのは誤りです。十四条、これは一項、二項ありませんので、十四条です。検察庁法十四条に基づいて、法務大臣は、検察官の事務に関して、検察官に対する一般的指揮権を持っているわけです。この行使について、その二十四日の当委員会において、大臣は、条文に照らして、抑制的に、しかししっかりと考えながら行動してまいりたいというふうに答弁しています。  民主主義の基盤である選挙の公正が害されることはあってはなりません。そして、再び選挙の公正が害される危険がある中で、大臣が検察の代弁者ではなくて国民の代弁者であるのであれば、指揮権を行使するなりして、選挙が始まる前に、起訴するかしないのか、結論をはっきり示してもらうようにするべきではないですか。お答えください。
  159. 上川陽子

    上川国務大臣 ただいま御指摘いただきました、念頭に置かれている案件の処理ということでございます。  まさに捜査機関の活動内容に関わる事柄であるということでございますので、お答えにつきましては差し控えさせていただきたいと存じます。  なお、個人の政治活動、あるいは選挙運動に関することにつきまして、コメントする立場にはないところでございますし、また、法務大臣としてお答えしかねるということについては御理解をいただきたいというふうに思います。
  160. 階猛

    ○階委員 一方で、河井前法務大臣は自らの罪を認めており、河井案里氏は有罪が確定しているわけです。必要的共犯ですから、もう一方の被買収者側も極めて有罪である確率が高くなっていると思います。  ただ、最終的に処分するかしないか、これは検察の判断ですけれども、処分しないならしない、するならするではっきり示してもらわないと、これから行われる選挙というのは、本当は関わっちゃいけない人が関わっているんじゃないかという疑念を招きますよ。そういう選挙の公正を取り戻すための選挙なのに、選挙の公正に疑いを生じさせるようなことを検察がやっているわけですよ。  検察の代弁者じゃないと言うんだったら、ちゃんと、処分をはっきりさせろ、不起訴なら不起訴、起訴なら起訴、はっきりさせろ、こういうふうに指示すべきでしょう。こんなこともやらないんですか。  しかも、今回の少年法の改正案の中でも、今申し上げた選挙犯罪について、これも、特定少年については原則逆送規定を設けているわけですよ。これは短期一年以上でもないのにもかかわらず、選挙犯罪については、一定の場合ですけれども、これは選挙の公正への影響を考えて、選挙犯罪については原則逆送にしていたりするわけですよ。  それほどこの改正案の中でも選挙の公正ということを重視しているんだったら、まさに今選挙の公正が害されそうな事態があるわけだから、その疑念を払拭するためにも、さっき言ったように、被買収者側の処分、どうするのか、はっきりすべきでしょう。はっきりさせてください。お答えください。
  161. 上川陽子

    上川国務大臣 ただいま、一連の具体的な事件に対しまして、その捜査に関する御質問ということでございます。  捜査機関の活動内容に関わる事柄でございますので、お答えにつきましては差し控えさせていただきたいというふうに思っております。
  162. 階猛

    ○階委員 私、少年法の中でも、今言った選挙の公正の話であるとか、罰金刑の話であるとか、これは新たに改正の中で盛り込まれているから、あえてここで聞いているわけですよ。そこをきちっとやらないでいて、この改正案を国会で審議しろと言われても、我々としても、にわかには応じられないですよ。まずは隗より始めよじゃないですか。しっかり選挙の公正とかを守る、あるいは罰金刑も含めてコンプライアンスをきちっとする、これをやらないと、この改正案自体、説得力を持たないと思いますね。  そして、法案原則逆送の話がこれまでも話題になっていました。  私のつけている資料の一ページ目、二ページ目ですけれども、今回、新たに原則逆送に加わるのが、一ページ目の太い線から下の部分と二ページ目の太い線から上の部分。  いろいろな罪名、見慣れたものも見慣れていないものもあるわけですけれども、調査室の資料によると、令和元年十二月から令和二年二月までの間に特定少年が犯して家裁送致されたものは、今の罪の範囲で、四十九件あるそうです。このうち、強盗致傷が十件、強制性交等が十六件、強盗が十四件で、これだけで八割以上を占めるわけです。  しかも、先ほどの大口委員質疑で明らかなとおり、強盗罪については犯情を十分に考慮して逆送の当否が判断されるということですから、原則逆送によって従来と大きく変わる部分というのは、実は、たくさんある罪の中で、強制性交等の罪だけということにならないのでしょうか。もし、そうであれば、強制性交等という罪だけ原則逆送とすればよかったのではないか。短期一年以上の自由刑を一律に原則逆送とする必要はないのではないかと思いますが、なぜ一律に原則逆送とする必要があるのか、お答えください。
  163. 上川陽子

    上川国務大臣 今回の原則逆送事件範囲拡大ということにつきましては、今回の少年法の改正におきましての、重大な犯罪を、罪を犯した場合については、少年であっても刑事処分対象となるという原則を明示するということでございまして、現行のその考え方に照らして今回もそのような形で拡大をするということにつきましても、重大な犯罪に及んだ場合ということで広く刑事責任を負うべきもの、こういう観点から、対象とする範囲死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役禁錮に当たる罪を加えるということにしたところでございます。  その対象とする事件範囲につきましては、刑事法上、権利保釈の除外事由等でも用いられております死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役禁錮に当たる罪の事件とし、例えば強制性交等罪、今委員から御指摘いただいたところでございますが、五年以上の有期懲役、また、現住建造物等放火罪、これは死刑又は無期若しくは五年以上の懲役ということでございます。また、強盗罪につきましては、五年以上の有期懲役等の事件対象とするということが、犯罪の類型的な重大性を表す法定刑、また、これに該当する個々の犯罪性質等に照らしても適当であると考えられるところでございます。  以上のことから、法律案におきましては、十八歳以上の少年につきましては、死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役禁錮に当たる罪を原則逆送対象事件に加えることとしたものでございます。
  164. 階猛

    ○階委員 短期一年以上の自由刑を一律、原則逆送とすることによって、ほとんど必要のないものも含んでいるんじゃないかという問題意識なんですよ。  それで、今日お配りしている三ページ目、先ほども申し上げましたけれども、特定少年の選挙犯罪、これは六十三条の二項に原則逆送のいわば特則的な条文があるわけです。ここは、まさに特定の犯罪類型に着目して、かつ、選挙の公正の確保に重大な支障を及ぼすと認める場合という要件を付加した上で原則逆送としているわけですね。ここは短期一年未満の自由刑も含まれるわけですよ。  こういう、一律に何年以上という罪を対象にするんじゃなくて、必要があるものについて、必要な要件を加えた上で原則逆送の範囲に加えていくというような発想の仕方の方が私は合理的だと思いますけれども、なぜこういうやり方をしなかったんですか。
  165. 上川陽子

    上川国務大臣 考え方、アプローチにつきましては、いろいろなアプローチの仕方があろうかと思います。今委員から御指摘いただいたように、原則逆送の対象とする事件に関しまして、個別の罪ごとにその当否を検討する方法、こういったことについても一つの考え方であると。  この点につきましては、法制審議会におきましても議論をされたところでございます。そしてその中で、相互のバランスを欠いた恣意的な選択とならないようにするためには、いかなる罪を除外し、あるいは追加するかの判断の基準を適切に定めることが前提となるものの、個々の罪がそれに該当するか否かを一義的に判定し得る形で適切な内容の基準を定めることは極めて困難である、こうした御指摘がなされまして採用されなかったものと承知をしております。  その意味で、制度設計上の課題が多いものというふうに考えております。
  166. 階猛

    ○階委員 恐らく、法制審議会の中ではこの六十三条のことは頭になかったと思うんですよ。というのは、この六十三条というのは今回いきなり作られた条文じゃなくて、公職選挙法平成二十七年に改正するときに附則として入れられているものなんですね。この附則を作るときは、さっき御質問されていた北側先生なんかが立案していたと思うんですけれども、まさに特定の犯罪について必要性があるかどうかということを考えて、要件も、選挙の公正の確保に重大な支障を及ぼすと認める場合というのも付加した上で原則逆送の特則を設けているということだったわけです。  こういう立法例があるわけだから、さっき言ったような一律にやる必要はないじゃないですか。こういう立法例がない中で、ゼロベースで作るなら分かるんだけれども、既にこういう立法例があるわけだから、むしろこちらに合わせて法律考えるのが普通だと思いますよ。これまでの議論って、全くそういうことを考えていなかったんでしょう。お答えください。
  167. 上川陽子

    上川国務大臣 ただいま少年法の六十三条に係る御質問がございました。  六十三条において規定していることとされている選挙犯罪等についての特例ということでございますが、現在、平成二十七年六月成立の選挙権年齢引下げに係る公職選挙法等一部改正法附則第五条第一項及び第三項に規定されているものを少年法に移すというものでございます。  そもそも、これらの特例でございますが、十八歳及び十九歳の者が選挙権年齢引下げにより選挙権を有することとなる一方で、少年法適用対象とされているということから、選挙の公正確保少年保護の均衡を図るための当分の間という規定を、措置を定めたものでございます。  具体的には、連座制に係る事件につきまして、罪質が選挙の公正の確保に重大な支障を及ぼすと認める場合には、家庭裁判所原則として検察官送致決定をしなければならない、その他の公職選挙法及び政治資金規正法の罪の事件についても、家裁、家庭裁判所は、検察官送致決定をするか否かの判断に当たりまして、選挙の公正の確保等を考慮しなければならないとしているところでございます。  今回の改正におきましては、この公職選挙法等一部改正法附則第十一条の規定に基づきまして、選挙権年齢引下げ等を踏まえて少年法について検討した結果として、罪を犯した十八歳及び十九歳の者について、引き続き少年法適用対象とし、全件を家庭裁判所送致した上で、家庭裁判所原則として保護処分を行うこととしており、また、原則逆送の対象事件につきましては、先ほど来の議論のテーマになっておりました、死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役禁錮に当たる罪の事件とすることとしているところでございます。  そこで、引き続き選挙の公正確保少年保護の均衡を図る観点から、十八歳以上の少年に関する措置として、検察官送致決定に関して、選挙犯罪等についての特例を設けることが適当であると考えられたことから、先ほど来の公職選挙法の附則第五条の削除と、あわせて、少年法の第六十三条に所要の規定を置くこととしたものでございます。
  168. 義家弘介

    義家委員長 申合せの時間が過ぎておりますので、階議員、おまとめください。
  169. 階猛

    ○階委員 はい、まとめますけれども、要は、六十二条二項、今回の新しい原則逆送の条文で、短期一年以上の範囲原則逆送にしたんだけれども、そうすると、選挙犯罪がそれに満たないものがあるから、漏れちゃうわけですよ。そうすると過去の公職選挙法規定と矛盾しちゃうから、両方とも入れなくちゃいけなかったという無理なたてつけになっていると思いますよ。  この矛盾を引き続き指摘していきたいと思いますし、今日の答弁でも、選挙の公正の確保ということは少年法の中でも重視されているということがよく分かりました。  そうであるならば、河井事件の被買収者側について、選挙の公正を確保するために、検察の処分、しっかり、早期に明らかにしてください。  以上申し上げまして、終わります。
  170. 義家弘介

    義家委員長 次に、寺田学君。
  171. 寺田学

    ○寺田(学)委員 寺田です。  昨日に引き続き、少年法質疑をさせていただきます。  午前中の質疑も拝聴しておりました。大口委員及び宮崎さんも含めて、本当に今まで関わられた方々のお考えを拝聴しておりましたし、昨日の参考人のお話も聞きました。  私自身、法務委員会に今回初めて入りますので、そういう方々、長らく関わられた方々に比べると意見がどのように映るかはありますけれども、私、本当に、この法務委員会に入って、この法案に向き合うことの強い意義を感じていますし、本当に、自分自身、この仕事をやっていることの意義すら感じています。それぐらい少年にとって大事な話ですし、そしてまた加害者、そしてまた、昨日もお話しいただきました、被害に遭われた方々の人生も大きく左右することですので、自分の考えをちゃんと述べたいというふうに思います。  大臣、基本的には参考人からお話しいただきますけれども、是非聞いてください。  まず、少年法第一条をちゃんと読みたいと思います。  この法律は、少年の健全な育成に関し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする。これが少年法の魂だと思っています。  もし少年法が改正されるということであれば、まさしくこの第一条の魂の部分、趣旨の部分がより一層改善される、そのために改正されることが起こり得る、議論されるべきだと思っているんですが、大先輩方を前にして大変恐縮なんですが、いろいろお話を聞いていると、民法、公選法らとの整合性、分かりやすさ、バランスという、少年法第一条のその魂部分と比べてみますと、対外的であったり副次的な理由を今回の改正の理由に述べられている方がおります。  私個人としては、こういう対外的な理由によって法本来の趣旨が損なわれて、本来、少年らの教育、更生機会が持てる少年が持てなくなるということだけはどうしても私は避けたいというふうに思っています。まさしく少年法というものは、今回、この少年法として対象になる少年のための法律だと思って私は質問をしたいと思っているんです。  大臣が今朝からも御答弁されていますけれども、今回の法改正によって、十八歳、十九歳が話題、議論対象になっていますけれども、その十八歳、十九歳は、いまだ成長途上にあり、そして可塑性に富み、引き続き少年法の枠組みに入れられたと大口委員からもお話がありました。私は、そこは素直に評価したいと思っているんです。  その部分が、いやいや、時代の変遷によって成長が促進されたので可塑性もなくなったんだという評価にもし立つとすれば、それを基に議論するべきだと思うんですけれども、それ以外の理由少年法を改正するということであれば、少年法対象となっているいわゆる非行少年のための法律が、いわゆる大人の事情によって改正されていくことになるという強い危惧を持っていますし、そういう議論が行われることが、様々な家庭環境であったり背景があることによって非行に走った子供たちの心をより一層閉じていくものだと私は思って、物すごく危惧をしています。  今日から実質的に、いわゆる法務省大臣を含めて議論が始まっていますけれども、この法務委員会で話される一つ一つが、聞いている方は少ないかもしれませんが、この法律目的としている少年たちであったり、その少年たちの矯正に関わっている方々に、一つ一つ、一言一言問われているんだということを、非常に緊張感を持ってお話をさせていただきたいと思います。  ここら辺からちょっと素人っぽくなっちゃうんですけれども、私、この少年法を読んだときに、何というんですかね、例えて言うと、この少年法って非行少年にとって、昔でいうと金八先生であって、私の世代でいうとGTOに近いですよ。  この中で御存じの方々は結構いると思いますけれども、学校の中で非常に荒れている部分がありながら、大概の先生であったり教頭先生とかは、もう問題児があったら退学させてしまえと非情にやるところに金八先生が出てきたり、私のときにはGTOでしたけれども、鬼塚という先生が出てきて、世間体なんて関係なくて、その子供に本当に向き合ったらその子供の扉が開いて、なぜそうなったのかということを一緒になって解決していくということがありました。  やはり、そういう意味でいうと、私は、この少年法というのは非常に子供、少年にとって大事なものであって、非常にかけがえのないものだと思うんです。実際、少年法によって、多くの、犯罪を犯した、加害者となった少年たち、救われてきたと思います。  昨日もお話ありましたし、私もまだ個別には聞けていないですが、一人紹介すると、高坂朝人さんという方です、広島の方なんですが、一九八三年生まれ。これは記事にあったものをちょっと引用するんですが、十三歳で非行に走り、十四歳で暴走族に入る。逮捕歴は十五回で少年院に二回入っています。二〇一四年にNPO法人再非行防止サポートセンター愛知を設立ということで、更生の道を歩まれて、違う道を歩んでいますけれども。  今、講演活動をされているんですけれども、お話をされていることは、自分と未来は変えていけるんだということを一生懸命お話をされています。どういうきっかけで自分自身が変えられたのか。本人としても自分が変われることを信じていなかったそうですけれども、二回目の少年送致が決まる前の少年審判のこと、自分は、箔がつくと思って少年刑務所に行きたいと希望したそうです。既に肩から腕にかけて入れ墨が入っていた。そのとき、女性の家裁の調査官が裁判官に向かって涙ながらに訴えた、少年送致にしてください、この子は絶対に立ち直ると。そういうことを言われて初めて、こんな人がいるんだと思った。それがきっかけだと思います。  こういうふうにしていろいろな心の扉は開いていくと思うんですけれども、やはり、いろいろ聞いていると、今までの議論というのは、ちゃんと責任を取れ、努力が必要なんだ。様々な言葉はありましたけれども、やはり努力できないし、様々な家庭環境を抱えて、理由があるからこそそういう行動に走っているということが分かっているからこそ、この少年法ってあったと思うんです。その少年法によってどんどん救われて、違う道を選ぶことができ、そして、そういうふうに非行に走っている子供たち、今度は更生させていくようなサポートをしている人たちはいっぱいいますよ。  事前にお伝えしましたけれども、私は、委員長がその一人だと思うんです。私、ヤンキー先生としてずっと子供のときに見ていましたし、僕も一回、高校をやめようと思って、余市に入ろうかなということを思ったときもありました。そういう存在があるというだけで自分の中にゆとりがあって、何とか自分の中でうまくやっていこうということで、幸いにして今ここに立てていますけれども。  委員長の、いろいろ拝見しました。ヤンキー先生、半生を振り返るということで、法務大臣のときに少年院で講演をされているということを、非常にいいなと思いました。中学校に入る頃には不良と呼ばれていたけれども、面倒を見てくれていた里親、不登校生を受け入れる私立の担任が人生を変える出会いになった、少年時代に多くの失敗や過ちを繰り返し、そのたびに心ある人たちの指導と支えでやってこれたということを少年院の方に言われたそうです。  委員長委員長がお許しする範囲でいいんですけれども、何で更生できたんですか、委員長
  172. 義家弘介

    義家委員長 委員長としてこの場に座っておりますので答弁する立場にはありませんが、寺田議員のそのパッションは大いに賛同するものでありまして、やはり、出会い、これが全てだというふうに思います。  そして、矯正だけではなくて、矯正したと十分認められて社会に出た後、どういう出会いがその子たちにあるか、これが彼らの未来を大きく変えていくものだと思っております。  それ以外のお話は、ゆっくり、委員会以外で、寺田議員としたいと思います。
  173. 寺田学

    ○寺田(学)委員 ありがとうございます。  今回の法律、私、素人です。なので、何か単純だなと言われたらあれですけれども、厳罰をすべきだという考え方と、いわば保護主義という今までの考え方が物すごくぶつかり合って、ぶつかり合い続けた結果、少年法の本来の趣旨とは違った政治的な意味も含めて、バランスと言うべきなのか分かりませんけれども、折衷を取ってでき上がったのがこの法律だと私は思うし。  だからこそ、いろいろなところにちぐはぐさがあるんです。そのちぐはぐさの被害というかマイナスを負うのは、我々ではなくて、やはり少年たちですよ。そこを何とか私は変えていきたいと思うので、稲田先生も力をかしてください。よろしくお願いします。  加害者のことばかり申し上げていましたけれども、やはり被害者のことも大事だと思いますし、被害家族の方々、昨日お伺いして、私は、武さんからお話を聞いて、結構、頭の中ですごく霧が晴れたというところがあります。  お話をされた記事も読みましたし、昨日も御本人がお話しされていましたけれども、もちろん、引下げを今まで活動の中心にやってきたんだ、それが支えだったんだということは十分私もお言葉で理解しましたが、その前によくお話しされる、だって、心からの反省がないんだよ、心からの謝罪をもらっていないんだよ、私たち一人もとありましたし、お金だけで解決できませんけれども、それの形となっている賠償金もちゃんと完済されていないし、やはりあの団体として望むところは、もう私たちのような人たち、つらい思いをする人たちをつくりたくないと、再犯の防止をすごく訴えていたんだと思います。  だから、私自身、もちろん、表層的と言うと少し引かれるかもしれませんけれども、年齢引下げというその活動目標に沿うことも一つだと思うんですが、私は本質的に寄り添っていないなと思います。  だから、本当に、罪を犯した子供が、少年が自分の罪に内省として向き合い続けて、昨日、戦慄かなのさんの話をしましたけれども、刑務所より少年院の方がつらい、向き合わない限り出れないんだということを言っていましたけれども、そういう意味で、今回の法改正が、形によっては、少年院に行って自分を見詰め直し、そして、本当の意味での真の謝罪と、それからの人生、おわびというものができる可能性を奪うのではないかということの危惧があります。  加害少年にちゃんと向き合って、本来の謝罪、反省、そして職をして金銭を稼いで賠償、そして再犯を起こさないことによって、また新たな悲しみを受けるような被害者被害家族の方々ができないようにすることをこの改正で行うべきだと私は思います。  これはもう参考人でもいいです。今回の改正で、被害者立場に立って、お伺いした範囲で聞きますけれども、加害者の、加害少年の心からのおわびというものが今よりもより多く生まれるような法改正になっていると思いますか。
  174. 川原隆司

    川原政府参考人 お答えいたします。  少年成人かを問わず、犯罪をした者が被害者や御遺族に対して謝罪の気持ちを持ち、賠償に努めるようにすることは重要なことであると認識しております。  本法律案は、十八歳及び十九歳の者を取り巻く社会情勢変化を踏まえ、当該年齢の者だけを対象として、少年法適用において、その立場に応じた取扱いを定めようとするものであり、必ずしも被害者及びその御遺族に対する謝罪や損害賠償の促進を直接の目的としたものではございません。  もっとも、最初に申し上げましたとおり、被害者及びその御遺族等に対する謝罪や損害賠償等の措置の促進は、被害者や御遺族の立ち直りはもとより、加害者の改善更生再犯防止観点からも重要であると考えております。  法制審議会答申におきましても、年齢を問わず、犯罪処遇を一層充実させるための制度、施策として、刑の執行段階等における被害者等の心情等の聴取、伝達制度の創設、保護観察処遇において、被害者等に対して慰謝の措置を講ずることに関する指導の充実等の施策が盛り込まれたところでございます。  法務省といたしましては、これらの施策のうち運用上の施策については可能なものから速やかに実施していくとともに、法整備が必要なものについても、本法律案審議も踏まえつつ、所要の作業を進め、できる限り速やかに国会に法律案を提出したいと考えているところでございます。
  175. 寺田学

    ○寺田(学)委員 いろいろなことも配慮しながら参考人に全部聞こうと思っていたんですけれども、これだけ長いと、私、聞けないですよ。  もう一個、端的に聞きます。  被害者方々が言われていた、もうこういうような苦しみを受ける人たちを一人でも少なくしたい、再犯を起こさないでほしい。犯罪を起こしそうな人を虞犯として保護するというのは今までありましたけれども、今回、十八歳、十九歳でもそれは虞犯を外しましたけれども、局長局長に聞きますので、端的に教えてほしいんです、どう捉えているか。  今回の法改正によって、十八歳、十九歳の再犯率は下がると思っていますか。そういうような移行をすると想像してこういう法改正考えていますか、考えていませんか。端的に。これで長く答弁されたら、もう聞かない。
  176. 川原隆司

    川原政府参考人 お答え申し上げます。  本改正は、再犯率を下げることを直接の目的としたものではございません。  ただ、本改正によっても、現在機能している少年の審判制度、少年保護処分などの機能等によって再犯率を抑えている、いい状態にしているという機能は維持されるものと考えております。
  177. 寺田学

    ○寺田(学)委員 大臣、どう思いますか。  いや、もちろん、下げることを直接に目的にしないということを別に、目的にしているかという問いだったら、その答弁でいいですよ。  結果的に、私は、正直、逆だと思っているんです。もちろん、様々な、さっき言った副次的な理由によって改正案が作られているのもあるんですけれども、虞犯の十八歳、十九歳を保護対象にしなかったり、本来、少年院に行く可能性があった者を原則逆送ということで、刑事事件にのっとって刑務所及び執行猶予で終わって、自分を見詰め直す機会が失われる可能性だって今までよりはあるわけですよ。  再犯率ってどうなると思っていますか。
  178. 上川陽子

    上川国務大臣 今委員の方から、法律の改正に伴いまして再犯率がどうなるかとか、いろいろな指標の中で変化をどのように予想するのかという御質問も併せて聞かれているんですけれども、私は、今回の少年法の改正におきましては、一人一人の少年の事情をしっかりと踏まえた上で、家裁の調査官が調査審議をしながら対応をしっかりと深めて、そしてその子にとって、その人にとっていい状況になるにはどうしたらいいかということをしっかりと踏まえた上で判断をしていくという、家裁のそうした極めて大きな機能というのは損なわれないというふうに思っております。  その意味で、家裁の全件送致ということについての基本的考え方、枠組みということについて、十八歳、十九歳であるとしてもこれをそのようにしていく、こういう枠組みが出たと思います。
  179. 寺田学

    ○寺田(学)委員 現行法だとそのとおりですけれども、今回、逆送の範囲、広がりますよね。なので、もちろん一旦全て家裁には行きますけれども、一年以上の刑期の者には原則逆送するという仕組みを新たにつくるわけですよ、今回。今までとは違いますよ。今大臣が述べられたのは今までの話ですよ。今までのままだったら、こんな質問していないですよ。変えるからこそ、どうなるんだと聞いているんです。  具体的なことを一個入っていきますけれども、五十五条移送と推知報道の関係性です。  私も法律専門家じゃないのであれですけれども、勉強する中において、五十五条移送という仕組みがあることを勉強しました。一回家裁には行くけれども、今までの法律であれば、逆送した者、今後、法改正であったらかなり拡大されますから、原則逆送されます。刑事事件、刑事裁判に乗っかります。刑事裁判をいわゆるやっている間に、やはりこれは家裁に戻さなきゃいけないといって保護主義に戻すというのが五十五条の法文で、今も存置、法改正でも残っています。  これと推知報道の話ですけれども、今回、推知報道の解禁をしますけれども、実名報道の解禁ですよね、起訴された瞬間ですよ。家裁に行き、逆送が決まり、刑事裁判に乗っかったときに、もう起訴されていますから名前が出ちゃいますけれども、その後、五十五条によって、また保護主義の家裁に戻ることができるんですよ。名前が出てしまうじゃないですか。  五十五条移送、そもそもの立法趣旨は何かとレクで聞いているんですけれども、レクでの答弁は、公式にも聞きましたけれども、法務省として立法趣旨は正式なものはないと言われていますよ。そんなことあるんですか。  五十五条の立法趣旨は何ですか、刑事局長。ないの。(発言する者あり)
  180. 義家弘介

    義家委員長 速記を止めてください。     〔速記中止〕
  181. 義家弘介

    義家委員長 速記を起こしてください。  川原刑事局長
  182. 川原隆司

    川原政府参考人 失礼をいたしました。  五十五条の趣旨でございますが、可塑性に富み、要保護性が変化する少年事件では、少年の状況の変化に応じて手続処分の選択が変更できることが望ましいというものでございます。  そこで、この少年法五十五条は、刑事訴訟手続に付された少年を再び少年保護手続に戻して処理することを認めていることでございまして、これは、保護教育主義の観点から、刑事手続から保護手続への事件移送を認める少年刑事事件の特則でございまして、実質的には刑事処分保護処分を選択する裁量権を少年刑事事件の担当裁判所にも認めたものでございます。
  183. 寺田学

    ○寺田(学)委員 だから、逆送されて起訴されて刑事裁判に乗っかっても、五十五条があるとおり、保護主義の可能性が残っているんですよ。保護主義の可能性は残っているのに、推知報道を解禁して名前が出ちゃうんですよ。それで名前が出てしまったことの、その少年の更生可能性が左右されるわけですよ。何でこんなことをしているんですか。  これははっきり言いますけれども、レクの段階でそれを言いましたよ、何でそんなことをしているのと言ったら、レアケースだからと言われましたよ。私、耳を疑いましたよ。レアケースだったらその少年権利が失われたっていいの。それを法務省として言うというのは、これは大問題だと思います。何回も確認しましたよ、本気でそれを理由の一つにしていいのと。  刑事局長、レアケース、実態としてレアケースかどうかというのは、そんなもの、主観的によるものですよ。レアケースだからといって、その当該、保護主義に戻る可能性を持った子供の名前を出して、保護主義としてしっかりと保護していく程度を少なくする、影響を及ぼす、そういうことが許されていいんですか、レアケースだと。
  184. 川原隆司

    川原政府参考人 御指摘の点でございますが、十八歳以上の少年のときに犯した罪について、今回推知報道禁止を解除いたしますのは、刑事裁判になった後も先ほど来御指摘の五十五条移送によって家庭裁判所に移送されるケースが極めて限定的であるということのみを理由とするものではございません。(寺田(学)委員「いや、理由にしているんでしょう、今」と呼ぶ)そこで、御説明をさせていただきます。  先ほど来申し上げておりますように、十八歳及び十九歳の者は、公選法の選挙権年齢民法成年年齢引下げにより、重要な権利、自由を認められ、責任ある主体として積極的な社会参加を期待される立場となったものでございます。  その上で、推知報道禁止というのは、憲法上、表現の自由の下に保障されております報道の自由という極めて重要な権利を制約する例外規定でございまして、報道の自由の制限は必要最小限度のものとすることが求められているところでございます。そこで、その制限として、どういった場合が合理的なものと言えるかということがまず問題となるべきでございます。  そこで、さらに、例えば犯罪被害者など他の関係者については推知報道禁止する規定は設けられていないことからいたしますと……
  185. 義家弘介

    義家委員長 質問者が挙手を続けていますので、おまとめください。
  186. 川原隆司

    川原政府参考人 はい。  十八歳以上の少年が罪を犯して公判請求され、公開の法廷で刑事裁判を追及される立場となった場合まで推知報道禁止することは適当でないと考えたことでございまして、表現の自由との均衡などからこういったことにしているものでございます。
  187. 寺田学

    ○寺田(学)委員 二つ。  まず、理由の一つとして認めているんですよ。大臣、まずこれは、いいですか、レアケースだからといって理由の一つに認めることを、大臣、認めますか。
  188. 上川陽子

    上川国務大臣 今の、レアケースであるというふうに表現したこと、そのことの意味というのが、どのようなやり取りでそういうふうに申し上げたか分かりませんが、今のようなことについては、理解を求めるという意味での説明としては不十分であると思います。(発言する者あり)  不適切であると思います。
  189. 寺田学

    ○寺田(学)委員 あと、知る権利の話をされました、表現の自由の。保護主義に戻る可能性がある子供の、その権利と言っていいか分かりませんよ、その辺、ちょっと難しいことは皆さんに任せますけれども、その権利は、知る権利より劣位にあるんですか。  今日、時間がないので、もう一個同じようなケース、同じケースというか、この課題の具体例ですけれども、お手元に配りました。組織的詐欺で起訴されて無罪になった事件。  平成二十四年三月、神戸です、地方裁判所です。当初は組織的犯罪ということで起訴されました。これは二十一歳です。起訴されたんですけれども、裁判の過程によって、組織的犯罪としては無罪なんです。窃盗だけになりました。これは二十一歳でもこんな判断が出るんですよ。だとしたら、もっと年下なんてということですよ。  今回、法改正したら、まず原則逆送の範囲ですよ、これは組織的詐欺ですから。送られますよね。送られて、五十五条の件もあるし、実際、裁判をやっていったら、逆送されて、そして名前が出される条件にはまったもので起訴されたから名前は出ちゃったけれども、実際のところ、無罪になるんですよ。その部分に関して、この二十一歳、もし法改正をされて、実際のケース、出ますよ、こんなの、一つやっていますから。出る可能性はありますよ。そのときのその少年立場って何なんですか。何でそうなっているんですか、無罪にもなっているのに。  それぐらい私は推知報道に関して、さっき申し上げた厳罰主義と保護主義をぎりぎりぎりぎりやっていく中で落としどころを見つけたせいでこういうちぐはぐな、価値観に備わっていないような制度が残っているんですよ。まず、おかしいですよ。  大臣、答えられますか。どうするんですか、こういうふうに無罪になったら。その子の名前、出ていますよ。  刑事局長、どうぞ。短く。
  190. 川原隆司

    川原政府参考人 お答え申し上げます。  委員の御指摘でございますが、どの段階でどういう形で推知報道を解除するかというのは、先ほど来申し上げておりますが、表現の自由の下に認められた報道の自由という重要な権利の制約をどのような場合に合理化できるかということで、まさにここは二つの利益が対立するところでございまして、どれをどのバランスであんばいするかといいますか、どういう形で重視するかというところでございます。  その上で、確かに委員のおっしゃるとおり、五十五条移送で戻るような場合の少年保護観点、あるいは無罪になりますれば、これは成人も同じことでありますが、起訴されて実名が出た、でも結果的には罪を犯したとは認定されなかったということでございます。  ただ、こういったことの不利益と表現の自由という、これは憲法上極めて重要な権利、講学上の用語で申しますと優越的権利と言われる場合もありますが、こういったものの制限のときにどこでバランスを取るのがその制限として合理的か、表現の自由、知る権利の、報道の自由の制限として合理的かということがございまして、私ども、どこが合理的かという観点から、今回のように、公判請求をした時点で推知報道を解除することが合理的であると考えたものでございます。
  191. 寺田学

    ○寺田(学)委員 合理的ですかね。  繰り返しますけれども、今日も大臣お話しされていましたけれども、十八歳、十九歳は引き続き成長の途中であって、可塑性に富み、少年法の範疇に入っている少年ですよ。その少年が一律決められた一年以上というもので逆送されて、詳しい具体的なやつは分かりませんけれども、裁判になった瞬間に名前が出ちゃうわけですよ。そのときに五十五条移送の可能性もあるわけですよ、そこから審理されて、そこから判断されるんですから。そして、無罪になる可能性もあるわけですよ、その当該、逆送されなければならなかった事案に対して。  そういうような立場の構成をつくっておいて、合理的なんですか、これが、国民の知る権利の。言い方はあれですけれども、本当に、少年たちに対してそういうことを知る権利の方が優越するんだというのが今の政府・与党の合理的な判断なんですか。おかしいですよ、絶対。保護主義なんでしょう、十八歳、十九歳は。大臣、おかしいです、これ。  まず、私自身としては、推知報道を解禁する、実名報道を解禁すること自体が、保護主義に立つのであれば、私はおかしいと思う。  いろいろな、合理的な判断と言っていますけれども、起訴段階、何と言えばいいのか分からないけれども、もう裁判が始まった段階で名前が出ちゃって、五十五条移送の可能性も残り、無罪の可能性も残っているのにもかかわらず、知る権利が優先するから名前を出してもいいんだということは私は合理的だとは思いませんが、大臣は合理的だと思っているんですか。
  192. 上川陽子

    上川国務大臣 いわゆる推知報道禁止を求める少年法第六十一条の趣旨でございますが、少年の特定に関する情報が広く社会に伝わり、その社会生活に影響を与えることを防ぐ、その更生に資することにあるということでございます。  もっとも、この推知報道禁止でございますが、今刑事局長も答弁した中に紹介がありますが、表現の自由との関係ということでありまして、その自由を制約するという例外規定であるという位置づけでございます。  例えば、犯罪被害者方々などの他の関係者につきましては、この推知報道禁止する規定は設けられていないというところでございます。  ですから、十八歳以上の少年に対しまして推知報道を一律に禁止するということにつきましては、保護対象ということでございますが、同時に責任ある主体ということでございますので、その立場から、国民理解信頼確保観点からも適当でないというふうに考えられるところでございます。
  193. 寺田学

    ○寺田(学)委員 その判断、さっき刑事局長が言った合理的なタイミングであるということはそのとおりなんですね、大臣、じゃ。
  194. 上川陽子

    上川国務大臣 様々な観点を、バランスをしっかりと図るということでございます。そういう中で打ち出した政策ということでございます。政策的な判断ということでございます。
  195. 義家弘介

    義家委員長 申合せの時間が過ぎておりますので、おまとめください。
  196. 寺田学

    ○寺田(学)委員 はい。  もう時間が来ましたのであれですけれども、委員長の本も読みました。二〇〇五年、「不良少年の夢」というので書いてくれていて、どんなに忙しい日常の中でも子供たちのことをもっともっと話し合ってほしい、時間をかけて話し合ってほしい、子供たちはそんな大人の姿をきっと見ていると。私、そのとおりだと思いますよ。  これは別に与野党の駆け引きじゃないんです。本当に人生を変えますよ、少年も、そしてそれによって被害を受けた方々も。じっくりと議論をさせてください。  終わります。
  197. 義家弘介

    義家委員長 次に、松平浩一君。
  198. 松平浩一

    ○松平委員 立憲民主党、松平浩一です。  本当に、今の寺田委員質疑を聞いていて、やはり今回の少年法改正、ちぐはぐな部分が多いんだなというふうに思いました。それでいて、不利益を受けるのは少年なんだということで、この改正に当たっては、少年法のそもそもの立法趣旨、基本からやはり議論していくべきなんじゃないかなと改めて思いました。  そこで、今回の改正、いろいろな論点があるわけですけれども、まず、虞犯ですね、こちらに焦点を当てて伺いたいなと思います。  虞犯少年に対する家庭裁判所保護処分、これはいろいろありますけれども、保護観察、児童自立支援施設それから養護施設への送致、それから少年送致といった処分があると思います。理解しています。そもそもこういった処分少年に対してどういった役割を果たしているのか、そこの部分からまず教えていただいていいでしょうか。
  199. 川原隆司

    川原政府参考人 お答え申し上げます。  現行少年法の虞犯制度は、保護者の正当な監督に服しない性癖があること、正当な理由なく家庭に寄りつかないことなどの事由に該当し、その性格、環境に照らし、将来罪を犯すおそれがある少年について保護処分を課すことができるとするものでございます。  このような虞犯制度につきましては、少年保護教育一定の機能、役割を果たしているものと認識しております。
  200. 松平浩一

    ○松平委員 今おっしゃっていただいたように、非常に重要な役割を担っているわけです。  今回、十八歳、十九歳は適用対象としないとされたんですけれども、今の役割は十八歳、十九歳にも適用されないんですかね、果たされないんですか。そこの部分を教えてください。
  201. 川原隆司

    川原政府参考人 現行少年法の下におきましては十八歳、十九歳も虞犯の対象となっておりますので、今申し上げたような機能、役割は、現行少年法の下においては十八歳、十九歳の者に対しても存在しているところでございます。
  202. 松平浩一

    ○松平委員 本当にそのとおりだと思います。今回答いただいたとおりです。十八歳、十九歳でも、まだ犯罪を犯していないけれども、悪い仲間とつるんでいて、いつか犯罪を犯してしまうような環境にいる少年はたくさんいるということです。  にもかかわらず、今回、十八歳、十九歳の者に対して虞犯を適用しないという案が出されていますけれども、確認させていただきたいんですが、じゃ、この今まで果たしてきた役割がなくなったということなんですか。だから出されたということですか。確認させてください。
  203. 川原隆司

    川原政府参考人 お答え申し上げます。  虞犯の果たす役割そのものがなくなったということではないと考えております。ただ、虞犯の制度は、今申し上げましたように、法定の事由に該当し、その性格、環境に照らし、将来罪を犯すおそれがある少年について保護処分を課すことができるというものでございますが、一面で、権利、自由の制約という不利益を伴うという面も持ってございます。  こういった面に着眼されますと、先ほど来申し上げておりますように、民法の改正がなされまして、従来未成年とされていた十八歳、十九歳の者が成年となりまして、その結果、監護権の対象から外れるものでございます。こういった監護権の対象から外れる者に対して、罪を犯すおそれがあるとして、保護の必要性のみを理由に後見的介入を行うことは、成年年齢引下げに係る民法改正との整合性や責任主義の要請との関係で許容されるか、あるいは国家による過度の介入とならないかといった問題点があると考えられるところでございます。  そのため、本法律案では、十八歳以上の少年については虞犯による保護処分をしないこととしたものでございます。
  204. 松平浩一

    ○松平委員 ということなんですが、今回、改正案は、十八歳、十九歳を全件家裁送致する少年法対象とするということを明確にしたと承知しています。なので、十八歳、十九歳でも、逆送しない場合は審判が行われて保護処分をするわけなんです。だから、特定少年にも保護原理は及んでいると理解していますが、そのとおりでいいんでしょうか。
  205. 川原隆司

    川原政府参考人 お答え申し上げます。  保護原理という言葉が講学上用いられているところでございますが、十八歳、十九歳の者について保護原理が妥当するかということでございます。  十八歳以上の少年に対する改正法における取扱いについて、それを講学上の原理としてどのように説明するかというものでございまして、よって立つ立場には様々な捉え方があることから、これを一概にお答えすることは困難であると考えております。
  206. 松平浩一

    ○松平委員 ごめんなさい、少年法は十八歳、十九歳にも及んでいるということですね。
  207. 川原隆司

    川原政府参考人 お答えを申し上げます。  十八歳、十九歳も少年法対象としておりますので、要保護性は少年にもあるというところでございます。保護原理という言葉と要保護性は少し意味合いが異なりますので、先ほどのような御答弁をさせていただいた次第でございます。
  208. 松平浩一

    ○松平委員 要保護性がやはりあるということなんです。  私、こういったロジック上、理論的にどっちにでも取れるというもの、これは政策判断になるんでしょうけれども、現実にどちらが即しているかというところ、その観点が、そういうロジック上どちらにも取れるという問題については重要なのかなと思います。  その観点で見ると、先ほど御回答いただいたように、今まで、十八歳、十九歳に虞犯を適用することにメリットがありますよ、役割がありますと御回答いただきました。それで、昨日、須藤参考人からも、これはなくしたら最後のセーフティーネットを失うという指摘もありました。片山参考人からも懸念が表明されました。やはり、メリットがなくてデメリットばかりでしたら、そういった立法をする意味がないんじゃないかなと思ったりもするんです。  そこで、この虞犯を外すことで十八歳、十九歳へのメリットはあるのかどうか、これをお聞きしたいなと思います。
  209. 川原隆司

    川原政府参考人 お答え申し上げます。  今回、十八歳、十九歳の者について虞犯の対象から外すとした理由は、先ほど御答弁申し上げたとおりでございまして、十八歳、十九歳の者に対して、虞犯の場合は、犯罪を犯していない者で、これから罪を犯すおそれがあるのではないかということで、保護の必要性のみを理由にして国家が後見的介入を行うというものでございまして、これが成年年齢引下げに係る民法改正との整合性や責任主義の要請との関係で許容されるかということなどの問題点を考慮したものでございまして、委員のおっしゃっているメリットというのは必ずしもちょっと明確でないところはありますが、そういったものを理由として虞犯の対象外としたものではございません。
  210. 松平浩一

    ○松平委員 何か許容性みたいな話も出ましたけれども、じゃ、十八歳、十九歳の特定少年へのメリットはないという理解でよろしいんですよね。
  211. 川原隆司

    川原政府参考人 お答えを申し上げます。  十八歳、十九歳を虞犯の対象にするかという議論におきましては、先ほど来御答弁申し上げています、許容性という言葉をおっしゃられましたが、要するに、そういった制度、虞犯の対象とすることが許されるのか、むしろそういう観点からの議論でございます。  法制審議会におきましては、更にちょっと御紹介申し上げますと、この関係では、保護の必要性というのは二十歳や二十一歳の学生でもほとんど変わりはなく、また、ほかにも高齢者など保護、支援が必要な者は存在するのだから、本人のためになるという理由だけで民法上の成年となる十八歳、十九歳の者に処分を認めると、本人のためになる限り、より広く不利益を伴う処分を課すことにつながりかねない、こういった強い懸念を示されたと承知しているところでございます。
  212. 松平浩一

    ○松平委員 本人のメリットはないよと、それで、民法の整合性からは、このまま虞犯の対象とすべきじゃないんじゃないかという話なんですよね。  じゃ、本人のメリットじゃなくて、社会全体のメリットというのはあるんですか。  つまり、私が言いたいのは、やはり改正なり立法をするに当たって、立法事実というのが必要だと思うんです。立法事実が大事だと思うんです。だから、立法事実を確認する意味で、この改正が社会にとってどう役に立つのかという観点でお聞きしたいんです。
  213. 川原隆司

    川原政府参考人 お答えを申し上げます。  今回の改正でございますが、これは提案理由でも申し上げていますように、公職選挙法に定める選挙権年齢は満二十歳以上から満十八歳以下に改められる、また、民法の定める成年年齢も十八歳に引き下げられる、そういった公選法や民法の改正という社会情勢変化がございまして、そういった中で少年法についてどう考えるかということでございます。  先ほど来、虞犯の話で申し上げますと、まさに民法の改正によって十八歳が成年となったわけでございまして、十八、十九歳の者は、典型的には親の監護の下にこれまで服しているわけですが、そこから外れるといった変化がございますので、それとの関係で、虞犯の制度を維持することは、先ほど来申し上げておりますように、国家による過度の介入とならないかなどといったことから、許されるかどうかについては問題があるということで、虞犯の対象から十八歳、十九歳を外したものでございます。(発言する者あり)
  214. 松平浩一

    ○松平委員 今議場からもありましたけれども、本当にそうなんですよね。保護処分を認めておきながら、ここで虞犯を外す。じゃ、なぜ外すんだ、保護処分を認めておきながらなぜ外すんだというところで、そこの説明をもうちょっと納得できるようにしていただきたいなと思ったんです。  例えば、先日、所有者不明土地の議論をここでさんざんさせていただきましたけれども、国庫帰属制度をつくりますと、これは所有者不明土地をなくすという非常に分かりやすい立法事実だったんです。僕、立法事実はやはり大切だなと思うのは、特に今回のような、国民に義務を課したり、今回は国民権利を制限する場合ですね、特に個別具体的に立法事実を検討しなきゃいけないんだろうなと思うんです。  今日午前中に宮崎委員が新聞社の世論調査を出していただきましたけれども、そういう積み重ねですよね。これは民間がやった調査だと思うんですけれども、ちゃんとそういう立法事実の積み重ねということをやって、それでこの立法に至ったのかというところなんです。  一応ちょっとお聞きさせてください。その辺、いかがでしょうか。
  215. 川原隆司

    川原政府参考人 お答え申し上げます。  今委員質問の中で、世論調査ということを御指摘になりました。先ほど宮崎委員の御質問の中で出ました世論調査でございますが、あれにそのまま従うとなると、むしろ端的に少年年齢を十八歳以下にするという方向性になるのではないかと思うところでございますが。  私ども、今回の改正をお願いしておりますところは、先ほど来御説明申し上げておりますように、公選法、民法の改正などといって、従前二十歳とされていた年齢が十八歳に下がった法律がございます。こういった社会情勢変化に伴って、少年法についてどう取り扱うべきかということを考慮した結果、そういった公選法や民法によって権利などが付与された十八歳、十九歳の者について、それにふさわしい取扱い少年法でこのようにするのが適当だと考えたことから立法をしたものでございます。
  216. 松平浩一

    ○松平委員 それが適当だと考えたといっても、やはりこれだけいろいろな意見が錯綜されているわけで、だから、そこでそれが適当なのかどうかというところも、結局のところ、もうちょっと説得的な理由が欲しいなと思います。  ちょっとこの議論は恐らく前に進まないので、じゃ、仮に、現実問題、今後、十八歳は虞犯として扱えないことになりましたよということで、今まで虞犯としてちゃんと保護できて更生できるようにしてきたことができなくなってしまう、それによって少年犯罪が増えてしまうんじゃないか、そういった懸念というのはないんでしょうか、そういう悪影響はないんでしょうか。そこの部分を教えてください。
  217. 上川陽子

    上川国務大臣 今刑事局長が御答弁をされたところでございますけれども、虞犯の制度そのものにつきましては、そもそも、この性格、環境に照らしまして、将来罪を犯すおそれのある少年、これにつきまして少年送致も含む保護処分を課すことができるもの、こういう制度でございます。しかし同時に、今の虞犯の制度の中に内在する問題として、その当事者の権利、自由の制約という不利益、これを伴うということでございます。  民法上の成年とされ、また監護権の対象から外れる十八歳及び十九歳の者に対しまして、罪を犯すおそれがあるとして、保護の必要性のみを理由に公権的介入を行うことが、成年年齢引下げに係る民法改正との整合性とかあるいは責任主義の要請との関係で許されるかという論点、また同時に、国家によりましての過度の介入とならないのかという論点、こういったことが問題点として考えられ、その結果として、十八歳以上の少年に対しましては虞犯による保護処分ということについてはしないということでございます。  虞犯を理由とする保護処分はできないこととしているわけでありますが、だからといって、健全な育成を図るということについての社会的要請が失われるものでは全くございません。その意味では、これらの者の健全育成のために、様々な機関によりまして対象者の任意に基づく支援、措置が重要であるということでございまして、非行防止を図るという観点から、一般には早期の段階におきましての働きかけが有効であるというところでございます。  内閣府に置かれました子ども・若者支援推進本部少年非行対策課長会議等におきまして、法務省を含めまして、関係省庁で連携しながら、そうした子供たちに対しての働きかけ、問題把握、そして同時に、それによりましての健全育成、こういうものに対して合わせ技で対応していくということであろうかと思います。
  218. 松平浩一

    ○松平委員 いろいろ御答弁いただいて本当にありがとうございます。  ただ、私としては、悪い影響はないのかというところをお聞きしたかったんですけれども、見通しとしてはどう考えていらっしゃいますか。
  219. 川原隆司

    川原政府参考人 お答え申し上げます。  今大臣からも答弁がございましたように、十八、十九の者を虞犯の対象にしないからといって、それらに対する支援が要らなくなるというふうには考えておりません。  そこで、これも大臣の答弁にございました少年非行対策課長会議等の枠組みを利用しまして、関係省庁とも連携しつつ、十八、十九歳の者を含めた少年健全育成、非行防止の取組を推進していきたい、そう考えているところでございます。
  220. 松平浩一

    ○松平委員 同じ内容の答弁でしたけれども、じゃ、支援もしっかりやるから大丈夫なんだよということが言いたいということでよろしいんですか。影響は、悪影響はないということでよろしいんですか。
  221. 川原隆司

    川原政府参考人 委員指摘のように、そういった影響がないようにしっかりと取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
  222. 松平浩一

    ○松平委員 じゃ、次に、他の被疑者、被告人との取扱いの分離についても、同じようなことですけれどもお聞かせいただきたいと思います。  一応ちょっと念のため言いますと、少年法四十九条で、他の被疑者、被告人と少年手続を分離するということを定められていて、これが逆送された特定少年適用されないという案に今回なっていますということです。  まず、これもちょっと基本に戻ってお聞きしたいんですけれども、少年法でこの取扱いの分離を定めた趣旨少年にとってこの条文がどのような役割を果たすかというところをお聞かせください。
  223. 川原隆司

    川原政府参考人 お答え申し上げます。  少年法四十九条一項で取扱いの分離を定めた趣旨は、少年情操保護を図るため、捜査から裁判の終結に至るまでの全ての手続段階において、少年の被疑者、被告人を他の被疑者、被告人と分離して、なるべく接触を避けなければならないと考えたことからでございます。
  224. 松平浩一

    ○松平委員 じゃ、これもまた同じことを聞くんですが、十八歳、十九歳には今おっしゃった情操保護、この今まで果たした理由がなくなったというわけじゃないんですよね。
  225. 川原隆司

    川原政府参考人 お答え申し上げます。  今回の法案におきまして、この取扱いの分離につきまして、取扱いの分離の適用をなくした理由でございますが、先ほど来申し上げましたとおり、十八歳、十九歳の者は、公選法及び民法改正等により重要な権利、自由を認められ、責任ある主体として積極的な社会参加が期待される立場となるに至ったものだからでございます。  そこで、十八歳及び十九歳の者が罪を犯した場合には、このような立場に応じた取扱いをすることが適当であり、また、刑事司法に対する被害者を含む国民理解信頼確保という観点からも必要であると考えられるところでございます。  そして、十八歳以上の少年につきまして、刑事処分相当として検察官送致決定がなされ、刑事責任を追及される立場となった場合であっても、年齢のみを理由に十七歳以下の少年と同様に他の被疑者、被告人と分離して取り扱わなければならないとするのは、情操保護観点を過度に優先するものであって、責任ある主体としての立場等に照らし適当ではないと考えられるところでございます。  以上のことから、本法律案におきましては、十八歳以上の少年につきまして、刑事処分相当を理由とする検察官送致決定後は少年法第四十九条第一項を適用せず、また、十八歳以上の少年の被告事件については同条二項を適用しないこととしていることでございます。  もとより、これらの規定適用しないことといたしましても、運用上、個々の対象者に対して、必要に応じて捜査、公判手続における配慮を行うことは可能でございます。
  226. 松平浩一

    ○松平委員 ちょっと先ほどと回答が変わったなと思ったのは、今回、逆送された特定少年にこの取扱いの分離が適用はないとしたのは、国民理解信頼という言葉が今出てきました。それから、刑事責任を追及する立場になったからという話です。国民信頼ですね。ううん。  やはりこれもさっきと同じ質問なんですけれども、特定少年にとってのメリットはないということでいいんですよね。国民信頼ということですよね。
  227. 川原隆司

    川原政府参考人 取扱いの分離を、特定少年につきまして、逆送、適用しないこととした理由は先ほど御答弁したとおりでございまして、手続対象である特定少年のメリット、デメリットに着眼して立案したものではございません。
  228. 松平浩一

    ○松平委員 国民信頼という言葉なんですけれども、私、結構、やはり立法趣旨としては不安だな、不明確だなと思います。やはり、国民信頼とつけると、何でもそれが正当化できてしまうような気がするんですね。まさに先般議論した所有者不明土地でも、所有者不明土地をなくし国民信頼を得るためと言ったら、もう個別具体的な話をしなくていいわけなんですよ。  ですので、やはり今回のそれぞれの措置も、保護処分というんですね、保護措置というものが対象となる以上は、もうちょっと細かくその立法事実というものを積み重ねていただきたかったなと思います。  これはやはり同じ質問になっちゃうのでちょっと飛ばしますけれども、恐らく、先ほど寺田委員質問されていた推知報道禁止趣旨、今まで、少年にとっての役割ですとかというのも同じだと思うので、それが今回適用にならなくなったというところも同じだと思うんです。  この推知報道禁止のところというのは、午前中の質疑で中谷委員がされていましたけれども、本当にデメリットが非常に大きい。ネットの社会なので、世界に瞬時に広がって永久に残ってしまう。余りにも大きいんですよね。それでいて、これも、先ほどの虞犯のところ、それから取扱いの分離のところと同じように、特定少年にとってのメリットというのは一切ないわけです。だって、推知報道禁止が解除されて、名前が残ってメリットになることなんかないですから、これはないわけなんです。  だから、ここも、なぜこういう改正をするかという立法上の役割、その果たす役割ですね、これを丁寧に積み上げていただきたかったなと思うんです。  ちなみに、私、ちょっとここでお聞きしたいのが、手続取扱いの分離のところで、逆送された特定少年適用されないということだったと思うんです。ただ、推知報道の解除に当たっては、逆送されて公判請求された特定少年適用されないとしています。何でここの部分が違うのかなとちょっと不思議に思ったんですけれども、ここは教えてもらうことは可能ですかね。  つまり、手続取扱いの分離というのは、逆送が要件なわけです、特定少年の逆送が要件なんです。ただ、推知報道の部分は、逆送されて公判請求される、そこが要件になっているんです。だから、同じように本人にメリットがなくて、それで、国民信頼を得るためという理由でしたら、何でここは違うのかなと思ったんですね。つまり、手続取扱いの分離のところも、逆送されて公判請求された場合に適用はないという同じ条件にしたらよかったんじゃないかなと思ったんですけれども、この辺はいかがですか。
  229. 川原隆司

    川原政府参考人 お答え申し上げます。  今の御質問に関しては、むしろ推知報道禁止をなぜ公判請求した時点以降に解除するかということから御説明を申し上げたいと思います。  事件処理の実情を見ますと、十八歳以上の少年の被疑事件検察官に戻った事件が起訴される場合は、その大半はいわゆる略式起訴でございまして、略式手続は、比較的軽微な事件について非公開での書面審理を行い、罰金又は科料を科す手続であることからいたしますと、略式手続により事件が終結する場合まで推知報道禁止を解除することは、先ほど来御指摘がありました表現の自由の制約としてどこまでが合理的か、言葉を換えれば、どこまでが許容されるのかというところを考えるに当たっては、略式手続で終わってしまう事件にまで推知報道禁止を解除することは、今度は、当該手続対象者である者の更生、社会復帰の観点考えますと、それはそこまで推知報道禁止を解除することは逆に適当でないだろうと考えたことから、推知報道禁止の解除につきましては公判請求された時点からということで、むしろ、ほかの取扱いよりも時期を遅らせて、かつ、解除される場面を限定的にしたものでございます。  したがいまして、ほかのものは、基本的には家庭裁判所の審判によりまして刑事処分相当として逆送された時点から十七歳以下の少年とは異なる取扱いにしたというものでございます。
  230. 松平浩一

    ○松平委員 分かりました。  もう時間がないのかな、ちょっと今の逆送事件範囲についても伺いたかったんですが、これは階委員も御指摘いただいたところですね、なぜ短期一年ということにして、具体的に条文を並べなかったのか、強盗罪、強制性交罪とか。そこの部分をお聞きしたかったんですが、ちょっと終了しちゃったので、また改めて議論させていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  231. 義家弘介

    義家委員長 次に、藤野保史君。
  232. 藤野保史

    ○藤野委員 日本共産党の藤野保史です。  私は、保護処分についてお聞きします。  配付資料一を見ていただきたいんですが、現行法は二十四条でこういう条文になっております。これに対して改正法は、下の六十四条で特例を設けておりまして、犯情軽重を考慮してという文言が加わっております。  配付資料の二を見ていただきますと、この犯情という言葉は現行法にもあるんですが、有名なのは刑法二十七条の二、刑の一部の執行猶予に関する規定で、この犯情軽重というのが掲げられております。要するに、何で犯情軽重が考慮事情として入っているんですかというのを説明した資料がこれでありまして、そこにありますように、刑事責任に見合った刑を科すという観点からこの犯情という言葉が用いられているということが説明されております。この刑事責任に関する文言が、保護主義に基づく保護処分の条文に盛り込まれたということになります。  配付資料の三を見ていただきますと、昨日の参考人質疑で須藤参考人が配付していただいた資料で、犯情は、そこの一番上にありますように、刑事責任軽重を基礎づける概念であり、保護処分の本質と犯情概念は相入れないのではないかという指摘、そして、要保護性の観点が後退するのは明らかだという指摘がされております。  これは須藤参考人だけではなくて、法制審の委員でもいらっしゃった川出参考人も別の言葉でこうおっしゃっています。陳述の際に川出参考人はこうおっしゃったんですね。同じ保護処分という言葉が使われていても、十八歳未満の者に対する保護処分とはその正当化根拠を異にするものであるというふうに冒頭おっしゃって、私がそれについて詳しく聞きますと、こうおっしゃったんですね。正当化根拠が異なるというのは、保護原理ではなくて、いわゆる侵害原理と言われますが、法益を侵害したことに対する非難として一定権利を制約する、そういう原理に基づくものですので、その意味では、従来の保護処分とは違って、刑罰に近づいたと言われればそれはそうだと思います、こういうお答えなんですね。  私は、今回、この犯情という言葉が入ることによって、十八歳、十九歳の保護処分は、同じ保護処分という言葉だけれども、刑事処分に近づくんじゃないかと聞きましたら、それに対して川出参考人が、刑罰に近づいたと言われればそれはそうだとおっしゃったわけであります。  大臣、お聞きしますが、十七歳までは今までの保護処分だと思います。しかし、十八歳、十九歳については、今回、犯情という刑事責任に基づく文言で軽重を考慮すると。これは、川出参考人が言われたように刑罰に近づく、そういう理解でよろしいですか。
  233. 上川陽子

    上川国務大臣 委員指摘の、この法律案におきましての犯情ということについての御質問でございますが、この法律案におきましては、十八歳以上の少年に対します保護処分につきましては、犯罪軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内、すなわち、犯した罪の責任に照らして許容される限度を超えない範囲内でしなければならないこととしているところでございます。  この限度を超えないということは、限度を上回らないという趣旨でございまして、裁判所は、犯した罪の責任に照らして許容される限度を上回らない範囲内であれば、責任の重さに応じて科される刑罰とは異なり、対象者の要保護性に応じて処分を選択することになるところでございます。  また、十八歳以上の少年に対する保護処分につきましては、応報として科される刑罰とは異なりまして、専ら少年健全育成を図るということのために課すものでございます。したがいまして、十八歳以上の少年に対する保護処分は、刑罰とは法的性格が全く異なるものでございます。そして、現行少年法保護処分におきましても、犯罪事実の軽重処分の間の均衡が考慮されていると承知しておりまして、処分の上限を画するときに犯罪軽重を考慮するとしても、刑罰に近づくものではないと考えられるところでございます。
  234. 藤野保史

    ○藤野委員 それは参考人の理解と全く違うんですね。私は刑罰そのものだとは言っていないんです。十七歳までの保護処分と違って、十八、十九は刑罰に近づくと参考人はおっしゃっているわけで、同じ認識かと聞いたわけですね。  しかも、上限を画するとおっしゃいましたけれども、問題は上限を画するかどうかじゃないと思うんです。その根拠なんですね。保護処分というのはやはり人権を制約します。その制約していい根拠は何なのか。それは、現行法は要保護性なんです。しかし、今回、十八歳、十九歳については、その正当化の根拠に刑事責任を持ち込んでいるんです。それがこの犯情という言葉なんです。原理が違うんです。原理が違うというところが非常に問題であって、細かな、現行法規定の曖昧さというのはあると思います、ただ、私、一番の問題は今までの考え方と違う考え方を持ち込んでいるということなんです。  今日も与党議員から、早速もう五年後の話も出てきました。要するに、こういう原理を持ち込んだことによって、今後、それを広げていく危険性が生まれるわけなんです。大臣、その懸念についてはどうお答えになりますか。
  235. 上川陽子

    上川国務大臣 保護処分ということにつきまして、対象者の権利、自由の制約という不利益、これを伴うものであるため、民法上の成年とされ監護権の対象から外れる十八歳以上の少年につきまして、犯した罪の責任に照らして許容される限度を超える処分を行うことは、法制度としての許容性、相当性の点で慎重であるべきと考えられるところでございます。  他方、現在の少年事件におきまして、実務の運用上も一般的に犯罪事実の軽重処分との間の均衡、これを考慮して処分選択が行われているとされておりまして、また、一般的には犯罪事実の軽重と要保護性は対応、相関しているとの指摘がなされているものと承知をしております。  そうしますと、犯罪軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内という制約があるとしても、家庭裁判所実務上、要保護性に応じた適切な処分選択を行うことに直ちに支障が生じるものではないというふうに考えております。
  236. 藤野保史

    ○藤野委員 こういう異質の原理を持ち込むこと、それが今後の足場になっていく危険性、これについて私はお聞きしたんですね。ですから、そういう、保護主義と相入れない刑事責任、刑事原理。まさにこれは、川出参考人はやはり正確におっしゃったと思います。そういう意味では、これは刑罰に近づくものであり、それが今後どんどん広がっていくのではないか、少年法保護の原理というのをむしばんでいくのではないかということが問われていると思うんですね。  今、大臣実務の運用上とおっしゃいました。ちょっと実務の運用上、見ていきたいと思うんです。配付資料の四になるんですが、昨日、参考人質疑で須藤参考人も、二〇〇〇年の少年法改正以降、実務がやはり変わってきたという指摘もされました。これは日弁連も同じ指摘をしております。  配付資料の四というのは、裁判所職員総合研修所というところが出している総研所報、二〇〇四年なんですね。ですから、これは、二〇〇〇年の改正を受けて、少年法二十条二項を実務上どういうふうに運用しようかと検討しているんですね。そこでどう言っているかというと、「刑事処分以外の措置の許容性を検討するに当たり考慮すべき事情は、事案重大性に着目して原則検察官送致規定した法の趣旨を踏まえると、何よりも事案に関する事情であるということになる。」飛びますけれども、「したがって、少年の資質及び環境に関する面から見れば、刑事処分以外の措置を選択したいと考える事例もあろうが、そのことのみをもって処分を決めることができるものではなく、あくまでも事案に関する面を中心とした検討の結果、特段の事情が認められた場合でなければならないことに留意する必要がある。」  下の方に、平成十九年度の実務研究会も紹介しております。「「少年の性格、年齢、行状及び環境」等の事情については、犯行動機の形成や犯行態様に深く影響したと認められる範囲で考慮するに止めるべき」であるということになっているんですね。  つまり、要するに、刑事処分以外の特段の事情を認めるかどうかというのは極めて限定的なんです、極めて限定的。そして、しかも、仮にその特段の事情を認める場合でも、もう一つ制約がありまして、先ほどの十五年の方の下の方なんですけれども、「特段の事情が認められる場合には、さらに、刑事処分刑事処分以外の措置とを比較考量し、処遇選択を行う」「ただし、その場合でも、法の趣旨を踏まえ、被害者の死という重大な結果を生じた事件であることを念頭に置いた検討が必要である。」こうなっているんですね。  つまり、刑事処分以外の保護処分などにするには特段の事情が必要で、それは極めて限定的だ、そして、その限定的な特段の事情が認められたとしても、被害者の死という重大な結果を念頭に置いた検討を行えというのが、こういう研究会で繰り返し議論をされているわけです。  最高裁にお聞きしますけれども、これが今の死亡事件についての研究ですね。これは、今回、死亡だけじゃなくて、短期一年以上の罪についても広がるということなんですが、これは同じような考え方でやられるのか、それとも異なってくるのか、これはどうなんでしょう。
  237. 手嶋あさみ

    ○手嶋最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  委員指摘のとおり、家庭裁判所調査官を対象といたします研究会におきまして、御紹介のありましたような、二段階の検討を経て判断するという考え方が議論をされたということは承知しておりますが、実務上、特定の確立した方針といったものがあるということではございませんで、裁判官を含む実務家等の論考におきましても、犯行の動機及び態様、犯行後の情況、少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を総合考慮するという考え方や、総合考慮をする中でも犯情の悪質性を重視するといった考え方など、様々な考え方があるところと承知しております。  裁判所としましては、いずれにせよ、このような議論があることを踏まえつつ、引き続き、法の趣旨に即した適切な運用に努めてまいることになるものと考えております。
  238. 藤野保史

    ○藤野委員 いや、何だかよく分からないんですけれども、実際には、こうやって厳しく厳しく、刑事処分以外には行かないようにしているわけですね。  先ほどちょっと気になったのは、与党の議員のときに、刑事局長の答弁で、逆送の数字や割合について答弁されました。ちょっと今いらっしゃらないので大変恐縮なんですけれども、これは、元データは、この黄表紙の百九十ページにあります、いわゆる一般保護事件、総数が出ております。大体同じなんです、先ほどのと。同じ黄表紙の百九十四ページには、送致された数も出ております。これはぴったり一致しているんですね。ですから、これが分母であり分子だと思います。  けれども、一般保護事件というのは、万引きとか、要するに、もう初めから逆送が問題になり得ない、ならないものも含んでいるわけです。それが確かに数千ありますよね。そのうち百あたりが逆送されたというんですが、それが分母でいいのか。  やはり、悩むわけです。先ほど、家裁で議論した、特段の事情があるのかどうかという、これはそれなりに悩むわけです。ですから、本来、逆送率というのは、確かに条文上は死刑懲役又は禁錮ですからいろいろな分母はあり得ると思います、けれども、やはり実務上、その特段の事情をめぐって議論しているわけだし、調査もされているわけですから、本来、そういう悩んだ事案と、そして実際の分子でやるべきだと思うんですが、刑事局長はそういう数字はお持ちですか。
  239. 川原隆司

    川原政府参考人 お答え申し上げます。  私、先ほど、北側委員の御質問に対してでしょうか、数字を御紹介申し上げましたが、その答弁の際申し上げましたように、最高裁判所の資料によって答弁しておりまして、御指摘の数字は持っておりません。
  240. 藤野保史

    ○藤野委員 最高裁はお持ちですか。
  241. 手嶋あさみ

    ○手嶋最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  お尋ねの点につきましては、主として、その判断を担当する者の主観にわたる部分もございまして、そういった関係での統計資料は最高裁の方でも持ち合わせておりません。
  242. 藤野保史

    ○藤野委員 ですから、先ほどの万引きとか入れた一般の総数、総人員で母体にすると一%とかそういうことになるんですけれども、そうではなくて、実際の逆送、例えば死亡事件の中で実際に逆送されたのはどれぐらいなのかとか、重大事件の中での逆送率というのを見ないと、私は実態は分からないというふうに思います。  実態は、先ほど見たように、家裁の研究会でるるこうやって、特段の事情というものが狭く狭く議論されているんですね。これがもし短期一年以上の刑もそのとおりだということになると、本当にどうなっていくのか。先ほど、総合的判断とおっしゃるんだけれども、実際には、こういう議論が、実務が、大臣実務とおっしゃったけれども、実務が積み重ねられているんですよ、こういう形で。  ですから、大臣、お聞きしますけれども、こうした、最高裁も法務省もデータもない下で、実際、短期一年以上に広げた場合、本当の意味での犯罪軽重を踏まえた、あるいは要保護性を踏まえた調査というのはできるんでしょうか。
  243. 上川陽子

    上川国務大臣 ただいまの御質問のベースになる現行少年法規定でございますが、二十条の第二項のただし書に係る事柄であると理解をしているところでありますが、このただし書につきましては、原則逆送の例外を定めるというところでございまして、その趣旨は、重大な事件につきましても、個別の事案に応じた最も適切な処分をするため、家庭裁判所判断によりまして、逆送せずに、保護処分を選択できるようにしたものでございます。  そして、同項のただし書におきましては「調査の結果、」と規定されており、十分な調査が行われるということを前提としております。その趣旨は、十八歳以上の少年に係る原則逆送対象事件についても同様に妥当すると考えられることでございまして、本法律案では、これを、少年法の第六十二条第二項のただし書におきまして、現行法と同様に、「調査の結果、」などと規定した例外規定を設けることとしているところでございます。
  244. 義家弘介

    義家委員長 質問者から挙手が挙がっていますので、おまとめください。
  245. 藤野保史

    ○藤野委員 しかし、実際は、同じ条文で、もう期間も決められているんです。上限も決められているんです。あくまで行為責任範囲内でいかに処遇するかというのが今回の十八、十九歳なんです。これは十七歳はないんですよ。十七歳は期間を決めないんです。送る、保護観察するとか、少年院に、保護処分にするということだけ決めて、どれぐらい時間がかかるかというのは実際にやってみないと分からない。  昨日の参考人も、審判の段階で本当に内省するという子はそんなに多くないと。やはり、信頼できる大人に出会って、そして変わっていくんだというお話もありました。やはり、そこを見てみないと期間は分からないんですね。  けれども、今回は六十四条で期間が決められている。未決勾留期間まで算入できるとされている。要するに、もっと短くできるわけですね、実際の少年の、いる時間を。ですから、全然違います。  もう一つ、調査が同じだとおっしゃいましたけれども、私、レクでお聞きしたら、六十四条の犯情軽重を考慮、どういうふうに考慮するんだと聞いたら、犯罪事実が中心なんですけれども、犯罪事実というのはやはり、家裁調査官は犯罪捜査権がないので、実際には警察の資料とか検察の資料とか、あるいは裁判所が収集した犯罪事実に関する証拠などを見て判断するというふうに説明いただいたんですね。つまり、捜査記録などに依存することが多くなる。  他方、そういう犯情以外の、いわゆる少年の性格、年齢、行状及び環境等については、先ほど見たように、二〇〇七年ので見たように、「犯行動機の形成や犯行態様に深く影響したと認められる範囲で考慮するに止めるべき」、こういうふうに実務でなっているわけですよ。  ですから、今、十分な調査と、それは変わらないとおっしゃったけれども、大きく変わるんですよ、犯情という言葉が入ることによって。文言上は犯情しかないんです、その他の事情なんというのはないんですね。  ですから、今度の保護処分というのは、まさに十七歳までの保護処分とは全く異質なものだと。こういうものを持ち込むことによって、その十七歳も含めた少年法在り方全体がゆがめられる危険が非常に大きくなる、このことを指摘して、質問を終わります。
  246. 義家弘介

    義家委員長 次に、串田誠一君。
  247. 串田誠一

    ○串田委員 日本維新の会の串田誠一です。  まず最初に、この少年法等の改正は、施行期日はいつを考えて出されたんでしょうか。
  248. 川原隆司

    川原政府参考人 令和四年四月一日でございます。
  249. 串田誠一

    ○串田委員 令和四年とおっしゃられたんですよね、令和四年四月一日と。  成年年齢と合わせたということなんだろうと思うんですが、どんなことが想定できるかというと、今、文科省の調査によると、高校進学率が九七%ということで、ほとんどの少年が高校に進学をしているわけでございますが、高校三年生というのが十七歳と十八歳ということになるわけでございまして、早生まれとか遅生まれとかあったと思うんですけれども、私のときも、高校を卒業するとかしないとかというのは大きな区切りだったんですが、高校三年生のときに友達が十八歳になったかならないのかというのは、よほど仲のいい友達でないと誕生日が分からないというようなことがあって、十七歳と十八歳が混在しているのではないかなと思うんですけれども。  先ほど、推知報道というのがありましたので、ちょっとその点、最初にお聞きをしたいと思うんですが、今年の三月二十五日の本会議で、上川法務大臣に本会議場で質問させていただいた中に、共犯率の質問をさせていただきました。一般の成人の共犯と少年の共犯というのは違うのかという質問をさせていただいたときに、一般の共犯率は九・八%、少年のみによる事件の中で共犯による事件の占める比率は二一・二%、倍以上なんですね。  これは、少年特有の、要するに連帯してといいますか、つるんでという言い方もあるかもしれませんけれども、一緒になって犯罪を犯してしまうという傾向が少年のときには特色としてあるのかなと。  その場合に、高校生の場合には同級生同士で事件を起こしてしまうというような場合に、十七歳と十八歳ということで、歴然とした推知報道に差が出るわけでございますが、先ほどから刑事局長が、知る権利というお話がありました。同級生の十八歳だけは推知報道がされる、十七歳の場合はされないという場合に、十八歳の同級生が推知報道されると同級生の十七歳も知られてしまうんじゃないかと。知られない権利というのもあるんじゃないかと思うんですけれども、その点に関してはいかがお考えでしょうか。
  250. 川原隆司

    川原政府参考人 お答え申し上げます。  委員、十八歳、十七歳の共犯事件で、十七歳の者が推知される危険があるのではないかということでお尋ねがございます。  そうしますと、もし、その特定の事柄が十七歳の少年から見て推知事項ということになるのであれば、その十七歳の少年対象として推知報道禁止が働いておりますので、そういった事柄は改正法の後も推知報道禁止対象となり得るものでございます。
  251. 串田誠一

    ○串田委員 今ちょっと条文を見てみると、六十八条にそんな規定は書いてないですよね。何条を前提にして今お答えされたんですか。
  252. 川原隆司

    川原政府参考人 申し訳ございません、委員推知報道禁止とおっしゃったものですので、少年法六十条の推知報道のところで、もし私が途中で何か六十八と聞こえるような言葉を発したとすれば、それは、済みません、条文としては少年法六十条の推知報道の……(串田委員「六十一」と呼ぶ)済みません、六十一条の推知報道禁止のところで言っているものでございます。
  253. 串田誠一

    ○串田委員 ちょっとかみ合っていないと思うんですが、同級生で共犯のときに、十八歳は推知報道がなされることが六十八条で認められるようになったわけですよね。十七歳は現行法上の六十一条でそれはできないとなっているわけですが、同級生で十八歳の人が報道されてしまうと、共犯の十七歳の者も推知されるのではないかと。  先ほどから知る権利というお話をされているので、知られない権利というのが侵されるのではないかというふうに指摘させていただいているんですが、その点についてはどのようにお考えですかという質問です。
  254. 川原隆司

    川原政府参考人 お答え申し上げます。  まず、最初の質問、先ほどもお答えしたことでございます。  少年法六十一条は、その者が当該事件本人であることを推知されることができるような云々かんぬんということですから、十七歳の者が本当に推知されるような事項であるならば、十七歳の者を基準として推知報道禁止が働くところでございます。  ただ、さらに、委員の御指摘は、そういった具体的な推知はされないんだけれども、十七歳の者からして、共犯者の氏名等が報道されると自分も推知されるんじゃないかなという漠然とした話、すなわち、六十一条に該当する話の更にその外の話をしているということになりますれば、これは、例えば二十歳以上の成人少年が共犯を犯した場合に、現在でも二十歳以上の成人については氏名等は報道されるわけでございますので、その問題と共通のものでございまして、今回、十八歳以上の少年が公判請求された場合に推知報道禁止を解除するという問題に特有の問題ではないと考えております。
  255. 串田誠一

    ○串田委員 私、特有の問題として、最初に、共犯率が二倍以上高いと。そして、高校のときには十七歳と十八歳が、高校進学率が九七%ですから、同級生で事件を犯すことも多いのではないかと。  先ほど二十歳以上と未成年者と言われましたけれども、同級生じゃないんですよね。十七歳と十八歳は、同級生だから高校も分かってしまうでしょうと。だから、十七歳が推知されるおそれはあるんじゃないですかという質問をしているんです。
  256. 川原隆司

    川原政府参考人 お答え申し上げます。  その共犯の事案において、共犯者の片方が報道されたからといって直ちに推知されるおそれがあるのかという、ちょっと一般論で申し上げますと、それはまさに十九歳と二十歳であっても、高校ではないですが、例えば大学等の学校で同じグループに属しているなどのこともありまして、繰り返しで申し訳ありません、ちょっと私の説明がうまくないのかもしれませんが、具体的な事柄が、今の先生のあれでいきますと、十八歳になって推知報道が解除された者に関わる具体的な事柄が十七歳の少年にとって推知事項に当たる場合は、十七歳の少年との関係において推知報道禁止が働きますので、そういったことは記事などで公にされることは、この推知報道禁止によって禁止されていると考えます。
  257. 串田誠一

    ○串田委員 そこはちょっと曖昧だなと思うんですけれども。  そもそも論として、現行法の六十一条は極めて珍しい条文だというのを気がついたんですけれども、通常は何々はと主体が書いてあるんですよね。六十一条を見ると、誰がしてはならないのかが書いてないんですよ。これは誰宛てに対して六十一条って設けられているんですか。
  258. 川原隆司

    川原政府参考人 お答え申し上げます。  まさに今委員質問でおっしゃったとおり、六十一条では主体を書いておりません。ということは、主体を制限していないということでございますので、何人に対してもということになります。
  259. 串田誠一

    ○串田委員 ああ、そうなんですね。珍しい規定。何人もって書きますよね、そうしたら主体で。最近、珍しい法律だなと思うんですけれども。  ところで、何か、先ほど寺田委員からも、すばらしい質問で、五十五条というのがありましたが、そういう意味からすると、この六十八条を少し修正することも考えていいのかなと。  というのは、略式命令のときにはこの限りでないとなっているんですね。そうなると、一つ実務的にすごく心配になるのは、推知報道をされると大きなショックを受けますよ、家族も含めて、親戚一同。そういう意味からすると、推知報道されないために、略式命令、本当は正式裁判で争いたくても、推知報道されるがために略式命令を選択する、冤罪であるという可能性があったとしても略式命令を選んでしまうんじゃないかというような危惧を私は感じているんですが、その点について考えたことはありますか。
  260. 川原隆司

    川原政府参考人 本法律案における推知報道に関する改正は、十八歳以上の少年のときに犯した罪により公判請求され、また、略式請求された後に正式裁判となった場合に推知報道禁止を解除するにとどまりまして、実際に報道されるかどうかは報道機関の自律的判断に委ねるものでございますから、もとより、被疑者に略式命令の同意を義務づけるものではなく、また、略式命令された被告人による正式裁判請求を禁止したり、その要件を加重したものではございません。  したがって、被疑者、被告人に対してこれを強制するものではございませんし、委員おっしゃったように、具体的にそういったことをおそれてやるかどうかということでございますが、基本的にはそのようなものはないのではないかと考えるところでございます。
  261. 串田誠一

    ○串田委員 いや、かなり精神的に影響を受けると思いますよ。  それと、今ちょっとよく分からなかったんですけれども、報道機関を制限するものではないという言い方をされましたが、先ほどの答弁は、六十一条は何人もということで、報道機関も制限しているんじゃないんですか。
  262. 川原隆司

    川原政府参考人 申し訳ございません。  ちょっと条文の関係、済みません、私さっき混乱しました現行の六十一条、そして、改正法では六十八条となっているものでございます。  さっき申し上げましたように、その主体は何人もということでございます。その上で、さっき、制限しないというのは、推知報道禁止が解除されたからといって、報道機関は必ず実名報道しなきゃいけないというものではございませんで、どういった場合に報道するかというのは、報道機関の判断に委ねられているところでございまして、この点は、法制審議会議論におきましても、報道機関の代表の方が部会の委員に加わっておりまして、報道機関は、その事案ごとに適切に判断しながら、実名報道等をどうするか考えていくというような御意見もあったところでございます。
  263. 串田誠一

    ○串田委員 ただ、六十一条の現行法は、何人も掲載してはならないということですので、法的拘束力はあるという理解でいいんですか。これも努力規定なんですか。
  264. 川原隆司

    川原政府参考人 お答え申し上げます。  この違反に対する制裁は設けられていないところでございますが、法として法的な拘束力はあると考えているところでございます。
  265. 串田誠一

    ○串田委員 法的拘束力があるということは、掲載してはならないと、特に大手メディアは。掲載してはならないと言っているわけだから、掲載はしないんだろうと思うんですよ。  そうすると、略式命令のときには、この限りではないというわけですから、法的拘束力があって、掲載はしなくなるわけでしょう。だけれども、略式命令を選択しない場合には、報道されるかどうかは報道機関の自由なわけでしょう。  だから、そういう意味からすると、推知されるような報道をされたくないという者は、略式命令を嫌々ながらも選ぶんじゃないですかという質問をしているんですよ。そこは問題提起として思っているんですが。  そういう意味で、この六十八条は、適用しないと断言するのではなくて、略式命令の場合にも、この限りではないというふうになっているので、又は、相当と判断される場合は、この限りではないということで、何か、実務的な現場サイドでうまく運用できないかな、そういうような逃げ場の規定にしておいた方がいいんじゃないかなというふうに思っているんですけれども。  その前提として、六十二条をちょっと御覧いただきたいと思うんですが、必ず逆送というような規定の中で、第二項、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、この限りではないということがあるんですけれども。  先ほどからずっと、ちょっと、例を高校生として挙げているんですが、同級生がやった場合に、共犯ですね、十七歳と十八歳という差別でも、まだ高校生だから独立しているとは言えないと思うんですよね。そこにこんな大きな差が出てしまって、片方が推知報道もされてしまうというようなことである場合には、この六十二条第二項で、「刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、」というものに、共犯が高校生だったりというようなことも考慮することができるのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。
  266. 川原隆司

    川原政府参考人 お答えを申し上げます。  改正法六十二条二項では、原則逆送の例外として、「犯行の動機、態様及び結果、犯行後の情況、特定少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、」として、例外の場合の考慮要素を挙げてございます。  ちょっと委員お尋ねが、共犯が十七歳以下のときはということでございまして、それが、ここに考慮するような要素に関わるものがその中から出てくる場合はそうかもしれませんが、ちょっと一概に、共犯が十七歳だからという抽象的なことだけでここに当たるかどうかというのは、なかなかちょっとお答えしづらいところでございます。
  267. 串田誠一

    ○串田委員 昨日、須藤参考人が、厳罰になると逆効果だという話があったんですが、その理由の中に、少年の場合には被害者意識もあるんだと。  例えば、私も本会議上川法務大臣指摘させていただきましたが、貧困の場合とか、ほかの子供たちと違って自分が非常に悲運な環境下に置かれているということに対する、何かこう、ぐれてしまうとかというのもあるかと思うんですけれども、そういうようなこともあると思うんですが。  その一つの中で、同級生で、片方が十七歳、だけれども、あと一か月もすると十八歳のような十七歳と、誕生日を迎えて僅か十八歳という、本当に一か月、二か月ぐらいの差であるのに雲泥の差で、片や推知報道もされ少年刑務所みたいなところに移る可能性もあり、片や推知報道もされずに少年院になるという大きな差が発生するような場合は、先ほど寺田委員指摘されていましたが、五十五条で同じような処遇をしていくということもあっていいのかなと。  同じことをやっているのに、高校三年生のときに、片方が十七で片方が十八歳だと、手続が急に特定少年という形で変わるというような扱い方をすると、恐らく十八歳の少年の将来も、何でこんなに大きな違いが出てきちゃうんだろうと。片方は推知報道されて家族も親戚もある程度影響を受けるのに対して、片方はそういうこともない。僅か一か月、二か月の、高校三年生の時点でこれだけ大きな差が発生するというのはいかがなものかというようなものも、私は実務で考慮していいんじゃないかと。  第六十二条の第二項には、先ほど「その他」と御指摘いただきましたが、その他の事情というのもあると思うんですけれども、こういったようなものを運用しながらでないと、六十八条の推知報道も、知られない権利というものも奪われてしまうおそれもあるので、こういうものも実務の運用としてあり得るという答弁はいただけますか。
  268. 川原隆司

    川原政府参考人 お答え申し上げます。  先ほど来委員は、高校の同級生だということで十七歳と十八歳の共犯の例を言っておられます。十七歳と十八歳の取扱いの違いというのは、まさに、今回私ども少年法の改正案をお願いしている理由としています公選法あるいは民法の場面でも出てくるものでございます。  同じ高校の同級生でも、ある選挙で投票に行ける者、行けない者、あるいは、同じ同級生であって、たまたま何か高額なものを買った場合に、十七歳であるから未成年者取消権を行使できるけれども、改正民法の下では、十八歳では未成年者取消権を行使できないんだというようなことがあろうかと思います。  おっしゃるとおり、年齢的に近いところにある者がいることは事実でございますが、法制度としてどこに線引きをするかということを考えた場合には、その年齢にあるかないかということで取扱いに差が生ずることは、これはまず前提として致し方のないことであろうと思います。  ただ、一方で、共犯事件という形で、刑事事件という形で少し見てみますと、そういった、二人なのか二人以上なのか分かりませんが、これが犯罪に至った経緯その他の具体的な状況を見まして、十八歳の者につきましても、先ほど来委員が御指摘のような六十二条二項の規定によって、原則逆送の例外にすべきことが相当であるというような事情が認められるならば、それはその適用として原則逆送の例外となることがあり得るかと思います。
  269. 串田誠一

    ○串田委員 あり得るということかなと思うんですけれども、そこら辺はうまく運用していく必要があるかなと思うんですが。  先ほど、一番冒頭で施行期日を聞いたのは、前の委員何人かにも法の整合性というのがありました。成年年齢が十八歳ということになれば、少年法刑事事件手続も変わっていいんじゃないかという、その整合性というのもあるんですが、その整合性を必ずしも同時にしなければならないわけではないのかなと。  例えば、選挙権とか、そんなのもありましたし、今回、民法の契約能力というのもあるとは思うんですが、まだまだ日本が、十八歳で全てがどんどん変わっていくという認識を高校生は持っているだろうかという場合に、契約その他のことに関してと刑事事件手続というのは、いささか、少しハードルが違うんじゃないかなと。必ずしも、この少年法、通る、通らない、これから採決があるんですけれども、少し時間的にずらしてもよかったんじゃないかなと。例えば、来年、成年が十八歳になるということの認識を、十分高校生も知り、同じ同級生でも十七と十八では扱いがかなり違ってくるんだということの周知徹底がもう少し時間的にあっていいんじゃないかなと。  いきなり、成年年齢少年事件年齢とを同じ施行期日にしなければいけないということに対して、私はちょっと疑問を持っているわけですが、その点、ちょっとお考えをいただけないかなと思うんですが、上川大臣、いかがですか、この点に関して。施行期日の一致をする必要があるのかどうか。
  270. 上川陽子

    上川国務大臣 この法律案につきまして、今の段階でお出しをしているこの背景につきましては委員指摘のとおりでございますが、令和四年四月一日からの施行をするというこの前提の中で、同時に行うということを目的としているところでございます。  十八歳、十九歳の少年民法上の成年となることなどを踏まえまして、少年法適用におきましても、その立場に応じた取扱いを定めようとするものであるということでございます。
  271. 串田誠一

    ○串田委員 質問を、六十二条をちょっと見ていただきたいんですが、第二項第一号なんですけれども、この六十二条は、第二十条の規定にかかわらずということなんですけれども、私はこういう資料しかいただけていないので正確に分からないんですけれども、第二十条は何の修正とか削除とかされていないという理解でいいんですか。この白表紙では何もいじくっていないですけれども。
  272. 川原隆司

    川原政府参考人 お答え申し上げます。  二十条の規定については、改正をしておりません。
  273. 串田誠一

    ○串田委員 この白表紙には二十条が書かれていないんですが、二十条第二項には、六十二条第二項一号の、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件にあって、その罪を犯すとき十六歳以上の少年に係るものについては、同項の決定をしなければならないということになっているんですが、この六十二条第二項第一号にもそれが書かれているんですけれども、これはこのままで間違いないということでよろしいんですか。
  274. 川原隆司

    川原政府参考人 お答え申し上げます。  このとおりの改正をお願いしているものでございます。
  275. 串田誠一

    ○串田委員 二十条第二項の十六歳以上の少年の場合には、「ただし、」と書いてあって、刑事処分以外の措置を相当と認めるときはこの限りではないとなっているのですが、重ねて書いてありますよね。そして、六十二条第二項一号には、このただし書がないですよね。  それと、第五章は特定少年特例と書いてありながら、特定少年は十八歳以上の少年をいうと書いてあるのに、十六歳以上の者が書かれているということも、表現としていかがなものかということと、同じような文言が書かれているのに、片方がただし書で片方がただし書でないということは、ちょっと疑問に感じるんですが、これは間違いなくていいんですか。どういうふうに読めばいいんですか、これは。
  276. 川原隆司

    川原政府参考人 お答え申し上げます。  まず、ちょっと二十条の方から申し上げますと、二十条の第一項は、一般の逆送を書いてございまして、二十条の二項が、その罪を犯すとき十六歳以上だった者で、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件を犯した者の原則逆送を定めてございます。  そして、今度、改正法を御覧いただきますと、特定少年に係る例外を定めた第五章の中に六十二条を設けまして、六十二条一項で、家庭裁判所は、特定少年に係る事件については、二十条の規定にかかわらず、調査の結果云々かんぬんということでございまして、特定少年に関しましては、六十二条一項で一般の逆送を定めまして、六十二条の二項で先ほど来御指摘原則逆送を定めているものでございます。  そして、その第一号で「十六歳以上」と書いてございますが、少年法はちょっと、往々にしてというか、なかなか、時々分かりにくくなるんですが、年齢考えるときに、手続時なのか犯行時なのかということでございまして、改正法六十二条一項一号のところを見ていただきますと、その罪を犯すとき十六歳以上の少年ということで、これは犯行時を基準にしております。  ですから、例えば十六歳のときに犯行を犯した者が、その後、例えば犯行が発覚しないあるいは逃げているなどの理由によって、十八歳、十九歳、これは手続年齢でございますので、十八歳、十九歳になって手続に乗ったときはこの規定によって原則逆送になるということでございます。
  277. 串田誠一

    ○串田委員 だってそうなっていますものね。  二十条も「その罪を犯すとき」って書いてあるじゃないですか。六十二条第二項の一号には「その罪を犯すとき」と書いてあって、今の二十条の現行二項も「その罪を犯すとき」って書いてあって、同じことが書いてあって、片方はただし書が書いてあって。
  278. 川原隆司

    川原政府参考人 お答え申し上げます。  六十二条は特定少年の五章にありますので、処分時、手続時が十八歳以上の者はこの六十二条の逆送の規定によって逆送されます。まさに家庭裁判所にかかっているときは、十八歳、十九歳の者についてです。その者が十六歳のときに犯した罪であるならば、処分時が十八、十九ですから、家裁にかかったときが十八、十九ならば、六十二条の二項の一号の規定による逆送の対象となるということでございます。
  279. 串田誠一

    ○串田委員 いやあ、それは驚きだというか、知らなかったですね。十六歳で犯したけれども、手続をするときに十八歳、十九歳の規定だと、こう読むんですか、これ。説明がよく分からなかった。(発言する者あり)
  280. 義家弘介

    義家委員長 御静粛にお願いします。
  281. 川原隆司

    川原政府参考人 お答え申し上げます。  少年法は、先ほど来申し上げましたように、処分時、手続時の年齢を見るものと、それから犯行時の年齢で見るものがありまして、例えば、先ほど来申しますが、少年は全件家裁に送致ということになっておりますが、例えば少年のときに起こした犯行を、成人になって逮捕されて、刑事手続に乗ったときに成人であるならば、これはもう少年法適用の外になって家裁には送られませんので。そういう意味で、処分年齢手続年齢と、犯行時年齢、犯時年齢の違いがございまして、繰り返し申し上げますように、この特定少年に係る手続というのは、少年審判手続の中の特別な規定あるいは少年対象とした少年審判手続に乗った少年のその後の刑事手続等に関する特例でございますので、これは家裁の手続に乗ったときの年齢を見ております。  したがいまして、特定少年というのは、十八歳、十九歳のときに罪を犯した者ではなくて、家裁のといいますか、刑事手続、家裁の手続を含めた広い意味の手続に乗ったときが十八歳、十九歳の者について定めたものでございます。
  282. 串田誠一

    ○串田委員 だけれども、それは犯したときに十六歳なわけでしょう。手続になったときに十八歳だからといって逆送されていくとか、そういう手続にしちゃうんですか。
  283. 川原隆司

    川原政府参考人 済みません。十六歳のときに犯した罪、犯時十六歳といたします。審判のときにまだ十八歳になっていなければ、その者は、二十条二項で原則逆送になります。それが、手続時に十八歳、十九歳になっていれば、六十二条二項で原則逆送となる者になりまして、審判時の年齢が違うからといって、そもそも原則逆送の対象となるのかならないかといったところには、その結論に差はございません。  ただ、そういった原則逆送を規定する条文が何になるのかといったときには、その手続に乗ったときの年齢によって、十七歳までならば二十条の二項、それから、十八歳、十九歳になっていれば、今、提出しております六十二条二項になる、そういうことでございます。
  284. 串田誠一

    ○串田委員 整理しますと、六十二条第二項第一号は、犯すとき十六歳以上の少年で、ただし、今現在は十八歳以上に該当している者というふうに読むんですね。  自覚とか、犯罪行為を起こすときの少年としての思慮分別自体が十六歳のときだというのに対して、一般の大人と同じような刑事手続に、審判をするときに、遅れているというか、先になるとその手続になるというのは、合理性があると思ってこういう規定になっているんですか。
  285. 川原隆司

    川原政府参考人 済みません。私の説明が舌足らずなのかもしれません。  ちょっと申し上げますと、犯時十六歳以上の者が故意の犯罪行為によって人を刺した罪を犯したときは、これは、現行少年法でも、十六歳以上の少年は全て原則逆送の対象となります。これは、十六歳であっても十七歳であっても十八歳であっても十九歳であっても一緒でございます。  今度、六十二条二項というのは、一番の主眼は、先ほど来御議論いただいていますとおり、六十二条二項の二号でございまして、原則逆送の対象に六十二条二項の二号を加えるというものでございます。これは、ここが原則逆送の対象が広がるものでございまして、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪というのは、これは、現行法、繰り返しになりますが、十六歳以上の者は原則逆送の対象となっておりますので、今回の改正によっても、それが原則逆送の対象となるかどうかというのは変わらないところでございます。  その上で、条文の規定をどう組むかという法制上の観点で、先ほども、午前中御答弁させていただいたと記憶しておりますが、特定少年に係る特例は全て第五章にまとめようということになりましたので、ちょっと、イメージ的な説明で恐縮でございますが、二十条二項に含まれていた十八、十九の部分が、この六十二条二項一号に条文の位置として移った形で定められているということでございまして、その事件に対する取扱いがこの改正の前後で変わるというものではございません。
  286. 串田誠一

    ○串田委員 重ねて誤解を招くような気はするんですが。  ちょっと今まとめると、二十条第二項のこの「十六歳以上の少年に係るものについては、」以降にただし書が書いてありますけれども、六十二条第二項一号にはただし書が書いてないんですが、その代わり、六十二条第二項の中にただし書が書いてあるので、前に出ている、そういう理解になるんですかね。
  287. 川原隆司

    川原政府参考人 お答えを申し上げます。  委員指摘のとおり、現行の二十条二項は書き下す形でただし書が書いてありますが、六十二条二項は、一号、二号という形で、先ほど来御説明申し上げておりますように、従来の原則逆送の対象であった故意の犯罪行為云々のものを一号、それから、新たに原則逆送の対象と加える法定刑に着眼したものを二号としております。  こういう定め方をしたものですから、六十二条二項の柱書きに二十条二項に書いてあったただし書を持ってきて、六十二条二項の一号、二号いずれについてもこういったただし書の適用があるんだという形を示すために、法制上、このような条文になっているものでございます。
  288. 串田誠一

    ○串田委員 そうしますと、二十条第二項を削除してもよかったんじゃないですか。
  289. 川原隆司

    川原政府参考人 お答えを申し上げます。  六十二条は、先ほど来申し上げておりますように、第五章、特定少年特例のところにございますので、審判時十八歳、十九歳の者について適用されます。  ところが、二十条二項の規定は、犯時十六歳以上の者ですから、審判時に十六歳、十七歳の者に適用されますので、二十条二項を削除してしまって六十二条二項だけにいたしますと、審判時十六歳、十七歳の者について原則逆送規定を削除する結果になってしまいますので、十六歳、十七歳の者、すなわち、特定少年でない少年については、現行規定によって逆送あるいは原則逆送が規律されるという形の条文となっているものでございます。
  290. 串田誠一

    ○串田委員 まとめますと、六十二条第二項第一号は、十六歳以上の少年で、現在、特定少年にある者、こういうふうに書いてあると分かりやすかったかもしれませんが。  まだたくさん質問を作っていたんですが、質問時間が終わってしまいました。ありがとうございました。
  291. 義家弘介

    義家委員長 次回は、来る九日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十七分散会