○松平
委員 事前のレクよりもかなり積極的に、これからも議論が出てくる、重要なところであるというところをおっしゃっていただいたのを本当にありがたく
思います。
この点に関して、私なりの意見を申させていただきますと、法制
審議会の幹事まで務められた松尾弘教授も、法学セミナーの二〇一九年の十月号でコメントをしていらっしゃるんですけれども、
土地所有権の放棄をめぐって争われた裁判例で、
土地所有権の放棄を一般論としては認めるというふうにおっしゃられて、ただ、個別の、個々の事案において、事実認定として放棄を否定したり、権利濫用などを理由に無効であると
効果を否定している例があるというふうにおっしゃられているんです。つまり、結構裁判例もあって、放棄を一般的には認めている、そういったものが多いということなんです。
更に言うと、
土地所有権放棄を認めるのは、私としては、これは今の
民法の法体系とも整合的だと思っています。
民法二百八十七条にも、
土地所有権の放棄を
部分的に認める
条文があります。承役地の
所有者は、いつでも、地役権に必要な
土地の
部分の
所有権を放棄し地役権者に
移転し、というふうにあります。
日本の
民法、これはドイツ法、フランス法を参考にしています。このドイツ法、フランス法でも、やはり
所有権の放棄を認めているんです。
ドイツの
民法九百二十八条一項は、
土地の
所有権は、
所有者が放棄の意思を
土地登記所に対して表示し、かつ、この放棄が
土地登記簿に
登記されることによって放棄することができるというふうに言っています。
あと、フランスでも、フランス
民法五百四十四条、
所有権は、
法律又は規則が禁ずる行使をしない限り、最も絶対的な
方法で物を享受し
処分する権利であると。そこで、
処分として
所有権の放棄も可能であるというふうに解釈しており、実際
所有権放棄が認められた例もあるということです。
更に言うと、やはり、放棄を認める実際上の実益もあります。
先週金曜日の
参考人質疑で、石田
参考人、今回の
国庫帰属制度は、受皿が国というたてつけにしたから要件が厳しく、プラス財産があるときにしか使えません、その上で、方向性としては、市町村や関係団体に再生プランを作って引き継がせる方がいい、そういう
仕組みを前提に
土地の
所有権放棄の政策を考え直してほしいというふうに御意見をいただきました。本当にそのとおりで、私も、ここは
所有権の放棄を正面から認めて、市町村であるとかランドバンクであるとかそういったところに引き継がせて、不要な
土地を有効活用する、そういった道を開くべきだと思っています。
先ほども紹介ありましたけれども、法制審の議論でも、放棄を認めて、放棄された
土地の
帰属先として、地域コミュニティーであるとかまちづくり団体であるとかに、希望する場合に優先的な
帰属を認めるという案も出ていたというふうに承知しています。
この点、啓蒙思想家のジョン・ロック、
所有権の絶対性というものを述べています。財物について、放棄も含めてどのような
処分をするかは、本来、
所有者の自由である権利なのです。人間の自然権、基本的人権なのです。
私は、今回の
国庫帰属の
手続ができたことで、この
土地所有権の放棄の議論が後退してしまうということを懸念しています。実際に、先ほど答弁でもおっしゃられましたけれども、放棄できないことに親和性だ、こういう考え方には私はならないと
思いますし、あってはならないと思っています。
大臣、この議論も踏まえて、不要な
土地の有効
利用という観点からも、積極的な御意見を最後にいただければというふうに
思います。いかがでしょうか。