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2021-04-14 第204回国会 衆議院 外務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    令和三年四月十四日(水曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 あべ 俊子君    理事 伊藤信太郎君 理事 鈴木 貴子君    理事 鈴木 憲和君 理事 辻  清人君    理事 中根 一幸君 理事 阿久津幸彦君    理事 小熊 慎司君 理事 佐藤 茂樹君       秋本 真利君    今枝宗一郎君       尾身 朝子君    城内  実君       黄川田仁志君    國場幸之助君       新藤 義孝君    鈴木 隼人君       薗浦健太郎君    高木  啓君       中曽根康隆君    中谷 真一君       原田 憲治君    穂坂  泰君       松島みどり君    簗  和生君       青山 大人君    岡田 克也君       緑川 貴士君    山川百合子君       渡辺  周君    國重  徹君       穀田 恵二君    田村 貴昭君       浦野 靖人君    山尾志桜里君     …………………………………    外務大臣         茂木 敏充君    外務大臣        鷲尾英一郎君    外務大臣        宇都 隆史君    経済産業大臣      長坂 康正君    内閣大臣政務官     和田 義明君    外務大臣政務官      國場幸之助君    外務大臣政務官      鈴木 隼人君    外務大臣政務官      中西  哲君    政府参考人    (内閣官房内閣審議官)  安東  隆君    政府参考人    (内閣沖縄振興局長)  原  宏彰君    政府参考人    (金融庁総合政策局参事官)            井上 俊剛君    政府参考人    (外務省大臣官房審議官) 赤堀  毅君    政府参考人    (外務省大臣官房審議官) 曽根 健孝君    政府参考人    (外務省大臣官房参事官) 有馬  裕君    政府参考人    (外務省大臣官房参事官) 原  圭一君    政府参考人    (外務省大臣官房参事官) 御巫 智洋君    政府参考人    (外務省総合外交政策局長)            山田 重夫君    政府参考人    (外務省アジア大洋局南部アジア部長)      小林 賢一君    政府参考人    (外務省経済局長)    四方 敬之君    政府参考人    (農林水産省大臣官房輸出促進審議官)       池山 成俊君    政府参考人    (経済産業省大臣官房審議官)           田村 暁彦君    政府参考人    (経済産業省大臣官房審議官)           渡邉 洋一君    政府参考人    (経済産業省大臣官房審議官)           三浦 章豪君    政府参考人    (防衛省人事教育局長)  川崎 方啓君    参考人    (学習院大学国際社会科学部教授)         伊藤 元重君    参考人    (日本貿易振興機構アジア経済研究所主任研究員)  浜中慎太郎君    参考人    (東京大学大学院教授)  鈴木 宣弘君    外務委員会専門員     小林 扶次君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十四日  辞任         補欠選任   小田原 潔君     穂坂  泰君   新藤 義孝君     原田 憲治君   竹内  譲君     國重  徹君   穀田 恵二君     田村 貴昭君 同日  辞任         補欠選任   原田 憲治君     新藤 義孝君   穂坂  泰君     高木  啓君   國重  徹君     竹内  譲君   田村 貴昭君     穀田 恵二君 同日  辞任         補欠選任   高木  啓君     今枝宗一郎君 同日  辞任         補欠選任   今枝宗一郎君     秋本 真利君 同日  辞任         補欠選任   秋本 真利君     小田原 潔君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  地域的な包括的経済連携協定締結について承認を求めるの件(条約第一号)      ――――◇―――――
  2. あべ俊子

    ○あべ委員長 これより会議を開きます。  地域的な包括的経済連携協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  本日は、本件審査のため、参考人といたしまして、学習院大学国際社会科学部教授伊藤元重君、日本貿易振興機構アジア経済研究所主任研究員浜中慎太郎君、東京大学大学院教授鈴木宣弘君、以上三名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにしております。  この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。参考人各位には、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。  まず、伊藤参考人浜中参考人鈴木参考人の順に、お一人十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと思います。  なお、発言する際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、参考人委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。  それでは、最初伊藤参考人にお願いいたします。
  3. 伊藤元重

    伊藤参考人 学習院大学伊藤でございます。よろしくお願いします。  十分ということでございますので、お手元に、今日お話をする簡単なポイントだけまとめてございます。私、専門が元々国際経済学でございますから、その視点から主にお話をさせていただきたいと思います。  最初に書いてあることは、通商政策とか、あるいは通商戦略もそうなんでしょうけれども、これは行き当たりばったりでやることではなくて、当たり前の話なんですけれども、十年、二十年、場合によっては五十年という大きな体系の中でやはり進めていかなきゃいけないという問題でございまして、したがいまして、一方では、現実経済がどう動いているかということに対応するためにいろいろなことが必要でありますし、他方で、こういういろいろな政策を進めることによって経済を動かしていくという面もあるんだろうと思います。  ここに四つのアプローチと書いてございます。皆さん、釈迦に説法でございますけれども、WTOのようなマルチの場と、それから、今回話題になっているようないわゆるリージョナル、地域の場と、それから、日米だとかあるいは日・シンガポールだとか、二国間のいろいろな取組と、それから、日本が独自に、ユニラテラルに自由化するということもいろいろな分野であると思いますけれども、この四つが組み合わされてきて、そのどれも恐らく欠かすことができない駒だろうと思います。  ただ、難しいのは、時代によって、非常に機能が低下する面と、機能が非常に期待される部分の濃淡が出てくる。例えば、日米貿易摩擦で何十年と日本は苦しんできたわけですけれども、この時期には、どちらかというと現実に対する対応という面があるんですけれども、二国間の協定が非常に重要になってきているわけですし、あるいは、もう少し前の、いわゆるガットの全盛期であれば、マルチだろうと思うんです。  御案内のように、残念ながら、この二十年ぐらい、WTOを通じたマルチ部分が、機能が非常に弱まっている。もちろん、これをしっかり強化するということは非常に重要なんですけれども、それと同時に、それを補完するという役割がいわゆる経済連携協定に期待されてきているわけです。  ただ、御案内のように、これも、経済連携協定日本シンガポールと今世紀初めぐらいに結んだわけですけれども、ほとんどが二国間の協定でございまして、しかも、ちょっと言葉を選ばなくてはいけないのかもしれませんけれども、難しい相手とはやってこなかった。例えば、そこに書いてあるように、アメリカとかカナダとか豪州とかニュージーランド、こういうところは農業が非常に強い生産国で、これはなかなか日本にとってみるとハードルが高いですし、それから、中国韓国は、近隣にあるということもあるものですから、貿易額投資は非常に多いにもかかわらず、やらなかった。  ただ、ここに来て、特にTPP日本交渉を決めてからは、今並べた国の前半の方の国々と結ぶような結果になりましたし、今回のRCEPの場合には中国韓国が入ってきているというところが非常に大きな特徴なのかもしれません。そこが、当然、賛成、反対、いろいろな議論があるんだろうと思います。  TPPとかあるいはRCEPとか、経済連携協定というのはWTOと少し違うのは、WTOというのは上から全体で交渉して仕組みを提供する枠、まさに多国間協定なんですけれども、経済協定というのは下から積み上げていくわけです。  日本は、御案内のように、最初日本シンガポールとか日本・メキシコとかいうところから積み上げてきたわけで、そのときに非常に重要なのは、ビルディングブロックという考え方、つまり、これはその次のステージに行くためにも重要なステップであるという視点が重要で、今回、TPPを結んだ上でなぜRCEPをやらなきゃいけないのかというような議論も当然あるだろうと思いますけれども、これは長い目で見たときに、こういう形でいわゆる経済連携の輪を広げていくということは非常に重要な話になると思います。今日この話はしませんけれども、TPP交渉がまとまった後、EUとの経済連携協定にも弾みがついたように、個々の交渉というのはそういう連関があるということだと思います。  そういう中で、RCEP特徴は、いわゆるスーパーリージョナル協定である、非常に多くの国が出てくる。  御存じのように、ASEAN人たちと話すと、自分たちアジア経済連携協定のドライビングシートに乗っているんだ、つまり、自分たちリーダーシップを取ってアジア経済連携協定を結んでいきたいということを、よく学者の仲間では、もう十年も二十年も前から話を聞いたわけですけれども。  そういう中で、スーパーリージョナルになることの重要性は何かというと、やはり国際取引あるいは国際関係というのが、二国では完結しないようなケースになってきている。いろいろな国の間を部品が動くということもありますし、あるいは、企業自身が多数のアジアの国の中に拠点をそれぞれ持って、我々の言葉を使うと、国境を越えた分業が進んできている。  しかも、その分業というのは、単に物が取引されているだけではなくて、企業拠点をあちこちに設けて、同時に、人が動く、これは単に日本の人が行くというだけではなくて、現地の人も日本との間でいろいろな形で技術等のインタラクションがある、そして投資も進むという形になってくると、人、物、金、あるいは投資、そういうものを統合的にしたときに、どういう形でその地域フレームワークをつくっていったらいいだろうかということになってくると、このスーパーリージョナルの枠組みというのが非常に重要になってくるだろうというふうに思います。  もう一つ、是非申し上げたいのは、WTOというのは非常に大事な仕組みで、これは是非しっかり強化しなきゃいけないんですけれども、ただ、多様なバックグラウンド、例えば先進国途上国とか、農業国工業国とか、あるいは人口の大きい国とそうではない国とか、いろいろな国が集まって、あれだけの大きな参加者の中で合意を得るのは非常に難しい部分があると思います。  そういう意味で、WTOとかその前身のガットというのは、比較的、多国間で合意がしやすいテーマに絞って議論をしてきた面があるわけですね。非常に乱暴に言ってしまえば、関税の引下げというところに非常にウェートが多かった。  それはそれで非常に大事だと思うんですけれども、現実経済の場合には、国境を越えていろいろなものが関連しているわけで、我々の世界では、それはディーパーインテグレーション、より深い統合というふうに申し上げるんですけれども、単に物が取引されるだけではなくて、例えばサービスですとか、あるいは競争政策ですとか、あるいは金融ですとか、あるいは知的財産だとか、あるいはデジタルだとか、いろいろな問題が出てきていて、残念ながら、これはなかなか今の段階では十分な解決というのはないわけですけれども、しかし、そういうものに取り組んでいくという中で考えたときに、このスーパーリージョナル、先ほどのTPPとかRCEPとかEUとの経済連携協定とか、こういうものを足がかりにしていくということが非常に重要なんだろうと思います。  そういう意味では、御案内のように、このRCEPも随分昔からずっと議論をされてきたんですけれども、今ここで国会の審議のところまで来たということでは非常に重要なタイミングだと思いますので、是非慎重な議論をしていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。(拍手)
  4. あべ俊子

    ○あべ委員長 ありがとうございました。  次に、浜中参考人にお願いいたします。
  5. 浜中慎太郎

    浜中参考人 おはようございます。アジア経済研究所浜中慎太郎と申します。  本日は、衆議院外務委員会の場でRCEPについて意見を述べるという大変光栄な機会をいただき、非常に喜ばしく思っております。  最初に一点申し上げなくてはいけないことがあるんですが、それは、本日私がこの場で申し上げる意見というのは、私の個人的な意見でありまして、私が属する組織の見解とは必ずしも一致するものではないということであります。  それで、早速ですが、本題に入りますけれども、私の今日お話しすることの一つ大前提があります。それは、関税交渉関税というのは、FTARCEPを含むFTAの大きなパッケージの一つ側面にすぎないということであります。  当然、関税効果はあります。いろいろな経済モデルを回してみたりすると、恐らく日本には相対的に大きい影響が来る、プラスの影響があるというふうになることは間違いないと思います。これはある意味当然のことでありまして、RCEPのメンバーのうち、今、FTA主要国で欠けているのが日中、日韓ということになります。では、この日中、日韓RCEPによってカバーされることによって日本に相対的な大きな影響が出るということは、ちょっと裏返して言うと、日本周辺諸国と比べてFTA外交で乗り遅れていたという事実を反映しているにすぎないわけだから、当たり前のことであります。  それから、日中の間貿易が大きく増えるのは、これは事実なんですけれども、相対的に日本への影響が大きくなる、これは相対的に日本経済が巨大化していく中国経済と比べて縮小しているということなので、これもある意味当然のことだと思います。なので、経済的なインパクトが日本に相対的に大きいという事実をもって、交渉をうまくやったということには必ずしもつながらないんだというところは注意して見ていく必要があると思います。  私が思うのは、やはり関税だけじゃなくて、ルールというのが非常に今後重要になっていくと思います。日本政府は常にルール・ベースド・オーダー、ルールに基づく統治、秩序が重要だということを言っております。これは南シナ海を含む安全保障分野でも当然なんですけれども、国際経済分野においても、このルールというのが今後一層重要になっていくと思います。  そういう意味で考えていくと、ルールというものと関税というものの両方があって、もし仮に関税部分日本が若干得をしているのであれば、裏返して言うと、ルール部分で若干損しているかもしれないなというぐらい注意して、ルール交渉というふうにRCEPを見ていく、FTA全体を見ていくということが必要なのかもしれないというふうに思っております。  二〇二〇年というのは、私は非常に大きな世界史的なターニングポイントの年になったのではないかというふうに思っております。これは、当然、コロナのパンデミックがあったということもそうなんですけれども、やはりアジアRCEPというルールによってカバーされたということは非常に重要だと思います。  我々は、近い将来、非常に重要な問題に直面すると思います。RCEPルールであるということで、非常に重要な問題、すなわち、近い将来、RCEPのメンバーシップがいずれ拡大していくと思います。これに対して日本がどういうふうに対応していくのかということであります。  RCEPというのは、本当に日本にとって望ましいルールなんでしょうか。もし仮にそうだとするならば、私は、もう今後のFTA交渉というのはRCEPひな形にやっていく、アジアの多くの国で合意したルールなら、これをひな形にやっていく、そのぐらいの心構えでいいと思います。  もし仮にそれができないんだとすれば、なぜでしょうか。やはりRCEPルールに若干不満があるんじゃないでしょうか。だとしたら、その点はやはりちゃんと我々は認識するべきだと思っています。  それで、RCEPは、後ほどお話ししますけれども、若干やはり中国意向が強く反映されているルールであるということは否定できないと思います。今後我々が直面しなくちゃいけないのは、RCEPルール世界中に拡散させていくのか、あるいはTPPルール世界中に拡散させていくのか、こういう非常に重要な問題で、ここを日本は考えなくちゃいけない。  仮に、RCEPに入ろうと思っているんだけれどもと特定の国が日本に相談を持ちかけたときに、日本も、よし、RCEPに入ってくれと言うのか、あるいは、ううん、もっと頑張ってやはりTPPに入った方がいいんじゃないかという逆提案をするということもあるわけで、そういうことについても、今、日本は考えていかなくちゃいけない時期にかかっていると思います。  RCEP成果についての評価なんですけれども、ルールという観点では、ある程度の成果があるのは事実でございます。サービス投資知的財産権政府調達電子商取引、こういう分野で、ある程度のルールメイキングというのはできております。  ただ一方、やはり不十分な点もありまして、例えば投資の場合、いわゆるISDSというのが入っていません。ISDSというのは、日本企業外国投資した場合に、外国政府政策を変更することによって投資効果が見込めなくなった場合に外国政府に補償を求めるというような国際的なメカニズムなんですけれども、これが抜け落ちております。TPPには入っておりますし、日本が今まで締結してきた主要なFTAには入っております。これは、私の見るところ、やはり中国がなかなかのみ込んでくれなかったということであります。  それから、電子商取引分野においても、ある程度のルールができてはいますけれども、非常に重要な点で、これがディスピュート・セトルメント紛争処理には使えないということになっております。これは、例えると、画竜点睛を欠くといいますか、国内法で言うならば、法律は作ったけれども裁判所はない、そういうような状況でありまして、これは非常に私は憂慮する状況だと思います。  例えて言うならば、だから、ある程度のルールはあるんだけれども、完璧ではない。ワインのボトルに半分ワインは入っている、半分空になっている、これをハーフエンプティーと言うのかハーフフルと言うかという問題で、ハーフフルだと言うのはいいんです。ただ、ハーフフルだからいいんだとそこで終わっては駄目なので、ではどうやってフルに持っていくんだということを我々としては考えていかなくちゃいけない。  例えば、ISDSの場合は、二年以内に再交渉するということになっております。それから、電子商取引ディスピュート・セトルメントについても、いずれのタイミングかでもう一度交渉するということになっています。日本には、こういう再交渉の場を利用して、こんなもの、仮に両方とも取れないんだったら日本RCEPから出ていくよ、そのくらいの強い立場交渉を進めていくということが私は必要だと思っております。  それから次に、プロセスについて述べたいことがあります。プロセス、いわゆる主導権をどこの国が持っていたということであります。  よく、日本が実はRCEP主導権を持っていたというような話を聞く機会があります。そういう場合は、大体、話では、電子商取引の場で、二〇一七年の四月にASEAN関係閣僚が和歌山に来た際に根回しをして、翌月の二〇一七年五月のRCEP閣僚会議で、日本RCEP電子商取引を入れるべきだと提案する。これに対して、中国がそんな話は聞いていないということになったけれども、事前に根回しをしていた例えばベトナム等の支援を得て、結局日本主張が通った。これをもって日本主導権日本主導でやったというような議論があると思います。  でも、最終的には、先ほど述べましたように、ルール自体中国意向をかなり強く反映したということで、だんだん主導権中国に移っていったんだという評価ができます。  私がここで言いたいのは、中国主導権を取っているからけしからぬということではないんです。日本はそろそろ主導権という考え方をやめませんか。ちょっと悪い言い方をすると、やはり主導権ごっこというものに陥っているという側面がどうしてもあると思います。日本がやらなくちゃいけないのは、やはりリーダーシップを発揮することだと思います。  中国を排除した場で根回しをして、中国に聞いていないよと言われて、でも、日本がその主張を押し切る、これを中立な第三国が見たらどう思うでしょうか。日本はすばらしいことをやった、日本はすばらしい国だと思うでしょうか。私は個人的には思いません。だから、そういう意味では、本当の意味でのリーダーシップ日本に発揮してもらいたいというふうに思います。  それから、もう一つ関連することなんですけれども、存在感という概念があります。これも先ほどの主導権と一緒で非常に日本的で、日本交渉する場合は、交渉において存在感を示すというのがよくあります。でも、実質的には、存在感のある国が交渉に招かれて、交渉の場において意見を聞いてもらえるわけです。  では、存在感のある国は何なんだ。いろいろな要素があるんですけれども、私が一つ非常に重要だと思っているのは、明確なポジションを持っているということだと思います。日本は、一部の分野においては非常に明確なポジションを持っています。例えば農業の米の問題、漁業、捕鯨の問題、こういうところでは日本は非常に明確なポジションを持っているので、いや応なしにも国際交渉でスポットが当たって、日本が明確に、いろいろな、ある程度の影響力を発揮することがある、ネガティブ、ポジティブ、分かれ目がある。  それに対して、今私が申し上げた投資電子商取引日本に明確なポジションはあるでしょうか。私が思うに、中国は明確にあったと思います。日本はなかったんじゃないのかという疑問を私は持っています。  そういうことがあるんですけれども、では、そうすると、最終的に大きな問題として考えなくちゃいけないのは、どういうふうに交渉に取り組んでいくのか。新しい交渉もありますし、次の再交渉もあるんですけれども、それをどうやっていくんだということなんです。  私は、中国と張り合っていくということではないと思います。今回、中国は、やはりある程度自分たちリーダーシップをうまく発揮した。それはもう認識した上で、日本としては、やはりオール・ジャパンで、どういう国際経済ルール日本にとって望ましいのか、世界にとって望ましいのかということを、やはり産官学、市民グループを交えてちゃんと議論した方がいいと思います。日本にとっていいルールが必ずしも世界にとっていいルールではないこともあると思います。そこは、ではどっちを優先するんだということをやはり日本は考えていかなくちゃいけない。  私が強調したいのは、日本国内の交渉ですらまとめられないのであれば、世界的な交渉をまとめる、引っ張っていくのは無理です。なので、日本国内の交渉を避けて、国際的な交渉で何かうまくやろうというのは無理なんじゃないかというふうに思います。  もう時間もほとんどないので、最後、一点あるんですけれども、今回のRCEP交渉を見ると、明らかにやはり情報が不足していて、不透明な中で行われたということがあると思います。  守秘義務がある、これはもうしようがないんだと思うんですけれども、前回のTPPのときと比べても、やはり明らかに透明性が欠けていたと思います。この点について、どういうことがあったのかというようなことをやはり解明して、今後の交渉に役立てていくということが必要なんじゃないのかというふうに思っております。  以上で終わります。ありがとうございました。
  6. あべ俊子

    ○あべ委員長 ありがとうございました。  次に、鈴木参考人にお願いいたします。
  7. 鈴木宣弘

    鈴木参考人 東京大学の鈴木でございます。  本日は、このような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。  私の方からは、「RCEPで誰が得て、誰が失うか」というペーパーに基づいて、お話しさせていただきます。  私の研究室でも、RCEP経済影響について、政府と同じGTAPモデルを用いて、緊急に暫定試算を行いました。その結果、いろいろな特徴が見えてまいりました。  まず、物品貿易でございますが、日本ASEANなどの犠牲の上に利益を得る構造という点が一つのポイントであります。  表の一のとおり、日本のGDP増加率は二・九五%と突出して大きく、中国韓国もGDPは伸びますが僅か、ASEAN諸国とオセアニアに至ってはマイナス、GDPが減少します。つまり、物品貿易について、言うならば、中国独り勝ちというような状況ではなく、むしろ日本の独り勝ちという状況になっているということでございます。  次のポイントは、一つ表を飛ばしまして、表の三でございます、二ページ。  日本全体の利益が大きいというわけではなくて、利益が大きいのは自動車で、農業では大変な打撃が出る。つまり、自動車独り勝ちで農業独り負けの状態に近いということでございます。  確かに、日本の農産物の関税撤廃率は、TPPと比べても六割程度ということで、日本が目指したTPP水準は実現できませんでした。しかし、それでも農業生産の減少額は五千六百億円に上り、TPP11の半分程度とはいえ、大変な損失です。しかも、RCEPの場合は、青果物が八百六十億円の損失と農業部門内で最も大きく、TPP11の三・五倍にもなっております。これは九日の審議議論になった点ですが、これが数字で見える化された形になっているということでございます。  次に、表の三でもう一つのポイントは、政府試算の農業生産量の変化がプラス・マイナス・ゼロになっているということでございます。  これは、関税撤廃が行われても、それによる生産量の減少がちょうど相殺されるように生産性が向上する、そういう手当てをするというメカニズムが組み込まれているからでございます。要は、影響がないように対策するから影響がないという影響試算であって、これは影響試算ではないということは認識しておく必要があるということであります。  次に、五番目の点ですが、農業を犠牲にして自動車が利益を得る構造、三ページですね。  先ほど申し上げましたとおり、農業での被害は非常に大きい、一方で、自動車分野の生産額の増加は三兆円にも及びます。このことが、つまり、農業がある意味差し出される形で自動車で利益を得ていくという、これまでの日本貿易自由化の基本構造というものを指摘してきたわけですが、それが見える化された形になっております。  私は、これまで、日韓、日中韓始め、たくさんのFTAの事前交渉に参加してまいりました。その中でも、物品で一番問題になったのは自動車で、最後まで自動車がもめました。日本は徹底的に関税撤廃を求め、それに対して相手国が抵抗するという構図でありました。  次に、物品以外の問題ですが、次のポイントは、各国の市民、農民の猛反発が起こったということ。これは、日本提案が問題があるということの証左ではないかという視点を持つべきではないかということでございます。  例えば、ISDS条項につきましては、TPPでも、アメリカと日本が一生懸命入れようとしました。このとき、国内では、ISDSを懸念する人たちに対して、根拠がないことで人々を不安にするTPPお化けだとまで言われたわけですが、今、ISDSが国際的にどういう状況になっているか。EUは、ISDSは死んだものだと断言しております。日本が追従したアメリカでさえ、ISDSの入っているような貿易協定にはアメリカは参加しないとバイデン大統領が明言しているという状況になっている。それなのに、日本は、RCEP韓国とともにISDSを組み込もうとしたわけです。  さらに、薬や種に関連した知財権の強化も日韓が強く求め、各国の市民、農民から猛反発が起こりました。それでも、種苗の育成者権を強化し、農家の自家増殖の権利を制約する方向に誘導する協力ということは明記されてしまっておりますが、日韓が求めた知財権の強化の義務としての水準は実現できなかったわけであります。こういうことからも、企業利益の追求と、それが人々を苦しめるのではないかという視点日本の要求をトーンダウンせざるを得なかったことの意味を重く受け止める必要があるんじゃないか。  特に、薬も種もそうですが、人の命を守る共有財産です。ジェネリック医薬品が作れなくなったら、人の命は守れません。命を救うのが薬の役割ではないでしょうか。  種を握られたら、食料が作れません。種は、何千年もかけてみんなで守ってきた共有財産。それに対して、一部の企業がちょっと遺伝子操作をして、フリーライドして独占的にもうけの道具にするという方向性がよいのでしょうか。自家増殖は守られるべき農民の権利ではないか。それを剥奪しようとしたから、RCEPでは大変な抵抗が起きたわけです。こういうことは、日本のやろうとしていることに問題があるのではないかという証左であります。  それなのに、日本国内では、既に農家の自家増殖の制限を種苗法の改定でやってしまったわけです。こう考えると、日本における種苗法の改定の問題もよりクリアになります。世界の農民、市民が猛反発したことを、日本の国内ではもうやってしまったということになるわけです。  最後に、これ以上加害者になってはいけないのではないかという視点を申し上げたいと思います。  今こそ、日本世界の市民、農民の声に耳を傾け、今だけ、金だけ、自分だけの企業利益追求のために、国内の農家や国民を犠牲にしたり、途上国の人々を苦しめるような交渉には終止符を打つ必要があるのではないか。  保護主義対自由貿易とよく言いますが、実際には、市民の命、権利、生活を守るか、ごく一部企業の利益を増やすかという対立になってしまってはいないかということでございます。自由貿易を錦の御旗にして、これ以上、市民の命、権利と、企業利益のバランスを崩してはいけないのではないか。これ以上、日本政府企業が、アジアの国々を中心に、加害者になってはいけない。そういう視点を十分に考慮すべきではないかということを申し上げまして、私の意見陳述とさせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)
  8. あべ俊子

    ○あべ委員長 ありがとうございました。  これにて参考人の方々の意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  9. あべ俊子

    ○あべ委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申出がありますので、順次これを許します。鈴木憲和君。
  10. 鈴木憲和

    鈴木(憲)委員 自由民主党の鈴木憲和です。  本日は、伊藤先生、そして浜中先生、鈴木先生、それぞれのお立場から貴重な御意見をありがとうございました。  いろいろ心に響く部分もありましたが、今日、時間も限られておりますので、二点だけお伺いさせていただければというふうに思います。  まず、伊藤先生にお伺いをします。  私自身、このRCEP協定、大変有意義だというふうに思っています。これは、もちろん、ルール分野でとか様々なことを言われますが、何よりも、この協定締結する、前に進むことによって、日本にとっては、TPP11と、そして日・EU・EPA、そして日米貿易協定、これら全部合わせると、アフリカ、ロシア、南米の一部を除く世界のほとんどの国々と、共通のルールに基づいて、もちろんそれぞれの協定ルールが多少違いますが、それでも一定のルールに基づいて取引ができる国というふうになることができると思います。  この意味でいうと、日本のプレゼンスというのは、私は相当上がってくるんじゃないかというふうに思っていますが、この点について、長い目で見たときに伊藤先生はどのようにお考えかというのをお伺いをしたいのと、あともう一点、今日、鈴木先生の方から、RCEPによると、各国、勝ち負けみたいなことが出てきちゃうんだというお話がありました。  これは大変実は大切な私は指摘なのかなというふうにも思う一方で、これだけサプライチェーンがグローバル化をしていて、各国、特に日本アジアの国々との間では緊密な関係があるわけですけれども、国際経済学立場から見たときに、こういう協定を結んだ際に、勝ち負けとか、例えば損得みたいなことは、なかなかもうこれは言えないんじゃないかなというのが私の率直な感覚なんですが、この点についても伊藤先生の御見解をお伺いできればと思います。
  11. 伊藤元重

    伊藤参考人 伊藤でございます。  こういう場で、ちょっと不謹慎な言い方で申し訳ないんですけれども、昔、よくアメリカとか欧州の交渉担当官の方と話すと、日本のプレゼンスが全く見えないとよく叱られたもので、特にガット交渉においては、どちらかというと決まったものをフォローすることがある。  TPPでアメリカが離脱して、TPP11の交渉日本が入ったときに、ある場で、これは欧州の経済学者ですけれども、日本、頑張っているじゃないかというふうに言われまして、そういう意味では、議員おっしゃるように、確かに存在感が少し出てきているのかもしれませんし、こういう時代でございますから、日本も積極的に発言すべきだろうと。  先ほどちょっと申し上げなかった点で一つ申し上げたいんですけれども、多国間の交渉の非常に難しいのは、新興国、途上国の自由化を促すことが非常に難しい。既に仕組みがあるわけですから、彼らはいわゆる最恵国待遇の恩恵を受けておらないわけで、これは彼らにとってみても必ずしも好ましいことではないわけで。  今回、先ほどの鈴木さんの表にも出ていたんですけれども、結果的に、日本が非常に関税経済的な利益を得るような形で、ASEANは必ずしもそうなっていない。これはいろいろな議論があるんですけれども、それの一つの大きなポイントというのは、こういうことを通じて、先ほど言ったアフリカとか、あるいはアジアとか、いろいろな国の自由化を促していくメカニズムになるということだろうと思うんです。  ただ、もちろん、そういうことで経済社会が変わっていけば、当然分配が大きく変わるわけで、分配が変わるから何もやるべきではないということではないんだろうと思うんですね。  先ほどの鈴木さんは、種苗は、種はできるだけ自家増殖するべきであると。自家増殖を守ることは大事だと思いますけれども、多分それをずっとやってきたら、昔、マルサスが言ったように、人類は人口は増えるんだけれども、食べ物はそんなに増えていかないから、多分、結構厳しいことになっただろうと。今、このマルサスの予言が外れたのは、やはり技術革新とかテクノロジーが食料を非常に増やしたという面もあるわけで、全てがそれがいいというわけではありませんけれども、そういう意味で、いろいろな面があるのかなという気がします。  農業の問題は非常に大事な問題だと思います、あるいは医療も大事だと思いますから、そういう問題について、いわゆる貿易保護の中に全部押し込んでしまうのではなくて、より直接的な、いわゆる国内の対応とか政策ということとセットでやはり考えていく。やはり、そういうことを考えるきっかけという意味でも、このRCEPを結んだということは非常に意義があるのかなというふうに思います。  どうもありがとうございました。
  12. 鈴木憲和

    鈴木(憲)委員 ありがとうございました。大変参考になります。  というのは、先生がおっしゃった、分配が変わるから何もやるべきではないということではなくて、やはり、その先に、私たちの国としても、どうしたことができるのかということなんだろうというふうに思います。この点は、先ほど浜中先生がおっしゃった、要するに、日本主導権じゃなくてリーダーシップを発揮すべきだというふうにおっしゃっていただいたこと、本当に私もそのとおりだろうというふうに思っています。  この意味で、これから、このRCEP協定の後に、私たちの国はこのアジア地域でどういうリーダーシップを発揮できるのかというのがまさに大切なんだろうというふうに思います。  もう一点お伺いをしたいのは、私の選挙区も、地元山形でありまして、いつも、こういう協定をやる際には、特に重要五品目の話がもちろん気になるわけです。今回の協定は、米を始めとした重要五品目、もちろん除外になっていますので、これでどうこうということにはならないというふうに思っていますが、逆の意味でいうと、日本は食料の安定供給の観点でいえば、やはりこれから輸出を増やしていくことが、最終的には、日本全体で見たときの食料の安定供給というのに将来的に私はすごいつながるのではないかというふうに思います。  この視点で見たときに、このRCEP協定、どのように捉えていらっしゃるかをお三方から是非お伺いをしたいというふうに思います。その中で、もし、関税が下がることによって、農林水産分野での国内対策、やはり一定程度必要ではないかという御意見等もありましたら、そのことも併せて簡単にそれぞれからお伺いできればというふうに思います。
  13. 伊藤元重

    伊藤参考人 お答えしたいと思います。  農業に限らず、あらゆる分野貿易というのはいわゆるクロスホーリング、つまり輸出と輸入が両方増えていく形になっておりますから、日本農業についても輸出という面はやはり重視しなくてはいけないだろうと思います。  その意味では、アジアという国は人口が非常に多いわけですので、今後、所得水準が上がっていくということは、当然、食料、単なる農産品だけではなくて、付加価値が高い、例えば日本酒だとか加工食品だとか、そういうものに対するニーズが高いと思いますから、そういうものをしっかり見据えながら戦略を立てていくということは重要だろうと思います。  もちろん、貿易政策だけで何かが変わるものではございませんから、委員おっしゃったように、日本の国内でどういうふうに、農業も含めて、産業を強化するかということをこの機会にきちっと考えていく必要があると思います。
  14. 浜中慎太郎

    浜中参考人 御質問ありがとうございます。  食料の問題、非常に重要な問題だと思います。  私はその分野専門家ではないんですけれども、一般的に考えまして、やはり地理的に狭い範囲で見ていけば見ていくほど、リスクというのは高くなっていく。例えば、山形県が何か洪水が起こって、山形県で米が取れなくなるということはあり得る。でも、その場合、ほかの東北の地方がまだ米を作ってくれる。だから、東北が冷夏で米が作れなくなれば、まだほかの地域で作っていける。ただ、日本全体が冷夏になったら、日本で米が取れなくなるということがあるわけで、範囲を狭めていって、そこで食料を確保しようとすればするほど、やはりひずみが出てくるし、リスクが高くなる。  だから、逆に言うと、日本世界中から米を買います、日本のものも世界中に出ていきますよというふうにやった方が、当然、戦争が起こって米が入ってこなくなるよというリスクはありますけれども、やはりリスクを分散させて、広げていくという方が、やはり安定的に供給できる。  当然、一つの国に食料基地を持つと、やはりそれはリスクがありますから、いろいろやっていく。それも、戦略的にやっていくというだけではなく、やはり市場のメカニズムを通じてやっていくというのが非常に重要なわけで、そういう意味でいうと、広い意味でいうと、やはりFTAみたいなものは、うまく使っていけば、食料の安全確保に対して資するものだというふうに私は思っております。  以上であります。
  15. 鈴木宣弘

    鈴木参考人 輸出は非常に大事でございますが、日本農業の場合に、輸出を考える前に、まず、国内農業がどうなっているかということを考える必要があると思います。  農家の平均所得は、時給にすると九百六十一円です。後継者がなかなかいないということで、今、現場の農業がどんどん縮小し、限界集落が増えております。そういう状況の中で、例えば、日本の人口は将来五千万人になるんだから、国内に市場はないんだから、輸出を五兆円に伸ばせばバラ色で農家が潤うという議論は飛躍しているというふうに私は考えております。  人口が五千万人になることを前提にする前に、人口が五千万人にならないようにするにはどうしたらいいかをまず考える必要がある。そのためには、地域の農林水産業がしっかりと頑張ってくれる状況をつくることがまず大事で、その足下を固めて、それで初めて輸出ということが可能になってくる、こういう順序ではないかと考えております。  それから、RCEPにおける輸出の問題点は、各国の関税が下がっても、非関税措置、要は、植物防疫とかの分野で、日本の農産物には虫がいる、病気になっているということで、たくさんの農産物が実質的には止められているんです。だから、この点を改善しないと輸出は実質的には伸ばせないという側面も念頭に置いておかなきゃいけないということでございます。  以上です。
  16. 鈴木憲和

    鈴木(憲)委員 それぞれの皆さん、本当に貴重な御意見をありがとうございました。  まさに、今、鈴木先生もおっしゃっていただいたことなんだと思いますが、要するに、輸出の前に、国内農業のまさに実態をしっかりとよく把握をして政策を進めていくべきだというのは、私もそのとおりだろうというふうに思いますが、ただ一方で、私たちの国が、今後人口が減る中で、どういうふうに稼いで、そしてどこで稼いでいくのかという観点も私は大切だというふうに思いますので、その意味では、このRCEP協定がしっかりと私たちの国内に役に立つように、いかに活用していくかということなんだろうというふうに思います。  今後、先生方の意見、しっかり参考にして進めていきたいというふうに思いますので、今後とも御指導をよろしくお願いします。  今日はどうもありがとうございました。
  17. あべ俊子

    ○あべ委員長 次に、小熊慎司君。
  18. 小熊慎司

    ○小熊委員 立憲民主党の小熊慎司です。  他県ではありますが、鈴木憲和委員に続いて、選挙区が隣り合わせで、米沢藩と会津藩のえにしもありますが、隣には桑名藩の岡田元外相もいて、秋田の緑川さんもいて、奥羽越列藩同盟の精神にのっとって、ちょっと頑張っていきたいなと思います。  それぞれ、伊藤参考人浜中参考人鈴木参考人、ありがとうございました。それぞれの視点でこのRCEPについて御意見をいただき、大変参考になりました。  私的には、これは単純に言えば、自由貿易というのは、鈴木参考人の指摘もありましたけれども、本来であれば、それぞれの国のGDPを拡大していくんだというのが自由貿易の利点だ、過去のデータをもってしてもそうだということが言われてきました。近年ちょっと違う部分も出てきていますけれども。  なおかつ、私、個人的には、今、鈴木委員が指摘した農業の問題もありますけれども、自由貿易そのものは、参加する各国によって、やはり比較優位の産業もあれば比較劣位の産業もあり、その強い弱いのところの調整は、交渉の中でなるべく打撃が少ないようにしながらも、実は国内問題で解決をしていく、その利益をしっかり比較劣位の方に手当てをして保護していくというのが、国際課題でもあり、実は国内問題でもあるというのがこの自由貿易の取り組み方だというふうに思っています。  そういう意味では、RCEP、これはマルチの条約でありますけれども、バイの自由貿易協定もメリットがあります、デメリットみたいなものもありますけれども、昨今は、やはりマルチの条約というものの役割というのは非常に大きくなってきたというふうに思います。世界的な企業も増えている中、また、サプライチェーンの御指摘もありましたとおり、二国間だけでは語り切れないものもありますから、そういう意味では、このマルチの条約というのはある意味重要なことであり、これからもっと進化をさせていかなければならないというふうに思っています。  ただ、そういう中で、浜中先生にお伺いしますけれども、今回のRCEPは、実は経済政策ではなくて政治的な問題だということも指摘をされています。確かに、ほかの各委員の事務所にも来ていると思いますが、TPPのときの抗議について、反対意見については、様々な産業界から賛成、反対の意見をもらいました。  しかし、今回のRCEPは、産業政策としてどうだ、自由貿易政策としてどうだということではなくて、中国の人権はけしからぬからやめておけとか、ミャンマーはどうするんだ、やめておけ、そういう感じの抗議が多いんですけれども、ファクスやメールが毎日のように届いていますが。  実は、浜中先生も政治的な問題ということの御指摘がありますけれども、その政治的な問題、課題というのは具体的にどういうことを指しているのか、お伺いします。
  19. 浜中慎太郎

    浜中参考人 御質問ありがとうございます。  私が政治的な問題と言った場合は、やはり国際政治的な問題ということであります。  RCEPみたいな協定を見れば、やはり多面的な、いろいろな側面があると思います。当然、経済の問題でもあります。安全保障の面もあります。ただ、それ以外に国際政治的な面があるということが私の言いたいことであります。  二つ重要なことがありまして、それは、誰がどのように国際的なルールを作っていくのかという視点、それから、関連するんですけれども、いわゆる威信政策で、誰が、どの国がパワーを持っているのか、どこが地域で、どの国が地域の盟主なんだという国際政治的な面があります。  この二つが密接に関連している上に、おっしゃられましたように、まさにマルチというのがキーワードで、国際的なルールをバイで作ってもしようがないので、やはりマルチなので、俺のルールはこれだ、おまえ、のみ込めということをやるわけです。バイだとやはり威信政策というのはできない。やはり地域マルチでやることによって、ここが地域で、俺がこの地域の盟主だというような、こういう国際政治的な側面というのがあって、これが私は実はかなり重要なんじゃないかということであります。  その威信政策あるいは国際ルールの設定ということにおいて、やはり重要なのはリーダーシップという観点になってくると思います。  リーダーシップとは何かということで、これは非常に議論は尽きないと思うんですけれども、やはりある程度国内が豊かな国が、自分が大きく譲ることによって、ほかの国にも若干譲歩をしてもらって、みんなの利害につじつまを合わせる。だから、やはりある程度大きな国がリーダーシップを取るというのはナチュラルだし、非常に自然なことだと思います。  もう一つ重要なことは、革新的なアイデアを持っている。アメリカがこれだけFTAの場でスターであるというのは、やはりアイデアがすごいんですよ。電子商取引というのはFTAの章に入れて解決しよう、これはアメリカのアイデアなんです。ほかの国はそんなことを考えてもいなかったわけです。アイデアを持っているので、やはりアメリカは、それなりに影響力リーダーシップ世界的に発揮できるということなんだと思います。  だから、経済合理性だけじゃない、それから安全保障的な国際政治じゃない、それ以外のところで、いわゆる国際政治経済学における国際政治の役割というようなことが、もう現在既に重要ですし、今後更に重要になっていくんじゃないかという意味で、私は政治的な側面があるということを申し上げております。  以上です。
  20. 小熊慎司

    ○小熊委員 先ほども浜中先生おっしゃったとおり、主導権がどうだとか存在感の話、和歌山の話は多分、世耕大臣の話か、まあ、政治家は、自分がこうしましたとか、やりましたとか、パフォーマンスをしたがるので、そこは割り引いていただきたいなというふうには思いますけれども。  いずれにしても、リーダーシップを発揮するといっても、日本の国益だけではなくて、やはり地域の発展まで考えた形でやっていくということで国際的な理解を得られる、また参加国の理解を得られるということですから、鈴木参考人が言ったとおり、日本が加害者にならないようにという意味では、ほかの国も、それは優秀な人材も多いですから、冷静に判断をして参加国になり、今後締結をしていくんでしょうから、だます、だまさないという世界は私は存在はしないというふうに思いますけれども、日本リーダーシップを正しい意味で発揮するという点において、今、浜中先生から御指摘がありました。  また、浜中先生は、これまでの交渉プロセスの中で様々な課題があり、また、これはISDSも含め、今後また進化をさせていかなければならない仕組みになっているということも御承知だと思いますけれども、今後、これまでのプロセスでまずかった点、これはこれからのいろいろな交渉事にも反映させなければいけませんから、これまでの交渉の過程の検証と、また、これから進化させていく上での検証をどのように行っていったらいいのか、お伺いします。
  21. 浜中慎太郎

    浜中参考人 御質問ありがとうございます。  二点あると思います。  日本がどうやってリーダーシップを発揮していくのかという今後の話と、あと、やはり今までどうだったんだという検証の下に今後を考えていくという二段階なんだと思うので。  まず最初に、日本がどうやってリーダーシップを発揮していくか。これは先ほども若干触れましたけれども、日本は何がやりたいのかというのがやはりほかの国に見えない。個別のところで、これは日本はどうだというだけじゃなくて、日本が、ではどういう世界観を持っているのか、そこのところがやはり見えない。  やはりアメリカ、ヨーロッパ、中国は、それぞれにちゃんとした哲学的な考え方を私は持っていると思います。  アメリカは、やはり市場中心にやっていくんだ、個人のデータも自由に市場のメカニズムに移動させるべきだ、投資の資金も自由にやっていくべきだ、これがアメリカの考え方だと私は思います。  ヨーロッパは、やはり個人、権利という考え方が強くて、電子商取引分野でいうと、例えばデータは個人のものだ、企業が相手国に投資した場合でも、その投資に関しては権利は守られるべきだというのがヨーロッパの考え方で、必ずしも、データだとか国際的な資金フローを完全に自由にした方がいいというふうにヨーロッパは恐らく考えていないと思います。  では、中国はどうなんだと。やはり公的機関の役割は大きいぞ、最終的に、究極的に言うと、データは国のものだ、アメリカの民間企業のものではない。最終的に、外国中国投資した、その場合に、中国の規制権限はそれによって縛られない、とんでもない賠償金を払わされる、そんなものはけしからぬ、やはり国家の規制権限というのは尊重されるべきだ、これが中国考え方だと思うんです。  そういう意味でいうと、三つの巨大な主体がそれぞれ非常に明確な哲学的な基礎を持っている。日本はどこなんて分からないわけですよ。だから、日本交渉をやるとすると、二つ足して二で割る、三つ足して三で割る、そういう交渉になりがちで、それではやはりリーダーシップというのは私は全く発揮できないと思います。だから、日本は何をやりたいのかということを非常に根本的に考えてやらなくちゃいけない。  だから、日本を振り返ってみると、今から三十年前、東アジアの奇跡という世銀のレポートがありましたけれども、このときに日本はやっていたんですよね。新古典派的な、アメリカ的な考え方では駄目だ、やはり日本はパブリックセクターが重要で、そういう経済発展モデルがあるんだということを明確に言って、世銀にそういうレポートを書かせたわけです。やはり、そういうことを日本ももう一回できるような国にならなくちゃいけないなというふうに思います。  それから、二点目なんですけれども、やはり将来を考えるに当たっては、今回どうだったんだというのは率直に検証しなくちゃいけないと思います。  やはり、RCEPを見てみると、今回、守秘義務がある、それはどの交渉もそうだと思うんですけれども、守秘義務ということでなかなか情報が出てこなかった。TPPも同じようなことなんですけれども、いろいろなところでリークされたりして、結果的にはかなり国民的な議論ができたというふうに、ISDSも含めて、本当にいいのかと、かなりの議論ができたと思います。今回非常に残念だったのは、そういう議論を何となく避けようとしているのかなというふうに私は第三者として見ておりました。  もう締結される以上は、今回どうだったんだというのをやはり第三者的な機関が見直す。守秘義務があるのは事実なんですけれども、それだけではなくて、やはり官がある程度情報提供して、それに対して産業界、市民グループがちゃんと評価をしていく、それで学者が取りまとめるというようなことをやった方が私はいいと思います。  これは、いつもどおりのお決まりのレポートが出てきてもしようがないので、外国人を入れるとか、物すごく若い、四十歳以下の人たちだけでやってみるだとか、そういうようなことをやって、既存の考え方にとらわれない、将来を見られる、それから非常に日本を客観的に見られる、そういう人たちを民間のプロジェクトに入れるような形にして検証していくというようなことをやっていかないと、やはり日本はなかなか一歩前に進むことができないんじゃないのかというふうに懸念を持っております。  以上です。
  22. 小熊慎司

    ○小熊委員 残り一問にしたいと思いますけれども、伊藤参考人に聞きます。鈴木参考人にも聞きたかったんですけれども。  今回の条約、やはり影の部分と光の部分があって、鈴木参考人においては、影の部分をしっかり御指摘をいただきましたし、種苗法に関しては、私ももろ手を挙げて賛成という立場ではないので、いい視点だったというふうに思います。  伊藤参考人にお聞きしたいのは、マルチの条約の利点を、意見をいただきました。大変参考になりました。今、政治的な問題の話にも触れましたけれども、これは経済連携協定なんですけれども、一方では、やはり政治的ないろいろな指摘も今されているところで、マルチ重要性を訴えられた伊藤先生に、ミャンマーを、中国の人権問題もあるんですけれども、これはまたちょっとおいておきますが、ミャンマーに特化して言いますけれども、今、軍事政権、クーデターの国軍が実権を握っているところであります、まだ将来は見通せませんけれども。  ミャンマーが参加国であること、時間がありませんのでちょっと端的に、これは経済政策ではないんですけれども、こういう、経済政策であり、なおその国の政治を考えなければいけません。ミャンマーに関しては、先生、どのような対応を取っていったらいいか。これは、国軍と正式に契約を交わすと、我々が国軍を認めたということになるんですね。その点についてもし御所見があれば、最後にお聞きいたします。
  23. 伊藤元重

    伊藤参考人 非常に難しい問題だろうと思います。  一般論で申し上げれば、経済連携協定と、今言った人権の問題とか、人権以外にも恐らく安全保障とかいろいろな非経済的要因というのが国家間の関係の中で利いてきますから、分けて議論ができるのであれば、その範囲では分けて議論すべきだ。  ただ、現実がそういくかどうかということを、例えば今、まさに問題が、非常に大きな問題になっているわけで、そのための日本の姿勢も問われるわけですから、そこはしっかり議論はしなきゃいけないと思うんですけれども、現段階では、ミャンマーの問題にどう対応するかということはもちろん重要なんですけれども、私の立場から見れば、これをもってRCEPを先に進めないということはちょっと考えにくいということだと思います。
  24. 小熊慎司

    ○小熊委員 ありがとうございました。
  25. あべ俊子

    ○あべ委員長 次に、佐藤茂樹君。
  26. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 今日は、参考人の三人の先生方、貴重な御意見を陳述していただきまして、大変にありがとうございます。  時間の限りお聞きをさせていただきたいと思うんですけれども、まず伊藤参考人にお聞きをしたいのは、伊藤参考人は、二〇〇三年からだったと思うんですけれども、日中韓のFTAについての民間の議論日本側の代表として議論されてきました。今回、実はRCEPについては、やはり日本の自由貿易協定でミッシングリンクとなっておりました中国韓国と初めてこういう経済連携協定を結んだということについては、非常に意義があるんじゃないかなというふうに思っているんです。  伊藤参考人は、やはりそういう形で長年日中韓のFTAを何とかということで議論をされてきた立場から、今回のこの中国韓国も入ったRCEPについてどのように評価されているのかということと、そして、RCEP協定が結ばれたから、そうしたら日中韓FTAというのはもういいのかどうか、そのことについても、伊藤参考人としてはどのように御判断をされているのか、評価をされているのか、お聞かせいただければありがたいと思います。
  27. 伊藤元重

    伊藤参考人 お答えいたします。  私の記憶が正しければ、小渕内閣のときに、金大中氏とそれから朱鎔基氏との間で、日中韓は、将来、経済連携協定も想定して、そのためのプロジェクトをすべきだと。そのために、日本側の機関として総合研究開発機構、NIRAというところが選ばれまして、私はそれよりも少し後に、今おっしゃったような形で、二〇〇三年か四年か、もうちょっと後だった気がしますけれども、NIRAの理事長にたまたまなったということで、それから数年間、毎年三回、日本韓国中国経済連携協定議論、民間の議論に参加いたしました。  こういう言い方は当事者としてはちょっと不謹慎な言い方かもしれませんけれども、正直、やってみて、これは大変だなと。つまり、毎年同じ議論を繰り返していて、日中韓三国だけでまとめるというのは、余りにもそれぞれのベクトルが違うということで。  今回、RCEPに関しては私は全く横で見ていただけなんですけれども、思ったのは、やはりASEANが入ること、あるいはオーストラリアとかニュージーランドが参加する、本当は私はインドにも参加してほしかったんですけれども、これはできなかったんですけれども、という形で、枠組みが変わる形によって、結果的には日中韓の間でもある種の関税の撤廃あるいは低減ができたということでは、やり方の、アプローチとして非常によかったのかなというふうに思います。  それに加えて、日中韓だけでやるよりも、やはりASEANが入ることによって、いろいろな意味で全体のバランスもよくなってきたというふうに思っていますので、今後、では日中韓を更にやるべきかというと、今の段階で、ここまでできた中で更に踏み込んで日中韓をやるということは、私にとってみると余りその意義は思いつきませんけれども、ただ、先ほど冒頭にも申しましたように、経済社会というのが非常に変化する形で、まさに小渕、金、それから朱鎔基さんの時代に議論した日中韓の関係と今の時代は違うわけですから、また五年後、十年後、どうなっているか分かりませんので、そこら辺は柔軟に考えていくべきだというふうに思います。
  28. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 それで、更に伊藤参考人浜中参考人にお聞きをしたいんですけれども、先ほど伊藤参考人の陳述の中で、コロンビア大学のバグワティ教授の言葉ビルディングブロック、こういう言葉を使って表現されておりましたが、経済関係拡大のためのビルディングブロックということで言われていたので、その先の方向性を考える重要性というのが言われておりました。  このアジア太平洋地域には元々TPPが、レベルの高いものですけれどもありまして、そして今回RCEP、これは発効されればですけれども、二つの経済連携があるわけですね。それを土台にして、やはり次は、APECで構想が発表されましたFTAAP、アジア太平洋自由貿易圏というものに対して、積み上げていって結びつければいいんじゃないのか、そういう期待をする声もあります。  さらに、政治家も、例えば昨年の十一月に、APECのときに、中国の習近平国家主席は、TPPへの参加も前向きに検討と言った上で、FTAAPについても完成させなければいけないというようなことを言われました。菅総理もFTAAPについて前向きな発言をされていたわけでございます。  このRCEPTPPを踏まえて、FTAAPというものに結びつけていくべきだと考えておられるのか、いや、様々にやはり考慮すべきことはしっかりと考慮して進めていかなければいけない、そのように考えておられるのか、伊藤参考人浜中参考人の御意見をお伺いしたいと思います。
  29. 伊藤元重

    伊藤参考人 お答えします。  バグワティ教授がビルディングブロックという言葉を出したのは、実は、スタンブリングブロック、つまり、つまずき石ですね、スタンブリングブロックとのペアで出したんですね。  それの議論は、要するに、FTAとかEPAとか言うけれども、そんなことをやって何か既成事実をつくって、結局、WTOみたいなマルチ機能が低下してしまうんじゃないだろうかという批判があったわけで、これに対して彼らの反論は、そうじゃなくて、しっかりビルディングブロックという形で、次のステージを考えながら、経済を広げていくプロセスとして考えるべきであると。  そういう意味では、RCEPTPPも、今あるもの、あるいはこれからできるものに限定するわけじゃなくて、その先どう広げていくかという視点は常に大事だと思います。  議員がおっしゃるように、そのずっと先の方には、APECワイドの、FTAAPというんですか、自由貿易協定みたいなものがあるんだろうと思うんですけれども、ただ、恐らくそれは余り現実的ではないんだと思うんですね。  それの方向に将来行くのであれば、それは決してやらない理由はないんでしょうけれども、多分、TPPに関して見ると、今やはり重要なことは、TPPをどうやって広げていくか。イギリスが今これから入るという議論をしているわけですけれども、あの高い基準の中にどこまで入ってくるか。恐らく、東南アジアの国なんかでも入ってきてほしい国はあるわけですけれども、ということと、もっと大きな問題は、これは今日の話を超えるかもしれませんけれども、アメリカの参加を将来どうやって促すことができるかどうかということが多分ポイントだろうと思います。  RCEPに関しては、取りあえず、今、RCEPをまとめようとしているわけですけれども、正直、TPPに比べるといろいろなところの基準が弱いわけで、まとめるためにいろいろな妥協をしたわけですけれども、そこをどうやって更に強化できるかという、交渉の再交渉みたいなことを、やはり、これはすぐという話じゃありませんけれども、将来は考えていくべきだろうと思います。  以上です。
  30. 浜中慎太郎

    浜中参考人 御質問ありがとうございます。非常に重要な問題だと思います。  バグワティ教授が一番最初ビルディングブロックということを言ったときというのは、基本的にはまだ、FTAWTOにどういう影響を及ぼすんだという観点から言ったんだと思うんです、言ったということなんですけれども、今おっしゃられましたように、確かに今は、小さいFTAができて、それを更にどういう大きいFTAにつなげていくんだという視点、これはすごく重要だと思います。  WTOへの影響ということで考えると、例えばRCEP、非常にいい影響が私は個人的に出ていると思うんです。例えば、中国は二〇一九年に一般的な関税を切り下げております。それまで平均で一〇%ぐらいであったものが、もう七%ぐらいまで落ちています。そもそも、中国WTOに入るときにかなり関税を引き下げるということをしたんですけれども、やはり、いろいろなところでFTA交渉なりをすることによって、特定のメンバーに対してFTA関税を切った、だったら、もう全員に関税を引き下げちゃうよということをやっているわけで、そういう意味でいうと、FTAで差別的であったものを無差別的にみんなに与えるということをやっているわけで、これは中国以外でもASEANの国もやっていると思うんですけれども、そういう意味でいうと、非常にいい影響というのが出てきていると思います。  これが何で起こるかというと、やはりFTAの数が非常に増えているからで、この国、この国、これにはこれが関税、でも、この国にはこの関税、もうめちゃくちゃなんですよね。だとしたら、全体的に引き下げればいいというのは非常に合理的で、そういうことが実際に起こっているという意味では、やはりWTOにポジティブなインパクトがあるということは言えると思います。  それから、より難しい問題は、RCEPなりTPPがより一歩進んだFTAAPになっていくか、これは非常に難しい問題で、アメリカは、やはり中国TPPに入れたがっている。中国は入りたいと言っているけれども、これはちょっといろいろ注意して聞いた方がよくて、やはり、中国はアメリカがいないうちに簡単に入ってしまおうだとか、あるいは、入りたいと言うことによってプロセスがぐちゃぐちゃになっていく。TPP11に中国が入って、アメリカはTPP11に参加するのではなくて元々のTPP12を復活させようとしているわけで、プロセスがぐちゃぐちゃになっちゃう。ひっかき回そうとしているということが言えないわけでもないわけで、この点はやはり注意して考えた方がいい。  逆に、中国はアメリカにRCEPに入っていいよということまで私は言うと思います。なので、ここは自分が作ったルール、俺が盟主だ、おまえ、入ってきていいぞということをやっているわけで、これは余りやり過ぎると本当にぐちゃぐちゃになっていくので、やはり冷静に、アジア太平洋、APECの枠組みなりでFTAAPについて議論していく、ちゃんと米中で議論して、そこに日本もちゃんと入って議論していく、ビジョンを共有していくということが必要だと思います。だから、後から誰を入れるというのじゃなくて、やはりFTAAPを本当に正面切って考えていく時期だと私も思います。  以上です。
  31. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 もう一点だけ、伊藤参考人浜中参考人にお聞かせいただきたいんですが、今回、昨年の十一月以降、インドが交渉不参加で、このRCEPから離脱をいたしました。その要因をどのように、それぞれ参考人は見ておられるのか。  特に、浜中参考人の以前出されているものによると、日本とのアジェンダセッティングで、現実に合わなかったと。要するに、特にMRAについてインドが非常に関心があったんだけれども、そういうところについて、日本は非常に、やはり逆にセンシティブな問題なのでなかなか合わないというような分析をされたのは、非常に特徴的だったと思うんです。  このインドの、これからRCEPへの参加に向けての壁というか、今回離脱した要因と、どういうことをすればインドをしっかりと参加させていくことにつながるのかということについて、何か御示唆があれば述べていただければありがたいと思います。
  32. 伊藤元重

    伊藤参考人 お答えします。  私、交渉プロセスの中でインドがどういう発言をしたり、どういう立場をしたかということについてはきちっと追ってはいないんですけれども、一経済学者として、今、インドの政治経済状況を見たときに、やはり非常に揺れているんだと思うんですね。どういう表現を使ったらいいか分かりませんけれども、簡単に言うと、大衆主義というか、反貿易主義というか、反経済主義というか、そういうようなところがありまして、モディ政権、それにかなり乗っかっているようなところもあるものですから、そういう中でRCEPにもう一回引き戻すというのはなかなか難しいのかなと。  ただ、御案内のように、こういう国々は時期によっても大きく流れも変わりますので、そういう意味では、インドとはやはり粘り強く交渉していくべきだとは思います。  ただ、交渉の中でインドがどういう姿勢を取ったかということについては、余り詳しくは知りませんので。
  33. 浜中慎太郎

    浜中参考人 ありがとうございます。  私が執筆したレポートも読んでいただいたこと、非常に光栄であります。  当然、インドがRCEPに入るのが難しかったというのは、関税の問題もあるんですけれども、やはりそれだけじゃ話は終わらないというふうに思います。  まず、非常に大きい話で言うと、やはり米中のバランスということがあると思います。インドとしては、アメリカがいるTPPに将来的に加盟するのと同時にRCEPにも加盟していく、それで米中のバランスを取っていくというのが私はあったんだと思うんですけれども、TPPからアメリカが引いてしまったために、中国とだけ緊密になるのは経済的な面でも嫌だし、やはり国際政治、安全保障の面でも若干腰が引けるというのは、大きな話としてはあったんだと思います。  それから、もう一つ重要なのは、インドの損得と言ったらあれなんですけれども、関税以外の分野でどれだけ経済的な便益があるのかというところで、やはりインドは難しかったんだと思います。  関税の面でインドが確かに難しいんですけれども、WTOなんかの交渉を見てみても、インドの攻めるところというのはやはりサービス貿易なんですよね。インドは物すごい量のサービス貿易があって、サービスの輸出というのは物すごい国なんです。日本は物の貿易が多いんですけれども、やはり英語を話す国、アメリカ、イギリス、あとインド、フィリピンなんという国はサービス貿易が物すごく大きいので、サービスのところである程度の利益があれば、物の部分で損をしてもつじつまが合うということは可能なんだと思います。  ただ、日本がインドを考えると、やはり安全保障の、開かれたインド太平洋という考えで、安全保障の面からインド来てよというふうに思うんですけれども、どうしてもインドがサービスのところですごい利害関係、大きい利害関係を有しているというところを忘れがちで、そこのところがやはり若干、今回の交渉としては弱かったのかなと思います。  ただ、同時に、インドのやりたいことというのは、インドの技術士なり資格職業を持っている人を、ミューチュアル・レコグニション・アグリーメント、日本協定を結んで、インドの技術士、看護師がそのまま日本に来られる、まあ、日本からも行けるんですけれども、そういう協定を結びたい。これはやはり日本にとっては非常に難しい。  そもそも、資格とは何かという考え方がインドと日本で違いますし、国家試験を通らなければ資格が取れないのか、学位で資格を取れるのか、こういう哲学的な発想も、特にイギリスの影響を受けているインドと、あと、いわゆる大陸国家的な日本ではやはり試験が重要なので、なかなか合意することができなくて。  ただ、これは日本も、やはりいろいろな資格職業、看護師、それから技術士、今後足りなくなっていくわけで、外国から来てもらわなくちゃいけない。そうすると、そういう相手国の資格職業を、日本に来てもらうだとか、もっと一歩進んで、資格のハーモナイゼーションをやっていくというようなことが必要なわけで、そういうことはかなり難しいところで、日本にとって最も難しいところは、規制に関わってくるので難しいんですけれども、そういうところについても、日本は何ができるのかということを考えていかないと、更に一歩進んだ経済協力、他国と結んでいくというのが難しくなっていくと思います。  以上です。
  34. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 済みません、時間の関係上、鈴木参考人にはちょっとお聞きできませんでしたけれども、大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。
  35. あべ俊子

    ○あべ委員長 次に、田村貴昭君。
  36. 田村貴昭

    田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。  三人の参考人の先生方、ありがとうございます。  私は、九日の協定質疑のときに、農業問題を中心に質問しました。本協定では、多くの野菜と果物の関税が撤廃されます。今でも輸入生鮮野菜の八〇%はRCEP参加国でありまして、わけても隣国中国からは六四%を占めています。中国からの野菜の輸入はこの三十年近くで六倍にも膨れ上がって、影響が出るのは必至だというふうに質問しましたけれども、農林水産省からは、すみ分けをしている、競合品は関税撤廃、削減で除外しているなど、特段の影響はないとされました。  最初に、鈴木先生にお伺いします。  今日、鈴木先生からは、緊急の暫定試算をされたということであります。先生のこの試算に敬意を表します。農業で五千六百二十九億円の減少、うち青果物で八百五十六億円の減少。大変ショッキングな数字であります。  これを試算されて、先生の、まず、その考察について教えていただきたい。そして、この数字が、生産現場における影響はどういったものが考えられるのか、御所見を伺いたいと思います。
  37. 鈴木宣弘

    鈴木参考人 御質問ありがとうございます。  九日の審議田村先生が御指摘された懸念が、計算をしてみると、まさに見える化されたというのがこの試算の結果でございます。  御指摘ありましたとおり、中国を中心に、青果物の貿易は東アジアが非常に大きなウェートを占めております。そういう中で、日本は、重要なタマネギ等についての関税中国などに対して維持したというふうに言っておりますが、青果物全体の貿易額で加重平均して関税水準がどのぐらい下がるかということを見てみますと、ほぼゼロです。そういうわけで、ほぼ全面関税撤廃の状況が、最も日本貿易の大きいこの東アジア中心の自由貿易協定で行われれば、その影響は甚大であるというふうに考えざるを得ないわけでして、そのことは数字ははっきりと物語るということだと思います。  今でも日本農業は非常に厳しく、それは米だけでなく、野菜、果物についても、非常に高品質なもので頑張っている人がいるという話もよく言われます。サクランボは自由化でも負けないじゃないか、耳にたこができるぐらい聞きました。でも、それは一部です。オレンジジュースが自由化されたときに、どれだけミカンの生産が減って、ミカンは、確かに頑張っている人はいますが、全体量は激減しました。それは、国民に対する青果物の供給に大きな影響を与えるだけで、一部の頑張っている農家だけが残ればいいという議論にはなりません。  そういう意味で、ただでさえ苦しくなっている青果物の現場の農家の皆さんにとって、このような試算結果が出てきたということは大変な懸念材料でございます。  ですので、こういう点については、しっかりと検証して必要な対策を打ち出す。影響がないように対策するから影響がないという試算結果を基にして何もしなくていいというのは、元々対策を考えていないのに、対策するから影響がないと言っているわけで、では、その対策は何なのかということをしっかりと示していただく必要がある。そうして、一日も早く現場の農家の皆さんの不安を取っていただく、払拭していただくということが今求められているというふうに考えております。  ありがとうございます。
  38. 田村貴昭

    田村(貴)委員 全面関税撤廃に等しいというお話でもありました。  そして、先生からは、大変厳しい農業現実があるということなんですけれども、私も同じ思いであります。幾ら生産量を下げない対策を農林水産省が唱えたとしても、今、この国の農業は、農業従事者が激減しています。そして、耕地面積も減る一方であります。まさに生産基盤の弱体化が大問題なんですけれども、引き続き鈴木先生にお伺いします。  この生産基盤の弱体化という日本農業の危機的な状況の打開には何が必要だと先生はお考えになるでしょうか。
  39. 鈴木宣弘

    鈴木参考人 御質問ありがとうございます。  一つは、今まで畳みかけるように貿易自由化をどんどん進めてまいりました。  確かに自動車は利益を伸ばしてきたかもしれませんが、その一方で、農業はどんどん縮小して、今の状況が来ている。ですから、そのことについてしっかりと目を向けて、これ以上そういうことを続けていいのかどうかについては考えないと、国民の命を守る食料の供給がこれ以上減ってしまう状況は、国民にとって、幾ら自動車の利益などが増えても、それで国民は幸せなのかどうかということを立ち止まって考える。  つまり、ただ貿易自由化を進めればいいという議論を、一度立ち止まって、誰のための貿易自由化なのか、国内においても、それでどういう影響が出て、そこをどう調整できるのか。調整できないならば、単にハイレベル、ハイスタンダードと、何でしょうか、全部なくせばハイレベルなんですか。それだったら政策議論は要らないじゃないですかということですよね。だから、ハイレベル、ハイスタンダードというのは、ただどんどんなくせばいいという議論になっていないでしょうか。  しかも、知財権だけは強化なんですよ。何でそこだけ規制強化なんですか。では、これは誰の利益のためにやっているんですか、それで被害が出る人をどう考えるんですか。そうしたら、単純に、貿易自由化を進めなきゃいけないという議論をまずやめるということが目に見えてきます。  先ほどインドの議論もありましたが、九日の審議で、大臣が、インドが離脱した理由の大きなものの一つとして、インド国内の中小、家族農業経営が大きな打撃を受けることを懸念してインドは抜けたと言いました。つまり、これは、日本もそういうことをちゃんと考えなきゃいけないということですよね。  貿易自由化がこのように節操なく進められますと、それで、当然価格が下がって、それに釣られて国内価格も下がる。そこに、今、大きなスーパーなどの小売店の市場支配力が強くなっていて、買いたたきの圧力が強くなっています。  生産者団体、協同組合も頑張って価格を上げようとしますが、自由化とそれから国内での買いたたきで、農家の所得がさっき言った九百六十一円の時給にしかならないという状況を招いているわけですから、ここをどう改善するかということは、流通業界も含めて、今だけ、金だけ、自分だけで、農産物は買いたたいてビジネスをすればいいという考え方を改める。消費者も、安ければいいという考え方を改める。そうしなければ、これ以上、作ってくれる人が苦しくなったら、生産が減ったら、ビジネスできるんですか。食べるもの、ないんですよ。コロナショックのようなことが起こって物流が止まったら、日本人は飢えるんじゃないですか。  二〇五〇年に日本人が飢餓に直面するとNHKスペシャルは報道しましたが、二〇五〇年なんという遠い将来ではございません。こんなことを続ければ、我々はもっと早くにそういう事態に直面しかねないわけです。  ですから、これは、消費者、国民の皆さんの意識もしっかり変えていただいて、産業界、消費者共にどうやって自分たちの食料を守るのかという視点で行動を改めるという点と、それをサポートするための国としての安全保障考え方ですね。軍事、エネルギー、食料というのが三本柱と言いますが、軍事については随分お金を使って、某国からもたくさんの武器を何兆円も買っております。それだけのお金があるんだったら、なぜ、食料という一番の安全保障にもうちょっとお金をかけないんでしょうか。  ヨーロッパでは、農業所得の九〇%、一〇〇%まで税金を出して、安全保障の要である食料を守っております。命を守り、環境を守り、国土を守り、国境を守っている産業は、国民がみんなで支えるものだと各国は言っておるわけです。その考え方がなぜ日本にはないのかということですね。  今、日本農業所得に占める補助金の割合は、せいぜい平均で三〇%、青果物では一〇%ちょっとです。これは、世界でも最も低いんです。ですから、日本が過保護だというのも、ある意味、自動車などの輸出を増やすために、農業を攻撃するために意図的にマスコミを使って流されてきた面もあるということも含めて、我々は反省しないといけないんじゃないか。  済みません、ちょっと長くなりますが、あと一点だけ。  私が今まで関わってきた農業交渉というかFTAの事前交渉で、これは守秘義務がどこまであるか分かりませんけれども、全部産業界の代表の皆さんが来ていて、その人が後ろにいて、交渉官が前にいて、交渉するわけです。そうすると、日本交渉というのは、統一的な方針があるのではなくて、それぞれの産業界の要求を所轄官庁が一生懸命主張するわけですよ。それはまさに企業の要求なんです。企業の要求をどれだけ実現するかが国の交渉であって、そこには、農業を守らなきゃいけないとか、あるいは市民が薬やそれから種の問題で心配するようなことが起こらないかとか、そういう視点が全く抜けているということなんですよね。  だから、強いものが更に強くなるために、相手国をこじ開けるためにみんな頑張るけれども、それによって影響を受ける人たちに対する視点というものが欠如している交渉をやってきたということを改めるということが非常に重要ではないか。  ちょっと話が広がってしまいましたが、御質問ありがとうございました。
  40. 田村貴昭

    田村(貴)委員 ありがとうございました。  コロナのお話も出たんですけれども、感染拡大の下で、国外では輸出制限に踏み切る動きも出てまいりました。近い将来、慢性的な食料不足が起こると国連は報告しており、まさに日本にとって食料自給率の向上は死活問題であります。ただ、日本の食料自給率は今三八%、穀物に至っては二八%、RCEP加入国と比較にならない低さであります。  残り時間、一言ずつお伺いしたいんですけれども、伊藤先生、浜中先生、鈴木先生、自由貿易メガ協定というのは、日本の食料主権の確立、食料自給率の向上と相反するのではないか、私、こういう疑問を持っているんですけれども、これは調整できるものなんでしょうか。いかがでしょうか。伊藤先生からお願いします。
  41. あべ俊子

    ○あべ委員長 伊藤参考人、答弁は簡潔に願います。
  42. 伊藤元重

    伊藤参考人 釈迦に説法だろうと思うんですけれども、食料自給率は主にカロリーベースで計算されるものであるわけですので、何が輸入されて、何が国内で生産されるかということが非常に関わるわけで、例えば、中国から野菜がいっぱい入ってきても、食料自給率はそんなに変わらない話になるわけです。そこは、だから、やはり、危機が起こったときに、本当にどういう食料が必要なのか、本当にどういう対応ができるかということをしっかり考えた上で、農業の戦略をやる必要があるんだろうと思うんですね。  一概に、自給率という数字だけが独り歩きするのは非常に危険かなというふうに思っております。  以上です。
  43. あべ俊子

    ○あべ委員長 浜中参考人、答弁は簡潔に願います。
  44. 浜中慎太郎

    浜中参考人 危機とかショックというのは様々なものがあるので、これをやはり識別して考える必要があると思います。先ほど挙げましたように、山形だけが洪水があったりという話をさせていただきましたけれども、やはり、経済原則に基づいて、できるだけいろいろなところで作っていくというのが一ついい面だと思います。  ただ、おっしゃられたように、物流が止まって入ってこなかったらどうするんだというような問題は確かにあります。なので、それは食料安全保障という観点から別個の政策を立てるというのがいいのであって、やはり、FTAの問題に食料安全保障を余りにも絡めてしまうと、議論が発散してしまうんじゃないかというふうに私は個人的には思います。
  45. あべ俊子

    ○あべ委員長 鈴木参考人、答弁は簡潔に願います。
  46. 鈴木宣弘

    鈴木参考人 自由貿易については、FTAがいいか、WTOがというような議論もありますが、今、問題は、全て最終的には国境措置、国内措置を含めてなくせばいい、知財権だけは強化すればいいという単純な目標設定になっていて、そういう下で全てのものを考えれば、食料自給率は必ず、高まる国と下がる国が出てくるわけで、その輸入国がいざというときにどうやって食料を調達するかという議論が全く入っておりません。  ですから、こういうことにも配慮して、そもそも、貿易自由化、WTOFTAも含めて、この目的そのものがこれでいいのかということを考えて、もっと、富の分配の平等、それから人々の生きるために必要な、命を守るための政策、そういうことを含めて、貿易協定経済連携協定の目的を考え直すというふうにしないと、私は無理だというふうに考えております。
  47. 田村貴昭

    田村(貴)委員 終わります。ありがとうございました。
  48. あべ俊子

    ○あべ委員長 次に、浦野靖人君。
  49. 浦野靖人

    ○浦野委員 日本維新の会の浦野靖人です。  本日は、貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございます。順次質問をしていきたいと思います。  質問が進んできましたので、結構、考えていた質問が、かぶるところが出てきますので、もしかしたら繰り返しになるかもしれません。  先ほど、最初の方に、私の敬愛する小熊先輩もおっしゃっていましたけれども、条約については、各国、損得がいろいろあって、その中でいかにトータルで自国にとっていいものを取れるかという交渉だと思うんですね。ただ、世界がグローバル化によってつながってきたこの中で、今回、質問の中にもありましたけれども、コロナの影響が非常にあらわになったと思います。グローバル化によるものですね。  例えば、今、私どもみんながやっているマスク、当初、国内生産が全くなくて、非常に高価になって、手に入れにくくなったりとかする問題もありました。さらに、先ほどから議論になっている自給率の問題、これは、今回のこのRCEPの条約云々の問題ではなくて、これまででもいろいろとされてきた議論でもあります。  これは国の根幹を成す重要な問題ですので、この点について、まず、伊藤参考人から、RCEPについて、自給について国内はどういう影響を受けるのかということと、鈴木参考人からは、先ほどのお答えでも御意見を伺いましたけれども、国内の農業従事者というのは、もう既に減ってきています。それはもうどうしようもない事実で、それをどうしていくかというのは非常に問題だと思っています。  私が住んでいるのは大阪ですので、大阪の中でも、都市近郊農業、まだまだ農地がたくさんある選挙区のうちの一つなんですけれども、それでもやはり農業従事者はどんどん減っていって、地元の方でも、子供が自分のところを継がないとか、そういうのはもう普通に出てきています。ただ、新たに農業に参画したいという若い人たちもたくさん実はいてて、その人たちがどういうふうに参加できるのかというのも課題になっています。  私は、補助金以外で何か農業の形を変えていかないと自給率が上がらないと思っているんですけれども、そういう、ほかに何か手だてはあるとお考えなのか、その点をお聞かせいただきたいと思います。     〔委員長退席、伊藤(信)委員長代理着席〕
  50. 伊藤元重

    伊藤参考人 お答えします。  今、いみじくも最初にマスクの例をお話しになったように、安全保障の問題というふうに話題になっていました、先ほど鈴木委員が軍事、エネルギー、食料と言ったんですけれども、今回我々が学んだことは、医療もそこに入るかもしれないし、更に状況によっていろいろなものが出てくるかもしれない。そういう意味では、サプライチェーンをどう確保するとか、特に、平時ではなくて危機のときにどういうふうに確保するかという視点は非常に重要だろうと思います。  食料の場合、難しいのは、では、日本で全部作ればいいのかというと、日本で何か大きな天変地異が起こったときに外から入れられるのかどうかということもあるものですから、ここは、しかし、しっかり議論する必要があるだろうと思います。  それから、経済的な連携協定のようなことで国際貿易が広がったときに農業の生産はどうなるだろうかというと、一つ、今までに出ていない例をちょっと申し上げたいと思うんですけれども。  ちょっと今記憶で申し上げているので数字は余り確かじゃないんですけれども、日本の農家の年間の売上金額をずっと上から並べてみて、例えば、年間一千万円ぐらい以上を生産されている方は比較的大きな規模だろうと思うんですけれども、これは全体の恐らく六%から七%程度だろうと思うんですね。ただ、実際には日本農業生産の恐らく六〇%ぐらいはそこが作っているということで、そういう意味では、非常に、ある意味で、しっかりした規模の農業生産をやっている方と、それから、どちらかというと家族経営の中で小さい規模でやっていらっしゃる方のバランスの状況というのは、今後どう変わってくるだろうか。  国際経済議論でよくあるんですけれども、国際経済を進めていくと、比較優位にある例えば自動車みたいなところが伸びて、比較劣位であるような農業は下がってくるという議論というのはどちらかというと古典的な議論でございまして、やはりこの十年、二十年で広がっている議論というのは、同じ産業の中にも生産性の高い生産者と生産性の低い生産者がいる、これは別に農業だけじゃなくて自動車でも何でもそうなんですけれども、そういう中で国際的な取引が増えると、生産性の高い生産者にシフトするスピードが速くなる傾向があるという研究が随分今出ておりまして、日本農業なんかはそういうところだと思います。  だからといって、もちろん、家族経営の農家の方を犠牲にしてもいいという話ではなくて、そこはしっかりもちろん守らなきゃいけないんですけれども、ただ同時に、長期的な日本の食料の在り方ということを考えたときに、やはりしっかり生産する、ある程度の規模の、あるいは価値のものを生産できるような農業をどうやって育てていくのかということをやはり考えていく必要があるわけで、そう考えてくると日本がやるべきことはいっぱいあるというふうに思います。  以上です。
  51. 鈴木宣弘

    鈴木参考人 農業生産が減っている、農家がなかなかやっていけないという問題の根幹は、正当な対価が支払われていない、コストに見合う対価が支払われていないという現状があるわけで、つまり、農家の自家労働が買いたたかれている、人手不足じゃなくて賃金不足だという状況農業でも起こっているということでございますので、そういう状況が続けば、なかなか、頑張ってくれと言うだけで、全体の生産が増えるわけではありません。  それを補助金でなくてどうするかといえば、その食料で自分たちが生活を維持できている地域の住民、消費者の皆さんが、どうやって自分たちの食料を支えていくかということについてしっかりと考えて、地域地域で消費者から、生協さんを通じてもいいです、生産者の皆さん、農協も通じて、そして働きかけて、本当に安全でおいしいものを作ってくれる生産者の皆さんに対して、私たちはそこに込められている価値をしっかりと自分たちが負担して支え合っていきますというネットワークを地域地域でつくる、そういう試みが今一番重要ではないか。  地域循環的な経済自分たちの食料を守っていく。作ってくれる人、そして加工する人、食べる人が、みんながうまく回っていけるような仕組み地域地域でつくる、そのことが非常に重要になってくるのではないかと考えております。
  52. 浦野靖人

    ○浦野委員 ありがとうございます。  続いて、鈴木参考人にもう一つお聞きしたいんですけれども、このRCEP質疑の中で、インドが参加しなかった、最終的には不参加だった理由に、農村部の保護ということを答弁で大臣がおっしゃっていたと思うんですけれども、その点について何か知見というか御意見はあるでしょうか。
  53. 鈴木宣弘

    鈴木参考人 私もその答弁を聞いておりまして、大変注目いたしました。インドの離脱の理由が地域農業の破壊である、このことをインドとしては許容できないというのが一つの大きな理由であったと大臣もおっしゃったわけです。  そういうことについて、では、日本はどうなんだと。日本はそういうことについて、今回の試算でも出てきたように、被害が何もないどころか、特に青果物を中心に相当な損失が出るかもしれないということをちゃんと日本も考えないといけませんよねというメッセージとして私たちは受け止める必要があるんじゃないかというふうに考えた次第です。
  54. 浦野靖人

    ○浦野委員 ありがとうございます。  浜中参考人にお聞きしたいんですけれども、先ほど佐藤委員からの質疑でもありましたけれども、インドが交渉のテーブルにまた戻ってくるかどうかというのはまだ分からないですけれども、日本としては戻ってきてもらいたいというふうに考えている、そのためには何が必要なのか、何が必須なのかということを一つお聞きしたいことと、あと一点、ミャンマーの話もありましたけれども、今、国際的にどういうふうにこれに対処していくかというのは非常にセンシティブな問題ですけれども、日本がミャンマーに対して果たすべき役割というのはどういったものなのかという考えを持っていらっしゃるか、お聞かせをいただけたらと思います。     〔伊藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕
  55. 浜中慎太郎

    浜中参考人 御質問ありがとうございます。  まず、インドについてなんですけれども、やはり後から入っていくというのは難しいんだと思うんですよね。そこをできるだけ小さくするために、インドについては特別、ほかの新しく入ってくる国よりは少しは違う扱いにするという理解になっているんだと思うんですけれども、やはり、インドが農業の問題を含めて国内で非常にネガティブな面があるというものを上回るものを、日本を含めたほかのASEANの国は提供していかなくちゃいけないんだと思うんです。  だから、どんどんどんどん縮小均衡で、では、これはやらなくていい、これはやらなくていい、これはやらなくていいじゃなくて、これはやろう、では、これも上げるよ、そういう感じでやっていかなくちゃ交渉はいけないと思っておりまして。  そういう意味でいうと、先ほども申し上げましたけれども、インドにとって非常に重要な貿易という面でいうと、やはりサービス、ここの部分でどれだけインドに納得させることができるのか、インドの資格職業の人がどれだけ日本に来られるのか、そういうことをやはり考えていかないと駄目で、やはり、ネガティブな面があるのはそうなんだけれども、こういうポジティブな面があるよ、インドはサービス産業が強いでしょう、エンジニアの能力が高いでしょうというふうなやり方をやっていくというのが私としてはいいと思います。  それから、ミャンマーの問題なんですけれども、これは非常に難しくて、私は国際関係論がバックグラウンドなんですけれども、一般的に、日本がパイプを持っていると言われるんですけれども、恐らくほかの国もパイプを持ったんですけれども、そのパイプを使わないことにした。でも、日本はそういう段階には至っていないという意味で、日本がほかの国よりもパイプを持っているわけで、本当にそのパイプを使えるのかというと、やはり難しいわけなんですよね。だから、そういう意味でいうと、よくメディアでも言われていて、日本はパイプを持っているんだからということで、何かうまくやろうというようなことはやはりなかなか難しいんじゃないのかなと思います。  では、日本は人権についてどう考えるんだ、アジア的な人権というのはあるのか、欧米と違うものがあるのかと。やはりこれに対して日本は答えを持っていないんだと思うんですよね。なので、やはり日本は、先ほどの経済交渉も一緒なんですけれども、根本的なところでちゃんとした考え方を持っていないので、なかなかいろいろなところに行って活躍するというのは難しくなってきている。  やはり根本的な問題、欧米的な人権じゃない、アジア的な人権はあるのか、アジア的な民主主義はあるのか、こういうようなことを、これはもう国会議員の先生だけじゃなくて、学者も含めてしっかり考えていくということをやらなくちゃいけなくて、日本はそういう大きなテーマにここもう二、三十年取り組んでいなくて、そういう意味でいうと、本当にやはり学界も含めて活力が低下しているな、非常に、自分でもいろいろやっていかなくちゃいけないなというふうに感じているところであります。  ありがとうございます。
  56. 浦野靖人

    ○浦野委員 最後の質問になります。あと一問だけ。浜中参考人に、最後、台湾について。  これから、アメリカを含めて、どういうふうに台湾との経済関係を築いていくかというのは大きなまた課題となってくると思うんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  57. 浜中慎太郎

    浜中参考人 台湾は非常に難しい問題だと思うんですけれども、本日議論している国際政治経済という観点でいうと、台湾がどこかのFTAに入ることができるのかということであると思います。  例えば、TPPに台湾が入りたい、私は大いに議論するべきことだと思います。台湾が先に入ると中国が入りにくくなる、そういうことは私は考える必要はないと思いますね。WTOにおいても、台湾と中国というのはほぼ同時に加盟しています。  むしろ、例えばですけれども、中国というのはRCEPを拡大しようとしているわけで、本当に裏技として台湾を入れるということすらやるかもしれないと思います。台湾をRCEPに入れることによって、台湾とFTAを結びたい国がどんどんRCEPに入ってくるというようなことも起こる可能性としてはあるわけで、台湾を特別視するんじゃなくて、やはりWTOのメンバーを持っているわけで、貿易交渉、通商交渉という場合においては、やはり、台湾を普通の国とみなして、普通に交渉していくということで私はいいと思います。  以上です。
  58. 浦野靖人

    ○浦野委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  59. あべ俊子

    ○あべ委員長 次に、山尾志桜里君。
  60. 山尾志桜里

    ○山尾委員 国民民主党の山尾志桜里です。  参考人のお三方、今日はありがとうございます。  まず一点目です。浜中参考人にお伺いをしたいと思いますが、先ほど、今回、電子商取引には紛争処理がないというお話とか、電子商取引についてはやはり日本の明確なビジョンというのを持つべきじゃないかというか、持っていないんじゃないかというようなお話もありました。  そこでお伺いをしたいんですが、今回、電子商取引分野で、安全保障上の理由とか公共政策上の理由とか、例外がかなり広く認められるんじゃないか、それを懸念として捉えるべきなのか、今回はこれでよかったんじゃないのというふうに捉えるべきなのか。今後、この電子商取引分野において、自由度を上げていくという意味のハイレベルをこれまでのように目標にすべきなんだろうか、ちょっと違うんじゃないかというふうに私自身思っています。  先ほどおっしゃっていたように、企業の自由ベースのアメリカ、個人の権利ベースのヨーロッパ、そしてデータは国家のものという中国、こういう中で、日本がデータ分野電子商取引分野でどういう方向を目指すのかということをきちっと考えながら、電子商取引分野のハイレベルなるものを日本としてはどこに置くのかということをやはり今回突きつけられたというふうに思いますが、浜中委員から御意見を伺えればと思います。
  61. 浜中慎太郎

    浜中参考人 ありがとうございます。  私も全く同意見で、やはりそれは議論していかなくちゃいけなくて、私個人としてどうしたらいいんだという意見をはっきりと今この時点では持ち合わせておりません。やはりこれは日本国家、日本全体、産業界、それから市民グループ、あるいは弁護士、そういった人たちも含めて議論していかなくちゃいけない。  日本交渉のよくないところは、日本は何がやりたいというのがないので、直近で結ばれたFTAに引きずられるというのがあります。これは学界では、いろいろなジャーナルとかの論文を見ても、韓国もそうだと。やはりTPPを結んだからTPPひな形にだとか、RCEPを結んだからRCEP、直近のものに引きずられちゃって、それで次の交渉をやっていくということがあって、日本もその影響が私は多いと思うんですけれども。  やはりそうじゃなくて、本当に日本が欲しいものは何だというのをしっかり持つことによって、前回取れなかったけれども今回はこれを取りにいくということができて、電子商取引は本当に今後重要な分野になりますから、日本としてどういうのがいいのかというのを考えていくべきだと思います。  おっしゃるとおり、全部自由にすればいいというアメリカの考え方TPP日本が引きずられて交渉していますけれども、本当に日本国内で議論をしたらそうなのかというと、私は、もしかしたら違うんじゃないのかと思っています。やはり、何かあったときに政府がデータを使うということに関して、恐らく日本はほかの国よりも寛容な立場を持っている人が多いんじゃないのかというふうに個人的には思っています。  だから、こういうことを、国民の、市民の、個人の意見をどうやって反映させていくのかというのは難しいんですけれども、個人のプライバシー、データの問題なので、やはりこれは正面切って国民的な議論をやっていくべきだ。知らないうちに協定電子商取引が入って、実は個人のプライバシーのことに関連することが入っていてというのじゃなくて、やはりこれはすごく重要な問題なんだよといって議論していくということが必要だと思います。
  62. 山尾志桜里

    ○山尾委員 ありがとうございます。  やはりフェイスブックのケンブリッジ・アナリティカの事件などもあって、フェイスブックのトップ自体が、ちょっと自分たちだけで権利保障するのには限度があるから、むしろ国家がルールを作ってくれというような発信をしたことも話題になりましたし、日本も、アメリカ型あるいは欧米型、どっちなのかというよりも、今そういう状況で、多分、アメリカとヨーロッパが一定程度歩み寄りながら、共通の価値観でデータを用いていく国とともにデータを共有することによって、このデータ市場で負けないようにしていこうというような動きがあると思いますので。  私は、やはり日本というのは、そういった価値の国々と大きな方向性を共にしながら、今言っていただいたような、日本国民の共有するその総意みたいなものをきちっと探っていく時期に来ているのではないかなと思いました。  二点目なんですけれども、鈴木参考人の方からはISDSに対する懸念のお話があって、私も懸念をしているので、ちょっとその点を、むしろ伊藤参考人、そして同じく浜中参考人にお伺いをしたいと思います。  今の問題意識とちょっと重なるかなと思うんですけれども、企業国境を越えて国家よりも大きな影響力を与えていくような状況とか、あるいは一方で、中国のように、企業が国家の意思を、もしかしたら訴訟なども通じて体現していくような、そんな国もある中で、このISDS条項について、これまでは、日本は、これは大事だ、入れていくべきだという方向でやってきたんですけれども、やはり少し立ち止まって考える必要もあるのかなというふうに私は思っていますが、その件について、お二方、御意見をいただければと思います。
  63. 伊藤元重

    伊藤参考人 お答えします。  多分、もろ刃のやいばで、一方でISDSがない中で、では企業投資をするのかどうか、あるいはしたときに、いわば権利が守られるかどうかということに関して不安感を持っているということと、他方で、しかし、そのISDS条項を非常に濫用していろいろなゆがみが出るという、今議論されていた話があるので、そういう意味では、あるべきであるのか、あるべきじゃないのかという一般論で議論するのは非常に難しいと思いますね。  更に申し上げれば、釈迦に説法ですけれども、国内法を使って企業は当然訴えることは可能なわけですから、あえてISDSというのを置いておくかどうかということの議論は必要だと思いますので、日本もたしか、私の記憶が間違っていなければ、FTAでもフィリピンはISDSを入れなかったような記憶があるので、ケース・バイ・ケースで対応しながら着地点を探していくしかないのかなというふうに思います。
  64. 浜中慎太郎

    浜中参考人 ありがとうございます。  基本的な考え方は私も全く一緒でして、やはりこれはちゃんと議論した方がいいよということなんだと思います。  TPPのときに議論をしたのに、その後やはり世の中が変わって、ISDSに反対の国がかなり増えているという中で、この議論が止まってしまっている。恐らく、RCEP議論しても、日本韓国は入れたいと。というのは、TPPに入っているから、特に日本は入れたいということなんですけれども、RCEPの中で議論したら、かなり慎重な国が多いと思います。  例えばインドネシアなんて、もうISDSは嫌だと。南アとかブラジルとかもそうなんですけれども、そういう国もかなり途上国を中心に増えているので、必ずしも、ISDS中国だけが反対というわけではない。やはりここを考えなくちゃいけないんですけれども、同時に言うと、今まで日本はやはりISDSを入れるということを中心にやってきて、今回、中国、最も重要な国です、日本が最も投資をしていて最も重要なところが、ISDSは嫌だと。こうするとビジネスの計画が狂っちゃうよねというところはあるので、日本ISDSを欲しいんだったら、やはり中国には欲しいよねと。  逆に言うと、中国がのんでくれないようなISDSだったら、では、ほかの国に押しつけるのということになるわけで。だから、中国はないけれども、インドネシアは、もうおまえはサインしたんだから訴えるよというのもやはりおかしいので、やはり日本は一度立ち止まって、状況が変わってきたというのも踏まえて、もう一度議論するべきだと思います。  これは、企業の権利だとかそういうことはやはり根本的な問題なので、さっきのデータの問題と一緒で、企業投資活動、国際的な資金フローの話、それからデータの問題は、国内だけじゃなくてもう国際的になっているので、これをどう考えるんだというところで、やはりこれは根本的な議論をもう一度やった方がいい内容だと私も思います。
  65. 山尾志桜里

    ○山尾委員 せっかくなので、鈴木参考人にもお伺いしたいと思います。  今お話にもあったように、私はISDSに結構懸念を持っています。その上で、ただ、やはり海外で活動する日本企業の正当な権利を守るために、ほかにどんな紛争解決メカニズムが考えられるんだろうかということについて、もしコメントがあれば伺いたいです。
  66. 鈴木宣弘

    鈴木参考人 御質問ありがとうございます。  おっしゃるとおり、ISDSがあることによって、日本企業がいろいろ海外で活動するときに理不尽な理由で止められるというようなことがないようにしたいという気持ちというか必要性はよく分かります。  ただ、ISDSの問題は、それが例えば人の命を守る環境規制だったりになっても、それよりも企業利益の方が重要だから、環境規制をやめさせて、企業の利益を優先するというような判決が出てしまうから大変問題なわけですね。  ですので、そういうふうなISDSは一刻も早くやめるべきだ。そうでなくて、企業の、正当な理由があって操業を続けようとしているのに、それを止めるようなことに対しては、それをちゃんと、そういうことはちょっと無理だよねということがちゃんと訴えが通るような仕組みは必要だと思います。  ですので、その部分をしっかり仕分けするということが重要なんじゃないかと思っております。
  67. 山尾志桜里

    ○山尾委員 ありがとうございました。  その上で、最後、お三方にお伺いします。  私、今回、RCEP、やはりミャンマーで、二月一日以降、大きく合意時から状況が変わっている、そしてまた、中国でも、ウイグルを始め幾つかの地域で、深刻な、香港を含めて、人権弾圧が指摘をされている。それは必ずしも一部の地域じゃなくて国際社会の大きな懸念になっている中で、ちょっと、この国会承認タイミング、あるいは、承認の後、日本政府として書面を寄託するタイミング、ここはやはりよくよく見極めるべきだというふうに思うんですね。  そのことについて御意見を伺いたいのと、今、では、国内手続をやっている国はどこなんですかというと、中国が、中国とタイは終わりましたなんということを発信している。寄託した国は、先日、外務省に聞いたら、ないと言っていましたけれども、一部、シンガポールは寄託したのではないかなんという話も出ている。もし、そういった国内手続を終えた国、あるいは寄託をした国がこういうのがあるというような情報などがありましたら、それも併せてお伝えをいただければと思います。  私は、やはりオーストラリアとニュージーランドの動向をよく連携して見極めて、入っていくタイミングを図った方がいいんじゃないかと思っているんですけれども、いかがでしょうか。お三方に。
  68. 伊藤元重

    伊藤参考人 私、今、各国がどういう状況なのか見ているわけじゃないんですけれども、ただ、おっしゃるように、ほかの国が今、この特にウイグルの問題とそれからミャンマーの問題に対してどういう対応をしているかということは、やはり注意深く見る必要があるだろうと思います。  その上で、ただ、では、それを理由にRCEPのいわゆる批准を遅らせるという判断を仮にするとすると、それはそれでまた別の意味で大きな影響があるので、先ほど言いましたように、人権の問題と経済の問題、それは今の段階ではまだ切り離して考えるべきであろうというふうに思います。
  69. 浜中慎太郎

    浜中参考人 非常に難しい問題だと思いますが、私は、各国がどういう動向になっているかというのはフォローする必要がありますけれども、同時に、やはり日本がどうしたいんだということだと思うんですよ。日本がそういう人権みたいなものとこれを結びつけるのかどうなのか。私は、結びつけなくて個人的にはいいと思います。これはもう別の問題だから粛々とやるという考え方もありだと思います。  だから、私の答弁は全部一緒になっちゃうんですけれども、やはり日本が何をやりたいかまず考える、その上で相手を見て決める。日本が何をやりたいか分からないから相手を見る、これではやはり、余り格好いいとは思えないと思います。だから、結局、日本はそういう人権みたいな問題と経済交渉をリンクさせるんだ、させないんだ、そこのところはやはり考えないといけないと思います。
  70. 鈴木宣弘

    鈴木参考人 私は、RCEPには当初、少し期待しておったんです。WTOFTAが、そもそも短絡的な、全てなくせ、知財権だけは強化だということを言っていたのでは世の中はよくならない。だったら、アジアで非常に条件の似ている国々で、例えば農業でいえば、非常に小さな、分散した、水田農業を中心とするアジアの多様な農業がちゃんと生きていける、あるいはアジアの種の多様性が守られるようなルールアジアを中心にして作って、その経済連携協定の力でWTOの短絡的なルールを改革する力を発信していく、そのような形の協定であれば、私はRCEPはいいものになると思っていました。  ただ、残念ながら今のところそうはなっていない。知財権の強化等についても、かなりほかのものよりは踏みとどまった感はあります。農業についても、ある程度は抑制したといいますけれども、やはりその抑制の程度は全然足りなくて、非常に問題のある方向に行ってしまっている。  ですから、そういう意味でいうと、しっかりと今見えてきている問題点についても余り議論されないままで、これを急いで承認するというのは、他の国との関係云々よりも、日本として、国内の皆さんに対してもそれでいいのかということをしっかりと議論していただきたいというふうに考えております。
  71. 山尾志桜里

    ○山尾委員 本当にありがとうございました。大変参考になりました。  やはり、参考人意見というのは質疑終結の日に聞くのではなくて、これから先、質疑にちゃんと結びつけられていくような委員会運びを今後目指していきたいと改めて思いました。  本当にありがとうございました。
  72. あべ俊子

    ○あべ委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。  参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  参考人の方々は御退席いただいて結構です。ありがとうございました。  速記を止めてください。     〔速記中止〕
  73. あべ俊子

    ○あべ委員長 速記を起こしてください。     ―――――――――――――
  74. あべ俊子

    ○あべ委員長 質疑を続行いたします。  引き続き、地域的な包括的経済連携協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  この際、お諮りいたします。  本件審査のため、本日、政府参考人といたしまして外務省大臣官房審議官赤堀毅君、大臣官房審議官曽根健孝君、大臣官房参事官有馬裕君、大臣官房参事官御巫智洋君、大臣官房参事官原圭一君、総合外交政策局長山田重夫君、アジア大洋州局南部アジア部長小林賢一君、経済局長四方敬之君、内閣官房内閣審議官安東隆君、内閣沖縄振興局長原宏彰君、金融庁総合政策局参事官井上俊剛君、農林水産省大臣官房輸出促進審議官池山成俊君、経済産業省大臣官房審議官田村暁彦君大臣官房審議官渡邉洋一君、大臣官房審議官三浦章豪君、防衛省人事教育局長川崎方啓君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  75. あべ俊子

    ○あべ委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  76. あべ俊子

    ○あべ委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。薗浦健太郎君。
  77. 薗浦健太郎

    ○薗浦委員 自民党の薗浦健太郎でございます。今日はよろしくお願いをいたします。  この間、いろいろお話を伺っておりました。RCEPが発効した後、こういう厳しい環境に置かれるであろう方々への質疑、それをどう手当てするのかというのも種々聞かせていただきましたけれども、他方、我々が取ったもの、このRCEPで取ったものを最大化して利益を大きくし、さらに、雇用を増やし、国民所得を増やすような施策というのもきちっとやっていかなければならない。  この観点で、もう今年の予算でいろいろ確保しているものがあれば、また、今後、政策的に最大化するためにここをやっていくのだということがあれば、まず、各省それぞれお伺いをしたいと思います。
  78. 田村暁彦

    田村政府参考人 お答え申し上げます。  まず、RCEP協定における成果でございますけれども、鉱工業品に関しまして申し上げますと、例えば、物品の市場アクセス分野におきまして、自動車部品、鉄鋼製品、地場特産品を含む鉱工業品につきまして、対象十四か国全体で九二%の品目の関税撤廃を実現いたしました。  特に、我が国がこれまでEPAを締結しておりません中国及び韓国につきましては、本協定により、我が国からの鉱工業品の輸出品目に占める無税品目の割合が、最終的には、中国は現在の八%から八六%に、韓国は一九%から九二%に上昇いたします。  次に、先生御質問の、その成果を最大化するための政策でございますけれども、政府といたしましては、こうしたRCEP協定成果を最大限に活用するため、昨年十二月に総合的なTPP等関連政策大綱を改定いたしたところでございます。  経済産業省といたしましては、同大綱に基づきまして、我が国の事業者が成長市場を取り込むとともに競争力を強化できるよう、令和三年度当初予算や令和二年度三次補正予算等も活用し、まず、EPAの活用促進のためのセミナー開催や、相談窓口等を通じた情報提供、相談体制の構築、また、海外の主要な電子商取引サイトに設置したジャパン・モールを利用した日本産品の販売支援、さらに、ジェトロや中小機構等を中心とした新輸出大国コンソーシアムを通じました専門家によるきめ細かなサポート等を整備いたしまして、これらの政策に取り組んでまいる所存でございます。  以上でございます。
  79. 池山成俊

    ○池山政府参考人 お答え申し上げます。  農林水産物、食品の輸出拡大の関係でございますが、このRCEPで粘り強く交渉いたしました結果、中国に対しては、パック御飯等、米菓、ホタテガイ、ブリ、しょうゆ、切り花、韓国に対しましては菓子、インドネシアに対しては牛肉等の輸出拡大が期待される品目の関税撤廃を獲得いたしました。  また、昨年十一月に取りまとめられました農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略におきまして、二十七の輸出重点品目を選定しております。これについては、品目別に具体的な輸出目標と主要なターゲット国を設定いたしますとともに、輸出産地の育成や大ロットの輸出物流の構築など、マーケットインの輸出体制の構築のための政策を推進していくこととしております。  この戦略を実施するため、令和三年度当初予算におきましては九十九億円、令和二年度三次補正予算におきましては三百九十六億円を措置しておりまして、具体的には、官民一体となった海外での販売力強化、マーケットインの発想で輸出にチャレンジする農林漁業者の後押し、政府一体となった輸出の障害の克服等に取り組むための予算を措置しております。  RCEPのこの成果も最大限に活用しながら、輸出拡大実行戦略に基づき、政府一体となって輸出拡大に取り組んでまいりたいと考えております。
  80. 薗浦健太郎

    ○薗浦委員 ありがとうございました。  RCEP交渉云々を振り返ってみると、ASEAN五十周年、二〇一七年頃は、ASEAN諸国は、ASEAN五十周年で大筋合意するんだということでえらい頑張っていたんですけれども、やはり中印がなかなかまとまらずに、ずるずる延びてしまった。  他方、最終盤のこの交渉過程を横から見ていると、明らかに、アメリカの政権移行期で、中国が今まで降りなかったところもある程度降りて、最後、インドをほっぽり出す形でまとめた、まとめたというか、まとまってしまったと言う方もいらっしゃるでしょう。  そういうことを考えたときに、例えば、一方で、TPPはアメリカ主導でそもそもやっていたのに、アメリカが抜けている。RCEPではインドが抜けている。  日本の立ち位置というのを明確にすべきだと思うんですけれども、戦後の日本というのは、今ある、例えば自由、人権、そして法の支配というものに基づいて、いわゆるルール・ベースド・オーダーに基づいて今日の経済的発展を、繁栄を享受してきた。であるとするならば、我々は、きちっとこの既存のルールを守るべき立場の国なのだということを明確にすべきだと思います。  それに力で挑戦をしてきているのが中国、既存のルール自分たちルールに書き換えようとしている。こういう観点で見れば、やはり、TPPRCEP日本と価値観を共にする国が多い方がいいに決まっている。そういう観点で物を見たときに、やはりアメリカをTPPに戻す努力、そして、インドがこのRCEPに入ってくるような、再交渉を含めた様々な努力というものをやるべきじゃないかと考えますけれども、お考えをお聞きしたい。
  81. 四方敬之

    ○四方政府参考人 お答え申し上げます。  米国のTPP復帰につきましては、アメリカは世界で最もグローバル化や技術革新が進んでいる国でありまして、日米貿易交渉に際しても、この点を含め、米国がTPPに参加することは、米国経済にとっても戦略的観点から望ましいというふうに説明してまいりました。  バイデン政権の現状の通商政策は、まずは国内の雇用政策等を重視し、それまで新たな貿易協定は結ばないということだと承知しておりますけれども、いずれにしましても、バイデン政権とは、通商政策も含めまして、しっかり意思疎通を図ってまいりたいと思っております。  RCEP協定は、八年もの歳月が交渉に費やされ、最終局面において、オーストラリア、ニュージーランド、ASEAN諸国を含む多くの交渉参加国の間では、本協定の二〇二〇年中の署名が最優先の目標となっておりました。このような状況下におきまして、我が国としては、まずは本協定に署名し、本協定を通じて、インド太平洋地域における経済秩序の形成に主導権を発揮していくことが我が国の国益にかなうと判断いたしました。  インドのRCEP復帰につきまして、十三億人の人口を有するインドは、近年、着実に経済成長を実現しており、インド太平洋地域における経済大国の歩みを進めております。また、ITやワクチンの生産においても重要な国であると認識しております。  したがいまして、地域貿易投資の促進、デジタル貿易の拡大、さらに、サプライチェーンのメリット向上を目指すRCEP協定にとって、インドが参加することの意義は大きく、我が国といたしまして、インドのRCEP復帰に向けて、インドとも更に対話を行いつつ、RCEPの内側から引き続き主導的役割を果たしていく考えでございます。
  82. 薗浦健太郎

    ○薗浦委員 ありがとうございました。  TPPの米国復帰に関しては、いろいろ話を聞いていると、労働分野でより高いものじゃなければなかなかアメリカとしては難しいというような話も聞いておりましたけれども、逆に、それをやると、今度、ベトナムとかマレーシアが非常にしんどいことになるということで、なかなか難しいのは承知をしています。  一方、アメリカも、当然、戦略的意義についてはもう重々承知をしているわけですから、そこはTPP11を主導した日本が中心になって、間に立ってやっていただきたいと思っています。  他方、RCEP中国が入っているわけですけれども、先ほど来あるように、例えば電子商取引分野とか投資分野でなかなか懸念事項が残っているなという面もございます。  そうした観点から、例えばTPPと比べて、若しくはほかの通商の協定と比べて、このRCEPで不十分な点、若しくは、今後より改善していかなければならない点を含めて、今回はこれでやったけれども、今後こういうところを更に改善をしていくのだという点があれば、お教えいただきたいと思います。
  83. 四方敬之

    ○四方政府参考人 今回のRCEP協定におきましては、ルール分野、例えば電子商取引投資知的財産権等、WTOには定められていない、いわゆるWTOプラスのルールも入っております。  ただ、RCEP協定におきましても、今後、更にRCEP協定を改善していくという観点から、見直しの条項も入っておりますので、今後、そのような観点から、我が国といたしましても、RCEPの更なる発展、これは発効後でございますけれども、それに向けまして取り組んでまいりたいと思います。
  84. 薗浦健太郎

    ○薗浦委員 ありがとうございます。  通商交渉というのは、もう重々承知のとおり、国益の奪い合い、いかに我が国の国益を守り、かつ、取るものを取るかというところですから、その観点から、我が国企業を含めて、よりベネフィットを得られるような形で臨んでいただきたいと思っています。  最近、いろいろな通商交渉を含めて、いろいろな対話、いろいろな話をしていると、よく話に出てくるのがASEANであります。成長力、それから人口規模を含めて、世界中の国が今、ASEANの成長力というものに期待をしている。  例えば、補佐官時代に日英の戦略対話というのを立ち上げましたけれども、このときイギリス側が非常に言ってきたのが、日本とイギリスで共にASEAN投資をしたい。もちろん安全保障とか海洋の話もしたんですけれども、ASEANへの英国の投資ということに非常にこだわっていた。  例えば、日仏海洋対話を立ち上げるときも、フランス側は、もちろん彼らはニューカレドニアを持っていて、太平洋艦隊を置いていて、自分たちは太平洋国家だと、冗談か何か分からないようなこともたまに言ったりするけれども、彼らも、やはりASEANの成長力というものにすごく期待をしている。オーストラリアは、豪・ASEAN対話というものを立ち上げて、現実、これが動き始めている。  今、いろいろな国がASEANの成長力というものを取り込もうと躍起になっている。日本はずっと、ASEANとの対話、支援、そしていろいろなものをやってきました。一日の長があると僕は思っています。民間でも、ASCOJA、アスジャという枠組みで様々な対話を重ねてまいりました。  この一日の長があるASEAN、そして今成長していく、これを今、結実というか、日本が利益を得る、日本にとっていいような形に持っていく、そういう絶好のタイミングではないかと考えていますけれども、ASEANに対する認識とそれから今後のASEANへの政策について、お話をお伺いしたいと思います。
  85. 小林賢一

    小林政府参考人 お答えいたします。  人口六・五億人のASEANは、世界の成長センターであるとともに、インド太平洋の中心という地政学的要衝に位置しており、自由で開かれたインド太平洋実現に向けた要でございます。また、東アジア首脳会議ASEAN地域フォーラムなど、インド太平洋地域地域協力の中心でもある、このように認識をしております。  ASEANは、二〇一九年に、開放性や法の支配といった原則を掲げる、インド太平洋に関するASEANアウトルックを発出いたしました。戦略的なパートナーである日本ASEANとの間で、昨年十一月のASEAN首脳会議では、このASEANアウトルックと日本が推進する自由で開かれたインド太平洋が本質的な原則を共有しているということを首脳声明で確認したところでございます。  今後は、このアウトルックの重点分野であります海洋協力、連結性、SDG、経済などで具体的な協力案件を進めてまいります。こうした取組を通じまして、日・ASEAN戦略的パートナーシップを一層強化するとともに、ASEANと共に働く、協働という視点を持って、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて取り組んでまいりたいと存じます。
  86. 薗浦健太郎

    ○薗浦委員 ありがとうございます。  ASEAN、二、三年前ですけれども、全部行かせていただいて、いろいろな方々とお話をさせていただきました。このときに、もちろん、昼間の会談は、お互い、これをやりましょう、あれをやりましょうと言うんだけれども、そうじゃない場面で話をしていると、彼らの本音というのは、米中の引っ張り合いに巻き込まれたくない。彼らはよく、セントラリティーとユニティー、中心性と一体性といいますけれども、ASEANASEANでやりたいんだということをよく言っていました。  我々がいろいろ申し上げたのは、ASEANアウトルック、今話をいただきましたけれども、例えば、中国の一帯一路というのは、中国のナラティブ、中国の一帯一路という戦略に参加をすることによって恩恵を受けることができる、つまり中国主導である。だけれども、我々が今進めている自由で開かれたインド太平洋というのは、それぞれが主権を持っている。アメリカはアメリカのFOIPがある。インドもインドの海洋戦略を立ち上げた。豪州は豪州で独自の海洋戦略を作って、太平洋担当大臣というものまで置いて、今一生懸命やっている。日本も自分のものを持っています。  そういう意味では、米中の対立に巻き込まれたくないとずっと言っていたASEANが、今話のあったASEANアウトルックという独自の海洋戦略を作って、自分たちでやるのだという意思を明確にしたのは、これは非常に画期的なことだと僕は思っています。  だからこそ、今いろいろおっしゃっていましたけれども、具体的な案件で、要は、日、ASEAN両方が利益を得る共益、利益を得るような具体的な案件形成を急いでやらなければならないと考えていますけれども、今後の取組について改めてお伺いできればと思います。
  87. 山田重夫

    ○山田政府参考人 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のございましたように、自由で開かれたインド太平洋、これは、インド太平洋地域におきまして、法の支配を始めとする共通の価値や原則に基づく自由で開かれた秩序を実現することによって、地域全体ひいては世界の平和と繁栄を確保していくという考え方でございまして、今やアメリカのみならず、オーストラリア、インド、ASEAN、さらには欧州諸国といった多くの国から賛同や支持を得ている考え方でございます。そして、この考え方、ポストコロナに向けてますます重要になっていると認識しております。  委員御指摘のとおり、この自由で開かれたインド太平洋は、その実現に向けて、ビジョンを共有する国々と協力して取り組んでいくものでございまして、アメリカとの間の協力に加えまして、先ほど御指摘のございましたように、ASEANとの関係では、昨年十一月の首脳会談において、インド太平洋に関するアウトルックに沿って具体的な協力案件を進めていくことで一致いたしまして、ただいま、この具体的案件の推進に向けて調整を進めているところでございます。  また、先月行われました日米豪印首脳テレビ会議でも、自由で開かれたインド太平洋というビジョンを共有していることを確認した上で、これまで質の高いインフラ、海洋安全保障、人道支援、災害救援といった分野で協力が進展していることを歓迎するとともに、新たに、ワクチン、重要・新興技術、気候変動について作業部会を立ち上げることで一致いたしました。  国際情勢が流動化する中、こうした様々な分野において、ビジョンを共有する国々と具体的な協力を進めていくことが極めて重要でございまして、引き続き、アメリカ、オーストラリア、インド、ASEAN、欧州諸国などと具体的な協力を積み上げてまいりたいと考えております。
  88. 薗浦健太郎

    ○薗浦委員 ありがとうございました。  TPPそれから日・EU、そして、ここまでこのRCEPと来ておりますけれども、太平洋同盟の諸国はこれに入っていますけれども、最後、FTAAPという、よりでかいのが残っていますけれども、これに対する今の時点での考え方を最後にお聞かせをいただきたいと思います。
  89. あべ俊子

    ○あべ委員長 四方経済局長、答弁は簡潔に願います。
  90. 四方敬之

    ○四方政府参考人 APECにおきましては、昨年十一月に、アジア太平洋地域の中長期的な方向性を示すビジョンでありますAPECプトラジャヤ・ビジョン二〇四〇が採択されましたが、その中でも、FTAAP、アジア太平洋自由貿易圏のアジェンダに関する作業を通じて、経済統合を更に推し進める旨言及されております。これに沿って、APECとしてもFTAAPの実現に向けた取組を推し進めることとしております。  FTAAPへの道筋であるTPPに続きRCEP合意に至ったことは、FTAAPの実現に向けた大きな一歩であると考えておりまして、我が国としましては、FTAAPを含め、質の高い包括的、かつ、より広い地域をカバーする自由貿易圏の実現に向けて、今後とも必要な取組を行ってまいりたいと存じます。
  91. 薗浦健太郎

    ○薗浦委員 ありがとうございました。
  92. あべ俊子

    ○あべ委員長 次に、鈴木貴子君。
  93. 鈴木貴子

    鈴木(貴)委員 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。  時間も限られておりますので、早速質問に入らせていただきたいと思います。  午前中の参考人質疑の中で、リーダーシップ論、イニシアチブ論、その参考人の方は、イニシアチブ、主導権争い、主導権論よりもやはりリーダーシップ論であるべきだというようなお話なども伺いながら、私も話を聞いていたところであります。  その中で、もう一つ重要な視点、特に私自身コロナ禍で感じるのは、よく行動力と機動力という言葉もありますけれども、正しい知識に基づいて行動する、単純な行動力のみならず機動力というものが、臨機応変な対応、その場において何ができるのかということを追求をするという意味でも、機動力というものが非常に、今、政治、政治家に求められているのではないだろうか、このような思いも持っているところであります。  また、大臣が過去の御講演等でも、進化論で知られるダーウィンの言葉を引用されていたこともあるかと思います。生き残るのは最も強いものでも最も大きいものでもない、最も変化に対応できるものだ、こういったダーウィンの一説も引用されていたところでありますけれども、まさにこれは、経済のみならず、外交、安全保障、国際社会の中における日本のまさにポジションという意味でも相通じるところもあるのではないのかなと思っております。  流れに乗っていくのではなく、まさに日本が流れをつくっていくんだ。国際社会の中におけるルールを作っていく、そしてまた、ルールを守らせていくというまさにポジションというものが重要なのではないのかなと思っておりますが、政府としてはどのような考えを持っていらっしゃるでしょうか。
  94. 茂木敏充

    ○茂木国務大臣 ダーウィンの「種の起源」でありますが、そこで述べている生存競争、これは、例えばライオンとシマウマはどちらが強いか、こういう個体同士の弱肉強食の世界ではなくて、まさに、種(たね)である種(しゅ)、スピーシーズの環境への適応力、この話であると思っております。  この環境への適応力、たまたま生じた種の異変、それがその環境にとって有利であるか不利かによって生存が決まってくる。いわゆる自然淘汰という話でありまして、その自然淘汰も、例えば、キリンの首が長いのは、高い木の葉っぱを食べるためにだんだん長くなってきたのではなくて、たまたま首の長い種のキリンが生存してきたということで、環境適応力を目的として種が変異してきたわけではないわけであります。  そのような中で、唯一環境適応力を持ってきたのが人類である、このように考えておりまして、ただ、その人類ですら、今、気候変動であったりとか新型コロナであったり、そういった危機に直面をしていると思っております。  経済も同じような状況があると思っております。グローバル化が進んでおります。しかし、その一方で、保護主義であったりとか、さらには内向き志向、こういったものが高まる中で、日本としては、TPP11から始まりまして、日・EU・EPA、さらには日米貿易協定、デジタル貿易協定、日英包括的EPA、そして今御審議いただいておりますRCEP、まさに自由貿易の旗手として、こういった新しい時代の新しい環境、これに適応するためのルール作りを主導してきたわけでありまして、今後、デジタルの分野もそうであります、WTOの改革もそうであります、そういったところにおきましても、日本がこれまで得てきた評価、こういったものもプラスの材料にしながら、しっかりと主導力を発揮していきたいと思っております。
  95. 鈴木貴子

    鈴木(貴)委員 ありがとうございます。  ちょっと通告の順番を変えさせていただきたいと思います。三つ目にちょっと移らせていただきたいと思いますが。まさに、これまでの議論の中でも、中国主導論についても度々質疑があったところであります。そこで、確認を是非させてください。  このRCEPにおいては、まさに、先ほどの質疑にもありましたように、ASEANが主導であるように、しっかり私は配慮がされていると思っております。というのも、署名時の首脳共同声明においても、RCEP協定が、ASEANにより開始された最も野心的な自由貿易協定であり、地域枠組みにおけるASEAN中心性の増進及びASEAN地域パートナーとの協力の強化に寄与することに留意するという一文が盛り込まれていると思っております。  これは、裏を返せば、特定の国が一方的な主導権をまさに握らないようにということが強調されている、そしてまた、それがこの加盟国における共通の認識であるということの証左だと思っておりますが、この認識における見解を是非教えてください。
  96. 茂木敏充

    ○茂木国務大臣 詳細については、この後参考人の方からも答弁させていただきたいと思うんですが、先ほどの薗浦委員の御質問もそうでありましたけれども、日本ASEANの向き合い方、恐らく欧米諸国またアジアの大国とは違って、ASEANの持っている多様性であったりとか、それぞれの国の歴史、文化、成り立ち、こういったものを尊重しながら、支援、そして一緒に発展していく。一九六〇年代以降の日本のODAの始まりというのがまさにそこにあるわけでありまして、そういったASEANの自助努力、こういうものを尊重しながら様々な取組を進めていく。  そういった意味におきましても、このRCEPについて、一部、中国が主導したんじゃないか、こういう必ずしも正しくない見方があるんですけれども、まさに我が国とASEANが推進力になって交渉を進め、そして合意に至った協定である、このことは間違いないと思っております。
  97. 四方敬之

    ○四方政府参考人 補足させていただきます。  RCEP協定は、我が国とともにASEANが推進力となって交渉が進められ、合意に至ったものでございます。このような認識は、我が国のみならず、参加国の間で広く共有されているものと考えておりまして、委員御指摘の昨年十一月の地域的な包括的経済連携に係る共同首脳声明も、そのような認識を反映したものと考えております。  したがいまして、先ほど茂木大臣からも言及がありましたとおり、我が国といたしまして、この協定中国主導の枠組みであるとは認識しておりません。
  98. 鈴木貴子

    鈴木(貴)委員 ありがとうございます。  しっかりとこの一文が盛り込まれているということは非常に重要だと思いますし、こういったこともしっかりとまた発信もしてまいりたいなと思っております。  順番を戻りまして、まさに本協定でありますが、ASEAN、そしてまた、一つ特徴として、先進国、そしてこれからの開発途上国、そして後発開発途上国というそれぞれの国が入っている。つまり、国の開発の水準、今の状態というものが異なっている多くの国々が参加しているというのは私は一つ特徴だと思っておりますが、ただ、一方で、水準が異なるからこその難しさというものももちろんあると思っております。  こういった国々を、まさに、例えば一定規定の適用除外であるとか経過期間を非常に長く設けてまでも、そういった国々というものを巻き込んでいく狙いというものは何なのか、そしてまた、将来的にも、きっとそこには間違いなく展望、メリットというものもあると思いますが、是非その点について確認をさせてください。
  99. 四方敬之

    ○四方政府参考人 お答え申し上げます。  委員御指摘のとおり、一部の後発開発途上国につきましては、例えば、サービス貿易章や投資章において一部の義務の免除を認めているほか、知的財産章においても、国内の運用変更や法制度の整備等に時間を要する国に対して、必要な範囲の経過期間が設定されております。  こうした一部義務の免除や経過期間の設定は、RCEP協定が、後発開発途上国を含め、参加国の経済発展状況等が大きく異なる十五か国の経済連携協定であることや、一部のルールが比較的新しい分野について規定するものである点等を踏まえまして、交渉の結果として認められることとなったものでございます。  一方で、参加国の経済発展状況等が大きく異なる中でも、物品・サービスにとどまらず、知的財産権電子商取引等も含めた新たなルールまで盛り込めたことは、今後発展の期待されるこの地域の望ましい経済秩序の構築に向けて重要な一歩となると考えております。
  100. 鈴木貴子

    鈴木(貴)委員 ありがとうございます。  今も触れさせていただいた後発開発途上国の中にはまさにミャンマーも入っておりまして、先ほど参考人質疑の中でも、今のミャンマー情勢に関連しての質問も出たところでありますが、ミャンマーの国営テレビの発表によっても、先週の話でありますが、九日に、国軍関係者を殺害したとして、市民十九人が軍法会議で死刑判決が出されたところであります。この十九人のうちの十七人は実に今指名手配中でありまして、つまり、軍法会議において、欠席のまま、そのまま死刑判決が下された。そしてまた、今朝のニュースでは、新たに七人の死刑判決が言い渡されたと。戒厳令下ということで上訴ということもできない中での、こういった極刑が、時間とともに、死刑判決が続々と言い渡されているという危機的な事態であると思います。  そういった中で、どう日本がまさに向き合っていくのか。私は、欧米に必ずしも追従して横並びの対応を取るべきという考えは持っておりません。ミャンマーとの日本の独自の歴史がある、また外交がある、信頼関係がある、こういったものをしっかりと生かしていくということが非常に、極めて重要であり、また、それが日本ならではのまさにポジションであり、できることだ、このようにも思っております。  そこで、経済制裁というよりも、ほかにも、例えば現在進行形で、日本といえばミャンマーとのODAが挙げられるわけでありますが、これまでのODAの資金等々が、建設案件なども今現在も進行形でありますけれども、その資金というものが果たしてこれまでどのように使われていたのか、若しくはどこに入っていたのかというようなことを改めて検証していくという作業も、これまた一つ必要ではないのかなと思っておりますが、いかがお考えでしょうか。
  101. 原圭一

    ○原(圭)政府参考人 お答え申し上げます。  ミャンマー各地のデモにおきまして、発砲を含むミャンマー治安部隊の実力行使によって多数の民間人が死傷し、拘束者が発生するなどの事態を強く懸念しているところでございます。また、国際社会の度重なる呼びかけにもかかわらず、民間人に対する暴力が継続されていることを強く非難するものでございます。  引き続き、民間人に対する暴力的な対応の即時停止、アウン・サン・スー・チー国家最高顧問を含む拘束された関係者の解放、民主的な政治体制の早期回復を強く求めてまいります。  御指摘いただきました資金の流れを確認することも重要な点であると認識しておりまして、各関係機関等と連携しつつ、事実関係の確認に努めているところでございます。  我が国はミャンマーの民主化に向け様々な支援を行ってきた最大の援助国であり、対ミャンマー経済協力の今後の対応につきましては、御指摘の点も踏まえつつ、ミャンマーにおける事態の鎮静化や民主的な体制の早期回復に向けてどのような対応が効果的か、総合的に検討してまいりたいと考えてございます。
  102. 鈴木貴子

    鈴木(貴)委員 ありがとうございます。  新規案件は止まっているということでありますが、まさに止めるだけでなく、これまでの検証というものがあってのこれからという点で、引き続きお願いをしたいと思っております。  もう一点、ミャンマーに関して、今日、防衛省にも来ていただいております。といいますのも、ミャンマー政府からの留学生を防衛省、防衛大学校はこれまでも受入れをされてきていると承知をしておりますし、今現在もミャンマーからの学生も在籍もしている、このように思っておりますが、今こういった状況において、もっと言えば、その留学生たちがミャンマーに、国に帰った後どこに行くのかということを考えたときに、改めて、今ここを是非確認をさせていただきたいと思うのは、ミャンマーからの学生を防衛大学校が受け入れている目的というものは何なのか、そしてまた、今後の留学生の受入れも含めて、対応というものをどのように考えているのか、是非お聞かせください。
  103. 川崎方啓

    ○川崎政府参考人 お答えいたします。  防衛省・自衛隊におきましては、自衛隊法第百条の二に規定する教育訓練の受託という枠組みの下で、ミャンマー政府からの依頼を受けて、二〇一五年以降、防衛大学校などにおいて留学生を受け入れてきております。  防衛大学校におきましては、これまで累計で十一名の受入れ実績がございまして、このうち六名が現在在学中でございます。  こうした留学生の受入れにつきましては、発展途上国などからの留学生に対して、民主主義国家である日本における厳格なシビリアンコントロールの下で運用される実力組織の在り方を示すこと、あるいは隊員と留学生との人的関係を構築して、我が国と派遣国との相互理解、信頼関係を増進する、こういった意義があると考えておりますが、留学生の受入れを含む今後のミャンマーとの防衛協力、交流につきましては、今後の事態の更なる推移を注意しつつ、検討してまいりたいと考えております。
  104. 鈴木貴子

    鈴木(貴)委員 ありがとうございます。  まさに、民主主義国家におけるシビリアンコントロールの重要性、そして何よりも必要性というものも含めて、やはり私は意義というものは非常に大きいと思っております。  その一方で、その学生たち、これまでの在籍をしていた学生たちとのまたコネクションといいますか関係というものもしっかりと、防衛省のみならず外務省等々、関係省庁とも連携をしながら、まさにこの二国間、何よりもミャンマー国内の安定、そしてまた地域の発展のためにも、是非生かしていただきたいと強く願うものであります。  時間もあと二分ありますが、最後の質問をさせていただきたいと思います。  輸出拡大に向けた取組という点で、質問というか、提案も含めて、一点確認をさせていただきたいと思います。  海外市場への挑戦という面で、中小企業に対しての支援というものは非常に重要になってくると思います。これまでも、新輸出大国コンソーシアムなどで、いわゆる海外の主要ECサイト、Eコマースのところにおいて、ジャパン・モールというものが設置をされてきたと思っております。  ただ、このジャパン・モール、これまでの設置されている国を見ると、RCEP全ての加盟国において、ジャパン・モールが設置をまだされていないのではないのかなと思っておりまして、是非とも、これを機会に、全ての国においてのジャパン・モールの設置というものが私は一つ重要になってくるのではないのかなと思っております。  この提案に対してのお考え、そしてまた、輸出拡大のための、具体的に中小企業支援というもの、今後の展望等ありましたら、是非ともお聞かせをいただきたいと思います。
  105. 渡邉洋一

    ○渡邉政府参考人 お答えいたします。  まず、ジャパン・モール事業でございますけれども、昨年度は十八か国において出店の支援を行っておりまして、そのうち九か国がRCEPの参加国ということになっております。  今年度のジャパン・モール事業においては、急速に拡大するEC市場を獲得するという観点から、例えば、RCEP参加国であるフィリピンですとかニュージーランドなどでも事業の拡大を目指したいというふうに考えております。  次に、中小企業の輸出拡大などに向けた具体的な支援でございますけれども、大企業と比較して中小企業は海外で事業を行うために必要な経営資源が乏しいですとか、あるいは、昨今、新型コロナウイルス感染拡大の影響によりまして、人の移動を伴う事業が困難であるといったことから、越境ECを活用した非対面での海外取引が拡大をしておりまして、これらの課題や現状を踏まえた支援が必要だというふうに認識をしております。  このため、経済産業省といたしましては、冒頭に申し上げたジャパン・モール事業に加えまして、ジェトロを活用して、現地情報の収集ですとか海外ビジネスに対応できる人材の育成を支援をするとか、あるいは、委員も御指摘あった、新輸出大国コンソーシアムで、事業計画策定から商談の成立に至るまで専門家によるきめ細かなサポートですとか、また、海外市場向けの新商品開発などに取り組む中小企業に対して、経費の三分の二を一社最大五百万円まで直接補助するJAPANブランド育成支援等事業によりまして販路開拓を支援するなど、様々な支援措置を講じております。  引き続き、中小企業が抱える課題に応じてきめ細やかに支援を行うとともに、国内外の経済環境の変化にも対応しながら、中小企業の海外市場への挑戦を全力で支援してまいりたいと考えております。
  106. 鈴木貴子

    鈴木(貴)委員 引き続き丁寧な支援をお願いをして、質疑を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  107. あべ俊子

    ○あべ委員長 次に、佐藤茂樹君。
  108. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。  午前中の質疑は私が最後でございますので、もう一踏ん張り、よろしくお願い申し上げます。  参考人の方々にも午前中お聞きをしまして、そういうことも踏まえて何点か政府考え方をお聞きしたいと思うんですが、まず、四月九日の委員会に続いて、RCEPの意義等についてもう一問お尋ねをしたいと思うんですが。  これは、与野党共に説明で配られましたRCEP協定の概要、外務省、財務省、農林水産省、経済産業省と四省のクレジットの入った紙の意義のところで、二ポツ目に、地域貿易投資の促進及びサプライチェーンの効率化に向けて、市場アクセスを改善し、発展段階や制度の異なる多様な国々との間で知的財産電子商取引等の幅広い分野ルールを整備、このように記されているわけでございます。  識者の中にも、RCEPによってサプライチェーンの展開が拡大、深化することを促進すると評価されている方もおられるわけでございます。  例えば、一月二十一日の日経では、「新局面の通商政策」という表題で、大庭三枝神奈川大学教授は、「RCEP成果として関心が集中するきらいがあるのが物品貿易の段階的関税撤廃だ。だが今後の地域統合や国際経済秩序にとって一層重要なのは、国境を越えるサプライチェーンの展開がけん引する「二十一世紀型貿易」をRCEPにより促進することで、経済発展を加速するための共通のルール構築を一定程度成功させたという点だ。」、そういう評価をされておられる方もいらっしゃるわけでございます。  RCEPによって人、物、お金、サービス投資の双方向の円滑な流れをこれまで以上の水準で保障する国際ルールができ上がったことによって、国境を越えるサプライチェーンの展開の拡大、深化、効率化にどのような影響を及ぼすことが想定されているのか、政府考え方をまずお聞きしたいと思います。
  109. 田村暁彦

    田村政府参考人 お答え申し上げます。  委員御指摘のとおり、日本政府といたしましても、RCEP協定はサプライチェーンの拡大、深化、効率化という観点で有意義なものだと考えてございます。  具体的に申し上げますと、全てのRCEP参加国が関税を削減あるいは撤廃するのはもちろんのこと、それとともに、十五か国間におきまして原産地規則、知的財産権投資等に関する共通のルールが構築されることを通じまして、中小企業を含む日本企業が、まず、国内で製造し各国に輸出をするという選択肢が取りやすくなること、また、RCEP域内の拠点間の取引を統一化された原産地規則の下で効率的に行うことができること、また、知的財産権投資の保護が強化された、より安心して進出できる環境が整備されること等の効果が期待されると考えてございます。  今後、こうしたメリットを最大化できるよう、RCEP協定の早期発効と全ての締約国による着実な履行、そして、日本企業による協定の利活用の促進にしっかりと取り組んでまいる所存でございます。  以上です。
  110. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 是非お願いしたいと思います。  午前中の参考人の中にも、独自の分析をされて、日本が独り勝ちだというような評価をされていた、そういう方々も中にはいらっしゃるんですが、あの参考人の方は別にそれを評価されているわけではない形なんですけれども、しかし、そういう分析をされている方もいらっしゃいました。  しかしながら、先ほどの鈴木委員の質問にも重なる部分があるんですが、RCEPは、我々は、日本ASEANが原動力、推進力となってここまで合意ができた、そのように考えているわけでございますが、中には、このRCEP中国主導の地域経済連携協定であるとか、中国存在感あるいは影響力を高める、交渉経緯についても中国主導権を握ってきたというような、そういう論を展開するマスコミや有識者というのがやはりいまだにいらっしゃいます。  例えば、署名をされた翌日のマスコミ各紙の中では、日経新聞というのは、中国存在感を高める、毎日新聞も、交渉参加国で最大の経済規模を誇る中国影響力が高まる懸念もある、さらに読売新聞についても、中国の発言力の増大をいかに抑えるかという課題もある、そういう報道の論調でございました。  さらには、午前中の参考人の方の中にも、中国主導権を取ってこの交渉合意させたとか、あるいは、ルールについても中国意向が強く出ているというような、そういうことを陳述された参考人もいらっしゃいました。  要するに、RCEPも、交渉主導権中国が握って、今回決まったルール中国意向を強く結果として出して、そして、中国存在感や発言力、影響力が高まるのではないか、そういうことを公の場でも言われている。そういうことについて、私としても非常に気になるわけでございますが、政府としては、このような、RCEPが、交渉経緯からルールなどでの内容面でも、またこれからの発言力や影響力でも中国主導である、そういう見方や論調、報道ぶりについてどのような見解を持っておられるのか、御答弁をいただきたいと思います。
  111. 茂木敏充

    ○茂木国務大臣 一つ一つのマスコミ等の論調についてコメントするつもりはありませんが、交渉の現場にいて感じることと、その結果を見てコメントするというのはやはり違っていると思っています。  マルチ交渉をまとめるというのは結構大変なんですよ、これは。原則としては、エブリワン ウィル ビー イコーリー ハッピー アンド エブリワン ウィル ビー イコーリー アンハッピー、こういう形じゃないとまとまらない、これがマルチ交渉だ、そんなふうに思っております。  RCEP協定、これは難しかったのは、経済発展状況がかなり違う、異なる十五か国が参加する経済連携協定でありまして、物品市場のアクセスの改善だけではなくて、そういった国々も含めて、知的財産であったりとか電子商取引を含む自由で公正なルールに基づく秩序を形成する大きな一歩となっていると考えております。  そして、十五か国、インドがあれですと十六か国で始まったわけですけれども、そのうち十か国はASEANなんですね。まさにこの協定は、我が国とともにASEANが推進力となって交渉が進められ、合意に至ったものでありまして、中国主導の枠組みであるとは認識をいたしておりません。  会議をやりますと、それぞれ発言権があります。経済力が大きい国だから一時間発言できて、経済力が小さい国だから三分しか発言できない、こんなルールじゃないんです。みんなが同じように発言する中で、みんなが合意できるルールを作っていくということでありまして、こういった形で、実際に交渉に携わった立場からしますと、中国主導の枠組みである、こういう認識は誰も持っていない、こんなふうに思っております。  今後ですが、我が国として、TPPにも参加している豪州であったりニュージーランドとも緊密に連携しながら、RCEP協定を通じて、地域におけるルールに基づく経済秩序の形成に主導的な役割を果たしていきたいと思っております。  まずは、早期に発効させる、このことが重要だと思っておりますが、その上で、こうしたルールを含みます協定の履行確保にもしっかり取り組んでいきたいと思っております。同じプレーイングフィールドで競争していく、こういう環境を整えるわけでありまして、仮に締約国が協定の規定と相入れない措置を取る場合には、RCEP協定上に規定された協議メカニズムであったりとか紛争解決手続を活用して適切に対応していきたいと思っております。  ある意味、そういう、どこの国が主導したというよりも、そこの枠内にみんなが入ってきた、入ってきたからにはそのルールを守らせるということが極めて重要なんだと思っています。
  112. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 最後の方で外務大臣がおっしゃいました、やはり、それぞれ発展段階が違う国が合意したんですから、その合意したルールをどう守らせていくのかという、これから実効性というのが本当に大事になってくるんだろう、そのように思いますので、是非、政府の方の今後の御努力に期待をしたいと思います。  その上で、このRCEPに関連して、もう一つ経済連携協定であるTPPのことなんですけれども、ここにアメリカのバイデン政権が復帰するのかどうか、またどう働きかけていくのかということが、一つやはり日本としても大きな課題としてあるんだろうというように思うんですね。  アメリカは、もう御案内のとおり、バイデン大統領が副大統領を務めたオバマ政権時代に、日米など十二か国によるTPP交渉を主導いたしました。バイデン大統領も大統領選挙戦中に、トランプ政権が離脱したTPPについては、当初の協定には復帰しないが、環境や労働者保護の規則を強化するために再交渉すると、条件付で当初は復帰に言及をしておられました。  しかし、アメリカ国内にはやはり自由貿易の拒否反応、企業や雇用が海外に流出したというような、そういう批判も含めて拒否反応が根強い部分もありまして、バイデン氏の政権公約では、アメリカ産業復活に向けた投資が行われるまでいかなる貿易協定交渉しない、そういう方針を打ち出さざるを得なかったわけでございます。  ですから、あるマスコミでは、二年後の中間選挙に向け、国内産業保護を優先する必要があり、早期にTPP復帰にかじを切るのは難しい、そういう見方をしている報道も幾つかあるわけでございます。全体としては、やはり、しばらくはTPP復帰にはバイデン政権は慎重ではないか、そういう見方が強いという状況でございます。  ただ、本年は、日本TPPの議長国を務めているわけでございます。外務大臣が先月の日米2プラス2の際の日米外相会談の際に、そういう際も含めて、アメリカ・バイデン政権とTPPへのアメリカの復帰について話し合われたことはあるのかどうかということと、また、今週の四月十六日に開催予定の日米首脳会談で、日本側からTPPへのアメリカの復帰について取り上げる予定はあるのか、さらに、国際協調を重視するというのがバイデン政権の建前になっておりますから、そういうアメリカに対してTPPへの復帰を今後どのように働きかけていくのか、外務大臣に御所見を伺いたいと思います。
  113. 茂木敏充

    ○茂木国務大臣 米国は、世界の中でも、グローバル化であったりとか、また技術革新が最も進んでいる国でありまして、私、日米貿易交渉も担当させてもらいましたが、その際にも、米国がTPPに参加することが米国の経済や雇用にとってもプラスに働くんだ、このことは何度も説明をしてきたところであります。  その上で、トランプ政権からバイデン政権に移行して、佐藤委員がおっしゃるように、バイデン政権として、まずは国内の雇用政策を重視して、それまでは新たな貿易協定は結ばない、これが基本的な考え方だと承知をいたしております。  三月十六日に行われました日米外相会談におきましても、当然、経済の問題、TPPを含めて議論しておりますが、その詳細につきましては、外交上のやり取りでありますので控えさせていただきたいと思います。  そして、そのちょうど一か月後に当たる今週の十六日、日米首脳会談、対面では初めての海外首脳とのバイデン大統領の会談になるわけでありますが、恐らくここでは、日米同盟の強化、そして自由で開かれたインド太平洋の問題、さらには気候変動の分野での日米の協力、そして通商問題、様々な幅広い議論が行われると思います。  現時点で、その内容がどうなっていくかということについては、予断をすることは控えたいと思いますが、いずれにせよ、経済そして貿易政策面でも日米間でしっかり連携をしていきたい、このように考えております。
  114. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 午前中はもうあと一問にしたいと思うんですが、アメリカがなかなか国内事情も抱えて難しいのをあえて知ってか分かりませんが、中国が、TPPについては非常に前向きに検討すると。そういう発言を、習近平国家主席自身が昨年の十一月二十日のAPECのテレビ会議の際に述べられました。さらに、習近平氏は、地域経済の一体化を進め、FTAAPも一日も早く完成させなければならないと、FTAAPにまで言及をされたわけでございます。  ただ、中国TPP参加へのハードルというのは高いというのが一般的な見方でございまして、TPPの自由化の度合いというのは、もう御案内のとおりRCEPを上回っておりますし、また、ルール面でも、知的財産保護であるとか国有企業の優遇問題、環境保護など高いレベルの市場アクセスやルールを満たす用意ができているかどうかについて、政府としてはしっかりと見極めていただきたい。  間違っても、他のメガEPAのお手本にもなっているTPPの自由化水準であるとか、あるいはルールの基準を下げない、しっかりと堅持をするということを基本的な構えとして、議長国の日本としては新規加盟国に当たっていくべきではないかと思うんですが、中国TPPへの参加の前向きな検討等について、現時点での日本政府考え方を伺いたいと思います。
  115. 茂木敏充

    ○茂木国務大臣 TPP11、これはアメリカがTPPからの離脱を表明をするという中、一時、TPPそのものが漂流をしてしまうのではないか、こう言われた時期もありましたが、まさに日本が中心になってしっかりまとめていこうということで、市場アクセス面もそうでありますが、電子商取引、そして知的財産政府調達、国有企業、衛生植物防疫措置等のルール面でも非常に高い内容の経済連携協定となっている。  まさに、その後できてくる経済連携協定も、このTPP、これを一つのベースとしながら様々なものができてきたと考えておりまして、仮にどこか一か国がTPPに参加したいという話があったときに、その国が幾ら経済規模が大きかろうが何であろうが、どこか特定の国のために、このすばらしいというかハイスタンダードを下げるという考えは全くありません。  そして、今年、日本はこのTPPの議長国として、関心を示している国、エコノミーというのは多いわけでありまして、それを基本的に歓迎しつつも、本当にそれらの国が真剣にこのハイスタンダードなルール、これに適応する準備ができているのか、これはしっかり見極め、戦略的に対応していきたい、こんなふうに思っております。
  116. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 ありがとうございます。是非その姿勢を堅持していただきたいなというように思います。  最後、FTAAPへの道筋をお聞きしようと思っておりましたけれども、自民党の薗浦委員と質問が重なりますので、これにて質問を終わらせていただきます。  大変ありがとうございました。
  117. あべ俊子

    ○あべ委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  118. あべ俊子

    ○あべ委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。岡田克也君。
  119. 岡田克也

    ○岡田委員 立憲民主党の岡田克也です。  限られた時間ですので、スピーディーに進めていきたいと思います。  まず、午前中の議論もありましたが、RCEPについて中国が主導したとか、あるいはこれから中国に有利とか、そういう議論も出るわけですが、私は全くおかしな議論ではないかというふうに思います。  RCEPは、平成二十四年十一月に野田政権の下で交渉開始が決定されました。それからかなり時間がかかりましたが、ようやくまとまったものであります。関係者の皆様の御努力に心から敬意を表したいと思います。  結局、共通のルールを作るということであって、もしASEANの国々がそれぞれ、あるいはASEAN全体としてまとまったとしても、中国交渉するのは容易なことではありません。そこに日本が入り、オーストラリアが入り、あるいは韓国が入って共通のルールができた、そのルールの下で日本中国韓国もお互い競い合っていくというのは非常に結構なことで、どこが主導権を発揮するとか、どこが得するという議論というのは私はやめておいた方がいいというふうに思うんですが、大臣、いかがですか。
  120. 茂木敏充

    ○茂木国務大臣 全く岡田委員のお考えと一緒であります。
  121. 岡田克也

    ○岡田委員 その上で一つ、インドが抜けてしまったのは大変残念でした。  これは、思い起こしてみると、中国ASEANプラス3を主張し、日本ASEANプラス6を主張して、最終的には日本主張が通ってスタートしたものでありますが、インドも国内問題もいろいろ抱え、あるいは中国とはやはり非常に競合する、しかも中国は少し先へ行っていますから、貿易赤字がどんどん大きくなる、そういう中で、インドとしてはこういう苦渋の決定をしなければいけなかったんだというふうに思います。ただ、モディ政権としても、やはり国を開く中で経済成長していこうという基本姿勢は私は変わっていないと思いますので、そういう意味では、これをどうするか。  インドというのは、非常に日本にとって大事な国であります。自由で開かれたアジア太平洋戦略においても重要な位置づけだし、市場としても、今こそまだ小さいけれども、中国と同じぐらいの貿易量になっても不思議じゃない、私、シン首相にそういうことを外務大臣のときに申し上げたことがあるんですが、そういう非常にポテンシャルのある市場であります。  そういうことを考えたときに、まずは日印包括的経済連携協定、これも難産で、小泉政権でスタートして菅(かん)政権で着地したというものでありますが、これは十年を迎えます。中身を見ると、やはり十年で関税撤廃というものがかなり含まれていて、その十年が来るわけですから、ここでもう一度、日印包括的経済連携協定の再交渉といいますか、RCEPでいろいろ議論したことも盛り込めるものは盛り込んで、二国間ではありますが、より日印関係を発展させる、そういう基盤としてはどうかというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。
  122. 茂木敏充

    ○茂木国務大臣 私も、RCEP、どうにか十六か国で合意をしたいと考えておりました。  岡田委員御指摘のように、インドの側から見ると、今ある貿易赤字が更に拡大してしまうのではないか、それと、インドの場合、中小といいますよりも更に小さな零細企業、これが大きくて、これが特に地方において大きな影響を被るのではないかな、こういう様々な懸念がある中で、私もジャイシャンカル外相等々と何度もこの話は話をさせていただきましたが、残念ながら、今回、インドが入らない状態で十五国での署名ということになったわけであります。  ただ、インド、十三億人の人口を擁する、そしてまた、近年、着実に経済成長を実現しておりまして、我々が進める自由で開かれたインド太平洋、ここにおきましても重要な位置を占める国でありまして、経済大国への歩みを進めております。また、ITの分野、様々な人材を擁しておりますし、さらに、コロナ禍での、医薬品もそうですが、ワクチン、こういうことについても、生産において重要な国である、そのように認識をいたしております。  そこで、今後のインドとの経済関係をどうしていくか。一つはインドのRCEP復帰、そして、岡田委員がおっしゃる日印包括的経済連携協定のレベルアップ、それぞれに重要性を持っております。今後の対応については、早期の実現可能性、それから二国間の更なる経済関係の強化、同時に戦略的重要性、こういった様々な要素を総合的に勘案して決定していくべきものであると思っております。  日印の包括的経済連携協定については、今、合同委員会において、協定の運用改善についてインド側と議論を行っておりますが、先ほど申し上げたような幾つかの要素を考えながら、どちらの要素と、場合によっては、片っ方を進めているから片っ方についてはもうやめるということではなくてもいいと思うんですけれども、今後、いろいろなアプローチを考えていきたいと思っております。
  123. 岡田克也

    ○岡田委員 是非、現在の包括連携協定の運用だけではなくて、そのものをもう一回バージョンアップするということも念頭に置いて議論していただければというふうに思います。  それから、もう一点、ミャンマーとの関係、午前中も議論が出ました。  ちょっと私は、政府の答弁が、大臣も含めて、煮え切らないような気がします。批准書の扱いについて、ASEAN事務局長に寄託することになるが、寄託がされた後のことについては特段の規定はない、他のRCEP参加国と今後の対応を検討してまいりたい、こういう旨の答弁がありました。  手続的にはそういうことかもしれませんが、そもそも、クーデターの正当性というものは認めないということは明確に日本政府も言っておられるわけですから、そうすると、今の政府、国軍中心の、政府と言うべきじゃないですね、国軍中心の今の権力については正統性はないというふうに言っているわけですから、そこなり、あるいはその下での議会が手続を進めたとしても、これが正当なる批准というふうには私は論理的に見ても言えないんだと思うんですね。  そういうものが出てきたときに、正統なる政府じゃないものが出してきたものについて、それを認めるということになると、それは、正統性を逆に遡れば、政府の正統性あるいは議会の正統性を認めていくことになりますから、そういうことはあり得ないと私は思うんですが、いかがですか。
  124. 茂木敏充

    ○茂木国務大臣 我が国として、ミャンマーにおけるクーデターの正当性、認めることはありません。  その上で、若干正確に表現をさせていただきますと、ミャンマーに対して、我が国は、事案発生以来、暴力の即時停止、そして拘束者の解放、さらに民主的な政治体制の早期回復を強く求めてきているわけであります。つまり、我が国としては、ミャンマーにおいて民主的な政治体制が早期に回復される、このことが重要だと思っておりまして、そのことを優先したい。  恐らく岡田委員も、ミャンマーの体制が今のままでいい、このように考えていらっしゃるのではないんだと思うんですけれども、ミャンマーの民主的な政治体制、これを回復する、こういったことに注力をしていきたいと思っておりまして、その上でそういった物事が進んでいくことが望ましいんだと思っております。  したがいまして、現時点では、今後の対応については、オーストラリア、ニュージーランド、ASEAN等始め、他のRCEP参加国とも緊密に意思疎通しながら検討していきたい、こういう答弁になるわけでありますけれども、今の体制の下でどうするということよりも、今の体制ではいけないと思っていますので、民主的な政治体制、これをミャンマーにおいて回復する、このための働きかけを強めていきたいと思っています。
  125. 岡田克也

    ○岡田委員 議論がすれ違っているんですが、私が聞いているのは、ミャンマーの今の国軍主体の括弧つきの政府、あるいは括弧つきの議会で手続をして、そして批准して、それがASEAN事務局長に寄託されたというときにどういう態度を取るかということを、やはり日本政府として明確にすべきじゃないか。そこをあやふやにしていると、何か認めるような、そういう余地を残してしまいます。正統性のない政府のやることは、それは認められませんよ、寄託しても、それはミャンマーとしての寄託だとは認めませんよということは明確にしておくべきじゃないですか。
  126. 茂木敏充

    ○茂木国務大臣 恐らく、岡田委員と私の間で、コインの表側のことを言っているか裏側のことを言っているかということのように私には聞こえるんですけれども、ミャンマーにおいて、民主的な政治体制の回復、これを図っていくのは極めて重要だと思っております。そういった中で各国の手続が進むことが望ましい、こういう考えでありまして、現体制のままいろいろなことが全て進んでいく、これについて、我が国として容認するものではありません。
  127. 岡田克也

    ○岡田委員 ミャンマーが民主化する、あるいは前回の選挙の結果が尊重されるということは、当然、日本政府として目指しているものだし、私も全く同じです。だからこそ、今の括弧つきの政府がいろいろな決定をしたとしても、それを認めるわけにはいかないということは、あらかじめきちっと意思表示しておくべきじゃないかというふうに私は思っているんですが、意思表示しないのはなぜなんでしょうか。私はちょっと理解ができないんですが。
  128. 茂木敏充

    ○茂木国務大臣 ミャンマーに対して、今、現在進行形で様々な働きかけも行っております。そこの中で、今起こっているこの悲惨な事態、これを一日も早く鎮静化させなければいけない。また、多くの関係者が拘束をされております。なかなか、この拘束が解放されないと、民主的な体制に本当に戻っていく、こういうプロセスも本格化しない懸念もあるわけであります。  そういったことも含めて、民主的な体制をつくっていく、そのためにどういうアプローチを取ったらいいのか、こういったことを最優先で考えておりますので、そういった趣旨の答弁をさせていただいております。
  129. 岡田克也

    ○岡田委員 最優先は結構なんですが、だからといって、括弧つきの今の政府が具体的な手続を進めてきたときに、それに対してどうなるのかということをはっきり言わないというのは、私、違う臆測を呼んでしまうんじゃないかと。日本政府としてはそれは認められませんよということを明確に言っておくべきだし、ほかの国々も、恐らく中国あたりは違うことを言うかもしれませんから、出さないようにするためにもはっきりと、出すという意味は、提出をしないよう、今の括弧つきミャンマー政府が提出するようなこともないように、日本政府としての意思ははっきりと示しておいた方がいいんじゃないですか。
  130. 茂木敏充

    ○茂木国務大臣 クーデターの正当性、これは認められないと明確に申し上げているところであります。  そこの中で、今後、ミャンマーで様々なことが進んでいくと思います。それは、我々が、国際社会が望ましい方向にミャンマーを向けていかなければならない。今後起こり得る様々なことについて、いろいろな言ってみるとルートというのはあると思うんですけれども、このルートはどうだ、このルートはどうだ、このルートはどうだと全部今の段階でそれを肯定したり否定するということが本当にいい解決策につながるかといいますと、私は必ずしもそうは思っていない、こういう観点から御答弁申し上げております。
  131. 岡田克也

    ○岡田委員 クーデターの正当性はもちろん認めないということは、今のかぎ括弧つきのミャンマー政府は正統性がないということに当然なると思うんですね。したがって、そこが決めたことについては認められない。もうここまでは論理的に、当然そういう結論以外に私はあり得ないと思うので、それをあやふやにされると、ああ、そもそものクーデターの正当性についても余韻を持って言っておられるのかなというふうに誤解されかねないと私は思います。もう一度よく考えていただきたいと思います。  時間も限られているので、TPPについて、少し、残された時間でお話ししたいと思います。  大臣も、TPPというのは今後膨らみを持っていくということを言われました。一方では、でも、TPPRCEPが最終的には一つのものになるかは今後判断していくという表現を、発言をされたわけであります。  私は、やはりTPPRCEPというのは別物としてそれぞれ発展させていくべきじゃないかというふうに思うわけです。  RCEPというのは、やはり発展するこのアジア地域における共通のルールということで、これからも、例えばバングラとかモンゴルとか、あるいはスリランカとか、そういう国に広げていくという発想はあっていいと思いますが、TPPというのは、これは大臣も言っておられるように、私は、民主主義国家を中心とするハイスタンダードな経済連携協定だ、そういう位置づけでこれから考えていったらどうか。  ですから、名前とはちょっと変わってしまいますが、イギリスを入れる方向でこれから議論していく。私は、もう一段進んで、EUとも、加入になるのか合体になるのかちょっと分かりませんが、そういう意味では、民主主義国家のハイスタンダードな協定だという意味では、EUも入れる。カナダは入っていますから。そういうことで、位置づけをはっきりした方がいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  132. 茂木敏充

    ○茂木国務大臣 RCEP協定については、先ほど来御答弁申し上げているように、ASEANの中の開発途上国も含みます、様々な発展段階の異なる十五か国で合意をした協定であります。  当然、この早期履行、そして、できればこの協定ルール面等のレベルアップ、こういったものも図っていきたいと思いますし、また、その上でになりますが、委員御指摘の国々、日本にとっても重要なパートナーであります。  私も、一昨年はスリランカ、そして昨年はモンゴルと訪問させていただいております。そういったRCEPについて、地域的な、地域におけるルールに基づく経済秩序の形成、拡大に主導的な役割を果たしていく、このための協定であると思っております。  一方、TPP、これはハイスタンダードでバランスの取れた二十一世紀型の通商ルールを確立した協定として、ASEANの一部の国、ベトナム、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、これも含まれるものでありますが、二〇一八年の十二月三十日に発効した、各国から非常に注目をされるというか、今様々な協定ができる中の一つのモデルになるようなものであると思っております。  同時に、その一か月後に発効しました日・EU・EPA、これも、我が国が自由で公正な経済圏を拡大していく上でもう一つの柱となるものであると考えております。  TPPについては、既に合意している国々が、まずは国内手続を早期に終了して、これを締結する。同時に、英国を始め、これに関心を示している国、こういった加入によりまして、TPPのハイスタンダードのルールというのを世界に広げていくということは重要だと思っています。  一方で、日・EU・EPAが、枠組みとして日・EUというわけですから、EUが広がった場合には別でありますけれども、これ以上、全く違った形で中南米に波及するとかこういうことはないんだと思いますけれども、少なくとも、今の段階で、TPP11、そして日・EU・EPA、これが我が国の通商政策といいますか、これの両輪になっている、こういう性格もあるわけでありまして、この二つを今後どうしていくかということにつきましては、もう少し全体の状況を見ながら検討していきたいと思っています。
  133. 岡田克也

    ○岡田委員 私が申し上げたのは、TPPEUを入れる、アメリカが入り、EUが入れば、まさしく民主主義国家のハイスタンダードな協定というふうに、かなり性格が変わるわけですけれども、そういうものを目指していくべきではないか、そういう意味で申し上げました。  ただ、いずれにしても、河野大臣のときにもこの場で議論させていただいたんですが、ISDS条項というのが、やはりEUはかなり否定的で、違うアイデアを言っているわけですから、この前の日英のときもISDS条項は入らなかったわけだし、かなりこれから大きな議論になるというふうに思うんですね。  EUの言っていることにも、かなり、なるほどと思わせるところもあります。例えば一審だけじゃなくて控訴審を認めるとか、それから基本的に公開するとかいうようなこともその提案には含まれているわけです。  日本企業から見れば、ISDSは便利かもしれませんが、日本政府という立場から見たときに、逆に巨大企業から訴えられるというリスクもこれからますます大きくなるんじゃないか。そういうことを考えると、ISDS条項が本当にいいのかどうか。ある意味では日本の主権がその分制約されているというふうにも捉えられるわけですから。  そういう意味で、よりよい紛争処理のための規定をEUとアメリカと日本で協議しながら作り上げていくという作業が私は必要な時期に来ているんじゃないかと思いますが、最後に、いかがでしょうか。
  134. 茂木敏充

    ○茂木国務大臣 基本的な考えについては岡田委員と考えを共有したいと思いますが、同時に、ISDSについては、相当痛い思いをしている国というのがあるわけでありまして、かなり、アレルギーといいますか、これに対する拒否反応が現実にあるというのも事実だ、そんなふうに思っておりまして、このISDS条項、締約国が協定に基づく義務に違反した場合に投資家が損害を受けた場合、投資家が国際仲裁に直接付託することができる、こういったことを定めておりまして、我が国の経済界も重視している規定であると考えております。  このISDSについて、国家の規制権限を不当に制約するのではないかといった問題提起がなされているのも事実でありまして、ISDS条項は、本来、投資の受入れ国が正当な目的のために必要かつ合理的な規制を差別的でない形で行うことは妨げるものではないと考えておりまして、そういった点の理解を深めていくことも必要だと思っております。  こういった論点も含めて、ISDSの在り方については、委員の方からもお話ありましたように、米国、そしてEUも参加します国際商取引法委員会を含めて、様々な国際的な枠組みの中で今議論が進められているところでありまして、我が国としても、これらの議論に積極的に参加してきているところであります。  交渉の現場にいて、意外とやはり拒否反応というのもあるんだなと思っておりますけれども、これがどう適正に運用されているか、こういった実態を示すことによって、そういった国々の理解を得ていくということも必要ではないかなと思っています。
  135. 岡田克也

    ○岡田委員 日本企業にとっては、これは便利な制度だというふうに思います。  ただ、日本政府が、逆に、巨大企業、例えばGAFAとか、いろいろな規制を入れたときに、これは内外無差別じゃないというようなことで訴えられるリスクもあるということですから、もう少し公平公正な運営が確保できるような、EUの方は多国投資裁判所制度の創設ということを言っていると理解していますが、もう少し知恵を出すべきじゃないかということを最後に申し上げておきたいと思います。  終わります。
  136. あべ俊子

    ○あべ委員長 次に、緑川貴士君。
  137. 緑川貴士

    ○緑川委員 皆様、お疲れさまでございます。立憲民主党の緑川貴士です。  RCEPとの関連で、大臣、済みません、昨日のお話でしたのでちょっと通告していないところなんですけれども、福島第一原発で増え続けている処理水の処分について、昨日、政府は海洋放出の方針を正式に決めています。二年後をめどに第一原発の敷地内から放出に着手していくということで、安全性を確保して風評被害の払拭にあらゆる対策を行うというお話ですけれども、中国韓国からは深刻な懸念が示されています。特に、日本の水産物に対して懸念が今向けられております。  RCEPとの関連では、今輸出が非常に伸びることが期待されている中国向けのホタテ、こうした水産物の輸出への影響、そして、こうしたことを、中国がこういう問題を今後の交渉に利用していく可能性について、お考えを伺えればというふうに思います。
  138. 茂木敏充

    ○茂木国務大臣 通告は受けておりませんけれども、せっかくの御質問でありますので、お答えをさせていただきたいと思います。  ALPS処理水、この処分については、私も、経済産業大臣の時代から、あそこでタンクが増え続ける状況、こうなると、廃炉の作業であったり、様々な形で、廃炉、そして福島の復興に対して影響が出てしまうのではないかなと。何らかの形で、安全な形の処分ができないかと考えてきたものでありますが、これまでも、IAEAへの情報提供、さらには、外務省としては、外交団への丁寧な説明等を通じて、これは中国韓国もそうでありますし、米国、IAEA、国際機関に対しても、高い透明性を持って積極的に情報提供を行ってきたところであります。  中国韓国についての反応を御紹介いただきましたが、米国、これはブリンケン長官もツイッターで、評価する、こういったツイートをされていますし、IAEAのグロッシー事務局長も同様な発表をされている、このように承知をいたしております。  今後、東京電力は、海洋放出を実際に行う前に、その詳細な計画や必要な設備等の設置について原子力規制委員会から認可を取得して、その上で海洋放出を実施することになると承知をしておりまして、実際の放出には、委員御指摘のように、二年後をめどということで開始ということだと思っております。  手順を踏んでプロセスを進めていくということでありまして、我が国として、国際法であったりとか、国内外の規制ルールを着実に遵守して安全性を確保していく。具体的には、関連する国際法、国際慣行を踏まえて、実際の放出に先立って、海洋に及ぼす潜在的な影響について評価するための措置等を取る、放出後にもモニタリングを継続的に実施をして、環境中の状況を把握するための措置を講ずることとしております。  昨日公表された基本方針も踏まえて、今後も、科学的根拠に基づく丁寧な説明によりまして、国際社会の理解醸成に努め、風評被害対策にも取り組んでいきたいと思っております。  恐らく、韓国が放出している処理水と比べると、希釈といいますか、濃度を相当薄い状態にする、飲む基準の七分の一という形のものであります。  ただ、安全性を科学的に証明するのと同時に、やはり風評被害、これは、福島の農業関係者の皆さんであったりとか、この十年間、大変苦労されてきた問題でありまして、これを払拭するための様々な支援というのはしっかり行っていかなきゃいけない、こんなふうに思っております。
  139. 緑川貴士

    ○緑川委員 所管の委員会議論すべきものと、経産大臣としてのようなお言葉が非常に多かったと思うんですけれども、ホタテの影響というところを端的に伺えればと思うんですけれども、今の御見解を伺えればと思いますが、いかがでしょうか。
  140. 四方敬之

    ○四方政府参考人 お答え申し上げます。  委員から御指摘のホタテの件でございますけれども、先ほど茂木大臣から御説明ありましたとおり、風評被害が生じないように、政府としても、科学的な見地に基づいて情報発信をしていくということで、日本の農林水産品に対する風評被害、委員が述べられたホタテの輸出についても悪影響が出ないようにということで、政府としても全力で取り組んでまいりたいと思います。
  141. 緑川貴士

    ○緑川委員 アメリカは理解を示されているという一方で、これは、RCEPの枠組み内での国々からはやはり懸念が示されている。そして香港では、モニタリング調査、放射性物質への調査も、これは検査もした上で食品を通すわけですから安全だという声もあれば、一方で、日本産を扱う海外の他の業者は、イメージが悪くなってしまう、需要の減退につながらないかということをやはり心配しておりますので、食品輸入規制の長い問題もあります、風評が再燃しないように、是非ここは、輸入停止が更にそういったそのほかの地域に広げられないように、国際社会への丁寧な説明を強く求めていきたいというふうに思っております。  RCEPの、るる議論がございます。日本語訳で、RCEP、東アジア地域包括的経済連携協定ということをこれまで使ってきたんですが、署名を境にして、東アジアという言葉を削除しています。より英語名に近い表現にしたということであるんですが、ASEAN中心の原則が共同声明には明記されているというRCEPですので、ASEAN自分たちが一体化して地域内で求心力を高めていくというものでありますので、あえてアジアという言葉を削除する必要もないんじゃないかなというふうに思っていたんですけれども、何か大臣として込められたものがあるのであれば伺いたいと思います。  大臣、これは通告しております。
  142. 茂木敏充

    ○茂木国務大臣 通告があったかどうかは分かりませんが、やはり正式にお出しする協定につきましては、正文は英文ですから、それに忠実な形がより誠実な法案としての名称であると私は思っております。
  143. 緑川貴士

    ○緑川委員 やはりそうした思いというところは聞くことはできませんけれども。  午前中の参考人質疑というものがありました。浜中参考人からは、多国貿易というのは、二国間貿易と違って、これは威信政策なんだというふうにおっしゃっていました。つまり、ある国が現実に持っている力、あるいは持っているとほかの国に信じさせたいという力を他国に印象づけることなんだということをおっしゃっています。  中国主導という認識でも、今日も議論になっていますけれども、やはり受ける印象、結果もあると思うんですね。途上国に合わせた部分があり、それが中国としてかち得た部分もありました。RCEPの早期成立というのを望んだ中国であったというのは事実であると思いますし、米中対立の中で、中国としては、アメリカ抜きのアジアでの枠組みというのは、これは経済だけでなくて、政治的な価値が非常に大きいわけです。  片や、日本としてはバランス役が望ましいわけですから、アジアに絞ったFTAという印象を最小限に抑えたいとか、ハイレベルというものを目指そうという中で、抜けたインド、あるいはアメリカにも目を向けているよという、そうした配慮があるんだということが、そうした域外の国々にも参加を促していく。現実にできるということとは別に、そうした決意の表れで東アジアというのを取ったというような思いがあるのであれば、そこはまた広く物を見ていらっしゃるのかなというふうに思っておりました。  中国を牽制する上で、期待したインドが不参加ということになっています。RCEPを国際戦略の一環として重視する中国に対して、インドが参加しない分、RCEP内で中国を牽制するという日本の役割はやはり非常に重いものがあるというふうに思っていますし、加えて、RCEPへの日本の参加というのは、アメリカの刺激になって、アメリカを自由貿易主義に早期に向かわせる力として働いているというふうに思います。  ただ、アメリカのTPP交渉についても議論になっていますけれども、バイデン政権は、国民の反対の声を押し切ってまでTPPにすぐに復帰するということはやはり考えにくいのかなと思います。アメリカが強く主張してきた知的財産権保護の条項が凍結している部分がある、そして、競争力のある日本の自動車などの輸出攻勢を警戒して、アメリカ国内の製造業のやはり懸念の声が強いわけです。  TPPよりも有利な条件になっている日米貿易協定もそもそもありますので、コロナ禍で国内対策が喫緊の課題になっているという中で、そこに費やせる余力というのは、今のアメリカとしてはなかなか見出しにくいのかなというふうに思います。TPPを含めた通商の分野に本格的に力を入れるというのが、やはり二年後の中間選挙、あるいはそれ以降になるのではないかということも、長期的な視点で見ていく必要があるというふうに思います。  問題は、やはりこの間にRCEPが発効します。動きのせわしない中国が、アジア新興国との貿易関係を更に強化していく。一方で、トランプ政権だった頃には、ASEAN軽視という対応がやはり目立ちました。相対的にアメリカの貿易面での優位が今、下がってきているというところです。  先週の質疑で、茂木大臣から、TPPというのは今後膨らみを持っていくんだと。岡田委員からも御指摘がありました。ベースになっていくのはTPPであるというお話がありました。ただ、今のアメリカを見ていると、そうした時間軸の問題があると思います。今の中国と比較して、このスケジュール感、時間軸というのが非常に大事になってくるというふうに思っています。  日米豪印四か国のクアッドの枠組み、これはワクチン支援も含めて、ASEANへの積極的な関与を打ち出していくという、中国を牽制をしていく上では、こういう同盟国との緊密な連携というのは非常に重要であるというふうに思うんですが、一方で、経済的な実利を望んでいるのがやはりASEAN諸国という面もあると思います。  そうしたASEANを引き込んでいくためには、貿易面に対してはやはり貿易圏の引力で対抗していくということ、俯瞰してバランスを取っていく、そういうバランス役の日本として実行力を示していく、リードしていくという今後のお考え、大臣、いかがでしょうか。
  144. 茂木敏充

    ○茂木国務大臣 今、緑川委員の御質問に一つ一つお答えすると、六つ質問されているんですけれども、その全部にお答えすると結構長い時間になるんですが、どうしましょうか。(緑川委員「後段で」と呼ぶ)後段で結構ですか。  まず、中国との関係でありますけれども、各国が、中国は巨大な市場であることもあり、経済的な結びつきというのを持っております。同時に、今、経済においても、経済安全保障、こういう観点が極めて重要になってまいりまして、ただ単に貿易関係がよくなるから、こういうことだけでは考えられない形になってきていると思います。  同時に、経済、さらには気候変動等においても、中国の協力を得ていくということが今後重要になっていきますけれども、では、気候変動問題、経済で、ある程度やはり中国との関係を持たなくちゃならないから、法の支配であったり基本的人権の尊重、我々が共有しているこの基本的な価値、この部分で譲ることがあっていけない、こういう考えを持っております。  こういった考えにつきましては、先日、日・インドネシアの2プラス2のときもそうでありましたが、昨年、私は、ASEANの中でも九か国、直接訪問して様々な会談をやっておりますけれども、今申し上げましたような考えというのは、それぞれの国で議論しまして、十分理解をされている、このように考えております。
  145. 緑川貴士

    ○緑川委員 あくまで私が申し上げているのは、米中対立のはざまにいる日本として取っていくべき方向性のお話をさせていただいております。このRCEPの枠組みとして、やはり、そうした日本として果たしていくべき役割というものが一層増しているんだろうなというふうに思っております。  経済的なメリットという、ちょっと時間が押していますけれども、中国韓国とは、やはり領土、歴史問題、様々、関係が不安定になりがちという中でこの協定を結べたということは、これは意義があると思います。  中国との関係では、途上国立場主張して高い関税をかけていた、その巨大な市場にアクセスできる、期間はかかりますけれども、関税を下げられるという点に日本としては実利がやはりあると思います。  中国として、アメリカの市場などから自国の製品が今締め出されつつある中では、魅力的な市場として、より一層、新たな輸出先、輸入先の市場開拓、サプライチェーンの構築をRCEPに求めている面があると思います。  そういう状況の中で、中国として、原産地規則の累積規定というものがRCEPでは適用されるんですが、ちょっと最後、一問だけお尋ねをしたいと思いますが、RCEPの参加国同士であれば、相手国の原産品も自国の原産品として扱うことができるというルール、これは参加国の全てに適用されるんですが、貿易総額の大きい中国のメリットというのが非常に大きいというふうに私は感じております。  これは国内流通の原産地表示の問題を言っているのではなくて、中国から輸入した原材料を使ってASEAN域内で製品を作って日本に輸出をするという場合に、製品に占める中国の原材料が一定の割合を超えたら、本来は原産地基準によってASEAN産とはみなされないので、日本への輸出では関税の引下げというのは適用されないんですが、RCEPルールが統一化されれば、この累積の規定によって、中国産の原材料を仮に一定割合以上含んでいた場合であったとしても、そうした製品がRCEP域内産としてより安い関税日本に輸出できるという場面が増えることになります。
  146. あべ俊子

    ○あべ委員長 申合せの時間が経過しておりますので、御協力いただきます。
  147. 緑川貴士

    ○緑川委員 こういうRCEP参加国の貿易相手国の第一位が軒並み中国である以上……
  148. あべ俊子

    ○あべ委員長 既に持ち時間が経過しておりますので、質疑を終了してください。
  149. 緑川貴士

    ○緑川委員 この累積によって、中国のものを原材料として製品が作られる、輸出される域内産の製品が相対的に増えていくんじゃないかという懸念があるんですけれども、最後にお答えいただければと思います。
  150. あべ俊子

    ○あべ委員長 茂木外務大臣、答弁は簡潔にお願いいたします。
  151. 茂木敏充

    ○茂木国務大臣 累積規定は経済規模の大きさだけによって決まるものではない、このように理解いたしております。
  152. 緑川貴士

    ○緑川委員 また機会を見て、こうした議論はさせていただきたいというふうに思っております。  質問を終わります。
  153. あべ俊子

    ○あべ委員長 次に、青山大人君。
  154. 青山大人

    ○青山(大)委員 時間がないので、早速始めます。  昨日、官房長官が、菅総理があしたから十八日まで訪米すると改めて発表されました。  せんだって、当委員会で岡田元外務大臣が茂木大臣に、今回は菅総理に茂木大臣も同行すべきじゃないか、そういうことを提案した際、そのときの答弁はなかったんですけれども、先日、阿久津委員の答弁で、茂木大臣がこう言ったんですよね。私も、菅直人総理だったら行こうかな、そういうふうに思ったんですが、菅総理だったら大丈夫じゃないかと思いますと。  これは、私、すごい失礼だな、日本国の総理に対して非常に失礼だなと思いました。別に、我々、誰が総理じゃなくて、茂木大臣のこれまでのまさに外交のキャリアとか御経験、外務大臣当時から、もういろいろ関わってきた、そういったキャリアを尊敬して、茂木大臣も一緒に行った方がいいんじゃないか、そういった敬意を込めて我々は言ったんですけれども、やはりそういう答弁は失礼なのかなと思ったので、一言指摘をさせていただきます。
  155. 茂木敏充

    ○茂木国務大臣 私は、与野党の皆さんを含め、様々ないい御指摘もいただいております。  そういったことを委員会が終わってからも振り返りながら、かみしめて、ああこういう思いで御質問されたんだな、こういったことも一つ一つ勉強させていただいているつもりであります。  その上で申し上げると、特定の総理というよりも、そのときの日米関係がどうであるかという状況というのは違っているんだと思います。  菅(かん)総理がいい悪いではなくて、その当時の日米関係、残念ながら今ほど強固な日米同盟というものではなかったと思っております。辺野古の問題もありました。国外、最低でも県外と言いながら、ここが最終的には、やはり辺野古ということになる。トラスト・ミーと言いながら、結果的にはそうではならなくなった。  こういう状況の総理が終わった後の総理でありまして、どう立て直すかと、極めて難しい状況にあった状況と、今、安倍総理の下で七年八か月、強固な日米同盟を築いてきて、昨年、日米安保も六十周年を迎えた、かつてない強固な状態でありまして、その基本が揺らいでいない、この前提条件が違う、こういうことでお答えをしたものでありまして、そういった意味で、特定の方に対して誹謗中傷するとか非難する、こういうつもりもございません。  その意味で、岡田委員の御指摘というのは大変ありがたく受けまして、その上で考えたことを申し上げたということであります。
  156. 青山大人

    ○青山(大)委員 大臣の答弁の真意が聞けて大変よかったです。  具体的に、そろそろ日程も固まったと思うんですけれども、今回の訪米の具体的日程について、改めて参考人の方にお伺いいたします。
  157. 有馬裕

    ○有馬政府参考人 お答え申し上げます。  総理は、諸般の事情が許せば、十五日木曜日に出発をし、十八日日曜日に御帰国で、訪米をする予定でございます。
  158. 青山大人

    ○青山(大)委員 中身の方は、もう少し聞くことはできないんでしょうか。
  159. 有馬裕

    ○有馬政府参考人 お答え申し上げます。  バイデン大統領との間で首脳会談を行うことは決まっておりますが、日程の詳細につきましては調整中でございますので、それ以上は、まだ、今後調整ということで御理解いただければと思います。
  160. 青山大人

    ○青山(大)委員 分かりました。  訪米の目的で、日米同盟を含む日米関係を一層強化し、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて日米で緊密に連携していくことや、地域の諸課題やコロナ対策、気候変動といった国際社会共通の課題について議論を行うことというふうに聞いていますけれども、例えば、バイデン大統領に対して、日本に対して大量のワクチンの優先提供を求めるような要望はするのでしょうか。
  161. 茂木敏充

    ○茂木国務大臣 今回の日米首脳会談、海外首脳として初めてバイデン大統領が対面で行う首脳会談ということで、極めて有意義な会談であると考えております。  アメリカ時間で十六日ということになると思いますが、会談におきましては、日本の外交そして安全保障の基軸であります日米同盟の強固なきずな、これを改めて確認するとともに、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けての協力、さらには、中国、北朝鮮を始めとする地域情勢、新型コロナ対策、気候変動問題を始めとする国際社会における共通の課題等に関して、幅広く意見交換を行い、方針のすり合わせを行うということが期待をされます。  また、今回の訪問で、菅総理がバイデン大統領と率直、そしてじっくりと時間をかけて意見交換をするということによりまして、外交というのは個人間の信頼関係も重要でありまして、そういったものも深まってくるのではないかなと思っております。  様々なやり取りを行うことになると思います。また、こういう会談でありますから、全てが予定調和という形じゃなくて、いろいろなやり取りがあると思うんですが、その詳細につきましては、まだ会談も行われておりませんし、外交上のものでありますので、そこについて予断を持ってこの時点でお答えすることは差し控えたいと思います。
  162. 青山大人

    ○青山(大)委員 承知しました。本当にいい信頼関係ができればとも思っています。  ちょっとRCEPの方に行きますけれども、外務省が、二〇〇二年十月ですか、平成十四年にいわゆるFTA戦略を発表された。そのときに、たしか、茂木大臣外務大臣ですね。  大体約二十年が経過して、いわゆるTPP、結果的にはアメリカは入らなかったんですけれども、TPP、そして、いわゆるRCEPという形で、その平成十四年に発表されたFTA戦略が、大体、ひとまずある程度の結論を出したというわけでございますけれども、改めて、そういった、シンガポールから始まったFTA戦略、この二十年間の総括をちょっと大臣に簡潔に聞きたいのと、そして、更なる次の目標、これで終わってしまってはしようがないので、この次の展開についてどのように考えているのか、お伺いいたします。
  163. 茂木敏充

    ○茂木国務大臣 青山議員御指摘のように、二〇〇二年十月に外務省がFTA戦略を策定した際、私は外務大臣でありました。  当時の経済局長が、後に次官そして駐米大使を経験をする佐々江経済局長であったと思いますけれども、一つ一つばらばらに協定を作っていくんじゃなくて、十年とか二十年の単位で日本がどうしていくかということでこの経済連携協定の戦略を考えた方がいいということで作ったものでありまして、当時はまだシンガポールとの間しかありませんでした。  その後、作った後にメキシコが始まり、どちらかといいますとバイの協定、こういったものを作ってきたわけでありますけれども、この数年を見ますと、世界的に保護主義とか内向き志向が強まる中で、米国が離脱をしたTPP、これをどうしてもまとめ上げるということで、これが日本主導でまとまり、さらには日・EU・EPA、そして今回御審議をいただいておりますRCEP、大型の経済連携協定というのも合意に至っているところであります。  今後、一つには、やはりTPP、このハイスタンダードなルールというものを世界に広げていく、こういう取組は極めて重要だと思っております。  同時に、RCEPにつきましては、ASEAN、発展途上国もあるわけでありまして、こういった国々の発展にもつながっていく、また、そういった発展を通じて、このRCEP協定、これをよりハイレベルなものにしていく、こういったことも必要だと思っております。  さらには、横串を刺すといいますか、では、TPPと日・EU・EPA、RCEP、この関係をどうしていくのか。先ほども岡田委員議論させていただきましたが、そういった縦横のいろいろな関係というのを見ながら、いずれにしても、日本がこれから、こういった通商、さらにはデジタルの分野、そういった新しいルール作りでも主導権を発揮していく。こういったことに取り組んでいきたいと思いますし、また同時に、今WTO、いろいろな意味で改革が必要でありまして、機能が十分果たせていないという部分もありますので、このWTO改革、こういった組織面でも日本がしっかりした役割を果たしていければ、こんなふうに考えております。
  164. 青山大人

    ○青山(大)委員 大臣、まさに、経済連携協定関税の話よりも、ある意味ルール作り、これからそういった方も大事ですから、是非アフリカの方も、私もこの前、在外公館の質問でもちょっとアフリカに触れましたけれども、その辺、ルール作りの主導ということで、いわゆるODAのすみ分け等も考えながら、是非今後も検討してほしいというふうに思っております。  ちょっと今WTOの話が出ましたけれども、今回RCEP締結する中で、例えば中国韓国は、いまだにあの東日本大震災のいわゆる原発事故の影響で、我が地元茨城始め幾つかの県の食品の輸入の規制が取られております。非科学的であることは言うまでもありません。  四月五日、茂木大臣も、中国と電話会談で、輸入規制の即時撤廃について求めたとも伺っております。今回の関税とか別かもしれませんけれども、そういう中で、今回経済連携協定を結ぶ中で、そういった非科学的な輸入規制について今後どうやって取り組んでいくのか、お伺いいたします。
  165. 四方敬之

    ○四方政府参考人 お答え申し上げます。  日本産食品の輸入規制の撤廃は、政府の最重要課題の一つであり、様々な機会を捉え、関係国・地域に対する申入れを行ってまいりました。  RCEP署名国の中では、中国韓国等、輸入規制を維持している国がございます。こういった国に対しては、いろいろな機会を捉えて申入れを行っておりますけれども、RCEPが発効する際には、またRCEPも活用しながら、輸入規制の撤廃に向けて働きかけを強化してまいりたいと考えております。
  166. 青山大人

    ○青山(大)委員 済みません。ちょっと、だんだん時間がないので。  本当に、これは是非、引き続き、大臣もそうやって電話会談で言ってくれると思うんですけれども、よろしくお願いいたします。  と同時に、さっきも大臣の答弁でありましたけれども、WTOの紛争の解決機能の件ですね。  WTO紛争処理制度ですが、今、アメリカが、上訴審に当たる上級委員会の運用を問題視し、裁判官に当たる委員の任命拒否を続けているため、実際、機能停止に陥っています。是非、菅総理の訪米の際に、アメリカにもこういった前向きな進展について働きかけてほしいと思っていますけれども、何かございますでしょうか。
  167. 茂木敏充

    ○茂木国務大臣 先ほど申し上げたように、WTO改革は喫緊の課題だと思っておりまして、新たに事務局長に就任をしましたンゴジ・オコンジョ事務局長、さらには関係国の通商関係、外交の責任者ともいろいろな話をしておりますが、これは、我が国もそうでありますが、多くの国が幾つかの重要な課題がある、こういうふうに捉えておりまして、その一つが、輸出規制措置のルール化を含みます貿易と、特に最近は保健分野の取組、二つ目に、電子商取引を始めとする各種ルールのアップデート、さらには紛争解決制度改革、この三点が重要である、こういう認識というのはかなり確立されているんじゃないかなと思います。  そういった中で、紛争解決制度については、上級委員会が紛争の明確かつ迅速な解決を確保するという本来の役割を果たせていないこと、我が国としても懸念をしてきたところでありますし、特に、最近、新型コロナをめぐります貿易制限的な措置が多く取られている。こういった中で、自由で公正なルールに基づく多国貿易体制の維持強化をする観点からも、WTOの紛争解決制度の改革と機能回復、これは国際社会にとって一層切実な問題になっていると思っております。  そして、この改革を進めるためには、委員も御指摘のように、米国の関与が不可欠であると考えておりまして、この問題について、米国内では問題意識が超党派で共有されていると認識をしております。  そのため、私自身も、昨年の八月、ライトハイザー通商代表と会談を行いました。そのとき、ライトハイザー通商代表から、一度アメリカに来て、オーガスタでゴルフでもやりながらゆっくり議論しようじゃないかと、相当魅力的だったんですが、それは実現できなかったんですけれども、その後、先月、キャサリン・タイ通商代表とも、会談でこの件を取り上げまして、具体的な問題解決に向けて議論を行い、協力を強く働きかけているところであります。  我が国としては、引き続き米国とも緊密に連携しながら、紛争解決制度を含みますWTO改革に向けた国際社会の取組を今後とも主導していきたい、こんなふうに考えております。
  168. 青山大人

    ○青山(大)委員 では、次の質問に行きます。  この外務委員会の中でも、RCEP議論の中でサプライチェーンの強化の話が出ましたけれども、三月に、茨城県のひたちなか市にございますルネサスセミコンダクタマニュファクチュアリング社の半導体工場で火災が発生しました。現場の方たちも大変懸命に復旧作業を行っています。  これまでも、政府の方からも多大な御支援をもらっているというふうに聞いていますけれども、今後の支援策について簡潔にお伺いいたします。
  169. 三浦章豪

    ○三浦政府参考人 お答え申し上げます。  お尋ねのルネサス那珂工場については、先月十九日の火災発生以降、取引先、装置、部材メーカーなどの支援を受けながら、一か月以内の生産再開を目標に全力で復旧に取り組んでいると承知をしております。  こうした中、先週九日にはクリーンルームの運転が無事再開しており、目標達成の可能性が大きく高まっている状況と認識しております。  経済産業省におきましては、他産業に与える影響など、工場の早期復旧の重要性を鑑み、発災当日から連日、ルネサスや関係企業、団体と密接に連携して対応に当たってきております。  具体的には、半導体製造装置などの調達の迅速化に向けた装置、部材メーカーへの協力要請、代替生産に関する台湾の半導体メーカーへの協力要請などを行ってきており、引き続き、那珂工場の生産再開、さらには火災前の出荷水準への早期復旧に向けて必要な支援を実施していきたいと考えております。
  170. 青山大人

    ○青山(大)委員 引き続きよろしくお願いします。  一問残ってしまったんですけれども、次回のときに質問したいと思っています。  どうもありがとうございました。
  171. あべ俊子

    ○あべ委員長 次に、穀田恵二君。
  172. 穀田恵二

    穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。  RCEP協定について質問します。  本協定は、ASEAN十か国、オーストラリア、ニュージーランドなど計十五か国が参加する経済連携協定であり、日本にとっては、本協定を通じて、中国韓国締結するのは初めてのEPAとなります。  本協定に参加する十五か国を見ると、既にTPP11に参加している国が、日本、オーストラリア、ニュージーランド、ASEANではシンガポールやベトナム、マレーシア、ブルネイの計七か国があります。ところが、政府は、本協定審議に当たって、RCEP協定TPPの内容を比較検証できる概要資料などを全く示してこなかったわけです。茂木大臣、その理由は何なんですか。
  173. 茂木敏充

    ○茂木国務大臣 これはTPP11もそうでありますが、RCEP協定も、いずれも極めて膨大な分量であり、かつ内容が多岐にわたり、それぞれの協定によりまして、確かに両方に入っている国、例えばTPPのうち七か国がこのRCEPに参加をする、ただ半分以下でありますけれども、そういう参加国の構成とか規定の仕方、これは異なっております。  また、とりわけRCEPそしてTPPは参加国が多いことから、多次元の比較が必要になるということでありまして、国と規定だけではなくて、その内容とかになりますと、一覧できるような二次元の対照表、多分、作るとなると二次元で作らざるを得ないと思うんですけれども、表というものは、これを作成することは困難だと考えております。  その上で、物品市場アクセスにおける関税撤廃率であったりとか、サービス等の物品以外の市場アクセス、さらには、知的財産電子商取引投資、紛争解決などのルール分野の違いについて、具体的な数字であったりとか特徴的な違いについて御質問があれば、丁寧にお答えをさせていただきたいと思います。
  174. 穀田恵二

    穀田委員 簡単に言うと、一概に比較することは困難だと先ほどありました。  これまで政府は、本協定をめぐって、例えば、TPP成果を踏まえながら、質の高い協定を早期に妥結していくと、TPPとの比較で説明してまいりました。したがって、本協定審議に当たっては、TPPなどの他の協定と内容を比較できる概要資料などを作成し、国会に提示する努力をすべきだったのではないかと私は考えます。それを、今お話があったように、いろいろあればそれは答えまっせというのでは、余りに私はちょっと傲慢と言わざるを得ないなと。つまり、本会議ではずっとそういう答弁をしていますよね。個別具体的な照会があれば対応する、こういう言い方でしたよね。今日はもう少し丁寧でしたけれども。  そういう意味では、私は、はっきり言うと、審議を依頼している立場ですから、本質的にはこういう問題がありますよと可能な限り出していくというのが大事だと思うんです。  しかも、RCEP協定に参加する十五か国を見ると、確かに、茂木大臣も今お話がありましたように、制度や経済発展状況が大きく異なる国々が参加しております。日本やオーストラリア、ニュージーランド、シンガポールのように、一人当たりのGDPの水準が高く、TPP11に参加している国がある一方、カンボジアやラオス、ミャンマーのように、一人当たりのGDPの水準が低い、まあ括弧つきで言っているわけですけれども、後発開発途上国もありますよね。そういう点では、経済格差に大きな違いがある。  こうした経済状況を見ると、本協定が果たして東アジアの互恵的な協定になり得るのかと思うんですが、その点はいかがですか。
  175. 茂木敏充

    ○茂木国務大臣 それだけ国による発展度合い等々、また国内の制度が違っていたということもあり、交渉に若干の時間を要したというところはあると思うんですけれども、いずれにしても、物品であったりサービスだけではなくて、様々な今後必要とされるルール面でも、RCEPにおいて、TPP等も踏まえながら、必ずしも基準は一緒ではありませんが、新たなルールが設定された、このことは大きな意義があったと考えております。  また、そういった国々が、この協定の発効によりまして経済発展を遂げるということによりまして、よりレベルの高いルールを受け入れることができる、こういう状況になっていくということは極めて望ましいことだと思っておりまして、そういったことを見ながら、このRCEPについては、今後一層のレベルアップということも将来的には視野に入れたいと思っております。
  176. 穀田恵二

    穀田委員 RCEP協定は、後発の開発途上国を含め東アジア経済統合を進めるという、いわば包摂ということだと言われていますね、特徴としておって、そこがTPPとは異なるものであります。  本協定の第一条にはそう書いていまして、次のことを目的とすると書いていて、締約国、特に後発開発途上締約国の発展段階及び経済上のニーズを考慮しつつ、現代的な、包括的な、質の高い、及び互恵的な経済上の連携の枠組みを設定することを目的と明記していますよね。  しかし、茂木大臣も御承知のとおり、ASEANでは、後発開発途上国との格差是正に非常に大きな取組のウェートを置いていまして、その中で、その進捗は時間をかけて段階的に進められていると、それぞれの国が大体言っておられます。そうした状況を見ると、本協定の目的に規定された現代的、包括的、そして質の高い、互恵的という四つ特徴、とりわけ互恵関係の構築というのは現実的には非常に困難なのではないかと率直に思うんですが、いかがでしょうか。
  177. 茂木敏充

    ○茂木国務大臣 これは、十五か国が参加しましても、お互いに関税率を下げたりということでありまして、当然にお互いにメリットをもたらす、こういうものだと思っております。そして同時に、マルチ協定、今日の午前中の審議でも答弁をさせていただいたんですけれども、やはり、それぞれの国が同じように満足できる、そして、必ずしも、それぞれの国が同じように不満が残る、この状態でやはりまとまるものだと思っております。  そういった意味で、日本にとって百点満点だったとか、中国にとって何点だったとか、例えば、ミャンマー、ラオス、カンボジアにおいて何点だったということよりも、全体的にバランスの取れた包摂的なものになっている、このように考えております。
  178. 穀田恵二

    穀田委員 私は、何でこんなことを言っているかというと、本来、貿易経済協定の目的とは何なんだということに由来すると思うんですよね。古く遡れば、国連その他が、そういうものについて貿易考え方を規定しているのは、それぞれのお互いの国が経済発展を遂げるという、つまり生活水準を高める、それからあわせて、雇用とそういう実質的な様々な利益を確保する、こういうことだと思うんですよね、理念として。だから、そういう理念との関係で大丈夫なのかということを思うわけですよね。  その意味でいいますと、本協定の適用形態の柔軟性や特別措置などを後発開発途上国に柔軟に適用することで、全ての参加国に利益をもたらす経済上の連携を実現するという考え方は確かにあるんですね。先ほども大臣は、経済発展を共にする、お互いのメリットだ、こうおっしゃっていますけれども、本協定の互恵性については問題を指摘する国際的な試算もあります。  世界銀行と国連貿易開発会議が昨年十一月に公表した試算があります。それによると、本協定が発効された場合、参加国の中で最も輸出が伸びるのは日本であり、発効前に比べ七・六%増加すると分析しています。また、日本に次いで、中国も四・一%、韓国も三・一%の輸出増となるとされています。その一方で、ASEANの主要六か国の輸出は、タイが二・六%増える以外はマイナス若しくは一%の微増にとどまり、貿易収支もASEAN諸国では軒並み悪化すると試算しています。  茂木大臣は、こうした懸念が指摘されていることについてはどのようにお考えでしょうか。
  179. 茂木敏充

    ○茂木国務大臣 長期的に見て、これは単に物品貿易の問題にとどまらないことでありまして、一つ一つの、政府が出したものでない試算についてコメントをすることは控えたいと思いますけれども。  何か、クラシックなデビッド・リカードの比較生産費説みたいなものとは違うんだと思うんです、今のグローバル化されている経済というのは。例えば、こういった協定を結ぶことによって、日本がサプライチェーンを新たに多元化していく中で、ASEANの国々に拠点を置くということも十分に考えられる。それというのは、結果的には、輸出においては日本が優位に働く場合でも、そのASEANの諸国において雇用を生み出すという違った効果も生まれてくる、そういったことを総合的に考える必要があるなと。  同時に、こういった新しい、知財の保護であったりとか様々なルールができることによって、単なる貿易だけではなくて、投資という面でも、この面でいいますと、恐らく、例えばカンボジアと日本、ラオスと日本を比べた場合に、ポテンシャルとして、少なくともこの十年ぐらいのタームで見たときに、日本からカンボジアに投資をする額の方がカンボジアから日本投資する額よりも大きくなってくる、これは一般的な見方ではないかなと思います。
  180. 穀田恵二

    穀田委員 外務省のアジア大洋州局が昨年八月にまとめたASEAN経済統計基礎資料があります。それを見ますと、シンガポール、マレーシア、ブルネイの貿易収支は二〇〇一年以降継続的に貿易黒字国になっているとしていますけれども、先ほど述べた世界銀行とUNCTADの試算では、そのマレーシアも、本協定が発効すれば七十六億ドルの貿易赤字になるとしています。外務省の統計資料では、さらに、インドネシアでは近年貿易赤字に転換傾向があるということを指摘をしています、これでは。フィリピンも貿易赤字が拡大しているとしています。本協定が発効されれば、インドネシアは四億ドル、フィリピンも九億ドルの赤字になると試算されている。後発開発途上国のカンボジアでは、四十六億ドルもの貿易赤字が見込まれています。  こうした試算を見ると、貿易の面からいえば、RCEP協定がまさにアジアの互恵的な協定になり得るのかということの検証が必要だと思っています。  そこで、一番最初の検証に、私、指摘しておきたいんです。念のために、確かに、二十章に及ぶ協定、附属書、約束表から成り立っているわけですけれども、RCEP参加国の全ての約束表について、オーストラリアだとか、さらにはニュージーランドの政府については、ウェブサイトで公開しています。  そういう意味で、私は、政府が他の協定との比較をできる概要の資料を提示してこなかったことについては問題があると。それほど言うんだったら、やはり、もちろん投資の問題もありますし、様々な、二十章に及ぶあれですから、きちんと出すべきだということをあえて言わせていただきたいと思っています。  次に、経産副大臣に質問をします。  新型コロナの世界的な感染拡大は、国内需給を逼迫させ、グローバル化したサプライチェーンの脆弱性を浮き彫りにしました。そうした下で、RCEP協定発効が日本の国内産業にどんな影響を及ぼすことになるのか。経産省は、中国などへの生産拠点の多元化を促しています。その事業の概要をお述べいただきたいと思います。
  181. 長坂康正

    ○長坂副大臣 お答え申し上げます。  新型コロナウイルス感染症の影響が拡大する中で、海外での生産拠点の集中度が高い製品の供給が不足するなど、サプライチェーンが途絶するリスクが顕在化をいたしました。  こうした状況を受けまして、経済産業省では、サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金といたしまして、生産拠点の集中度が高い製品、部素材や、国民が健康な生活を営む上で重要な製品、部素材の国内拠点整備を促進するために、令和二年度第一次補正予算二千二百億円、予備費八百六十億円、第三次補正予算二千百八億円を措置をいたしました。  このうち、第一次補正予算及び予備費につきましては、これまで二百三件を採択しております。  第三次補正予算は、現在公募中でございまして、第一に、生産拠点の集中度が高い製品、部素材として、半導体関連、電動車関連、航空機関連など、第二に、国民が健康な生活を営む上で重要な製品といたしまして、ワクチン用注射針、シリンジ、そして、医療品の低温物流施設などを対象といたしまして、補助上限額は百億円、補助率は大企業で最大二分の一、中小企業は最大三分の二の支援を行うことといたしております。  また、海外でのサプライチェーンの多元化や強靱化を支援する観点から、多元化等支援事業といたしまして、生産拠点の集中度が高い製品、部素材や、国民が健康を営む上で重要な製品、部素材の海外生産拠点の多元化を促進するために、令和二年度第一次補正予算二百三十五億円、第三次補正予算百十七億円を措置いたしました。  このうち、第一次補正予算については、これまで、三回の公募で計八十一件を採択しております。
  182. 穀田恵二

    穀田委員 つまり、日本企業の国内回帰の動きを推進する一方で、ASEANでの新たな供給網の確立を促すということですわな。まあ、うんとうなずいたので。  問題は、そうした施策が国内産業に一体どんな影響を及ぼすことになるかということだと思うんですよね。  ジェトロが、日本貿易振興機構が、先月、三月十二日ですけれども、日本企業の海外事業展開に関するアンケート結果を基に発表したレポートがあります。  それによると、日本の製造業者千三百九十五社の今後三年間の海外進出方針に関し、現在海外に拠点があり、今後更に拡大を図る、現在海外に拠点はないが、今後新たな進出をしたいと、海外進出に意欲を示す企業は四割強見られた。また、事業拡大を図る対象国として中国を挙げる企業が約五割を占め、事業展開先として重視していることが伺えます。  経産省は、中国などから生産拠点を国内に回帰させる動きを促すと言うけれども、こうしたジェトロの調査からも、実際は、それと真逆の動きが今後更に続こうとしているんじゃないですか。
  183. 長坂康正

    ○長坂副大臣 お答え申し上げます。  本事業は、サプライチェーンの強靱化を図るため、企業が自ら選択する生産拠点の多元化として国内投資を支援するものでございまして、特定の国や地域への依存度を下げることを念頭に置いたものではございません。  他方、現在、公募中の補助金の採択に当たりましては、中国を含む海外における生産拠点の集中度が高く、かつサプライチェーンの途絶によるリスクが大きい重要な製品、部素材を支援対象とすべく、半導体関連、次世代自動車関連、ロボット部品、ドローン部品、ディスプレー、自動車関連、洋上風力発電、航空機関連、高効率のガスタービン部品等の製品、部素材を例示しております。  こうした製品、部素材は、現状において海外における生産性集中度が高いために、国内の生産拠点の整備が進むことによりまして、生産拠点の集中度は低減していくものと考えております。
  184. 穀田恵二

    穀田委員 では、端的に聞きます。空洞化がどの程度食い止められますか。端的に答えてください。
  185. 長坂康正

    ○長坂副大臣 今申し上げました製品、部素材は、現状において海外において生産集中度が高いために、国内の生産拠点の整備が進むことによりまして、生産拠点の集中度は低減していくものと考えております。
  186. 穀田恵二

    穀田委員 低減していくものと言っているだけで、私が言っているのは、それじゃ、どの程度なるんだという話を聞いているわけですやんか。それを、さっきから同じことを言っているだけなんですよ。駄目ですよ、それは。  経団連の会長が、昨年四月の記者会見で、コロナショックを機に日本企業の生産、調達拠点の国内回帰を進めるべきとの声があるが、全て戻せばよいという話ではないし、戻せるものでもないと述べているんですよね。経産省の補助金事業についても、ある国に依存するとロックダウン時の影響が甚大だとしつつも、全部を国内に持ってくるのは現実的ではないと述べているわけですよ。  ジェトロのレポートでは、海外での事業拡大を図る対象国として、中国の次にベトナムを挙げる企業が四割と多く、そのほか、タイ、インドネシア、シンガポール、マレーシアなどを対象国とする企業が多い。  経産省によるASEANでの生産拠点の多元化を促す事業でも、こうした傾向が示されているのではありませんか。数字を簡単に述べてください。
  187. 長坂康正

    ○長坂副大臣 令和二年度一次補正予算によります海外サプライチェーン多元化支援事業は、これまで二回の公募で設備導入を支援しておりまして、計六十件を採択いたしました。  採択件数の上位五か国、その件数は、一部重複もございますが、ベトナムで三十件、タイで十二件、フィリピンで七件、マレーシアで六件、インドネシアで六件となっております。
  188. 穀田恵二

    穀田委員 私が何を言っているかというと、実際に、海外生産拠点をつくるということで、事実上、そう進めてきて、これをあおってきて、空洞化した。それに乗っていった、もちろん中小企業の、零細企業の方々も一定行きますよ。だけれども、今度、戻ってこいという場合には、そういう大手の企業がうんと戻ってくるためには金をやる、こういうやり方が本当にいいのかということだと思うんですね。  そうした事業の採択の状況を見ると、サプライチェーンの多元化などの政策は、日本企業ASEAN各国への海外進出を推し進めると同時に、中国などに生産拠点を移す動きを加速させ、地域経済の衰退など、国内産業の空洞化を一層強めることになりはしないかと思うんですが、いかがですか。
  189. 長坂康正

    ○長坂副大臣 RCEP協定の話もございましたが、特定の国への依存度を高めることにはならないと考えております。  その理由として、第一に、全てのRCEP参加国が関税を削減、撤廃することで、日本国内で製造して相手国に輸出するという選択肢を取りやすくなりまして、結果的に日本国内の製造基盤の維持強化につながると考えております。
  190. 穀田恵二

    穀田委員 そんな楽観的な話をしていたのでは、日本経済、大変ですよ。  現実には、特定の国というのは、中国、そしてベトナムと、ナンバーファイブまで全部出ているわけで、そういう希望観測的な話をしていたのでは私は駄目だと思います。  菅さんは、RCEP協定の署名式で、コロナ禍で世界経済が低迷し、内向きの志向も見られる中で、自由貿易の推進がより一層重要だと強調しました。しかし、新型コロナの感染拡大に伴う国内需要の逼迫、グローバル化したサプライチェーンの脆弱性を浮き彫りにしたわけですよね。このときに、TPP11や日欧EPA、日米貿易協定など……
  191. あべ俊子

    ○あべ委員長 申合せの時間が経過しておりますので、御協力いただきます。
  192. 穀田恵二

    穀田委員 分かりました。  貿易自由化一辺倒、外需頼みという政策は、今、危機に弱い社会経済をつくり出していることは明らかだと思います。  したがって、何の反省もないままに、今お話あったように、本協定で一層の市場開放を推進することは許されない、そのことを強調して、終わります。
  193. あべ俊子

    ○あべ委員長 次に、浦野靖人君。
  194. 浦野靖人

    ○浦野委員 日本維新の会の浦野靖人です。よろしくお願いします。  先ほどの理事会で換気のお願いをさせていただいたら、早速対応していただきまして、委員長、どうもありがとうございます。御配慮ありがとうございました。  午前中の参考人質疑に続いて質疑をさせていただきますけれども、まず一点、最初の、TPPにおける台湾の加入についてということなんですけれども、RCEPについては、台湾は、台湾経済への影響はそれほど大きくないということで、参加はしないということです。一方で、TPPについては意欲を示しているということなんですけれども、政府として、現状をお答えいただきたいと思います。
  195. 四方敬之

    ○四方政府参考人 委員御指摘のとおり、台湾は、RCEPについては、これまで加入について関心表明等はしていないと承知しておりますけれども、TPP11につきましては、従来からTPP11加入に関心を寄せているというふうに認識をしております。
  196. 浦野靖人

    ○浦野委員 ありがとうございます。  報道によると、中国の李克強首相、李首相は、全人代で行った政治活動報告でも、TPP加入を前向きに検討すると述べています。習近平国家主席も、昨年の十一月に、積極的に検討するということを述べています。  このような状況の中で、議長国の日本として、台湾の加入について、積極的に参加を促すのか、また、これは中国からどういうリアクションがあるのか。猛烈な抗議が予想されますけれども、今までどおり、台湾を中国の一部として扱って、中国寄りの姿勢で挑むのか。それとも、アメリカ等が今いろいろ考えていますけれども、そういった中で、国としての扱いをするのか、その辺の方針を教えていただけますか。
  197. 茂木敏充

    ○茂木国務大臣 まず、TPP11、これは国だけではなくて、独立の関税地域、これも加入資格があるということになっておりまして、その意味では、台湾が加入することも可能なわけであります。  そして、先ほど四方局長の方からも答弁させていただいたように、台湾は、このTPP11、もう合意のときからだったと思いますが、強い関心を示しているということも確かであると思っております。  日本としては、TPPの持っているハイスタンダードでバランスの取れた二十一世紀型のルール、これが国際社会に拡大していく、こういったことは極めて重要だと考えております。同時に、そのハイスタンダードなルールを受け入れることができるかどうか、そういう用意ができているかどうか、こういったことも見極めながら、戦略的な観点も含め、これは台湾に限らず、様々な国の加入について、よく検討していきたいと思っております。     〔委員長退席、伊藤(信)委員長代理着席〕
  198. 浦野靖人

    ○浦野委員 台湾を地域として扱うのか、チャイニーズタイペイとして扱うのか、国として扱うのかというのは、これまでもいろいろ議論が、政府としての立場はその議論はないですけれども、最近だと、立憲の枝野さんなんかは国として台湾を認識しているような発言もされていましたし、結構ばらつきがあるのかなと思います。  その中で、TPPについてはそういうお話ですけれども、そのほかのいろいろな経済関連の条約、協定、そういったものがこれから出てくる中で、台湾の扱いについては、やはり政府として、先ほどの参考人の、浜中参考人の方にちょっとその点をお伺いしたら、浜中さんは、やはり日本としてどうしたいのか、どういうことを求めるのかというのをしっかりと決めてから交渉すべきだということをおっしゃっていましたけれども。台湾についてこれからどうしていくのか、恐らくバイデン政権になって、日中、日米、米中、そして台湾という関係というのは変化がある可能性が出てきていますので、是非慎重に議論をしていただけたらと思っております。  この点、何か、通告は何もしていないですけれども、大臣、何かありますか、一言。台湾とのこれからの関係については。(茂木国務大臣「ちょっと聞き取れないんですけれども」と呼ぶ)いや、いいです、それなら。
  199. 伊藤信太郎

    伊藤(信)委員長代理 もっと大きい声で。
  200. 浦野靖人

    ○浦野委員 いや、結構、このマイク、余り何か拾わないんですよね、委員会ね。
  201. 伊藤信太郎

    伊藤(信)委員長代理 いいんですか。
  202. 浦野靖人

    ○浦野委員 はい、通告も何もしていなかったので、別に結構です。済みません。(茂木国務大臣「本当にごめんなさい、聞き取れなかったんです」と呼ぶ)はい。  話は変わりますけれども、台湾産のパイナップル、大臣は食べましたか。台湾のパイナップル、食べましたか。
  203. 茂木敏充

    ○茂木国務大臣 パイナップルですね。食べたことはあると思います。
  204. 浦野靖人

    ○浦野委員 この間、ちょっと中国が買わないと不買運動をして、それで逆に日本がたくさん買って、それがニュースになっていましたけれども、私もこの間食べさせていただきまして、非常に、維新の国対の部屋でみんなで分けて食べたんですけれども、めちゃくちゃおいしかったです。御報告です。  次の質問に移ります。  知的財産保護の実効性の確保について質問をいたします。  中国ではWTO加盟を契機として知的財産保護の法制度が整備されつつありますけれども、中国発の模倣品、海賊版の被害、後を絶ちません。また、中国における商標の冒認出願、これは特許を受ける権利がないにもかかわらず、そういった人たちが出願をするというものですけれども、冒認出願への対応に苦慮している企業が少なくないということです。  本協定がこうした問題の改善に効果を有するものなのかどうかというのをお聞かせいただきたいことと、我が国政府中国における知的財産保護の実効性をどのように確保していくのか、見解をお願いいたします。
  205. 四方敬之

    ○四方政府参考人 委員から御指摘いただきました、中国における日本企業の商標と類似した商標や日本の地名を含む商標が中国企業によって登録される問題など、中国における日本企業などの知的財産の保護につきましては、政府としても問題視をしておりまして、これまでも、個別の事案ごとに、当事者の意向も踏まえて必要な働きかけを行ってきたところでございます。  RCEP協定におきましては、WTO協定にない規定として、悪意による商標の出願を拒絶し、また登録を取り消す権限を当局に与える規定や、税関等の当局が不正商標商品や著作権侵害物品の疑いのある輸入貨物を職権により差し止めることができる手続を採用又は維持する義務が規定されております。  政府としましては、RCEP協定のこうした規定を通じまして、日本企業が保有する商標の保護が強化され、また日本企業が直面する模倣品、海賊版の問題が改善されることを期待しております。  仮に締約国が協定の規定と相入れない措置を取る場合には、RCEP協定上に規定された協議メカニズム、あるいは紛争解決手続を活用して適切に対応していくと同時に、必要に応じて外交ルート等でも対処することを検討してまいりたいと思います。     〔伊藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕
  206. 浦野靖人

    ○浦野委員 次に、中国による技術移転の強制、これは、米中貿易摩擦の大きな要因の一つとなるなど、欧米でも問題視されてきました。  中国は、WTO加盟に際し、技術移転を許認可等の条件としない旨を約束しています。WTO参加後は、露骨な形で技術移転を要求することは基本的になくなったという指摘もありますけれども、口頭での技術移転要求や、中国政府中国共産党と密接な関係を有する中国企業を通じた技術移転要求の例が実際に報告されています。  こういった状況の中で、本協定における技術移転要求の禁止規定は中国において本当に実効性のあるものとなっているのかというのをお聞かせいただきたいと思います。
  207. 四方敬之

    ○四方政府参考人 委員御指摘のとおり、中国は、WTO加入議定書におきまして、輸入や投資に関係する承認の条件として技術移転等を要求しない旨約束しております。  これに対して、今回のRCEP協定は、投資家、投資財産全般を対象に、より広範にルールを規定しておりまして、WTO協定には盛り込まれていない技術移転要求やロイヤリティー規制の原則禁止を明確に規定しております。これらの規定は、我が国と中国との関係では、一九八九年発効の日中投資保護協定及び二〇一四年発効の日中韓投資協定にもない新たなルールでございまして、自由で公正な経済圏の拡大に資するものと考えております。  こうしたルールが実効性のある形で運用されるよう、RCEP協定発効後も中国における状況を引き続きしっかり注視し、仮に協定の規定と相入れない措置が取られる場合には、RCEP協定上に規定された協議メカニズムや紛争解決手続を活用して適切に対応していくと同時に、必要に応じて外交ルート等を通じて対処することも検討してまいりたいと存じます。
  208. 浦野靖人

    ○浦野委員 ありがとうございます。  次に、新たな分野についての規律の必要性について質問をします。  本協定では、TPP11協定では重要な課題となっていた国有企業や労働、環境に関する規定が設けられていません。経済発展の度合いや国家体制が異なる国々が参加する本協定こそ、こうした分野の規律を盛り込む必要があると思いますが、いかがでしょうか。
  209. 四方敬之

    ○四方政府参考人 RCEP協定は、後発開発途上国を含め、国内制度や経済発展状況が大きく異なる十五か国による経済連携協定でございまして、交渉の結果、委員御指摘の国有企業や労働、環境に関する規律は盛り込まれませんでした。  他方、我が国としましては、各国における企業間の公正な競争環境を整備する観点から国有企業ルールは重要であると考えておりまして、また、貿易投資の促進と労働者の権利や環境保護の調和を実現するため、これらに関する規律を経済連携協定に設けることも重要であると考えております。  RCEP協定発効から五年後には協定の一般的見直しが行われることになっておりまして、こうしたことも念頭に、協定発効後も、必要に応じて合同委員会等の場も活用しつつ、RCEP協定ルールの更なる改善、向上に向け、引き続き関係国と議論を行ってまいりたいと考えております。
  210. 浦野靖人

    ○浦野委員 ありがとうございます。  今日の午前中の参考人質疑でお聞かせいただいたこと、結構重要なこともあったと思います。特に、国内農業の在り方についてというのは、結構、主に鈴木参考人がやはりかなり語っておられましたけれども、私は、国内の農業がこのRCEPで駄目になるとか、そういうことは余り考えてはいませんけれども、実際に国内の農業がもっと発展する仕組み、それは必ず必要だと思うんですね。  そういったことをこの法案の質疑の中で、質問が、参考人質疑があってすぐにこういう法案質疑があるので、事前に通告もできませんし、議論もできないというのは、これは理事会等でも穀田委員や山尾委員がおっしゃっているように、参考人質疑の後に質疑がすぐにあって、さらに採決されるというのは、やはり丁寧な質疑ができないなというのは私も思います。  ただ、野党と与党筆頭間で協議をして決めたことですので、もう私は何も理事会でも言いませんでしたけれども、やはり丁寧な議論をしようと思えば、僕は今まで厚労委員会内閣委員会を経験してきましたけれども、参考人質疑の後にこうやってすぐに質疑があって採決というのは、ほとんど今まで経験したことがなかったので。やはり、参考人質疑をするということは、更にもう一回、日を置いて丁寧に質疑があるというのが大体どこの委員会も普通だったので、そういった委員会の運びを外務委員会でもしていただけたらなと思っています。  農業の在り方、この委員会とは別に、国家戦略特別区域法を、この間、ほかの委員会でやりましたね。我が党は附帯決議に反対をしたんですけれども、附帯決議の内容は、本当に規制緩和とか規制改革とかを与党もやる気があるのか分からないような内容の附帯決議でした。だから、私どもは、進めるべきだという立場から反対をしたわけですけれども。  そういった議論も、やはり、すぐにこうやって質疑があると、通告できないので答弁もいただけないということに結果なると思いますので、是非これから、こういったことがないように、委員会質疑を組み立てられるような委員会運びをしていただけたらと思っています。  少し時間が早いですけれども、これで質疑を終わります。ありがとうございました。
  211. あべ俊子

    ○あべ委員長 次に、山尾志桜里君。
  212. 山尾志桜里

    ○山尾委員 国民民主党の山尾志桜里です。  RCEP質疑、よろしくお願いいたします。  前回の質疑、午前中の参考人質疑、そして皆さんの質疑を聞いていて、やはり今回、私は四点懸念を申し上げたいというふうに思いまして、ちょっとその一点一点、最終的に確認をしていきたいというふうに思っています。  一点目が、人権弾圧が起きている国とRCEP締結するに当たって、やはり、政府経済制裁の手法も持たないまま、あるいは企業が人権侵害に加担しないような、こういう仕組みも不十分なままで、経済連携だけ先行して進めていいのだろうかというのが一点。二点目が、ミャンマー国軍による寄託があった場合の扱い。三点目が、日本の寄託時期をどう見極めるのかという問題。四点目が、価値を必ずしも共有しない国と、データフリーフローを今後更にハイレベルに自由度を進めていくべきなんだろうか。むしろ、今後の課題は、データフリーフローの自由度強化というよりも、環境とか労働とかそういう分野の公正、自由というだけでなく公正という点をやはりしっかり見ていく必要があるのではないか、改善していくべき優先順位が高いのではないかというようなことを考えております。  そこで、まず一点目のことなんですけれども、経済制裁すべき場面で経済連携していいのかという御意見もあります。  そういう中で、今回、参考人お話を聞くと、心に残ったのは、経済連携の問題と人権問題をどのように関係をさせていくのかいかないのか、影響を受けるとしても、どの程度で影響させていくべきなのかというのは、これはやはり国家の意思である、どういう国家像を日本が描いて外交に向けていくのかということの御意見をいただきまして、そのとおりだなというふうに思いました。  その上で、私たちとしては、経済連携をしたとしても、政府として制裁すべきは制裁し、企業側にも個々の取引において人権デューデリジェンスを強化する、そうした制度設計をやはりこの機にしっかり推進させるべきだというふうに考えております。  そこで、金融庁に伺うんですけれども、人権侵害制裁法については超党派で議員立法を目指していますが、人権デューデリジェンスはまだソフトローで始まったばかり。注目すべきは、東証と金融庁のコーポレーションガバナンス・コードに初めて、企業に人権の尊重を求めるという言葉が入れ込まれ、今パブコメにかかっているわけですけれども、これは一歩前進は評価しますが、こうした抽象的な要請で二〇二一改正が終わり、三年後を待つというのでは、ちょっと国際社会のスピードについていかないのではという気もいたします。  金融庁に伺います。  こうしたコーポレーションガバナンス・コードの改善がなされると、企業と人権の行動原則について、どういった具体的なプラスの効果がもたらされると考えているんでしょうか。
  213. 井上俊剛

    ○井上政府参考人 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、金融庁と東京証券取引所の有識者会議においてコーポレートガバナンスの諸課題を議論いたしまして、先日、コーポレートガバナンス・コードの改定案を公表したところでございます。  改定案においては、企業のサステーナビリティーをめぐる課題への対応の重要性にも言及した上で、その課題の例として人権の尊重も明記いたしまして、加えて、サステーナビリティーの取組の開示についても求めるところでございます。  今後、東京証券取引所によるパブリックコメント等の手続を経た後に正式な改定を行う予定でございますけれども、人権の尊重等も含めたサステーナビリティーをめぐる課題への対応の重要性も踏まえつつ、実効的なコーポレートガバナンス改革を進めてまいりたいと考えております。
  214. 山尾志桜里

    ○山尾委員 人権の尊重への取組、それをサステーナビリティーの一部として開示が推奨されていくということはあるんでしょうけれども、やはり、先日、ファーストリテイリング、いわゆるユニクロですけれども、その決算会見で大変厳しい状況がありましたのは皆さん御存じだと思います。ウイグルから調達した綿花の使用をめぐって、取引先の企業に問題はないということを一方でお話をされましたが、他方、では、そのウイグルで調達された綿花を使用しているかどうかはノーコメントだ、こういうことを貫かれて、まあ、企業の側も大変だなというふうに思いました、正直言って。  ただ、今お話あったように、そういう人権の尊重への取組の開示が進むということでありますが、このファーストリテイリングのサステーナビリティーリポートというのは、実はもう既に他の企業に比べても結構先進的な、具体的な文言を書かれています、二〇二一年レポートですね。人権侵害事案の調査と救済措置への助言、勧告、特定された課題についての未然防止や改善施策、こういうふうにしっかり書かれてはいるんですけれども、言うはやすし行うは難しということで、実行するのはとても難しいという状況がやはり可視化をされてきたな、思いのほか早くというふうに感じました。  そこで、大臣に伺います。  こういったソフトローの改善、ちょっとやはり限界があるし、ちょっとスピード感に問題があるというふうに思っていて、ハードローの検討も改めて必要ではないか。こういったサプライチェーンで人権侵害が海外から指摘されたときに、人権侵害への関与の有無を開示すれば足りるのか、関与はなくても、そういった地域の原材料を用いているか否かということは非開示でいいのか、どういう項目を開示をし、どこまで監査をすれば企業として一定の責任を果たしたと言えるのか。  そこのところを、やはり政府のサポートと一定の政府リーダーシップで少し整えていかないと、極めて日本企業も海外からのレピュテーションリスクにさらされたまま、つらい状況が続くのではないかなと思うんですけれども、大臣、いかがですか。
  215. 茂木敏充

    ○茂木国務大臣 前回、委員からの御質問をいただいたときに、企業がその価値であったりとか競争力を高める上で求められるもの、今、ESG投資であったり様々ありますけれども、恐らく環境への配慮、これについてはやはり非常に重要であり、また、多くの企業がそのことをより強く意識している状況に私はなっていると思います。  一方で、御指摘の人権問題、企業の中でも、重要である、そういった認識はできつつあると思いますが、では、環境と比べた場合にどうかというと、それは率直に申し上げて、環境問題ほどの意識というのがまだ、少なくとも日本においては高まっていないということでありまして、昨年十月に、ビジネスと人権の行動計画、作成をして、そういった状況の中で、企業の意識の啓発、喚起をする取組を行っておりまして、今後、企業とも様々な意思疎通を行っていく中で、また、企業の側の意識も変わりつつ、今後どんなことをしていくかということを考えることが必要ではないかなと思っております。  先ほど、RCEPを今後どうしていくかというときに、今後、更にハイレベルなものにしていかなければいけないと思っておりますけれども、例えば棒高跳びでいうと、今、一メートル五十を日本は跳べる、簡単に。ところが、跳ぶのもしんどい国があって、次は一メートル八十にするぞということを言ったときに、かえって足がすくんでしまうということもありますから、やはり、できるんだという実績を積み重ねるということも私は重要だと思っています。
  216. 山尾志桜里

    ○山尾委員 人権問題について、やはり、海外での意識の高まりと日本での意識の高まりというのは、かなりギャップができてきつつあると思いますので、そこのギャップの部分。ただ、企業は海外での国際競争にさらされていますし、海外での評価にさらされるわけなので、そこのギャップを埋めるべく、やはり日本政府としてしっかりサポートする必要があるという意味で、人権デューデリジェンスの法制化というのを私は進めるべきだと思うし、党としても提起をしていきたいなというふうに思っています。  もう一点、次なんですけれども、今回、データフリーフロー、今後優先して見直すべきテーマなんですが、やはり、データの自由取引よりも環境、労働分野の公正というところに取り組むべきではないかというふうに思っていて、むしろデータについては、中国などと、現状では、少なくとも、これ以上データフリーフローの強化をこの先求めていくということは、ちょっと立ち止まるべきではないかなというふうに思っています。  そこで、伺います。  今回、公共政策あるいは安全保障上の重大な利益、こういった例外を当該国が主張した場合、争う余地はあるのでしょうか。必要性を決定するのはどこでしょうか。
  217. 四方敬之

    ○四方政府参考人 お答え申し上げます。  RCEP協定電子商取引章におきまして、情報の越境移転制限の禁止、コンピューター関連設備の設置要求の禁止といいました、電子商取引を促進する規定が盛り込まれておりますけれども、その例外として、委員御指摘の、公共政策の正当な目的あるいは安全保障上の重大な利益の保護というような規定が定められております。  何が例外に該当するかにつきましては、具体的に検討する必要がございますけれども、いずれにしましても、この例外規定を恣意的に援用することは許されないということでございます。協定上も「当該措置が恣意的若しくは不当な差別の手段となるような態様又は貿易に対する偽装した制限となるような態様で適用されないことを条件とする。」というふうになっておりまして、もし恣意的な援用が行われる場合には、RCEP協定の下でのいろいろな協議メカニズム、合同委員会等ございますので、そういうところで議論していくということになろうかと存じます。
  218. 山尾志桜里

    ○山尾委員 私、だから、むしろ、今回、こういう状況で、電子商取引についてはある意味自由度が低く抑えられたということを奇貨として、今後、この電子商取引について、価値を必ずしも同じくしない国との経済連携の中で、ハイレベルというものを何に置いていくかということをやはりもう一度検討すべきだと思うし、それは参考人質疑のやり取りの中でもあったので、是非、今後、外務省の方にも検討していただきたいと思います。  残り時間が少ないですけれども、二点伺います。  一点ですけれども、これはミャンマー、この前の質疑で、ミャンマー国軍が批准書などを寄託してきた場合に、それを認めるかどうかは全員合意事項ではない、コンセンサスによるんだという話でしたが、伺います。  日本が最後まで反対したとしても、その時点での参加国が全て賛成をしてしまったら、制度的にはミャンマーが入ってしまう可能性というのはあるんでしょうか。
  219. 四方敬之

    ○四方政府参考人 先週金曜日の時点から、新たに、このRCEP協定の国内手続を終え、批准書を寄託しましたのが、シンガポールが寄託したということでございます。そのほかに批准書等を寄託した署名国はないと承知しております。  今委員から御質問のあった点につきましては、仮定の質問でございますので直ちにお答えすることは困難なんですけれども、一般論として申し上げれば、RCEP協定の実施及び運用に関する問題につきましては、RCEP参加国、すなわちオーストラリア、ニュージーランド等関係国とも緊密に意思疎通をしながら、対応を検討してまいりたいと存じます。
  220. 山尾志桜里

    ○山尾委員 はっきり答弁されないんですけれども。  もう一回聞いてもいいんですけれども、要するに、制度設計上、日本が反対しても国軍による寄託を受け止めてしまうという可能性は制度設計上あるんですか、ないんですかという、もう一回質問します。  それは、仮の話というより、どういう制度になっているんですかという話なんです。
  221. 四方敬之

    ○四方政府参考人 この点に関しまして、RCEPの発効要件につきましては以前御説明したとおりでございますけれども、批准書等の寄託に関する詳細な手続というのは、協定上は定められておりません。  今、ASEAN事務局が、今回、例えばシンガポールの場合でも、批准書を寄託して、受け取るということでございますけれども、その過程で、ASEAN事務局が、その文書が真正なものなのかどうか等チェックを行っているということと承知しております。
  222. 山尾志桜里

    ○山尾委員 今の答弁だと、何かASEAN事務局が書類が真正なものかどうかをチェックして決めますみたいな話に聞こえるんです。そういう話を聞いているんじゃないんですね。  これはまた引き続きやりますけれども、本当に制度設計上、この条約で、日本は反対してもミャンマー国軍による書面を受け入れてしまう、そういう可能性はあるのかないのかというのは極めて重大なことだと思いますよ。余り曖昧な答弁で終わらせない方がいいというふうに思います。  その上で、最後ですけれども、やはり我が国がいつ、これを承認したとしても、政府として寄託をするのかということです。  今、シンガポールが寄託したということで、一番乗りではなくなりましたという趣旨だと思うんですけれども、これは大臣に最後伺いますが、承認されたとして、いつ、政府として、外務大臣として書面を寄託するのか。この点について、いつ頃というふうに見ていらっしゃるのか、どんな要素で判断されるのか、伺います。
  223. 茂木敏充

    ○茂木国務大臣 まず、その前に一言だけ。  先ほどのデータの流通に関してでありますが、データフリーフロー、我々は、ウィズトラスト、基本的に信頼性を持ってということでありまして、先ほど岡田委員とも議論をさせていただいたんですけれども、こういうルールの中に巻き込んできちんとルールを守らせる、こういうことが私は重要だと思っておりまして、ルールの外に追いやって好きなことをさせるということは、どの国であっても、私は、国際秩序にとって望ましくはない、こういう基本的な考え方を持っております。  それから、順番についてでありますけれども、TPPにつきましては日本はメキシコに次いで二番目だったと思います。次がシンガポールであって、さらにはオーストラリア、ニュージーランド、カナダ、ベトナム、こんな順番だったんじゃないかなと思いますけれども、これは、日本がこういった協定を引っ張ってきたわけです。  そして、これから実際にこの協定が発効しても、いろいろな運用上も主導的な立場で役割を果たしていくことが期待をされている、そういった国というのは、自然に早く国内手続を終えて寄託をする。こういうことで、ほかの国を待ち構えるというか、そういった国も国内手続を早く終えるように促していく。こういう立場が私は日本なのではないかなと思っておりまして、もちろん、国会で御審議をいただいていることでありますから、いつと私が申し上げるわけにいきませんけれども、でき得れば、アズ・スーン・アズ・ポシブル、そんなふうに思っております。
  224. あべ俊子

    ○あべ委員長 山尾志桜里君、既に持ち時間が経過しておりますので、質疑を終了してください。
  225. 山尾志桜里

    ○山尾委員 最後に、浜中参考人が、やはり主導権ごっこから真のリーダーシップへというお話をされました。そして、真のリーダーシップに必要な存在感とは、明確なポジションを持っていることとおっしゃいましたので、そのことを最後に申し上げて、質問を終わりますが。  この際、私は、日本維新の会及び国民民主党を代表して、地域的な包括的経済連携協定に関する件について決議を行うべしとの動議を提出いたします。
  226. あべ俊子

    ○あべ委員長 速記を止めてください。     〔速記中止〕
  227. あべ俊子

    ○あべ委員長 速記を起こしてください。  ただいまの山尾志桜里君の動議につきましては、後刻、理事会で協議をいたします。  これにて本件に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  228. あべ俊子

    ○あべ委員長 これより討論に入ります。  討論の申出がありますので、順次これを許します。穀田恵二君。
  229. 穀田恵二

    穀田委員 私は、日本共産党を代表して、地域的な包括的経済連携協定に反対の立場から討論を行います。  本協定は、二〇一三年五月の交渉開始から七年半にわたり、国民生活に一体どんな影響があるのかを国会や国民に一切知らせないまま交渉、署名されたものです。農林水産品への影響についても、国内農業に特段の影響はないと、試算すら行っていません。  しかし、本協定には、発効五年後に協定全体を見直す規定が盛り込まれています。また、参加国のうち、オーストラリアやニュージーランドなどとは既にTPPが発効済みであり、本協定にかかわらずTPP関税率や輸入枠が適用されます。このことは、我が国の輸入関税措置を際限なく撤廃していくものです。  本協定が発効されれば、冷凍総菜や乾燥野菜などで、中国から安い輸入品が流入し、国内農業に深刻な影響を及ぼすおそれがあります。皮革や繊維製品にしても、国内の生産者は、安価な輸入品の攻勢にさらされることになります。  政府は、これまで、ASEAN諸国と経済連携協定を結び、多国企業の海外進出のための環境整備を行ってきました。本協定を通じて、日本は、新たに中国韓国とEPAを締結することになります。このことは、日本企業ASEAN諸国への海外進出を一層推進するとともに、中国などに生産拠点を移す動きを加速させ、地域経済の衰退など、国内産業の空洞化を更に強めるものとなることは明らかであります。  国連貿易開発会議は、本協定が発効された場合、参加国の中で最も輸出が伸びるのは日本であり、中国韓国も輸出増となる一方、ASEAN参加国の貿易収支は、発効前に比べ、軒並み悪化すると試算しています。このことからも、本協定が東アジアの互恵的な協定となり得るのか、検証が必要です。  菅総理は、本協定の署名式で、コロナ禍で世界経済が低迷し、内向き志向も見られる中の自由貿易の推進がより一層重要だと強調しました。しかし、新型コロナの感染拡大に伴う国内需給の逼迫は、グローバル化したサプライチェーンに依存する食料自給などの脆弱性を浮き彫りにしました。TPP11や日欧EPA、日米貿易協定など、貿易自由化一辺倒、外需頼みの政策が危機に弱い社会経済をつくり出したことに何の反省もないまま、多国企業の利益を最優先に、本協定で一層の市場開放を推進することは断じて許されません。  今求められているのは、経済主権や食料主権を尊重する方向での見直しであり、国内生産基盤の抜本的強化や食料自給率の向上など内需を拡大し、危機に対応できる強い経済づくりにかじを切ることであります。  以上を指摘して、反対討論とします。
  230. あべ俊子

    ○あべ委員長 次に、山尾志桜里君。
  231. 山尾志桜里

    ○山尾委員 私たち国民民主党は、経済連携はしても、政府として、制裁すべきは制裁をし、企業側には個々の取引において人権デューデリジェンスをきちっと果たせるように強化をし、支援をする、このことが大事だと考えます。  具体策として、人権侵害制裁法や人権デューデリジェンスの法制化に向け、国民民主党としても全力で取り組んでいくことを前提に、今回の地域的な包括的経済連携協定については賛成をしますが、以下の決議を求めたいと思っております。  世界で保護主義的な傾向が強まる中、本協定が署名に至ったこと自体は、自由貿易体制を維持していく上で一定の意義がある。しかし、経済の発展段階や政治体制が大きく異なる多様な国々が参加する本協定の署名国の中には、国内の人権状況に対し国際的な批判が高まっている国や民主化への期待を踏みにじる政変が起きている国も含まれている。  このような状況に鑑み、本協定の批准に際し、政府は次の事項につき誠実に努力すべきである。  一、本協定の実施及び運用に当たっては、国際社会における普遍的価値である自由、民主主義、基本的人権の尊重及び法の支配を経済的利益と引換えに譲ることはないとの我が国の立場を堅持すること。  二、地域に構築された我が国企業のサプライチェーンにおいて、強制労働等の人権侵害が行われることがなく、責任ある企業活動の促進を図るため、関係府省が連携をして人権デューデリジェンスの啓発等に一層取り組むこと。  三、地域における公正な経済環境を確保するため、国有企業政府補助金、労働、環境の分野を規律すること等、本協定の質を高めるための見直しに積極的に取り組むこと。  四、ミャンマーによる批准書等の寄託に対しては、同国の政治体制に注視するとともに、他の協定参加国と緊密な意思疎通を図り、適切に対応していくこと。  五、我が国の受諾書の寄託については、人権状況の推移や参加国の動向等を把握しつつ、適切な時期を慎重に見極めること。  このような決議を求めたいと思います。  条約に関する決議については、採決後、後日の委員会で改めて決議されたという前例もありますので、是非、各党の前向きな検討をお願いいたします。  以上で賛成討論とします。
  232. あべ俊子

    ○あべ委員長 これにて討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  233. あべ俊子

    ○あべ委員長 これより採決に入ります。  地域的な包括的経済連携協定締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  234. あべ俊子

    ○あべ委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  235. あべ俊子

    ○あべ委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  236. あべ俊子

    ○あべ委員長 次回は、来る二十一日水曜日午後一時五十分理事会、午後二時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時八分散会