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重徳委員 立憲民主党の
安全保障部会長として、
安全保障政策に関する
所信を申し上げます。原稿は、各
委員の席上に配付させていただいております。
私は、
我が国を取り巻く現下の
安全保障環境の急速な変化と米中二
大国時代を見据え、
日本国内の
政治情勢にかかわらず、
我が国が
国際社会で揺るぎない
立場を堅持することが不可欠と
考え、二大
政党政治における安定した
政権移管と、
先進国としての
外交、
安全保障の在り方に関する大局的な論戦を期すとともに、
我が国の
防衛政策への
文民統制、
民主的コントロールを
強化することを目的として、この
所信を発表するに至った次第です。
我が党は、専守
防衛に徹するとともに、
国民、
領土、
主権を守るため、
我が国自身の
防衛体制を
整備するとともに、健全な
日米同盟を
外交、
安全保障の基軸として、
多国間協力を推進し、平和で安全な
アジア太平洋を実現します。特に、
日米関係を重視する
米バイデン政権との
協調により、
抑止力、
対処力を今まで以上に
強化してまいります。
現代の
国際社会は、自由と平和、
民主主義と人権を尊び、
国際秩序の安定のために定めたルールを重視し、法の
支配などの
基本理念を基調とするものであるべきです。我が党は、厳しい
安全保障環境において、こうした
基本的価値を共有する世界中の
国々と連帯する
戦略的国際協調主義を進め、
国民の
生命財産及び
我が国の
領土、
領海、
領空を
断固として守り抜いてまいります。
特に、
南西諸島海域等における力による
現状変更の
試みには
毅然として対処するとともに、
日米豪印に加え、欧州やASEANとの
協力関係を強めるために
我が国が主体的な役割を果たしつつ、真に実効性ある
防衛力強化を実現します。
歴史上も
国際法上も明確に
我が国固有の
領土である
沖縄県
石垣市の
尖閣諸島周辺において
中国公船が
領海侵入や
漁船追尾を繰り返していることは、明確な
国際法違反です。
特に、本年二月に施行された
中国海警法は、定義の不明確な
管轄海域において
公船を含む
他国船舶への
武器使用を認めるものであり、
国際法を逸脱するものです。
我が党は、いわゆる
グレーゾーン事態において、力の空白を生じさせず、切れ目のない
対応を取るため、
海上保安庁の
能力向上を進め、
米国沿岸警備隊との
合同訓練等を
実施するとともに、過去に野党が提出した
領域警備法案を
参考に、
海上自衛隊との
連携強化のための新たな
法整備を検討するなど、適切に
対応する
体制を
整備します。
また、
中国との間で
偶発的衝突を避けるため、
海空連絡メカニズムを機能させるとともに、
日米安保条約に基づく
米国との
連携をより強固なものとし、友好国との実践的な
共同訓練など
協力体制を
強化していきます。
そもそも
中国との
関係は、人の往来、
経済、文化の
交流が盛んであり、両国が
政治外交面でも一衣帯水の良好な
隣国関係となることを望みます。
しかしながら、
中国の不透明かつ急速な軍事力の増強や各
海域における
活動は、周辺国の
安全保障に重大な懸念をもたらしており、
我が国は
国際社会と
協調して対処していきます。
香港や新疆ウイグル、チベットなどの問題を抱える
中国には、ルールと法の
支配を重視する
国際社会において、今後、責任ある大国としての振る舞いが求められます。
我が国は、気候変動や災害対策等の分野においても
中国との
連携を
強化するなど、非伝統的
安全保障政策も推進すべきです。
北朝鮮では、今年一月の朝鮮労働党大会で金正恩
委員長が、核先制攻撃
能力の高度化や戦術核兵器に言及しました。同国は、
我が国を射程に収める弾道ミサイルを数百発保有し、関連する技術や運用
能力の
向上を図っているとされています。三月二十五日に約一年ぶりに弾道ミサイル発射が行われたことは、
我が国と
地域の平和と安全を脅かすものであり、断じて容認できません。
我が党は、引き続き、
米国など
国際社会と
連携して、朝鮮半島の完全かつ検証可能で不可逆的な非核化を目指します。
中国では急速に科学技術水準が
向上し、例えば、AI兵器、次世代戦略兵器、自律型ドローン等の開発、また5G等の通信技術の進歩といった
状況の中、軍民融合を掲げ、
経済的、技術的な覇権の追求と
国家安全法制のような
体制整備を進めています。こうした背景の下、
米国が
中国との
経済的取引等において格段に厳しい措置を取り始めています。
我が党は、こうした
経済、技術の進歩が
安全保障面に与える影響や
米国の動向を十分に考慮するとともに、武力行使を中心とした従来の戦力や戦術が変化しつつあることに的確に
対応するため、国内産業界と
連携し、
我が国の技術の優位性の確保と企業に対する経営規範を指し示すルール形成戦略の
強化により、
経済安全保障の確立に取り組みます。
また、国際的な
取組の進む気候変動問題が化石燃料依存にもたらす変化や、資源国との
関係やシーレーンへの影響、
環境技術の格差、
先進国と途上国との利害衝突などによる
国際秩序への影響を見極め、総合的な
外交、
安全保障政策に取り組みます。
防衛施設などの重要施設周辺の土地や対馬などの国境離島、
日本各地の農地や山林、水源地などが外国資本に買収される
状況がかねてより指摘され、
我が国の
安全保障上の懸念が広がっています。今
国会提出の重要土地等
調査法案に規定される
調査、規制の対象や内容が
我が国の
安全保障にとって実効性あるものかどうか十分に審査してまいります。
我が国の
防衛産業は多くの課題を抱えています。
防衛装備品を
米国FMS等の海外調達に過度に依存すれば、
防衛予算の国内配分が減り、各企業の利益や研究開発費が減少し、単価上昇や
防衛分野からの撤退を招きます。バランスの取れた調達戦略が必要です。
デュアルユースや新領域における優位性確保、装備品の無人化、小型化に
対応し得る国内の技術、産業基盤の
強化のため、
防衛装備庁を中心に、FMS調達の合理化を進めるとともに、研究開発
体制を充実させ、技術者を育成し、
防衛産業を再編
強化する必要があります。
防衛装備品の海外移転については、民主党政権以降、
我が国の
安全保障の
強化のための共同開発、国際協力の観点から
実施する
方針が明確化されましたが、今後は、デュアルユース技術を含む重要技術の流出防止に取り組みつつ、世界の最新の
状況に適切に
対応したスペックの装備品の開発、生産を、国内の産業、技術基盤を
整備しつつ行う必要があります。
また、当
委員会を中心とした
国会の場で
防衛装備品への予算配分の議論を深化させるべきです。例えば、昨年十月に発表された
米国海軍のバトルフォース二〇四五構想など他国の将来的な動向を注視しつつ、
我が国の強みである潜水艦の増強や、多様な任務をこなしコンパクト化、省人化したFFM導入、艦艇の無人化などについて、中期防と関連づけ、戦略的な議論を掘り下げるべきです。
二〇一〇年
防衛大綱において、冷戦期以来の基盤的
防衛力を動的
防衛力に転換し、島嶼
防衛などを念頭に、情報収集や警戒監視の
能力を高め、限られた
防衛力を機動展開して、統合的な部隊運用を行う
考え方が取られ始めました。
二〇一三年大綱では、更に多様な
活動にシームレスに
対応する統合運用の
考え方をより徹底した統合機動
防衛力が打ち出され、二〇一八年大綱の多次元統合
防衛力では、陸海空という従来領域のみならず、宇宙、サイバー、電磁波といった新たな領域分野における対処
能力を高め、これらを組み合わせた領域横断作戦が掲げられました。
こうした流れを踏まえ、特に、新たな領域分野においては、軍事と非軍事の境界を意図的に曖昧にしたハイブリッド戦を含む多様な手段への複雑な
対応が求められることから、我が党は、新たな各領域における秩序と安定に資する基本
方針を策定すべきと
考えます。
宇宙については、早期警戒、通信、測位、偵察機能を持つ
各種衛星を各国が増強する中、他国の衛星を無力化するキラー衛星や増加するスペースデブリに対処するため、国際的な宇宙空間の安定的利用ルールを確立し、新たな衛星の打ち上げ等による
我が国の宇宙利用の優位性や極超音速兵器等の監視機能を確保する必要があります。
サイバー領域では、
防衛組織や
政府機関のみならず、民間事業者の情報流出を狙ったサイバー攻撃が日常的に行われ、その攻撃主体も意図も判別困難なケースが多く、従来の専守
防衛や武力攻撃の概念との整合が求められます。ハイブリッド戦を含むサイバー攻撃への対処に当たっては、
内閣サイバーセキュリティセンター、NISCと緊密に
連携する必要があります。
電磁波は、指揮通信、警戒監視、情報収集、ミサイルの精密誘導等に利用され、近年では電磁波の利用への妨害手段などが増える中、電磁波領域における優越を確保するため、
各種システム開発、導入を進める必要があります。
ドローンについては、偵察、情報収集用のみ導入されており、諸外国より遅れているのが実情です。ドローンは、
自衛隊員の定員減問題を緩和できるとともに、小型で安価なため、収容、
整備、運用に要する施設も小さく、攻撃を受けた際の被害も極小化できます。今後、配備、運用に関する計画を早急に策定すべきです。
3Dプリンターによる小型装備品の製造や部品補給が現実化するなど、軍事科学技術が革命的に進歩する中、最先端の戦略への
我が国の
対応について、
国会と
政府における十分な議論が必要と
考えます。
イージス・アショアは、
平成二十九年の
日米首脳会談後、突如導入を決定された後、ずさんな分析や
説明が露呈し、配備予定地との信頼醸成にも失敗した末、ブースター落下制御問題を理由に配備の撤回に追い込まれたものであり、
政府の大失態です。
代替策として検討が進められているイージスシステム搭載艦は、費用膨張や技術的な有効性が強く危惧されています。米企業と契約済みのSPY7レーダーの不透明な選定過程についても
説明責任が求められます。
また、搭載艦では、イージス・アショア導入の理由としてきた二十四時間三百六十五日の常時監視、防護の役割を果たせず、
海上自衛隊の負担軽減どころか、更なる乗組員の確保さえ必要となり、負担を増すものであって、イージス・アショアの代替策とは到底なり得ません。南西諸島等の
防衛体制への影響も懸念され、
政府が
我が国の
安全保障をどこまで真剣に
考えているのか疑問です。
我が党は、巨額の国費を伴うイージス・アショア政策の迷走が、もはや取り返しのつかない段階に入りつつあることを強く危惧しており、
政府の責任を厳しく追及し、
国民の税金の使途を監視する
国会の役割を果たしてまいります。
日米同盟は、専守
防衛を国是とする
我が国の
防衛力を補完し、
米国による拡大抑止によって、東アジアにおける
我が国の
抑止力を確保するものであり、まさに
我が国の
安全保障の基軸です。
日米安全保障条約や
日米地位協定などに基づく
我が国の役割や負担の在り方については、
米国との間で、
抑止力を維持しつつ、検証と見直しの議論が必要と
考えます。
在
日米軍駐留経費負担協定については、現行の特別協定を来年三月まで一年間延長する議案が承認されたところです。
次の数年間の協定延長を議論するに当たっては、他の同盟国との負担割合の比較、米政権の交渉
姿勢などの情報を明らかにした上で、他の
防衛予算との兼ね合い、最大の負担項目である労務費による
現場の
日本人従業員の処遇を検証することが、
日米同盟をより強固にする観点からも重要です。
在
日米軍専用施設面積の七割が集中する
沖縄の過重な負担を軽減し、各地の基地周辺
地域、住民の安心、安全を守るため、
米国と真摯に交渉を行い、
日米地位協定の改定を進めます。また、他国における地位協定の在り方や実情を
参考に、補足協定の締結など住民保護を
強化するためのあらゆる
方策を検討します。
沖縄の民意を尊重し、軟弱地盤などの課題が明らかになった辺野古移設工事は中止します。その上で、
沖縄の基地の在り方を見直し、
米国に再交渉を求めます。
世界一危険な基地とされる宜野湾市の普天間飛行場の確実な返還を目指し、民主党政権時の教訓を踏まえ、注意深く進めてまいります。
最後に、我が党は、
国家防衛の根幹を担うのは約二十五万人の
自衛隊員であり、その処遇や基礎的な任務
環境を改善するとともに、高額な装備品調達により、既に保有する装備品の維持
整備費にしわ寄せが来る、いわゆる共食い
整備により運用に影響が生じる問題などを解決するため、これまで以上に十分な予算配分や制度改善を行うべきと
考えます。
以上、
安全保障政策に関する
所信を申し述べました。
ありがとうございます。
それでは、引き続き、
委員長、よろしいでしょうか。