○磯崎仁彦君 自由民主党の磯崎仁彦です。
私は、自由民主党・
国民の声を代表して、
菅総理大臣の
所信表明演説について、質問いたします。
今回の
所信表明演説に当たり、頭に浮かんだ二つの言葉があります。
一つは、三つの鏡です。千三百年間読み継がれてきた帝王学の教科書「貞観政要」にある言葉です。
一つ目は、自分の顔を映す銅の鏡、二つ目は、歴史に学ぶ歴史の鏡、最後の三つ目は、部下の厳しい直言や諫言を受け入れる人の鏡です。この三つの鏡は、良い意思決定をする上で必要な心構えとして挙げられています。
もう一つの言葉は、私の地元香川県出身の大平元
総理が使っていた楕円の哲学です。
楕円には二つの
中心点があることになぞらえ、
政治にも、ある考えがあれば、それと相対立する考えがある。その二つが均衡を保ちながら緊張した関係にある場合こそ、立派な
政治を行うことができるといった趣旨の言葉です。
二つの言葉はいずれも、世の中には必ず異なる意見があるが、それを排除するのではなく、受け止めながら、バランスを取り、
合意形成を進めていくことが大切であると教えてくれています。
組織というものは、トップにはいい話しか上がってまいりませんが、現場に行くと、実はこういうことがあるというのが世の常です。どの組織であろうとも、トップはアンテナを高く張り、いろいろな話にじかに耳を傾けねばなりません。
「貞観政要」を愛読され、多忙でも様々な
方々からお話を伺うというスタイルを変えない
菅総理であるからこそ、三つの鏡、それに加えて楕円の哲学の姿勢を崩さずに
我が国が直面する様々な
課題に対処していくことができると確信し、
国民のために働く
内閣の
実現を
全力で支えてまいりたいと考えております。
菅総理は、安倍
内閣で七年八か月間、
内閣官房長官を務められました。官房長官は参謀、側近であり、大
規模災害などの際の
危機管理から省庁にまたがる
政策調整に至るまで
対応を求められる
内閣の要です。
内閣官房長官のマネジメント力こそ
政治の真髄と言う識者もいます。
その
内閣官房長官を歴代一位の在任期間、務め上げた
菅総理であるからこそ、
内閣官房長官として求められる
政治姿勢は何か、また、それは
内閣総理大臣のそれとは違っていることを実感されていると思います。
そこで、
内閣官房長官と
内閣総理大臣の
政治姿勢について、どこがどう異なっていると認識された上で
総理の職を全うしていくお考えでしょうか、お聞かせください。
今から十年前、私は、平成二十二年七月、
自民党が野党のとき、地元の皆様方に国政へと送り出していただきました。その野党時代の平成二十二年一月二十四日に定められた自由民主党平成二十二年綱領。ここには、常に進歩を目指す保守政党であるために、「正しい自由主義と民主制の下に、時代に適さぬものを改め、
維持すべきものを護り、秩序のなかに進歩を求める」とあります。
この綱領どおり、安倍
政権では、時代に合わないものを変えるため、三本の矢などの大胆なデフレ脱却
政策、働き方
改革など、大胆な
経済政策を断行してきました。また、
日本を取り巻く
安全保障環境の激変に
対応し、平和安全法制の
整備などを進めてきました。
菅総理は、就任後初めての会見で、安倍
政権の
取組を継承し、前に進めていくことが自らの使命であると述べられておりますが、真の保守政党たる自由民主党の総裁として、変えるべきところは変え、守るべきところは守るというスタンスで
政権を
運営していただきたいと思います。
そこで、
菅総理は、安倍
政権のどういうところを継承し、また、どういうところを変えていきたいとお考えでしょうか、お伺いいたします。
政府の最も重要な
役割の一つは
危機管理です。
私は、参議院議員となる前、民間
企業で
危機管理に関連する役職に就いたことがあります。
危機管理は、きちんと
対応できて当たり前、やり過ぎるとなぜそこまでやるのかという批判が出る、そして、
対応が不十分で後手後手に回るとその不十分さを批判されます。民間
企業であっても、
危機管理は大変厳しいものであることを実感しています。
政府においてはそれ以上の厳しさがあります。しかし、それでも
危機管理においては、事前に
リスクを認知した上で、前例にとらわれず先手を打つことが重要です。
七年前、アルジェリアで起きた石油精製プラント襲撃事件では、前例のなかった
政府専用機派遣に踏み切り、邦人避難に
全力で当たられました。また、本年一月の中国武漢での
新型コロナウイルスによる
感染拡大では、武漢の空港が事実上閉鎖、現地の公共
交通機関がストップし、現地邦人の帰国が困難な
状況となる中、
世界に先駆けてチャーター機を飛ばし、
日本に戻されました。前例にとらわれず先手を打つの見本ではないかと思います。
そして、
自然災害や
感染症についても、事前に
リスクを把握し、予防的な措置を備えておくことが必要です。
そこで、常に緊張感を持って
危機管理に備えてきた
菅総理としては、どのように
防災・
減災、国土
強靱化や
感染症対策に当たるおつもりでしょうか、お聞かせください。
来週、十一月三日に行われるアメリカ大統領選挙の結果で、中国や北朝鮮に対する外交
政策、TPPなどの貿易
政策、そして地球温暖化
政策など、米国の
政策が大きく変わるかもしれません。
現在、米中関係は、中国外相が国交樹立以来最悪と評するまでに冷え込んでいます。
感染症危機は、米中対立を更にエスカレートする方向に働いています。選挙結果次第で、米中の関係は接近し、太平洋分割論を懸念する向きもあります。いずれにしても、
日本は米中の関係で極めて難しい
状況に置かれています。
シンガポール建国の父、リー・クアンユーは、日米中の関係について、二等辺三角形の状態が安定の秘訣と語っていました。日米関係の辺が、米中、日中の辺よりも短く、強く、太い形が最も安定するというものです。
しかし、現在、貿易額は、米中が日米と日中を上回っていますし、米中の関係も難しくなっています。この状態の中、日米中の二等辺三角形の安定性を増すために、日米関係をより強くすることが不可欠です。
その一つは、
安全保障上はもちろん、
気候変動や
自然災害、GPSを利用した自動運転や航空機の運航など、様々な
分野で
重要性が増している宇宙において日米の関係を強めることです。例えば、先日、小惑星のサンプル採取に成功した探査機オシリス・レックスも「はやぶさ」の
成果を取り入れて
開発されているように、
我が国が持つ宇宙
開発に関わる
技術や経験は米国にとっても貴重であり、この
分野での関係
強化は両国に極めて重要です。
そこで、米国にとって
日本が不可欠な存在であることを宇宙
開発を含め様々な領域で示す必要があると考えますが、どのように
我が国の不可欠性を示して、日米中の二等辺三角形の関係を安定させていくおつもりでしょうか、
総理に
お尋ねします。
英国とEUの間の
経済連携協定をめぐる交渉に不透明感があるだけに、日英EPAを早期に
発効させることは、二か国間のみならず、
地球規模で自由で公平な貿易や
投資を守り抜き、
拡大させる機運を醸成させる意義深いものです。
自由で公平な貿易や
投資は、
我が国や
我が国と
価値観を共有する国々の発展の土台となるものであり、これまでも、TPP、
日EU・EPA、日米貿易協定と、
日本を要とする自由貿易圏の範囲を広げてきました。英国やタイはTPPへの
参加意向を示しています。
本年五月末、李克強首相はTPPへの
参加意欲を問われ、中国は前向きで開放的な態度を取っていると初めて公式
見解を示しました。中国もTPP
参加に関心を表していると見られています。しかし、この背景には米国抜きのTPPなら中国が主導権を握りやすいとの思惑があると思われます。
中国加盟の可能性については、米国のTPPへの姿勢など大統領選挙後の米国
動向を見極めていく必要がありますが、茂木外務大臣はTPP加盟に対する中国の
動向をどのようにお考えでしょうか、
お尋ねします。
米国大統領選挙の行方次第で、米国のパリ協定、
国連気候変動枠組条約へのスタンスも大きく動きますが、
菅総理は先んじて今回の所信表明で、
グリーン社会の
実現として、温室効果
ガスの排出量を二〇五〇年までに実質ゼロにすると宣言されました。EUや中国等の削減
目標と並んで高い基準の国際公約を掲げることで、
世界から取り残される懸念が払拭されるという大きな意義があります。言わばグラフに現在から積み上げて未来へと左から右に線を描くのではなく、未来から現在に向けて右から左に線を描くやり方であり、
目標達成への強い野心が感じられるものです。
目標が定まれば、
我が国は一丸となって、達成に向けて、産業構造や
生活様式の
転換に
全力を尽くさねばなりません。自動車産業や
交通機関、電力業界だけではなく、IT産業においても
対応が求められます。また、AI、ビッグ
データなどがもたらす第四次産業革命は
エネルギーの最適化の
実現等に不可欠ですが、他方、
データを集積し処理するセンターが消費する膨大な
エネルギーに
対策を講ずる必要があります。
このように、脱炭素を進める過程では、新たな
技術やビジネスによる温室効果
ガス排出削減の最大化を図ると同時に、環境と
経済の好循環をつくり上げる工夫が必要ではないかと考えますが、
菅総理のお考えをお聞かせください。
深刻化する海洋プラスチックごみ問題に対する
取組が進んでいます。本年七月からは、
全国の小売店で、原則プラスチック製レジ袋が有料義務化されました。
この海洋プラスチックごみ問題については、昨年、
日本学術
会議が、
データに基づく助言の必要性や各国の科学者がアクセスできる
データ管理
システムの確立、
観測船による調査基盤の
強化などを含む声明を出しました。
海洋プラスチックごみ問題のように、
世界が直面する
課題には科学的な知見と国際的な協力が不可欠です。各国の科学アカデミーと連携を築き上げてきた学術
会議には、その機能を十分に発揮していただかなければなりません。同時に、学術
会議自体、その在り方を不断に検討していくことが求められています。
そこで、本年三月に出された外部評価有識者による活動
状況に関する評価で指摘された事項、例えば、果たすべき
役割と
仕組みの
構築、人文
社会科学の果たすべき
役割の再検討、会員選考等におけるダイバーシティーの
推進などについてしっかりと
対応していく必要があると考えていますが、
総理のお考えをお聞かせください。
北朝鮮による脅威の増大など、
安全保障環境が大きく変化をしています。
固形燃料型のミサイルとなり事前の動きが察知しにくい、また、軌道が変化するミサイルも
開発が進んでいるなどの環境変化の中で、しっかりと抑止力を高めなければなりません。
加えて、今回の
感染症による国際的な
サプライチェーンの分断により、軍事面だけではない食料、
エネルギー、さらにはマスク等の
生産といった
経済産業活動も
我が国の安全に直結していることが明らかになりました。
同時に、通信
分野での覇権主義が広がっています。機密情報を扱う通信回線や機器の
導入については、規格が開かれたものか、常に安定的な
データ流通が保障されているかという点も考慮しなければなりません。
政府では、本年四月一日、国家
安全保障局に
経済分野を専門とする
経済班を
発足させました。
世界的な
感染症の
拡大による
世界経済やパワーバランスへの
影響など、
重要課題への
対応が期待をされます。しかし、
我が国の国家
安全保障戦略は平成二十五年に初めて閣議決定されたときのままです。
安全保障戦略が
対象とすべき範囲が広がっていることから、国家
安全保障戦略についても見直しを
視野に入れるべきと考えますが、どのようにお考えでしょうか。また、見直しの際には、
経済、食料や
エネルギー、そして
感染症などの
分野についても重きを置くべきと考えますが、どのような観点を盛り込むことを検討していくおつもりでしょうか、
総理にお伺いします。
我が国は、これまで
エネルギー供給国の多様化を求めてきましたが、近年、スエズ運河航路の代替ルートである北極海航路や、石油、天然
ガス資源
開発の活発化から北極
政策が注目されています。
北極海航路では、スエズ運河航路に比べて欧州からの航行距離が約三分の二となる上、航路上の
リスクも低いと評価されています。北極圏には石油、天然
ガス資源が眠っていますが、
ガス田、LNGプラント
開発や輸出港の建設も進んでいます。
一方、冷戦後、平和の海とされてきた北極海も、
経済権益の
拡大を目指して中国が探査を進めており、ロシアとの接近も懸念材料です。米国、ノルウェー、デンマーク、カナダなどの関係国を巻き込んで、
我が国の
エネルギー
安全保障環境の改善のために、北極海航路や資源
開発など北極
政策をどのように進めていくおつもりでしょうか、梶山
経済産業大臣にお伺いします。
本年のノーベル平和賞に決まった
国連食糧
計画の授与理由は、飢餓が戦争や紛争の武器として利用されないための努力です。食料が
安全保障にとって極めて重要であることを示しています。
我が国の食料自給率はほかの
先進国よりも低く、
政府目標値に届いていません。
農林水産業に従事する
方々の高齢化が進み、
人口減少で
地域の活力も失われようとしています。加えて、
コロナ禍による消費の落ち込みで農家の
経営基盤自体が脅かされています。国産農産物こそ大切な一番頼れる存在です。
高収益作物次期作
支援交付金の運用に当たっては、農業者の皆さんが、
新型コロナウイルスへの不安から営農を断念することなく、次のシーズンにおいても前向きに
生産活動を行えるよう
支援することを主眼とし、現場の事情をしっかり把握して
対応すべきと考えます。
そこで、
農林水産業についても
安全保障政策としての位置付けを明確にする。その上で、産業としての持続可能性を高め、
生産に携わる
方々が次のシーズンに向けて前向きになれる
政策を講ずる。そうすることで食料自給率を改善していかなければ、
我が国の安全、
安心は保てません。野上農林水産大臣はどのようにこれらの
課題に取り組むお考えでしょうか、お伺いします。
長い間続いてきた
地方圏からの人口流出、
東京圏への一極集中の流れが、
新型コロナウイルスの
感染拡大により、在宅勤務の推奨、三密環境からの回避などが進んだことで変化が見られました。本年五月、七月、八月、そして九月は、
東京都の人口は転出超過となっています。
テレワークやワーケーションなどの新しい働き方で、
東京に縛られなくてもよいのであれば、
地方に
生活の拠点を移そうという動きがますます高まります。
しかし、公共
交通機関の本数が少ないなど利便性が悪い、保育施設や学校はあるものの通いづらい、病院がない、あっても産科や小児科がないといった
地域公共
交通、保育、学校、病院へのアクセスに不安があるために、
地方への移住に踏み出せないという声も聞こえます。また、
地方の思いを国政に届けたくても、人口少数県という理由で合区選挙区になっている県では、大都市圏とは異なり、
政治へのアクセスも制限されることになります。
そこで、
総理の言う活力ある
地方をつくるためには、
生活やなりわいにとって不可欠な
地域公共
交通、保育、学校、病院、
政治参加などについて
政府が
国民に対して最低限の保障をしていく、言わば公共サービスのナショナルミニマム的なアクセスを
確保していくべきとの考え方について、
菅総理はどのようにお考えでしょうか、
お尋ねいたします。
新型コロナウイルスは
教育の現場にも大きな
影響を与えています。三密回避のため、
高等教育のみならず義務
教育でも遠隔授業が取り入れられています。しかし、家庭によっては
インターネット環境が十分ではない、子供一人では遠隔授業の受講は難しいなどの
課題も明らかになり、習熟度には差が生じているという指摘があります。
また、キャンパスへの立入り制限のため、入学後、
大学に通えず、友人もつくれないという悩みも聞きます。学生を取り巻く
経済状況も厳しさを増しています。アルバイト収入や親元の世帯収入が
減少したため、
経済的な理由で学習を続けることができなくなるのではないかという不安を抱える学生も多くなっています。
経済的
支援が本当に必要な学生に情報が届いていないという話もあります。
就職活動をめぐる
状況も大きく変わりました。
希望している業界の採用が軒並み中止となった、説明会やインターンシップも行われなくなった、リモート授業だけになったなど不安も広がっています。大卒の内定率は昨年と比較して一〇%以上低下しているとも報道もありますが、更に
雇用への
影響が長引き、就職氷河期への懸念も大きくなっています。
学びの場で自分を磨き、そして
社会に巣立っていこうという若い
世代が不安にくじけてしまわぬよう、今こそ
政府が
支援の手をしっかりと届けるべきだと考えますが、
総理の
決意をお聞かせください。
今回の
新型コロナウイルス危機は、これまでの不況と異なり、
女性就業者が多い産業を直撃し、
女性の
雇用をより厳しい
状況に置いています。第二次安倍
政権下では
女性就業者は約三百三十万人
増加しましたが、本年四月には対前月比で七十万人
減少しました。これは
男性に比べ約二倍の
減少です。学校の一時休業や保育園の休園などにより家事や育児
負担が増えたため、
仕事を抑えざるを得ない
女性も増えました。ある
支援団体の調査では、シングルマザーの約七割以上が
雇用形態の変更や収入減に見舞われたとのことです。
五月、六月の二か月間に配偶者暴力
相談支援センターに寄せられたDV
相談は前年の一・六倍、
女性の
自殺者は、七月は六百五十九人、八月は六百六十人と直近五年間で最も多く、七月は前年同月に比べて九十六人、八月は百九十六人も増えています。また、
東京都の性暴力ワンストップ
支援センターには、今年の四月から八月までで、去年の同時期に比べて一・五倍の
相談が寄せられています。
女性を取り巻く
状況が大変厳しいことをどのように認識された上で、どう苦しんでいる
方々に
支援の手を差し伸べるのか、さらに、そこからどう
女性活躍に結び付けていくおつもりなのか、
菅総理にお伺いをいたします。
福島の
復興なくして東北の
復興なし。東北の
復興なくして
日本の再生なし。所信で示されたように、
総理の強い思いは揺るぎません。
就任後初の
地方視察では、東
日本大震災の
被災地である
福島県を視察され、
東京電力
福島第一原子力発電所の廃炉作業などを視察されました。
その際、私自身も
経済産業副大臣時代に取り組んでいた処理水の扱いについて、
菅総理は、今後できるだけ早く
政府として責任を持って処分方針を決めたいと述べられました。敷地内の大量のタンクそのものが風評
被害や
リスクの
要因になっているとの懸念もあり、処理水の取扱いは廃炉の円滑な進行のためにも
解決されるべき
課題であります。
これまで七回にわたり開いた御意見を伺う場において聴取した
関係者の声やパブリックコメントなどを踏まえ、与党の第九次提言にもあるとおり、風評への
影響を起こさないための
対策を徹底しつつ、早急に処理水の取扱いを決定すべきと考えますが、
菅総理のお考えをお聞かせください。
菅総理は、目指すべき
社会像は、自助、共助、公助、そして絆だと述べられております。まずは自分でできることは自分でやってみる、そして、
地域や
自治体が助け合い、
政府が責任を持って
対応する。
防災でも使われる三助ですが、江戸時代、出羽国米沢藩の藩主である上杉鷹山は、三助の実践を唱えています。自助については、それぞれの
負担能力に応じて求められる範囲は異なり、それに応じて共助、公助の守備範囲も変わってくるものです。同時に、
社会構造等の変化により、所得のみを勘案して
負担能力を測ることがふさわしいのかという議論も必要です。
介護保険では、施設入所者の食費、居住費の自己
負担額を決めるに当たっては金融資産も勘案される制度となっています。
高等教育の修学
支援でも、本人及びその生計
維持者の金融資産が認定要件に含まれています。また、
医療保険制度でも、金融資産を勘案すべきだという議論があります。
あわせて、厚生年金の適用
対象が
拡大され、従業員が少ない
企業の短時間労働者も加入できるようになりましたが、零細な
中小企業には
雇用者
負担は重いものです。
負担額を決めるに当たり、
事業者側の
経営状況が考慮されなければ給与の切下げにつながるのではないかと懸念しています。
そこで、全
世代型社会保障制度を考えるに当たっては、資産格差や
企業格差を是正するという観点からも、自己
負担額を決めるに当たっては、所得のみではなく利益や資産も勘案していくことも含めて考えていくべきと思いますが、
総理はどのようにお考えでしょうか、お聞かせください。
自助、共助、公助、そして絆を考えるに当たり、自分なりに行き着いたキーワードは、選択肢のある
社会でした。
今や、
国民の皆さんが持つ
価値観の多様化はますます進んでいます。一つの方向性を提示し、その
実現のために一つの
政策だけを推し進めるやり方では、
問題解決に至ることがなかなか難しい時代になっています。
子育てについても、できる限り自分の手で育てたいという考えの家庭もあれば、共働きで保育を必要とする家庭もあります。
待機児童対策や育児休業取得の促進はもちろんのこと、三
世代同居しやすい環境づくりも求められています。
雇用についても、
ニーズが多様化しています。正規
雇用を
希望する人、自由に働く時間を決めたいという人、様々な
希望があります。様々な
希望がある以上、一つの働き方をあるべき姿とみなして
政策を進めることは
社会の実態や
ニーズに合っていないと感じます。
政治の決断として、
政策を一つに決めなければならない場面があるのは事実です。しかし、財源が限られている中で、とりわけ
生活に直結した
医療、
介護、
子育て、
教育などの
分野では、過剰なコストが掛からない限り複数の選択肢を提供し、
国民の皆様がその選択肢の中から自分の判断で自由に選ぶ
仕組みが必要ではないでしょうか。そして、選んだ選択肢では
対応できない
リスクが発生したときに、相互に連帯して
生活を保障する共助、さらには公的扶助など、必要な
生活保障を実施する公助がしっかりと機能する、このことが
安心感につながるのではないでしょうか。
菅総理は、自助、共助、公助、そして絆という国家像を追求していくに当たり、この選択肢のある
社会の
実現についてどのようにお考えかという点を
お尋ねして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣菅義偉君
登壇、
拍手〕