○大門実紀史君 日本共産党を代表して、
公益通報者保護法改正案について
質問します。
私は、今まで
企業や官庁の
不正行為を数多く
国会で取り上げてきましたが、そのほとんどは
内部告発者から寄せられた
情報と事実証拠に基づくものでした。
告発された方々に共通していたのは、
企業や
組織の不正を知り、見て見ぬふりをしたら
消費者被害が
拡大する、
会社も信用を失ってしまう、黙認した自分も人間として駄目になるという思いでした。ごく普通の職業意識や価値観を持った人が、社会と
会社のため、自分の尊厳を守るために勇気を出して告発に踏み切ったのです。
しかし、今まで多くの
内部告発者は、
企業や
組織から
解雇や降格、陰湿ないじめなどの報復を受けてきました。
二〇〇四年に
公益通報者保護法が制定されるきっかけになったのは、富山県のトナミ運輸の幹部社員だった串岡弘昭さんの
裁判でした。串岡さんは、運輸業界の闇カルテルを社内で告発してから三十年にもわたって
会社から草むしりの雑役を強いられ、隔離されるなどの報復を受け続けました。二〇〇二年、串岡さんは
損害賠償と謝罪を求めて訴訟を起こし、三年後に見事勝利をいたしました。串岡さんの訴訟は、
公益通報者保護法の必要性を社会に訴えるものとなったのです。
ところが、経団連は、
公益通報者の
保護は日本を密告社会にしてしまうという的外れなキャンペーンを展開し、
法案の骨抜きを図りました。その結果、制定された
公益通報者保護法は、
通報者や
通報対象の事実の
範囲を極端に狭め、
外部通報にも厳しい
要件を課すもので、
内部告発者の
保護に全く役に立たないものとなりました。
さらに、同法の
附則では
施行後五年を
目途とした
検討が
規定されているにもかかわらず、全く手付かずのまま十四年間も放置されてきました。
衛藤大臣、なぜ
附則を無視して十四年間もの長い間
法改正が放置されてきたのか、改めてその
理由をお答えください。
意見の隔たりがあったなどといいますが、要するに、十四年も掛かった最大の
理由は経済界の根強い抵抗でした。経団連は、表向きは
法改正に反対とは言いにくいために、もっと
情報の収集が必要だと
改正の先延ばしを図る戦術を取りました。同時に、経済界に配慮し、
見直し作業に消極的だった
消費者庁の責任も重大です。
しかし、二〇一〇年代に入ると、
内部告発を弾圧する
企業の
姿勢がかえって
企業の存亡の危機を招くという事件が相次ぎました。
特に、オリンパスの
巨額の粉飾決算事件や東芝の不正会計事件では、早くから
内部で
是正を求める告発の声が上がっていましたが、経営陣はそれを無視し、事実を隠蔽し続けました。結局、外部への
通報で全てを暴露され、社会的な信用も失い、
企業存続の危機にまで陥ったのです。もっと早く
内部告発者の
意見を聞き
改善を図っていれば、
会社への壊滅的打撃も避けられたはずです。
組織内の不正を
安心して告発できる
公益通報者保護制度の確立は、
企業の自浄作用を保ち、健全な
企業風土を培うことにもつながり、
企業にとってもメリットが大きいのです。
公益通報者保護法を
実効性のあるものにするため、二〇一八年十二月の
消費者委員会の答申では、
通報を
理由として
通報者に
不利益扱いをした
企業に対する助言、指導、勧告、公表など
行政措置の
導入が提言されました。ところが、今回の
改正ではこの
行政措置の
導入がそっくり抜け落ちています。なぜ
不利益扱いに対する
行政措置の
導入が見送られたのか、
衛藤大臣、改めてその
理由をお答えください。
行政措置の
導入が見送られた背景には、経済界の反対だけでなく、
厚生労働省の抵抗がありました。
解雇や降格などの
不利益扱い、不当労働行為について具体的に指導するのは、労働省の労働部局の仕事になります。今年二月三日、本
改正案の原案となった自民党プロジェクトチームの提言をまとめた小倉將信事務局長、
衆議院議員は、記者会見で、
行政措置の
導入を見送った
理由として、その
厚生労働省の労働部局が職員数の関係で
対応できないと言っていることを挙げました。また、二〇一八年六月の
消費者委員会専門
調査会でも、
厚生労働省の課長が、職員の数に余裕がないから
消費者庁との
連携は難しいと公然と
法改正に抵抗する
姿勢を示しています。
不利益扱いに対する
行政措置の
導入には、
公益通報者保護という明確な立法事実があります。役所の
体制というものは、立法化されたものに
対応して
整備、
強化するべきものであって、
体制が足りないからといって立法化を拒むのは本末転倒ではないでしょうか。
加藤厚生労働
大臣、
厚生労働省として
行政措置の
導入に積極的に
協力し、本当に職員数が足りないのなら、
政府に人員増を要求するのが筋ではありませんか。
答弁を求めます。
消費者庁の
姿勢も問題です。二〇一八年十一月二十二日の専門
調査会では、
消費者庁は
行政措置の
導入について
関係省庁の
協力が得られないと泣き言ばかり並べています。
公益通報者保護を本気で考えるなら、もっと熱心に
関係省庁と交渉すべきだったのではありませんか。
消費者庁の気概のなさも問題ですが、一番に問われるべきは、
公益通報者保護制度の確立を全省庁の
課題に据えようとせず放置してきた安倍政権の責任ではないでしょうか。
衛藤大臣の
認識を伺います。
私が三年前、悪質マルチ商法、ジャパンライフ事件を取り上げたのは、
消費者庁内部からの告発がきっかけでした。お年寄りの被害が広がっているのに、
消費者庁が政治家や役所のOBに配慮し、文書指導にとどめて
業務停止命令を出そうとしない、このままではたくさんのお年寄りが食い物にされてしまうという思いからの告発でした。
消費者庁にも正義感と気骨を持った人はいたのです。
国会でジャパンライフ問題が取り上げられ、マスコミの報道もあり、ようやく
消費者庁も本格的処分に乗り出すようになりました。しかし、
消費者庁の
対応が遅れた間に、多くのお年寄りがジャパンライフに老後の資金を奪われました。
安倍総理が桜を見る会の招待状をジャパンライフ会長に送ったこととともに、
消費者庁の
対応の遅れが被害を
拡大した、このことについて
衛藤大臣に反省の気持ちはありますか。
その一方で、当時、
消費者庁の中では外部への
通報者は誰かという
調査が行われました。
公益通報者保護を担当する
消費者庁が、
通報者を捜し回るというブラックジョークのようなことが実際行われたのです。
消費者庁が発足して十年以上が過ぎました。年を追うごとに
消費者庁に対する信頼は失われています。
消費者庁をつくるために尽力された
消費者団体や弁護士さんたちから異口同音に聞かれるのは、こんなはずじゃなかったという言葉です。
信頼を失ってきた原因は、ジャパンライフや安愚楽牧場事件などへの
対応の遅さ、そして今回の
公益通報者保護法改正案を含め、この間の
法改正が
消費者の
立場に立ち切れず、ことごとく中途半端なものになってきたことにあります。
この点を厳しく指摘して、
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣衛藤晟一君
登壇、
拍手〕