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参考人(
南野奈津子君) よろしくお願いいたします。
私の方からは、こちらのスライドにもあるように、
外国人の高齢化と
社会保障、そして、私自身
社会福祉を専門としておりますので、
社会福祉制度などについても述べたいと
思います。(
資料映写)
特に、
社会保障の検討の
観点から見た
外国人の概況、そして
現状としての
社会保障や
社会福祉制度の適用
状況、そして今後の
課題について述べたいと
思います。
社会保障制度を考える上で、
外国の方がどういった方がいるのか、そして、
労働者なのか
子供なのか高齢者によっても
社会保障制度をどう考えるかは変わってきますので、まず最初、保障制度を考える上で
理解すべきは、年齢層や
地域差、そして所有している
在留資格であると考えます。前提の話として、三か月以上在留するいわゆる在留
外国人は、年齢を問わず何らかの
在留資格というのを持って生活をしています。そのうち、
日本人と同じ活動ができる
在留資格が一定の要件ありまして、それらをここでは
定住につながる
外国人又は
定住外国人として、幾つかのデータを見たいと
思います。
時間の関係上、ポイントのみを御紹介させていただきます。
まず、
日本に暮らす
外国人は、現在、過去五年間で六十万人
増加しているわけですが、それを
日本に
定住する
外国人又は労働を
中心として在留している
外国人を見ると、
定住している
外国人、
定住外国人は約十万人の伸びに対して、労働を目的として来ている
外国人、非
定住外国人は五十万人となっています。
次に参ります。
定住につながる
在留資格保持者上位十か国を見ていくと、多い人数においても国によっての差が非常に大きいということが分かります。左側の表を見ていただくと、
定住につながる
在留資格の保持者は、韓国や中国、フィリピン、ブラジルが非常に多くなっていますが、特に労働で来ている
外国人を見ていただくと、一番下のベトナムが非常に多い
人口を占めているということが分かります。このベトナムの約五六%は技能実習生で、
日本に在留をしています。右側のグラフを見ていただいても、在留、在留以外の割合を見ていただくと国によって差が大きいということが分かるかと
思います。
では、次のページに参ります。
外国人の高齢化率はどういう
状況なのかというところで、
日本人の
人口の年齢層別の構成、そして
外国人を見ていくと、
外国人においては六十五歳以上の
人口割合は六%となっておりまして、
日本人の二九%に対し非常に小さくなっています。これは世界の傾向と同じく、やはり
移住してくる人は労働世代が多いというところで、
社会保障の検討をする際にもこういったデータは押さえておきながら見ていく必要があると考えます。
では次に、それぞれの年齢層別の
外国人の中で、それぞれの
国籍が最も多いのはどの国なのかというところで見ていきます。こちらも、
社会福祉制度や
社会保障制度のうちどの
政策を今後どういった形で充実させていくかということで、
一つの
参考になると考えています。
詳細は割愛いたしますが、零歳から十八歳、児童福祉法では十八歳未満としておりますのでそちらに合わせていますが、そちらでは、いわゆる
定住につながる
外国人、中国人、
ブラジル人、フィリピン人が多くなっておりますが、十八歳から六十五歳においては
ベトナム人、そして六十五歳以上においては韓国と朝鮮の割合が非常に高くなっています。
次の
外国人の数については割愛させていただきます。
次に、国内の
地域差についても一応確認しておいていただきたいところであります。
社会保障制度や
社会福祉制度を運用する上では、その
自治体での浸透度、また
外国人のコミュニティーの形成
状況なども
社会保障制度や福祉制度の在り方に影響を与えるわけですが、こちらの棒グラフを見ていただいても分かるように、非常に
自治体間格差が大きくなっています。
日本で最も
外国人数が少ない都道府県は秋田県で四千二百三十人ですけれども、これは、
東京は五十八万二千人ということで約百三十七倍と、非常に大きな差があるという
実態があります。
こちらの棒グラフを見ていただくと、その中でも特に関西圏は朝鮮・韓
国籍の
外国人の方が多くなっている実情があります。
では次に、
外国人における
社会保障や
社会福祉の
現状について述べてまいります。
先ほども申し上げたように、
社会保障の
対象になるかは、
国籍で決まるのではなく、所有している
在留資格で決まるということがあります。現在の
法律上は、生活保護を除き、ほぼ全ての在留
外国人は公的
社会保障制度の
対象になるという制度設計になっています。
ただ、実際には、そうした
社会保障制度や福祉制度にたどり着けず、苦境に陥っている
外国人も多くいるのも事実です。また、
在留資格を所有していない非正規滞在の
外国人も
日本にはおりますが、そうした方々も含めて対応するような
社会制度もあるのですが、十分な活用には至っておりません。そして、制度の
対象になっているから大丈夫だということにはなっていない実情が多々あるというのも
現状としてあるところです。
では、幾つかここからは代表的な
日本の
社会福祉制度や保障制度について概要を述べたいと
思います。
まず、生活保護ですけれども、これは、生活保護法に示している
対象としては
日本国民としておりますので、
法律上は
外国人は
対象外というふうになっていますが、現在は人道的な見地から、準用という形で特定の
在留資格を持つ人に関しては生活保護が利用、受給できるというような
状況になっています。下の表には、現在の被保護世帯数を示しておりますが、年度によって若干数字は違いますけれども、
外国人の方が受給世帯としては一%前後、多いというようなデータが示されております。
生活保護受給世帯は、
日本とはまた若干違う特徴がございます。円グラフで
日本人そして
外国人といった形で受給世帯の特性を見ていただくと、
日本人の場合は約半数強が高齢者世帯になっていますけれども、
外国人も一番多いのは高齢者世帯なんですが、母子世帯の割合が非常に高くなっています。
その母子世帯の中でも、特定の
国籍に生活保護の受給世帯が偏っているという特徴があります。
資料の方では色を付けてあるところがありますが、特に受給が多くなっている世帯分類としては、韓
国籍、朝鮮籍の高齢者世帯、そしてフィリピン
国籍の母子世帯という形になっております。
ですので、ここからも、
外国人の方、一律に貧困になるのではなく、特定の
国籍、背景を持った人が貧困
状況にあるということが分かります。
次に、母子
生活支援施設という児童福祉法に
制定されている母子で入所できる施設の入所者についてですけれども、こちらのデータでも、
外国人の入所者が割合が高いということ、そして、その入所理由がドメスティックバイオレンス、DVの割合が高いということは福祉関係者の中でも指摘をされているところになります。
では次に、年金と保険制度の概要について御説明申し上げます。
国民年金、国民健康保険、介護保険については、
日本の
在留資格が三か月以上となっている
在留資格の保持者は加入義務があります。また、三か月に達していなくても、見込まれる場合は加入が可能となっています。一方、
労働者が加入する健康保険や厚生年金は、
外国人の権利や義務というよりは事業所の義務ですので、そこに対して
国籍の要件はないということになります。
以前は厚生年金は二十五年以上の加入が受給の要件になっていましたが、今現在は十年以上ということで、長期で滞在する
外国人にとっては、短期になったことで加入した場合に受給できる時期まで
日本にいるということが見込みやすいということが出てきたということもあり、また、近年はそれぞれの事業所も加入に対して規制が厳しくなっていますので、未加入率は減少しています。
次のページに行かせていただきます。
医療関係のその他障害、難病などの
状況に関してどのような制度があるかということですが、例えば、障害を持っている方が所有している各種手帳、そして、障害に関連する
医療に対して自己負担分を支給する自立
支援医療というのがありますが、こういったものに関しましては、特に
国籍、また
在留資格の要件はありませんが、現実的には、こういった手続をする関係上、
医療機関に関わり、そして保険加入が前提になっているというのが
現状になります。やはり、突然行って手帳のための診断書が出るということはないということです。母子保健、母子健康手帳や入院助産につきましては、
在留資格にかかわらず利用が可能ということになっております。
なお、近年また話題になっている感染症に関しては、特に
在留資格の関係なく適用となっております。
次に、労働関係です。
各種労働に関する
法律においては、
外国人の
国籍や
在留資格によって
差別的な扱いをしてはならない、そして労災の適用、そして健全な労働対策を取るということは事業者の義務であるというふうに示しているわけですけれども、実際には、労災が起きたときにも事業者が対応をしたがらない又は厚生年金の加入を渋るといったような問題が相談としては多く上げられております。
次のページは、
労働者の
現状として
参考情報を示しておりますが、
外国人労働者の多くは製造業、そして小規模又は請負事業のところで勤務をしている割合が高いということを考えると、なかなか
社会保障や制度にたどり着くのが困難な環境が
存在するということが言えます。これは
外国人に限らない問題であるとも言えるわけです。
では次に、制度上
対象だから使えているのかというと、そうではないというような問題に関して触れていきたいと
思います。
制度の
対象になっているのにもかかわらず、生活保護の受給に至ったり、家を失ったり、また
医療や保険が利用できないといったことはなぜ起きるのかということですけれども、まずは言葉の壁、これは非常に大きくなっています。今は様々なパンフレットなどが
整備はされていますが、例えば源泉徴収票であるとか最低生活費など、手続をする上で様々な難しい制度用語が出てくる中で、そういったところまでの対応に至っていないのが
現状です。自分の国にそういった制度がないから、やっぱりそういった制度があるのかないのか分からないといった生活感覚の違いもあります。また、通訳の不備としては、
社会保障や福祉、
医療制度の利用上で大きな壁になっています。こうした問題が
医療費の未払や病気に対する自己決定を阻害するといった要因になっております。
そうした中で、
外国人の
集住地域では、そのコミュニティーの中での様々な
情報を駆使して生活をしている方も多いわけですが、時にそういった
情報が誤っているということもあり、なかなか制度にたどり着かなかったり、誤った解釈をしているということが実際に起きております。
次に、
受入れ社会の
課題として、通訳やソーシャルワーカー、コーディネーターなどの不備というところがございます。また、
外国人の労働特性、例えば夜間も働いている三交代制の勤務であるとか、そういった方にとっては、やはり
日本の行政機関を利用するであるとか
日本語教室に行くということが難しいこともございます。
また、これは
外国人の問題というよりは
日本社会の問題として、そもそも
地域での支え合いの希薄さが進行しているとか、女性の自立において待機児童問題があるであるとか、そういったことも
外国人にとっては更なる壁になるという
実態があります。ですので、
外国人だからなるということに問題を帰するのではなく、
日本社会の問題としても捉える必要があると考えます。
外国人の立場の弱さに付け込んだ雇用やあっせん、そして男女間の暴力といったようなものが起きているということもこれは背景にありまして、やはり仕送りをする立場であるとか、その
在留資格の更新上、夫や雇用主のサインがなければ更新ができないといったような、そちらの
意見を優先しなければいけない構造が、
外国人が
社会保障制度や例えば労災などの利用に関してちゅうちょしてしまう背景になっております。
外国人の方の
社会保障を考えたときに、これは
日本人もそうですけれども、こちらの表に示させていただきましたけれども、その制度があるということに加えて、
地域の中での支え合い、その特徴的なコミュニティーということでいうと教会であるとか
日本語教室であるとか、そういったところでのつながりが、こういう制度があるんだとか、そういうときにはこういうことが必要だとか、あなたもこうしなければいけないといったような
情報を提供していたり、
社会保障制度の利用をサポートしていたりして、そういったことを通じてそれぞれの
外国人住民が生活知識を付け、
日本語力を付けというふうになっていくわけです。
そういうことを考えると、
社会保障制度だけを整えても駄目であって、やっぱりそういった制度がカバーし切れないサポート体制、そして
社会保障制度につながるような
社会環境や
支援があってこそ、こういった
社会保障制度の充実や
促進が意味を成すと考えます。
最後に、まとめとして今後の
課題を述べさせていただきます。
最初に申し上げたように、現在、年齢層別の
人口や
地域特性は大きな差がありますので、
社会保障制度を考える際には
日本の
現状を踏まえた上で検討していく必要があるということです。
世界の移民動向から考えても、
外国人の高齢化が急激に進むとは考えにくいですが、それでも高齢者ということで生活リスクを抱えるという点は事実であるということと、労働世代の間に
定住外国人が低所得状態が長く続くことで、高齢化になってから様々な生活問題を抱えるということは留意しておく必要があります。
また、先ほど述べたような高齢の特定の
外国人の
国籍の方々や
外国人母子世帯などに関して、やはりこうした問題に対する
社会統合
支援や自立
支援が重要であると考えます。
近年増えている
外国人労働者については、やはりどうしても立場が弱くなってしまうということを踏まえて、権利保障に関する
取組を引き続き続けていくべきだと考えます。
先ほども申し上げましたが、
外国人の生活構造特性は、
日本人と、特に
労働者の場合には
就労する
分野によって違いがありますので、
地域の中での様々な
取組においても、彼らが実際に使えるような場を検討していくこと、そして、やはり同じ国の出身者同士のコミュニティーも含めてサポート
ネットワーク構築を
促進していくような体制が必要だと考えます。
震災のときもそうでしたが、また近年の
日本の高齢化においても、
外国人は
日本人が支える
存在ではなく、共に
日本を支えていく
存在です。そういうことを考えると、
外国人の生活保障問題を短期的な視野で
日本にとっての損得で考えるのではなく、
日本を支えていく立場として共存共栄をやはり考えていくべきですし、やはりグローバル
社会に沿った人権保障の視点から、
社会保障問題、
社会福祉問題を捉えていく必要があるのではないかと考えます。
以上になります。ありがとうございました。