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2020-06-03 第201回国会 参議院 国際経済・外交に関する調査会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    令和二年六月三日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  二月二十六日     辞任         補欠選任      高橋 光男君     塩田 博昭君  六月二日     辞任         補欠選任      木戸口英司君     芳賀 道也君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         鶴保 庸介君     理 事                 小野田紀美君                 柘植 芳文君                 二之湯 智君                 小林 正夫君                 新妻 秀規君                 柳ヶ瀬裕文君                 伊藤  岳君     委 員                 朝日健太郎君                 猪口 邦子君                 河井あんり君                 中西 健治君                 中西  哲君                 松川 るい君                 吉川ゆうみ君                 石川 大我君                 小沼  巧君                 田島麻衣子君                 芳賀 道也君                 浜口  誠君                 牧山ひろえ君                 秋野 公造君                 塩田 博昭君                 伊波 洋一君    事務局側        第一特別調査室        長        清野 和彦君    参考人        東京大学大学院        経済学研究科教        授        同大学ものづく        り経営研究セン        ター長      藤本 隆宏君        一般社団法人日        本造船工業会副        会長       上田  孝君        舞鶴市長     多々見良三君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国際経済外交に関する調査  (「海を通じて世界とともに生きる日本」のう  ち、我が国海洋立国として国際社会を牽引す  るための取組役割海事産業基盤強化)に  ついて)  (海を通じて世界とともに生きる日本について  )     ─────────────
  2. 鶴保庸介

    会長鶴保庸介君) ただいまから国際経済外交に関する調査会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日までに、高橋光男君及び木戸口英司君が委員辞任され、その補欠として塩田博昭君及び芳賀道也君が選任されました。     ─────────────
  3. 鶴保庸介

    会長鶴保庸介君) 国際経済外交に関する調査を議題といたします。  本日は、まず、「海を通じて世界とともに生きる日本」のうち、「我が国海洋立国として国際社会を牽引するための取組役割」に関し、「海事産業基盤強化」について三人の参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。  御出席いただいております参考人は、東京大学大学院経済学研究科教授・同大学ものづくり経営研究センター長藤本隆宏君、一般社団法人日本造船工業会会長上田孝君及び舞鶴市長多々見良三君でございます。  この際、参考人皆様に一言御挨拶を申し上げたいと思います。  本日は、御多忙のところ御出席をいただき、ありがとうございます。特にコロナウイルスのこんな状況のときに押して御無理をいただきましたこと、重ねて感謝を申し上げたいと思います。  皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の調査参考にいたしたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。  次に、議事の進め方について申し上げます。  まず、藤本参考人上田参考人、多々見参考人の順にお一人様二十分程度で御意見をお述べいただき、その後、午後四時頃までを目途に質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いをいたします。  また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度、会長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきをいただきたいと思います。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず藤本参考人からお願いをいたします。藤本参考人
  4. 藤本隆宏

    参考人藤本隆宏君) 東京大学藤本と申します。マスクをして失礼いたします。(資料映写)  私は、この造船業の、あるいは海運専門家ではありませんので、どうして呼ばれたのかというのはちょっと思ったんですけれども、それなりに、こういった形で、いわゆる生産管理技術管理が私の分野ですので、現場を見るというところから始める学問であります。ですから、大体例年五十か所ぐらいの場所は、工場を回っているという感じです。造船も恐らく三十か所ぐらいは見ていると思います。漁船から大きなところまで見ております。その辺の話を中心にお話をしたいというふうに思います。  ですから、本当は私はおまけですので、本当は最後におまけでしゃべるのがよかったんですけど、その辺の話、上田さん、舞鶴市長さん、あれですね、後から直していただきたいと思っております。  まず、現状ですけれども、これはもう国土交通省さんのデータがありますので、どんどん飛ばしていきますけど、GDPの一%程度産業であって、かなり地域に対する貢献が大きいんです、産業。非常に雇用が安定しているということは特筆されますね。  荷動きはかなりいいんですが、今はやっぱり船が少し余っていて、非常に今厳しい状態にあるということは間違いないと思います。  新造船建造量ですけれども、ここにありますように、実は、日本が輝いていたと言われているいわゆる七〇年代、この頃三千万総トンぐらいだったんですね。これが一億トンまで行く。これ、ちょっと異常であります、ある意味では。異常値が多分数年続いたわけですけれども、そこからまた下りて、今六千万トンぐらいだと思います。  その中の二五%を日本が何とか確保していると。まだ一応三大造船国の中には入っている、日中韓ですね、であります。これ、だから、長い五十年ぐらいの周期で見ますと、自動車造船というのはしぶとい産業だと言えると思います。ずっと見ると、何か、駄目だ駄目だ駄目だというのがずっと続いているんですね。ここはやっぱり、暗いお話ばかりではなくて、しぶといということは申し上げられるというふうに思います。  ただし、大手韓国中国、これはまあ彼らは補助金付きで追っかけてきますので、どうしてもやっぱり対等な競争にならないですね。なのでやっぱりやられちゃっていまして、なかなか厳しい。逃げるんだけど追いかけられて、ちょっと逃げ疲れちゃっている感じがあります。  それに対して、いわゆる中手がこれはやっぱり潮目を読む、ビジネスモデルを考える、やっぱり経営者方々、優れた方が多いということ、それからトヨタ的な物づくりがかなり入っております。こういったことでかなり健闘をして、特にこれ、バルク船ですね、いわゆるばら積み船で非常に強いという特徴を持っています。  むしろ、韓国が高付加価値船の方に行っているわけですね、ドリルシップだとかLNGタンカーだとか、そっちへ行っていて、日本はむしろその裏を取って、その下を取りに行っているという、後でこの話はまたしますけれども、こういう状態にありますので、今までの常識、日本韓国中国の順番に高級なものを造っているという話ではもはやないということが大きな話。  それから、舶用でやはり設計情報をヨーロッパに握られているということ、これがやはりかなり大きいので、日本海事クラスターは非常に結束が強くてよいというふうに言われていますが、私から見ると、若干、四面楚歌とまで言わないけれども、三面ぐらい取られている感じがあると。だから、ここをどういうふうにするかというのが大きな問題、戦略論的な問題じゃないかというふうに私は思っております。  済みません、私は業界のことを本当に知りませんので、済みません、好き勝手に私の意見だけ述べますので、もうそういうことだと思ってください。  大事なのは、これ後で出ますが、アーキテクチャー、つまり設計思想をどう考えるか。どうしても技術で強い弱いという話をするんですけど、技術だけ追っかけても、大体、日本産業が失敗するのは、技術を追っかけて設計思想を見ていないということなんですね。だから、設計思想からしっかり見て戦略を立てていくということが大事だということと、それからもう一つは、地道に物づくり流れをつくることですよ。今、世界最高生産性造船所と言われているのは日本にあります。これはアメリカ大学調査ではそうなっております。九州の方にあります。ですから、日本企業は依然として生産性は高い、しかし、コストで、やはり先ほど言ったフェアな競争になっていないかもしれないということはあるんですけれども、まあ二〇%ぐらいは恐らく安い船が中国で造られていて、でも性能日本が二〇%いいと。だから、性能の方に世の中が動けば日本は有利、コストに動けば日本は不利と、こういう今状況にあるというふうに思っております。  もう一つ特筆すべきは、地域への貢献でありまして、これは後で出てきますけれども、やはり雇用の安定ですね、これ八万人ぐらい、非常に安定していますね。このやっぱり地域雇用への貢献というのは特筆すべきものであって、やっぱり造船というのは日本になくてはならない産業であるというふうに、ここに来たからじゃありませんけど、私は平生から思っております。  これがいわゆる海事クラスターと言われているものでありますが、造船左下の方にありますね。ここは今頑張って、特に中手が頑張って、商売は中手技術大手みたいな感じだと思いますけれども。  この下の舶用のところですね、ここを欧州勢が非常にうまいというか、ライセンスで、作らないで設計情報を握って、そこでかなり好きにやられちゃうんで、自動車のように自分たちだけで省エネルギーをやることができないという、ここがちょっと弱いところですね。  それから、右上に行きますと、ここに港湾がありまして、これ港湾が余り言われていませんけど、これ港湾ターミナルオペレーターというのはもう海外に完全に取られていまして、日本が余り強くないですね。だから、ここでかなりその標準を握られている。逆に言うと、それについて、例えば自動搬送車みたいなものを港湾に売ろうとしている日本メーカーさんがいますけれども、やはりここも、やっぱり標準を握られちゃっているんでなかなか入り込めないということがこれありますね。ですから、その辺も含めて少し大きめに海事クラスター考える必要があると思うんですね。  それから、このオペレーター、ここは、日本海運強いところがありますから、ここはかなり強くて、ここで海事クラスターが強いと言われているわけですけれども、ここも一つ間違うと、もうこういう時代だから安い方へ行っちゃおうという話になりますと、この海事クラスター崩れる可能性があります。だから、ここも要注意ですし。  その真ん中に挟まっているこの船舶オーナーですね、ここに、例えば中東とかギリシャとか、こういう方々転売目的で買っているような方々がいて、こういう方々はやっぱり安いものを買って回したいというところがありますので、この方々、特にギリシャの船主の方々相当船標準発言力を持っていますので、この人たちをはっきり言って黙らせないといかぬと思っています。だから、SDGの時代だと、そういう、それに反するようないいかげんなことを言ってもらっちゃ困るというようなことは、これは国連を錦の御旗にやるべきじゃないかと。  要するに、これを見ますと、造船は頑張っていて、オペレーターもかなり頑張っているんだけど、ここの結束が崩れますと、もうある意味じゃ三・五面楚歌ぐらいにもうなっていまして、これ下手すると四面楚歌になっちゃうというようなことです。ですから、これは造船だけ頑張ってもしようがないというようなことは申し上げておきたいと思います。  ここで、じゃ、その中でどこが頑張っているかですけれども、やはり御承知のように、中手造船所と言われているところが頑張っています。今、専業という言い方になっていると思いますけれども。  これ、三社ほど私これ全部行って、私、見ていますので、行ったところのお話をしますけれども、これA社、これは一番大きなところで有名なところです。ここは、とにかく司令塔があって、ここの指示の早さがすごいです。びっくりします。  小型ばら積み船を造っていまして、同じ船型二百隻ぐらい。私、これ、いわゆる造船スーパーカブだというふうに私は申し上げているんですけどね。五杯で大体もうブレークイーブンと言われているところ、二百ぐらい造っているんですからね。ですから、ここは本当にすごいわけでありますが。  私が震災直後に行ったときに、その直前までは、いや、船の値段はいろいろ変わるので、タンカーとかコンテナ船とかばら積み船、いろんなものを造って、ポートフォリオで安定化させるんですよという話をしていたんですけどね。ところが、私が行った二〇一二年かな、いや、もう今、うち九〇%石炭ばら積み船ですと。これ、だから指令がどこかから行って一斉に瀬戸内中の造船所が動くという。もうすごいと思いましたね。  こういう動き方ができる、何というか、造船所がまだ日本にあるということで、これは競争力であります。ですから、ここを、このまさに潮目を読み切ると。別に皆様が海賊の末裔だとは言いませんけれども、本当に潮目を読み切って迅速にかじを切るということができているというのがこの中手。まあ技術力がやっぱりちょっとまだ足りないところがあるんだけれども、この商売する力というのは物すごいと思います。これは全産業見ていても、私はここはすごいなと思いますね。  それから、B社、ここは今ちょっと調子悪いんですけれども、一時期すごかったです。これは、あるお客さんにもう完全に特化してカスタムした、もうそのお客さんだけが使う船を造ったんですね。これは鉄鉱石ばら積み船です。だから、やっていることは全くA社とは違います。全く違います、はっきり言って。  これは、ここにちょっとぞろぞろ書きましたけれども、要するに、これ、社長が全部この絵を頭の中で描いたそうですね。要するに、中国鉄鉱石を爆食している、ということは、パースと上海の航路は鉄鉱石ばら積み船が何隻あっても足りない状態なはずだと。ところで、パースの港は遠浅だと、何で知っているか分かりませんが、遠浅だと。したがって、大きな船が入れなくて困っているはずだと。ところで、うちは三十万トンタンカーを造るドックがあると、したがって二十五万トンぐらいの大きなものは造れると。しかも、買ってくれるリオティントというこの鉄鉱石メジャーはお金を持っていると、だから恐らく幾らでも買ってくれると。したがって、リオティントが泣いて喜ぶような船を、うち三百人しかいないけど、韓国勢に比べたらはるかに劣勢であるけれども、集中してこれを造れという指示が出たそうであります。そこで集中してやったら、まさにリオティントが喜んで五、六十隻まとめて買ってくれたと。つまり、五、六年分の受注残であります。  こういう、これもすごいですね、本当にね。ここまでの連立方程式を一人の頭の中で考えるという人が、日本にもこういう経営者がいるということがすごいと思います。これ、この後、ちょっと今、次がなくてちょっと雌伏の状態でありますけれども。私は、こういう造船所日本にあるということですね。  それから、C社、これ九州の方ですけれども、ここは世界最高生産性と言われております。  ここもやはり潮目を読む社長が昔からずっといたわけであって、これ、やっぱり三十万トンタンカーを造ろうと思って九州行ったんですけれども、結局、石油ショック受注が全く来ない。ところが、なぜかここの社長さんが、元の社長さんですね、七十メーターあればいい幅を八十メーターにしろと言って、全員反対するんだけど、いいからやれと、八十メーターの幅にする。さあ、それでタンカーの仕事が来ない。そしたら、要するに、これを田の字に切ってみろと、田の字に切れば四隻入ると。といって、四隻の小型ばら積み船を造るという形でやっていますので、船のドック期間というのは大体一か月ですから、毎週進水式という大量生産体制を確立して、しかもトヨタ方式がここは入っていますので、世界最高生産性と一応言われています。多分中国の三倍以上の生産性で行っていると思います。今賃金中国の三倍程度ですから、これだったらコストで勝てるわけですね。少なくとも、タイ勝負やったら勝てるわけですよ、今ちょっとタイ勝負になっていない気がしますけれども。  ということで、とにかくここもしぶとくやってきたけど、ここで特筆すべきは、私もよく飲むんですけれども、ここは焼酎造っています。これは要するに、本当に造船不況で人が要らなくなったときに代わりに焼酎造ろうといって、隣で焼酎造っているんですね。こういう、要するに雇用のためにはいろいろやるよという、ああ、芋も作っていますね、芋畑もありますね。こういう、これがやっぱり日本造船業一つ社会的価値だと私は思っております。  ということで、この三方よしというのはよく言われますけれども、日本の宝であります。経済産業企業地域の集まりでありますけど、この三つに対して、全部に対して良いことをすることを三方よしと言いますが、特に雇用よしですね、雇用よし、利益よし、お客様顧客満足よしと、この三つを両方やっていくと先ほどの焼酎の話が出てくるわけであります。  ということで、私は現場を見るのにこういった見方をしております。現場現物から見ていく。現場組織能力、例えばトヨタ生産方式能力。そして、現物アーキテクチャー、これは設計思想ですが、これを見ていくということであります。技術が高い弱いだけ見ていますと、よく政策失敗すると思うんです。この設計思想から見ていく戦略が非常に重要であります。  まず、競争力から見ていきます。これ、その二つの相性が良いと競争力が付いて日本産業は残るという考え方なんですけれども。  ここを見ていくと、これ、日本の例えば自動車で見てみますと、裏の競争力というこの現場競争力のところ、左から二つ目ですが、ここを見ていきますけれども。  自動車日本は依然として世界一です。これ小さいほどいいんですけど、この数字は。日本はいいんです。じゃ、造船はというと、造船も大体、ちょっと前までは中国の三倍から五倍ぐらいの生産性と言われていました。今は彼らも追い付いてきます。だから、彼らは賃金でも追い付いてきているし、生産性でも追い付いてきていて、コスト競争力が非常に微妙です。どっちが勝っているかよく分かりませんけど、大負けしているわけじゃないというふうに私は見ております。  それから、能力ですね。  このエンジニアリングチェーンサプライチェーンをぐるぐるよく回していますね。これが非常にお上手だというふうに思います。特に、トヨタ方式というのは二百ぐらいのルーチンから成り立っていて簡単にまねできないんですけど、これ入っています。皮肉なことに、これ入った一つの会社では理由は、造船不況のときに、自分のところで首切りたくないので、応援で中京地域自動車メーカーにたくさん人を出したんですね。この連中がトヨタ方式を持って帰ってくるわけであります。世の中どうなるか分からないですね。  これが、今見ている、造船の場合のこれは工程フロー図であります。これをやっぱり丹念に改善していく必要があるんですけど、特にボトルネックがこのドックにあります。船台、ドック、特にクレーン能力ですね、この辺りがボトルネックになりますので、これをうまく処理しながら全体の流れを良くしていくということ、これはまだまだやれることはいっぱいあると思います。生産性二倍、三倍はほかの産業でできていますから、これはできると思います。  それから、開発の方も、これは一応自動車と同じような開発のプロセスでやっておりますけれども、これも恐らくバーチャルエンジニアリングデジタル化ですね、こちらの方向に大いに振れていくんじゃないかなというふうに思っております。  それから、今度はアーキテクチャーですね。  こちらの方ですけれども、アーキテクチャーというのは、例えば船でも自動車でも何でもいいんですけれども、ある製品には機能構造がございます。この構造機能関係を具体的に見るとテクノロジーになるんですけれども、これを抽象的に見ていくとアーキテクチャーになります。つまり、設計思想ですね。この設計思想が極めて大事であります。技術ばっかり見ているといかぬのですね、はっきり言って。だから、技術がいいのに何で負けちゃうんだというのは、大体アーキテクチャーで負けているわけであります。設計思想で負けています。  上はモジュラー型、これはすっきりしていますね、構造機能関係一対一関係です。これ、アメリカが得意なのはこれです。それから、中国が得意なのもこれです。アメリカ中国が何でけんかしているかというと、この同じところでバッティングしているからけんかしているわけであります。  ところが、日本は、この下のぐちゃぐちゃなやつ、こういうのが日本は得意なんですよ、ややこしいやつ。決して技術は強くないかもしれないけど、このややこしい設計をやっているものは日本が強い。そして、つまり、そういった非常に厳しい状況で造っている船というのは大体これになります。  ただし、自動車みたいに簡単じゃないところがちょっとあるんですね。ということで、このクローズドインテグラル、この自動車型、これは日本が強いパターンで、船の船殻は大体この形でいけると思います。ところが、このオープンモジュラーという、これ日本は全然駄目ですね、こういう寄せ集めでできちゃうものは。ですから、デジタルが駄目、自動車強い、これは当たり前であって、設計思想の問題であります。  ただ、これ、船のややこしいところは、一部舶用のところだけはオープンアーキテクチャーになっているわけであります。ここは弱いんですね。だから、こちら側の顔が出てくると日本造船は弱くなるし、こっちの顔が出てくると日本造船は強いわけです。だから、これは何とも言えない、今勝負どころなわけですね。  これ、実際に描いてみますと、機関部、船体、居住区とあって、特にこの機関部ですね、ここにしわ寄せがうんと行きます。なぜならば、この下に舶用がぶら下がっているからであります。  こんなふうに、描くと、実際なるんですね。これ実際に描いてみると、この下の機関設計に物すごいしわ寄せが行っているところが分かるんですね。ですから、ここのアーキテクチャーをどうしていくかということで、皆さん、多分造船メーカーさんは大変今工夫をしているところだと思います。  それを見るときに、こういう戦略論で考えるんですね。自分製品アーキテクチャーお客様アーキテクチャーと両方を考えます。それがすり合わせ型か寄せ集め型かというところで描くと四つになりますね。  これ、それぞれ戦い方が違います。左上は価格設定力を持つこと、右上はシェア一番取ること、左下ビジネスモデル勝負すること、右下は、これは大体中国さんが強いから余り行かない方がいいと、こうなっています。  実際見てみると、さっきの絵を見ると、A社小型標準スーパーカブみたいなやつは、これはもう右上であります。そして、逆に、C社機関室の中を非常にモジュール化して工夫している、これ多分ほかの会社もありますけど、これは左下になります。そして、B社の先ほどのばら積み船はこの左上なんですね。だから、ほぼ、これで確かに戦略論的にも正しいことをやっていたので、うまくいっていると。だから、別にこんなものを描いてやられたわけじゃないと思いますけれども、実は非常にうまくやっている。  それから、設計の中見ても、船体そのもの、例えば、先ほどA社の船体は右上で、これはインテルと同じ、あるいはシマノと同じ場所ですから、うまくやれば二〇%利益が出る場所であります。左上は船殻設計、ここはお金が掛かりますけれども、お金が取れれば勝てると。左下機関設計で、ここが一番苦労します。左下機関設計のところが勝負だというふうに私は思いますね。右上の居住区、ここはちょっとなかなか勝負できないところかもしれません。  ということで、実際見ていくと日本は、これ経産省と一緒に東大で調査をやったんですけれども、実際、すり合わせ度が高いほど日本の輸出比率は高いです。これは統計的に有意であります。  これを見て考えますと、日本はやはりこういった統合力、まとめる力が強い。多能工のチームワークでやっていくから、すり合わせ型製品が強い。だから、船がすり合わせ型製品でいてくれれば造船はまだ勝てます。船が完全モジュラー化しちゃったら恐らく勝てません。だから、ここの勝負だというふうに考えます。  その勝負の行方は、やはりSDG、いかに厳しい環境規制を船に対して出してもらえるかであります。油断していると、ヨーロッパや中国人たちは、まあいいじゃないですかということを言ってきます。それを許さぬということでありますね。これをちょっと厳しい方へ行くのがまさに、国連が錦の御旗だと、SDGだということであります。  こう見てきますと、中国韓国日本って大体この順番に並んでいまして、日本が一番上で、韓国中国の順番だとなっているんですけれども、実際に調べてみたら、もう韓国が上行っています。彼らは千人以上の造船エンジニアがいますから完全に上に行ってまして、ここに大手はのみ込まれているわけであります。  ところが、下の方に行きますと、この下、黄色いところが日本なんですけどね、これ、裏取っているわけですよ。この下に中国がいますけれども、要するに、先行かせて裏取っちゃっているんですね、これサッカーと一緒です。極めて巧みですね。だから、これで大変利益を出してきたというふうに、少なくともこれまでは、思っております。だから、これがこれから続くかどうかですね。  絵で描くとこうなっています。要するに、韓国中国補助金付きでどんどん追っかけてきます。それに対して、この間の隙間のところに入って中手が巧みにこれまで商売やってきた。上のハイテクに行ったんだけど、上がもうなくて、ちょっと寸詰まりな、せっちん詰めになっちゃっているのが大手でありまして、大手はちょっと上で苦しいと。当然これ、上に行かないと中国が追っかけてきますから、上に中手も行かなきゃいけないんですけど、そのときに明らかに大手中手が結んで、中手が商売力、大手技術力という形で出し合えばこれはまだ勝機があるというふうに、少なくとも戦略論的に見ればこれは明らかですね、この絵から見れば、ということであります。  ということで、造船で見られる裏取り戦略というのがあります。この裏を取る、まさにサッカーと一緒ですね。中手造船所がこれをやっております。ほかに、半導体や実は電子回路のこういうしぶとい企業日本にあります。みんな裏を取っています。  だから、とにかく追っかけられたら逃げりゃいいという話じゃなくて、逃げ切れるか逃げ切れないかは分かりません。逃げ切れれば逃げ切る戦略、逃げ切れなければ裏を取る戦略と、これが実は日本の今したたかな企業はこれをやっているというふうに思います。  ということで、済みません長くなりましたが、日本現場を鍛えて設計立国で行くべきであると私は思っています。今のグローバル化、それから国際分業型の産業構造、そして微細な細かいところでの産業内貿易、設計に対する厳しい制約条件、これですね、特に四番、これ次第であります、造船は。で、デジタルプラットフォーム化の支配ですね、それからグローバル大災害、今の。  これらの時代にやはり勝っていくためには、まずやっぱり現場をしっかり日本に残すこと。そして、現場と相性のいい、その現場と相性のいい製品勝負する。それで勝負できるような環境を世界的につくっていくということ。そのために産学官が一緒になって設計立国を目指していく。面倒くさい設計日本に任せちゃえと、面倒くさいからと、そういうふうに世界中から言ってもらえるようになれば、あらゆる産業日本はまだ勝機があるというふうに思っております。  以上で終わります。済みませんでした、長くなりました。
  5. 鶴保庸介

    会長鶴保庸介君) ありがとうございました。  それでは次に、上田参考人からお願いをいたしたいと思います。上田参考人
  6. 上田孝

    参考人上田孝君) 日本造船工業会の副会長をしております、サノヤス造船上田でございます。  本日は、造船業の現況等を説明させていただく機会を頂戴しまして感謝申し上げます。造船海運業は、自動車や航空機産業とは異なり、一般市民の目に触れる機会が少ないため、実態を御存じない方も少なくございません。しかしながら、社会インフラを縁の下で支え、国の重要な基幹を成す産業でありまして、このことを御理解いただければ幸いでございます。  ただいま藤本先生から我々に対してエールを送っていただきましたことに感謝申し上げます。造船なかんずく中手が頑張っているというエールをいただきまして、ありがとうございます。  加えて、海事クラスターもっと頑張れという話だったんですが、この中手という言葉とクラスターという言葉が、私もこの造船会社に入りまして十二年たつんですが、全くこれが世間に通じない言葉を業界で使っております。  内弁慶じゃないかと反省しているんですが、中手というのは、三菱さん始めとする大手上場会社の船舶部門を大手といいまして、中手は今出ているA社B社C社、私どもはそれに入っていませんのでFぐらいのところにいますが、そういう会社を中手という言い方します。ただし、日本で最大の造船会社は今治造船さんなんで、これを中では強手という、強い手という。いずれにしても、中手だ何だかんだという表現がちょっと違和感を感じておられるかもしれません。  それから、クラスター。今このクラスターを使うと、造船クラスターなんて、海事クラスターって何か使い勝手悪いですから。ちょっと、私のペーパーもそうなっていますけれど、ちょっとそういう特殊な言葉を業界では使うことになっています。(資料映写)  今日のお話は、一章、二章、三章ということで、そこに書きましたとおりの話を申し上げますが、原稿にはないんですが、一九八五年にプラザ合意というのがございまして、その直後に造船の大不況が、戦後二回目の大不況がございました、造船会社が潰れ、リストラをやるという。それで、その一九八七年頃なんですが、それから見て三十三年ぶりの造船大不況が今襲っております。今、藤本先生からエールを頂戴しましたが、今の状況はその三十数年ぶりの大不況が襲っているんだという前提で今日の私のお話を聞いていただければ幸いでございます。  造船を支える。ここはもう先ほど来出ているとおりでありまして、造船業の前に船舶というものがどういうものだということでございます。暮らしに欠かせないもの、鉄鉱石、石炭、原油、天然ガス等のエネルギー資源をほぼ一〇〇%海外に依存しておるわけでありまして、したがって、日本経済が回っていくために必要な物資、この九九・六%が海上輸送、すなわち全てが船で運ばれております。この九九・六という数字は、もちろん金額ベースに直しますと多分七割とか七〇%ぐらいになると思うんですが、量でいったらそういうことでございます。  次に、造船業のその物づくりの特徴についてお話を申し上げます。  船は最古の乗り物と言われておりまして、人類の歴史とともに発展してきました。材質は木から鋼、そして推進力は人力、風、そして石炭から石油と、そういう変遷を取りまして、現在、今後はLNG、その先にはCO2を排出しない環境に優しい水素等へ進化していくというふうに言われております。  船は、大きいものですと長さが四百メートル、一船ごとの受注生産でありまして、自動車や二輪車のように大量生産が可能な一般消費者向け商品とは異なります。船の積荷、用途、就航航路に応じた大きさ、形状、備え付けられた機能等々、様々でございます。  造船所は、IT化やオートメーション、ロボット化等を入れまして、また先端技術を取り入れて頑張っておりますが、まだまだ多くのワーカーを必要とする労働集約型産業でございます。したがって、地域経済雇用貢献しているというところにつながるわけでございます。  船は世界どこでも航海ができます。その船を建造する造船業世界単一マーケットで競争しております。ライバルでございます中国韓国と同じ土俵で戦っているはずなのですが、彼らは政府支援が手厚く、公平な競争条件であるとは言えないのが実情でございます。  建造現場、これは多分先生の方がよく御存じかもしれません。機械化が進みにくいところがございます。例えば、船を御覧になったときに、船首あるいは船尾部分、あの丸く曲線を成しております。あの曲線を作る技術は実は人の、たくみの技術です。ぎょう鉄という作業なんですが、あのぎょう鉄の作業はまさにたくみの技でございます。そのたくみの技を使っているというのがやっぱり日本人の日本人たるその器用さというのが反映しているんじゃないかと思います。  そして、船の大きさによるんですけど、非常にたくさんの部品を組み上げる、アッセンブルの、究極のアッセンブル産業です。スケジュールどおりに建造してきっちりとした仕事をこなしていくというのが、真面目で勤勉な日本人の特性にマッチしているというふうに考えてもよろしいんではないかと思っております。造船業日本の、日本人の気質に合った産業ではないかと、そういうふうに自負しております。  この図を見ていただくと、海運造船業は右肩上がりの成長産業だということでございます。世界経済の成長に合わせて海上荷動き量は拡大を続けておりまして、これからもその傾向は続くと見込まれています。決して一部のマスコミ等で言われているような斜陽産業あるいは衰退産業ではございません。この点御理解いただきたいんですが、ただ、今成長産業と言いましたが、これ、言葉としての成長産業というのは正しい表現かどうかは私も自信ございません。ひょっとしたら成熟産業という言い方がいいのかもしれないし、ちょっとここに誤解を与えている可能性があると思っております。  世界貿易を支えます船舶を供給する造船業経済雇用、防衛の観点から、日本にとって不可欠な産業であると。特に地方においては、地域経済を支え、就業機会の確保に大きく貢献しています。さらに、艦艇や巡視船艇の建造を通じて国の安全保障にも寄与していると思っております。また、船を構成するエンジン、航海機器始めたくさんのいわゆる部品、舶用機器、これを主に国内の舶用メーカーから調達しておりまして、多数の中小事業者に支えられている産業でございます。裾野の広い産業だと思います。  このグラフはもうよく出てくる表なんですが、大きな波を打っております。造船業は好不況の波が他産業に比べて非常に激しいということでございます。船は一度建造すると大体二、三十年使用されます。貨物の荷動き量の増減に合わせた柔軟な供給体制を取ることが困難でございまして、契約をして船が完成するまでに二、三年掛かる。そうすると、将来の好景気を見込んで先行発注したものが、そのときに荷物がなくなって、完成した頃には船が余っているということが起こっております。したがって新規の発注量が途絶えていくというのが、この景気の連動に合わせて、それがこのグラフに表れているとおり、景気が良くなった、船を造ろう、船の発注があった、でも、でき上がった頃には景気がおかしくなって船が余ってくると、この繰り返しをやっております。石油危機の、一九七五年、第一次の世界危機の直後の船舶需要が激減した時代、そして現在もそういうことは繰り返しております。  リーマン・ショック前、これは大量に発注されました。もう世界貿易が激増しました。そのときに、船も必要だということでどんどん船の発注がございました。これを、業界では時々、海運バブルとか造船バブルという表現を取るんですけれど、私は、バブルという言葉は金融でよく使うバブルなんですが、これはバブルというよりもブームが来ていました。世界、地球レベルの経済成長のブームが来ていました。ブームに合わせて船を持って荷物を運ぶ、それで船が欲しいから船を発注するというブームが来ていました。しかし、ブームというのは意外と簡単に終わっちゃったわけです。終わったので、ここに、表にございます、グラフにございますように、右側の山ですね、このときは本当に、リーマン・ショックの直前にブームで乗ってどんどん発注がありまして、造りました。造ったときのピークが一億グロトンという数字なんですが、そのときに造った船が、実はでき上がった後に余っちゃったんです。余ったから次の発注はしないというような状況が続いてきたの繰り返しをしております。  先ほど先生から生産性の議論が出ました。生産性議論をしますと、我々の中で統計データあるんです。一人当たりどのぐらいの船の工事量をやっているかという数字なんですが、確かに、七五年辺りから見て、第一次のピークの辺りから見ましても、ここの折れ線グラフですね、三倍のレベルに上がってはおります。確かに昔は、船造るのに、機械もなければ、本当にたくさんの人手を掛けていたのは事実でございます。今はそれは、設計にしろ現場にしろ、相当数が、例えば溶接一つ取りましても、今は自動溶接といいまして、普通の平板、普通のところはもう自動でやっちゃいます。曲がった箇所とかややこしいところだけ人間の技でございます。そんなことで三倍に上がっているんですが、先生から三倍上がった、いいと言っていただいているんですが、この程度という自戒の念もあります。もっと上げなきゃいかぬのじゃないかと、将来に向かってという感じはございます。  次のページ。この海事クラスターのいろんなここの話は先ほども出ておりますので、全体に、関連メーカー等を含めまして、我々、造船舶用工業十三万人の雇用、売上げは三・四兆円になっているということです。四十年前、五十年前はこれが多分三倍、四倍ですから、四、五十万ぐらいの雇用はやっていたはずです。それは、いわゆる自助努力で生産性を上げて、現在この数字になっているというふうに思います。  ところで、船の話をしますと、私の家族なんかもそうなんですが、ニュース見ていましてパナマの船が何か事故起こしたよという話が出てきて、もう先生方は当然御存じでしょうけれど、パナマの船がパナマの船ですかというんじゃなくて、実は、日本は実質支配している船が日本船籍じゃないということでございまして、御承知のとおりだと思います。日本は、実質支配している船は世界の約一割強を持っております。ですから、パナマ船籍の船がどうというのは、実は日本の郵商K、日本郵船さん、商船三井さん、川崎汽船さんなどの日本大手の船会社さんが所有されているとか、あるいは瀬戸内海の地域に根差した多数の船舶オーナーがございます。この方々が所有されています。だから、国籍は違うんだけど日本の船です。このことが非常に分かりにくいテーマでしたので、ちょっとそこをコメントさせていただきます。  その次の表ですが、これは日本造船所が西に多いということを書いておるんです。  ちょっとちっちゃいですが、岡山県倉敷市、水島コンビナートに私どものサノヤスドックがございます。サノヤス造船の大きさは約十万坪、最も小さな最もコンパクトなヤードでございますが、そこで千人働いております。  その次の表、これがよく使われる表ですが、造船業の歴史、これ御覧いただいたとおり、確実に二〇〇〇年頃から右肩上がりにどおっと来ています。これは貿易、世界貿易量が増えたからです。中国を中心に世界貿易量がどんどん増えたからです。  それに合わせて造船所ができました。二〇〇〇年頃の、赤色を御覧いただきましたら、中国造船のウエートなんというのはもう本当に微々たるものです。でも、自国に入ってくる貿易を見ていて、それが日本の船だと、だったら造船所を造ろうじゃないかと。データでいったら多分二千社ぐらい造船所が、にわか造船所ができまして、それがこの勢いでもっていました。そこが、先ほども申し上げた造船ブームの、海運造船ブームが二〇一〇年、一一年、この頃です。リーマン・ショック直後に、リーマン・ショック前に発注された船がここで実現して、出てきております。  実は、このシェア表はいろいろ考え方あるんですが、〇八年、二〇〇八年は、世界ナンバーワンプレーヤーは韓国、そして二番が日本、三番に中国でした。翌年、韓国中国日本に変わります。そして、歴史的に我々非常に強く印象に残っているのは二〇一〇年でございまして、二〇一〇年はGDP、名目GDPが日本中国に抜かれた年であります。この年に世界ナンバーワン造船大国は中国に取って代わるわけです。したがって、中国韓国日本という順番になったのがこの二〇一〇年でございます。  次は、そういう、じゃ、他国の状況を拝見しますと、ここにシェア表ございます。中国大手韓国大手というのがありまして、韓国は現代重工業、大宇造船海洋の買収によって世界ナンバーワン、世界シェア三割の企業が誕生しようとしています。これについては現在、中国日本、ヨーロッパ、EU等の公正取引委員会が審査を行っているところでございます。また、中国では二大国営企業の統合により、巨大造船所、そこの赤色の部分です。十数%のシェアを持つ強豪が誕生します。それに対して日本は、御案内のとおり、今治造船さんとJMUさんの統合が十一月、去年の十一月に設計、営業の共同会社を設立というのが発表されましたので、そこが今進んでいく過程でございます。  業界としまして、今後も、経営の安定化、世界市場での影響力の保持のため、こういった意味での集約、事業提携を推進していく必要があると。これは造船工業会として、あるいはお国、政府の方もそういう御方針ですし、我々一企業人としましてもその考え方はまさにそうだと思っております。  その次ですね、公的資金のWTO問題があるんですが、今、韓国が、御案内のとおり、リーマン・ショック後の落ち込みが激しいときに経営が危なくなった大手造船所がございまして、そこに大変大きな額の公的助成、行いました。これ、ドライに言えば、本来ならば市場から撤退すべき事業者だと僕は思います。日本だって四十年、三十数年前に、まさにマーケットから出ていった会社がたくさんあるわけでして、それが国によって救われ、世界造船市場の需給バランスを、ブームの後の需給バランスを回復しようとしたところがバランス崩れたままの状況になったのは、悪いですがこういうことの過保護だったと思っています。  現在、これに関しましては、日本政府によって、不公正な政府支援を正して公正な国際競争環境を取り戻すために、韓国政府による自国造船業の公的資金に対してWTO提訴いたしました。現在、二国間協議を実施している段階でございます。我々日本造船業界、当然ながら政府の対応を支持いたしまして、所要の協力を行っております。  ここからは少し技術の話になっていくんですが、船の世界でいろいろ環境規制等々の話が出てくるんです。書いていますように、一番悩ましいのはCO2の排出量の問題でして、IMO、国際海事機関によってGHGの削減ということがルールが決まりましたので、今現に使われている船が、二〇三〇年になると、こういうルールに適合しない場合は駄目よと退出を命じられるわけです。したがって、このルールに従った船を造らなきゃいかぬということで、今現在、業界としても最大限の取組をしているところでございます。  ちなみに、このCO2の問題でも、私がこういう造船の仕事を始めましたときに、私どもの船でC重油というのを使って船を動かすんですが、当時、私どものパナマックスバルクキャリアでC重油って一日当たりどのぐらい使うんですかといったときに、私の記憶では三十八トン、一日使用量が、そういう船を造っていて、それを省エネ船に替えていこうというので、本当に自分たちで努力をしましてどんどんどんどんレベルアップしました。多分、今二十数トンにまで、いわゆる機能といいますか、性能がアップしています。今回のこのGHGの問題は、それでは耐えられません、新しい大きなテーマです。  その次に、船の、GHGゼロ排出に向けたいろんな船の研究、省エネ、脱炭素技術の展開ということを、ここに書きましたような形で行っております。LNGの燃料というのは、今もう既に、我々でも既に俎上に上がっていますが、さらに二〇五〇年に向かっては水素かアンモニアかというような議論が起こっております。  したがって、技術論でいったら、まさに技術革命が起こるんだろうと、また起こさないとここで退場を命じられるかも分からないという、そういう意味で、冒頭に不況だと申し上げましたが、新しい戦いに勝つためにここの大きなハードルが待っているということでございます。  船舶の、今申し上げた流れでございまして、自動運航船、こういったことも研究テーマでございまして、ヒューマンエラー、船の問題が起こるときによくあるのはヒューマンエラーです。船員によるミスだとか、いろんな問題が起こっているんですが、じゃ、そういうものが起こらないような、海難事故が起こらないようないわゆる技術というものをもっとふんだんに取り入れた船ができないだろうか。そういったことについて、日本技術優位性を生かして、そういうレベルの船を造ることで勝てるんではないかということを展望して、今、これは個別各社の問題というよりも、海運会社さんと造船各社と、あるいは連合軍としてのそういう研究機関等合わせてこういったことの研究を鋭意進めております。  今後の業界見通しであります。  この表は、グラフは、受注産業と申し上げました、受注産業ですので、通常、契約をいただいて、そこから設計の細部を打合せをし、エンジン始めいろんな資機材を買います、そして造ります。大体二年、最低二年必要だというふうにまず御理解ください。二年ぐらいが必要なときに、その受注が今どうなっているかということでございます。最近の世界受注別と書いていますが、このブルー、日本ですが、もう激減しているのがここで一目瞭然であります。  その次の表がもっと端的に分かります。先ほど申し上げた造船ブームのときは、私どもの会社でもそうでしたし、全社的に多分四、五年分の受注を抱えました。本当にたくさんのオーダーをいただきました。ところが、それが大体三年に落ち、二年に落ちた。それが何と、ここに書いてあるとおり、昨年末、二〇一九年十二月には一・五年、一年半分しかないと。現在、コロナの影響で商談が完全にストップしている関係で、現在一・二年分です。もちろん平均値ですから、各社各様いろいろな考え方があるんですが、もう完全にここでいわゆるアラームが出ているという感じでございます。  ですから、今日は、私冒頭に申し上げたように、本当に今、造船の、全体としても不況なんだけど、今この足下、コロナ禍の影響を受けてもう完全にダブルパンチで大変な状況になっておるというのが現在の状況でございます。仕事量がないということで、雇用を抱えた造船各社が一体どうしたらいいんだということを、今、各企業、そして造船工業会始め、あるいは海事局の御指導を得て、今それを鋭意いろいろな角度から取り組んでおります。これは歴史的に見て、この二年を切るような状態は二〇〇〇年頃に一回あったようです。そして、その前は四十年前、三十数年前です。  ここ、次のページが一番大事なところ、私もう時間切れでここを言い逃したら造船工業会の事務局から怒られますので、これを申し上げます。  今、そのような状況で、経営の安定化策、対策が、これは我々企業、そして造船工業会会員企業、そして皆さんといろいろな議論をした結果、ここに集約されましたようなことを今具体的に一つずつ押さえていっております。競争力を維持する、あるいは向上していくためにどうすればいいんだろうと、GHGの大幅削減のようなこういうニーズに対してどうすればいいんだろうと、そんなことを我々は今考えておるわけです。  この一つ一つについて御説明することは差し控えますが、もう足下のこの状況ですから、今、足下で、例えばこの中の一番上のうちの六つ目、つなぎ対策と書いていますね。コロナ対応で、我々は例えば売上高は全然落ちていません、足下。受注残が激減しています。売上高基準でいくと全然コロナ影響を受けていない、しかし受注残は先が全くおかしくなったというようなことを含めて、例えばつなぎ融資のことを書いてございます。  最後、国に、皆さんに御要請申し上げたいことです。五項目ございます。  今申し上げたことを含めて、つなぎの資金に関する御支援、船主の発注意欲を促進する、買手を支えていただく。そして、仕事量の確保を図るための民間船舶、官公庁船の発注増加への支援。企業の連携、再編等に伴う集約化、生産性向上等の資金支援。公正な市場の確保、これは対外、グローバルの面です。そして最後に、大型研究開発及び海洋開発促進への御支援。こういったものについて御支援を賜れば有り難いと存じます。  ただ、企業を経営していまして、日本の場合、中国韓国を私企業と呼んでいいのかどうか、プライベートカンパニーというか、私企業と呼んでいいのかどうか、非常に私は疑問に思っています。  日本は、先ほど出ていますように、大手さん五社、まあ六社というカウントもしますが、中手は十一社ございます。その下に舶用、もっと小さな会社がたくさんあります。基本的に今、自助努力というのは自分たちで必死になって頑張ります。これがやっぱり最低限の条件だろうと思っています。我々は本当に自分たちでまず頑張らないかぬと、しかし、できれば、今日先生方にもお話聞いていただいて、我々について御理解賜りまして、是非国からも御理解とそして御支援を頂戴できれば幸いでございます。  ありがとうございます。
  7. 鶴保庸介

    会長鶴保庸介君) ありがとうございました。  次に、多々見参考人からお願いをいたします。多々見参考人
  8. 多々見良三

    参考人(多々見良三君) 舞鶴市長の多々見良三です。  まずもって、本日は、参議院国際経済外交に関する調査会において発言の機会をいただきましたことに感謝申し上げます。  私からは、さきに事前資料として提出しました「海洋国家「日本」における「造船業」のあり方を問う」について、資料提出以降に新型コロナウイルス感染症による社会変化等も見られ、造船業を含む製造業、海上輸送を含む物流業界等の産業振興を始め、多くの産業が新たな生活様式による学び、働き、暮らすを実践する上で地方都市の役割が大きく増していることを地方の最前線で実感していることなども含めて、説明申し上げたいと思います。  お手元の事前資料を御覧ください。また、添付しております参考資料も適宜御参照いただければ幸いに存じます。  さて、先ほど申し上げましたとおり、今、我々は新型コロナウイルス感染症の経験を踏まえ、社会システムの大きな変革への挑戦が求められているところでありますが、かつて明治時代が始まりました十九世紀後半においても、我が国は大きな変革に挑戦し、近代国家日本をつくり上げた歴史を有することは御承知のとおりであります。  近代国家日本を確立させた歴史の上で大きな役割を果たし、以降、現在まで約百二十年にわたって日本海側の重要港湾都市としての役割を果たし続けている舞鶴市の首長としての思いを述べさせていただきます。  御高承のとおり、我が国は、十九世紀、欧米列強によるアジア植民地支配が進む中、近代国家日本としての存亡を懸け、海軍力を強化するため、横須賀、呉、佐世保に鎮守府を置き、そしてロシアの脅威を強く意識する中で、日本海側の国防の要として、明治二十二年に鎮守府条例において舞鶴への鎮守府設置を決定し、一九〇一年、明治三十四年に舞鶴鎮守府が開庁され、一九〇三年、明治三十六年には海軍の艦船等を開発、建造する海軍直営の工場として舞鶴海軍工廠駆逐艦建造所が開設されました。  参考資料にも記載しておりますが、明治二十二年当時、枢密院議長であった伊藤博文が記した鎮守府配置の理由及び目的にも、国防上、舞鶴に日本海側の防衛拠点を置くことの重要性を述べられているところであります。  以来、舞鶴市は、今日まで、海上自衛隊舞鶴地方隊や日本海側唯一の海上自衛隊ヘリコプター基地が所在する日本海側の国防の重要拠点として海洋国家日本を守り、支え続けてまいりました。  こうした歴史的背景や地勢的優位性を踏まえ、現在、海上自衛隊舞鶴地方総監部と第八管区海上保安本部が共に所在する国内で唯一の自治体であり、日本海側の国防と海の安全の最重要拠点であるとともに、国防という崇高な使命を担う人材を育成する海上自衛隊舞鶴教育隊、また全国の海の安全を守る海上保安官、約一万四千人おられますが、その七割、約一万人の海上保安官がこの舞鶴にあります海上保安学校で勉強した若者であります。まさに、舞鶴市は我が国にとってなくてならない都市であるということを御理解いただければ幸いであります。  また、舞鶴海軍工廠に由来するジャパンマリンユナイテッド舞鶴事業所は、艦船を始め大型船を建造することのできる日本海側で唯一の造船所として長年にわたり国防、海の安全を支えるとともに、金属加工や塗装、運輸、電気、食品等といった幅広い市内関連企業を束ねる基幹産業として地域産業を牽引し続けていただいてきたところであります。  しかしながら、御承知のとおり、我が国造船業は戦後幾度となく不況、経営危機に見舞われてきたところであり、ジャパンマリンユナイテッド舞鶴事業所においても、戦後、艦船修理等の事業を継承した飯野産業、飯野重工業が昭和三十八年に日立造船の系列下に入り舞鶴重工業となり、昭和四十六年には日立造船と合併、さらに平成十四年には日立造船日本鋼管の船舶・海洋部門が統合しユニバーサル造船を設立、さらに平成二十五年には石川島播磨重工業と住友重機械工業の艦艇事業部門等の統合により設立されたアイ・エイチ・アイ・マリンユナイテッドと合併し、現在のジャパンマリンユナイテッドとなったものであります。このように合併を繰り返してきている状況であります。  そして、今般、今治造船との資本業務提携が進む中で、舞鶴事業所は艦船修理事業に特化されることが発表されたところであります。  こうした合併、統合等の動きは、ジャパンマリンユナイテッドに限ったものではなく、造船業界全体のものではありますが、合併、統合による対策だけでは国際競争に打ち勝つための抜本的な構造改革に至っていないと感じております。  本日、私からは、新たな戦略の検討が必要ではないかということを、海洋国家日本において重要な役割を担う自治体の首長として、我が国の未来の発展を願い、今造船業において何が起きているのか、それが我が国においてどのような影響を及ぼすのか、現地、現場でしか感じることができない実態を国全体に伝え、まさに国会議員の先生方に提案するものであります。  海洋国家日本における造船業の重要性でありますが、申すまでもなく、造船業我が国の近代化において極めて重要な役割を果たした産業であります。船を造る技術が機械工業や電子産業等を創出、発展させてきたところであり、造船業は現在の物づくり大国日本のルーツ、源流となる産業と言えるかと存じます。  現在の日本の貿易の九九・六%は海上輸送が占めております。国内貨物輸送の約四割、産業基礎物資では八割を海上輸送に頼っているところであり、海運産業を支える造船業は国民経済の基盤と言っても過言ではありません。  また、四方を海に囲まれた海洋国家日本において、海上輸送を支える商船建造はもとより、海上自衛隊の艦船や海上保安庁の巡視船を建造する造船業は、国防、海の安全の観点からも重要な産業であります。  加えて、造船業を基幹産業とする地域では、さきに述べましたとおり、歴史的経緯から地域造船所を中心とする関連産業の集中が根付いており、また、造船業を支えている物づくり中小企業が高い技術力を生かして新たな事業を展開しているところであり、造船業の衰退は地域産業全体に大きな影響を及ぼし、ひいては町全体の活力を奪うものであることを御理解いただきたく存じます。  日本造船業界は、海洋国家日本として、歴史的に国を守る艦船を建造する技術を継承し、それを商船部門にも発展させ、一九九〇年代までは世界市場においてトップシェアを誇ってきましたが、各造船所においては時代に合った設備投資が十分行われてこなかったこともあり、昨今、国策で支援を受ける中国韓国企業に商船部門のシェアを大きく奪われ、世界市場の競争で大苦戦していることは御承知のとおりであります。今朝の日本経済新聞で書いてありましたが、韓国造船三社、二兆円を受注との見出しで報道もされております。  また、自衛隊艦船の建造については、国の防衛費全体は増加しているものの、航空機や装備品の調達に係る予算比重が高くなる中で艦船建造等に関する予算は減少しており、各造船企業が安定的に艦船建造等を受注できない状況となっております。私は、四方を海に囲まれた我が国にとっての国防は、海と空を守る組合せが万全であってこそ機能するものであると考えておりまして、艦船建造力が低下するということは国防上においてもゆゆしき事態であると考えております。  こうした商船、艦船建造を取り巻く状況において、国内の各造船企業においては、企業経営の観点から設計部門や建造施設の集約などの合理化を進められておりますが、それらの動きが抜本的な解決に結び付かず、かえって国全体の造船技術力を低下させるのみならず、造船業が育てた優秀な技術人材が海外の方へ出ていく、そういった心配もしているところであります。  そのような中、さきにも少し触れましたが、昨年十一月には国内建造量首位の今治造船と二位のジャパンマリンユナイテッドが資本業務提携に合意し、本年二月に、これまで中型商船の新造と自衛隊艦船の修繕を行ってきたジャパンマリンユナイテッド舞鶴事業所について、日本造船業界の業績が悪化する状況の中で経営の効率化を図るため、商船事業から撤退し、艦船修繕事業に特化することが発表されました。  こうした造船企業の経営効率化の動きは全国各地で同様のことが起こっており、三菱重工業が長崎造船所香焼工場を大島造船に譲渡する、また、三井E&Sホールディングスが一千人規模のリストラ、配置転換を検討するなど、海洋国家日本においては国力を表すとも言える造船業界が今存続の危機に直面し、この先、自国で国防や安全保障に関わる自衛隊艦船や海上保安庁巡視船を建造できなくなる可能性もあるのではないかと危惧しているところであります。  ただいま申し上げましたこと、危機感というのは、国内全体にはなかなか伝わっていないということを思っております。日々、国防、海の安全に身命を賭して職務に従事されている海上自衛隊員や海上保安官に日々接し、また、造船所において建造、修繕されている艦船や商船を身近に見ているからこそ実感できる現実でありますが、今、我が国に間違いなく大きな危機的状況が発生しているということを御理解いただきたいと思いますし、国に対しては、未来の造船業のビジョンを早急に明示していただかねば海洋国家日本の国力は大きく損なわれるということを強く申し上げておきたいと思うのであります。  そこで、未来の造船業のビジョンについて、何点か提案を申し上げます。  一つは、国防、海の安全の機能強化であります。  日本の国防、海の安全を将来にわたって維持していくためには、自国で機密性の高い自衛隊艦船等を建造できる技術基盤の強化と技術人材の育成が重要であり、拠点となる造船所において定期的に自衛隊艦船等の新造、修繕を受注できるようにすることが必要であると考えております。  造船業に限らず何事においてもですが、一からつくり上げるプロセスを経て全体を理解することができるのであって、できてしまったものに手を加える、いわゆる修繕事業だけでは真の力は身に付かないというふうに思っております。このままでは、いずれ自国の力だけでは船を建造できない、物づくりを行えないといったことが起こるのではないかと危惧しているところであります。  そのためには、例えば、海上自衛隊、海上保安庁が所在するエリアにおいて、エリアごとに重要拠点造船所を指定し、また、新たな入札制度を導入することで、重要拠点造船所が安定的に新造、修繕の受注機会を得ることができるようにすることなど、国を守る産業を、それを支える技術人材を育成する観点から是非とも御検討いただきたく思います。  私は、合理化を否定しているわけではありません。経営の合理化という点では、海上コンテナ輸送を担う日本大手海運三社、日本郵船、商船三井、川崎汽船が、世界の強豪と競い合うためにノウハウを結集し、コンテナ船事業を統合して新会社オーシャンネットワークエクスプレス、通称ONEを設立した例もございます。統合により国際競争力を得られる、足し算、掛け算となる仕組みが必要でありますが、現在の造船業の再編の動きにつきましては、一足す一が二になっていないような印象を持っております。  そうした観点を持って、国防の要となる自衛艦の建造については、経営改善中の造船企業間を競争させるのではなく、アライアンス等により英知を結集した一つ企業体に受注させる仕組みづくり、また、市場として韓国中国は海外を対象にしておりますが、日本においても市場として海外も対象となる仕組みづくりの検討もお願いするものであります。  御承知のとおり、国際情勢は目まぐるしく変化し、殊に日本海側においては、北朝鮮によるミサイル発射事案や大和堆周辺海域での違法操業など、現実的な危機事象が頻回に発生している状況の中、海上自衛隊、海上保安庁の任務、果たす役割は更に大きくなっているところであります。そうした状況からも、自衛隊艦船、海上保安庁巡視船等の建造、修繕に高い技術力を持って現地、現場に近接するエリアにおいて迅速かつ効果的に対応できる環境を整えることは、国にとって最優先されるべき事案ではないでしょうか。日本海側で危機事象が発生し、艦船等の修繕が必要になった際に太平洋側において対応するといったことが現実的なものであるのか、こういったこと、百三十年前に伊藤博文公が指摘されたとおりではないでしょうか。  また、この機会に申し上げておきたいのですが、国防、海の安全を担う海上自衛隊員や、また海上保安官、現在、募集しても定員が埋まりません。十分集まりません。こういった職業に就く皆さんが家族とともに安心して暮らすためには、緊急の対応が必要な疾患、心臓疾患、脳疾患、未熟児などの周産期対応、また交通外傷、こういった血管に関するそういう治療や、そして高度な医療が必要とする、こういった医療体制が整うこと、また、充実した教育が受けられる都市機能を持つためには、どうしても二十万人規模の都市でなければなりません。そのような町づくりをしなければ、国を守る、海を守る自衛官、海上保安官に単身赴任になってくれと、今でも集まらないのに、そういった人たちの将来が、単身赴任になる、医療も受けれない、教育も十分受けれない、そういうようなところで働かすのかということを地元で強く感じているところであります。  舞鶴市と同様に、かつて海軍鎮守府が所在し、現在も海上防衛という重要な役割を担い続けている横須賀市、呉市、佐世保市、この舞鶴市を旧軍港四市と言うことは御存じかと思いますが、横須賀市は三十九万人、呉市は二十一万人、佐世保市は二十五万人と単独で二十万人以上の人口を有している中、舞鶴市の人口は現在約八万人でありまして、京都府北部圏域で三十万人都市を形成し連携することで人口規模の維持確保を図っているところであります。  国内において人口減少が進み、自衛隊員、海上保安官を志す人材の確保が年々厳しくなる中で、家族とともに安心して暮らすことができる充実した環境を提供することは一層重要になっております。そうした観点からも、基幹産業である造船業の安定は重要なものであることを認識していただきたく存じます。  また、先ほど申し上げましたとおり、日本海側において艦船を始め大型船を建造することのできる造船所は、唯一、舞鶴市しかありません。現在、日本の主要造船所は太平洋側に集中しており、近い将来に発生が予測される南海トラフ地震により太平洋側の造船所が被害を受けた場合、日本造船機能は間違いなく低下いたします。この国防、海の安全機能の強化のみならず、国土強靱化の観点においても、国として日本海側に強固な造船機能のリダンダンシーを確保することの重要性を申し添えておきたいと思います。  二つ目には、造船技術の継承と発展であります。  国防、海の安全を担う艦船の建造には、常時最新の高度な技術力が求められております。技術力、またそれを担う人材育成には、商船を始め、多種多様な船を国内において数多く建造していくことが必要と考えます。多様な船を建造することによって技術力は維持向上することはもとより、技術の転用、新産業の創出につながるものと考えます。  国内の造船企業の苦戦は、設備投資が遅れていることが一つの原因であるというふうに思っております。日本の将来の造船業の姿を見据え、国として造船企業の設備投資を促進するための財政支援、優遇税制の導入など、既成概念にとらわれない積極的な支援策を講じることが必要ではないでしょうか。  また、国家の公的支援を受けた中国韓国造船所の安価な船価提示等により日本海運企業造船発注も国外に流れており、国内造船企業受注割合はこの二十年間で二〇%減少、一九九五年は九六%、二〇一六年は七七%と、二〇%も国内造船事業所の受注割合は減っております。企業経営の観点から当然コストを重視することも一定理解できることではありますが、国内企業が国内の物づくり産業を弱体化させ、海外の物づくり産業を支えるような発注が果たして我が国の国益に資するものなのでしょうか。  日本造船業が有する高い技術力と優秀な人材を海外に流出させないためにも、国全体で国内造船業を発展させるために、国として日本海運企業の国内建造発注率を高める方策の検討も必要なのではないでしょうか。国内でしっかりと商船等を建造することで優秀な人材を育成し、高い造船技術が維持されるものと考えるところであります。  かつて昭和の造船不況において、造船企業は、高度な造船技術を生かしたメカトロ技術等によって新分野を開拓し、海中無人作業機械や原子力熱交換器、自衛隊の新型水中装備品の開発など、苦境を技術力で乗り越え、イノベーションを起こされました。造船業はもとより、物づくり大国日本の持続的発展可能性を高めるための鍵はここにあるのではないでしょうか。このままでは必要なものが必要なときに国内で製造できない、既にそうした事象を今回の新型コロナウイルス災害において実感する場面があったのではないでしょうか。そうした点も踏まえ、是非、国において、造船企業の新事業への進出、展開を積極的に後押しする方策を検討していただきたいと思います。  私が申し上げるのは僣越な部分であろうかと思いますけれども、中国韓国における造船企業への過大な公的支援に対し、これまでから我が国においては政府による対話やルール作りの働きかけが行われていることは十分理解しております。しかしながら、造船業界に改善の兆しが見えない中で、更に一歩踏み込んで、我が国造船業界が世界マーケットにおいて正常な競争力機能するよう、粘り強い外交対応をお願いする次第であります。  私は、平成二十三年に市長と就任して以来、ただいま申し上げましたとおり、舞鶴市が、長年にわたり国防、海の安全の拠点、またそれらを支える造船業を始めとする物づくりの拠点が所在すること、また、関西経済圏を支える電気を供給するエネルギーの拠点が所在すること、さらには、それらの拠点機能と、人工防波堤も要らない天然の良港で、千年に一度の津波想定にも耐え得る災害に強い京都舞鶴港を有し、太平洋側をバックアップする高いリダンダンシー機能を持ち合わせるという、国において極めて重要な自治体の首長であるということを強く認識し、また、舞鶴市が未来にわたってそのような責務を果たしていくためには何をすべきかを常に考え、市政の推進に取り組んでまいりました。  全てを申し上げることはかないませんが、舞鶴に住む自衛隊員とその家族が住みやすく働きやすい環境をつくることを目的に、自衛官の募集や緊急登庁時における留守家族支援、退職時の再就職支援という入口から出口までを総合的に支援する海上自衛隊舞鶴在籍部隊隊員とその家族に関する総合支援協定を締結し、また、海上保安学校へのバス路線の延伸など、国防、海の安全という崇高な使命を担う皆さんが働きやすい、学びやすい環境づくりといった取組や、国土交通省、京都府と連携した京都舞鶴港の機能強化やエネルギー拠点化に向けた施策の推進、また、都市としての機能、活力を維持するため、京都府北部五市二町の圏域があたかも一つの三十万人都市圏として機能するための水平連携を軸とした広域連携の取組の展開、強固な日本海側国土軸を形成するための重要拠点を結ぶ新幹線の誘致活動など、多様な連携を生かしながら取り組んできたところであります。  今、我々は、人口減少、新型コロナウイルス感染症という災害に直面するという、いまだかつて経験したことのない時代の中で、これまで以上に多様な連携を生かし、持続可能な社会をいかに構築していくかという命題を突き付けられています。  二〇〇二年にSARS感染症、二〇〇九年に新型インフルエンザ、二〇一二年にMERS感染症の発生が懸念され、そして今回、新型コロナウイルス感染症の怖さを体験することになりました。この二十年間で四回の感染症の危険を感じているところであります。  皆さん同様の思いを抱かれたと思いますが、今般の新型コロナウイルス感染症を経験し、現在の東京を始めとする大都市を中心とした三密の中で成り立っている社会活動、経済活動のシステムは、感染症災害に対して脆弱であることが明らかになりました。  これまで日本は海によって感染症から守られてきましたが、人、物が世界中とつながる時代にあって、こうした事象は常に身近にあり、新型コロナウイルス感染症と同様の事象が今後いつ起きても不思議ではない、今回の新型コロナウイルスをたとえ克服したとしても感染症災害はいずれ再び間違いなく訪れるという前提の下に、我々は、大都市と地方都市が連携、共生し、感染症に対応できる未来型の持続可能な国づくりを見直さねばならない重要な局面に立たされています。  そのためには、食料、物資、エネルギー等々を国内で生産する力、国内自給力を高めるための生産現場の国内回帰、そして、大都市と地方都市を結ぶ高速鉄道ネットワーク、強固な海上輸送ネットワークの確立が重要になると考えております。余りにも生産力の多くを国外に頼った結果、今回のような必要なものが国内に生産できない、調達できないといった事象を招かないようにしなければならないというふうに思っています。  そうしたことから、私は、海洋国家日本物づくり拠点、物流拠点を港を核に再整備し、大量輸送に適した海上輸送、鉄道輸送の強化を図るための港湾機能の整備、拠点都市と拠点都市を高速で結ぶ新幹線の整備促進を提案するものであります。  いろいろお話しさせていただきましたが、冒頭に触れましたとおり、我々は、百五十年前、欧米列強の猛威にさらされ、植民地化することもあり得る状況の中で、国を挙げて見事に近代化を果たし、世界に冠たる日本を築きました。いま一度、我々は、近代化を果たしたときと同様に、国を挙げてこの国難に立ち向かう覚悟と決意を持って、持続発展可能な海洋国家日本のオリジナルのシステムをつくり上げるべきと考えております。  ありがとうございます。
  9. 鶴保庸介

    会長鶴保庸介君) ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  本日の質疑はあらかじめ質疑者を定めずに行いたいと思います。  まず、大会派順に各会派一名ずつ指名し、その後は、会派にかかわらず御発言いただけるよう整理してまいりたいと存じます。  なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。  また、質疑者には、その都度答弁者を明示していただくとともに、できるだけ多くの委員発言の機会を得られますように、答弁を含めた時間がお一人十分以内となるように御協力をお願いをいたします。  質疑のある方は順次御発言願います。  中西健治君。
  10. 中西健治

    中西健治君 自由民主党の中西健治です。  三人の参考人方々、本日は本当にありがとうございました。大変参考になりました。  中手という言葉も知りませんでしたので、ましてや強手というのは初めて聞きました。そして、藤本参考人日本造船業はしぶといんだと、こうおっしゃっていただいた、このことはしっかり信じて、胸に刻んで信じていきたいと、こう思っているところでございます。  まず、上田参考人藤本参考人にお伺いしたいなと思うんですが、先ほど多々見市長も紹介されていましたけれども、カタールで韓国が百隻分LNG船を受注して今後七年間分もう工場が塞がるというようなことだということなんですが、こうしたことというのは、やっぱり公的資金が入っていて価格競争力が強いがゆえなのか、それとも、ほかにも要因があってこうした受注ができているのかというようなところをまずお伺いしたいんですが。  というのも、韓国といえば例えば原発の輸出を国を挙げて一生懸命やっていた時期もあって、李明博大統領が大統領だったときには、もう自分でどんどんどんどんセールスに行って原発を売り込んでいったと。日本も見習うべきだなんて、そんな声も当時はあったんですけれども、そうしたこととか、国を挙げての売り込み姿勢だとか、そうしたこともあるのか。それとも、もう性能というところで韓国が一歩先を行ってしまっているのか。そこら辺について上田参考人藤本参考人の御意見をお伺いしたいと思います。
  11. 上田孝

    参考人上田孝君) ありがとうございます。  今、今回のLNGの大量発注の話がございました。これ非常に、どういう言い方をするのが正しいのか、今先生のお話に出ている価格競争力だとかいう話の中でロット受注の話がありましたけれど、先ほど市長が設備投資の話もございましたけど、日本造船所が一番先にスタートして、その造船会社の規模とか、造船のヤードの規模だとかいうのがもう地方にある意味では点在しているわけですよね。だから、一つの工場でできるのは、先ほど先生の話もあったように、あるところで大きなことはやるけど、そのロットでしかできない。  ところが、新しくできた造船所韓国が特に大企業がなさっていますので、大企業で、いわゆる大きなヤードで、そこでもういわゆる連続建造という言い方、大量発注、受注をして、それを何年かにわたって同じ船を造り続けることができるというヤードを持っているんです。これはコストにも相当影響します、当然ながら。多分それが一つの大きな要因じゃないかと。  もちろんLNGを造る技術日本にもあるわけですが、どうしても発注側が何年間で何隻のような話になったときにやっぱりここを取りにいけるかどうかというのは、そのヤードの規模みたいなものがあるのではないかなという感じはいたします。  それ以外でも技術論だとか商売の仕方とか価格の問題をおっしゃって、価格競争力における何かというのも当然、当然あると思います。それは、バックにある何らかの政府補助があるために、それでコストが要するに抑えられるというんですか、それはあるんだろうと思いますが、何とも言えません。まあ一つ違う観点からいくと、そういうことだと思います。  ありがとうございます。
  12. 藤本隆宏

    参考人藤本隆宏君) ありがとうございます。  今のお話に尽きると思いますけれども、韓国、先ほどの絵でいうと三十五ページにこの絵を描きましたけど、もう既に韓国は、日本ばら積み船をやっている、強い、まあ強手ですね、ここと比べるともう上にいるわけであります。もう既に、彼らは随分前から、LNGタンカー、それからいわゆるドリルシップですね、あるいは海洋油田の構造物とか、こういうハイテクのところをもう既に取っちゃっているわけです。彼らはもう既に千人とかそれ以上の造船技術者がいます。  ですから、ある意味ではハイテクはもう既に取られていまして、そこを大手もやっていたんだけど、そこは完全に間を詰められて、大手が非常に苦戦しているわけですね。先ほど言いましたように、真ん中に隙間ができたので、そこを裏取って善戦しているのがこの中手か強手というこの形になります。  したがって、確かに中韓どちらも、何だかいろいろと保護しているなと、フェアじゃないなという感じはありますけれども、戦い方としては韓国に対しては攻めであります。もう既に取られていますから、そこを攻め取りに行くわけでありますから。中国に対しては、これは二〇%安いわけですから、ここは守ると、ばら積み船を守ると。だから、これ、この二つに対する考え方は戦略的には違うというふうに考えます。  韓国に関しては、もう既にここは強かったんですが、元々、いわゆる多分原油生産の要するに趨勢から見て、一時、こういった海洋関係も含めて、LNGタンカーも含めてこの辺が全部受注がほとんど壊滅状態になったと。それで、結局、韓国は三社残れなくて二社になっちゃったわけですね。だから、彼らもすごい苦しかったわけであります。そこを国が助けたということもありますけれども、恐らく市況が少し良くなってきて、いわゆる石油業界の状況が変わってきたということで彼らは強くなったというところがありますので。逆に言うと、そこは、復活してきたら日本はやっぱり取りに行かなきゃいけないと。これは攻めであります。だから、彼らに対して、ずるいことするなというのが一つありますけれども、それと同時に、やはりいわゆる企業の自助努力、それからいろんな形での支援ですね、これが必要だというふうに思っております。  中国に関してはまた別でありまして、これ二〇%安いというのは、どう見ても、これは韓国もそうですけれども、韓国は組合強いですので労賃では、いわゆる労働コストではもう余り負けていないと思います。中国も多分負けていないと思います。怖いのは多分、減価償却費みたいな、減価償却費というのははっきり言ってこれ政策的に操作できちゃいますので、半導体とかそういうところでもう起こっていますけどね、超加速償却みたいなとんでもないことをやって、本当は対等にやれているはずなのに何だかコストで負けているというような状況があるのではないかというふうにちょっと考えていますので、その辺はやはり総合的に見ていく必要があるというふうに思っております。
  13. 中西健治

    中西健治君 どうもありがとうございます。  次に、多々見市長にお伺いしたいと思います。  造船業並びに海上自衛隊、海上保安庁の重要性を強く受け止められ、舞鶴市政に粉骨砕身されておられることに敬意を表したいと思います。  安全保障に関わる自衛隊艦船や海上保安庁の巡視船をもう自前で造れなくなる可能性がある、こういう警鐘を鳴らしていらっしゃいましたけれども、まさにそのとおりじゃないかというふうに思います。今回、マスクの調達ということだけでもあれだけ不安視されたということでありますから、海上自衛隊の船が自前で造れない、部品の調達ができない、こんなことになったら、それこそもう国防上、安全保障上ゆゆしき問題であるというふうに思います。  幾つか提言をされていたかと思いますが、その中で、日本の船主、日本が買いたい船を日本造船会社から買う率が減っているという、こういうことがございまして、これは何とかならないかなというふうに思うところでありますが、これについて、多々見市長、更に強い思いがあれば開陳していただければというふうに思います。
  14. 多々見良三

    参考人(多々見良三君) やはり造船業は海洋国家の要の産業ですので、そういった中で、中国韓国が台頭してきた裏には国の支援があると。国営の企業と民間企業とを戦わせたら価格では絶対負けてしまうということがあって、日本の船会社は日本の会社から注文を受けたいんだけれども、価格で負けてしまって日本の会社が外国の船を買うということは実際起こっていると思います。そういったことがどれぐらいの価格の差で外国へ流れてしまうのかも含めて、やはり日本の国の企業を育てるということも重要だと思っています。我々も地元の工事についても、地元の事業者に、少々の価格差であれば地元の業者に仕事をしてほしいという思いを持っています。似たようなことは国もすべきじゃないかというのが私の意見です。
  15. 中西健治

    中西健治君 どうもありがとうございました。大変よく分かりました。  では、私の質問はこの辺で終わります。ありがとうございました。
  16. 鶴保庸介

    会長鶴保庸介君) 石川大我君。
  17. 石川大我

    ○石川大我君 立憲・国民.新緑風会・社民の石川大我でございます。  お三方の参考人皆様には大変貴重な時間を頂戴をいたしまして、貴重な御意見をいただきまして、誠にありがとうございます。  お時間が十分ということで大変短うございますので、お一方三分ほど、一、二問やり取りをさせていただければというふうに思います。  まず初めに、藤本参考人にお伺いをしたいんですけれども。  先生は先ほども現場が大好きということで大切にしていらっしゃるということで、まさにその現場のおやじさんが生産性を上げながら有効需要をつくるといった政府がやるべき仕事をやっていると、これによって日本がもっているんだというようなお話があるかと思うんですが、つまり現場の力が縁の下で日本を支えているんだというふうに解説をされておりました。  一方で、先生は、単純な生産では日本は勝てないと、ややこしいもの、複雑なもので勝負すべきともおっしゃっています。ややこしいもの、複雑なもので勝負するためには、例えば職人さんであるだとか、料理人とか漁師さんとか、現場で働く人たちがもっと大切にされる、技術を得るための例えば教育が保障されるですとか、もっとありていに言えば、技術を持っている人が安心して暮らせる、そういった社会にしていく必要があるとも思いますが、そういったことに対して必要なこと、現場を鍛えるといったようなお話もありましたが、御所見をいただければと思います。
  18. 藤本隆宏

    参考人藤本隆宏君) ありがとうございます。私のいつも考えていることのエッセンスのところを言っていただきまして、ありがとうございます。  やはり生産性を上げていかないと。産業競争はハンディ戦であります、ハンディが付いています。つまり、賃金差ですね。これが昔は二十倍あったわけです、日本が二十万円、中国が一万円。この二十倍のハンディをしょって三十年間のたうち回ってきたのが日本産業でありますけれども、その中で、もちろん随分なくなってしまった産業もあるんですけれども、残っているところは逆に言うとつわものですよね。そこに造船も入っているわけであります。  ですから、こういうところを見ても、先ほどのC社の話にもありましたけれども、日本の特に地場の企業というのは本当に、例えば二百人の工場があったとする、二万人の会社。そこで、生産性を上げて何とか生き残った。その結果として百五十人で済んじゃう。じゃ、五十人首切りますかといったら、首切りませんね、絶対。ほぼ絶対切りません。そんなことしたら私あしたから表通り歩けませんからみたいな話になるわけ。これが日本です。そのために、この五十人分の仕事を取ってくるんですね、社長走り回って取ってくると。これを、造船でも私見ましたし、ほかのところでも見ました。  だから、この考え方は非常に重要、これ実は三方よしなんですけれども、これがなければ従業員は生産性向上に協力しません。当たり前ですよね。いや、百五十人で済んで、おかげで我々生き残った、ありがとう、ところで君たち五十人首ねなんてやったら、次、誰が付いてくるかという話になります。これ、付いてきているということは、これをちゃんとやっている会社がまだ多いということで、これ、実は日本企業の隠れた強みであります。  これ、例えば、どういうところにマクロで現れるかというと、リーマン・ショックの後、二〇〇九年の失業率、もちろんこれは雇用調整助成金などの政府の施策もあってのことではありますけど、あれだけじゃ説明できないと思うんですね。つまり、アメリカが一〇%ぐらい行きましたか、ヨーロッパは二〇%近く行きましたね。日本はあのとき五・五%。現在、アメリカが今一五%とか行って、日本は、これからもちろん悪化しますけれども、今はまだ三%ぐらいですか。これは、もちろんそういった政策的なこともありますけど、やっぱり日本企業がとにかく雇用を守るんだという意思を特に地場の中小・中堅企業持っておられるから、これがこうなっているんだと思うんですね。  ですから、この力を要するにイノベーションに、つまり、何とかお客さんも満足させる、そして地域も満足させる、そして利益も出すと、この三方よしをやっていくんだという、これをやっていくと、いわゆるイノベーションの力が湧いてくるんですね、自然に。こういうある種の草の根のイノベーションですね。大きいやつはお国の支援でどんどんやるべきですけれども、実は見えないところでやられている小さなイノベーション、これで日本は、これだけひどい目に遭ったのにこのぐらいで済んでいるという言い方でしょうかね、勝ったと言うには程遠いけれども実はこの三十年間で負けていないのが日本の製造業ですので、そこは非常に評価してあげるべきじゃないかというふうに思っております。  コロナもそうですね。これ、余り言われていませんけど、よく考えますと、世界中で動いている工場はどこにあるのかって、日本ですよ。最後まで動いている工場は日本。最初に動き始める工場も日本。恐らく、六月になって海外動き始めますけれども、動き始めた途端にまた感染で止まる工場がいっぱい出てくると思います。でも、やっぱり動いている工場は日本というふうになるんじゃないかなと私は思っています。  ちょっと少し強気な言い方になりますけれども、今度のコロナによって改めて日本の工場のある種の感染防止力プラス競争力、これが少し見直されてきているんじゃないかなというふうに思っていまして、造船所も当たり前に動いていますけれども、これ、実はそんなに当たり前のことじゃないというふうに思っております。上田さんの工場もちゃんと動いておられると思うんですけどね、というふうに思っています。  失礼しました。
  19. 石川大我

    ○石川大我君 ありがとうございます。  続きまして、上田参考人にお伺いをしたいと思います。  コロナというお話、先ほど皆様から出ていますけれども、コロナ後の海運市況、造船市況、どのように分析をされているか、お聞かせください。  リーマン・ショックのときは、造船市場は減少する一方、海上荷動き量は拡大をしてきましたけれども、コロナ後にあっても同じような動きが予想されるのかとか、世界的な物流量は今後も拡大するというふうにお考えになっていらっしゃるかということ、そしてまた、あわせて、コロナウイルス感染症の影響により、造船分野における外国人材、これ技能実習生もそうだと思いますが、不足していく懸念がないのかについてお聞かせください。
  20. 上田孝

    参考人上田孝君) ありがとうございます。  今回のコロナ禍の影響がどうなるかというのは、正直申し上げて全く分からないんです。それは世界経済がある意味で鎖国を起こしているわけですから、海上物流なんという貿易そのものを否定されているかもしれないわけですから、全く分かりません。  だけど、我々業界にいる人間からすると、その分からないなりにいろんな話をしているんですけれど、現実リモートワークとかやっていても、やっぱりこの商売というのはなかなかそういうことでうまくいかないですから、本当に先行きどうなるんだろうというのは、我々造船会社も、船主さんも、オペレーターも、みんなが不安に思っている状況です。  何とかここを少し展望を持って前へ進まないかぬなという状況でありまして、リーマン・ショックのときとは違うなと。リーマン・ショックのときは、実はあの瞬間に、先ほどブームが来たと言いました。四、五年分の受注持っていましたから、どうぞ二、三年はこのままで結構ですよと、造船会社からすれば。高い船を受注を取りまして、考えられないけど、多分各社とも二〇%ぐらいの利益が上がるような高い船だったんです。それで、二、三年、三、四年は全然平気だったんです。今回は全くそうじゃなくて、元々採算の悪い、場合によっては赤字の船を、さっき申し上げた一・二年分程度しか持っていないという状況で次が開けないという、こういう苦しさでございます。  それから、外国人の問題ですが、先ほど来、藤本先生から生産性議論がたくさん出ています。これ一言申し上げると、私ら造船をやっていまして、非常にこだわりのある地方雇用といいますけれど、実は現場のワーカーの問題にとっては、これは3K職場そのものであります。本当にしんどい、そのしんどい職場に働いてくれる人に夢を持たせる必要があると。その夢を持たせながらやるんだけど、数が減っております。すなわち、子供が減っているわけです。私どもの水島の岡山県だと二百万ぐらいの人口が、多分百八十万、百七十万に、子供が減っていくわけです。ということは、3K職場に入ってくる人がいない、これをどうしたらいいんだろうというのが一つのテーマです。  そして、それによって外国人の実習生始め外国人労働力を大量に採用しているわけですね、各社。しかし、これが安定的な労働力になるかどうかは、今回のコロナ禍を見て、ややこれにも不安がある。ですから、技術力というか現場を支えている現場力を、本当に黙々と、3Kであろうが、暑い夏に、みんなここに水を持ち、塩を持ち、それで働いている彼らがこの船造りに夢を持てるかどうかなんです。彼らの話は、もちろんお金が高ければ、給料が高ければ夢があるというふうに思うかもしれないけど、そうじゃないんです。先ほど来出ている海洋国家日本に、我々はそこで役に立つ仕事をしているんだという夢を持つことで、初めてその3K職場でも一生懸命やってくれるという、それを大事にしたいと思います。  少し御質問ずれたと思いますけど、以上でございます。ありがとうございます。
  21. 石川大我

    ○石川大我君 ありがとうございます。  大分時間がちょっと迫ってまいりましたので、端的に多々見参考人にお伺いをしたいと思うんですけれども、国への要望というところで、未来のビジョンを示せということで幾つかビジョンを、アイデアをいただいたと思いますが、その中で新規事業への後押しというようなお話をされたんですが、その辺りの新規事業というところ、少し御説明をいただければと思います。
  22. 多々見良三

    参考人(多々見良三君) 造船業が持っているノウハウというのが生かされる事業というのは一つ重要だと思っていますけれども、私が知り得ている情報の中では、海洋風力発電ということについての参入の機会があるように聞いています。まさに造船業が培ってきた鉄をいろいろ加工したりくっつけたり、そういう能力からすると、海洋風力発電が今後原発に取って代わるようなそういうエネルギーということを経済産業省等が認定していただければ、これは海に関わることですので、国交省の港湾局、そういった辺りが関与しますので、そういったことが必要と判断され、できるだけ早くそういった方向性を示していただきたいなと思っています。
  23. 石川大我

    ○石川大我君 ありがとうございます。  お時間になりましたので終わりたいと思います。ありがとうございました。
  24. 鶴保庸介

    会長鶴保庸介君) 秋野公造君。
  25. 秋野公造

    ○秋野公造君 公明党の秋野公造です。  今日は三人の先生方、本当にありがとうございました。  まず、藤本先生にお伺いをしたいと思います。  上田先生が御説明をされた省エネの船、それから自動運航の船、これはアーキテクチャーの位置付けではどこに位置することになるとお考えになりますか。ローテクで高難度であればいいなと思いながら、まず先生にお伺いしたいと思います。
  26. 藤本隆宏

    参考人藤本隆宏君) これ結構難しいところでありますけれども、まず船そのものが航路、例えば海事システムがあるわけですけれども、海運業から見て、ある航路に最適の船を造ってくれというような話になるのか、あるいはとにかく安けりゃいいよという話になるのかで話全然変わってくると思うんですけれども。  もし標準船でいいやという話になれば、これは標準船として最高のレベルのものを造って世界に数で出していくと。言ってみればインテルとかシマノとかこういう会社、他業種でいえばやっていることでありますけれども、このような標準船を、最高の標準船を造ってそれを世界中に出していく。実は先ほどのA社の船はそういう船なんですけど、こういうスーパーカブ的なやり方が一つありますけれども。  私は、もう一つあるのは、やはりその海事システム全体、つまり海運システム全体を最適化していくと、最適化することで省エネを全体で達成していくんだと。こう考えたときには、ひょっとしたら、やはりその航路航路でやはりそれぞれかなりカスタム化した最適設計船みたいなものが必要になってくるかもしれない。これになってきますと、かなりこれは簡単じゃないですね、なかなか。設計も難しいし、もちろん技術的にもこれは最先端であります。だから、技術的な最先端の部分はやっぱり大手から力をいただいて、設計思想的なところはこれはやはり商売上手な中手さんに力がありますから、この連係プレーでやっていけば勝てる部分が出てくると思う。  今、だから海運でちょっと日本の比率が下がっているとありましたですね。あれは、だからちょっとそっちの方に、寄せ集めの方にちょっとやっぱりどうしても誘惑があるんですね。そっちへ行っちゃいそうな感じがあるんですけど、ここはよく考えていただいて、つまり、中韓は確かに政府が支援するという形ですけど、日本は、じゃ、日本も同じように保護すりゃいいという話じゃないと思うんですね。日本は、むしろやっぱり正攻法で勝負すると。  つまり、この海運そのものを最適化していくことによって、世界に対して日本海運は、海運としてその省エネ、SDGに対して貢献ができているというところを示すことによって、じゃ、そのための船はどういう船ですかというふうに来たときに、それはやっぱりカスタム船であり、なおかつ性能が高いというものであると。  そうなりますと、ある部分は実は船の中をモジュール化しなきゃいけないかもしれない。だから、先ほどの絵でいうと、左下の、中モジュラー、外インテグラルという、あそこに活路があるかもしれません。実際そういう船を造っている会社がありますね。ですから、いろんなパターンがあります、そのパターンによって融通無碍にこのアーキテクチャー戦略をきっちりと決めて、その戦略ごとに戦い方違いますから、その正しい戦い方で戦えば十分にやっていけるというふうに私は思います。  済みません、私はどっちかというと強気な話ばっかりで申し訳ないですけれども、弱気が多いので、少し、そのように思っております。  以上です。
  27. 秋野公造

    ○秋野公造君 勝機があると受け止めました。  じゃ、上田先生にお伺いしたいと思います。  私、先ほど先生が大きなヤードがあることの話はすごくちょっと刺さったものがありますが、我が国に、例えば韓国中国に勝つぐらいのこういった大きなヤードみたいなものが必要だとお考えなのかというのがまず一点です。  それから二点目は、好不況の波が激しいということでありますが、人材育成がどうあるべきか、隙間を目指すということであれば一定した人材育成というのは難しいんじゃないかと、そう思ったわけでありますけれども、上田先生の考える人材育成について教えていただきたいと思います。
  28. 上田孝

    参考人上田孝君) ありがとうございます。  大きなヤードの必要性、必要があっても日本では無理だというのが結論だと思います。  もう今から数台、大きなヤードをどこかで掘るんですかと、設備投資をして。そういう場所もなければ、無理です。ですから、日本モデルというのは多分、ヤードの規模はちっちゃいけれど、それを全体を統合する中で上手に船種を変えながら物を造っていくというやり方があるので、やっぱり日本の持っている財をうまく有効活用していく方が正しいのではないかというような感じがいたします。ですから、大きなヤードを今どこかでやるというのは現実的じゃないという感じがいたします。  それから、好不況の波によって人材育成が難しい。まさに、まず育成が難しいんですが、人材確保が難しいです、現在。これはメーカー全体に言えるかもしれないけど、物づくり人口って今せいぜい一千万弱で、なかなか物づくり等、製造業には新規参入は来ないんですね。  おまけに、現場でいったら3K職場です。3K職場と言い切って、僕は我が社の人間に、よく3K職場でやるねという。これを僕は日本一つの財産だと思いまして、その部分を何とか生かしていくというようなことで、さっき人材育成というのは何か教育をする、親方から何か教えてもらうというやり方があるんですが、実は戦後支えてきたそういうワーカーの親分のような作業長、もう全部リタイアしたんですよ。そうすると、もうリタイアしていっているから、そういうノウハウが残っていないヤードが多くなっています。  それで、若い人たちは今はもう平気にスマホ、パソコンからスマホに変わり、親方の背中を見て学ぶなんというそういう姿勢は無理です。だから、新しい教育、仕組みが必要だと思うし、多分、各会社はそういうことを現実に即していろんな工夫をされていると思うし、サノヤスだってそれをやっています。  だから、人材育成は難しいんですが、これは造船だけじゃなくていろんな業界に言えることだし、それは新しい知恵を使うことが必要じゃないか。ただ、マンパワーの総量が足りないということは可能性が出てきたので、外国人労働力を使う必要がある、そうすると言葉の問題を始めいろんなことが付随して起こってきます。  そんなことで、人を大事にしなきゃいかぬという造船所、これは造船に限りません、各産業共通です。先ほど来出ている、技術と言いますけれども、私は文系ですから、技術屋さんが技術技術とおっしゃいますと、いや、技術の担い手は人材ですといつも切り返すんです。人が大事だという姿勢はやっぱり日本の最大限の財産ではないかと、我々企業にとってもそういう観点で私は経営しております。造船工業会としてもそういう姿勢でおります。  ありがとうございます。
  29. 秋野公造

    ○秋野公造君 ありがとうございました。  多々見先生にお伺いしたいと思います。  国策に御協力をいただいておりまして私の立場で感謝申し上げたいと思いますけれども、圏域を確保するための御苦労などについてもちょっと披露して共有していただければ有り難いということと、舞鶴に造船所があるということ、これが舞鶴にあることで造船所としてもメリットがある、つまり、例えば自衛隊であったり海上保安庁であったりそういうところと一体的であるということがメリットとしてお感じになっているか、このことについてお伺いしたいと思います。
  30. 多々見良三

    参考人(多々見良三君) 先ほどお話ししましたように、百二十年の歴史がありまして、舞鶴市民は、いわゆる海軍工廠の時代、鎮守府の時代、全て知っています。こういった中で、海を舞台に働く人たちのそういう姿をよく知っていまして尊敬していますし、また、造船所に働く方についてもよく知っていますので、小さい町ですけれども人を大事にするということがすごく定着しているところでありまして、加えて、やはり自分の町だけよければよいというんじゃなくて、やっぱり関西のために役に立っている、日本のために役に立っているというその高い目標が、モチベーションが上がりますので、まさに、誇りに思うこと、そしてみんながそれを尊重すること、敬うこと、こういったことが重要な、そういう要素を持っている町だと思っています。
  31. 秋野公造

    ○秋野公造君 造船所がその場にあるということについてはいかがでしょうか。
  32. 多々見良三

    参考人(多々見良三君) いわゆる関連事業者がすごく裾野が広い状況でありまして、今回、商船の新造をやめるといった場合に、造船全体の約七割がもう減少するということが起こります。ジャパンマリンユナイテッドの社員そのものの七割がいわゆる違う仕事を探さなければいけない、さらには下請も入れますともっと増えますので、いかにこの百二十年間で造船所単体で仕事しているんじゃなくて地域の中小企業も支えてきたということがよく分かりますので、やはり、失うことの打撃、すごく地域に与えるダメージは大きいということで、やはり、国を支えて頑張ってきたのに突然こういう変化が起こるということについては非常に疑問に思ったり、何でこんなこと、もっと早めに分からなかったのかという辺りも思っているところです。
  33. 秋野公造

    ○秋野公造君 終わります。ありがとうございました。
  34. 鶴保庸介

  35. 柳ヶ瀬裕文

    柳ヶ瀬裕文君 日本維新の会の柳ヶ瀬裕文です。  三名の方、本当に貴重なお話をありがとうございました。  まず、藤本参考人にお伺いしていきたいと思うんですけれども、物づくり現場力を鍛えて設計立国を目指せという御提言いただきました。ありがとうございます。  この現場力、物づくり力なんですけれども、私、ここがかなり日本は傷んできたなというふうな認識を持っておりまして、私、東京の大田区の出身なんですが、この大田区はまさにこの物づくりの聖地ということを誇ってきた。大阪だと東大阪がございます、町工場がですね。私の家の周りも町工場だらけでありまして、昔は設計図を紙飛行機で飛ばすと商品ができ上がるみたいな、そういった集積ですね、集積の強みというのもありました。また、へら絞り加工というオンリーワンの技術を持っている企業もありました。  ただ、この十五年見てまいりまして、そういったオンリーワンの企業もどんどん潰れていったし、またその集積もどんどん歯抜けになっていって、工場があったところは住宅地になって、その集積も失われつつあるというような現状があると思います。  そういった中で、今のその物づくり現場をどのように評価されているのか、その課題、そしてそれに向けてどういった対策が今必要だというふうにお考えなのか、この点についてお聞かせいただければと思います。
  36. 藤本隆宏

    参考人藤本隆宏君) ありがとうございます。  本質的なところだと思います。私の親戚も品川で部品削ったりやっております。非常にその辺よく分かります。  実際、大田区でも中小企業の数は恐らく半分以下に減っていますね。墨田区でも恐らく半分以下に減っているということは、これはあります。実際、この三十年間で日本の製造企業の数は恐らく半分ぐらいに減っちゃっていると思います。だから、そこはまあ厳しい部分ですね。ただ、これは競争ですからある程度仕方がないところもあるし、この低成長下ではある程度仕方がなかった。  逆に言うと、一社一社生き残った企業は大きくなっているわけであります。なぜならば、この三十年間、これ統計見ていただければ分かりますけど、大体、百十、百兆円ちょっとぐらいの付加価値でずっと来ている。だから、先ほど言った、なぜ負けなかったというのはそういうことでありまして、今でも百十兆円、つまり日本のGDPの二〇%以上がまだ製造業。製造業が二〇%以上ある国は、恐らくG7では日本とドイツだけです。だから、先ほど言った負けなかったというのはここなんですね。ですから、結果として数は確かに半分になってしまったんだけれども、残った企業はかなり強くなっていると。  それから、企業が減ったから現場が減ったかというと、これ実は、確かに大田区の蒲田の周辺からは減っているんだけれども、結構外へ出ているんですよね、うちの親戚もそうですけど、結構外へ出て作っていますので、日本全体で見ると現場が思ったほど減っていないということはあると思います。  それぞれが、先ほど言いましたように、この物すごいハンディをしょって三十年やってきましたので、実はいろんな意味で強くはなっているわけであります。ですから、私は、確かにおっしゃるように、昔と違うなという厳しい部分もあるんです。決してのうてんきなことを言うつもりないんですけれども。ただ、負けている負けているという感じじゃないと。少なくとも三十年、これ、この二十倍の賃金ハンディをしょって戦ってきて負けなかったということは、これは実はすごいことじゃないかなというふうに思っておりまして、この力を生かしてやっていけばまだまだチャンスはある。  ただ、そこはやっぱり商売改善と物づくり改善を同時にやらないと、物づくり改善だけではいかんともし難いということではないかというふうに思っております。
  37. 柳ヶ瀬裕文

    柳ヶ瀬裕文君 ありがとうございます。  零細企業で、それぞれの技術は持っているんだけれども、それがなかなか統合されていかないで、先ほどのアーキテクトの話もありましたけれども、そういった設計者の発想というか、それが何かうまく生かされて、個々の持っている技術がきちんと統合されて商品化であったりイノベーションにつながっていけばいいなというふうに思っているんですが、なかなかそうなっていかないという現状があるなというふうに思うんですが。  今のそのアーキテクチャーが必要だという話なんですが、そこをもうちょっと高めるためには何が必要だというふうにお考えなんでしょうか。
  38. 藤本隆宏

    参考人藤本隆宏君) 各社が、やはり標準意識ですね、小さなところでもいいから、その自分標準を持って、自分標準でこれでよろしくと言って、お客さんがそれを分かったというふうに言ってもらえる商品が、今、日本が強い商品は全部これでありますね。ですから、言われるとおりに、もうお客さんの言うとおりにやりますとやっちゃうと、なかなか勝てないわけですね。  ですから、そこの、どんな小さなところでも自分なりの標準をつくる、そしてその標準づくりに関しては、大きな会社も小さな会社もですけれども、これは呉越同舟でやっていくところだと思います。今、自動車産業はいろいろやっていますけれども、恐らく設計標準に関してはもうトヨタも日産もないと、完全に連合でいくという形に今なりつつあると思います。そういった設計標準ですね、ここをまず見ていくということが一つと。  それからもう一つは、やはり流れであります。中小企業にサポイン等々やっていますけれども、残念ながら、箱を買ったら幾ら付けるというのが多いんですね。箱に補助、これは、これやっていますと先端技術の離れ小島がいっぱいできて、残念ながらそういうのいっぱい見ますね。できれば、付加価値の流れができたら補助という、産業流れでありますから、流れに補助という形に転換してもらえるといいかなというふうに思っております。  だから、流れに関する補助と、それから今言った標準ですね、標準化に関する、これはどっちかというとオールジャパンでやっていくと。これは決して独禁法に引っかかりませんから、その前の非競争領域でありますから。この二つじゃないかなと思っております。
  39. 柳ヶ瀬裕文

    柳ヶ瀬裕文君 ありがとうございます。  ちょっと時間があれなんですけれども、上田参考人にお伺いしたいと思うんですが、官公庁の、官公庁船の発注というお話がございました。今の造船日本造船業の中で、これ日本の官公庁船の発注が今どれぐらいのインパクトを占めていて、その意義はどれぐらいなのかということですね、これについてお話しいただければと思うんですが、いかがでしょうか。
  40. 上田孝

    参考人上田孝君) 造船工業会の副会長をしておりますが、この官公庁船になった瞬間に実は大手さんの仕事になりますので、多分データを含めて定かじゃないです。ただ、私どものヤードでも保安庁さんなんかの巡視船なんかの修繕やったりしていまして、一定のボリュームがあるので大手さんの中では相当大きなウエートを占めておられるのは間違いないです、それは。ただ、我々の、さっき出ている中手というグループには一切ございません、その数字が。全くそれはございません。ちょっと済みません、これについて。  ちょっと先ほどの話で、いいですか、先ほどの話、中小企業の話ございましたね。中小企業って本当に二代目、三代目社長が、おやじの後を継いだ人たちがもうやる気がなくなっちゃうんですよ、個人保証入れてうまくいかないというので。だから、中小企業は僕はやっぱり駄目になっていくんだろうと思うんです、日本の国で。これを何とかしなきゃいかぬなというのは確かにそのとおりであって、僕はこれは一つのある意味での大企業役割だと思っています。  私どもの会社ですと、例えば、皆さん、先生方御存じないでしょうけれど、私どもサノヤスというのは実はお台場の観覧車、うち製品なんです。お台場の観覧車はサノヤスが造り、サノヤスが運営しています、所有して。あれは造船工業のいわゆる構造力学だとか、いわゆる溶接の技術だとか、そういうものが丸々使えるようです。ああいうことをやることで、実はあれはちっちゃなオーナー会社が、もうこういう観覧車造りはやってももうからぬし、しんどいからやめちゃったんです。それを三十年前にサノヤスが買収したというようなことで、実は中小企業といいますけれど、技術を持っている、あるいは商圏を持っている会社があれば、それを何かうまく、大企業グループが何かそれを活性化する方法があるんではないかなという感じがいたします。済みません、これは私へじゃないんですが。  以上です。
  41. 柳ヶ瀬裕文

    柳ヶ瀬裕文君 ありがとうございます。貴重なお話ありがとうございました。  最後に、多々見市長にお伺いしたいんですけれども、JMUの撤退ということで非常に厳しい状況にあるということなんですけれども、この中で、先ほどもちょっとおっしゃっていたと思うんですけれども、この撤退が与える地域経済に対するインパクトをもうちょっと教えていただければというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
  42. 多々見良三

    参考人(多々見良三君) 今年の二月に発表がありましたので、今、船は一年ちょっと製造していますので、最初設計部門から仕事が終わって、その終わった人たちが次の職場を探す、徐々に行って、三百人ほどが対象ですけれども、まだ退社は五十人ぐらいが現時点です。先々、どんなふうな職場を希望されるかは、この後、仕事が終わった職員がどう考えるかというので個々に話が進んでいくんですけれども、今の段階では三百名のうちの八割が地元に残りたいと言っています。でも、その八割となりますと二百四十人の雇用の場、また関連の企業も、JMU本体じゃなくて関連の企業の下請もいろいろありますので、かなりの人たちが職場転換を迫られるということにおいて非常に大きなダメージです。  できるだけ地元に残りたい人にはしっかりと残っていただくように頑張りますけれども、全員の仕事をなかなか現時点であっせんできるというのは難しいんですが、そういった中で、そのJMUの舞鶴工場の七割が、工場が空き地になります。商船の心臓部分がなくなる、七割が空き地になる。まさにこれ百二十年前に造った一等地です。岸壁がきれいにあって、本当に町のど真ん中にあるところですので、まさに企業の国内回帰、今回の件で、日本の国内に置いておくべき、そういった国に関わるような仕事を是非そちらの方入れてもらえば引き続き国のためにしっかり働けるということで。このままでは本当に大きなダメージで、働いている人たちは何も罪はないといいますか、頑張ってきたのに、いきなり会社の方針がそうなったんだという、このことについて地元の首長として非常に心苦しく、かわいそうで、何とか彼らの次の仕事を何としてでも探してあげたいと思っているところでして、本当にダメージが大きい。今まで国のためにこれだけ頑張ってきたのに、いきなりこうなるというのは何なんだという辺りは強く思っているところです。
  43. 柳ヶ瀬裕文

    柳ヶ瀬裕文君 ありがとうございました。
  44. 鶴保庸介

    会長鶴保庸介君) それでは、伊藤岳君。
  45. 伊藤岳

    ○伊藤岳君 日本共産党の伊藤岳です。  参考人のお三方、本日は、お忙しい中、御意見を聞かせていただきまして、ありがとうございます。  まず、多々見市長に伺います。  市長の先ほどのお話とはちょっとずれるかもしれませんが、先ほど住民を守り抜くという市長の決意を伺いました。今般の新型コロナウイルスの感染症対策では、海を通じて人や物の移動の中でいかに感染を防ぐかも重要な課題として浮かび上がってきたと思います。例えば、舞鶴の近くには大阪検疫所の出張所もありますが、新型コロナウイルス感染症を水際で防止して、造船に関わる人々の命、また住民の命を守るという点で、検疫体制の強化ですとか港湾BCPですとか、どんな対策が求められていると今お感じになっているか、御意見を伺えればと思います。
  46. 多々見良三

    参考人(多々見良三君) クルーズ船が年に三十隻ほど来ますので、そういう意味では、物の出入り、コンテナ貨物も入ってきますので、大阪検疫所の舞鶴出張所で対応してもらっています。  現在、コロナによる影響はどうかということですけど、北部地域、我々の住んでいる北部地域はほとんど感染者がいません。舞鶴市も感染者いまだにゼロです。そういった意味では、いろんな、各地でコロナの影響が出ているのは現実で、対応を迫られているということはよく承知していますけれども、地域によってばらつきがあるので、他の地域で非常に、横浜などの、ダイヤモンド・プリンセスが来た、ああいうところでの対応が一つ参考となって、将来何か起こったときこういう体制でいくぞという、そういう準備をしておくということが必要だと思っております。  現在のところは船が入ってきませんので、人が乗っているのは、そういった意味では具体的な対応はまだ迫られていませんけれども、いずれそういうシステムはきちっと、起こったときにはこうすると。基本的に、災害等は一度起こらないと、起こる前にきちっと対応できているというのは基本ないのが現実です。一度起こって痛い目に遭って、その次、今度のときは絶対に防ぐぞという、これが災害対応ですので、そういった意味では、他の地域での教訓を舞鶴の方の港でも生かしてもらえるような、そういう体制づくりをしていただきたいと思っています。
  47. 伊藤岳

    ○伊藤岳君 事が起きたときの対策、御一緒に考えていければと思っております。  次に、藤本参考人に伺います。  今回、コロナ禍で、例えばマスクの輸入がストップするなど、人件費が安い海外に生産拠点を移して、海外に頼ったばかりというリスクもあらわになったと思います。先ほどお話あったように、造船業の場合は生産は国内がほとんど。つまり、生産が国内で行われればドックの周りに部品を作る関連会社ができたり、そこで働く人々が増えてくれば、その人々の胃袋を支える飲食業ですとか、クリーニング、理髪、商店などができてくるということになると思いますが、もしまた感染症が海外で蔓延しても、商品も国内で作っているから修理や生産がストップしないで済むということにもなると思います。  こうした国内生産がほとんどという造船業のメリット、造船業を国内で行ってきて感じるメリットというのをお聞かせいただければと思いますが。
  48. 藤本隆宏

    参考人藤本隆宏君) やはり、日本は八〇年代ぐらいまでワンセット主義で何でも日本で作るというやり方でやってきたので、その後、九〇年代から賃金二十分の一の中国が出てきて一気に持っていかれたわけですけれども、ただ、作っていた記憶が残っているというか、設計情報日本にまだ残っています。ですから、やろうと思えばやっぱり国内代替生産ができる能力日本はまだいろんなもので強いと思うんですね。ですから、そこはまず生かしていく、つまり国内代替生産能力をいざというときに持てるようにしておくということが大事なんですが。  ただ、この際もう全部日本に戻しちゃおうという考え方がありますが、僕はそれには余り賛成しておりません。それは貿易の否定でありまして、要するに、平時においては、やはり自然体で、競争力ファーストで物を作ると。その結果として、やっぱり中国お願いしようとかASEANにお願いしようというものが出てくるのであれば当然だと思います。  だから、ふだんは自然体でグローバルサプライチェーンを維持、維持というか発展させるということはいいと思っています。いざというときに急速に国内代替生産を含めコンパクトなローカルサプライチェーンに戻せるという、今回、それが戻せたものと戻せなかったものがあって、ちょっとマスクは急に需要が増えたのでこれはしようがないと思いますが、やはりほかも、そういった意味ではやりようがあったんじゃないかというものが幾つかありますね。  ですから、かといって、あつものに懲りて何とかで、もうローカルにシュリンクしちゃおうというのは私は賛成ではありません。やはり、ごく自然にやっていった結果のグローバルサプライチェーンは維持すべきであって、ただしと、平時においてはそれであるが、緊急時においては急速に要するに災害モードにスイッチできるという、このフレキシブルなサプライチェーン、グローバル、ローカルサプライチェーンをつくるのがこれからの課題じゃないかと思っています。多分、造船もそういうことじゃないかなというふうに想像しております。
  49. 伊藤岳

    ○伊藤岳君 ありがとうございました。  上田参考人と多々見市長にちょっと最後お伺いしたいんですが、今の話とも関わるんですが、先ほどの上田参考人お話でも、造船業というのは本当に地域と一体で町をつくってきたということを感じました。先ほど来出ているJMUの舞鶴からの撤退、約三百人が配置転換ということになるんでしょうかね。こういう地域とともに生きてきた造船業がこういう事態になることについて、今回の事態から感じている問題意識ですとか教訓ですとか、それぞれ造船業界の立場と市長さんの立場という両方からお伺いできればと思います。お願いします。
  50. 上田孝

    参考人上田孝君) 今先生がおっしゃるとおりのことなんですが、地域とともに歩んできました。歩んでおります。それは事実です。  しかし、我々、造船工業会に属している十七社は全部私企業でございまして、先ほど来出ている中手がオーナー会社が多い、大手は上場会社が多いんですけれど、私どもの親は上場会社なんですけれども、やっぱり私企業である限り最終的には利益を出さなきゃいかぬと。御存じのとおり、利益を発表している造船会社は、二〇一九年度の数字は七社中一社だけです、造船で利益が出ている会社は。その一社は、内航船といいまして、国内の、瀬戸内を含めて国内を動いている船を造っておられるメーカーさんです。あとは全部赤字です。  その赤字の要因はいろいろあるんですが、その赤字要因はいろいろあるんです。その中で自分たちでやるべきことをやらなきゃいかぬと思っています。これは私企業ですから当たり前なんです。でも、それを超えた、イコールフッティングになっていないところとの競争をしなきゃいかぬと、それは余りにも我々はつらいんです。先ほど来、受注残一・二年と申し上げましたけど、本当につらいんです、これ。このつらさを何とか一時的にでも、船はなくならない、貿易なくならないとすれば、必ずどこかで挽回できるんです。ただ、足下、コロナもあれば、全部止まっちゃったと、受注残一・二年だと。ということは、各社ここから減産に入り、ひょっとしたら舞鶴市長のおっしゃるようなレベルのことがもっと起こるかもしれないという、そこまで来ているんではないかと思います。  であれば、この瞬間は、我々、自助努力します。それはもう間違いなくやるべきです。ただし、そこに何かお国のサポートを頂戴できれば、それは本当に、この瞬間をしのぐという意味では大事ではないかと、そして、未来に必ずつなげてまいります。その辺り御理解いただければ幸いでございます。
  51. 多々見良三

    参考人(多々見良三君) この度の件で社長が舞鶴に来られて、私はこういうことを言いました。私は毎年本社に出向いていますよと、いきなりこの話は何なんですかと言いました。造船業が景気がいいとは一つも思っていませんと。でも、こんな状態になるくらいだったら、もうちょっと早めに言ったらどうですかと言いました。  そういう中で、私がいろいろと御指導いただいている国会議員の先生方に話をしましたが、国会議員の先生方の中で造船業がここまで危機的な状況であるということを知っている方は少ないということを感じました。まさに、国営企業と民間企業と全部同じにせいとは言いませんけれども、どれだけ頑張ってもハンディがあり過ぎて戦えないところはもう少し国が力を入れてやる、そのためには、ここに国土交通省の資料がありますけれども、海事局の作った資料は海事産業将来像検討会と、このデータがあるんです。これは、いろいろ海事局の人は考えていただいていますけれども、これを実現するのは国会議員の先生方だと思うんです。  是非とも手伝えるところは手伝っていただきたいということで、地元は、まさに地元の企業が頑張っていただくように、しょっちゅう御用聞きに行っています、何すればいいですかと聞いていますけれども、一度も相談がなかったことが残念で仕方ありません。  是非とも国会議員の先生方に、海洋国家日本における造船業をどう考えるのか、そんなのよそから買ったらいいんだというふうに国が決めるんならそれはそこで諦めざるを得ませんけど、そうあるべきと思う方は少ないと思いますので、是非これを機会に考えていただきたいと思います。
  52. 伊藤岳

    ○伊藤岳君 貴重な意見ありがとうございました。  時間です。終わります。
  53. 鶴保庸介

    会長鶴保庸介君) 伊波洋一君。
  54. 伊波洋一

    ○伊波洋一君 沖縄の風の伊波洋一です。  本日は、御三名の参考人皆様お話ありがとうございました。  私の頭の中には、まだ世界一の大型タンカーとか、あといわゆるLNG船、最新のというイメージがある中で、今日お話を聞いて物すごく、ああ、随分変わったんだなというのを思いますけど。  まず、上田参考人にお伺いしたいと思いますが、今日お話ししているところで、大手中手というのがあって、この資料全体は、これ大手も含めての資料なんでしょうね。それで、日本造船業のマーケットといいますか、発注しているのは国内あるいは国外、どんなふうになっているのかというのをちょっと教えていただけませんか。
  55. 上田孝

    参考人上田孝君) ありがとうございます。  ちょっとデータの、どこかにあるんでしょうが、ちょっと時間食いますので。  今おっしゃったとおり、大手中手日本造船工業会、今十七社ございまして、三菱さん以下、川崎さんを含めて大手と言われるグループが、JMUさんも含めて六社、中手が十一社、中手の中は系列化した会社なので八グループでございます。八グループの中でサラリーマン会社が二社、あとは皆さんオーナー会社、こんな構成です。  今、発注はどこから来ているかという話ですが、ベースにあるその発注というときに、日本の、例えば今治船主という方が船をオーダーされます。その船を今度、用船といいまして、誰が実際に使うんですかというときに、日本の郵商Kさんが使うケースもあれば、海外のオペレーターが使うケースがあるんです。ですから、造船所から見れば、真の所有者である船主さんプラス誰が船を動かすかという意味で、そういう構成になっています。  実は、いわゆるブームのときは、もう随分この海外船主が日本に頼ってきました。私どもの会社でも、ちょっと全体の統計は分かりませんが、本当に海外船主が日本の船、いい船がたくさんできますから、その船を頼ってきました。  最近は中国が追っかけています関係で、バルカー一つ取っても中国の勢いで、もう日本びいきをしない外国人が多い。ですから、加えて、日本の船主さんも中国で造るということが起こっています、現在。ですから、そのマーケット、海事クラスターでオールジャパンでやっていたつもりだけど、だんだんだんだんそこが崩れてきているというのが実態ではないかというふうに考えております。  以上です。
  56. 伊波洋一

    ○伊波洋一君 日本郵船とかあるいは明治海運とか、いろいろありますでしょう。そういう会社はどこの船を使っているんですか。
  57. 上田孝

    参考人上田孝君) 数字はよく頭に入っていないんですけれど、例えば、一千隻保有しているという会社がありまして、そういうところが、自分のところで持っているのと、どこかが、真のオーナーがおられるというのも加えて、いろいろあるんです。それを支配船という言い方をします。それは、日本海運会社さんは支配船を随分たくさん持っておられます。それは事実です。ただ、その支配船を持つというときに、自分たちのを発注するのに日本造船所に行かないケース、あるいは、この船主さんを用いるんだけど、これも海外で造らせた船を日本の船主さんが使われるケースも出てきているのは事実なんです。  そういう意味では、オールジャパンのそこの部分が少し、そういう甘えを私自身が持ってはいけないなという状況に来ているという感じがいたします。
  58. 伊波洋一

    ○伊波洋一君 最後に、国の方に望むこと、要するに、私たちも国会議員なんですけれども、国の方に望むことを簡潔に幾つか、再度お願いします。
  59. 上田孝

    参考人上田孝君) ありがとうございます。  それは私どものペーパーの十六ページ、十七ページにございますけれど、今、これを議論を始めたときは中長期テーマを前提に業界としてはいろいろと話し合っていました。次の、いわゆる新しい技術開発にどうやって対応しようかというようなことを中心に考えていました。  時とともに、この十六ページで言いますところの、ここ一年程度に有効なという書き方しましたのは、まさに足下の状況がどんどんどんどん悪くなっている関係で、足下においては、発注をもっとよく促進するために、何か船主さん、買われる方にサポートがないでしょうかと。  これは実は、国交省海事局さんから全部、この辺は全部仕切っていただいて、いろんなことをやっていただいています。我々造船でいえば、先ほど、経営安定化させるためには資金繰りというようなこともありますので、このつなぎ融資ができないだろうかと、まさにここにたくさん載っていますが、こういうことを本当に、こういう短期策を国に求めるということに対して、先ほど来申し上げるように、私企業としていかがなものかというのは私は個人としてはベースにあるんですが、日本造船業全体で捉えたときには、今、そういう緊急事態が多分三十数年ぶりに起こっているんだと、それは舞鶴市長がおっしゃるとおりだと思うんです。  ですから、ここに書きましたのが、どれが大事というよりも、短期、中期、長期で見て、是非、先生方には御理解賜りて、そこに対する御支援頂戴できれば幸いでございます。  以上です。
  60. 伊波洋一

    ○伊波洋一君 ありがとうございます。  次に、藤本参考人にお伺いしたいと思います。  先ほど、流れに沿った補助という、いろんな、これからのことなんですけど、ある意味で、いわゆる海洋大国あるいは貿易大国という意味で、日本にとっては船は是非とも必要な、様々な意味で必要だということはもうみんな承知だと思いますが。  今のお話上田参考人お話の上で、やはり提案されたいこと、要するに国に、私たちに提案されたいこと、いわゆる日本物づくりという観点から、やはり造船業を生き延びらせるという観点から御提案をお願いしたいと思います。
  61. 藤本隆宏

    参考人藤本隆宏君) 基本的にはやはり強いところが残るというこの資本主義の原則はしようがないところはあるわけですけれども、ただ一方で、やはりこの社会的存在である産業でありますから、特に、いろんな産業を私見ておりますけど、やはりこの国内の造船業というのは、先ほど言った雇用の面から見ても地域貢献から見ても、これは良い現場が残っている産業。しかも、先ほど、五十年単位で見るとしぶといわけで、自動車並みにしぶといと言っていいと思います。ですから、これを短期的な理由で潰してしまったら、これはもう後、取り返し付きませんから。  ですから、ここはやはりいろんな形で支援が必要だと。要するに、基本的には良い現場を残すと。要するに、企業単位も大事だけれども、良い現場日本に残すというための施策だと思います。現場というのは付加価値が流れている場所ですから、これ、箱にお金を付けるんじゃなくて、流れというのは、付加価値の流れ産業でありますから、この良い流れができたところに御褒美を出すというようなタイプの施策が大事じゃないかなというふうに思っております。  それから、先ほど、舞鶴のお話、多々見さんのお話、大変私も身につまされますけれども、これ、企業の財務諸表から見れば売却も閉鎖も余り変わらないことがあったりするわけですが、地元の現場にとっては、これは天国か地獄であります。ですから、これは誰がやるのか分かりませんけど、これ実は半導体などでもう既にやってきていることでありますけれども、企業はなくなっちゃったけど、現場は元気にやっていて、一万人雇用されているというようなことが半導体などでもあるわけですね。これ、閉鎖しちゃったらおしまいであります。  ですから、何らか、この売却、まあ買手を探さなきゃいけないわけですけど、これはもう目の色黒い青い関係ないと思いますが、とにかく売却という手段がないのかということはこれ最後まで諦めずにやっていく必要があるんじゃないか。これは一般論ですけれども、舞鶴の場合はないですけれども、一般論ではそういうふうに思っております。
  62. 伊波洋一

    ○伊波洋一君 これまでのお話で、造船業が極めてこの日本にとってとても大切な産業であるということ、あわせて、伝統的な、そういう守るべき産業であるということは理解をすることができました。是非頑張っていただきたいと思います。  最後に、舞鶴市長の多々見参考人にお伺いします。  参考人は元々お医者さんで、舞鶴共済病院長をされて、今、市長をされている。先ほどのお話聞きながら思ったのが、私、外交防衛委員会おるものですから、食料自給率もそうなんですけれども、やはり防衛という意味では、安全保障もですね、自前のものもやはり大事だと思います。だから、いきなり完成品の輸入をいろいろ国がやってしまって、様々な製造工程が壊されていくということがありますので。  今日はここにも多くのメンバーいますので、是非、舞鶴、私、もう五十年ぐらい前ですけど、隣のお兄さんが京都の海上自衛隊へ行って、帰ってきたら京都弁で、とても柔らかな言葉になったことを感じておりましたが、そういう意味では、まさに、行ったことないんですけれども、いわゆる造船業の問題、それからその自衛隊の問題を含めて、やはり国産というものをきっちり主張することが大事だと思います。そのことをいま一度お話しください。
  63. 多々見良三

    参考人(多々見良三君) 元々、海洋国家ですので、造船業が花形の産業でした。明治時代に入って日本の近代化を急いで、我々の町も、相当のひなびた田舎に国家資本がいっぱい入って、大きな鎮守府の町ができました。  そういった中で、造船業、元々優れた技術を持っている中で、この技術を自前で、特に国防に関わるものは枢密性が高い、非常に機密性が高いです。どの国も知ってもらっては困る部分もありますので。そういった意味においては、元々技術が高くて、そして秘密性が強いそういうものを日本の中で造らないでどこに頼むんだということを強く感じていますので、そういった意味でも、国として、やはり国防の要のそういう船をどんなふうに造るのかということをいま一度国会議員の先生方に考えていただき、先ほど言いましたけど、国土交通省の海事局のこういう本があります。この中に様々な理想的なことを書いてありますけど、それが実現できるのは国会議員の先生方の力なんです。海事局の人が幾ら言っても、それが予算が通ったりしなければもうできませんから。  そういった意味では、強い造船業、元々強かった造船業をしっかり育てて、しっかり国防の要として使えるような船を造っていただきたいということを強く申し上げたいと思います。
  64. 伊波洋一

    ○伊波洋一君 ありがとうございました。  御三名の貴重な御意見、しっかり受け止めて頑張っていきたいと思います。ありがとうございました。
  65. 鶴保庸介

    会長鶴保庸介君) それでは、二巡目に参りたいと思います。  浜口誠君。
  66. 浜口誠

    ○浜口誠君 立憲・国民.新緑風会・社民の浜口誠でございます。  今日は、三名の参考人皆様、本当に貴重なお話をいただきまして、ありがとうございます。  まず、私から最初に藤本参考人にお伺いしたいと思います。  私は、物づくり日本物づくりの強みは、開発物づくり現場とそしてマーケット、この三つ日本国内にあるというところが日本物づくりの強みにつながっているんじゃないかなというふうに思っています。これがないと幾ら開発だけ強くても物づくりのレベルは上がっていかないというのが私の持論でありますけれども、そういった意味で、物づくりをこれからも造船業を始めしっかりと日本に残していくというのは、大きなテーマで取り組んでいきたいというふうに思います。  一方で、自動車産業なんかを例に取りますと、日本自動車産業と海外の自動車産業のアライアンスというのが結構進んでおりますけれども、造船業において、日本造船業の会社と海外の造船業会社とのアライアンスという視点に立ったときに今後どうあるべきかという点で、藤本参考人のお考えがありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  67. 藤本隆宏

    参考人藤本隆宏君) ありがとうございます。  日本に残るべき現場というのはいろんなパターンがありますけど、やはり開発と生産が一体になっているところが結局残っている感じがあります。一時期これをばらすことがブームになったことがあるんですけど、ばらしたところは生産が消えちゃったところが結構あるんですね。日本は、やはりこの開発、生産一体と、しかも、そこにうるさいお客さんが付いているという、これが勝ちパターンだと思いますので、おっしゃるとおりだというふうに思っております。  自動車で今アライアンス、これはもう昔からずっとやっていることなんですけれども、言ってみれば、これからの時代、一社で全てがやれるということはまずない。じゃ、かといって、十社に統合されているかというとそうでもないわけで、結局、今、何十社もあるわけですね。  ですから、まさにアライアンスをネットワークでやっていくということは、自動車の場合には当然のことで行われていると思います。これは、自動車は最終的にお客さんが消費者であって、自由選択できる。中国であってもやっぱり車は自分で選んで、だから中国人たち日本の車買っているわけですね。今トヨタがどんどん売れていますね。  なんですが、海運のちょっと難しいところは、これはかなり、先ほど来、国防の問題から安全保障まで入ってくる。そして、例えば中国を見れば、中国海運は恐らく、これ中国株式会社のようになっていますから、ほぼ一〇〇%国内の造船所から買うという形になっていると思うんですね。だから、お相手さんがそのようにやっているときに、うちだけグローバルと言っているわけにもちょっといかないところがあると思うんですね。  ただし、先ほども言ったように、彼らがあからさまな保護をやってくるとしても、日本がまた保護返しをするというのは、これはやはり正攻法じゃないと思うんですね。あくまでもビジネスモデル勝負して、実はやっぱり勝てる海運ですよね、まずね。日本には強い海運がありますから、ここが最適設計海運システムをまずつくる。その部品として造船が最適設計造船を造っていけば、これはほかの国はできませんから、ほぼ。みんなほかのところは標準船造っていますのでね。  ごく自然に、要するにその形で日本海運さんが日本のやっぱり造船から買おうという話になり、それが、その結果として海運全体が、つまりこの海事クラスター全体が強くなっていくという形で全体がうまく収まるというのが正攻法のやり方ではないかと思っています。  そのためにはやはり、例えば先ほどから出ているヨーロッパに完全に牛耳られている舶用のエンジンですね、ここを何とかしたいですよね。日本で実際に燃焼技術自動車などは非常に強いですから、僕は自動車造船の連携はあっていいと思っております。燃焼技術がある例えば広島のM社と唯一日本でエンジンを設計しているもう一個のM社ですね、ここは私は連携があっていいんじゃないか、これ私の全く思い付きですけれども、理屈からいったらそういうふうに考えております。  それから、港湾も完全に牛耳られちゃっているんですね。ですけれども、やはり海運を通じて港湾標準化ですね、ここのところにも力を入れていく。つまり、全体の、世界中で今起こっている標準化の流れの中、要するに、やられちゃって、日本はカスタム製品をいわゆる低利益で作っていくというのではなくて、自分標準をしっかりと世界に発信していく力、これは多分、国といわゆる民間が一緒になってやるようなものじゃないか。ドイツなんかはもうそういうふうにやっていますからね。だから、これ、ドイツは非常にこれ上手ですから、ドイツがどういうふうにやっているかというところを見た上で、日本としてこの設計力で何とかカバーしていくと、これが大事じゃないかと思っております。
  68. 浜口誠

    ○浜口誠君 ありがとうございました。  続きまして、上田参考人にお伺いしたいと思います。  先ほどの御説明の中にもありましたけれども、今後の運輸ですとか物流のキーワードの一つは脱炭素、やっぱり環境にどう対応していくかというのが造船業においても非常に重要かというふうに思っております。  先ほど来、アンモニア燃料ですとか水素燃料ですとか、新しい先進技術というのも日本造船業としても取り組んでおられると思いますけれども、グローバルなポジションでいったときに、日本のそういった環境に優しい脱炭素の造船というのは今どの辺りに日本のポジションがあるのか。その辺について是非御教示いただければと思います。
  69. 上田孝

    参考人上田孝君) ありがとうございます。  先ほど御説明申した十一ページ、十二ページ辺りになるわけですけれど、今、二〇三〇年基準に対しては多分各社やっていますし、国の方にもお願いしていますけど、LNGというのが一つのポイントになりまして、そこまではもう個別においてもかなり進んで、実質運搬船というか、実際の船ができる状況になってきておりますね。  問題は、二〇五〇年、五〇%削減の辺りに向けてというのは、先生おっしゃいましたアンモニア、水素ということになるわけで、これは、ここの研究は多分造船だけじゃなくて海運会社さんも含めて、今、関係者が集まってそれを議論し研究しようという、これはだから一社の個別技術では無理ですね。だから、やっぱりオールジャパン的な発想で進めていこうというムードで流れができつつあって具体的に動き出しているというように私は認識をしております。ですから、これは使っていただく海運会社さんなんかも一緒じゃないと無理ですから、そういうところへ持っていく。  これ実は今のGHGの問題だけじゃなくて、さっきの自動運航船とか、要するに、次の世代の船って今とは全然違うものができてくると、それは一社、個別一社一社ごとの努力あるいは開発力だけでは無理でしょうと、やっぱりオールジャパン的にやらなきゃいかぬというような流れになっていて、それに対しては一部そういう具体的な構想ができつつある。したがって、そういうところのサポートを国からお願いできればという話は、先ほどのペーパーにも出ているのはそういうところだと思います。  立ち位置は、他国に、これは原稿によれば、先行しているように書いているんですけれど、正直言って多分そんなに、ヨーロッパの技術が前面に出てきますので、また。ですから、中国はヨーロッパの技術をうまく使いますから、で、韓国は物すごく技術高くなっていますので、現状でいったら、全く私見ですけれど、日本だけが群抜いて早く行っているというふうには感じていなくて、やっぱり一定のレベルで競い合っているなと。だったら、ここで一気に我々は力を付けて引き離しに掛かるというような状況ではないかと感じております。  以上です。
  70. 浜口誠

    ○浜口誠君 ありがとうございました。  では、多々見参考人にお伺いしたいと思います。  地方の都市の市長さんとして、地方のいわゆる産業をどう守るか、雇用をどう守るかということで大変な御苦労をされてきているというふうに思います。先ほどの御提言の中にも地元の産業を守りたいという思いがひしひしと感じられましたけれども、今後、舞鶴市長のお立場で、やっぱり地元の産業雇用を守るためにどういうお気持ちで取り組んでいかれようとしているのか、その辺りの思いがありましたら是非お聞かせいただきたいと思います。
  71. 多々見良三

    参考人(多々見良三君) やはり強みを生かすというのが町づくりの原点だと思います。  我々の町には京都舞鶴港という優れた港があります。この港を活用した産業を興していきたい。一つ造船業だったわけですけれども、様々な部品を輸入し、そして組み立てて、そしてそれを、製品を送るなど、まさに船を有効に使えばもう陸上交通に頼らなくても物の出入りができる、そういったことの極めて有利な港ですし、あとは、電源立地交付金というのがありますので電気代が八年間安くなるということも含めて、まさに我々の町に企業が入ってくればそういったメリットが得られるということと、先ほど申しましたように、やはりこれだけの天然の港ですので、関西のために、国のためになるような仕事を是非誘致したいと。もうかればいいというものではなくて、そういう役に立つ町になり続けたいという思いで企業誘致をしていきたいと思っています。
  72. 浜口誠

    ○浜口誠君 ありがとうございます。  最後、上田参考人に、船のいわゆる耐久年数が二十五年とか非常に長いじゃないですか。自動車ですと十二、三年で買い換えるんですけれども、要は、そういう需要を掘り起こすという意味では、その二十五年の耐久のサイクルを何とか早くしていくようなことも何か政策的に後押しすべきじゃないかなというふうに思うんですが、何かその点で御見解ありましたら、最後に一言お願いします。
  73. 上田孝

    参考人上田孝君) ありがとうございます。  船の耐用年数の話は、二十五年、二十年から三十年と申します。今きっかけになるのはこのGHG規制の問題で、今の船が駄目になっちゃうんですね。このタイミングというのは大きなビジネスチャンスが起こると思います。  それから、船そのものは、今世界に、何隻というよりも、十二億トンぐらいあるんですね。先ほど、冒頭のところで年間生産量がグローバルで六千万グロトンと言いました。これ、六千掛ける二十年ですから、ちょうどその数があって、必ず更新需要が起こるんです、貿易が止まらない限り。ということは、そこが成長産業と皆、我々が信じているところでして、毎年六千万グロトンの生産が必要であるということで我々は成長産業だというふうに言っているわけですけれど、加えて、今回の環境規制が大きなビジネスチャンスであるのは間違いないです。  それから、中国との比較で、先生からいろんな比較いただいたんですが、十年前は、その二十年若しくは三十年もつ船が、実は船主さんて中古で売船されることが多いんですよ。例えば、七年使ったときに、もうこの船を転売して、それで新しい船を買い換えると。実は、そのときに日本の船というのは全然傷んでいないんですよ。中古価格が高かったんです。だから、それをもって日本の製造がいいというのは、少し高くても技術力があって品質がいいという言われ方していたんです。今、残念ながらそこの差がなくなっているかも分かりません、私どものバルカーだったら中国と差がなくなっているかもしれません。  しかしながら、今申し上げたとおりで、次のステップに向けては大きなビジネスチャンスがあるのは間違いないと信じております。  以上です。
  74. 浜口誠

    ○浜口誠君 終わります。ありがとうございました。
  75. 鶴保庸介

    会長鶴保庸介君) あとお二方、通告が来ております。  小林正夫君。
  76. 小林正夫

    ○小林正夫君 立憲・国民.新緑風会・社民の小林正夫です。  今日は、お三人の方から貴重な御意見を賜りました。ありがとうございました。  私は、上田参考人造船業界に関わる質問を二点だけさせていただきたいと思います。  一つは、海事産業生産性革命の取組がされていると承知をしておりますけれども、どのような変化を目指しているのか。もう一つは、外国人材の活用として特定技能の在留資格で働く制度を設けましたけれども、その人数は造船舶用工業の業種でも少ないと私受け止めております。外国人材の活用についての御所見について、参考人からお聞きをしたいと思います。  以上二点です。
  77. 上田孝

    参考人上田孝君) ありがとうございます。  生産性革命という言葉を我々も業界で使っております。生産、i―Shippingということで行政の方から一つの指針が出ておりまして、造船でいえばi―Shippingプロダクション、製造現場をどうして生産性上げていくかという議論しております。  これは、冒頭に先生から、参考人からあった、三倍の生産性になったという事実はあるんですが、正直申し上げてもっと生産性上げる必要があるんだろうと。どうしたらいいんだろうなというのは、みんな悩みながらいろいろ考えてやっています。設備投資でできるのか、技術のレベルのアップでできるのか、さっきの設計レベルにおいてもっと造りやすい船を造るのかと。多分、現場から見たら、もうこれ以上、社長、それ以上言わないでくださいというぐらい追い詰めていますけれど、まあ客観的にというか、経営の立場でいったらまだまだやれるんだろうと思います。だから、これは、私企業というか、物づくりメーカーである限り、果てしない競争です、常に生産性を上げていくということは。  それからもう一つは、さっき3K職場と申し上げましたけれど、先ほど、3Kでない職場をつくるというのも一つの考え方なんですね。ヨーロッパのヤードで一部、あれだけ大きな造船所に屋根があるんですね。だから3K関係ないですよ、暑い夏は関係ないという。だからそういう発想があるとすれば、何かまだまだ我々は、研究する、あるいは改革できる余地もあるんではないかなという意味で、決して諦めないということが一つです。  外国人問題は、私は、現在、日本造船所のいわゆる現場労働者のうちの、ヤードによって違うんですが、大体一〇%程度は実習生を使っています。それを特定技能に持っていくという努力は片一方でやっております、事実として。ですから、これは実は、実習生である限りは三年で帰っちゃいますから、なかなかその三年でできる仕事がどうなのという話になってきまして、非常に不安定であっただろうと思います。私どもでもそうでした。  これが特定に変わって長くなりますと、やはり本当の一人前のワーカー、職人としてどんどん発展するだろうという意味では、労働力をそこで確保するやり方は多分方向感は間違っていない。片や、先ほどどこかで申し上げたように、日本の子供たちがこの産業に入ってくる人が減る可能性があると。とすれば、そういう労働力の多様化というのは絶対に日本企業はやっていかなきゃいかぬと。  ですから、今回のこの外国人人材の問題についてお国の方でいろいろ制度を変えていただきましたのは、まさにそれがタイムリーであるし、我々はそれを使わせていただいていると、こういう流れだというように承知しています。  以上です。
  78. 小林正夫

    ○小林正夫君 以上で終わります。ありがとうございました。
  79. 鶴保庸介

    会長鶴保庸介君) もう一方。新妻秀規君。
  80. 新妻秀規

    ○新妻秀規君 私、上田参考人藤本参考人に質問させていただこうと思います。  まず、上田参考人にお伺いをしたいのが、実は、国交省からの資料で、かつてこの造船業界では、総合重工メーカー技術がそれ以外の造船メーカーの方にしっかりそれが共有されて、それが日本造船業界の強みになっていたと、でも、今では、先ほど中手、そういうお言葉もありましたけれども、なかなかそういう総合の、総合重工メーカーからの技術の底上げみたいなのもなくて、ばらばらなんじゃないか、そんなような問題提起の資料を拝見したところです。  上田参考人の目から見て、この中手と総合重工系の造船メーカーの連携体制、協力体制というのを現時点でどのように御認識で、改善すべき点があったらどのように改善が望まれるのか。また、藤本参考人も、今の同じ観点で問題意識をお述べいただければと思います。  あと、藤本参考人にもう一問ありまして、藤本参考人の資料の四ページ目に、この海事クラスターについて、様々なこの事業領域についてどこが強いみたいな、そんなような分析があります。  そこで私が関心が非常に高いのが、このターミナルオペレーターほかという右上の方のところですね。私は、実は愛知県で港湾の施設を拝見させていただいて、ジョイスティックを、二つを本当に巧みに扱って、何というんですかね、クレーンががあっと動いて荷物を、コンテナをつり上げてという、ここまで省力化されているのかということは本当驚愕したわけなんですけれども。やはりこういう、本当省力化のためにも、こうしたところというのは多分利益率も高いでしょうし、こういうところを実はヨーロッパと中国が握っているのかと思うと、こういうところで本当日本が頑張れないのかなというふうにも思ったわけなんです。また、この左下の方では、この舶用工業サプライヤー、ここもヨーロッパは強いですよという。  こうした現状分析の下で、ここのところはこれから食い込もうとしても日本は無理なんですよなのか、こういうところでも我々が、日本が食い込んで、そして利益を上げられるような道が残されているのか、これについて御所見をお願いしたいと思います。  まず、上田先生からお願いしたいと思います。
  81. 上田孝

    参考人上田孝君) ありがとうございます。  今の重工メーカーからそれ以外の中手というところの人材の問題なんですけれど、御案内のとおり、日本大手いわゆる造船会社、大手さんというのは、船、造船が祖業でありまして、祖業からスタートして各社各様なんですけれど、もう今、全社ベースの数%程度の売上げしかないと。祖業が転じた別の事業が多角化していると言われる、これはもう当然、企業ですから当然のことなんです。  先生がおっしゃったその人材の問題でいくと、かつて、まあ今でもそうですが、大手のエンジニアのレベル、やはりそれは相当レベルが高い。そして、そういう方々を先ほど来の中手に一定のタイミングで来ていただくという、要するに再就職的なこと、あるいは具体的な研究としてというようなことの動きがあったのも事実ですし、現在進行形であると思うんです。  私、他の産業をいろいろ見ていまして、他の産業で、その大手終わった人たち中国韓国に行っちゃったということで、まあ失礼だけど敵に塩を送ったというような表現で、言いますと、そういうことを言われた時代があるんです。現にそういう産業があります。  造船は、やはり造船に参入している人たちはやっぱり国に対する思い強いですし、オールジャパンで何とかやるというのが非常に強いものだから、大手さんのエンジニアが中手の各社に入っているのはそのとおりです。例えば、私どもの会社でも設計のいわゆる親分は某大手から来ていただいているんです。現場の所長をそういう人がやっているということも多いんです。だから、そういう意味大手中手の紐帯は極めてうまくいっていたんではないかと。  ただ、現在の問題は何かというと、その大手さん、これを言ったら大手の方に怒られますけれど、現に大手さんの社内的ウエートが落ちている、すなわち人材も薄くなっている可能性があるとすれば、これを、そういった構造でシフトできない。その問題を解決するために、オールジャパンでそういう人たちの人材をうまく活用できる何かプールをつくって、そして技術開発をやろうじゃないかというのが一点。  もう一つは、今回のJMUと今造さんのあの考え方は、営業と技術を一緒にやろうじゃないかというのは、まさに多分そういうことをもくろんでおられるに違いないです。だから、そういうやり方を工夫していくことによって、やはりその大手さんの持っている技術力、そして中手がここまで養ってきた技術力をうまくコンバインして、やっぱり強くならないといかぬということであろうと私は思います。  以上です。
  82. 藤本隆宏

    参考人藤本隆宏君) 今のお話上田さんのお話でもう本当に尽きていると思いますけれども、やはり技術力大手と、商売力、設計力、ビジネスモデル、そういったものでたけている中手、強手ですかね、こういう構図だと思いますので。  ただ、これ今まで、確かに見ていると、本当にどこへ行っても元大手の方が活躍しているんですね。だけど、残念ながらやっぱり中国にも随分行っておられて、随分追い付かれちゃっているところもあるわけですね。  それはしようがないと思うんですけれども、私はこれはやっぱり戦略的に考えるべきであって、先ほど言いましたように、もう造船、特にこの中手がやっている造船というのは、韓国中国に挟まれているわけです。付加価値の高いところはもう既に韓国に取られているわけであります。そして、中国がどんどん追っかけてきているわけですね。  ですから、中国に対して守る、韓国に対して攻めると、この明確な戦略を持った上で、じゃどういう人材が必要なのかという形で、一般的に言って大手から人材が必要なこと間違いないんですけれども、戦略的な意図を持った上でどういう人材が必要かという形で見ていくべきだと思います。それが発展すれば提携という形になって、この提携の中で最大のポイントは、やはりこの大手技術力中手の商売力、これを合体させて、韓国を攻める、中国に対して守ると、こういうことじゃないかなというふうに私は思っております。  逆に、技術力だけで行けちゃうような例えば艦船、いわゆる防衛系のものは、これはもう、これは日本にとってこれはもう商売の話じゃありませんから、これはもうとにかく大手技術力をとにかく維持するという、もうこれはシンプルな話だというふうに思っております。ですから、商船の場合とちょっと観点は違うと思いますね。  それから、海事クラスターの話、四ページのところですけれども、私も全く同じように思っていまして、今の海事クラスター議論の中にこのターミナルオペレーター港湾が出てこないんですよね。でも、港湾があって、港湾オペレーターがいて、船のオペレーターがいて、初めてこれで海運が完結するわけでありますから。で、ここのところ、残念ながら、世界的にこのメガオペレーターみたいなのが出てきたときに日本はここは完全に遅れちゃって、まあGAFAにやられちゃったみたいな、似たような感じでありますね。だから、これは今からひっくり返すのはちょっと難しいんですけれども、少なくとも影響力を持てるような形にしていく。  おっしゃるように、例えば、あるここに自動機器を作っている、まあ簡単に言うとトヨタ系の会社ですけれども、ここが例えば自動ロボットですね、搬送ロボットを作って、これはまさに名古屋港では活躍しているんです。なぜならば、彼らの標準が通用するからです。ところが、シンガポールに行くと、いや、うちはそんな物の動かし方をしていないから、こういうのを作ってよと言われると、これは向こうに合わせなきゃいけないんですね。ここで非常に苦戦しているわけであります。だから、実はこの右側のターミナルオペレーターのところでも日本は結構苦戦しているんですね。ですから、海事クラスターの話をするとき、必ずここまで入れて広く見ていただきたいということと。  それから、おっしゃるように、逆に下の方で、この舶用のところですね、このエンジン、自動車はエンジンが自分で作れたので今の世界三〇%を維持しているという、この強さを維持できたわけですけれども。ちょっとこれ、彼らがつらいのはエンジンを握られちゃっているんですね。設計情報を握られているわけであります。ただ、日本でまだやれている会社があるので本当頑張っていただきたいと私は思っているんですけど、この頑張るときに、同じ燃焼技術のところでありますから、私は、もう場合によっては造船自動車の連携もあっていいんじゃないかというふうに、これは本当に私の単なる私見ですけれども、個人的にはそう思っております。
  83. 新妻秀規

    ○新妻秀規君 藤本参考人にもう一問聞きたいんですけれども、私かつて川崎重工の社員でございまして、私が新人だった頃、社長が、我々はもう現場はいいからエンジニアリング会社を目指すんだという、そうした方針出されました。その後、それ撤回されまして、現場があるから大事なんだ、現場があるから強いんだと、そういうふうに揺り戻しがあったわけなんですね。  でも、今の藤本参考人お話を聞くと、欧州でエンジニアリング会社が台頭していく中で、じゃ、日本造船メーカーはどういう方向を目指すのか。これについてどうお考えでしょうか。
  84. 藤本隆宏

    参考人藤本隆宏君) ヨーロッパは、確かに自動車もそうですけど、やっぱりエンジニアリングを分けてやれる、これはやはり標準化が進んでいるんだと思うんですね。日本の場合は、この標準化が進んだところではなかなか戦えないんだけれども、あえて言えば、日本企業として、外に向けて標準化をしていきながら中は標準化しないという形でやっていくと。これはやはり日本企業は、どちらかというとエンジニアリング会社というよりはやはり先ほど言った機能完結工場というか、つまり開発と工場の人が一緒になって、設計ルームをヘルメットをかぶった人がうろうろ歩き回っているみたいな工場がやはり私は日本の強みだと思いますし、逆に言うと、その強みが生きるような形で市場を形成しなきゃいけないと。  つまり、そこはあくまでもやはり二〇三〇年規制がキーだと思いますけど、これはできるだけ厳しくしていただくと。これ、ほっておくと、中国でも造れるようなみたいなところで、ゆるゆるのものにしちゃいたいと思っている人たち世界中にいると思うんです。この人たちを黙らせるということは絶対にこれ必要でありまして、これはお国にもひょっとしたら関係するかもしれないと私は思っています。  厳しい厳しい方向へ、自動車はそれで生き残ったわけですから、厳しい方向にやっていただいて、二〇三〇年基準が仮に二〇二五年に開示されたときに、うわっ、これはすごいぞと、これ造れるの誰といったとき、いや、結構日本って先取りしていたよねという。  だから、今の間に日本企業、この二〇二五年ぐらいが勝負じゃないかと私は思うんですね。この間に開発力、まさにその大手中手が連携して、とにかく追っかけられるような、あるいは先取りしたようなものを造って、さあ、開いてみたら、やっぱり日本しか造れないじゃないという話に、まあこんなうまくいかないですけど、うまくいけば、これ一気に奪取できるかなというふうに。  済みません、私は強気な話ばっかりで申し訳ないですけど、勝てるパターンはこれじゃないかと。逆に、これじゃないと勝てないかなというふうに思っております。
  85. 新妻秀規

    ○新妻秀規君 ありがとうございました。
  86. 鶴保庸介

    会長鶴保庸介君) 他に御発言はございませんか。──他に御発言もなければ、参考人に対する質疑はこの程度とさせていただきます。  参考人皆様に一言御礼を申し上げたいと思います。  皆様には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、誠にありがとうございました。時間の制約上、大変皆様には失礼があったかと思いますが、これをしっかりと踏まえて、我々も参考にさせていただきたいと思います。調査会を代表いたしまして御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  速記を止めてください。    〔速記中止〕
  87. 鶴保庸介

    会長鶴保庸介君) 速記を起こしてください。     ─────────────
  88. 鶴保庸介

    会長鶴保庸介君) 引き続き、中間報告書を取りまとめるに当たり、これまでの調査を踏まえ、「海を通じて世界とともに生きる日本」について委員間の意見交換を行います。  意見交換は、あらかじめ発言者を定めずに行います。  まず、大会派順に各会派一名ずつ指名し、その後は、会派にかかわらず御発言いただけるよう整理してまいりたいと思います。  発言を希望される方は、挙手の上、会長の指名を受けてから御発言いただけるようにお願いを申し上げます。  また、できるだけ多くの委員発言の機会を得られますように、委員の方の発言はお一人五分となるように御協力をお願いいたします。  また、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、発言のある方は挙手をお願いをいたします。  猪口邦子君。
  89. 猪口邦子

    ○猪口邦子君 ありがとうございます。自民党、猪口邦子でございます。  国際経済外交に関する調査会の一年目の調査を踏まえつつ、二年目の調査に向けて意見を申し述べさせていただきます。  本調査会、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴いまして、例年活動を行っている時期の開会が困難でもあり、これまで、本日含め実質四回の調査を行いまして、政府参考人のほか、十一名の参考人から示唆に富む貴重な御意見いただきました。  この本調査会、海を通じて世界とともに生きる、三年間のテーマとして、海洋資源の管理、利活用、海洋環境保全、また、海洋国家日本の課題、役割、この三つの切り口、角度、これを具体的な調査項目として認識しております。  ここで改めて認識したいことは、日本の海洋政策の基礎の一つ、平成十九年に議員立法で海洋基本法が成立しました。おおむね五年ごとに海洋基本計画が改定されます。そして、平成三十年には現行の三期目の計画、この計画は新たな海洋立国への挑戦というテーマでございます。この同時期に参議院においては、今会長お示しになりました「海を通じて世界とともに生きる日本」、この三年間の調査をやり始めているというところでございます。  また同時に、国連におきましては、二〇二一年からの十年間、SDGs完成への十年間、これを海洋科学の十年と定めております。オーシャン・サイエンス・ディケードということで、つまり海という着眼、これは政策的にも知的にも主流化しているという中で、私たちは来年の調査、これを考える立場にあると思います。  一年間を振り返りますと、重要な視点たくさんありましたが、この海洋環境保全について直接的に取り上げる、これがちょっと希薄だったかと思います。例えばプラスチックごみあるいは気候変動、生物多様性、国民的関心非常に高い、二年目に是非この調査、重点化すべきではないかと思っております。  今申し上げました国連の、ユネスコが教育、文化、科学担当しておりまして、SDGs完成への最後の十年をオーシャン・サイエンス・ディケードとしたことは非常に意義深く、私たちは日本としてその十年リードする、そういうことも視野に入れながら基礎調査を行ってきたんだという認識抱いておりまして、海洋科学の発展に日本も寄与するし、それを背景に海洋環境の改善という視点が二年目には更に重要ではないかと考えております。  また、本日、海洋国家日本の課題で、造船業について貴重なお話を伺ったわけでございます。貿易も重量ベースで海上運送、海上輸送が実に担っておりということはお話で分かったとおりで、造船業海運業、関連サービス産業など、世界の物流と人の生活を支える基盤的な産業の強化、維持が必要であるという結論でありまして、私の考えとしては、この新型コロナウイルス感染症問題から学んだことは、経済の基本、人の生活の不可欠なる部分の生産ラインは、幾らグローバルな時代とはいえ、また投資の最適化戦略が必要だとはいえ、国内に生産基盤と技術的向上の現場、これを維持し、発展させることが必要であると思います。そのような経済政策、産業政策、引き続き意識して調査会を運営していただきたいと思います。  そのような場合、国際競争があるわけですから、このルールメーキングにおいて日本が主導し、日本の国益や海洋環境保全という我が国の価値観に沿った国際秩序が国際法を中心に発展させていくことが必要であると考えますので、二年目の調査もこの海洋におけるルールメーキング、お願いいたしたいと思います。  また、一年目に取り上げた課題の中でも、これともちょっと関係があるんですけれども、重要な点はたくさんありまして、初回に山田参考人あるいは奥脇参考人からのお話あった、海洋の安全保障、法の支配、今日我が国を取り巻くこの国際環境の厳しさ、これについて深掘りすべきであると考えます。力による現状変更を目指している動きがあると見られる中、我が国は、国連海洋法条約を中心とする国際法の秩序、海洋法条約の関連国際法の生成などを目指しながら、こういう動きに対抗していくという考えでございます。  そして、来年度に向けてもう一つ、捕鯨の問題も大事だと思います。IWC、本来の目的逸脱して機能不全に陥っています。日本は脱退し、しかしその結果、マグロ、サンマほか、水産資源管理に関する多国間のルールメーキング、これにどういう影響が出てくるのか、そういうことも引き続き調査が必要であると考えます。  また、最後に、北極海の管理、利活用、残念ながら気候温暖化で、気候変動で北極海の環境が変わりつつありまして、そこにおけます秩序ある利活用、そういうことも今後の課題になるのではないかと考えますので、以上、私の意見を申し述べました。  よろしく、来年度に向けてお願いいたします。
  90. 鶴保庸介

    会長鶴保庸介君) 続いて、小林正夫君。
  91. 小林正夫

    ○小林正夫君 立憲・国民.新緑風会・社民の小林正夫です。  調査会の三年間にわたるテーマ「海を通じて世界とともに生きる日本」は、四方を海に囲まれている日本にとって大変大事なテーマであり、御指導いただいている鶴保会長に改めて感謝を申し上げます。  私は、このテーマが決まったときに、我が国の一次エネルギー資源は船舶によって運ばれてくる、こういう思いが浮かびました。また、今回の新型コロナウイルスにおいては、感染は世界中に広がり、各国との往来が禁止をされ、中国の工場の稼働停止によって衛生用品のマスクや自動車部品等の工業製品の調達が困難になり、我が国に大きな影響が及びました。改めて、我が国の貿易量の九九・六%を占める海上輸送の安全確保と、我が国の食料、エネルギー、工業製品等の自給率を高めていく必要性を強く感じました。  二点の意見と一点の要望を申し上げたいと思います。  一点目は、船舶の安全航行を守ることイコール我が国の生命線を守るということです。  天然資源が乏しい我が国は一次エネルギーの約九割を占める化石燃料を輸入に頼り、その資源は海運によって我が国に届きます。中でも原油の八割以上がホルムズ海峡を通過しており、昨年六月にはホルムズ海峡近くのオマーン沖でタンカー二隻が攻撃を受けております。エネルギー資源の輸入ルートは安全なシーレーンを確保することが重要で、中東のようにいつ攻撃されるか分からないことやホルムズ海峡を閉鎖された場合に備え、複数のシーレーンを確保するため海事産業と連携強化を図ることが必要です。そして、資源の輸入を民間企業だけに任せるのではなく、国が率先して外交強化を行い、安定的な資源確保を目指すべきであるということです。  二点目は、海洋国家日本の力を揺るぎないものにしていくと同時に、環境問題に取り組むことであります。  島国である我が国は、四百四十七万平方キロメートルもの広大な二百海里排他的経済水域と大陸棚の延長が認められた海域に囲まれており、恵まれた環境を生かし、昨年四月に施行された再生可能エネルギー海域利用法に基づく海洋風力の促進や、海底資源の発掘と海産物の人工養殖等の事業を拡大することです。  また、海洋汚染の原因の一つであるプラスチックごみは、世界では年間約八百万トンが海に流れ込んでいると推測され、さらに海に存在しているプラスチックごみは一億五千万トンと言われております。海洋の汚染だけではなく、海に生きる生物や産業、人体にも影響を与えております。海洋汚染防止に国を挙げて取り組むと同時に、国連への働きかけを行うことであります。  要望は、今後の調査会のテーマでございます。  今国会で取り上げた「海洋資源・エネルギーの確保など海洋の利活用及び開発の在り方」のテーマで、先ほど述べた海底資源の発掘と海産物の人工養殖の論議ができればと思います。  また、新たなテーマとして、海上貿易を支える船舶に関連して、一つとして、国内における造船産業の維持と持続的成長、発展への課題、二つ目は、船員の確保と長期間航海における課題です。是非検討いただき、テーマとして取り上げていただければ有り難いと思います。  以上で意見を終わります。
  92. 鶴保庸介

    会長鶴保庸介君) 次に、新妻秀規君。
  93. 新妻秀規

    ○新妻秀規君 海洋国家である我が国にとりましては、この海の持続的な利用というのは非常に重要なテーマだというふうに受け止めています。  先ほど猪口先生からもありましたこの海の環境の課題は非常に重要な課題でありまして、是非とも次期国会でこの海洋環境については取り上げていただきたいと思います。  プラスチックごみを始め海ごみの問題、本当にもう連日報道されているとおりでありまして、さかなクン参考人からは、レジ袋を食べて、ウミガメ、イルカ、鯨が死んでしまうんだと。また、ゴーストフィッシングということを初めて知りました。水中に投棄された漁網とか漁具によって生き物が絡まって死んでしまうとか、こういう実態もあると。やはり、ペットボトルのような典型的なプラスチックごみは当然そうなんですけれども、こうした漁具とか漁網も含めたこうしたプラスチックごみの発生抑制、回収に向けた有効な対策をしっかり立案して実行しなくちゃいけない、このように強く思いました。  また、環境については、外交的な観点から山田参考人から非常に重要な提言いただきまして、例えば尖閣始め紛争が生じかねない海域での海洋環境について研究協力するなど、こうした提案もあって、非常に重要な提案だと受け止めました。  また、魚、漁業、水産業ですけれども、片野参考人からノルウェーの漁業の取組を紹介していただき、非常に参考になりました。  漁獲枠をめぐる国際交渉を着実に進めることと両輪で、我が国の水産業において、このノルウェーのような持続可能な水産業、これを目指すべきなんじゃないかなと強く思いました。大き過ぎる漁獲枠、機能していない資源管理、こういう課題を真摯に受け止めなくちゃいけないと思います。科学的な根拠に基づく実効性がある対策が必要だというふうに思います。外国とか自然環境に責任を安易に転嫁すべきではありません。  折からのコロナ危機での需要の減退、これを機に、これを奇貨として、魚礁の造成であるとか、また、いそ焼けの原因分析、それに対する対策など、資源回復に向けた取組を進めるべきではないかと強く思いました。この際、東日本大震災の後、せっかくマダラの資源が回復したのに、その後、やはり有効な資源管理ができなくて資源が再び急減した、この失敗を繰り返してはならないというふうに思います。  また、海洋資源開発につきましては、我が国の排他的経済水域、メタンハイドレート、レアアース、マンガン団塊など豊富な海底資源に恵まれておりまして、JOGMEC、JAMSTEC始め、こうした国の研究機関と民間が力を合わせて研究開発、資源探査に着実に取り組む必要があるというふうに思います。海洋の環境に十分配慮することを含めて、継続的に後押しをする必要があると思います。  また、北極の政策については、北極海の航路、例として輸送コストの面、また南回りの海賊とかいろんな地政学的リスク、これを回避する観点が非常に重要である、こうした参考人意見陳述がありました。こうした民間利用も進む北極について、政策立案に関わり続けるためにも、北極評議会のオブザーバー国として存在感を示すために、日本の強みである観測、研究開発貢献をすべきというふうに考えます。  また、海洋の管理と国際協力については、自国第一主義が加速する中で、やはり法の支配と科学的な知見に基づく政策の実施を原則にして、国際社会全体の普遍的な基準として浸透させる活動に継続的に取り組まなくちゃいけないと思います。その際、先ほど申し上げましたような日本の強み、観測、科学技術力、こうしたソフトパワーを十分に活用していくことが重要だというふうに感じます。  また、洋上風力発電、また潮汐・潮流発電、海洋の温度差の発電につきまして、電力の安定供給に寄与することから、研究開発の推進など政策的な後押しが必要と感じました。その際、豊かな生態系を維持するなど、海域の利害関係者との共生に十分留意する必要があると思います。また、FIT後も見据えて、コストダウンを促すような長期的な観点が必要かというふうに思います。  また、捕鯨については、IWCから脱退してしまったんですけれども、これは本当にやむを得ないんじゃないかなというように受け止めています。一方、条約脱退に伴って、科学的な調査の法的な根拠、国際法的な根拠を失ってしまったことになります。しかし、科学的な調査捕鯨は、持続的な利用、また外国との信頼関係の醸成に大きな意義がある、この点で小松参考人から、日本海で皮切りとして日韓の共同の調査をやったらどうか、こういう提言があったんですけど、非常に注目に値する提言だというふうに受け止めています。  最後に、海事産業造船産業なんですけれども、やはりこの造船産業日本の地方に多くが立地をしておりまして、また、製品を通じて国際社会にも大きく貢献をし、また安定した雇用地域に生み出す非常に重要な産業だというふうに認識をいたしました。しかし、中韓の攻勢、また欧州が設計情報を握っている、こんな状況で、厳しい状況にあるこの造船産業をどう巻き返していくか知恵が必要なところです。  参考人とのやり取りの中で、中手、また総合重工メーカーが力を合わせて、オールジャパンで強みを発揮する仕組みをつくっていくことが重要だというふうに感じました。また、環境規制などで国際世論をリードして、それを先取りするような研究開発で、船舶のみならず、港湾荷役などのターミナル機器、また舶用工業など、海事クラスター全般での底上げが必要だと強く感じました。  以上です。
  94. 鶴保庸介

  95. 柳ヶ瀬裕文

    柳ヶ瀬裕文君 日本維新の会の柳ヶ瀬裕文です。  もう三名の方がすばらしい御意見を述べられているので余り言うことはないんですけど、済みません、ちょっと余り考えてこなかったんですが、自由討議ということで、これまでこの調査会で議論されたことは、どちらかというと経済的な視点が結構多かったかなというふうに思っております。だから、そういった意味では、もうちょっと外交、安全保障に即した議論がされてもいいのかなというふうに思っております。  個別事案でいえば、中国の覇権主義に対して、海洋進出に対してどう対峙するのかといった個別具体的なテーマをもうちょっと取り上げることも必要かなというふうに思いますし、また海洋ということでいえば、離島の重要性ということがあると思います。尖閣の問題、これ、山田参考人から御意見いただきましたけれども、こういった尖閣の今後についてどうしていくのかといったことをみんなで議論する。また、北方領土もそうですし、様々な国境離島の在り方、ここをどう守っていくのか、こういったことの論点も議論を是非させていただきたいなというふうに思いました。  それからもう一点は、先ほどもございましたけれども、環境に対する論点が少なかったかなというふうに思っておりますので、プラスチックごみのお話もありましたし、長期的な視野で見たときに、海面上昇の問題も、気候変動に起因する海面上昇の問題ですとか、そういったことについて専門的な知見を披露していただいて、そして議論ができたらいいなというふうに思いました。  あと一点は、戦略港湾であったりとか港の位置付け、空港もそうなんですけれども、空港や港湾が、アジアの中で日本港湾がどういう位置をこれから占めていくのかといったことも重要な視点だというふうに思いますので、この点も是非議論させていただきたいというふうに思っております。  以上です。
  96. 鶴保庸介

    会長鶴保庸介君) 伊藤岳君。
  97. 伊藤岳

    ○伊藤岳君 日本共産党の伊藤岳です。  海洋基本法が制定されて十年以上が経過し、海洋をめぐる情勢にも新しい事態が生じました。コロナ急拡大という事態もありました。海洋をめぐる様々な問題が顕在化する中で、海洋政策の枠組みをつくり対応することが求められていると思いました。  本調査会を通じて学んだこと、私、四点述べさせていただきます。  一つは、海洋を通じて人、物が移動する中で、いかに感染から我が国を防ぐかという課題についてです。  私、一回目の質問で港湾BCPのことを取り上げたんですが、余り認識が薄いなという感じをいたしました。いざというときのために、この港湾BCPの強化、また検疫体制の強化などは、これから国際コンテナ・バルク戦略港湾政策の中で、貨物船の往来も増加する中で非常に重要だということを一つ感じました。  第二に感じたのは、漁業、特に沿岸漁業を守っていくという問題についてです。参考人意見を伺って、大西洋マグロのように資源を毀損する大規模な漁業から頑張っている沿岸漁業をどう守るかというのは重要な課題だと思いました。SDGsが叫ばれていますけれども、国連の機関も小農、小漁業の権利宣言も採択している中で、この点は重要な課題だというふうに思います。  第三に、海洋再生エネルギーに思い切って研究をシフトしていくということの重要性を学ばせていただきました。特に、参考人意見からは、海洋再生エネルギー発電事業の実施に関して必要な協議の場を設けるということに対して、市民参画が重要だと、有効だという意見も伺いましたし、長崎の五島市で営業運転され始めた洋上浮体式風力発電設備がそういう市民参加の実践の一つだという御指摘もあったことを学ばせていただきました。こうした点を今後生かしていきたいと。  最後、第四に、今日の議題でもあります造船事業。一件たりとも潰さない、必要な補填を国がしっかり行うということの重要性を感じました。特に、造船業が国内生産を起点に地域と一体に町づくりをしているというこの努力を大いにやっぱり政治が光当てて、援助を強めていくべきだということを感じました。  以上四点申し述べて、意見表明といたします。
  98. 鶴保庸介

    会長鶴保庸介君) 伊波洋一君。
  99. 伊波洋一

    ○伊波洋一君 沖縄の風の伊波洋一です。  今回の調査会は「海を通じて世界とともに生きる日本」というテーマで続けてまいりましたが、本日の、特に我が国造船業の今日的状況を知ることができ、そしてまた、改めて我が国が四方を海に囲まれた海洋国家だということを感じました。  沖縄のことをちょっとお話ししますと、沖縄は、かつて琉球処分以前の四百五十年、進貢船貿易による東南アジアの貿易拠点として、独立した王国として歴史を歩んできました。明国が創建されて四年後でしたか、結んで、その代わりの、代理貿易をすることになったわけですけれども、大きな船を与えられて、それでもって東南アジアまで行っていたわけです。  そういう意味では、沖縄の歴史、琉球国の歴史の中では、船をあらゆる国に橋渡しして海の十字路の役割を果たしていくという意味が漢詩で込められた、万国津梁の鐘というのがありまして、その中に、舟楫をもって万国の津梁となしという言葉から、沖縄では、貿易、観光といった物流、人流、人間交流によるアジアの懸け橋としての発展する構想をする際に、万国津梁の精神ということがずっと語られ続けてまいりました。  その意味では、やはり今日、かつてはその時代に交流した日本韓国中国、東南アジアの国との関係でいうならば、今日、中国韓国、東南アジアで日本の貿易総量の半分を占めるようになっています。ですから、海を通しての交流になりますけれども、その意味でも、アメリカもまた海を通して、そういう意味で、海の平和というものが日本にとっては大変大事であると、このように思います。  そういう中で、世界全体もそうですけれども、東南アジアの海洋秩序の安定に向けて、日本として、米中両国の対立を激化させない、うまくコントロールしていくという必要があると思います。そのためには、韓国はもとより、台湾、フィリピンとも連携をしながら、対米、対中国外交を構想していくことが必要ではなかろうかと思っております。同時に、中国との間で海洋秩序の維持に関する定期的な意見交換をやはり絶やさないことが重要で、それに向けた取組が必要とされていると思います。  これまでのセッションで、水産業の課題、漁業の安全な操業の問題や、あるいは水産資源の管理、あるいは持続的な水産資源の利用に向けて日本としてイニシアチブを発揮することができるのではないかということを含め、また海運においても、海峡における航行の安全の確保のための国際協力を進めることがやはり必要であると、マラッカ海峡周辺の海賊対処の問題を含めて。また、我が国自体の海峡もございます。  海の環境保護の問題についても、これは海洋プラスチックごみの削減とか、あるいは海洋希少種の保護、あるいは海洋レッドリストの掲載種の、種の保存法上の指定種としての保護というものを含めていろんな課題があると思います。それはやっぱり率先してやっていくべきだと思います。  本来、今年は沖縄にはクルーズ船が九百回以上来る予定だったんですけれども、止まってしまっております。私たちの国がいつから外国人を受け入れることができるのか。ウイズコロナあるいはアフターコロナの時代に向けて、島国である日本として、あるいは島嶼県である沖縄として、コロナの封じ込めでは有利な面もあるんですけれども、あるいは免疫パスポートなど一定の条件を満たす人材については入国も認めるという流れをしなきゃいけないでしょうし、それから、近隣、アジアの国はどちらかというと割と抑えてきたところなので、そういう意味では、アジアの中で、東アジアの中でやはり早めの人的交流をどのような形、海も含めて実現するかということがやはりこれからの日本にとって大きな課題ではないかなと、こう思っております。  つまり、やはり物流だけではなくて人的交流が求められておりますし、日本の各地方においても観光も含めて、そういう意味では海ということも含めて大きな課題ではないかと思っていますので、そこら辺のことも話合いができたらなと思っております。  以上です。
  100. 鶴保庸介

    会長鶴保庸介君) 以上で各会派の一巡目の発言は終了いたしました。  他に発言を希望される方は挙手を願います。  芳賀道也君。
  101. 芳賀道也

    芳賀道也君 立憲・国民.新緑風会・社民の芳賀道也です。  本日参考人として来ていただいた多々見舞鶴市長も触れていらっしゃいましたが、日本海の中央部に屈指の好漁場にもなっている海底火山、大和堆があります。この大和堆で操業する山形県酒田港のイカ釣り漁船の方から今悲鳴が上がっています。私の地元、山形県酒田市のイカ釣り船団、十三隻あったものが、昨年このうち三隻が廃業。外国船の違法操業による不漁が原因です。そして、この酒田のイカ釣り船団のうち三隻は、今年の夏はもう日本海の大和堆を諦めて、遠く太平洋の真ん中でアカイカ漁に活路を求めて試験的にチャレンジするため、間もなく酒田港を出港します。非常に深刻です。同じ日本海側の石川県のイカ釣り船団も同様だというふうに伺っています。  日本の海に違法に北朝鮮の船が入ってくる。軍隊の船ではないかとも言われている。さらに、中国船も違法操業を行っています。毎年のように海上保安庁、水産庁の船が違法操業には警告、放水をしてくれていますが、状況は一向に改善されておりません。  また、水産庁は、全国いか釣り漁業協会を通じて、日本の漁船が、この大和堆西側に当たりますが、通称②海域に入らないように要請しています。これではますます北朝鮮船や中国船が違法操業を増やすだけではないのでしょうか。もう一段実効性のある対策、行動はできないのかとの要望に国も取締りを強化はしてくれていますが、なかなか大きな効果が上がっていないのが実情です。  さらに、こうした北朝鮮や中国の漁船の違法操業の影響に、海水温の上昇という気候変動の影響による不漁も重なって、我が国の漁船によるイカの水揚げは大幅に減少し、山形県では昨年度、中型船による冷凍イカの水揚げが過去十年で最も少ない七百七十四トンにとどまりました。全国でもスルメイカの漁獲量、二〇〇九年には約二十二万トンもあったのに、二〇一八年には五万トンを切って過去最低になっています。日本の漁業の危機と言ってもいい状況です。  我が国の排他的経済水域を守り、また水産資源を守り、イカなどの食文化を守るためにも、大和堆周辺での海上保安庁、水産庁の更なる取組や、外務省からもあらゆるチャンネルを通じて中国、北朝鮮への強い抗議も求めたいと思います。  ただ、その一方で、国同士がいたずらに緊張を高めて非難を繰り返しても建設的な未来にはつながりません。イカの不漁の原因は、違法操業による乱獲だけではなく気候変動、地球温暖化による海水温の変動も指摘されています。イカの産卵場所は東シナ海。東シナ海で生まれたイカが成長しながら日本列島に沿って北上、再び東シナ海に帰り産卵します。この東シナ海の水温が変化し、イカがふ化しても成長できない状態が不漁の一つの原因だといいます。  当たり前のことですが、海は各国とつながっています。もちろん日本の権利もしっかりと守りながら、まさにこの調査のテーマ「海を通じて世界とともに生きる日本」、東シナ海と日本海に面する国々と今こそ共に協力して、海の資源を守り育てる漁業推進や、環境を守り気候変動と闘っていく、海を通じて世界とともに生きる日本を実現していくべきなのではないでしょうか。  意見を述べさせていただき、ありがとうございました。
  102. 鶴保庸介

    会長鶴保庸介君) 他に御発言はございませんか。──他に御発言もなければ、委員間の意見交換はこの程度とさせていただきます。  各委員におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、誠にありがとうございました。  本日伺いました御意見も踏まえ、各理事とも協議の上、中間報告書を作成してまいりたいと存じます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十五分散会