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参考人(
相原康伸君) ありがとうございます。
連合事務局長の
相原と申します。本日はこのような
機会をお与えいただきまして、誠にありがとうございます。どうぞよろしく
お願いを申し上げます。
まず、私は、
中央教育審議会、この働き方
改革特別部会に
委員として参画をさせていただきました。まさにこれ、一七年の七月から一九年の一月までという大変長期にわたる、回数も重ねた
部会となりました。多くの
意見を各
委員が積極的に
発言されたことも併せて御報告申し上げたいと、このように思います。
働き方
改革、とりわけ
学校現場を変えていくためには、一つとして
教員の
業務を削減していくこと、そして
教職員定数の改善を図っていくこと、
給特法の
見直しを進めていくこと、これが対策の三つの柱であろうと、このように思い、長時間
労働を着実に是正するための具体策を導き出す必要があると、このように申し上げてきたところです。その中でも、とりわけ
給特法につきましては、
特別部会の第一回目から、私の方より、
教員の時間
意識を希薄化させている土台にこの
給特法があるのであれば、もちろん
見直しの対象にすべきではないかということを申し上げてきたところです。
給特法は、
教職員が働く上でのもちろん納得性の低さやディーセントワークの障害となっており、その上で、
教職員の努力が報われるようにしなければ
子供たちの学びの質にも影響するのではないかという懸念を申し上げてきたところです。あわせて、本来のあるべき姿とすれば、
給特法を抜本的に見直すことで、
教員にも
労働基準法三十七条を適用し、時間外
労働には割増し賃金を支払うべきであるということを申し上げてきたところです。つまり、
教員の皆さんが
学校校務に従事している時間を
勤務時間として認めた上で、時間外
労働にはその対価として割増し賃金を支払うということを原則であるのではないかと、このように申し上げてきたところです。
給特法の抜本的な
見直しに向けた論議が必要であることを本
部会を通じて
指摘してきたことを御報告したいと思います。
なお、
特別部会におきましては、
文部科学省から、現在の
教員の
残業時間、
小学校の
教員では年換算にして平均で約七百八時間、中
学校の
教員としては年換算で平均して約九百七十二時間、これ二〇一六年の調査結果を基としておりますが、ということを基にして、労基法三十七条を仮に適用した場合の
残業代の試算結果をその
部会の中でも
文科省より御報告されております。その結果、国と地方で合わせて約九千億円の財源が必要になるとの結果も示されたところです。
教員が長時間
労働の毎日を送っていることが明らかになったと同時に、
現状におきましては、大変残念ながらというふうに言わざるを得ませんが、
給特法の在り方そのものについての
審議には一定の制約があるということも、これも明らかになったというふうに言わざるを得ないと、このように考えております。
二〇一九年一月に
特別部会としてまとめた
答申案では、
給特法や
教育公務員特例法、地方
教育行政の組織及び運営に関する
法律といった法制的な枠組みを含め、必要に応じて検討を重ねることも必要である、さらには、
文部科学省としては、各地での取組の進展を
把握すべく、今回の論議のスタートとなった
教員勤務実態調査と比較できる形で、三年後をめどに
勤務実態の調査を行うべきであるとして、
給特法の抜本的な
見直しの具体的な着手には今回は至ることはできませんでした。
文部科学省においては、三年後の
勤務実態調査を確実に実施し、その結果に基づいて改めて
給特法の在り方について検討を進めていただきたいと、このように考えているところであります。
なお、参議院で
審議されております今回の
給特法改正案には、一つ、
勤務時間の
上限に関する
ガイドラインを
指針として位置付け
法的根拠を持たせること、そして二つ目に、一年
単位の
変形労働時間制の
導入を可能とすることの二点が盛り込まれております。大きくこの二点について、私ども連合の考え方を申し述べたいと思います。
まず、
勤務時間の
上限ガイドラインに対する
指針化につきましては、
特別部会におきましても、時間外
労働を規制するために法的な根拠を持たせ、そして実効性を確保することが重要であるということを主張してきたことから、基本的には賛同いたしたいと、このように思います。しかし、
文部科学省の調査、これ二〇一八年ですが、それによりますと、約四割の
学校でしか客観的な
勤務時間管理が現在行われておりません。
その点を含めまして、まずは一つとして、全ての
学校において、ICTやタイムカードにより
教員が校務に従事している時間を
在校等時間として客観的に
把握することが重要です。二つ目として、今回
指針となります
勤務時間の
上限に関する
ガイドラインで定めます時間外
労働の条件、いわゆる原則月四十五、年間三百六十時間ということになりますが、この実効性を確保すること、これが大変重要となります。将来的には、全ての
業務を正規の
勤務時間、いわゆる七時間四十五分以内に終えられるよう
業務削減を進めるとともに、
管理職によります
勤務時間管理を徹底することが重要でありますし、さらには、三年後に行われます
文科省の
勤務実態調査におきまして
勤務の実態を
把握し、その結果に基づきまして
給特法の
抜本見直しを検討することが肝要かと、このように存じます。あわせて、
給特法を抜本的に見直すことで、
在校等時間等を
労働基準法の
労働時間として
把握し、さらには、時間外
労働には三十七条に基づく割増し賃金を支払うこと、この五点を
お願いしたいと、このように思います。
続きまして、一年
単位の
変形労働時間について申し上げたいと思います。
一年
変形労働時間につきましては、中
学校の約六割、
小学校の約三割の
教員が月八十時間以上の時間外
労働を行っている
現状のままでは、繁忙期の時間外
労働の時間を
閑散期とされる
夏季休業などの長期休業中に休日の
まとめ取りとして割り振ることは相当程度困難ではないかと、このように考えるところであります。
特別部会におきましても、
学校現場の実態を鑑み、日常的に
教員の健康と安全を確保するために、一年
単位の
変形労働時間制が最適な解なのか、精密に精緻に検証すべきであるということを
指摘したところであります。
教員が年間を通じて多忙な
状況のままでは期待される効果が曖昧となりますし、この
制度が
導入されたとしても時間外
労働そのものを減らすことにはなりません。したがいまして、
現状の働き方のままでは一年
単位の
変形労働時間制の
導入は相当程度困難ということを改めてここでも申し上げなくてはならないと、このように思います。
休日の増加と日常的な長時間
労働の是正につながるものであること、これらを
目的に、休日の
まとめ取りに限った一年
変形労働時間制であることが十分確認された上で、以下の七つの条件が満たされた場合にのみ、あくまでも限定的に
導入すべきではないかと、このように考えるところです。
七つの条件につきましては、次のとおりです。
一つとして、全ての
学校で
在校等時間を
把握すること、二つ目として、労使協議により精密に検証するよう地方
自治体に徹底すること、そして、
文科省が
夏季休業中の実態調査を行うこと、そして、繁忙期と
閑散期を明確にすること、
在校等時間を際限なく延長しないこと、
教員の個々の
状況を踏まえて特別な配慮を行うこと、
管理職が
勤務時間管理を徹底することなどであります。
民間企業におきましても、一年
単位の
変形労働時間制を
導入する際には高度な
勤務時間管理のスキルが求められるところです。タイムカードによります客観的な時間管理が四割の
学校でしか行われていないことなどを考えますと、
導入するには幾つもの非常に高いハードルがあるということを認識いただきたい、このように考えます。