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2019-11-19 第200回国会 参議院 文教科学委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    令和元年十一月十九日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  十一月七日     辞任         補欠選任      森屋  宏君     世耕 弘成君  十一月八日     辞任         補欠選任      中西  哲君     佐藤  啓君  十一月十八日     辞任         補欠選任      世耕 弘成君     森屋  宏君      蓮   舫君     塩村あやか君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         吉川ゆうみ君     理 事                 赤池 誠章君                 石井 浩郎君                 こやり隆史君                 水岡 俊一君     委 員                 上野 通子君                 佐藤  啓君                三原じゅん子君                 森屋  宏君                 伊藤 孝恵君                 石川 大我君                 塩村あやか君                 横沢 高徳君                佐々木さやか君                 高瀬 弘美君                 梅村みずほ君                 松沢 成文君                 吉良よし子君                 舩後 靖彦君    事務局側        常任委員会専門        員        戸田 浩史君    参考人        全国高等学校長        協会会長     萩原  聡君        日本私立中学高        等学校連合会会        長        学校法人富士見        丘学園理事長        富士見丘中学高        等学校校長    吉田  晋君        福井県立大学学        術教養センター        教授       木村 小夜君        日本大学文理学        部教授      紅野 謙介君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○教育文化スポーツ学術及び科学技術に関  する調査  (高大接続改革に関する件)     ─────────────
  2. 吉川ゆうみ

    委員長吉川ゆうみ君) ただいまから文教科学委員会を開会いたします。  委員異動について御報告申し上げます。  昨日までに、中西哲さん及び蓮舫さんが委員辞任され、その補欠として佐藤啓さん及び塩村あやかさんが選任されました。     ─────────────
  3. 吉川ゆうみ

    委員長吉川ゆうみ君) 教育文化スポーツ学術及び科学技術に関する調査のうち、高大接続改革に関する件を議題といたします。  本日は、本件について、四名の参考人から御意見を伺います。  御出席いただいております参考人は、全国高等学校長協会会長萩原聡さん、日本私立中学高等学校連合会会長学校法人富士見丘学園理事長富士見丘中学高等学校校長吉田晋さん、福井県立大学学術教養センター教授木村小夜さん及び日本大学文理学部教授紅野謙介さんでございます。  この際、参考人皆様に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、大変御多忙のところ御出席を賜り、誠にありがとうございます。  皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の調査参考といたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  次に、議事の進め方について申し上げます。  まず、萩原参考人吉田参考人木村参考人紅野参考人の順にお一人七分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知をいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず萩原参考人からお願いいたします。萩原参考人
  4. 萩原聡

    参考人萩原聡君) 私は、今年度、全国高等学校長協会、略して全高長というふうに呼んでおりますけれども、その会長を務めております東京都立西高等学校長萩原でございます。よろしくお願いをいたします。  まず、私ども高長は、国公私立高校長が加盟している各都道府県校長協会全国組織でございまして、現在約五千二百名の会員を有している団体ということになります。  全高長は、高大接続改革は必要なことであるというふうに考えております。その方向性につきましても、基本的には賛成をしているという立場にございます。  本日は、高大接続改革の中でも、大学入試共通テストにおける国語数学記述式問題の実施方法について一言申し上げさせていただきます。  大学入試共通テストにおいて思考力判断力表現力評価するという記述式問題の導入の狙いにつきましては、高校現場はよく理解をしております。思考力判断力表現力を問う問題につきましては、従来から高校における定期考査に取り入れておりましたが、大学入試共通テストに向け、各学校ではより意識して取り組んでいるというところでございます。  この共通テストにおける国語数学記述式問題の実施についてですが、全高長としましては、都道府県協会長の集まる会議において記述式問題の導入については特に意見の集約は行っておりません。ただ、毎年、全高長の中の大学入試対策委員会全国四百七十校に対して実施したアンケート調査によりますと、記述式問題についてその中で聞いている部分がございます。  その結果からは、記述式問題の導入を期待できるという肯定的な評価が二年前は半数を超えておりましたが、今年の結果では約四割と減少してきているということで、実施に向けての不安が大きくなっているという回答が増えてきているというのも事実でございます。不安要素として大きいものは、民間事業者採点体制を挙げたものが八八%、民間事業者機密保持を挙げたものが六八%というような結果でございました。その他として、採点体制採点基準公平性などについての懸念が上がっております。また、自己採点の精度を高めるために一層の工夫をする必要があるというふうに回答したものが七三%というような状況でございました。  入学者選抜で大切なものは、受験者から選抜する側に対する信頼性であるというふうに考えております。  全国高等学校では、入学者選抜高校入試厳正かつ厳密に行ってきております。問題の機密保持検査実施方法採点作業合格者決定方法模範解答採点基準の公表など、各教育委員会からの指示を踏まえ、校長責任の下、全教員が詳細なマニュアル等検査実施についての共通理解を図り、採点作業でも統一基準で公平な採点実施し、厳正、厳密に高校入試実施に努めてきているという状況にあります。学校では、願書の受付から合格発表、手続完了するまで、特に校長担当者などは緊張の日々が続きます。事故が起こらないよう細心の注意を払っており、一年の中でもこの時期はとても気の重い毎日というふうになっています。  このような公平公正な高校入試経験している高校生や教職員にとりましては、採点者の人選や採点基準の開示時期等がもたらす現在の大学入学共通テストの課題は受け入れにくいというものになっているということがあります。全高長としましては、公正公平な入試実施していただき、生徒が安心、信頼して受験できる制度をつくっていただきたいという、この一点のみがお願いということになります。  共通テストの運営、試験問題の内容採点等につきましては、記述式問題を含め、受験生に不安をもたらさないよう行わなければならないというふうにも考えています。大学入試センター選抜する際の信頼性を確保していただき、受験生保護者教員が不安のないよう実施していただくようお願いをいたします。  大学入試は、受験生にとって一生を左右する重要な試験であります。本校でも、三年生は、午後八時まで自習室利用し、志望校合格に向け今現在も一生懸命頑張って勉強しておりますし、また二年生においても、既に将来の進路希望を描き、授業中はもとより、毎日時間を惜しんで熱心に学習に取り組んでいる生徒が多数いる状況であります。新たな大学入試制度下における現高校二年生の努力がふいにならないよう、生徒努力を適正に評価することのできるよう厳密な制度の運用をお願いをしたいと思います。ずさんな入試制度生徒の日々の努力をふいにしないようお願いをいたしたいと思っております。  以上、全高長からの意見陳述を終わりにします。ありがとうございました。
  5. 吉川ゆうみ

    委員長吉川ゆうみ君) ありがとうございました。  次に、吉田参考人からお願いいたします。吉田参考人
  6. 吉田晋

    参考人吉田晋君) ただいま御紹介いただきました日本私立中学高等学校連合会会長をしております吉田でございます。  本日、私は、私立学校に通う生徒たち思いをというか、代弁者としてこの場に伺わさせていただきました。子供たちはこういう場に出ることができませんので、子供たち自身が今どういう思いで、特に高校二年生、この時期に何ゆえにこの来年のセンターテストについて、大学入学希望者テストですか、につきましてこのような問題が起きているのかということに対して、非常に子供たちは不安を感じておりますし、子供たちにそういう不安を与えたということは、私は非常に大きな大人の責任であったと思って、私も含めて深く反省しているところでございます。  そもそも論で申しますが、この大学入学者選抜改善というものは、平成二十四年八月に民主党政権下の中教審におきまして平野文科大臣から諮問されたのが始まりでございます。  その経過につきましてはいろんな資料も出ておりますけれども文部科学大臣から大学入学者選抜改善をはじめとする高等学校教育大学教育の円滑な接続連携の強化のための方策についてという諮問を受けまして、総会直属高大接続特別部会というものが設置されまして検討が進められました。  そして、高等学校教育の質の確保、向上につきましては、その前にもう、二十三年九月に初等中等教育分科会において高等学校教育部会が設置されて審議が行われ、二十六年六月には審議まとめを取りまとめられましたけれども特別部会においては、この高等学校教育部会との合同会議の開催も含め、精力的に審議を行いました。結果といたしましては、平成二十六年六月まで十六回合わせて行われております。  その間に、二十五年の六月に政府の教育再生実行会議高大接続在り方に関する審議を開始した際には特別部会長出席し、審議が円滑に行われるように私ども特別部会審議状況について報告を行われました。そして、教育再生実行会議におきましては、平成二十五年十月に第四次提言といたしまして高等学校教育大学教育との接続大学入学者選抜在り方についてが取りまとめられたところでございます。特別部会は、その後もこれを基に議論を重ねました。  ちなみに、この第四次提言におきましては、大学教育を受けるために必要な能力判定のための新たな試験、その当時は達成度テスト発展レベル)という仮称でございましたが、の導入という項目がありまして、国は、大学教育を受けるために必要な能力判定のための新たな試験導入し、各大学判断利用可能とする、そして、高等学校教育への影響等を考慮しつつ、試験として課す教科、科目を勘案し、複数回挑戦を可能とすることや、外国語職業分野等外部検定試験の活用を検討する、そして、大学入試センター等が有するノウハウ、利点を生かしつつ、このテストと相互に連携して一体的に行うようにという希望を出されました。  そして、さらには、このテストの結果をレベルに応じて段階別に示すことや、各大学において多面的な入学者選抜実施する際の基礎資格としての利用をすることなど、知識偏重の一点刻み選抜から脱却できるよう利用の仕方を工夫するというふうに、つまり、今までの記憶頼りの一点刻み入試から、それこそ思考力判断力表現力をしっかりと見る試験に変えていこうという思いがこの四次提言で出されまして、その際に外部検定試験英語技能試験等のことも言われたところでございます。  そして、その後、平成二十七年一月に高大接続改革実行プラン文科大臣により決定されまして、高大接続改革に向けた行程表発表され、そして、二十八年三月には高大接続システム改革会議最終報告が提出され、英語技能も今回の記述式の問題も、全ては大学が決めるものではありますけれどもセンターを基にして行うということで発表がされたところでございまして、その後、二十九年七月に大学入学共通テスト実施方針が出されまして、この際にも、実は私ども私立学校は徹底的に抗議を行っておりました。  それは、英語技能テスト資格検定試験であるものを入学試験にしてしまうこと。これについては非常に我々も不安も抱いておりましたし、そして、そういう意味では、もう今の状況においてそこまで急がないで同時並行という話でございましたので、二〇二四年までそのまま二技能を続けておいて、実際に大学英語技能試験資格検定試験を使ってくださっているところも多数出てきているわけですので、並行する形で行い、二四年以降は四技能試験に移行するためにセンターの二技能は一切作らない、ただし、その際、資格検定試験利用するか、若しくはその四技能試験センターの方で作れるというか、業者をどこか一本に絞って依頼するなりをするかというようなことまでお話をしておりました。にもかかわらず、それこそ全高長もそうでございましたけれども大学等の反対に遭い、大学入学共通テストにおける英語試験というものは、あくまでも資格試験入試に使うということでIDという問題が出てきたところでございました、それは十一月一日になくなったわけでございますが。  記述式につきましては、今まで一切そういう問題は出ておりませんでした。ですから、私からすれば、今回急にアルバイトその他のことで言い出したこと自体が非常に不思議でございまして、今の高校二年生はそのつもりで勉強してきておりますので、その子供たちの気持ちをしっかりと受け止めていただけるように先生方お願いしたいと思っております。  以上でございます。ありがとうございました。
  7. 吉川ゆうみ

    委員長吉川ゆうみ君) ありがとうございました。  次に、木村参考人からお願いいたします。木村参考人
  8. 木村小夜

    参考人木村小夜君) 福井県立大学木村と申します。日本近代文学専門とし、これまでセンター入試などの国語入試業務に関わったことがございます。そうした経験を踏まえて、今回は記述式、特に国語記述式問題を中心にお話しさせていただきます。  記述式問題の体制には、多少の改善によっては解決しない致命的な問題点があります。配付資料をお配りしております。これは直近のプレテストですので、是非御自分で解いて自己採点をなさってみてください。  大学入試では、まず問題作成、それに受験生解答採点という段階を踏みますが、センター入試ではこれに受験生自身自己採点という段階が入り、それによって受験生出願大学を決めます。今回の記述問題は、このいずれの段階においても深刻な問題をはらみます。その原因は、大量の記述答案を短期間で採点するという無理にほぼ尽きます。  まず、問題の質と、それを受験生解答することについてです。  ここでは、こちらを御覧いただいたらお分かりですけど、解答字数の最も多い問三に即してお話しします。  採点の便宜を図るために大変多くの条件が付せられ、記述式で本来測るべき学力を測れなくなっております。例えば、条件を厳密に考えようとする受験生ほどその条件の読み取りに時間を奪われ、マークシートにまで費やす時間がなくなってしまうということもあり得る。つまり、採点都合のために問題の質や国語全体の正しい評価が犠牲になる本末転倒が起きます。それどころか、こうした問題では、メーンとなる文章の読解は二の次、受験生は専ら条件付の問いに当てはめて書くという勉強を反復するようになる。これは、逆に言えば、条件を与えられねば書けなくなるということです。これは記述導入本来の目的や大学が求める学力とは真逆のもので、主体的な思考を停止させ、出題意図をそんたくするばかりになります。書くという行為は思考内面化を求める極めて知的な作業であるはずですが、若い人たちに誤った認識を植え付けることは非常に危険です。  次に、自己採点について申し上げます。  試行テストでは、自己採点不一致率が三割以上になってしまいました。問題そのものを解いて自己採点してみると、その理由がよく分かります。私自身、問三について自分解答採点してみて、四段階のうちのaかcかが分かりませんでした。これは記述全体の評価の大幅なぶれにまで及んでしまいます。それでも出願先は決めないといけない。また、自己採点の手掛かりであるはずの正答例正答基準にも多くの問題があります。後で資料を御覧になってみてください。  では、そのような問題をクリアすれば安心して自己採点できるようになるかというと、そうではない。たとえ同じような理解レベルでも百人いれば百通りの解答が出る、それが言葉で書かせる記述式問題の宿命です。また、そうでなければ記述問題を出す意味はありません。  現に、こうした事情から、文科省は各大学に向けて、二段階選抜で門前払いの材料に使わないようにと言おうとしています。しかし、足切りに使えないのなら、それはこの評価に基づいて出願先を決めてはいけないということになります。  実際の採点上の問題に入ります。  各大学が行う個別試験では、規模は様々ですが、作問者採点全般責任を持ち、一堂に会して採点をする。採点中に基準の訂正が必要となれば全体を見直すのは当然で、枚数が限られているからこそそれはできます。また、記述採点者作問者と同じレベル出題意図理解し、出題採点一体であることが大前提です。こうやって各大学はこれまで採点をやってきました。  ちなみに、東北大学先生方報告では、五年前の国立大八十二校で志願者数のうち八五・七%が記述問題を解答していました。記述式を新テストでわざわざ課す理由は元々ありませんでした。  一方、採点業者による方法はどうか。採点者への事前研修など、あらゆる方法採点品質を上げると言っておられますが、これを裏付けるには、プレテストの結果も踏まえ、問題内容の漏えいなども含めた厳格な審査が第三者によってなされなければなりません。  しかし、それ以前に、既にプレテストを二度も実施してからのこの主張、これは入試の厳格さというものを理解されていなかったのではないかと思えます。なぜなら、私もセンター作問していましたから分かりますけれども、これまであれだけ厳格で公平公正であろうとしてきたセンター入試実施体制在り方から、業者主張というのはおよそ懸け離れているからです。  さらに、仕様書には、本試験実施前の業者業務として、採点条件及び採点基準作成への助言及び採点マニュアル作成とあります。採点マニュアルは恐らく実質的な採点基準になってしまいますし、助言や提案ができるということは、詳細な内容事前に漏れて、かつ採点業者によって左右されてしまうわけです。採点基準というのは、あくまでも出題意図を念頭に作問当事者が作るもので、別組織採点側、つまり受注者ですね、の都合が入り込んではいけない。作問採点一体性は守られるべきです。ただし、その二つを共に業者が行うのはもちろん論外です。  さて、このように後手後手になっている様子から察するに、本当に入試作問経験のある専門家の知見を入れて制度設計をされたのかと思えてきます。英語民間試験導入もそうでしたが、既に様々な危惧が専門家から指摘され、プレテストでも無謀と実証されたのに、後付け対策業者に任せ、この体制のまま進めていかれるのでしょうか。また、そんなリスクを冒してまで業者を介入させるのはなぜでしょうか。大学入試はあくまでも各大学が主体となって行うもので、文科省はむしろそれを後押しすべきであるはずです。  本当に主体的、対話的で深い学びを若い人たちに求めるのなら、形だけ教育現場を再現したような会話文状況設定よりも、まずは受験生努力が報われる体制、すなわち、失敗のない公正な入試の実現という当たり前の原点にまず立ち戻っていただきたい。入試体制への信頼あってこそ受験生は本来の主体性を発揮できます。  どうもありがとうございました。
  9. 吉川ゆうみ

    委員長吉川ゆうみ君) ありがとうございました。  次に、紅野参考人からお願いいたします。紅野参考人
  10. 紅野謙介

    参考人紅野謙介君) 日本大学文理学部教員で、紅野と申します。木村先生と同じく、日本の近現代文学研究専門にしております。  昨年から今年にかけまして、大学入学共通テスト国語の問題や新学習指導要領について批評いたしました「国語教育の危機」という本や「どうする?どうなる?これからの「国語教育」といった本を編集、刊行いたしました。これらの著書、編著がきっかけとなって本日の参考人招致を受けたものと考えています。  そこで、この立場から、分析に基づいて、本日のテーマである高大接続、中でも大学入学共通テスト記述式試験について私見を述べたいと思います。  皆さんは入学試験の仕組みは十分御存じかと思います。試験方式には、マークシート式記述式もありますし、小論文や実技をもって採点するものなど、様々な形態があります。それぞれの試験方式には一長一短があります。逆に言えば、人間能力を全て測るような完璧な試験テストというのは存在しないということです。  限定されたルール条件の中で競い合う。だから、そのルール条件を共有し納得していることが公平さや正確さの問われる入学試験の前提であります。言い換えれば、一定のルール条件の下、特定の能力を測る上では合格点に達しなかったけれども、不合格者にもそこでは測り切れなかった別の能力可能性があることを否定しないということでもあります。  大学に進学したかどうか、あるいは大学間の格差についても、確かに学力差はあるけれども、ほかの能力では大いに活躍の場が与えられている、総合的な人間力を測るにはまた別の尺度が要る、そういうバランス感覚のある認識文教政策としては重要なことになります。  さて、焦点となる大学入学共通テスト記述式試験には、三つのレベルで問題があります。  一つは、制度上の問題です。これは今、木村先生からも指摘がありましたので繰り返しを避けて、採点実務体制について一点だけ注意を促しておきたいと思います。  文科省採点業務について委託をしました学力評価研究機構の出した準備状況をめぐる報告書には、細かいいろいろ説明が出ておりますが、採点作業中の問題作成委員採点者の集団の連携方法が全く書かれていません。なぜそれについての言及がないのか、不思議でならないところです。  採点を進めている中で、想定していた採点基準に当てはまらない曖昧でグレーな解答が出てくることが必ずあります。最初にどんなにモニタリングしても、シミュレーションしても、記述式試験採点の場面ではしばしばこうした曖昧な解答に出くわします。何百人に一人かもしれませんが、千人、万人という単位ではもっと頻繁に出てくるでしょう。そのとき、採点基準をめぐる問合せをどうするのか。  会場だけでは結論を出せませんから、作成委員に連絡しなければならない。恐らく、全国十数か所にあるであろう採点会場作成委員をつながなければならないわけです。テレビ会議システムなどで利用するのでしょうが、分業体制採点者作成委員を分業にしましたから、お互いに対面はできないということになります。作成者は非公開というのが原則です。大学入学共通テストとなったら、なおさらそれは厳格になるでしょう。  同じ大学の同僚が作成者と採点者であれば、顔を合わせても守秘義務を生かすことができるでしょうけど、課すことはできるでしょうが、今度の採点者はおよそ一万人と推定されています。かつ非正規雇用者です。互いが見えないようにしながら間接的にやり取りをして、かつ正確な協議を重ねる。これがいかに厄介で正確さを欠くかは想像が付くと思います。まして、二科目、二系統ということになるわけです。この上なく危険なことが行われるように思います。  二点目に、制度と連動する試験内容上の問題点です。  五十万人を対象とした記述式試験という無理を通そうとすると、問題作成の過程で採点しやすさや採点ミスのないことを優先せざるを得ません。先ほど木村先生がお話になられましたけれども国語の一番長い解答には四つも条件が付けられる。文字数の条件を除くとしても三種類の条件を前提にしなければなりませんし、しかも、その条件の文を御覧いただきたいと思いますが、大変分かりにくいものです。これまでの試行調査やサンプル問題でも同様のスタイルでした。  なお、一般的な記述式試験では、文字数については指定はあっても、多くは内容の指定がないものがこれまでの個別の大学入試あるいは予備校等での記述式試験でも使われていたのです。ところが、これは大きく違うスタイルで行われました。採点基準に収まらない多様な解答を避けるためです。  記述式試験の長所とは何か。それは、受験生思考力表現力マークシート以上に測れることですが、様々な解答が出てくる可能性を認めることでもあります。受験生の多様な解答を受け入れることです。様々な解答を想定して正解の採点基準作成委員は作るでしょうが、しかしそれを、必ず想定を超えた解答が出てきます。それを見詰めながらみんなで考える。これを正解にすべきか、減点するにはどうするか、かんかんがくがくの議論になると思います。あれこれ考え、意見の異なる委員たちが議論を重ねて評価を決めて納得のいく評価になっていくわけです。記述式試験というものは問題作成者と受験者の対話だと言えるのは、こうした手順を踏むからです。  したがって、記述式試験というものは本当は事後の指導もできる関係が一番いいわけですが、入試はそうはいかないということになります。想定を超えた解答が正しいか否かを考えてみんなで議論をすることは疲れることですが、入学試験というものの本来の形はそうでなければなりません。こちらが、むしろ問題作成者が陥っている先入観や固定観念を振り返る発見や思索の契機にもなるわけです。  頭の固くなった私たちの大人の想定を超えた解答を書いてくるような受験生こそ評価すべき対象です。グローバル化、多様性、不透明で予測困難な時代に対応する人材、こうした言葉は新指導要領を始め、この間の教育改革にあふれているキーワードですが、記述式試験の長所を殺すような問題の作り方はまさに矛盾しているというふうに言わざるを得ません。  三点目を話す時間がなくなりましたが、こうした試験形式が後に与える長期的影響というものも非常に大きいというふうに思います。少なくとも、自由で多様な予想を超える発想を持った生徒たちをむしろ迎え入れていくことこそ今後の教育で求められることではないかというふうに思います。  時間が参りましたので、私の陳述は以上といたします。
  11. 吉川ゆうみ

    委員長吉川ゆうみ君) ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 佐藤啓

    佐藤啓君 自由民主党の佐藤啓でございます。  参考人皆様方、今日は大変お忙しい中、お時間を割いていただきましてありがとうございます。大変貴重な御意見をいただいたものと思っております。ありがとうございます。  まず、大学入学共通テストへの記述式導入に向けて、既に複数の参考人からその課題なども指摘をしていただいたわけでありますけれども高校大学で、現場でどのようにそれを乗り越えようとしているのか、またどのような対応を取ろうとしているのか、それぞれ四人の参考人にお聞きしたいと思います。大学にいらっしゃる参考人皆様方には、それぞれの大学でどのような対応が取られようとしているのかということについてもお答えいただければ有り難いと思います。よろしくお願いします。
  13. 萩原聡

    参考人萩原聡君) 先ほども一部お話をしましたが、高等学校の方では、実際にこの共通テストに向けてということで、国語に関しては例えば八十字だとか百二十字ということが示されてきているということで、それに向けてということで準備、各学校ではその教科の指導ということでは進めてきているというところがあります。  以上です。
  14. 吉田晋

    参考人吉田晋君) 私ども私立学校といたしましては、既に、大学入学希望者に求められる共通の学力として高等学校教育を通じて育まれる学力のうち、知識、技能を十分有しているかの評価を行う、この思考力判断力表現力等を中心に評価するものであるということを基本にしまして、それに伴いましてしっかりとこの数年間学習を進めてきたところでございます。
  15. 木村小夜

    参考人木村小夜君) 大学がこの共通テスト導入に向けて何を乗り越えようとしているかと、特に記述に関してということですが、まず、問題自体、これまで出てきた材料としては、問題例とプレテスト二回ずつ、合計四つあります。これらの内容評価といいますか、精査が求められている。それは恐らく各大学でやっていると思います。  そして、評価を、A、B、C、D、Eで出てきますから、それをどのように実際用いるのか。結局これは点数化されるわけです。一点刻み教育から抜け出すと、入試から抜け出すという前提があったけれども、結局それは点数化されるわけですよね。そこにそもそも矛盾があるわけですけれども、恐らく大学としては、これをまず評価として使うかどうか、そして、もし点数化するんだったら問題内容の妥当性というものと照らしてどうするかということを現在対応を考えていると、そういう段階というふうに承知しております。  以上です。
  16. 紅野謙介

    参考人紅野謙介君) 先ほど話題にも出ましたけれども文科省から各国公立大学に対して、二次出願に際してこの記述式試験採点部分を除外することも検討するようにというふうな指示が出たということですから、どこの大学も困惑しているというのが正直なところではないでしょうか。つまり、これを入れるべきか、あえて入れるべきか、あるいは外すべきかということを考慮していると思います。  私ども大学は、大きな大学ですので学部ごとに対応が違いますけれども、私の学部の方では国語記述式問題については除外する形で検討したらどうかと言っていますが、しかし、これにも矛盾があるわけです。つまり、百分にしておりますから、記述式試験を最初から捨てて臨む子と記述式試験も受けて臨む子では二十分の試験時間の差が生じるわけであります。これをどのように合理化、正当化できるのかという理屈自体をむしろお示しいただかないと判断に困るというふうな事態になっているというふうに考えます。  ほかの入学試験等に関しては記述式やないし小論文等の様々な形態を課した試験を行っているケースがありますので、多くの私立大学では、そちらではその方向で臨みたいというふうに考えているのではないかというふうに推測をしております。  以上です。
  17. 佐藤啓

    佐藤啓君 それぞれの参考人皆様、ありがとうございました。  木村参考人と、あと紅野参考人に改めてお聞きしたいんですけれども、それぞれの参考人の、木村参考人の場合は、福井県立大学では活用する方向で何かこの課題解決をしていこうというふうにされているという理解でいいんでしょうか。それと、あと紅野参考人の方は、日本大学の方はどちらかというとネガティブな、除外するような方向で検討されているという理解でいいということでしょうか。改めて確認させていただければと思います。
  18. 木村小夜

    参考人木村小夜君) 私の言い方がちょっと誤解を招いたかもしれませんが、十一月に入りまして事態がいろいろと変化しています。今、紅野先生おっしゃったように、二次選抜、二段階選抜の門前払いに使わないようにというふうな、文科省が言っていると。こういうことを前提にもう一度考え直す必要は当然出てくるわけで、本学はまだそういうことについての対応はこれから検討に入るという段階で、まあそういうことです。どちらともまだ方向性は定まっておりませんということです。
  19. 紅野謙介

    参考人紅野謙介君) 誤解のないように申し上げますが、大学全体としてネガティブだということはありません。それぞれの学部ごとに入試を抱えておりますので、学部ごとに判断をするというふうな形になっております。  そして、再来年度入試ということになるんですけれども、これに関しては今協議が進行中のところなんです。大分佳境に入ってきて、いよいよ固めなければならない段階で現在このような状況になって、私どもは困惑しながら判断に迷っているというのが実情でございます。
  20. 佐藤啓

    佐藤啓君 ありがとうございました。  少し話題を変えまして、大学入試においての英語技能評価の仕方についてお聞きしたいと思うんですけれども萩原参考人、また吉田参考人のお二人に、大学入試でそもそもどのようにこの英語技能評価していくことが望ましいと考えていらっしゃるのか、お答えいただければと思います。
  21. 萩原聡

    参考人萩原聡君) 英語技能に関しては、高等学校でも学習指導要領にのっとってということで、その育成に努めてくるということでやってきております。  大学入試の中で、じゃ、どういうふうに活用していくかというところですが、実際には今でも共通テスト大学入試センター試験で今現行やっておりますけれども英語のところではリーディング、それからあとヒアリングの主に二技能を中心に、それからあと、国公立大学であればその後の個別入試というか二次試験においてライティングを、英作文とかですね、をやらせてきているという部分ではある分見れていたかなというふうに思っております。  今後、そのスピーキングの部分について、今高校でも力を入れてやってきているというところで、私どもとしては、できれば今回の新しい共通テストの中で一斉に実施していくことが一番望ましいであろうというのが一番最初の段階ではお話をさせていただいていた部分。ただ、実際にはその採点のとか人数の問題とかということがあって、民間の検定試験利用していったらいいのではないかという流れ。ですから、それを使うのであれば、公正公平な形、要はどこの地域にいるお子さんたちも同じような条件で受けられるような、そういう体制をつくっていただきたいということでお話をずっとしてきたというところです。  本来であれば、やはり四技能大学入試に活用していくということは必要なことだろうというふうには思うんですが、現状で、じゃ、どこまでできるのかというところかというふうには思っております。  以上です。
  22. 吉田晋

    参考人吉田晋君) 恐れ入ります。  先ほど申し上げましたけれども、私どもにとりましては、この英語技能につきましては、そもそもの高大接続改革のスタートとして、日本の今の英語教育において話すことそして書くことが欠けているということで、現行の教育課程の中で高校三年卒業時に英検準二級相当は五〇%以上ということですが、公立高校の実態は今二二%であると。そして、実際にその二二%の一つの理由に、私はこれも費用の問題もあると思っております。そういう意味では、高校一年生の段階から各学校というか教育委員会等において受けるチャンスを与えていただかないと、現行の教育課程においても四技能と言われているわけですので、この四技能評価することが学校でできない部分があるんだとすれば、やはりそこは必要だったと思います。  ただ、現実に、今回の入試において、入学希望テストについて言わせていただけるのならば、ようやくこの前調査で六割近くの大学が使っていただけるということまで発展してきました。  これはやっぱり資格検定試験なんです。先生方御承知だと思いますけれども、今現在、平成二十七年から国家公務員の採用試験、その際の二次試験におきまして、TOEFLiBTで六十五以上あれば十五点加算、八十以上あれば二十五点加算、TOEICが六百以上、七百三十以上、IELTSが五・五以上、六・五以上、英検が準一級以上というようなこういうレベルで、それも実を言いますと五年前の受検までが認められております。その五年前というのは、実際、英検は生涯資格ですけれども、TOEFL、IELTS等は二年間です。ですから、本来であれば資格はもうないんですけれども、それでも高校三年生の時点の資料をこうやって国家公務員試験で認めて使われる、それが大学入試になると使えなくなるという、その状況がおかしいのではないかと思っております。  そして、今、萩原委員のおっしゃった、一つあるんですけれども、実際にその受ける場所の問題ということはあると思っています。我々もそれは心配していました。ですからこれは、逆に言えば、ICT環境がしっかり整うことによって、CBTによる試験にすればそういう問題もなくなるかもしれません。それとともに、この四技能をしっかりやることによって、そういう試験を受ける生徒の数が増えれば増えるほど、当然ながら受検会場も増える、業者にとっては増やすことができるということになっていくのではないかというふうに思っております。  以上でございます。
  23. 佐藤啓

    佐藤啓君 ありがとうございます。  吉田参考人から、国家公務員試験の中でTOEFLだったりIELTSだったりの活用というお話がありました。私もかつて国家公務員であったんですけれども、私が役所に入ったときは、試験を受けたときはそういう制度はなかったもので、ああ、今そうなっているんだなということを改めて知ったんですけれども、一方で、私もその役所に入らせていただいて、役所から、政府の派遣で海外の、アメリカの大学院に留学させていただく機会を得たんですけど、その際にやはりTOEFLを受けないといけない。TOEFLはやはり、一回今だったら二百ドルとか二百五十ドルとか、かなり負担が大きい試験だったなと思います。  ですから、どのタイミングで受けるのがいいのかなと。毎月毎月連続で受けるというのはなかなか、社会人としてもなかなか厳しい、そんなふうに感じたことがあるんですけれども、こういう観点について、先ほどこの費用負担のこともいろいろと考慮をしなければいけないというお話ありましたけれども、こういう部分はどうやって克服していけばいいでしょうか。
  24. 吉田晋

    参考人吉田晋君) 実際問題として、私どもといたしましては、現実に今高等学校卒業でそのまま海外の大学に進学している子が何名もおります。その子たちは全員がTOEFLかIELTSを受けております。  このIELTS一つ取りましても、面白いもので、日本で行われているIELTSにも種類がありまして、IELTSで、大学合格はブリティッシュカウンシルのIELTSで得られるんですけれども、ビザを取るためにはIELTS・UKVIというのを受けなきゃならない。これもちょっとおかなしなあれなんですけれども、そういうことで、二回も三回も受けなきゃならない。  ただ、私どもはおかげさまで私学ですので、保護者の皆さんがそういう大学進学という目的、今現実に日本大学入試受ける場合でも一校四万円とか前後の入学検定料が掛かるわけでございますので、そういう意識を持って親御さんが出してくださっているという状況もあるのではないかなというふうに思っております。ただ、現実には、通常はうちも最初はGTECと英検で始め、飛び抜けてできる子はお父様、お母様たちにお願いをしてTOEFL、IELTSを受けさせるというような形になっております。
  25. 佐藤啓

    佐藤啓君 ありがとうございました。  ここは余り私の個人的な見解を述べる場ではありませんけど、やはりその費用の問題というのは、もちろん私立学校に通っている方々、また公立学校に通っている方々、どういう家庭環境でもやはり公平にある程度そこはチャンスが与えられなければいけないのかなというふうには思っているんですけれども。  余り時間もありませんけれども、二〇二四年度に英語技能評価在り方に向けて検討するということでなっていますけれども、今既に萩原参考人吉田参考人それぞれから大体意見は言っていただいたんですけれども文科省に対して、こういうことに留意して議論すべきということで、改めて指摘すべき点があったらお二人の参考人から御意見をいただきたいと思うんですけれどもお願いいたします。
  26. 萩原聡

    参考人萩原聡君) 新しい制度をつくっていくというところで、ただ、英語に関しては四技能が大切であるということで続けてきている、学校の現場でもということですから、それを何らかの形で評価をきちっとできるような体制がつくれる。  ですから、そこは民間の検定を使う使わない別にして、きちっとそこのところについては何らかの形できちっと結論を出していただくのがいいかなと。そのときに、やはり全国どこにいる受験生も同じような形、ですから今の共通テスト大学入試センター試験のような形で、一度受ける中で全てが受けられるとか、費用的な部分においても一律でとか、やはりそういう部分についての配慮がなされるということが必要かというふうには思っております。  以上です。
  27. 吉田晋

    参考人吉田晋君) 私どもといたしましては、今度の会議こそ、本当に会議で決めたことは大学もそして高等学校も全てが守れることにしていただきたい。  実際に、各大学、協会とか連盟とか国立大学、公立大学先生方出ていらっしゃっていますけれども、皆さんが全然代表ではなく、御自分たちの見解を告げただけだったのかなという心配があります。そして、我々にしましても、私立の場合は全体の意見を常にまとめて会議を開いておりますけれども、実際にやっぱりその会議に出てくる方が、各学校種の代表として、皆さんが子供のためにどうやったら共通テストがしっかりしたものが使えるかということを判断できるというか、しっかりとお話しできる、そういう場にしていただければと願っております。
  28. 佐藤啓

    佐藤啓君 もう時間もあともう僅か二分ほどしかありませんので、現場にいらっしゃる萩原参考人吉田参考人の方で、この大学入試ということにとらわれず、この高大接続に関して何かもし特に言いたいというようなことがあったら御意見いただければと思うんですけど、いかがでございましょうか。
  29. 萩原聡

    参考人萩原聡君) 今回の高大連携という部分に関しましては、やはり大学の主体性、その部分、それからあと、それをつなぐ大学入試の部分ということでいえば大学入試センターなりですね、それからあと、送り出す高校側、そして最終的にはそれを取りまとめる文部科学省の関係ということで、四者がきちっとした形で、お互いにかみ合った上でお互いにきちっと合意できる部分をということで、先に進める形でお願いをできればというふうに思っています。それが将来の子供たちにつながってくるだろうというふうに考えております。  以上です。
  30. 吉田晋

    参考人吉田晋君) 今の萩原先生のおっしゃったことに関しては同感でございます。  そして、更に一言申し上げさせていただくとすれば、私は、あえて今、先ほどの紅野委員意見なんかにもありましたけれども、この試験を使う使わないも大学の自由です。そして、子供たち英語の四技能試験を使うことも大学の自由です。それを早く決定してくれないで、子供たちを迷子にしないでいただきたい。今回も、今、今の段階で先ほど記述式の問題を使うかどうかを考えているなんということを言っていますけど、そんな状態では子供たちには本当にどう指導していったらいいのか、私どもも分かりません。  一日も早くはっきりとした形で出していただきたいですし、私立大学等におきましては、このセンターテストでのこういった試験がない限り、自分のところで受験というか試験を作れない大学もございます。そして、記述式につきましては、使わない問題も、なぜ使わないかというと、理由は、実際にそれを使うために合格発表の日にちがずれる、そのためにほかの大学に取られてしまうという、生徒募集を考えてやっているというケースもないとは言えないということだけは御理解いただきたいと思います。済みません。
  31. 伊藤孝恵

    ○伊藤孝恵君 おはようございます。  四人の参考人より貴重な御意見をいただきまして、また当事者である高校生の声をこの場にお届けいただきまして、本当にありがとうございました。  今、吉田参考人がおっしゃった、子供たちを迷子にしないでいただきたい、まさにその一言に尽きるんじゃないかというふうに思います。  今、まずは記述式の問題について伺いたいというふうに思います。  課題山積である旨の認識は、四人の参考人共通の御意見であったかと思います。その上で、三つの方向性があるのかなというふうに思います。まず一つ目が、課題はあるけれどもこのまま実施可能である、ないしこのまま実施すべきである。二つ目が、延期をしてマニュアルチェンジをすれば実施は可能であるというような御意見。それから三つ目が、もうこれは致命的な瑕疵があるので、制度上の問題があるので、中止にして抜本的にゼロから検討すべきである。主にこういった三つの方向があるかと思いますが、四人の参考人にそれぞれ御意見伺いたいと思います。
  32. 萩原聡

    参考人萩原聡君) 私どもとしてはというか、高校立場としてどれというのは実は非常に言いにくいという問題はあります。唯一言えるのは、やはりこの試験問題の内容採点等について、その記述式問題も含めて、受験生を不安にならないような形で是非ともお願いをしたいという、最終的に文部科学省なりで判断をいただきたいということだというふうに思っております。  例えば、ここで今このまま進むということもあるのかもしれないですし、それからあと、延期をするということもあるかもしれませんし、やめるという選択もあるのかもしれないんですけれども、どれが最適解かというところについては、私の方からは今の段階では言える状況ではないということになります。
  33. 吉田晋

    参考人吉田晋君) 今の現状におきましては、もうここまで進んできておりますので、一番、絶対に実行すべきというふうに考えております。
  34. 木村小夜

    参考人木村小夜君) 私、先ほど陳述させていただいたように、この記述式問題、私たちが参考にできるのは四回出てきた問題例とプレテスト、これに基づいて考えるしかないわけですね。  そうしますと、まずそもそも不要だったんだということが大前提ですね。個別入試記述問題というのはもう物すごく高い割合で出題されているという前提があるわけです。これを第一。それから、実際に作られている問題の質です。それが本来の目的、すなわち記述問題でなくては測れない問題になっていないということです。これでは出す意味がない。それから、公平さ。採点体制、それから自己採点、どちらに関しても、これは公平公正というふうにはとても言えない。  じゃ、これを改善するどんな方法があるのかというふうに考えてみても、六十万人、大量の一斉に全国規模でやる試験記述問題をやるということは不可能です。不可能だからこそ、共通一次、マークシートを使ったわけですよね。マークシート問題というのは問題の中に答えが既に入り込んでいる、それを言わば受験生は見付ければいいという、最も採点に手間が掛からない、でもその分、問題を作成するときにはとことんこれが適切な答えなんだということを考えて作り上げた、これがマークシート方式という、大量の答案で受験生の力を測るのに最も適した形式だったわけです。  そこの根っこを崩してしまう、しかも、そこで測られる能力というものが、先ほど申し上げましたように、むしろ本来の学力に逆行するようなものだとするならば、そういうものでしかあり得ない、条件をがちがちに固めないと採点もできないような記述式問題なんだったら、もうこれはやめるべきです。  それはやってしまって、マークシートだけでも最終的には付けたらいいじゃないかとなるかもしれませんけれどもマークシート記述というのは合計で百分なんですね。ですから、記述式のところで非常に時間を掛けてしまうと、その分マークシートの方に時間が押されてしまうわけです。ですから、記述式を盛り込むことによって、マークシートの方の評価も適切には測れなくなってしまうわけです。  ですから、ばっさりと切ってしまった方がいいと、私は中止がいいと、これは私の私見ですけれども、そういうふうに考えております。
  35. 紅野謙介

    参考人紅野謙介君) 三つの選択肢の中であれば、やはり中止をして抜本的に検討すべきであるというのが私の結論でございます。理由は、今、木村先生がお話しされたことと基本的には同じでございます。  ここまで数年間掛けて検討を重ねてこれまでのような問題例しか作れなかったということは、大学入試センターはもちろん随分努力をされたんだろうと思いますけれども、どうもやはり制度の最初の設計のところにひずみがあったために現状このような形になってしまった。これをもっと早い段階で、なぜ内部の方たちで意見を出して止められなかったのかということの方が大きな疑問となって残っているというふうに考えております。  以上です。
  36. 伊藤孝恵

    ○伊藤孝恵君 では次に、英語の民間試験についてもお伺いしたいと思います。  御案内のとおり、これらは延期をされております。中止ではなく延期というふうに言われております。これらは延期をしてマニュアルチェンジをすれば十分実施は可能というふうにお考えになるのか、それとも、これもまた一から、ゼロから検討し直すべき、中止をして検討し直すべきというふうに考えるのか、それぞれ四人の参考人に伺いたいと思います。
  37. 萩原聡

    参考人萩原聡君) 英語に関しては今回一応延期という形にはなっておりますけれども、私どもも、先ほどもお話ししましたが、四技能をきちっと測定できるような形が望ましいというふうに考えております。  そのための準備期間というか、その次に向けてということで、それがどこまでできるのか。例えば、スピーキングのテストが、やはり五十万人やることが無理、それに代わる形のものがテストとして例えば今の大学入試センター試験のような形の中で十分に見ることができるんだということであれば、その部分については例えば大学の個別入試の中で取り入れていく方法とか、またそちらを探っていくということは一つあるんだろうというふうには思っております。
  38. 吉田晋

    参考人吉田晋君) 私どもといたしましては、あくまでも資格検定試験として今現在も使われているわけでございますので、そういう意味では資格検定試験としての使い方を。これ、あくまでも各大学の自由でございます。我々高校お願いすることじゃなくて大学が決めることですので、大学がそれでいいというのであればそれで済む問題だと思います。  また、センター実施するということに関しては、私は、そこまでのお金を掛けて新しくやるぐらいでしたら、この資格検定試験、きちっとしたものがあるわけですので、そこに対しての個人補助なりでカバーすることの方がよほど有意義で、そして、個別最適化というと言い方は変ですけれども、先ほどの佐藤先生のお話にもありましたように、海外に行くんだったらTOEFL、IELTSじゃなきゃ無理である、英検幾らやっても海外の大学には入れません。そういう意味でいったら、やはり一人一人の個性に合わせた、方向性に合わせた、将来の夢や希望に合わせた試験を選べる現行のこの四技能試験資格検定試験として使っていただけることが最高だと思っております。
  39. 紅野謙介

    参考人紅野謙介君) 英語に関して私は部外者ではありますけれども、しかし、この間、英語教育に関しても国語教育と並んで議論の争点になっておりましたので、様々な議論を拝見している限りにおいては、やはり抜本的に再検討すべきだろうというふうに思います。  先ほど吉田先生がおっしゃられたように、各大学がそれぞれの大学ごとの学問やポリシーに応じた民間試験を指定して、例えばそれを一定の入学資格にする、あるいは何らかの形で加味するということなら分かるんですけれども大学入学共通テストの中に組み入れるというふうな形態自体に無理があるんではないかというふうに考えております。
  40. 木村小夜

    参考人木村小夜君) どうも失礼いたしました。  英語に関しては私は余り詳しくはないんですけれども専門家の方々の意見をどこまで聞かれたのかということについて前回の会議などでもお聞きしております。それで、CEFRの妥当性ですとか、そういうことを本当にきちっと吟味した上でもう一度一から検討し直すということが必要だというふうに考えております。  以上です。
  41. 伊藤孝恵

    ○伊藤孝恵君 済みません、確認をさせてください。  萩原参考人は、このままではなかなか四技能は測れないんじゃないか、なので抜本的にもう一度考え直すべきではないかという御意見でよろしかったですか。
  42. 萩原聡

    参考人萩原聡君) はい、それで結構です。
  43. 伊藤孝恵

    ○伊藤孝恵君 吉田参考人にも確認させてください。  これは、そもそもこの試験というのは必要ないんではないかという御意見でよろしかったですか。
  44. 吉田晋

    参考人吉田晋君) センターとしてやる必要はない、資格検定試験利用すればよいということだと思います。
  45. 伊藤孝恵

    ○伊藤孝恵君 ありがとうございました。  では、今、木村先生それから紅野先生から御指摘がありました、この政策決定過程についての質問をお二人にさせていただきたいと思います。  私、この問いにおける私の問題意識も全く同じところで、政策をつくる際には、各学校種の代表とか、それこそ問題を実際に作っている方とか、又はステレオタイプの言説から逃れられない人たちが集まってつくるんではなくて、重要な政策決定というのが、一部の人ではなくて、もっとちゃんといろんな人の意見を聞くべきではなかったかという問題意識の下に質問をさせていただきます。  紅野先生、特に御著書の中で、残念ながらこの改革は一〇〇%失敗する、それも、失敗であることを自覚せず、だらだらと無限の失敗の道が続くことになると、かなり警鐘を鳴らされております。  では、端的にというか、国語教育についてここは言及されているところですけれども、あるべき高大接続、また文教政策のために、どのような枠組みで事今回に関しては議論をすべきだったんじゃないかというのを、御見解があればお聞かせください。
  46. 紅野謙介

    参考人紅野謙介君) 私も、そのようにかなり強い言葉で批判を書きました。  少なくとも、私たちの下で見ることができるものは、試験問題のモデル問題例とプレテストです、そして新学習指導要領です。これらを見た限りにおいては、具体的なプランがよく分からないというのが本音です。  そして、この政策決定の過程において、本当に、例えば国語教育の現場でおやりになられている先生方、あるいはまた文学の研究を長年やっておられる方々、あるいはまた作家の方々や批評家の方々、こういった人たち意見が吸収されたのかどうなのかということについて大変疑問に思うところがございます。かつては中教審などには評論家の山崎正和先生などが入られていた時期がございましたけれども、今はそういう方々の姿はなくなってきております。そうした委員の選定、そして議論の過程でどこまで多くの現場の意見を吸い上げたのかと、この辺が不透明のように思います。  もちろん、いろいろな現場の校長先生などが参加されているケースもおられますけれども、しかし、どこまでその声がきちんと届いたのか。いろいろな意見委員会の議事録や、また、その後、元委員だった先生方の御意見を仄聞しますと、十分な意見交換がなされないまま、でき上がった結論に徐々に導かれるようにしてこのような事態に立ち至ったのではないかというふうに思われる節があるということです。この辺は私どもとしては大いに問題視せざるを得ないというところでございます。
  47. 木村小夜

    参考人木村小夜君) 私もその政策決定のプロセスということは全然存じ上げておりません。ただ、問題そのものを見た瞬間に、えらく変わったものだなと、その急変ぶりというのは、結局次に出てくる学習指導要領の先取りであるというようなことが見えてきたわけですね。  今まででしたら、やっぱり読むに値する文章、そして問うに値する問いというものを出してきたわけですね、国語の問題というのは。これ当たり前といえば当たり前のことです。ですけれども、そういう側面がもう全部なくなってしまっていると。そして、実用的な文章ですとか、複数のテクストを並べるとか、あるいは教室現場での形だけの会話とか、こういうものがなぜ出てきたのかが全く理解できない。  もちろんそのベースにあるのは学習指導要領だと思いますけれども、そこでうたわれている文句というのは、言葉だけは非常に立派なのですね。主体的、対話的で深い学びであるとか、思考力判断力表現力、当たり前のことなんですね。けれども、そういった理念というものを、何というんですかね、むき出しの形でしゃくし定規に問題に当てはめるとこうなるなというのがもう露骨に分かるような問題なわけです。  理念というのは、繰り返し言えばそれはただのお題目になってしまう。例えば、主体性主体性と十回言ったら主体性という言葉は意味を成さなくなるんですね、お分かりいただけるでしょうか。  そういう意味で、問題そのものがもう露骨に前面に方針が出ていて、その結果として、受験生が問題を解いたときに一体何を解いているのか不明なものになってしまうという。こういうことは、専門家が見れば、これは一体何のための問題なんだという疑問は当然起きるわけです。そういうチェックがどうも入っていなかったというふうにしか思えないわけです。  私は具体例でしか申し上げられませんけれども、そういうふうに思っております。  以上です。
  48. 伊藤孝恵

    ○伊藤孝恵君 木村先生に更に今の陳述についてお伺いしたいんですが、今の入試試験でもその問うべき問いというのはできているというような認識でいてよろしいんでしょうか。
  49. 木村小夜

    参考人木村小夜君) 今というのは現行のですね。
  50. 伊藤孝恵

    ○伊藤孝恵君 現行です。
  51. 木村小夜

    参考人木村小夜君) いろいろと限界はあると思うんです。先ほど紅野先生がおっしゃったように、テストというのは全てを測ることはできないわけですね。ですけれども、少なくとも、ある一定の方向に恣意的に受験生を無理やり誘導して、はい、この範囲で書きなさいというふうな問いかけというのは、問題としては良質のものとは言えない。文章がまとまった形で出されます。それに対して、その文章というのはもう既に、一人の人間が書いたものであってもその中にもう既に対話があるわけですね。問いと答えがあって、自問自答したり人の意見が入ったりしている、他者のノイズも入っていたりすると。そういうものを受験生が読み解けるかということが本来の対話力とか主体性ということにつながるわけです。  ですから、これまでの入試問題というのは、いろいろと限界はあるものの、まとまった文章を読むということにおいてかなり読解力を中心としたいろいろな力を測れていたというふうに考えております。マークシートもそれをベースとして、マークシートの限界を持ちながらもできるところまで質を上げてきたというふうに認識しております。
  52. 伊藤孝恵

    ○伊藤孝恵君 私も実は文学部の国文学科出身でして、卒論は漱石文学における悪女考でした。漱石が描く、か細くて色白で声が小さくて、でも目的を次々に達成していくというその悪女っぷりを一生懸命羅列して立証しようとした二十歳の問いに対して、担当教授は笑わずに、じゃ、どうして、なぜそう読み解いたのか、じゃ、この作品のこの言葉は漱石の何を表しているのかというのをディスカッションをしてくれました。それで自分思考がどんどんどんどん深まっていく。あの経験というのは二十数年たってもまだ私の中に残っております。学生たちが公正な納得のいく受験をした後に、そういった有意義な時間があることを願っております。  そのことを申し上げて、今日は本当に四人の参考人先生方、ありがとうございました。
  53. 高瀬弘美

    ○高瀬弘美君 公明党の高瀬弘美です。  今日は、四名の先生方、大変に貴重なお時間、また貴重な御意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございます。  本日は高大接続改革に関する件というふうになっておりまして、大学入試のことが主にはなっておりますけれども参考人先生方四名とも教育者でいらっしゃいますので、そもそも論として最初にお伺いをしたいと思っておりますことは、今後、今の子供たちが社会で生きていく中でどういう能力、どういう資質が求められていくのか、そういう議論を得て今回の大学入試の改革になり、また大学で教える内容高校で教える内容、こういう改革につながっているわけでございますけれども先生方それぞれのお立場で現場で実際に子供さんたちを見てこられて、今後この子供たちが生きていく中でどういう能力、資質が必要であって、また大学はそのために何を測っていけばいいのか、このお考えを最初にお聞かせをいただきたいと思います。  私の問題意識としましては、今の高校生たちが社会に出て本当に活躍していく十五年後、二十年後になっていきますと、日本社会としては高齢化が進みますし、人口減少社会にもなってまいります。また、今よりもICT技術は確実に進んでいくと思いますし、グローバル社会も一層進んでいることと思われます。  そういう中で、私が学生のときなどはどちらかというと記憶中心で、いろんなものを頭にしっかり残していくことが大事でしたけれども、今これだけインターネットが普及をし、あらゆるものがすぐに調べられるようになりますと、そういう記憶というよりは想像力であったり思考力であったり、それが今回のテストの改革になっていると思いますけれども先生方教育者としてのお考えを最初にお聞かせいただきたいと思います。
  54. 萩原聡

    参考人萩原聡君) 今、私ももう校長としてというところで生徒にも話をしている部分でいいますと、やはりグローバル化が、やはり本校なんかですと帰国子女のお子さんも結構いたりというようなこともあってということもありますけれども、やはりグローバル化してくるだろうと。ですから、英語についてはあくまでも道具として、ツールとしてきちっと使えるようにしていかないと駄目だということで、いろいろな機会を使いながらということで、教科書というか英語の時間も、ですからそういう点ではコミュニティー的な部分を、コミュニティカル的な部分をかなり力を入れてということで授業もさせている部分ではあります。  それとともに、やはりいろいろな発信力というんですかね、いろいろなもの、知識を総合的にまとめて、それで自分で発信していく力。それは日本語で発信していく場合もあるでしょうし、それから英語とか外国の方といろいろ接していくというような部分まであるでしょうから、そこは英語の道具というところですかね、ツール化というところで、自分の考えをまとめて、いろいろな知識を、また足りない部分があれば自分で、例えば本で調べる、それからインターネットで調べるというような部分で総合力を付けさせていくということが必要だろうというふうに思っています。  ですから、高等学校で今子供たちにやらなくちゃいけないのは、例えばICTの技術なり、やはりコンピューターの技術についてなり、それから英語なり、そういう部分をしっかりと学んで、それが今度自分がやりたいことをやれる大学へということで本人たちにも話をしていますけど、そういうときに必要な道具類、ツール類を身に付けて大学に行って、大学から更に今度は海外の大学なりまた研究者なりというような形で進んでいくということが必要かなというふうに思っております。  以上です。
  55. 吉田晋

    参考人吉田晋君) 教育内容につきましては全く萩原委員と同じだと思います。今の時代に求められているものは同じだと思っております。  そして、そういう中で、本当に子供たちが将来、肩で風切って歩くと言ったらオーバーかもしれませんけれども、世界のどこに行ってもそうやって通用するような、そういう子供たちに育ってほしい。そのためには、今言ったようないろんな力、それとともに、日本の伝統文化等も含めて、やはりいい意味での博識というか知識を持ってもらいたいなというふうに思っています。  済みません、以上でよろしいでしょうか。
  56. 木村小夜

    参考人木村小夜君) 余り大きな話をしてしまうともう美辞麗句になってしまうので、私は国語ということにちょっと限定して話させていただきますけれども、結局は言葉というものをどこまで理解できるかということが重要だと思います。  言葉というものは、非常にいろいろなレベルで駆使される。語られる場、例えばこんな公的な場ですね、そういうところで語られる言葉もあれば、私的な場で話されることもあります。あるいは、相手との関係ですね、力関係とか、あるいは自分が相手のことをどう思っているかとか、そういう関係の中において言葉というものは発声されて、それをどう受け止めるかというふうな、物すごく言葉の世界というのは豊かで様々な色合いを帯びてくる。同じ一つの言葉に関しても、それが置かれる局面によって全くそれは違う意味を持ってくるわけです。そういう、何というんですかね、言葉の本質というものをきちっと見抜くといいますか、理解を深めていくということが、これは恐らく国語という教科の範囲を超えて重要なことになってくるだろうと思うわけです。  それは、裏を返せば、この世の中に氾濫しているもっともらしい言葉ですとか、あるいはネット社会で何か立派そうな意見を言っている人がいると、それをすぐに自分意見のようにしてまたリツイートしてしまうというふうな、そういう上っ面な行動に対する反省を促すものにもなります。  要するに、言葉に関しての理解を深めるということは、だまされないということ、本当に世の中を良くしていくとか、自分の身の回りにいろいろな自分の力を分け与えられる、自分がいろいろもらえる、そういう人間関係とか、そういうものをつくっていく上で言葉に関する理解というのは非常に大事だろうなと。ネットが普及している現在、そういうことがこれからの若い人たちには非常に求められる力だというふうに考えております。
  57. 紅野謙介

    参考人紅野謙介君) 先ほど御質問いただいた中で、過去に記憶中心、暗記中心というふうな教育があったというふうな御発言がありましたけれども、私自身は、振り返ってみて、果たして本当に暗記中心だったのかということについて少し疑問が実はございます。  この間の教育改革でしばしば指摘されていることは、一点刻み入試は良くない、それから知識を詰め込む教育は良くないというふうに言われておりますが、しかし、考えてみれば、入試で一点刻みをなくすということは実はすごく難しいことでございます。それは、そもそも入試というカテゴリー自体を大きく変えないといけないということですね。  そして、暗記させられていたものは何だったんだろうか、その攻撃対象は何だということになるわけですが、例えば英語国語では、文法を丸暗記させて覚え続けることだけを授業をやっていたら、それは生徒は付いてこないというふうに思います。ある程度の文法は必ず覚えなければならない、しかし、それは度を超えては授業が成立しない。大学でも、暗記やあるいはまた記憶中心の授業というのはほとんどもうないだろうと思うんですね。実際には、過去においてもそれほどではなかったかもしれません。  もし、入学試験の中で暗記や知識が要求されていたとすれば、それは例えば歴史の試験日本史や世界史、あるいはまた政治経済関係の科目。こういったものに関しては様々な知識が確かに必要とされておりまして、それは問題があるだろうというふうなことは指摘を私自身もかつてしたことがございます。それに対して、既に現行の高校の教科書の中にこうした記述があるので、それを問わざるを得ないんだというふうな話になっておりました。  今回の学習指導要領改訂では、歴史に関しては随分大きく変化がなされております。日本史、世界史の区別がなくなって歴史総合。歴史は総合の方に実はちゃんと向かっております。そういう形で改善されている部分はあると思うんです。  ところが、今回に関してはなぜか矛先が国語英語の方に向かってきたと。これは非常にむしろ不思議なところでございまして、コミュニケーション能力というようなものに何か過剰に強い期待、要求が集まっているのではないかというふうに思います。  そしてそれは、実はコミュニケーション能力は教科の中で獲得するものではなく、むしろ課外活動や特別活動、生徒会活動や運動会や文化祭を運営したりする、こうしたところの中で議論をしたり、意見を集約したりしていくことを通して学ぶのが本来の在り方です。私自身は、大学でもそのような形で学生たちが自由に闊達に発言できるような形の資質や能力というもの、資質を持った者たち、そしてその能力を育てること、それを目指したいというふうに考えております。  以上です。
  58. 高瀬弘美

    ○高瀬弘美君 ありがとうございます。  今参考人先生方のお話を伺っておりますと、一言で言うと総合力が求められる時代となってきているのだろうと。でも、それをまた試験で測っていくというのは大変に難しい問題であるなというふうにお話を伺いながら感じました。  今、記述式のところで様々御意見がございますけれども、今日、木村参考人の方から国語採点の様子について少しお話がございました。採点者皆様が集まって、採点基準に仮に変更があった場合にはそれを共有されて、一緒の統一した基準の下で採点作業が進むようにされていらっしゃるというお話でございました。  百人いれば百通りの解答もあるというふうなお話もございましたけれども、このお話聞くだけでも、この記述式解答というのは非常に時間が掛かり、大変丁寧な作業が必要になるんだなというふうに感じましたけれども、もう少し具体的にといいますか、その採点基準が変わるような場面が起こったときに、どれくらい時間が掛かってその話合い、採点者の中で共有をされるのか、そして、その規模とかにもよるのかなと思いますけれども、その辺も含めて、私どもはなかなかこの採点の現場というのは見ることもできませんし、先生の話せる範囲でお話しいただければと思います。
  59. 木村小夜

    参考人木村小夜君) お気遣いいただきましたように、これ守秘義務の範囲が入ってまいりますので。そうですね、確かに、おっしゃるようにその大学の規模にもよります。本学の場合でしたら、人数少ないですので国語の答案はせいぜい五、六百人分です。これを数名の採点者で二日間掛けてやります。  問題が出てきた時点で、採点者の中には当然その出題者、責任を持って最初の段階から知っている出題者が入っていますから、そこに問合せが来るわけですね。こういう場合はどうなんですかというので、もう一度それについてはこうだというふうになりますね。そしたら、それまでにそういうものがあったかどうかというのをもう一度チェックし直すという、大体そのやり方で二日間、一日半ですね、厳密に申しますと。夜の十時とか、下手すると十二時ぐらいまでになることもありますけれども、そんな感じで大体やっております。
  60. 高瀬弘美

    ○高瀬弘美君 ありがとうございます。  本当にこの記述式というのは、今のお話からも分かるように、採点も難しいと思いますし、様々クリアしていかないといけない点があるということを今日の参考人質疑を通しながら感じているところでございます。  英語民間試験についてもお尋ねをさせていただきたいと思います。  英語の民間試験導入は延期されたわけでございますけれども、この英語民間試験をどうするかという議論があったときから私が感じていたところでありますけれども、四技能を今高校で教えているわけでありますが、学校ごとでの習熟具合というのに差があるのかどうかという点。これは萩原参考人と、また吉田参考人にお伺いをしたいと思いますけれども、特に今回新しく試すことになります、話すこと、書くこと、スピーキングとライティングにつきまして、果たして全国同じレベルまでの習熟度と言えるところまで来ているのかどうか、これを現場の感覚としてお答えいただければと思います。
  61. 萩原聡

    参考人萩原聡君) 実際に中学校三年生のところでの学力文科省の方で調査英語の方でやっているところでも、スピーキング力のところではかなりばらつきがあるという状況に、そういう結果が出ております。  当然、その段階子供たち高校に入ってきていますので、高校での段階もかなりばらつきがあると。スタートの段階での差があるというところから実際には授業等でどこまで引き上げていけるかどうかというところで、ですから、全部の学校が全部同じレベルにまでなかなか達しているというところではないだろうというふうには思っております。ただ、どの学校でもそれに対しての取組をということで今進めてきているというところではあります。
  62. 吉田晋

    参考人吉田晋君) はっきり申し上げまして、全ての学校が一律ということは間違ってもありません。高等学校は義務教育から入学試験を経て入ってきていますので、言い方は変ですけれども、各学校によって学力差というのは大きく違います。私立学校におきましても、何か皆さん、私立学校って何かお金持ちで、そして優秀な子が多いみたいに思われますけれども、決してそんなことはありませんで、特に地方に行けば行くほど、公立学校の補完校的な要素で、行けない子が入っていたりとか、そういう学校もあるわけで、もっと極端な言い方したら、九九もできない、アルファベットも書けないような子がいる学校もあるのも事実です。  ですけど、それぞれの学校がその学校の持つ建学の精神に基づいた教育実施していく、そして、そういう中で文部科学省から提示されている学習指導要領にのっとって努力をしていることは事実でございますけれども、その四技能がずばりみんな同じかということは間違ってもありませんし、実際、高校三年生約百万人いる中で、センター受ける子は五十万人ですよね。それ一つ取っても御理解いただけるんじゃないかと思いますけれども、やはり個人による学力差というのがあることは事実ですので、学校間の学力差もあることも事実だと思うし、教育内容に格差があることも事実だと思っております。
  63. 高瀬弘美

    ○高瀬弘美君 ありがとうございます。  吉田参考人に引き続きお伺いをしたいんですけれども平成二十九年六月に日本私立中学高学校連盟の方から出ております意見書の中に、各生徒利用できるICT環境の整備が不十分であるという記述がございます。今の私が質問させていただいたスピーキングとライティングのレベル全国的に標準というところまで来ているのかどうかという問いに対しても、今、吉田参考人の方からそういうことはないというお話ございました。  これとこのICT環境が全国で整備がまだまだ不十分であるというところ、この部分に関連性があるのかどうか。つまり、これから一年掛けて、大臣の下で検討会を置いて、この英語民間試験も含めて英語技能をどうやって測っていくのかということは再び議論をすることになります。その際に、このICTの整備という面も私は大事な面だと思っておりまして、この点についてのお考えを聞かせていただきたいと思います。
  64. 吉田晋

    参考人吉田晋君) ありがとうございます。  ICTにつきましても、本当に大きな格差がございます。  それゆえに、現実に今学校によってやっていることが違うわけですけれども、単なるペーパーベースのものを全員が見る場合と、それから例えば動画、今オンラインスピーキングなんかやっている学校があるわけですけれども、例えば四十人、五十人の生徒が一斉にオンラインスピーキングをやるとなりますと、今のWiFi環境ではもうとてもいかないという学校が多いです。そして、そういったことがやはり試験とかにも、CBTとかになった場合には不安が来るわけですし、このWiFi一つ取っても、大学も含めてですけれども、全く整備が行き届いていない場所というのはたくさんあるわけですので、是非先生方のお力で、私は日頃からお願いしているんですけれども、NHKの放送権と同じように、各電話業者がWiFiの引込み料を下げていただくとか無償にしていただくとかということも各学校には大きいんじゃないかなとは思っていますけれども、やはりICT環境の整備ということはこれからの教育にはなくてはならないものになってくる、そして英語技能とも絡んでくるというふうに思っております。
  65. 高瀬弘美

    ○高瀬弘美君 参考人先生方、大変に貴重な御意見ありがとうございました。  終わります。
  66. 梅村みずほ

    梅村みずほ君 日本維新の会の梅村みずほと申します。  冒頭、一言だけ立って御挨拶しますことをお許しくださいませ。  本日は、参考人の四名の皆様、大変お忙しいところお越しいただき、現場の声をお聞かせくださいまして本当にありがとうございます。心より感謝を申し上げます。  また、新米議員でございます。これから質問をさせていただきますが、拙い質問もあろうかと思います。御容赦くださいませ。  では、質問をさせていただきたいと思います。  私も、実は今日は手が震えております。国会議員としての初めての質問となりますが、今日、皆様のお話をお伺いしておりまして、二十数年前に、やはり手を震わせながら冬の日にセンター試験を受けたあの日のことを思い出しておりました。高校生たちにとっては、たった一度のチャンス、大学入試ということになります。大人たちのせいで枕をぬらすことがあってはいけないというふうに思っております。  今回の問題ですが、英語の問題にしても、国語数学の問題につきましても、問題となっておりますのは、必要な声を入れた十分な協議がなされてこなかったことと、もう一つ、情報の開示の仕方にも問題があったのではないかと考えております。  参考人皆様それぞれの立場から、情報の開示について、どのような在り方であればよかったかという点についてお聞かせいただければ幸いでございます。
  67. 萩原聡

    参考人萩原聡君) 今回のことに関しては、情報の開示という今御質問の内容ですので、個々で決まっていた、決まった内容とか、その内容について公表していくということが実際には遅かったというか、なかなか物事が決まらない。今回の英語の四技能に関して言えば、実際大学がどういう使い方をするのかというような部分もそうですし、具体的なところがなかなか、あと実施団体の方も、例えば費用の問題、会場の問題、日時の問題とか、そういう部分についてもなかなか表に出て、それが出てきたのが九月末とかいうような状況で、もう実施の一年前になってきていると。ですから、そういう点でいうと、各々の団体の方が情報の開示が遅かったということはあるかというふうに思います。  ただ、その情報を開示させていくためのその上の段階のところがなかなかうまく回っていなかったということが、ですから、各団体さんもそうでしょうし、大学さんの方も、情報を出すにしてもどういうふうに出していったらいいかというところで、なかなかそこの辺りの判断が難しかったのではなかろうかというふうには思います。  情報という点でいうと、我々高校側が受ける情報という点でいえば、そういう部分の問題があったかなというふうには思っております。
  68. 吉田晋

    参考人吉田晋君) ありがとうございます。  今回のこの高大接続改革システムその他につきましても、その度に会議が開かれ、また開示され、パブリックコメントが出されということを繰り返しながらやってきたので、情報は私は開示されていたというふうに思っています。  ただ、例えば大学入学共通テスト実施方針作成に当たっての考え方というのが二十九年の七月に出ているんですけど、そのときに、例えば記述式問題の実施期日を含む全体の制度設計について、二十八年の八月に、記述式問題の導入意義、評価すべき能力作問の構造、採点方法体制等を全体として考慮した上で、一月に実施センター採点する案、それから十二月に実施センター採点する案、一月に実施センターがデータを処理し、それを踏まえて各大学採点する案の三つの案を提示されました。  そして、このうち各大学採点を行う案については、限られた期間の中で実施でき、作問内容の柔軟な設定が可能となるなどの点で優れた選択肢の一つである一方、大学の負担、体制や私立大学入試日程、個別選抜との関係等も考慮し、多くの大学共通テスト記述式問題を活用できるようにするため、①センター解答の形式面を確認し、各大学採点するパターン一、②センター段階別評価まで採点を行い、各大学で確認するパターン二の二つに整理し、二十八年十一月に関係団体に提示されました。  これを受けて、国立大学協会は、二十八年の十二月に大学入学者選抜試験における記述式問題出題に関する国立大学協会としての考え方というのを出されて、全ての国立大受験者に、個別試験で論理的思考判断力表現力等を評価する高度な記述式試験を課すことを目指すこと、パターン二を、具体的な問題例と採点基準等を今後十分に吟味した上で、五教科七科目の中の国語において国立大学の一般入試の全受験者に課す方向で検討すること、パターン一を、各大学個別試験問題として活用することができるよう、各大学の求めに応じて大学入試センターが提供する方向で検討することなどの考えが示されました。  また、日本私立大学連合会の方は、大学入学希望学力評価テストの検討状況に関する意見で、記述式問題を大学採点する案について、日程や体制の問題から実質的に不可能であり、採点の統一性の観点から、センター責任を持って行うことが必要であるという意見を出したというように、そういうことも全てここに書かれているわけですけれども大学サイドが自分たちで採点をできなかったんです。  私は、前からこの件については申し上げていました。公正性、公平性ということを言うんだったら、基本的に記述式問題というのは、私は正解がないものでいいんではないか。やはり、自分たちの考え方とかそういったものをそれに向けることによって、あっ、こういう解答もあったのかというのも一つの採点だと思うんです。しかし、今回の五十万人一斉というのは本来不可能であって、ですから私は、受ける大学に、この記述式の部分だけは各大学に渡して採点してもらえばいいじゃないか、それを言い続けておりました。でも、結局それは認められませんでした。そして、大学サイドも、考え方としてそうやって、まあ楽な道を選んだと言うと言い方は失礼ですけれども、そうなった。  そういう中で、新たに今回、今の、先ほど紅野委員からお話がありました足切り利用しないという問題が出てきたわけですけれども、これも、考え方としては自己採点という制度を今のセンターテスト使っているわけです。このセンターテストというのは、あくまでもマークシート方式で人的なぶれがない入試を今までやってきているわけですので、それに対して自己採点をして自分のポジションがどこにあるかというのを確認することは幾らでもできるわけです。ただ、記述式になったらそれが違ってくるわけですから、それをどう判断するかとなったときには本当に難しい問題があると思います。  実際に国立大学が今のような足切り制度実施している中では、この記述式問題を絶対にやらなきゃいけない、一次選考というんですか、足切りに入れなきゃいけないということは私は文科省で言えないというふうに判断したんだと思うんです、それは記述式の問題の在り方というものを考慮した上で。その代わり、二次試験の際には、必ず一次試験で、一次試験と言うと言い方が変ですけど、センターテストとか入試テストで使ったものを必ず使ってくださいという条件を加えるということを今文科省に私お願いしておりますけれども、そうやって子供たちがせっかくやってきたものを無駄にしない、そして、この試験についても、もう今の高校二年生が中学校一年生のときからスタートしているものであるということに是非振り返っていただいて、子供たちを迷子にしないでいただきたいという思いでございます。
  69. 木村小夜

    参考人木村小夜君) 私どものところには情報としてどういうものが流れてきたかと。実際に情報開示はたくさんされてきたというふうに今おっしゃいましたけれども大学としてそれをどれだけ把握していたか。これは大学にも責任があると思いますけれども、そういうものが余り流れてきていなかったという事実はあると思います。  私が把握していたのは、問題例二回とプレテスト二回ですね。そのプレテストも、一回目は実用的な文章が出ました、部活動ですよね。二回目は指さしという従来の評論問題で出たような問題ということで、問題の出されるものの質が大きく方針転換してしまったわけです。これによって、受験生はどういう方向性で勉強したらいいのかということ、またまた困惑させられたという感じもいたします。  それから、採点方法ですね。採点業務がどういうふうになされるかということについては、これはもう一つぼんやりとした状態ですが、プレテストを実際にやってみた結果、あれは一万人でしたか、小規模で一回やってみて、それでも思っていたよりも時間が掛かった、採点のぶれがこれだけ生じた、自己採点一致率が幾らだったという、そういう情報はいただいております。  これはあくまでも反省材料であって、じゃ、これを基に採点体制はどうするのかということが当然次に問題になってきて、そこで次に登場したのが、業者はこういうことをやりますと、あるいは、センター側が業者との間で契約を取り交わして仕様書というものが作られた。これだけのことは業者に任せます、やってくださいということが出てきたのが、仕様書が出たのは九月ですね、九月末、準備状況について学力評価研究機構が言ってきたのが十一月ですね。つまり、ごく最近になって、ようやく採点体制というのはこんな形でなされるのかということが見えてきた。当然、混乱しているわけです。  直前になればなるほど、時間がたてばたつほど、業者がどういうやり方で採点するかという実態が明らかになってくる、これ英語のときと全く同じです。そんなものにはとても任せられないという意見も当然上がってくる。だから、どんどんどんどん時間が押してくる中で、肝腎な情報がようやく出てくるということになる。  これはなぜそうなるかというと、業者入試というものの本質を分かっていないからですね。模擬試験をやるような感覚でできますというふうに引き受けられたわけですけれども、実際にセンター入試がどういう体制でやっていて、どれだけのことを準備せねばならないかということが見えてきた段階で、やっていますやっていますというふうな、やりますやりますということを次々と後手後手に出していかれる。こういう情報の出され方というのは、いよいよ大学判断決定を遅らせていく。見えないところがずっと続いていたわけですね。そういうことがこの情報開示の在り方としてまず問題があったと思います。  以上です。
  70. 紅野謙介

    参考人紅野謙介君) 今、情報の開示というお尋ねですけれども、むしろその前の段階で、文科省の情報の集約、その整理と分析、そこの部分の方が不十分だったのではないかというふうに思わざるを得ません。  今、木村先生からお話がありましたように、学力評価研究機構に委託されたのは八月以降ですから、夏以降ですので時間は短かったというふうには言えますが、それ以前の段階で各業者に当然様々な形で調査をして、採点在り方等に関しては当然様々な情報を引き出していたはずなんです。それをきちんとやっていれば、五十万人に対する記述式試験というのが不可能であるということは分かったはずです。  先ほど吉田先生からは、大学側の方に採点をお任せすることはできないかというふうなお話がありました。つまりそれは、先ほど私が申し上げた、問題作成採点を分業させようということになるわけです。この分業が実は困難だというのが国語記述式試験の最大の問題点なんですね。国語だけではないかもしれません。記述式試験というものが持っている長所を殺してしまう部分に実はなるんだということです。それをやはりどうして予想できなかったんだろうか。逆に、やらなければならないというプレッシャーの方が大きかったのではないかというふうに思わざるを得ません。  文科省がこれまでいろいろやられている政策の中に、もちろんいろんな様々な苦労をされておられるわけでしょうから、きちんと把握をされておられるはずであるにもかかわらず、この件に関しては、英語に関しても国語に関しても、情報の集約、そしてシミュレーション、そしてそれに基づく開示、通知ですね、これが決定的に遅くなっているのはなぜか。逆に私などの方が疑問に思うところでもあります。
  71. 梅村みずほ

    梅村みずほ君 四名の参考人皆様、ありがとうございます。  先ほど紅野参考人から、やらなければならなくなったというような一言がございましたが、今回、いろいろな声に耳を澄ませておりましても、やはりいつの間にか目的と手段が入れ替わってしまったというような声も聞くところでございます。  萩原参考人にお伺いしたいのですが、情報という点では、英語試験の問題でいいますと、各民間の資格試験の情報をそれぞれの先生が取らなければいけなかったというようなことも耳に入ってまいります。そういった点で、英語の担当の教師の先生たちの御負担はどのようなものだったのでしょうか。
  72. 萩原聡

    参考人萩原聡君) 今回、実施団体が六団体という形になりますけれども、各団体ごとに、うちはこうします、ああしますということが学校にファクスで送られてくる団体、それから、直接セールスでうちはこうですと説明に来る団体、それからあと、インターネット上に上がっているので見てくださいという団体、全部違うんですね、ばらばらで。常にその辺りを把握、じゃ、誰がするのかというところで、そうすると当該の教員がやらざるを得ない。自分たちの今の二年生の担任の中にいる英語先生方がその情報を見て、子供たち子供たちも、インターネット上ですと、先生こういうのが出ていたよということで、意外と生徒の方が早く知っていたり。そうすると、その辺りのところで。そうすると、常にそれを追っかけ見ざるを得ないような状況だったというようなところがあります。  以上です。
  73. 梅村みずほ

    梅村みずほ君 ありがとうございます。  では、変わって紅野参考人にお伺いしたいと思います。  先ほど木村参考人から実用的な文章の出題が重視されることについての弊害のようなものもお伺いしたのですが、その辺り、いかがお考えでしょうか。
  74. 紅野謙介

    参考人紅野謙介君) 実用的な文章については、やはり大きく問題があろうかと思います。  私が用意いたしました配付資料を御覧いただきたいと思いますが、これの二番目、記述式問題の出題傾向についてというものを御覧ください。  これまでありましたモデル問題と二回の試行調査問題の中で、実用的な文章ないし記述式の文章が出ているもののサンプルを挙げました。  モデル問題例一ですと②の街並み保存地区景観保護ガイドライン、これが実用文の一つの典型です。それから、二番目では駐車場の使用契約書です。そして、第一回の試行調査では生徒会の部活動規約です。第二回は記述式では実は異なる問題傾向になりましたが、マークシート式の第二問の方で著作権法が出ました。こういう実用的な文章を試験に取り入れる、四回も取り入れるということは、明らかに意図的にこういう文章を取り入れようという発想だろうと思います。  ところが、これらの問題を細かく見ていきますと、この公共のルールや法や契約に関わる資料に対して、その内側でどう対処するか、つまり、ルールや法そのものを疑うとか、あるいはその表現、言い回しの欠けている部分はないのかとか、問題点はないのかということを問う要素がほとんどないんですね。こうした点においては、条件の根源を問う、弱点を考えるという発想に乏しい、これはかなり内向きな発想になっていると思います。  実用文ということ自体を使うのは悪くはないんですが、その問題の使い方に大きく課題が残されているというふうに考えます。
  75. 梅村みずほ

    梅村みずほ君 ありがとうございました。  お時間となりましたので、質疑を終了させていただきます。
  76. 吉良よし子

    吉良よし子君 日本共産党の吉良よし子です。  参考人皆様には、本日は貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。  では、早速伺っていきたいと思うんですが、この間、英語のみならず、記述式に関しても当初から問題点、疑問点等は指摘されてきたと思うんです。とりわけ、先ほど来御指摘のプレテスト試験問題等が公開されるに当たって、様々な意見、疑問が更に声が高まってきたと考えているんですが、私自身もこの大学入学共通テストプレテスト、問題見てみましたら、断片的な情報が集まった何種類もの文章や図表、会話文など、数多くの資料を読んだ上で、また更に細かい指示に従って解答せよという形式のものだと思うんです。  これというのは本当に受験生思考力判断力表現力を問う、測るにふさわしい問題になっていると思われるのか、ここが最大の疑問なんですけど、それぞれ四人の参考人の方々から御意見、一言ずつ伺えればと思います。お願いします。
  77. 萩原聡

    参考人萩原聡君) 専門の分野ではないので、ちょっと私の方はコメント、決してそれで国語の力を見るという形になるかどうかというふうに言われれば、どうかという、思う部分もありますけど、これについてはちょっとコメントできないということです。申し訳ありません。
  78. 吉田晋

    参考人吉田晋君) 私も同様に専門ではないんですが、ただ、一つだけあれだと思いますのは、やはり、これはセンターの方で、先ほど来読み上げました、何ですか、システムの構築に当たっての会議等で、専門家大学先生方高校教育現場先生方と一緒に作問をして、そしてそれをということで言っておりますので、それを信頼しているということです。
  79. 木村小夜

    参考人木村小夜君) おっしゃるとおり、今までともうがらっとパターンが変わっているわけですね。非常に断片的である、そして複数の資料をたくさん並べて問うというふうな実用的な文章であるということですね。  複数テクストが出てくる、テクストという言葉自体もいろいろ問題があるんですが、こういう問題、実際にマークシートの方にもたくさん出ております。これ解いてみますと、見た目は複数のものを比較対照して答えなさいというふうにぱっと見は見えるんですけれども、実際に解いてみますと、本当に二つを比較して何か思考を問うような問題というのは本当に僅かなんですね。実際はその中の一つを、必要なところをばっと探し当てて、それで答えられるような問題が大部分なんです。つまり、表面的に複数の資料をとにかく提示するような問題を作りなさいというふうな枠がどこかにはまっているとしか思えないわけですね。  それから、今回の一番新しいプレテスト資料としてお配りしてあるものは、これは一人の生徒がレポートを書いていく、そのために順番にいろいろな文献を発見していくという、そういうシチュエーションで作られています。一回目のプレテストは、資料がどさっとまとめて出されて、それを逐一見るような形だったのを、今回は多少丁寧に、問題を追うにつれて資料が次々出ていくというふうな、こういう改善がなされているわけです。  しかし、レポートの作成に付き合うという形で問題をもし解くことができたとして、それはレポートを本当に書く能力を測っていることになるのかというと、全然そうではないわけですね。同じように、対話がいっぱい出てきたりもします。これも、これに関する問題が解ければ、じゃ、この受験生は対話力があるのかといったら、これも全く違うわけです。  ですから、繰り返しになりますけれども、こういう問題の形態というものは、形だけは何かレポートを書こうとか、あるいは複数の資料を比較しようとか、非常に大事な学力を問うているように見せかけながら、実際のところ、解いてみるとそういう力は全く測られていないというふうに私には読めました。  以上です。
  80. 紅野謙介

    参考人紅野謙介君) まさに、複数資料を並べて情報の統合や構造化を行わせようというふうにして見せかけておりますけれども、実際は情報のつまみ食い、複雑な情報の詰まっている一つずつの資料を単純化してほかの資料と結び付けて解釈するというような問いが多用されているという点において多く問題があろうかと思います。  これは、新指導要領の中で、話すこと、聞くことや書くことが強調されて読むことの授業を減らしていく、そういう方針と恐らく連動しておりますので、読むこと自体にきちっと読むということがおろそかになっている傾向にあろうかと思います。その点でも大きな問題だというふうに考えます。
  81. 吉良よし子

    吉良よし子君 おおむね、思考力判断力表現力を問うにふさわしいかどうかというのに関しては疑問があるというのが御回答だったかと思います。  その上で、じゃ、記述式共通テストでわざわざ問う必要があるのかという疑問も湧いてくるわけです。七日に行った文教科学委員会の質疑の中で、大臣は、国立大学の二次試験においては全体の六一・六%が記述式等を課していないというような答弁をされたわけですけれども、本当にそうなのかという疑問があるわけです。  先ほど、木村参考人からも、八五%は記述式何らか課しているなどというお話もあったかと思うんですが、大学教育に携わっている紅野参考人木村参考人、それぞれお二人に伺いたいんですけれども、実際、二次試験等で記述式を課していないという実態があるのかどうか、所属している大学等での入試記述式状況採点方法等も含めて是非お答えいただければと思います。
  82. 木村小夜

    参考人木村小夜君) 配付資料にございます意見陳述中の参考文献の①というのが私が申し上げたことの根拠になります。  今度の共通テスト記述式を入れる根拠となった、その記述が出されていないというのは国語に関してのみのカウントでありまして、こちらの資料を見ますと、記述式問題といいましても本当に単語程度のものを書く、そういう記述問題もあります。そういうものは除いて一定の長さの記述をさせる問題というのがどれだけの割合であるかといいますと、実際にそれを志願者が解答した割合というのを先ほど御紹介しました、これは八五・七%なのですね。問題全体が何問あって、その中で何問記述が出されているかというふうになりますと八七・何%かになったと思うんですね。  当然のことながら、個別入試を作る側は、その手前にセンター試験マークシートがあるということを分かっているわけですから、なるべくそれとは差異化して、センターでは測れないものを当然問おうとするわけですから、もう基本は記述なのですね。ですから、センター記述を入れなくてはならない根拠というものそのものがもう大きく実は間違っていたというふうに私は理解しております。
  83. 紅野謙介

    参考人紅野謙介君) 今お話がありましたように、八五%近くは実際に、国語以外の教科も含めますと記述式試験を課していたというのが実態だろうと思います。  そして、その記述式試験ですが、私の配付資料の一枚目、国公立大学の二次試験出願者・受験者数についてというのに東京大学のケースと京都大学のケースを挙げましたが、御覧のように、そのうちの受験者数のところを御覧いただきますと、大体千人前後、多いところで二千七百ぐらいのものがございます。そして、京都の方でも一部二千人を超えるところはありますが、ほとんどは千人以下と。つまり、記述式試験をやろうとする場合、可能な数字というものがここに大体表れているわけです。  そして、八五%が記述式試験を何らかの形で、つまり、別に国語じゃなくていいわけです。社会、あるいはまたそれぞれの学問領域に合わせた形のそういう論文形式でも構わないわけですから、それらを課しているという以上、目的に応じて試験の形態というのを変えていく、それで十分問題はないというふうに私も考えます。
  84. 吉良よし子

    吉良よし子君 国公立大学の二次試験等、また私立大学等でも、もう十分に記述式によってそれぞれの受験生能力を測るということはもう現行上やられていると。さらに、その記述式採点する規模という、規模感としても適正であると、二次試験等でやることの方が適正であるという、そういう観点からも、共通テスト記述式導入というのはやはりあり得ない選択ではないかなと、意見を聞いて改めて思うわけです。  改めてですけど、紅野参考人、この間の御著書などでは、記述式試験のみならず、今回の共通テストについては様々問題点があると。先ほど来、実用的な文章の問題等も指摘されているのですが、これらはなぜ問題なのか、是非お考えを聞かせていただければと思います。
  85. 紅野謙介

    参考人紅野謙介君) 先ほど実用的文章に関しては申し上げましたけれども、さきの陳述で述べた、条件に合わせた解答を用意するのと同じように、一定の法やルールの中においてのみ解釈をし、その中でどのように交渉するかとか、あるいはどのように振る舞うかとか、こういったことばかりが問いの中に出てきてしまっている。あるいはまた、金太郎あめのように複数の資料が並べられ、会話文が出てくる。これ、国語だけではなく、どの教科にも出てくるんですね。  つまり、よほど問題作成者たちにこのような形式でやれという指示、命令が出されて、そこから逃れられなくなっているとしか思えないような反復、強迫的反復が起きております。それによって問題の質が落ちているということをやっぱり見なければならないだろうと思います。全体にきちんと読解力を身に付ける、読む力が足りないというふうな意見が出てきている一方で、どうしてこのような逆のことが進められるのか、理解に苦しむところでもあります。  先ほど申し上げましたけれども、これから求められるところの人材とは逆方向な形で、世界に羽ばたいていって自由に大胆に自分たちの意見を出し得るような、そういう人材を求めるのであれば、このような試験形式になること自体が実は逆行ではないかというふうに私は考えます。
  86. 吉良よし子

    吉良よし子君 多くの懸念があるんだなと感じました。  やはり、問題の質が落ちてしまうというのは本当に問題だと思っておりまして、私もこの間、プレテストを幾つか見させていただいたんですけど、いや、国語だけではなくて、数学であったり物理であったりしても、様々な太郎さんや花子さんが多数数学の問題に出てくるとか、冗長な文章になっているとか、本当にその能力を測るテストになっているのかということを私自身も疑問を感じた次第です。  こうした実用的な文章が多用される背景には、先ほど来ちらほらと御指摘あるように、学習指導要領改訂等が念頭にあるのかなということもありますし、その大本にあるのが今回の高大接続改革だということだと思うんですけれども、この高大接続改革在り方高校入試大学、三つの局面で全部変えていくという話だと思うんですけれども入試を変えて高校教育を実効性、実用的なものにするための改革みたいなことになってしまっているけれども、じゃ、実際、それで本当に国語教育どういうふうになっていくのか、懸念等をお持ちでしたら、是非、木村参考人紅野参考人、それぞれ、この高大接続改革、とりわけ国語教育に関して御意見いただければと思います。
  87. 木村小夜

    参考人木村小夜君) 受験生は、過去の問題を見て、それに類似した問題、業者が出してくる問題集なんかを繰り返し解いて自分の中にある種のパターンをつくっていくわけですね。例えば、この記述問題であれば、その条件をたくさん出されて、それにいかに対応するか、出題意図は何なのかということをまず優先させて考える。文章そのものを読解するというよりも、むしろ与えられた条件をどう読むかとか、問いかけ文どう読むかということの方にどうしても気を取られていく、こういうことになりますね。そういうやっぱり反復をしていくことによって、まさに入試が変わることによって受験生の勉強の仕方当然変わる。それは、受験生が身に付けるその学力が変わっていくということにほかならない。  だから、それは非常に恐ろしいといいますか、入試の質が、このように、さっき紅野先生も言われましたけれども、がちがちに固められた状態で物を考える、この枠の中で考える。もちろん、入試問題というのは一定の文章が出されてその範囲の中で考えるわけですから、枠というのは当然あるわけです。でも、今申し上げている枠というのはそれとは違うわけですね。こういう書き方をしなさいという、そういう制約の掛け方です。これはやはり、自由に物を考えるという若い人たちの柔軟な発想を、もう受験勉強の段階でどんどん硬直させていってしまうと、そういうふうに思えるわけです。そういう懸念を感じますね。  それから、教育現場を極力再現しなさいという枠も掛かっているような気がします。生徒と先生の会話、あるいはレポートの作成というふうな、あるいは実用的な書面が読めると。果たして、それだけが言葉というものが駆使される場所なのかということですね。実際、私たちが生きている世界というのはもっと広いわけで、物を考える局面というのは何も教室の中だけではないわけですから、こういう場面場面を直接提示してそれで問わせるというのは、余りにも狭い世界観といいますか学力観といいますか、そういうふうに感じざるを得ません。
  88. 紅野謙介

    参考人紅野謙介君) 今回の教育改革のうたい文句は、入試を変えることで高校教育を変えるというふうに言っておりました。しかし、これは本末転倒であります。そもそも、そのような発想に立ちますと、入試を受けない残りの五十万人が視野の外に置かれているということでもあるわけです。  ところが、にもかかわらず、国語に関して言いますと、論理的では思考力を鍛えるのかと思うとそうではなくて、実用性が顔を出してきて、スピーチの仕方やエントリーシートの書き方、あるいは特別予算の申請の仕方、こういったものを高校一年生の科目の中で学ぶというふうなことが授業の指導計画モデルの中に出てきているわけです。これはやはり大きな問題でしょう。そもそも、書くことを優先するために新書の書評を書くという課題があるんですが、新書を読まずに書評を書くということを先にやるというのが私には理解できないところであります。  論理と文学という分け方に関してもいろいろ議論があるかと思いますが、文学は小説や詩歌だけを指すわけではなくて、哲学や思想、科学の科学者の文章も広い意味で文学なんです。それを分けてしまいますと、論理も実はやせ細ってしまうというふうな問題点を考えなければいけません。この辺は、実は三位一体の改革であるがゆえに、入試に表れた問題点は、実は高校のカリキュラム、大学の改革に関しても連動している部分があるということは考えなければならない点だろうというふうに思います。  以上です。
  89. 吉良よし子

    吉良よし子君 ありがとうございました。  思考力判断力表現力を問うとして進められている入試改革ですけれども、実際の問題を見れば、逆にそういう思考や表現を硬直させていったり、論理力を失わせてしまう懸念もあるものになってしまっていると、やっぱりそれは問題だなということをすごく感じたという感想を述べさせていただき、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  90. 舩後靖彦

    ○舩後靖彦君 れいわ新選組の舩後靖彦でございます。  参考人皆様におかれましては、お忙しい中お時間をいただき、本当にありがとうございます。  御覧のとおり、私は声を出すことが困難なため、秘書の代読という形で質問したく存じます。御理解のほどよろしくお願い申し上げます。  代読いたします。  さて、私は、七日の委員会質問でも大学入学共通テストにおける障害学生への合理的配慮について質問いたしました。障害のある学生が新しく導入される大学入学共通テストにおいて、公平公正に試験を受けることができるかについて深い関心を寄せております。本日もこうした課題についてお尋ねしたいと考えております。  高等教育を目指す障害のある子供は年々増えております。日本学生支援機構実施の障害のある学生の修学支援に関する実態調査によりますと、全国大学、短期大学及び高等専門学校で学ぶ学生は、二〇一八年度で三万三千八百十二人に上り、十年前の六千二百三十五人から約五倍となりました。  今後も大学などで学びたいと考える障害のある学生はますます増えていくことでしょう。障害のある生徒能力を公正に評価され、学ぶ場を得ることができるということは、その人が持つ能力を発揮するために不可欠です。試験方式に適用できないことなどを理由に高等教育の機会を逸してしまうのは、これからの日本の社会にとって大きな損失となります。  今回、新しいテスト導入されますが、このまま実施されてしまうと、障害のある生徒にとって貴重な機会から排除されてしまうのではないかという懸念を拭い切れません。  まず、英語民間試験についてです。  この件に関しましては、先般延期が決められ、今後、文科省において検討がなされると聞いております。英語民間試験については、この委員会でも質疑を行い、事業者ごとに配慮の対象者の表記にばらつきがあること、配慮内容についても統一されていないといった問題点を指摘させていただき、萩生田文部科学大臣も対応がばらばらであることを認める答弁をなさいました。  結果的に延期は決められたとはいえ、こうした不透明な状況の中で実施されようとしたこと自体が、大学入学共通テスト問題点を浮き彫りにしていると考えております。  さらに、来年度予定されている記述式試験に関しましても、同じように、障害のある生徒が公平公正に試験を受けることができるのか、強い懸念を抱いております。  例えば、これは大人の方ですが、視覚障害のある方がこのような意見を寄せてくださいました。プレテスト国語記述式試験では多くの資料を読み解く必要がありました。しかし、障害のある人は、同じ分量を読むにしても、目の見える人よりも時間が必要になります。資料の読み解きなどを求められる記述式試験で、視覚障害者がほかの人と変わらず公平に試験を受けるためには、そのための時間延長などが必要だと思いますが、実際にどうなるか分からないので心配しているとのことです。  一方、発達障害のある方からはこんな意見もあります。学習障害の一つで文字の読み書きに困難さを持つ方、ディスレクシアの受験生が非常に不利になるのではないか。読み上げ機能や書字補助機能のあるタブレットやワープロを活用した受験は認められるのか。従来型の入試の場合、アスペルガー症候群の人はマーク形式の試験をパターンで覚えて解いていたが、記述式試験導入で、想像力が欠落する分、記述をまとめ上げられずに不利になるのではないか。字を書く速度が著しく遅かったり、字が極度に雑だったりする発達障害者は不利になるのではないかというものです。  大学入試センターにおいては、記述式試験に関して、点字を使用する受験生に対しては、国語記述式の問題数を減らすことや、字数制限を設けないことなどを予定されているとのことです。また、一般の解答用紙に解答することが困難な入学志願者に対しては、解答欄の大きさなどを変更した用紙を使用できる、パソコンを使用した解答ができるといった配慮を考えているそうです。しかし、詳細な配慮内容については現在検討中で、来年度に公表されるそうです。そこから準備をしなければならない受験生立場で見れば、とても不安なことではないでしょうか。  本日お集まりいただいた皆様も、それぞれ障害のある生徒さんや学生さんと接する機会がおありかと思います。重ねて申しますが、障害があってもなくても、学びたい場所で学ぶことのできる環境を整えることはとても大切だと考えておりますが、皆様も同じ心情だと推察しております。障害者権利条約の理念などに照らしましても、障害のある人が高等教育にアクセスしやすい社会にしていくことが急務と言えます。  そこで、現在予定されている大学入学共通テストにおきまして、現行のまま実施されると障害のある生徒さんにとってどのような問題があると見込まれるのか、その上で、障害のある人にとっても公平公正な試験を行うために文部科学省に対してどのような対応を求めるのか、この二点について、参考人皆様の御意見お願い申し上げます。
  91. 萩原聡

    参考人萩原聡君) これまでも、大学入試センター試験においてはかなり配慮をしている部分があったというふうにも聞いております。また、例えば本校なんかでも、耳が聞きにくいというようなお子さんに対する特別な配慮をお願いをしたりというようなことも今までもしてきております。  今回について、今お話がありましたように、共通テストにおいても、是非とも配慮をすべきことについては大学入試センターの方で是非とも配慮をいただきたいということと、それから、今お話が出たように、事前にその部分が明らかにならないとなかなか受験をするのもためらうというようなお話も今先生の方からもありましたので、やはり是非ともその部分早急に、実施するに当たってはということで提示をいただきたい。また、個別に相談に乗っていただくような形での窓口等々の設置等をお願いをしたいというふうに考えております。
  92. 吉田晋

    参考人吉田晋君) 学校という立場でいうと全く同じ状況でございますので、是非国そして都道府県教育委員会等がやはりきちっとした個別対応をしていただけるような方向付けというかお願いを我々とともに一緒にやっていただきたいというふうに思っております。
  93. 木村小夜

    参考人木村小夜君) もし実施されるとしたらという前提でお話ししますけれども、問題があるということは今お話しいただいたことでよく分かりました。  やはり、記述するということは、マークを一つ付けるということとは全然違って、様々なその障害を持った方にとって非常にハードルが高いという問題はよく分かります。個別試験の場合でしたら、これに関しては、例えば別室受験をするとかいろいろな配慮をするようにしております。  そういったできる限りの配慮というものがセンターであらかじめ準備できるのかどうか、本当にそういうことも含めて、つまり、障害を持った方の公平な受験ができなくなるというのは、もう取りも直さず、そうでない受験生にとってもやっぱりそれは不公平なことになるわけです。出発点が同じでないというのは、もうそれは試験制度としては不備なわけですから、その辺りは完全なものを目指していただきたいと。これはあくまでも実施することになった場合の話であって、私自身はマークだけで十分だとは思っておりますけれども。そういう前提でお聞きください。
  94. 紅野謙介

    参考人紅野謙介君) 大規模なやはり入試の変更に関しては、二年以上前にやはり発表していくというのが基本的なルールであります。当然、この障害ある受験生に対してはどのような形で対応するかということも併せて発表されていなければなりません。そのような時間的余裕がなく詳細は来年にというふうな形になれば、今、舩後議員の方からお話がありましたように、障害を持つ学生たちは準備の時間ができないというふうな形になるわけであります。この辺は、やはりこの試験自体の問題を浮き彫りにしているようにも思います。  また、障害ある学生、受験生というのも多種多様なんですね。その都度ごと考えていかなければならない。逆に言えば、問題を与えてくれる大きな契機として捉えながら、今後の大学入学共通テスト、私はセンター試験の継続でもまだいいと思いますけれども、そのような形で新たに入試を考え検討していくという課題というふうにしていただきたいというふうに考えております。  以上です。
  95. 舩後靖彦

    ○舩後靖彦君 先ほどの質疑の中で木村先生の御意見をお聞きし、ジャッジメント能力を高める試験勉強が必要と解釈いたしました。私も同じ思いにあります。皆様、貴重な御意見ありがとうございます。  その上で、重ねて文学の専門家であります木村先生紅野先生にそれぞれ一点お尋ねしたいと考えております。  現行のままで記述式試験が行われてしまいますと、能力はあるのに実施方法の問題で解答、表現ができない生徒が出てしまうのではないかという懸念が示されています。形に押し込めてしまっては本来ある能力評価できないばかりか、それはひいては障害のある生徒にとって思考や表現の発展可能性を妨げることにもつながりかねないと感じておりますが、御見解をお願い申し上げます。
  96. 木村小夜

    参考人木村小夜君) 本来の能力が発揮できない、評価できない問題になっていることはもうおっしゃるとおり明らかなんですね。ですから、障害を持った方々というのは更にその上でいろいろなハンディを持っていらっしゃるわけですから。  何というのでしょう、思考力というのは、物すごく複雑なプロセスを経てでき上がっていくといいますか、読んだものが自分の中でまず内面化されて、そして言葉に出されるというプロセスというのは非常に複雑なものです。それはやはり個人差があって、深くゆっくり考えて、すごくいい、こちらが思いもしないような考え方が出てくる人もいるわけですね。片や、もう本当にまさにつまみ食いで、正答例に出てくるような答えを簡単に出してしまう、そういう受験生もいます。そういうところがきちっと区別できるような試験問題というものを構築していく。  センター試験というのは、もう非常に時間を掛けて、何度も何度も議論をしてずっと作られてきたわけです。そういう形で作られるものであれば、一・五倍の時間超過、時間を延長することで障害学生の方、障害を持った受験生の方には何とか対応していただいたのかなと思いますけれども記述ということの複雑さといいますか、解答するときのそのプロセスの複雑さ、そして障害の個別性、そういうことを考えたときに、これはやはり不公平感が非常に高くなる感じはいたします。  その辺りは、個別入試だったらきちっと、この受験生はそういう問題を抱えているということを念頭に置きつつ受験の体制というものもつくることができるわけですから、改めてその辺りはきちっと、大量の答案の中にそれが一緒に入ってしまうということをやっぱりよく考えて実施体制というのはつくらないといけないと考えております。
  97. 紅野謙介

    参考人紅野謙介君) この間の議論を見ていて、やはり最大の問題はセンター入試が巨大になり過ぎてしまったこと、その巨大になり過ぎてしまったセンター入試をどういうふうにブラッシュアップするかというところから課題がこのような形の議論になってきたんだろうと思いますけれども、しかし、それでセンター入試をこのような形で変えて何とかなるという発想ではなく、センター入試中心の発想自体を徐々に緩めていく、分散させていくことの方がやはり大事なんだろうと思うんですね。  これは、もっと上位の会議の中で複数回受験というふうな話も当初あったというふうに伺っております。実際にセンター入試を複数回やることはできない。しかし、それ以外の入試、今回、総合選抜入試というふうに名前は変えましたが、AO入試であるとか、あるいは様々な推薦入試であるとか、こういう形態があるわけです。  ところが、AO入試は、少し言葉が悪いですが、ざるのようになってしまっているんじゃないかというふうな意見があって、やはりペーパーによる入試というふうに傾いていってしまったということなんですが、入試形態自体の多様性をむしろ進めていくこと、AO入試自体により力を入れて、もっと学力も測るし、そして個別の能力も測るというふうな形で制度設計をしていけば。大学入学共通テストないしセンター入試にのみ注力して、そこにいろんなものを次々に付けていくうちに、大学教員たちは監督要領という電話帳のようなマニュアルを渡されまして、あの二日間は缶詰になって対応し、あらゆる問題に関して、何ページを開いてください、何ページを開いてくださいで対応していかなければならない、ここにひずみが生じているのは確かなんです。それを改善していくための方法は以前の案の中にも部分的にあったのであれば、もう一度そこを再検討していただきたい。  恐らく、障害を受けた方たち、障害をお持ちの方々が受けるふさわしい受験形式というのがあるんだろうと思うんですね。そうしたものをいろいろ考えていくこと、もちろんペーパーのものも対応できるようにはしますけれども、それ以外の多様な試験形態ということを是非お考えいただきたいなというふうに考えております。
  98. 舩後靖彦

    ○舩後靖彦君 ありがとうございます。貴重な意見をいただきました。  是非、皆様からの問題提起をきちんと踏まえ、少なくとも記述式試験を含む大学入学共通テストについては延期が必要だと考えることを申し上げ、私からの質問を終わりたいと思います。
  99. 吉川ゆうみ

    委員長吉川ゆうみ君) 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人皆様に一言御礼申し上げます。  参考人皆様方におかれましては、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十八分散会