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2019-11-29 第200回国会 衆議院 財務金融委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    令和元年十一月二十九日(金曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 田中 良生君    理事 あかま二郎君 理事 井林 辰憲君    理事 うえの賢一郎君 理事 津島  淳君    理事 藤丸  敏君 理事 末松 義規君    理事 古本伸一郎君 理事 伊佐 進一君       穴見 陽一君    井上 貴博君       石崎  徹君    今枝宗一郎君       大岡 敏孝君    勝俣 孝明君       門山 宏哲君    小泉 龍司君       高村 正大君    杉田 水脈君       鈴木 隼人君    田野瀬太道君       高木  啓君    武井 俊輔君       武部  新君    辻  清人君       中曽根康隆君    西田 昭二君       古川 禎久君    本田 太郎君       牧島かれん君    務台 俊介君       宗清 皇一君    山田 賢司君       山田 美樹君    海江田万里君       岸本 周平君    櫻井  周君       階   猛君    野田 佳彦君       日吉 雄太君    松田  功君       森田 俊和君    石井 啓一君       清水 忠史君    串田 誠一君       杉本 和巳君    青山 雅幸君     …………………………………    財務大臣    国務大臣    (金融担当)       麻生 太郎君    総務大臣        寺田  稔君    財務大臣        遠山 清彦君    厚生労働大臣      稲津  久君    内閣大臣政務官     神田 憲次君    財務大臣政務官      井上 貴博君    政府参考人    (内閣官房内閣審議官)  大西 証史君    政府参考人    (内閣大臣官房長)   大塚 幸寛君    政府参考人    (金融庁総合政策局長)  森田 宗男君    政府参考人    (金融庁企画市場局長)  中島 淳一君    政府参考人    (金融庁監督局長)    栗田 照久君    政府参考人    (総務省大臣官房審議官) 稲岡 伸哉君    政府参考人    (総務省統計局統計調査部長)           井上  卓君    政府参考人    (法務省大臣官房審議官) 竹内  努君    政府参考人    (財務省大臣官房長)   茶谷 栄治君    政府参考人    (財務省主計局次長)   角田  隆君    政府参考人    (財務省主税局長)    矢野 康治君    政府参考人    (国税庁次長)      田島 淳志君    政府参考人    (厚生労働省大臣官房政策立案総括審議官)     山田 雅彦君    参考人    (日本銀行総裁)     黒田 東彦君    参考人    (日本銀行理事)     前田 栄治君    参考人    (日本銀行理事)     衛藤 公洋君    参考人    (日本銀行理事)     吉岡 伸泰君    財務金融委員会専門員   齋藤 育子君     ――――――――――――― 委員の異動 十一月二十九日  辞任         補欠選任   國場幸之助君     務台 俊介君   武部  新君     大岡 敏孝君   辻  清人君     西田 昭二君   本田 太郎君     高木  啓君   宗清 皇一君     杉田 水脈君   櫻井  周君     松田  功君   串田 誠一君     杉本 和巳君 同日  辞任         補欠選任   大岡 敏孝君     武部  新君   杉田 水脈君     宗清 皇一君   高木  啓君     本田 太郎君   西田 昭二君     中曽根康隆君   務台 俊介君     國場幸之助君   松田  功君     櫻井  周君   杉本 和巳君     串田 誠一君 同日  辞任         補欠選任   中曽根康隆君     辻  清人君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  金融に関する件(破綻金融機関処理のために講じた措置内容等に関する報告)  財政及び金融に関する件  金融に関する件(通貨及び金融の調節に関する報告書)      ――――◇―――――
  2. 田中良生

    田中委員長 これより会議を開きます。  開会に先立ちまして、立憲民主国民・社保・無所属フォーラム及び日本共産党所属委員に対し出席を要請いたしましたが、出席が得られません。  再度理事をして出席を要請いたさせますので、しばらくお待ちください。  速記をとめてください。     〔速記中止
  3. 田中良生

    田中委員長 速記を起こしてください。  理事をして再度出席を要請いたさせましたが、立憲民主国民・社保・無所属フォーラム及び日本共産党所属委員出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。  金融に関する件について調査を進めます。  去る平成三十年十二月十八日及び令和元年八月八日、金融機能再生のための緊急措置に関する法律第五条の規定に基づき、それぞれ国会に提出されました破綻金融機関処理のために講じた措置内容等に関する報告につきまして、概要説明を求めます。金融担当大臣麻生太郎君。
  4. 麻生太郎

    麻生国務大臣 平成三十年十二月十八日及び本年八月八日に、金融機能再生のための緊急措置に関する法律第五条に基づき、破綻金融機関処理のために講じた措置内容等に関する報告書国会に提出いたしております。  報告対象期間は、通算して、平成三十年四月一日以降平成三十一年三月三十一日までとなっております。  御審議に先立ちまして、その概要を御説明させていただきます。  まず、今回の報告対象期間中に、金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分は行われておりません。  次に、預金保険機構による資金援助のうち、救済金融機関等に対する金銭の贈与は、今回の報告対象期間中にはなく、これまでの累計で十九兆三百十九億円となっております。  また、預金保険機構によります破綻金融機関等からの資産の買取りは、今回の報告対象期間中にはなく、これまでの累計で六兆五千百九十二億円となっております。  なお、預金保険機構政府保証つき借入れ等の残高は、平成三十一年三月三十一日現在、各勘定合計で一兆九千九百十億円となっております。  ただいま概要を御説明申し上げましたとおり、破綻金融機関処理等に関しては、これまでも適時適切に所要の措置を講じることに努めてきたところであります。  金融庁といたしましては、今後とも、各金融機関健全性にも配慮いたしつつ、金融システム安定確保に向けて万全を期してまいる所存でございます。  御審議のほどよろしくお願いを申し上げます。
  5. 田中良生

    田中委員長 これにて概要説明は終わりました。      ――――◇―――――
  6. 田中良生

    田中委員長 次に、財政及び金融に関する件について調査を進めます。  この際、お諮りいたします。  両件調査のため、本日、参考人として日本銀行理事前田栄治君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として総務省大臣官房審議官稲岡伸哉君、法務省大臣官房審議官竹内努君、財務省主税局長矢野康治君、国税庁次長田島淳志君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 田中良生

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  8. 田中良生

    田中委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。宗清皇一君。
  9. 宗清皇一

    宗清委員 おはようございます。自由民主党の宗清皇一です。  質問機会をいただきまして、ありがとうございます。  本日は、先ほど麻生大臣から御説明がございました三十九回、四十回のFRC報告となっておりますので、一問目に触れておきたいと思います。  金融機関破綻というのは二〇一〇年の九月の日本振興銀行が最後でございまして、過去には、バブル崩壊資産価格下落によって多額の公的資金が注入された時期もございましたけれども、最近の金融機関健全性というのは、大変厳しい中ではありますけれども、維持されていると思います。  しかし、地元金融機関にお話をすると、人口減少や、特に、私の選挙区は東大阪市で中小企業の多いところでございますので、中小企業の廃業、特に最近の低金利環境が長く続くといった課題によって、地域金融機関収益状態というのが大変厳しいものになっていると聞いています。  地域金融機関を取り巻く環境というのはその時代時代で変わっていると思いますが、今後とも安定して継続的に金融仲介機能を発揮をしていただかないと、中小企業そして地域経済の発展はあり得ないと思います。  そこで、大臣お尋ねをしたいと思いますが、過去の教訓を生かして、早目早目対応が必要だと思います。地域金融機関への対応について、金融庁考え方対応について聞かせていただきたいと思います。
  10. 麻生太郎

    麻生国務大臣 いわゆるバブル崩壊後というと、平成が始まりました一九八九年十二月の二十九日、株価は三万八千九百十五円をつけて、史上最高値をつけたんですが、以後、株価は三万八千九百円をつけたことは一回もありません。  まず、動産価格が暴落、続いて不動産価格も暴落して、九一年ぐらいまで上がっていましたけれども、九二年からは土地も下落ということになって、この年から、いわゆる赤字公債の発行が始まったのが九二年ということになりますので、バブル崩壊というのは、多分このころから、資産のデフレーションによる不況というようなものに突入していったんだと思っております。  不良債権というものが深刻化していく、言われましたように、中小企業が金を借りておりますときの担保動産不動産がいずれも大幅に下落したことによって、会社用語で言えば債務が超過したということになりましたので、新しく金を借りられないということになっていったというので、日本経済が、長期的に見て大きな停滞の要因になったというものがあると思いますけれども。  それに対しまして、金融機関側も、取りっぱぐれ等々が必然的に、担保不足等々で、増し担保、追い担保を求めても出せないということから、それが不良債権化する。総額、全額でいきますと、十兆四千億円という金がいわゆる国民負担として確定をしておりますので。  こうした経験を踏まえますと、我々といたしましては、金融機関に対して、財政経済とか金融機関の動向というのをある程度事前に把握して、実体経済に大きな影響を与えるリスクについて、いわゆるフォワードルッキング、前もって対応するといったような、早目に分析等々をやって、金融システムの安定の確保というものに向けて適切な対応をとることが重要であろうと、この前の経験からそういう判断をさせていただいております。  今お尋ね地域金融機関につきましても、足元地域によって、東大阪はどうかよくわかりませんけれども、日本海側、また九州等々、いろいろ人口減少等々が起きておりますので、今の、金があっても金を借りに来る人がいないというこれまでにないような経済状態というのが起きておりますので、低金利環境というものが発生しておりますので、これがかなり長く継続しておるということに伴いまして、経営状況、利ざやで稼ぐという金融業にとりましての厳しい経営状態が続いていると思っております。  私どもとしては、今言われましたように、いろいろなモニタリングを通じまして、地域金融機関早目経営改善というものをやらないといかぬというような話を、自主的な取組をあらかじめしておかないと、後になって立ち行かなくなるとその破綻地域の他の企業に与えます影響が大きいと思っておりますので、きちんとやっていかないかぬと思っております。  また、金融庁の許可というか認可によって、いわゆる地域商社というようなものも銀行ビジネスとしてやれるようにというようなことで、地域金融機関のいわゆる持続可能なビジネスモデルというものの構築に向けた環境整備というのをやって、あらかじめ銀行も調べられる、そういったものをきちんとやっておくというようなことができるような環境整備というものを今後図ってまいりたいと考えております。
  11. 宗清皇一

    宗清委員 大臣、ありがとうございました。  ぜひとも、私の町も中小企業が多うございますので、金融機関の健全な状況というのをちょっと心配しておりますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。  次に、消費物価情勢について、ちょっと日銀さんに何点かお尋ねをしたいと思います。  後に審議される予定の日銀報告、これは平成三十年十二月の分ですけれども、この報告書のときには、物価、おおむね一%上昇ということになっていますけれども、最近、足元では〇・五%程度となっておりますので、前の見通しよりも今の方が物価については厳しくなってきていると思います。  物価というのは、当然ですけれども、需要供給の関係、そして、そのときの経済状態財政状況為替相場原油価格、将来不安、いろいろな要因物価というのは決まってくるだろうと思いますけれども、きょうは、人口構造物価に与える影響について何点かお尋ねをしたいと思います。  我が国人口というのは、これは一昨年の統計ですけれども、四十万人減っております。単純に四十万人が物を買わなくなったということでございます。高齢化率を見ても、六十五歳人口は約三分の一にまで達しておりますし、今、七十五歳人口ももうすぐ一五%ということになります。  他方高齢者方々が働く機会がふえておりますけれども、現役並み所得を得る人はごくわずかだと思います。高齢化になって年金暮らしになれば、当然、それだけ物を買わなくなる、節約志向になるわけです。あわせて、人生百年時代と言われると、自分が幾つまで生きるかわからない、もっともっと長生きするんじゃないか、そういうマインドから、消費についてはマイナス節約志向になると思います。  今後、我が国人口というのは、数十万人規模で今後何十年も減るということが確定しているわけですけれども、こうした高齢化人口減少がデフレの一番の要因になっているのではないかなというふうに今考えています。  そこで、人口減少やその規模消費物価にどのように影響を与えているのか、高齢化の進展が物価消費にどういった影響を与えているのか、この二点について、数値化したものがあればお聞かせをいただきたいと思います。
  12. 前田栄治

    前田参考人 お答えいたします。  高齢化人口減少影響ということでございますけれども、まず経済につきましては、働き手減少などから長期的な成長力低下させる要因となり得るものでございます。また、委員指摘のように、長寿化によって家計節約志向が強まり、将来に備えて貯蓄をふやすのではないか、こういう議論があることも承知しております。  他方で、働き手不足を解消するための投資や新たなイノベーションが生まれたり、あるいは高齢化に伴う健康関連などの需要が創出されたりするといったことも考えられるところでございます。  このように、人口減少高齢化経済に及ぼす影響は多面的でありまして、具体的な数字でお示しすることはなかなか難しいわけでありますけれども、物価に対しましても、御指摘のような押し下げ影響、一方で何らかの押し上げ影響、両方の影響がある、このように考えております。
  13. 宗清皇一

    宗清委員 高齢化人口減少物価消費にもたらす影響について、また新しい知見なんかがあれば教えていただきたいと思います。  政府各種政策の効果もあって、女性方々高齢者方々就業機会が最近随分ふえてきたと思います。労働供給という意味ではこれは大きな成果だと思いますが、日銀展望レポートを見てみますと、共働き世帯消費性向というのは、そうでない世帯と比べて相対的に低くなっております。また、高齢者有業世帯消費性向も、年金収入に依存する高齢者無職世帯に比べて相対的に低くなっておりまして、高齢者就業の増大というのは消費低下に寄与しているということが書かれているんです。  今後も、女性の方や高齢者皆さん労働参加、これはますますふえてくると予想できるんですけれども、そうなれば消費物価マイナス要因が大きくなるのかなと心配もするんですが、女性高齢者皆さん労働参加物価消費のことについて、影響について、短期的にはどのような影響が出るのか、長期的にどんな影響が出るのか、教えてほしいと思います。
  14. 前田栄治

    前田参考人 お答えいたします。  委員指摘のとおり、共働き世帯高齢有業世帯、これが、いわゆる片働き世帯高齢無業者世帯に比べますと、それぞれ消費性向は低いということでございますけれども、これは、それぞれの世帯が一方の世帯に比べると所得が多いため、このように考えております。  ただし、経済全体として見れば、近年の女性高齢者労働参加高まり所得全体の増加を通じて家計部門消費支出全体の増加には寄与している、このように認識しております。  一方で、こうした弾力的な労働供給はタイトな労働需給環境を緩和させる方向に働きますので、短期的には賃金物価が上がりにくい要因として働いている、このように判断しております。  もっとも、御質問のように、長期的な視点から見ますと、女性高齢者労働参加高まりは、いわゆる働き手不足という日本の構造問題に対応するというものでございますので、我が国経済全体の供給力強化を通じて潜在的な成長力を高め、いずれ賃金物価上昇圧力を高めていく方向に作用するもの、このように考えております。
  15. 宗清皇一

    宗清委員 次に、外国人観光客消費物価についてお尋ねをしたいと思います。  我が国人口はこれからも減るわけでございますし、その減る人口消費を補う意味で、訪日外国人をふやして国内消費を賄うというのは理にかなっておりますし、これはこれからも進めていくべき政策だと思います。  まず確認ですが、訪日外国人日本国内消費をすることが消費物価にどういう影響を与えているのか。また、昨年の旅行消費額は約四・五兆円ということで、全体の数字というのはこうして明らかにされているんですが、これから、来年には四千万人を目指し、二〇三〇年には六千万人を目指していますが、この減り行く我が国人口消費というものを訪日外国人がどれぐらい補うことができるのか。御見解があれば聞かせてください。
  16. 前田栄治

    前田参考人 お答えいたします。  最近の訪日外国人による消費は、百貨店や家電量販店といった業種だけでなく、宿泊や飲食などのサービス業も含めて幅広い業種売上げ増加につながっています。  こうしたもとで、訪日外国人旅行消費額は年々増加しておりまして、観光庁統計によれば、二〇一八年は約四・五兆円となりました。これは、同年の民間最終消費支出額三百五兆円の一・五%程度規模となっているところでございます。  また、具体的な数値でお話しすることは難しいわけですが、こうした外国人による消費増加の動きは、関連分野を中心に、多少なりとも物価押し上げに寄与している可能性がある、このように考えております。  この先、御指摘のように、四千万、六千万とふえていけば、さっき申し上げたような消費の額も、それと比例的かどうかわかりませんが、それなりにふえていくということかと思いますけれども、いずれにせよ、海外の需要を継続的に取り込んでいくことは我が国経済成長力強化に資するもの、このように考えております。
  17. 宗清皇一

    宗清委員 次に、金利物価のことについてお尋ねをしたいと思います。  当分の間、低金利が続くと思われますが、消費税も一〇%に上がりましたし、物価というのは少しずつ上がっていると感じている人が多いなと思うんですが、仮に、物価がこれから上昇を続けて預金金利が上がらない場合、利子所得を得られないだけでなく、預貯金の資産価値だけを見ると、物価が上がった分だけ資産価値が目減りするということになります。  もちろん、この間の経済成長によって国民全体の資産価値所得というのは大きく改善している、十分承知していますから、日銀さん、政府のとっている政策には賛同はしているんですけれども、しかし、我が国人口というのは、これから高齢化をしますので、景気回復恩恵金利上昇することによって消費がプラスになるだろう方々の割合が減ります。反対に、賃金上昇恩恵を受けない方々高齢化がこれから進むわけですから、そういった方々は、金利物価上昇に伴って上がらなければ購買意欲低下する懸念もあるわけです。  低金利長期化というのは、消費に一部マイナスになる可能性がございます。これは地元高齢者方々の率直な意見なんですけれども。そして、この人口減少というのは、これから高齢化もずっと続くわけでございますし、こうした人口構造の変化が物価消費に今後どのように影響するのか。今後の政策にぜひ生かしていただきたいと思います。  この点については十分な御認識もあると思いますけれども、留意すべき点だと思いますが、見通し、今後の考え方があれば聞かせてください。
  18. 前田栄治

    前田参考人 お答えいたします。  現在の低金利政策、これが利子所得の下押しに作用することは事実でございます。また、例えば二十年物といった極めて長い超長期金利が過度に低下すると、保険や年金などの運用利回り低下し、マインド面などを通じて経済活動悪影響を及ぼす可能性もある、このように認識しております。  もっとも、現在の緩和的な金融環境は、御案内のとおり、設備投資住宅投資などの経済活動を刺激し、国民所得を全体として増加させておりまして、そうした中で資産価格上昇している、このように考えております。  また、日本銀行では、超長期金利の過度な低下経済活動悪影響を及ぼす可能性があることも念頭に置きながら、金利の形状を念頭に置きながら金融緩和を行っているところでございます。  こうした金融緩和のもとで経済全体が改善し、国民所得の伸びが高まり資産価格上昇すれば、年金収支改善や将来の不安の軽減などを通じて、そのメリットは高齢者方々を含め国民各層に幅広く及んでいくもの、このように考えているところでございます。
  19. 宗清皇一

    宗清委員 御答弁ありがとうございました。  次に、財政について質問したいと思います。  私は、プライマリーバランスの黒字化というのは大変大事だと思いますが、かといって、余りに財政再建だけを優先し過ぎると、せっかくよくなってきた景気に水を差すことにもなりかねませんので、しっかり経済を成長させて税収を上げていく、これが大事だと思います。しかし、受益負担という観点からは、受益を受ける方々に必要な負担を求めていく姿勢も大事だと思います。  二〇二二年から、高齢化によって、社会保障費自然増お金というのは現在の四、五千億から七、八千億程度になりますので、一体このお金を誰が負担するのか、政治家である私たちはこの議論から逃げられないと思うんですね。高齢者現役世代の方も将来世代方々も納得のいく負担について議論する必要があると思います。  そうしないと、今きちっとしたことをしておかないと、将来的に大幅な負担増や給付のカットということもしなければならない事態になるかもしれません。私は、単なる負担増の話をするのではなくて、全世代のために、今、間違いのない判断が求められていると思います。  我が国財政問題は、社会保障費増加に尽きるんだろうと思います。この三十年間の日本予算を見てみると、社会保障費以外はほとんど伸びていません。今、我が国を取り巻く環境というのはとても厳しくて、防災、減災強靱化、そして経済のための予算、外交や防衛の予算も十分に措置されているとはなかなか考えにくいわけですけれども、我が国の将来を考えたら、必要なところにはしっかりお金を回す、ところが、社会保障費の伸びがあって、なかなかそれが難しい状態だと思います。  私は、このふえ続ける社会保障の、これは歳入歳出の両面からしっかり取組を今進めるべきだと思いますし、日本の将来のために財政の機動性というのを高めておく必要があると思います。  そこで、確認をいたしますけれども、もっともっと財政を出動すべきという御意見方々の中に、緊縮財政をしてきたから日本が成長できなかったとか貧しくなったという御意見の方もおられますが、緊縮財政をしていたらそもそもこれだけ赤字財政にはなっていないと思います。いずれにしても、数字できちっと冷静に見ておく必要がありますが、この二十年間の我が国財政支出を諸外国と比べてどうなのか、政府の総支出と社会保障費を含む、含まないの数字を教えてください。
  20. 麻生太郎

    麻生国務大臣 これは、宗清先生、大事な指摘なので、OECDと内閣府のデータをもとにして、いわゆる一九九五年から二〇一五年までの財政規模の推移で比較をしますと、日本の社会保障以外の支出のGDP比というのは、この二十年間の間に二・九ポイント、一八・三%から一五・三%までいわゆる下がったということになりますけれども、減少しているんですが、諸外国と比較して特段に厳しいものであるとは言えないと存じます。  ちなみに、日本が今申し上げたように二・〇ですけれども、アメリカの場合は二・八、七程度下がってきておりますので、そういった意味では、日本だけが特に、社会保障以外の支出が、日本だけが極端に減ったというわけではないということだと思います。  一方、社会保障費を含む日本政府総支出の対GDP比というのを見ますと、高齢化の進展に伴って社会保障支出が急増しておりますので、それによってこの二十年間に六ポイント、いわゆる三三・〇%から三九・〇%に増加をしておりますので、諸外国と比べてもこれはもう明らかに高いので、米国の三七等々に比べましても、明らかに日本の場合は高い。もちろんもっと高いところもあって、イギリスなんかは四〇%を超えておりますから、そういうところもありますけれども。  いずれにしても、そういった比率に推移しているように理解をいたしております。
  21. 宗清皇一

    宗清委員 御答弁ありがとうございます。  今の御説明から、やはり社会保障費の伸びが諸外国と比べて極めて我が国は高いということがわかります。  医療費についてちょっと申し上げたいと思いますが、二〇一七年で約四十三兆ということですが、十年間の伸び率というのは平均で二・四%、そのうち高齢化影響が一・一%。でも、この一・一%も、高齢化で二〇二二年からもう少し大きくなると見込まれると思います。その他の伸びが一・三%ということですけれども、これは高齢化とは関係ないものだと聞いていますが、この医療費の伸びというのは、これを賄う雇用者報酬の伸びを大きく上回っておりまして、保険料の引上げの原因となっています。そして、保険料は年々上がっておりますし、急激に減少していく現役世代の大きな負担となっています。  我が国社会保障制度というのは、社会保険方式をとりながら、実際には、税、公費負担で約五割やっているわけで、その公費負担の財源を確保できないので、将来世代に大きな負担を回しているということになります。  一方、自己負担については、高額療養費制度の影響もあって、実質的な負担率というのは減っているわけであります。  私は、国民皆保険制度を将来にわたって持続可能なものにするため、そして世代間で公平な負担ということを求めていくために、これは全世代のために待ったなしの改革が必要だと思います。そして、高齢化の伸び以外のところには、さまざまな政策的な対応ができると思います。  この御見解も聞かせていただきたいと思いますし、かといって、高齢化分についても、適切な受益負担のあり方、これについては早急な対応が必要だと思いますが、御答弁をお願いいたします。
  22. 麻生太郎

    麻生国務大臣 これは、宗清先生御指摘のように、近年の医療費の伸びというのは、平均二・四%、五%ぐらいになっていると思いますけれども、その半分程度というものはいわゆる高齢化要因によるものだということになっておりますけれども、残り半分、これが、いわゆる高額医療品の登場とか医療行為の変化等々、高齢化以外の要因によるものだとされております。  高齢化以外の部分については、これは御指摘がありましたように政策的な対応がし得るものだというものなんですが、その中で、例えば地域医療構想を推進するとか新規医療薬品等の保険給付のあり方とか、いろいろ重要な検討課題となっておりますのは御存じのとおりなんですが、また、いわゆる高齢化による医療費の伸びというものについても、現在のように将来世代にツケを回しておるというような形で賄っている状態というのを改めて、いわゆる給付と負担というもののバランスの回復を図っていかないと、この国民皆保険制度というのは長期的に安定し得ないということになろうと思いますので。  そういった意味では、私どもとしては、十分な財源を確保できていないわけですから、赤字国債の累積というような状態をどうしても改正をせないかぬということなので、団塊の世代というものが、いわゆる七十五歳以上、後期高齢者入りをすると言われております二〇二二年までに、この給付と負担の見直しというものを始めとする改革というものを、最近いわゆる全世代型とかいろんな表現がされておりますけれども、そこを基本に置いて私どもとしてはきちんとしていかないと、安心したものが後世に残せないことになるというところが今の一番の問題点だと思っております。
  23. 宗清皇一

    宗清委員 よろしくお願いしたいと思います。  次に、プライマリーバランスのことについてお伺いをしたいと思います。  もうこれは最後の質問で、続けて行きますが、二〇二〇年のプライマリーバランスの黒字化というのはもう達成できない見込みとなっていますが、これはなぜできなかったのか、詳細な分析が必要だと思います。消費税の二度の延期や使途の変更、税収が想定よりも低かった、また、この数年は災害対応お金も随分大きなお金が必要だったと思いますが、その原因をどのように分析をしておられるのか。そして、その原因をしっかり分析して、今後の財政運営に生かしていただいて、二〇二五年のこのプライマリーバランスの黒字化、ぜひとも達成していただきたいと思います。  大臣の御見解をお願いしたいと思います。  そして、ちょっと時間がないので、あわせて関連で、もう一つ質問、続けて行きたいと思いますが、このプライマリーバランスの達成というのは、為替相場、円の信認にも関係するんだと思います。  国際金融市場で、日本の円というのは、安全通貨として、世界的な有事やリスクオフの局面では円買いが進む構造が定着しています。どのような要因でこの安全通貨としての円という構造が維持されているのか、今後ともそうした要因は持続可能なのか、将来的に円を信認するための方策、これはやはり財政の問題が大きいと思いますが、こういったことが続かないリスクに備えておくことも大事だと思います。  円が買われるメカニズムについては、今さら言うまでもございませんが、ファンダメンタルズだと思います。経済成長物価上昇率、財政収支、通貨の場合には規制や管理、売り買いのマーケットや自由度というのも要因になってくると思いますが、円が信認されればされるほど投機が起こって、また円買いが起こる、こういうことだと思いますが、反面、我が国のこのファンダメンタルズ、特に財政の部分で信認を失うようなことがあれば、投機が崩壊して円が暴落する可能性も、これは常に考えておく必要があるんだろうと思います。  先ほども触れましたけれども、今後は社会保障のお金が伸びていきますし、財政健全性担保しなければなりませんし、人口減少高齢化といった懸念材料もあります。今後も円が安全通貨として価値を維持できるか、心配の声があるのは当然だと思いますが、なぜ、今、円が安全通貨として信認をされているのか、その理由と、現在の財政状況と円の信認について、見解があれば、あわせて聞かせていただきたいと思います。
  24. 麻生太郎

    麻生国務大臣 言われましたように、二〇二〇年度の実現を目指しておりましたいわゆるプライマリーバランスの、基礎的財政収支の黒字化の目標については、これは、当初予想したようには税収が伸びなかったというのが一点と、もう一点は、いわゆる少子高齢化という、長期的には日本最大の国難はこれだと思っていますけれども、それに合わせて全世代型の社会保障制度へと転換をするということをさせていただいて、選挙によって信頼も得た上で、消費税の引上げをした分の増収分の使い道を見直しをさせていただいた、いわゆる借金の返済よりは全世代型のものにさせていただいたということが一つ大きな理由だと思います。  いろいろな意味で、二〇二五年度までに、五年間、ある程度繰延べさせていただいた形で、いずれにいたしましても、債務残高の対GDP比を安定的に引下げを目指していくということで、幸いに、税収がまた伸びつつあるような感じもいたしますので、その方向で、二〇二五年を目標にやっていかねばならぬところだと思っております。  もう一点、為替の安定に関する実現の上で、通貨の信認という話を御質問だったと思いますが、通貨の信認は、マーケットの思惑等々いろいろあろうとは思いますけれども、経済のいわゆるファンダメンタルというものの強さとか、財政規律が維持されているか等々が、いろいろな総合的なものによってマーケットで判断をされるということになるんですが。  日本財政の場合は、もう明らかに、高齢化の進展に伴います、いわゆる社会保障関係一般の、医療、介護等々いろいろあろうと思いますが、それの増加によってプライマリーバランスの赤字が続いておりますので、公的債務残高というものがいわゆるGDPの約二倍、先進国の中で一番悪いという状況にあるのは御存じのとおりですが。  市場の信認というものが今得ておる最大の理由は、やはり、日本政府対応としては、きちんとした、二〇二五年のプライマリーバランスの黒字化とか、また、そういった目標をきちんと掲げ、いろいろな御意見もありましたけれども、いわゆる消費税を上げさせていただく等々のことをやりながら、きちんとこういった信頼に応えるようなやり方をしておるというような評価をマーケットからもらっているというところなんだと思いますので、引き続き、政府といたしましては、財政の健全化というものをきちんとやりつつ、経済再生、活性化、そういったものをやっていく、通貨の信認維持というのにあわせて努めていくという努力は、両方必要であろうと思っております。
  25. 宗清皇一

    宗清委員 質問機会をいただきまして、ありがとうございました。これで質問を終わります。
  26. 田中良生

    田中委員長 速記をとめてください。     〔速記中止
  27. 田中良生

    田中委員長 速記を起こしてください。  次に、串田誠一君。
  28. 串田誠一

    串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。  きょうは、所有者不明土地問題と税制関係について質問させていただきたいと思います。  御存じのように、所有者不明土地問題というのは大変問題となっておりまして、喫緊の課題ではございます。  全国の所有者不明土地を合算しますと、その面積はもう九州に匹敵するんだというふうに言われています。これが北海道から沖縄まで点在をして所有者が不明になっているわけでございまして、所有者が不明ということは、その土地について活用するときに大変不便である、要するに、交渉する相手もいませんし、そういう意味では、土地の活用、周辺の土地の活用もそうですし、さらには、災害対策に必要な土地の活用というものも阻害されているということでございます。  そういう意味で、現在、この所有者不明土地問題をどういうふうに解決をするのかということにおきましては、報道ベースではございますけれども、税制上検討しているということをお聞きしております。  今の状況をお知らせください。
  29. 稲岡伸哉

    稲岡政府参考人 お答え申し上げます。  所有者不明土地に関連する税制につきまして、最近幾つか報道がなされておりますけれども、私ども総務省に関連するものといたしましては、所有者不明土地に関して、固定資産税の課税に当たり、所有者の調査に多大な負担が生じていることなどの課題に対する対応についてでございます。  この問題につきましては、現在、与党の税制改正プロセスにおいて議論されているところでございまして、私どもとしても適切に対応してまいりたいと考えております。
  30. 串田誠一

    串田委員 今、固定資産税の回答をいただけましたが、所有者不明土地に関して、放棄をするというようなことも検討されています。  所有者不明土地問題の一番の原因といいますのは、相続でございます。一代の相続であれば非常に人数が限られているわけでございますけれども、これが二代、三代と続いていきますと、かなりの数の相続人がその土地に関連してくるわけでございます。  それが大変広い土地であるならば、相続人がいろいろと処分をすることの検討というものも考えられるんですが、それほどでもない広さの中にたくさんの相続人があらわれていくとなると、活用のしようもないし、ほかの相続人が誰であるのかということを調べるのも、二代、三代、四代となっていけば大変困難になるというようなことでありまして、放棄をするということが検討されていることでございます。  その際、固定資産税は、それまでは、従来、相続人不明といいながらも相続人は必ずいたわけでございます。ですから、固定資産税というのは発生しているわけでございますけれども、放棄をしたときにはその固定資産税はどういうふうに扱われるのかということの検討はどうなっておりますでしょうか。
  31. 稲岡伸哉

    稲岡政府参考人 お答えを申し上げます。  御指摘の内容は、現在、法務省を中心に検討されております土地所有権の放棄を認める制度に関連してのお尋ねと思いますが、その内容は現在検討中であり、これを前提としたお答えは難しい点を御理解いただきたいと思います。  その上で、一般論として申し上げれば、固定資産税は、地方税法三百四十三条の規定に基づき、固定資産の所有者に課税するものであり、所有者である間については固定資産税を御負担いただくものでございますが、調査を尽くしましても所有者が把握できない、所有者が不明であるという土地につきましては、実際のところ、固定資産税が課税できないということになろうかと思います。
  32. 串田誠一

    串田委員 今の答弁でございますと、相続登記がなされていない場合には固定資産税の課税がしにくいと。  逆に言えば、固定資産税は相続登記がなされれば課せられるということになると、相続登記をしない方が固定資産税を請求されないで済むというようなことで、所有者不明土地問題を促進してしまうのではないかと思うんですが、実務では今言ったようなことになっているということでよろしいでしょうか。
  33. 稲岡伸哉

    稲岡政府参考人 お答えを申し上げます。  固定資産税の納税義務者でありますが、原則として固定資産の所有者であり、この所有者とは、登記簿上の所有者とされております。また、登記簿上の所有者が死亡している場合には、現に所有する者として、通常は相続人が納税義務者となります。したがいまして、相続登記がなされていれば、登記簿上の所有者に課税することになります。  なされていない場合でございますが、この場合でも、課税庁、市区町村がみずから戸籍や住民票等により相続人を調査し、そして、調査した結果特定した相続人に対して課税をさせていただく、こういうことになるということでございます。
  34. 串田誠一

    串田委員 今お聞きをしていただいたように、相続登記をすれば相続登記の名義人に課税されますけれども、いわゆる相続が行われても、亡くなられた方の名義のままにして二代、三代、四代とかわることがまさに所有者不明土地なわけで、大体が相続登記が従前の、先代の名前のままになっているのが所有者不明土地問題と言われているように言っていいんじゃないかなと思うわけでございます。  そういう意味では、相続登記を、今言ったように、地方自治体が行うということに対して多大な費用がかかるという意味で、相続登記を義務化しようというのが今行われているわけでございますが、その際、小さな土地の場合に、自分はもう二十人も三十人も四十人も相続人がいたとしてもどうしようもないというようなことで放棄をするということを今考えているわけですが、これまでの法律は、相続を放棄することはできるわけですね。そうすると全ての財産を放棄しなければいけないんですが、現在検討されているのは、当該一不動産だけを放棄するという、現行法上は認められない制度というものを今創設しようというようなことでよろしいんでしょうか。
  35. 竹内努

    竹内政府参考人 お答えいたします。  委員指摘のとおり、現行法上、相続が発生した場合に、法定相続人が相続の放棄をしたときは、その相続に関しては初めから相続人にならなかったものとみなされ、相続財産に属する一切の権利義務を承継しないこととされております。  これに対し、現在、法制審議会民法・不動産登記法部会においては、土地の所有者が特定の土地の所有権のみを放棄することができる制度の創設について調査審議がされているところであります。
  36. 串田誠一

    串田委員 その際、放棄をするまでは相続人であったということでありますので、固定資産税に関しては、放棄をするまでの固定資産税は放棄をする者にも課せられるということを原則とするということでよろしいんでしょうか。
  37. 稲岡伸哉

    稲岡政府参考人 お答えを申し上げます。  繰り返しになりますが、その放棄を認める制度については現在検討中ということでございますので、それを前提としたお答えは難しい点を御理解いただきたいと思いますけれども、固定資産税はその所有者に課されるものでありますから、その所有者である間については御負担をいただく、こういうことでございます。
  38. 串田誠一

    串田委員 ここはしっかりと議論していただきたいなというふうに思っているんですが、一般に、相続放棄というのは、あらゆるものを放棄するわけでして、その際、現在、相続財産を何らかの形で取得する、あるいは利用しているような状況があれば、これは放棄できないわけです。しかし、今議論されている所有者不明土地問題の放棄というのは、恐らく今まで利用していたことも前提とした上で放棄をすることを認めるのかなと思うんですが、これは、法務省、そのような見解でよろしいでしょうか。
  39. 竹内努

    竹内政府参考人 お答えいたします。  現在検討されております所有権の放棄でございますが、所有者が所有権の放棄をすることになりますので、現在利用されているものについても放棄を認める方向での検討がされております。
  40. 串田誠一

    串田委員 そうしますと、今の話を合体すると、今回創設しようとしている放棄、所有者不明土地問題に関する放棄というのは、相続を放棄するのとはちょっと違った概念であって、使用していた場合でも放棄をすることができる、ですから、それまでの、放棄までの間というのは遡及しないということで、利用されていた期間の固定資産税というのも課せられていくことに私はなるのではないかなと思うんですが、そうしますと、今度は、その放棄をしたことによって、残された共有者、相続人に、放棄をした者の共有持分が配分されていくということになると思うのですが、その場合には贈与税が発生するということでよろしいでしょうか。
  41. 田島淳志

    田島政府参考人 お答えいたします。  所有者不明土地対策についての具体的な仕組み等につきましては、現在、関係省庁において検討中でございますので、現段階においてその課税関係について具体的に申し上げることは困難であることは御理解いただきたいと思います。  その上で、一般論として申し上げますと、財産の共有者の一人が相続の開始前にその持分を放棄したときは、民法の規定に基づき、その持分は他の共有者に帰属することとなりますので、相続税法の規定によりまして、その帰属した持分は、他の共有者がその持分に応じ贈与により取得したものとみなされ、贈与税の課税対象となります。
  42. 串田誠一

    串田委員 これも、まだ報道ベースで、議論をされているように感じていないのでぜひ検討していただきたいんですが、単年度で、例えばA、B、Cがいて、Cが放棄をした場合にはCの持分はA、Bに移るわけです。ですから、A、Bに贈与税というものが発生する余地が出てくるということですけれども、年をまたいだ場合は、Cから贈与された後、A、Bに贈与税が課せられる中で、A、Bのうちのもう一人が今度放棄をした場合、その場合には、贈与税もまた放棄をすることになるのかどうかという議論が出てくるんだろうなと思うんですけれども、まだ整備が進んでいない中で、考えられる選択肢としてはどうなるでしょうか。
  43. 田島淳志

    田島政府参考人 制度論ではなく実務上のお話を差し上げますが、繰り返しになりますが、あくまで、共有者の一人がその開始前に放棄した場合には、先ほど申し上げたとおり、他の共有者にとっては贈与税の課税対象となるということでございます。
  44. 串田誠一

    串田委員 ここはしっかりと議論していかなければならないのは、所有者不明土地問題というのは、相続人同士、要するに土地の共有者同士が知らない場合が多いんですよ。ですから、知らない場合に放棄をされているときに、贈与税というのは、贈与されて、もらったというのがわかるから贈与税の問題が出るんですけれども、知らない間に贈与関係が発生してしまうというおそれがあるものですから、そこはしっかりと法整備をしていく必要があるかと思います。  最後に、大臣にちょっとお聞きをしたいんですが、この所有者不明土地問題は本当にこれは国家を挙げて検討していかなければならない話なんですけれども、税制上、財政金融面でこの所有者不明土地問題を解決する方策、大臣、お考えは何かありませんでしょうか。
  45. 麻生太郎

    麻生国務大臣 この所有者不明土地というので、平成の三十年でしたか、所有者不明土地法というのを成立させていただいて、いわゆる公園とか社会福祉施設といったものの整備等々、公共的な利用に進めることが重要であると、それを使って考えておるんですけれども。  その上で、いわゆる令和元年予算におきましても、自治体がこうした先進的な取組を行うに当たって、所有者の探索とか、持ち主がどこに行ったか不明というのがありますので、いわゆる地域の合意形成をする上で国土交通省がいろいろ支援をする予算等々については計上させていただいておるところなんですけれども。  これは所有者不明土地の発生というものを抑制をせねばいかぬということなんだと思いますので、今言われていますように、相続手続をもっと簡単にするとか、また、相続登記の促進を図るということもこれは重要なので、そうした観点からも、令和元年度の予算で、大した額じゃありませんけれども、法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設等を行う等の予算等を計上したところなんですけれども。  いずれにしても、こういったようなものは、引き続き、土地の所有者不明というものに関して政府の施策を金融面で支援できる対応がないかどうか、ちょっとこれから検討していかないかぬところだろうと思っております。  ただし、これは物すごくふえておるんですよ。これが問題なんだと思っております。
  46. 串田誠一

    串田委員 質問機会をいただきまして、ありがとうございました。
  47. 田中良生

    田中委員長 この際、暫時休憩いたします。     午前十一時休憩      ――――◇―――――     午前十一時二十八分開議
  48. 田中良生

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  再開に先立ちまして、立憲民主国民・社保・無所属フォーラム及び日本共産党所属委員に対し出席を要請いたしましたが、出席が得られません。  速記をとめてください。     〔速記中止
  49. 田中良生

    田中委員長 速記を起こしてください。  理事をして再度出席を要請いたさせましたが、立憲民主国民・社保・無所属フォーラム及び日本共産党所属委員出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。  次に、金融に関する件について調査を進めます。  この際、お諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君理事前田栄治君、理事衛藤公洋君、理事吉岡伸泰君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 田中良生

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  51. 田中良生

    田中委員長 去る平成三十年十二月十四日及び令和元年六月二十一日、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づき、それぞれ国会に提出されました通貨及び金融の調節に関する報告書につきまして、概要説明を求めます。日本銀行総裁黒田東彦君
  52. 黒田東彦

    ○黒田参考人 日本銀行は、毎年六月と十二月に通貨及び金融の調節に関する報告書国会に提出しております。本日、我が国経済の動向と日本銀行金融政策運営について詳しく御説明申し上げる機会をいただき、厚く御礼申し上げます。  まず、我が国経済金融情勢について御説明いたします。  我が国景気は、輸出、生産や企業マインド面に海外経済の減速の影響が引き続き見られるものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、基調としては緩やかに拡大しています。やや詳しく見ますと、海外経済の減速の動きが続くもとで、我が国の輸出は弱目の動きが続いています。  一方、国内需要増加しています。すなわち、設備投資は、企業収益が総じて高水準を維持する中、増加傾向を続けているほか、個人消費も、消費税率引上げなどの影響による振れを伴いつつも、緩やかに増加しています。  先行きも、当面、海外経済の減速の影響が続くものの、国内需要への波及は限定的となり、景気の拡大基調が続くと見られます。  物価面を見ると、消費物価の前年比はプラスで推移していますが、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べると、弱目の動きが続いています。  先行きは、当面、原油価格下落影響などを受けつつも、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けるもとで、中長期的な予想物価上昇率は高まっていくと見ています。  このように、物価安定の目標に向けたモメンタムは維持されており、消費物価の前年比は、二%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えています。  次に、金融政策運営について御説明申し上げます。  日本銀行は、長短金利操作つき量的・質的金融緩和の枠組みのもとで、強力な金融緩和を推進しています。このうち、長短金利操作については、物価安定の目標の実現のために最も適切と考えられるイールドカーブの形成を促すよう、短期政策金利マイナス〇・一%、十年物国債金利をゼロ%程度とする金融市場調節方針を掲げ、市場において国債の買入れを実施しています。  先行き、我が国経済は、拡大基調を続け、物価も二%に向けて徐々に上昇率を高めていくと見ていますが、引き続き、海外経済の動向を中心に、下振れリスクに注意が必要な情勢にあると考えています。こうした情勢判断のもと、日本銀行は、緩和方向を意識した金融政策運営が適当な状況にあると考えています。先月の金融政策決定会合では、政策金利についての新たなフォワードガイダンスを決定し、物価安定の目標に向けたモメンタムが損なわれるおそれに注意が必要な間、政策金利について現在の水準を維持する、あるいは、状況によっては、現在の水準よりも引き下げる方針を明確にしました。  日本銀行は、こうした政策運営スタンスのもとで、今後も、物価安定の目標の実現に向けて、強力な金融緩和を推進していきます。その際、金融市場や金融仲介機能に及ぼす影響などを含め、政策の効果と副作用の両方を考慮することが重要だと考えています。  この点に関し、日本銀行は、低金利環境金融機関間の厳しい競争環境が続くもとで、金融機関収益の下押しが長期化すると、金融仲介が停滞方向に向かうリスクや金融システムが不安定化するリスクがあることも認識しています。現時点では、金融機関が充実した資本基盤を備えていることなどから、これらのリスクは大きくないと判断していますが、今後とも、こうした点を含め、金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行うとともに、経済物価金融情勢を踏まえながら、適切な政策運営に努めていく方針です。  ありがとうございました。
  53. 田中良生

    田中委員長 これにて概要説明は終わりました。     ―――――――――――――
  54. 田中良生

    田中委員長 質疑の申出がありますので、これを許します。杉本和巳君。
  55. 杉本和巳

    杉本委員 維新の杉本和巳です。  本日は、日銀日本銀行総裁、黒田総裁と質疑ができる、望外の喜びでありますし、総裁は第三十一代総裁でいらっしゃるということで、なりたくてもなれない、本当の重責を担われているということを民間出身の私としては感じる次第でありますが。  きょうは、ちょっと冒頭、長くなるかもしれませんが、私どもは未来への責任があるということで、これは黒田総裁もお持ちですし、今外されていますけれども、麻生副総理・財務大臣もお持ちだというふうに思っています。  そんな意味から、与野党ともにこの国会状況はやはり反省すべきではないかということで、私どももその一翼を担っているわけでありますけれども、審議は極めて大切である。未来への責任があるからこそ、本日は未来への警鐘を鳴らさせていただきたいなという思いであります。  そして、きょう、福井総裁の口述のお話が日経新聞に載っておりました。その中で、政策点検が必要だというようなコメントも、これは、福井総裁が言っておられたのではなかった言葉に、記事としてあったんですけれども、政策点検をぜひお願いしたいというのがきょうの質疑の趣旨でございます。  いわゆる量的緩和あるいは異次元緩和ということが本当に続いていて、よく単純に、出口戦略をどうするんだとか出口論をどうするんだという単純な答えを求める方が結構いらっしゃいますけれども。  現実が走っているということなので、そう簡単にそのことを表に出してということは難しいと思うんですけれども、実際のところは、日本銀行、きょうは三人の理事方々もお運びいただいているので、私の思いとしては、政策点検並びに政策変更に向けての研究というか、これをひそかにしていただきたいという思いでございますし、いずれの日か、政策決定会合はいつもオープンになりますけれども、本当の議論というものは、公文書管理、今問題があると思いますけれども、日銀の中で行われる議論については、いずれの日かにきちっと公開されるということをお願いしつつ、政策点検をお願いしておきたいと思っています。  私の思いは、日本財政金融、これはもうピンチであって、ちょっとそれは不適切だと言われても、やはり墜落リスクというのがあると思っているんですけれども、これを何とか軟着陸、ソフトランディングさせることも考えていく時期に来ているということで、前の財金のときにも、三十分の質疑時間で二十分ぐらい一方的に麻生さんに申し上げたことがございますけれども、そんなことで、ちょっと、未来への責任ということで、備えもしておいていただきたいと思っています。  またちょっとそれるんですけれども、きょう、この委員会が始まる前に、BSの一チャンネルでヒトラーユーゲントスというのを後編をやっていまして、若者が要はヨーロッパ戦線に、子供たちが最前線に行かされるというようなことの中で戦争の悲惨さをうたっていました。  よく大物の自民党の政治家さんとかともお話しするんですけれども、今の経済情勢が戦前に似ているんではないかということなんですけれども、ヒトラーユーゲントスを見ますと、命を失い、お金も財産も、生命財産両方失うということでありますけれども、せいぜい、この財政という問題、金融という問題については命は失わなくて済むので、ちょっと違うかなというふうにも思っています。  ただ、また、一句、いつも万葉集を詠む方がいらっしゃいますけれども、一つだけ触れておきたいなというのが、杜甫の「春望」の最初の節だけは、子供のころ、中学か高校で学んだ記憶があるんですけれども、国破れて山河あり、城春にして草木深し、こういう言葉があります。  しかし、命はやはり大事なんで、戦争はしてはいけないですけれども、財政は何とか軟着陸というふうに考えております。  ちょっとめくってみますと、イギリスも、大英帝国から英国、今はUKで、また分散のリスクが、分裂というか、ユナイテッドがなくなる可能性がありますけれども、思い起こしますと、一九七六年に戦後の英国病の行き詰まりからIMFの支援を受けるということがありましたので、やはり先進国であっても危機は起こり得るという認識を持っていただきたいと思います。  それで、ちょっと今外されていますけれども、ステーツマンとポリティシャンという言葉があって、某大学を受けるときに、私は、英語が実力は大丈夫かということで、電話でかかってきてインタビューを受けましたけれども、とうとうとそのステーツマンとポリティシャンの違いを申し上げましたけれども。  ステーツマンというのはやはり国の未来を思っているということだと思いますので、そういった意味で、麻生さんはいらっしゃいませんけれども、米国のトランプ大統領に対しても、あるいは中国の習近平国家主席に対しても、こびず、譲らず、言うべきは言うという姿勢を持っておられる数少ない日本の閣僚だというふうに思っていますので、決してお世辞じゃないんですけれども、そういう姿勢は学ばせていただきたいなと思っています。  それで、質問にようやっと入らせていただくんですが、ちょっと時間が多分なくなると思うので、二十七日に、日銀のバランスシートの上期、PLの方も上期の分が発表になって、ニュース性としては最大の状況になっているというのがありました。ちょっと順番を変えて、ポリシーミックスと構造問題について総裁の御見解を伺えればと思いますけれども。  OECDの二十一日公表の世界経済見通しでは、各国政府、これは日本だけの話ではないと思いますけれども、各国政府政策投資方法を改革しない限り世界経済改善されないと警告、チーフエコノミストのローレンス・ブーン氏は、当局の対応が目先の財政金融政策にとどまる限り世界経済は今後数十年にわたって停滞するとの見方を示した、それで、括弧書きで、より大きな懸念は構造的変化に対する無策を反映して見通し悪化が続くことだとして、こうした変化を金融財政政策で対処できる一時的なものと考えれば政策の誤りとなろう、これは構造的な問題だと論じた。これはブルームバーグのニュースです。  それで、これは新聞記事で、十一月十三日、FRBのパウエル議長は議会証言で、政府債務は経済成長を上回るペースで増加しており、長期的には持続不可能だと指摘したということで、非常に責任の重い発言をパウエルさんはされておられます。  また、前日銀総裁の白川方明、三十代総裁は、著書で、「中央銀行」というこんな厚い本で、ちょっと、野田総理とか安住さんは結構頑張ってくれたとか、共産党の先生も意外と仲よしだみたいな話が書いてあったりするんですけれども、私が行間に読み取るのは、このデフレの元凶というのは少子高齢化で、なかなか退治できないんだというようなことが、明確に言い切った言葉ではないんですけれども、そこかしこに、この高齢化、少子化がデフレへとつながっているような表記がなされているのを拝見しています。  また、七百三十一ページのところに、独立性のところで、通貨の安定のためには財政の持続可能性への信認が不可欠、潜在成長率低下傾向、高齢化、少子化の進展、社会的分断現象等の環境変化を踏まえると財政のバランス維持に必要なコンセンサスの形成は容易ではない、財政の持続可能性に対する信認が低下すると究極的には通貨の安定性が損なわれると書いておられます。  そんなことで、現行のポリシーミックス、今も、総裁に御無礼かもしれませんが、現在の通貨及び金融調整に関する報告ということで御説明いただいたんですけれども、このOECDのチーフエコノミストの指摘のように、財政もそれなりに出動が必要だという議論もあって、私も、そういう部分は感じるところがあります。一方で、金融政策も異次元緩和をしていますということなんですけれども。  このポリシーミックスというのが、ちょっと更に加えますと、リチャード・クー氏はこう言っているんですけれども、従来型のポリシーミックスではもはや立ち行かなくて、それで、いわゆるデフレギャップというか需要不足、これに対しては、残り五分になってしまいましたが、よい財政政策が必要なんだということ。  ただ無作為に何でもかんでもいわゆる国土強靱化でどんな川も補強しちゃうというようなことをやったら、もはやこの国はもたないわけなので。川の補強でも、本当に必要なところで、効果を生むところへの投資というのは、BバイCを考えて、効果を生むであろうから。需要がない中で政府の出動というのは必要だと思っていますけれども。  一方で、構造的な問題、きょう宗清さんが麻生さんに質問されていて、やはり、我が国の少子高齢化の中での社会保障費の莫大な伸びというか、これを退治しない限り二%の目標も達成はかなり厳しいし、達成できたのは、副総裁が、前、若田部さんがおっしゃっていたのは、例外的なのかもしれないですが、それこそ、申し上げたイギリスだけであるというようなお話があったんですが。  本当に従来型のポリシーミックスを続けていてよいと、なかなか御答弁しにくいと思いますけれども、胸のうちにおさめていただく私の思いということで結構ですけれども、現在のお立場として、このポリシーミックスのあり方についての御見解を伺えればと思います。
  56. 黒田東彦

    ○黒田参考人 今委員指摘のポリシーミックスということについては、抽象的な議論もさることながら、現在の日本のコンテクストで申し上げますと、いわば、中央銀行物価安定目標を実現するために金融緩和政策を推進している、そういう状況で、政府が必要に応じて財政政策を活用するという、この政策の組合せを指すものであろうというふうに思います。  このように、金融財政政策を組み合わせると、その相乗効果によって景気刺激効果がより強力なものになるということは、マクロ経済政策として一般的な考え方であります。  ただ、この場合でも、金融緩和というもの、あるいは金融政策というものは、あくまでも物価の安定を実現するという目的のために行われるものでありまして、政府財政資金の調達を支援するということを目的とするいわゆる財政ファイナンスとは明確に一線を画する必要があるというふうに考えております。  また、委員意味しておられるように、中長期的な財政健全化について市場の信認をしっかりと確保することも極めて重要であります。そういった意味で、委員指摘のように、通常の財政金融政策のポリシーミックスということだけでなく、政府の成長戦略、あるいは構造改革などの推進によって、長期的な成長力、いわゆる潜在成長力を高めていくということも我が国にとって極めて重要な課題であるというふうに考えております。  そういう意味で、財政金融政策のポリシーミックスだけで十分ということではなくて、あくまでもやはり、中長期的な成長力を高めていくためのさまざまな規制緩和、構造改革などの成長戦略ということの推進が重要であるということはそのとおりであるというふうに思います。
  57. 杉本和巳

    杉本委員 ありがとうございます。  成長戦略、規制緩和、構造改革、私どもが取り組まなければいけないんですけれども、なかなか進んでいないというのが日本の実情かと思っています。  それで、次に、やはり私が感じるのは、いや、そんなことを言うなばかやろうとどなられるかもしれませんが、三権分立の問題であったり、あるいは、メディア、NHKを始めとしてちょっとそんたく報道が多いような気がするし、日銀も独立性を本当に担保できているのかというので、私は、三権じゃなくて五権が、今余りに権力が集中してしまって、一種、決める政治とは、いきやすい環境にはあると思うんですけれども。  しかしながら、やはりその民主主義というのが、本当に香港を見ていても感じるので、やはりヒトラーユーゲントスじゃないですけれども、民主主義の大切さを戦後アメリカが一生懸命ドイツ国民に教えたみたいなのがありますので、そういった意味で、日銀の独立性というのは、アメリカのパウエルさんの話をまたして恐縮ですけれども、トランプさんが再三利下げを繰り返し迫ったんですけれども、講演の中で、これは十月の初めの講演でも、FRBは経済に最善な政策金利を設定できるようになったという強調を最後はしているんです。いわゆる政治介入の排除への決意といったものをはっきりパウエル氏は言って、まあそれでもアメリカは財政赤字が膨らんでいっているわけですけれども。  日銀法の三条一項に、日本銀行の通貨及び金融の自主性は尊重されなければならない、こうありますけれども、いわゆる共同声明以降、協力することも大切なんですけれども、一方で、言うべきは言う、独立性を担保するというところでは、やはり踏ん張っていただく必要も総裁にはあると思っておるんですけれども、この独立性について現在の御認識を確認させていただいて、もう質問時間になってしまったので、その御答弁をいただければとお願いを申し上げます。
  58. 黒田東彦

    ○黒田参考人 物価の安定を実現するために中央銀行の独立性が必要であるという考え方は、歴史的な経験を踏まえて、今や世界的に確立しているというふうに思います。  他方で、マクロ経済政策の運営に当たって、政府と中央銀行が十分な意思疎通を図るということも重要であることも事実でありまして、いわゆる政府日銀の共同声明もこうした考え方に基づくものでありまして、そこでは、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のために政府日本銀行が果たすべき役割をそれぞれ明確に定めているということであります。  こうした共同声明に沿って行われた政策のもとで、我が国経済情勢は改善したというふうに思います。物価は、二%の物価安定の目標にはなお時間を要しておりますけれども、既に、物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなっていると思います。  いずれにいたしましても、委員指摘のとおり、日本銀行の独立性というものは法律できちっと守られているわけですけれども、それを十分踏まえて政策運営に努めてまいりたいというふうに思います。
  59. 杉本和巳

    杉本委員 ありがとうございます。  終わりの時間になりましたけれども、冒頭申し上げた政策点検を、ぜひ、ひそかにでも結構なのでお願いしておきたいと申し上げて、質問を終わります。  ありがとうございました。
  60. 田中良生

    田中委員長 この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十三分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十二分開議
  61. 田中良生

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  本件調査のため、本日、政府参考人として金融庁総合政策局長森田宗男君、監督局長栗田照久君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  62. 田中良生

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  63. 田中良生

    田中委員長 質疑を続行いたします。末松義規君。
  64. 末松義規

    ○末松委員 末松義規でございます。  直近の政治的混乱の中で、私の方は、午前中、FRCの報告に対する質疑の中で、麻生大臣に対して、消費増税の質問とか、あるいは桜の会の質問とか、さらには借金の話とか、いろいろと聞きたかったんですが、それができなかったものですから、今回、日銀の総裁に対して質疑をさせていただきます。  先般の十一月十三日の質疑で、私の方が黒田総裁に対して、自国通貨建ての国債のデフォルトは考えられないという、当時財務官の黒田総裁のこの発言というか文書の通告での趣旨を聞いたときに、総裁の方で、市場で国債の信認を失う事態が発生すれば資金調達は困難になると言えるというような答えがあったかと思いますけれども、そのために中長期的な健全財政化が必要だと強調されておられました。  私は、市場といったときに、日本の国債市場というのは極めてコントロールされた市場であって、自由な市場とは呼べない代物だと思うんですけれども、その点、総裁の認識はいかがでしょうか。
  65. 黒田東彦

    ○黒田参考人 まず、前回、委員からの御質問にお答えしたことは、今お触れになったとおり、仮に中長期的な財政健全化について市場の信認を失う事態が発生すれば、金利上昇などを通じて国の市場からの資金調達が困難になる可能性がある、したがって、中長期的な財政健全化について市場の信認をしっかりと確保することが重要だということでございました。  現在、我が国の国債は市場で問題なく消化されておりまして、財政への信認は維持されているというふうに考えております。  その上で、現在の国債市場の機能については、従来から十分その状況を点検しておりますけれども、現在の国債市場は十分機能しているというふうに考えております。もちろん、日本銀行が現在、政府の発行した国債の半分程度を所有しているということは事実でありますけれども、そのことが現時点で何か市場の機能を阻害しているということにはなっていないというふうに考えております。
  66. 末松義規

    ○末松委員 機能させるように、日銀銀行間で、裏でさまざまなやりとりが、あうんの呼吸でやられているというような指摘も多いわけですよ。例えば日銀ルールとかその方々は呼んでいたり、あるいは、一時、日銀トレードといって、要するに、銀行が買ってもすぐに日銀が買い取ってくれるから、安心してそれは取引ができるんだと。  そういう形でいくと、ちょっと本当に、実態上は日銀金融機関との間であうんの呼吸で何かやりとりがやられているということはよくうわさをされているところで、特に、そのために、フォワードガイダンスとか、日銀があえて涙ぐましい努力でそんなことをしているという解釈もあるんですけれども、その解釈についてはどういうふうに思われますか。
  67. 黒田東彦

    ○黒田参考人 もとより、現在の長短金利操作つき量的・質的金融緩和というフレームワークの中で、国債の買入れを通じて経済にとって最も適切と思われるイールドカーブを形成しているわけですので、直接的には、短期の政策金利マイナス〇・一%、そして十年物国債の操作目標をゼロ%程度ということで、この二つの点を結ぶイールドカーブを形成しているわけでありまして、その意味では、当然のことながら、短期金利長期金利に対して日本銀行政策影響を与えているということは事実であります。  この点は、金融政策が常に、金利市場、典型的には国債市場でオペレーションをやることを通じて市場金利影響を与えるということをしている以上、ある意味で必然的な結果であると思っておりますけれども、そのことによって何か国債市場の機能が損なわれるということにならないように、その点は十分注意しているつもりでございます。
  68. 末松義規

    ○末松委員 そういう、十分に注意しているということが、外部から見たら、コントロールされた市場じゃないかと言われてきたわけです。このことを私も指摘することは十分意味があると思うんですけれども。  ちょっと話題をかえまして、例えば国債の信認を失う事態が発生する、その事態というのはどういうことを具体的に考えられていますか。
  69. 黒田東彦

    ○黒田参考人 現在、政府は、財政の持続可能性を高める、財政の信認を確保するという観点から、プライマリーバランスを回復するという目標を立てております。さらには、プライマリーバランスを回復した上で、政府債務残高のGDP比を緩やかに低下させていくという目標を掲げて進めておられまして、これが国債の信認を市場で得るために非常に重要なモーメントになっていると思います。  したがいまして、そういうものが失われるということがありますと、先ほど来申し上げておりますように、国債を発行しようとするとなかなか入札されないというか、あるいは金利が暴騰してしまうといったようなことで、政府として国債によって資金を調達するということが困難になるという事態が発生し得るというふうに思っております。  今のところ、マーケットは、政府によるそういった国債の信認を確保するための努力というものを評価しているんだろうと思います。その意味で、政府の国債による市場調達というものについて障害は生じていないのではないかというふうに考えております。
  70. 末松義規

    ○末松委員 事実関係として、そういった異常事態が生じていないというのは事実ですし、政府でプライマリーバランスの回復が五年間延びたとしても、特に市場として何の大きな動きもされなかったような。だから、私が申し上げたいのは、日銀の、本当にコントロールされた市場の中で、うまくそこは市場が管理された形で機能している間はいいですよねということではありますけれども、これが本当に大きく動くときはまた大変な話になる、かなりやばい話になってくるのかなとは思っています。  いずれにしても、市場の安定性を日銀が一番やられているということは認めますが、それが逆に余りにもコントロールし過ぎているような印象は、これは絶対に避けなければいけない、こういうふうに考えているわけです。  次に、あと、今度は、日銀保有の国債のボリュームなんですけれども、民主党政権時代の白川総裁のときにはそのボリュームが八十兆円程度だったのが、今は四百八十兆円。すさまじい額で、ほとんど日本のGDPに匹敵するような額まで一挙に伸びてきたわけです。この額はやはり異常だなと思えるんですけれども、そこについての日銀総裁の認識、これは何回も言われてきましたけれども、改めてそこはお聞きしたいと思います。
  71. 黒田東彦

    ○黒田参考人 この点につきましては、御指摘のように、現在、日本銀行が国債の発行残高の半分程度を保有しております。  ただ、これは、何度も申し上げておりますとおり、物価安定の目標を実現するという金融政策上の目的で金融緩和を行うということで市場から国債を購入してきた結果でありまして、政府による財政資金の調達を支援することを目的とする、いわゆる財政ファイナンスということではございません。  日本銀行としては、金融政策上の目的を超えて、財政を支えるために国債買入れを行うということはないということは申し上げられると思います。
  72. 末松義規

    ○末松委員 今の説明で、財政ファイナンスではないと強調されるんですけれども、実際にやってきたことを見たら、日銀総裁が前回の質疑のときに、MMTの議論というのは、際限なく借金をすればいいとか、そういうふうな形で批判をされておられましたけれども、今の言葉で、言葉は財政ファイナンスをするためのものじゃないと言うけれども、やってきたことは、MMT、モダン・マネタリー・セオリーで言ってきたこととほとんど一緒じゃないかと思うんですね。そっちの方がむしろわかりやすい。  その中で、その理論に基づいてやっているということは、当然それはないでしょう、それは後から出てきた議論でもありますから。なんだけれども、やっていることは、本当にフォローしてきたような感じがするわけですね。  それでもって、しかも低金利で、ほとんど、今、現下の物価が〇・五%程度しかない。これは極めて、これだけの巨額の、GDPに匹敵する巨額の借金をやりながら、その中の四百八十兆円を日銀が保有してマネタリーベースを拡大しているにもかかわらず、〇・五%。ある意味じゃ優秀は優秀だろうとも思うんですけれども、何でこんなに物価が安いんだということ。  この理由について、私も、日銀がまとめた経済物価情勢の展望で、ことしの十月、これを読んで、いろいろと中に書いてありましたけれども、この辺については、どんな原因が一番問題というか、こんなに低いんだという原因だと認識しておられますか。総裁の口から言ってください。
  73. 黒田東彦

    ○黒田参考人 この二%の物価安定の目標を実現できていない要因としては、やはりまず、長期にわたる低成長やデフレの経験などから、賃金物価が上がりにくいことを前提とした考え方あるいは慣行が家計企業に根強く残っているというもとで、企業の慎重な賃金、価格設定スタンスが明確には転換していないということが指摘できると思います。  また、企業がこのところ省力化投資をかなり拡大しておりまして、それによってコスト上昇圧力を吸収しているということ、あるいは近年のさまざまな技術進歩、そして、ある意味で予想以上に弾力的な労働供給といったものも、経済全体の成長率を高める上では望ましいことではありますけれども、物価上昇に時間がかかる要因となっているのではないかというふうに考えております。
  74. 末松義規

    ○末松委員 このレポートを読みますと、今、日銀総裁がおっしゃったことに加えて、例えば、公共料金や家賃が鈍い動きを続けていることも物価の上がりにくさに影響していると。  こういうことは、さっきの、企業の技術進歩、あれだって望ましいことですよね、経済発展、今言われたように。そういうことが、何かいかにも、物価が伸びていない、だからこそ、物価が上がらないから、そこら辺が問題なんだというふうな形になっていけば、結局、何か日銀はそういったことをもっと上げるべきじゃないかと思っているのか、そういうふうなことも捉えられるわけですよ、この文書を読んでみると。  こういうのが低いから、こういう物価設定も低い、まあ賃金が低いというのが私は一番大きな問題だと思っているんですけれども、それ以外にもいろいろなことが低いから、だから物価が上がらないんだ、だから二%にできないんだと読み取れるんですけれども、そういうことはどう思われますか。
  75. 黒田東彦

    ○黒田参考人 ただいま申し上げた点は展望レポートなどにも詳しく記述されているわけですけれども、私どもが目標としているのは、もちろん、二%の物価安定の目標が実現できればそれだけでいいということではなくて、あくまでも、賃金物価上昇していって物価上昇率が二%に達するということを目標にしておりますので。  そういう意味では、先ほど来申し上げているように、賃金物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行というのがなかなか変わらないということが主たる要因であると思いますけれども、他方で、確かに省力化投資が拡大して労働生産性が上がっているわけでして、ある指標によりますと、G7の中でこのところ一番労働生産性が上昇しているというデータもあるそうですけれども、それは非常に好ましいことであることは事実なんですが、賃金コストが上がっても、物価に、価格に転嫁しなくて済むということになって、そのためになかなか価格が上がってこないという面もある。  ですから、それ自体は、先ほど来申し上げたように、生産性が上がって成長に寄与するということは好ましいことであることは事実なんですけれども、やはり、最終的に賃金物価が要は歩調を合わせて上がっていって物価が二%に達するということを目標にしている、この日本銀行物価安定の目標としては、それに近づくのを困難にしている一つの要素であるということを申し上げているわけであります。
  76. 末松義規

    ○末松委員 そこで、もう少し申し上げますけれども、公共料金とかあるいはいろいろな、原油価格が低いこと、これは国民の生活にとっていいことなんですよ、生活が苦しくならないんだから。だけれども、本当に問題なのは、その中で、そこが上がったとしても、賃金がそれ以上に上がっていれば問題はないんですよね。その賃金の価格が本当にこの国は上昇が遅いということも私は痛切に感じていて、それを私ももっともっと引き上げていくべきだと思っているんですけれども、それについてお願いします。
  77. 黒田東彦

    ○黒田参考人 その点は私も全く同じ意見でございます。
  78. 末松義規

    ○末松委員 私の方も、最低賃金を、これから、立憲民主党は五年かけて千三百円まで、しかも中小零細企業が被害をこうむらないように、本当に数兆円レベルでも私はいいと思っているんですけれども、そういう支援を行いながら、賃金をやはり引き上げていく必要があると思っているんですね。そういったことを日銀総裁の方も、そこは、賃金を上げるということについては同じ認識だということで、うれしく思うわけでございます。  最後の質問になりますけれども、物価安定目標実現までは、マネタリーベースを拡大し、リスク要因がちょっとでも出れば、直ちにちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じる、これは、強い言葉で言っておられますけれども、どんどんまた際限なく国債を買っていくのか。全然歯どめの言葉がないわけですよ。これは、私から見たら、これこそMMTの言っていることとほとんど一緒じゃないかと。私から見たらそう思うんですけれども、その点については、総裁、いかがですか。
  79. 黒田東彦

    ○黒田参考人 御指摘のように、日本銀行は、先行き、物価安定の目標に向けたモメンタムが損なわれるおそれが高まる場合には、ちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じる方針であります。ただ、その際には、当然ですけれども、政策のベネフィットとコストをしっかりと比較考量した上で、最も適切な措置を実施していくということになります。  その上で申し上げますと、個別の政策手段について見ますと、例えば政策金利について、無限に引き下げることは難しい、当然一定の限界はあり得るわけですけれども、欧州を始め他国の先例を見る限り、まだ十分に緩和余地があるというふうに考えています。  また、金融緩和にはさまざまな手段がありますし、それらを組み合わせたり、応用したり、あるいはさまざまなバリエーションがあり得るわけでございまして、日本銀行としては、現時点で追加的な金融緩和措置を講じる余地は十分あると考えております。  ただ、先ほど来申し上げていますように、その際には、副作用というかコストというものも十分比較考量して勘案した上で、最適な措置を講ずるということになろうと思います。
  80. 末松義規

    ○末松委員 ただいま質問時間が終わりましたので、この辺にしておきますけれども、今の、追加的な金融緩和も含めていろいろな手段はあると言うけれども、これもMMTの主張していることと極めて似ていまして、藤井聡京大教授なんかは、まさしく、物価が三%から四%程度であるならば、どんどんもっと財政需要を含めた需要喚起をした方がいい、あるいはマネタリーベースを拡大した方がいいと言っていますので、そういうMMTの方々と本当に似ているということを強調しまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  81. 田中良生

    田中委員長 次に、海江田万里君。
  82. 海江田万里

    ○海江田委員 共同会派の海江田でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  私に与えられました時間は五十分でございますが、黒田総裁、五十分というと長いようでありますが、結構短い時間でございますので、どうぞ御答弁は、いつもながらの簡にして要を得た御答弁をお願いしたいと思います。  先ほど来議論も出ておりますが、ポリシーミックスでございますね、最初にこれを取り上げたいと思います。  十一月の六日でしたか、名古屋に行かれて、東海地方の経済界、金融界のトップの方々と懇談をした後の記者会見で、総裁はポリシーミックスについて発言をされています。この発言についていろいろな反応がありますけれども、発言した後の反応も見ながら、現在の時点で総裁はどうお考えになっておられるでしょうか。
  83. 黒田東彦

    ○黒田参考人 ポリシーミックス論の一般的な話もございますけれども、あくまでも私が申し上げたコンテクストといいますのは、中央銀行物価安定目標を実現するために金融緩和政策を推進している、そういう状況政府が必要に応じて財政政策を活用するという場合には、これらの相乗効果によって景気刺激効果がより強力なものとなり得るということでありまして、これがポリシーミックスの一例であろうということで、マクロ経済政策としては一般的な考え方であるというふうに思っております。  この発言で何か特別にマーケットとかその他に影響があったとは考えておりませんが、現在でもこういった考え方は間違っていないというふうに考えております。
  84. 海江田万里

    ○海江田委員 当たり前のことというか、そのことを言っただけだということだろうと思います。  ただ、その発言をしている方が問題なんですね。いいことを言っていても、そのとおりだということと、えっ、何で彼が言うのということがあると思うんです。やはり、世界一といいますか、中央銀行の中で本当に突出して多くの国債とそれからETFを通じた株式を買い入れている、その中央銀行の総裁がこういう発言をしたときの意味ということですね。やはりこれは、先ほど来議論になっております財政ファイナンスとの観点で、大きな問題発言といいますか、クエスチョンマークがつく可能性があるんです。  市場は反応していないということでありますが、翌日の日経新聞の中でも、記事の中で、ポリシーミックスをめぐっては、中央銀行が国の財政赤字を穴埋めする財政ファイナンスと受けとめられ、市場の信認を損なうリスクもあるという指摘でございますが、この指摘に対してはどういうふうにお受けとめになりますか。
  85. 黒田東彦

    ○黒田参考人 これは常に申し上げていますけれども、今申し上げたような形で一種のポリシーミックスとして相乗効果があるということは、これは経済学的分析でそのとおりだと思うんですけれども、その上で、常に申し上げているのは、日本銀行金融政策というものは、あくまでも物価の安定ということを最大の使命として、それを達成するために必要な金融緩和措置を講じているということでありまして、それを超えた金融緩和措置、それを超えて何か国債を買うとかそういうことは全く考えておりませんし、そういうことはないということは常に申し上げております。
  86. 海江田万里

    ○海江田委員 それを超えていないということでございますが、幾つかの点で私は、超えているとまでは申し上げませんけれども、限りなく超える方向に向かっているということを指摘をさせていただきたいと思います。  一つは、やはり、資産買入れに当たっての銀行券のルールですね。このルールを最初に、白川総裁のときに資産の買入れ機構をつくって、そしてそれは日銀日銀券ルールから外しますよということは白川総裁が決めたわけでありますが、その後、黒田総裁になって、この日銀の発行のルールを一時停止ということにしましたね、これは。  廃止ではなしに、あるいは、白川総裁がやったように機構をつくっておいてそこは外しますよということでなしに、一時停止をしたということの意味合いは何ですか。
  87. 黒田東彦

    ○黒田参考人 量的・質的金融緩和という形で、大規模な国債買入れを、しかも、短期、中期にかかわらず、長期、超長期まで含めて幅広く買入れを行うということを決めた際に、従来あったルールは当てはまらないということで一時停止ということにしたんですけれども、それは、将来、正常化する過程の中でまたそういうことが議論になるということはあり得ると思いますけれども、現時点では、そういったルールが必要であるとも適切であるとも考えておりません。
  88. 海江田万里

    ○海江田委員 要するに、もうこれはなきものにしよう、しかし、将来のことを考えたら枠組みだけは残しておこうということですが、やはり、銀行券のルールというのは、財政ファイナンスと違うんだよということの一つの自律的なルールになっているわけですよね、これは。  その意味で、やはり私は、黒田総裁も、これは残さざるを得ない、廃止というわけにはいかないということだったと思うんですが、まずやはり、この銀行券ルールというこれまでの、日銀がまさに独立性があって、その中で、財政のファイナンスという大変戦前の苦い経験もありますから、やはりそれとは峻別した立場を維持していこうという上で考えられた一つのルールだと思います。それを、その意味では踏みにじったということ、これが一点ございます。  それから、二点目がやはり国債の爆買いで、とりわけ、やはり長期の国債、先ほどもお話ありましたけれども、これは日銀総裁に就任してすぐ、直ちに長期の国債の買入れ幅を大幅にふやした。  ちょうどきょうの日経新聞に、前の前、日銀の総裁でありました福井さんが、やはり長期の国債については自分は買入れをやめようということ、これを考えてそのとおりにしたということ。きょうの口述の回顧録ですか、これは。日銀の研究所に対して口述で回顧したということ。これは非常に大切なやはり日銀政策を検証していく上で大切なコメントだろうと思うんですが、この中で、「私は長期国債を抱え過ぎてあとでポートフォリオのバランス上、非常に問題が起こる、あるいは」、もう一つあるので、「財政政策との敷居が低くなり過ぎるというリスクは避けようとした。」という、本当に述懐、思いを言っているんですね。  やはり、長期国債を大量に買うことによる、財政政策、まさに財政ファイナンスとの敷居が下がってしまう、敷居が下がってしまうということは財政ファイナンスにつながっていくということですが、こういう考え方を述べておられるわけでございますが、これについてどうお考えでしょうか。
  89. 黒田東彦

    ○黒田参考人 福井元総裁、私も大変尊敬している方でありますけれども、福井元総裁の御発言そのものについて何かコメントするというのは差し控えますけれども、量的・質的金融緩和、それから、米国のFRBやECBもそうでしたけれども、結局、短期のところを幾ら買っても長期のところの金利が下がらない。それが、例えば長期設備投資である建設投資あるいは住宅投資等に、下がればプラスの影響を与えるわけですけれども、そういうふうにならないということで、彼らも長期、米国の場合は我々よりもっと長いものを買っていたと思うんですが、平均残存期間として。  そういうことを始めて、まさに、短期だけじゃなくて、中長期金利を下げるということによって金融緩和の効果を強く出し、それによって不況あるいはデフレを回避しようとしたわけで、我々も、そういう意味で、かつてのような短期あるいは中期の一部というぐらいではなくて、長期、超長期まで含めて国債を買い入れるということによってイールドカーブ全体を下げる。そして、その結果、実質金利が下がって経済活動を刺激するということのために行ったわけでありまして、まさにそういうのが必要な状況日本経済が陥っていたということで、それに対応するものとして、私は適切な政策であったというふうに思っております。
  90. 海江田万里

    ○海江田委員 私が伺いたかったのは、財政政策との敷居が低くなり過ぎるというリスクという指摘だったわけですけれども、これについてどう思うかということ。それでよろしゅうございますが、あと、確かにおっしゃるように、残存期間についても、総裁が就任するときには大体三・五年ですか、今七・三五年になっていますね。その意味では、おっしゃるようなことはそのままなっているわけですけれども。  そうした結果、まさに、財政政策との敷居の問題、これが下がるリスクというのはやはりますます強まったと思うわけですけれども、ここのところについて説明をお願いしたいわけです。     〔委員長退席、あかま委員長代理着席〕
  91. 黒田東彦

    ○黒田参考人 その点については、私は、現在の日本銀行法で日本銀行の独立性というものが確保されており、そのもとで、政策委員会で、さまざまな経済金融情勢を分析した上で適切な金融政策を決めていくということでおりますので、何か長期の国債を買ったから財政ファイナンスになるとか、あるいはそれに対する何か敷居が下がったとか、そういうことにはなっていないし、そういうふうにしてはならないというふうに思っております。
  92. 海江田万里

    ○海江田委員 今もお答えになっていないわけでありますが、やはりそのリスクはあるわけですよ。ただ、そのリスクをどう見るかということで、それほど大きく見なかったということだろうと思います。  あと、もう一つ、先ほど来お述べになっています国債の引受け、これを、直接引受けじゃないと。財政ファイナンスというのは基本的に直接引受けだからということだろうと思いますが。  委員の皆様にも、それから総裁のところにも行っていますね、この資料。私がお配りをしました資料でございますが、これは、日本経済研究センターがつくった資料を当委員会の調査室が少し加工して、加工してといったって数字をいじったりしたわけじゃありませんが、色づけの面で加工したわけでございます。  日銀が新発国債を買い入れるまでの期間、市場にどれくらいあった国債を買っているか、十年物の長期国債で計算をしているわけですが、総裁が就任をする前までは、これは特に長期国債でありますけれども、ほとんど、一年以上たってもまだ九六%とか六五%とか、そういう数字であったわけですね。  ところが、総裁が就任をして、長期国債をとにかく大量に買うんだということを言ってから、一番甚だしいのは、大体、新発をして、金融機関の中にある、あるいは市場にある、その期間がわずか一カ月ぐらいでも、半分以上は日銀が買っているんですよね。これは事実ですよね。  つまり、確かに直接買入れはしていないけれども、大体一カ月ぐらい、あるいは当月、発行した当月にそのまま四〇%以上買っているものもあるわけでございますから、市場の残存期間が余りにも短いというのも、これは私は限りなく直接買入れに近づいているというふうに見ますけれども、これについてはいかがでしょうか。     〔あかま委員長代理退席、委員長着席〕
  93. 黒田東彦

    ○黒田参考人 その点については、そういうふうに私どもは考えておりません。  あくまでも、まさに市場のチェックというか、市場の機能を通したものを購入しているという考えでありまして、当然、国債の購入量がふえまして、しかも、残存期間、バランスよく買うということですので、十年国債についてもかなり大量な買入れを行ったということが、その結果としてこういうふうになっていると思いますけれども、これによって何か国債市場の機能が損なわれたとか、あるいは財政ファイナンスに近づいたというふうには私どもは考えておりません。
  94. 海江田万里

    ○海江田委員 この話は、一番初めの話、ポリシーミックスの話に戻ってしまうわけですけれども、結局、あの時点で、十一月の六日の時点で、日銀の総裁、国債を大量に買入れをしている、直接ではありませんけれども買入れをしている日銀の国債が、特に財政出動について触れると、すぐその後で、今ちょうど補正予算規模をどのくらいにしようかとかいう議論があるわけでありますが、十兆円という数字もその後から出てきましたし、中では、建設公債だけでは足りないから赤字公債にしようというような動きも出てきたということでありますから。  黒田さんは財務省の御出身でもありますから財政の健全化ということも片一方でやはり骨の髄までしみ込んでいると思いますが、あえてこの時期に発言をすることによってそちらの方に道を開く、日銀総裁がああ言っているんだから、幾ら国債を発行しても、一カ月ぐらい置いておけばそれはちゃんと日銀が買入れをしてくれるんだから心配要らないな、そういうことにもなりやしないだろうか。あるいは、そういう可能性もあるし、そういうふうに事態が動いているということを私は指摘をしておきたいと思います。  いずれにしましても、財政ファイナンスではないないとおっしゃっていますけれども、財政ファイナンスへ向かう一つ一つのハードルというものは極めて低くなったり、それが押し倒されたりしているというのが現状でありますから、財政ファイナンスになったときはこれはもうとんでもない話でありますが、そういう点をやはりよく注意をされて記者会見なりあるいは講演などに臨んでいただきたい。もちろん、政策を行うに当たってやはりそういうことも念頭に置いて金融政策を行っていただきたい、こう思うわけであります。  それから、今度は株の購入であります。  もちろん、これも直接生株を買うわけではありませんで、ETFを通じて購入ということでありますが、二〇一九年の十月末で、これは簿価で計算をされていると思いますが、株をどのくらい今買われておるか、お教えください。
  95. 前田栄治

    前田参考人 お答えいたします。  ただいま手元にある数字で申し上げますと、私ども、二〇一九年九月末時点でのETFの時価ベースの数字を持っておりますが、これが三十一・六兆円保有ということでございます。含み益は四兆円程度ということでありますので、簿価が二十七・六兆円程度、こういうことになろうかと思います。
  96. 海江田万里

    ○海江田委員 ちょっと恐縮ですが、二〇一三年の時点で三月ぐらいの数字が出ていると思いますけれども、お願いいたします。
  97. 前田栄治

    前田参考人 お答えいたします。  二〇一三年三月末時点での計数でございますけれども、私どもが持っております簿価ベースでは一・五兆円ということでございました。
  98. 海江田万里

    ○海江田委員 一・五兆円から簿価ベースで二十七兆六千億ぐらいですか。これは二十数倍になっているわけですが、今、含み益が出ているというお話がありましたけれども、含み損に変わる損益の分岐点というのは、日経平均あるいはTOPIXでどのくらいの数字になりますか。
  99. 前田栄治

    前田参考人 お答えいたします。  御質問の損益分岐点とは含み益がなくなる株価水準ということかと思いますけれども、先ほど申し上げたとおり、日本銀行は、本年九月末時点で、時価ベースで三十一・六兆円、含み益は四兆円ということでございますので、こうした保有状況を前提として機械的に試算しますと、日経平均株価が一万九千円程度、TOPIXで申し上げますと一三五〇ポイント程度、このあたりを下回ると時価が簿価を下回る、こういうことになろうかと思われます。
  100. 海江田万里

    ○海江田委員 今お話がありましたように一万九千円ぐらいということですが、これは総裁に聞きましょうかね。三年前の日経平均株価が大体一万九千円なんですね。もちろん上下はありますけれども。となりますと、簿価を下回ってしまいますと当然含み損ということになりますよね。やはり、日銀の持っている株が、これだけ大量に持っていて含み損ということになったその先のことを考えたとき、私は非常に心配を、日銀のバランスシートの毀損といいますか、これは非常に大きいと思うわけです。  株価ですから上がったり下がったりするのは当然でありますが、一万九千円ぐらいをつけるということは全くないわけではなくて、世界的な経済危機などが起きればすぐそのくらいの値段に達してしまうと思うんですけれども、そうしたときの日銀のバランスシートの問題ということはどういうふうにお考えでしょうか。
  101. 黒田東彦

    ○黒田参考人 先ほど前田理事からお答えいたしましたとおり、日本銀行が保有するETFには含み益がありますので、株価下落しても直ちに決算上の期間損益に影響を与えるわけではありません。  ただ、日本銀行が保有するETFについて、時価総額が帳簿価額の総額を下回る場合には、その差額に対して引当金を計上するということになっておりますので、そうしたことによって財務健全性確保を図るということであると思います。  さらには、このところ、準備金を積み立てておりまして、自己資本の充実にも努めてきているところでございます。  日本銀行としては、今後とも、もちろん財務健全性には十分留意しつつ、適切な金融政策運営に努めてまいる所存でございます。
  102. 海江田万里

    ○海江田委員 日銀がETFを買うに当たっていろいろな手口がありますけれども、その手口もかなり明らか、インターネットの上ではそういう例があったりしまして、とにかく、日銀とすれば、株価が上がることよりも、例えば今お話のあった一万九千円とか、下がることの方に非常に心配というか危惧を持っておるんじゃないだろうか。だから、手口を見ていますと、買い上がっていくときには別に買っていないんですね。下がってくるときには買い支えをやって、そこで株価を維持しているということが非常にはっきりしているわけです。  ただ、そういうことを繰り返している結果どういうことが起きてくるかというと、やはり、株式市場の硬直性といいますか、上がるときは上がって下がるときに下がった方が、ボラティリティーといいますけれども、これはもう御承知のように、本当の投資家は、そういうところで拾って、そして上がったときにこれを売るとかいろいろあるわけで、そういうものが非常に硬直化してしまうということもあるわけで、株式市場をゆがめているということはこれはもう紛れもない事実だと思います。  そういうことがあるから、それから、さっきもお話ししましたけれども、やはり株が下がったときの日銀のバランスシートに与える影響というものも考えながら、中央銀行で株を、ETFを通じてでありますけれども、結果的に株を買っている中央銀行というのは、世界の、たしかスイスがあったと思うんです。スイス以外にどこかありますか。あったら教えていただきたいんですが。
  103. 黒田東彦

    ○黒田参考人 御案内のとおり、香港がアジア通貨危機のときに莫大な株の購入をいたしましたけれども、現時点で、少なくとも先進国で株あるいはETFを購入している中央銀行はないのではないかと思います。
  104. 海江田万里

    ○海江田委員 香港の話は私もよく存じ上げていまして、日本でも、だからその後買っているんですよね、アジア危機があった後。あれはスポットですからね。ただ、それをまだそのまま持っていて、あれは含み益は随分出ていますけれどもね。だから、香港のことは余計な、余計なと言ってはいけませんけれども、わかり切った話でありますから。  それから、香港のホンシャン・バンクのことを言っているんですか、どこのことを言っているんですか。あれはやはり中央銀行とは違いますからね。一国二制度ですから、それは。そういう原則もやはりわきまえていただきたいと思います。どこですか。
  105. 黒田東彦

    ○黒田参考人 もう九七年のころには中央銀行が香港でできていまして、香港上海銀行はもう中央銀行としての役割は果たしておりませんでした。  したがいまして、香港で大量に株式を購入したのは香港金融管理当局、つまり中央銀行が買ったわけであります。
  106. 海江田万里

    ○海江田委員 その議論はまた別にしましょう。それを言うと一国二制度の問題とも関係してきますのでね。  いずれにしましても、世界のどこの国の中央銀行も買っていないんですよ、これは。それはもう総裁自身もわかっているわけでありますから、その意味では、やはり、この日本の異常な株価、株を買うということはどこかでやめなきゃいけない。ただ、やめたら急激な下落につながりますから、このことはやはりしっかり、そういう日本だけがやっていることで、株価に対して、市場に対して非常にいびつな市場形成をしている、そういう認識をやはり持っていただきたいというふうに思っています。  それから、マイナス金利でありますが、当然、金融緩和金利が下がれば、本来得られるであろう預金者の利子の収入というものが大変得られなくなって、得られるべき利益が失われるということで、得失利益とかいろいろな言い方がありますが、資料の二枚目と三枚目に、私どもの方で資料を加工して調査室が作成をしてくれた表がついております。  日銀でもいろいろな数字をお出しになっていると思いますが、やはり、家計が、もちろん住宅ローンなんかを借りている人の場合は、これは利子が低くなってそれで利益を得るということもあるわけで、これはもう再三、金融緩和のプラスの面だということで総裁もお話しになっていますけれども、それを差っ引いた後でも、純家計の逸失利益というのが、これは二十六年間ですか、九一年からずっととっていて、別に黒田総裁のときだけではないわけですけれども、やはりこれが四百七十一・九兆円、二十六年間にあって四百七十一兆円。国民、仮に一億人とすれば四百七十一万円ですね。二十三年間でいきますと、これが二百八十六兆円。  結果的に、プラスマイナス計算してこういう数字になっていますけれども、これは事実でありますが、黒田総裁、改めてこういう数字を見まして、どうお考えになりますか。
  107. 黒田東彦

    ○黒田参考人 一般論といたしまして、金融緩和がやはり金利を下げますので、資金の貸し手から借り手への所得移転を伴う性質を持っているわけであります。  ただ、金融緩和の効果については、経済全体に与える影響というものを踏まえて評価する必要があると考えておりまして、金利水準の低下設備投資住宅投資などの経済活動を刺激して、雇用・所得環境改善、あるいは株式などの資産価格上昇などを通じて、家計全体にとってもプラスの効果を及ぼしているというふうに考えております。  実際、二〇一三年の量的・質的金融緩和導入以降、失業率は二%台の前半まで低下しておりまして、雇用者所得も緩やかに増加するなどの効果をもたらしているというふうに考えております。
  108. 海江田万里

    ○海江田委員 黒田総裁もだんだん安倍総理のようになってきましたけれども、失業率の低下の問題、あるいは有効求人倍率の問題というのは、これはそれこそ黒田総裁の金融政策のおかげだということではないと私は思うんです。  もちろん、経済活動全体が不活発であればそういうことにはならなかったかもしれませんけれども、基本的には人口構造の変化でありますから、やはりそこはしっかり押さえておく必要があるだろうというふうに思っております。  それから、黒田総裁は、株価のお話もありました。四枚目に株価がどう評価が上がっているかということで、日銀から前にいただいた資料では、結局、黒田総裁になってからの二〇一三年以降は金融資産全体で見ると少しその前と比べるとプラスになっているんですね、これは。ただ、それはひとえに、株の価格が上昇をして、それによって、つまり株を持っている人、この人たちのやはり金融資産の金額がふえたということでありますから。  だから、全体的に言うと、やはりそれは、株を持たずに、本当にわずかの預貯金があって、そしてその預貯金からの利子収入に期待していた人たちの期待を裏切って、そして株を買って株価が上がった人たちが潤っているという状況になると思うわけでありますが、これについてはいかがですか。
  109. 黒田東彦

    ○黒田参考人 先ほど来申し上げたとおり、金融緩和の効果というのはやはり経済全体に与える影響を踏まえて評価する必要があると思いますし、実際に、量的・質的金融緩和の導入以降、経済は活発になり、またデフレでない状況にもなっております。  そのもとで、先ほど失業率が二%台前半まで低下したと申しましたが、御案内のとおり、この六年ぐらいの間に、確かに、いわゆる生産年齢人口というんですか、三百万人ぐらい減ったと思うんですけれども、一方で、就業者は六百万人以上ふえているんですね。  ですから、失業率が下がってその失業者のプールから労働者が出てきたというよりも、経済が拡大して雇用機会がふえて、女性あるいは高齢者の方も含めて就業者が非常にふえたということがあって、それが雇用者所得増加にもつながっていると思いますので。  もちろん、金融政策だけでそうなったと言うつもりは全くありませんが、金融緩和によって経済活動が刺激されて経済全体が拡大する中で、労働需要が非常に多くなって、雇用が非常にふえた、就業者がふえたということが、賃金上昇も含めてですけれども、雇用者所得増加につながってきたというふうに考えておりますので。  先ほど来から申し上げているように、資金の貸し手から借り手への所得移転というのが一種の部分均衡のような部分であるわけですけれども、やはり経済全体に対する影響の中で家計に対する影響というものも考えていく必要があるというふうに思っております。
  110. 海江田万里

    ○海江田委員 この雇用者数がふえた原因だとかなんだとか、余り長々とやるつもりはありません、これは。ただ、黒田さんの金融政策が成功したその例として、真っ先にといいますか、鼻高々挙げるのはちょっとどうかなというふうに思う。  先ほども、家計利子所得が減って、今奥さんが働きに行かなければ食べられないというような状況もありますし、もろもろのデータもありますから、そこはやはり、金融政策のおかげでこうなったということだけではないのではないだろうかと思います。  それから、黒田総裁、最近はほとんど余りサプライズということをおっしゃらなくなった。むしろ、市場との対話ということを最近力を込めておっしゃっていますが、実は、財政民主主義という観点から黒田さんの日銀政策というのは非常に問題があるんじゃないだろうかということを指摘をする意見がございます。  京都大学の諸富先生ですか、私のところへ本を送ってきまして、ここでやはり、財政民主主義というのは、普通は租税の民主主義で、これは議会でしっかり議論しなきゃいけない、議会で議論して税制を決めなきゃいけない。それから予算の審査、予算審議、これも議会でしっかりと議論しなければいけないということですけれども、もう一つ、やはりここまで財政の歳入の中で占める国債の比率が高まってきて、四〇%ぐらいになって、しかもその大宗を、大半を日銀が引き受けているということになりますと、財政民主主義の観点から、もっともっと日銀は、あるいは日銀総裁は、議会に対して、あるいは国民に対して丁寧に説明をしなければいけないということをおっしゃっているので、私はもう全くそのとおりだろうと思います。  これまでのサプライズというのは、その意味では、そういう国民に対する説明でありますとかあるいは議会に対する説明ということでいえば、甚だやはり問題がある。むしろ議会を煙に巻いたり、煙に巻くというのならまだいいんですけれども、やはり事実と違う、次に自分がやろうとすることと違う方向に誤解をさせるような発言を多々繰り返してきたと言わざるを得ないんですね。  これまでに三回サプライズというものはあったわけでありますが、一番最後のサプライズが、二〇一六年一月二十九日のマイナス金利の導入についてでありますね。  このマイナス金利の導入について、やはり直前の国会での質問、その国会質問に対する答弁、これについては、マイナス金利可能性はありますかということを、一月の二十一日に参議院の決算委員会で江崎孝委員マイナス金利に対する質問に対して、確かにECBがマイナス金利政策をとっております、しかし他方で、FRBは第一次、第二次、第三次と大変な量的緩和をいたしましたけれども、マイナス金利政策はとらなかったわけです、そのもとでFRBの政策は効果を発揮して米国経済は回復過程に乗ったということで、金融の正常化を行っているということでありますと。それで、いろいろな意見はあると思いますけれども、現時点ではマイナス金利ということを具体的に考えているということはございません、こういう答弁なんですよ。  これを素直に読みますと、片やヨーロッパ中央銀行のECB、マイナス金利、こなたアメリカのFRBとあって、ECBについてはちょっととっていますということだけで、FRBについてはるる、とっていないけれどもうまくいっていますよということを話しているんですよ。  そうすると、私のような、自分で言うのもおかしいですが素直な人間が読むと、ああ、これはFRBのやり方を評価しているんだな、だからマイナス金利はとらないんだなというふうに思うわけですよ、これは。  だから、その意味では、ところが実際にそれから一週間後、特にダボスなんかにも行っていますから、それから、その後の検証で、これは三月四日、後からの検証で、いや、実は、そこの答えたときは考えていなかったんだけれども、答えた後、ダボスに行くまでの間にいろいろ連絡をして、そして決めたんだというふうにおっしゃっていますけれども、これは、確かにサプライズを狙うためには、フェイントと言ってもいいです、フェイントをかけるためには、やはり別な方向になるという可能性を言っておかなきゃだめなんですよ。  第二回のときだってそうですよ。二〇一四年十月三十一日だって、それまで総裁は、日本経済は順調に物価安定の目標に向かって進んでいると。誰もが、これを聞けば、追加利下げがあるなんて思わないわけですよ。  そういう、本当は考えているんだけれども、そんなたった一週間やそこらであんなマイナス金利なんかできるはずがありませんよ。それはもっと前から考えているんだけれども、だけれどもそれは秘して、そして、むしろそれと逆なことを言って市場をびっくりさせるということ。これはもう二度とおやりにならないと思いますけれども、もう三回もおやりになったんですから。やはりこういうやり方というのはフェアではありませんし、それから、まさに今お話をした財政民主主義ということに反するんじゃないだろうか。  ヨーロッパの中央銀行だって、半年ぐらい前からそういう可能性についていろいろな形でやはり言及しているんですよ。どうしてそういうことを、もうやりませんね、そういうサプライズというのは。
  111. 黒田東彦

    ○黒田参考人 私どもとして、何かサプライズを狙ってそういうようなことをしたという覚えは全くございません。  その上で、金融政策につきましては、あくまでも金融政策決定会合において、それまでの経済動向、金融市場の動きその他を勘案して、その次の決定会合までの間の金融政策金融調節方針を決定する、合議体で決定するというものでありますので、私自身が先取りして何か申し上げるというようなことはあり得ないわけですし、そういうことはしておりません。  それは、FRBの場合でもECBの場合でも、議長や総裁が何か先取りして言われるということは基本的にはないわけでありまして、あくまでも政策委員会で議論したことを踏まえて発言されているということだと思います。  いずれにいたしましても、日本銀行金融政策が何か財政民主主義と反するとか、あるいは財政民主主義の対象になるとか、そういう問題ではなくて、あくまでも日本銀行は、日本銀行法に基づいて、政府から独立して金融政策を決定し、物価安定を達成するとともに、金融システムの安定も維持するということであるというふうに考えております。
  112. 海江田万里

    ○海江田委員 日本銀行の本来の使命に即してやっているんだということでありますが、物価の安定、物価の安定と言いますけれども、昔の物価の安定と随分違いまして、昔はインフレがあったから、そのインフレに対して物価を安定させるということでしたけれども、今は物価が下振れリスクというかマイナスの方に引く力の方が多いわけで、それを無理やり上げようとしているということだろうと思うんですよね。  だから、私は別に日銀を悪者にするつもりは毛頭ないですし、日銀は、その意味では、幾つか間違ったことはやっていますけれども、基本的な純粋性というのはあると信じているわけでありますけれども、正直にと申しますか、きちっと説明責任を果たすということは大事なことであって、財政民主主義という言葉を使う使わないは別にして、やはり国会で、本当は考えているんだけれどもこれは悟られないようにしようと思って、わざと、さっきお話をしました決算委員会での答弁でありますとか、そのほかでも幾つもそういう答弁がありますけれども、そういうことをやるのは余りいいことじゃないんじゃないかなということを申し上げているわけであります。  それから、黒田さんのお考えに従って、この間、七年近くやってこられて、確かにマネタリーベースは、黒田さんが就任する前、一応、二〇一三年の六月期で百六十三兆円、これが二〇一九年の十月で五百十七兆円になりましたね。マネタリーベースは確かに拡大をした。それから、あと、金利のコントロールもなかなか難しいんです、私が言うよりも、一番おやりになっている皆さんが御承知おきだろうと思いますが、ただ、金利のコントロールも一生懸命やってきた。  そして、今、恐らく、自信家であられる黒田さんは、どうだ、うまくやっているだろうというおつもりがあるだろうと思いますけれども、こうした政策手段ですよね。まさに独立性というのは政策手段の独立性でありますから、この政策手段の独立性を持って、そしてこういうことをやってきた、これは比較的うまくいっているねとお思いかもしれませんけれども、一番肝心の、何のためにこういう政策手段をとったのか。  物価の安定だとおっしゃいますけれども、具体的に言えば物価をやはり二%に近づけていくということですけれども、これまで七年近くやってこられて、そしてマネタリーベースも、あるいは金利のコントロールも比較的うまくやっているというふうに思っておられるでしょうから、思っておられるということを前提にして、では、何でその目標であります、あるいは目的であります二%が達成できないんですか。
  113. 黒田東彦

    ○黒田参考人 それは先ほど来るる申し上げたことでありまして、やはり、我が国経済がかなり長きにわたって低成長とデフレというものが、十五年ぐらい続いたわけですけれども、そうしたもとで、賃金物価について、それが上がらないというようなことを前提にした慣行とか考え方というものが広がっていた。そういうもとで、企業賃金、価格設定スタンスについてなかなか積極化してこなかった。少しずつ積極化してきているとは思いますけれども、十分それが積極化してこなかったということがあり、さらに、その他、先ほど来申し上げているようないろいろな要素があったということだと思います。  先進諸国の中でも、やはり、大幅なマイナス金利を実施し、量的な緩和も続け、更にさまざまな手段を活用してきたECBとしてもなかなか二%近いインフレ目標というか物価安定目標に達していないということでありまして、その中で、確かに米国だけは、マイナス金利も導入せず量的緩和だけでやってきて、二%近いところまで来た。ということで、正常化を始めたんですが、やや、世界経済の減速とか通商政策をめぐる不確実性ということを踏まえて、このところ三回ぐらい金利を下げて、緩和方向にまたかじを切ったということであります。  米国の場合もまだ二%に達していないわけですけれども、日本独自の要因もありますし、日米欧共通した要因もあると思いますけれども、残念ながら二%にまだ達していないということでありまして、引き続き、この二%の物価安定の目標を達成すべく、必要な金融緩和措置を講じていきたいというふうに考えております。
  114. 海江田万里

    ○海江田委員 では二%はいつなんですかとお尋ねをしても、これはお答えにならないということでございます。  二%という数字が果たして本当に妥当だったんだろうか、どうなんだろうか。当初は、世界的にも二%というのが一つの数値でありました。それ以外はなかったわけですけれども、それを七年近くやってきて、二%はどうなんだろう。政策委員見通しの中央値でも、一%になるのが二〇二〇年度、これは一・一%ですね。二〇二一年度になって一・五%ということですから。  そうすると、もちろんバッファーの問題はありますけれども、二%という数字がちょっとこれはもう無理なんじゃないだろうか。いつまでも達成できない、蜃気楼みたいなもので、これを追い続けている限り、さっきのETFの購入だとか国債の爆買いでありますとか、そういうことを続けなきゃいけないわけですから、これはリスクが多過ぎますから、リスクであることは確かなんですから、そういうことを考えれば、やはり二%を例えば一・五%にするとか、そういうお考えはありませんか。これは政府ともよく相談しなきゃいけませんけれども。
  115. 黒田東彦

    ○黒田参考人 そういう考えはありません。  実際、国際的な議論の場では、なかなか二%に達しない国が多いんですけれども、その中で、二%に達しないので一・五にしようとか一%にしようという中央銀行はありません。むしろ、これを三%とか、より高い目標を立てて、それに向けて徹底した金融緩和をすべきだという議論は一部にあるんですけれども、今のところ、量的・質的金融緩和を導入した二〇一三年と全く同様で、主要中央銀行は全て、基本的に二%の物価安定目標というものを掲げて金融政策を運営しておられます。
  116. 海江田万里

    ○海江田委員 もう時間になりましたのでこれで終わりますが、本当に市場の声あるいは国会議論に真摯によく向き合っていただいて、二%、ありません、何日かたったらいや実はということにはならないと思いますけれども、そういうことのないように、くれぐれも丁寧な説明、それから、いろいろな意味でこの間の黒田さんの政策によって痛んでいる、家計部門なんかそうですけれども、そういう人たちもいるわけでありまして、もちろんそれは日銀だけがやることではありませんけれども、やはり日銀もそういうところに対する目くばせというのも必要ではないだろうかというふうに思って、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  117. 田中良生

    田中委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後二時四十五分休憩      ――――◇―――――     午後三時十八分開議
  118. 田中良生

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官大西証史君、内閣大臣官房長大塚幸寛君、金融庁企画市場局長中島淳一君、総務省統計局統計調査部長井上卓君、財務省大臣官房長茶谷栄治君、主計局次長角田隆君、主税局長矢野康治君、厚生労働省大臣官房政策立案総括審議官山田雅彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  119. 田中良生

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  120. 田中良生

    田中委員長 質疑を続行いたします。櫻井周君。
  121. 櫻井周

    櫻井委員 立憲民主国民・社保・無所属フォーラム櫻井周です。  本日は日本銀行の黒田総裁に質問させていただきます。よろしくお願いいたします。  私も昔、国際協力銀行というところで働いておったときに、仕事でアジア開発銀行にも行かせていただいて、そのときには黒田総裁が、いろいろな、大きな会議だったものですから御挨拶いただいた。ああ、すばらしいな、すてきだなというふうな印象を持った記憶がございます。本日は、こうして質問させていただく機会ができて、大変光栄でございます。  それでは、早速質問に入らせていただきます。  まず最初に、資料一にあります「日本銀行政策委員のCPIインフレ率見通し」についてでございます。  物価目標二%、先ほどの海江田委員に対する質疑でも、これは堅持するんだというお話でございましたが、六年半前に黒田総裁が就任されたときに、二年で達成できるというふうに言っておられました。  そして、この見通しのグラフを見ますと、横に見ていきますと、これが、例えば二〇一四年の四月ですと、二〇一三年度の見通しとして〇・八%、二〇一四年度の見通しとして一・三%、二〇一五年度の見通しとして一・九%、二〇一六年度の見通しとして二・一%。横に見ていくと、そのときの、左側に書いてあるときの見通しということになります。  ところが、これを縦に見ていきますと、非常に興味深いのが、二〇一六年度見通しについて、二〇一四年の四月の時点では二・一%、こういうふうに言っておったんですが、これが時間がたつごとに、例えば二〇一五年の一月の時点ではまだ二・二%と言っているんですが、二〇一六年の一月になると〇・八%に下がっていき、更にどんどん下がっていって、一番最後、二〇一七年の四月にはマイナス〇・三%。結局、実績値としてはマイナス〇・二%というふうになっていくわけです。  それで、各年度の見通し、縦の方向に見ていきますと、いずれも、当初は二%前後の目標を掲げておきながら、時間がたっていくにつれてどんどん下がっていく。結局、最後は一%にも届かない。こういうふうになっているわけでございます。  この表は、実は、十一月五日に副総裁に同じ会派の階議員が質問したときに使った資料で、大変わかりやすいので、再びこちらに持ってまいりました。  このように、二%と目標を立てておきながら、結局ずっと六年半達成できていないという状況が続いている。どうして達成できないのかということについては、先ほど海江田委員質問し、お答えいただきました。  重ねてお伺いをいたしますが、一体何が間違っていたんでしょうか。六年半前に二年で達成できると言ったのがずっと達成できていないわけですから、何かが間違っていたんだと思うんですけれども、何が間違っていたというようにお考えでしょうか。
  122. 黒田東彦

    ○黒田参考人 先ほど来申し上げておりますように、一番ファンダメンタルな要因としては、やはり、長期にわたる低成長あるいはデフレの経験などから、賃金物価が上がりにくいことを前提とした考え方、慣行が家計企業に根強く残っている、そのもとで、企業の慎重な賃金、価格設定スタンスが明確には転換してこなかったということが大きいと思います。その意味では、その点についての予想というか、それが誤っていたというのは一つあると思います。  ただ、御指摘のように、この物価上昇率の動きを見ていただくとわかりますように、二〇一五、一六年度は御承知のように石油価格が大幅に下がっていったところでありまして、原油価格がたしか、百二十ドルぐらいから最終的には三十ドルを割るぐらいまで下がったわけですね。そういったことが足元物価上昇率を下げた。それが更に予想物価上昇率に影響したという要因がありまして、これは、今申し上げた、基本的にこの六年半続いている一番大きな要素ということを踏まえてというか、それの上に、そういう本来は一時的である石油価格の下落消費物価下落をもたらした。  これは、実は、欧米でも全く同じように消費物価上昇率はほとんどゼロになったわけですけれども、米国の場合は、予想物価上昇率が二%付近で比較的安定していますので、石油価格の下落がとまると、すっと実際の物価上昇率も二%に向けて上がっていったということがあったんですが、我が国の場合はそれがかなり尾を引いたということもあります。  ただ、そういった石油価格のそれほど大きな下落というのが予想できなかったということは、ある意味で誰も予想できなかったと思うんですが、根本的な、要するに、物価が上がりにくいということを前提とした考え方とか慣行が非常に根強く残っていて、それが予想物価上昇率にも影響するし、何よりも企業の慎重な価格設定あるいは賃金設定スタンスに残っている、それがなかなか転換していかないという点については、確かに私どもの判断が楽観的過ぎたというふうに、今から振り返ってみるとそういうふうに思います。  なお、もう一つ、これも私どもが十分予想していなかったんですが、ここ数年、非常に設備投資、特に省力化投資が進んでいまして、それが労働生産性をかなり引き上げているということで、ある程度賃金が上がっても価格に転嫁しなくて済むということで、企業がそれほど価格を上げてこない。これは、先ほども申し上げたように、経済成長にはプラスなんですね。いずれは、成長期待の上昇も踏まえて自然利子率も上がって物価上昇にプラスになってくると思うんですけれども、足元ではやはり物価上昇をおくらせている。これも実は私どもは余り予想していなかった点で、その点で、政策として間違っていたとは思わないんですが、これは必要な政策だったと思うんですけれども、私どもが予想していたよりも、根強い家計企業賃金物価観というのがそう簡単に転換してこなかったということが一つあるのかなというふうに思っております。これは私どもとしての反省でございます。
  123. 櫻井周

    櫻井委員 今、人々のデフレマインドといいますか、物価がなかなか上がらないというか、価格に対する心理的な要因というお話だったと思います。ただ、これは心理的な要因とかそういう話で済ませてよいのかどうかというと、私は違うと思うんですね。  資料二の方を用意させていただいたのはまさにそのためでございまして、労働分配率というのはこの間もずっと、リーマン・ショック後、これはリーマン・ショックの影響もあるんでしょうけれども、民主党政権のときにはちょっと持ち直したけれども、その後また自民党政権に戻るとずっと下がっていく。要するに、小泉構造改革のころからもうずっとだらだらと下がっていっている、そういうことではないのか。一方で、営業利益の方が上がっていないかというと、これは上がっている。だから、営業利益は上がっているけれども、それが労働者に全然分配されないということではなかろうかと思います。  それからもう一つ、次の資料三の方では、大変ことし話題になりました毎勤統計、毎月勤労統計でございますが、特に、ことしに入って実質賃金はずっとマイナスという状況でございます。  こういったことが、これは心理的な問題ではなくて、やはり、家計が潤っていない、賃金が上がっていないということが購買意欲につながらない、そして、購買意欲につながっていないことが物価水準にそのまま反映されているのではないのかというふうにも思うんですが、総裁はどのようにお考えでしょうか。
  124. 黒田東彦

    ○黒田参考人 委員指摘のとおり、景気の拡大あるいは労働需給の引き締まりに比べて、一人当たりの実質賃金あるいは労働分配率が伸び悩んでいるということはそのとおりでありまして、この点につきましては、消費物価が緩やかに上昇している一方で、企業賃金設定スタンスがなお慎重なもとで、名目賃金上昇ペースが緩やかなものにとどまっているということが影響しているというふうに思います。  もっとも、雇用面では、失業率が低下して、雇用者数も着実に増加するなど、労働需給自体はしっかりと改善してきておりますので、先行き、こうした労働需給の引き締まった状態が続くもとで、企業賃金設定スタンスも徐々に積極化して、緩やかに賃金の伸び率を高めていくのではないかというふうに考えております。そうしたもとで、消費物価の前年比は二%に向けて徐々に上昇率を高めていくというふうに考えております。  御指摘のように、実質賃金あるいは労働分配率が上がってきていないということが物価上昇率をなかなか引き上げていかないという大きな要因の一つであるということはそのとおりだと思います。
  125. 櫻井周

    櫻井委員 労働需給が引き締まっている、失業率はずっと下がっている、こういう話は先ほどの海江田委員との議論の中でもあった話でございます。  そうなんですけれども、結局、ポイントは、人手不足であれば、普通の経済学で考えれば、賃金は上がっていってしかるべきだろうと思うんですが、ところが上がらない。人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか、これが大変なミステリーでございまして、これは東京大学の玄田有史先生も、そういった本、まさに、「人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか」、こういうタイトルの本で、いろいろな研究者、二十人ぐらいの研究者の方がさまざまな角度でああだこうだという分析をされています。ただ、どれも決定打ではなくて、いろいろな要因が複合的に絡み合っているのかなというところで終わっているわけでございます。  なぜこういう労働市場の話を日銀総裁に申し上げているかと申し上げますと、結局、こういうところに原因があるのであれば、労働市場の話ですと、日本銀行政策手段としてはほとんど何もできないと思うんですね。ここに原因があるのであれば、日銀総裁としてはどうも手出しができない、むしろ、厚生労働大臣とか、それ以外、いろいろな政府の役職の方々に頑張っていただかないといけない。  実際、麻生大臣が参議院の財務金融委員会で十一月七日に発言されているんですが、基本的に金融だけに任せておいてこのデフレーションによる不況から出られるかといえば、そんな簡単なものじゃない、こういうふうにも発言されている。  だから、金融政策だけでできるものじゃない。むしろ、金融政策としては、もう日本銀行はずっと、前の総裁のときからやれることは全部やってきている、やり過ぎなぐらいやってきている。しかし、デフレ脱却できないのは、先ほど申し上げた労働市場の問題、それはひいては政府のほかの各省庁の役割としてやっていただかなきゃいけないこと、そういうことなんじゃないのかというふうに思うんですが、日銀総裁としては、もうやれることは全部やったんだ、これ以上できることはありませんと言った方がむしろデフレ脱却に向けて近道なんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  126. 黒田東彦

    ○黒田参考人 まず、労働市場の問題を指摘されまして、この点は国際機関なども指摘している点でありますけれども、データで見ましても、いわゆるパートの人とかあるいは契約労働の方の賃金というのは二%台半ばぐらいで上昇しているわけですけれども、いわゆるレギュラーワーカーというか、通常の、昔風に言えば終身雇用制の方々賃金というのは一%そこそこという上昇率でありまして、明らかに労働需給の引き締まりがパートとか何かの市場には非常に大きくきいて賃金が上がっているわけですし、政府の最低賃金の引上げもきいているかもしれませんが、そういうことで上がっているんですが、正規労働者の賃金上昇率が非常に低いということ。  それから、もちろん、パートの方の賃金が、上昇率は高くても、レベルとしては正規の雇用の人に比べるとかなり低いわけですね。そういうこともありまして、全体の平均をとるとなかなか賃金上昇していかない。これが労働市場の問題であることは確かなんですが、政府としても、同一労働同一賃金等、さまざまな努力はされているというふうには理解はしておりますけれども、こういった問題があるということはそのとおりだと思います。  ただ、その中でも、やはり金融緩和、あるいはその他の政府政策もあって、経済活動が拡大して、労働に対する需要がふえて就業者数も相当ふえていまして、そうした中で、今言った労働市場の分断の話とか、あるいは賃金上昇率が低いという話も、少しずつ改善方向に向かっていくのではないか。労働全体に対する需要が低いままでは、なかなか、政府がいろいろな制度変更をしても大きく改善するということは難しいかもしれませんが、そういった全体の労働需要増加している、人手不足が顕在化しているという中で、いろいろな、規制緩和であれ構造改革であれ、労働市場に関する問題も、よりスムースに解決に向かうのではないかというふうに期待をしております。  日本銀行としては、やはり物価の安定という使命を果たすためには、みずからの責任において二%の目標の実現に向けた適切な政策運営に引き続き努めていく必要があるというふうに考えております。
  127. 櫻井周

    櫻井委員 総裁の立場で言える範囲というのは非常に狭くて、どうしてもなかなかクリアに言えないところはあろうかと思いますけれども、一方で、衆議院本会議、これは一月三十日で、安倍総理は、我が会派の玉木議員の質問に対して、大規模金融緩和に頼った経済政策に限界が来ているのは明らかだ、こういうふうに玉木議員が質問したところ、「デフレはさまざまな原因があるものの、基本的には貨幣現象であり、デフレ脱却において金融政策が大きな手段であるという考えに変わりはありません。」こういうふうに答弁しているんですね。  だから、こういう認識を総理が持っていると、結局、日銀任せになってしまう。本来やるべきことを政府の方でやらない。麻生財務大臣は、いや、金融政策だけじゃ無理だと言っているんですけれども、安倍総理がこの認識じゃ前に進まないわけですよ。  ですから、少なくともデフレ脱却というこの局面において、日銀は、ずっとやれることは全部やってきた、だからもうこれ以上無理ですというふうに言った方が、ちゃんと、責任が、政府の方が、総理がオーナーシップを持って取り組むようになるというふうに思うので、ぜひ、もうやれることはやっているんだ、これ以上やったらいろいろな副作用の方が大変なんです、こういうふうに言った方がいいと思うんですが、どうですかね。  日本銀行としては、どうしても何か、いや、まだできることはあるんですみたいなことをついつい言ってしまうんですけれども、できることは全てやり尽くした、こういうことでいかがでしょうか。
  128. 黒田東彦

    ○黒田参考人 現時点で更に何か追加緩和をやるということは考えていないわけでして、現在、今の長短金利操作つき量的・質的金融緩和の中で現在の調節方針を維持するという形で、徐々に賃金物価上昇して、物価上昇率が二%に近づいていくということを狙っているわけです。  ただ、仮にそういった物価安定目標に向けたモメンタムが損なわれるというふうになった場合に、やはり金融政策として更に追加的なことはやる必要があるし、やる余地もまだ残っている。今すぐ何かやらなくちゃいけない、やった方がいいということではないんですけれども、仮にそういう、例えば世界経済の減速リスクが物すごく大きくなるとか、その他いろいろな事情が仮にあって、物価安定目標の実現に向けたモメンタムが失われるということになれば、やはり金融政策として追加的な措置を考えていく必要があるし、それは十分可能であると。  ただ、その場合には、委員がインプリシットに意味しておられるような副作用という点も十分比較考量して、適切なものを行っていくということになると思いますが、現時点では、今のこの金融政策で適切であるというふうに考えております。
  129. 櫻井周

    櫻井委員 副作用の話に移ってまいりますけれども、先ほども、海江田委員議論の中で、日銀の株式購入、ETFの購入の話がございました。  資料四がそのグラフでございますが、このグラフに示しておりますとおり、非常に重要なのは、一つ、まず、日銀が持っている株、先ほどの答弁で、時価で三十一兆円ということなんですが、ETFの日本における市場が四十兆弱、三十八兆ぐらいという中で日銀が三十兆を超えるというようなことになると、証券会社にとって、ETFのお客さん、八割は日銀ということになって、日銀以外のお客さん、ほとんど、余り、ちっちゃいということになるわけですね。  さらに、株式の話でいいますと、年金基金積立金、GPIFの方でも、日銀よりちょっと多いぐらい、三十兆ちょい持っているので、東証の時価総額は六百兆前後になりますけれども、そのうち一割を日銀とGPIFで持っている。何かもう官製相場というようなことになってしまっている。  しかも、これ、GPIFの方は、必ず、年金の支払い、団塊の世代、これから高齢化していくわけですから、ずっと払っていかなきゃいけない、つまり、株を売っていかなきゃいけないわけなんですけれども、どうやって売るのか。さらに、日銀も、未来永劫ずっと持っておくわけにいかないでしょうから、いずれかのタイミングで売却するということになるんですけれども、いずれかのタイミングで売ろうと思っても、これだけ持っているともはや売りようがないんじゃないのか。  実際、預金保険機構の方では、昔、長銀とか日債銀の株式を引き取って、まだ一・五兆円ぐらい持っていますけれども、これを早く売るということになっているのに、一・五兆円でもなかなか売れなくて右往左往しているわけですよ。  三十兆なんかどうやって売るのか。年金も合わせて、年金と含めて、六十兆をどうやって売るのか。  これは、もう売れないものを買ってしまっているんじゃないのか。行ったはいいけれども、行きはよいよいだけれども帰りはどうにもならない、帰れないということになっているのではないのか。  こういうまず副作用があると考えるんですが、総裁、いかがですか。
  130. 黒田東彦

    ○黒田参考人 御指摘のように、ETFの中に占めるシェアは大変高くなっておりますけれども、東証の時価総額全体の中では五%程度なわけであります。  そういう意味では、株価にそれだけで何か大きな影響を与えている、あるいはそれを目標にして行っているということではありませんので、あくまでも、株式市場のリスクプレミアムに働きかけることを通じて、経済物価にプラスの影響を及ぼすということを目的としております。  そうした中で、御指摘の、ETFの保有について、将来どのように処分していくのかということでありますが、現状、二%の物価安定の目標の実現になお時間がかかると見込まれることを踏まえますと、ETFの買入れを含む金融緩和からのいわゆる出口のタイミング、あるいはその際の対応を検討する局面には至っておりません。  ただ、その上で、仮に、そういった出口のタイミングで、日本銀行が買い入れたETFを処分するという場合には、きちっと処分の指針を定めることになりますけれども、その考え方としては、市場等の情勢を勘案した適正な対価によること、それから、市場などに攪乱的な影響を与えることを極力回避すること、損失発生を極力回避することといった、そういった一般的な方針は明らかにしております。  いずれにいたしましても、御指摘の点も含め、私どもとしても十分慎重に考えて対処していきたいというふうに考えております。
  131. 櫻井周

    櫻井委員 今、最後御答弁いただきましたけれども、慎重にということで、損が出ないようにとかいろいろな条件をつけてということなんですが、それは、預金保険機構が持っている一・五兆円の株式の売却においても同じようなことを言っているわけですね。それで、それをちゃんと守ってやろうとしたら売れないわけですよ。三十兆も持っていたら、たかだか五%とおっしゃいますけれども、安定株主の分だって相当あるわけですから、市場でこう動く部分というのはその安定株主の分を除いた分と考えたら、結構市場に与えるインパクトは大きいと思うんですよね。ですから、こういうことを考えると、本当に大変なところに来てしまったなというふうに思うわけです。  さらに、ETFの顧客の八割が日銀ということになると、ETFで証券会社は議決権を行使するわけですけれども、行使するときにどういうふうに行使するか。一応、一定のアコードといいますかルールを決めてやっているということなんですが、でも、一番の顧客、八割の顧客が日銀ということになると、やはり、黒田総裁はどう思っているのかな、総裁に嫌われたくないな、日銀の担当者に嫌われたくないなという心理が、まさにこの日本社会、そんたくが横行するこの時代ですから、そういうことが働かないとも限らない。さらには、その後ろにある政府の意向はどうなんだろうということになって、どんどんどんどん市場がゆがめられていくということになりはしないか、あれこれいろいろな心配をするわけです。  ですから、本来的には、中央銀行がこれほどの株式を持つという異常事態、先ほどの海江田議員との議論の中でも、先進国の中央銀行が株式を大量に持つなんてあり得ない、ほかのどこもやっていませんというお話ですし、そういったことを考えると、本当に大変なところに来てしまったというふうに、今はもう、買っちゃったものをすぐ売るわけにもいかないですから、どうしようもないわけですよね。どうしようもないということで、本当に途方に暮れるばかりであります。  もう一つ、資料の五を、せっかく持ってきましたので、これも御紹介いたします。  副作用の一つとして、以前であれば、一昔前であれば、円安になったら、それで輸出が伸びて、それで景気がよくなるんだという議論はありました。ところが、最近はそうでもないと。日本経済新聞が、「揺らぐ「円安歓迎論」」ということで、実際は、円安になったからといって必ずしも日本にとって国益にかなうわけでもない。  そもそも、一般的には、強い通貨が自国の利益になるというのが本来的には経済の常識だったはずです。日本企業の場合でも、かつては、価格競争のある、要は、価格を下げれば売れるような、そういうコモディティー性の高い商品を売っているときには確かに、円安になって、現地で値段も下げて、そうしたらたくさん売れて輸出が伸びるということになっていたんでしょうけれども、今や、日本製といえば高級品ということです。高級品だから、少々円安に振れたからといって値段を下げるわけではない。そんなに簡単に値段を下げちゃったらブランドイメージに傷がついてしまいますから。  そうすると、数量はふえない、利益は出るけれども数量はふえないということで、余り国内の、何かそれで、輸出で国内経済が活性化するということにはならない。むしろ、一般庶民は、先ほど来の話にあるように、輸入物価のインフレになって、その分、物価高でちょっとしんどくなっていく。  だから、薄く広く庶民が負担をし、そして一部の輸出企業がその分をもうけるというか、こういう何か所得の再配分を国内でやっているだけで、結局、格差を拡大する。それはひいては国内の五割から六割を占める個人消費を冷やすことになってしまうということで、むしろ、こういう異次元の金融緩和をやっていることで通貨安に結果として導かれる、そのことが、実はデフレの方に傾いているかもしれない。  最近では、必ずしもこうした長期にわたる低金利政策がデフレ脱却とかそういったことに効果があるわけでもないというような議論が出ております。  だから、十一月五日の財務金融委員会で、副総裁に対して議論させていただいたときに、階議員から、ローレンス・サマーズ・ハーバード大学教授の、そもそも中央銀行金融政策によって物価上昇率をコントロールできるとは限らない、むしろバブル形成をしてしまって、バブルはいずれはじけるものだからということで、金融緩和を深掘りしようと中央銀行が知恵を絞ることがそもそも余計なんだということまで言っていたり、また、リバーサルレート論というのもあったりします。  というふうに考えますと、そろそろ長期にわたる金融緩和というのは限界に来ているんじゃないのか、むしろ、日本経済、地方の銀行も苦境に立たされていると言われておりますけれども、そうした状況でかえって弊害の方が大きくなっているのではないかと考えるので、なかなか出口論は語ることが立場上難しいとは思いますが、そういったことも考えなきゃいけない、弊害に対してむしろ目くばせをしなきゃいけないと考えるんですが、最後、時間になりましたので、この質問をさせていただきます。
  132. 黒田東彦

    ○黒田参考人 幾つか論点があったと思いますが、まず第一点の円安云々ですけれども、御承知のように、金融政策は為替レートをターゲットにしておりませんので、しかもまた金融政策と為替レートが必ずしもパラレルに動くわけではありませんので、日銀金融政策で円安になったというふうに、余り、何というんでしょうか、確実に言えるわけではないと思いますが、ただ、そういった面もあったとは思います。  その上で、最近は、委員指摘のとおり、為替が安くなったからといって輸出が数量で伸びるということは余りないんですね。ただ、一方で、多くの日本企業は海外で生産して海外で商売していまして、連結決算するときに、円安になると収益が拡大するという意味で、それが設備投資とか、内需にプラスの影響を及ぼすということを言う方も多いわけです。  ですから、輸出だけを見ると、おっしゃるような点が顕著になってきていますけれども、トータルで見て、為替が安くなると経済マイナスになるというふうに言えるかどうかはわからないと思います。  ただ、いずれにせよ、為替はファンダメンタルを反映して適正なところで安定しているのが望ましいので、すごく円安になれば、おっしゃるように、輸入財の物価が物すごく上がって消費者のみならず企業も困るということがありますので、為替レートはあくまでもファンダメンタルズを反映した適正な水準で安定的に推移することが望ましいということだと思います。  なお、金融政策につきましては、リバーサルレートの議論その他あることは承知しておりますけれども、現時点では、金融機関は充実した資本基盤を備えておりまして、金融仲介活動は引き続き活発、積極的な状況にありまして、金融機関の貸出しも二%台半ばで大体推移しているところであります。  したがいまして、現時点で、御指摘のように金融を正常化する、引き締める、あるいは金利を上げるということは適切でないと思いますが、いずれにいたしましても、物価安定目標が実現される暁には、当然のことながら、金融の正常化、バランスシートの取扱い、そして金利上昇といった状況になることは間違いないと思います。
  133. 櫻井周

    櫻井委員 時間になりましたので質問を終わらせていただきますが、最後に、今の日本の現状というのは貨幣現象ではなくて社会構造の問題なんだ、日本銀行としてはできることはすべてやっている、あとは政府がしっかり取り組むべきだということを私からも申し上げますが、日銀総裁からもぜひそういった発信をしていただいて、政府の努力を促すようお願いして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございます。
  134. 田中良生

    田中委員長 次に、日吉雄太君。
  135. 日吉雄太

    ○日吉委員 立憲民主国民・社保・無所属フォーラムの日吉雄太です。  きょうは、質問機会をいただきまして、ありがとうございます。  黒田総裁に質問をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。  総裁の概要説明のところで、冒頭部分で、我が国景気は、輸出、生産や企業マインド面に海外経済の減速の影響が引き続き見られるものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、基調としては緩やかに拡大していますというお話がございました。  非常に基本的なことから伺って恐縮なんですけれども、景気とは日銀としてはどのように定義づけられていらっしゃって、景気がいいとはどういう状況か、悪いというのはどういう状況かをまず御説明いただけますでしょうか。
  136. 黒田東彦

    ○黒田参考人 御承知のように、景気循環は、数年たった後に経済統計の専門家が寄り集まって、いつが景気のピークでいつが景気のボトムだったということを明らかにするわけでして、私どもが金融政策を運営する上で景気がどうかというふうに見る場合には、やはりどうしても手元にすぐアベーラブルな経済統計というものをベースに考えるということになると思います。  そういうことでいいますと、一番マクロ的なものとしては経済成長率、GDPの成長率ですね。しかし、それは四半期ごとにおくれてしか出てきませんので、毎月出る鉱工業生産指数とか小売の指数とか、さらには企業収益の動向、それから雇用の状況ですね、失業率とか有効求人倍率、さらには就業者数の増加賃金などの上昇率とか、そういったものを総合的に勘案して景気の動向を判断するということになると思いますが、私どもの金融政策という観点からは、やはり設備投資それから消費といったGDPの内需の主要なものを占めるところの動きを、GDP統計自体は四半期ごとしか出てきませんので、そのベースになるような統計をよくチェックしているということでございます。
  137. 日吉雄太

    ○日吉委員 今のお話の中で、設備投資消費、こういったものをチェックされていくというふうにおっしゃられておりました。  そういった中で、やはり消費がふえていくということが非常に大事なのかなと思うんですけれども、そのためにはどうするかということを考えたときに、やはり今資金に余裕がある、お金に余裕があるということが一つと、将来においても安心して暮らしていける、それだけの約束というか、期待が持てるということが大事になってくるのかなというふうに考えます。  少しとっぴな例なんですけれども、仮に年金が今よりも倍額もらえるというようなことがあった場合に、ほかのパラメーターは一定とした場合に、それはやはり景気がよくなることにつながっていくということでよろしいんでしょうか。
  138. 黒田東彦

    ○黒田参考人 当然、可処分所得がふえる、あるいは将来十分な年金がもらえるという形が予測されれば、足元消費も刺激されるということはあり得ると思うんです。  ただ、これはあくまでもそういった年金上昇というものが年金制度が持続可能な形で行われるかどうかということであって、そういうものを変えないまま単に年金を上げても、消費者としてはそれが持続できないと思えばやはり消費をふやすということにつながらないと思いますので、やはり重要なのはそういった年金制度の持続可能性、サステーナビリティーというものがしっかり確立されるということがいわゆる老後の安心ということにつながり、それが間接的にも足元消費を支えるということは十分あり得ると思います。
  139. 日吉雄太

    ○日吉委員 ありがとうございます。  今のお話ですと、年金が十分にある、それだけではなくて、それが継続していく、将来にわたって安心して暮らしていけるという気持ちを持ってもらうようになることが消費の拡大につながってはいく、そういうことが大事だというお話だったと理解いたしました。  これを踏まえまして、幾つかお話をお伺いさせていただきたいと思います。  海外の経済についてなんですけれども、アメリカと中国の貿易摩擦の拡大や長期化によりまして、中国はもとより、新興国、資源国の経済において減速の動きが続いております。成長ペースの持ち直し時期がこれまでの想定よりもおくれていると見られますが、日本経済については、輸出の影響消費税の引上げなどの影響で成長率も減少すると思います。  しかし、日銀としての判断は、国内需要への波及は限定的となり、景気の拡大基調は続くと見られるということですが、本当に日本経済における影響はないのかどうか、その理由も含めて御説明いただけますでしょうか。
  140. 黒田東彦

    ○黒田参考人 海外経済が減速しているのはそのとおりでありまして、これが我が国の輸出、そして製造業のマインド影響が出てきているということは、そのとおりであります。  ただ、最近のIMFの世界経済見通しを見ましても、ことしは落ちるんですけれども、来年にかけて成長が回復するという見通しになっております。  また、中国は、引き続き減速はしていくんですが、IMFの見通しでも、ことしは六%、来年五・八%というような見通しで、中国政府自体はことしも来年も六%程度というふうに見通しているようでございますけれども、いずれにせよ、中国経済が不況に陥るとか大きく成長率を落とすということではない状況になっています。  また、米国経済については、引き続き、ことし、来年と、二%程度の成長、二%台前半の成長をするという見通しでありますので、世界経済でリスクが大きいことは事実なんですけれども、来年にかけてある程度回復していくということと、それから、御案内のとおり、IT関係のサイクルがありまして、今、アジアでのIT貿易の状況を見ますと、底打ちして、ちょっと反発して上がってきていますので、そういった意味で、海外の需要というか、それも、どんどん落ちていくというんじゃなくて、やはり回復していく、回復の時期はおくれるんですけれども回復していくというふうに見ております。  そして、その上で、設備投資については、最近の短観、あるいは日銀の支店長会議等のヒアリングでも、かなりしっかりしていると。特に、非製造業を中心に、省力化投資であるとか建設投資であるとかその他かなりしっかりしていて、それらは、景気の短期的な動向にそれほど影響されないような設備投資がかなりメジロ押しになっていて、そこはかなりしっかりしているという感じを我々は持っています。  ただ、消費については、御指摘のとおり緩やかな回復でありまして、それから、消費税の引上げの反動減というのはそれほど大きくないようでありますが、最近の台風とか大雨の影響もあって、やや消費が弱目になっているということで、消費の動向にはより注意が必要ではないかというふうに思っていまして、特に、GDPの中で最大の項目が消費ですので、その動きには十分注意していきたい。  ですから、海外経済影響日本の国内に波及してくるという可能性はあるし、その海外経済のリスクというのが依然として大きいということは事実なんですが、さっき申し上げたように、全体としては引き続き緩やかな成長が続いていくというメーンラインのシナリオでよいのではないか。ただ、リスクは比較的、特に海外からのリスクはかなり大きく残っているということだと思います。
  141. 日吉雄太

    ○日吉委員 今のお話ですと、最後に、海外のリスクは残っているということですので、こういった、日本経済への影響は限定的という判断はされているとおっしゃられましたけれども、今後ともやはり注視していかなければならない、こういうふうに理解をさせていただきました。  そして、今、総裁のお話の中で、設備投資の話がありました。これは堅調だということなんですけれども、その一方で、企業は剰余金を非常に抱えているという話もあります。  やはり、企業は持っているお金投資してお金を生んでいかなければ、そういう企業活動をしていきますので、ためておいてはだめなので、そういった意味では、もっと投資が進んでもいいのではないかな、剰余金を使って投資を積極的に行ってもいいのではないかなと思うんですけれども、このあたり、総裁はどのように見られておりますでしょうか。
  142. 黒田東彦

    ○黒田参考人 確かに、二〇一三年の量的・質的金融緩和の導入以降、企業収益が明確な改善を続けておりまして、今のレベルはバブル期を上回っているようなレベルでございます。  そうした中で、手元流動性が大きく増加してきたということは事実でありまして、ここの動きの中には、リーマン・ショックなどの深刻な景気後退の経験から、企業において予備的な資金需要というのが高まって、やはりそういった内部留保を積んでおきたいという意向があるんだと思います。  ただ、ここ数年は、企業収益が高い水準を維持している中で、先ほど申し上げたように、企業投資スタンスも積極化してきておりまして、設備投資増加傾向にあります。  その結果、利益剰余金自体はずっと伸びているんですけれども、そのもとでの手元流動性、現預金の伸びはほぼとまってフラットになっていまして、逆に言うと、利益剰余金の増加の部分をかなり設備投資に回しているということにはなっていると思います。  私どもとしては、引き続き、緩和的な金融環境をつくり出す中で、企業家計経済活動をしっかりサポートしていきたいと思っておりますけれども、特に設備投資の動向については十分よく見ていきたいというふうに思っています。
  143. 日吉雄太

    ○日吉委員 ありがとうございます。  私も、設備投資も含めて、企業が剰余金をもっと使ってもいいのかなと思うんですけれども、やはり将来に備えておこうという、将来への不安というのもあるのではないのかな、個人の消費も同じですけれども、そういった発想があるのではないかなというふうに思います。  その中で、もう一つ、総裁が消費税の増税のお話をされましたけれども、やはりこの影響も、小さいだろうというお話でありましたけれども、そのあたり、もう少し理由を御説明いただけますでしょうか。
  144. 黒田東彦

    ○黒田参考人 この十月に実施されました消費税率引上げの影響につきましては、九月までの個人消費に関する関連データを見ますと、今回の税率引上げ前の需要増、いわゆる駆け込みは、二〇一四年の引上げのときと比べて小幅のものであったというふうに判断できると思います。  次に、税率引上げ後の家計の支出動向を見ますと、十月の個人消費は、台風十九号などの自然災害の影響による下押しもあったために、やや大き目の減少となっております。ただ、こうした影響を除いて見ると、やはり税率引上げ後の需要減は、前回の引上げ時と比べると小さいようであります。  ただ、消費税率引上げの影響というのは、消費マインドとか、あるいは物価動向によっても変化し得るわけですので、私どもとしては、注意深く今後とも点検していきたいというふうに考えております。
  145. 日吉雄太

    ○日吉委員 冒頭で、年金がもし倍になったら景気はよくなるんですかという質問をさせていただきましたけれども、一方で、将来増税がなされるといった場合には、逆に景気は悪くなるのかなというような思いもあるんです。  例えば、消費税を増税しますというケースと、一方で法人税を増税しますといったケースで、それぞれ景気に与える影響というのは違うのか。違うというか、多分違うと思うんですけれども、それがどっちがどっちというのがよくわからないんですけれども、そのあたり、どのように考えられているのかなというのをちょっとお伺いしたいと思うんです。  その前にちょっと、消費税というのは、売上げに係る消費税を預かって、仕入れに係る消費税を支払って、その差額を企業が納付する、しかし、その負担消費者が負担しますという税制ですけれども、よくよく考えると、企業の利益も消費者が物を買って生み出されているというところからすると、同じ側面があるのかなと思っております。  だからこそ、企業の利益の一〇%部分については、乱暴な言い方をすると、一〇%については、消費税部分というか、一〇〇%税金を企業が払って、残りの部分については、その利益に法人税率を乗じることによって税金を払っているというような見方もできるということで、個人が負担はしているということなんですけれども、見方を変えると企業自身が負担しているようにも見えるのではないかなといった中で、法人税を増税するケースと消費税を増税するというケースが景気に与える影響というのはどのようにお考えになられますでしょうか。
  146. 黒田東彦

    ○黒田参考人 これは主税局に聞いていただいた方がいいと思うんですけれども、法人税については、従来から、一体誰が負担しているのかということについていろいろな議論があるわけですね。ただ、通常は、まず企業負担して、それが株主の負担に帰着するという議論であります。  したがいまして、増税ということになりますと、企業設備投資とか、あるいは株主になっている人の消費とかにマイナスが、まあ基本的には企業設備投資影響が出るだろう。  それに対して、消費税の場合は、御指摘のように、売上げに係る消費税を計算して、仕入れに係る消費税分を控除するという形になっているわけですけれども、それがずっとつながっていきますので、企業としては、常にその分を先に価格で転嫁していって、最終的に全て消費者の負担になるということが前提になっているわけです。  もちろん、きっちりそのとおりになるかどうかというのは議論があるところですが、経済学者の方々も、多くは、やはり消費税企業負担ではなくて消費者の負担になると。ただ、消費者が負担して、それによって仮に例えば消費が減れば、企業の売上げが減るとか、間接的に影響が出てくるという可能性はありますけれども、まず一義的には消費者の負担になる。  ですから、法人税の増税の場合、一義的に企業負担になって、設備投資影響が出るだろう。それから消費税の場合は、消費者の負担になって、消費影響が出得る。  ただ、これはあくまでもその部分だけですから、それぞれの税収をどう使うか。例えば、法人税を増税して投資税額控除に使うということになれば、むしろ設備投資はふえるかもしれませんし、それから消費税についても、今回、御承知のように、幼児教育の無償化であるとかその他に使用するということがありましたので、全体としてどうなっているかということをやはり具体的に見ていく必要があると思います。  先ほど申し上げたように、今回は、税率の引上げ幅が三%ではなくて二%だった、それから、飲食料品が軽減税率が適用されるということで増税になっていない、さらには、教育無償化等の措置が講じられた上に、駆け込み反動減という需要の変動をならすような、いわゆるキャッシュレスのポイント還元その他さまざまな措置が講じられたということがありますので、今回に限って言えば、比較的その影響は小さいだろうというふうに見ています。
  147. 日吉雄太

    ○日吉委員 どうもありがとうございました。  そういった意味では、法人税についても、それを上げるとなれば、それが企業の価格に転嫁されて、それも消費者に反映していくということもあるので、その消費者の気持ちというのはやはり大事なのかなと思っております。  最後に、これまでもずっと質問されておりましたけれども、物価上昇率二%、なかなか達成できません。その中で、やはり物価が上がりにくいという、根強いそういった思いがあるということだ、それが根強くあるからなかなか上がらないというのも一つの要素だというふうにおっしゃられていたと思うんです。  だからこそ、その思いを克服していかなければいけないのかなということで、将来への安心、消費もそうですし、設備投資企業お金を使うというのもそういった安心感が必要なのかなというふうに思うんですけれども、そういったことを踏まえて、二%を達成するに当たっての克服していかなければならないところをもう一度御答弁いただけますでしょうか。
  148. 黒田東彦

    ○黒田参考人 これは、金融政策としては、あくまでも金融市場を通じて、特に実質金利を全体として下げて、それが設備投資とか住宅投資にプラスの影響を及ぼして、それが更に経済全体にその活動を拡大して設備投資消費を刺激するといったことが中心でありますので、個別の、例えば賃金だけを引き上げるような金融政策とか、そういうものはなかなか見出しがたいわけです。  基本的に、賃金物価が上がらないという考え方に基づく慣行あるいは仕組みというものが転換していかないと、賃金物価が両方スムースに上がっていくというふうになりにくいということは先ほど来申し上げていることでありまして、それぞれの政策はまた政府政策かもしれませんが、私どもとしても、賃金上昇物価のスムースな上昇の必要な条件であるということは十分強調していきたいというふうに思っております。
  149. 日吉雄太

    ○日吉委員 どうもありがとうございました。  今後も、日本物価の安定、そして景気回復に御尽力をいただきたいなと思います。  それで、きょう、本当は麻生大臣に桜を見る会の件についてお伺いしたかったんですけれども、ちょっとかないませんでしたので、一言だけ申し上げさせていただきたいと思います。  内閣府が、もうこれは発表されておりますけれども、安倍事務所で幅広く参加希望者を募るプロセスの中で、夫人の推薦もあったというようなことをおっしゃっておりました。この桜を見る会というのは、功労、功績のあった方を政府が招待するという中で、これがそもそも広く募集するものなのかどうかといったことが非常に疑問に思います。  各省庁の方、全部聞いていないんですけれども、省庁の枠であれば、そこで推薦を決めて、募集するようなことはないということでございました。この点について大臣に伺いたいなとは思っていたんですけれども、また別の機会でお伺いさせていただきたいと思います。  きょうはどうもありがとうございました。
  150. 田中良生

    田中委員長 次に、古本伸一郎君。
  151. 古本伸一郎

    ○古本委員 立国社会派の古本でございます。  国民民主党の考え方も交えながら、少し質問させていただきたいと思います。  まず冒頭、国会のいろいろな事情により委員会が全体に一時間おくれているわけでありますけれども、金曜日の、こういう、それぞれに事情がある中で、とりわけ、委員部である衆議院の皆さんもそうですし、職員もそうですし、役所の皆さんも、全て時間繰りをしていただき、対応していただいていることに感謝を申し上げる次第であります。  だからこそ前回この場で提案したと思いますけれども、やはり、そういう資料が出てこないから国会が回せないということが本当にあるのであれば、そういうことを専門にやる委員会があれば他の委員会は影響を受けなくて済むわけであります。国会改革という何か使い古された言葉ではなくて、本当に、同僚議員も含め、与野党でこのことは考えた方がいいなというのは、きょうばかりは感じた同志の方が多いんじゃないかなというふうに冒頭申し上げる次第であります。  総裁におかれては、当委員会にしばしば御出席いただいておりますけれども、いわゆる半期報告ということで、去年の十二月とことしの六月をあわせてということでありますので、御行、日本銀行としての経営の状況を中心にお尋ねしたいわけでありますが、その前に、先ほど日吉委員から税の話が出ておりましたので主税局にということがありましたが、総裁はたしか財務省に長らくいらっしゃったと思うんですが、よく主計畑か主税畑かって言い方があるんですが、総裁は何畑ですか。
  152. 黒田東彦

    ○黒田参考人 私が何畑かってわかりませんが、確かに大蔵省、財務省に三十五年ほどおりまして、そのうち、主税局で仕事したのがたしか九年ぐらいありまして、それから国際金融局で仕事したのが財務官のあれを含めますと十数年ありますので、年数だけでいうと恐らく国際畑というか、国際的なことが一番多いと思いますが、主税局でも課長補佐、企画官、課長、総務課長等やりましたので、主税局でも長く仕事したことは事実であります。
  153. 古本伸一郎

    ○古本委員 大変遠慮がちにおっしゃいましたけれども、脂の乗っている課長時代を主税で過ごしたということは税のエキスパートとお見受けするし、後輩たちは多分、税に理解のある総裁だというふうに慕われておられるんじゃないかなと拝察します。  そこで、現在、消費税の扱いが、非常に残念でありますけれども、政府・与党、とりわけ総理におかれては、これから十年はさわらないという御発言がありました。恐らく麻生大臣もそれを是認した御発言をされているやに承知しています。  物価の安定が日銀の最大の使命であるということであります。この税が与える影響というのは、個人消費が一番GDPの根幹であるということも先ほど来おっしゃっておられます。それほど大きくない影響という御発言がありましたけれども、災害もこれありで、非常に慎重に見ていかなきゃならないというお話もありました。  他方で、我が国の超少子高齢社会を考えますと、何やら、消費税を五%に下げて、いい国になるという御議論もあるようであります。  物価の安定に努めていかれる最大の責任者である日本銀行総裁として、消費税を五パーとか八パーとか今さら戻して我が国財政が成り立つのか、何より社会保障は守れるのか、一言コメントをいただきたいと思います。
  154. 黒田東彦

    ○黒田参考人 これは日本銀行総裁としてお答えするのは余り適切でないと思いますけれども、かつて財務省にいた者として、この消費税の引上げというのは非常に政治的にも難しいわけですし、今回は幸い、さまざまな措置によって景気に与える影響をかなり小さくすることができたと思いますけれども、他方で、現在の消費税の税収が相当な額になっていまして、それが社会保障、教育その他さまざまな公共サービスの原資になっているということを考えますと、今消費税率を下げて税収が大幅に減るということ、それを、じゃ、別の税で増税するのか、あるいは、そうしなければ歳出がかなり大幅に、特に教育や社会保障にも大きな影響が出ると思いますので、そういったことからいうと、私自身は現実的ではないというふうに思います。
  155. 古本伸一郎

    ○古本委員 実は、前回の委員会で、総裁はいらっしゃらなかったですけれども、私は、大臣とか総裁とか、つかさの最高責任者と私たち政治家がやりとりするのは大きな方向感を確認し、後々の具体の政策に落とし込むのは国会の各委員会に小委員会をつくったらどうか、そこには役所の方は担当課長が出ればいいし、そして、バッジが必要な場合には、政治的な答弁は副大臣、政務官が来ていただければいいんじゃないかという、そのかわり、回数はもっと頻繁に、そして日程協議とかじゃなくて、ある意味、例えばドイツのように、極めて年間を通じて小委員会は設置するようなことを問題提起したものでありますので、そのことをちょっとおさらいした上で、さらにお尋ねするんですけれども。  恐らく、消費税が下がれば、喜ぶ一般消費者というか、大変多いと思いますよ。私だって、自分に近い人に聞けば、それは低い方がいいと言うかもしれません。でもそれは同時に、その分社会保障のここは削らなきゃならないよということを説明しないと無責任だと思うんですね。  総裁は今代替財源というお話をされましたけれども、今、政府では、人生百年時代という中で社会保障を見直すという動きがあるようでありますけれども、これは、向こう十年間は消費税はさわらないけれども社会保障改革をするといったら、あとはもう社会保障カットしかないですよね、ただでさえ、高齢者が御長寿になっていく中で財政は発散しますから。  再度お尋ねします。  消費税が今後一二パー、一五パーと仮に刻んでいきながら、社会保障をこういうふうに充実するんだというメニューを示した方が、実は、安倍さんが今、十年間は消費税はやらないんだと言っていただいているわけですから、対する野党は、新しい社会を示すという意味では、自民党さんには描けない社会はこうですという意味では、果断に、消費増税から逃げずに、その分社会をこうしますという提案があるのが一つの選択肢だと思うんですけれども、任を越えているという話がありましたが、これだけ大胆な金融緩和をやっておられるんですから、総裁、どっちの方がいいと思いますか。  どっちというのは実に簡単で、下げるけれども削りますということを言うことも勇気が要ると思いますよ。消費税を五パーにしますけれども、社会保障のここを削りますというのも勇気が要ります。だけれども、消費税を一二、一三、一五と刻んでいくけれども、その分これを物すごく充実しますからというのも勇気が要ることではありますけれども、前を向いていくような話のように私は思います。  どっちの方が、主税畑を歩まれた総裁としてお好みですか。
  156. 黒田東彦

    ○黒田参考人 これはちょっと、私から何か個人的な意見としても申し上げるのは適当でないというふうに思いますので、直接的なお答えは差し控えさせていただきます。  ただ、御案内のとおり、年金改革はかなり行われて、年金制度の持続可能性というのはかなり高まったというのが社会保障関係の人の意見だと思いますが、他方で、高齢者が非常にふえていって、後期高齢者の、実は私自身もつい最近七十五歳になりましたので後期高齢者なんですけれども、医療費が今後かなり急速にふえるというのが、たしか厚生労働省の推計だったと思います。  したがいまして、その点についてさまざまな対策、対応策が必要になるということだと思いますので、そういったことも十分踏まえて、まさに選択の問題であることは事実ですので、十分国会において議論していただいたらいいというふうに思っております。
  157. 古本伸一郎

    ○古本委員 昭和十九年生まれでいらっしゃるので、後期高齢者ということですけれども、麻生大臣といい、本当に人生百歳時代を地でいかれるお姿に尊敬はいたしますけれども、やはり、ではその先立つものはどうかという話になります。  六十五歳以上の高齢者が、平均寿命がやがて九十五歳代になるとしたら、この三十年間を夫婦二人でお元気にお過ごしになると約二千万円がショートするのではないか、これは、何となれば、総務省の御調査で、いわゆる高齢者世帯の、六十五歳でしょうか、定点で観測されていますけれども、の年金収入とかそういう実入りで計算して五万円大体足りないということで、三十年間で計算して大体二千万円が足りないというのが、過般、金融庁から、まとめになったけれどもお蔵入りになってしまったあのレポートだったというふうに思います。  総務省、きょうはわざわざ副大臣にお越しいただいたのは、これは非常に政治的に判断していただきたくて、数字の答弁ではなくて、政治の御答弁が欲しくて来ていただいたわけなんですけれども、実はこの二千万円足りないという前提の数字は、総務省がつくった資料から計算したら二千万足りないということに帰結するということは、事実関係として総務省の統計からはそれが見れるかどうかだけ、まず確認させてください。
  158. 寺田稔

    ○寺田副大臣 お答えをさせていただきます。  総務省の方は、家計調査において、家計における収支の実態を把握をいたしております。  我々の調査では、高齢者世帯の収入と支出、それぞれ把握をしているところでございまして、おおむね委員指摘のような、支出約二十万で、収支差額約五万円というふうなことは統計上あらわれているところでございます。
  159. 古本伸一郎

    ○古本委員 副大臣、実は、この五万円には、今多くの全国のシニア世帯方々がまさに我が身の問題として悩んでおられる介護の費用は入っていないんです。さらに、ちょっとしたつまずきで転倒して、それで圧迫骨折して、入院生活が始まっちゃったというシニアも枚挙にいとまがない。このつまずきを防止するためのバリアフリーのリフォームというのは、多分、委員の先生方の親御さん、みんななさっているんじゃないですか。  このバリアフリーのための、みんな必要なこの部分と、それと介護の老人ホームなどの費用を含まずに五万円ということは正しいですか。
  160. 井上卓

    井上政府参考人 お答え申し上げます。  委員質問の介護の費用、それからいわゆる住宅のリフォームについて、家計調査でどのように把握しているのかというお話でございますが、基本的に、例えば、介護施設に入っている方々にどのようにしてそういう施設のお金を書いていただくか、そういうことは、実際上、家計調査は御本人に書いていただくということからして、現状ではそういう施設の費用を把握するのは難しい。また、施設自身が非常に、一時金も含めると非常に必要なお金の差が大きいということもありまして、恐縮でございますが、そうした高齢者福祉施設に入っておられる方々については、現時点で介護の費用を把握はできてございません。  また、リフォームの御質問でございますが、そちらにつきましては、非常に粗い区分ではございますが、財産取得というような形で数字を把握しておりますが、ただ、めったにあらわれないいわゆる支出でございますので、統計精度の関係から、夫婦高齢者無職世帯とか、そこまで細かくは集計できていないのが実情でございます。
  161. 古本伸一郎

    ○古本委員 めったにという御発言もありましたけれども、総裁、正直、リフォームをせずに、老後に自分の親がつまずかずにトイレや洗面所に行けると思っている委員がいるとしたら、相当親不幸ですよ。それはちゃんとしてあげていますよ。めったにあらわれないなんてよく言うなという話なんです。  そこで、副大臣に来てもらっています。  実は、質問通告は、私、二日前通告をもう絶対に守りたいと思っています。それで残業というのは本来、何か疑惑ネタで追及しているのは、何度も言っていますけれども、スキャンダル委員会でやればいいと思うんです。そういう専門委員会をつくればいいと思っているんです。これは小泉進次郎さんも提案しているんですからね。関係ない委員会はそれでとまる必要がないというのが私の持論です。  それで、副大臣、実は五万円どころじゃなかったということが言えるんじゃないですか、足りないお金は。実は、老後のバリアフリー工事やあるいは、それは特養だか老人ホームだかはそれぞれの御事情ですけれども、そのコストも加味した調査をぜひしてください。それを検討しますということをぜひ前向きに、政治の判断をしてください。そうすると、これは二千万じゃなくなりますよ。
  162. 寺田稔

    ○寺田副大臣 今委員からお話ございましたが、我々は今、調査票でもってそれぞれ収入、支出、高齢者の方から数字を徴求をしているところですが、より実態を正確に把握する観点から、これまでも累次改善を図ってきておりますが、今後も引き続き、委員が言われたようなさまざまな支出項目等も含め、その実現可能性等を総合的に勘案をしながら、統計委員会、この御意見なども踏まえて対応してまいりたいと思います。
  163. 古本伸一郎

    ○古本委員 ぜひ御期待したいと思いますし、その調査は応援します。  きょうは、厚労副大臣、稲津副大臣もお越しをいただいています。  実は、高齢者世帯の、先ほどの、総務省からいただいているその調査のベースになっている数字なんですけれども、高齢者の皆様が、現預金で見ると大体平均で何千万という高齢者世帯を、それが虎の子の一千万なのか二千万なのかを切り崩しながらやっていくので、老後二千万別途預貯金してくださいというのが、今回のお蔵入りになったレポートの眼目だったわけですよね。  それで、私は実は更問いしたら、アベノミクスの波に乗って何千万のキャッシュアウトをしたシニアもそれは一部はおられるかもしれませんが、一般的なシニアは、恐らく、もう本当に虎の子であり命の綱である退職金を現預金として持ち、一時金として受け取ったやつを大事に切り崩しながら老後の暮らしをするというのが一般的なシニア世帯のイメージなんですけれども、これが退職金なんですか、どうなんですかとお尋ねしても、統計上、出どころがわかりませんということなんです、実は総務省は。  そこで、退職金に少しスポットを当ててお尋ねするんですけれども、実はこの二十年間、企業規模、大企業、中企業、小企業、いろいろあるんでしょうけれども、少なくとも勤続三十五年以上というある定点の与件をはめて、二十年前、十年前で定点比較すると、何と一千万円近く退職金が減っている属性もある、全体に平均で下がっている、更に言うと、今や退職金制度をなくしたというのが全体の二割に上っているという現状は正しい認識ですか。退職金が右肩に下がっているというのが正しいかどうか。
  164. 稲津久

    ○稲津副大臣 お答えいたします。  御指摘厚生労働省の就労条件総合調査等のデータを踏まえて、今御質問していただいたと思います。  この二十年間のところでございますけれども、まず、一九九七年のデータがございまして、この段階では、いわゆる退職金のところについては男性だけの数字でございました。二〇〇二年以降のデータは男女の数字となってございまして、このため、比較可能な二〇〇二年から二〇一七年のデータによりますと、平均の退職給付額は二千六百十二万円から一千九百九十七万円、六百十五万円減少している状況でございます。
  165. 古本伸一郎

    ○古本委員 ありがとうございます。  実は、二十年前で比較すると、男性だけで見ていて三千二百三万円だったのが、二〇一七年、つまり二十年後に千九百九十七万円になった。二〇〇二年に二千六百十二万円にどんと落ちているのは、これは女性も加えた、だからこれは別の問題があると思いますよ。では、女性は、三十五年超で面を合わせていますから、同じ三十五年以上勤めたのに、女性を平均に入れたことによって退職金が六百万も落ちてしまうというのは、そもそも基準内賃金が安いんだろうと思いますね。これは別の問題なのでまたの機会にしますけれども。  総じて退職金が下がっているということは、いろいろな事情が考えられると思うんですけれども、これも実は事前に何度もやりとりしたんですけれども、理由がはっきりしないんです。  そこで、きょう、主税局長、お越しいただいています。大先輩もおられますので、伸び伸びと御答弁いただければと思いますけれども。  やはりこれは、経営者マインドに立てば、ベースアップは下方硬直性がありますね。かつ、全ての社会保険料に響いてきますし、だからこそ上げてほしいと働く人は言うわけだし。経営マインドからいったら、当期の利益は当期の利益でということで、賞与、一時金の方がいい、そういう経営マインドが働くんでしょうね。働くにもかかわらず、これだけ退職金が下がっているというのは、そのインセンティブが足りないと思うんですね。  かつて、企業経営者は退職給与引当金を損金に算入できたと思いますけれども、現状は違うと思います。今政府部内でそういう御議論があるかどうか、与党税調も含めていろいろと御議論があると思いますけれども、私ども国民民主党としては、ぜひ損金算入を復活した方がいいんじゃないかと。このことをインセンティブにして、経営者の皆様がどうぞ退職金を上積みしてほしいという一つの誘導の方法があると思うんですけれども、御所見を求めます。
  166. 矢野康治

    矢野政府参考人 お答えを申し上げます。  退職給与引当金という制度がございまして、これは過去に廃止されてしまったわけですけれども、税制が企業の給与の支給形態に対しまして影響を及ぼしている、あるいは及ぼし過ぎているといった御議論ですとか、あるいは、企業ごとの利用状況にも差があって、結果的には非中立的な影響を及ぼしているというおそれがあるといった御指摘ですとか、あるいは、将来の退職給付債務の引き当てといいながらも、会計上の引当金であるために、企業の単なる内部留保となってしまっておって、労働者の受給権を保全する観点からは外部拠出の年金制度の方が望ましいと考えられるのではないかなどなどといった御指摘がたびたび政府税調などでなされてきたところでございます。  それを踏まえまして、少し古い話になりますけれども、平成十四年度の税制改正におきまして引当金制度が廃止されたところでございまして、歴史的経緯としては、今先生が御指摘のとおり、退職金に対してやや経費性を認めるという制度からそうでない方向へと移ってきたのは事実でございます。
  167. 古本伸一郎

    ○古本委員 老後の資産をどうやって形成していくかという意味においては、先般の金融庁のレポートは実は正しかったと思います。  加えて言うと、介護の費用と当然のバリアフリー費用を含んでいないということに鑑みますと、しかも、金融庁が別添で当時用意した資料によれば、平均すると、リフォームは約四百六十五万、介護は最大で一千万想定しなきゃならないと書いているので、単純にこれを合わすと一千五百万前後になります。真ん中をとったとしても七百万程度は更に必要だということを金融庁自身も当時試算をされておられる形跡があるので、実は二千万どころではないんですね、老後の資産が足りないという意味においては。いろいろな属性があると思いますけれども。  そこで、金融庁にちょっとお尋ねしますけれども、このレポートが出た直後に、何やら報道によれば、つみたてNISAが、加入が新規でふえているという、報道で見ましたけれども、事実関係は。
  168. 中島淳一

    ○中島政府参考人 お答えいたします。  つみたてNISAの口座数は、集計されております直近の本年六月末時点で百四十七万口座となっており、三月末時点から約二十万口座増加をしております。  ただ、御指摘報告書が公表されましたのが六月三日でありますので、この報告書が与えた影響については、七月以降の口座数の推移も見ていく必要があるのではないかと考えております。
  169. 古本伸一郎

    ○古本委員 これは、ある意味何か金融機関の便益のためにやっているとかそういうことではなくて、総裁、これは本当に、老後の資産日本人はどうやって形成していくかという大変大きな一石を、当時の担当の三井局長は担当として投じられたことなんだろうと思っています。  黒田総裁、お蔵入りになった金融庁の二千万レポートは、筋としては悪くない、いや、もっと正しいことを言っていたのではないかと私は思いますけれども、総裁の御所見を求めます。
  170. 黒田東彦

    ○黒田参考人 この問題について私が何か申し上げるのは僣越だと思いますけれども、ただいま伺ったことからいうと、一つの適切な指摘だったのではないかと思います。  ただ、そのインプリケーションとかその他については、私から申し上げる立場にないということであります。
  171. 古本伸一郎

    ○古本委員 同僚委員が先ほどETFの話をずっとしていました。上場投資信託ですね。ストックでこの間、二十数兆円、三十兆近くに積み上がっているということでありますけれども、他方で、そこから得られるリターンも当然あるわけですね。  例えば、直近で言うと、配当金収入、これは、国庫としては税外収入で入るんでしょうか、日銀から日本政府に払われると思うんですけれども、どのくらい寄与しているのでしょうか。
  172. 吉岡伸泰

    ○吉岡参考人 お答え申し上げます。  日本銀行が買い入れたETFの二〇一八年度における運用益でございますけれども、これは四千四百十六億円でございます。
  173. 古本伸一郎

    ○古本委員 約四千億円ということでありまして、四千億稼ぐ税収はそうないですね。例えば、印紙税で〇・八ぐらいじゃないですか。だから、八千億ぐらいですから、印紙税の半分近くの規模をある意味貢献していただいているという見方もできるんですね。  だから、ぜひ当委員会では両方の事象から冷静な議論をすべきだと思うんですけれども、ETFの話で申し上げますと、間もなく大納会が、もう年の瀬で、あっという間に一年がたつんですが、ちょっと出がけに調べましたら、ことしの大発会、一月四日の終わり値が一万九千五百六十一円。このやりとりがマーケットの時間外でよかったなと思うんですけれども、きょうの終わり値が二万三千二百九十三円ですから、約三千七百円強株価が上がっています。  総裁、このETFの買入れ、ことしで六兆近くストック増になる予定でありますけれども、このうちどのくらい寄与度があると思われますか。
  174. 黒田東彦

    ○黒田参考人 御案内のとおり、このETFの買入れ自体が、物価安定の目標を実現するための政策枠組みの一つとして、株式市場のリスクプレミアムに働きかけるということを通じて、間接的ではありますけれども、経済物価にプラスの影響を及ぼしていくということを目的にしております。  すなわち、金融市場の不安定な動きなどが企業家計のコンフィデンスの悪化につながることを防止するということによって、企業家計の前向きな経済活動をサポートすることを目的としておりまして、特定の株価水準を念頭に置いているわけではないわけであります。  現在、御指摘のような、株価が上がったことについてどう考えるかということになると、PERは別に特に上がっていませんので、基本的には、日本の上場企業の収益が拡大したということをある意味で素直に反映したということではないかと思っております。
  175. 古本伸一郎

    ○古本委員 今後、シニアの老後の資産をどう形成していくかということは、実は、日銀が今行っておられるさまざまな非伝統的オペレーションがある意味頼みの綱になっている面もあると思います。  やめられないじゃないかという同僚委員の御意見もありましたし、やめたらいけないという御意見もあるし、逆に、もう始めてしまったんだからという意見もあれば、さまざまあると思いますが、私ども国会としては、あくまでも、六十五歳の平均的以上の、人生百年時代の多くのシニアの方が、自分は二千万も貯金ないぞという人が不安に思っただろうし、そうなったときには困るということで、今、二十代、三十代の若い人がみずからそういう努力を始めようとしているとするならば、例えばつみたてNISAもそうだと思いますけれども、これは大変大きな、先般のレポートは一石を投じたレポートだと思います。  また、総裁からは、それに近い、担当外ではありますけれども、お話がいただけたので、大変いい議論ができたのではなかろうかと思います。  ちなみに、退職給与引当金は、企業サイドに立てばそういう目ですけれども、働く方々の目線に立てば、今、二十年までが、退職金は、四十万掛ける二十年、二十年超が、勤続年数がですね、七十万掛ける勤続年という控除になっています。  私ども国民民主党は、これをもう少し、短期でジョブホップする方も中にはおられますから、そういう方にも少し光の当たる退職金税制とか、あるいは、より長期安定的に雇用を守った企業の皆様におかれては、退職給与引当金に充てていただけたならば損金算入化を認める、こういう、政府挙げて、税も歳出も全て挙げて、フル投入して初めて多くのシニアの皆さんの安心が約束できるんじゃないかなと思いますので、ぜひまた今後も議論させていただければと思います。  とりわけ、両副大臣は、退職金と、いわゆる数字をぜひより精緻なものにという提案をいたしましたので、また今後とも研究していただければ大変ありがたいと思います。  きょうは、どうもありがとうございました。
  176. 田中良生

    田中委員長 次に、階猛君。
  177. 階猛

    ○階委員 共同会派所属の階猛です。  まず、きょうの日銀総裁からの報告の中に、異次元の金融緩和政策について、政策の効果と副作用の両方を考慮することが重要だというくだりがありました。  この点、まず副作用について確認しておきたいんですが、今期の中間決算における地域金融機関の業績と今後の見込みについて、きょう皆様にお配りしている資料をごらんになっていただくと、一枚目に、本業赤字の銀行数ということで、この中間決算期で、全体百四行のうちほぼ半分、五十行が赤字で、減益になっているところの方が増益のところを上回っている状況です。  私はこの先もますます厳しくなっていくんじゃないかなと思っておりまして、と申しますのも、この本業の収益の中には有価証券関係の利息配当金とかキャピタルゲインは含まれないわけですけれども、今までは本業の赤字をこうした部分で補うことはできた。しかし、これも、益出しをどんどんしていった結果、先細りになっていくだろう、キャピタルゲインも、マイナス金利が長く続いた結果、先細りになっていくだろう。他方で、与信コストについては統計上ふえつつある、リスク覚悟で貸出しをふやした結果、不良債権化しているというものがふえてきている。  こういう中で、金融庁政府参考人お尋ねします。  現在の金利水準が続く限り地域金融機関の業績の先行きは厳しいと思いますが、この点、いかがでしょうか。
  178. 栗田照久

    ○栗田政府参考人 お答え申し上げます。  委員指摘のとおり、地域銀行全体のことしの九月期の決算を見ますと、国債等債券関係損益の黒字化などによりまして、全体では中間純利益は前年同期比一〇・三%の増加でございますけれども、前年同期に多額の赤字を計上いたしましたスルガ銀行を除くと減益になっておりまして、資料にありますように、本業赤字になっているところが五十行ある、また、約七割の地域銀行が減益になっているということでございます。  地域銀行をめぐる経営環境は、低金利環境の継続ですとか全国的な人口減少などを背景に厳しい状況が続いているというのはまさに御指摘のとおりかと存じますが、我々といたしましては、地域銀行が、例えば地元企業に適切なアドバイスとかファイナンスを提供することで企業の生産性向上を図るなどを通じまして、持続可能なビジネスモデルを構築してやっていただきたいというふうに考えているところでございます。
  179. 階猛

    ○階委員 この本業赤字が赤ということはとんでもないことでありまして、私も昔、銀行で、経営破綻した長銀というところにおったんですが、この本業赤字を埋めるために、有価証券の益出しをたくさんやりました。しかし、それがかえって、後々、益出しして簿価が上がったものが時価が下がって経営の足を引っ張るということも経験しました。本業赤字が続いているということは、事ほどさように地域金融機関の将来のリスクを高めているわけです。  こういう、副作用というふうに今私も申し上げましたけれども、副作用というからには、本作用といいますか、効果といいますか、薬でいうと効能がなくちゃいけないと思うんですね。  ところで、その副作用に見合う、あるいはそれを上回る効能があるかどうか、ここも改めて考えなくちゃいけないと思っております。  すなわち、イールドカーブコントロールということで、短期金利マイナス〇・一、長期金利ゼロ近辺ということで、二〇一六年九月以降続けてきました。そして、二〇一八年三月、黒田総裁が再任の時期には、このイールドカーブコントロール、効果が出てきていると言っておりました。  ただ、その後、物価目標の推移を見てみますと、先ほど櫻井さんも引用していた、私の方では二枚目の資料になりますけれども、これを見ておりますと、二〇一七年度、一八年度、インフレ率は〇・七から〇・八。一番下の実績値というところだけ見てほしいんですが、〇・七から〇・八、若干プラスですけれども、二〇一九年度になって〇・六、先ほどの櫻井さんの表だと更に直近の数字を入れて〇・五になっていました。  これぐらい、マイナス金利をすることによって、あるいはイールドカーブコントロールをすることによって、物価安定目標二%に到達するどころか、むしろ離れていくんじゃないか、これをうかがわせる今の数字なわけです。  現に、私だけではなくて、内外の金融の専門家も言っているわけですね。例えば、マイナス金利長期化はデフレを助長する、ユーロ圏もマイナス金利物価は上がってきていないといったようなことを言っている海外の方、あるいは、国内の著名なアナリストの中には、ゼロ金利長期化が自然利子率ないし潜在成長率を低下させ、政策の有効性を損なっているといったような話も出てきている中で、本当にこのイールドカーブコントロール、効果があるんだろうか。長期化することによって、効果があるどころか、むしろ弊害を生み出しているのではないかと思うんですけれども、日銀総裁の見解を伺います。
  180. 黒田東彦

    ○黒田参考人 金融政策といわず、あらゆる政策については、現実的なオルタナティブとの比較で議論しないと意味がないわけですね。  委員がおっしゃっていることで、それでは、もっと早くから金利を上げていたら、あるいはマイナス金利をやめていたらといったら、そういうことになった場合には、恐らく、経済はもっと悪くなって、物価ももっと上がらないということになっていたと思います。  したがいまして、現在の長短金利操作つき量的・質的金融緩和というのは、いろいろな逆風が続く中で経済の拡大を支持し、そうしたもとで、とりあえずデフレでない状況にはなっているわけです。  ただ、二%の物価安定目標にまだ到達していないというのはそのとおりでありまして、そのためには、私どもは、現在の長短金利操作つき量的・質的金融緩和を継続していく必要がある。そしてさらには、仮にですが、そういった物価上昇へのモメンタムが失われるようなことがあれば追加的な緩和措置を講ずる必要がある。ただ、その場合にも、副作用等には十分配慮して、最適な政策を選択する必要があるというふうに申し上げております。  なお、二〇一九年度の、足元消費物価上昇率が低下しているのは、御承知のとおり石油価格の低下影響がかなり大きいわけです。  いずれにいたしましても、私どもとしては、現在の金融政策が他の考えられる金融政策に比べて劣っているとは思っておりませんで、そうした中で、徐々に賃金物価上昇率が高まって、二%に向けて上昇していくというふうに考えております。
  181. 階猛

    ○階委員 論点をすりかえないでください。他の金融政策に比べて効果があるとかないとか聞いているんじゃなくて、このイールドカーブコントロールは何のためにやっているのか。二%目標を達成するためにやっているわけですが、現に遠ざかっているじゃないですか。だから、効果はないんじゃないかということを指摘しているわけです。  私だけではありません。内外の人が、むしろデフレを助長するということも言っています。効果がないということを言っている方が内外の専門家にもいらっしゃるわけです。  本当にこのままやり続けて、二%達成できるんですか。客観的な事実と反していると思いますよ。いかがですか。
  182. 黒田東彦

    ○黒田参考人 先ほど来申し上げているとおり、経済政策というのは、現実的なオルタナティブと比較して、プラス、マイナス、効果、副作用を議論しないと意味がないんです。論点をすりかえていないんです。これは経済学の常識です。それを無視して、あり得ない政策と比較しても意味がないので、委員がおっしゃる金融政策はどういうものをしてきて、そうしたらこういうふうになったというものが示されない限り、合理的な政策論争にならないんですね。  その上で申し上げますと、私どもは、現在の金融政策を継続することによって、徐々にではあるけれども賃金物価上昇していって二%の物価目標を達成できるというふうに思って、そのために必要なものをやっているわけです。  更に申し上げると、仮にそういったモメンタムが失われるようなことになれば追加的なことも検討するといって、現状、この政策が最も適切であるというふうに考えているわけです。
  183. 階猛

    ○階委員 適切であるならば、なぜ毎回毎回インフレ率の予想が下方修正されるんでしょうか。前回、副総裁のときにもこの二ページ目の表を出しましたけれども、毎回毎回下方修正ですよ。確かに、予想だけを見れば、何か二%に近づくような予想が毎回出されるわけですけれども、時を追うごとに下方修正されていって、最終的には、二%からむしろ遠ざかっているわけですよ。失礼なことを言われましたけれども、本当に、どっちが合理的なことを言っているのかどうか、私は非常に疑問だと思いますね。  それで、合理的かどうかとともに、私は、日銀説明はかなり欺瞞的だと思いますよ。非常に曖昧模糊とした表現で国民あるいは市場関係者を煙に巻いているというふうに思います。  というのも、三ページ目です。フォワードガイダンス、これも前回、副総裁との間で議論しましたけれども、今、三本フォワードガイダンスがあって、直近、三本目のフォワードガイダンスを文言を変えました。一番下の行ですけれども、「日本銀行は、政策金利については、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れに注意が必要な間、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している。」ということで、「それを下回る水準で推移」というような、あたかも下方に行くような表現も入っていますけれども。  他方で、物価安定目標の達成に必要な間とはしていませんね、「モメンタムが損なわれる惧れに注意が必要な間、」。これは、文言だけ見ますと、物価安定の目標が達成できなくても、このよく意味のわからない表現が満たされるというふうに日銀判断すればイールドカーブコントロールやマイナス金利をやめることもできるように見えますね。  また、「想定している。」ということで、これは、ほかのコミットメントが、継続するという文末で終わっていますけれども、あたかも人ごとのような、自分ではコミットしていない表現になっています。  こんないいかげんなフォワードガイダンスの表現が本当に市場関係者の納得を得られるのかどうか。そもそもこれは、マイナス金利、あるいはさらなるマイナス金利の深掘りを長期化しようという趣旨なのか、それとも、私が今申し上げましたように、物価安定の目標に到達しなくても、このよくわからない表現が満たされれば金利は正常化していくのか、どっちなんでしょうか。
  184. 黒田東彦

    ○黒田参考人 私どもは、公表文でも、それから、数日後に議事概要という形で、そういった決定がなされた背景の議論も公表しておりまして、欺瞞的なことをやっている覚えは全くございません。  その上で、このフォワードガイダンスは、以前は、消費税率引上げの影響とか、少なくとも二〇二一年の春までは現在の低い金利水準を維持するという言い方をしていたわけですが、その後の状況から見て、消費税の税率引上げはもう終わっているわけですし、その状況も少しずつわかってきている、その中で、先ほど来申し上げているように、物価上昇率の見通しが若干下方修正、特に足元で下方修正されているということなどを踏まえて、当然のことながらこの低い金利水準というのはもう少し長く維持しますということをはっきり申し上げて、それも、いわゆるカレンダーベースでなく、物価安定目標へのモメンタムということとひもづけした形で、より強いコミットメントを示したわけです。  その際、当然のことですけれども、モメンタムが失われるとか大幅に低下するというようなことがあれば当然追加緩和をするということは前から申し上げているわけですから、それを踏まえた形でフォワードガイダンスにしているわけです。  ですから、これはあくまでも、政策決定会合で議論して、それを踏まえて、政策委員会として、日本銀行としてフォワードガイダンスとしてコミットメントを示したということでありまして、諸外国の中央銀行のフォワードガイダンスと比較していただいても何らおかしいというものではないというふうに思っております。
  185. 階猛

    ○階委員 そういうふうに正当化したい気持ちはわかるんですが、では、仮に物価安定目標二%が達成されたとして、どのような金利水準を総裁が想定されているのか。  よくフィッシャー方程式というのが金融理論で言われますけれども、私がこのフィッシャー方程式に当てはめると、大体二・七%程度かなというふうに、今の潜在成長率とか期待インフレ率が二%になることによって想定しているわけですけれども、日銀総裁はどのように考えますか。
  186. 黒田東彦

    ○黒田参考人 経済物価情勢改善が続いて、物価安定の目標の実現が展望できるような状況になれば、当然、そのときの経済物価情勢に応じた金利水準が実現するということになると思います。  ただ、具体的な金利水準については、やはりその時点の経済物価金融情勢などで決まるものですので、現時点で申し上げることは難しいというふうに思います。
  187. 階猛

    ○階委員 じゃ、フィッシャー方程式ということ自体は知っているという前提で質問をしますけれども、フィッシャー方程式。  日銀も潜在成長率〇・七%と言っていますし、物価が安定目標二%を達成するということであれば、これも日銀が適合的期待形成と言いますから、期待インフレ率が二%ぐらいになるでしょう。だから、普通にいけば二・七%程度。今より三%ぐらい金利水準が上がってくるということで、そういう前提で、仮に、今より金利が三%程度上がったとします、イールドカーブ全般にパラレルに上がったとします。その場合に、日銀のBSやPLはどうなるのか、これが懸念されるんですけれども。  四ページを見てください。一番上の行に、保有有価証券の時価情報のうち国債の数字が出ております。直近九月末では、評価損益二十兆五千億円ぐらいとなっておりますが、これは、長期金利がゼロ金利程度ということの中で、国債の価格が上がっているからこれだけの黒字になっているということだと思うんですが、もし金利水準が三%上がったとしたら、これは国債の価格も大暴落して、この評価損益もかなりマイナス影響が出てくると思います。  三%パラレルシフトした場合の日銀の国債の評価損益はどうなるのか。これは事前に質問すると言っておりますので、お答えください。
  188. 黒田東彦

    ○黒田参考人 まず、フィッシャー方程式は、御指摘のとおり、一種の長期均衡の考え方で、それ自体間違っていると思いませんが、アメリカの例を見てもどこの例を見てもわかりますように、直ちにそういったフィッシャー方程式の示すような金利になるというわけではありません。  したがいまして、三%というその仮定の話を申し上げるのはいかがかと思いますけれども、仮定の計算で、二〇一九年九月末に日本銀行が保有する長期国債の状況を前提にしますと、仮に、長期金利が、イールドカーブ全体がパラレルシフトで一%上昇するということになると、保有する長期国債の時価総額が三十三兆円程度減少するということになります。(階委員「三%上がった場合、だから、その三倍でいいんですか」と呼ぶ)それは、機械的に計算すればそうなると思います。
  189. 階猛

    ○階委員 ということで、一%で三十三兆目減りしますから、三%で百兆ですね。ということで、評価損益が悪化するということなわけです。  というふうにならないようにするためにも、余り、金利水準が低いときにどんどん国債を買い込まないようにした方がいいですし、出口戦略ということをやっていくべきだと思うんですね。  五ページ目に、再任のときの黒田総裁の衆議院議院運営委員会での所信についての記事を掲げておりますけれども、一九年度ごろ二%に達すると見ている、当然のことながら出口をそのころ議論することは間違いないと思う。間違いないと思うときっぱり言われていましたが、出口戦略はいつ議論するんでしょうか。
  190. 黒田東彦

    ○黒田参考人 これについては、常に申し上げていますように、二%の物価安定目標が実現されるという状況になってきたときには、当然、出口戦略、これはアメリカでもヨーロッパでもどこでもそうですけれども、そういったものを検討することは間違いないと思いますし、それは、政策委員会で議論して、当然その結果は公表するということになると思いますが、今の時点では、まだ二%に到達するまでの道はやや長いわけですので、具体的に、いつ、どのような出口戦略をするかということは、申し上げるのは時期尚早だというふうに思います。
  191. 階猛

    ○階委員 もう一度二ページ目の表を見てほしいんですが、直近十月の展望レポートにあった政策委員のインフレ予想では、二〇二一年度でも一・五%です。恐らく黒田総裁の任期中には二%には達しないでしょう。ということは、そのまま、出口戦略の議論すらないまま、今の異常な低金利が続いてしまうのではないかということを懸念します。  他方、たまたまきょうなのかどうか、日経新聞には、先ほども別の委員が言っていましたけれども、福井元日銀総裁の回顧の記事が載っていました。  福井総裁は、私の引継ぎの時点で金利が一%ぐらいまで引き上げられていれば、少し気楽に引き継げたという気はしているということで、〇・五%で退任したわけですけれども、非常にこれを残念な気持ちを持っているということなんですが、それに引きかえ、今の黒田総裁は、自分のことを正当化したいのかどうかわかりませんけれども、あるいは日銀の経営に悪影響が及ぶからかどうかもわかりませんけれども、出口戦略はいつまでも議論しないということで、本当に公正な立場から金融政策を考えているのかどうか甚だ疑問だと思います。  私は、もう何度も言っていますけれども、金融政策を公正に議論するためには、やはり自分がやり始めたことをなかなか変えるのは難しいでしょう。現に、最初は量的金融緩和ということで大々的に国債を買い入れたのが、今や、八十兆だったものが二十兆ぐらいですね、年間の増加ペースが。ステルステーパリングとか言われていますけれども、日銀の事務方も苦労して、総裁の顔に泥を塗らないように、よくわからないような形で量的緩和の失敗を隠蔽してきたんだと思います。それにかわるマイナス金利、イールドカーブコントロールもだんだん効果が失われてきて、今や、デフレマインドを助長するようなことも言われてきているわけであります。  こういう、失敗に失敗を重ねていつまでも二%の物価安定目標を達成できないということを深く自覚されるのであれば、私は、普通の組織のトップであれば辞任するんだと思うんですね。私だったら少なくともそうします。なぜ辞任しないのか不思議でしようがありません。  本当に日本金融政策に責任感と使命感を持っていらっしゃるならば、辞任するのは当たり前ではないかと思うんですが、なぜ辞任されないんでしょうか。
  192. 黒田東彦

    ○黒田参考人 私は、委員のような考え方は全く持っておりません。おっしゃったことも全て間違っていると思いますし、意見を全く同一にしておりません。  そうしたもとで、与えられた任期の中で、最大限の努力をして、二%の物価安定の目標の実現に向けて進んでまいりたいというふうに思っております。
  193. 階猛

    ○階委員 客観的にもう少し今までの実績とかも振り返っていただきたいと思いますし、現に副作用が、多大な副作用が地域金融機関には及んでいる。副作用ではないかもしれません、これが本当の意味での効果だったと言えるのかもしれません。  そうしたことで、ぜひこの金融政策、自分の保身のため、あるいは日銀のためというのではなくて、日本国の経済あるいは金融界のためにしっかり議論していただきたいと思っております。  それでは、質問を終わります。ありがとうございました。
  194. 田中良生

    田中委員長 次に、清水忠史君。
  195. 清水忠史

    ○清水委員 日本共産党の清水忠史でございます。  日銀黒田総裁、きょうは一日大変お疲れさまでございます。私が最後の質疑者でございまして、限られた時間でございますので、テンポよくお答えいただければ幸いでございます。  金融緩和政策地域金融機関の問題について、きょうはお尋ねをさせていただきます。  ことし八月に金融庁が公表した金融行政のこれまでの実践と今後の方針で、「地域金融機関を取り巻く環境は、低金利環境の継続や人口減少高齢化の進展等により年々厳しさを増している。」と、その認識が示されました。黒田総裁後の日銀金融政策が、まさに低金利環境の継続の最大の要因となっていると思います。  こうした中、金融庁は、地域金融機関の収益悪化を打開する方法の一つとして、地域金融機関の経営統合を進めるため、十年間の時限措置として独占禁止法の適用除外を認める特例法を二〇二〇年の通常国会に提出をするとしております。地方銀行の独占が認められれば、銀行間の競争が低下しますし、金利上昇や貸し渋りなど、地域経済への弊害が予測されております。  黒田総裁は、この独占禁止法の適用除外について、地域経済への弊害は発生しないというふうに考えておられるんでしょうか。
  196. 黒田東彦

    ○黒田参考人 独占禁止法の特例法については、政府において検討中というふうに認識しておりまして、直接的なお答えは差し控えたいと思います。  その上で、一般論として申し上げますと、地域銀行あるいは企業数が減少する中で、地域金融機関の間の競争が激化しておりまして、そのことが地域金融機関の収益性を低下させる一つの構造的な要因となっているということは事実だと思います。  したがいまして、地域金融機関にとって収益性と経営効率性を向上させていくことが大きな課題であり、その一つの選択肢として、金融機関間の統合、連携もあり得るというふうに思いますが、ただ、その場合も、あくまでもみずからの営業基盤や収益力の展望などを踏まえた上で、統合とか連携がみずからの収益力向上につながるかどうか、そして、金融仲介機能の適切な発揮を通じて顧客や地域経済にプラスの影響をもたらすかどうかといった観点から、その意義を見きわめていくことがやはり重要ではないかというふうに思います。
  197. 清水忠史

    ○清水委員 一つの要因であるということはお認めになられたと思うんですね。  黒田総裁は、ユーロ圏に比べればまだ利下げの余地はあるとの趣旨の発言をされておられます。  S&Pグローバル・レーティング、以下S&Pと呼ばせていただきますが、本年十月二十九日、マイナス金利の〇・一%深掘りは邦銀収益を六%から二一%減少させると題するリポートを発表いたしました。  日銀マイナス金利政策の深掘りに踏み切った場合、国内における日本銀行、邦銀ですね、貸出金利低下などにより収益性に更に下方圧力がかかることから、S&Pはその影響の大きさを試算しております。御存じだと思うんですけれども、国内貸出金利低下幅が政策金利の変更幅と同水準の〇・一%になるという前提を置いた試算では、貸出金利の更改終了年度、これは五年度目と仮定しているわけですが、資金利益は大手行で四%マイナス、それから地方銀行で七%減少する、そして、コア業務収益は、大手行、これはグループ連結ですが六%、そして地銀では二一%減少するという試算の結果になっているんですね。  質問なんですが、仮にマイナス金利が更に深掘りされていくと、より一層地域金融機関の収益を悪化させる、先ほど一つの要因であるというふうにおっしゃられましたので、一層悪化させることになるのではないか、この点、どのようにお考えでしょうか。
  198. 黒田東彦

    ○黒田参考人 確かにその点は私どもも注視しておるし、その点に対する配慮が必要だということはよく認識しております。  ただ、欧州の場合に、最近、マイナス金利を更に深掘りしてマイナス〇・五にしたわけですけれども、もちろん欧州と日本の場合は、金融機関銀行セクターの状況が違いますので一概には言えませんが、マイナス〇・一%から絶対深掘りできないということは言い切れないと思います。  ただ、その場合も含めて、いろいろな追加的な措置というものを議論する場合は、必ずそのネットの効果と副作用というものを十分考慮していく必要がある。その点は、御指摘地域金融機関に対する影響なども十分配慮していく必要があるということはよく認識しております。
  199. 清水忠史

    ○清水委員 昨年四月にまとめた金融システムレポートによれば、二〇一六年度から一七年度にかけて、地銀のほぼ半数が何らかの手数料引上げを実施しているということなんですね。ことしに入りましても、銀行窓口やATMの振り込みなどの手数料をメガバンクが相次いで値上げしております。  マイナス金利の副作用、これが結局、預金者である国民に直接負担を強いる事態になっていくのではないか、このことが懸念されると思うんですが、いかがでしょうか。
  200. 黒田東彦

    ○黒田参考人 まず大原則として、金融機関が提供するサービスについて、具体的な手数料をどのように賦課するかというのは、金利動向だけではなくて、さまざまな状況を勘案した上で、各金融機関の経営判断にかかるということだと思います。  その上で、マイナス金利を含む低金利環境長期化が、利子所得の下押しなどを通じて、家計部門影響を及ぼしているということは十分に認識をしております。もっとも、従来から申し上げているとおり、金融緩和の効果については、やはり経済全体に与える影響を踏まえて評価する必要があるわけでして、実際、金利水準の低下は、経済活動を刺激して、雇用・所得環境改善資産価格上昇などを通じて、家計全体にとってもプラスの効果を及ぼしているというふうに考えております。  ただ、御指摘の点もよく理解いたしますので、マクロの金融経済状況改善を通じて、メリットがやはり国民全体に幅広く及ぶような運営に努めていく所存でございます。
  201. 清水忠史

    ○清水委員 十月から消費税が引き上げられまして、国民生活、本当に大変です。実質賃金も上がっていないというようなことで、中小企業を中心に非常に景況感が悪いもとで、国民に直接負担を強いるまでこの副作用が噴出している現在の金融政策というものをやはり見直すべきではないかということを指摘をしておきたいというふうに思います。  黒田総裁についての質問はとりあえず以上でございますので、お引き取りいただいて結構でございます。お疲れさまでした。  きょうのこの金融関係の委員会では、金融庁年金二千万円問題もありました。やはり、老後への不安が高まっております。それで、税金を納めているんだけれども、なかなか生活がよくならない、私たちの税金が一体何に使われているのかということについて、やはりさまざまな問題が浮かび上がっておりますので、財政及び金融に関する件についても、一問、二問、聞いてみたいと思います。  最初に、主計局次長に来ていただいていると思うのですが、財政制度審議会「公会計に関する基本的考え方」の「公会計の意義、目的」というところに、「議会による財政活動の民主的統制」という文節があるわけです。  配付資料の一枚目をごらんいただけますでしょうか。ここは、赤線を引いております。「予算を通じて事前の資金配分を明確にし、これを国会の議決による統制の下に置くこと、」こう書かれているわけですよね。今、大問題になっております桜を見る会の支出は、予算額一千七百六十六万円に対して、約三倍の五千万円を超えるということになっております。  配付資料の二を見ていただけますか。配付資料の二は、これはことしの桜を見る会の請求書ですね。内閣府の大臣官房会計担当参事官宛てのものでございます。請求額が二千百九十一万三千二百三十二円ということになっております。  資料の三枚目をごらんいただけますでしょうか。三枚目は見積書でございまして、ことし三月の十四日に作成されたものでありますが、これが二千百九十一万三千二百三十二円ということで、見積りどおり支払っているということになっているわけでございます。  明細を見ますと、金額はわからないんですが、フライドチキン四千五百個、これはケンタッキーでしょう、上等ですね。それから、洋菓子二種パック一万八千パック、甘味六個パック一万八千パックということで、一万八千人来るということを想定して見積書が送られ、それに対して満額、そのとおり納入をしたということになっているわけですよ。  先ほども言いましたように、桜を見る会の予算額は一千七百六十六万円ですから、いわゆる見積りだけで、このケータリングの費用だけで大幅に予算を超えるわけなんですよね。つまり、二〇一九年度予算案を国会審議しているさなかに、既に予算案を超える支出を前提とする見積りを取り寄せ、そしてそれをそのまま契約を行っていたということが、いよいよこれは疑いが強くなってきたということですね。  そうであるなら、憲法で要請される財政民主主義にこれは反するのではないかというふうに思うわけですね。毎年度、桜を見る会の予算については同じことを繰り返しているようなんですが、主計局、これはもしかして、森友学園とか加計学園の問題のように、この桜を見る会については、そんたくをして、毎年見逃してきたということなんでしょうか。お答えいただけますか。
  202. 角田隆

    ○角田政府参考人 私どもといたしましては、要求資料に基づきまして、適切に対応してきたという認識でございます。要求が千七百六十七万円に対して、千七百六十七万円という査定をいたしておりまして、ちなみに、ことしの概算要求では五千七百二十九万円という数字が出てきておるところでございます。
  203. 清水忠史

    ○清水委員 それで問題ないという答弁はひどいですよ。全ての部局でこんなことになったら、財政規律なんてあったものじゃないじゃないですか。予算どおりに執行するということを、主計局がしっかりそれは指導しないと、もうこの国の財政はめちゃめちゃになってしまいますよ。今のは重大な発言だというふうに私は言わなければなりません。  そもそも、実際には、功績、功労にかかわりなく、たくさん安倍総理大臣のお友達や後援会の方々が呼ばれていたというふうに報道されているわけですよね。しかも、菅官房長官は記者会見において、結果的に反社会的勢力の人たちが入っていたんであろう、こういう驚くような発言をされているわけですよ。芸能人だったら、一緒に写真を撮っただけでアウトですけれどもね。そのことについて政治家は許されるのかということについても今厳しく問われているわけなんです。  内閣府、こうした、政府としてですよ、こういう反社会的勢力の人たちは入っていたんですか、確認されているんですか。それをお答えください。
  204. 大塚幸寛

    ○大塚政府参考人 お答えをいたします。  桜を見る会の個々の招待者につきましては、これは招待されたかどうかも含めまして、個人に関する情報であるため、従来から回答を差し控えさせていただいているところでございます。  ただ、いろいろな面、この桜を見る会につきまして御意見をいただいていることは承知をしてございます。今後、招待基準の明確化、プロセスの透明化等につきまして検討し、全般的な見直しを行ってまいりたいと考えております。
  205. 清水忠史

    ○清水委員 私、個人情報のことを聞いているんじゃないんですよ。特定しろとは言っていないんです。それを官房長官自身が入っていたんであろうと答えているから、入っていたんですか、調べたんですかということをお伺いしたんですが、お答えにならない。  念のために、きょうは遠山副大臣にもお越しいただいております。公明党にも推薦枠があったというふうに伺っているんですが、推薦した方々の名簿ですよね、招待者リストのもとになるようなもの、これはきっと残っているはずだと思うんです。私たち共産党も公明党も、やはり支持者名簿、後援会名簿というのは、選挙のときとかいろいろなときに大切ですから、これをしっかり保管しておくというのは当たり前のことなので。  少なくとも公明党枠には反社会的組織の人は入っていなかった、これははっきり言えますか。
  206. 遠山清彦

    ○遠山副大臣 清水委員にお答えをいたします。  まず、私、財務大臣としての答弁になりますので、公明党のことについて何か御答弁を具体的にできる立場にないということを申し上げておきたいと思います。  その上で、公明党の議員として、私も一度だけ、十八年前に参議院議員として初当選して以来、途中で衆議院でございますが、一度だけ私と妻で参加をさせていただきました。  また、招待者のお話をされておりましたが、事務所に確認をしたところ、年によって若干名、五人以内で御招待をしたことはあるということですが、党としてどういう方々を招待したのか、あるいは党所属の議員、またその事務所がどういう方々を御招待したのかということは、全く詳細を私は承知をしておりませんし、そもそもそういう記録があるかどうかもわからないということでございます。
  207. 清水忠史

    ○清水委員 私は、今、貴重な答弁をされたと思うんですよね。党としては答えられないということですが、遠山副大臣自身は、御自身の記憶についてはしっかり鮮明な部分もある、五人というお話もありました。  ですから、全ての国会議員、招待者の方々にどういう人を招待したのかということを調べるということは、これはできるはずなんですよ。そういうこともせずに、今後のこと今後のことと言うのは、やはりこれは問題があるというふうに言わなければなりません。  それで、これは内閣府に確認したいんですけれども、内閣府が、いわゆる二〇一五年分、これは、招待者が一万人以上いますから、招待状の封入及び発送作業を業者に委託するわけですが、その業者への仕様書、これは、我が党共産党、田村智子参議院議員に提出した資料があるんですが、これは内閣府として提出した資料であり、そこに記されている招待区分は招待状の発送を効率的に行うために付しているものだ、これは間違いありませんか。端的にお答えください。
  208. 大塚幸寛

    ○大塚政府参考人 平成二十七年分の、共産党、田村議員に提出した資料は、内閣府として提出した資料であり、そこに記されている招待区分は、招待状の発送を効率的に行うために付しているものでございます。
  209. 清水忠史

    ○清水委員 明確な答弁がございました。  そうしたら、この招待区分なんですけれども、属性というのがそれぞれありまして、事務次官、局長級は二十、それから各種審議会等の長は四十、各界功績、功労者は五十、五十一、五十二。これは、財務省のことしの分と去年の分といただきましたけれども、属性は同じでございました。統一されております。  そして、二〇一五年のいわゆる仕様書には、総理、長官等の推薦者が六十、六十一、六十二、六十三となっておりました、二〇一五年の分。これは内閣府が提出した資料ということですので、区分六十から六十三は総理、長官等の推薦者、これは間違いありませんか。
  210. 大塚幸寛

    ○大塚政府参考人 御指摘のその番号でございますが、これはまさしく招待状の発送を効率的に行うために付しているものでございまして、会の終了をもって使用目的等を終えることから、現時点で、私ども、これらの情報は保有しておりませんので、お答えすることはできないということでございます。
  211. 清水忠史

    ○清水委員 いや、それはおかしいでしょう。あなた方が出した資料なのに、なぜあなた方が振った番号の符号がわからないんですか。これは作成したのは内閣府で間違いありませんか。もう一度答えてください。提出したというのは聞きましたけれども、作成したのはあなた方でしょう。
  212. 大塚幸寛

    ○大塚政府参考人 内閣府において作成したものでございます。
  213. 清水忠史

    ○清水委員 作成したんだったら、招待区分、わかるでしょう、毎年同じなんですから。六十から六十三は総理若しくは長官等推薦者、これを認めてください。お願いします、もう一度。
  214. 大塚幸寛

    ○大塚政府参考人 例えば招待名簿のリストにつきましても、これは内閣府において取りまとめておりますが、これも、その会の終了をもって使用目的を終えるということから、一年未満文書として廃棄をしてございまして、この招待状の御指摘の番号につきましても、同様の理由をもちまして廃棄をしているものでございます。現在、保有はしてございません。
  215. 清水忠史

    ○清水委員 今保有しているかどうかを聞いているんじゃないんです。その区分はそのとおりかと聞いているのに、全くお答えにならない。これは本当に国会を愚弄している答弁だと私は言わなければなりません。  なぜこの区分にこだわるのか。それは、悪質マルチ商法で消費者庁から四度も行政処分を受け、ことし四月に警察庁の家宅捜索を受けたジャパンライフの元社長が、区分六十で招待されていたからですよ。  これは、もしかして総理の招待枠で呼ばれていたとしたら問題ではないか。そうでないというのであれば、そのことを証明する責任が総理や長官等にあるのではないか。こういう疑念が抱かれているのに、その招待区分を作成した内閣府自身がその番号についてお答えにならない、区分、属性についてお答えにならない。これでどうやって国会審議しろというんですか。冒頭言いましたように、財政規律の問題ですよ。  もう時間が過ぎていますので、最後に言います。  ちょっと、私、本当に内閣府の皆さんに言いたいんですけれども、今週の赤旗日曜版、今あるんですけれども、日曜版というけれども金曜日に届いたりするんですけれども、この日曜版がまたスクープをいたしまして、結局、SNSを調査したら、昭恵夫人のお友達が二〇一三年以降百四十人参加されているということですよね。  そういう点で、この前夜祭の会費をめぐる問題も含めまして、桜疑惑は増すばかりでございますので、この国会で衆参の予算委員会などを開いて、安倍総理自身に説明をしていただく、やはり財政の問題をしっかりやるべき、このことを強く申し上げまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  216. 田中良生

    田中委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十一分散会