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2019-03-12 第198回国会 参議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三十一年三月十二日(火曜日)    午前九時開会     ─────────────    委員の異動  三月八日     辞任         補欠選任      武田 良介君     井上 哲士君  三月十一日     辞任         補欠選任      太田 房江君     松川 るい君      中西 健治君     滝沢  求君      中野 正志君     宮本 周司君      元榮太一郎君     堀井  巌君      和田 政宗君     小川 克巳君      古賀 之士君     徳永 エリ君      田名部匡代君     浜口  誠君      伊藤 孝江君     高瀬 弘美君      片山 大介君     高木かおり君      山口 和之君     藤巻 健史君  三月十二日     辞任         補欠選任      宇都 隆史君     今井絵理子君      進藤金日子君     佐藤  啓君      中西  哲君     小野田紀美君      堀井  巌君     元榮太一郎君      宮島 喜文君     江島  潔君      宮本 周司君     自見はなこ君      岩渕  友君     吉良よし子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         金子原二郎君     理 事                 石井 準一君                 高橋 克法君                 二之湯武史君                 長谷川 岳君                 山下 雄平君                 蓮   舫君                 森 ゆうこ君                 谷合 正明君                 辰巳孝太郎君     委 員                 青山 繁晴君                 朝日健太郎君                 井原  巧君                 今井絵理子君                 宇都 隆史君                 江島  潔君                 小川 克巳君                 小野田紀美君                 大野 泰正君                 こやり隆史君                 佐藤  啓君                 自見はなこ君                 進藤金日子君                 滝沢  求君                 中西  哲君                 長峯  誠君                 堀井  巌君                 松川 るい君                 丸川 珠代君                 三木  亨君                 宮島 喜文君                 宮本 周司君                 元榮太一郎君                 石橋 通宏君                 小西 洋之君                 杉尾 秀哉君                 青木  愛君                 大島九州男君                 大野 元裕君                 徳永 エリ君                 浜口  誠君                 高瀬 弘美君                 平木 大作君                 三浦 信祐君                 宮崎  勝君                 浅田  均君                 高木かおり君                 藤巻 健史君                 井上 哲士君                 岩渕  友君                 吉良よし子君                薬師寺みちよ君    事務局側        常任委員会専門        員        藤井 亮二君    公述人        東京大学大学院        経済学研究科教        授        川口 大司君        株式会社日本総        合研究所調査部        上席主任研究員  河村小百合君        兵庫県立大学理        事長        公益財団法人ひ        ょうご震災記念        21世紀研究機構        理事長      五百旗頭真君        沖縄国際大学大        学院教授     前泊 博盛君        公益財団法人あ        すのば代表理事  小河 光治君        みらい子育て全        国ネットワーク        代表        合同会社リスペ        クトイーチアザ        ー代表      天野  妙君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○平成三十一年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○平成三十一年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○平成三十一年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     ─────────────
  2. 金子原二郎

    委員長金子原二郎君) ただいまから予算委員会公聴会を開会いたします。  本日は、平成三十一年度一般会計予算平成三十一年度特別会計予算及び平成三十一年度政府関係機関予算につきまして、六名の公述人方々から順次項目別に御意見をお伺いしたいと存じます。  この際、公述人方々に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。委員会代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日は、平成三十一年度総予算三案につきまして皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、御発言は着席のままで結構です。  それでは、経済財政について、公述人東京大学大学院経済学研究科教授川口大司君及び株式会社日本総合研究所調査部上席主任研究員河村小百合君から順次御意見を伺います。  まず、川口公述人にお願いいたします。川口公述人
  3. 川口大司

    公述人川口大司君) 東京大学川口と申します。  今日は、経済財政全般の話というよりも、今話題になっております実質賃金変化統計的把握についてのお話をさせていただければと思います。  私自身は、労働経済学実証研究専門にしておりまして、ちょっと毎月勤労統計個票という生のデータを使った分析をしたことはないんですけれども、私が把握している範囲でこの問題についての意見を述べさせていただければと思います。  まず、毎月勤労統計名目賃金変化ですね、これ、共通事業所というのを使って名目賃金を、変化がどうなっているかというのを調べるということが今話題になっていると思うんですけれども、これについては検討会厚生労働省の方で立ち上がっておりまして、今議論が進んでいるところということもまず指摘したいというふうに思います。  それで、毎月勤労統計なんですけれども、皆さん御存じのとおり、賃金変化捉えるというときに、どういうふうにそのデータ構成されているかという話があるわけですけれども、事業所単位賃金支払総額というのが分かっておりまして、かつ総労働時間というのが事業所単位で分かっていると。そうしますと、事業所単位で時間当たり賃金というものが分かるという形になっております。これの、その毎月毎月の平均賃金事業所ごとに分かるわけですけれども、これの平均値計算するということができて、これの変化というのがいわゆる本系列の変化ということになります。それで、毎月勤労統計なんですけれども、大規模事業所を除いては抽出調査という形になっておりまして、この調査対象になる事業所が毎月毎月変わっていくというような形になっております。  それで、今問題になっているサンプリング変更に関してなんですけれども、以前のサンプリングというのは、この名簿替えのタイミングですね、元々、その調査対象になる事業所を選ぶときの台帳を入れ替えたときにはもうその調査対象になる事業所を丸ごと入れ替えてしまうという形の方法が取られていました。こういうサンプリングの仕方の問題としては、その調査対象ががらっと変わってしまいますので、その平均値などを見たときに断層が発生してしまうという問題がございます。  それで、今新しく取り入れられた方法は、いわゆるローテーティングサンプルと呼ばれる方法で、その一定の期間同じ事業所を調べるんですけれども、その期間がたった後は落ちる事業所があるんだけれども、それを入れ替えると、一遍には入れ替えないで順番に入れ替えていくというような方法を取っています。  例えば、これ適切な例かどうかは分からないですけれども、焼き鳥屋さんのたれをちょっとずつ使った分をつぎ足していくような、そういう方法ローテーティングサンプルという形になっていて、味が安定するというような、そういったことが利点としては挙げられるということかと思います。  それと、共通事業所のこの賃金変化なんですけれども、連続して調査されている、こういう事業所賃金変化だけを見てみたらどうかということが話題になっています。このときに問題になり得るのは、一年後、今年調査されてまた一年後にも調査される事業所というのは、基本的にその事業を継続している事業所ということになりますので、ここに母集団からずれというものが発生することになります。  それで、一年目に調査対象になったところで、二年目にその調査対象になったところと二年目には消えてしまったところの賃金の比較というのをその検討会では行っているんですけれども、その結果を見てみると、二年目に残っている事業所の方が一年目時点での平均賃金が高いというようなことが分かっています。で、全体を代表するようなサンプルというのを共通事業所から取ることが難しい部分もあるということが分かっています。分からないのは、共通事業所賃金伸びが全体の伸びと比べて高いか低いかというのが、二年目の賃金水準が分からないわけですから分からないというような問題がございます。ですので、過去の賃金伸びと、例えば事業所サバイバル確率の検証といったようなことが必要になってくるのかなというふうに思います。  それで、今までの話が名目の話なんですけれども、実質化の話もございまして、実質化というのは、基本的には簡単な話で、名目賃金伸びから物価水準伸びを引いたものが実質ということになります。  もっとも、皆さん御存じのことかとも思うんですけれども、消費者物価指数というのは、基本的に、ある種のバスケットを購入するのに幾ら掛かりますかという、そういう指標なんですけれども、例えばうどんとそばというものだけで構成されているようなバスケットを買いますと、それで、半分半分で消費している人がいて、うどんの値段が二倍になると、うどん消費量というのは下がるわけですよね。こういった商品の代替というのが起こりますので、どうしても、固定されたバスケットの下で物価水準変化というのを調べると、上方にぶれが出てくるという問題が知られています。  これについて、どれぐらいの大きさなのかというのを評価した研究というのがあるんですけれども、一つの例を挙げると、〇・五%ポイント毎年ずれますと。インフレが一%、二%というこの範囲のところで議論しているときに、〇・五%ポイント上方ずれというのは結構大きなずれということになりますので、そうすると、物価水準が上振れすると実質賃金伸びというのは下振れするわけですね、こういった特性があるということは踏まえた上で議論をしていく必要があろうかというふうに思います。  ここまでが事業所単位平均賃金の話でした。我々がもっと関心あるのは、個人レベル賃金がどういうふうに変化しているかということなんですけれども、これについて、私自身試論レベルなんですけれども少し研究をしたことがございますので、それについて報告をさせていただければと思います。  この紙の、二枚目の方の紙を御覧いただきますと、表が出ているんですけれども、その個人レベル賃金変化というのを知ろうと思うと、各個人賃金を追ったようないわゆるパネルデータというものが必要になります。リクルートワークス研究所がそういったパネル調査というのを行っているわけですけれども、これを見てみますと、二〇一六年の時間当たり賃金と二〇一七年の時間当たり賃金というのを計算をしてみました。この三万人をちょっと超えるようなサンプルの中で、二〇一六年の賃金が手に入るのは六六%、二〇一七年の時間当たり賃金が手に入るのは六七%、で、両方の年で賃金が分かる人というのは六〇%しかいないんですね。ですので、片方の年で賃金が分かる人と比べると一〇%ぐらいの人が落ちてしまうと。共通事業所の話と同じなんですけど、個人レベルでこういうことが起こっていると。  二〇一六年の平均賃金、これ全体の、賃金が手に入る人に関して全員の平均賃金を見てみると千七百十八円と、二〇一七年の平均賃金を見てみると千七百四十七円というのが分かって、平均賃金伸びが一・七%という形になります。じゃ、その二年分ですね、賃金が分かる人に関して計算をしてみると、二年間観察される人というのは賃金が高いんですね、千七百四十二円と千七百八十四円と。ですので、賃金が高いタイプの人の方が二年間連続して働いている可能性が高いのでこういうことが起こると。この人たちに関して平均賃金伸びというのを計算すると、二・四%になります。  これは日本でだけ観察される現象ではなくて、景気回復局面において、統計上、賃金が上昇していないように見えるという問題は世界各国で報告されておりまして、それはなぜかというと、景気が回復していく局面失業率が下がります。この中で、今まで失業していた人たちが働くようになるんですけれども、どちらかというと賃金が低い方が多いですので、平均賃金がなかなか上がっていかないというようなことがあります。日本でもそのことが観察されたという面があります。  あともう一つ最後なんですけれども、これ平均賃金伸びの話をしているんですね。これと個々人賃金伸び平均値というのはずれるんですね。この個々人賃金伸び率平均値というのを計算してみますと、実を言うと六・〇%というのが出てきまして、かなり大きなずれというものがあると。  ちょっと、ポイントとして四点まとめさせていただいたんですけれども、二年連続で働いていて賃金が観察できる個人というのは高賃金の方が多いと、これサバイバルバイアスなどというふうに呼びますけれども、まずこれが観察できたと。それで、いわゆる、働いている人の構成が変わっていくので賃金が上がっていないように見えるという構成バイアスというのを取り除くと、平均賃金増加率は一・七%から二・四%に上がりましたと。平均賃金伸びではなくて、成長率の、賃金増加率平均値というのを見てみると、平均賃金増加率は二・四%なんですけれども、済みません、増加率平均値というのを見てみると六・〇%だと。ですので、平均増加率増加率平均というのはずれているということがございます。  何が起こっているのかというのを考えてみますと、恐らくこういうことだというのは、賃金の低い人々の賃金増加率が高いと。元々賃金水準が低い人の賃金伸びても平均賃金を押し上げる効果というのは限定的ですので、それですので、増加率平均値計算すると高い数字が出てくるんだけれども、その人たちの、賃金が低い人の賃金伸びというのは平均賃金増加にそれほど影響しないので、平均値伸びというのを計算するとかなり低い水準のものが出てくるというようなことがございます。  最後にまとめさせていただくと、なかなか、賃金伸びているかどうかということを計算するのは技術的にいろんな難しい問題があって、一つこの数字賃金伸びが表現されているんですよということはなかなか難しいと。どういうことが必要かというと、この生のデータに恐らく立ち戻って、いろんな計算の仕方があるので、それぞれの仮定に基づいた計算の仕方の数字というのを出して、どの数字が望ましい数字なのかということを議論していくということが、迂遠ですけれども、必要なのではないかなというふうに思っております。  以上です。ありがとうございました。
  4. 金子原二郎

    委員長金子原二郎君) ありがとうございました。  次に、河村公述人にお願いいたします。河村公述人
  5. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 日本総合研究所河村と申します。本日は、このような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。  私の方からは、我が国経済財政運営の課題ということで、今年、消費税率引上げ、予定されておりますけれども、この国の厳しい財政事情に鑑みて、どの程度財政再建が本当は必要なのか、そして今、財政運営に非常に深く事実上関わっております日銀が抱える深刻な問題についてお話ししたいというふうに思います。資料、いろいろグラフを御用意しておりますので、資料を併せて御覧ください。  まず、二ページのところを御覧ください。  これまでの財政運営御覧になりますと、これ、我が国財政経済の推移をお示ししたものでございますけれども、後ろにあります赤い棒グラフが国の公債残高、そして水色棒グラフ名目GDP御覧いただきますと、二〇〇五年のところで逆転している状態であります。一国、国全体として国民全部で稼ぎ出されるGDPを超えるような形で公債残高が上がってきていると。  足下、この税収、それから一般会計歳出等折れ線でお示ししていますけれど、税収がアベノミクスになって上がってきたこと、非常に良かったと思います。もちろん、前回の消費税率引上げ、これも大変大きく効いているというふうに思います。ただ、それででき上がった姿を見るとどうなのか。まだ新規国債発行額というのが三十兆円ぐらいある。  次の三ページのところを御覧ください。  今、国会でかかっている来年度の予算政府案で見て、ざっと大きく数字を取ったものがこちらの数字なんですけれども、歳入の方を御覧いただくと、公債金三十二・七兆円、これ新発国債ですね。右側の歳出のところで、債務償還費、これ既に出した国債を返している分十四・七兆円。これ差し引きますと、まだ十八兆円近い新たな負担ツケ回し、後の世代への新たな負担ツケ回しですよ。過去にツケ回した分というのもたくさんあるんですよ。それに更に上乗せする形でやってしまっているということだというふうに思います。何でこんな財政運営が続いているのか。もう要するに利払い費が少なくて済んでいるからですね。  次の四ページのところを御覧ください。  消費税率引上げ、予定されております。どの程度財政運営が改善するのか。これは、二〇一二年の三党合意の段階では、この八%から一〇%に上げるときに、大ざっぱな数字で申し上げると五兆円ぐらい増収になるだろうと、そのうち四兆円は後の世代への先送りを少しでも減らそう、そういう話になっていました。ところが、これ使途変更になっちゃいましたよね。後の世代への先送り軽減幅、大体でいうと半分ぐらいになってしまっていると思います。じゃ、残りの二兆円分どこから出してくるか、そういう議論あったんでしょうか。そういう議論、是非していただきたいと思います。  加えて、いろいろ景気対策増税対策されるということが出ていますけれども、もちろんいろんな経済状態の方がいらっしゃるので配慮は必要だと思います。だけれども、今講じられている増税対策って一体誰が得するんですか。ポイント云々。何か青天井でお金が掛かるんじゃないかなんという話が出ていたりもしますし、やっぱり本当に真に必要な方のためだけの増税対策になっているのか。もうこんなことになっちゃったら、一体何のための消費増税なのかしらということを思います。  次の五ページを御覧ください。  何でこれまでうまく財政運営回ってきたのか。これ、財務省が出している数字を基に、利払い費折れ線です、後ろ公債残高出ておりますが、御覧いただきますと、足下利払い費、十兆円も行かないんですよね。これ御覧になると、一九九〇年頃、あの頃よりも利払い費少ないですよね、借金残高ずっと上がっているのに。これ、なぜかと。もちろん金利影響なんですよね。  次の六ページのところを御覧ください。  これ、日銀金融政策運営ももちろん関係しております。金利は別に金融政策だけで決まるものでもないんですけれども、やはり日本経済バブル崩壊があって、不良債権の問題があって、ゼロ金利やり、量的緩和をやり、その後もまたリーマン・ショックがあり、震災があり、いろいろ包括緩和をやって、そして黒田総裁になられて異次元緩和をやっていらっしゃる。もうべたっと張り付いている状態だと思います。  次の七ページ、御覧ください。  そうやって、日銀が、ある意味無理やりというか力ずくで今金利を抑え込んでいるんですけれども、国債の保有、誰が持っているのかというのを御覧いただいたグラフが七ページです。中央銀行がぐぐぐぐぐぐっと上がってきていること、御覧いただけるというふうに思います。  次の八ページ、御覧ください。  今、日銀が買い入れている国債のシェア、一番直近で分かる数字が一月末でございます。実に四八・一%です。もうちょっとで五割に手が届きそうなところ。年限別御覧になると、もう本当に背筋が寒くなりますね、五年債なんてもう七割超えていますよ。十年債はもうとっくに五割超えているんです。こういう状況です。  これは、この後御説明いたしますけれども、日銀はあくまで二%の物価目標達成を目指して金融政策やっているんだから財政と別じゃないかというふうにもしかしたらお考えの方がいらっしゃるかもしれません。私はそうではないと思います。こういうような無理やり無理やりのその金融政策運営金利を押し付け、国債を本当に買い占め、そういうことによって、今、日銀に非常に大きなリスクが蓄積されています。今後の経済政策運営に大きな影響が出る。私たち国民一人一人の生活と人生に大きな影響が出かねないと私は真剣に心配しております。  順に御説明してまいります。  九ページを御覧ください。  何でこの国の借金がこんなに積み上がってしまったのかですね。これは、財務省理財局が出している債務管理リポートの方から取ったグラフです。  どちらが増えたか。まあ建設国債よりも赤字国債の方だろうなというふうに先生方御覧になるんじゃないですか。もちろんそのとおりで、この棒グラフですね、一番下の水色折れ線建設国債ですね、四条債です。その上、赤いのがありますね、これが特例債です。もちろん建設国債より特例債が多い。だけど、それよりもっと多いのがこのオレンジです、借換債です。  この国って、まあ国債、いろんな年限で出すんですけれど、十年債を十年物で出して十年たった、全額返しますかといったら、返さないんです。それが実はこんなに借金が増えてしまう原因になっています。  次の十ページのところを御覧ください。  もう先生方はよく御案内だと思いますけれども、この国の償還は、財政法に規定があって、六十年償還ルールということでやっています。これ財務省の絵を持ってまいりました。ですから、例えばこの国債ですね、建設国債も、今特例国債も一緒になっていますが、例えばこの六百、金額で六百を出したとすると、十年後に返すのは百だけ、五百は借換え、で、また十年たったら返すのは百だけ、また借換え。要するに、きれいに返し切るまで六十年掛かる。  もうこれ、私もいろいろ調べていますので、いろんな各国の国債管理当局に問合せをするんですね。ちゃんと答えが来ますよ、ちゃんと来ます。こういう六十年償還ルールをやっている国ありません。主要国でありません。どの国も借換債は出しますよ、出さないわけじゃないんです。だけど、やっぱりそんなものをどんどんどんどん出していたら本当に借金が積み上がっちゃうから、借換債はもう本当に必要最小限に収めようということでやっているという答えが返ってきます。  じゃ、国債をこの国どうやって返しているのか。  十一ページ、御覧ください。  これも先生方よく御案内だと思いますけれども、国債償還原資の捻出方法は三つございます。定率繰入れ、国債残高に応じて、六十年償還ルールに基づく、ですから六十年で返すということは一・六%なんですけど、一般会計で要するに償還の原資を出す。もう一つは剰余金繰入れ、例の決算をやったときに剰余金が出る年と出ない年がありますけれども、それの半分は基本的に債務償還に入れましょうねという話になっている。そして、三番として、それ以外の予算繰入れというのがあるということです。  次の十二ページ、御覧ください。  剰余金繰入れ、まあこれ結構いろんな事情があって、これ、剰余金繰入れ、剰余金が出た額がこの棒グラフでお示ししておりまして、紺色で塗り分けているところが公債償還借金の返済に充てたもの、赤いところが一般財源に充てて使っちゃったものということなんですね。これで見ると、剰余金が元々ない年もありますけれど、まあ一応規定どおりにはやってきている。ただ、この純剰余金をいかに繰り入れるとしても、本当に剰余金出たとしても多くて二兆円ぐらいですよね。一七年度だってやっぱり一兆円をちょっと切るぐらいだというふうに思います。  それをじゃ半分だけ繰入れ、半分じゃなくて全額繰り入れたこともあるんですよね、小泉政権時代とかあるんですけど、それやったとしたって、過去二十年全部遡って私足し算したことありますけど、二十三兆円としかならないんですよ。だから、剰余金繰入れをどんだけ真面目にやったって全然、これだけ、本当に千兆の借金抱えている国、焼け石に水なんですよね。  次の十三ページ、御覧ください。  借換債が多過ぎると申しました。これがどういう意味を持つのか、よその国と比較したのがこちらの絵であります。  今IMFも非常に、ヨーロッパの債務危機とかを経てこういうところ、非常に気にしております。この表の中にありますグロス所要資金調達額というのが、その国が財政運営を続けるために毎年一体幾らの国債を調達しなきゃいけないのかというのを名目GDP比で示したものです。  満期負債というのが、要するに借換債です。財政収支赤字幅というのが、まあ大ざっぱに言えば新発国債というふうにお考えください。これ御覧いただくと、日本ですね、満期負債がよその国と比べて異様に多いじゃないですか。GDP比四割の金額の国債を調達している国なんてないんですよね。これを、まあ四〇%って、見てもぴんとなかなかこられないかもしれないので、実額で御覧いただいたのが次の十四ページです。  今年の予算政府案での理財局が示している国債発行予定額、これ御覧いただくと、国債って新発国債だけじゃないんです。借換債がたくさんあるんです。両方合わせて、理財局、毎年百五十兆円も国債を調達している。これが円滑に調達できなかったらデフォルトですよ。大変なことになりますよ、資金ショートになったら。そういうことです。  というのは、要するに、この国はこれだけ毎年自転車操業で国債出して財政運営を回しているということは、ちょっとでも金利が動いたりとかして国債がはけなくなれば、財政運営たちまち大変なことになるということだと思います。  じゃ次、中央銀行の問題に行きたいというふうに思います。  十五ページのところを御覧ください。  これは、主要な中央銀行の資産規模の名目GDP比のグラフです。よく新聞等でも先生方御覧になられると思います。日銀、断トツですよね。GDP比一〇〇%に行っちゃった。ほかの国というのは、まあ確かにリーマン・ショックの後、増やしたけれども、せいぜい二割とか三割ぐらい。ECBも一番ピークで四割まで持っていって、もうやめましたよね。止めているんです。なぜか。  次の十六ページのところを御覧ください。  これですね、よその国がなぜしないかということと裏腹なんですけれども、これだけのバランスシートを抱えてしまうと、中央銀行としての金融政策運営、財務運営に非常に大きな問題が出るということです。  次の十七ページのところに、日銀のバランスシートの変化を大まかに描いた図をお付けいたしました。  御覧いただきますと、かつてに比べて、二〇〇〇年代の量的緩和の時期なんかに比べて、ちょっとこれグラフの比例での大きくしている度合いが少なくて、本当はもっと長くなるはずなんですけど、こんなに大きくなっています。こんなにたくさん当座預金が増えている。これ、もう要するに、多額の国債を買い入れる見返りで供給した過剰流動性なんです。今は余りお金の使い道ないから、銀行みんな日銀に預けています。だけど、これはいつ何どき出ていってもおかしくない。  今アメリカが正常化でやっているように、金利を、市場金利が上がってきたら、徐々に中央銀行もこの当座預金に付ける金利を上げていかなければ、このお金どんどん出ていくことになったら、もしかしたら、海外に出ていけば為替、円安で大変なことになるかもしれません。インフレになっちゃうかもしれない、そういうこともあるというふうに思います。  ですので、やっぱりこれだけ大きくなったということは、日銀がこの当座預金に付利しなきゃいけない、なのに日銀が持っている国債って、異様に付いている金利低いんですよね。加重平均で一%もないんですね。本当にもう〇・五%もないんです。ということは、短期金利を〇・五%に上げるだけで日銀は逆ざや、しかもこれだけバランスシートが大きいですから、一%逆ざやになるだけで毎年四兆円が飛んでいくという恐ろしい状況にあります。  ここでは大きく図で描いていませんけれども、ETFも買っていますね。衆議院の方でも質問が出たようですけれども、結構日銀、最近、高値つかみしていますので、株式市場だってやっぱりずっと一本調子で上がっていくというのはなかなか考えにくい。じゃ、そのときどうか。黒田総裁、TOPIXで一三五〇ぐらいで損益分岐点なんということをおっしゃった。  ですから、こういうことを考えると、非常に恐ろしいリスクの固まり、金融政策が制御不能にならないか非常に心配だと思います。  じゃ、よその国の中央銀行がどうやっているのか。  十八ページのところを御覧ください。  よその国の中央銀行、まずアメリカですけど、どの国でもいずれ正常化させることが大前提です。FEDの場合は、バーナンキ元議長がFEDのボスは議会だということをはっきり言っています。ボスは国民なんです。だから丁寧に説明する、量的緩和をやった、FEDだって金融情勢によったら危なかったんですよ。  ここにお示ししているのは、二〇一三年の時点で、もしかしたら納付金がゼロになっちゃうかもしれない。同じような、さっき御説明したのと同じ理由で財務が悪化するかもしれない、こういうのをきちんと正直に示して、そうならないように早めに手じまう、正常化をできるうちにできるだけ進めるというふうにやってきたので、実際には十九ページのような形で赤字にはならないで済みそうです。  次の二十ページのところを御覧ください。  イングランド銀行です。こちらも量的緩和をリーマン・ショックの後にやりました。だけど、この国、賢いのは、こんな中央銀行国債をたくさん買う、いずれ正常化する段階で損失が出るのは当然だろうということが最初から分かっている、だからBOEのオンバランスではやらない、別勘定でやる。そして、もっとすごいのは、必ず損失が出るから、それは財務省が補償すると言いました。はっきり財務大臣と中央銀行総裁とのやり取りのレターで明らかにしています。  そして、もっとすごいのは、量的緩和をやって、国債をたくさん買って持っている、最初持っている間は中央銀行もうかるんですね。そのもうかった利益をイングランド銀行は財務省に、国庫に納付します。納付すると、それをイギリスの財務省景気対策とかに使わないんです。それはあくまで国債発行残高の減額に充てると。要するに、いずれ正常化する段階で損失補填をしなきゃいけなくなったときに、増税ということはなかなか言いにくいですよね。ですから、そうやって温存しておいた国債の発行余力を使って対応しようということをしています。  二十一ページのところ、中央銀行が赤字に転落するのをどう考えるか。  日本の当局者の中には、一部の方にはいろんなことを言っていらっしゃる方がいますね。民間銀行と違うから全然平気だと言っていらっしゃる方もいます。だけど、そういう方は海外の当局にはいません。これ、イングランド銀行とかイギリスの財務省、どう言っているかというと、財務省がAPFに対して、これは量的緩和をやる勘定に対して損が出れば損失補償を必ず行わざるを得ない。  次の二十二ページ、二十三ページ、御覧ください。  キング総裁もはっきり言っています。やっぱりきちんと政府に、いずれ損が出ることによって損失補償をしてもらえないと金融政策はきちんと行えない、現在のカーニー総裁もそういうふうに言っています。  この量的緩和の損失、どれぐらい大きいかと、黒田総裁は、金融状況は、金融情勢によっていろいろ決め切れないので数字は言えないというふうにおっしゃいますけど、イングランド銀行は、二十四ページにあるところのように、きちんと国民がこのシナリオを選んで、きちんと損失を把握できるような、そういうシートも提供しています。民主主義下の中央銀行、本当はこういうふうにあるべきなんじゃないかなというふうに思います。  じゃ、最後まとめます。  安定継続のための課題なんですが、二十六ページ以降です。二%の物価の達成の見通しがなかなか立たないですよね。そうなるのかどうかも分からない。だけども、よその国を見ると、二十九ページにありますように、FEDだって二%になるまで待っているわけでは決してないんです。やっぱり抱えるリスクが大きいんです。  ですから、最後のところ、三十ページですけれども、私が思いますのは、やっぱりこの国の経済財政運営、安定的に継続させていくためには、やっぱり日銀による事実上の財政ファイナンス、非常に大きなリスクをこの国にとってもたらすものです。やはりこれをできるだけ収束の方向に向かってやっていかなきゃいけないんじゃないか。そして、財政再建に、毎年度のフローベース、ストックベースの両面できちんと取り組んでいくことが必要なんじゃないのかなというふうに思います。  財政再建の目標って、二〇二五年プライマリーバランス黒字化でいいんですか。何か、この国全体として、過去に借りた借金はもうそのままでいいと、一回借りたらもういい、そんなことないんじゃないですか。日銀が崩れたら、もう一気に来ますよ、危機が来ますよ。それじゃまずい。やっぱり財政収支を目標にすべきなんじゃないか。そして、先ほどもちょっと申し上げた六十年ルール、償還ルールというのはきちんと見直すべき、特に特例公債見直す方向で考えていくべきなんじゃないかと思います。  最後に、三十一ページ、日本の経常収支のグラフ御覧ください。  経常収支、黒字のうちは大丈夫というふうによく言われますけれども、これ内訳別に御覧になると、貿易収支、かつてこれが稼ぎ頭でしたね。今もう本当に風前のともしびなんです。第一次所得収支が本当に大きいですよね。  これ、何ですか。企業みんな結構何かもう冷静なんですよね。こんな政策運営していてこの国続くかという話を、実際に私が伺うこともあります。海外にどんどん移転しちゃっているんです。今はまだ本社が日本にあるから、収益を日本に持ってくるから第一次所得収支が膨らむ。個人の方で海外の金融資産に投資している方もいらっしゃるでしょうね。そういう結果がこう出ています。これって、いざ危ないとなれば、本当にこれ資金流出が起こる予備軍じゃないかなというふうに思っています。やっぱりそれぐらい危ない上にこの国の経済財政運営やっているということがあるんじゃないかなというふうに思いますので、何としても、子供たちのためにも安定的な経済運営、財政運営ができるような、そういった議論をお願いしたいというふうに思います。  済みません、オーバーしてしまって申し訳ございません。以上でございます。
  6. 金子原二郎

    委員長金子原二郎君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 二之湯武史

    二之湯武史君 自民党の二之湯武史と申します。  今日は、お二人の公述人、大変お忙しい中、貴重な公述をいただきまして、どうもありがとうございます。  まず、川口先生にお伺いいたしたいと思いますが、今の実質賃金統計の問題、いろんな論点があろうかというふうに思いますけれども、今日は先生は、そうしたそもそものその統計実質賃金統計を出すことに非常にいろんな構造的な課題、問題があるということで、本当に、何といいますか、フラットな数字を取るのは非常に難しいんだというようなお話でございましたけれども。  特に、ポイントにございますように、四つございますよね。要は、事業所個人も、二年続いているということは、その事業がうまくいっている、継続しているということだから、どうしても数字が高く出がちだとか、個人においてもそういうことがあるということなんですが、そもそも、国の経済政策における、要は賃金というもののデータの重要性といいますか、そういうものについてまず改めてお話をお聞きしたいと思いますけれども。
  8. 川口大司

    公述人川口大司君) 御質問ありがとうございます。  賃金統計の重要性ですけれども、金融政策財政政策考えるに当たって、金融面と実物面と両方見ていく必要があると思うんですけれども、賃金統計というのはその実物面を把握していく上で重要な指標の一つだというふうに考えております。
  9. 二之湯武史

    二之湯武史君 その上で、そうした賃金データをしっかりと得ていく上で、現在の、今回の例えば統計も全数から抽出へと、ローテーションサンプリングへということなんですけれども、ここについて改めて、そのデータに対する公平性といいますか、そういうことについての課題、問題というのはどのようにお考えなんでしょうか。
  10. 川口大司

    公述人川口大司君) その全数調査というのは、やはりコストも掛かりますし、どうしても抽出調査にせざるを得ないということだと思います。  それで、これは全数であろうと抽出であろうと両方で発生する問題なんですけれども、一〇〇%の方に協力していただけないという回収率の問題がございまして、なかなか全体的な姿がどういうふうになっているのかということを知る部分が難しいという、そういった部分というのはあると思います。  ですので、これ、抽出にしたから駄目だという話ではなくて、抽出にしても皆さんが同じように回収に協力してくださるようであれば正しい数字は捉えられると思うんですけれども、そこの部分についてまだ改善の余地があるのかなというふうには思います。
  11. 二之湯武史

    二之湯武史君 サンプリング次第では、その数字というものが上振れしたり下振れしたり、そういう余地があるというようなことなんですかね。
  12. 川口大司

    公述人川口大司君) おっしゃるとおりです。
  13. 二之湯武史

    二之湯武史君 例えば、データの取り方が、今のように紙ベースであったりとか人が人を訪ねてというようなアンケートでありますとか、そういうような方法論においては改善の余地というのはないんですかね、この現代において。
  14. 川口大司

    公述人川口大司君) 全くおっしゃるとおりで、今、ある程度以上の規模の事業所というのは賃金労働時間を全て電子的に管理していると、一部ではクラウドで管理しているような企業もあるというふうに聞いています。  それを、今、例えば賃金構造基本統計調査というのは、その賃金台帳から労働者を抜き出して回答してもらうという形になっているんですけれども、これは紙ベースで提出していただくことになっているんですね。恐らく、これを厚生労働省ではもう一度電子化しているということになってしまっていますので、電子的な回収、これが必要だと思います。  それで、回収率が下がってきてしまう一つの理由は、やっぱり回答者の負担という問題があって、企業にはたくさんの調査がやってきて、それに答えるのが負担になってしまっていると、どうしても回収率が落ちていってしまうと。その回答者の負担を減らすという意味でも電子化というのを加速していくということが必要だというふうに考えております。
  15. 二之湯武史

    二之湯武史君 今おっしゃるように、もう、何といいますか、市民感覚でいえば普通の感覚だと思うんですけどね。なかなかそういうところが進まずに、こうした今回のような問題も発生する余地も出てきますし、やっぱりそういう調査方法、本当にこの現代のライフスタイルに合わせたものにすることによって、相当程度バイアスも、また生データに近づきますし、そうした余地も残らないのかなというふうに今お聞きして思っておりました。どうもありがとうございます。  河村先生にもお伺いをしたいと思います。  今日の資料でしていただいたプレゼン、非常に市民権のある、社会的認知のあるプレゼンといいますか、こうしたことも大変よく私も理解できるわけでありまして、特に政府債務残高日銀に相当よっているということと、あとその額が国のGDPの一〇〇%を超えていると、そうした規模の問題も言うふうにあると思うんですけれども、最終的に、三十ページで、まあ言わば堅実にフローベース、ストックベース両面で財政再建に取り組んでいく必要があると、これはまさにそのとおりだと思いますし、プライマリーバランスの黒字化も二〇年から二五年と、五年後ろにはずれましたが、そうした目標を今政府が掲げて財政再建を取り組んでいるわけですけれども、一方で、経済成長なくして財政再建なしということで、今の政権もその方針を掲げてやっております。  そうした財政再建に対して、対してといいますか、財政再建をするためには当然、今でいえば緊縮財政というのをしかないと駄目になります。そうした際の経済に対するこの影響、これもよくある議論ではありますけれども、まずその辺について、河村公述人の御意見をお伺いしたいと思います。
  16. 河村小百合

    公述人河村小百合君) ありがとうございます。  経済成長、もちろん大事でありまして、とにかく潜在成長率を上げることが大事なんじゃないかなというふうに思っています。  私は、これは、個人的には、日銀がたくさん国債を買って上がるものでは決してないと思います。取り組むべき課題はかなり多い。ですので、私自身もいろんな仕事をさせていただいておりますけれども、例えば大学改革、高等教育が本当に国民一人一人の力を引き出すものになっているのかどうかということ、それからあと政策金融の改革なんかもありますね。昔から言われていることがありますけれども、金融のいい機能、いろんな産業を、資源を再配分しながら成長させていく機能というのが効いていないんじゃないかといったところ、そういったところをきちんと取り組んで、やはりきちんと潜在成長率を上げていくということが大事なんじゃないのかなというふうに思います。
  17. 二之湯武史

    二之湯武史君 三十一ページに、先ほど、我が国の経常収支の構造が大分変化をしていると、つまり貿易収支で稼げなくなって、所得収支という形で海外に対する投資から国が稼いでいるという、そういう構図になっていると。  全く私、同じ問題意識を持っていまして、ですので、やはり日本の稼ぐ力というか、要はこれから日本の飯の種が何なのかというところに関して、やはり中長期的な、もう一度その成長戦略をしき直すべきだと思っていまして、特に今のような、大学に関しても全く同じ問題意識なんですけれども、要は、これまでの大学教育というのは、非常にペーパーテストに偏った、つまり社会に出てイノベーションを起こしたり、起業をしたり、要は新しい価値を生むというところよりは、まあ日本独特のペーパーテストにかなりの比重を置いた偏差値エリートを輩出し、そこがある種ゴールのようなものになってしまって、稼ぐ力が非常に弱くなっているというようなことも思います。  もう一度お伺いをしたいんですけれども、もう一つ財政再建に取り組んでいくには、要は、簡単に言えば政府の入りを増やす、若しくはその出を量るということに尽きるんだと思うんですけれども、日本国民というのはやはり税に対して非常に敏感だというふうに思うんですね。消費税についても、一%、二%の増税が非常に消費に影響を与えるという、まずそういうふうな議論の場がもう用意されていますので、そうした痛税感といいますか、というものは諸外国の国民に比べて非常に敏感だというふうに思うんですけど、その辺についてはどうですか。
  18. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 先生おっしゃるとおりだと思います。  税に対するすごくネガティブなイメージがこの国の国民、強過ぎるんじゃないのかなというふうに思いますね。でも、自分は給付を受けたい、税金を納めたくない。じゃ、社会を支えるのは一体誰なんですか。  じゃ、誰がどれぐらいずつ負担するのが公平かということをいろいろ議論していくのが、それこそまさにそれが政治のお仕事なんじゃないかなというふうに思うんですけれども。もちろん、お金持ちの方にはそれなりに負担していただき、経済的に少し弱い方でもやっぱり少しは、ちゃんといろいろそれに応じたぐらいは負担しましょうねということで、どういうふうにやっていくのが公平かということをやはりもっときちんと議論をしていただきたい、そこができていないんじゃないか。  社会の構成とかも大分いろいろ変わってきているんじゃないかと思いますね。それに応じたような税制というのがきちんとできて、つくれているのかどうかといったところもやはりちょっと問題があるんじゃないのか。そこの議論をしないがために、面倒くさいから、もういいや、もう今年は、またいいや、これは国債出しておしまいにしようということの繰り返しをやってきたのがこの姿なんじゃないのかなというふうに思います。  ですから、やはりそういった議論を是非ともお願いしたいということと、あともう一つは、是非言っていただきたいのは、シチズンシップですね。国民というと何となく政府に対する国民みたいな感じでちょっと嫌だなという感じがするんですけど、市民という言い方がいいんじゃないかなと私は思います。  社会を一体誰が支えるのか。税を納められるというのは仕事もあって幸せなことですよね。社会を、自分のもらっているお給料に見合っている分だけですけれども支えられるというのは誇らしいことでもある、そういう議論というのをもっと国全体でやっていくようにすべきなんじゃないかなというふうに思います。
  19. 二之湯武史

    二之湯武史君 私もおっしゃるとおりであって、まあ三十年ほど前から、要は、日本は単年度の、フローベースの、要は債務収入がないともう成り立たない財政構造になっていると。しかし、やはり必要な税負担国民に対してしっかりと説明をして納得をして共感をしてもらって、その税の負担をお願いするという、そうした政治家の一番基本的な、国民を説得する、納得してもらうという機能をやや放棄をして、知らない間に債務が積み上がってしまっていると。こうなってしまうと、やはりこれから更に税負担お願いするのも大変難しいし、保険料を含めて、そうした国民負担をお願いするというのはどんどんどんどんハードルが上がっていく一方だと思うんですよね。  なので、やっぱりそうした説明責任と同時に、今おっしゃったような稼ぐ力によってやっぱり税収を増やしていくと、この両輪で財政再建を果たしていかなきゃいけない。リスクは今日おっしゃったとおりだと思いますので、そうしたことを踏まえてこれからの政治活動に取り組んでいきたいなと改めて思いました。  時間が大変短いのでこの程度で終わらせていただきますが、改めて、今日はどうもお二人の公述人、どうもありがとうございました。  終わります。
  20. 杉尾秀哉

    ○杉尾秀哉君 お二人の先生方には、御多忙の中お越しいただきまして、そして丁寧な御説明、大変ありがとうございます。  私から、まず河村公述人に伺いたいんですけれども、先ほどのお話の中で、現在の財政、そして金融政策、事実上の日銀による財政ファイナンス、真剣に心配していると、こういうお話がございました。それに対するイングランド銀行、そしてFRBの取組、駆け足で御説明いただいたわけですけれども、黒田総裁のこれまでの出口戦略を含めた説明について河村公述人はどういうふうに御覧になっているか、お聞かせいただけますか。
  21. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 極めて不十分だというふうに思っております。  先ほども申し上げましたが、アメリカであれば、バーナンキ議長が、自分たちのボスは議会だということを言って、みんながこれだけネガティブなことがあるということが分かる前に、御自分たちの口の方から、いいことばっかりじゃないんですよ、量的緩和、後々こうやって大変なことがあるんですよということを誠実におっしゃった。  日銀は御自分からおっしゃることなかったですよね。付利でもう財務運営がかさんで逆ざやになるなんて御自分たちの口からおっしゃったことは全然ないんじゃないか、バランスシートの絵を自分たちで描いて御説明されていることはないんじゃないか、非常に問題なんじゃないかなというふうに思います。  金融機関のバランスシートがどうだ、中央銀行のバランスシートがどうだ、国民が分かんないのは当然ですよ。アメリカだってそうですよ。FEDのホームページ見ると、一般の国民なんて分からないから、それをいかに一生懸命分かってもらおうかと、いろんな資料が載っています、いろんな絵が付いた資料が載っています。私、それこそがやっぱり民主主義国家における国民に対して誠実に責任を果たす中央銀行の姿なんじゃないのかなというふうに思っています。  残念なことに、日銀の姿というのはもうそれから余りにも懸け離れた、まあ、だから、最初に説明する機会を逃されたんでしょうね。最初から説明しなきゃいけなかったのに、外から言われちゃう形になって否定もできなくなったから認めてはいらっしゃるけれども、御自分たちから説明することがなかったから、だから、こうやってずるずる続けられているんじゃないかなというふうに思います。
  22. 杉尾秀哉

    ○杉尾秀哉君 その延長線上に伺いたいんですけれども、果たして日銀に出口戦略はあるのか。  そして、これまでの説明ですと、基本的に日本公債国債も国内で基本的には消化されているわけだからまだまだ大丈夫と、こういう意見はいろんなところでありますけれども、それに対する御意見はいかがでしょうか。
  23. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 出口戦略があるのかどうか、それは日銀に聞いていただきたい。私は存じ上げません、知らないんですけれども。  でも、はたから見ていて思うのは、出口に行くのは、今日御説明したように、そのときに相当なやっぱり負荷が掛かりますよね。国民も相当覚悟を決めなきゃいけないところがある。そこに行くのがもしかしたら嫌でいらっしゃるのかな。このままずるずるずるずるマイナス金利も続けて、国債の買入れも何かまだ年間四十兆ぐらい買っているし、ETFも六兆ぐらい買っているし、買いっ放しでやっていけばぼろは出ないですよ。何かちょっとうがった見方かもしれませんけど、私にはそういうふうに見えてしまいます。  それは、正直言って、中央銀行として国民に対して責任ある政策運営の態度では私はないんじゃないかなというふうに思います。  あと二点目、御質問くださった国内で持っているから大丈夫じゃないかというのは、よく経常収支のISバランスの議論というのは、それこそ異次元緩和になる前は私たちエコノミスト業界でもやっていたんですね。  ただ、やっぱりこれだけ中央銀行が買い占めてしまうことになるとかなり状況が違っていて、国内で消化しているからといっても、こうやってかなり無理な量を日銀が持ってしまっているわけですので、このままじゃ危ないというのは、先ほどちょっと経常収支の内訳でもお示ししましたけど、あれもう、第一次所得収支のあの大きさ、資金流出の予備軍というふうに認識した方がいいと思います。それぐらい危険な状態じゃないかなというふうに私は思っております。
  24. 杉尾秀哉

    ○杉尾秀哉君 川口公述人は先ほど賃金のお話を中心にされたんですけれども、東京大学の高名な御先生でもございますので、河村公述人が今お話しされたこと、今の日本経済財政政策について、川口公述人がもし御意見がありましたらお聞かせいただきたいんですが、いかがでしょうか。
  25. 川口大司

    公述人川口大司君) 機会をいただきましてありがとうございます。  まず、金融政策の出口戦略なんですけれども、いつか考えなければいけない問題だと。いつ行うかという景気の判断において、やはり賃金上昇をどういうふうに捉えるかという問題は非常に大きな判断材料だと思いますので、今問題になっている実質賃金の上昇、ここのところをどういうふうに捉えるかというのはまず大事な問題なのかなというふうに思います。  それと、あともう一つ財政再建に関してなんですけれども、やはり実質的な意味での経済成長を実現して税収を増やしていくということが本質的には重要だと考えておりまして、私の同僚で北尾早霧という者がいるんですけれども、彼女がシミュレーションをやっておりまして、日本がどういうふうにすれば財政再建できるかと、三つ条件を挙げているんですね。  一つは高齢者の就業を上げるということでございまして、もう一つは女性の就業を上げる。で、就業率を上げるだけではなくて、質的にも男性と同じような賃金が稼げるような環境を整えるということが大事だと。で、三番目に消費税率を上げるということ。この三つが同時に実現されて初めて財政再建は可能なんだというシミュレーションをしています。  ですので、そのような働き方の部分ですね、実を言うと財政再建にも大きく関わっているというふうに認識しております。
  26. 杉尾秀哉

    ○杉尾秀哉君 政府が一月に、戦後最長の景気拡大局面にある可能性があると、こういう発表がありました。そのすぐ後に、今度は一月の景気動向指数、景気は既に後退局面に入った可能性というのがこちらの方では示されておりますけれども、戦後最長かどうかというのは最終的に月例経済報告の判断を待たなければいけないわけですけれども、仮に最長であったとしても伸び率が非常に低いと、最長であっても最弱という言い方をするエコノミストの方もいらっしゃる。  その景気が、やっぱりどうしても上昇傾向が弱いというのは、やっぱり消費が弱いというその一点が大きいのかなというふうに思っておりまして、先ほど来賃金のお話されておりますけれども、実質賃金のいろんな論争もこの国会の中で行われましたが、事実上、やっぱり実質賃金が思うように伸びていない、可処分所得が伸びていない、消費を手控えている状況の中でこういう経済情勢がずっと続いているのかなというふうに思うんですけれども、公述人はどういうふうな御意見をお持ちか、お聞かせいただけますか。
  27. 川口大司

    公述人川口大司君) 賃金伸びが低調だということが消費の伸びを抑えるということは御指摘のとおりだと思います。  それで、じゃ、賃金というのが一体何で決まっているのかというのを冷静に見てみますと、やはり労働生産性で決まっているんですね。それで、適切なデフレーターを使って比較してみますと、労働生産性とその実質賃金というのはほぼ比例している、その関係はほとんど変わっていないということが分かっています。ですので、根本的には労働生産性を上げるようなことが必要だと。  ただ、日本が置かれている状況というのは、もう経済が成熟しておりまして、どうしても経済成長率というのはGDP水準が高くなるに従って下がってくると、これは世界的に観察されている現象でございまして、なかなか厳しい局面にあるというのは、それは短期的な経済財政運営の問題を離れて長期的な問題としてあるんだということで、そこの潜在成長率を何とか厳しい中でも上げていくというようなことが必要で、そのためには労働市場の改革というのが必要だというような話になるんだというふうに考えております。
  28. 杉尾秀哉

    ○杉尾秀哉君 今、生産性のお話されましたので、これについても議論はいろいろあると思いますけれども、やっぱり、特に業種で見るとやっぱりサービス産業の労働生産性が日本の場合非常に低いと、こういうふうによく言われます。  とりわけサービス産業を中心とした生産性を上げるために、今、労働市場改革という話されましたけれども、具体的に先生、お考えあったらお聞かせください。川口公述人、お願いします。
  29. 川口大司

    公述人川口大司君) 実証研究を見ますと、生産性の決定要因として大切なのは資源の配分だということも分かっています。ですので、生産性が低い事業所から高い事業所労働を移動するあるいは資本を移動するといった、こういう措置というものが日本全体の生産性を上げる上では重要だというふうに考えております。  そのためには、例えば労働市場の解雇規制ですね、こういったものに関して労働移動をスムーズにするような考え方というのも必要なのかなというふうに個人的には思っております。
  30. 杉尾秀哉

    ○杉尾秀哉君 今度は、じゃ、河村公述人に伺いますけれども、今、戦後最長か否かと、こういうお話をさせていただきましたが、河村公述人の目下の景気認識。そして、予定どおりですとこの十月に消費増税が八%から一〇%、軽減税率の導入も含めて行われるということにはなっておりますけれども、景気後退局面消費増税をしてよいのかと、こういう議論もありますけれども、河村先生はどういう御意見をお持ちでしょうか。
  31. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 戦後最長じゃないかどうか、まあいろいろ議論はあるようですけれども、明るい状態が続いているということは間違いがないんじゃないかなというふうに思います。  ただ、足下やはりいろいろ、米中の問題もあるし海外情勢の問題もありますね、いろんな影響が出てきていることは事実だろうと。でも、やはり足下景気ももちろん大事なんですけれども、このままずるずるずるずると行ってしまって今後起こりかねない事態の大きさのことを考えると、やはり私はこれぐらいの状況であれば消費増税やっておいた方がいいんじゃないかなというふうに思っております。  その戦後最長の景気拡大に対する認識なんですけれども、すごく長い目で見たときに思っておりますのは、この国、バブル崩壊で大変痛い目に遭いましたよね、不良債権の問題、大変になったと。で、そこからデフレのようなことにもなったりとかして、そこを打開するために今、日銀も動員して異次元緩和をやってというようなことになっていると。これって、また懲りもせずにバブルに頼る政策運営をしているんじゃないのかなということを思います。  それを、まあそういう手も一つにはあるのかもしれない、ごく短期間であればそういう手も使う手もあったのかもしれない。実際にやっぱり動きましたよね、円安にもなったし、物価も上がったし、明るくなったし。だけど、こんなに長くやるものじゃない。バブルを起こして、そのときは気持ちがいいかもしれない、みんないい気持ちになるかもしれないけれども、それが崩壊した後の大変さということをやはりよく考えて、今の例えば団塊ジュニア世代が置かれている厳しさ、雇用だって彼ら厳しいじゃないですか。正社員になれなくて、本当にこのまま、今もう四十何歳ですよ、ほっぽらされて。そういう後の世代がいる下で、私は、こんな大変な借金を押し付けて、私たちより上の世代が逃げちゃっていいのかなというふうに思っております。
  32. 金子原二郎

    委員長金子原二郎君) 杉尾さん、時間。
  33. 杉尾秀哉

    ○杉尾秀哉君 はい。  平成が間もなく終わります。平成の三十年をそれぞれお二人に、簡単にというか一言で総括していただけますか。
  34. 金子原二郎

    委員長金子原二郎君) 時間が来ておりますので。
  35. 杉尾秀哉

    ○杉尾秀哉君 あっ、もう時間が来ました。  どうもありがとうございました。
  36. 大島九州男

    大島九州男君 今日は、両公述人、ありがとうございます。時間がもうあれなので端的に行きますけれども、まずお二方に質問をさせていただきます。  先週、三月七日に内閣府が発表した景気動向指数は、昨年十一月から連続して下落、三か月下落しておりますが、既に景気が下降局面に入っていると基調判断が修正をされました。両公述人は、この景気現状についての認識、それと、なぜ政府の判断と違う景気動向になっているのかとお考えになるか、教えてください。
  37. 川口大司

    公述人川口大司君) ちょっと短期の経済判断というのは、私、専門ではないので、申し訳ないんですけれども、お答えできずに申し訳ないんですけれども、やはり短期的な後退ということは内外の状況から発生するんだというふうには思います。  それで、基本的には、ただ、ここ十年ほど景気が非常に上向いてきているという判断はそれほど変わらないのかなと。短期的な判断としては後退局面に入っているということはあるんだと思いますけれども、その経済が上向いてきているという部分は基本的には変わらないのではないかというふうに考えております。
  38. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 私も明るい状況がおおむね続いているんじゃないかなというふうに思います。確かに、外需の影響とかがありますので、そういったところで少し判断がいろいろ違ってくることもあろうかなというふうに思います。  ただ、やはり消費税の増税のことを考えますと、これぐらいの状況、リーマン・ショック級の危機が来れば、まあ確かにそれはそういう時期にやるかということにはなるかと思いますけど、現状のような状況で、まあ余り先送りとかいうことはしないでしっかりとやっていった方が後々安定した経済運営につながるんじゃないかなと思います。
  39. 大島九州男

    大島九州男君 私が考えるのは、やっぱり国民がどう思うか、どう感じるかと。実質賃金的に本当に景気がいいとかといって、自分の賃金が上がって、そして何か自分たちの消費が伸びていっているという国民が実感があればいいけれども、ある程度所得の高い人は、株も持っているし、そういうことで恩恵を被っているけれども、まさしく所得の低いというか一般庶民はそれを感じられていないと。  私、非常に、ちょっと河村公述人のあれでぴんときたのがあるんですけど、借換債あるじゃないですか。うちは父が中小企業をやっていまして、手形ジャンプするんですよ。要は、手形の期限が来ましたと、で、銀行で手形で金借りるんですよ。そして、その金で、また期限が来るとジャンプするんですよ。一般の零細企業がやっているこの手形のジャンプと同じ感覚でいいんですかね、ちょっとまずそれを聞きたかったんですが。河村公述人
  40. 河村小百合

    公述人河村小百合君) はい、同じ感覚でいいと思いますし、私がちょっといろいろメディアの方とかとお話ししているときには、これは何か金利がゼロに近いリボ払いねということをおっしゃった方がいて、もうまさにそうかなと思っております。
  41. 大島九州男

    大島九州男君 ありがとうございます。  ということはですね、そういう会社は早晩もう立ち行かなくなって潰れていくんですよ。まさにそういうことを国がやっているという、そういうことでいいですかね。
  42. 河村小百合

    公述人河村小百合君) はい、そういうことだというふうに思います。
  43. 大島九州男

    大島九州男君 それは大変な危機ですよね。  だから、そういうことをもっともっとやっぱり国民に知らせていかなくてはならないし、そういう経済政策が行われているのに、片やこっちは景気が良くて非常にいいんだということを政府が言うというのは、ちょっとこれはおかしいと思いませんか。
  44. 河村小百合

    公述人河村小百合君) そうですね。やはり景気経済情勢についてはいろいろな見方を踏まえながら客観的に言っていく方がいいんじゃないのかなというふうには思っております。
  45. 大島九州男

    大島九州男君 そういうことでいうと、やはり、今度消費増税をしますということで、じゃ、その二%の増税分が例えば、消費税というのは目的税ですから、まさしく年金ですとか医療ですとか、そういうところにしっかりと充たりますよというんだったら少しは国民も納得できる部分もあるかもしれないけれども、いろんな形で、ポイント還元とかいっていろいろやっていますよね。臨時特別の措置が二兆二百八十億円と、その半分以上が防災・減災、国土強靱化。これはこれでいいかもしれませんけれども、その他ポイント還元、プレミアム付き商品券という、そういう施策がありますけど、これは必要だと思われますか。
  46. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 実際にその政策によって恩恵を受ける人の広さを考えると、必ずしも本当に対策を打つことが必要な人たちだけに焦点が当たるものにはなっていないんじゃないかなと。何か、本当はそんなことしなくてもいいようないわゆるお金持ちが随分得するようなことになってしまうんじゃないか。やっぱり、それだけのいろんな覚悟、負担をして消費増税するんだったら、きちんと財政再建に回す分を取っていただきたいと私は思っております。
  47. 大島九州男

    大島九州男君 川口公述人も、学校で学生さんなんかを教えているわけですよね。  そうすると、そういう消費税分が学生の教育費の負担に係るとかいろんな部分に回るということであれば、学生もいいよねと。それで、二十歳から国民健康保険、一万六千円ぐらい払うわけですよね。そういう部分が少しでも何か負担が軽減されるというところに消費税が回っていくとかいうのであれば、何か学生も仕方がないかなと思うんだろうと思うんですけど、今の学生はそこら辺、消費税とかに対してはどんな意識をお持ちだと思います。
  48. 川口大司

    公述人川口大司君) 学生が消費税に対してどういう意見を持っているかというのはちょっとよく分からない部分があるんですけれども、今、河村公述人からも御意見あったように、誰が困っている人なのかというのを的確に判断して対策をしていくことというのは重要だと思うんですね。  それで、学生というのは必ずしも低所得の世帯から来ているとは限りませんので、低所得の学生には手厚く補助を出すと、一方で、豊かな家庭から来ている学生に関してはしっかり学費を取るといったような、そのバックグラウンドに応じた対応というのを丁寧に行っていくことが必要かなというふうに思っております。
  49. 大島九州男

    大島九州男君 私どももいろんな質問を受けるんですね。こんな一千兆円にも上る借金があって、これどうして返していくんですかと言われるんですが、さっきおっしゃったように、ゼロ金利政策で公債返済する利払いが本当に低く抑えられているからやっているんだ、まさしくそのとおりで、中小企業も、今お金借りている金利が安い金利でやっていますから、これ金利上げたら中小企業も潰れちゃうんですよ。で、国も潰れちゃうと。そうすると、この金融政策の出口はどこにあるんでしょうか。河村公述人
  50. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 金利上昇の影響いろいろあると思いますけど、そんなにストレートに効かないようなしっかりした中小企業さんもたくさんおありなんじゃないかなと私は思っておりますけれども。  そこから逃げ続けている限りは出口はないんじゃないのか。出口というか、望まない形で、先ほどからちょっと申し上げますけど、資金流出がもう始まってしまって、いろんなリスク要因で、もうリスクは結局今日銀に全部集中しているような感じですので、怖い話はたくさんありますよね。地方の金融機関はマイナス金利で痛め付けられて大変なことになっているとか。株だって分からないですよね。海外市場の影響もありますし、日銀だって、何かTOPIXが一三五〇損益分岐点とかと言っているんだから、それが、含み損がどんどん拡大していくとか。あと資金流出、先ほど経常収支をお見せしましたけど、それが始まったりなんかしたらどうなるのかということを考えると、やっぱりそこに大きなリスクがあるんじゃないのかなというふうに思います。
  51. 大島九州男

    大島九州男君 やはりどこかで区切りを付けないといけないと。だから、私たちは過去のいろんなものを引きずっている。よく私、因縁の始末と言うんですけど、どこかでその始末をやらなきゃならないと。それを先送り先送りにしていっているという状況が今ずっと続いている中で、我々は景気がいいんだ景気がいいんだというところにちょっと麻痺をしているような状況に陥っているわけですよね。  今後、この消費税が一〇%から、じゃ、どうなっていくのと。下がっていくことはないでしょう、多分上がっていくんでしょう。そうすると、その上がっていくことに対して理解を得られるような政策にはなりませんよね。というのは、無駄遣いやめろと、消費税上げるんだったらここの財源やめろという話、必ず出てくるんですよね。だから、本来消費税のあるべき姿というのは、まさしく年金、医療、介護、そして少子化対策に充てるというふうに言っている、目的税になっているにもかかわらず、そうなっていないと。国民は意識がないわけですよ。  だから、そういう意味において、国民が、そういった目的税の見える化になっていて、ああ、自分が貯蓄がなくても将来の医療は安心だと、年金もちゃんと掛けていればきっちりと給付がもらえて生活ができるんだと、貯蓄なくても不安ゼロだとかいうぐらいのものにならない限りは、消費税の理解は得られないと思うんですね。  河村公述人に、今このような状況の中において消費税を十月に上げるというのは、国民にとって余り理解を得られていないんじゃないかと思うんですが、そこら辺どう思われますか。
  52. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 世の中全体で理解が得られているかどうかは、ちょっとなかなか分からないところもあると思いますが、そこは粘り強く説明していくしかないんじゃないかなというふうに思います。  理解を得るための方法として、先生が今おっしゃった、自分にメリットが返ってくるから消費増税というロジックをいろいろな場で、財務省とかも含めて使ってきたわけですよね。だけど、それだけじゃないんですよね。そうやってやるから、どんどんどんどん過去やった、もう要するに、いろんな負担議論が決着が付かなくて全部借金ツケ回しで来たけど、借金がこんなに膨らんでいるのにそれを一体誰が返すのかという議論ができていないことが問題で、そこから逃げ続けている限り、もう何か国民も、本当にこの国の国民ってもうシチズンシップがなくて見返りばっかり好きなんですよね。自分は払いたくないけど見返りは欲しい、無責任な国民だというふうに思いますよね。  そこはやっぱり先生方からしっかりとこの国の厳しい財政事情を御説明いただいて、そのリスクは今、全部事実上日銀に行って大変なことになるよということをやっぱり言っていただく方向でお願いできたら有り難いかなと思います。
  53. 大島九州男

    大島九州男君 まさしくそのとおりで、我々がそういう説明責任がある。そのトップは、やっぱり内閣、総理だと思うんですよ。だから、総理が景気がいい景気がいいとか言うから、じゃ、景気がいいなら消費税上げなくていいじゃないのと、景気がいいんだったらそういう大企業からもらえばいいじゃないのというふうに思っている国民は多いと思うんですよ。  だから、本当に今の日銀の状況だとかいうことをきっちり政府が説明すべきだと思いますが、先生、どう思われますか。
  54. 河村小百合

    公述人河村小百合君) はい、おっしゃるとおりだと思います。全部中央銀行任せではいけないと思います。
  55. 大島九州男

    大島九州男君 ありがとうございます。  本当、今日、私勉強させていただいたのは借換債ね、まさに手形のジャンプをしている中小零細企業と同じような状況で今国が運営されているんだということを少し認識をさせていただきましたので、今後我々もしっかり頑張りたいと思います。  今日はありがとうございました。
  56. 高瀬弘美

    高瀬弘美君 公明党の高瀬弘美です。  今日は、川口公述人、また河村公述人、大変分かりやすい御説明をいただきまして、ありがとうございました。  私の方から、まず川口公述人にお聞きをしたいと思います。  本日のお話も本当に分かりやすく、様々なバイアスを取り除いていくことが必要だという点、御指摘、本当に受け止めたいというふうに思っておりますけれども、先生は労働経済学の御専門であられますので、今日の公聴会の前に、私の方でも様々先生のこれまでの書かれてきたものを拝見させていただきました。  その中で、先生、働き方改革、同一労働同一賃金の実現に向けた検討会の中で様々な雇用データの分析をされてこられたというところがございまして、非正規、正規のところのデータ分析をされてきたと。この正規、非正規というこの賃金格差の問題を見るときには、賃金だけを見るのではなくて、勤続年数をしっかりと見ていったときに異なる結果が出てきたというようなところがございました。  私も、肌感覚としまして、やっぱりこの正規、非正規の問題を考えますときに、非正規の方というのはどうしても短期での雇用形態となっていきますので勤続年数が低くなってくると。この勤続年数をしっかりとやっぱり延ばしていくということが大事なのかなというふうに思うんですけれども、この点、先生のお考えを冒頭に聞かせていただきたいと思います。
  57. 川口大司

    公述人川口大司君) どうもありがとうございます。書いたものを読んでいただいてありがとうございます。  やっぱり、今言われている正規、非正規の格差ですね、賃金格差以上に雇用の安定性の格差というのが大きいという点は御指摘のとおりだと思います。実際に、二〇〇八年の金融危機の後の雇用調整の状況などを見てみますと、派遣労働者の方を中心としたいわゆる非正規の方々の雇用調整が激しく行われたということが分かっておりまして、ここの部分、二重構造のようになっている部分というのを解消していくような取組というのは、今、政府はやっているとは思うんですけれども、それをより一層力強く進めていくことが必要かなというふうに思います。
  58. 高瀬弘美

    高瀬弘美君 ありがとうございます。  この同一労働同一賃金の問題を考えますときに、また非正規の問題を考えますときに、私、常に念頭にありますのは、やっぱり若い方の雇用の問題という、これを解決していかないことには、今日のトピックでもございます財政の健全化ですとかそういう問題も解決していかないというふうに考えております。先ほど先生から雇用の安定性というところございましたけれども、やはり今の若い方というのは非正規の割合大変高くなってきていると思いますし、やっぱり次の世代の雇用の安定性というのをしっかりつくっていかなければ今後の日本はないというふうに考えております。  この点、先生の御知見の中でどういうふうにお考えか、また政府としてできること、ここを教えていただければと思います。
  59. 川口大司

    公述人川口大司君) 雇用の安定性、非常に大切で、難しいのは、雇用の安定性というものを一つの会社、一つの職場で保っていくのか、社会全体で保っていくのかという、そういう視点でもあるとは思うんですね。  一つの職場での雇用が切れてしまったけれども次の職場がすぐに探せる、あるいはその探すまでの期間に関して安心した生活が送れるという、こういう社会保障の制度がしっかりとしているということがあれば、職場は替わっていくんだけれども所得のフローとしては将来が見越せるというようなことというのを考える必要があって、その点を考えますと、日本の雇用保障というのはどうしても一つの会社が雇用保障するんだという形で形成されてきている部分が多いですので、やはり例えば失業保険の給付の期間とかが国際的に見ると短い形で設定されているんですね。ですので、その雇用の流動化というものを前提とした社会保障というものを考えていくことが必要なのかなというふうに思います。
  60. 高瀬弘美

    高瀬弘美君 ありがとうございます。  私、この労働経済の問題は大変重要なところだと思っておりまして、先生にお聞きしたいこと様々ありますけれども、ここで一旦河村公述人に、質問に変えさせていただきたいと思います。  今日、財政健全化のお話ございました。もうお話を伺いながら、もう全くそのとおりだなと、大変共感をしながら聞かせていただきましたけれども、やはりこの財政健全化を考えますときに、今、少子高齢化が進んでいく中で、また先ほど来、公述人がおっしゃっておられますように、国民の皆様は全世代型の社会保障を望まれていると。このバランスをやっぱりどういうふうに取っていくのかという点が一番政府としてもこれから考えていかないといけないところですけれども、この点につきまして、先生のお考え、お聞かせいただければと思います。
  61. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 全世代型社会保障ということでいろいろお取り組みされていますけど、個人的には、あそこに教育の分野が入ってしまうのはちょっとどうかなということを思っております。  それで、何でもやっぱり政府掛かりでというのは、この国の厳しい財政事情を考えればやっぱり限界があるんじゃないのか。ですから、真にやっぱり手を差し伸べることが必要な人々にはきちんと手を差し伸べる枠組みをつくるとして、やっぱり幼児教育の無償化だって、一体誰が得するのという話もありますよね。あんなことよりも先に保育園全入が先じゃないかという話だってありますよね。そういう議論聞いていますと、やはりちょっと向いている方向ということを少しよく考えて再検討していった方がいいのではないのかなというふうに思います。  やっぱり国民の側というのは、先ほど来申し上げていますけど、とにかく見返りが好きなんですね、この国の国民。それに何かもう乗じるような形でやっていくと、こうやって幾らやっても、本当に幾らお金があっても足りないというふうな感じになってしまいますので、やはりそれぞれのいろんな政策運営の性質を考えて、どれについてはどれだけ自己負担をしてもらって、どういう所得階層の人にはどういう自己負担をしてもらいながら、真に手を差し伸べることが必要な方々には手を差し伸べられるようにしていくのがいいのかということを、やはりきちんと政策の整合性というのを取って考えていくことが必要なんじゃないかなというふうに思っております。
  62. 高瀬弘美

    高瀬弘美君 ありがとうございます。  引き続き河村公述人にお伺いしたいんですけれども、財政健全化をやっていくに当たっては、やっぱり個人消費をしっかりと上げていくということが大事だと思います。ここは政府としても様々手を打ってきているところですけれども、なかなか個人消費伸びないというところで、この点についてはいかがお考えでしょうか。
  63. 河村小百合

    公述人河村小百合君) いろいろ各年代ごとの置かれている状況とかというのを見ると、この状況で個人消費全体伸びろと言っても無理なんじゃないかなと思うところがありますよね。ですから、先ほど雇用のお話がいろいろ出ていますけれども、非正規の問題、特に年代によっては結構な割合でそういう方がいらっしゃるところもあります。  この国は、失業率はよその国に比べればすごく低いですよね。ですから、形態を非正規みたいな形にして、雇用は維持するから、失業率は相対的には低いけれども、やはりそういう形で使ってもらったときに個々の労働者が得られる所得というのが限界があると。それこそ、そういう方々がこれから先、年を取ってくることになれば、厚生年金どれだけもらえるのかとかということにもなるでしょうし、退職金が、正社員だったら退職金が出るところがどうなのかという問題もあるでしょうし、まあそこまで行かなくても、今の段階でも、どういう経済状況に置かれているのかということを考えると、これで個人消費がというふうに言われても、なかなかそうはいかないような世代もあるんではないのかなというふうに思っています。  ですので、社会構造もそして多様化していますし、公明党でいろんな状況を御存じだと思いますけれども、一人親の家庭が増えているとか、それは昔に比べるとなかなかなかったような社会構造の変化も起こっていて、経済って正直なんですよね、本当に。全体として消費がどうとか経済成長がどうというのは、その国のいろんな人たちがいろんな立場で力を出すような枠組みが回っているのかというのが正直に出ちゃうというふうに私は思っています。この国の枠組みというのは、申し訳ないけれども、ちょっとそうにはまだなっていないんじゃないのか。  それで、日本人って割と文句を言わないというか、黄色いベストを着てデモしたりとかしないですよね。みんなじっと我慢しているところがあるんですよね。それをやっぱりきちんと政治の方で気が付いていただいて、いろんな立場、いろんな家庭状況にある方、いろんな雇用の状況にある方にとってもきちんとそれなりに明るい展望が開けてという形に是非ともその社会の枠組みを変えていただきたいということを是非先生にお願いしたいと思います。
  64. 高瀬弘美

    高瀬弘美君 大変にありがとうございます。  今日、河村公述人からいただいたお話の中で、私もへえと思いながら聞かせていただきましたのが、いただいた資料二十四ページのところに、透明性の確保というところで、様々なシナリオの提示がされているという例が、BOEの例が御提示がありましたけれども、これが日本においてできていない理由といいますか、なぜこういうことが進まないのか、どういうところにその原因があるとお考えか、教えていただければと思います。
  65. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 当事者である中央銀行日銀の側に、こういうことをきちんと誠実に国民に説明しなければいけないという認識が余りにも欠けているんじゃないかなというふうに私は思っています。  ですから、それは今までもう国会でいろんな先生方がいろんな質問とかでさんざん言ってきてくださっていることだろうとは思うんですけど、是非、私たち国民代表先生方なので、是非もっといっぱい言っていただけたらというふうに思います。
  66. 高瀬弘美

    高瀬弘美君 ありがとうございます。御意見しっかりと受け止めたいというふうに思います。  それでは、川口公述人に続きの質問をさせていただきたいと思いますけれども、私、川口公述人の書かれたものを読む中で、女性とか高齢者の労働参加によって、経済学で言うところのルイスの転換点が遠のいているのではないかというようなお話がございました。これ、今、国の方で外国人労働者の受入れ拡大、人材の受入れ拡大という話をしておりますけれども、それを行いますと更にそれが遠のいてしまい、結局給与の上昇というのがなかなか起こりにくいのではないかと、そういう論点もあるのかなと思いながら読ませていただきましたけれども。  この点、外国人労働の受入れは、私も福岡が選挙区でございますけれども、地方に行けば行くほどもう人材不足というのは本当に深刻な問題でございますので、受入れはやらざるを得ない、その中でいかに賃金を上げていくのか、これが今私どもが解決しなければいけないところですけれども、この点、御意見いただきたいと思います。
  67. 川口大司

    公述人川口大司君) ルイスの転換点のお話、御紹介いただいたんですけれども、基本的に労働供給が増えれば賃金上昇が抑圧されるという話でございまして、外国人労働者が日本に来るというのは供給増加の要因ということになりますので、本質的には賃金を上げるのがとどめられるような方向で力が働いてしまうということはあるんだと思います。  ただ、世界各国で外国人労働者と国内労働者の賃金の間の関係というものの研究が進んでおりまして、多くの研究が示しているのは、外国人労働者の方がされる仕事と国内労働者の方がされる仕事というのは違っていて、必ずしも外国人労働者が増えたことが国内労働者の賃金を下げることにはつながらない、あるい失業率を上げることにはつながらないという研究が多数ございまして、日本でも外国人労働者の方がされていく仕事というのはかなり、日本人のまさに人手不足の部分に入っていくということで、日本人の賃金に対しての影響というのは限定的なのかなというふうには予想しております。
  68. 高瀬弘美

    高瀬弘美君 ありがとうございました。  以上で終わります。
  69. 藤巻健史

    藤巻健史君 日本維新の会の藤巻です。よろしくお願いいたします。  申し訳ないんですが、全て河村公述人にお願いしたいと思います。申し訳ありません。  まず、日銀のバランスシートですけれども、公述人は先ほど保有国債、〇・五%以下だというふうにおっしゃっていましたが、私の理解だとたしか、記憶だと〇・二七九%、前年度はですね、収入が約一兆三千億ぐらい。公述人がおっしゃったように、ほとんどの国債、長期国債ですから、すぐに、金利日銀金利を上げていっても、保有国債、利回り変わりませんから、収入は上がらないと。一方、日銀当座預金、公述人おっしゃったように三百九十兆円あるということで、日銀金利を引き上げざるを得ないときは一%当たり三・九兆円上がっていくと。引当金とか準備金が八・二兆円ぐらいですから、すぐに債務超過に陥ってしまうんじゃないかと私は思うんですが、公述人、いかがでしょうか。
  70. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 金利を引き上げなきゃいけない局面に陥れば、もう藤巻先生おっしゃったとおりになるというふうに思います。金利引上げだけで済むかどうか、そのときの株式市場がどうか、いろいろ大変なことはたくさんおありなんじゃないかなと思います。
  71. 藤巻健史

    藤巻健史君 債務超過になった場合、国は他国の例を参考にして補填しなくてはいけないというふうにおっしゃっていましたですよね。そうすると、イギリスなんかはシニョリッジを、通貨発行益をためておいていざというときに使うというふうにおっしゃいましたけれども、日本はないわけですよね。そうすると、その補填する財源はどこにあるんでしょうか。
  72. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 出すとすれば、もう一般会計から出すしかないですよね。どうするんでしょうね、増税するんですかね。イギリスだってさすがにそれはできないと。金融危機の後に量的緩和をやって、今度、後始末をするときに、増税はできないから、だから利益が得られるうちにちゃんと、いわゆる一般会計の方に繰り入れて、国債残高を減らす形で余力をつくっておこうということでやっていますので、まあそういうふうに考えるのが本当は責任ある政府とそれから中央銀行の政策運営なんじゃないかなというふうに思います。
  73. 藤巻健史

    藤巻健史君 今増税したところで、今年の予算でいうと三十二兆円の赤字なわけで、それ以上にない限り、日銀が自分の赤字を補填するために財政ファイナンスをしてやると、何が何だか分からないことになっちゃいますね。物すごい増税が必要だという理解ですね、そうするとね。
  74. 河村小百合

    公述人河村小百合君) はい、おっしゃるとおりだと思います。  だから、今の感覚からすると、まあいいじゃん、何か日銀が赤字になったんだったら、そこを穴埋めするために国債を出せばいいじゃないか、それを日銀に引き受けさせればいいじゃないかというふうにもしかしたら思われる方がいらっしゃるかもしれないんですけど、多分その時点から変わると思うんですね。  日銀の債務超過が問題になった、もう円の信認に響くと、資金流出が起こっちゃうかもしれないというふうになったときに、その日銀が赤字になる、債務超過になる幅は、日銀のバランスシートが大きければ大きいほど、もうごく単純ですよね、大きければ大きいほど大きくなるわけですよ。その段階で日銀国債を引き受けさせて、買わせて、赤字を補填するお金を政府が捻出するという手は、その段階で少なくとも初めて取れなくなるんですよね。そうすると、本当に増税できるか、そんなことまでして、国民がそんなこと、その段階になって初めて言われて、聞いていない、後出しの請求書もいいところですよね。そんなことが果たして許されるのかしらというふうに思います。
  75. 藤巻健史

    藤巻健史君 増税の問題もどうかという話もあるんですけれども、私は元々マーケット出身の人間で、マーケットがどういう判断をするかなと、これこそ大変なことかなと思うんですよね。  中央銀行が債務超過になったケースというのは、最近ではスイス・ナショナル・バンクがあると思うんですけれども、あれは、スイス・フランが強くなり過ぎたのでそれを抑えたいということで、スイス・フラン売りのユーロ買いをした。だけど、勢いが止まらずにユーロの値段がどんどんどんどん下がっていっちゃったから、スイス・ナショナル・バンクは債務超過になった。  しかし、その時点で、もしそれがゆえに自国通貨が、要するにスイス・フランが安くなるならば、またユーロが強くなって、資産、債務超過がすぐ解消される。要するに、一時的だと思ったからあのときは大したことなかったと思うんですが、もし債務超過が日本のように起きた場合で一時的でないとなると、マーケットの反応というのはどうなると思われますか。
  76. 河村小百合

    公述人河村小百合君) スイスの例は藤巻先生おっしゃられたとおりで、日本と違うんですね。外貨資産をたくさん持っていますので、為替レートで収益がもうスイングするんですね。すごい赤になる年もあるけど、その次の年にぐっと黒字になるときもあるんですよね。  だから、やっぱり持っている性質、資産の性質が違うと。日本の場合には、もう固定金利の超低いクーポンが付いた国債、それしか日銀がほとんど持っていないような状態、スイスとはやっぱり明らかに違うと思います。スイスはスイスでまたそれで許されるかというと、まああれだけ財政健全な国ですので、政府の側、国民の側からの中央銀行に対する統制は物すごいものがありますよね。ですから、こうスイングする形で進んでいると。  ところが、日本の場合はそうじゃないと。もうこんなに低金利の低クーポンのやつが、しかも、藤巻先生がおっしゃられたとおり、すごい年限が長いんですよね。ですから、それを私も御覧いただきたいと思って、八ページに日銀の開示している国債の保有残高、利付国債残高と残存年数がこれ出ていますけど、どんだけデュレーションが長いか、全体でデュレーション七・六年ですよ。本当にもう全額満期落ちしていったってもう半分にするのに七年掛かるという、まあどう考えたって、どんなに短めに見積もったって正常化の局面というのは十五年とか掛かるだろうな、本当はもっと掛かるだろうな、そんなに長い期間にわたって責任が持てるのかなということになってしまうんではないかなというふうに思います。  マーケットの反応というのは分からないと思いますけど、私は、その段階で、日本財政運営が実は何か、何となくすごくゆっくりだけど財政再建をやっているように見えて、実は根本的な財政再建のところに、できていなかったんだということがあらわになるんじゃないか、それを一番恐れます。  先ほどお見せしたような経常収支の状態ですので、もう国外に逃げていこうとする資金の予備軍なんてうじゃうじゃとあるわけですよね。見方によっては、日銀の当座預金が物すごい、三百何十兆とありますけれども、あれだって今の状態だったらいつでも好きなときに民間銀行引き出せるんですよ。もう資金流出始まったら止まらない。  そういうときは、普通、中央銀行というのは短期金利引上げ誘導するんです。最近でもトルコとかブラジルとかやりましたよね。あれは、ああいう新興国の中央銀行の方がバランスシート健全で、こんな大規模な資産管理はやっていないから、当座預金に利子なんか付けてない時代だったんですね。だけど、そのままその時代が続いているから幾らでも上げられる。日銀もかつてはそうでした。  ですから、資料の中にもちょっと書いたんですけれども、二十八ページのところに書きましたけれども、かつて日銀だって当座預金には利息は付けてなかったんです。それだったらもう必ず中央銀行ってもうかる存在ですよね。だから、今の日本銀行法が一般会計の方から日銀に対して損失補填をする前提の条文がないと思いますが、それはあながちおかしいことでも何でもないと思うんですね。  ところが、やっぱりルビコン川を渡ったのは、バランスシートをこれだけ大きくした、当座預金に付利をしなきゃいけなくなった。で、日銀だけじゃないですよ、FEDもそうです、イングランド銀行もそうです。だけど、そういう銀行、もっとほかのスウェーデンとかそういうところもみんな含めて、だからこそもう無限に増やすことなんかできないわけですよ。  その結果が、この中でお見せした各国の、十五ページのところで各中央銀行の資産規模の推移をお見せしましたけれど、バランスシートを膨らませても一定のレベルで抑えている、きちんと後戻りできる責任ある金融政策が今後もできるところに抑えているというのが事実じゃないかなと思います。  ですから、マーケットの反応はなかなか分かりませんけど、財政運営の方のぼろが出てしまって資金流出が始まると、もう日銀多分金利上げられないですよね。そんなに簡単にみんなが増税に応じるとも思えないし、まあそうなると多分資本移動規制を掛けなきゃいけなくなるんじゃないか、それはこの日本経済にとって非常に恐ろしい事態じゃないかな、成長戦略どころじゃないですよね、と思います。
  77. 藤巻健史

    藤巻健史君 私、おっしゃるように、大変なことが起こって円が暴落する、円が暴落するということはハイパーインフレだということだと思うんですけれども、円が暴落してハイパーインフレになる可能性というのはどう思いますか。
  78. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 暴落というか、多分、そこまで行く前に多分固定で止めて、資本移動規制掛けて止めると思います。そうじゃないかなというふうに思います。  だから、ハイパーまでインフレは進むと思います。だけど、まあ何を、何%からがハイパーか分かりませんけど、ハイパーまで行くかどうかは分かりませんけど、まあ相当な高いインフレになるんじゃないかなとは思います。
  79. 藤巻健史

    藤巻健史君 資本規制を掛けた国だと、資本規制を掛けるということは、要するにもう通貨が存在しないわけで、通貨が存在しないということであって、もうそれこそ外国との貿易ができないに等しいですから、物すごいハイパーインフレになっちゃうんじゃないかと思いますけれども、いかがですか。
  80. 河村小百合

    公述人河村小百合君) そうですね。国内にお金これだけ、だって三百、四百兆ぐらいの過剰流動性が供給済みなわけですから、そのときにもうみんなが、今なら黙って日銀に預けているかもしれないけど、もう出しちゃえということになるでしょうから、まあ場合によっては、先生がおっしゃるようにハイパーインフレ、国内で進むようなこともあるかもしれないと思います。
  81. 藤巻健史

    藤巻健史君 もし、ハイパーインフレに万が一なった国ですね、歴史的に幾つかあると思うんですけれども、大体どういう方法でその通貨の信用と中央銀行の信用を回復したんでしょうか。
  82. 河村小百合

    公述人河村小百合君) もう、多分、だからもう資本移動規制掛けて、とにかく国内でやるしかないですよね。  それで、非常に悲惨なことですけれども、日本なんかは財政も非常に悪いわけですね。中央銀行が過剰なリスクテークをしているだけじゃなくて、財政も悪いと。そうすると、その資本移動規制をリフトオフというか、要するに解除できるようになるまでには、この先ほどの借換債まみれの物すごい借金残高の状況を国内の自助努力で解決してやるまで恐らくその資本移動規制の解除ということはできなくなるんじゃないか。  で、実際にそういうふうになった国って、リーマン・ショックの後、先進国であるんですよ。アイスランドなんかそうですしね、キプロスとかギリシャもそうです。もうアイスランドなんか八年間も資本移動規制掛けて、だから本当にみんな困窮しますよね。島国なのに、もう海外に出ていっちゃった人もたくさんいるし。さっきの話じゃないですけど、そうなる前に出ていこうと思っている日本の企業の方もおられるような話を聞くこともなくはないです。
  83. 藤巻健史

    藤巻健史君 私は、べき論からして、ここまで財政赤字が大きくなってしまった場合には、やっぱり大増税しかないと思うんですよ。その大増税という意味では、インフレ税、それもハイパーインフレ税だろうと思うんですが、いかがでしょう。
  84. 河村小百合

    公述人河村小百合君) ある程度はそういうのに頼らなきゃいけないところがあると思うんですけれども、やっぱりインフレというのが一番怖いのは、本当に誰彼なしに物すごい影響が行くんですよね。インフレ税の怖いところは、一番経済的に弱い人に物すごく重い負担が掛かることじゃないかなというふうに思います。  ですから、やっぱり何とかして立ち直っていくようにするためには、インフレに頼る手合いというのはなるべく落として、もうやっぱり先進国なんだからきちんと合理的に考えて、誰がどれだけずつ負担するのがいいのかということをきちんと議論していくことが私は必要だと思います。
  85. 藤巻健史

    藤巻健史君 時間がないので、最後に一言だけ、いいか悪いかだけ教えていただきたいんです。  統合政府論というのがありますけれども、公述人はあれはどう思いますか。駄目か、納得いくか、それだけで結構でございます、時間がないので。
  86. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 全然納得いかないというか、お話にならないと思います。
  87. 藤巻健史

    藤巻健史君 ありがとうございました。
  88. 辰巳孝太郎

    辰巳孝太郎君 日本共産党の辰巳孝太郎でございます。  お二人の公述人の皆さん、お忙しいところ、本当にありがとうございます。  まず、お二人に統計不正についてお聞きをしたいと思うんですけれども、二〇〇四年から厚生労働省の毎月賃金統計が不正にされていたという問題であります。それと同時、それももちろんけしからぬわけなんですが、同時に、昨年、二〇一八年の一月の毎月勤労統計から上振れをしたと。その要因が四つあって、一つは御承知のとおり、東京の大企業について、元々過小評価されていたものを戻した、復元をして、それをこっそりやったということが一つ。復元処理をしたと。サンプル企業を全部入替えから部分入替えにしたということ。それに伴って、遡りの補正をやめて、ベンチマークの更新ですね、これは平成二十六年の経済センサス、労働人口を調べてもう一回やり直すということなんですが、それの更新と遡り補正をやめたと。常用労働者から日雇労働者を外したということなんですが。  そもそも、お二人は経済研究されている方ですから、統計というものは皆さんが様々な論証をされたりとか推論を立てられる際の基本となるものだと思うんですが、お二人に今回のこの不正の受け止めを是非お聞かせいただければと思います。
  89. 川口大司

    公述人川口大司君) 今回のその問題は大変残念に思っております。私自身統計を使って多数の研究を行ってまいりましたので、その部分が揺らぐというのは非常に懸念をしております。  それで、それに関しては、統計委員会でその不正の検証委員会というのが立ち上がっておりまして、どの程度ほかの統計影響が及んでいるのかということを検証するということ、作業が行われていて、いろいろな問題が指摘されていますけれども、本質的に数字そのものが変わってしまうような問題というのはそれほど多数は発見されていないという状態だというふうに思います。  それで、今御指摘があった、ウエートを元に戻すですとか、あるいサンプルの入替えの方法を変えたということですね。このタイミングの問題はあったとは思いますけれども、基本的には正しい方向にその改革をしたということの結果だというふうに受け止めております。
  90. 河村小百合

    公述人河村小百合君) いろんな経緯があったんだろうなと思って統計の問題を見ていますけれども、ただ、この国でここのところ、これに限らず、その前は財務省の改ざんの話だってあったわけですよね。ああいうのを見ていると、何か余り公務員全体として一くくりにするのは非常に、私もいろいろ、本当に誠心誠意やっていらっしゃる方も知っているので言いにくいんですけど、本当に思うのは、公僕としての使命感というか、そういうものが随分落ちてきちゃっているんじゃないのかなというふうに思いますね。  やっぱり数字を曲げるとかということは本当はあってはいけないことであって、それがでもできちゃう、何か組織の論理が優先して、要するに出世をちらつかされちゃうと何でもできちゃう、それがこの国の公僕なのかなと、非常にやっぱり残念に思います。
  91. 辰巳孝太郎

    辰巳孝太郎君 ありがとうございました。  本当に公僕の在り方が私も問われていると思っておりまして、あの森友事件でも公文書に関わった人たちが処分をほとんど受けていないと、まともな処分を受けていないということでいえば、非常に国の在り方として大きい問題だと思っています。  河村公述人にお聞きしたいと思うんですが、今日の資料にも何度か財政ファイナンスという言葉がありますけれども、事実上の財政ファイナンスだと、これはもう誰もがそう思っているわけですよね。ETFも大量に買い入れているということでいえば、これは、今のアベノミクスというのは株が上がったと、こういう話なんですが、今の株高が公的資金によって支えられていると、こう言い切ってもいいということですか。
  92. 河村小百合

    公述人河村小百合君) そうだと思います。昨年度の投資家別の売買動向とかと見ると、海外投資家が五・何兆売り越しているそうですよね。それに見合うところを日銀が六兆、もっとかな、買っていますよね。日銀の六兆の買いがなかったら今頃株式市況はどうなっているかなということを考えれば、もう明らかなんじゃないかなというふうに思います。
  93. 辰巳孝太郎

    辰巳孝太郎君 そこで、いわゆる量的・質的緩和の問題と個人消費の問題をちょっと絡めてお聞きしたいと思うんですけれども、元々、量的・質的緩和の出発点というのは、資金を大量に市場に導入することによってデフレマインドを払拭すると、物を買ってもらうことで物価もつり上げて二%までと、こういう話だと思うんですけれども、それがなかなか二%の物価上昇というところまで至らない、その一つの要因というのが個人消費が伸びないと、こういうことではないかと思うんですね。  なぜ個人消費が伸びないのかと、個人消費が伸びないのかと、思ったように伸びないのかというところの見解を聞かせていただければと思います。
  94. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 個人消費だけではないと思いますね。国全体としての潜在成長率が上がらないから物価を押し上げる力が出てこないのではないのかなというふうに思っています。    〔委員長退席、理事二之湯武史君着席〕  例えば、個人ですね、家計のことを見れば、さっきも申し上げたように、今本当にいろんな家計、多様化しているんですね。いろんな世帯がありますね。そして、いろんな世代がありますよね。本当に、本当にもうバブル崩壊でひどい目に遭ったような、就職氷河期に遭ったようなああいう世代もあれば、あとは平たく社会全体で見れば、さっきも申し上げたような、いろいろ一人親家庭とかだってある。だけど、そういうところに必ずしも公平な税制とかが適用できているかといえばそうでもないし、世の中で認められているか。こんなに少子化になっているのに、そうやって子供を育てている人が私は全然尊重されていないなというふうに思います。  そういうところが、やっぱり結局はその個人消費に回ってくることもあると思いますし、企業セクターもまたしかりだと思います。  これは、ちょっとさっきもお話ししたような大学改革とかとも関係するところがあると思いますけれども、異次元緩和であれだけ円安が進んで、貿易収支がばあっと改善するかなと思ったら、全然しなかったんですよね。輸出数量全然伸びなかったんですよね。ああ、もうこんなに日本の競争力って落ちているのかと。経常収支も、先ほどからグラフお見せしているとおりです。  日本のその企業セクター自体の競争力というのがなかなか上がってこない、潜在成長力が上がらない。だから、それが、いかに日銀が異次元緩和をやったところで物価は上がらない、そういうことなんじゃないかなというふうに私は思っております。
  95. 辰巳孝太郎

    辰巳孝太郎君 私も同世代、私まだ四十二歳ですけれども、最近の民間調査でも、三十代、四十代で貯蓄なしが二三%、五十万円以下が二四%で、半分が五十万円以下の貯蓄しかないということでいえば、なかなかお金使いたくても、個人消費したくてもできないというのが現状なのではないかなというふうにも思っております。  税金の取り方についてお伺いしたいと思うんです。  今、消費税という話もあったんですけれども、一方で、大企業というのは空前の大もうけを上げていると。しかも、労働分配率どうかというふうに見てみますと、働く人にそれが十分に還元されているとは言えない状況ではないかと思っているんですね。四百兆円の内部留保が今積み上がっている状態であるということです。  消費税ということも脇に置いて、税の取り方として、今、例えば法人税というのはずうっと下げられ続けていると。大企業というのは、いわゆるバブルのときよりももうけているにもかかわらず、納める税金というのは低く抑えられている。あるいは、証券優遇税制、欧米並みに三割、いっときの一割からは上がりましたけれども、更に欧米並みに上げていくことも、いわゆるその財政再建という観点から必要ではないかと思うんですけど、そこの意見、お聞かせください。
  96. 河村小百合

    公述人河村小百合君) おっしゃるとおりだと思います。  ただ、法人税の課税はなかなか確かに難しいところがあって、マイナス影響もいろいろ競争力の関係とかありますけれども、やっぱりちょっと考えるべきは、いろんな企業の構造も今変わってきているわけですよね。だから、例えば例のデジタル課税の話題が最近出るようになっていますけれども、新しい分野でビジネスチャンスを見付けて稼いでいる企業がたくさんあるわけですよね。そういうところからどれだけ取れているのかということの、ちょっといろいろ、取るべきところから本当に取れているのかというところの努力がちょっと日本は私は足りないんじゃないかなというふうに思います。  国際的な調和というのもすごく大事だろうとは思うんですけれど、もっと真面目に財政再建に取り組んでいるイギリスだとかフランスとかは、もうそんなの待っていられないと。日本みたいにぽいぽい借換債出してやるような財政運営やっていないんですよ。そういう国は、やっぱりいろんな産業構造が変わってきたらそれに合うような法人課税をということを言っていますので、そういうことを考えていくのが一つ。  それで、金融所得課税は、もう先生のおっしゃったとおりじゃないかなというふうに思います。ちょっとどうも最近の税制の改正いろいろ見ていると、どうもお金持ちに有利なことばっかりなんじゃないのかなと。やっぱり、これだけ借金がありながら、でも個人資産、貯蓄たくさんあるわけですよね。というのは、負担する能力があるのに税として納めていないで、自分の貯蓄、資産として、金融資産として持っていらっしゃる方たくさんいらっしゃるわけで、それをどう次の世代に公平に引き継いで、国全体として、いろんなことを心配しないで安心して子供たちが暮らしていけるような世の中をつくっていくかというのが大事じゃないかと私は思います。
  97. 辰巳孝太郎

    辰巳孝太郎君 ありがとうございます。  先生の資料でも、日銀の政策そのものがゆがんでいるんじゃないか、あるいは誤っているんじゃないか、こういう観点だと思うんですね、このままでは大変なことになると。  私が関心を寄せたいと思っているのは、その日銀の政策を誰が取らせているのかと、誰が取らせているのかということだと思うんです。イギリスの場合は議会がきちっと、ちゃんと監視をするという話もあったと思うんですが、これはやっぱり日銀の政策とアベノミクス、いわゆる政権が取っている政策というのはもう密接不可分なものだと。つまり、アベノミクスそのものが今の日銀の迷走を招いていると、こういう理解でいいんでしょうか。
  98. 河村小百合

    公述人河村小百合君) はい、やっぱりそういう側面というのはあると思います。  だけど、ここまで、こういう状況になるまでやるということを安倍政権としてお考えになったかどうかというのはちょっと分からないところもあるので、やっぱりきちんと、やっぱり国会の場での議論というのが基本になるんじゃないかなと思いますけど、きちんと議論を是非是非、野党だけじゃなくて与党の先生ももっと言ってくださったらいいんじゃないかなと思うんですけど。国全体が大変なことになったら本当にみんなが困ることになりますので、是非きちんとした議論をして、真っ当な政策運営の方向性に持っていってほしいというふうに思っております。
  99. 辰巳孝太郎

    辰巳孝太郎君 非常に遠慮された言い方だったと思いますけど、アベノミクスがきっかけでこういう量的緩和したということでいえば、アベノミクスが国民にとって悪夢にならないようにしなきゃならないということを述べて、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  100. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 無所属クラブの薬師寺みちよでございます。どうぞよろしくお願いいたします。  まず、川口公述人にお伺いをさせていただきたいと思います。  賃金増加率平均値と、そしてその平均賃金増加率ずれるという今日は御説明をいただいたかと思います。これ、考えてみれば当然のことだとも思うんですけれども、これまでの国会の議論の中でこれを明示的に取り上げられるということはなかったんではないかなと思っております。これを、労働者の実感と近い数字ということになるとどの数字が私どもとして参考になるのか教えていただけませんでしょうか、お願い申し上げます。
  101. 川口大司

    公述人川口大司君) どうもありがとうございます。  やはり、賃金伸びというのを個々人レベルで感じるときというのは、自分の賃金がどれだけ伸びたのかということが一番大切だと思うんですね。それを考えますと、その賃金伸び平均値である、この一番下に挙がっている数字の六%という部分が実際問題としては実感というところにつながっていくのかなというふうに思っております。
  102. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 ありがとうございます。  その数字一つ見ましても、解釈でこれだけ変わってくるのかなということも今日学んだ一つでございますけれども、これを政策として生かしていくときに、やはり誰がどのようなところで、どのような形で私は解釈していくのが適当だと先生お考えなのか教えていただきたいんですけれども、お願い申し上げます。
  103. 川口大司

    公述人川口大司君) この数字をどの程度正確に捉えているかなというところもございまして、その六%という数字が一番この中にある数字の中では大切な数字だと思っているんですけれども、このリクルートワークスが作っている統計ということで、サンプルサイズが限定的で三万人ぐらいしかないと。それで、年収ベースのものから労働時間で割って時間当たり賃金を出しているということで、政府統計賃金構造基本統計調査などに比べると正確性が若干落ちるところというのはあるんですね。  ですので、まず最初に政府統計を、例えば個人賃金が去年のものと今年のもので比べられるような形の賃金統計というのは残念ながら今ないので、そういったものを始めて、実態として個人レベル賃金上昇がどういうふうになっているのかというところを正確に測定すると、そういったところから始めるべきかなというふうに思います。
  104. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 ありがとうございます。  生データにアクセスするというのがですからすごく重要だと私も今日感じたわけでございますけれども、調査結果を自動的にデータベース化される仕組みをつくって誰でも統計解析できるようにするということもこれ一つ重要なものだと思いますけれども、様々な結果がそれによって私はまた生み出されていく可能性もありますので、是非そういう統計につきましても先生の御意見をいただきたいと思います。  私ども、こういう形で今回議論になってとてもいい機会だと思っております。今まで軽視されてきたんではないのかな、だんだん人員も削減され、予算も削減されというところございましたので、その重要性につきまして教えていただけますでしょうか、お願い申し上げます。
  105. 川口大司

    公述人川口大司君) 統計分析というのが時代とともにやはり在り方というのが変わっていまして、昔は集めたデータを表にしてそれでおしまいだったんですけれども、今は生のデータを直接使って電子計算機で計算ができるようになっていますので、個票と言われる生のデータですね、個々人レベルデータ、こういったものを個人情報を暴露しない形で誰でも使えるような状況に持っていくと。  実を言うと、十年ほど前に統計法が改正されて研究者のアクセスというのは改善しているんですけれども、そういう動きをより一層加速して、多くの人が統計の生データが使えるような状態というのにしていくことが大切なのではないかというふうに思います。
  106. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 ありがとうございます。  また、今日のちょっとその統計データとはそれてしまうんですけれども、先生の様々な今までの研究なども見せていただきまして、是非その働き方改革とこの日本経済につきましても御意見をいただきたいと思っております。これから、今年、働き方改革元年として様々な施策をするわけでございますけれども、また、女性というような視点におきましても、働きやすい環境というものが整備されていく可能性がございます。そこにつきまして御意見いただけますか。
  107. 川口大司

    公述人川口大司君) 日本の女性の活躍推進というのは本当に大きな課題で、例えば、私自身研究しているんですけれども、日本の男性と女性の例えば読解力ですとか数理的思考力と、特に読解力なんですけれども、その男女差がほとんどないんですね。ですけれども、その読解力を仕事においてどれだけ使っているかというところを見てみると、女性の技能活用というのは男性に比べて随分と遅れていると。国際的に見ても、その差が、男女差が大きいんですね。ですので、この女性が持っている技能をフルに使えるような、そういう環境整備というのが重要だというふうに思っております。  それで、やはり一度仕事を辞めてしまってもまたスムーズに元の仕事に戻っていけるような仕組みというのがどうしても必要で、そこにはどうしても労働市場の流動化という論点が入ってくるのかなというふうに思います。
  108. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 ありがとうございました。大変勉強になりました。  先生がこれだけ、いわゆる人手不足にもかかわらず、やっぱり賃金が上昇しないということについても様々御意見をいただいているところかと思いますけど、今後しっかりと女性が働ける職場改革が進んでいくことによって、女性のいわゆる賃金の不均衡というような、男女の不均衡ですね、も改正されるというような展望をお持ちだというふうに読んでおりますけれども、その点につきましても御意見いただけますでしょうか、お願い申し上げます。
  109. 川口大司

    公述人川口大司君) 個々人賃金というのは最終的には生産性と比例する形になっておりますので、女性が技能を十分に使って生産性が高まっていけば、その分女性の賃金も上がっていくという形で賃上げにもつながっていくということになっていくことだと思います。
  110. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 ありがとうございました。  では、河村公述人にお伺いさせていただきたいと思います。  先ほど様々な御説明をいただいていた中で、全世代型の社会保障制度についてもちょっと言及があったかと思います。本来であればその増税分というものは借金返済に充てるべきもの、しかし、今回、全世代型の社会保障制度というものに充てられるがために、借金返済に充てられる分というものが減額されてしまいますよねというような、ように私受け止めておりますけれども、ということは、どのような形で、じゃ、私どもというのは社会保障制度の充実というものを図るべきだとお考えなのか教えていただけますでしょうか、お願い申し上げます。
  111. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 社会保障もいろいろ難しくて、何でもとにかく国が給付すればいいやというのではなくて、もう先生よく御案内だと思いますけれども、できるだけ、例えば高齢者とかでもできるだけ自分で働く期間を延ばして、そういう形で国から給付を受けなくても自立してやっていけるような環境を整えようとか、それから、先ほど来先生が何度もおっしゃっている女性なんかの問題だってあると思いますね。やっぱり今の所得税制、配偶者控除とか、やっぱり働くことに対するインセンティブに正直言ってなっていないなというふうに私は思っています。  ですから、そういうところをもっと見直すことによって、いろいろその社会保障を単に国からばらまく、額を増やすというと、結局もうやっていられないということになってしまうと思いますので、そういった意味での、社会保障の効率化というふうに言ってしまうとちょっと薄っぺらくて余り言葉が良くないかなというふうに思うんですけれども、やっぱりどうやってみんながそれぞれ頑張って、国民一人一人が頑張って、この国全体がうまく続けて回っていけるかということを考えていった方がいいんじゃないかなというふうに思っております。
  112. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 ありがとうございます。  私のような昭和の人間にとりまして、しばしば預金金利が五%ぐらいあったので銀行に預金していればお金が増えた、そういう時代を味わっております。その時代がボーナスステージではなかったのかなとも思えるような現在の状況でございますけれども、家計から金利収入等がなくなったこの平成という時代におきまして、財政日銀のバランスシートの状況から金利上昇の余地が残されていないと見えてまいります。本来であれば、金利上昇させる余地が必要なはずだと思うんです。  本来の金利を上下させる十分な余地をつくるために、今後何が必要だと先生はお考えになっていらっしゃるのか教えていただけませんでしょうか、お願い申し上げます。    〔理事二之湯武史君退席、委員長着席〕
  113. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 金利の問題なんですけれど、確かに先生おっしゃるように、昔みたいな高金利はちょっとなりにくいと思いますね。世界的な情勢を見てもそうです。これはいろんな分析がされていますけれども、やっぱり新興経済国家が入ってきたとかそういう影響があって、世界全体としても、成長率も上がらないし、金利も上がらないということがあるというふうに思います。  ただ、このまま未来永劫日銀がゼロ金利とかマイナス金利を引っ張れるかというと、それはなかなか難しいところがあって、その金利も、確かにうんと、先ほど、私も昭和の人間ですから、あの五パーとか七パーとかそういう時代には、そこまでは行かないかもしれませんけど、私が申し上げたいのは、例えば一パーとか二パーとか、そういうことは十分あり得るし、そういうふうにしないと、それこそ資金流出止められないということもあるかもしれないし、それに対応できるのかということがあるんじゃないかなというふうに思います。  金利がそんな極端に上がるというんではなくて、もうちょっと普通の水準に戻っていくためにできることというふうにお尋ねいただいたんですが、もうやっぱり潜在成長力をきちんと上げることに、もう本当に、本当にそこに尽きるんじゃないのかなというふうに思います。健全に、企業もそれから各家計を見ても成長できる国というのは、もう経済成長率というのが自然とやっぱりプラスになってきます、実質になってきますので、そういう国では普通にそれ並みの金利が付くのが普通なんですね。そうすると、物価だって、二パーまで行くかどうかは分からないけど、まあそこそこのプラス、今この国だってそこそこのプラスになっていて、私はこれでもう十分いいんじゃないかと思うんですけれども、そういう状況になるんじゃないか。  ですから、やはり潜在成長力の底上げのところが、やっぱりこの国、昔ながらのやり方を漫然とずるずる引っ張ってやっているようなところがあって、取組が十分じゃないところがあると思いますので、そういうところでみんなで工夫して努力していく余地があるんではないかなと思っております。
  114. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 ありがとうございます。  次に、キャッシュレス社会につきましても質問させていただきたいと思っております。  やはりキャッシュレス自体が経済政策になるというような見方もございますけれども、中央銀行にとりましてキャッシュレスというのはどのような効果があるというふうに、河村公述人、お考えでいらっしゃいますでしょうか、お願い申し上げます。
  115. 河村小百合

    公述人河村小百合君) よく出てくるのは、私は余りそういうのは好きじゃないんですけど、マイナス金利をやったときに、やっぱり現金があるとなかなか足かせになるんですね。何か隣に、立派な経済学者の先生がいらっしゃる隣で申し上げにくいんですけど、そういう金融論とかが御専門の学者の先生方というのはそっちの方を徹底的に追求したいと、そうしたらもうキャッシュレスでやればいいんじゃないかということをおっしゃる先生方がいて、ちょっと私なんかはそれはどうかなと。  キャッシュに元々、いろいろ、本当に本物かどうかは分からないとか、偽の通貨が横行しているような国ではそういうところで使っていく余地もあるかと思いますが、この国はそんなことはなく、現金はみんな安心して使っていて、お年寄りも安心して使えてということですので、それを生かしながら、徐々にキャッシュレスも進んでいくんだろうとは思いますけど、余り無理に進めるような話ではないんじゃないかなというふうに思っております。
  116. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 時間になりましたので終わります。ありがとうございました。
  117. 金子原二郎

    委員長金子原二郎君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人方々に一言御礼を申し上げます。  本日は、有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  速記を止めてください。    〔速記中止〕
  118. 金子原二郎

    委員長金子原二郎君) 速記を起こしてください。     ─────────────
  119. 金子原二郎

    委員長金子原二郎君) それでは、引き続き公述人方々から御意見を伺います。  この際、公述人方々に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。委員会代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日は、平成三十一年度総予算三案につきまして皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、御発言は着席のままで結構です。  それでは、外交・安全保障について、公述人兵庫県立大学理事長公益財団法人ょうご震災記念21世紀研究機構理事長五百旗頭真君及び沖縄国際大学大学院教授前泊博盛君から順次御意見を伺います。  まず、五百旗頭公述人にお願いいたします。五百旗頭公述人
  120. 五百旗頭真

    公述人(五百旗頭真君) どうぞよろしくお願いします。  前泊さんのお姿を見れば大体質問されることも想像付くんですが、私は、外交・安全保障という茫漠としたお話で、十五分何をしゃべったものか、またどんな質問が飛んでくるのか、予測不可能なままで参上いたしましたけれども。  初めに、総合安全保障という概念が大平内閣のブレーン研究会の一つとしてありました。総合安全保障、安全保障というのは、伝統的に、狭義でいえば国防のことですね、外敵から我が国を守ると。だけど、あの七〇年代終わりの段階で、国防だけでは日本の安全保障は十分ではないと。  七三年に石油危機がありました。経済と資源の安全保障ということも劣らず大事で、日本人殺すには武器は要らない、エネルギー止めちゃえばそれまでというので、その面での安全保障も大事だと。同時に、卓見だと思いますが、当時は平穏期だったんですが、大災害、地震からの安全保障、つまり安全保障というのは広く様々な脅威から国と国民を守るということです。その様々な脅威の中で、国防だけじゃなくて経済、エネルギーも、そして大災害も視界に入れたわけですね。これは非常に卓見だったと思います。  今、その広い意味でのそうした安全保障の中で、私が、仕事の面でも元々外交・安全保障が専門的でありましたけれども、同時に、今御紹介いただいたように、ひょうご震災記念21世紀研究機構、神戸地震の結果として生まれたシンクタンクですね。日本には災害いっぱいあります。だけど、災害の後、ミュージアムは時々できるんです、子供たちにも見てもらおうと。だけど、災害に対処するためのシンクタンクができたのは神戸地震だけなんですね。  そう言えば、いや、東京には市政調査会というのが関東大震災の結果生まれただろうと言う人もおられるんですが、正確にはそうじゃなくて、あれは、後藤新平が東京市長のときに、地震の前に東京市長をやっていたんですが、安田財団のお金をもらって、東京というところをしっかりとした帝都にするために研究会をするというので市政調査会をつくったんですけれども、それが関東大震災の後非常に役に立ったし、その復興のときのビジョンを提供した人もその市政調査会のメンバーが多かった。後藤新平内相自身は僅か四か月で失脚するんですけれども、一緒に研究していた人たちが担って東京の復興を成し遂げた。  それはありますが、あの兵庫のそういう震災の結果生まれた研究機構で理事長を務めておりますので、この面の安全保障を非常に大事に思っております。  大災害の時代です。東日本震災がもしこの地震、神戸地震に始まる地震活動期のフィナーレだったらどんなに幸いかと思うんですが、地震学者の誰一人そうは思っておりません。まだひずみがいっぱいたまっていると、この列島には、そしてまだまだ来ると。東日本震災は真ん中であって、これから後半に入るんだと、その後半を熊本地震で再スタートしたと。  私は、神戸地震を経験し、東日本で復興構想会議の議長を仰せ付かり、熊本へ蒲島知事に頼まれて行ったら、そこでも熊本地震が起こるというので、地震男というふうな名をいただいておりますが、その熊本で終わりでもなくて、去年は大阪北部、北海道で起こり、そしてこれから、東京、大阪、京都が全国各地で起こる直下型地震に含まれなければ幸運だと思いますが、その危険性は結構ある。どこもリーチが掛かっている。そして、火山の噴火や集中豪雨を絡めながら南海トラフに行き着いて、ようやくこの地震活動期が終わるというのが大いにあり得るシナリオだと、それに備える必要があると考えます。  こういう時代ですので、今ちょうど皆さんが御検討くださっている、東日本震災の復興庁というのが今終わりを迎え、間もなく迎える、それをどうするかというので、まだ福島を始めいろいろやるべきことがあるからというので延ばそうということを御検討いただいている。それは結構です。そのとおりです。けれども、私に言わせれば、その始末をするのも大事ですが、次にやってくる大災害への備えというのをやることがもっと大事ではないか、そういう意味で、防災復興庁としてこれを継承していくべきだというふうに思います。  私自身経験したところですが、東日本震災が起こって復興庁ができるまでどれだけ掛かったか、御存じですよね。一年掛かったんですよ。大災害が起こっているのに、一年間その担い手の庁がなかったんですよね。いや、後藤新平型の復興院にすべきだ、いや、そんなことをやると省庁とまた重複権限でもめるから、阪神・淡路のときと同じようにスリムな委員会をつくって政府全体で応援した方がいいと、ああだこうだ言って一年掛かった。今度、次なる大災害が起こったら、もう一度また一年掛けてああでもないこうでもないとやるんですか。それは被災列島の国民に対して大変ひどいことじゃないでしょうか。  起こった瞬間から対応できる防災、日本には警察、消防、自衛隊、海上保安庁、そしてDMATまで、分権的な機関はすごく優秀です。世界でも最も能率的です。でも、それぞれがばらばらにやっているんですね。それは、小さな災害ならそれでいいです。だけど、大災害が来たときに、全然手が足りない中で、それぞれが思っているところへ行くということでいいんですか。やはり全体的な対処のプランを持ってやると。そして、事前にそれを考えて、専門的なノウハウをしっかり持ってもらう。  内閣府、防災庁、よく頑張っていらっしゃいますけれども、各省庁から回ってきた人なんですね。兵庫のシンクタンクに来ていただいて話をする。いつも、この度、図らずもとはおっしゃらないですけど、この度こちらの防災担当になりました誰々ですというと名刺交換になるんですね。名刺交換ばっかりしていたんではノウハウの蓄積は難しい。ですから、内閣府防災と復興庁のノウハウを持続的に蓄積し、用意して、次なる災害のときには速やかに動けるように、そういう防災復興庁として是非継続していただきたい。日本国民の安全保障上極めて重要なことだと思いますので、初めにその点を強調させていただきます。  それから、冷戦後の動乱がやはり皆さんの関心であり、これからどうなるかということだと思うんですが、あの米ソ両超大国の対決が心配であった時代が平和な時代だったなと思い返すような冷戦後の動乱状況となり、民族紛争、宗教紛争、地理と歴史の復活と言われますけれども、冷戦期には、米ソ両親分の下で、地域的なお隣の恨みとかいうことでやろうとすると、こら、ごちゃごちゃするなといって抑えられたんですね。それが、両親分がいなくなったために、至る所で地理と歴史が復活する。過去という扉を開いた瞬間から悲劇は避けられないものとなったというのがギリシャ神話のオイディプス王の冒頭の言葉ですが、ユーゴの民族紛争と、親の代には向こうにやられた、祖父の代にはうちがやったというふうな過去の地域的な業ですね、それがよみがえってきたのが冷戦後であると。それが至る所で民族紛争を起こす。  民族、宗教、アジアが冷戦後のテーマになるというふうに京大の野田宣雄教授があるところでおっしゃいましたが、世界的に見れば、民族、宗教、イスラムというのが一層厳しかったですね。  冷戦後の動乱をリードした主体を二つ挙げよと言えば、一つはイスラム過激派であり、もう一つは中国大国化です。これが世界を大きく動かしている。  時間が余りありませんので途中経過は省きますが、イスラム過激派は、九・一一テロなどを行い、いいかげんに収まってくれるという期待むなしく、二〇一〇年代にはISという国家まで呼号して、イスラム国家として聖域を持ったんだと。しかし、これがあだとなりました。これまで人民の海に隠れて、神出鬼没、自爆テロをやっているときにはなかなか捕まえ難かった。しかしながら、国である、地域を持つ、人民を持つということになると反撃を受けるんですね。ヨーロッパから、アメリカから、ロシアから空爆を受けて、イスラミックステートは二〇一六年に凋落に向かったと。彼らの上げ潮を続けてきたのが、明らかに逆流を迎えることになった。  もう一つ、中国の方も、これはトウ小平さんが改革・開放をスタートして、一九八〇年から三十年にわたって平均一〇%の高度成長を続けたんですね。日本も六〇年代には高度成長を続けましたけれども、その倍の期間、猛スピードの高度成長を遂げました。その経済力を土台にして、戦後、日本は、昔、福田ドクトリンと、マニラでの福田赳夫首相のスピーチにあるように、日本経済大国になっても軍事大国にならないという主体的意思を持った日本と違って、中国は、総合国力は両輪があるんだ、経済力と軍事力だというので、経済発展の上に大軍拡を冷戦後のせたんですね。冷戦後、今日まで五十何倍、彼らの発表する国防費だけで五十何倍というすさまじい大軍拡をやっているんです。  持つべきものを持って、安全を図って、でも不用意に使わないということは人間なかなかできません。持ちますと、やはり使いやすくなるものです。中国の場合、それをとりわけ我々に関係する東シナ海、南シナ海の支配拡大という方に振り向けてきたと。二〇〇八年が転機だったと思います。それまではトウ小平さんの遺言である韜光養晦、まだ実力も不十分なのに爪や牙を出して人を脅かすような品のないことはするなと、謙虚に自分の力を蓄えなさいという教えでやってきたんですね。  ところが、北京オリンピックが大成功し、そしてリーマン・ショックで米欧日の先進諸国ががたがたっと来たときに、中国は五兆元というすさまじい財政出動をして、世界経済を支えて、存在感を高めたんですね。それで自信過剰になった中国は、もうトウ小平の遺言を卒業するときが来たと、我々の欲するところ、なすべきことをどんどんやるべきだという議論が二〇〇九年から高まったんですね。  そういう中で、二〇一〇年に中国の漁船が海上保安庁にぶつかるあの事件が起こり、反日暴動が起こり、そして二〇一〇年代、一三年、四年ぐらいから、南シナ海の島々、島嶼を中国が猛烈な勢いで埋め立てて、そこを基地としていくと、そういう動きが高まったわけですね。  当然ながら、これに対する国際的な反発があって、東南アジア諸国は小さな国が多いので中国に面と向かって対決するということは期待できない。しかし、二〇一六年に我が国で伊勢志摩サミット、G7サミットが行われました。安倍首相はそれを主宰して、その中で南シナ海の航行の自由に関する共同声明というのを取りまとめたんですね。これは、G7の国々が、南シナ海は世界の公共財であって、中国が排他独占的に押さえるべきものではないという意味のことを言って、中国にとっては衝撃だったでしょうけれども、日本が生意気なことをすると思ったかもしれませんが、もうアメリカ、ヨーロッパの国々も同意したところですから、それを敵に回すことはいけないというので、むっとしたけれども特に反応は示さなかった。  その後、国際仲裁裁判所がフィリピンの訴えに応えて、南シナ海の島々は全部九段線の内側、中国のものだというのに対して、全く正当性のない議論だと、根拠がないというふうに厳しい判決を下した。これに対して中国も、外交当局者は、あんな紙くずみたいなものと吐き捨てるように言いましたが、やはり非常に気にしたんですね。中国は三戦といって、言論戦、法律戦を含む三つの戦い、これ法律戦と世界の言論戦で要は負けたということですね。  二〇一六年が、そういう意味で、イスラム過激派だけじゃなくて、中国にとっても転機となりまして軌道修正いたします。やはり世界にこんな反発を受けるようなやり方はまずいというので、例えば、スカボロー環礁の基地化ということについては手控えると、そしてドゥテルテ大統領と習近平が話をするというふうにして、少し柔軟性を取り戻して、しかし、中国としては、反発、非難を和らげるということに軌道修正しましたが、長期的に見て百年の屈辱、日本や西欧列強にひどい目に遭わされたその屈辱をはね返して、二十一世紀の半ばに強国となってしっかりと自分の道を行けるようにするんだというこの長期戦略は変わっていないと、習近平さんはそれを非常に中国の夢として大事にしています。  そういう力を持って、しかも、まずいことに九二年の領海法を中国は決めましたが、その中で尖閣諸島も南シナ海の九段線の内側も全部中国の領土であると法律で決めているんですね。つまり、奪い取るという意思を示しているんですね。力を高め、奪い取るという意思を持っている。それに対して、前線にある日本はどう対応するのか。アメリカと中国の対立、その中で日本がどう振る舞うのか、大変難しい。日本自身の防衛も、そして国際関係の厳しくなる、米中がしのぎを削る中で日本がどうするかということについて、我々もう一度しっかりと考える必要があると。そういうときだけに、この公聴会開かれたことに敬意を表しまして、冒頭の発言とさせていただきます。  どうもありがとうございました。
  121. 金子原二郎

    委員長金子原二郎君) ありがとうございました。  次に、前泊公述人にお願いいたします。前泊公述人
  122. 前泊博盛

    公述人(前泊博盛君) 皆さん、おはようございます。  今日、私の方からは、沖縄が問う平時の安保、有事の安保ということで、資料を準備させていただいています。十五分という非常に短い時間ではありますけれども、沖縄が今抱えている問題が、日本のいわゆる主権といった問題、それから民主主義といった問題、そういったものとの関わり、それから安全保障の問題も含めまして、関わる問題が非常に多岐にわたりますので御紹介をしたいと思っています。  一枚、紙を準備させていただきましたけれども、それに関連するデータ資料をファイルでお届けをしてありますので、御参考にしていただければと思っています。  まず、五つのポイント整理をしました。  せんだって、沖縄では県民投票というのが行われました。県民投票というのがなぜ行われたかというと、選挙で示された民意が尊重されないという、そのために、選挙で示されたものは、残念ながら、辺野古のあるいは新基地建設のノーという意見ではないということをこの安倍政権が言うものですから、県民はしようがなくそれを改めてワンイシューで問うということで動いた経緯がありました。  示された結果については、もう御紹介してありますけど、この資料に入れてありますけれども、投票が五二・四八%、そして、その中で反対が七二%という数字になっています。この七二%の中には、実は自民党を支持している人たちですら反対という意見が出ていると、これが四割ほどを占めているということが出口調査でも出ています。  そういう意味では、示された民意が今回、じゃ生かされるのかと思ったら、またこの結果についても無視をするということになってしまっています。ある意味では、この国は本当に民主主義国家なのか、我々、県民あるい国民の一人として、主権者として投票する瞬間までが主権者であって、投票した後は皆さんのような、国会に送り出した皆さんがむしろそれを体現をしていただけなければ、この国の民主主義はもう既に崩壊しているということになってしまうというふうに思っています。  それから、安保の呪縛で失う主権ということを書きました。これは昨年の十二月ですけれども、プーチン大統領がこんな発言をしています。これは資料の中にも入れましたけれども、辺野古の基地建設を見れば日本の主権がどの程度か分かるという話です。これは北方領土問題に関わって出ています資料の七ページに入れましたけれども、地位協定上、第二条で施設・区域の提供義務があると日本は言っています。七ページの一番上に入れました。  その北方領土についても、二島返還が議論をされましたけれども、これが棚上げにされた経緯というのは、実は北方領土を返した場合に米軍基地が置かれるかどうかという可能性について日本側に問うたところ、それは約束できないと、置かれないという約束はできないという発言がありました。これは地位協定の考え方という外務省の機密文書の中にも出ていますけれども、いわゆるそれがこの文章です。一般的に日本が置かないというようなことを約束することはできないということを書かれています。  これに対してプーチン大統領が取り上げています。日本が決められるか、日本がどの程度主権を持っているかが分からない状況の中で、辺野古を見れば分かる、知事が基地拡大に反対をしているが、日本政府は何もできないと、人々が撤去を求めているのに基地が強化される、みんなが反対しているのに計画が進んでいるというふうに言っています。  ロシアですら、まあクリミア半島の話を抜きにしてプーチン大統領にこういう発言されるのもしゃくではありますけれども、こういう発言があるということを踏まえると、辺野古というのは、まさに日本のこの国の民主主義そして主権の問題を問うている問題だというふうに思っています。安全保障上も非常に大きな課題を抱えていると思っています。  それから、二番目の返らない普天間基地。私も新聞記者としてもこの間ずっと取材をしてきましたけれども、残念ながら、もう二十年前に約束をされたSACO合意、これ実現の可能性はないというふうに私は見ています。この辺野古について、返せるかどうかということを、返す自信のある国会議員がいたら手を挙げてほしいと思います。そして、それを本当にアメリカと交渉して返すだけの力を持っている議員の皆さん、残念ながら、私が見る限りではこの国には存在していないと思っています。  それが理由としては、SACO合意を勝ち取ったのはあの橋本総理でした。橋本総理はそのときに、沖縄県が要求した基地の整理縮小、そして全基地返還計画をもって揺さぶりを掛けられて、そのことに対して十一施設の返還をクリントン大統領と交渉して勝ち取ってきています。その後の内閣は、その橋本さんが残した約束すら、財産すら実現できないまま現在に至っています。そして、SACO2、SACO3という形で沖縄の負担軽減に動くような、あるい日本の主権を取り戻すような、あるいは在日米軍基地を減らすような行動を何もしていないということになります。与えられた宿題すらクリアできないような政権しかこれまで続いていないということになります。  ある意味では、県民からは、政府のやるやる詐欺だと、返還詐欺だという指摘まで出ていますね。日米合意といったものが決められても実現されないという一つの象徴的なこととしてSACO合意があるというふうに思っています。一部は若干返還はされてきていますけれども、それを評価するとしても、その象徴である普天間については返す返すといいながら返されていない。  これは二番目にも書きましたけれども、二十年間返還ができず、五年前に仲井眞知事と現安倍政権が約束をしてくれました。世界一最も危険な普天間基地については五年以内に閉鎖しましょうと。その言葉を真に受けて、知事はそのときに辺野古の環境アセスについてゴーサインを出しています。五年たって昨年、まあ今年の二月がその期限になっていました、期限を迎えたときに、本当に返せるのか、閉鎖状態になるのかという、そういう疑問に対して現防衛大臣は何と言ったか。沖縄県民が協力をしないので実現が難しくなっているという発言をしています。  そもそもが、五年前にこの約束をした段階で、アメリカ側からは、建設に十三年も掛かるのに五年で返せるんだったら普天間は要らないということになるじゃないかと、そういう矛盾を指摘していました。その後は、その問題についてはペンディングにされたままずるずると来て、そして五年たったら県民が協力しないという話になっています。  こういう、県民のせいにして約束をほごにしているような状況があります。政権を担う側としては、しっかりと約束を守るという姿勢を示していただかないことには、そしてこの後の普天間が本当に返せるという道筋がしっかりと示せるかどうかというところであります。これを示されずに新しい基地を造るとどうなるかというところをしっかりと見てほしいというふうに思っています。  それから、資料にも入れましたけれども、これは安倍政権が何回も、この普天間基地については世界一危険な基地というふうに発言をしています。そして、繰り返しその危険性を強調することによって、それをどけなければならないと、これ、三ページの方に資料を入れてあります。普天間は世界一危険というふうにおっしゃっていますけれども、今日は蓮舫さんもいらっしゃっていますけれども、なぜ一番なのか、二番ではいけないのかということを問うてほしいと何度もお願いをしましたけれども、普天間基地が世界一危険な基地だとする根拠が何なのかですね、根拠がないままに一番になって、そしてその危険性の除去は辺野古ができなければ無理だというふうに言っています、唯一の解決策。  しかし、この数字を見る限り、これ、三ページの下の方に付けました。復帰後、一九七二年から二〇一七年までの間の数字ですけれども、沖縄で起こっている米軍機の事故は七百三十八件あります。そのうち普天間基地の中で起こっているのは十七件です。そして、もう一つ大きな嘉手納基地では五百八件も起こっています。この数字をもって、普天間が世界一というふうには言えないのではないかと。沖縄では皮肉にも、じゃ、嘉手納は世界一ではなくて宇宙一危険なのかという話が出ています。  こういう疑問に対してしっかりと数字をもって世界一の理由を示さなければ、じゃ、世界で二番目はどこが危険なのか、三番目はどこなのかという議論もしないままに世界一の座を与えて、そして危険な基地だということを印象操作をしているような気がします。そうではなくて、辺野古が本当に必要かどうかという議論も含めて改めて問う必要があるのではないかというふうに思っています。  そして、嘉手納についてはこれほど危険だと。あの宮森小の墜落事故で子供たちがたくさん犠牲になりました。たくさんの事故が起こって最も危険な基地であるはずなのに、それについては議論しない理由は何なのか。この国においては、解決できない問題については先送りをするという、これ、森友学園、加計学園の問題でもありました。我々、国会を見ている限り、この国の政治は、できないことは先送りをする、そしてそれでも解決できないときはなかったことにするというこの国のおきてがあるような気がします。沖縄から見ている限り、そういう国会でいいのかという思いが非常に強くあります。  米軍にとって最も危険な基地、それは恐らく普天間基地、それは万が一何かが起こったときに沖縄の基地返還全体につながりかねないという危険性があるから。しかし、日本や沖縄にとって最も危険な基地は残念ながら嘉手納基地です。その嘉手納の問題に触れないようにしているのは何なのか。日米安保といったもののくびきがそういう問題を回避させているような気がします。  それから、不可能な辺野古の新基地建設ですけれども、これ、県民投票の段階でいろんな話が出てきました。何のための基地建設か。これは、保守の、沖縄の保守政治家が言います、米軍の名を借りた自衛隊基地の建設ではないかと。あるいは、せんだって沖縄の県民投票の際にお呼びしました小川和久さん、軍事アナリストです、日本代表する軍事アナリストですけれども、彼は、普天間の代替機能が欠落している、辺野古を造っても有事の際に五百機の駐機場すらないじゃないか、あんなところは使えない、そういう基地を造っても米軍は受け取らない可能性もあると。じゃ、なぜ強行して造るんだと。これはもう企業と約束をしたので造らざるを得ないんだと、汚職であるとまでストレートに言っています。この根拠が示されないということで報道はされていませんけれども、そういうことも検証する必要があるのではないかというふうに思っています。  それから、辺野古基地そのものの建設の困難さというものも明らかになってきています。  六つほど挙げましたけれども、まず軟弱地盤の問題。これも国会で何度も議論されていますけれども、七万七千本の砂ぐいを水深九十メートルの段階まで打ち込まなければならない、それができるのかという。実際に、日本企業の実績としては七十メートルまであると国会でも言っています。しかし、実績は六十五メートルという話もあります。我々が議論しているのは九十メートルであるにもかかわらず、その話は出てこないんですね。  それから、地盤沈下の可能性についても、これもう政府も認めていますけれども、造った後も地盤沈下がするかもしれないような地域の場所に造られたものをアメリカ軍が引き取って運用するかどうか、これも確認をしておく必要があると思います。  それから、活断層の問題。これ、五百旗頭先生からも指摘がありました。沖縄にも活断層があります。そして、辺野古にも間違いなく活断層があるということを専門家が指摘しているのに、この問題について国会で全く議論されていない。本当に危険なところに基地を造ることが必要なのかどうかというこの辺りもしっかりと議論してほしいと思います。  それから、莫大な建設費が掛かります。砂ぐいも含めて、沖縄県の試算だと二兆五千五百億円です。こんな莫大な金を使う余裕が日本のこの国にもうあるのかという話です。せめて半分でも、あるいは八割でも、アメリカ軍に負担させることができるのかどうか、そういう議論も必要ではないかというふうに思っています。  そして、防衛大臣はこの数字は大げさだと言っていますけれども、安倍首相は答弁の中で、幾ら掛かるかということについては詳細を示すことはできないと答弁をしています。お金が幾ら掛かるかも分からないような基地をどんどん建設をしてこれ国税を使っていくという、税金を払う側からすればふざけるなという話になります。こういった問題もしっかりと議論をしてほしいと思います。  航空法上、周辺の基地ができた場合に高さ制限に引っかかるところはたくさんあります。辺野古弾薬庫ですら、アメリカ軍の施設ですら、弾薬庫、引っかかってきます。それから、近くにできた国立高専も高さ制限に引っかかってきます。この制限に対して何と言っているかと。航空法を地位協定上免除するから大丈夫だという防衛大臣の発言です。国民の安全を守るために作られた航空法を免除することによってしかクリアできないような基地を造ること自体、非常識な話です。何から何を守るための安全保障なのか、国防とは何なのかを問い直してほしいというふうに思っています。  長過ぎる建設期間というのもあります。十三年間掛かります。沖縄県の試算でもこの国の政府の試算でも十年以上掛かります。その間、世界一危険だと言っている、政府が言っている普天間は放置されます。二十年放置された上に、あと十三年間は放置する。  そして、その放置される危険性がどれだけ大変なことかというのがあります。これ、資料をお付けしましたけれども、八ページにあります。米軍普天間飛行場を飛び立ったCH53ヘリコプターが窓枠を小学校のグラウンドに落下させています。これを落下させたときに、危ないからこの上空を飛ばないでくれと日本政府はお願いをしました、米軍に対して。しかし、米軍は聞いてくれませんでした。日本政府ができたのは、この中段にありますシェルターを造ってあげました、学校の中に。二つ造りました。そして、ヘリコプターがお願いをしたのに学校の上を飛ぶときには、退避ということで係員を置いて子供たちを避難させるんです。こんな国がほかにあると思いますか。小学校の子供たちを守るために、米軍ヘリが飛ぶたびに退避をさせて、九百回も退避をさせている、こういう状況を放置している実態を皆さんが本当に御存じなのかどうか、それが放置されることの危険性をしっかりと把握してほしいというふうに思っております。  このほかにも、環境破壊の問題あります、サンゴですね。サンゴは、安倍総理はこの埋立てを進めているところのサンゴは移植をした上で埋め立てているとおっしゃっていましたけれども、それは一群落にすぎないと。むしろ埋立てをしているところは移植はしていないということで、沖縄県が抗議をしています。一群落をある意味では移植したどうこうという話をしていますけれども、いや、九群落は移設をしたという話をしていますけれども、その場所には七万四千群落のサンゴ群があります。このサンゴを埋め立ててまで造る必要があるのかどうかも含めて議論をしていただかなければならない問題だというふうに思っています。  是非、大所高所からの、外交、安全の問題に加えて、沖縄が抱えている問題を踏まえて、日本の安全保障の在り方について抜本的な問題解決をしていただきたいというふうに思っています。  ありがとうございました。
  123. 金子原二郎

    委員長金子原二郎君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  124. 山下雄平

    ○山下雄平君 自由民主党の山下雄平です。  五百旗頭先生、前泊先生、今日は貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございます。  まず前泊先生に伺って、その後に五百旗頭先生にお話を伺いたいというふうに思っております。  前泊先生からは、沖縄が抱える問題についての御説明、御見解をいただきまして、ありがとうございます。今回は予算審議ということなので、自衛隊の問題についても少しお伺いしたいと思うんですけれども、その前提として、日本を取り巻く安全保障環境についての認識について伺いたいと思うんですけれども、安全保障というのは、先ほど五百旗頭先生の話には狭義と、広い意味と狭い意味というふうな話もありましたが、いわゆる狭い意味での安全保障環境ということについてどのような認識を持っていらっしゃるのかなというふうに思いまして、私自身も実は昔新聞記者をやっておりましたので、新聞記者の先輩として、中国であったり北朝鮮であったりとこの何年かのいろんな日本に関わるニュースも出ておりますけれども、そうしたことを受けて、日本が取り巻く国防という意味での安全保障環境、国際環境についての御認識についてお伺いできればというふうに思います。
  125. 前泊博盛

    公述人(前泊博盛君) ありがとうございます。  自衛隊問題についても、今、沖縄においてはもう一つの基地問題ということで大騒ぎになっています。宮古、八重山において今までなかった自衛隊基地が造られるということで、これについても地元から反対の声も上がっているんですが、それを無視する形で造られています。  この間、中国脅威論というものが出ていますけれども、中国という国は日本にとって要らない国なのかどうか、必要な国なのかどうか、むしろ逆にお聞きしたいと思っていますけれども、脅威論というのは、軍事的な脅威論が強調されますけれども、経済的な脅威論を五百旗頭先生もおっしゃっていました。経済的に日本にとってなくてはならない国に残念ながらなっています。そういう中で、それを軍事的な脅威論だけではねのけることができないところが難しいところです。  貿易量でいうと、今、手元の数では三十五兆円ほど中国との取引額、アメリカと二十五兆円です。どの国を取るかというところで、安全保障上アメリカを取ると言っていますけれども、中国を取らずしてこのバランスは取れないということになります。逆に言えば、どれを取るかではなくて、日本は、アメリカも中国も取らなければこの国は成立をしない経済環境にあるというところであります。  軍事的脅威論についてもちろん強調したいかもしれませんけれども、経済的な安保というのももう一つの両輪でありますので、経済安保をまずクリアした上で軍事安保については議論をした方が、順番としては、この国の行く末としても非常に重要なポイントだというふうに思っています。
  126. 山下雄平

    ○山下雄平君 私、日経新聞の記者だったので、経済的な意味での中国におけるプレゼンスだったり関係というのも非常によく理解しているつもりなんですけれども、今の話でいうと、対中国だけではないですけれども、日本の国防というのは。日本の国防費は、では、減らしていけるというふうに、現状減らしても問題ないというふうにお考えでしょうか、お聞かせください。
  127. 前泊博盛

    公述人(前泊博盛君) 五兆円というのは非常に大きい気がします、この国にとってですね。むしろ、その外交の部分の予算が少ないような気がします。  今五千五百人ほどの外交官がいるようですけれども、中国、ロシアにしても八千人ほど、あるいはフランスにしたら一万人、アメリカはもう二万人を超しています。外交力の強化をしないで軍事力だけ増やして解決ができるのかどうか。これは、北朝鮮問題についてはっきりしているのは、軍事的な衝突の前に外交で解決しようとあのトランプ大統領ですら言っています。その外交的な努力をアメリカに丸投げをしている日本のこの状況でいいのかという疑問があります。  国民の側からすると、もう少し外交にお金も人も力を入れて、軍事的なものをやる前に、まずはその火消しをしていくという作業が必要ではないかというふうに思っています。
  128. 山下雄平

    ○山下雄平君 加えて、自衛隊についてなんですけれども、自衛隊は、日本国憲法上、合憲の存在だと思っていらっしゃいますか、違憲の可能性があるというふうに思っていらっしゃいますか、お聞かせください。
  129. 前泊博盛

    公述人(前泊博盛君) 小学生が普通に読むと、これは違憲というふうに判断をします。なぜか大人になるとそうではないふうになってしまうのは、なぜかと疑問ですね。文言どおり読めば憲法に違反しています。違憲です。
  130. 山下雄平

    ○山下雄平君 加えて、日米同盟について、日米安保について、そもそも日米安全保障条約、日米安保、日米同盟というのは必要であると考えていらっしゃるでしょうか、要らないというふうに考えていらっしゃるでしょうか、お聞かせください。
  131. 前泊博盛

    公述人(前泊博盛君) 日米同盟もとても大事だと思います。大事にしていただいて、ただ、日米安保だけでは駄目ですね。同盟関係といったものは、多国間安保というのが非常に重要だと思います。そのために国連があります。そして、日本はアメリカをもう唯一とするかのような安全保障体制ですけれども、アメリカは百一か国との安全保障体制を取っています。百一分の一なのか、それとも一分の一なのか、その辺りで日本という国の外交、そして主権すらも制限するかのような関係性が出ているような気がします。ある意味では、この日米安保、柱だとしても、余りに重きを置き過ぎて、そこに縛られ過ぎているような気がします。  今、安倍政権は、オーストラリアも含めて多国間安保について動いているようですけれども、その流れをどんどん加速をして、ほかの国とも、百一か国と安全保障体制を築けるような柔軟性が欲しいというふうに思っています。
  132. 山下雄平

    ○山下雄平君 最後、前泊先生に最後に御質問なんですけれども、沖縄が抱える問題、るるお聞かせいただきまして、在日米軍の海兵隊の問題、これは自民党政権でもそうですし、今野党にいらっしゃる皆さんが政権のときも非常にいろいろ大変な問題で悩まれたと思うんですけれども、米軍の海兵隊について、どこに持っていけばいい、どうすればいいというふうにお考えでしょうか、その結論についてお聞かせいただければと思います。
  133. 前泊博盛

    公述人(前泊博盛君) これ、まずその前に、本当は、大事なのは、海兵隊の駐留の必要性そして役割についての正確な分析が必要だと思います。今沖縄に何人が駐留しているか御存じの方、何人いらっしゃるでしょうか。この数字については、二〇一一年以降、もう開示されなくなりました。それまでずっと開示をされていたのに、何人いるかも分からないのにその削減の話だけ出てきます。一万八千人から八千人をグアムに移転して一万人にすると言いましたけれども、アメリカの司令官に聞いたら、今実際には五千人しかいないという話をします。五千人しかいないのに八千人をどうやって動かすのかという話になります。  この数字すら把握していないのに、この国会で議論をされています。海兵隊の必要性の前に、海兵隊が何人いて、どういう役割を果たしているかをまずは議論していただいて、その結果を踏まえた上で更なる議論をさせていただければというふうに思っています。
  134. 山下雄平

    ○山下雄平君 次に、五百旗頭先生にお聞かせいただきたいと思うんですけれども、前泊先生からも、国際関係についてはやはり経済関係を考えるべきだ、そして余り中国の脅威論を唱えるべきではないという話もありましたけれども、我が国を取り巻くいわゆる狭義の安全保障状況についてどのような御認識なのか、お聞かせください。
  135. 五百旗頭真

    公述人(五百旗頭真君) 狭義のとおっしゃった、狭い方ですか。  経済が大事であるということはもちろんでありまして、戦前というか、二十世紀の日本は、愚かにも両側の大国、中国とアメリカ両方に戦争を仕掛けて、案の定、一九四五年に国を滅ぼしたわけですね。我々、その教訓をしっかり踏まえて、戦後は経済を中心とする平和的発展の生き方をしてきたと、それは望ましいことだと思います。  二十一世紀の日本が二十世紀のように破綻せずにいくためには、私は、日米同盟プラス日中協商、同盟はアメリカとのみですけれども、その他、準同盟的なのをオーストラリアその他広げていく今時期ですけれども、中国とは、協商というのは協力関係を可能にする、悪くない関係。もし、ある具体的な、例えば東シナ海での中間線の共同開発というのはもう今では現実的でなくなりましたけど、中国は非常にそれを嫌がるようになりましたので。ですけれども、そういう具体的合意を基に、この二つの国は争うのではなくて協力するんだという形をつくるのが外交上のアンタントという、その協商というやり方なんですね。具体的な一つの合意でいい、だけど、それを言わば象徴的に両国の悪くない関係を示すと、そういう協商関係を日本は中国との間に持たなくてはいけないというふうに思っております。  そういう意味で、経済案件は両国の相互利益になりますので大いに進めるべきだというのはそのとおりでありますし、それから、外交的にいい関係をつくるというのは極めて大事です。日本は日米同盟を七十年近く大事にしてきました。これは非常に賢明ですね。日本は憲法の下で、自ら国防を全うするに足る兵力を持とうとしない国なんですね、防衛に限ると。それもなるべく少なくというふうなことをやっているわけです。したがって、自前で完結的な国防はできません。それを日米安保条約で補っていて、アメリカのひさしを借りることによって非常に軽く済んで、その分、経済発展に全力を投入してここまで、冷戦終結期にはアメリカに次ぐ世界第二の経済大国というところまで再生することに成功したわけですよね。それは賢明なやり方です。  アメリカとの同盟だけじゃなくて、多くの国と友好関係を持つということが大事で、友好関係があればやたら軍事力なんか発動されるものではない。しかしながら、友好関係というのはもろい面もあって、雰囲気いいと思っていたら、何かが起こるとたちまち険悪になるということ、近隣諸国との間ではよくあることなんですね。そのときに、言わば歯止めを持っているということが大事で、中国との間では、先ほど、オリンピックとリーマン・ショックの後、尖閣事案が二〇一〇年、一二年と起こり、反日暴動起こりました。しかし、奪い取る行動まで中国は起こさなかった。奪い取ったのが南シナ海のフィリピンに対してであり、ベトナムに対してなんですね。  その点、記憶しておいていいのは、冷戦が終わった一九九二年にフィリピンの議会が、スービック湾、クラークの東洋で最大のアメリカの基地がある、それをもう冷戦が終わったから返してもらいたいというふうに言ったところ、アメリカは素直に分かりましたと言って返したんですね。返したところで、九五年に中国がミスチーフ環礁をフィリピンから奪ったわけですね。アメリカ軍がいたら中国はいささか遠慮するところもあるんですけれども、フィリピンだけなら怖くないというので行動を起こし、二〇一二年にはスカボロー環礁も奪われた。  というのを見ると、日本が自前で大きな抵抗力を持たないところでアメリカとのいい関係を持って、しかも、前大統領は東京に来て、尖閣は守るんだと、安保の下にあるというふうに言ったわけですね。これは大きな資産です。そういう関係をアメリカと持つとともに、多くの国と友好化、しかし、何かのときに日本自身が自助能力を持っていないと非常に危うい、フィリピンのようなことになりかねない。  その意味で、これまで日本は海上保安庁の大変有能な活動、それから世界で最も静粛な潜水艦の存在、あるいはSSMという対艦ミサイルを多く持っている、そういうことによって手は出しにくいという面があったと思うんですね。
  136. 金子原二郎

    委員長金子原二郎君) 時間が過ぎておりますので、おまとめください。
  137. 五百旗頭真

    公述人(五百旗頭真君) はい。  そういうふうな自助能力も持っていなければいけないというふうに思っております。
  138. 金子原二郎

    委員長金子原二郎君) 山下君、時間来ています。
  139. 山下雄平

    ○山下雄平君 五百旗頭先生には一問しか聞けなかったので、大変申し訳ございません。  ありがとうございました。
  140. 小西洋之

    ○小西洋之君 立憲民主党・民友会、また希望の会の参議院議員の小西洋之でございます。  五百旗頭先生、前泊先生、本日は本当にありがとうございました。  私の方からは、特に前泊先生から国会でこういう議論をすべきだという、まさに予算委員会における、この公聴会における具体的な指摘はたくさんいただきましたので、前泊先生の方を中心に伺いながら、五百旗頭先生にも是非御見解を賜りたい、お伺いさせていただきたいと思います。  まず、前泊先生に伺いたいんですが、沖縄のこの県民投票なんですけれども、防衛大臣でございますけれども、先生のレジュメの方にもございますけれども、沖縄には沖縄の民主主義があるであろうと、また国は国の民主主義であるであろうというようなことを言っておりましたけれども、憲法の定める地方自治の本旨をまるで理解せずに、むしろそれを否定するような、そういう答弁ではないかという、見解ではないかというふうに私は思いました。  県民投票というのは、まさに住民自治の発動そのもの、地方自治法に基づく。防衛大臣のあのような発言、見解についてどのような御意見をお持ちでしょうか。
  141. 前泊博盛

    公述人(前泊博盛君) もう言わずもがなで、県民は非常にがっかりをしています。この国には本当に民主主義というものが根付いていないのかなと、敗戦によってアメリカに持ち込まれた民主主義はこの国の国民の中にはまだ根付かないのかなと。そういうことの代表として国会にいる大臣がそういう発言をしているわけですから、非常に深刻な事態だというふうに思っています。  せめて、日本には日本の、あるいは国には国のと言うのであれば、沖縄は、じゃ、日本じゃないのかという話すら出てきたりします。せめて、しっかりとこういう公平公正な政治を行えるような体制を言葉だけではなくて実態で示してほしいというふうに思っています。
  142. 小西洋之

    ○小西洋之君 日本に民主主義がないのではないかということですが、私の理解している限り、安倍政権下で憲法の定めておる地方自治の本旨、あるいはこの代議制の在り方も含めて今大きな問題が生じておりますので、今日、私、外交防衛委員会でも質問に立ちますので、先生の今の見解を是非防衛大臣の方に、またこの予算委員会の場で問わせていただきたいというふうに思います。  この県民投票なんですけれども、もう圧倒的な反対の意思表明がなされた。この結果を受けて、先生から見て、安倍政権、政府はアメリカとの交渉等々を含めて何をすべきであるかというふうにお考えでしょうか。
  143. 前泊博盛

    公述人(前泊博盛君) 当然、反対ということを言っているわけですから、それについて民意をしっかり伝えて、この辺野古建設については一旦中断をするというのは当たり前のことだと思っています。  ある意味で、私が先ほど紹介したように、六つのできない理由が明らかになってきています。たくさんのお金が掛かります。そして、期間が掛かります。軟弱地盤が見付かりました。そして、表に出ていない活断層の問題まで出ています。こういった事態で、しかも辺野古は普天間の代替機能も持っていないと。  そういう話であれば、アメリカに対して、もうちょっと無理だということを沖縄県民が県民投票という形で背中を押してあげている、そして理由まで準備してくれているわけですから、安倍政権にとっても非常に絶好のチャンスだと思います。二十年掛かってできなかったことに一旦終止符を打つと、そして新しい解決策を考えていく、その機会として、アメリカに対して、この問題については一旦中断します、中止します、そういうことを伝えるのがベストだと思っています。
  144. 小西洋之

    ○小西洋之君 ありがとうございます。  今の関連と、あと最初の問いとも含めての関連なんですが、この県民投票に当たって、安倍総理は内閣の方針として、とにかくもう何があっても基地建設は進める、もう土砂の投入は進める、防衛大臣も、県民投票の結果にかかわらず工事を続ける意思であったような旨をこの予算委員会でも答弁しております。こうした政府の姿勢についてはどのようにお考えになるでしょうか。
  145. 前泊博盛

    公述人(前泊博盛君) 基地の必要性というよりも、それを造らなければならない理由が別にあるのではないかというふうに疑っています。なぜ造らなければならないのかという理由についてもう少ししっかりと説明ができるように、この国会の中で議論をしてほしいというふうに思っています。
  146. 小西洋之

    ○小西洋之君 今先生がおっしゃっていただいた、安倍政権として、どうしても辺野古の基地を県民投票の住民の意思を無視してまで造らなければいけないその別の理由というのは、具体的にどういうものだと推察されていますでしょうか。
  147. 前泊博盛

    公述人(前泊博盛君) 私も、これは小川和久さんがストレートにさんずいという話をしていましたけれども、汚職なんだと、そうでなければこの建設をする理由は軍事的に理由が付かないと言っています。そういう専門家の言葉に対してどう受け止めるかということですね。  それから、環境アセスの際にも、これは朝日新聞にも報道されましたけれども、アセスの事業を受託をしている企業の九〇%が防衛省の天下り企業であるという話が出ていました。  そういうところでいうと、国内の利権のためにこの基地を建設している可能性もあるのではないかという専門家の指摘に対して、これはしっかりと検証してほしいと思っています。
  148. 小西洋之

    ○小西洋之君 重ねて伺わさせていただきます。  県民投票の結果を受けて、私も、まさに先生は沖縄県民の皆さんが背中を押したと、押してくれたと。私も全くそうだというふうに思いまして、政府はアメリカとも含めてしっかりと交渉する、あの辺野古の基地の問題について。その際に、先生からも言及がありました、そもそも海兵隊が沖縄に必要なのかどうか。  これは二つ議論の論点があるんじゃないかと思うんです。一つは、海兵隊の部隊そのものが全部要らない、軍事的に見てですね。ちょっと軍事的な観点について先生の見解を伺いたい、全部要らない。  もう一つは、海兵隊の部隊は何らか必要なんだけれども、辺野古に持っていこうとしている回転翼の部隊は要らないというようなことがあり得るんじゃないか。これについて、アマコスト元駐日大使が二〇一五年、朝日新聞のインタビューにおいて、海兵隊が、軍事的に沖縄における必要性というのは私は積極的な議論を聞いたことがないと、私は必要がないと思うというような旨を述べているんですけれども。  こうした、先生、先ほど、そもそも海兵隊が沖縄に何人いるか分からないのに議論しようがないという本質論もいただきましたけれども、軍事的に見て沖縄の海兵隊が必要かどうかについてどのような見解をお持ちでしょうか。    〔委員長退席、理事山下雄平君着席〕
  149. 前泊博盛

    公述人(前泊博盛君) これも、防衛大臣経験者たちお二人、中谷防衛大臣、それから森本防衛大臣、お二人ともはっきり言っているのは、海兵隊の駐留は沖縄でなくてもよいと、九州でもいいと、しかし地域が反対するので、それができないので、政治的理由から沖縄に置かざるを得ないという発言がありました。こういう軍事スペシャリストたちがそういう発言をしています。それに対しての検証がされていません。  私も、海兵隊については、別に沖縄でなくてもよいという発言があるわけですから、それから今日の資料にも入れましたけど、二ページの方に入れました。朝日新聞もしっかり報道していますけれども、五七年、米軍上陸部隊、本土から沖縄へという動きがあります。本土で悪さをして、いづらくなって、住民の反対運動によって追い出された海兵隊は、行き場を失って沖縄に駐留をしています。それがスタートです。そこから沖縄にいなければならない理由は後知恵でどんどんつくられてきたような気がします。本当に、再配置も含めて、日本における米軍の駐留はどこにどれだけのものが必要なのかということを再議論をしていただきたい。それが総合安全保障の中で必要なのかどうかという議論も含めてやっていただかないと、この問題についてとどめを刺すことはできないと思います。  海兵隊についても、彼らは、どこにでも、世界中どこにでも展開をしているし、そして、今や高速移動が可能になっているのに、あえて日本でなければならないという理由もないのかもしれない。そんな時代に沖縄に固執しているのは、安全保障についてほとんど理解のない国会議員たちが議論をしているのではないかというふうな疑念を持っています。
  150. 小西洋之

    ○小西洋之君 前泊先生から今、非常に、国会に対して、沖縄における海兵隊の軍事的な必要性、またその合理性についてしっかり議論をと、審議をというふうに求められましたので、私も国会議員の一人として、しっかり、また、私が所属する会派含めて取組をさせていただきます。まさに本質論ではないかというふうに思うところでございます。  前泊先生に重ねてお伺いさせていただきますが、ちょっとお時間の関係で少しプレゼンをいただけなかったかもしれませんが、先生のレジュメの六番で、安全保障政策の在り方で総合安全保障体制の再構築、あとAU構想ということを書いてくださっていますけれども、また先ほど、日本には外交官の数を含め外交ができていない、基本となる外交力がない。どういう外交が本来、憲法平和主義あるいは国際協調主義の日本の外交としてあるべきか。この安全保障論、AU構想、外交論についてちょっと見解をお願いいたします。
  151. 前泊博盛

    公述人(前泊博盛君) これは五百旗頭先生も、専門家が隣にいらっしゃるので、是非後ほどお聞きしてほしいと思いますけれども、まずAUについては、EUというのをまねて書いてありますけれども、EUというのができてから、ヨーロッパにおける戦争、紛争というのはなくなりました。私も世界史が大嫌いで、苦手で、しょっちゅう戦争の歴史ばっかり勉強させられました。それが、新しい時代になってEUができてからは域内の紛争はなくなりました。ドイツとフランスが戦争をした、イギリスがというこんな話、もう聞いたことがありません。  アジアにおいて、これが新しい火薬庫になるかどうかという、ある意味では軍需産業にとってはアジアの不安定さが逆に利している部分があります。そろそろアジアは、アジアにおいて、アジア人の手によって、アジア人の手が一滴たりとも血を流さないという、こういう血の誓いを行って、アジアの平和をしっかりと築いていく、そういう時代をAUに期待をしたいというふうに思っています。そういう発想を持った政治家がこの国から、日本から出てきてほしいというふうに思っています。  これは鳩山さんが一生懸命、鳩山由紀夫元総理が一生懸命、東アジア共同体という話をしましたけれども、アジアというのは非常に広いです。もしかしたら地球の半分ぐらいがアジアかもしれないというほどですね。それは、アジアの中においてそういう総合安全保障をしっかりと築いていく、そういう発想を持って取り組んでほしいというふうに思っています。
  152. 小西洋之

    ○小西洋之君 ありがとうございました。  五百旗頭先生にちょっと伺わせていただきたいんですけれども、今、前泊先生の方から、恐らく前泊先生のお考えというのは、先ほど、日本とオーストラリアの安保協力について一定の評価の御発言もございましたので、そういう二国間の取組と国際的な多国間の安全保障の取組、私も、EUの中にある、済みません、専門の名前は今失念してしまいましたが、あらかじめ紛争を防止していくEUの中にある国際的な機構、あれは、非常にああいうものが是非アジアで必要ではないかと思うんですけれども。  今、前泊先生からお話のあった、そういう、日本として、私は日米同盟は大事で、しっかり沖縄の問題、大変な問題がありますけれども、必要なことは維持しなければいけないという考えですけれども、そうした二国間の関係と、そして、それとプラス、アジアにおける日本が主体的なそういう安全保障体制をつくっていく、こうした方向性についての安全保障政策については、どのような先生は御見解をお持ちでしょうか。
  153. 五百旗頭真

    公述人(五百旗頭真君) 二国間だけじゃなくて多国間というのを組み合わせてやっていかなければいけないというのは、現在の世界の現実ですね。それで、不思議なのは、アメリカという世界の一番のリーダーたるべき国の大統領が多国間に敵意を持っているというのは非常に困ったことで、もちろん、二国間が大事で、固いところというのは二国間でやらなきゃいけないこと多いんです。だけど、世界全体の協力関係なしにやっていけない時代にあるのに、トランプさんはディールだと、アメリカファーストの利害損得、その方ばかりに注意を向けてTPPから離脱するしということですよね、パリ協定からも。  日本は、安倍首相は世界の中でトランプ大統領と一番の仲よしでおられるようだと。それは、日米同盟の重要性、日本が自前で安全を完結できずにそのひさしを借りていることを考えれば、必要な対処、誰が首相であっても、アメリカの大統領が誰であっても、アメリカとの関係は大事にしなきゃいけない。しかしながら、トランプさんの反国際、反マルチですね、これは日本は付き合えない。  安倍さんがそれに追随したら困るなと思っていたんですけれども、世界がやや驚いたことですけれども、TPPを蹴飛ばしたトランプ政権の後、残りのTPP11を日本がまとめましたですよね。これは、欧米で相当驚きを持って評価されているんですね。日本はアメリカ追随しかできないんじゃないのかと思っていたところ、そういう自主性を発揮した。加えて、ヨーロッパとも大変難しかったEUとのEPA協定を結んだ。これで、世界のある意味でマルチの協力体制……
  154. 山下雄平

    ○理事(山下雄平君) 時間が過ぎております。おまとめください。
  155. 五百旗頭真

    公述人(五百旗頭真君) はい。  というのを底支えすると。これ、その両方が非常に大事なので、トランプ大統領の下だけに、これは頑張らなきゃいけないと思いますね。
  156. 小西洋之

    ○小西洋之君 両先生に御礼を申し上げて、終わります。ありがとうございました。
  157. 大野元裕

    大野元裕君 国民民主党の大野元裕でございます。  両先生、今日は本当にいろんな多様な見方から御示唆を賜りまして、本当にありがとうございます。まず冒頭、感謝を申し上げたいと思っております。  まず、前泊先生にお伺いをさせていただきたいと思うんですけれども、県民投票の意思、これは政治家としてしっかりと受け止めろという、そういうメッセージが今日は示されたものと思っておりまして、そこは我々政治家としてしっかりとやらせていただきたいと思っておりますし、国民民主党は地位協定についても提言をさせていただいております。  その上でお伺いをさせていただきたいんですが、先生の方から最近余り出なくなった普天間の話も出てまいりました。当時の五年間で返還をするという、いわゆる仲井眞合意、あるいは安倍総理のお約束ですけれども、今、岩屋防衛大臣は沖縄側の協力がないからできないというふうにおっしゃっていますが、実はこれ、私ちょっと思い出すと、九八年でしたか、SACO合意の後に五年から七年であれたしか返還するとしたものが、アメリカのGAOが七年から十年掛かるだろうと。しばらくすったもんだがあった後に、キャンベルDODの次官補でしたか、が最終的にGAOが正しかったと、五年から七年ではそもそも無理なんだという話をしたんだと思うんですね。  そうすると、沖縄の協力があろうがなかろうが五年じゃ無理なんじゃないかというふうに私思っているんですけれども、その辺はいかがでございましょうか。
  158. 前泊博盛

    公述人(前泊博盛君) SACO合意の段階では、実はその前段の九三年、一九九三年の段階で、アメリカ側はこのSACO合意と関係ないところで普天間を嘉手納の近くに移転する計画を持っていました。これは最近になってアメリカ側の公式文書の中で明らかになっています。それを進めていたところに少女暴行事件が起こって、そして普天間返還要求が出てきたので、日本側に費用を負担させる形で新しい基地建設の話が浮上してきたと、そういうことであります。  そして、その場所については嘉手納統合案が非常に有力視されていました。そこであれば五年以内に閉鎖ということが可能だったと思いますけれども、それを、一九六六年、六七年に準備をしていた、これは六ページの方に入れましたけれども、辺野古に新しい基地を建設する計画をアメリカ側が持っていました。その計画をこの機に乗じて建設をさせようと、しかも日本側の負担でというところで動いたところが、この五年以内閉鎖ができなくなっていった根源ではないかというふうに思っています。  そして、さらに、その埋立計画、この今回のものと比較をすると分かるんですけれども、アメリカ側の計画では、今回問題になっているような大浦湾の軟弱地盤は避けられた設計がされています。浅瀬を使ったものです。アメリカ側ですらそういう計画を作っているのに、そういう過去の議論の経緯も見ないままその計画を進めたために、十三年、十五年という見通しの付かないような建設に、軟弱地盤に、泥沼にはまり込んでいるのが現状というふうに見ています。
  159. 大野元裕

    大野元裕君 そうすると、五年という約束の根拠というのは先生から見てどこにあったと、安倍政権の方ですね、どうお思いですか。
  160. 前泊博盛

    公述人(前泊博盛君) 根拠は全くないですね。沖縄県をだますための空約束だったというふうに見ています。
  161. 大野元裕

    大野元裕君 この問題については引き続き国会でもやらせていただきたいと思っています。  五百旗頭先生にお伺いをさせていただきます。  実は非常に興味深かったんですけれども、日本で唯一の災害に関するシンクタンクで今先生御活躍でございますけれども、その先生が、分権的な機関については非常に優秀であると、しかしながら全体をまとめるのがなかなかないという、こういうお話をされました。  私も政権時代に内閣府防災に実は言って、BCPを各省のをまとめようとしたんです。ところが、内閣府防災にその権限がなくて、結果としてそれぞれの省庁ばらばらの、つまりマニュアル的なものを出すことはできるんですが調整ができないという、そういう事態を私自身も、結局、その後、局長級の会議を開かせてやっとそれができるという、そういったことが、かつてやったことがございます。  そういった意味からいうと、ちょっと想像されるのは、もう今なくなっちゃいましたけど、かつてのアメリカのFEMA、つまり、今、過去、去年は災いという一文字でしたけれども、単なる地震だけではなくて本当に様々な種類の災害がある中で、それぞれのシナリオをいつも持っているところが必要に応じて分権的な機関を連れてくる、こういうそのアメリカのFEMA的な機関というのは実は日本に相当私は向くんじゃないかなと。以前はそう思っていなかったんです、連邦制じゃないですから。でも、最近ではそう思うようになり出したんですが、先生、どういった機関をイメージとしてお持ちでしょうか。
  162. 五百旗頭真

    公述人(五百旗頭真君) ありがとうございます。  FEMAも歴史的に動きがあって、ニューオーリンズのカトリーナの前後で動きがありましたですけれども、日本としては、余りアメリカモデルを直接輸入しようとするんじゃなくて、日本日本なりに、阪神・淡路のときには本当に奇襲攻撃で、備えは地元にもなかったし、自衛隊等にもなかったし、中央政府にもなかったというので、何が起こっているかも半日ぐらい分からないという事態だった。そこから学習しまして、警察、消防、自衛隊も改革しましたし、官邸には地下の危機管理室ができましたし、危機管理監もつくりましたし、地元も地元で大変に努力しているというので、進展が見られます。  阪神・淡路の大きな失敗から学んでいただけに、東日本のときには、それ以前に比べると、通常の地震とか災害についてはよく動いたんですね、原発問題で、これは全く想定できていなくて悲惨なことになりましたけれども。その東日本のときに一年掛けて復興庁をつくって、その一年間というのは大変なロスだと思いますけれども、それまではそれぞれのところでやるとか、我々も復興構想会議で全体像を示すとかいうことをやって、ともかく対応した。その経験が今は蓄積されているわけですね。その蓄積を失わないようにということが非常に大事だと思うんですね。  復興庁は、復興についてのこと、そして同時に、例えば福島の原発事故が起こったときに、自衛隊のヘリから水を入れるというのを言わば最初のメッセージにして、翌日から地上からの放水で第三号機が干上がらないようにというのをやった。だけど、そこで、警察、消防、自衛隊、みんないるんですけれども、誰がやるのと、誰が指揮執るの、順番はということで、何にも決まっていないんです。事が起こってから、それで官邸は慌てて、今回は自衛隊でと言ったけど、自衛隊の隊長さんは驚いて、私は部下に対して命の危険があってもやってくれと言えます、でも、警察、消防の人には言えませんと言うので、結局、調整の中心になるということで、官邸の指示を変えてもらってやったんですね。というふうに、事が起こってから分権的なものを方針のない中でつくるという、そういうことをこれから来る大災害のときには避けなきゃいけない。  そういう意味での、我々が最近地震活動期に入って経験を次々に積んでいる、それを基にして、この国にとって望ましいのは何か、危機の瞬間に、分権的だけじゃなく、それを全体的、南海トラフのすごいのが来たら、警察、消防、自衛隊、全部が行ったって全然足りないんですね。足りない中でどうするのかということは誰も考えないでは困るんですね。というので、全体的対処が可能にするとともに、それから復旧復興については、地元の特殊性、意向というのを尊重しながら、住民との協議もしながら、それぞれに柔軟な再建ということを可能にしていかなきゃ、それをリードするかなり専門性のある機関、二、三年で替わるんじゃなくて、ノウハウも蓄積している、あるいは外国の例も勉強していると、そういうところをやらなきゃいけない、それが私が必要だと考える防災復興庁なんです。
  163. 大野元裕

    大野元裕君 ありがとうございます。  今の先生のお言葉で、実は例の火箱さんの、陸幕長の、三・一一のときのあの指示で、誰が指示を出すのかという、ちょっと当時議論になりましたけど、すごくそこを今思い出させていただきました。  先生の方で、今度、安全保障の話を少しお伺いしたいんですが、中国の軍拡の話等もございました。他方で、南シナ海で起こったことを東シナ海で起こらせてはいけないというのが我々日本に課せられた使命だというふうに強く思っております。  前泊先生からあった外交の話も含めてなんですけれども、南シナ海で起こったことを東シナ海で起こらせないために我が国が優先順位としてやるべきこと、五百旗頭先生、教えていただけますでしょうか。
  164. 五百旗頭真

    公述人(五百旗頭真君) ありがとうございます。  先ほども言いましたけれども、日本は自前で国防を全うする準備は戦後持っておりません。平和憲法の下で限られた防衛力のみしか持たないというのを方針としてきていると。それが、冷戦期はそれでよかったんです。米ソ両超大国は地域紛争起こることに対して否定的で、抑えが利きました。しかし、今何でもありになってきたんですね。  その中で、北朝鮮は、御承知のように核とミサイルを振りかざして脅しまくる、中国は物すごい軍拡をやると。それを使って支配を広げる意思がなければいいんですけれども、南シナ海を見れば、実際にフィリピン、ベトナムから随分奪っているわけですね。ということは、対応力がないとね。その対応力は二種類があって、一つはその国、もう一つは国際関係ですね。  フィリピンの場合には、アメリカとの同盟関係を切ったところで取られちゃったわけですよね、自前のものは余りないと。日本の場合には、どちらも、日米同盟はしっかり維持していますし、それから自前の能力も、さっきも言ったように海上保安庁、そして海自の潜水艦、それからSSMという対艦ミサイル。下手なことをしたら自分の方が恥をかくかもしれないという危惧があれば下手なことをしないんですね。それで平和が保てる。  ところが、今物すごい軍拡が行われていることによって、今までその三つが抑えになっていたものがもはや無用になりかねないほどの状況、それに対して今非常に深刻だというふうに思う。自前で何をしなきゃいけないか。  アメリカの場合には、トランプ大統領が非常に衝動的ですので、ペンタゴンは一貫した観点を持っていますけれども、そういう中で、国際関係と自前という両方を組み合わせて頑張らなきゃいけないと思います。
  165. 大野元裕

    大野元裕君 最後一つだけ。  先生は、もう防衛大学のときも含めて自衛隊との関係すごく深いですけれども、私も、実は一昨年の十二月に九条改正論を中央公論に書かせていただきました。他方で、自衛権を書かないで自衛隊だけ書き込むような憲法改正、自衛隊はそれを欲しているかどうか、先生に教えていただきたいと思います。
  166. 五百旗頭真

    公述人(五百旗頭真君) 同感です。  第九条、先ほどから議論がありますように、違憲の疑いが持たれるような全面否定、自衛すらも否定しているような言辞があります。それは前項の目的のためということで免除しているかのように見えますが、疑わしいと。そういう中で、疑わしい文章をそのままに残して自衛隊の名前だけ出すというのは、非常に唐突で不自然だと思いますね。  これはしっかりと筋の通ったものにして、日本は、防衛はしっかりやる、しかしながら侵略戦争はしないんだという筋ですっきりさせるべきだと思っております。
  167. 大野元裕

    大野元裕君 どうもありがとうございました。  もう倍ぐらい時間がいただけると有り難かったんですが、今日はどうもありがとうございました。
  168. 谷合正明

    ○谷合正明君 公明党の谷合でございます。  両公述人におかれましては、本日、大変にありがとうございます。特に、前泊公述人におかれては、昨年に引き続きの公述人ということで大変感謝を申し上げたいと思います。  冒頭に、五百旗頭公述人から質問をさせていただきたいと思います。  公述人、防災復興庁の創設ということを言及されまして、実は私、今日この場でその質問をしようと思っていたところでございました。というのも、平成を振り返ったときは、ポスト冷戦時代という点と、もう一つは、国内に目を転じれば、やはり阪神・淡路大震災と東日本震災を経験した時代だったということだったと思います。  安全保障という視点は、もう当然これは防災・減災、復興というのが今後我が国にとって大変大事な観点だと思っておりまして、公述人は、復興構想会議の初代議長を務められましたし、また熊本地震のときも復旧・復興有識者会議の座長も務められました。  昨年は、地震ではございませんけれども、集中豪雨等ございまして、私もその当時は政府側にいました。復旧については相当力を入れるんですけれども、その復旧はその都度その都度やっているような感じがありまして、やはり防災ですとか復旧復興というものを一元的に扱う機関が必要じゃないかというふうにも感じておりました。  党としましても、復興庁の後継組織の在り方については、震災復興を成し遂げるとともに、国の防災・減災、復興の司令塔的な役割を担うべきということで既に発信をしているところでございます。具体的なところは今後なんですけれども、まず、そうした司令塔機能創設についての評価とともに、こういうことをやろうとすると恐らく省庁の、縦割り省庁の抵抗というのもあろうかと思うんですが、こうした機関を成功させるための鍵というものは何でしょうか。
  169. 五百旗頭真

    公述人(五百旗頭真君) 大変共通の関心を持っていただいているのをうれしく思います。  事が起こってから政府はえらいこっちゃと、つまり、メディアが政府は何をしているという声の下で、頑張っていますと、遅いと言われながらやるというのがこれ日本の常なんですよね。  どうして起こってからなのか。起こる前はなかなか分かりませんが、しかしながら、一定の備えをした方が、起こってから大事業をするより、大土木事業で町の形態を全部変えるようなものをすればそれは安全性は増しますけれども、十年の期間ということの無駄も非常に多いし、それから、そういう大土木事業じゃなくて、事前に非常に危ないところについては専門家がプライオリティーをつくってここはこうするようにというふうにした方がいいと。そういう全体の司令塔が、分権的な日本は、その瞬間の人命救助の、第一線部隊もそうですけれども、総務省が他方で自治体間の広域支援についてお世話してくださり、大分それも進みかけましたけれども、やっぱりできないんですね。もう地元、当事者に任せるよみたいなところも出てしまう。そうすると、熱心にやる自治体、被災を予想される自治体、いっぱいやっているところある。だけど、ぼんやりしているところもあると。何をぼうっとして生きているんだと叱られるようなことを平気でほったらかしているところもある。そういうことでいいのかと。やはり日本全体として、これだけ頻繁に必ず来る災害であるならば、それに対して統合的、合理的な対処ということをなぜしないのか。    〔理事山下雄平君退席、委員長着席〕  これは国民にとって非常に必要なことだと思いますので、その被災の瞬間の危機管理的なものと、それから事前に備えをして軽減していくという努力、両方を併せて、さらには、起こった後の復旧復興を含めて対処の全体的司令塔ということが不可欠な日本ではないのか、災害列島ですから、と思います。
  170. 谷合正明

    ○谷合正明君 続きまして、北朝鮮問題について五百旗頭公述人にお伺いしたいと思います。  昨年、史上初の米朝首脳会談が行われました。その際、朝鮮半島の完全な非核化が両首脳によって署名されたところでございますが、公述人はもう昨年の時点で、北朝鮮が核とミサイルを潔く捨てるのは万やむを得ない事態における最後の選択で、完全な非核化を回避する金委員長のゲームが展開されるだろうというようなことでいろいろと述べられておりました。今、その金委員長の思惑どおりかどうかは別として、状況としてはそれに近いような状況でもあろうかと思っております。  安倍総理は、今回、第二回目の米朝首脳会談、合意見送りになったことを受けて、国会でも質疑でやり取りされまして、総理としては、今後日本が主体的に取り組むことが重要である、次は私自身が金正恩委員長と向き合わなければならないと決意をしている、あらゆるチャンスを逃さないと答弁されております。  非核化交渉と拉致問題の解決に向けて、その展望と日本の役割について御所見を賜りたいと思います。
  171. 五百旗頭真

    公述人(五百旗頭真君) 北朝鮮という国は大変にたくましい国で、かつて社会主義圏があったときに、ソ連、中国という両超大国を手玉に取るように競争させながら、両方を北朝鮮に貢献させるというふうなことを非常に上手にやった。ところが、冷戦終結とともに、何とソ連も中国もライバルの韓国と国交を結ぶというので、裏切られたんですね。その瞬間に、日米ともし北朝鮮が国交を結べれば、クロス承認であって両方いいわけですね。で、日本にアプローチをしてきて、金丸訪朝団が行って、ある程度行くかと思いましたけれども失敗してしまったと。その後、小泉さんのときにまた、それはブッシュ・ジュニアの大統領のときに、悪の枢軸という指名で非常に危機感が強まったときに、また日本にアプローチしたわけですよね。  日本の場合には、つまりアメリカとの関係が直接難しいときに、日米関係が緊密なので、そこをチャネルとして使うという意味が北朝鮮の利益としてあるとともに、日本の場合には戦後処理の問題がありますので、韓国に対しても五億ドルというのを六五年に、それに見合うものが北朝鮮にも予定されているわけですね。そういう有り難いものというのはほかに余りないので、それが北にとってはいつか使うべきものということになると思うんです。  今、アメリカとの間で二度首脳会談したけれども、非核化についてはないと。北朝鮮の場合には、核の問題で派手に脅かして自分の方を振り向かせて、そして安全保障の対話を親玉のアメリカとやりたいというのがあるんですね。それが必ずしもうまくいかないというときには日本を言わばバイプレーヤーとして使うという可能性がないではないので、それ自体の問題、容易ではありませんけれども、北朝鮮の方も事と次第によっては応じる可能性はなくはないと思っています。
  172. 谷合正明

    ○谷合正明君 それで、朝鮮半島の非核化ですとか、あと拉致問題の解決考えたときに、日本、韓国との関係いかにすべきかということだと思っていまして、文化、人的交流は活発で、この人的往来は過去最高を更新しているというふうにも私も聞きました。  一方で、特に昨年秋以降、韓国内での未来志向に、関係に逆行する動きが続いておりまして、領土問題、歴史問題、レーダー照射事案も発生しておりまして、国民感情が相当悪化していると。外務省としては、両政府が懸案事項を含む日韓関係の管理に努めつつ未来志向の関係構築で一致としておりますけれども、状況は本当極めて厳しいのではないか。これまでも、このような韓国国内世論向けに反日政策を打ち出すこともあったと思うんです。今回、局面がちょっと違うんではないかなとも感じます。  今年はG20開催、また北朝鮮の動向もございますが、日本政府は外交上、この日韓関係をどう管理すべきなのかについても併せて御所見を伺いたいと思います。
  173. 五百旗頭真

    公述人(五百旗頭真君) ありがとうございます。  大事な問題で、大変難しい最近の状況ですけれども、韓国の場合に、根深く日本の、日韓併合ですね、植民地支配に対する反感というのがあって、それが全ての出発点みたいになっている。  私は日韓フォーラムの日本側議長なんかもしていて、お付き合いする、そういう人たちは非常に物分かりいいんですね。そういう人には、過去の問題があるからといって今この不適切な振る舞いを自らに許しちゃいけないよと、過去のことがどんなにあっても、現在と将来はそれとして大事にする心構えがなければ将来は開けないということは言うんですけれども、多くの韓国の人にとって、おっしゃったように、地域との共通とか、あるいは分野分野の付き合いとか、あるいは学生のキャンパス・アジアとか、そういうところではすごくいい協力関係、いい雰囲気あるんですね。  しかし、全体として、政治に関わる、歴史に関わることになると全面的なブレーキが起動しちゃうと。非常に良くないところで、それを何とか超えなきゃいけないと思うんですが、日本に対するブレーキが根源的に強いのに加えて、中国に対する、何というんですかね、大きな存在としての、儒教の大宗主国としてのそういう思いというのが、反発がありながら、それが強いですね。  それから、不思議なことに、北と南を比べると韓国の方がはるかに立派だと私は思うんですけれども、北に対するコンプレックスがあるんですね。そういう不思議な歴史的に形成された国民感情があって、今、北との融合、民族の融合というのと、それから日本に対するこの微妙なものというのが結び付いて非常に厄介な状況になっているけれども、逆に言うと非常に浮動的だと、一貫してそれを貫けるようなものではない。アメリカとの関係、日本との関係、そして北、中国との関係も彼ら実に不安定なんですね。  そういう中で、その言わば反映として日本に対してひどい振る舞いをしたりということありますけれども、それを絶対的と思わずに気長に付き合うほかないなと思っております。
  174. 谷合正明

    ○谷合正明君 ちょっと時間が少なくなりました。前泊公述人にお伺いします。  県民投票の結果はありのままに真摯に受け止める必要があると思っておりますが、一方で、この投票率五二%、すなわち四八%の方は投票に行かなかった。この行かなかった方の投票行動をどのように認識すればよいのか、最後お伺いしたいと思います。
  175. 前泊博盛

    公述人(前泊博盛君) とても大事だと思います。  声なき声もしっかりと拾っていく政治にしていかなければならないと思っていますけれども、行かなかったことに対しては、前回の九六年の県民投票の際もあったんですけれども、自民党は投票に行かない運動をしました。いわゆる県民投票そのものを形骸化してしまおうという運動もあったんですね。そういう中でいうと、一〇%程度の減少で済んだというところでいうと、私、五〇%を切るのではないかというふうに思っていました。私の予測、外れましたけれども。それからもう一つ、その行かなかった人たち、投票に行った人たち数字とほぼ同じような比率だというふうに私見ています。  それから、投票に行った人たちの中で反対だけが今強調されていますけれども、賛成をしている人たち意見も非常に重要だと思います。これは、出口調査の結果を見ると、この賛成に回った十一万票のうち、これは一九%ですけれども、普天間が固定化されるからもう埋立てをした方がいいというような判断、これは五割ぐらいいます。それから、もう建設が進んでいるので日米両政府にあがなえないということで、諦め感から三割が賛成をしています。そして、中国脅威論、北朝鮮脅威論、そして抑止力は必要だという意見は二割ぐらいです。  つまり、本来、政府がしっかりと、なぜこの基地が、辺野古が必要なのかということを説明をしてくれないためにこの程度議論になってしまっている。実質的な反対意見がもう九割以上を占めているということになってしまいます。賛成の意見の中に本当に必要性について答えているのは二割程度、ここら辺が非常に重要なポイントだというふうに思っています。
  176. 谷合正明

    ○谷合正明君 終わります。ありがとうございました。
  177. 浅田均

    ○浅田均君 日本維新の会、浅田均でございます。  両先生におかれましては、本日、貴重な御意見を賜りましてありがとうございます。御礼申し上げます。  私の方からは、まず前泊先生に御質問をさせていただきたいと思います。  先ほど、前泊先生の方から、基地の必要性について議論してほしい、再度議論してほしい、国会で議論してほしいという御発言がありました。私どもは、全くそういう御意見に同意するものでございます。国会で議論すべきだと思っておりますし、それは同時に沖縄の基地負担を軽減させるものでなければならないと思っております。  そこで、前泊先生にお尋ねしたいのは、この基地を設置することに関しまして、基地設置に関する手続法がないと、だから、手続ですね、手続を決める法律です、手続法を作ったらという意見があります。何県に基地を設置するということですから特定の自治体に適用される法律になりますので、当然その住民投票が必要になります。  だから、今回の沖縄の県民投票という沖縄県民の意思が示されたと、それとは別にまた意思があって、だから国の意思と沖縄県民の意思に著しいそごがあると、そういうことも解消されるということになりますが、こういう基地設置に関して手続法を作ったらどうかという意見に関しまして、前泊先生御自身どういうふうな御意見をお持ちでしょうか、お尋ねいたします。
  178. 前泊博盛

    公述人(前泊博盛君) 手続法の前に、これは本当にどんな病気か分からないのに処方箋を書けと言っているような感じがしますね。せめて、どんな病気なのか、そしてそのために何が必要なのかということを議論をしていかないといけないというふうに思っています。  恐らく、この手続法は、沖縄に基地を押し付けるために作られるような法律にすぎないというふうに思っています。少なくとも、全県的にある、全国にある米軍基地がどの程度あるのか。私、今日、皆さんに、安保検定という学生とやっているような検定試験を皆さんにもお配りをしましたけれども、ほとんどこれ、百点を取れる方が何人いらっしゃるかということですね。その上で、本当に全国にある百三十二の基地がどういう役割を果たしているのか分かった上で、そしてそれが再配置が必要なのかどうかという議論が必要だというふうに思っています。  その上で、必要であればその手続法という話になっていくと思いますけれども、その議論も全くしないまま手続法だけを進めて、沖縄に基地の建設を更に押し付けようとするためのそういう手続法にすぎないのではないかという危惧をしております。
  179. 浅田均

    ○浅田均君 今先生おっしゃいましたその危惧を取り除くというかな、どこにどういう基地が必要であるかという議論をした上での話です、上でだったら、そういう手続法に関しては御賛同いただけるという理解でいいですか。
  180. 前泊博盛

    公述人(前泊博盛君) 残念ながら、日本にはその自己決定権はないと思います。米軍基地についてですよね、自衛隊基地ではないですよね。  自衛隊基地については、これはプーチン大統領からも指摘されているように、日本の主権がどの程度かが分からないというふうに言っています。基地をどこに置くかということを日本が決められるのであれば、辺野古はノーというふうな判断もあるし、それから北方領土が返還された後に基地は置かないという判断もできるはずですが、そういう権限を日本は持っていないというふうに指摘されているんですよ。  それなのに、権限法を作って誰がどういうふうに運用するのか。アメリカに対してノーと言えるのか、あるいはここに置けと言えるのかというところです。
  181. 浅田均

    ○浅田均君 前泊先生に重ねてお尋ねいたします。  日米地位協定のところに遡る必要があるんだろうと思いますけれども、日米地位協定に関しての先生の御本とか読ませていただきました。それで、沖縄の方々の御不満いろいろお伺いしておりますけれども、とにかく米兵の犯罪に関して日本が関与できる度合いが少ないと、そういうところが取っかかりになるんかなというふうな思いを持っております。身柄を確保できないので起訴率も低いというふうにお書きになっております。  そこで、日米地位協定の改定というのは非常に大きな重い課題であるということは重々分かっておりますけれども、そこに至るまずその取っかかりとして、地位協定の運用の中で例えば取調べを可視化するとか、そういう運用の中で改定に至る取っかかりをつくっていくというふうな考えに関しては、先生はどういうふうにお考えでしょうか。
  182. 前泊博盛

    公述人(前泊博盛君) ありがとうございます。  今日、五ページの方に、条文の比較調査の結果も踏まえたものを御紹介しています。沖縄県がたくさんこういう他国の状況も踏まえたものをまとめています。間もなく欧米の部分も含めた報告書が上がってくると思いますけれども。  中身を見ても、例えばイタリアは、米軍機が低空飛行でゴンドラを落としてたくさんの犠牲者が出たと、その一件を踏まえて、イタリアの空はイタリア人のものでありイタリアの国家のものであるということで交渉して、低空飛行訓練を事実上止めています。ドイツも同じように、国内法の適用によって低空飛行訓練を止めることができています。残念ながら、日本はそれができないんですね。交渉できる人がいないのに、どうやって手続だけ踏まえるのか。  そして、地位協定の問題でいえば、これは占領政策の一環として作られて、駐留した米兵たち、米軍に対するいわゆる権限と権利を与えるようなものですから、それを本当に必要かどうかというまず議論が必要ですよね。そういう意味では、地位協定については、基本的には国内法を適用するというところの前提から地位協定にある中身に踏み込んで、地位協定を外して国内法を適用する手順を踏んでいった方がいいと思っています。  これが、この中で原則不適用というふうに日本の外務省は説明していましたけれども、国際法上、原則的不適用ということはないことが明らかになって、外務省が今ホームページ直してきていますから。そこら辺でいうと、まず国内法の適用というところで、地位協定の改定に縛られずに日本国内における日本の法律を適用する、これが主権国家としての最低限の基本だというふうに思っています。
  183. 浅田均

    ○浅田均君 続きまして、五百旗頭先生の方に御質問させていただきたいと思います。  先ほどのお話の中で、米中対立の中で日本はどういうふうに振る舞うべきかというところで、日中協商というお話が出てまいりました。今、米中貿易戦争という表現がされるぐらいのことが生じております、関税の掛け合いといいますか。この関税の掛け合いという状況、これ、いつ頃どういう形で収束するというふうに先生は予想されているのか、教えていただけたら有り難いと思います。
  184. 五百旗頭真

    公述人(五百旗頭真君) どうも、浅田先生、関西なまりでゆっくりと朴訥にしゃべられるので、非常に何か親近感を感じ、有り難く思っております。  おっしゃるとおり、米中貿易戦争、経済対立の方は、これはある意味でトランプさんの得意芸だと思うんですね。初めにすごいことを、とんでもない、がんとぶつけておいて、そしてディールですから、やはり両方が納得するところへ、しかし初めに大きくぶっ放しているので、向こうは相当真剣に対応しなきゃいけないと思って譲歩を用意するんですね。それを取ったら収めると、これはトランプさんの得意芸だと思います。そういう意味で、一定の了解というのを今度もつくるんだろうと私は見ております。それを重ねていくでしょう。  しかし、米中対立、お話しの米中対立は実は経済的な処理だけじゃないんですね。中国が大きく台頭してきている、そしてアメリカがこれまで中心大国であったのを脅かしていると、そういう認識を持ったとき、かつてのソ連に対してもそうですし、日本の場合には単なる経済国家であって、力の体系では全く脅威でも何でもなかったにもかかわらず、やっぱり八〇年代末から日本を抑えるということを考えた。中国はそれが非常に全面的なんですね。ソ連よりも手ごわいぐらいだという挑戦なんです。  アメリカのグレアム・アリソンというハーバード大学の教授で、キューバ危機について「決定の本質」という本を、すばらしい名著を書いた人で、私がゼミの間、一番度々使ったテキストですけれども。その人が最近、「デスティンド・フォー・ウオー」と、戦争に引き込まれてというんですか、魅入られてと、運命付けられてというふうな本を書きまして、それで、ポルトガルとスペインが地理上の覇権で争った。そのときは、両国は当然戦争になるべきところを教皇の仲裁で平和的に片付いたんですね。それ以後、十六回、大国への挑戦が行われて、十六回のうち十二回は戦争に結局は陥ったという分析なんです。その中には日清、日露戦争も入っているし、日米戦争も入っているんですけれども。  その中国の現在の台頭ぶりというのは、その十六回の中でもすごいもので、十七回目ですね、十七回目が果たして平和的に収められるか、結局は戦争になるか、これ非常に深刻な問題。本人たちだけじゃなくて、前線にある日本にも火の粉はもう必ず一番ひどく掛かるかもしれないですし、人類史にとっても大変なことなんです。これをどうするか。  私は、その意味で、長話はいけませんので端的に言いますと、第二次大戦のとき、米ソ両超大国がドイツ、日本と戦うので連携しましたね。だけど、両超大国は物すごくマッチョ同士で、なかなか話付かない。そこにイギリスという斜陽国であります、日本の今の世界に持っている経済的地位より低いと思いますが、チャーチルという大物がトップにいたということもあって、三者になることによって戦後秩序をつくることに成功したんですね。これは非常な教訓だと思う。  今、米中がしのぎを削ってがんがんやる、それでは難しい。でも、もう第三位に落ちたけれども、柔らかいアプローチをする日本が間に入って、この問題はやっぱり中国さん変えなきゃいけませんよとか、アメリカさんそこまで言っちゃいけませんとかいうふうにして、ある種の了解をつくる役割を日本が果たすべきじゃないかというふうに思っています。
  185. 金子原二郎

    委員長金子原二郎君) 浅田君、時間が来ています。
  186. 浅田均

    ○浅田均君 もう一分になってしまいましたので質問はできませんが、五百旗頭先生に感謝、前泊先生にも御礼申し上げます。  私はこれ、関西なまりという自覚は全くございませんでして、オーセンティック・トラディショナル・トゥルー・ジャパニーズだと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
  187. 井上哲士

    井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。  今日は二人の公述人の皆さん、ありがとうございます。  五百旗頭さんから防災のお話がございました。実は、八年前の三・一一の日は、私、この場所で決算委員会に参加をしておりまして、シャンデリアがもう落ちそうになって、みんなでこの机の下に避難をしたということを思い出しておりまして、これ本当に、改めてあの教訓を思い出しながら進めていくことが必要だということを思いました。  その上で、まず五百旗頭公述人にお聞きいたしますが、軍拡など中国についてお話がありました。力による現状変更について、私ども容認できないと思っております。  その中で、昨年、日中首脳会談が行われて、お互いに脅威にならないということを確認をしたことは大変重要だと思っております。一方、年末に作られました防衛大綱では、こうしたことには触れないまま、軍事力を急速に大きくするという方向が出されましたし、いわゆる空母の保有であるとか、それから長距離射程のミサイルなど、かなり攻撃的な装備を持つということが盛り込まれました。いわゆる、これが安全保障のジレンマということをつくり出すんじゃないかと、こういう懸念を持っておりますけれども、その点、まずいかがでしょうか。
  188. 五百旗頭真

    公述人(五百旗頭真君) ありがとうございます。大変重要な根本問題だと思います。  日中、互いに脅威にならない生き方、私が言う日中協商という、そういう関係を続けていく、外交的に大事にしていきたいと思います。  その防衛大綱とそれが矛盾するように今提示されましたけれども、私はそれは矛盾ではないと。  中国の軍拡というのは物すごい勢いで、アメリカの空母艦隊すら西太平洋にやってくるのは容易でないと。アンタイ・アクセス・エリア・ディナイアルという戦略だと言われるんですが、弾道ミサイルで、一度宇宙に出た後、西太平洋にいるアメリカの空母に、もうそれは点にもならないような小さなものですけど、それに命中させるという腕を磨いているわけですね。アメリカも非常にそれは脅威だと思っている。そういう能力の高まり、言い換えたら、中国は、アメリカの空母に対してそうだということは、南西諸島、第一列島線、この辺りについてはもう大きなミサイル網で大変厚く収めているんですね。  それに対して日本はどうしたらいいのかというのは、これは非常にジレンマに満ちた難しい問題で、戦後のある時期までだったら、いや、我々が平和的にさえ振る舞って刺激さえしなければ大丈夫ですよと言ったかもしれない。でも、フィリピンは全然刺激なんかしていないけど、一方的にミスチーフもスカボローも取られるわけですね。  力を付けた中国、その能力があって、支配意欲を持っている。その意欲は、九二年のあの領海法で、法律を作るというところまで示されているわけです。そうすると、それをさせない方途は何かということを考えなきゃいけない。今までは海保の頑張りだとか潜水艦だとかSSMという対艦ミサイル網で一定のブレーキになったかもしれないけど、中国の軍事能力がここまで高まってくると我々はそれだけでいいのかというので、今その対処が大綱に示されているわけですよね。  刺激をするという側面があるとともに、無防備で、赤子の手を握るようにできると思ったらやるという、この人類史上抜けない大国の振る舞いというのはあるんですね。そういう誘惑を簡単にさせないという対処は、先ほどから言っているように、同盟関係や多くの国との友好関係であるとともに、やっぱり日本に手を出すとひょっとしたら恥をかくかもしれないなというふうなものを一定持っている。同じように対軍拡をやって、北京や上海を火の海にする能力があるぞというふうに対応すべきとは思わない。でも、日本に手を出すことはそれなりにコストがあるという対応が必要なんだと思っているんです。
  189. 井上哲士

    井上哲士君 ありがとうございました。  やっぱり軍事対軍事の悪循環にはなってはならないというふうに私も思っております。  前泊先生に沖縄の県民投票についてまずお聞きをいたしますが、これまで政府は、名護の選挙のときには、争点そらしということで、もう基地は終わったかのようにした結果、賛成派のことになりました。知事選挙ではそれが通用しなくて玉城さんが登場したわけでありますが、そうしますと、もう幾らやっても駄目だよと、諦めさせるということで土砂投入が行われたという、つまり、何ぼ県民が声上げても駄目だと諦めさせるということをずっとやったわけでありますけれども、結果としては、県民投票は玉城さんが獲得した以上の反対票になったということでありますけど。  こういう、やっても駄目だ、諦めということに対して、こういう結果が出たことについての理由といいましょうか、評価といいましょうか、それをまずお願いしたいと思います。
  190. 前泊博盛

    公述人(前泊博盛君) 本当にこの基地の必要性というものに対しては誰もがもう気が付いていると思うんですね。そのことを数字で示さなければならないということ自体が、これは民主主義大丈夫かということを何度も問われている部分だと思っています。  それから、この県民投票について、一ページの方にも入れましたけれども、名護市、これは名護市は基地に賛成をしている、あるいは事実上受入れを決めている市長が誕生していますけれども、この県民投票の結果を見ると、反対一万八千票、賛成四千四百五十五票ですね、四倍も多いんですね。つまり、県民投票をするまでもなく、辺野古の是非を問うていれば、争点そらしがなければ、名護でも違う結果が出ている可能性もあった。宜野湾市でも同じような結果が出ています。  いわゆるそういう数字について、争点をしっかりと示して選挙では戦わなければならないのを、振興策という、今回また参議院選もそうです、それから沖縄における三区の補選でもそうです、振興策対基地問題という、こういう土俵の違う戦い方はもうやめた方がいいですね。がっぷり四つに組んでしっかり戦って民意を確認をする、それが選挙にとって必要だと思っています。県民投票や市民投票、住民投票を必要としているこの状況がやはり問題点だというふうに私は思っています。  県民投票が示したのは、まさにこの国の民主主義が、選挙民主主義が機能していないことの証左だというふうに思っています。
  191. 井上哲士

    井上哲士君 基地推進の一つの政府の理由は、負担軽減、沖縄の負担、基地負担の軽減ということでありますけど、先ほどのお話にありましたように、基地外での事故がたくさん起きている。結局、辺野古に移転をしても、そこのヘリなどがまた住宅地などに来て事故を起こすことがあるじゃないかということもありますし、また、この間、非常に外来機が逆に増えているということがあると思うんですね。  だから、負担軽減を言いながらこの辺野古移設が強調される一方で、むしろ負担が増えているんではないかと思うんですけど、その辺の実態についての御見解をお願いしたいと思います。
  192. 前泊博盛

    公述人(前泊博盛君) これ、もう、私も、普天間基地の真横に研究室がありますけれども、物すごくうるさくなりました。それから、我が家の上空を十時を過ぎて十一時より前にオスプレイも帰っていくと、家が震えるほど揺れます。それから、これは普天間が返るという、五年以内閉鎖と言いながら、昨年春から秋にかけて滑走路のかさ上げ工事も行われたんですよ、普天間基地の。そして、写真にも入れましたけれども、今、兵舎の改築工事、どんどん進んでいます。二月に返すと言ったのに、県民が協力しないから返せないんだと言いながら、普天間の強化がどんどん進んでいました。何をするんだろうと思ったら、嘉手納飛行場が一本滑走路の改修に入って、そのための、いわゆる航空機あるいは輸送機がダイバートという形で普天間を使うようになって、普天間の被害、物すごい増えているんです。  そして、嘉手納についても、横田にオスプレイが配備をされましたけれども、これも結果として沖縄で訓練をするために飛んできていると。そして、沖縄におけるヘリポート、ヘリパッドですね、六十二か所だったのがいつの間にか八十八か所に増えているんです。訓練をする場所の強化がどんどん進んでいると。  それから、沖縄の負担軽減という言葉が国会でもよく出てきますけれども、負担軽減でいったら、矢臼別あるいは日出生台、訓練の内容を見たら十七キロも飛ぶような長距離砲を撃っているんですね、クラスター弾を撃っているんですね。沖縄の一〇四号線越えでは四キロがせいぜいです。そこではできなかった訓練を本土に移転する、そのための費用を日本側に負担させる、さすが宗主国と沖縄で言われていますけれども、賢い外交をしているな、アメリカはというふうに誰もが見ています。  こういう負担軽減を理由に日本側の負担を増やす形で訓練を移転する、そしてそのことによって沖縄の負担が軽減されているかのような印象操作が行われている、この問題についても国会でしっかり議論をしていただければというふうに思っています。
  193. 井上哲士

    井上哲士君 よく沖縄は基地に依存した経済だという誤解があるわけでありますけれども、この間、知事選挙でも争点になりましたけど、むしろ返還した基地の跡地で非常に経済が発展をしている、逆に基地が今この経済の阻害要因になっているということが随分浮き彫りになったと思います。  一方、選挙ではそういう基地か経済かと言いながら、政府の予算を見ておりますと、一般予算を減らして基地予算を増やすことによってむしろこの基地依存経済を逆に高めるような政策になってやしないかという印象があるんですけど、その点、いかがでしょうか。
  194. 前泊博盛

    公述人(前泊博盛君) これはもう御指摘のとおり、今日、三ページの方にも資料を入れましたけれども、グラフ見ると分かると思います。基地を逃れたいと脱基地経済を訴えた知事が誕生した途端、一般の振興予算を減らして防衛予算を増やしてくる、あるいは、四ページの方にも入れましたけれども、政権が保守県政、つまり自公が推す政権になると沖縄の当初予算が減るという、これはどういうことなのかです。反対をすると増えて、賛成をすると予算が減るという、こういう予算の組み方をしていること自体、この国の、この政府の品格が問われていると思います。基地を受け入れなければ予算を減らすぞと脅しながら、基地を受け入れると予算を減らしてくるという、こういうつじつまの合わない、むしろ保守側は自分たちが政権を取ったら予算が減るという、そういう逆に行ってしまうという、こういう矛盾があります。  それから、沖縄予算三千億円台を維持しているといいますけど、中身を見たら、自由度があった民主党時代につくっていただいたあの一括交付金、どんどんどんどん減って、一千六百億が今一千億まで減っています。六百億円は直轄分に変わっています。こういう予算の中身まで国会の中でしっかりとチェックしてくれているのかどうか。恫喝型の予算を組まれている沖縄からすれば、こういうことがあってはならないと思います。  それから、基地が本当にもうかるというのであれば、なぜこの限界集落を迎えている地方が引き合いにならないのか。基地がもうかるなら全国の皆さん手を挙げてどんどん引っ張ってください、沖縄はもう要らないと言っているわけですから。こういう議論もしてほしいというふうに思っています。
  195. 井上哲士

    井上哲士君 時間ですのであれですが、言葉どおりに沖縄の民意を真摯に受け止めるように、国会で議論していきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  196. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 無所属クラブの薬師寺みちよでございます。よろしくお願いいたします。  まず、五百旗頭公述人にお伺いさせていただきたいと思います。  先ほど大野議員も取り上げておりましたけれども、私も日本版FEMAの創設というものがすごく重要になってくるんではないのかなと思って、以前より議論させていただいているところでございますけれども、公述人が今お考えになっていらっしゃる復興庁の後継組織につきまして、少しお考え、御披露いただけますでしょうか、よろしくお願い申し上げます。
  197. 五百旗頭真

    公述人(五百旗頭真君) ありがとうございます。  先ほども申し上げましたように、アメリカのFEMAをどう適用するかというよりは、日本として、実は阪神・淡路以後、この列島は地震の活動期に入って、天災は忘れた頃にやってくると言うけど、忘れる暇もないぐらい毎年毎年来るんですね。日本はその意味で、災害に対して最も経験豊かな、そして、それを対処を重ねるとともにレベルを上げてきているんですね。  例えば、プッシュ型支援を熊本地震で初めてやったと。あれは、東日本震災のときには関西広域連合が、自分たちは神戸の経験があると。それで、自分たちの地域内で何が起こったかも分からないときに、全国から早く要請せよと、何が欲しいんだと聞かれるんですね。そんなこと答えている暇ないよという、そういう経験があるものですから、東北に対して何が欲しいか要請してくれとは言わない、自分たちの経験から、最初の一週間、何が要るかほぼ分かる、一か月になったら何か分かると。だから、見繕いで、空振りになってもいいから送って、人を付けていくので、あとは付いていった人がニーズを報告してくれると。そういうふうにしてある地域のプッシュ型として行われたものが、今や政府として熊本地域全体に行くんですね。  それから、東日本震災のところでグループ補助金というのが非常に役に立って、さんさん商店街とかみんなもうお手上げ状態でやれないと思っていたところで、国が半分出してくれる、そして四分の一は県が出してくれる、自己資金は四分の一だけでいいと、それも借りることができるというので、希望を取り戻して商売を始めるというようなことがあって、非常にあの件だけは、復興構想をやるけどと、あれを増やしてくれ増やしてくれなんですね。いろいろ文句を言われるけど、あそこは増やす。  その経験が今度は熊本地震でも生きて、健軍商店街というのはもうシャッター通りになりかけて諦めかけていたんですが、グループ補助金が来るというのでみんな気持ちを持ち直して、また復活しているんですね。ふだんの倒産率よりも熊本地震の年の方は七つしか倒産がないと、例年より少ないぐらいだったんですね。というふうなサポート体制もできてくるというふうに、経験を積む中でいろんなサポートをできるようになっているんですね。  そういう意味で、日本は別段FEMAも、偉大な経験で、いろいろ経験の中で試行錯誤していらっしゃいますけれども、我々日本としてこの経験の中で大事だと思うこと、それは何よりもやはり最初の危機管理状態、災害対処のときに分権的な対応しか警察、消防、自衛隊等々ができない。その全体としてどこへどれぐらいどういうのが行ったらいいかという、司令部なし、指揮官なしの分権的部隊の対応なんですね。これは敵が弱ければそれでも済むかもしれない。しかし、今危惧されているような南海トラフとか首都直下とかいう巨大災害のときには、よっぽどいい作戦を持っていい指揮統率がないと勝てるはずがないんですね。そういうのをしっかりやる。同時に、事前の備えをやって、事が起こってから巨大事業のお金を使うというよりも、事前に人々の命が守られ、コミュニティーができるだけ守られるような対処をした方がいいと。そのためにもやはり統括機関が要るというふうに思っています。
  198. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 ありがとうございます。  私はその災害以上に少し幅広に考えておりまして、例えばサイバーテロのようなものもこの危機管理庁というような中でしっかり管理をしていただくべきなのかなと思うんですね。余りにもこの日本というのは危機意識というものが安全保障におきまして薄いんではないのかなという意識がございます。その場限りの組織をつくるというのではなく、先生おっしゃったようなシンクタンクの中にその経験を生かしながらインテリジェンスを蓄積していく、そこの力となる、やはり中央省庁の中でしっかりとしたその司令塔を庁として置くというような私、考え方を持っておりますけれども、先生のお考えをお聞かせいただいてもよろしゅうございますか。
  199. 五百旗頭真

    公述人(五百旗頭真君) ありがとうございます。  国がなかなか防災復興庁といっても動いてくれない危険を感じながら、私のシンクタンクでは科研をもらって全国の心ある人を集めて、それも私のようなのは、私や御厨、飯尾なんていうのは、社会科学の方から災害対処どうするかというので復興構想会議やったんですが、それとは別に、防災工学といって、理工系で実際の地震のメカニズムがどうで対処の問題はどうでというようなこと、そういうのが非常に、むしろ圧倒的多数なんですね。その両方の人を集めて、南海トラフというとんでもない事態に対して何が対応で忘れているのか、抜けているのか、何をしなきゃいけないのかという総合的研究を始めようとしているんです。そういう意味で御趣旨にその点は合うかなと。  ただ、サイバーの話になりますと、これはとても手が届かないと。これは非常に特殊な専門的分野で、先端技術を伴うもの。サイバー、宇宙、それから電磁波、こんなものが今、最も重大なものになりかけているんですね。昔は陸戦が主であってと言っていたのを、ナポレオンがトラファルガーでイギリスに負けた後、やはり海の支配が大事だと、海上権力。そして、二十世紀の二つの大戦で空だねというふうになったんですよね。今はその前に情報の前さばきというものでしくじったらおしまいだと。電磁波やサイバー攻撃で脳神経と通信、目も耳も潰されてしまったらどんなに立派な部隊の訓練やっていても何の役にも立たない。そういう局面へ来ているんですね。  これはやはり相当専門的に対処し、先端的なもの、国際的な基準の中で、相手の国は、大国はその能力持っていると、こちらがない場合にはやられっ放しですね。どういうふうにすればサバイブできるのかということを真剣に考えなきゃいけない。これはやはりその専門機関が要ると思っています。
  200. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 ありがとうございます。大変参考になりました。私もこれから少しの議論にも、参加していこうかなと思っております。  やはり、我々が想像以上のもので、例えば私が今厚生労働省の中でちょっと相談をさせていただきますところにおきましても、やっぱりゲノムを編集するというような技術なんかも、実際に、じゃ、どこでどのようにいつ議論されているかと。アメリカでしたらまさにそのいわゆる戦略の中で、防衛の中で議論されているという現実がございます。ですから、その一省庁の厚生労働省というような中だけではなく、多省庁でやっぱりこれがどのように活用されて危険性があるのか。例えば介護用具でパワーを、HALというものなんかはパワーが、ここ、腰にはめれば腰の負担が減るということで利用されたり、リハビリに利用されるんですけど、一方、それが、じゃ、軍事に利用されるというような形で他国では議論されていたりいたします。  ですから、しっかりこれから私どもが、そういう善意で開発したものが悪意で利用されるということも含めて議論を展開していく必要があるのではないのかなと思っておりますので、また先生の御指導をいただきたいと思っております。ありがとうございました。  前泊公述人にお伺いさせていただきたいと思います。  私もいろいろ沖縄の問題というものにつきまして実際に議論した経験がございます。昨年の通常国会で駐留軍関係離職者の臨時措置法という中で、しっかりその基地で働いていらっしゃる皆様方につきましても労働環境を整備し、そして再就職等につきましても議論を尽くしていかなければならないなという中で、いろいろ議論の中の意見も述べさせていただいたところでございます。  やはり私どもがしっかり、今は基地があるという中で、それに関係なさっている皆様方、また移転をなさることであっても、その移転先でも若しくは移転のその後そこに残られた皆様方についても労働に責任を持っていかなければならないと思っておりますけれども、先生の御意見いただけますでしょうか、お願い申し上げます。
  201. 前泊博盛

    公述人(前泊博盛君) 雇用の関係でいうと、沖縄復帰後ずっと有効求人倍率が〇・三とか〇・二とか、そういう状況がありましたけれども、今は一・四、一・五です。今ならむしろチャンスというぐらいに人手不足の中で人を求めています。そして、基地の中で働いている基地従業員の皆さんは、ある意味ではそれぞれのエキスパートです。活躍の場は幾らでもあるというふうに思っています。基地返還については、それほど失業が問題になるということではもう今の時代はないと思います。もちろんタイミングが必要ですね。今追い風が吹いているときにどうするかというのを、議論は必要だというふうに思っています。これは普天間問題でもそうですけれども、返還のタイミングというのを外してしまうと二十年も膠着をしてしまいます。  橋本総理がいたときに動かしてくれた、そのときの勢いでしっかりとできるかどうか、これは恐らく、私、惑星直列じゃないですけれども、人が居合わせると思うんですね。あるいろんな問題を取り上げるときに、動くときというのは人が居合わせてくれます。それはもちろん、大統領、あるいは総理大臣、あるいは官邸の中の人間、それから国会の中の皆さんが本当に居合わせてくれて動いていきますけれども、基地従業員の問題についても、返される今なら幾らでも仕事があります。しかし、これがまた時期を過ぎて日本という地域の経済が下降してきたときには、やはり基地がなきゃ生きていけないという人たちが増えてくるかもしれません。タイミングといったものを見定めながら、そういう対策をしっかりと打ってほしいというふうに思っています。
  202. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 ありがとうございます。  それにつきましてちょっと教えていただきたいことがございます。先ほども先生おっしゃいましたように、いつも選挙になってくると、基地の問題か経済政策かというところでということがございました。これまでの政府の沖縄振興策というものにつきましてどのような御意見をお持ちなのか教えていただけますでしょうか、お願い申し上げます。
  203. 前泊博盛

    公述人(前泊博盛君) 沖縄予算というふうに言いますけれども、民主党時代に沖縄振興予算というふうに名前を変えてしまったために、サトウさん、スズキさん、これ給料だよと。沖縄に対しては、これ、ヒガさん、キンジョウさん、ボーナスですと。同じようにもらっているのに、呼び名が違うために沖縄だけは特別にお金をもらっているかの印象を与えていますけれども、そんなことはありません。  四十七都道府県全部、政府予算出ているんですけれども、その予算を通して沖縄振興を行うというふうに言ってきたんですが、四十七年目を迎える、この復帰から四十七年たって、沖縄の状況、所得水準、全国最低のままです。なぜなのかと。失業率、全国最悪のままです。なぜなのかと。子供の貧困率、全国最低のままです。四十七年間、この政府が、僅か人口一%、面積〇・六%のこの地域に全力を挙げてもこの解決ができていない理由は何なのかというのは不思議です。経済大国としてほかの国に支援をしながら、それだけノウハウを持っているこの国が、なぜ一%のこの人口を最低水準のまま放置しているのかというところですね、不思議でしようがありません。  政府の振興策そのものが、在り方が基地問題と絡んでいるような気がします。基地を受け入れないと困るから、基地をはじけないように基地に依存するような経済をつくろうと必死になってきたのかなというふうな疑いすら持っています。ある意味では、自立できるような経済を掲げながら自立させない振興策を展開していないか、検証が必要なような気がします。
  204. 金子原二郎

    委員長金子原二郎君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人方々に一言御礼を申し上げます。  本日は、有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  午後二時に再開することとし、休憩いたします。    午後一時四分休憩      ─────・─────    午後二時開会
  205. 金子原二郎

    委員長金子原二郎君) ただいまから予算委員会公聴会を再開いたします。  平成三十一年度総予算三案につきまして、休憩前に引き続き、公述人方々から御意見を伺います。  この際、公述人方々に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。委員会代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日は、平成三十一年度総予算三案につきまして皆様から忌憚のない御意見を拝聴しまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、御発言は着席のままで結構です。  それでは、教育・子育て支援について、公述人公益財団法人あすのば代表理事小河光治君及びみらい子育て国ネットワーク代表合同会社リスペクトイーチアザー代表天野妙君から順次御意見を伺います。  まず、小河公述人にお願いいたします。小河公述人
  206. 小河光治

    公述人(小河光治君) ありがとうございます。  本日は、このような貴重な機会をいただきましたことをまずは心から御礼を申し上げたいと思います。子どもの貧困対策センター公益財団法人あすのば代表をしております小河と申します。  本日は、お手元の資料にございますように、子供の貧困対策の推進と法改正に向けた提言ということで、まずは、もちろん来年度の予算、それから税制改正に関わる問題と、そして今まさに子どもの貧困対策法が施行からこの一月で五年を迎え、これ議員立法で先生方にも作っていただいていますが、今後また改正に今向けて動いております。こういう中でも、予算というとても大きなものもあるかと思いますので、併せて今日はお話をさせていただければというふうに思います。  まず、もうこれも御理解いただいていると思いますが、一ページをめくっていただきまして、子供の貧困対策に関する主な歩みについて少し振り返りたいと思います。  平成の二十一年、二〇〇九年の十月に厚生労働省が初めて子供の貧困率を発表いたしまして、当時も七人に一人のお子さんが貧困状況ということが分かりました。私は、前職、あしなが育英会、親を亡くしたり障害を持っている子供たちを支援している会に長く所属しておりまして、当時学生たちが、彼ら自身も貧困状況にあるんですが、こういう子供の貧困状況を何とかしたいということで、初めて子どもの貧困対策法を作ってほしいということを提唱したことが発端になります。  その後、国会内でも二〇一三年には院内集会をしたり、あるいは代々木公園で市民集会、こちらには与野党の先生方、そして当時文部科学大臣だった下村博文議員にも御参加をいただきました。大変もう全議員の皆さんの御理解をいただいて、二〇一三年の六月、平成二十五年の六月に子どもの貧困対策法を議員立法で全会一致で可決、成立をしたということでございます。  それで、その次のページに移りますが、その後、総理を会長にする子どもの貧困対策会議も開かれまして、大綱も定められて、二〇一六年の二月には子どもの貧困対策推進議員連盟、これは法設立のときの厚生労働大臣だった田村憲久議員が会長になっていただいて、更に超党派で応援をしていただいて今に至っているということです。  もう皆さん御理解いただいていると思いますが、二〇一七年の六月には最新の貧困率が発表されまして、こちらのデータ、二〇一二年段階では一六・三%の貧困率が一三・九%、一人親世帯については五四・六から五〇・八ということで、下がっておるというような実態もございます。  そして、今まさに、今月の五日ですね、子どもの貧困対策推進議員連盟の総会が開かれまして、この法律の見直しに向けて本格的な議論が今スタートしているところでございます。  次のページに移りまして、来年度の予算、そして税制改正に向けた私どもの提言をお話しさせていただきます。詳細につきましては資料後ろの方に、こちらに「子どもの貧困がなくなる社会へ あすのば提言二〇一八」というところもありますので、御参照もいただければと思います。  まず、税制の問題ですが、寡婦控除の問題、これは、婚姻歴のない未婚、非婚の一人親にも寡婦控除を適用していただきたいということです。これは、今、私ももう理解しておりますが、特に公明党の大変厚い御支援をいただいて、与党での税調でも、こちらについては、今まで、未婚の一人親の場合、もしこれ寡婦控除が適用になれば住民税非課税になるというようなラインまでは今回持っていただくというようなことになりましたし、その他手当も付けていただいているところでございます。  その他、低所得者世帯への給付型の奨学金、授業料減免だとか、高校生への給付型の奨学金、あるいは生活保護世帯の大学、専門学校進学における世帯分離を、これをなくしていただきたいというものについても、これも前進しております。  また、児童扶養手当の毎月払い、それから支給期間の延長だとか、あとは、子供の貧困対策に関しますと、メーンのターゲットというのが一人親世帯、それから生活保護世帯、それから社会的養護の世帯というか、その家庭のお子さんという分野、三分野にメーンが、今のところメーンターゲットになっているんですが、そこから漏れてしまう、例えば二人親でもお子さんが多いような家庭、あるいは外国にルーツを持ったそういうお子さんなどの支援というのもまだまだというところもございますので、その辺りも更に充実していただきたいというようなことを要望させていただいています。  この具体的な内容については、次のページから、実はこの五年間にわたって子どもの貧困対策法がどれだけこの施策に影響を与えてきたかというのも取りまとめておりますので、そこで詳しくまたお話をさせていただきたいと思います。  まず、一人親世帯でございますけれども、こちらについては、児童扶養手当、これについては、もう御存じのとおりですけれども、二〇一七年から二人目以降には倍増ということで最大一万円、三人目以降は三千円から最大六千円ということで、大幅に増額していただいています。これなんかも、子供の貧困対策の大綱には盛り込まれていないような内容にもかかわらず、これだけこういうようなことができたということは、そういう意味では、当時、五年、まあ六年前にこの法律できたわけですけれども、その当時のコンセンサス、大綱ができた五年前の当時のコンセンサスよりも、今本当に実際に行われている政策がこれだけ前に、法律や大綱よりも実際に施策の方が前に進んでいるというような実態があることを一番端的に表している例が、この一つの例に言えるのかなと思います。  児童扶養手当につきましても、これ、四か月に一回の支給が今年の十一月からは二か月に一回に変わるとか、それから今、婚姻歴のない一人親のお話をしましたが、厚生労働省管轄の二十五事業については、こちらはみなし適用を去年からしていただいているというようなことでございまして、先ほど寡婦控除の問題については申し上げたとおりですが、更にこの問題については今年も引き続き検討していただくという力強い御支援をいただいていることに本当に感謝をしております。  続きまして、生活保護世帯に関しても、こちら、先ほど世帯分離のお話をしました。こちらについてもこの方向性で、特にこれ、もう議連でも大変推進をしていただいていますが、進学をする、特に大学、専門学校に進学をする場合には、自宅通学の場合は十万円、自宅外の場合は三十万円の給付金制度をつくっていただいたりとか、自宅通学のときの住宅扶助を減らさないというような制度に、その方向に向けて今進めていただいている。また、入学のときにお金が掛かるわけですけど、この入学準備金についても、今回、十七年ぶりに、ここにありますように、それぞれ二万円から三万円の大幅な増額をしていただいているというようなこともございます。  未就学児についての保育、幼児教育の無償化については、もう皆さん御存じのとおりで、既に前に、更に二〇二〇年度に向けて進めていただいているというところでございますし、次のページへ行きますが、小中学生に関しましても、この入学の準備のときの就学援助、これ各自治体で行われているわけですが、これも、これは各自治体の努力だと思いますが、二年前に比べると、小学校、五・一%しか前倒しの支給がなかったのに今は七二%、これだけ急激に増えていると。中学校も同様なような数字が出ているというようなことでございます。  あと、しかしながら、今後の課題というところになりますと、完全給食の全校実施だとか、あるいは無償化とかですね、長期の休暇中にも給食を提供する、ここは先駆的にやられているところもありますので、さらにこれを全国どこでも同じように広げていただくのが一つの課題であるかなというふうに思います。  続きまして、高校生の方に行きますと、なかなか、実は高校生の方の支援というのが実は不十分でまだまだあるというところはあるかなというふうに思います。しかしながら、これも、私立高校の授業料の減免制度についても、来年度から年収五百九十万以下、導入をしていただくだとかということがありますし、入学のときに更にお金が掛かるというところがあるので、この辺りについても更に支援をしていただく、通学のときの交通費の補助なども必要だというようなところがあるかというふうに思います。  そして、最後ですね、今後の向けた、先ほど申しましたように、あと大学、地方自治体についても次のページのとおりなんですが、続きまして提言の方に移らさせていただきたいというふうに思います。  十ページの方を御覧いただければと思います。  こちらについても、実は先回、先ほど申しましたが、三月五日に開かれました議連の方でも、こちらにも、中に詳細ございます、同じ内容なんですが、私どもの方から議員連盟でも要望させていただいている内容です。具体的にどの辺りを変えていただきたい、見直していただきたいかというところを、十項目ありますが、少しかいつまんでお話をさせていただければと思います。  まず、目的、それから基本理念のところなんですが、子供の貧困を断ち切るというところはとても重要なんですが、未来の部分だけではなくて、現在の子供の貧困の解消に向けて、もうこれ既にやっていただいているんですが、ここを是非入れていただきたいということです。所得再分配の機能を強化して、子供の将来にかかわらず、子供やその家族が置かれている貧困の現状を改善するということを明記していただければ現状に沿う形になるのかなと思います。  そして、二点目は、子供の貧困は社会の課題であるということが大切かと思います。これは先生方も大変御理解いただいているように、自殺対策の基本法にはまさにこの部分、うたわれていて、これで自殺の対策がかなり前に進んでいる。個人の問題ではなくて、家族の問題ではなくて、それは社会的な要因もあって、社会的な取組として実施する必要があるんだということも是非明記をお願いしたいと思います。  三点目です。子供の権利ということについてもとても重要なことかなと。特に、こういう貧困状況にあるお子さん、虐待とも非常にリンクしているというふうに言われています。そういうお子さんにこそ、子どもの権利条約の尊重ということで、児童の年齢及び児童の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、心身共に健やかに育成される、これは児童福祉法改正でこういった文言を入れていただいておりますが、これと同様に、方向性に持っていっていただきたいというふうに思っています。  あと、子供の貧困の指標もとても大切なポイントになってくるのかなと思います。これ、今、先ほど言ったように、実際に今貧困率は下がっているというような状況でもございますので、こういう一人親の、しかしながら、先ほど言ったように、一人親の貧困率、OECDの中ではまだ最悪と、最悪レベルという状況。働いているお母さんの割合というのは世界でトップレベルにもかかわらず、そういう状況がある。ここも是非とも、こういったものを含めた改善目標というのをしっかり入れていただければ。多面的な子供の貧困に関する指標を設定して、その改善目標を定めていただきたいということです。  そして、それぞれの項目に関してなんですが、次のページ、十二ページですが、今度は地方自治体の計画についてです。  都道府県には、これ努力義務ということで、対策計画を作るというふうに法律でうたわれているんですが、実際これ、全ての都道府県で今計画がございます。基礎自治体については何も法律には書かれておりません。これは是非、基礎自治体こそ子供たちが身近に今生活しているところでもあります。そこについても、努力義務という形で、是非計画の制定と、ここにはやはり国の予算措置、まさにそこが大切になるかと思いますので、その部分も併せてお願いをしたいと思っています。  続きまして、教育の支援の分野ですが、こちらはもう御存じのとおりで、幼児教育、保育、高等教育の無償化に加えて、小中高時の教育関連負担の軽減ということが大切かなと。切れ目なく支援が行くということで、特に教育関連費の負担軽減というところがまだまだという部分がございます。  生活の支援に関しては、これは、家庭や学校に加えて、今、第三の居場所と言われている子供食堂も今全国に爆発的に広がっています。無料学習支援あるいは居場所といったような、そういった場所もございます。こういったところの運営支援というのもとても重要な項目になってくるのかな。  続きまして、十四ページ、八番目です。  保護者の就労の支援ということです。やはり、これ就労の支援をしないことには根本的には子供の貧困の解消につながらないということで、保護者がより安定した雇用に就くことができて、就労による所得の増加の促進というところも必要な部分かと思います。  九点目の経済的支援ですが、こちらについても、所得の再分配をより強化をしていただいて、多面的で大幅な経済的支援の拡充というのが必要とされています。これ、今まだ、子供の貧困率に関しては先ほど言ったように解消しているんですけれども、一部の世帯についてはまだ再分配後の方が高いというような現状も今残っているというところで、なかなか働きたくても働くことができない家庭のお子さんもいらっしゃる、そういうところにはやはりより再分配を強化していただいて、一人親世帯、生活保護世帯のみならず、多面的で大幅な経済的な拡充が必要であるかというふうに思います。  そして最後、十点目ですが、調査研究の分野です。  これ、各都道府県とか自治体でも今子供の貧困の調査は、これはまさに地域の交付金を、子供の未来応援交付金というのを使っていただいてこれやられています。しかしながら、全国で今どういうふうになっているかということがまだ分かっていないということで、全国レベルでの子供の生活実態調査の実施というのが必要かなというふうに思っております。  どうもありがとうございました。
  207. 金子原二郎

    委員長金子原二郎君) ありがとうございました。  次に、天野公述人にお願いいたします。天野公述人
  208. 天野妙

    公述人(天野妙君) 本日はこのような貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございます。天野妙と申します。  私のことは皆さん御存じないと思いますので、簡単に自己紹介をさせていただければと思います。私は、現在、十歳、六歳、二歳の女の子の母親でございまして、かつ女性活躍推進のコンサルティング会社をやっております。  実は二年前に、三女が生まれた二〇一六年ですね、世間では保育園落ちた日本死ねというのが大変はやりまして、自分の子供が待機児童になったときに死ねとは言いたくないなという気持ちがありましたものですから、保育園に入りたいという前向きなキーワードで発信しませんかということで呼びかけを行った者でございます。それから、希望するみんなが保育園に入れる社会をめざす会という会を発足し、現在、みらい子育て国ネットワークという団体名に変更しまして、子育ての当事者の声を束ね、子育てしやすい社会にすることを目的にしまして提案や発信をしている団体の代表を務めております。  実は私、ちょうど二年前に衆議院の厚生労働委員会にお呼びいただきまして、そのとき、ゼロ歳の子、待機児童だったものですから三女を連れてきたんですけれども、議場には入れないということで、控室で友人に預かってもらっていたんです。彼女がその傍聴席に行こうと思ったら、傍聴できませんということで断られてしまったんですが、今日、見ていただくと、傍聴席に私の友人がゼロ歳を連れて傍聴に来ておりますので、参議院すばらしいなというふうに思っております。誠にありがとうございます。  そんなわけで、一般市民が政治的発言を二年間してきたわけなんですけれども、そうするといろんなところでハレーションが起きまして、今、天野妙とインターネットで検索すると、スペースキーを押すと検索候補キーワードというのが出るんですが、最近、左翼と出てきまして、いや、ちょっと結構気がめいるということを夫に教えていただいたわけなんですが。  しかしながら、最近、十歳に長女がなりまして、二分の一成人式というものを迎えました。これはこれで、実施するのがいいのかいけないのかというような議論はもちろんあるんですけれども、娘から、将来の夢をどういう職業名にしたらいいのかという相談を受けたんですね。で、どういうことかというふうに詳しく聞いたんですけれども、世の中になぜいじめや差別がなくならないのか、性別で役割や仕事、服装までもが決まってしまうのか、女性はなぜ名字を変えなくてはいけないのか、なぜ結婚は男と女というふうに決まっているのかと。人は、それが余り良くないなと分かっているのに変われない、変えられないのかという人の心の謎を探り解決できる人になりたいと言うんですね。これ、職業の名前何だろうなというふうに私も答えが出せずに、彼女は今ない仕事と題して発表を行いました。  この相談を受けたときに私、何よりも悲しいなと思ったことが、十歳の子供が、こういった課題を今いる大人たちで解決できない、だから自分たちでしようと思っていることに、大変残念だなというか責任が重大だなというふうに思いまして、今いる私たちで、この代でこの課題を終わらせたいなというふうに二年間市民活動を続けているという次第でございます。  というわけで、本題ですけれども、さきの選挙で国難と言いました少子化ですけれども、言い換えますと、なぜ子供が生まれないのかという意味かと思います。  この少子化という難攻不落の山の頂上を目指すにはどうしたらいいのでしょうかということで、政府の方針で女性が活躍できるというルートを考えた、多くのルートがございますけれども、ページめくっていただきまして、五ページにいろんなルートがあると。少子化克服するためには様々なルートがある中で、今日は端的に二つルートを御説明したいなというふうに思っております。  一つ目は、何度も口を酸っぱくして恐縮ですけれども、待機児童対策かと思っています。なぜかというと、言うまでもありませんが、女性の継続就労の維持ということと労働の機会創出ということです。  待機児童問題、なかなか解決しませんけれども、この解決のつぼが何かというと、一つに、もう答えは、レバレッジポイント、保育士不足の解消というふうに思います。今、七十六万人潜在保育士がいますけれども、労働市場に帰ってこない理由というのは、一つに給与、そしてもう一つ労働環境です。  釈迦に説法とは存じますが、そもそも待機児童の概念というのをちょっと御説明したいなと思いまして、七ページ以降を御覧いただければと思います。  まず、保育園の入園システムというのは十一月に行われる玉入れなんですね。この勝敗の結果というのは二月に出ます。籠の外に落ちた場合に備えて、認可外、つまりこの円の中ですね、サークルの内側に入るために、生まれる前から保活といって保育園を入園する活動を行うわけです。ただ、この籠に入れても希望の園に入れるわけでは決してございません。  八ページに行っていただきますと、玉の大きさ、これはポイントの大きい順に並び替えがされまして、希望の低い園でもどんなに遠くても受け入れて通わなければならない、こういった現状でございます。籠の外の認可外の入園システムは、入園システムですとか選考方法が全て違いますので、親たちは必死になってしまいますと。  更に言うと、九ページにあるとおり、待機児童の称号というのは簡単にもらえるものではありません。まず、申し込まないと待機児童にはなれないということです。さらに、希望園を例えば遠いから二園しか書かないというと、特定園の希望者として、待機児童としてカウントしてもらえません。  ちなみに、千代田区ですけれども、待機児童は現在ゼロですけれども、隠れは二百四十七人いまして、特定園希望者は百六十二名います。例えば、千代田区に住む霞が関で働く共働きの世帯を想像してみていただけたらと思うんですが、四谷の人が神田まで朝晩送り迎えをすると想像すると、なかなか難しい、やっぱり四谷近辺の保育園に行きたくなるよねというのは至極当然の理由かなというふうに御理解いただけるかと思います。  また、我々は待機児童の問題を分析しておりまして、ツイッターというSNSがあるんですけれども、こういった文字からテキストマイニングで分析しますと、十ページのようなワードが多く出現しております。今年は、落ちたというより落ちるといった不安が傾向として見られるかなというふうに思っています。  十一ページ以降ですけれども、よく保育園をつくることに反対する方々から、つくり過ぎちゃうともったいないじゃんという理論があるんですけれども、つくり過ぎるかどうかという感覚なんですが、今年、確かに待機児童が二万人を切りました。十二ページにありますとおり、実際、待機児童数は二万人を切って減っているんですけれども、隠れ待機児童というのは実際五万三千人という形で増えているという形になっています。  また、十三ページを御覧いただきますと、東京は相変わらず、まあ頑張ってはいるんですけれども、数は多くて、神奈川、埼玉では増加傾向にあるというところです。自治体別に見ますと、偏在がありますけれども、人口推計に女性の就業率の予測を掛けた需要は二〇四〇年まで減らないということが分かっています。現状、国の需要予測と民間の予測値が大きく乖離していますので、再度需要予測を算出する必要があるのではないかと考えます。  そのような中で、当事者の声を聞こうということで、我々の団体で三つの独自アンケートを実施しております。  十五ページ以降を御覧ください。  保活ストーリーといって、保育園に、先ほど申し上げた保活のものを調査しているんですけれども、これは二月五日から募集を集めまして算出、まとめたものでございます。御覧いただくように、当事者からは、保活が本当に不毛で大変だったということや、入りにくい現状、選べない、無理な働き方を強いられる、自治体の保育政策によって振り回されることへの多くの不満が寄せられました。  また、入園できても保育士の余裕のなさやスキル不足に懸念を感じておりまして、処遇改善などのスタッフの充実、定着を要望する声が寄せられました。  また、ツイッター上では、かみ合っていない子育て政策、十九ページになりますけれども、そういった共感の、漫画の共感の輪が広がっているというところです。  そして、保育者にアンケートを実施しましたところ、九二%の回答者が、いずれかの場面で人材が不足していると感じたというふうに答えました。御存じのとおり、保育園というのは保育士と子供の配置基準というのがございまして、ゼロ歳児は一対三ですとか、一、二歳児は一対六、三歳児は一対二十というような基準があります。しかしながら、この基準どおりに保育をしますと、トイレに行けない、便秘や膀胱炎になったといったような声が聞こえてきます。  また、あと、想像以上にペーパーワークが多い、同じような書類をたくさん作るということで、ペーパーワークよりも子供と向き合いたいといったコメントも多く見られまして、保育士の業務自体の見直しが求められているなと感じました。  また、二十七ページにあるとおり、国会議員など政策担当者や一般社会における保育職の専門性や業務負担への適切な理解が求められています。  また、資格を持っていれば、未経験やその場が初めてであっても一人の保育士としてカウントされてしまうことで、誰かが丁寧に教えてくれる環境下にない、また現場の人手不足が働きにくさを助長し、コミュニケーションが希薄で殺伐とした職場環境を生み、継続就労を困難にさせているという悪循環があるということが分かってまいりました。  京都大学の柴田悠准教授が二年前に、一・四兆円あれば、保育士の処遇を全産業平均までに設定して、潜在数八十万人の待機児童を解消できるというふうにしています。  現在、野村総研が算出しております潜在待機児童数は五十六万人ですので、再度待機児童数の数の見直し、予測の見直しをすると同時に、保育の量に注力しつつも、同時に質、特に保育士不足の真因を探り出して本質的な改善に予算を注入していただきたいと考えています。その結果、子供たちが健やかに育ち、私たちも安心して働くことができると言えます。  更に言えば、既に、先ほど学童のお話もありましたけれども、小学校の放課後に過ごす学童クラブでは、待機児童の問題、質の問題が浮上してきています。先日、基準の参酌化で自治体主導の運営になるというようなことが決まりつつありますけれども、安全性の担保が大変不安視されておりますし、子供を狙った性犯罪が増加している昨今で、今、子供の現場の安全性の確保を求められる、確保が必要かと思っています。国内でも、子供に関わる仕事やボランティアに就く人は、小児性犯罪の履歴がないことを証明するDBS制度の整備を検討してほしいなというふうに考えています。これは、イギリスですとかニュージーランドで既に導入がされている制度でございます。  続きまして、二点目でございますけれども、次のルートですね、家庭内、男性の家庭内進出のルートについて御説明申し上げたいと思います。二十九ページになります。  ここのレバレッジポイントは、男性産休の義務化でございます。括弧必須とさせていただいておりますけれども、今、六歳児未満の子供を持つ夫婦の家事時間、育児時間というのは、全体数の八分の一しか日本の男性はしていないということになっています。諸外国は全体数の二分の一を夫が担っている状況ですので、大変少ない量しか家事、育児を担っていないということです。  また、内閣府の男女共同参画局の資料によると、こちらにちょっと資料がないんですけれども、未就学児のいる家庭で全く家事、育児をしない夫、ゼロコミット男子というのは、妻の就労に関係なく七割いるということです。  また、三十二ページにありますとおり、二十一世紀成年縦断調査によりますと、第二子以降が生まれる確率と夫の育児、家事時間の長さは正の相関関係があるという調査結果が出ています。つまり、七割のゼロコミット男子たちが週六時間以上家事、育児をすると、そのうち八割以上の確率で次子が生まれる、次の子が生まれるということであります。  今、一方、男性たち、ゼロコミット男子たちに何で家事、育児しないのというふうに聞きますと、いや、家事、育児をするきっかけがなかったというふうに答えます。自分は仕事に行っている間に産休、育休中の妻が家事、育児を全てやってくれていたので、御自身が家事や育児に関わるきっかけがなかったと。  そこで、今回の男性産休義務化、必須化の御提案をさせていただきたいと考えています。育休中に男性が家事、育児の担い手になることで一通りの家事、育児を学習するきっかけになるというふうに考えているからです。  現在、我が国の男性育児休業取得率というのは五・一四%、三十三ページにありますけれども、女性の八三・二からはるかに低い数字でございます。これが、二〇二〇年に一三%という目標、政府目標がございますけれども、大変遠いという状況でございます。また一方で、連合の調査におきますと、取得したかったというふうに回答した人は、取得したかったのに取得できなかったという方は四五・五%というところでございます。さらに、我が国で五・一四%のうち五日以内での取得というのが五七%になっているということで、大変少ない日にちで数少ない方々が取得されているということです。  また、ツイッターの調査を我々でしていますけれども、男性の産休義務化に賛成とした人は六五%で、産休自体に賛成とした人が九七%という調査結果がございます。よって、男性の家庭進出を加速度的に速めるためには一旦義務化してはどうかなというふうに考えています。  仮に十日間、土日含めて約二週間ですけれども、育児休業を男性が取得した場合のメリットを挙げていきたいと思います。三十七ページを御覧ください。  まず、日本社会全体のメリットですね。一つは、出生数の上昇ということ。二つ目は、産後うつの抑止ということになります。
  209. 金子原二郎

    委員長金子原二郎君) 公述人に申し上げます。  予定の時間を超過しておりますので、おまとめください。
  210. 天野妙

    公述人(天野妙君) はい、済みません。  三つ目は、児童虐待の抑止というところになります。企業側のメリットは表に挙げるとおりでございます。また、夫側のメリットにつきましては、夫婦仲が良くなるというのもありますけれども、子供との関係性が向上すると子供の、男児の成績が良くなるということが分かっております。また、女性側からするとキャリアの形成の機会の増ということにもつながっていくかというふうに思います。  また、こちら、三十八ページですけれども、少子化とジェンダー不平等の研究をされているハーバード大学の社会学者、メアリー・ブリントン教授によりますと、データとインタビューを分析して見えてきたものは、男女平等の社会を志向している国ほど出生率が上がっているということです。男性も女性も外で働き、また家事、育児も平等にやるという国ほど少子化になっていないということが分かってきているということでした。  私、子供が三人おりますけれども、誤解を恐れずに言うと、子供を産むと損をするという社会だということのように思います。私は、子供が、周囲から、三人いると、尊敬するとか、偉いねとか、よくやるねとか、私には無理とか、信じられないというふうに言われます。私も欲しいわと言う方はほとんど皆無です。つまり、親たちは、子供を産み育てることが得だと思っていません。女性たちは、子供を産んだら仕事を辞めなければならないリスクがあるのを知っています。育休で長期に会社を休めば隅に追いやられることを知っています。男性が育児参加しない現状で数多く子供を産むと、より自分に負荷が掛かることを知っています。子供を産んだ方が得する社会にしなければ、子供は増えていかないと考えます。  まず、子供を産んでも今現状損と思われていますので、この損をしない社会、これを早急に整備するためには、その中でもこの二つのレバレッジポイントに力点を置く必要があるというふうに考えます。是非、今国会で議論のテーマにしていただけたらと考えます。  以上となります。御清聴ありがとうございました。
  211. 金子原二郎

    委員長金子原二郎君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  212. 高橋克法

    ○高橋克法君 自由民主党の高橋克法です。  小河公述人、そして天野公述人、今日は本当にありがとうございます。  まず、小河公述人に質問させていただきます。  まず、僕は質問の最初に、子供の貧困対策に関する法律ができて五年がたって、いろいろな施策を行ってきましたけれども、それへの評価ということを聞こうと思ったんですが、先ほどるる御説明もいただきましたし、これから改正に向けての問題点の抽出も先ほどお話をくださいました。ただ、時間が余りないものですから、言い足りなかったんじゃないかなと、小河公述人はと。そこ、ありましたら、是非お願いします。
  213. 小河光治

    公述人(小河光治君) ありがとうございます。  先ほども申しましたように、この法律ができたとき、まあ六年前の成立の状況と今これだけ違っているという、これだけ、要するに、前にやっぱり行っている部分は非常にあるわけですね。私も正直なところ、この法律ができたとき、特に議員立法というのはなかなか実効性伴わないというふうに言われている部分があるので、果たして本当に子供の貧困がこれから解消になっていくのかどうかというのは、非常に危機感を持っていました。それが、私がいろんな方々と一緒にこのあすのばという子どもの貧困対策センターを立ち上げたきっかけでもあります。  しかしながら、今お話をさせていただいたように、普通なかなか、大綱に入っていない、検討という言葉も入っていないようなことが実際に施行されている、児童扶養手当の先ほどの二人目以降のですね、そういったような部分もあったりだとか、実際前に結果としてここまで進んでいるというところで、今回ちょうど、今議連の方でも、非常に大変タイトなスケジュールだというふうには伺っていますが、今回の国会の中で是非改正をというようなお話もいただいていますので、是非とも、さらに次の五年間を見据えて、より実効性の高いものにしていただきたいというふうに思っています。
  214. 高橋克法

    ○高橋克法君 小河公述人にお願いします。  子供の貧困の実態というのは非常に見えづらい、捉えづらいものだと思います。そういう中で、小河公述人には、現場に精通されている方でございますので、現場の具体的な事案として、この捉えづらい、見えづらい事案というのがありましたら、御参考までに教えてください。
  215. 小河光治

    公述人(小河光治君) 今も七人に一人のお子さんが貧困状況ということですけれども、ぱっと例えば町を見たときに、お子さん七人いたときに一人が貧困というのが、何となくこう実感が湧かないのが、多分我々誰もがそういうところなんじゃないかなと。  やっぱり、本当に今先生がおっしゃられたみたいに、見えづらいというか、ぱっと見た例えば服装とかで、もう明らかにこの子は大変だなというような子というのは非常に見えづらいという部分があるかと思います。  しかしながら、実は、履いている靴を見ると、サイズが合っていなかったりとか、実はぼろぼろの状況になっていたりとか、毎日実は同じ服を着て学校に来る子供たちがいるとか。例えば夏休みの期間になると、おうちの中で御飯を食べるというのが、一番食事の、まとも、まともと言ったらあれかもしれませんが、栄養の取れる食事ってお昼、給食しかない。長期の夏休みの期間になると本当に痩せてしまって、本当におなかをすかせているという子供たちがいるというようなやっぱり現状もあるんだろうなというふうに思います。  そのいかに見えにくさがゆえに、なかなか今まで子供の貧困が分かりづらかった。それから、やっぱり子供自身は声を上げづらいと。やっぱり、困っている人ほど声を上げづらいというのは大人でも同じだと思うんですけど、さらに、特に幼い子供なんかは声を上げづらい。これは虐待の問題でも同じだと思いますが、そこは根っこは一緒の部分で、より社会から見えないところに今そういう課題があるんだろうというふうに思います。
  216. 高橋克法

    ○高橋克法君 今の小河公述人のお話を聞いていますと、やっぱり先ほどおっしゃられたように、基礎的自治体の取組、またその基礎的自治体の中の地域での民間の方々の行動も含めて、そこが非常に重要になってくるなというふうに感じています。  そういう意味では、まだ努力義務、基礎的自治体は努力義務ですから、計画策定ですよね、たしか。(発言する者あり)都道府県が努力義務。基礎的自治体はまだ何も決まっていない。やっぱりその重要性というのは、今のお話を聞いても認識を改めていたしましたが、そういったことも含めて、地域レベルでの取組というのは非常に重要だということなんだと思うんですよ。  具体的にどういった方策、もちろん計画の策定の義務化というのも含めてですけれども、よりもっと具体的にあれば、お話しいただければと思います。
  217. 小河光治

    公述人(小河光治君) ありがとうございます。  とは申しましても、各自治体でも、基礎自治体でもそれぞれ努力をされていて、官民が、行政も民間も協力をされて先駆的なお取組をされていらっしゃるところもあります。  先ほど一つの事例で言いました、例えば給食、夏休みの給食も、夏休み、給食ないわけですけれども、これ、例えば奈良市とか埼玉の越谷なんかは、それを学童保育の中で提供すれば、さっき言ったように、毎日おなかをすかさなくてもいいような子供というのが出てくるというところもあるかなと、そういったようなお取組をしているというところもあります。  しかしながら、これ、ただ自治体任せというか、財源部分で、もちろん国も大変なんですが、自治体もやはりやりたくても人がいない、財源がないという部分があるかと思います。  先ほどちょっとはしょってしまいましたけれども、この地域子供の未来応援交付金という制度がありまして、これのお金を使って実は実態調査、各自治体も実態調査をやったり、その後の取組をやっているというような部分もあるんですね。なので、今あるものを更に、国のそういう意味では予算措置もしっかりした上で、基礎自治体に最低限例えばこのレベルまではしっかりやっていただきたいということをお願いするためにも、やっぱりちゃんと計画を作るような促しをしていただくということは重要ではないかなというふうに思います。
  218. 高橋克法

    ○高橋克法君 法改正の部分でそういった課題を解決していくという方向だと思います。  現時点のお話を聞きたいんですけれども、都道府県それから基礎的な自治体、大分取組に対する温度差はありますよね、今おっしゃられたとおりです。これは、どうしてそういう温度差、格差が生まれてしまうのか。いや、これは知事なり市町村長の問題だよと、それ一言で終わってしまえばそれはそれなんだけれども。まあいろんなことをお感じになっていると思うんですよ、この温度差、自治体による格差というのは。それについて、ちょっとお感じになっているところがあればお願いいたします。
  219. 小河光治

    公述人(小河光治君) 申しましたように、この何年間の間にかなり子供の貧困ということに関しても世論の認識というのも高くはなってきていると思いますが、まだまだ子供の貧困って本当に、先ほど言ったようにあるんだろうかとか、あるいはちょっと御自身の近くの問題とかという認識はまだまだという部分も一方であるかと思いますし、あと、やはり地域に行けば行くほど、これは先ほど、天野さんのお話とも共通するところなんですが、貧困対策というふうになると選別的な対策、どこかで線を引かなきゃいけないとか、これが例えばスティグマの問題になっていくだとかというような問題があります。  そういう意味で、これ両方大切なのは、普遍的な、ユニバーサルな、先ほど天野さんがおっしゃられたような子育て支援も含めた、そういう施策をより充実させていって、より困難を抱えている人には更に手厚くそれをしていくということがやはり必要で、特に基礎自治体がそういうふうにどこかで選別をしてしまって施策をしていくということは非常に難しい問題もあるのも事実かなというふうに思います。
  220. 高橋克法

    ○高橋克法君 小河さんに最後の質問なんですが、行政側という議論は今させていただきましたけれども、具体的にはその地域地域で、例えば先ほどおっしゃいました子供食堂とか無料学習支援とかプレイパークなどの居場所支援と、いろんな活動をやっていらっしゃる。  ただ、これも地域によっての温度差、ばらつきは多いですね。本来ならば、行政側も一定の水準で普遍的な対応というのが、一定の水準以上でというのが大切だと思うんですが、民間のレベルでもできればそういう一定の水準以上の活動が全国あまねくというのが望ましいところだと思っていますんですが、そのために国は何をすればいいのかと、端的にお願いします。
  221. 小河光治

    公述人(小河光治君) 大変難しい課題かなと思いますが、やはり両方、特に経済的な支援だとか、まさに貧困の貧対策の部分というのは国が、やはり行政がやらなけりゃいけないこと。それから、困、困っているということに対する対応というのは、やはり先ほど言いましたように、子供食堂だとかいろんな地域の人たちがやること。この両輪をどういうふうに合わせていくかということがやはり求められていることだと思いますので、地域の皆さんがそういう何か活動をしたいということに対してバックアップをするということがやはり行政、国も含めてですね、行政の役割ではないかなと思います。
  222. 高橋克法

    ○高橋克法君 天野公述人、お待たせをいたしました、申し訳ありません。  今度働き方改革というのが始まる。働き方改革の目的はいろんな目的がありますけれども、先ほど天野公述人がおっしゃられた、時間がなくて説明が十分天野さんできなかったと思うんですが、男性産休の義務化、育児、家事への男性の参加の部分にとって、この働き方改革がどういうふうに資することができるか、そのことについて天野さんがどうお感じになっているか。それから、先ほど公述の時間がちょっと足りなかったので、あと一分半ありますから、天野さん、どうぞお願いいたします、私の質問に絡んだ形で。
  223. 金子原二郎

    委員長金子原二郎君) 一分しかありませんので。
  224. 天野妙

    公述人(天野妙君) ありがとうございます。御配慮いただき、ありがとうございます。  働き方改革にどのように寄与するかというところですけれども、やはり働き方改革が四月から施行されますが、それに伴って年休五日といったような部分があるかと思います。そういった認知の部分も調査によると大変低いと、まだこれから、もうすぐ始まるわけですけれども、大変認知が低いということですので、こういう産休を取ったり年休五日を取ったり、休む人が増えてくると、やはりそういった情報共有といったものが、きちんと整備していかないと進んでいきませんので、リスクマネジメントという観点でも、働き方改革のきっかけという観点としても非常に有用ではないかなというふうに思っています。
  225. 高橋克法

    ○高橋克法君 どうもありがとうございました。
  226. 石橋通宏

    ○石橋通宏君 立憲民主党・民友会・希望の会の石橋通宏です。  まずは、お二方、今日は本当に貴重な御提言ありがとうございます。また、日頃から本当に様々それぞれの分野で御活躍、本当に御尽力いただいていることに、この場をお借りして心から敬意を表したいと思います。本当にいつもありがとうございます。  今日、お二方のいずれ資料も読ませていただいて、共通する根源的な課題というのは、やっぱり保護者の雇用の安定と安心、処遇の安定、いわゆるそれを実現するための、まさに働く者のための働き方改革だなというふうに受け止めをさせていただきました。  その観点から幾つかそれぞれお聞きをしたいと思うんですけれども、まず小河公述人に確認をさせていただきたいのですが、今日の御説明にもありましたとおり、直近の政府公表の子供の貧困率、確かに低下をいたしました。ただ、一方で、これ、今日触れていただいたとおり、全国で子供食堂の取組、現場で本当に頑張っていただいている、しかし相当数に増加をしています。それだけやっぱり日々食事に困難な子供たちが現実的に増えてしまっている。  一体、この国の真実の今の子供の貧困状況って一体どうなっているんだろうかというのを我々すごく悩むんですが、率直なところ、是非その点についてお聞かせをください。
  227. 小河光治

    公述人(小河光治君) 今、先ほど、今貧困率のことございました。今回低下をしたわけです。これ自体はいろいろな研究者の方も大変評価はされていますが、問題なのはこの後どうなるかということだと思います。  これ、実はデータは二〇一五年のデータですので、法律ができたのが二〇一六年ということですので、そうすると、その後、まあ今いろんな施策がその後進んでいますが、それがどういうふうに波及してくるかというのは今後見据えていかなきゃいけない課題でもあるということですし、やはり今おっしゃられたとおりですけれども、これ、かなりやっぱり貧困率を根源的に下げていくということになれば、家庭の所得をいかに上げるか、あるいはそこに対する再分配を上げていくか、あるいは支出の方をどうやって抑えていくかというようなこと等を考えていかないことには、抜本的にはこれは完全に低くなっていくベクトルには入っていかないということなのかなというふうには思っておりますので、そういう意味では、先ほど提言の中でもありましたように、いかに保護者の安定的な雇用という部分と、再分配をより強化していくんだというようなことというのは非常に重要なポイントになってくるんだろうと思います。
  228. 石橋通宏

    ○石橋通宏君 一点、これ相対的貧困率ですので、これ、よく我々実質で見るとどうなるかという議論するんですね。相対的貧困ラインって百二十二万円で動いておりません。しかし、実質で見ると実は下がっているんです、百九万円ぐらいに。つまり、実質で見たときは、この間も上がっていない、むしろ下がっている、貧困ラインがですね、という見方ができる。だから、全体から見るとやっぱり貧困ライン以下で過ごしておられる子供さんが増えてしまっているのではないか。  つまり、その辺を実態としてしっかり見ることがまさに必要であって、都道府県若しくは市町村レベルでの貧困の実態、状況というものをちゃんとやっぱり把握する全体的な制度、システムが必要だと思いますが、その点も同意いただけるでしょうか。
  229. 小河光治

    公述人(小河光治君) まさにおっしゃるとおりで、最後に申し上げましたけれども、これ、例えば一人親世帯、御存じのとおりに、厚生労働省、五年に一回に一人親の調査、全国調査をやって、全国でどういうふうな状況をやっているかということをしっかりと把握をしています。しかしながら、子供の貧困の全国調査ってありません。各都道府県も、それも調査をやっていますけど、それもばらばらなんです。  だから、どういうふうに今やっているかという、どういう状況になっているかという把握そのものが実はなされていないというところは、多くの研究者の方も、まさに今御指摘いただいたとおりで、ここは非常に大きな問題で、まずはどういう、実態の見える化ということのためにも全国調査が急務だというふうに思います。
  230. 石橋通宏

    ○石橋通宏君 この辺、今後の施策の改善の一つポイントかなというふうに我々も思っております。  もう一点だけ、重ねて、公述人、児童扶養手当の隔月支給、一歩前進という評価をされておりますが、我々、この間、ずっと毎月支給にすべしということで政府・与党にも要求をさせていただいた。そういう意味では、我々はやはり毎月支給にすべきではないかというふうに考えておりますが、毎月支給にすべきだと、そのメリットを是非、何点かあればこの場で共有していただければと思います。
  231. 小河光治

    公述人(小河光治君) 私たちも、給料を毎月もらわずに隔月で給料をもらうとなったら家計管理はすごく大変で、今まではそれが四か月に一回しかお給料がもらえなくて、これで何とかしてということ自体が大変なことだろうなと、極めて簡単なこと。でも、今、例えば年金をもらっていらっしゃる方も今隔月という状況ですので、そういう意味では、別に扶養手当だけということではなくて、ほかにも通ずる問題でもあるのかなというところがあります。  この扶養手当については、問題は、確かに二人目以降を今回上げていただいたところがありますが、やっぱり一人のお子さんがかなりの数いらっしゃる。そういう方には恩恵がないんですね。そうすると、毎月にして、かつ、そして今のベース、そのもののベースについてもやはり引き上げていただくということもこれは当然必要になってくることだなと思います。
  232. 石橋通宏

    ○石橋通宏君 ありがとうございました。  それでは、天野公述人にお聞かせをいただきたいと思いますが、実は、今日お話をいただいたこと、我が意を得たりという思いでありまして、私も実はヨーロッパで五年半ほど子供を育てた。一緒に仕事をして、いかに日本の働き方とヨーロッパの働き方が違うのか、その辺をもうつくづく、嫌というほど実感をさせられた。私も一生懸命子育てしましたし、家事も手伝いましたしと、言い訳ですが、日本に帰ってくると全くできないという状況なんですが。  男性の育休の義務化という提案、実はこれ私もずっと提言をさせていただいておりまして、それが必要だと。参考までに、今日、フランスの例も一部挙げていただいておりますが、ヨーロッパなり、国々で、今、男性の義務化をしている国ってありましたっけ。
  233. 天野妙

    公述人(天野妙君) 義務化までは行っていないと思うんですけれども、ちょっとフランスの例を見ていただきますと、フランスの場合は、三十九ページにありますけれども、十四日間、パパトレーニング期間というのがございまして、子の誕生休暇というのが三日、父親の休暇というのが十一日間設けられていて、合計十四日間あるんですけれども、これは給付金というのが全部、全額支給されるというような形になっています。一〇〇%支給されるという形になっています。さらに、この十一日間の父親休暇の部分ですけれども、今、プラス一週間にするという議論がフランスでは高まっているというふうに聞き及んでおります。  先ほど私の方で、十日間産休を義務化してはどうかというふうな御提案を申し上げたんですけれども、ちょっと手計算でございますが、六七%、今、現状女性が育休を取ると、女性も、男女かかわらず六七%給付金が支給されまして、これ十日分というふうに試算いたしますと、全労働者が、約百万人の子供が生まれますので、労働者数は七十七万人と、規模でいうと六百七十億円程度というふうに試算ができるというふうに思っております。また、三十年度時点の雇用保険残高が四兆九千三百八十億円ということでございますので、約一・三%程度の支出になるのかなというふうにお考えいただけたらなと思います。
  234. 石橋通宏

    ○石橋通宏君 ありがとうございます。  私の理解でも義務化までしている国はまだないんですが、諸外国、特にヨーロッパの国々は義務化しなくてもベースがやっぱり違うので、日本の場合にはむしろやっぱり義務化をしていかないと残念ながら実効性が確保できないという思いで、私も義務化必要なのではないかと、今後も発信していきたいというふうには思っております。  今日、保育所、保育園の待機児童問題についてもお話をいただきました。是非、無償化より全入化の方が先であるという発言をされていると思います。私たちも同じ思いなんですが、逆に、全入化よりも無償化を先に進めてしまうことの弊害を是非開陳いただければと思います。
  235. 天野妙

    公述人(天野妙君) 御指摘のとおり、無償化よりもというより、無償化の前に全入化というふうに御提示、御提案させていただいておるんですけれども、なぜそうさせていただいた方がいいかというと、議員既に御存じかと思いますけれども、待機児童数が今まだ二万人いまして、更にそこの需要が高まってしまうのではないか、無償化になるんだったら働いてみようとか。それで、女性活躍の目線でいって、言えばとてもいいことかもしれませんけれども、今入れない人が既にいらっしゃる中で更にそこにまた追い打ちを掛けるというような形になりますので、まずは無償化の前に全入化なのではないかなというふうに思っております。
  236. 石橋通宏

    ○石橋通宏君 ありがとうございます。  それが保育士さんたちの処遇の改善、今日御提言をいただいた部分にも重なる部分だと思いますけれども、実際に現場は、今引き続きあちこち見られていると思いますが、保育士さんの処遇、それから雇用について一体どうなっているのか。政府もこの間取組をされていて、保育士さんの処遇、それなりに上がってきてはいると言われながら、ただ、現場ではなかなかそういう実感、実態が共有できていないのではないか。  つまり、保育士さんも様々、公立の保育士さん、私立の保育士さん、さらには非常勤の方がどんどん増えている、派遣の形態が物すごく増えている、そういう様々な形態がある中で、残念ながら、全体として見れば、やっぱり保育士さんの処遇がまだまだ上がらないのではないかというふうに思いますが、端的に、なぜ保育士さんの処遇がそうやってなかなか上がっていかないのか。  その雇用の形態にも密接に絡んでいると思いますが、そうすると、何を変えていかなければいけないのか。単に処遇改善で改善加算を付ければいいという話なのか。いや、もっと抜本的に保育士さんの処遇、雇用形態そのものにしっかりとメスを入れていかなきゃいけないと私たちは思っているんですが、その点、もし御提言があればお聞かせください。
  237. 天野妙

    公述人(天野妙君) 我々の方で、まずアンケートの前にヒアリングというのをさせていただいたんですね。そのときにちょっと私の方で驚いたのが、正規で就職しなきゃよかったという意見が結構多数だったんです。  それはなぜかというと、正規になると、書類を作成しなければいけない、子供と向き合える時間が減ってしまう、非正規であれば労働時間ですとかシフトなどもある程度選べるものの、正規になると、もうここに入ってくれというような強制力というか、あなた正規でしょうといった強制力を発動されてしまうということをお聞きして、通常であれば非正規より正規の方がいいよねという認識だったものですから、大変驚いたということでございました。  ですので、何で、じゃ、そういうふうになってしまうかというと、これはいろいろあるんですけれども、やはり処遇だけでなく、やはり労働内容、職務内容のところの業務改善にやはりそこはメスを入れていく必要があるのではないかなというふうに思っています。
  238. 石橋通宏

    ○石橋通宏君 ありがとうございました。  正社員の処遇改善も絶対に働き方で必要だというふうに思いますので、我々も頑張っていきたいと思います。  今日はありがとうございました。
  239. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 国民民主党・新緑風会の森ゆうこでございます。  本日は、お二人の公述人、大変ありがとうございます。  子供を持つことが損だというふうに私たちの世代は感じているとおっしゃいました。そのとおりだと思います。というか、私は子供を損得では言いたくないけれども、子供を持つことが得なんだと思えるくらい、もう政府がこれでもかと、もうここまでやるのかというふうにやらないと、安倍総理が国難とまでおっしゃったこの子ども・子育て支援、少子化、人口減少の問題は私は解決できない。というよりも、やっぱり本当に子供を産んで育てることが最優先される、そういう社会を一日も早くつくりたいと思って国会に来てから約二十年近くたちました。子育て真っ最中だったんですけど、今は孫が二人おります。  今日は、委員長の議事運営の判断ということで赤ちゃんの傍聴人席への着席も認めていただきましたが、一回一回委員長から判断していただくまでもなく、やはりそういうことも認められるように、先ほど議運の理事に頼んでおきました。  ということで、まず小河公述人に伺いたいんですけど、先ほど、政策ターゲット、ちょっと絞られ過ぎているんじゃないか、不十分であるというようなお話がございました、その点について。そしてもう一点ですけれども、阿部彩さんの本、著書で、私どももう約十年前、国会で子供の貧困の問題、そして所得再分配の逆機能ということを衆参の予算委員会で何人かの委員が取り上げました。これがまだまだ解消されていないという部分について、もう少し御説明をいただければと思います。
  240. 小河光治

    公述人(小河光治君) ありがとうございます。  この子供の貧困のメーンターゲットは、先ほど言いましたように、ほぼ三つに今絞られていると。生活保護世帯、それから一人親世帯、それから社会的養護の下で暮らす子供たち。これは、というのは、その法律ができた段階においてはやっぱり施策がそういう施策しかないというところがありまして、なかなか見えない状況にあるということですね。  私ども、こういうことが分かったのは、実は一昨年度になりますけれども、入学・新生活応援給付金という、今のこの三つの世帯を対象にして、入学や新生活を迎えるお子さんに給付金、三万円から五万円の給付金を昨年度ですと二千八百人ぐらい、一億一千万ぐらいのお金でお渡ししています。  こういう方々に単にお金を渡すだけじゃなくて、その後調査をしました。そうすると、それをクラスター分析をしていってカテゴリーで分けていくと、実は、今言ったように、例えば外国にルーツを持っているお子さんのところが何も、抜け落ちているとか、御両親いらっしゃるんですけど二人とも非正規で働いている、お子さんが四人、五人いる、ここには何も実は、例えば小さいお子さんだったら児童手当があるんですけど、それ以外、児童扶養手当もない。何もなくて、うちのこの給付金しかありませんでしたというようなところがある。そこが今までやっぱり見えなかった部分だと思います。  ですから、そこを、見えてきたので、より見えるところにやっぱりちゃんと全ての子供たちが、充てなきゃいけないということと、やはりこの今の再分配機能がちゃんと働いていないんじゃないかというところ。まさにこれは、今回も議連の中でも阿部彩先生にも御一緒に御発言をいただきました。まだかなりの部分、そういう効いてきている部分もあるんですが、今特に小さいお子さんの世帯では再分配機能が十分効いていない、あるいは二人親の世帯では効いていないというところがあったりとか、あるいは貧困率一番高いところでいうと、結構大きなお子さんというんですかね、そういうお子さんのところが今なお貧困率高いというような状況もありますので、その辺りにはいろいろ集中的にまた再分配進めていかなければならないだろうというふうに思います。
  241. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 ありがとうございます。  子供の相対的貧困率が下がったという先ほどの公述でした。ただ、今統計不正の問題が非常に我々としては大きな問題だと。ちょっと大げさに言いますと、国が発表する全ての数字が信じられないような状態でして、都合のいいようにかさ上げされているんじゃないかという疑念が拭えませんので、本当に実態、子供たちの貧困がどうなのかということを調べていくことは非常に重要だと思うんですけれども。  小河公述人が詳しく政策でこういうふうに良くなった、良くなったというのを挙げていただきました。しかし、元々、子育て支援策というのはもう厚生労働省で相当いろんなことをやっていて、でもお子様ランチだと、これ随分前から言われているんですよ。もう何でもいろんなメニューがそろっているんだけれども、一つ一つが少量過ぎておなかがいっぱいにならない、満足できない。戦力の逐次投入というか、日本軍がかつて敗戦したようにね。  それじゃ駄目なんだと、もっとやらなきゃいけないというその新しい発想で民主党政権のときに子ども手当というのをやろうとしたんです、まあ一部やったんですが。しかし、当時の野党である自民党から物すごい反対を受けまして、採決のときには愚か者めというふうに叫んで話題になった人もいましたけれども、私、当時、あの厚生労働委員会の参議院の与党の筆頭理事でしたので、もう忘れもしませんけど。  あのときに、あのときに、あれでも不十分だったんです。あれでも、もし満額子ども手当、二万六千円の子ども手当、満額支給したとしても、フランスやスウェーデンに比べればそういう関係の予算三分の一だったんですよ。あのときでもぎりぎりまだ団塊ジュニアというか、専門家が言う出産適齢期の女性たちがある程度の、大勢いたわけです、人口で。でも、それができなかった。もう本当に悔しいです、いまだに。それが今になって幼児教育無償化だ。いや、いいんですよ、やるならもっと徹底的にやってもらいたいと私は思います。  ですから、なんだけれど……(発言する者あり)いや、質問しますけれど。  それで、でも、そういう話をすると、なぜか子育て支援のときになると財源はどうするんだという話になるんですね。だから、私は、消費税の増税とこの幼児教育無償化、やるから消費税増税だと言っている理論がすごく許せないんですよ。何でこの話になると財源、そして消費税なんだと。その点についてはどうお考えでしょうか、お二人の公述人
  242. 小河光治

    公述人(小河光治君) 財源の問題、大変重要にはなってくるかと思いますが、私は率直に申し上げると、しかしながら、やはりどこかで財源を付けないとこれはできないというところもあるので、それをどういうふうに持ってくるかは議論が必要かなというふうにはあるんですが、ただ、今まで、どちらかというと、十分なそこにそもそも財源が与えられなかったところに対して、私は、特に高等教育の無償化というのは年収三百八十万円以下のところを、今までは本当に借金を、有利子の借金をしないと大学に行けない、もう本当にこれギャンブルみたいなところで実際今困っていらっしゃる方もたくさんいるわけで、これがやはりなくなっていくとか、そういうようなことというのは、是非どんなことがあってもこれは前に進めていただきたいなということがやはり思っておるところですので、その財源については是非御検討いただいた上で前に進めていただきたいと思っています。
  243. 天野妙

    公述人(天野妙君) 財源のお話、私、専門家ではないので分かりませんけれども、やはり消費税というのが多くの人から徴収をするという形ですので、やはり高所得者に対しては優遇になるのではないかなということと、また、無償化になると、保育料というのは応能負担でございますので、高所得者の方が、既に低所得者の方は無償になっていますから変わらずという状況になります、ですので、高所得者の人が無料になる、つまり高所得者優遇制度ではないかなというふうに考えております。  ですので、幼児教育の無償化というのを人質に取られて消費税を増税するということに関してはちょっといかがなものかなというふうには思っておりますので、ほかの例えば相続税の累進性を高めるですとか、そういったものでできないかな、また寡婦控除のところですね、配偶者の部分の専業主婦に対する減税というところを見直すというところもあるのではないかなというふうに思っております。
  244. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 ありがとうございます。  今日、私は天野公述人を推薦させていただきましたけれども、それはやっぱりツイッター上で若い人たちから幼児教育の無償化の前に待機児童を解決してほしいという、そしてその保活がいかに大変であるか、そして、いろんなメニューが、子育て支援のいろんなメニューがあるんですけれども、それでもやっぱり子供を育てながら働いていくということの大変さ、しょっちゅう病気になりますしね、だから、そういうことを踏まえて、本当に若い人たちの率直な意見を聞かせていただきたいというふうに思って推薦をさせていただいたわけですけれども。  この本当に保活の大変さ、それから、いろんなメニューがそろっていても仕事と子育ての両立をしていくことの困難さ、もっともっと国が更に力を入れていくべきことあると思うんですけれども、いかがでしょうか。
  245. 天野妙

    公述人(天野妙君) もう御提案させていただいたとおり、いろいろありますけど、まずは待機児童の解消、その後、全入化がかなえば、専業主婦世帯の方々も今家に閉じ込められているのと同じ状態ですから、働きたくても働けない、子供がいたら働けないという状態ですので、そういった方々にも就労にかかわらず保育園が利用できるような、そういった仕組みになっていく必要性があるのではないかなということが言えるかと思います。
  246. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 じゃ、小河公述人に、これ最後になると思いますけれども、今後、特に子供の貧困、そして子育て支援、更に充実していくために必要だと思われること、もう一言ございましたら、是非どうぞ。
  247. 小河光治

    公述人(小河光治君) ちょっと先ほども申しましたけど、やはりこういう問題というのは自己責任論というのがいつも出てきてしまいます。  私自身も本当にまだまだ力不足なのだなというふうに強く思っていまして、一つは、やはりこれは決して議員の先生方だけではなくて、本当に国民全体が、やはり子供ということに対しては社会全体で、そういう意味では、経済的な事由関係なしに全ての子供たちをどの子も取り残すことなく社会全体で育てていくというような、そういう世論をどうやってつくっていくかということが、私を含めて、我々に大人として課せられていることだなということを日々思っていますので、更に努力をしたいと思います。
  248. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 ありがとうございました。
  249. 宮崎勝

    ○宮崎勝君 公明党の宮崎と申します。  本日は、二人の公述人の皆さん、大変お忙しいところ、貴重な御意見を賜りまして、大変にありがとうございました。  最初に、まず小河公述人にお伺いしたいと思います。  子供の貧困対策ということで、本当に現場で御苦労されていることに対しまして、大変敬意を表するものでございます。    〔委員長退席、理事高橋克法君着席〕  その上で、先ほど未婚の一人親に対する支援ということでお話がございました。一九年の税制改正で、所得の低い家庭の一人親に対する住民税を非課税にして、そして予算措置として児童扶養手当を増額するという、そういう対応が決まったところでございます。さらに、二〇年度の税制改正においては、寡婦控除の適用について今後議論をしていくという、検討をしていくと、そういうことも一応明記されているところでございますけれども、この未婚の一人親に対する支援、この必要性、それから今回の措置に対する評価、これを改めてお聞かせいただきたいと思います。
  250. 小河光治

    公述人(小河光治君) 先ほど申しましたとおりなんですが、今回大きな一歩、まず今までには全く認められなかった寡婦控除が、一部というところではございますけれども、そこに風穴を空けていただいたこと、それに対しては心からまずお礼を申し上げたいというのを改めて申し上げたいというふうに思います。  そして、今後の課題ですが、これについては、今なお、やはり婚姻歴があるかないかということのみで差が出てきてしまっていると。私自身は交通事故で父親を亡くしています。交通事故で親を亡くす、まさにうちの母親、寡婦になるわけですけど、遺児とかそういうことに対しては、やはり一人親の中でも一番最初に光が当たってきた。それが離婚でも、結婚していれば、大変だ、児童扶養手当ができてきて、その中でも寡婦控除がそこまで広がってきた。しかしながら、まだまだ同じような状況であっても、たまたま結婚をしていないということだけで、状況は何も変わらないのに今でもその差があるというところは、やっぱり一日も早くそもそも解消する必要があるんだろうなというふうに思います。  お子さんも、いろんな今回のこの一連の中でも、中にはやはり先ほど言ったように自己責任論というのも噴出してきて、そのことに本当に心を痛めているお子さんとかあるいは当事者の方々がいるということを思うと、私自身も本当にもういても立ってもいられない、そういう思いを強くしておりますので、ここは一日も早く今空けていただいた穴を更に大きくしていただいて、同じ土俵に持っていっていただくことが大切だと思います。
  251. 宮崎勝

    ○宮崎勝君 ありがとうございます。  また、今回、少子高齢化ということに対応するために、幼児教育を始めとする教育負担の軽減ということに取り組んでいこうということが打ち出されているところでございます。幼児教育を始め、私立高校の授業料の実質の無償化、また高等教育については真に必要な人に対する支援をしていこうということで、入学金や授業料の減免であるとか、あるいは給付型の奨学金の拡充であるとか、そういうことがこれから行っていこうという方針でございますけれども、この教育の無償化を、これを進めていく意義について改めてお伺いしたいと思います。
  252. 小河光治

    公述人(小河光治君) ここは、もちろん今政府・与党の皆さんがリーダーシップを取っていただいていると思いますが、もう与野党を超えて、この問題に関しては、特に教育に関しては、お金がないから学校へ行くのを諦めるということは何とかしなきゃいかぬと。あるいは、先ほども申しましたけど、今、多額の借金を持って若い方が本当に困っていらっしゃるという、こういう状況も何とかしなきゃいかぬということの中で、今回、二〇二〇年度からは本格的に、もう既に実施していただいていますが、大幅な拡充、今の無償化に向けた、特に高等教育の無償化に向けて進めていただいていることは大変心強く思っているところでございます。  あわせて、もう一歩言いますと、これ大学とか専門学校に行く子だけが光が当たればいいのか。中には、高校を出て、私は例えば料理人になりたい、パティシエになりたい、ほかの思いを持って就職をしてそこで仕事をしたいという子供が、じゃ、何も光が当たらなくていいのかという課題も一方で残されているかなと。  そういう意味では、多様な進路に対しても、どんな状況の子供にも、それぞれ、進学しようが就職しようが、あるいはなかなかちょっとそこにも踏み切れない、そういう子供たちにも全て漏れることなく光が当たっていくような、若者が社会に出ていくまで、子供の貧困対策ってそういう意味では年齢制限ないので、ということで法律を作っていただきましたので、そういったような視点で是非前に進めていただきたいと強く願っています。
  253. 宮崎勝

    ○宮崎勝君 そのうち、幼児教育の無償化、これはゼロ歳から二歳は住民税非課税世帯のお子様を対象ということで、三歳から五歳は全てのお子様を対象ということで、こうしたことについて高所得者への恩恵が大きいということもあるわけですけれども、この対象についてはどのような御認識をお持ちか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  254. 小河光治

    公述人(小河光治君) 確かに今の御指摘はあるのかなというふうに思います。  今、やはり天野さんもおっしゃられたみたいに、やっぱりどちらかというふうになってしまうと、これは問題が、問題というか、やっぱりどっちがというふうに優先順位になってしまうのかなというふうに思いますけれども、そもそも、子育てとか教育に関する世界的に見て日本の公的支出がそもそも割合が低いというのがやっぱり根本的なまず課題にあるのかなと。そういう意味では、やはりどこでも所得制限なしで無償化が進んでいく方がいいわけですし、かつそれで保育園にもちゃんと入れるというところで、そこには集中的に子供に支援をより手厚くしていくことがやはり求められているのかなというふうに思います。
  255. 宮崎勝

    ○宮崎勝君 あと、冒頭の公述人のお話の中で、多面的な子供の貧困に関する指標の設置、改善目標の設定という、そうした御提言もございました。これについてもうちょっと説明をしていただければと思いますが。
  256. 小河光治

    公述人(小河光治君) これは六年前の法律制定のときにも課題になった問題です。  貧困率って、先ほど私もちょっと説明が不適切な部分もあったかと思いますけど、これってやっぱり入ってくるものだけというところになるわけですね。なので、例えばサービスで出ていく、先ほど言ったように、授業料の無償化を例えばするとしても、これは反映しないというようなことになって、実際は、でも生活は楽になるわけですよね。ですから、そういう意味では、一つのそういう経済的な指標によっても、貧困率だけで見ることもできないということもあります。  ここに例示をしていますように、例えば今までも進学率だけ、生活保護世帯の子供が高校に入られた、それは大切なことなんですけど、問題はちゃんと卒業できるかということがやっぱり課題になってくる。そうすると、中退率も見なきゃいけない。これは、今、有識者会議の中でもこういう議論はされているということですので、やはりこういう多面的な部分をいかに指標の中に取り込んでいって、それを総合的に見ていって、下げていく上げていく、そういう改善目標が大切なんだろうと思います。
  257. 宮崎勝

    ○宮崎勝君 ありがとうございます。  続いて、天野公述人にお伺いしたいと思います。  事前にいただいた資料を読ませていただきまして、男性の育児休業の義務化というお話がありましたけれども、特に三つの壁を乗り越えなければいけないということで、意識の壁、雰囲気の壁、収入の壁ということが必要だというようなことをおっしゃられていましたけれども、その辺をもう少し御説明いただければと思います。
  258. 天野妙

    公述人(天野妙君) 意識の壁と雰囲気の壁と収入の壁、恐らくこれ二年前の陳述のところかと思いますけれども、まず、意識が一番皆さんも私も含めて変えるのが非常に難しいということで、男性の産休義務化というふうにすることでマインドセットを変える、マインドチェンジをするというところのきっかけづくりになるのではないかなというふうに思っています。  あとまた、その雰囲気の壁というのは、取りたくても取れなかったという人がやはり多いので、どうしてかとそこの理由を掘り下げていくと、やはり自分が休めない職場環境、自分が担っているプロジェクトがあるとか仕事があって周りに迷惑が掛かるからというようなところであったりとか、あと、男性が産休を、育休を取ると、おまえは出世を諦めたのかというふうに言われてしまうといったような雰囲気が挙げられていました。  あとまた、その収入の壁なんですけれども、今の給付金六七%ということですので、やはり収入が目減りすると逆にそれの方が困るという御家庭もいらっしゃるというところがあるかと思いますので、この給付額を一〇〇%にするという方法一つ。フランスもそうですし、あと韓国においては数か月間の間は一〇〇%支給して、三か月を超えるとパーセンテージが下がるといったような施策があるようです。
  259. 宮崎勝

    ○宮崎勝君 ありがとうございます。  それから、いわゆる待機児童の問題と幼児教育の無償化の問題の絡みですけれども、公述人は無償化の前に待機児童の解消をという、そういう御提言でございますけれども、政府も子育て安心プランということで進めております。あわせて、保育士さんの処遇の改善も、段階的ではございますけれども今進めているところだと思いますけれども、この待機児童の解消とやはり幼児教育の無償化、これを同時並行で進めていくという取組なんだと思うんですけれども、やはりどうしても待機児童を先にという、でなければいけないのかどうか、ちょっとそこをお聞かせいただきたいと思います。
  260. 天野妙

    公述人(天野妙君) よく、無償化なの、待機児童なの、どっちを取るのみたいなお話をよくいろんな方から聞かれるんですけれども、そうするともう分断が起きますので、専業主婦層と共働き層というところで分断起きますので、要はどっちも予算を付けてくれという話なのかなというふうに思っています。
  261. 宮崎勝

    ○宮崎勝君 時間になりましたので、終わります。ありがとうございました。
  262. 高木かおり

    高木かおり君 日本維新の会、高木かおりでございます。  本日は、貴重なお話を公述人のお二方にはありがとうございます。  早速でございますけれども、まず小河公述人にお聞きをしていきたいと思います。  今日、先ほどから子供の貧困ということが様々議論をされていると思いますけれども、貧困という厳しい状況にもかかわらず、なかなか周りからは見えづらいというお話等もございました。やはり弱者である子供たちはなかなか声も上げづらいということで、そういったことに私たち大人が気付いてあげなければならないんですけれども、例えば食事が取れる、身だしなみを整えられる、それに加えて学力を身に付ける、これがないと、やはり貧困の連鎖、これから抜け出せない、そういうふうに思うわけです。  また、この貧困というのが、やはりどうせ自分なんてという、先ほど学力のことも申し上げましたけれども、やはり自分なんてと思う、思ってしまう、自己肯定感を持てなくなってしまう、こういったふうに思うわけですけれども、大人がどのように支えていき、そしてまた学校等がどのような対応をしていけばよいのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  263. 小河光治

    公述人(小河光治君) ありがとうございます。  貧困の連鎖を断ち切るということはまさに今おっしゃられたとおりで、食事をちゃんと与えてあげるとか、身だしなみのこともあります。そして、やはり学力を付けて貧困の連鎖を断ち切るのが一方でそうなんですが、一方で、私は、今御存じのとおりに、子供とか若者の自殺率もこれだけ高い。一方で、何か頑張らなきゃいけない、こういう厳しい状況から抜け出さなきゃいけないということに縛られてしまっている子供たち、若者たちも少なくないのかなというふうには思うんですね。今のありのままというか、今のあなたで、あなたそのままにいるということがいいんだよということもちゃんと認めてあげる。  もちろん、そういう中で、じゃ、より良く生きていくということのために勉強ができる環境、自分がやりたい仕事に就けるような環境を整備していくということがあるんですけど、余りにもその力が強過ぎて、勉強しなさいとか、こうしなきゃ駄目よというようなことで子供たちを例えば追い込んでいくようなことにはまずしては駄目なのかなというふうには思います。  いろんな分野で、多分今、学校現場のこともあるかと思います。いろんな意味で、例えば学習支援というような、先ほどもちょっと話しました第三の居場所も重要でもありますし、それと併せて、やはり今特に基礎教育ですね、義務教育の中においては、やっぱり一人一人のお子さんたちをより大切にできるような、そういう子供たちをちゃんと育めるようなやっぱり学校の環境というのをいかにつくっていくか。でも、現実は先生方大変厳しい状況の中でやっていらっしゃるので、そういう環境もつくっていくということも求められているのかなというふうに思います。
  264. 高木かおり

    高木かおり君 ありがとうございます。  やはり一人一人環境も状況も違いますし、やっぱりその子供たちをしっかり見てあげれる環境、それは地域であったり学校であったり様々かと思いますけれども、我々、我が党は大学の教育の無償化ということも訴えさせていただいているんですけれども、それは、大学では、高校も含め大学、高等教育等でしっかり学んで、やはり社会に還元をしていく仕組みをつくらなければならないと、そういうふうに考えているわけなんですが、あしなが奨学金は返還率九割近くで、卒業後しっかりこの奨学金を返していくと、返さなくてはという意識の高さ、その意識の醸成というのはどのような形で育まれていったのか、少し教えていただけますでしょうか。
  265. 小河光治

    公述人(小河光治君) 私も、前職、あしなが育英会におりましたので、今おっしゃるところはそのとおりだなというところがあるんですけれども、やはり子供たちもいろんな方、特に、御存じのとおりに、あしながの募金で様々な形で御支援をしてくださる方々がいて、やっぱり子供たちが自分のことを、全く見ず知らずの人があなたのことを大切に思っているというようなことを子供たちもやっぱり、無理にということじゃないんですけど、そういうことを受け止める子供たちが、さっき言ったように、なかなか自分なんてと思っている子が、自分のことを大切にしてくれている人がいるんだということを、存在に気付けることというのは大きいのかな、それがその意識にもつながっていくのかなというのはあります。  これは多分ほかの分野においても、決して、あしながだけではなくて、そういうことがうまく回っていくということが子供を支えていく上ではすごく大きなポイントかなとは思います。
  266. 高木かおり

    高木かおり君 まさに自己肯定感というものが、そういった大人たちの関わりの中で信頼関係といいますか、そういったものが育まれた結果なのかなというふうに思います。  私も実は阪神・淡路大震災を経験しておりまして、そのときちょうど駅であしなが募金をしているのを見まして一緒に参加させていただいたことがございまして、そのときやはり学生さんがメーンでやっておられた。あしなが育英会というのは子供がセンターということで、本当に学生さんが中心となってやられているということもやはり社会に対して発信力が高いのかなというふうに思っております。ありがとうございました。  続きまして、天野公述人にお伺いをしていきたいと思います。  アベノミクスの柱として女性活躍ということが言われておりますけれども、女性の就業率を上昇させていくためには、やはり労働環境の整備というのが重要だと私も思っております。そこで、やはりこの待機児童問題というのは避けては通れない問題である、これはもう誰しもの共通認識だというふうに思っています。  昨年の四月の時点で保育の待機児童数は、先ほどもお話しいただきましたけれども減っていて、十年ぶりに二万人を切ったということでございましたけれども、その申し込んだ認可保育施設を利用できないのに待機児童にカウントされないいわゆる隠れ待機児童数というのが、今日も表をお配りしていただいていますけど、約五万三千七百人ほどで増えているということで、この隠れ待機児童の内訳の中で、このうち四万一千人近くが、特定の保育所希望という人数が隠れ待機児童の約六割というような状況だと思います。でも、これはカウントされていないわけですね。  子供を預けて仕事に毎日向かうわけですから、やはり職場から余りにも遠いようなところ、また兄弟で違う保育所というのも、やはりこれ働くお母さんにとっては大変精神的にも体力的にもきついと思います。でも、このような理由で、どこでもいいのではなくて特定の希望の園に入りたいというのはもう私も十分理解ができるわけです。  ただ、この仕組みの中で、育休期間は基本一年間、けれども保育園に入れなかったら二年間に延長できると、そういった中で、まあ言ったら、二年間取りたいから、まず、かなり希望が多いような保育園にわざと希望を出して、そして落選を狙うというような事例があるというようなこともお聞きすることもあります。これは育休制度のひずみからくるものではないかと。子育てというのは人それぞれ様々なケースがあって、環境があります。なので、必ず一年というわけではなくて、二年取らなければ子育てがなかなかうまくいかない、そういった環境もあるかと思います。  そういった中で、やはりこれは育休制度をもう少し取りやすい、規制を少し広げるといいますか、そういった仕組みに変えていく必要が私はあるんじゃないかなというふうに思うんですけれども、ちなみにノルウェーでは育休は約三年というふうにお聞きをしていますけれども、この点についてはどのようにお考えか、お聞かせください。
  267. 天野妙

    公述人(天野妙君) まず、落選狙いと、不承諾通知をもらうと育休が延長できるからということで、落選狙いというのが去年大変インターネット上でもはやったところかと思います。  この落選狙いについてなんですけれども、例えば、みんな四月生まれなわけではなくて、例えば十二月に生まれたりする場合もあります。ゼロ歳児で、もう入れるか入れないか分からないけど申し込んでみたという方もいれば、まあ十二月ですから、まだ生まれていない状態で十一月に申し込むわけですので、生まれていないのに申し込んでみる。生まれてみて、ああ、やっぱり育休を延長したいなと判断をされる、そういうお気持ちになられるお母様方のことを、育休狙いで、さも悪い人のような扱いをするのはいかがなものかなというふうに思っています。  そしてまた、会社との折り合いという部分もあると思うんですね。要は、会社は早く帰ってこい、早く帰ってこいと言うわけですけれども、本人が不承諾をもらったので育休を延長せざるを得ないんですよという、そういった事情があるのかなと。  例えば、十月に生まれていて、であれば九月末まで延長できるわけですけれども、四月にその結果を出せというふうに会社が言うわけですから、そうすると不承諾が欲しくなる。本当は一年取りたいけれども、不承諾を欲しくなるという気持ちも分からなくもないかなというところで、そういった育休の四月に入園するというところが、数が足りていない分、卒園児が例えば二、三十人出ないと三十人取れないというような仕組みになっているということ、あっ、三人とかしか取れないという仕組みになっていることから生まれてくるところなのかな、十月に入園できるような仕組みであればこういったことは起きないなというふうに言えると思います。
  268. 高木かおり

    高木かおり君 ありがとうございました。    〔理事高橋克法君退席、委員長着席〕  そういったところも、もう少し具体的に我々も知って改善につなげていかなければいけないなというふうに改めて思います。また、男性の意識の改革、それから企業の、働く場所の環境の意識改革ということも本当に今日お話を聞きまして重要であるなというふうに思います。  あと一分ですので、最後の質問になりますけれども、先ほどから、やはりこの待機児童の問題もそうなんですけれども、やっぱり子供を安心して預けて、女性はそれでこそ仕事ができると思うんですね。そういったときに、保育園には入れたけれども、子供はよく病気しますよね、そういったときに病児・病後児保育、こういったことも私はもっと広めていくべきだと思うんですが、その点について、最後お願いします。
  269. 天野妙

    公述人(天野妙君) 御指摘のとおり、大変病児・病後児保育というのは少ない現状でございますので、もっと公のお金が入った形でサポートしていただく必要があるのかなということと、あと、医療的ケア児のケアもまた不足しているということもありますので、そういった整備も進めていただけたらなというふうに思っております。
  270. 高木かおり

    高木かおり君 終わります。
  271. 吉良よし子

    吉良よし子君 日本共産党の吉良よし子でございます。  両公述人、今日は大変ありがとうございました。  それでは、早速ですけれども、天野妙公述人からお話を伺っていきたいと思っております。  先ほど来、無償化か全入化というところで、いや、無償化も待機児解消も大事なんだと、それだからこそ保育予算を抜本的に増やしてほしいんだと、おっしゃるとおりだと思うわけです。一方で、やはり今回無償化だと言われる下で、むしろ保育の需要が増えるんじゃないかという懸念も公述人資料の中にもあったかと思うんですけれども、本当にこの無償化に伴ってむしろ待機児童が深刻化してしまっては本末転倒だと思うわけです。  今、政府の方では、保育の受皿を二〇二〇年度末までに二十九・三万人分拡大としているわけですけれども、それで本当に十分なのかと。少なくとも、今回無償化するというのであれば、それに伴う需要の変化を加味した需要の見直し、保育ニーズの試算をやり直して、それに合わせたプランを作っていくべきと考えますが、その点についていかがでしょうか。
  272. 天野妙

    公述人(天野妙君) まさに私が申し上げたかったところを端的に御説明いただいてありがとうございます。  やはり政府が出されていらっしゃる目標が、二年前ですけど三十二万人という数字が出されていますけれども、それについての見直しがまだなされていないという状況ですので、改めて、無償化を実施されるのであれば、どういった需要が出てくるのかというのは試算が必要ではないかなというふうに思っています。
  273. 吉良よし子

    吉良よし子君 ありがとうございます。  そして、あわせて、先ほどの話では、待機児童の解消にはやはり人手不足の解消が欠かせないんだと、特に処遇の改善であるとかそういった必要な施策が必要なんだというお話もありました。事実、保育の現場で働いている保育士の皆さんの給与の実態を見ると、他の産業と比べると十万円も低いような実態があると。その背景には、様々な制度的な問題もあると思うんです。委託費が弾力化されていて、人件費をコストとして扱うような法人等もある下でどんどん下げられているようなところもあると思いますし。  ただ、もっとその背景見てみると、先ほど、保育者のアンケート分析の中にも書かれていますとおり、政府、国会議員含め、そしてまた保護者を含めた一般社会における保育職の専門性や業務負担への適切な理解促進が必要なんだという結果があったという話があったわけですけど、まさにその視点というのが大事だと思うんです。保育士というのは、単に子供を預かっている人というわけではなくて、やはりその年齢に応じた成長、発達を促す大事な役割を果たされていると。  私自身も子供を保育園に預けていますけれども、今パンツトレーニングの真っ最中で、私、親だけだとなかなかくじけてしまいそうなところを、保育士の皆さんの支えや励ましがあるからやっていける、やはりそういう専門性というところの理解をいかに広げていくかというのは大事だと思うんですけど、その点についてのお考えや広げていくための方策等ありましたら、是非お聞かせいただければと思います。
  274. 天野妙

    公述人(天野妙君) また代弁をいただき、ありがとうございます。  保育士さんのヒアリングをさせていただいて大変勉強になったのが、本当に、毎週の週案ですとか月案といって、細かく子供の成長をどういうふうに見ていくかというのを一人ずつ作っているということが分かったんですね。私も利用者として保育園にお世話になっていますけれども、実際働いていらっしゃるサイドの方々がどれだけ子供に対して思いを持っていて、かつ業務としてきちんと管理をされているかといったところの具体的なところが見えていなかったんだなということを改めて感じました。  これをどういうふうに皆さんに理解していただくかというポイントですけれども、もしよろしければ、皆様の中で、保育園に一日若しくは一週間、三日でもいいですけれども、体験ではないですが、していただくと、どれだけの業務量があって、書類を作成して、子供と向き合う、一対三が適切な数字なのか、一対二十が適切な数字なのかというのも御理解いただけるのではないかなと思いますので、もし御要望があれば段取りさせていただきますのでお申し出いただけたらなと思います。
  275. 吉良よし子

    吉良よし子君 本当に現場を知るということが大事だというお話だったと思います。そういう意味でも、保育の予算、抜本的拡充が必要ですし、今回、子育てや教育の予算を増やさなきゃいけないというのは、皆思いは同じだと思うんです。  ただ、今回の、先ほどもありましたとおり、今回政府が進めている教育無償化について言えば、幼児教育についても、また高等教育についても、その財源は消費税の増税分で賄うんだということが法案に明記されている状態なわけですよね。これは本当に今、先ほどもありましたけれども、大きな矛盾だと思うんです。  実は、学生グループの高等教育無償化プロジェクト、FREEというところの皆さんは、昨日記者会見を行って、この政府の政策についてのステートメント、意見を発表されました。そこでも消費税が財源になっていることについて問題視をされていて、学生を支援するための費用が学生の暮らしと直接関わる消費税増税によるものであることは大きな矛盾だと、この財源を消費税と特定するのはやめてほしいと、そういう御意見を出されているわけです。  先ほどもあったけれども、消費税増税じゃなくても大企業や高額所得者の皆さんに応分の負担を求めるとか、若しくは武器の爆買い、軍事費の増大などではなくてその分を教育や保育に回していくなど、やり方というのは様々あると思うわけです。少なくともこの無償化の財源を消費税に特定するようなことはすべきじゃないと思うのですが、両公述人の御意見をお聞かせください。
  276. 小河光治

    公述人(小河光治君) 先ほども申し上げたように、私は、本当に、確かに今のおっしゃるところもそうかもしれません、先ほど申したことと重なるかもしれませんが。  財源問題という問題もありますが、とにかく、とはいってもこれを、例えば無償化、せっかくここまで来ている、さっき言った困っている子供たちを放置するとかそういったことにはやっぱりしていただきたくない。そういう意味では、財源の問題、広くもっと議論をしていただくことは必要かもしれませんが、是非とも、特に高等教育の無償化、逆に言うと、そこだけではなくて高校に対する支援というのも非常に手薄い部分もありますので、そういったものを含めてしっかりと議論をしていただきながら財源を確保していただいて、より充実していただくことを望んでいます。
  277. 天野妙

    公述人(天野妙君) 小河公述人と同じく、やはり財源を特定すると、何か人質を取られたような、そんな気持ちになってしまいますので、できれば、いろんな財源の創出の仕方があると思いますので、そこは本当に皆さんで議論をいただいて、皆さんのお考えの中で子供が社会の宝だということを真ん中に置いていただいて推し進めていただけたらなというふうに思っています。
  278. 吉良よし子

    吉良よし子君 議論いただいてということでしたけれども、やはり消費税ということで特定するというところについては問題があると言わざるを得ないと思うわけです。もちろん、一方で、そういう教育や子育てに予算を付けなければならないというのは当然のことですし、そのための議論が必要だということだと受け取りました。  あわせて、では小河公述人の方にまた伺いたいと思いますけれども、では、今回の政府の奨学金の拡充、無償化政策についてですけれども、まあ一定前進はあるのは間違いないとは思いますけど、ただ、対象者がまだまだ限られていて、多くは先ほどおっしゃられたような有利子の借金となる奨学金を利用せざるを得ない状況はまだまだ続いているし、また現在返済困難に陥っている方もたくさんいると。自己破産件数も二千件超えているというような実態もあるわけですけれども、そうした奨学金返済に係る救済策拡充は急がれていると思うのですが、公述人の御意見お聞かせください。
  279. 小河光治

    公述人(小河光治君) おっしゃるとおりだと思います。  そういう意味では、先ほども申しましたように、これから進学をする子に光を当てるのと同時に、今苦しんでいる、返済ができないかもしれない、そういう若い世代人たちも、例えば、せめて有利子の分のその利子分だけでも国が持っていただくだとか、あるいは今、返還猶予というところが、これも延ばしていただいて、十年ですけども、これもちゃんとやっぱり延ばしていただく。あしなが育英会ではそういったものも、猶予もしっかり例えば取っているような制度がありますし、そういったようなことも含めて幅広く、やはり今困っている子供、若者に漏れなく光が当たるようにしていただきたいと強く思います。
  280. 吉良よし子

    吉良よし子君 今困っている若者に漏れなくということで、本当に制度の拡充は急がれていると思います。  また、現在の学生の生活状況についても伺いたいんですけれども、私、先日、三月六日の予算委員会の中で、借金となる奨学金が怖いという認識が学生の中で広がる下で借り控えが起きていると、一方で、家庭からの仕送りも減っているためにアルバイトをせざるを得ない、学生アルバイトが増加しているということを指摘させていただきました。一方で、首相は、そのアルバイトの増加については様々な要因だと、生活苦、生活が苦しい学生が増えているとは言えないとの認識も示されたわけですけれども、ただ、先ほどの学生グループFREEの調査でも、アルバイトをしている学生のうち八割の方がその収入を生活費に充てているという回答もされているわけであり、このアルバイトの増加というのは学生の生活苦と決して無関係ではないと思いますし、それが学業の支障になっているというのは大変な問題かなと思うのですが、その点について、学生のアルバイト就労の実態等について、生活実態について、公述人、いかがお考えか、お聞かせください。
  281. 小河光治

    公述人(小河光治君) 奨学金を借りて将来多額の借金を背負うだけではなくて、今なお例えば家庭にも仕送りをしている子供たちも、学生たちもいますし、おっしゃるように、生きるため、学ぶために本当にもう倒れるまで働いている。で、なかなか、結局それで体調崩してしまって大学をやめざるを得ないということに追い込まれる学生たちも、私も何人かそういう、もう本当につらい状況を見てきました。  なので、今本当おっしゃられたとおりに、こういう状況は一日も早く解消しなきゃいけないということを切に思うのとともに、今、一方で、私たち、あすのばで調査をしますと、高校一年生の三人に一人がもう既にバイトをしている。それが同じように、学校に行くためあるいは家庭のために高校生の段階でそういう状況になっている。ここもやっぱりもう無視できない状況ですね。やりたい部活動もそれで諦めるとか、中にはやっぱり高校を諦める子供たちもまだいるという実態もありますから、そういう意味では、大学のみならず高校生も含めて是非手厚い支援をお願いしたいと思います。
  282. 吉良よし子

    吉良よし子君 大学のみならず高校生をと、子供たち、子育て、教育、学生への支援というのは本当に必要だし、そのための予算がまだまだ足りないんだということをお二人の御意見からよく分かりましたので、また頑張っていきたいと思います。  今日は、本当に貴重な御意見、ありがとうございました。
  283. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 無所属クラブの薬師寺みちよでございます。いつもありがとうございます。  私から、まず小河公述人の方にお尋ねさせていただきたいと思います。  これ、子供の貧困というのがだんだん見えづらくなってきているという状況、調査会等々でもいろいろ御意見いただいたところなんですけれども、貧困というからぼろを着ているか、そうじゃない。スマホも持っているし、一見見ては全く分からないような状況というのが今の子供の貧困にあるんではないか。だからこそ、見えづらい中で支援の手というのも差し伸べにくいというようなことが私も感じているところでございます。  そういう意味で、時代の流れとともに何か子供の貧困の在り方というのがもし変わっていらっしゃると思うことがございましたら、まず教えていただけますでしょうか、お願い申し上げます。
  284. 小河光治

    公述人(小河光治君) 私ども、ちょっとさっきも言いましたけど、子供の貧困の貧困というのは、貧しいという言葉と困っているという言葉がある。この二つの軸で考えると、経済的な問題、それから困り事が多いか少ないかというところと両方実はある。貧困は、まさに経済的に苦しい状況にあり、かつ困り事をたくさん抱えている、生きづらさをたくさん抱えている状況が貧困ということだと思います。  私自身も子供のときに親を亡くして大変な状況にあったんですけど、かつては、私の自分の体験からいっても、経済的には貧しいけれども、例えば地域だとかあるいは学校の先生だとか、いろんなところが本当に親代わりをしていただいて、親はなくとも子は育つということわざどおり、親代わりにいっぱいなっていただくような地域社会だとか、そういうものがあった。ですから、困り事はそんなに、少なかったのかなと思います。  ただ、今はそういう状況でもないという、両方複合的になってきて、さらに、例えばこれで外国にルーツを持っているお子さんですと更にそれが多重になってくるというような部分というのは、やっぱりかつてに比べると大変一方で厳しくなって、孤立している問題も含めて、より深刻な状況に今なっているのが現状ではないかと思います。
  285. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 ありがとうございます。  だからこそ、この調査というものについても先ほど言及いただいたかと思います。私は、しっかりとその調査研究の中で誰にどのような支援が必要かということを今後打ち出していかなければならないと思いますけれども、調査体制のようなものにつきましてもし何かお考えがございましたら教えていただけますでしょうか、お願い申し上げます。
  286. 小河光治

    公述人(小河光治君) 先ほど来からずっとありますように、指標開発というか、いかに多面的な多様な指標を作るにも、まずは全国の実態調査をすると、全国で同じ物差しで調査をするということですね。そういう中で、もしかすると地域によって、沖縄の子供の状態、北海道の子供の状態、東京の子供の状態、これ、地域的にも違うものが、それぞれ特徴があるのではないか、都市部と郡部が違うとか、そういったようなものも、今のところは何もまずデータが、そういう基礎的なデータが貧困に関する調査というのはないわけですね。  ですから、やはりその辺は、これは研究者の皆さん、先ほど申しました阿部彩さんを始め多くの研究者の皆さんはその必要性を非常に力説をされていますので、是非とも、これ、予算を付けていただいて早急に実施をしていただきたいと切に願います。
  287. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 ありがとうございます。  その調査研究をする中で見えてくる問題として、ここに挙げていらっしゃる、今回の法案の見直しにつきましての言及の中でも、その子供の貧困が社会的課題であるというところを、私、大変注目いたしております。自殺対策の法案も改正をしていく中で、社会的な課題というふうに受け止める、これ、すごく重要な視点だったかと思います。  例えば、今、様々なところで、児童相談所というものをつくられてしまったら困るという反対運動が起こったり、あるいは保育所が近所にあってはというような、大変そういった、もう私からしてみれば大変悲しい声も聞こえてくるわけでございます。  ですから、しっかり社会で子供を育んでいくという視点をまずこの法案の中でうたうことこそ、今回私どもがこのような議論をしている意味があるのかなとも思いますけれども、この社会的な課題と捉え、その先にあるもの、どのようなものをお考えになっていらっしゃいますでしょうか、お願い申し上げます。
  288. 小河光治

    公述人(小河光治君) まさに今日のテーマで、天野さんも先ほどからおっしゃっているとおりだと思いますけれども、やはり子供を育てるというのは、今まではどちらかというと親とか家族だけの問題というか、ということから、これはやっぱり社会全体が子供を育てていくんだということをどうやってちゃんと広げていくのかということが大切なんだろうと。  それは、先ほど言ったユニバーサルな、普遍的な、全ての子供たちが漏れないように手厚い支援をしていくということと、さらに、そういう中でも、やっぱりなかなか親御さんだけの力ではもうやりたくてもできないというような部分についてはより手厚く支援をしていく。それは、国だとか行政が、やはり制度的な支援もありますし、それだけではなくて地域の皆さん、子供食堂だとかそういったような形でも、そういう形で物心両面で子供たちを支えていく制度と支援をどうやって手厚くしていくことかということが今求められているんだろうなと、それが我々の国の未来そのものにつながっていくのではないかなと強く思います。
  289. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 本当にありがとうございました。  私も、子育てをする中で地域社会に助けられながらここまで参りましたので、やっぱり地域社会の中でどのように育むか、社会全体の問題としてこれから子供の問題を考えていかなければならないと。ありがとうございました。  次に、天野公述人の方にお伺いさせていただきます。  一方で、その社会のニーズというものがどこにあるか。いつも講演活動をなさったりコンサルタントとして活躍していらっしゃる中で、どういうニーズに対してそれを回答を、いつもお答えになっていらっしゃるのか。例えば、企業でこういうテーマがあるんだけど、若しくはこういう解決法はないかと、様々なお問合せもあるかと思うんですけれども、どのようなものが中心でしょうか、教えていただけますでしょうか、お願い申し上げます。
  290. 天野妙

    公述人(天野妙君) 企業のテーマ、私は女性活躍推進のビジネスをしていますので、女性が活躍できないポイントが何かといったような話の中で、例えば、講演をした後に、天野さん、活躍したいけれど保育園がなかったら活躍どころじゃないよねというお話はよく耳にしますので、そういったことも踏まえてこういった活動をさせていただいている次第です。  あと、やはりこの女性活躍推進という法律ができていること自体には認知はあるんですけれども、なぜそれができたのか、どうして必要なのかといったところがまだそしゃくできていない、のみ込めていないといったような方々が多いなというふうに感じております。
  291. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 ありがとうございます。  私も産業医として、いわゆる産業保健の立場から、いつもその間に仲介役として入る役目をどうしても担わなければならないんですけれども、こうやって女性として活躍するために、なかなか活躍できないために結構メンタル的にストレスを抱えてしまう方、一方で、職場の中でも、例えばお母さんであれば時短勤務ができる、でも時短勤務をしたその後の業務は誰が引き受けるのか、結局、子供を持っていない者若しくは残業ができる者が過重労働というものを強いられてしまう、じゃ、それを上手に回していくためにはどうやってこの会社というものを、社会というものを再構築していく必要があるのかと、これ、本当に壮大な私はテーマだとも思っております。  ですから、お互いにウイン・ウインになるようにやっぱり制度としても予算としても獲得していかなければならないと思うんですけど、何かいいアイデア等ございましたら教えていただけますでしょうか、お願い申し上げます。
  292. 天野妙

    公述人(天野妙君) やはり、この場もそうですし企業の場でもそうですが、女性が非常に少ない、マイノリティーといった存在になりますので、ここは少し圧力を掛けて女性を増やしていく、企業で働く女性側も増やしていきますし、例えば正社員、今、非正規の方が女性の方は比率が高いですけれども、正社員の比率を上げていくということですとか管理職の比率を上げていくということ、あと役員の比率を上げていく、また議員さんも、皆さんも女性の比率を上げていくということで制度そのものの見直しになっていきますし、あと、またそういったことで、女性が言っている、女性の代表者みたいな方、代弁者みたいな形でよく議員も意見を求められることがあるかと思いますけれども、そうではなくて、薬師寺さんといった個人名で意見が求められるきっかけになりますので、やはりクオータ、割当てみたいなものが今は、加速度的に制度を、マイノリティーの部分に対して加速度的に進めていくのは、クオータみたいなものが必要なのではないかなというふうに思っています。
  293. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 ありがとうございます。  例えば、私どももいろいろ悩みながら制度を進めていくんですけれども、何か好事例などがございましたら御紹介いただけますでしょうか。女性がこうやって保活をしながらもしっかり保育所を見付けられ、安心して働けるということが企業そして社会のメリットにこのようになっていくぞというのが、小さなものでも結構でございますので、お願いできませんでしょうか。
  294. 天野妙

    公述人(天野妙君) 企業で保育所と絡めてというとなかなか難しいですけれども、やはり、ちょっと最初の話に戻りますが、男性側が育児休業を代わりに取るといった形に、保育園に入れなかった場合ですね、男性側が一旦お休みをするといった選択ができている家庭若しくは企業に所属されている方はやはり会社に対するロイヤリティーも高くなりますし、あと、やはりチームで、男性が産休を取ったりすること自体に前向きな企業というのは、仕事が属人化されていませんので、情報共有も進んでいますから、そういった意味合いでも、まあ休んでも大丈夫、今だったらこういうふうにできるよといったようなことが進められる。  例えば、リクルートコミュニケーションズという会社は男性育休を義務化されている企業で、もう二年前から進められていらっしゃるんですけれども、インタビューにも行ったんですが、やはり休む段取りみたいなものも含めて情報共有できるので、会社にとってのリスクマネジメント、また、あと意識が共有できる、自分の家庭環境なども共有できるということで、心理的安全性が担保されて労働生産性が上がっていくといったような結果も出ている、調査結果も出ているというふうにお聞きしております。
  295. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 ありがとうございます。  そういう好事例を共有していくことによって多分これ社会に広がっていくのかなと思うんです。私もいろいろ調査をしてみましても、女性が多い職場でしたら、女性の商品を開発している職場でしたら積極的に取り組んでいただけるんですけれども、やはり金融でしたり物づくりといったところ若しくは五十人以下の小企業のようなところではなかなか取り組みづらいと。分かっていても、いいと分かってやらなきゃいけないと分かっていてもなかなかできないという、こういう現実がございますので、もし何か最後に一言、そういった取り組みにくい企業さんが気軽に取り組めるようなものがございましたら教えていただけますでしょうか。
  296. 天野妙

    公述人(天野妙君) 企業が取り組みやすいかなと思っているのが、男性の産休十日間というのを実施していくのがいいのではないかなというふうに思っております。
  297. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 では、時間ですので終わります。ありがとうございました。
  298. 金子原二郎

    委員長金子原二郎君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人方々に一言御礼を申し上げます。  本日は、有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。  次回は明十三日午後零時五十五分から委員会を開会することとし、これをもって公聴会を散会いたします。    午後四時散会