○古賀之士君
国民民主党・新緑風会の古賀之士です。
ただいま
議題となりました
所得税法等の一部を改正する
法律案について、
会派を代表して、提案も盛り込み、
反対の
立場で
討論いたします。
「つくろう、新しい答え。」、これは
政策提案を重視する
国民民主党のタグラインです。税制においても新しい答えをつくるため、参議院
財政金融
委員会で
議論してまいりました。
例えば金融に関する税制です。この三十年余りの
平成の
時代において、様々な税制改正が行われてきました。しかし、まさにそのことによって
格差の
拡大がもたらした面もあるのではないか、そう言わざるを得ません。この三十年間の税の
在り方を検討していきます。
低
所得者層は所得税減税の恩恵をほとんどあずかっておらず、
消費税を払うのみ。その一方、高
所得者世帯では、所得税、
住民税が三百九十万円も減ったのに比べて、
消費税の負担はその十分の一以下、三十八万円にとどまっています。
そこで、
格差是正のため高額
所得者を中心とした金融所得課税の見直しを行うと同時に、サラリーマン
世帯などの老後を守るためNISAやiDeCoを拡充することを新しい答えとして強く求めましたが、
財務大臣は、引き続き検討を続けるなどと、残念ながら前向きな答弁はいただけませんでした。
賃貸住宅への支援も
国民民主党の新しい答えです。住宅を購入する場合の
政策については、ローン控除の延長、すまい給付金の拡充、次
世代住宅ポイント制度など、曲がりなりにも
対策がなされています。これに比べて、賃貸住宅に住む人
たちへの税
対応は見当たりません。家賃に
消費税は掛からないと
政府は説明しますが、それは見た目だけの話で、実質的には転嫁された
消費税が含まれています。賃貸住宅に住む方々も含めて、さらに、結婚や
子育てなど生活のトータルとして住まいの負担の軽減が必要ですが、
政府はその気は更々ないようです。
我が国は、度々大きな災害に見舞われているにもかかわらず、税制の
対応が不十分と言わざるを得ません。現状では、災害による損失が生じても雑損控除で
処理するほかありません。しかし、災害による損失は、雑損控除の対象となる例えば盗難や横領と比べて多額となりやすく、被災地の復旧
復興がなされる期間も
長期となることがほとんどです。そこで、新しい答えとして災害損失控除の新設を提案しましたが、
政府はまともに取り合おうとはしませんでした。
いずれも、
国民の強い願いに基づいた新しい答えの税制提案でしたが、結果はまさに門前払い。一字一句たりとも法案を変更することなくこのまま押し通すことが、
政府の強い願いなのでしょうか。
それでは、この法案、そして付随する
政策について、
反対する
理由を述べていきます。
来年度の税制における最大の
課題は、何といっても
消費税です。混乱を招くことが確実な
軽減税率の導入に我々は
反対してきました。今回、それに加えて、税金による
ポイント還元という
政策が唐突に打ち出されてきました。
財政金融
委員会で幾つか質問をしてみましたが、謎は深まるばかりです。例えば、外国人旅行客が、プリペイドカードで物を買ってポイントをもらった後、免税手続をしたらどうなるのかとお尋ねしましたら、
還元の対象となりますとのこと。つまり、現金で払う子供にはポイントが付かず、
消費税を払わない外国人にポイントで
還元、しかも元は税金というのは、さすがに理屈が合いません。気前がいいにも程があります。
キャッシュレス社会に多くの利便性があり、そのこと自体に
反対ではもちろんありません。しかし、このように余りにも生煮えの制度に税金を使うのは、いかがなものでしょうか。
キャッシュレスで税金レス、これが今回の
ポイント還元制度の実態です。
自動車税についても問題が山積です。おおむね減税となることや、
地方への財源移譲が行われたことなど、評価する点も少しはあります。
しかし、今、いわゆるCASE、コネクテッド、自動化、シェアリング、そして電動化によって、自動車の
在り方、そして社会の仕組みが大きく変わろうとしています。ところが、今回の税制には、その兆しすら見ることができません。これでは、自動車
政策のレースで周回遅れになってしまいます。ギアを一段も二段も上げ、アクセルを全開にする
対応が必要ですが、今回の法案にはそのスピード感は全く見当たらないのです。世界一の自動車大国にふさわしい世界一の自動車税制を、世界一のスピードで築き上げるべきです。
以上、
反対の
理由を述べてまいりましたが、このような税制が立案される背景には、事実を軽視する現政権の体質を見て取ることができます。
最近のベストセラーに「ファクトフルネス」という本があります。この議場の中にもお読みになった方が多いのではないでしょうか。客観的なデータを用いて世界の現状に対する思い込みを正してくれる、優れた本です。
しかし、今の
日本の
政治はどうでしょうか。財務省による公文書
改ざん、
防衛省の南スーダン日報隠し、そして厚生労働省の毎月
勤労統計の不正など、前提となるファクト自体が実にいいかげんに扱われており、
政策立案の基礎が
信頼できない状況です。現政権の実態を本にすれば、そのタイトルは、「ファクトフルネス」ではなく、ファクトのふりですとなるでしょう。
世界でデータサイエンスをめぐってGAFAやBATなどがしのぎを削る中、足下で起きた
統計不正の
報告書すら読んでいないと
総理大臣が公言する
日本は、何が起きるのでしょうか。
例えば
景気判断です。アメリカのFRBは
政策金利の引上げを行わないことを決めましたが、アメリカの長短金利は逆転するなど、既に警戒モードに入っています。ヨーロッパのECBは金利据置期間を延長しました。中国も、
経済成長の
目標を引き下げ、
景気対策を打ち出しています。世界
経済が重要な局面を迎えていることは明らかです。
これに対して、
日本はどうでしょう。
景気動向指数はもちろん、
輸出、鉱工業生産、機械受注、工作機械受注など、重要なファクトはいずれも暗い影を落としています。にもかかわらず、戦後最長の
景気回復と
政府は強気の姿勢を維持しております。
しかし、実際は、
国民のおよそ八割はその
景気回復を実感していません。世界各国がデータを直視して
政策方針を転換しようとしている中、
日本の
政府だけがファクトのふりですに基づいた
景気の認識をしているようでは、
国民の生活に取り返しの付かない悪影響を与えてしまいます。
「ファクトフルネス」の著者はこう言っています。未来を考えるには、現在を知ることですと。しかし、今、客観的データを出してもらえないなど、不信感があることは紛れもない事実です。これでは、未来への責任を果たしているとはとても言えないでしょう。五歳の女の子に、ぼうっと生きてんじゃねえよと叱られないようにしなければなりません。
あと一月余りで
平成が終わり、新しい元号となります。
消費税は
平成元年にスタートしました。新しい税制をつくろうと昭和の末にもがき苦しんだ先人
たちに倣い、我々も
平成の末に新しい税制をつくって、新しい
時代を切り開くべきです。
しかし、今回の法案はとてもその任に堪えません。私
たち国民民主党の目指す「つくろう、新しい答え。」ではなく、現状は、取り繕う古い答えにすぎません。
したがって、この税制には断固
反対であると皆様に強く訴えまして、私の
反対討論を終わります。
御清聴、誠にありがとうございました。(
拍手)