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2019-03-08 第198回国会 参議院 本会議 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三十一年三月八日(金曜日)    午前十時一分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第七号   平成三十一年三月八日    午前十時開議  第一 天皇陛下即位三十年につき慶賀の意を   表する件     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、日程第一  一、永年在職議員表彰の件  一、所得税法等の一部を改正する法律案趣旨   説明)      ─────・─────
  2. 伊達忠一

    議長伊達忠一君) これより会議を開きます。  日程第一 天皇陛下即位三十年につき慶賀の意を表する件  天皇陛下におかせられましては、本年、御即位三十年をお迎えになりました。誠に慶賀の至りに堪えません。  天皇陛下におかれましては、本年、御即位三十年をお迎えになりましたことに、失礼しました。  つきましては、本院といたしましては、慶賀の意を表するため、天皇陛下院議をもって賀詞を奉呈することとし、その賀詞議長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 伊達忠一

    議長伊達忠一君) 御異議ないと認めます。  議長において起草いたしました賀詞を朗読いたします。    〔総員起立〕  天皇陛下におかせられましては 本年 御即位三十年をお迎えになりましたことに 心からお祝いを申し上げます  常に国民に寄り添い その安寧を祈り 数々の公務に御精励になった天皇陛下のお姿は 国民ひとしく敬慕の念に堪えないところであります  天皇陛下には これからもお健やかにお過ごしになりますよう祈ってやみません  ここに参議院は 国民を代表して 院議をもって 謹んで感謝と慶祝の意を表します  賀詞奉呈方は、議長において取り計らいます。      ─────・─────
  4. 伊達忠一

    議長伊達忠一君) この際、永年在職議員表彰の件についてお諮りいたします。  議員鉢呂吉雄君は、国会議員として在職すること二十五年に達せられました。  つきましては、院議をもって同君の永年の功労表彰することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 伊達忠一

    議長伊達忠一君) 御異議ないと認めます。  同君に対する表彰文を朗読いたします。    〔鉢呂吉雄起立〕  議員鉢呂吉雄君 君は国会議員としてその職にあること二十五年に及び常に憲政のために力を尽くされました  参議院は君の永年の功労に対しここに院議をもって表彰します    〔拍手〕     ─────────────
  6. 伊達忠一

    議長伊達忠一君) 橋本聖子君から発言を求められました。発言を許します。橋本聖子君。    〔橋本聖子登壇拍手
  7. 橋本聖子

    橋本聖子君 私は、皆様のお許しをいただき、本院議員一同を代表して、ただいま永年在職のゆえをもって表彰されました鉢呂吉雄先生に対しまして、一言お祝い言葉を申し述べさせていただきます。  鉢呂先生は、平成二年の第三十九回衆議院議員選挙において初当選をされて以来、連続して七回の当選を重ねられ、二十二年四か月にわたり衆議院議員として御活躍をしてこられました。その後、平成二十八年の第二十四回参議院議員通常選挙において当選され、本院議員に転じ、この度、国会議員として在職二十五年に達せられました。  この間、鉢呂先生は、衆議院においては、石炭対策特別委員長農林水産委員長厚生労働委員長政治倫理審査会会長法務委員長等、枢要な役職を歴任され、本院においては、現在、国家基本政策委員長の重責を果たされておられます。また、第一次橋本内閣大蔵政務次官野田内閣経済産業大臣として国政の中枢に参画され、その卓越した政治手腕を遺憾なく発揮してこられました。  このように、鉢呂先生は、高い見識と豊かな政治経験に基づき、我が国議会政治発展のため多大な貢献をしてこられました。  ここに、我々議員一同は、先生の二十五年間の御功績に対しまして深甚なる敬意を表しますとともに、本日、栄えある表彰を受けられましたことに対し、心から祝意を表する次第でございます。  現在、我が国を取り巻く内外の諸情勢は誠に厳しく、克服すべき諸課題が山積する中にあって、国民の負託を受けた国会の責務は重く、参議院が果たすべき役割に対する関心と期待は高まるばかりです。  鉢呂先生におかれましては、どうか、今後とも御健康に留意され、国民のため、参議院のため、そして我が国議会制民主主義発展のため、なお一層の御尽力を賜りますよう切にお願いを申し上げまして、お祝い言葉といたします。  誠におめでとうございました。(拍手
  8. 伊達忠一

    議長伊達忠一君) 鉢呂吉雄君から発言を求められました。発言を許します。鉢呂吉雄君。    〔鉢呂吉雄登壇拍手
  9. 鉢呂吉雄

    鉢呂吉雄君 ただいま、院議をもちまして在職二十五年の永年在職議員として栄えある表彰を賜りました。誠に身に余る光栄であり、感激の極みでございます。  また、同郷の橋本聖子会長より心温まる御祝辞をいただき、深く感謝を申し上げます。  今まさに、平成という時代を終えようとしております。私は、平成元年十一月に出馬表明し、翌年の平成二年二月十八日に初当選をいたしました。以来、衆議院七期二十二年余り参議院一期二年余りと、まさに平成時代とともに国会活動を続けることができました。これもひとえに、長年にわたる衆参両院の諸先輩、同僚議員皆様のおかげであり、また、北海道民お一人お一人の温かい確かな御支援のたまものであります。心より深くお礼を申し上げます。  私が衆議院に初当選した北海道函館市、渡島・檜山地区衆議院の旧三区でありますけれども、土井たか子社会党委員長が山が動いたという前年の参議院選挙の勝利を踏まえて、三名区で二人の候補者を二十年ぶりに擁立をした選挙区であり、次の平成五年の総選挙野党過半数の二名を当選実現したところであります。  まさに、私の政治活動の原点は、日本政治にもう一つの政権を担い得る政党をつくり出すことにありました。そして、私は、細川連立政権自社さ政権民主党政権と、政権与党を三度経験してまいりました。それらの経験を生かして、再度新たな政権実現することは私の使命であり、日本民主主義発展に資すると確信をしております。  私は、二回目の選挙戦のさなか、平成五年七月十二日、地元の奥尻島を中心とする北海道南西沖地震が発生し、死者、行方不明者二百二十六名という大災害経験いたしました。それ以来、阪神・淡路大震災東日本大震災、昨年の北海道胆振東部地震など、大きな自然災害連続でありました。  今後、首都直下地震南海トラフ地震などが予測される中、自然災害に対する抜本的な防災対策が求められております。そして、私は、人口著しい減少に悩む北海道に生きる政治家として、過疎化の深刻さを今も日々実感をしております。今の日本のような効率優先社会経済政策では、地域間格差国民間の格差が一層拡大してしまうのではないかとの大きな危機感を持っております。  また、私の二十五年間は、ガット・ウルグアイ・ラウンドからWTO、TPP、EPAまで、国際貿易交渉の中で、農産物等第一次産品に市場開放が求められてきた時代でもありました。  その中で、私は生産者の苦悩や農山漁村の後退を見続けてきましたが、食料自給率が三八%にまで低下する中、国民の安全、安心、安定した食料を提供する政策というものをどう具体化できるのか、また、農山漁村の多面的な役割国際貿易との関係でどう折り合いを付け、持続可能な農山漁村をどのようにつくり上げていくのか、私の今後の政策課題でもあります。  二十三年前になりますけれども、平成八年一月、橋本龍太郎内閣久保亘大蔵大臣の下、今議場におられます山崎正昭参議院議長と共に大蔵政務次官を拝命し、金融危機の始まりと言われた住専問題について、六千八百五十億円の税金を金融機関に投入するという、国民の九割が大反対する中で、その理解をいただくことに奔走いたしました。  先送りの声が与党内にも上がる中、当時の総理大蔵大臣予算委員会での国民理解をいただくための懸命で誠実な答弁は、歴史に残るものでありました。国会は、国民の合意をいただくために渾身の議論を闘わせる場であり、決して議論を回避してはならないと、そのとき痛切に感じたところであります。  また、私は、小泉郵政国会での野党国対委員長として郵政解散に立ち向かいました。また、民主党政権下での与党国対委員長として野党に常に配慮した国会運営経験した中で、今なお議院内閣制における立法府の在り方、熟議の国会在り方、これが問われていると思っています。  十二年前の参議院選挙では、民主党選対委員長として公認、推薦合わせて過半数を超える六十四議席を得たこと、そして七年前の衆議院選挙では、二度目の選対委員長として民主党政権が崩壊する大敗北を喫したことなど、この二十五年間はまさに激動の日々でありました。  そして、私自身も、前回、三年前、参議院選挙三名区の北海道選挙区で、今議場におられます長谷川岳議員あるいは徳永エリ議員と共に当選することができたところでございます。  四年余りの雌伏のときを経験したからこそ、今を大切に、私のモットーである、顔の見える、声の届く、そして徹底的に現場主義政治活動を続けながら日本未来に更に貢献してまいりたいと考えております。  結びに、伊達忠一議長を始め議員各位に重ねて厚く御礼申し上げますと同時に、郷土北海道民お一人お一人に感謝し、また、支えてくれた事務所の秘書、スタッフの皆さん家族の苦労に感謝申し上げ、私のお礼の御挨拶といたします。  本日は誠にありがとうございました。(拍手)      ─────・─────
  10. 伊達忠一

    議長伊達忠一君) この際、日程に追加して、  所得税法等の一部を改正する法律案について、提出者趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 伊達忠一

    議長伊達忠一君) 御異議ないと認めます。財務大臣麻生太郎君。    〔国務大臣麻生太郎登壇拍手
  12. 麻生太郎

    国務大臣麻生太郎君) ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案趣旨を御説明させていただきます。  本法律案は、消費税率引上げに伴う対応デフレ脱却経済再生実現、国際的な租税回避への効果的な対応等観点から、国税に関し、所要改正を一体として行うものであります。  以下、その大要を申し上げます。  第一に、消費税率引上げに伴う対応等観点から、住宅ローン控除制度拡充環境性能に優れた自動車に対する自動車重量税軽減措置見直し並びに揮発油税及び地方揮発油税税率変更を行うこととしております。  第二に、デフレ脱却経済再生を確実なものとするため、研究開発税制見直し及び個人事業者事業承継税制創設を行うことといたしております。  第三に、国際的な租税回避についてより効果的に対応するため、国際課税制度見直しを行うこととしております。  このほか、土地の売買等に係る登録免許税特例等について、その適用期限延長整理合理化等を行うこととしております。  以上、所得税法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)     ─────────────
  13. 伊達忠一

    議長伊達忠一君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。三木亨君。    〔三木亨登壇拍手
  14. 三木亨

    三木亨君 おはようございます。自由民主党の三木亨です。  私は、自民・公明を代表し、ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案について質問いたします。  冒頭、毎月勤労統計調査不適切事案に関連してお伺いします。  この調査手法の不適切な変更等の背景には、厚生労働省における統計への認識の甘さやチェック機能不全といった危機的な状況があります。厚労省には猛省を求めます。また、先日、総務省統計委員会により不適切処理理由等について統計技術的、学術的側面から更なる説明を求めた意見書も出されており、真摯に説明を尽くすべきです。  一方、毎月勤労統計調査では、調査手法等の問題のほかに、改正された新たな手法により算出された統計データをどのように解釈するのかという点でも議論が行われています。この点については、これまで明らかになっているとおり、近年の我が国の働き方を踏まえた上で、賃金の変化を見れば、景気回復期には、非正規で働く割合が高い高齢者や女性が働き始めることで、賃上げがあっても、計算上、一人当たりの賃金を見れば下方圧力となりますが、世帯全体で見れば賃金総額は上昇し、経済に与える効果は高いと考えられます。  このように経済状況を正しく把握するためには、幾つかの経済指標を多角的に見て、かつ瞬間だけではなく傾向を正しく見極め、数値の裏にある実態理解する必要があると考えます。  そこで、まず、現在の賃金状況雇用情勢などから、我が国経済雇用状況をどのように認識し、それを踏まえてどのように経済政策を運営していくお考えなのか、総理にお伺いいたします。  さて、今回の所得税法等改正は、本年十月の消費税率引上げに伴う対応デフレ脱却経済再生実現、国際的な租税回避への効率的な対応等観点から、住宅ローン控除拡充環境性能に優れた自動車に対する課税見直し試験研究開発税制見直し個人事業者事業承継税制創設教育資金、結婚・子育て資金一括贈与非課税措置見直しなど所要措置を講ずるためのものです。  そこで、人口減少少子高齢化が進む中、今回の所得税法等改正に盛り込まれた措置により、デフレからの完全脱却に向けた我が国経済の更なる成長と好循環拡大がどのように進むと見込んでおられるのか、総理にお伺いいたします。  次に、本年十月の消費税率引上げに伴う対応についてお尋ねします。  今回の対応については、消費税率引上げによる購買力の低下、引上げ前の駆け込み需要反動減、そして消費税が持つ逆進性に対して十分な配慮がされています。一方、対策が多岐にわたっているので、国民皆様に分かりやすい説明が必要です。  そこで、食料品等への軽減税率の導入、大きな買物となる住宅自動車購入への配慮、そしてキャッシュレス促進と併せたポイント還元について、それぞれにおいて期待される効果を改めて示した上で、どのように国民皆さんに分かりやすい周知を徹底していくつもりか、総理にお伺いします。  消費税率引上げについては円滑な転嫁が必要であり、特に大手による中小企業小規模事業者への転嫁拒否などはあってはなりません。関係する政府機関等にはしっかりと監視していただきたいと思います。  同時に、診療報酬等が国により決められている、かつ医療については消費税非課税であることから、医療機関にとっては、高額な検査機器等設備投資が大きな負担になるとの懸念の声が寄せられていました。この点についても、今回の消費税率引上げによる影響が極力抑えられるような対策が講ぜられるべきと考えますが、麻生財務大臣のお考えをお聞かせください。  我が国経済の屋台骨である全国三百六十万、従業員数三千二百万人に及ぶ中小企業小規模事業者に関して伺います。  経済グローバル化などの流れを受けて、中小企業小規模事業者においても、国内はもちろん海外企業との厳しい競争を勝ち抜くためには、優れた製品開発生産過程効率化を図っていかなければなりません。革新的な製品開発に取り組む企業は、そこで働く従業員のみならず、就職先考えている若者たち、そして地域にも夢を与え、未来への扉を開きます。効率性が高まれば、大企業に比べ遅れがちな中小企業小規模事業者での働き方改革にもつながります。  そこで、今回の所得税法改正では、中小企業研究開発への継続的な投資、あるいは新たな投資、そして効率化等経営改善に向けた投資を後押しするために、どのような考え方で、どのような施策を盛り込んでいるのか、世耕経済産業大臣にお伺いします。  昨年度の税制改正では、経営者高齢化等により円滑な代替わり、若返りに苦慮していた中小企業小規模事業者のために、思い切った事業承継税制が盛り込まれたところです。中小企業経営者年齢のピークが六十歳代後半にあり、引退年齢が七十歳前後であることに鑑みると、まさに待ったなしという状況で発動された施策であったと言えます。  今回は、個人事業者事業承継にも着目し、個人事業用資産についての贈与税相続税に一定の納税猶予を設けることとしています。  そこで、昨年度拡充された事業承継税制効果を踏まえて、どのように個人事業者についても事業承継が進むよう働きかけを行っていくつもりか、世耕経済産業大臣に伺います。  親や祖父母が三十歳未満の子や孫に金融機関を通じて千五百万円まで贈与信託し、その資金教育費として使われた場合には、贈与時点での贈与税非課税とされる制度があります。教育費が増加する傾向にある昨今の状況考えれば、この教育資金一括贈与非課税措置は、祖父母両親資産早期若年世代に移転させることにより、経済活性化に寄与するものと期待できます。  一方、資産所得の大きさにより教育の選択肢が狭まったりすることで格差固定化するといった懸念にも配慮しつつ、さらに、大学院への進学やリカレント教育など、いつでも学ぶスタイルが広がりつつあることも踏まえる必要があると考えますが、今回の法改正ではどのような考えの下、変更されるのか、麻生財務大臣お尋ねします。  近年、激甚化、頻発化する異次元自然災害に対して異次元国土強靱化対応するという政府のスタンスを強く支持します。その上で、災害発生直後、緊急物資を集め、運び、住民皆様に提供するには、民間企業の力が必要です。  昨年、北海道胆振東部地震では、ブラックアウト、広域にわたる大規模停電が発生した際、北海道地元コンビニエンスストア停電時にもかかわらず営業を継続し、住民皆様に食事や日用品を提供し続けた例があります。  また、災害発生後、できるだけ早く被害を把握した上で、生産活動等を再開し、我が国、ひいては世界サプライチェーンを維持していくことの重要さも認識されているところです。東日本大震災時にも、東北地方自動車部品工場が被災し、世界規模自動車生産影響を受けたという事例もありました。  そこで、民間企業においても、あらかじめ事業継続計画、BCPを策定するとともに、自家発電機、制振・免震装置を備えておくことが肝要であると考えますが、民間企業における災害対策について今回の税制改正ではどのように配慮されているのか、麻生財務大臣にお伺いし、私の質問を終わります。  ありがとうございました。(拍手)    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇拍手
  15. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 三木亨議員にお答えいたします。  我が国経済雇用状況認識及び経済政策運営についてお尋ねがありました。  政権交代後、アベノミクスの三本の矢で取り組み、名目GDPは一割以上成長し、もはやデフレではないという状況をつくり出しました。  こうした中で、特に国民生活にとって最も大切な雇用については、二〇一二年から二〇一八年までの六年間で、生産年齢人口が五百万人減少する中にあっても就業者数は三百八十万人増加し、景気回復により仕事が増加したことにより、正社員の有効求人倍率調査開始以来最高水準となり、正規雇用者数も百三十一万人増加しました。賃上げも、連合の調査によれば、五年連続で今世紀に入って最高水準賃上げ実現中小企業賃上げは過去二十年で最高です。また、この春、高校、大学を卒業される方々の十二月時点就職内定率は過去最高水準となるなど、様々な経済指標で大幅に改善しています。  この成長の果実をしっかりと分配に回すことで次なる成長につながっていく。特に過去最高水準企業収益を更なる賃上げにつなげ、経済の好循環をより確かなものとしてまいります。  安倍内閣は、本年も引き続き経済優先。通商問題の動向、中国経済の先行きなど海外経済の不確実性には十分留意しつつ、経済運営に万全を期してまいります。  税制改正法案の狙いについてお尋ねがありました。  今般の税制改正法案では、消費税率一〇%への引上げ影響を緩和するとともに、デフレ脱却経済再生を確実なものとするため、税制面所要措置を講じることとしています。  具体的には、住宅ローン税制車体課税の大幅な減税のために必要な見直し、持続的な成長経路実現に向けたイノベーション促進のための研究開発税制見直し個人事業者の円滑な事業承継支援するための相続税贈与税の新たな納税猶予制度創設中小小規模企業生産性向上等のための中小企業関連税制延長等を実施することとしています。  こうした取組を通じ、様々な支援策をより多くの皆さんに御活用いただくことで、景気回復基調が確かなものとなり、我が国経済の更なる成長と好循環拡大につながるものと考えております。  消費税率引上げに伴う対策についてお尋ねがありました。  軽減税率制度は、ほぼ全ての人が毎日購入している食料品等に限定して税率を八%に据え置くことにより、消費税逆進性を緩和しつつ、買物の都度、痛税感の緩和を実感できるという利点があります。そういうことから、低所得者への配慮として実施するものです。  また、消費税率引上げに当たっては、前回の八%への引上げの際に耐久財中心駆け込み需要反動減といった大きな需要変動が生じた経験を踏まえ、思い切ったポイント還元や、自動車住宅への大幅減税といった駆け込み需要反動減対策でしっかりと消費を下支えしていきます。  ポイント還元の実施に当たっては、対象となる店舗に還元率を明記したポスター等を貼り、消費者皆さんが一目で分かる工夫を講じます。さらに、キャッシュレス決済事業者とも連携しながら、中小小規模事業者消費者双方に積極的に広報を行っていきます。  いずれにせよ、今回の消費税率引上げ対応には、引上げ前後で事業者に混乱が生じないよう、また消費者が安心して購買できるよう、積極的な広報により各施策周知徹底を図ってまいります。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣麻生太郎登壇拍手
  16. 麻生太郎

    国務大臣麻生太郎君) 三木議員から、医療分野における消費税率引上げ影響抑制贈与税非課税措置災害対策について、計三問お尋ねがあっております。  まず、医療分野における消費税率引上げ影響抑制についてお尋ねがありました。  非課税であります社会保険診療につきましては、今回の消費税率引上げに当たっても、仕入れ税額相当分を全体として診療報酬に上乗せする形で補填を行うことといたしております。  また、従来、診療報酬における補填ばらつきがある等の指摘がなされていたところでありますが、消費税率一〇%への引上げに際して、診療報酬配点方法を精緻化することにより、医療機関の種別による補填ばらつきが是正されることとなろうと存じます。  なお、平成三十一年度税制改正において、長時間労働実態指摘される医師の勤務時間短縮や、地域医療提供体制の確保、医療機器共同利用の推進など効率的な配置の促進といった観点から、医療用機器等特別償却制度拡充見直しを行うこととしております。  次に、教育資金一括贈与非課税措置についてお尋ねがあっております。  本措置は、祖父母両親資産早期若年世代に移転させるということにより経済活性化に寄与する目的で導入されたものであります。  本措置は、資産家族内のみに非課税で承継され、格差固定化につながりかねない面もあるとの指摘もされておりました。したがって、受贈者所得制限を設定するなどの見直しを行うことといたしております。  一方、大学院課程を含めた就学や、就業、キャリアアップ視点に更に役立つものとなることも重要であります。こうした点を踏まえ、本措置が終了する年齢について、現行の三十歳から、就学等の継続を条件に、最大で四十歳まで引き上げるなどの見直しを行うことといたしております。  最後に、企業における災害対策への税制の支援についてのお尋ねがありました。  近年、中小企業の事業継続性に影響を与えるような自然災害が頻発をしているところであり、災害に備え、あらかじめ対応力を強化するための取組を進めていく必要があろうと存じます。  このため、中小企業の事業活動に災害が与える影響抑制するという観点から、事業継続力強化についての目標、内容等を記載した事業継続力強化計画に基づいて中小企業が行った防災・減災設備への投資を対象に二〇%の特別償却ができる制度創設することといたしております。(拍手)    〔国務大臣世耕弘成君登壇拍手
  17. 世耕弘成

    国務大臣(世耕弘成君) 三木議員にお答えいたします。  中小企業投資を後押しするための施策についてお尋ねがありました。  議員御指摘のとおり、中小企業小規模事業者が厳しいグローバル競争を勝ち抜くためには、優れた製品開発生産過程効率化を図ることが重要です。このため、平成三十一年度の税制改正では、中小企業小規模事業者研究開発投資を後押しするため、大企業以上の税額控除率が適用される中小企業技術基盤強化税制について、その上乗せ措置を二年間延長することとしています。  また、多くの中小企業小規模事業者が深刻な人手不足に直面していることから、その生産性を高めていくことも喫緊の課題です。このため、中小企業投資促進税制等を二年間延長し、先進的な設備投資を後押しすることとしています。  これらの支援策によって、日本経済の屋台骨を支える中小企業小規模事業者成長投資をしっかりと後押ししてまいります。  個人事業者事業承継支援策についてお尋ねがありました。  事業承継促進するため、平成三十一年度税制改正大綱では、個人事業者の集中的な事業承継を後押しするため、十年間の時限措置として、土地、建物、機械、器具備品などの継承時の贈与税相続税の一〇〇%納税猶予制度創設を盛り込んだところです。  今後は、この制度を御活用いただけるよう、分かりやすいパンフレットを全国千六百六十の商工会、五百十五の商工会議所等を通じて事業者に届けます。また、税理士を始めとした全国三万二千八百五十二の認定経営革新等支援機関の御協力も得て、相談対応制度の申請支援などを行います。  さらに、全国四十八か所の事業引継ぎセンターにおける後継者不在の事業者へのマッチング支援や、事業承継補助金による事業承継後の事業者支援などの施策も併せて講じ、個人事業者皆様にしっかりと寄り添い、事業承継を後押ししてまいります。(拍手)     ─────────────
  18. 伊達忠一

    議長伊達忠一君) 江崎孝君。    〔江崎孝君登壇拍手
  19. 江崎孝

    ○江崎孝君 立憲民主党・民友会・希望の会の江崎孝です。  ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案に対し、会派を代表して質問いたします。  安倍総理自身も税は民主主義と言っておられます。国民が納税するのは憲法上の義務だけではなく、税を納めることでお互いを支え合い、生活する上での様々な行政サービスを享受できるからであり、そこには前提として、政治、行政に対する信頼があるからと言えます。その信頼が安倍政権にあるでしょうか。  財務省の公文書改ざんから統計のデータ不正など、政治の信頼をおとしめる理由は枚挙にいとまがありません。しかし、ここでは、安倍政権最大の売りであるアベノミクスの経済効果についてお尋ねします。  まずは、アベノミクスの六年間の現実です。  我が国名目GDPは、ドルベースで、安倍政権発足後の二〇一三年から減少に転じ、二〇一七年で四千八百六十億ドルまで落ち込みました。これは、アベノミクス発動前の二〇一二年の六千二百一億ドルには遠く及ばず、リーマン・ショック後の二〇〇九年の五千二百三十三億ドルさえ下回っています。  主要国一人当たり名目GDPの順位も、安倍政権になって、それまで十一位だったものが十九位に落ち、二〇一七年には二十位になりました。成功しているはずのアベノミクスの下でなぜこういったことが起きるのでしょうか。  円ベースでは上がっているなどといったはぐらかす回答は、更に国民の信頼をなくすことになります。総理の明確な説明を求めます。  ドルベースでGDPが減少することは、国力が毀損していることにほかなりません。もっと言えば、唯一のアベノミクス効果と言ってよい円安がなければ、円ベースでも今のようにGDPは上がっていないでしょう。しかも、円安は、日銀のバランスシートを崩壊させるかもしれない異次元の量的緩和やマイナス金利政策で生み出された一時的現象です。  さて、政府は、毎年、中長期の経済財政に関する試算を公表し、アベノミクスの効果が着実に発現した場合の成長実現ケースと、それほどうまくいかなかった場合のベースラインケースの二つの成長率を試算しています。  確認しますが、二〇一三年からの六年間は、アベノミクス効果による景気拡張期だったはずです。アベノミクス発動の翌年の二〇一四年七月の発表の同試算では、二〇一八年は、成長実現ケースで実質成長率二・一%、名目成長率で三・五%、ベースラインケースで実質一・二%、名目一・七%になると試算していました。  ところが、どうでしょう。二〇一八年実績見込みは、実質、名目共に、何と〇・九%です。成長実現どころか、アベノミクスがうまくいかなかった場合のベースラインさえ大きく下回ってしまっているのが実態です。六年間で実際の成長率が両試算を上回った年はありません。唯一の例外が、二〇一七年にアベノミクスがうまくいかなかった場合のベースラインケースをほんの僅か上回っただけです。政府は、このことを深刻に受け止めなければなりません。  これでは、政府が戦後最長と自慢する好景気政府による経済成長偽装だったと言われても仕方がありません。多くの国民がアベノミクス効果を実感できないのは当然でしょう。余りに非現実的な想定を堂々と押し付けるから統計不正が起きたのではないでしょうか。試算に間違いがないのであれば、アベノミクスの効果は現れていないと認め、これまでの発言を撤回すべきです。総理説明を求めます。  アベノミクスの六年間は、対外的には国力を弱め、国内的には、日銀を使った株高の演出と、それに伴う円安で装われたえせ好景気です。まさしくこれは、安倍政権による経済成長偽装なのです。  安倍総理、あなたの政策でこれ以上国力をおとしめ、国内に貧困と格差を広げるのはすぐにやめていただきたい。そして、アベノミクスの失敗を国民に謝罪し、その責任を取るべきです。総理の回答を求めます。  今、税制に求められているのは、所得再分配機能を最大限発揮することであります。公平、納得、透明、簡素という原則の下、現下の課題対応できる真っ当な税制を実現しなければなりません。  しかし、政府は、抜本的な格差是正にこれといった手を打たないまま、逆進性を避けられない消費税税率を一〇%まで上げようとしています。先ほど説明したとおり、アベノミクスで国民生活は潤っていません。むしろ国力が落ちている。何かのきっかけで円高に振れれば、日本経済はひとたまりもありません。そんな中で消費税を上げ、更に国内消費を落ち込ませることを今やるべきか。答えはノーでしょう。  そこで、あえて求めます。十月からの消費税増税は凍結すべきです。総理、どうでしょうか。  増税による消費落ち込みの緩和策の一つが、国民を混乱せしめ、税収そのものの減収につながるとんでもない愚策の軽減税率です。導入に必要な財源は一・一兆円、二%の増税分の税収が約五・七兆円ですから、その二割が消えることになります。財源一・一兆円のうち六千億円を、昨年度改正した個人所得課税等の見直しで捻出するとしています。  昨年行った個人所得課税見直しは、高所得者の給与所得控除や基礎控除などの適用を制限するという、所得再分配機能の回復を図る観点から行われたはずです。財務省が先日示した試算でも、財源一・一兆円のうち約三千億円が高所得層へ振り向けられるだろうとしています。この金額は、少なく見積もってもの注釈付きで見るべきです。  いずれにしても、軽減税率は高所得層ほど恩恵が大きいのは明白です。軽減税率財源に所得再分配機能の回復のために行った個人所得課税見直しで得た財源を充てることは、高所得者から徴収した税金の多くを高所得者に還元することになります。これで国民の納得が得られるとは到底思えません。財務大臣の見解をお聞きします。  税制を通じた格差是正を実現するのであれば、金融所得課税の強化に早急に着手すべきでした。それにもかかわらず、与党内で進められた検討は早々に見送られました。株への投資意欲を下げ、アベノミクスに影響を与えるという理由からでしょうか。だとすれば、これもアベノミクスの悪影響と言わざるを得ません。  その金融所得課税税率二〇%を二五%に引き上げた場合の増収規模は幾らになるでしょうか。財務大臣の答弁を求めます。  金融所得課税は分離課税であるため、株式を多く保有する富裕層ほど所得税負担が低下します。主要国と比較しても、我が国の金融所得課税が厳しいとは到底言えません。所得再分配機能を回復し格差を是正するためにも、税率引上げを検討すべきです。財務大臣の見解を伺います。  民主党時代、社会保障と税の一体改革の柱に給付付き税額控除の導入を挙げ、消費税増税を確認しました。しかし、安倍政権になり、軽減税率に変わりました。真に低所得者の生活を支えるのは給付付き税額控除です。そのために、民主党はマイナンバー制度の導入も決めました。  マイナンバーは既に全国民に割り振られ、給与、株等の所得の捕捉も進み、マイナンバーと預金口座の関連付けも昨年一月から始まりました。マイナンバー制度には様々な議論があります。制度が導入された以上、社会保障や税務の手続に必要な様々な情報に加えて、所得情報を含めて一元的に活用できるよう本格稼働、定着させることは不可欠です。そのためにも、国民理解を得ることが重要です。  まず、マイナンバーの利便性を上げることを求めます。マイナンバーカードの普及率が上がらないのは、利便性に問題があるからです。まず使ってできることを増やすことが重要です。しかし、内閣府ホームページでは、マイナンバーのメリットとして、一番目に来るのが行政事務の効率化、二番目が国民の利便性の向上、三番目が公平公正な社会の実現です。行政事務の効率化のために国民がマイナンバーの必要性を感じるとは到底思えません。  こういった考え方からまず改め、国民の利便性の向上を第一に据えるべきです。石田担当大臣の考えをお聞きします。  軽減税率制度が導入されたとしても、マイナンバー制度の進捗に合わせて、近い将来、給付付き税額控除への切替えが必要と考えますが、財務大臣の考えをお聞きします。  政府は、二〇二五年までにキャッシュレス決済比率を四〇%まで引き上げる考えです。我が国キャッシュレス化が進まないのは、治安が良いことや円という通貨が信頼できるといった我が国独自の理由もあり、決して悪いことではありません。いずれにしても、国民一人一人が考え決めていく問題です。  しかし、今回、中小小規模事業者に対する消費税増税対策の目玉としてポイント還元制度が提案されました。しかも、九か月の期間限定です。消費税増税対策に名を借りた、国による期間限定キャッシュレス誘導策にほかなりません。  五ポイントのお得感でキャッシュレスへの導入を誘いますが、現金で支払う消費者、クレジットカードを取得することのできない低所得者、クレジット決済システムを導入していない中小企業経営者には、まるで脅しにも聞こえるでしょう。加えて、なぜ九か月なのか。外国人観光客が増える二〇二〇年東京オリパラの前に都市部でカード決済の店舗を増やそうというたくらみとも取れます。  さて、このポイント還元制度でも高所得者優遇を指摘しなければなりません。クレジットカードは、会社の審査により持つことのできない人もおり、また、その利用可能な店舗も当然都市部に集中しています。買物をする店舗が限られる地域などは切り落とされ、都市部の日々高額の買物をする人ほど恩恵が大きいのは明白です。  総理は、二月十四日の衆議院会議で、ポイント還元中小小規模事業者の売上げが大きく伸びると、そこの従業員所得拡大につながるので、富裕層だけが恩恵を受けるかのような御指摘は当たりませんと述べました。しかし、成功していると言い続けるアベノミクス六年の結果でも、企業の内部留保はたまる一方で、全く論拠を欠きます。まるで、風が吹けばおけ屋がもうかるといった論法です。  逆進性の高い消費税を増税する一方で、このような高所得者を優遇する施策を打ち出すのは、本末転倒、所得再分配の観点からも大問題です。改めて、逆進性対策としてのポイント還元の有効性について、総理の所見を伺います。  他方、お店が支払う決済手数料は、九か月は国が一部負担し、三・二五%に引き下げられます。しかし、期間終了後は政府は関与しないと言っています。九か月後、カード会社が手数料引上げを求める可能性はありませんか。カード会社が潤うだけではないでしょうか。手数料を負担できないからキャッシュレス対応をためらっている経営者が、九か月間のみの政策を受け入れるでしょうか。そんな不安がある政策でよいのですか。僅か九か月の時限措置で、消費税増税の平準化とキャッシュレス決済の普及の両立が可能だとは到底思えません。経済産業大臣の見解をお聞きします。  更なる問題点は、ポイント還元制度の対象に法人間取引が含まれることです。個人消費を念頭に置いた消費税増税対策としての意義が問われます。法人間取引の不正防止が可能でしょうか。法人間取引によってポイント還元額が多額に膨れ上がれば、当初の予算では足りず、更に予算を増やす必要に迫られるのではないでしょうか。このようなことともなれば、消費税増税の税収が更に縮減されることになります。こうした問題にどのように対応するのですか。経済産業大臣説明をお願いします。  ポイント還元制度は、これまで我が国経験した規模を超える駆け込み需要反動減を招きかねないことも指摘しておかなければなりません。ポイント還元率は五%。八%の軽減税率の品であれば、実質税負担は三%です。これは消費税導入時の一九八九年の税水準です。ポイント還元期間中の駆け込み需要を助長するのは容易に想像できます。逆に期間終了時に、五%から一〇%へと、かつて我が国経験したことのない五%増税に相当します。  ポイント還元終了前後の駆け込み需要反動減について、政府はどの程度の規模になると想定していますか。また、その際の対応について検討が行われたのでしょうか。余りに未熟な政策ではないですか。経済産業大臣の見解を求めます。  子供の貧困への対応は早急かつ重要な課題です。現行の寡婦控除は婚姻歴の有無により控除の適用が判断されることから、同じ一人親でも税負担に大きな差が生じています。今回、未婚の一人親への寡婦控除の適用が拡充されました。しかし、地方税においては個人住民税の非課税措置ですが、国税においては税制面対応が先送りされ、給付金支給で予算措置されます。なぜでしょう。  与党内では、未婚の一人親支援拡充は、未婚の出産を助長する、夫婦別姓につながりかねないなどといった、私たちの価値観ではとても想像できない意見が強かったと聞きます。驚きです。家族在り方は多様化しており、伝統的な家族観に固執することで子供を救えないなど、あってはならないことです。  子供の貧困への対応の重要性は、国税、地方税において変わらないはず。なぜ国では税対応ができなかったのか、財務大臣の答弁を求めます。  既に多くの地方自治体が早くからみなし寡婦制度を採用するなど、未婚の一人親への支援に乗り出しています。今回、給付金が支給されるとはいえ、その場しのぎの、来年度限りの対応に終わるのではないかとの疑念が拭えません。国においても税制面での格差是正を検討すべきなのは当然です。財務大臣の見解をお聞きします。  いずれにしても、給付金支給は来年度から、個人住民非課税措置は二〇二一年度から自治体での事務手続が始まります。その際、事実婚状態でないことの確認が必要とされます。どうやって確認するかも問題であり、とても大変な作業です。自治体間でばらつきがあってはなりません。人的対応も必要となります。自治体に対する十分な予算措置が必要です。総務大臣のお考えをお聞きします。  アベノミクスで国力が毀損され、国内の消費は低迷し、貧困、格差拡大している。そんな最悪のタイミングでの消費税増税。しかも、消費税増税の増収分を相殺するような高所得者、富裕層優遇の軽減税率ポイント還元、プレミアム商品券といった増税緩和策の大盤振る舞い。どこが公平、納得、透明、簡素と言えるでしょうか。到底国民が納得できる税制改革とは言えません。  このような混乱極まる税制改革の根底には安倍政権による経済成長偽装があること、そして、まずはアベノミクスの失敗を謝罪し、安倍総理はその責任を取るべきであることを再度指摘し、質問を終わります。  ありがとうございました。(拍手)    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇拍手
  20. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 江崎孝議員にお答えをいたします。  名目GDPについてお尋ねがありました。  政権交代後、アベノミクスの三本の矢で取り組み、名目GDPは一割以上成長し、もはやデフレではないという状況をつくり出しました。これは、ごまかしなどではなく現実であります。  国民は円で生活しており、給料も円でもらっています。そのため、国民皆様景気回復を実感していただくには、自国通貨、円建てのGDPを増やしていくことが重要であります。その時々の為替の動向によって大きく変わるドルベースで見ると、デフレ下で中小企業の倒産が今よりも三割も多く、正規雇用も失われた民主党政権下の二〇一二年の方が高かったという結果を踏まえても、円建てで見ていくべきなのは明らかであります。  アベノミクスの効果についてお尋ねがありました。  二〇〇〇年代の景気回復は、デフレ下での成長であり、名目GDP成長は期間全体で二・五%にとどまったのに対し、今般の景気回復は、アベノミクスの三本の矢で取り組み、もはやデフレではないという状況をつくり出す中で、名目GDPは一〇%以上成長しました。  また、日銀短観の地域別景況感では、二〇〇〇年代の回復期を通じてプラスであったのが関東地方と東海地方のみであったのに対し、今回の景気回復ではこの五年間にわたって北海道から九州・沖縄まで全国九地域全てプラスで推移しており、全国津々浦々に景気回復の温かい風が届き始めています。  さらに、今回の景気回復では、特に国民生活にとって最も大切な雇用は大きく改善しており、確実に経済の好循環が生まれています。  実感については、様々な世論調査がある中で、平成三十年の内閣府の調査によれば、現在の生活に満足と回答した者の割合は七四・七%と過去最高となっており、多くの方々に景気の回復を実感していただいています。  ただ、まだ実感できないと感じる方もいらっしゃることも承知をしております。国民一人一人に景気回復の波が広がっていくよう、あらゆる政策を総動員してまいります。  なお、御指摘の中長期の経済財政に関する試算については、過去の実績や足下の経済状況を踏まえて作成しており、非現実的な想定との御指摘は当たらず、ましてや統計不正とも何ら関係ありません。  アベノミクスが失敗したのではないかとのお尋ねがありました。  政権交代以前、我が国は長い間デフレ不況の中に沈み込み、企業は売上げや利益が増えずに給料は下がっていました。また、円高が進む中で、大企業は製造拠点を海外に移す一方、中小小規模事業者は付いてはいけず、倒産が相次いでいました。  この経験を踏まえ、安倍内閣では、政権交代後、長引くデフレから脱却し、日本経済を力強く成長させていくため、これまでとは次元の違う政策パッケージとして、アベノミクス三本の矢に一体として取り組んでまいりました。この結果、極めて短い期間でデフレではないという状況をつくり出す中で、名目GDPは一割以上成長し、国民生活にとって最も大切な雇用も大きく改善しているのは事実であり、えせ好景気経済成長偽装といった御指摘は全く当たりません。  また、格差や貧困についても、成長と分配の好循環を生み出す観点から、児童扶養手当の増額や給付型奨学金の創設を進める中で、一人親家庭の大学進学率は二四%から四二%に上昇し、悪化を続けてきた子供の相対的貧困率も減少に転じ、大幅に改善するとともに、平成五年以来一貫して増加していた現役世代の生活保護世帯も、政権交代後、八万世帯減少するなど、実績が上がっています。  引き続き、アベノミクスを全力で推進し、少子高齢化が進む中でも力強い成長を続ける経済をつくり上げることで、責任を果たしてまいります。  消費税率引上げについてお尋ねがありました。  消費の動向を見ると、二〇一四年四月の消費税率八%への引上げにより、大きな駆け込み需要反動減が生じ、景気の回復力が弱まることとなったものの、その後のアベノミクスの取組により、GDPベースで見て、二〇一六年後半以降増加傾向で推移している。  消費を取り巻く環境を見ると、生産年齢人口減少する中でも雇用が大幅に増加し、国民みんなの稼ぎである総雇用所得は名目でも実質でも増加が続くなど、雇用所得環境は着実に改善しており、消費は引き続き持ち直しが続くことが期待されます。  その上で、消費税率の一〇%への引上げは、全世代型社会保障の構築に向け、少子化対策や社会保障に対する安定財源を確保するために、どうしても必要なものです。  リーマン・ショック級の出来事がない限り、法律で定められたとおり、十月に現行の八%から一〇%に引き上げる予定です。  今回の消費税率の一〇%への引上げに当たっては、前回の反省の上、あらゆる施策を総動員し、経済影響を及ぼさないよう全力で対応してまいります。いただいた消費税を全て還元する規模の十二分な対策を講じ、景気の回復軌道を確かなものとしてまいります。  ポイント還元についてお尋ねがありました。  大企業は、消費税率引上げ後、自己負担でセールなどを実施できるのに対し、中小小規模事業者は、大企業に比べて体力が弱く、競争上の不利があります。今回のポイント還元は、逆進性対策ではなく、こうした点を踏まえ、中小小規模事業者に対する消費をしっかりと下支えする観点から実施するものです。  連合の調査によれば、昨年春、中小企業では二十年ぶりの高い水準賃上げ実現したところでありますが、今回のポイント還元によって雇用の七割を支える中小小規模事業者の売上げが大きく伸びれば、従業員の方々の更なる所得拡大など、裾野の広い波及効果も期待されると考えます。  その実施に当たっては、クレジットカードのようなものだけではなく、与信審査が不要で、店頭で誰もがすぐ作ることができるプリペイドカードも含めて幅広い選択肢を用意することで、所得などにかかわらず、全国津々浦々の幅広い消費者皆さんがそのメリットを受けられるようにする考えです。  また、今回は、店頭にQRコード一枚を置くだけで導入でき、中小小規模事業者皆さんの維持コストがほとんど掛からないQR決済を始め、幅広いキャッシュレス決済手法を対象といたします。決済端末の導入が必要となる場合も、しっかりと支援を行い、その負担をゼロとするとともに、手数料についても、三・二五%以下とした上で、さらにその一部を補助するなどにより、中小小規模事業者皆さん経済的負担を軽減し、キャッシュレス決済の普及を図ってまいります。  海外で急速にキャッシュレス決済が普及する中、日本を訪れる外国人観光客の七割がキャッシュレスがあればもっとお金を多く使ったと回答しています。キャッシュレス決済はインバウンド消費による売上げ拡大の大きなチャンスであり、外国人観光客四千万人時代の到来を見据え、今回のポイント還元を通じて中小小規模事業者皆さんの新しい成長へとつなげていく考えであります。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣麻生太郎登壇拍手
  21. 麻生太郎

    国務大臣麻生太郎君) 江崎議員から、個人所得課税見直し消費税軽減税率、金融所得課税、給付付き税額控除、未婚の一人親への対応等について、計四問お尋ねがあっております。  まず、個人所得課税見直し消費税軽減税率についてのお尋ねがありました。  平成三十年度税制改正における個人所得課税見直しでは、所得再分配機能の回復のほか、働き方改革を後押しする観点から、各種控除の見直しを行ったところであります。  他方、消費税軽減税率制度は、ほぼ全ての人が毎日購入をしておられる飲食料品等税率を八%に据え置くことにより、買物の都度、痛税感の緩和を実感できるとともに、低所得者ほど収入に占める消費税率負担の割合が高いという、いわゆる消費税逆進性を緩和できるという利点があることから、低所得者への配慮として実施するものであります。  このように、軽減税率制度は、逆進性の緩和の観点から実施するものでありまして、高所得者から徴収した税金の多くを高所得者に還元するとの議員の御指摘は当たりません。  次に、金融所得課税についてのお尋ねがありました。  お尋ねの金融所得課税税率を二五%に引き上げた場合の増収額につきましては、将来の株価、また税率引上げ投資家の行動や株式の取引高に与える影響等について予測することができませんことから、増収額を見積もることが困難であることは御理解いただけると存じます。  なお、金融所得課税については、平成二十六年から、上場株式の譲渡益等の税率を一〇%から二〇%に引き上げたところであります。これにより、高所得者ほど所得税の負担税率が上昇する傾向が見られ、所得再分配機能の回復に一定の効果があったのではないかと考えております。  いずれにせよ、金融所得課税を始め所得税の在り方につきましては、経済社会の情勢の変化も踏まえつつ、不断に検討を行ってまいりたいと考えております。  次に、給付付き税額控除についてのお尋ねがありました。  給付付き税額控除につきましては、マイナンバー制度の導入後、以前よりも正確な所得把握が可能にはなりましたものの、海外で得た所得や源泉分離課税として得ている利子所得などにつきましては、マイナンバー制度を利用してもなお正確な把握は困難であります。課税最低限以下の所得の方々につきましては、そもそも申告義務がないということから、その所得を把握できないといった課題があります。  また、社会保障番号が導入をされておりますアメリカやイギリスにおきましても、給付付き税額控除の過誤、不正受給の問題があることにも留意すべきであると考えております。  そうした中で、政府としては、税制抜本改革法に示された選択肢の中から、軽減税率制度を低所得者配慮する施策として実施することとしたものであります。  こうしたことから、給付付き税額控除は、消費税率引上げに伴う低所得者対策として実施することを考えてはおりません。  最後に、未婚の一人親に対する税制上の対応についてのお尋ねがありました。  未婚の一人親に対する税制上の対応につきましては、平成三十一年度与党税制改正大綱を踏まえ、地方税法の改正において、子供の貧困に対応するため、児童扶養手当の支給を受けており、所得が一定以下の一人親に対して、個人住民税を非課税とする措置を講ずることとしたところであります。  他方、議員御指摘の寡婦控除につきましては、制度の成り立ち等も踏まえ、引き続き検討が必要であることから、国税、地方税共に見直しを行うこととはいたしておりません。  いずれにせよ、平成三十一年度与党税制改正大綱では、更なる税制上の対応の要否等について、平成三十二年度税制改正において検討し、結論を得ることとされており、政府といたしましては、与党議論を踏まえて適切に対応してまいりたいと考えております。(拍手)    〔国務大臣石田真敏君登壇拍手
  22. 石田真敏

    国務大臣(石田真敏君) 江崎議員にお答えをいたします。  まず、マイナンバーの国民の利便性向上についてお尋ねがございました。  マイナンバー制度は、より公平公正な社会保障制度や税制の基盤であるとともに、デジタル社会のインフラとして国民の利便性の向上や行政の効率化に資するものであります。  マイナンバーは、既に平成二十八年一月より、社会保障、税、災害対策分野の各行政事務で広く利用されておりまして、例えば児童手当の申請や介護保険料の減免申請など千二百以上の行政手続におきまして、マイナンバーを記載していただくことにより、これまで行政機関に発行を申請し添付する必要のあった住民票の写しや課税証明書等の書類を省略可能となるなど、国民の利便性向上を実現してきているところであります。  今後、更にこのような情報連携の対象を拡充していくとともに、先般のデジタル・ガバメント閣僚会議を受けまして、私の下で、マイナンバーカードを活用した消費活性化策、また健康保険証との一体化などを含めたマイナンバーカードの普及策及びマイナンバーの更なる利活用促進策について取りまとめる予定であります。  引き続き、マイナンバー制度の利活用を促進し、より一層国民制度のメリットを実感していただけるよう取り組んでまいります。  次に、一人親に対する個人住民税の非課税措置等についてお尋ねがございました。  今回の税制改正では、児童扶養手当の支給を受けており、所得が一定以下の一人親に対して、個人住民税を非課税とする措置を講ずるとともに、児童扶養手当の支給を受ける未婚の一人親に対し臨時・特別給付金を支給することとしております。  今回の措置は、一人親に対して講ずるものであり、事実婚状態である方は措置の対象としないことといたしております。  この点、児童扶養手当は一人親が事実婚状態でないことを確認した上で支給されていることから、今回の措置を講ずるに当たって、児童扶養手当受給者を対象とし、その情報を活用して事務を行うものであり、事実婚状態でないことの確認のために地方団体が新たに多大な事務負担を負うものではないと考えております。(拍手)    〔国務大臣世耕弘成君登壇拍手
  23. 世耕弘成

    国務大臣(世耕弘成君) 江崎議員にお答えいたします。  消費税増税前後の需要の平準化とキャッシュレス決済普及の両立についてお尋ねがありました。  今回の制度では、消費税率引上げ分を単にカバーするだけではなく、更に消費を喚起する観点から、還元率を五%としています。  また、実施期間中に決済事業者が手数料を三・二五%以下とすることを補助の条件としており、さらに、各決済事業者の手数料水準や期間終了後の手数料の取扱いについて、事前に決済事業者から中小小規模事業者に対して公表させることといたします。  近年、手数料を低廉な水準に設定する新興の決済事業者も出てきており、多様な決済事業者が参加することで市場競争が促進されることを期待しております。  これらの取組により、消費税増税前後の需要平準化を目指すとともに、キャッシュレス決済をしっかりと普及させていきたいと思います。  法人間の取引の不正により予算が膨らむのではないかとのお尋ねがありました。  法人間取引は今回の制度の対象からは排除しないこととしておりますが、これまでも、決済事業者間で悪質加盟店情報を共有し、こうした加盟店を排除するといった仕組みが存在しています。  今回の制度を濫用したポイント取得についても、こうした仕組みも参考に、決済事業者ともよく連携して防止に万全を期します。万が一、今回の制度を濫用したポイント取得が行われていることが発覚した場合には、厳正に対応し、不正防止に万全を期してまいります。  このため、法人間の取引の不正により予算が膨らむことは考えておりません。  ポイント還元終了前後の駆け込み需要反動減についてお尋ねがありました。  消費税引上げによる反動減対策は、無期限に実施し続けることはできないため、どこかで打ち切る必要があります。  そのような中、今回のポイント還元事業では、その適用期間をインバウンドなどによるキャッシュレス需要の拡大が見込まれる二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック大会の前までの九か月間とすることで、ポイント還元事業を終えることによる反動を最小限に抑えることができると考えております。(拍手)     ─────────────
  24. 伊達忠一

    議長伊達忠一君) 古賀之士君。    〔古賀之士君登壇拍手
  25. 古賀之士

    ○古賀之士君 国民民主党・新緑風会の古賀之士です。  ただいま議題となりました所得税法等改正案について、会派を代表して質問いたします。  税制の問題に入る前に、間もなく八年を迎える東日本大震災課題についてお尋ねいたします。  我々国民民主党は、先日、東京電力福島第一原子力発電所を含む被災地の現状を視察いたしました。改善したとはいえ、いまだ厳しい環境の中、廃炉という困難な目標に向けて懸命に働いている人たち。慣れない避難所で不安がる子供たちを世話したことから、将来福祉関係に進む決意を力強く訴えた、ふたば未来学園高校の生徒会長。海への誇りをあふれんばかりにみなぎらせ、ふるさと復活への願いについて身を乗り出して語りかける漁業関係者。国民の生活の場に伺ってこそ、政治課題をつかむことができる。今回の視察によってそのことを改めて実感いたしました。  中でも、地元の町長や村長が口々に訴えた復興庁の後継組織の問題は、与野党関係なく、早急に対処すべきでしょう。総理、この参議院会議の場で、三月十一日を控えたこのタイミングで、復興庁の後継組織について国民に向けて明言することで、政治の責任を果たしていただけますようお願い申し上げます。  さて、今回の法案について、総理から来年度税制改正の全体的な狙いを端的に述べていただけないでしょうか。あわせて、いわゆる骨太の方針で示された、真に必要な財政需要の増加に対応するための歳入改革努力について、真に必要な財政需要とはどのようなものか、総理よりお示しください。  税を徴収する現場の状況についてもお尋ねいたします。  近年における新規発生滞納額については、消費税からがおよそ六割と大きな割合を占めています。しかも、前回税率引上げ消費税滞納発生額が一七%も増加したことを考えれば、今年の引上げが行われた際にも滞納は一層増えると予想されます。  加えて、政府が強行しようとしている軽減税率の問題もあります。何が対象となり、何が対象とならないか、混乱が生じることは火を見るより明らかであり、第一線の税務署にそのしわ寄せが行くことになるでしょう。  適正、公正な課税と徴収の実現及び歳入の確保のためには、国税職員の定員確保と機構のより一層の拡充が急務であると思われますが、総理大臣のお考えをお聞かせ願います。  昨日の内閣府の発表を受け、メディアは、景気が後退期に入ったのではないか、現政権の戦後最長の景気拡大にイエローライトがともったのではないかと伝えております。そもそも、実感のない景気拡大の中で、本当に消費税を上げていいのでしょうか。  総理消費税を本当に引き上げるかどうか質問いたしますと、必ずと言っていいほど、先ほどもそうでしたが、こうお答えになります。リーマン・ショック級の出来事が起こらない限り引き上げる。この経済情勢がリーマン・ショック級かどうかの判断は、専門家も含めた国民議論が必要でしょう。G20の開催を目前に控えていますが、三年前の伊勢志摩サミットのように、国際会議の場で突然、リーマン・ショックに似ているなどとおっしゃらないように、総理にお願いを申し上げます。  消費税については、軽減税率への相談体制についてお尋ねいたします。  ある中小企業経営者は、軽減税率への疑問があったので国税庁の相談ダイヤルに掛けてみたそうです。すると、耳を疑う言葉が流れてきました。ナビダイヤルでおつなぎします、二十秒ごとにおよそ十円で御利用いただけます。しかも、午後五時を過ぎていたため、結局つながらなかったとか。電話を掛けた方はあきれ果てたそうです。  これは、電話対応という一見小さな問題に見えるかもしれません。しかし、国民に対する政府の姿勢を象徴する出来事ですので、あえて取り上げさせていただきました。  国民民主党は、軽減税率には断固反対です。しかし、実施をあくまで強行するのであれば、電話を掛けて、唖然、茫然、愕然とする人を一人でも減らすために、この有料の相談対応についてせめてもう少し改善していただけるかどうか、財務大臣にお伺いいたします。  次に、キャッシュレス消費者還元事業についてです。  政府は、キャッシュレス決済を進めるため、消費者へのポイント還元や決済端末の導入補助を行うとしています。決済端末の導入補助におけるこの決済端末とは何を指すのでしょうか。キャッシュレス決済に使われる手段は、クレジットカードやプリペイドカード、QRコードに限られるものではありません。今や顔認証、虹彩認証といった生体認証、あるいはマイクロチップ皮膚埋め込み認証といった最先端の認証技術を用いた決済は実用段階にあります。端末費用の三分の二は国が持つと聞いていますが、こうした最先端決済システムも今回の補助の対象になるのでしょうか。経産大臣にお尋ねいたします。  そもそも、政府が税金を使ってポイント還元を行うわけですから、適切に還元されたかどうかのチェックのため、各事業者キャッシュレスによる購買履歴を保存しておく必要があるでしょう。割引は小売店やサービス事業者が行う一方、ポイントや値引きの補助は決済事業者に対して行われるため、優越的地位の濫用を防ぐ観点からも、履歴の保存は重要です。  では、どれくらいの期間、どこで保存しておけばよいのでしょうか。経産大臣におかれましては、事業の対象となる九か月間の終了後の保存期間についてお答えいただけますでしょうか。  データの保存場所はどうでしょう。決済データが例えば中国において処理及び保存された場合、我が国の法律においてポイント補助に値するかどうか政府がチェックできるのか、あるいはそうした行為が中国の法律において可能かどうか、経産大臣に確認いたします。  以上、やや細かいところまで質問いたしましたが、これは政府の目指すキャッシュレス社会がどのようなものかに関わってくるためです。  ICチップの付いていないクレジットカードを店員に渡し、ボールペンでサインした上でカード利用明細書を紙で受け取る、こうした従来型のシステムもキャッシュレスには違いありません。しかし、あえて税金で補助して普及を図るのが適切かどうか、いま一度考える必要があるのではないでしょうか。  政府は、キャッシュレス比率四〇%を成果目標としていますが、そうした量的基準のみならず、質的基準において、例えばサインの要らない世界一のキャッシュレス国家を目指し、実現すべきです。すなわち、先端技術による認証の普及やそれに伴う課題の解決に向けて、まさに今取り組まなければならないと考えています。  研究開発税制についてもお聞きしたいところですが、これは後日、機会があれば財政金融委員会で質問考えております。なぜなら、日本の産業競争力の強化について、税制に先んじてお尋ねしなければならないこと、すなわち産業革新投資機構の問題があるからです。  この機構のトップである社長は今誰がお務めで、どのような経営方針が示されているのでしょうか。経産大臣からお答えをいただくとともに、財政投融資特別会計投資勘定を所管する財務大臣より、産業革新投資機構及びその子会社の株式会社INCJの現状について、政府による多額の出資に値するかどうか、御意見を聞かせてください。  今回の税制改正については、これまでお尋ねした論点以外にも疑問点が多く残っております。しかし、残念ながら、時間が迫ってまいりました。テレビ局でキャスター、アナウンサーをしていましたプライドに懸けまして、時間内に収めるべく、私の質問を終わります。  御清聴、誠にありがとうございました。(拍手)    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇拍手
  26. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 古賀之士議員にお答えいたします。  復興庁の後継組織についてお尋ねがありました。  本日、復興の基本方針を見直し、復興庁の後継組織について、政治の責任とリーダーシップの下で復興庁と同じような司令塔機能を果たす組織を置く方針を決定しました。今後、この方針に沿って具体的な組織の在り方について検討を進めてまいります。  税制改正法案の狙いと財政需要についてお尋ねがありました。  今般の税制改正法案では、消費税率一〇%への引上げ影響対応するとともに、デフレ脱却経済再生を確実なものとするため、税制面所要措置を講じることとしています。  具体的には、住宅ローン税制車体課税の大幅な減税のために必要な見直し、持続的な成長経路実現に向けたイノベーション促進のための研究開発税制見直し個人事業者の円滑な事業承継支援するための相続税贈与税の新たな納税猶予制度創設等を実施することとしています。  また、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック大会を控えた更なる観光需要の増大に対応するための国際観光旅客税の創設や、二〇二〇年の5Gの実現を始め、ソサエティー五・〇に向けた電波利用ニーズの拡大等に対応するための電波利用料の見直しなど、真に必要な財政需要の増加に対応するための歳入改革にも取り組んでいるところであります。  国税庁の体制整備についてお尋ねがありました。  税務行政を取り巻く環境については、経済活動の国際化、ICT化による調査、徴収事務の複雑化や申告件数の増加などにより、厳しさが増しています。また、軽減税率制度についても、その円滑な実施に向けてしっかりと取り組んでいく必要があります。こうした中で、適正、公平な課税、徴収を引き続き実現していくことは重要な課題考えています。このため、平成三十一年度予算における国税庁の定員については、歳入官庁としての重要性も踏まえ、厳しい財政状況の下ではあるものの純増にするなど、配慮を行っています。  政府としては、今後とも、業務の効率化を図りつつ、中長期的に必要な機構、定員を確保し、税務執行体制の強化に努めてまいります。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣麻生太郎登壇拍手
  27. 麻生太郎

    国務大臣麻生太郎君) 古賀議員から、軽減税率制度の実施に向けた相談体制の改善及び産業革新投資機構についての計二問、お尋ねがあっております。  まず、軽減税率制度の実施に向けた相談体制についてお尋ねがありました。  軽減税率制度の円滑な実施に向けて、周知広報や相談対応にしっかりと取り組むことが重要なことは言をまちません。このため、軽減税率制度に対する相談、照会について、まず、議員御指摘のとおり、皆様が同一料金で利用できる専用の消費税軽減税率電話相談センターを設置をいたしております。あわせて、各税務署に改正消費税相談コーナーを設置し、来署、お見えになったときによる相談相手において、個々の実情に応じたきめ細かな情報を提供することに努めております。御指摘のありました点等につきましては更なる改革に努めてまいりたいと存じます。  さらに、事業者団体、関係民間団体とも連携した無料の説明会を計約五万回開催し、延べ百四十五万程度の事業者皆様に参加をいただいております。  また、適用対象品目や請求書の書き方等について具体的な事例に基づいて解説をさせていただいたQアンドAやパンフレットを無料で提供もいたしております。  引き続き、軽減税率制度の円滑な制度に向けてしっかり取り組みますとともに、事業者皆様のニーズ等を踏まえた、より良い周知広報や相談対応となるように検討してまいりたいと考えております。  最後に、産業革新投資機構等についてのお尋ねがありました。  産業革新投資機構につきましては、その前身であります産業革新機構に対して、平成二十一年から二十五年までの間に累計で二千八百六十億円の産投出資を行っております。この出資金等を財源として、機構は、これまで約九千億円の投資を行い、累計として一千八百億円を超える収益を上げておりまして、適切に運営を行ってきたと考えております。(拍手)    〔国務大臣世耕弘成君登壇拍手
  28. 世耕弘成

    国務大臣(世耕弘成君) 古賀議員にお答えいたします。  ポイント還元制度における決済端末についてお尋ねがありました。  今回の制度では、決済事業者中小小規模事業者に対して提供するものとして登録したキャッシュレス決済端末やその附属機器などについて、その導入費用の三分の一を負担することを前提に、残り三分の二を国が補助し、中小企業の負担がゼロになる形で導入支援を行うこととしています。  御指摘のような最先端の認証技術を用いた決済端末についても、今回の制度に参加する決済事業者が登録した上でその導入費用の三分の一を負担するのであれば、支援の対象となり得るものと考えます。  キャッシュレスによる購買履歴の保存期間についてお尋ねがありました。  今回の事業においては、補助金の適正な交付やその事後的な確認の観点から、決済事業者に対しては、購買履歴や消費者へのポイント付与履歴などの情報について、事業終了後五年間、決済事業者において保存することを求めることとしております。  決済データの処理保存場所についてお尋ねがありました。  今回の制度に参加する決済事業者に対しては、個人情報の許可のない利用防止の体制整備も含め、十分なセキュリティーを担保することを求めることとしております。  具体的には、決済事業者の登録手続の際に、セキュリティーに関する外部認証や社内規定などの提出を求め、どこでデータを処理、保存するのであれ、十分なセキュリティーが担保されているか審査を行うこととなります。  その上で、仮に制度の実施を通じて十分なセキュリティーが担保されていない事業者が発覚した場合には、当該決済事業者の参加資格を停止し、補助金返還要求を実施するなど、厳しい対応を取ることとしております。  産業革新投資機構の社長と経営方針についてお尋ねがありました。  株式会社産業革新投資機構は、現在は暫定的な体制となっており、社長は不在となっております。現在、有識者の皆様の御意見を丁寧に伺いながら、今後の産業革新投資機構の運営の在り方についての考え方をまとめているところであります。  この考え方をまとめた上で、その内容に沿って後任の社長等の人選について検討を進め、経営方針についても新たな運営体制の下で議論をしてまいりたいと考えます。(拍手
  29. 伊達忠一

    議長伊達忠一君) 理事が協議中でございますので、少々お待ちください。  答弁の補足がございます。財務大臣麻生太郎君。    〔国務大臣麻生太郎登壇拍手
  30. 麻生太郎

    国務大臣麻生太郎君) 先ほどの答弁の中で、産業革新投資機構の、INCJの話だったと思うんですが、この産業投資革新機構につきましては、その前身でありますいわゆる産業革新、いわゆるINCJに対して、平成二十一年度から二十五年度までの累計で二千八百六十円の産投投資を行っておりますと。これは、主たる答弁としてINCJの話をさせていただいているというように御理解いただければと存じますが。  よろしゅうございましょうか。よろしいですか。(拍手)     ─────────────
  31. 伊達忠一

    議長伊達忠一君) 藤巻健史君。    〔藤巻健史君登壇拍手
  32. 藤巻健史

    ○藤巻健史君 日本維新の会・希望の党の藤巻健史です。  会派を代表して、所得税法の一部を改正する法律案について質問いたします。  総理や麻生大臣は、通常国会初めの施政方針演説等で、今年度の税収は約六十二兆円で史上最高の税収だと、税収の多さに触れられています。いかにも景気回復のあかしのようなお話しぶりです。  確かに、今までの史上最大の税収は、狂乱経済と言われたバブル期末期の一九九〇年に上げた六十・一兆円です。あのときを多少ですが超す税収となるようです。  問題は、一九九〇年の歳出は六十九・三兆円だったということです。九〇年度と今年度、ほぼ同じ税収なのに、歳出が九〇年度の六十九兆円から今年度は百一兆円へと、四六%も伸びていることです。これでは、千九十二兆円もの赤字がたまる道理です。  安倍内閣は、経済再生と財政の健全化という二大課題の両立を目指すと公言していますが、財政の健全化に真剣に取り組んでいるとは到底思えません。安倍総理総理はそれでも財政再建に真剣に取り組んでいると自信を持って言えるのでしょうか。総理、お答えください。  ところで、二〇一七年度の名目GDPは五百四十七・四兆円でした。二十年前の一九九七年度のGDPは五百三十三・四兆円と、今とほとんど変わっておりません。経済全体の規模が大きくなっていないのなら、もし人口が変わらなければ、一人当たりも豊かになっていないことになります。現在、国民の間に、景気が良くなった、豊かになったという実感がないのは当然なのです。  名目GDP、すなわち国の経済規模が大きくなっていないのなら税収が増えないのも当たり前です。例えば、国全体の経済が二倍にしか拡大していないのに税収が四倍になっていれば国民は怒ります。経済の果実を国が皆持っていってしまったことになるからです。国全体の経済が二倍になっていれば、国民一人一人の生活は二倍豊かになり、税収も二倍になるのがあるべき姿です。この二十年間では、国全体の経済が全く成長していないのですから、税収が増えないのも道理です。  実際、税収は、一九九六年度の五十二・一兆円から二〇一七年度の五十七・七兆円と、消費税率を勘案するとほぼ変わりがありません。一方、歳出は、七十八・五兆円から九十九・一兆円と、二六%増加しています。  名目GDPが上昇しないから税収は伸びない、しかし歳出はうなぎ登り、だからその差を消費税の増税で補う。これでは国民が怒るのは当たり前だと思います。あるべき姿は、名目GDPを二倍にし、税収を二倍にする。そうすれば、歳出が二倍になっても財政問題は生じることもなかったはずです。  しかも、この二十年間で、名目GDPを二倍にし、税収を二倍にすることは難しくなかったはずです。他国は容易に二倍以上の成長をしているからです。この二十年間で、アメリカは二・二倍、イギリスは二・一倍、オーストラリアが三倍、シンガポール二・八倍、韓国が三・一倍、中国は九・三倍と成長日本だけが成長なしなのです。このことからして、GDPを他国並みに二倍にすることは難しいことではなかったはずなのです。  税制の議論とは、足りないお金をどう徴収するかではなく、国にどういう勢いを付けてGDPを拡大するのか、国をどういう方向に持っていきたいのかを議論する場のはずだと思います。  二十年間だけでなく、三十年間で見ても四十年間で見ても、日本経済成長世界先進国の中で断トツのびりです。情けない限りです。アベノミクスの下では、政権が主張するように、確かに景気は改善しました。しかし、米英独三か国と比べると、成長率の格差は逆にアベノミクスの下で広がっているのです。二〇一三年から一七年までの実質GDP、これ年率ですが、アメリカ二・三%、イギリス二・四%、ドイツは二・〇%、日本は一・四%なのです。  日本人は世界で最も勤勉で頭が良い優秀な民族のはずです。それなのにこの低成長は、何か重大なシステムエラーがあるに違いありません。そのシステムエラーを大胆に変える手段の一つこそが税制の役割だと考えます。今回の税制改革法案にそのような骨太の税制改革はあるのでしょうか。総理、お答えください。  骨太の政策でも名目GDPを十分引き上げられず税収が不足するなら、まずは歳出カットを考えるべきです。徹底的な行政改革を行って財源を確保すべきです。そのために、まずは政治家自身が議員給与の削減や定数削減を大胆に行い、身を切る改革を行うべきです。議員自身が率先して範を示さなければ、行政改革などできるはずがありません。まずは隗より始めよです。日本維新の会と希望の党は、口先だけではなく、実際に毎月議員給料から十八万円を差し引き、まとめて被災地にお送りしておりますが、このような我が党の身を切る改革の実行に対し、総理はどのような御感想をお持ちか、お聞かせください。  それでは、具体的な質問に入ります。  本法律案は、十月一日から消費税を一〇%に引き上げることを前提に、消費税増税に伴う駆け込み需要反動減を緩和し、景気を平準化するための税制改革のてんこ盛りです。キャッシュレス決済へのポイント還元やプレミアム商品券の配布、住宅自動車関連の減税などです。これら対策の総額と消費税率引上げに伴う家計の負担増加額とではどちらが大きいのか、麻生大臣、お答えください。  このような政策を打ったところで、将来、ポイント還元の期限が近づくにつれて駆け込み需要が発生し、期限が切れれば大きな反動減が生じると考えられます。すなわち、単なる景気のぶれの先送りにすぎないと思いますが、総理、いかがでしょうか。  ポイント還元の期限が来たとき期限後の落ち込みを防ぐために更なる対策が取られるのなら、財政再建など何年たっても到底おぼつかないことになりますが、総理、いかがでしょうか。  個人事業者事業承継税制創設案には反対するものではありません。しかし、ゾンビ企業の延命になり、産業の新陳代謝を遅らせることにはなりはしないか、また相続税に関して自営業者とサラリーマンとの不平等感につながらないか、その検討は必要だと思います。総理、この点についての感想をお聞かせください。  私どもは、年末調整制度を廃止し、全ての国民が確定申告を行うことで、税の使い道に関してもっと注意を向けることが大事だと考えています。それが無駄な歳出抑制につながります。そのためにも、税制をシンプルにすることが不可欠です。消費税の複数税率は、まさに納税事務の簡素化に逆行します。納税事務、徴税事務を複雑にするだけではなく、利益誘導の温床にもなります。総理消費税の複数税率を廃止するつもりはないか、お聞かせください。  最後に、外貨預金並びに仮想通貨税制についてお聞きします。  今回のこの法律案の中に仮想通貨という文言が入ったことは画期的だと思います。しかし、安倍総理が二月七日の予算委員会での私の質問に対し、仮想通貨については、国際的な動向を踏まえ、今後、暗号資産と呼ぶことが適当と考えておりますのでと答弁されています。また、麻生大臣も何度となく同じような発言をされています。それなのに、なぜ所得税法では仮想通貨という名称がいまだ使われているのでしょうか。何としても資産の譲渡とは認めたくないという主張でしょうか。麻生大臣、お答えください。  なお、外貨預金の譲渡益、すなわち交換による為替差益ですが、並びに仮想通貨の譲渡益等は雑所得に分類され、税率軽減措置もなく、他の所得とも損益通算ができないなど、納税者にとってかなり厳しい扱いとなっています。外貨預金の為替益が譲渡所得、特に株と同じような分離課税の譲渡益だったとしたら、多くの国民が外貨預金をし、異次元緩和での政策を取らなくても円安が進行し、景気回復消費物価、CPI上昇につながっていたと思います。日銀が出口に苦しみ、異次元緩和の副作用におののくこともなかったはずです。  また、インターネットの次の革命と言われているブロックチェーンと裏表の関係にある暗号資産の譲渡益も同様の扱いであれば、この業界が発展し、日本の将来の飯の種となると思います。先ほど述べたように、税制とは単に徴税の論理だけで考えるものではなく、国の方向性を考える方向付けや、そして国力の勢いを決める強力な手段であると考えます。総理、この点に関しての感想をお教えください。  重ねて申し上げますが、税制は単なる徴税法の議論だけではなく、国の方向や勢いを決める非常な重要なツールであるとの主張をして、私の質問を終わります。  御清聴ありがとうございました。(拍手)    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇拍手
  33. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 藤巻健史議員にお答えをいたします。  財政健全化についてお尋ねがありました。  安倍内閣では、財政再生なくして財政健全化なしとの基本方針の下、財政健全化に大きな道筋を付けてまいりました。この結果、来年度予算における国の税収は過去最高、六十二兆円を超えるとともに、社会保障関係費の実質的な伸びを高齢化による増加分に収めるなど、歳出改革の取組を継続することで、新規国債発行額が政権交代前と比較して約十二兆円減少し、安倍内閣発足以来七年連続減少しているところです。  今後とも、経済再生と財政健全化の両立を図り、二〇二五年度のプライマリーバランス黒字化、同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指してまいります。  我が国経済成長と今般の税制改正法案についてお尋ねがありました。  この二十年間、我が国名目GDPは他の先進国、新興国と比べて低い伸びにとどまっております。これは、我が国が、バブル崩壊以降の長引くデフレの中、企業賃金抑制し、消費者も将来への不安などから消費を減らさざるを得ず、その結果、需要が低迷、デフレを加速するという悪循環から抜け出せずにいたためであります。  この経験を踏まえ、安倍内閣では、政権交代後、アベノミクス三本の矢の取組により、極めて短い期間でデフレではないという状況をつくり出す中で、名目GDPは一割以上増加しております。  こうした景気回復の動きを確かなものとすると同時に、国難とも言える少子高齢化を克服し、全世代型社会保障制度を構築するための安定財源の確保がどうしても必要です。  このため、本年十月から消費税率を一〇%に引き上げ、安定財源を確保しつつ、同時に、引上げによる経済への影響対応する観点から、今般の税制改正法案では、住宅ローン税制車体課税の大幅な減税のために必要な見直しを行うこととしています。また、持続的な成長経路実現のため、イノベーション促進のための研究開発税制見直しや、個人事業者の円滑な事業承継支援するための相続税贈与税の新たな納税猶予制度創設等を実施することとしています。  身を切る改革についてお尋ねがありました。  我々政治家は、政策実現するため、真摯に努力を続け、国民の負託に応えていかなければなりません。国民皆さんに様々な御負担を求める以上、我々政治家も常に自らを省みる必要があることは当然です。  日本維新の会・希望の党においても、そうした観点から、率先垂範して身を切る改革を続けていかれることについては敬意を表したいと思います。  その上で、政治に要する費用の問題は、議会政治や議員活動の在り方、すなわち民主主義の根幹に関わる重要な課題であることから、国会において国民の代表たる国会議員が真摯な議論を通じて合意を得る努力を重ねていかなければならない問題であると考えております。  消費税率引上げに伴う対応後の需要変動についてお尋ねがありました。  今回の消費税率引上げに当たっては、前回の八%への引上げの際の経験を踏まえ、十二分な対策を講じることで、引上げに伴う需要変動に備えることとしております。その際、例えば、今回のポイント還元は、インバウンド需要等の拡大が見込まれる東京オリンピック・パラリンピックの手前の来年六月までの時限措置とすることで、反動減による景気の悪影響を最小限に抑えることができるものと考えています。  その上で、対策後も我が国経済が力強く成長するためには、中長期的な観点から、物的、人的投資を喚起しながら生産性を引き上げ、経済成長力を強化していくことが重要です。  対策後の需要変動には留意しつつ、自律的な成長軌道を確かなものとし、戦後最大のGDP六百兆円の実現に向けて着実に歩みを進めてまいります。  個人事業者事業承継税制についてお尋ねがありました。  個人事業者の持つ優れた技術やノウハウが円滑に継承されるようにするため、今般の税制改正法案では、承継時点での贈与税相続税の支払負担をゼロにすることとしています。  本税制は、承継計画の策定など、事業が継続される要件を設けた上で、経営者の代替わりを支援するものであることから、議員御指摘のようなゾンビ企業の延命や、産業の新陳代謝の遅れにつながるものではないと考えています。  また、事業を営んでいる個人とそれ以外のサラリーマンなどの公正性を図る観点から、その適用対象資産について面積上限を設けるなど、不平等につながらないような配慮をしています。  今般の個人事業者事業承継税制に加えて、マッチング機能の強化、後継者支援の補助金などを合わせた切れ目のない支援により、円滑な事業承継を後押ししてまいります。  軽減税率制度についてお尋ねがありました。  軽減税率制度は、ほぼ全ての人が毎日購入している食料品等税率を八%に据え置くことにより、消費税逆進性を緩和しつつ、買物の都度、痛税感の緩和を実感できるという利点があることから、消費税率引上げに伴う低所得者への配慮として必要なものであり、予定どおり実施することとしています。  既に制度が導入されている欧州諸国においても、制度として定着し、円滑に運用されていると承知しています。  我が国においても、こうした諸外国の例も参考にしながら、政府を挙げて、軽減税率制度周知広報に全力を尽くしていくことで、多くの方々に御理解をいただき、円滑に実施できるようにしてまいります。  為替差益や暗号資産取引への課税についてお尋ねがありました。  暗号資産に活用されているブロックチェーン技術については大きな可能性があると認識しており、企業生産性向上や様々なサービスの利便性、安全性向上につながるよう、様々な主体がその活用にチャレンジしていくことが期待されます。  しかしながら、為替差益や暗号資産取引を分離課税の対象とすることについては、総合課税を原則とする中、その例外である分離課税を適用することにより、所得再分配の機能を損なってまで暗合資産等の取引を強く政策的に支援することが必要と言えるかどうかという課題があります。  また、他の所得との損益通算を可能とすることについては、為替差益や暗号資産取引は、一定程度、取引のタイミングを調整し、損益の発生時期を選ぶことが可能であるため、広く損益通算を求めた場合、他の所得状況を踏まえた税負担の調整が可能となるとの懸念があるところであります。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣麻生太郎登壇拍手
  34. 麻生太郎

    国務大臣麻生太郎君) 藤巻議員からは、消費税率引上げに伴う負担増及び対策の規模と仮想通貨について、計二問お尋ねがあっております。  まず、消費税率引上げに伴う負担増と対策の規模についてのお尋ねがありました。  今回、八%から一〇%への消費税率引上げによる直接の負担増は、軽減税率と差引きで五兆二千億円となりますが、これに、幼児教育の無償化、社会保障の充実など、既に決められております措置三兆二千億円を講じることにより、差引きで、経済への影響は二兆円程度と見込まれております。  これに対し、歳出面では、ポイント還元やプレミアム付き商品券、防災・減災、国土強靱化によるマクロ需要の下支えなどで約二兆円程度、税制面では、自動車に係る税負担の軽減や住宅ローン減税の拡張などで約三千億円程度、合わせて二兆三千億円程度の措置を講ずることといたしており、消費税率引上げによる経済への影響を十二分に乗り越える対策といたしております。  いま一つ、仮想通貨に関してお尋ねがありましたが、仮想通貨や暗号資産という呼称についてのお尋ねであります。  今回の税制改正案では仮想通貨という表現を使用いたしておりますが、これは、現行の資金決済法の規定を踏まえた、そのように踏まえさせていただいたものであります。  御指摘のありましたとおり、仮想通貨につきましては、国際的な動向、呼び方の動向ですけれども、を踏まえ、今後、暗号資産と呼ぶことが適当と考えており、別途、今国会に法令上の呼称の変更を盛り込んだ法案の提出を予定させていただいております。(拍手)     ─────────────
  35. 伊達忠一

    議長伊達忠一君) 大門実紀史君。    〔大門実紀史君登壇拍手
  36. 大門実紀史

    ○大門実紀史君 日本共産党を代表して、所得税等改正案に関連して質問します。  まず、現下の経済情勢について、安倍総理認識を伺います。  総理は、総雇用所得や名目賃金の増加などを挙げて、景気は回復していると自慢してこられました。しかし、どの世論調査を見ても、景気回復を実感しているは一割台にすぎず、逆に、実感していないは六、七割、圧倒的多数となっています。なぜ総理認識国民の実感との間に乖離があるのか、丁寧に説明をしてください。  多くの国民景気回復を実感できないのは、実際に暮らしが良くなっていないからです。総理がしきりに持ち出される総雇用所得は、労働者一人当たりの賃金雇用者数を掛けた数値です。したがって、実質賃金が下がる下で実質雇用所得が増えたのは、低賃金労働者が増えた結果にほかなりません。  しかも、衆議院の質疑で我が党の志位委員長が指摘したように、安倍政権の六年間で増えた就業者三百八十四万人のうち、七割の二百六十六万人が六十五歳以上の高齢者です。内閣府の調査でも示されているように、その多くは、年金だけでは生活できず、働かざるを得ない高齢者です。一方、企業も、業績が伸びても、正社員の新規採用を抑え、低賃金で雇える定年退職者の再雇用を増やしてきました。  総理は、高齢者にも仕事があるという状況を自分がつくり出したかのように言われますが、実態は、賃金を抑えたい企業政府の年金切下げ政策で働かざるを得なくなった高齢者とのマッチングによって雇用が増えただけのことです。こんなことは、一国の総理が誇れるような話ではありません。  今総理に求められているのは、年金削減をストップし、安心できる年金制度を確立してほしいという働く高齢者の願いに真っすぐに応えることではありませんか。  また、学生のアルバイト就労が七十四万人も増加しています。一昨日の予算委員会で我が党の吉良よし子議員が指摘したように、学生の就労が増えているのも、学費が高い、親の収入が減り仕送りが減少した、奨学金は将来の返済が不安で借りられないなどの生活苦が一番の理由です。つまり、アベノミクスで新たな雇用が増えたから就業者数が増えたのではなく、アルバイトで働かざるを得ない学生が増えたから就業者数が増えたのです。これも、総理として誇れるような話ではありません。むしろ、先進国で最低レベルの教育予算や貧弱な奨学金制度が学生たちを働かざるを得ない状況に追い込んでいる、その責任を自覚すべきです。  限定的な無償化にとどまることなく、学費の大幅引下げ、奨学金制度の抜本的改善に踏み出すべきではありませんか。総理の答弁を求めます。  以上指摘したように、この間の就業者数の増加は、経済政策の成果どころか、暮らしに冷たい安倍政治の結果です。野党指摘に一々反論するのではなく、もっと謙虚に耳を傾けるべきです。  昨日内閣府が発表した景気動向指数も、三か月連続悪化しています。国民多数の暮らしが良くなっていないことを端的に示すのは、家計消費の落ち込みです。  二〇一四年の消費税増税後、二人以上世帯の実質家計消費は、年換算で二十五万円も落ち込んでいます。消費が回復しないのは、国民購買力が上向かないからです。購買力は、名目ではなく実質の賃金によって決まります。総理が幾ら名目の数字を強調しても、一人一人の実質賃金が低迷したままでは消費は伸びません。  したがって、実質賃金が低迷している現在の状況消費税増税を強行すれば、幾ら小手先の増税対策を行っても、消費を一気に落ち込ませ、二〇一四年増税の過ちを繰り返すことになるのは明らかではありませんか。総理認識を伺います。  総理は、今回の消費税増税の目的について、教育の無償化などの少子化対策や社会保障に対する安定財源を確保するためだと説明されてきました。  しかし、本来、少子化対策も社会保障も、消費税増税と引換えにするような問題ではありません。このロジックでいけば、今後、教育の無償化を一層拡大してほしいという声が上がれば、それならば消費税の更なる増税を受け入れろ、そういう話になりかねません。それは事実上の消費税の目的税化ではありませんか。総理の答弁を求めます。  そもそも、なぜ、社会保障の財源というと、逆進性のある消費税しか思い浮かばないのでしょう。ヨーロッパ各国は、付加価値税だけでなく、応能負担の原則の下、法人税や所得税、社会保険料などを組み合わせて社会保障財源を賄っています。社会保障財源に占める付加価値税の比率は高くないのです。それは、国として所得の再分配機能を重視しているからです。  この間、アベノミクスの異次元の金融緩和による円安、株高誘導によって、資本金十億円以上の大企業の純利益は、一二年度の十九・五兆円から一七年度の四十四・九兆円に、二・三倍にも増加しました。金融資産一億円以上を保有する富裕層の資産も、百四十四兆円から二百十五兆円に、一・五倍に増えています。苦しい生活を強いられている庶民に増税するより、こういうもうかっている余裕のあるところに負担を求めるべきではありませんか。  にもかかわらず、今回の税制改正では、研究開発税制拡充によって更に大企業の負担を減らそうとしています。先月公表された財務省の資料によれば、二〇一七年度分の研究開発税制による減税総額は六千六百六十億円、そのうち上位十社だけで千九百七億円、実に三割近くを占めています。減税額トップのトヨタは一社で約八百億円もの減税です。製造業だけでも数十万の会社がある中で、余りにも特定の巨大企業に偏った減税です。  研究開発税制の大半を占めるのが総額型という仕組みです。総額型は、研究費の総額を基準に減税するため、研究費が減っても減税になります。研究費を増加させるインセンティブなど全くなく、ただの補助金と同じです。政府税制調査会も、二〇一四年に総額型は大胆に縮減すべきだと指摘しています。  麻生大臣、なぜ四百四十兆円を超える史上最高の内部留保を積み上げている大企業に巨額の補助金を出し続ける必要があるのですか。中小企業に対する支援は重要ですが、大企業向けの研究開発減税については、この際抜本的な見直しを行うべきです。答弁を求めます。  また、巨額の株取引をする富裕層ほど優遇されている証券税制については、昨年の与党の税制大綱でも、公平性の観点から見直しを検討するとしています。見直しの方向ははっきりしています。株式譲渡益については二〇%でよしとせず、アメリカ、ヨーロッパ並みに税率を三〇%に引き上げ、将来的には総合課税にすべきです。配当については直ちに総合課税にすべきです。他の所得と合算する総合課税にすれば、累進税率が適用され、格差が是正され、国の税収も増えます。麻生大臣の決断を求めます。  これら大企業、富裕層優遇の税制を見直すだけで数兆円の財源が生まれます。景気を悪化させるだけの消費税の増税など全く必要ありません。我が党は、消費税増税中止の一点で共同を広げ、増税阻止のために全力を尽くします。  その決意を申し上げて、質問を終わります。(拍手)    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇拍手
  37. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 大門実紀史議員にお答えをいたします。  景気回復の実感についてお尋ねがありました。  二〇〇〇年代の景気回復は、デフレ下での成長であり、名目GDP成長は期間全体で二・五%にとどまったのに対し、今回の景気回復では、アベノミクスの三本の矢で取り組み、もはやデフレではないという状況をつくり出す中で、名目GDPは一〇%以上成長しました。  また、日銀短観の地域別の景況感では、二〇〇〇年代の回復期を通じてプラスであったのが関東地方と東海地方のみであったのに対し、今回の景気回復ではこの五年間にわたって北海道から九州・沖縄まで全国九地域全てプラスで推移しております。全国津々浦々に景気回復の温かい風が届いています。  さらに、今回の景気回復では、特に国民生活にとって最も大切な雇用は大きく改善しており、二〇一二年から二〇一八年までの六年間で、生産年齢人口が五百万人減少する中にあっても就業者数は三百八十万人増加し、景気回復により仕事が増加したことにより、正社員の有効求人倍率調査開始以来最高水準となり、正規雇用者数も百三十一万人増加、そして賃上げも、連合の調査によれば、五年連続で今世紀に入って最高水準賃上げ実現中小企業賃上げは過去二十年で最高となっております。また、この春、高校、大学を卒業される方々の十二月時点就職内定率は過去最高水準であります。確実に経済の好循環が生まれています。  実感については、様々な世論調査がある中で、平成三十年の内閣府の調査によれば、現在の生活に満足と回答した者の割合は七四・七%と過去最高となっており、多くの方々に景気の回復を実感いただいています。  また、実感できないと感じる方もいらっしゃることも承知をしており、今後とも、少子高齢化が進む中にあっても、我が国経済が力強く成長し、国民一人一人に景気回復の波が広がっていくよう、あらゆる政策を総動員してまいります。  安心できる年金制度の確立についてお尋ねがありました。  平成十六年の改革により、将来世代の負担を過重にすることを避けつつ、制度を持続可能なものとするため、将来の保険料水準を固定し、その範囲内で給付水準を調整する仕組みを導入しました。これにより、物価等の上昇率ほどに年金額は上昇しないということとなりますが、現役世代と高齢世代のバランスを確保しつつ制度の持続可能性を高める仕組みとなっており、平成三十一年度は年金額がプラス〇・一の改定となっております。  その上で、低所得高齢者の方への対策については、既に、年金受給資格期間の二十五年から十年への短縮や、医療、介護の保険料負担軽減を実施したほか、今年の消費税率引上げに合わせて、低年金の方への年金生活者支援給付金の創設、介護保険料の更なる負担軽減を実施するなど、社会保障全体で総合的に講じることとしています。  さらに、人生百年時代の到来を見据えながら、元気で意欲あふれる高齢者皆さんが、希望すれば、年齢にかかわらず、学び、働くことができる環境を整えることが必要です。既に未来投資会議においてこうした観点から生涯現役時代雇用制度改革に向けた検討を開始しており、この夏までに計画を策定し、実行に移す考えです。  高等教育の無償化についてお尋ねがありました。  高等教育の無償化については、経済状況が困難な家庭の子供ほど大学等への進学率が低い状況にあることなどを踏まえ、真に支援が必要と考えられる低所得世帯の学生に対し、確実に授業料等が減免されるよう、大学等を通じた支援を行うとともに、学生生活の費用をカバーするために十分な給付型奨学金を支給しようとするものであります。  また、これまでも、無利子奨学金の対象者の拡大を進めるとともに、経済的理由から奨学金の返還が困難となった方には、返還の期限を猶予したり、将来の収入に応じて返還できる制度を導入したりするなど、きめ細やかな救済措置を講じ、高等教育への進学の支援の充実を図ってきたところであります。今後も、こうした措置を適切に実施してまいります。  消費税率引上げ消費への影響についてお尋ねがありました。  家計消費について、世帯当たりの消費を捉える家計調査の家計消費支出は、世帯人員の減少などから長期的に減少傾向となっております。一方で、一国全体の消費を捉えるGDPベースで見ると、二〇一六年後半以降増加傾向で推移しており、持ち直しています。  消費を取り巻く環境を見ると、生産年齢人口減少する中でも雇用が大幅に増加し、国民みんなの稼ぎである総雇用所得は名目でも実質でも増加が続くなど、雇用所得環境は着実に改善しており、消費は引き続き持ち直しが続くことが期待されます。  その上で、今回の消費税率引上げに当たっては、前回の八%への引上げの際に耐久財中心駆け込み需要反動減といった大きな需要変動が生じた経験を踏まえ、いただいた消費税を全て還元する規模の十二分な対策を講じることで、消費を下支えし、景気の回復軌道を確かなものとしていきます。  なお、御指摘の実質賃金については、毎勤統計では、アベノミクスによる雇用拡大で女性や高齢者などが新たに雇用された場合は平均賃金の伸びも抑制され、さらに、デフレではないという状況をつくり出す中で物価が上昇すれば一層抑えられるという特徴があることに留意が必要だと考えます。  消費税の社会保障目的税化についてお尋ねがありました。  国民全てが人生の様々な段階で受益者となり得る社会保障を支える経費は、国民全体が皆で分かち合うべきとの理念の下、現役世代だけでなく幅広い世代が負担する消費税を充てるのがふさわしいという考え方に立ち、消費税収については、年金、医療、介護、少子化対策の社会保障四経費に充てることを法律で明確化することで社会保障目的税化されたところです。  このことにより、お預かりした消費税国民皆様に年金、医療、介護、さらには少子化対策という形で用いられ、他の経費には使われないということが明確化されることとなり、消費税を御負担いただく国民皆様の御理解を得ることに寄与してきたものと考えます。  その上で、消費税率については、全世代型社会保障の構築に向け、少子化対策や社会保障に対する安定財源確保のため、法律で定められたとおり、一〇%に引き上げる予定です。その後について検討を行っていることはありません。  消費税率引上げと富裕層と大企業に対する税制の在り方についてお尋ねがありました。  消費税は、負担が特定の世代に集中せず、税収が景気人口構成の変化に左右されにくく安定していることから、社会保障に係る費用を賄うための財源としてふさわしいと考えており、今回の消費税率引上げは、全世代型社会保障の構築に向けた安定財源を確保するためにどうしても必要なものであります。  また、企業に対する税制については、企業が収益力を高め、より積極的に賃上げ設備投資に取り組むよう促す観点から、成長志向の法人税改革に取り組んでまいりましたが、同時に、租税特別措置の縮減、廃止等による課税ベース拡大により、財源をしっかり確保しております。  また、これまで、再分配機能の回復を図るため、所得税の最高税率引上げや金融所得課税見直し等の施策を既に講じてきたところであります。  今後の税制の在り方については、これまでの改正効果を見極めるとともに、経済社会の情勢の変化等も踏まえつつ検討する必要があるものと考えています。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣麻生太郎登壇拍手
  38. 麻生太郎

    国務大臣麻生太郎君) 大門議員からは、研究開発税制、金融所得課税見直しにつきましての計二問、お尋ねがあっております。  まず、研究開発税制についてのお尋ねですが、議員御指摘研究開発税制につきましては、これは大企業を優遇するだけのものではなく、将来の経済成長の礎となります企業研究開発投資を後押しするものであり、利用件数を見ますと、中小企業も含め、幅広く利用されておりますのは御存じのとおりです。  平成三十一年度税制改正におきましては、研究開発投資の増加インセンティブを強化するという観点から控除率を見直すほか、質の高い研究を後押しする観点からオープンイノベーション型を拡充するなど、めり張りを付けた見直しを行うことといたしております。  金融所得課税見直しについてのお尋ねがありました。  金融所得課税につきましては、平成二十六年度から、上場企業の譲渡益や配当等に係る税率を一〇%から二〇%に引き上げたところであります。これにより、高所得者ほど所得税の負担率が上昇する傾向が見られ、所得再分配機能の回復に一定の効果があったのではないかと考えております。  なお、上場企業の譲渡益の、配当等の課税方式は一律二〇%の分離課税とされておりますが、これにより、税制が金融市場にゆがみを与えないほか、特定口座制度の下で納税者自身が申告を行わなくても、簡便な仕組みが実現しているところであります。  いずれにせよ、金融所得課税を始め、所得税の在り方につきましては、経済社会の情勢の変化も踏まえつつ、不断に検討を行ってまいりたいと考えております。(拍手
  39. 伊達忠一

    議長伊達忠一君) これにて質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十一分散会