○江崎孝君 立憲民主党・民友会・希望の会の江崎孝です。
ただいま
議題となりました
所得税法等の一部を
改正する
法律案に対し、会派を代表して
質問いたします。
安倍
総理自身も税は
民主主義と言っておられます。
国民が納税するのは憲法上の義務だけではなく、税を納めることでお互いを支え合い、生活する上での様々な行政サービスを享受できるからであり、そこには前提として、
政治、行政に対する信頼があるからと言えます。その信頼が安倍
政権にあるでしょうか。
財務省の公文書改ざんから
統計のデータ不正など、
政治の信頼をおとしめる理由は枚挙にいとまがありません。しかし、ここでは、安倍
政権最大の売りであるアベノミクスの
経済効果について
お尋ねします。
まずは、アベノミクスの六年間の現実です。
我が国の
名目GDPは、ドルベースで、安倍
政権発足後の二〇一三年から
減少に転じ、二〇一七年で四千八百六十億ドルまで落ち込みました。これは、アベノミクス発動前の二〇一二年の六千二百一億ドルには遠く及ばず、リーマン・ショック後の二〇〇九年の五千二百三十三億ドルさえ下回っています。
主要国一人当たり
名目GDPの順位も、安倍
政権になって、それまで十一位だったものが十九位に落ち、二〇一七年には二十位になりました。成功しているはずのアベノミクスの下でなぜこういったことが起きるのでしょうか。
円ベースでは上がっているなどといったはぐらかす回答は、更に
国民の信頼をなくすことになります。
総理の明確な
説明を求めます。
ドルベースでGDPが
減少することは、国力が毀損していることにほかなりません。もっと言えば、唯一のアベノミクス
効果と言ってよい円安がなければ、円ベースでも今のようにGDPは上がっていないでしょう。しかも、円安は、日銀のバランスシートを崩壊させるかもしれない異
次元の量的緩和やマイナス金利
政策で生み出された一時的現象です。
さて、
政府は、毎年、中長期の
経済財政に関する試算を公表し、アベノミクスの
効果が着実に発現した場合の
成長実現ケースと、それほどうまくいかなかった場合のベースラインケースの二つの
成長率を試算しています。
確認しますが、二〇一三年からの六年間は、アベノミクス
効果による
景気拡張期だったはずです。アベノミクス発動の翌年の二〇一四年七月の発表の同試算では、二〇一八年は、
成長実現ケースで実質
成長率二・一%、名目
成長率で三・五%、ベースラインケースで実質一・二%、名目一・七%になると試算していました。
ところが、どうでしょう。二〇一八年実績見込みは、実質、名目共に、何と〇・九%です。
成長実現どころか、アベノミクスがうまくいかなかった場合のベースラインさえ大きく下回ってしまっているのが
実態です。六年間で実際の
成長率が両試算を上回った年はありません。唯一の例外が、二〇一七年にアベノミクスがうまくいかなかった場合のベースラインケースをほんの僅か上回っただけです。
政府は、このことを深刻に受け止めなければなりません。
これでは、
政府が戦後最長と自慢する好
景気が
政府による
経済成長偽装だったと言われても仕方がありません。多くの
国民がアベノミクス
効果を実感できないのは当然でしょう。
余りに非現実的な想定を堂々と押し付けるから
統計不正が起きたのではないでしょうか。試算に間違いがないのであれば、アベノミクスの
効果は現れていないと認め、これまでの
発言を撤回すべきです。
総理の
説明を求めます。
アベノミクスの六年間は、対外的には国力を弱め、国内的には、日銀を使った株高の演出と、それに伴う円安で装われたえせ好
景気です。まさしくこれは、安倍
政権による
経済成長偽装なのです。
安倍
総理、あなたの
政策でこれ以上国力をおとしめ、国内に貧困と
格差を広げるのはすぐにやめていただきたい。そして、アベノミクスの失敗を
国民に謝罪し、その責任を取るべきです。
総理の回答を求めます。
今、税制に求められているのは、
所得再分配機能を最大限発揮することであります。公平、納得、透明、簡素という原則の下、現下の
課題に
対応できる真っ当な税制を
実現しなければなりません。
しかし、
政府は、抜本的な
格差是正にこれといった手を打たないまま、
逆進性を避けられない
消費税の
税率を一〇%まで上げようとしています。先ほど
説明したとおり、アベノミクスで
国民生活は潤っていません。むしろ国力が落ちている。何かのきっかけで円高に振れれば、
日本経済はひとたまりもありません。そんな中で
消費税を上げ、更に国内
消費を落ち込ませることを今やるべきか。答えはノーでしょう。
そこで、あえて求めます。十月からの
消費税増税は凍結すべきです。
総理、どうでしょうか。
増税による
消費落ち込みの緩和策の一つが、
国民を混乱せしめ、税収そのものの減収につながるとんでもない愚策の
軽減税率です。導入に必要な財源は一・一兆円、二%の増税分の税収が約五・七兆円ですから、その二割が消えることになります。財源一・一兆円のうち六千億円を、昨年度
改正した
個人所得課税等の
見直しで捻出するとしています。
昨年行った
個人所得課税の
見直しは、高
所得者の給与
所得控除や基礎控除などの適用を制限するという、
所得再分配機能の回復を図る
観点から行われたはずです。財務省が先日示した試算でも、財源一・一兆円のうち約三千億円が高
所得層へ振り向けられるだろうとしています。この金額は、少なく見積もってもの注釈付きで見るべきです。
いずれにしても、
軽減税率は高
所得層ほど恩恵が大きいのは明白です。
軽減税率財源に
所得再分配機能の回復のために行った
個人所得課税の
見直しで得た財源を充てることは、高
所得者から徴収した税金の多くを高
所得者に還元することになります。これで
国民の納得が得られるとは到底思えません。財務大臣の見解をお聞きします。
税制を通じた
格差是正を
実現するのであれば、金融
所得課税の強化に早急に着手すべきでした。それにもかかわらず、
与党内で進められた検討は早々に見送られました。株への
投資意欲を下げ、アベノミクスに
影響を与えるという理由からでしょうか。だとすれば、これもアベノミクスの悪
影響と言わざるを得ません。
その金融
所得課税の
税率二〇%を二五%に引き上げた場合の増収規模は幾らになるでしょうか。財務大臣の答弁を求めます。
金融
所得課税は分離
課税であるため、株式を多く保有する富裕層ほど
所得税負担が低下します。主要国と比較しても、
我が国の金融
所得課税が厳しいとは到底言えません。
所得再分配機能を回復し
格差を是正するためにも、
税率の
引上げを検討すべきです。財務大臣の見解を伺います。
民主党
時代、社会保障と税の一体改革の柱に給付付き税額控除の導入を挙げ、
消費税増税を確認しました。しかし、安倍
政権になり、
軽減税率に変わりました。真に低
所得者の生活を支えるのは給付付き税額控除です。そのために、民主党はマイナンバー
制度の導入も決めました。
マイナンバーは既に全
国民に割り振られ、給与、株等の
所得の捕捉も進み、マイナンバーと預金口座の関連付けも昨年一月から始まりました。マイナンバー
制度には様々な
議論があります。
制度が導入された以上、社会保障や税務の手続に必要な様々な情報に加えて、
所得情報を含めて一元的に活用できるよう本格稼働、定着させることは不可欠です。そのためにも、
国民の
理解を得ることが重要です。
まず、マイナンバーの利便性を上げることを求めます。マイナンバーカードの普及率が上がらないのは、利便性に問題があるからです。まず使ってできることを増やすことが重要です。しかし、内閣府ホームページでは、マイナンバーのメリットとして、一番目に来るのが行政事務の
効率化、二番目が
国民の利便性の向上、三番目が公平公正な社会の
実現です。行政事務の
効率化のために
国民がマイナンバーの必要性を感じるとは到底思えません。
こういった
考え方からまず改め、
国民の利便性の向上を第一に据えるべきです。石田担当大臣の
考えをお聞きします。
軽減税率制度が導入されたとしても、マイナンバー
制度の進捗に合わせて、近い将来、給付付き税額控除への切替えが必要と
考えますが、財務大臣の
考えをお聞きします。
政府は、二〇二五年までに
キャッシュレス決済比率を四〇%まで引き上げる
考えです。
我が国で
キャッシュレス化が進まないのは、治安が良いことや円という通貨が信頼できるといった
我が国独自の理由もあり、決して悪いことではありません。いずれにしても、
国民一人一人が
考え決めていく問題です。
しかし、今回、
中小・
小規模事業者に対する
消費税増税
対策の目玉として
ポイント還元制度が提案されました。しかも、九か月の期間限定です。
消費税増税
対策に名を借りた、国による期間限定
キャッシュレス誘導策にほかなりません。
五ポイントのお得感で
キャッシュレスへの導入を誘いますが、現金で支払う
消費者、クレジットカードを取得することのできない低
所得者、クレジット決済システムを導入していない
中小企業経営者には、まるで脅しにも聞こえるでしょう。加えて、なぜ九か月なのか。外国人観光客が増える二〇二〇年東京オリパラの前に都市部でカード決済の店舗を増やそうというたくらみとも取れます。
さて、この
ポイント還元制度でも高
所得者優遇を
指摘しなければなりません。クレジットカードは、会社の審査により持つことのできない人もおり、また、その利用可能な店舗も当然都市部に集中しています。
買物をする店舗が限られる
地域などは切り落とされ、都市部の日々高額の
買物をする人ほど恩恵が大きいのは明白です。
総理は、二月十四日の
衆議院本
会議で、
ポイント還元で
中小・
小規模事業者の売上げが大きく伸びると、そこの
従業員の
所得拡大につながるので、富裕層だけが恩恵を受けるかのような御
指摘は当たりませんと述べました。しかし、成功していると言い続けるアベノミクス六年の結果でも、
企業の内部留保はたまる一方で、全く論拠を欠きます。まるで、風が吹けばおけ屋がもうかるといった論法です。
逆進性の高い
消費税を増税する一方で、このような高
所得者を優遇する
施策を打ち出すのは、本末転倒、
所得再分配の
観点からも大問題です。改めて、
逆進性対策としての
ポイント還元の有効性について、
総理の所見を伺います。
他方、お店が支払う決済手数料は、九か月は国が一部負担し、三・二五%に引き下げられます。しかし、期間終了後は
政府は関与しないと言っています。九か月後、カード会社が手数料
引上げを求める可能性はありませんか。カード会社が潤うだけではないでしょうか。手数料を負担できないから
キャッシュレス対応をためらっている
経営者が、九か月間のみの
政策を受け入れるでしょうか。そんな不安がある
政策でよいのですか。僅か九か月の時限
措置で、
消費税増税の平準化と
キャッシュレス決済の普及の両立が可能だとは到底思えません。
経済産業大臣の見解をお聞きします。
更なる問題点は、
ポイント還元制度の対象に法人間取引が含まれることです。
個人消費を念頭に置いた
消費税増税
対策としての意義が問われます。法人間取引の不正防止が可能でしょうか。法人間取引によって
ポイント還元額が多額に膨れ上がれば、当初の予算では足りず、更に予算を増やす必要に迫られるのではないでしょうか。このようなことともなれば、
消費税増税の税収が更に縮減されることになります。こうした問題にどのように
対応するのですか。
経済産業大臣の
説明をお願いします。
ポイント還元制度は、これまで
我が国が
経験した規模を超える
駆け込み需要と
反動減を招きかねないことも
指摘しておかなければなりません。
ポイント還元率は五%。八%の
軽減税率の品であれば、実質税負担は三%です。これは
消費税導入時の一九八九年の税
水準です。
ポイント還元期間中の
駆け込み需要を助長するのは容易に想像できます。逆に期間終了時に、五%から一〇%へと、かつて
我が国が
経験したことのない五%増税に相当します。
ポイント還元終了前後の
駆け込み需要と
反動減について、
政府はどの程度の規模になると想定していますか。また、その際の
対応について検討が行われたのでしょうか。
余りに未熟な
政策ではないですか。
経済産業大臣の見解を求めます。
子供の貧困への
対応は早急かつ重要な
課題です。現行の寡婦控除は婚姻歴の有無により控除の適用が判断されることから、同じ一人親でも税負担に大きな差が生じています。今回、未婚の一人親への寡婦控除の適用が
拡充されました。しかし、地方税においては
個人住民税の
非課税措置ですが、国税においては
税制面の
対応が先送りされ、給付金支給で予算
措置されます。なぜでしょう。
与党内では、未婚の一人親
支援拡充は、未婚の出産を助長する、夫婦別姓につながりかねないなどといった、私たちの価値観ではとても想像できない意見が強かったと聞きます。驚きです。
家族の
在り方は多様化しており、伝統的な
家族観に固執することで子供を救えないなど、あってはならないことです。
子供の貧困への
対応の重要性は、国税、地方税において変わらないはず。なぜ国では税
対応ができなかったのか、財務大臣の答弁を求めます。
既に多くの地方自治体が早くからみなし寡婦
制度を採用するなど、未婚の一人親への
支援に乗り出しています。今回、給付金が支給されるとはいえ、その場しのぎの、来年度限りの
対応に終わるのではないかとの疑念が拭えません。国においても
税制面での
格差是正を検討すべきなのは当然です。財務大臣の見解をお聞きします。
いずれにしても、給付金支給は来年度から、
個人住民非課税措置は二〇二一年度から自治体での事務手続が始まります。その際、事実婚状態でないことの確認が必要とされます。どうやって確認するかも問題であり、とても大変な作業です。自治体間で
ばらつきがあってはなりません。人的
対応も必要となります。自治体に対する十分な予算
措置が必要です。総務大臣のお
考えをお聞きします。
アベノミクスで国力が毀損され、国内の
消費は低迷し、貧困、
格差は
拡大している。そんな最悪のタイミングでの
消費税増税。しかも、
消費税増税の増収分を相殺するような高
所得者、富裕層優遇の
軽減税率や
ポイント還元、プレミアム商品券といった増税緩和策の大盤振る舞い。どこが公平、納得、透明、簡素と言えるでしょうか。到底
国民が納得できる税制改革とは言えません。
このような混乱極まる税制改革の根底には安倍
政権による
経済成長偽装があること、そして、まずはアベノミクスの失敗を謝罪し、安倍
総理はその責任を取るべきであることを再度
指摘し、
質問を終わります。
ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣安倍晋三君
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