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小川敏夫君 私は、この
特別養子制度が憲法違反だと言っているんじゃないんですよ。健全な
養育を受けられない
子供がいる場合に、それを親に代わって社会が健全に、
子供が健全に育てられるよう社会がそれを支える、そういう
手当てをするということは、私、何にも憲法違反だとも何とも思っていません。
だけど、
子供の健全な
養育のためだというんであれば、もう
子供の
養育の段階終わって
子供が成人になったときに、
自分の親との
関係を法的に結びたいと思ってもそれが認められないということに絞って、私はそれは憲法上おかしいんじゃないかと。つまり、
子供の
養育、
子供の健全育成のために必要な
仕組みなんだというんなら、
子供が健全に育成する成人までのことを考えればいいんで、成人になった後は、そこで
自分自身の
意思というものをやっぱり尊重しなければいけないんで。
この
特別養子縁組、今度十五歳まで広げますけど、今の
仕組みだと、
自分自身の
意思で
養子になったんじゃないんですから、
自分自身の
意思で
親子の
法律関係を断絶したんじゃないんですから。ただ、社会が
子供のために健全な
養育をしようとするという幅広い意味では、公共の
福祉あるいは社会全体の
利益のために、そういう
子供が健全に成長するという
仕組みをつくった。私は、そこの点について何の異論もありません。
ただ、どうしても実
親子関係というもの、これは人間の生物的な
関係で、切っても切り離せないし、これは、ただ単に機械的に、はい、もうなしですよということで済む話じゃないんで、世の中には様々なことがありますから、それから人の考えも様々な考えがありますから。だから、私がいろいろこういうふうに言ったところで、とんでもない、実の親なんて金輪際誰が
関係を持つかと、全くそういう
関係を持たないでうれしいといって、私の意見なんか余計なお世話だという人もいるかもしれません。
だけど、そうじゃなくて、やはり、いや、実の親との
関係も持ちたいと。
養親との
関係も、大変感謝しているから
養親との
関係も継続したいけど、でも、実の親は実の親なんだから、みんなは実の親とは実の
親子として
法律関係を持っているのに、
自分は
自分の
意思で決めたんじゃないところで勝手に断ち切られちゃった、でもこれを回復したいと思う人もいるはずです。その道を完全に塞いでしまったというのは、私は、憲法上おかしいんじゃないかなというのが私の考えです。
今、優生保護法というのがあって、あれも一つの理屈は、そうした知的障害があったり何らかの障害を抱えている人は、
子供を産めば同じような
子供ができて、生まれた
子供もそういう
子供を育てる本人も、親もかわいそうだからというそういう価値観だけで言わば断種してしまったわけでありますけれども、それはとんでもない、個人の自由を、個人の尊厳を害したということで、明らかに今憲法違反だということで国全体が反省しておるわけであります。
私は、この
特別養子縁組制度がそれと同じようにひどいものだとは思っていませんよ。ただ、社会の価値観で、つまり、
特別養子縁組制度というもの、実親
関係で
縁組した方がいいよという社会の価値観で、それで
子供のためだといってそういうふうに決めてしまったこの
仕組みを、
子供が
自分で判断できるというときになったときでもその
子供の判断に任せない、
子供の判断というものを全く無視して固定化しているというその部分がおかしいのではないですかというふうに私は考えているわけです。
例えば、ですから、私がこんなに心配しているのは大きなお世話で、実の親とはとんでもないと、
自分を捨てた親なんかと絶対に会いたくないとか、そういう人もいるでしょうし、だけど、そうじゃない
ケースだって例えばあると思うんですよね。
いろいろ考えて、例えば、実両親がいて、父親が性的
虐待をしたとか、
子供に、別に性的な
虐待じゃなくても様々な
虐待をしたと。母親自身は何の
虐待もしていない、ただ、残念ながら父親の
虐待を止められなかったということがあれば、それで
特別養子に入ったと。それで、成人になって、大人になって、
虐待した父親が死亡していなくなった、残ったのは母親だと。
子供から見れば、母親は父親の
虐待を止められなかったということはあったかもしれないけれども、母親自身は
子供に対して何の
虐待もしていないという中で、やはり母親に会いたいなと、あるいは母親としっかり
親子関係というものを正常に、
法律的にも持ちたいなということだって、
子供持ちたいし、母親の方も
子供との
関係を持ちたいということだってあり得るんじゃないか。
私、世の中いろんな
ケースがある。実親
関係を持ちたいし、あるいは持った方がいいのではないかという
ケースだってあり得るわけで、そうした場合にそうした道が完全に閉ざされているということが私は問題だと思うんですが、例えば、この
議論について、実
親子関係を、また
関係を持つと、扶養の
関係で厄介だとか相続で煩わしいとかということから認める必要がないというような御意見もございましたけど、いやいや、
子供の方が積極的に、実の親を、困っているんだから、私は扶養したいんだと、
法律上の扶養義務をしっかり果たしたい、そういう責任も負いたいというときにも、
法律上の
親子関係は与えないわけであります。
こういうふうに言うと、
法律上の
親子関係は与えなくたって、面倒見たいなら勝手に面倒見ればいいじゃないかと、別に
法律は面倒見ることを禁止していないんで、
法律上の
親子関係は与えないだけであって、面倒を見ることは与えていないと、面倒を見ることまで禁止していないというふうにお答えになるかもしれませんけれども、しかし、やはりどうしても
親子の
関係というのは、これは他人が断絶してそのままでいいということで私は解決できる問題じゃないというふうに思うんです。
ですから、大変しつこいようでありますけれども、私は、この世の中様々な
ケースがあるから、成人になってから実親
関係を
法律的に復活すると
子供が迷惑だとか、例えばそれまで
養子を実の
子供のように育てた
養親との
関係で複雑なものがあって、そこが迷惑だとか、そういうふうにおっしゃることもあるけれども、そういう
ケースもあるかもしれないし、だけど、いやいや、
養親も大賛成ですと、私もこの
養子との間の
関係はしっかり築いて良好な
関係を持っていますけれども、実の親は実の親ですから、実の親との間でもどうぞしっかりとそうした
親子関係を築いてくださいというふうに皆が歓迎する人間
関係だってあるわけですよね。だけど、そういう
関係があったとしても、この
法律ではそれはできないことになっている。
だから、私は、その部分について、
親子の断絶という、
親子を
法律上断絶したまま、それを固定化するということのこの重大な問題についてすごく、いや、
法律上そういうふうにしたんだからもうそうなっているんだよという一言で片付けてしまって、簡単に考え過ぎているんじゃないかと私は思うんですが、いかがでしょうか。