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政府参考人(
高嶋智光君) 二点御
質問がありましたので、お答えいたします。
まず第一は、インターネット上で行われているヘイトスピーチ、不当な差別的言動に関してであります。
この元々の人権侵犯
事件としての
調査救済
手続というのは、人権の侵害された又はそのおそれのある個人の救済ということを目的としておりますので、従来、
特定の者に対するもののみ、そういう不当な差別的言動を削除要請等の措置の
対象としてきておりますけれども、問題は、多数の者に向けられた不当な差別的言動は
特定個人に向けられたものではないのではないかという、こういう疑義がございました。
そこで、
検討しておりましたが、しかし、多数の者に向けられた差別的言動でありましても、その範囲が
特定されていて、
特定の者に対する差別的言動であると評価できるものがあるのではないか、具体的
事案によってはあるのではないか、そういう場合には、やはり人権侵犯
事件として立件し、
調査することが必要ではないかという結論に至っております。
ただ、その場合、どのような言動がこれに当たるのかというのはなかなか難しい問題ございまして、個別の
事案ごとに判断すべきものでありますが、一般論として申し上げますと、当該差別的言動が当該集団等に属するものであれば、精神的苦痛等を受けるような性質のものであったと言えるか否かということを社会通念に照らして客観的に判断するという、こういうことになるのではないかということを今考えております。
法務省の人権擁護機関としては、以上の考え方に基づいて、インターネット上の不当な差別的言動について適切に対処をしてまいりたいと考えております。
それから、もう一点の
質問でございますが、選挙運動時における不当な差別的言動であります。これは、かねて選挙運動の中で行われるいわゆるヘイトスピーチが許されるのかという問題が、
指摘がございました。
選挙運動等の自由の保障というのは民主主義の根幹を成すものでございますので、これは十分に尊重される必要がありますが、他方で、本来違法と評価されるべきヘイトスピーチはどうなのかという問題があります。
人権侵犯
事件におけます違法性の判断というのは、人権を侵害された者の救済という目的に照らして、その生じている結果や行為態様、具体的なスピーチ等の内容等を合目的に総合的に判断して行うということになりますところ、本来違法と評価されるべきヘイトスピーチが、不当な差別的言動が選挙運動等として行われたからという一事をもって直ちにその違法性が否定されるものではないというふうに考えております。
法務省の人権擁護機関としては、選挙運動等の形で行われた不当な差別的言動により人権を侵害されたとする被害申告等があった場合には、選挙運動等の自由にも十分配慮しつつ、これらの言動、それから態様等を十分
調査し、人権侵犯性の有無を総合的に判断し、立件すべきものについては立件して
調査し、適切に
対応をしていく方針であります。