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参考人(泉
英二君) 元愛媛大学の泉でございます。ちょっと一週間ほど風邪で倒れておりまして、今日は途中でせき込んだり鼻声とかいうようなことで、いろいろと失礼なこともあるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いしたいと思います。
私は、昨年の
森林経営管理法に際しましては、衆議院の方で、この
法案は余りに憲法違反にも十分なる強権性を何点もセットしている
法律であると、この強権性をここまで織り込んだ
法律ということについては、やはりまさにやり過ぎであるということで、廃案を主張させていただきました。
本日は、この
国有林野管理経営法改正案ということで、この
法案に対しての私の
意見をこれから述べさせていただきますけれ
ども、この
国有林野管理経営法の改正案に、特にこの第二章の二という樹木採取権という二十二条文を一挙に織り込むという、このことについては私は極めて否定的でございます。
この間、衆議院の方で
農林水産委員会を
中心に議論が重ねられております。私もそのことを大分フォローさせていただきました。とても各
委員の先生方もよく頑張って勉強していらっしゃって、しっかり質問もされていたというふうなことで、その点は大変高く評価させていただいております。
それに対する政府、林野庁等の答弁ということにつきましては、非常にまともな答弁もあれば、まさかという、まさかという答弁もあるというようなことで、ちょっと今日は、まず
最初に、一番目に、樹木採取権の法的構造の問題点。
一番目、PFI法における公共施設等運営権、コンセッション
制度と樹木採取権
制度の
関係について。
政府答弁。国が
国有林野の
管理経営の主体であるということに変わりはないわけでございます、PFI法に基づく公共施設等運営権のように、施設の運営を
事業者に委ねる仕組みとは基本的に異なっている仕組みということでございます、これが林野庁長官の答弁でございます。これはいかにもコンセッションとは無
関係なものであるという印象付けを行っている。要するに、組立て方が全く異なっているという。
ただ、樹木採取権に関する二十二の条文ですけれ
ども、このうちのみなし物権論を含めて十四条文というものは、もうPFI法からのそのままの引き写しでございます。ですから、今回の樹木採取権の二十二条の組立ての下敷き、根本にはPFI法というものがある、それの特例法なんだと。PFIで全部いけるんだったら、何も新法は必要ありません。それではこの
森林、
国有林問題扱えないというところの特例的なことを定めるがゆえに、それが
法律事項ということになってその
法律を改正するというような形の根拠をつくるという。ですから、もしPFI法に基づくコンセッション
制度とは全く無
関係ですと言ってしまって、果たして
法律事項どうなるのか。
さらに、その後の林野庁の説明、さらに衆議院での立花
参考人の発言がございますけれ
ども、次に述べてありますが、まるっきり新しいものではなく、立木販売というものを発展させた形だと立花さんは理解して、現行
制度の延長と理解していると。また、政府も、いや、実は大したことないんですよと。そんなでっかいものじゃありませんと。大ロット、長期、長期間、大ロットと触れ込んでいましたけど、結局蓋開けてみると非常にしょぼい格好になっている。ですから、
皆さんが御心配されるようなことがございませんと言っちゃった。そうすると、今の現行
制度のシステム販売の延長であるといった
程度だったら、新法の
法律事項にならない。ですから、もし林野庁の説明でやり、そういう
運用をそこまでおとしめるということならば、
法律が成り立たないということになる。
ですから、やはりこれはあくまでコンセッション
制度の特例法なんだということでしか理解、これは、ですから結局、竹中さんたち未来
投資会議に向けては、ああ、
国有林野でもやりましたよと、切り開きましたと、大成果ですと。竹中さん、絶対今回の話怒っていないはずなんですよ、切り開いたから。それで、他方で、国会や国民に対しては、そんなもの、コンセッションなんかやりません、じゃありませんよ、そんなものじゃとてもないですというふうな形での説明。それだったら
法律は作れませんということ、まず第一点はそこでございます。
二番目、契約期間最長五十年。
これは、ちょっと私も議事録読ませていただいて、一般的な
人工林の
造林から
伐採までの一周期が五十年
程度であることから、その存続期間の上限を五十年としていると。
もし、今回、
素材業者に
造林もさせて保育もさせるということで五十年ありますよということだったら、別にこの話はおかしくはない。今回は、
造林から資金的には全て国がやります。結局、
伐採は、要するに樹木採取権というのは
伐採と販売をさせるだけなんです。そこの、それの期間を五十
年間占拠させる、排他的、独占的に占拠させる権利というのを五十年という根拠にどうして
育林が五十年掛かりますということが
関係するのか、この理由を見て私は、それでそれを納得されている議員の先生方がいらっしゃるときにもう私は驚いたんですけれ
ども。
次、樹木採取区の指定の目的です。
やっぱりわざわざこういう新法を作ってそういうことをやるんだったら、それはやはり
国有林野の、
国有林野事業の
経営をいかに合理化するとか効率化するとか、そういったことを目的とならなくちゃいけない、
国有林野管理経営法を改正するならば。ところが、このわざわざ新しい条文は一体何のためか。効率的かつ安定的な
林業経営の育成を図るため。そのような目的のために、だから、この目的条項を見たときも私はちょっと口をあんぐりした次第でございます。
それから、意欲と能力のある
林業経営者について。
これ、ちょっとびっくりしたんですけれ
ども、新たな
森林管理システムの考え方では
森林組合という名前が一切抜けている、それから自伐林家の名前も全部抜けたと、最終的には、というようなことが特徴だったと思います。
素材生産業者だけを今後の
林業の担い手として
位置付けて、そこに施策を集中するという、
素材生産をやっている
森林組合、
素材生産を本当にやれる自伐林家というものは対象から外しませんよと、だけど言葉は全部抜けていた。それが、今年は、今回は全部、
森林組合、
素材生産業者、自伐林家等と三点セットで来ています。
森林組合さんはちょっとさておきまして、果たして自伐林家がこの
国有林野の樹木採取権に参与、関与できるのかという、まずもって意欲と能力のある
林業経営者に自伐林家が果たしてなるのか。
私は、そういう
意味では、自伐林家をそういうふうな形で育成していく、やっぱりこれから
地域に定着し、山村をやっぱりちゃんときちんと管理し、それからそこで副業を持って生活していくような
人たちというものがやはり山村にしっかり残っていく、そのときには自伐型
林業というのは一定の有効性はあると。ところが、この方々が非常にフィールドがないということで悩んでいるときに、この
国有林野というものも一つのフィールドとしてそういう方々に提供していく、そこにおいて、こういう方々も入り込めるような契約条件というものを是非提示できるような形ならば実はあると思う。そうでなければ、ただ、入口は開けてありますよと、どうぞ頑張って入っておいでという
程度では絶対に入れないということでございます。
それから、次に、法改正案の背景説明における各種の問題点。今は、次に。
一番目、短伐期皆伐再
造林方式。
戦後造成された
人工林が本格的な利用期を迎えているわけで、この
森林資源を切って、使って、植えるというような形で循環利用していくことが今後の
森林・
林業施策の主要
課題であると政府は
位置付けているわけです。
このことはもう言いたくないぐらいですね。四十六年生以上を高齢級というようなこととかも、要するに、科学的に全て否定されている話を、林野庁は何回指摘されてもそれをやめない。五十年サイクルで
林業を回すということがいかにもったいないことであるかと。いかにその
公益的機能、環境
機能といったような形での全てを豊かにしていく、百年、百五十年というような形の中で豊かに回していくということが、
日本が誇る、世界に誇る、
人工林の長伐期多
間伐施業という
日本が世界に誇るその仕組みをつくってきている。それを誰でもできる粗雑な、もう経済効率のみという。
ところが、そういう形で皆伐していきますと、もうどんどん、昔、河川でしたけれ
ども、今は道を入れて皆伐しますから、もう崩れる崩れるというような形で、このことは、恐らく学者の中のかなり、特に自然科学系の学者はほとんど否定します。だから、そういうふうな形で科学的に否定されている短伐期皆伐再
造林方式と、今再
造林して果たしてどうなるのかと。鹿対策に一ヘクタール当たりまた百万円を追加すると、そういう形のことを
日本は今やれる財政
状況にあるのかというようなことでございます。
それから、次、
公益的機能重視。
これは、もうとにかく、
国有林野の
伐採ルールにのっとり、一か所当たりの皆伐
面積の上限を五ヘクタールとし、尾根や渓流沿い等には保残帯を設置すること等を遵守させます。これが、
皆さんが五十年で回していくときに環境
機能が非常に損なわれるのではないですかということを心配されます。それに対する、全てこの回答です。
国有林野の
伐採ルール、これ果たしてどこにあるんだという、一生懸命調べてみましたけれ
ども、なかなか出てこない。参議院の今回いただいておりますこの参考資料、ここにも
国有林の
伐採ルール、ところが、どこにも上限五ヘクタールとか尾根や渓流沿いはどうこうというような話は出ていないんですね。どうも、これ、かなり危ない答弁だというように私は思います。
それから、
国有林の
現場管理体制について。
国有林では、
全国の
森林管理ごとに、これ、議事録等には、
森林管理ごとに約八百の
森林事務所を設け、
森林官約四千人が日常的な巡視や
伐採、
造林等の
事業の監督の業務を行っている。
これで
皆さん、ああ、今後いろんなこともちゃんとチェックしてくれるだろうなというふうに思われますけれ
ども、複数の
国有林現場OBから私聞いた話ですけど、現在、
森林官、もう事務
仕事が極めて多忙だと。もう契約がどうだ、ああだこうだという、そういうふうな形において日常的な巡視等は今全くできていないという。さらに、ある方からは、結局、
国有林においても誤伐、盗伐はかなり発生していますよと。それをチェックはできていませんというような形も言われております。
次のページ行っていただきます。
じゃ、
国有林、やっぱり議論する
前提として
国有林の
現状って一体どうなっているんだという。
これ、ちょっと、元札幌市役所の鈴木直樹さんという方に頼んで作っていただいたデータですけれ
ども、これで衝撃的なのは、
国有林の
人工林蓄積量というのは、平均すると一ヘクタール当たり二百二十四立方メーター、
民有林平均は三百五十三立方メーター。
国有林は、あらゆる齢級において
民有林よりも圧倒的にぼろな山、薄い山、
人工林が、しかないんだという。こういう悲惨な形、まずこれはどうしてこうなっているのかと、このことはまた別途原因究明ありますけど、ここで、例えば一ヘクタール皆伐しても六十万ぐらいの収入しか得られない。それに対して二百二十万のものを掛けていくというような形において、果たしてそういうことがあり得るのかと。
国有林はどこへ行こうとしているのか。
国有林野事業における立木の
伐採量、この数
年間で
国有林は非常に
伐採量を増やしています。特に、そこで、この上のえんじ色というのはこれは皆伐です。皆伐はもう二倍に増えている。皆伐の方が効率はいい。
それで、もう結局、これはどうしてこういうことになっているかというと、
国有林野事業の債務返済、債務返済に縛られまくっている。もう本当にそういう
意味で、現在、
国有林はどんどん増伐に増伐を重ねていますけれ
ども、それは何も山のために、山を良くするために切っているわけではない。債務を毎年、できれば五百億円は収入を上げたいというような、一兆三千億円をこれから三十五
年間で返済しなければならない、その義務の下において結局ただ単に
意味なく切っているという。
あとは、再
造林は恐らく三割ぐらいじゃないでしょうか。放置しても、天然林化という言葉がありますし、針広混交林化という便利な言葉もみんなそういうふうな形で、場合によっては複層林化という言葉も使うかもしれません。
では、
国有林をどうすればいいのか。
結局、一九九八年の
国有林野事業の抜本的
改革の理念に立ち返る。そのときには、約四兆円近い累積債務がありました、国鉄と
国有林です。それで、約三兆円、国民が負担したわけです。そのときに、結局、林野庁の
国有林から国民共通財産としての
国有林へ大転換したんです、もう林野庁の
国有林ではないという。もう我々国民がこれだけ、三兆円も負担したわけですので。
国有林野事業の抜本的
改革の基本的考え方とは、
国有林を国民の共通財産とし、国民の参加により、かつ国民のために
管理経営し、
国有林を名実ともに国民の森とすることである。
さらに、この年に作られました
国有林野事業改革特別措置法も、
公益的機能の
維持増進を旨とする
管理経営への転換。もう要するに、これまで
木材生産中心だったことをもうやめますと、全ては
公益的機能のために
国有林は存在します、ついては複層林施業であり、長伐期施業でありというふうな形に今後は転換していきますと、そういうふうに一九九八年に宣言しているわけです。
この道筋が、当時一兆円を
特別会計に残したことによって、これの返済のために崩れているんです。それがこの上のところです。
平成二十二年、行政刷新
会議の
事業仕分です。このときに、実は仕分側から、どうされますかと、もう無理ですよね、
木材を売って戻していくのは、もうついては
特別会計やめて
一般会計化して、この負債、債務も全部一般会計に承継するのはどうだと言われたときに、林野庁はそれを断っているという。それで、その後も、同じ枠組みでとにかく返し続けるということで、どんどんどんどん
国有林の中身が悪くなっているという、こういう実態があるという。
もう時間が過ぎましたので、ここの辺で、途中で止めさせていただきますけれ
ども、終わり辺りはまた後でお時間があれば読んでおいていただければと。どうもちょっと時間をオーバーしました。失礼いたしました。