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2019-05-14 第198回国会 参議院 農林水産委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    令和元年五月十四日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  五月九日     辞任         補欠選任      竹谷とし子君    佐々木さやか君  五月十三日     辞任         補欠選任      山田 俊男君     朝日健太郎君  五月十四日     辞任         補欠選任      朝日健太郎君     こやり隆史君      礒崎 陽輔君     長峯  誠君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         堂故  茂君     理 事                 上月 良祐君                 藤木 眞也君                 田名部匡代君                 紙  智子君     委 員                 朝日健太郎君                 礒崎 陽輔君                 岩井 茂樹君                 こやり隆史君                 進藤金日子君                 高野光二郎君                 長峯  誠君                 野村 哲郎君                 平野 達男君                 小川 勝也君                 鉢呂 吉雄君                 藤田 幸久君                 徳永 エリ君                 森 ゆうこ君                佐々木さやか君                 里見 隆治君                 儀間 光男君    国務大臣        農林水産大臣   吉川 貴盛君    副大臣        農林水産大臣  高鳥 修一君    大臣政務官        農林水産大臣政        務官       高野光二郎君    事務局側        常任委員会専門        員        大川 昭隆君    政府参考人        内閣官房内閣審        議官       清水 茂夫君        法務大臣官房政        策立案総括審議        官        西山 卓爾君        農林水産大臣官        房総括審議官   光吉  一君        農林水産大臣官        房総括審議官   横山  紳君        農林水産大臣官        房統計部長    大杉 武博君        農林水産省消費        ・安全局長    新井ゆたか君        農林水産省経営        局長       大澤  誠君        農林水産省農村        振興局長     室本 隆司君        農林水産省農林        水産技術会議事        務局長      別所 智博君    参考人        公益社団法人秋        田県農業公社理        事長       佐藤  博君        東京大学大学院        農学生命科学研        究科教授     安藤 光義君        紀ノ川農業協同        組合組合長理事  宇田 篤弘君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○農地中間管理事業推進に関する法律等の一部  を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 堂故茂

    委員長(堂故茂君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日までに、竹谷とし子君及び山田俊男君が委員辞任され、その補欠として佐々木さやか君及び朝日健太郎君が選任されました。     ─────────────
  3. 堂故茂

    委員長(堂故茂君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  農地中間管理事業推進に関する法律等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、内閣官房内閣審議官清水茂夫君外八名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 堂故茂

    委員長(堂故茂君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 堂故茂

    委員長(堂故茂君) 農地中間管理事業推進に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 平野達男

    平野達男君 自民党の平野達男でございます。  今日は中間管理機構に関する法律審議でございますけれども、まず冒頭、これ質問通告しておりませんでしたけれども、新潟でG20農相サミットがございました。共同宣言が出されまして、ICT等々の活用をした生産性の向上でありますとか、あるいは食品ロスの削減、バリューチェーンの拡大でありますとか、あるいは動物疾病、今や豚コレラが大きなテーマになっていますけど、課題になっていますけれども、そういったことに対する対応等々についての共同宣言が出されたということでありまして、本当に大臣についてはお疲れさまでございました。  そこで、冒頭、このG20農相サミットのこの共同宣言意義とこれからの対応について、本当に簡単で結構でございますから、大臣見解をちょっとお伺いしたいというふうに思います。
  7. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 先週にもうなりますけれども、五月の十一日及び十二日に開催されましたG20新潟農業大臣会合におきましては、今、平野先生からお話がございましたように、「農業食品分野持続可能性に向けて―新たな課題とグッドプラクティス」をテーマに、世界三十四の国あるいは国際機関の代表がお集まりをいただきまして、それぞれの抱える農業食料に対する諸課題について率直な意見の交換を行ったところでございます。この二〇一九年G20新潟農業大臣宣言採択をいたしまして、農業の未来のために各国間で知見を共有することの重要性を私は認識することができたことは大変有意義であったと思っております。  またさらに、この会議のほかにも、レセプション等東日本大震災被災地地元新潟県で生産をされました食材を活用した料理も提供させていただきまして、各国から高い評価もいただいたところでございます。これは、東日本大震災の風化を防ぎ、国内外で被災地を支援する機運を高め、また我が国の高品質でおいしい農林水産物食品輸出促進観点からも非常に重要な意義を持つものになったのではないかと、こう考えております。  また、アフリカ豚コレラに関しましては、このG20農業大臣会合の中で私から特に御提案を申し上げさせていただきまして、世界的な脅威でもあり、情報共有の強化ですとかOIE等国際機関への協力などを通じて国際社会が一致団結して対処することが重要であると、こう申し上げさせていただきました。その上で、参加国から賛同が得られましたとともに、そういった点が盛り込まれた閣僚宣言採択をされたということでございます。
  8. 平野達男

    平野達男君 様々な分野での国際協調というのはこれから必要だと思います。特に動物疾病につきましては、もう本当に一国だけでこれに対応するというのは難しい状況になっていますので、引き続きこの分野を始めとして御努力いただきたいと思いますし、あわせて、やっぱりWTOの例の東日本大震災輸出禁止の裁定につきましては本当に残念でございます。ここの部分についても、引き続き理解を得られるように御尽力を賜りたいというふうに思います。  そこで、今日の法律審議でありますけれども、まず農地面積の話からちょっとスタートをさせていただきたいというふうに思います。  農地面積ピークでは約六百十万ヘクタールありました。資料の一を見ていただきたいと思いますけれども、今、大分減りまして、四百四十万というふうに、農地面積というよりは耕地面積と言った方がこれは正確なわけでありますけれども、四百四十万というふうに言われています。これだけの面積減少が起きているということについて、大臣はどのように認識をされておられるんでしょうか。  私が農水省にまだ在職の頃は、係長時代ですけれども、今からもう何年前になりますかね、三十年か、三十年以上も前になりますけれども、農水省は、五百五十万ヘクタールの農地面積確保するんだと、閣議決定までやっていました。ところが最近は、その農地面積に対しての扱いということに対しては随分後退したなという感じがちょっとします。  その点も含めまして、大臣の所感をちょっとお伺いしたいというふうに思いますが。
  9. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 耕地面積でありますけれども、平野先生がお示しをいただきましたこの資料にありますとおりに、昭和三十六年をピークに、農地転用ですとか荒廃農地発生等によりまして毎年減少が進んでいる実態にあることを認識をさせていただいております。  国土が狭小な我が国におきましては、農地は、国民に対する食料安定供給など食料安全保障観点から、その基礎的資源として重要であります。これまでも各種施策を通じまして農地確保に努めてきたところでございまするけれども、しかしながら農地減少が進んでいることを私としても重く受け止めております。  今後とも、この農地中間管理事業による担い手への農地の集積あるいは集約化を加速するとともに、日本型直接支払ですとか基盤整備などの各種施策を強力に動員をしながら、荒廃農地発生防止再生利用も進めてまいりたいと存じております。
  10. 平野達男

    平野達男君 私が農水省係長時代はまだ国営農地造成事業という事業もあったりして、転用等々によって減る分については農地造成をすることで農地面積確保もできるという一応手段もありました。ところが、最近は農地造成事業というのはほとんどやられなくなりまして、転用、それから後でちょっと出てきますけれども荒廃面積、こういったものが増えれば一方的に農地面積が減っていくという、そういう構図になっているということです。  特に、最近ここ数年の傾向で見ますと、いわゆる人為的荒廃転用でありますとか、転用というのは道路用地それから工場用地宅地、この面積よりも農地荒廃というのの面積の方が上回っているというここ数年の状況です。前は転用面積の方が多くて、それが農地面積減少一つの大きな原因になっていますけれども、だんだん最近は宅地造成というのも減ってきましたし、工場用の新設も減ってきたのかどうか分かりませんが、代わって荒廃面積だけは増えているというのが、これは耕地面積統計数字になっています。こういったこともちゃんと真剣にきちっと見ながら、今の状況を分析して、どういう対応を取ればいいかということは、これは対応をしていただきたいというふうに思います。  事務局の方から何か答弁があれば。室本局長、何かあれば言ってください。
  11. 室本隆司

    政府参考人室本隆司君) 事実関係でございますが、データについて直近五年間の数字をちょっと申し上げますと、農地転用のその平均の面積直近五年間で約一万一千四百ヘクタールぐらい、それから荒廃農地面積は一万一千八百ヘクタールぐらいということで、委員がおっしゃるとおり若干荒廃農地が高いですけれども、転用荒廃農地面積というのはほぼ同じような水準で推移しているということでございます。  こういう中で、農地転用も、先ほど大臣から答弁ございましたとおり、非常に国土が狭小であるということから、うまく土地利用を調整しながら、宅地等のいわゆる土地需要とそれから農業サイド需要をバランスさせながら施策を進めていかなければいけないというふうに考えてございますが、いずれにしましても、しっかり農地確保するというのが農水省立場でございますので、引き続き各般の施策を動員しながら対策を進めていきたいと、こう考えてございます。
  12. 平野達男

    平野達男君 一点、事実関係確認したいんですけれども、四百四十万ヘクタールの耕地面積のうち、耕作放棄地というのは何ヘクタールになっていますか。
  13. 大杉武博

    政府参考人大杉武博君) 平成三十年の数字で申し上げますと、耕地面積委員指摘のとおり四百四十二万ヘクタールあるわけでございます。荒廃農地面積というのはこの外でございまして、それが平成三十年の数字で申し上げますと、荒廃となった面積が一万五千ヘクタールでございます。
  14. 平野達男

    平野達男君 私が言ったのは、耕作放棄地荒廃農地が違うというのは分かっていますから、だから今聞いたのは、耕作放棄地面積は幾らかというふうにお聞きしたわけです。
  15. 大杉武博

    政府参考人大杉武博君) お答え申し上げます。  耕作放棄地という概念農林業センサス上の概念でございまして、耕作放棄というふうに考える面積調査客体が自己申告しているものを調査しているものでございます。直近、二〇一五年の農林業センサス耕作放棄地面積は四十二万三千ヘクタールでございます。
  16. 平野達男

    平野達男君 その四十二万ヘクタールの中には荒廃農地も多分入っているという理解でいいんですね。だから、本当は知りたかったのは、農地法農地かそうでないかというのは現況耕作主義ですから、これを農地と判断するかどうかというのはそこに作付けされているかどうかでまず判断されるわけですね。ただ、そうはいっても、耕作放棄地の場合は一年、二年ぐらい作付けしなかったとしても、多分現場ではそれは農地カウントしているということだと思います。  私のこの間ちょっとヒアリングした感じでは、四十二万ヘクタールのうち三十万ヘクタールぐらいが耕作放棄地で、それは耕地面積にカウントされているんじゃないかという、そんな説明もありました。仮にそれが正しいとすれば、四百四十二万ヘクタール、まあ四百四十万ヘクタールの耕地面積があるんですけれども、三十万ヘクタールは活用されていないと、そういうことですよね、という計算になります。しかも、繰り返しになりますけれども、耕作放棄地はそのまま続けていけばいずれ荒廃農地になっていきますから、農地面積からは外れていくんですね。だから、そういう予備群もかなりの面積があるということだと思います。  ちなみに、その耕作放棄地面積がどれだけあるかというのは、数字をちゃんと把握していないのはおかしいですよ、そこは。要するに、四百四十二万ヘクタールのうちのどれだけの農地が作付けされている面積かというのが分かっていないということだから。そこはちゃんと把握するように、それはやってください。
  17. 大杉武博

    政府参考人大杉武博君) 先ほど御説明申し上げましたとおり、耕地面積という概念、つまり耕地面積調査における耕地という概念は、いわゆる農地法上の農地であっても一号遊休農地という、現に耕作目的に供されておらず、かつ引き続き耕作目的に供されないと見込まれる農地、これは荒廃農地というふうに言ってもいいわけでございますけれども、これは耕地の外にあるものでございます。したがいまして、耕地面積調査における耕地が言わば耕作目的に供されている農地だというふうに理解をしているところでございます。  ただ、その中に、確かに、委員指摘のとおり、既に二年以上耕作せず、かつ将来においても耕作し得ない土地というものを荒廃農地として捉えておりますので、一時的に不作付け地になっているところについては、この耕地面積統計上の耕地の中に含まれているというのはございます。
  18. 平野達男

    平野達男君 だから、私の言いたいのは、四百四十二万ヘクタールの中に、その当該年度においてどれだけの面積が作付けされている面積か分からないでしょうと言っているわけですよ。耕作放棄されていたら、作付けされていないということだから。それからもう一つは、今の、今日余り触れませんけれども、耕地利用率も低下しているんです。だけど、不思議なことに自給率はそんなに低下していないんですね。どういう計算をしているのかという、これもちょっと疑問なんですが、このことはちょっと今日、私はやめておきますが。  そういった面でも、本当に今の農地の現状というのは、どれだけの面積があって、どれだけに作付けされているかというのは、ちゃんと説明できるような状況をつくっていないというのはちょっとおかしい。これは統計情報の話なのかどこなのか分かりませんけれども、物事を考えるときの基本中の基本だから。  それからもう一つお伺いしますけれども、それじゃ日本農地面積というのはどれだけ必要だというふうに考えておられますか、農水省としては。
  19. 室本隆司

    政府参考人室本隆司君) これは、今の基本計画を策定するときに様々な計算をやっておりますが、まずカロリーベース食料自給率でございますが、平成二十七年の現基本計画、これを策定した時点で三九%という数字でございました。この数字というのは他の先進国と比較して非常に低い水準であるということで、現基本計画におきましては、平成三十七年度、これ令和七年度でございますが、この食料自給率目標を四五%というふうに設定しております。  この自給率目標を達成することを前提としまして、平成二十六年の農地面積、これが四百五十二万ヘクタールあるということで、これを起点としまして、その前の直近五年間の農地転用面積荒廃農地発生面積、これは減少傾向を示してございますが、この趨勢を踏まえた上で、基本計画の期間内における荒廃農地発生抑制荒廃農地再生など、いわゆる国土保全に資する施策の効果、これを織り込みまして、三十七年度の農地面積を四百四十万ヘクタールと見通しを立てております。  今申し上げたとおり、この四百五十二万から一旦三十二万ヘクタール、趨勢で減るだろうと、様々な施策を打った上で二十万ヘクタール回復するだろうということで、その数値が四百四十万ヘクタールということでございます。
  20. 平野達男

    平野達男君 その目標農地面積、今、四百五十かというお話だったと思いますけれども、いずれその目標を達成するというのは、今の状況の中ではかなり難しい面積だろうというふうに率直に言って思います。  今はもうとにかく、今の情勢からいけば農地面積は減る傾向にあるという、それを止めるためには、荒廃農地にもう一回大規模に投資して農地に戻すか、あるいは農地造成をするか、そういう手段しか、そういう方法しかないわけです。ところが、それは言うべくしてなかなか難しいですよね。そういう中で、今の現況のある農地をどうやって守っていくかということについての意識をもう一回再確認するというのはやっぱり本当に大事なことじゃないかなというふうに思います。  それから次に、もう一つの問題は、農業就業人口、それから販売農家見通しであります。資料としては二ページ目の資料を見ていただきたいんですが。  まず、世帯員数就業人口なんですが、二〇一〇年では六百十万人。ちなみに、一九八五年には一千五百六十三万人いました。二〇一五年の、これは農林業センサス農業センサスデータなんですが、四百八十八万人ということで、これ、コーホート集計ということで今までの趨勢を基に推計すると、二〇三五年には百四十三万人になると。これは農水省の、今日は冊子持ってこなかったんですけれども、センサスに基づいた解析ということで出していますけれども、そのデータであります。  それから、下は販売農家でありまして、二〇一五年は百三十三万戸、二〇三五年は四十六万戸というそういう趨勢になるだろう、趨勢というか、なると、今の現況が続けばですね、そういう結果になっています。  この報告書が出たのは四年ぐらい前ですかね、出たんですけれども、農水省はこの報告書をどう捉えていたのかということについてちょっと見解をお伺いさせていただきたいと思います。
  21. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) お答えいたします。  この調査報告書自体は、農林水産省統計部農林統計協会に委託して外部の有識者が分析したものでございます。委託研究という結果ですので、調査結果自体については受け取るという立場でございますけれども、農林省として発表したということとはちょっと違うのかなと思っております。  我々の将来の農業構造見通しにつきましては、五年に一度見直しを議論しております食料農業農村基本計画と併せて農業構造展望というものを公表しております。  それを見ますと、先生のこの御資料農家世帯員数、あるいは販売農家数、そういうものとは少し概念が異なります基幹的農業従事者と常雇いを合わせた数字であります農業就業者数、これが、やはりどれだけの面積でどれだけの農業が行われているかということでは、人の概念としては、見通しにはこれが適当だということで、十年後の農業就業者数見通しというのを役所として出してございます。  これによりますと、十年後の令和七年、二〇二五年の農業就業者数というのは、六十代以下で八十七万人。一方で、平成二十七年、これは二〇一五年、基本計画の年と同程度の生産を維持するのに必要な農業就業者数として見通しておりますのが、構造改革土地利用型作物について進むと仮定いたしましても、少なくとも九十万人は必要だということで、特に若手の就業者を増やすような政策をこういう考え方に基づいて出していたところでございます。  この農業就業者数と、その統計委託調査によります世帯員数販売農家数というのは、例えば世帯の中にどれだけ基幹的農業従事者がいるかどうかとか、それは年々違ってまいります、それから、販売農家にどれだけのまた農業就業者数がいるかも年々違ってまいりますので、単純にこれをまた比較していくことは当面できないと思っておりまして、当面、我々としては、その基本計画及びそれと同時に作っておりますこの農業構造展望によって将来の農業者数についての見通しを行っているところでございます。
  22. 平野達男

    平野達男君 いずれ、これ統計的な手法を用いて分析していますから、この見通しは、だからそれは一定の要するに前提を置いた推計でありますから、本当にこうなるかどうかは分からないわけです。  ただ、コーホート集計ということで、このモデル自体はどうなのかということについては、この分析報告書の中でも言っていますけれども、少なくとも二〇一五年の段階に、前に予想したやつはほとんどその予想のとおり動いているという意味で、モデル正当性もある程度認めています。  何を言いたいかといいますと、要するに、今の趨勢でいくとどうなるかということについてどういうふうに把握するかということですよ。その上で、どれだけ必要かというのは、これは政策判断なんだけれども、その何人が必要かということに対してどういう政策をするかというのは、これはかなり不確定な要素がある、それを実現するというのは不確定な要素があるんですね。  だから、そういう中で、じゃ、そのギャップというか、こういう統計データの中で出てきた数字とさっき言われたようなその目標数値みたいな、目標なのか何なのか分からないですけど、そういうところのギャップをどのように埋めていくのか、それは単に新規就農者確保ということなのか。そういうところは、もうちょっとやっぱり緻密に議論していく必要があるのではないかと思うし、こういう数字については、先ほどの農地面積と同じなんですけれども、もうちょっときちっと真っ正面に捉えていくということが大事じゃないかなということはちょっと申し上げさせていただきたいというふうに思います。  それから次は、農地流動化の、これ通告していませんけれども、農地流動化目的というのはどういう目的でやるのかという、極めて簡単なことでありますけれども、これは事務局答弁でありますけど、どういう目的でやりますか。
  23. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) これは、農地流動化というのは一つ手段だと思っております。  これは経営基盤強化法の目的規定等々にもあることでございますが、我々の基本法におきまして、効率的かつ安定的な経営を育成していくということを一つ目標にしてございます。そのためには、やはり効率的な農業というためには、農地がまとまって担い手の方々に利用しやすい形になっていくと、これがまず理想でございます。今の言葉ではそれは農地集約化と言っておりますけれども、流動化というのは基本的に動かすということですので、まとめるのの大前提として、今、農業の所有者の方が農業をやっておられるときに、例えばリタイアされるようなときにいかにこれから農業をやっていく方に農地を集めていくかと、そういう概念として流動化というのがあります。  ですから、最終的な目標というのは、担い手に効率的な農業をやっていただくために農地を集めていくと、これが最終目的だと理解してございます。
  24. 平野達男

    平野達男君 いわゆる担い手に集めて規模拡大するというのは、昭和三十六年の農業基本法以来のずっと発想なんですね。それがあって、しかし、そうはいいながら農地法はなかなか賃借権進まないから、農地利用増進法を作ってバイパスを作って、かつまた、集団的に利用権設定できるように農業経営基盤強化法を作って、まだそれでも足りないから中間管理機構法を作って今日まで来ているわけです。  何が変わったかといいますと、こういう担い手の規模を拡大するというのは、農地解放によって物すごい小さな零細農家がたくさんできたわけですよ。だから、その担い手の規模拡大をするというのはそのとおりだと思うんです。  ところが、今は農地面積がどんどん減っていく、後継者はいない、そういう時代ですよ。だから、農地の流動化というのは、単に要するに効率的に農地を使うということじゃなくて、これだけ農地面積減ってきているんだから、農地を守ってもらうという新しい、当たり前の話なんですけどね、柱がやっぱり一本立ってしかるべきじゃないかと思いますよ。そういうことが今の第一条の規定の中に明確に入っていないというのは嫌みがあるんです。だから、そのことをやっぱり明確に国、政府も私らも持たないかぬのですけれども、そういう時代に入ってきているんだということは再確認をしてもらいたいと思います。  これは次に言うところの集落の話合いなんですけれども、誰かの規模拡大をしましょうという、そういう農地の話合いでやるのか、地域の農地をどうやって守るかという気持ちで話合いでやるのか、ちょっと違ってきますよ。誰かの誰かの要するに規模拡大してこの人たちを育成しましょうというのは、これは地域の課題であるというよりはむしろ農政の課題なんですよね。だけど、地域全体の農地をどうやって守っていくかという話になった瞬間に、これはまさに地域の活力の問題で農業を守っていくという、そういう話になってくるはずなんですよ。  そこで、今回の中間管理機構法律の第二十六条で新しく第二項というのが入りました。これは努力規定ではありますけれども、図面を使って、極端に言えば一筆ごとに、誰が耕作して、年齢が何歳で、後継者がいるかいないか、将来、それから後、受け手がどうなっているかというようなところの実態をその図面に落としていくというようなことをやろうとしているわけですけれども、この狙いと意味ということについてちょっと御説明いただけますか。
  25. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) 御説明いたします。  これは、人・農地プランの根拠規定でもあるわけですけれども、人・農地プラン、今まで実践をしていった中で農地に関する農業者の話合いがうまくいってきた地域というのを幾つか調べてみました。  そういうのを見てみますと、やはりアンケート等に基づきまして、どこの農地は本当は誰かに貸したいんだとか、今は頑張っているけれども五年後、十年後には耕作が困難になるんだというような農地は、やっぱり個々の農業者の方々は思っているんだけれども、なかなかそれを地域で共有できていないと。それがアンケートなり、それを地図に落とした形でやると話合いがよく進むと、こういう事例があったところでございます。  全体として地域の状況を共有する、これが地図化の先進的な事例で、地図を使っている地域の狙いであったわけでございます。それによりまして問題解決への機運が盛り上がって、先生の御指摘のような農地を守っていこうという気も出てきたというところもあるわけでございます。今後、この農地バンクを更に進めて、農地の利用の集積、集約化を進めていくに際しても、こういうような地域での取組というのは非常に参考になると私どもは思っております。  といいますのは、今我々の分析では、平場で既にその地域の話合いの機運があるところはもう活用が一巡してきたということで、これからは中山間地域を始めとしまして、どうやって話合いを始めようかと、話合いをする取っかかりもなかなかないんじゃないかということで悩んでおられる地域が多いと思っておりまして、そういう地域でどういうふうに農業の将来を考えていただくかということを考えまして、このような優良な事例を参考にさせていただこうという考え方でございまして、こういう法律上の努力義務を明記することによって、やはり人・農地プランの考え方について皆さんに共有していただきたい、そういう考え方でございます。
  26. 平野達男

    平野達男君 私は、これは努力義務じゃなくて悉皆でやれというふうに随分もう部会でも何回も言ったんですけれども、なかなかこれ難しいということで努力義務になったわけですが、実態としては、今局長が言われたように、中山間地域中心にできるだけたくさんの地域でやっていただきたいし、農業委員会にこれに参加の規定ができましたけれども、農業委員会だけじゃなくて、JAさん、土地改良区、そういった方々にも声掛けて、是非まず実態どうなっているんだと。現場を今歩きますと聞くのは、この田んぼは私だけの代だ、隣の家もそうだという話はもうあちこち聞くわけですよ。聞くんだけど、地域全体としての姿というのはなかなか誰も捉えていないと。  そういう中で、こういう調査をやりながら、現状どうなっていて、五年後、十年後どうなるかという姿をみんなができるだけ共有するというのは本当に大事なことだと思いますし、その趣旨をよく説明して、そして、今の計画では二年という計画だったと思いますけれども、私はもうちょっと期間を長くやってもいいと思います。二年で全部やれるならやったらいいと思いますけど、ただ、これを現況調査をやるだけでも結構時間掛かると思うし、その気になってもらうだけでも大変なところも多いし、是非大臣、この部分については三年とか四年ぐらいの感覚でやるんだという、しかしやっぱり急いでやるということでやっていただきたいというふうに思います。  実は、全く関係のない話なんですけれども、農業者戸別所得補償制度というのを制度設計したときに、実はこの現況の地図作成と元々の当時はセットだったんです。当時の国会のそのときの私の発案者としての答弁書も、そういったものを地域の中で話をしながら、図面という言葉ではっきり言いませんでしたけれども、方向性の全体の構図をつくるということをやろうじゃないかということで言っていたんですが、そちらの方はやっぱり急いでしまって落ちてしまいまして、交付金の方が先に走ったということであったんですが、今考えてみると、あの当時、こういう図面化とかなんかいってもまだちょっと時期尚早だったかもしれません。今はもう本当に、私の代で終わる人が今平均年齢七十歳ですから、耕種農業は。たくさん出てきている中でこういう調査をやるというのは、まさにタイミング的には絶妙なタイミングになると思います。  それから、あともう一つは、全体の中間管理機構の制度の中では、元々、出し手対策にも、出し手として出し手に交付金を出すというような仕組みでスタートしました。私は、この出し手に出すというのは反対だったんです、最初から。今は地域の中での話合いの中でどっちでも出すような形でもいいんだというふうになりましたけど、これからの状況の中では出し手が圧倒的に多くなってきて受け手市場になっていくはずなんですね。だから、受け手に対してやっぱりもっともっと手当てを厚くするというような姿勢は出してもいいんじゃないかなというふうに思います。これは意見として言わせていただきたいというふうに思います。  それから、あともう一つは、これは前にも申し上げましたけれども、やっぱり農業が変わってきているのは、今やりたいという農業の方々は、規模が大きくても小さくてもやっぱりやってもらうという姿が大事だと思いますが、しかし、やっぱり圧倒的なかなりの人が後継者がいないというふうに悩んでいる中で、これは前にも申し上げたと思いますけれども、渡辺美智雄農林水産大臣大臣時代に言った話なんですけれども、これから農政は農地改革と全く逆の方向で行くと。農地改革というのは、少数の大規模地主がいて、農地解放することによって多数の零細農家をつくったと。これからは、少数とは言わないけれども、かなりの人数の大規模小作人ができると。そして、小規模な地主が、今は土地持ち非農家といいますけどね、小規模な地主がたくさん出てくるという、そういう時代になってくると。それは趨勢としていずれそうなってくるから、それを前提とした仕組みというのもやっぱりつくっていかなくちゃならないということを言われていたんですが、当時は何のことかよく分からなかったんですが、これが一〇〇%正しいかどうかというのはいろいろ議論があるかと思いますけれども、今の少なくとも農業構造の推移を見ている限りにおいては、そういう方向に向かう、また向かわざるを得ないということもやっぱり明確に意識していくということも必要なのではないかなというふうに思います。  これも、何も通告しておりませんけれども、吉川大臣から、御見解があれば、簡単で結構ですからお聞かせいただければ有り難いと思います。
  27. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) なかなか今すぐに結論を出すのは難しいところでございますけれども。  実は私、昨日、地球の気候変動と農業の関連性ということで、今滋賀県で、まさに環境と調和をした農業推進をする県の、昨日、三日月知事もプレゼンをしておりましたけれども、そのシンポジウムに行きまして、挨拶をさせていただきました。  その後、あそこは集落営農が最も盛んな地域でございまして、しかしながら、その集落営農の担い手がいらっしゃらない。でも、農地を大切にしようということで、ある代表の方が、株式会社化といいますか会社法人にして、その土地を受けながら、相対で土地を提供してもらっている場合もありますし、もちろん農地バンクを通じてほとんどの土地を提供していただいたという話もしておりましたけれども、まさに農業を持続をしようと、そういったような話を現場で聞かせていただきまして、私も大変勉強になりました。  これからも、持続性のある農業、さらには、先ほど平野先生からも農地に対する熱い気持ちも頂戴いたしましたので、そういったこともしっかりと私ども受け止めさせていただきながら、これからの農地の在り方あるいは担い手の在り方等々も、また御支援もいただきながら、御指導もいただきながら対応させていただきたいと、こう思っております。
  28. 平野達男

    平野達男君 今回の法改正は手続の簡素化等々を中心とした法改正になっていますけれども、私は、先ほど言った二十六条の図化みたいなものを一つのてこにして、これからの農地政策というのはやっぱり考え方も少し変わってくるし、それから、担い手を確保する新規就農、最近は若い新規就農者でも専業の新規就農者を目指す若い農業者が少しずつ増えてきているというような、そんな報告もあります。そういった流れもしっかり受け止めなくちゃなりませんけれども、これから農地を守るということに対しての意味とその重要性というのをやっぱり地域の人たちとも共有しながらこれからの農地政策を進めていくという、そういう大きな契機にこの法律の制定をするんだということでやっていただきたいと思いますし、その内容を全部十分これは持っているというふうに私は思っていますので、是非頑張ってやっていただきたいというふうに思います。  以上で終わります。ありがとうございました。
  29. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 おはようございます。  今、平野委員が質問されたこと、本当に同感でございまして、私もいろいろ準備したことが幾つかございますが、少しはしょってその部分は行きたいと思っております。  まず、農地中間管理機構というのは受け手の見込まれない農地を引き受けないというふうにされておりますが、その理由及び実態からまずお答えをいただきたいと思います。
  30. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 農地の集積、集約化を進めるためには、農地バンクが農地を借り受け、担い手にスムーズに転貸を行っていくことが重要であると考えております。  一方で、農地バンクは、スムーズに転貸を行うことを重視する余り、相談の段階で受け手が決まっていないと借り受けないという画一的な運用がなされていたことも事実でございます。このような実態を踏まえまして、今回の見直しにおきましては、人・農地プランの実質化の取組の中で、新規就農者の受入れですとか新規作物の導入など、新たな担い手を生み出すための地域の合意形成を進めますとともに、このような取組を後押しするために、特に担い手が不足している中山間地域における協力金の要件緩和等も行うことといたしております。  人・農地プランによりまして、地域のこの将来像を描くことで、地域の内外の担い手が農地を引き受けやすい環境を整えて、しっかりとマッチングを進めてまいらなければならないと存じております。
  31. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 次、移ります。  今年三月に、全国農業会議所が政府に意見書を提出をいたしました。相続により農地の存在する市町村以外に居住する人が農地の権利を取得する場合に、農地の相続を放棄したい、あるいは農地を市町村に寄附したいといった申出や相談が増えていると、そこで必要な措置を検討してほしいと要望がされておりますが、これについては昨年の骨太の方針においても、所有者不明の土地の発生を抑止する方策について議論がなされておりますが、その状況について法務省から答弁をいただきたいと思います。
  32. 西山卓爾

    政府参考人(西山卓爾君) 所有者不明土地問題を将来にわたって解決するためには、所有者不明土地の発生を抑制することが重要であるものと考えており、土地所有権の放棄を可能とすることは、そのための方策として検討されるべき重要な課題一つであるというふうに認識しております。  土地所有権の放棄につきましては、土地所有者が一方的に土地の管理コストの負担を免れ、これを土地の帰属先機関の負担とすることになりかねないなどの課題があり、現在、法制審議会民法・不動産登記法部会におきまして、土地所有権の放棄が許される要件設定の在り方や、放棄された土地の帰属先機関の在り方などについて調査審議がなされているところでございます。  このように、御指摘の点につきましては既に法制審議会において調査審議を行っているところでございますが、法務省としましては、二〇二〇年中に必要な制度改正を実現することを目指して、引き続きしっかりと検討を進めてまいりたいと考えております。
  33. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 農地の集積、集約化についていろいろ質問したいと思っておりましたが、これは平野先生の先ほどの質問で非常にいい指摘をしていただきましたので、一点、この点に関しまして資料でお配りしておりますけれども、立憲会派の方で、衆議院の農林水産委員会において、現段階に設置されている機構を廃止したり、あるいは戸別所得補償制度の復活に努めるといった内容の修正案を提出しております。新聞記事出しておりますけれども、この修正案に対する大臣見解をお伺いしたいと思います。
  34. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 農地バンクは、現在、約三十万人の所有者から約百十四万筆、十八・五万ヘクタールの農地を借り受けまして、七・五万人の受け手に転貸をしております。仮にこれを廃止するということになりますれば、これらの農地について担い手が再交渉するという必要が生じることとなりまして、現場への影響が大きいものと考えます。また、円滑化団体につきましては、既に九割の団体が実績がほとんどなく、今の農地バンクの役割を完全に担わせることは困難ではないかと考えているところでございます。  このため、農林水産省といたしましては、都道府県単位の農地バンクか市町村段階の組織かという二者択一で考えるのではなくて、それぞれの良さを生かして一体的にこの集積、集約化を進めていく考えでございまして、今回の見直し案を御審議をいただいているところでもございます。  修正案にも出されました今回のこの旧戸別所得補償制度につきましては、全ての主食用米の販売農家を対象に交付金を支払うものであると承知をいたしておりますが、担い手への農地の集積ペースを遅らせる面があること、十分な国境措置がある米への支援について、他の農産物の生産者ですとか他産業、納税者の理解が得難い等の課題があるものと考えているところでもございます。
  35. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 この農地集積について、地域によっても違いまして、私の茨城県というのは、全国第三位の農業生産額、四千九百六十七億円を誇っておりますけれども、実は担い手への農地集積率は三二・八%でございまして、全国平均の五五・二%を下回っております。  元々、今回の集積というのは、貸し手と借り手の間にあった賃借契約を集積バンクを通して貸し借りに変えるというのが実情ではないかという指摘がありますけれども、なぜ地域差があるのか、それから、機構が新たな案件を取りまとめるのに時間が掛かり過ぎているという指摘がありますが、その改善策についてお伺いをしたいと思います。
  36. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 農地バンク事業が開始をされました平成二十六年度以降、担い手への農地の集積率は上昇に転じまして、平成二十九年度の集積率は全国で五五・二%となっているところでもございます。  一方で、地域ごとに差が見られまして、農業経営全体の多くが担い手である北海道ですとか、あるいは水田率が比較的高い東北や北陸地方におきましては農地集積が進んでおりますが、中山間地の占める割合が高い中国、四国あるいは近畿地方や大都市圏を抱えます関東、東海地方におきましては農地集積が遅れているといった状況になっております。  このために、農地集積あるいは集約化を加速化させる観点から、今回の見直しにおきましては、農地バンクとJA、農業委員会など、地域でコーディネーター役を担ってきていただきました組織との連携を強めながら、一体となって、中山間地域を含め、農地集約化のための地域の話合いも推進をしていこうとするものでございます。
  37. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 その茨城の関係で、今、ブランド和牛の常陸牛とか梨、メロン、イチゴ等の輸出を増やしております。平成二十九年度の輸出総額は三億二千七百万円なんですが、そこでこの知的財産権の保護が重要になってきております。  和牛の受精卵とか精液を中国に持ち出そうとする事件が起きました。それから、日本から流出したイチゴが韓国で品種改良されてアジア市場に輸出をされたと。それから、日本のシャインマスカットが中国で栽培され、別の名前で流通していると。  大臣は、この和牛遺伝資源の適正な流通管理ということをおっしゃって、法改正も視野に入っていると答弁をされておりますが、その内容についてお伺いをしたいと思います。
  38. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 和牛は、私からもう申し上げるまでもございませんけれども、関係者が長い年月を掛けて改良してきた我が国固有の貴重な財産であります。和牛の遺伝資源の海外への流出には、大きな私どもも危機感を持っているところでございます。  このため、農林水産省といたしましては、我が国における遺伝資源の適正な流通管理の確保に向けまして、和牛遺伝資源の流通管理に関する検討会を設置をさせていただきました。現在、この検討会におきまして有識者に幅広く議論をいただいているところでもございます。  これまでの検討会におきましては、譲渡記録を保管するなど、精液や受精卵の流通管理を徹底すべきとの御意見、さらには、知的財産の観点から、契約による保護の重要性に関する御意見などをいただいているところでございまして、まだ全ての内容を御説明できる段階ではございませんけれども、この検討会で出された御意見等も踏まえながら、法改正も視野に入れて、どのような対応ができるのかを検討をしているところでございます。
  39. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 先ほどG20新潟農業大臣会合について質問がございましたが、その関係で、今とも関連するんですが、日本は近隣諸国との間で農林水産に関するいろんな問題を抱えております。具体的には、韓国との間では、今、茨城県など八県産の農林水産物等の輸入規制、中国との間では、アフリカ豚コレラウイルスの日本への侵入防止対策なんかがございます。  このG20の農業大臣会合で、韓国や中国との農水大臣との会談で、これらの課題に向けた解決について議論をされたのか、どんな進展があったのか、有効な対策があったのかについてお答えをいただきたいと思います。
  40. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 今回のG20新潟農業大臣会合の機会を捉えまして、私自身、閣僚が参加した十八か国全てと二国間会談を実施をいたしたところでございます。  韓国との間では、放射性物質に係る日本食品の輸入規制が農林水産関係では最大の課題であると認識をしている中で、こうした認識に立ちまして、李介昊農林畜産食品部の長官に対しまして、被災地復興のための重要な課題であるということをまずは説明をした上で、この規制措置を一日も早く撤廃するように強く要請をさせていただきました。  また、御指摘アフリカ豚コレラにつきましても、致死率が高いわけでございまして、さらに、この有効なワクチンや治療法がないことから、情報共有の強化ですとか、OIE等国際機関への協力等を通じまして国際社会が一致団結して対処することが重要であるということも伝えさせていただいたところでございます。  G20のこの新潟農業大臣会合におきまして、アフリカ豚コレラへの対処につきましては、議長である私から問題を提起をいたしまして、全体会合の中で各国で意見交換を行いますとともに、閣僚宣言におきましてもこの点が盛り込まれたところでもございます。また、中国や韓国との二国間協議におきましても、このアフリカ豚コレラ対応、旅客による違法な持込み防止についても協力をしていくことを確認をさせていただいたところでございます。
  41. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 では、農林中金の問題についてお伺いをしたいと思っております。  今日、皆さん、お配りされております出席要求者名簿、一番下のところに農林中金理事長と書いてあるんですが、これに線がずばっと入っていまして、いらっしゃれないと。何か、与党の方で認めないということでございますけれども、上月筆頭と私は同じ選挙区で夏、参議院選挙やりますので、是非御配慮いただきたいというふうに思っております。それはさておきまして、いや、非常に重要な、理事長お出になることが非常に重要だろうと思っておりますので、申し上げておきたいと思っております。  それで、大臣、通告しておりませんが、お答えいただきたいんですが、農水大臣はこの農林中央金庫に関する主務大臣でございますでしょうか。
  42. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 農水大臣はそのとおりでございます。また、金融庁も関係がございます。
  43. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 金融庁との違いについてお答えいただきたいんですが、農水大臣は、農民の皆さんと農林中金のどちらの味方でしょうか。
  44. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 農林中金には農民の皆さんのためにしっかり業務をやっていただかなければならないと、こう思っておりますので、どちらの味方という観点からということではなくて、私は、農業を営む、農業に関係する皆さんの全ての味方だと、こう思って認識をいたしております。
  45. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 それを数字でお聞きしたいと思います。  農業の担い手確保に向けた農林中金の融資実績について数字をお答えいただきたいと思います。
  46. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 農林中金の直近農業関連融資残高は五千百八十七億円、総貸付残高十一兆七千四百二十六億円の四%でありますが、近年、農業関連の新規融資に注力しておりまして、直近の新規融資額というのは四百五十一億円と、農協改革開始後、平成二十七年度に二百八十一億円の約一・六倍に伸びていると承知をいたしております。
  47. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 済みません、四百五十一億円というのは何%でしょうか。
  48. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 何%ということではございませんが、四百五十一億円は、この直近の新規融資額が四百五十一億円になっていると今申し上げさせていただいたところでございます。(発言する者あり)  もう一度申し上げますが、農林中金の直近農業関連融資残高は五千百八十七億円でございまして、総貸付残高十一兆七千四百二十六円の四%でございます。
  49. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 まあちょっと数字のごまかしというか、言い方ありますが、非常に少ないんですね。六十兆円以上の預金残高を有している農林中金とすれば極めて少ないわけですね。  先日私がリスクを指摘したCLOなど、投資するのではなくて、農林中金の設置目的に照らせば、農水業の振興に資金を融通すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  50. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 今の御指摘に対してですけれども、豊富な資金を、農業食品産業の発展に資するよう農業法人等への資金提供に活用することも重要であると考えておりますが、その旨、平成二十六年六月のこの農協改革に関する取りまとめでも今申し上げましたようなことを明記をしたところでございます。
  51. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 それでは、この担い手確保以外も含めて、農林水産業の振興のために農林中金は総額で幾らの資金を貸し出しているんでしょうか。また、その貸出金に占める割合はどのくらいでしょうか。
  52. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 先ほどお答えをさせていただきましたことをまたもう一度申し上げさせていただきますけれども、直近の新規の融資額は四百五十一億円、農協改革開始後、平成二十七年度で二百八十一億円の約一・六倍に伸びているところでございますが、これは担い手だけではなくて、それぞれに関して新規の融資額が行われているということでございます。
  53. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 この前、農水省からいただいた資料で、投資損失引当金というのがございます。これは二〇一三年の三月の時点で五十一億二千万円であったわけですが、その後大幅に減少が続いて、昨年の三月では十億三千二百万円まで下がりました、五十一億から十億に。ところが、昨年の後半になると六億円も増加しています。昨年の十二月の時点では十六億八千三百万円となっています。  昨年後半に再び増加したのはなぜなのか、それから、農林中金というのは投資におけるリスクの高まりを認識しているので増加したのか、その二点についてお答えいただきたいと思います。質問通告してあります。
  54. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 農林中金からの聞き取りによりますと、二〇一八年の後半に投資損失引当金が増加をしたのは、農林中金の関連会社一社において自己株式の取得により純資産額が低下をしたため、追加で引き当てをしたことによるものと聞いております。
  55. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 ということは、その関連会社のそういう状況というのが理由であって、リスクの高まりというのは認識していないということですか。
  56. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 農水省といたしましては、金融庁とともに、前回も先生から御指摘をいただいておりますCLOの投資拡大がシステミックリスクに発展をして金融システムの安定が損なわれないよう、規制の強化をこの三月に行ったところでもございまして、今後とも、内外の経済、市場動向に注視をしながら、必要に応じて適切な対応も行っていきたいと考えております。
  57. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 済みません、通告の主語は農水大臣ではなくて農林中金であります。今の答弁農水省としての考え方でございました。私の質問通告は農林中金に宛てた質問でございますので、農林中金に代わってお答えを、この主語でお答えをいただきたいと思います。
  58. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 御指摘をいただきましたけれども、農林中金から、先生からいただきました御質問の趣旨を踏まえまして、農林水産省として私は今答弁をさせていただいているところでございますので、御理解をいただければ大変有り難いなと、こう思います。(発言する者あり)
  59. 堂故茂

    委員長(堂故茂君) 速記を止めてください。    〔速記中止〕
  60. 堂故茂

    委員長(堂故茂君) 速記を起こしてください。
  61. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 答弁の打合せに大変時間を要しまして、恐縮に存じます。  まず、投資損失引当金でありますけれども、これは農林中金が保有する子会社や関連会社の株式に対する引当金でございまして、CLOに対する引当金ではないということでございます。  さらに、農林中金の保有するCLOにつきましては、貸付けが最上位クラスのものに限定をして、裏付け資産の分析、ストレス耐性分析を厳格に実施していると承知をいたしております。リスク管理を徹底していると聞いておりますが、農林水産省といたしましては、金融庁とともに、このCLOを含めた有価証券の運用状況を注視しながら、保有する有価証券等のリスクに見合った管理体制の整備等も求めてまいりたいと存じます。
  62. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 簡潔に、つまりリスクの高まりは認識されているんでしょうかというのが質問でございますが、それだけにお答えいただきたい。それがポイントでございます。
  63. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 今申し上げましたように、この当該損失引当金というのは、農林中金が保有する子会社や関連会社の株式に対する引当金でございまして、CLOに対する引当金ではないということでございます。  今、農林中金の保有するCLOについて、格付が最上位クラスのものに限定をして、裏付け資産の分析、ストレス耐性部分を厳格に実施をしていると、リスク管理を徹底しているというのが農林中金の、私どもが聞いたところで、このように答えているものでございます。
  64. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 ちょっと答えになっていないんですが、ちょっと先に行きます。  農林中金はダイレクトレンディングへの投資を増幅させているというようでございますけれども、これは、銀行が貸出しできないような無格付の中小企業に対してファンド、事業法人が貸付けを行う商品と言われております。銀行が与信管理できないような貸付先に対して、ファンドを通せば銀行が与信を持つという、ある意味では矛盾したものでありますけれども、これはCLO以上に危険性があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  65. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 一般に、このダイレクトレンディングとは、ファンド等が銀行を介さず直接企業等に貸し出すローンをいうと承知をいたしておりまして、農林中金は、主に米国の中堅規模の企業ですとか非上場企業に向けて、これら企業の全資産を担保とする貸出しを行うファンドに対して投資を行っていると承知をいたしております。農林中金では、第一順位の担保権を有するローンへの投資に限定するほか、ファンド及び個別案件ごとの運用結果についてファンドマネジャーから定期報告を受けるなど、リスク管理を徹底をしていると聞いております。  いずれにいたしましても、農林水産省といたしましては、金融庁とともに、この系統金融機関向けの総合的な監督指針において、保有する貸出債権等のリスクに見合った管理体制の整備を求めますとともに、運用状況の把握のための聞き取りなどを実施をしているところでもございます。
  66. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 今の答弁は、リスクに見合ったいろんな運用の経験者がいるから大丈夫だという話ですけれども、そもそも銀行を介さずに直接投資をするということがCLOよりもはるかに危険ではないかというのが、これは世界的にそういう認識でございますが、その部分は大丈夫なんですか。  つまり、ファンドマネジャーがしっかりしているからと、これは金融庁に対するいつもの逃げの答弁なんですが、そういう問題で済まない状況に今来ているんじゃないかと。これ農民の皆さんが出しているお金ですけれども、これも、こういうやり方で大丈夫なのかというのがほかの金融関係者の定説でございますが、大丈夫ですかということを聞いているんです。
  67. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 農中からの、この質問をいただきまして、聞き取りをさせていただきましたけれども、このファンドによる与信管理に関しましては、徹底した案件選別、検討案件のうち三ないし五%のみの投資の実施、二番目に、発行体制の財務への影響力、財務制限条項をファンドが決定、さらには高頻度の記帳管理、業績悪化企業は週次で運営陣に聞き取り、高い債権回収能力、経験豊富な企業再編の専門家が多数在籍をしていると、そういうことを聞いております。
  68. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 いや、そういう理由の問題じゃないと思いますが、ちょっと先に行きます。  先日の私の質問に対して、農林中金と称して、国際分散投資という運用方針でやっていると。その結果、CLOへの投資が増加したと答弁をしましたけれども、実際には国際分散投資が失敗したためにCLOへの偏った運用に切り替えざるを得なかったんじゃないでしょうか。国際分散投資の原則をむしろ無視して、株式のエクスポージャーをヘッジしたわけですね。それから、リスク管理が甘いので、その代替投資を急速に売却する状況に追い込まれたと。ですから、その逆相関関係が成り立たないポートフォリオの運用に切り替えてしまった。  だから、この前の答弁は、国際分散投資の結果こうなったと。だけど逆で、国際分散投資が失敗したからこういうふうになったのではないかというのが実態じゃないですか。  もしそういうふうに農林中金が言ったことを農水省が目の当たりに受けたとしたら、農水省のこういう資金運用に関する知識がないということになってしまいます。農水省の主務大臣としての、主務省庁としてのつまり目利きが利かないということになりますが、いかがでしょうか。
  69. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 前回、大澤局長答弁をしたとおり、CLOが増加した原因につきまして、農林中金は、国際分散投資という基本コンセプトの下、債券、株式、CLO等から得られる収益とリスクを考慮しつつ、投資判断やリスク管理を実施する中で、結果的にCLOへの投資が増加したと説明をしております。  個々の金融商品の投資戦略についてのコメントは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、農林水産省といたしましては、金融庁とともに、このCLO投資の拡大がシステミックリスクに発展をして金融システムの安定が損なわれないように、規制の強化をこの三月に行ったところでもございます。今後とも、内外の経済、市場動向を注視をいたしまして、必要に応じて適切な対応を行っていく考え方でもございます。またさらに、金融庁とも連携をしながら、財務のシミュレーションやリスクシナリオにおける運用益ですとか収支展望についても作成するように指導もいたしているところでもございます。
  70. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 別の質問に行きます。  今後数年間の財務シミュレーション、農林中金においては、資金収支、含み益、経常利益をどのように見込んでいるのか、お答えをいただきたいと思います。
  71. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 大変どうも失礼いたしました。  今も申し上げましたけれども、個々の金融商品の投資戦略につきましてはコメントを差し控えさせていただきたいと思いますけれども、金融庁とともに、CLO投資の拡大がシステミックリスクに発展をして金融システムの安定が損なわれないように、規制の強化をこの三月に行ったところでもございます。今後とも、この内外の経済、市場動向を注視をいたしまして、必要に応じて適切な対応を行っていく考えでもございますし、また、金融庁とも連携をいたしながら、財務シミュレーションやリスクシナリオにおける運用益、さらには収支展望についても作成するように指導もしているところでございます。
  72. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 今、小川理事がいいことを言っていただいて、チェックする側とされる側を同じ方が答弁しているということで、非常にまずいわけでございますけれども。  今の答弁ですと、そうすると、資金収支、含み益、経常利益、あるいはその運用益、収支展望のシナリオですね、これは農水省は把握しているんですね。把握しているけれどもここでは言えない、それとも、その数字自体を農林中金から農水省はちゃんと取り寄せているんでしょうか。
  73. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 中身までは公表できないということでありますが、取り寄せているところでございます。
  74. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 ということは、かなり、何といいますか、危ういということであるならば、農水省が知っていて答弁しているということでよろしいですね。
  75. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 今私も何度も申し上げておりますけれども、投資の拡大がシステミックリスクに発展をして金融システムの安定が損なわれないように、規制の強化をこの三月に行ったところでもございます。さらに、内外の経済、市場動向も注視をしながら、また、必要に応じて適切な対応を行っていくところでございます。
  76. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 私はシステミックリスクって一言も言っていないんですが、何回も大臣がおっしゃっているということ自体が何かを表しているのかなと思っておりますけれども。  その状況の中で、次の質問でございますが、資料の最後のページに日経新聞の記事がございます。これは、農林中金は農協に五月までに信用事業を分離するかどうかの方針を示すよう求めていると。JAは、金融事業強化との目的で農協の合併を考えるとの報道がありますが、これは事実でしょうか。
  77. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 農協の信用事業につきましては、農林水産省としては、人口減少や高齢化、金利の低下及び高度化する金融規制等を踏まえまして、代理店を含めて信用事業の在り方を真剣に検討をしながら自主的に方向を決め、実行するように促しているところでもございます。自主的に方向を決めということは自己改革を行うということでございますので、そういったことを、今しっかりと自己改革を促しているということでございます。
  78. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 この新聞によれば、ワーキンググループで農林中金などが明らかにしたとあります。明らかにしたわけですね、その確認を、ここにそう出ていますが。
  79. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 農中から、合併を検討、金融事業化を強化へとあったのは事実ということでございます。
  80. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 農林中金は、世界金融危機の際に有価証券で一兆円以上の含み損を抱えてJAからの資本増強を要請したという前科があるんです。その世界金融危機のときには三十九・五兆円でしたが、今五十三・五兆円の有価証券を保有しています。ということは、巨額の含み損を抱える事態が再び起きる危険性はないのか、まずそこについてお答えいただきたいと思います。
  81. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 農林中金は、系統の余裕金を運用する役割を担っていると承知をいたしております。農協の組織再編の結果いかんにかかわらず、農林中金の運用が系統信用事業全体に影響を及ぼす関係にあることから、農林水産省といたしましては、農林中金の運用状況というものを注視をしてまいりたいと存じます。
  82. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 クレジット等への投資に関しては、昨年の三月が四百十八億円の含み益がありました。それが、昨年十二月の段階では含み損千三百十四億円に陥っています。  こうした中で、去年の三月、含み益四百十八、十二月、含み損千三百十四億円、こういう中で農林中金に信用事業を集中させるというのは大丈夫なんですか、危険ではないですか。
  83. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 先ほども申し上げさせていただきましたけれども、農林中金は系統の余裕金を運用する役割を担っております。農協の組織再編結果いかんにかかわらず、この農林中金の運用が系統信用事業全体に及ぼす影響関係にありますことから、農林中金の運用状況農林水産省といたしましてはしっかりと注視をしてまいりたいと存じております。
  84. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 こういう状況の中で信用事業を集中させることがあっていいんですかという質問であります。
  85. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 若干、ちょっと時間を下さい。
  86. 堂故茂

    委員長(堂故茂君) 速記を止めてください。    〔速記中止〕
  87. 堂故茂

    委員長(堂故茂君) 速記を起こしてください。
  88. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 大変どうも時間を要しまして、失礼をいたしました。  先ほどからお答えをさせていただいておるところでございまするけれども、先ほど申し上げましたのは、代理店化となりますと信用事業が完全に集中する結果になります。この場合はもちろん中金の運用が重要であります。代理店化しなくても、つまり信用事業が農協が行うといたしましても、その余裕金が中金に集まりまして中金の運用が農協に影響を及ぼすことという意味で、いずれの場合もこの中金の運用が重要でありまして、我々はそれを注視をしていくということを申し上げたつもりでございました。  大変失礼いたしました。
  89. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 済みません、運用のことをお聞きしているんじゃなくて集中させることの是非について伺っているわけでございます。  こういう形で、この間ですが、日経新聞にあるこの農林中金が明らかにしたということはそのとおりだとお認めになったわけですが、では農林中金は、これだけ農協を合併してこうやって集中していくということ、今の段階で、むしろそれはそういう方向に進むのは非常に危険ではないかと。だから、運用の問題じゃなくて集中させること自体が今の段階で危険じゃないんですか。それはむしろ、主務大臣として農民を守る立場からそれはむしろ抑制的に慎重な配慮というものを大所高所から指導すべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  90. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 今も申し上げましたように、運用も含めて集中をした場合でも全体に影響を及ぼす関係にありますことから、農林中金の運用状況をしっかりと注視をしてまいりたいと。いずれにしても、主務官庁としては、集中をするにしても運用するにしてもしっかりと注視をしていく必要があるということを申し上げたつもりでございます。(発言する者あり)
  91. 堂故茂

    委員長(堂故茂君) 質問を続けてください。(発言する者あり)  速記を止めてください。    〔速記中止〕
  92. 堂故茂

    委員長(堂故茂君) 速記を起こしてください。
  93. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 大変失礼をいたしました。  信用事業の方向性に関しましては、これは自主的な方向を促す観点から、私どもといたしましてはコメントすることは差し控えさせていただきたいと存じまするけれども、いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたとおり、代理店化すると信用事業が中金に集中をする結果になる、この場合はもちろん中金の運用が重要でありますので、しっかりと注視をしていかなければならないということであります。  代理店化しなくても、信用事業が、農協が行うということになりますけれども、その余裕金ですとか、中金に集まる、中金のこの運用が農協に影響を及ぼすということもありますので、いずれの場合も中金の運用が重要であるという観点から、私どもはしっかりと注視をしてまいりたいということでございます。
  94. 堂故茂

    委員長(堂故茂君) 申合せの時間が参りましたので、質疑をおまとめください。
  95. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 はい。  農水大臣と農林中金の利益相反の部分が今出てきた部分だろうと思っておりますし、規制改革会議の言いなりになるということは恐らく農水省あるいは多くの農民の皆さんにとっても決して芳しくないという観点からも、次回はやはり、いわゆる引用ではないということと利益相反の関係から、農林中金のしかるべき方を当委員会にお呼びいただくことを与党に申し上げて、質問を終わります。
  96. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 国民民主の森ゆうこでございます。  まず、法案の質疑に入る前に、先ほどもお話がございましたけれども、大臣、お疲れさまでした、G20農相会合の成果について伺いたいと思います。  私も、地元新潟市で開催されましたのでお招きをいただき、レセプションに参加をさせていただきました。パーデュー米国農務長官にどうしても会って一言言いたいと思って場内探したんですけれども、残念ながらパーデューさんは来るかどうか分からないという感じで係の人に言われて、代わりにイタリアの人たちから森ゆうこ知ってると言われまして、アイ・ソー・ユア・エナジェティック・スピーチ・アット・ザ・ダイエット、国会でのエネルギッシュな質問を見たことがあるということで、もし自分のところの政治家だったら投票するとまで言っていただきまして、ちょっといろんな雑談はしたんですが、肝腎のパーデュー農務長官とはお会いをできなくて残念だったんですが。  そのパーデューさんは、これまでもかなり農水分野の関税の引下げであるとか開放を強く求めてきて、我々としても、そして大臣としても抗議をしていただいたというふうに思うんですが、一時間ほど朝食会、バイの会談を行われたそうですけれども、その辺のところ、具体的にどうだったんでしょうか。そして今、米中貿易戦争で、いやあ、トランプさん何言ってくるか分からないなと、ここまでやるの本当にというところまでいろんなお互いにやり合っている。いや、これを日本にやられたら大変だなと正直思うわけでして、どんな会談だったのか、しっかりと我が国農業を守る立場を伝えることができたのか、是非、特に米国農務大臣とのバイの会合、会談について御報告をいただきたいと思います。
  97. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 森先生におかれましては、大変お忙しい中をG20新潟農業大臣会合のレセプションにおいでをいただきまして、ありがとうございました。  今の御質問の中で会合の成果のことについてもお触れになられましたので、若干申し上げさせていただきたいと思いますが、この農業大臣会合におきましては、「農業食品分野持続可能性に向けて―新たな課題とグッドプラクティス」をテーマに、世界三十四の国、機関の大臣、代表にお集まりをいただきまして、それぞれの抱える農業食料に対する諸課題について率直な意見交換を行わせていただきました。二〇一九年G20新潟農業大臣宣言採択をさせていただきまして、農業の未来のため各国間で知見を共有することの重要性を確認することができましたことは大変有意義であったと存じます。  ただいまの御質問のパーデュー農務長官との会談でございまするけれども、五月の十一日に行わせていただきました。G20農業大臣会合テーマでありますこの農業食品分野持続可能性に向けたイノベーションの必要性、さらには東日本大震災に関連をする食品の輸入規制の撤廃、緩和の実現というものも私の方からお話をさせていただきました。そして、日米物品貿易協定交渉も率直な意見交換を行ったところでございます。パーデュー農務長官との会談は私自身初めてでございましたけれども、お互い日米両国の農業政策の責任者として直接顔を合わせて率直な意見交換を行うことができたことは大変有意義だったと、こう思っております。  その中で、この日米物品貿易協定につきましては、私からは、昨年の九月の日米共同声明に沿って茂木大臣とライトハイザー通商代表との間で協議が進められており、同声明では、農林水産品について過去の経済連携協定で約束した内容が最大限との日本立場が明記されている旨を改めて申し上げました。これに対しまして、パーデュー農務長官からは異論はなかったところでもございます。
  98. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 異論はなかったということなんですけれども、実際やはりいろいろTPP、そして日EU・EPA発効されて、特に日本の市場におけるアメリカの一人負けというのも具体的に記事にも出てきている。私もスーパーに行って、例えば輸入のブドウのコーナーが物すごく増えていたり、それからオーストラリア産の野菜やそれから肉、そういうところの売場面積が増えてきていると。徐々にTPPあるいは日EU・EPA、そこに加盟している国からの農林水産物の輸入品というのが目に見えて増えてきている中でアメリカが一人負けであるというような状況、まあ焦っている部分もあるのではないかなというふうに思います。  TPPに今更入るということはできないわけですよね、アメリカは。それはできないんですか。そういうお誘いをするということはないんですか。要は、今回の農林水産品だけでも早期に妥結という、特に米国の農業団体から強い要望があって、トランプさんとしては来年の大統領選までに成果を出さなきゃいけないというようなことで、もういろんなことをやってきているわけですけれども、例えばTPPに入ればうまくいくんじゃないのというようなお誘いをするということはできないんでしょうか、仕組み上。もう入れてもらえないんでしたっけ。
  99. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 私からお答えするのが適当かどうかは分かりませんが、TPPに戻るということは私は可能ではないかと、個人的にはそう思っております。  今、森先生から様々な御指摘もいただきましたので若干お答えをさせていただきますが、パーデュー農務長官から、まさに米国は他国よりも日本の輸出で不利な立場に置かれているとして、その早期の解消を求めたい旨の発言もございました。それに対しまして私は、先ほども申し上げましたけれども、過去の経済連携協定で約束した内容が最大限でありまして、日本立場が明記されたこの日米共同声明に沿って交渉が行われているということについて申し上げさせていただきました、しっかりとですね。この点に関して農務長官から異論はなかったということでございました。
  100. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 本当は、だからそういう場面を捉えて、TPPに米国も今から入ればいいじゃないですかということを言うべきだと思うんですよね。内閣府来ていますけど、言うべきじゃないんですか。そうじゃないと、やっぱりバイの何というか貿易交渉ですと、今回の見ていると、どこまで行くのか、どうやって収拾するのか、米中貿易戦争、これは物すごい大きな、両国にとっても、そして世界の経済、そして日本の経済にとっても物すごく大きなリスクになるというふうに思いますので。こんな感じでやってくるかもしれないと。  今はそこまで行っていないかもしれませんけれども、日米のFTA交渉もちょっとどうなるか分からないような感じがありますから、そういう機会を捉えて、とにかく農産品に関しては特に、TPPから自分たちが離脱したんですけどね。アメリカの責任なんですよ。やっぱり言うべきことははっきり言うべきですよ。そっちが離脱したんじゃないの、今からでも入りませんか、そうすれば農業団体の不満もなくなりますよと。どうしてこれぐらいのこと言えないんですか。米国だからって遠慮すべきじゃないんですよ。はっきり言うことが求められているんですよ、国際社会では。私は日本ではちょっとはっきり言い過ぎますけど、いや、国際社会では当たり前のことで、はっきり言わなきゃいけないんですよ。  内閣府、どうですか。
  101. 清水茂夫

    政府参考人清水茂夫君) お答えいたします。  日本政府としては、米国がTPPに戻ることが望ましいということはアメリカに伝えているところでございます。
  102. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 それ本当にしっかり言っているんですか。日米FTAじゃなくて、そこまで不満があって、それを解消するにはTPPに、これだけ苦労してまとめてきたTPPにもう一回戻ることが一番いいんだと、はっきり、しっかり言っていますか。
  103. 清水茂夫

    政府参考人清水茂夫君) お答えいたします。  先ほども申し上げましたとおり、日本側の考え方はしっかりアメリカに伝わっていると理解しております。
  104. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 でも、そういうことをやっているという話が全く政府側からも出てきていませんし、報道もされていませんし、そして米国関係者は、先ほどのパーデュー長官を始め、いろんなこと好き勝手に言っていますけれども、そういうことを日本に言われたとか、そういう話もありませんし、私は提案させていただきますけれども、そちらが勝手に離脱したんでしょうと、これを挽回するにはTPPに戻るのが一番いいですよと、もう本当に自信を持って日本の側もやっぱり言うべきだというふうに思いますので、是非茂木さんに伝えておいていただけますか。
  105. 清水茂夫

    政府参考人清水茂夫君) お答えいたします。  今お話しの件、大臣に伝えさせていただきたいと思います。
  106. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 それで、やっぱり米国が抜けてTPPが発効してしまった、そしてさらに、最低でもTPPレベル、できれば関税撤廃と、全部、農林水産品については、そういう発言もしていますからね、そういうことを要求されていると。もしそのTPPレベルで日米FTA交渉が妥結した場合、そうした場合には、我が国農水産物に対する影響額というのは、当初、最初のTPPのときに試算した額よりもまた更に影響は増えるというふうに思うんですけれども、また別枠の部分が多少出てくると思いますので、その場合の影響額というのはどのように考えているでしょうか。
  107. 光吉一

    政府参考人(光吉一君) お答えいたします。  日米物品貿易協定につきましては、昨年九月の日米共同声明におきまして、農林水産品について、過去の経済連携協定で約束した譲許内容が最大限であると、そういう日本立場が明記されており、農林水産分野の日米物品貿易協定の影響はTPP12による影響の範囲内であると考えております。
  108. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 ちょっと違うような気がするんですけど、私もまだそこを深掘りするだけの時間がなかったので、また次回やりたいと思いますが、大変な交渉がこれから更に待ち受けているなというふうに思いますので、是非、結構いい提案だったと思うんですけど、さっきの。もっともっと積極的に言った方がいいと私は思います。それだけTPP交渉で苦労をして、国民にうそをついてまで、TPP断固反対、うそつかない自民党と言って、国民にうそついてまでTPPやったんだから。でも、今のを見ると、二国間交渉よりやっぱりTPPの方がまだまし、まだましということになるわけですから、せっかく苦労したやつを効果的に活用しない方法はないわけで、遠慮せず私は言うべきだと思うんですよね。何かアメリカに言われちゃったらもう何でもオーケーみたいな、こういうことではおかしいというふうに思います。  それでは、農地中間管理事業推進に関する法律等の一部を改正する法律案について質問させていただきたいと思いますが、先ほどの平野先生の質問と私も通告したのかなり重なっている部分がありまして、改めて確認しますけれども、この食料自給率の向上の目標、私はもっと高く設定すべきだと思います。先進諸国、工業国でもやっぱり一〇〇%自給率というところがメーンなんですよ。自国の国民を食べさせられないで、主要国も何もあったものじゃないという。何かあったら、食料安全保障観点からもやっぱりあくまでも一〇〇%以上を追求していくべきだと思うんですが、それはそれとして、食料自給率向上の目標とそして国土保全などの観点から、守るべき農地面積はどう考えているんですか。  先ほど平野さんも同様の質問をされましたけれども、もう一回、そういう観点から我が国が国として守っていくべき農地、これは一体どれぐらいなのか、このことについて端的にお答えいただきたいと思います。
  109. 室本隆司

    政府参考人室本隆司君) まず、カロリーベース食料自給率でございますが、この基本計画の策定当時、平成二十七年度時点では三九%という数字がございます。これが他の先進国と比較して非常に低い水準であるということで、平成三十七年度の食料自給率目標を四五%という形で設定してございます。  農地に関しましては、平成二十六年の農地面積、これ四百五十二万ヘクタールございますが、これを起点としまして、その直近前五年間の農地転用面積荒廃農地発生面積趨勢を踏まえまして、その上で、基本計画の期間における荒廃農地発生抑制やあるいは荒廃農地再生など国土保全に資する施策の効果を織り込み、平成三十七年、令和七年の農地面積を四百四十万ヘクタールと見通したものでございます。
  110. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 いや、だから、もう少し分かりやすく端的に答えてください。  我が国食料安全保障食料自給率の向上、そして国土保全観点から守るべき農地は、先ほど、もう閣議決定までした時代もあったと、平野先生から大変参考になるお話がありました。  これだけの農地守らないといけないよということをはっきり決めないといけないんじゃないんですか。何かはっきりしないんですよ。一体、守るべき農地面積はどうなのか、農地面積だけを答えてください。ちょっと答弁分からない。
  111. 室本隆司

    政府参考人室本隆司君) 食料自給率四五%、これを達成するために必要な農地面積は四百四十万ヘクタールというふうに御理解いただいて結構かと思います。  ただし、この四百四十万ヘクタールはいわゆる目標という形ではなくて、四百四十万ヘクタールを確保していく中で、自給率を達成するための作付面積の検討とか、そういうことを行っていくというふうに御理解いただければと思います。
  112. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 ここ重要なところで、先ほど平野先生からも御指摘があったんですけれども、今改めて一体どれだけの農地を我々は守っていくということをしっかりと本当に閣議決定でもしてもらわないと、もうどんどん荒廃が進んでいく、後継者はいない。そもそも農地バンク、その設立の目的がちょっとよく分からないんですけれども、結果として更に農地減少、そして荒廃が進んでいるというふうに体感をいたしております。  それで、農地バンクが農地の集積、集約化に向けてその本来の機能を発揮できなかったのはなぜなんでしょうか。
  113. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) 先ほど来答弁させていただきましたとおり、農地バンク設立以来、担い手への農地の集積は伸び始めましたけれども、近年集積率の伸びが鈍っているということで、まだ本来の機能を十分発揮できていないというふうに認識しております。  これは、原因としては、我々分析しておりますのは、既に農地の集積、集約化の機運があった平場の水田地帯での取組が一巡して、これからは中山間地域を始めとして新たに地域の話合いから始めなければいけない地域が多くなってきたというふうに分析をしてございます。  今回の見直しでも、こういう新たに地域の話合いを活性化させるということをどうしたらできるかということで、農地バンクとJA、農業委員会など地域でコーディネーター役を担ってきた組織が一体となって農地集約化のための地域の話合いを推進していくと、こういう枠組みをつくろうとしているところでございます。
  114. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 後でまた聞きますけど、二〇二三年、担い手の利用面積割合八割の達成を見込んでおりますが、達成目標にしておりますけれども、これは達成可能な数字なんでしょうか。
  115. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) 今後、相当程度の農業者が高齢化のためにリタイアするということを考えますと、やはり担い手に農地が集まっていくということは今後加速するという一定の見通しは持っております。  さはさりながら、ここ数年間の実績を見ますと、二〇二三年に八割を達成するためには相当程度事業を加速化しなければならないというふうに同時に自戒しているところでございますので、今回の見直し案を機に加速化させていきたいと考えております。
  116. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 でも、結局ビジネスライクに、規制改革推進会議がもくろんだように、その農地バンクなるもの、その機構というのを各県に一つずつつくって、もうドライに土地を集めてきて、そして、それを利用する人にあるいは企業に貸し出すというのは本当に絵に描いた餅で、結局、この農地というのは、何というのかしら、その地域の中での話合い、誰が誰に使ってもらう、先ほどお話ありました、この地域をどうやって守っていくのか、そういう話合いの中で集約というのが行われてきたのであって、いろんな数字農水省数字、報告を見ますと、別にこの集積は農地バンクがなくてもできた数字であり、逆に言うと農地バンクって一体何だったんだろうかという、そういうところに戻ってくるんじゃないかなと思うんですね。  結局、私は、問題としては、安倍政権、特に官邸農政ですよね、規制改革推進会議とかいろんなところでやっているもうかる農業とか、そういう方向性、もう全然、何というのかな、産業政策という観点しかなくて、農業はもちろん産業政策であり、この国の食料安全保障のためになくてはならない政策をやっていかなきゃいけないわけですけれども、それと同時に、やっぱり社会政策、農村をつくっていく、そういうことも兼ね備えた、同時にやっていかなきゃいけない政策なのに、もうとにかくもうかる農業だと、集約できればいいんだと、そういう方向で突っ走ってきて、で、農協改革、農業委員改革。でも、やっぱり気が付いたら、農地バンクでは土地も集められません、貸し手も借り手も集められません、地域の合意もなかなかつくれませんということで今回の改正になったんではないんですか。  安倍政権に農業について産業政策の視点しかないところが私は問題ではないかと思いますけれども、大臣、どうお考えですか。
  117. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 安倍内閣におきましては、これまで、地域の基幹産業であります農業を強くするための産業政策と同時に、農村に活力を取り戻すための地域政策にもしっかりと取り組んできたところでもございます。  具体的に、農業者が取り組む共同活動を支援する多面的機能支払や、中山間地域と平地との生産コスト差に対して支援をいたします中山間地域等直接支払等の日本型直接支払制度、中山間地域における地域の特色を生かした多様な取組を総合的、優先的に支援する中山間地農業ルネッサンス事業、さらには鳥獣被害対策やジビエの利活用など、多様な施策も展開をしているところでもございます。  今後とも、産業政策と地域政策を車の両輪といたしまして総合的に実行していくことにより、強い農業と美しく活力ある農村をつくり上げていく所存でもございます。  私も時間の許す限り現場を訪問をいたしておりまするけれども、森先生指摘のとおりの、地域的な社会を形成していく上での農業というのは大変大切であるということは、現場に行くたびに私の感ずるところでございます。
  118. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 それで、担い手のところに集約化していくという話なんですけれども、既に農地が集積されたこの担い手も高齢化をしていると。それから、米価等の下落による担い手の経営悪化に対する支援、そういうものが必要ではないかと思いますが、戸別所得補償制度、これがなくなって、特に集約して大きくしたところほど影響を受けているんですよね。非常に危機感、何とかしてほしいという声をどこへ行ってもいただきます。  そういう意味で、農地集積協力金とか、そういうのは、集積するとき、出し手に対してだというふうに思うんですけれども、集積された担い手を支援するということをもっと真剣に考えるべきではないか、何か具体策もっとないんでしょうか。
  119. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) お答えいたします。  確かに、これだけ高齢化が進んできている中では、なお農業に引き続き将来ともやっていこうという担い手の方々、これへの支援というのは非常に大事なことだと思っております。  農地バンクにつきましては、今までは、農地バンクに農地を集積させるということがまず大事だろうというふうに思っておりましたので、地域に対する支援の中で一部担い手に対する支援は行える仕組みは取っておりましたけれども、別途、出し手のみに対する支援というのも枠組みとして持っておりました。  今回の予算の見直しの中では、やはり段階が少し変わってきただろうということで、出し手に対する単独の支援金につきましては、経過期間を置きながら縮減して、なくしていくという考え方を取るとともに、その財源を使いまして、地域に対するお金を、これをまず増額いたすとともに、それから、その中で、地域の話合いによって、担い手が俺だ俺だと言うと、なかなかまた地域の合意も取れないことがありますので、地域の話合いによって、やっぱりこれから残っていただく方に必要な支援を行おうという合意が取れた場合にはその地域に対する支援金を担い手に出せる、そうでないような場合には出し手にも一部出せると、こういう枠組みをつくりまして、地域の自主性に任せて支援の対象を決めていくという考え方を取っているところでございます。この仕組みを進めてまいりたいというふうに考えてございます。
  120. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 受け手がいない中山間地域へは具体的にどうやってこれ進めていくのか、なかなか難しいじゃないかなと思うんですけれども、その辺についてはもう少し詳しくお願いします。
  121. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) これも非常に難しい課題ですが、これからの担い手への農地集積の中で、これは対応を強化していかなければいけないと思っている次第でございます。  今回の見直しにおきましては、こういう場合でもやはり地域の方々の意向を無視して外から例えば担い手を持っていくと、これでは地域の合意が取れませんので、あくまでもやはり人・農地プランの作成に向けた地域の徹底した話合い、これで、どういう農地利用をやろうか、どういう新規作物をやろうか、やはり新規作物は必要だと思いますが、そういうところでいろいろ議論していただくということもございますけれども、せっかく議論してもどうしようもないんだということもありますので、予算面でも、この地域集積協力金では、まず全体の地域集積協力金の六割を中山間地域向けの優先枠にいたしました。それから、中山間地域における要件として、農地を、最低集積要件というのを課しているんですけれども、これを平場の五分の一に緩和したということでございまして、少しでも取り組めば取っかかりができるという考え方の下で予算面もこういう使いやすい予算にいたしましたので、こういう措置を組み合わせることによって進めてまいりたいというふうに考えてございます。
  122. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 何かちょっともう少し発想の転換が必要なんじゃないかなという気もいたします。  多面的機能支払交付金は新しい段階を迎えると思うので、耕作をし、どう言ったらいいんでしょうね、とにかく農地として維持していくこと自体が環境を整備していく、環境を保全していく、国土を保全していくことにつながるんですから、この受け手のいない中山間地域へは多面的機能支払金の交付金をもう少し何か進化させて、もっともっと利用されて、守る、受け手というか守っていく人が、あるいはみんなでどのように守っていくのか、それが進むように工夫されるべきではないかと思いますが、多面的機能支払金の交付金について抜本的に充実させる考えはないんでしょうか。
  123. 室本隆司

    政府参考人室本隆司君) 多面的機能支払交付金の御指摘でございますが、これは前身である農地・水・環境保全向上支払というのが平成十九年度からスタートしておりまして、その後継の後継の対策ということで現在やっております。  委員おっしゃったとおり、本年度から新しい施策というか対策がスタートしておりますが、第三者委員会の評価の結果を踏まえて私ども農水省施策評価を行いまして、その中で、農地の適切な保全管理、これがしっかり行われていると、ついては多面的機能がしっかり維持、発揮されているのではないかということと、それから非農業者の参加が非常に増えているということで、活動そのものに非常に広がりができているというふうな評価、これをいただいているところでございます。  具体的に申し上げれば、この評価の中で私ども調査を掛けておりますが、前期対策の五年間の中で約七百ヘクタールの遊休農地を解消しまして、プラスアルファで一・三から三・三万ヘクタールの遊休農地の発生が抑制されたというふうな評価が行われております。  さらに、こうした施策の効果を高めるため、本年度からは、組織の広域化による体制の強化とか、あるいは非農業者の更なる参加の促進というふうな施策の充実を図っておりまして、こうしたことを一層進めていきたいと考えてございます。  加えて、中山間地域においては中山間直接支払の交付金もございますので、委員がおっしゃるように、単価アップということであれば、その中山間直払いの交付金もしっかり御活用いただくということで、順次施策を進めて評価をし、また進めるというふうなステップ・バイ・ステップで進める方がより効果的にいくのではないかということを考えてございまして、一層の推進を図ってまいりたいと、こう思っております。
  124. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 米価の下落などによって小作料の未収問題などもあるわけですけれども、それに対する対応も今後増えるのではないかというふうに思われます。また、更に増える事務量に本当に対応できるのか、その辺について伺います。
  125. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) 農地バンクの事務の問題として質問をお受けしたので、その点でお答えいたします。  まず、小作料の未収でございますけれども、これについては調査がありまして、現在、この農地バンクが十八万五千ヘクタール今農地を扱っているんですけれども、期日までに受け手から賃料の支払が行われていないケース、いわゆるこういう定義での未収のケースは全国で〇・三二%でございます。この程度の状況でありましたら現段階として問題だということではないとは思っておりますけれども、今後状況は注視しなきゃいけないと思います。  なお、仮に受け手から賃料の支払がなかった場合には、農地バンクは支払の催促、受け手に返済計画を出させるなど回収努力を行うということですが、その際の弁護士の相談費用等は国の予算で措置をしているところでございます。  それから、事務量につきましては、これはまた取り扱う面積が増えてきますと事務をどうするかということは地域の機構からも意見が出てきているところでございます。これにつきましては、手続の簡素化というのを今回の改正でもいたしましたけれども、今回の改正にとどまることなく、これは継続的に事務の簡素化というのを地域の機構の意見を聞きながらやっていくとともに、やはり国の姿勢を示す意味でも、そういう業務の効率化を前提として、事業を進める上で必要な事務費については国の予算としても確保していくという考え方でございます。
  126. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 農地中間管理機構の財務状況について少し伺います。  協力金基金の執行状況、基金残高。基金はそれぞれ各都道府県レベルで国から交付されて、それが基金となっているんですかね。ちょっと私、資料を調べたんだけど、いまいちその辺の仕組みがよく分かっていないんですが、基金がどうなっているのか、その執行状況。  つまり、農地バンクが機能して、集約が進めば基金は執行されるわけだけれども、その執行状況と基金残高、そして、今後その基金はどのように取り扱われていくのか、その辺を御説明ください。
  127. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) まず、機構集積協力金交付事業につきましては、平成二十五年の補正予算から二十七年度までに各県に造成した基金、これは国の予算を使いながら造成した基金を活用しまして各県でまず基金を執行してきたわけですけれども、基金が地域によっては足りなくなっている例もございまして、それについては別途国の補助金を措置してやっているということで、基金と補助金をセットでこの事業を運用しているわけでございます。  基金の造成額につきましては、現在、平成二十七年度までに五百四十三億円、全国で造成をいたしました。そのうち、平成二十九年度まではデータがあるんですけれども、平成二十九年度までに四百五十三億円を執行いたしまして、二十九年度末の基金残高は九十億円というふうになってございます。これに加えて、補助金は、ここでいきますと、二十九年当初予算までで百四十六億程度措置をしているというところもございます。こういう状況でございます。  今後でございますけれども、令和元年度予算におきましても、補助金措置しておりますけれども、その措置した補助金と残っております基金を併せて活用しながらこの協力金交付事業を執行してまいりたいというように考えてございます。
  128. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 じゃ、基金はもう積み増すということはないということなんですか。もう使い切る。
  129. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) 予算は単年度主義でございますので、将来のことまでどうするかとまで確約的にはお話しできませんけど、現在においては、基金をまず積むという予算というよりも、足りない分を補助金で併せて執行するという考え方でございます。
  130. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 この農地中間管理機構は、何かスタートするときに相当いろんな話があり、機能しないんじゃないか。結局、でも、今回いろいろ調べてみますと、やっぱり当事者能力がないというか、いきなり各県に一つぽんとできたとしても、その地域の話合いのコーディネーターもいなければ、集積のためのそういう手足もいなければ、結局、実際には各地域の農協、自治体、市町村ですよね、そこが一生懸命やって地域をまとめている。  また、そこに農協、それから農業委員会、そういう地域を守ってきた、新潟の場合は土地改良区が結構この農地の集積に力を発揮しておりますけれども、地域の中で実際に農村を守ってきたそういう方たちがコミットしなければ、そもそもこの農地バンク自体が、何と言ったらいいんでしょう、当事者能力がないというか、何のためにつくったのということが改めて今問われているんだろうというふうに思います。  輸出もいいんですよ。もうかる農業もいいんですよ。でも、やはりその前に農村を守る、そして食料安全保障を確立する、自給率をしっかりと一〇〇%までに高める、こういう基本的な国を守るというところをまずやった上で、そしてこの自由化がどんどん進むわけですから、それと同じくらいというか、それ以上にやっぱり農業を守るというところにもっとウエートを置いてしっかりやらなければならない。そういう意味では、官邸農政でもう真逆のことをこの数年間やってきて、今ここに来て、やっぱり話合いの場をつくらないと何も進みませんみたいな、何をやっているのかなというふうに思います。  ということで、まだ質問あるんですけれども、豚コレラについて確認しておきたいと思います。  豚コレラ終息の見通し、どう考えているんでしょうか。アフリカ豚コレラ感染が拡大しております。大臣もG20農相会合で提案をされたそうでございますけれども、アフリカ豚コレラの脅威に対する、みんなで取り組むということについて。しかし、我が国の国内のこの豚コレラ、もう九か月、十か月たとうとしているのに終息もおぼつかないと。そして、拡大疫学チームの検証の現状について詳しい資料を出していただくことになっておりますけれども、まだ来ておりません。一体何をやっているんでしょうか。  豚コレラ終息の見通し、ワクチン投与のタイミングなどについてお答えください。
  131. 新井ゆたか

    政府参考人新井ゆたか君) まず、疫学チームの調査状況についてお話をさせていただきたいと思います。  四月十一日の農水委におきまして先生からいただきました三月二十六日の拡大豚コレラ疫学調査チームの概要につきましては、十三日に提出をさせていただいたというふうに理解をしておりますけれども、まだ不十分ということであればまたということだというふうに理解をしております。  その中で、前回、国の職員あるいは都道府県の家畜衛生の職員が立ち入ったものが感染の経路の一つとしてなっているのではないかということがございまして、特に十一例目、十二例目につきまして、その中でのお話をさせていただきたいというふうにまずは思っております。  十一例目につきましては、職員たちが立ち入ったという事実を感染経路として肯定的な材料とした上で、二つの否定的な材料を書いているということでございます。それから十二例目につきましては、家畜衛生保健所の職員が立入検査を行い、全ての豚舎からの合計三十頭を採取をして検査をしたということで感染が起こったことは否定できないということで、報告書では丸ということでございましたが、その後、発生豚の摘発を受けまして、実際に検査したところ、多くの豚舎で抗体が陰性だったということでございます。  このような中、疫学調査チーム長からは、仮に家畜保健衛生所による立入検査の感染が原因であれば豚舎への立入り順に抗体陽性豚が多く確認されるというはずでありましたが、そうではないということで、家畜原因とは断定できないというような結論をされているところでございます。  疫学調査につきましては、来週の二十一日、その後のウイルスの詳細な遺伝子の分析というのも出てまいりましたので、そこで二十二例目までにつきましてまとめて専門家の検討を仰ぎたいというふうに考えているところでございます。  それから、アフリカ豚コレラの水際対策につきましても、四月二十二日から水際の対策の強化をいたしました。それに加えまして、各空港でのいろいろなキャンペーン、あるいは税関と協力したいろいろな対応ということで、これも強化をしていきたいというふうに思っているところでございます。  豚コレラの終息の見通しでございますけれども、飼養衛生管理の基準の遵守、それから感染した野生イノシシからのウイルスの侵入リスクの低減という、この二つが基本というふうに考えておりまして、両方をきちんと進めていくということで、今後も国が前面に立って蔓延防止と経営再開に向けて総合的な対策を講じていきたいというように考えております。
  132. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 大臣豚コレラの終息ですけれども、このままいきますと一年たっても道半ばという、またアベノミクスと一緒ですけど、そういうふうになってしまいますよ。一年以内になのか十か月以内になのか、終息の目標を強く立てないと、だらだらともう一年近くになりつつあるんですよ。もう異常なことじゃないんですか、これ。何か、いつまでに終息させますぐらいな、そういうのがないといけないんじゃないでしょうか。
  133. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) この終息に関しましては、いついつまでにと私が発するということは重要なことかもしれませんけれども、ただ一方では、特に愛知県もそうでありますが、岐阜県ももちろんそうでありますけれども、野生イノシシの対策というものがございます。この野生イノシシからのウイルス侵入リスクというのが、これを最大限防いでいかなければなりませんので、これに対しましての経口ワクチンですとかそういったことの対策も打ち出してまいりました。  そういう関係があって、いついつまでにということをなかなか申し上げられない、そのことは大変私自身も憂慮いたしているところでございまするけれども、いずれにいたしましても、今局長から答弁をさせましたように、この飼養衛生管理基準の遵守が最も重要でありまして、これを徹底をしていくということ、さらには、早期出荷の促進による空舎期間の設定ですとか、空舎期間中のハード、ソフトの支援ですとか、経営再開のための母豚の再導入の支援ですとか、そういったことをしっかりと両県と相談をしながら、今も提案をいたしておりまするけれども、間もなくこの提案に対しての両県の対応というものも出てまいりますので、そういったことを含めて、極めて私は憂慮いたしておりますので、これからもこの終息に向けて最大限努力をしてまいりたいと存じます。
  134. 堂故茂

    委員長(堂故茂君) 時間が参りました。
  135. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 はい、終わります。終わりますが、何やっているんですか、安倍政権、安倍農政。民主党政権が悪夢だった、四か月で口蹄疫終息させましたよ。もう一年になるんですよ、豚コレラ、ということを申し上げて質問を終わります。  あっ、責任取ってもらわなきゃいけないですよ。新しいほかの県に伝播したら、もう大臣は辞めなきゃいけないですよということを申し上げて、終わります。
  136. 堂故茂

    委員長(堂故茂君) 午後一時三十分に再開することとし、休憩いたします。    午後零時二十四分休憩      ─────・─────    午後一時三十分開会
  137. 堂故茂

    委員長(堂故茂君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、礒崎陽輔君委員辞任され、その補欠として長峯誠君が選任されました。     ─────────────
  138. 堂故茂

    委員長(堂故茂君) 休憩前に引き続き、農地中間管理事業推進に関する法律等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  139. 里見隆治

    ○里見隆治君 公明党の里見隆治でございます。  まず、法案の質疑に入る前に、G20の農業担当大臣会合について一問だけお伺いをしたいと思います。  まず、吉川大臣、先週末のG20農業担当大臣会合、大変お疲れさまでございました。世界の人口増に対応した食料生産の実現に向け、生産性向上などの取組について認識を共有したと。非常に大きなテーマで議長として大臣がリーダーシップを果たされたということでございます。私もうれしく思っております。  その中で、この農相会合と相前後して、中国、韓国など各国とのバイ会談もされたと伺っておりまして、特に私、前から本委員会でもお願いをしておりまして、また取り上げさせていただいております豚コレラ、そしてアフリカ豚コレラの感染防止対策についても大臣が自ら提起をしてリードされていると、大変有り難く思っております。  今回の成果について、特にこの感染防止対策の関連で、大臣から、その成果について、またその意義についてお伺いをしたいと思います。
  140. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 今般のG20新潟農業大臣会合におきまして、欧州、また東アジアで発生が拡大をしておりますアフリカ豚コレラにつきまして、私から、アフリカ豚コレラは今やもう世界的な脅威でもあり、情報共有の強化や、また国際獣疫事務局OIE等国際機関への協力などを通じて国際社会が一致団結して対処することが重要であると申し上げました。参加国から賛同が得られましたとともに、その点が閣僚宣言に盛り込まれまして、採択もされたところでございます。  また、中国、フランス、韓国との二国間会談におきましても、各国におけるアフリカ豚コレラへの対応状況や、また旅客への違法な持込み防止等について意見交換も行わせていただいたところでございます。各国で協力して対応していくことの重要性につきまして、認識も共有をさせていただきました。  引き続き、周辺国のアフリカ豚コレラの発生状況に鑑みまして、我が国におきましては、不法持込みへの厳格化等による水際での摘発強化及び飼養衛生管理基準の遵守の徹底等による農場へのウイルス侵入防止策の強化に万全を期するとともに、G20加盟国及び国際機関との連携も更に図ってまいりたいと存じております。
  141. 里見隆治

    ○里見隆治君 ありがとうございます。  国内対策についてはまた改めての機会取りますけれども、この根絶に向けて更なるお取組、お願いをしておきたいと思います。  それでは、法改正、法案についての質問に入りたいと思います。  本法律、これは五年後の見直しということでございます。平成二十六年度から、農地中間管理機構への期待として、これは政府が掲げられております二〇二三年に担い手の利用面積を八割という、そうした目標を掲げられ、その役割をこの機構に期待していたということであったと思います。  今日、午前中も農地面積の話がございました。面積も重要なポイントでございます。そのうちどれぐらいが、何割が担い手により利用されているか、その割合、これも重要な指標と考えます。  この集積目標、今どこまで達成されていますでしょうか。
  142. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) 担い手への農地集積の状況でございますけれども、平成二十九年度にこれが五五・二%ということになっております。
  143. 里見隆治

    ○里見隆治君 これは、目標は八割ということで掲げてきたと、そして二十九年度末で五五・二%という、まだ開きがある状況でございます。  これまでどのようなお取組をされてきたのか、また、この機構がどのような役割を果たしてきたのか、それを政府としてどう評価しているか、その点をお伺いいたします。
  144. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) 平成二十五年が機構が発足する直前ということでございますけれども、その直前四年間を見ますと、平成二十一年の担い手への農地集積は四八・〇%、平成二十五年は四八・七%ということで、四年間で〇・七%の増加にとどまっていたわけでございます。平成二十五年から平成二十九年までは四八・七%から五五・二%ということで、農地バンクを設立し、必要な支援措置を行うということでこの集積率を上げていこうと、八割目標に向かって上げていこうということを二十五年、二十六年辺りに決断をしたわけですけれども、その数字だけから見ますと、その成果は一定程度上がったのではないかなと思っておりますが、他方で、ここ二年間を見ますと、一番伸びたのが平成二十六年から二十七年、これが五〇・三から五二・三ということで二%の増加だったわけですが、二十七年から二十八年の増加率は一・七%、二十八年から二十九年にかけては一・二%と、その増加の伸びが鈍ってきているということでございます。  この分析といたしまして、今回の五年後見直しの際にいろいろな数字を見まして考えましたところ、我々としては、幾つか論点ありますけど、一番大きいのはやはり地域の話合い、これが、既に機運があった平場の水田地帯の活用が一巡し、今後新たに進めていくところでは話合いから始める地域が多くなっていると。これを典型的に示しますのは、集落営農法人への農地バンクからの転貸面積、これが二十七年度に約三万ヘクタールございましたのが、それが一万三千ヘクタールぐらいに二十八年度、二十九年度は半減しているということで、やはり集落営農があったところは機運があったんだろうと、それが落ちているというのが顕著に表れているわけです。集落営農法人以外への転貸面積は上がったり下がったりはしていますけれども、その集落法人への転貸面積のように顕著には変わっていないところでございます。  ですので、今回の見直しにおきましては、地域の話合いというのを何よりもやはりこれから重要視していくべきだろうというふうに考えている次第でございます。
  145. 里見隆治

    ○里見隆治君 今御答弁をいただいた地域の話合い、これ、法律を制定したときからその観点は与野党共に指摘をされていた点だろうと思います。そこがこの五年間の実績を踏まえてある程度現実に根差したものに近づいているということは、私は評価をしたいと思います。  その上で、この地域の話合いというのはまた後ほど人・農地プラン等で触れますけれども、今回、特に二十六年度から二十七年度にかけてはある程度増えたけれども、最近、この三年程度、二年程度鈍化しているということでございます。そうした中での今回の法改正かと思います。これは集積率ということでお話をしましたけれども、もう一点重要なのが集約化という点であろうかと思います。  私どもも、本委員会で四月下旬に栃木県の足利市にお伺いをし、そして好事例ということで御紹介いただきましたけれども、集約化の好事例も非常に地域の農業委員会委員の皆さん頑張っていただいているということでございました。  集約化という点でこの法律目的に立ち返りますと、農地の利用の効率化、高度化、そういう推進であれば、この集積以外の、分散の解消、集約を進める必要があります。この集約化というのは非常に数字的にも捉えづらい概念でありまして、余り農水省から何か数字的なことが見えにくい、御説明をいただきにくいという印象を持っておりますけれども、この集約化状況、また実績をどのように把握をし、また評価をされているのか、お伺いしたいと思います。
  146. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) 委員指摘のとおり、農地バンクの目的は集積にとどまるものではございませんで、農地バンクがまず分散、錯綜している農地を取りあえず一手に借り受けまして、必要なら条件整備等を行いながら、長期間農地バンクが借りている中で事情がいろいろ変わってくると、で、担い手同士の農地を交換するなどによりましてまとまった形で担い手の方に農地を使っていただく、これが最終的目標でございます。  そういうところに向けまして、委員の御指摘のように、じゃ数字的なものはということなんですが、これにつきましては衆議院の農林水産委員会で御議論いただいたときもあったわけですけれども、我々としては、まず集約の数字を見ていくということがありまして、集約については、サンプル的なものしか今のところではお示しできていなかったところでございます。その点も御指摘を附帯決議の形でいただきまして、これは早急に研究しなければいけないと思っております。  現在の集約の状況把握につきましては、やはりいい事例を幾つか取り上げた上で、それを公表しまして、多くの方に見ていただいて横展開を図るという手法を取っております。  一つだけ御説明をいたしますと、福井県の越前市におきましては、市や地区内の農業法人等とともに地域の話合いを継続的に進めながら、二年間で農地バンクの配分計画を十二回公告をしたと。これは、要するに事情があるたびに農地バンクが転貸先を変えたということですが、最終的には地区内農地の八割が一つの集落営農と一人の担い手に集約されたというような事例もございまして、これを積極的に横展開するように今努めているところでございます。
  147. 里見隆治

    ○里見隆治君 ありがとうございます。  好事例の横展開、これはもちろんのことですけれども、やはり目標設定をし、そしてそれに向けてあらゆる施策を駆使していくというサイクルの中で、やはり何らかの数値化、これは必要だと思います。既に衆議院でも附帯決議があるということでしたけれども、是非これは早急に研究をし、研究にとどまらず実現を何らかの形でしていただきたいと、そのことを御要望しておきます。  その上で、大臣にお伺いをしたいと思います。  これは、数字だけで見ますとまだ順調に進んでいるとは必ずしも言えない、そういう状況の中で、この今までの五年間、それをどのように評価をして、そしてこの法改正にどのようにつなげてこられたのか、また、今後この法改正によりこの中間管理事業をどういった方向にお持ちいただこうと考えているのか、大臣の御見解をお伺いいたします。
  148. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 平成二十六年の農地バンク創設以来、担い手への農地の集積状況が四八・七%から平成二十九年度には五五・二%に上昇はしたものの、近年、集積率の伸びが鈍っていることは事実でございます。これは、もう既に農地の集積、集約化の機運があった平場の水田地帯での取組が一巡をしたためと思われます。新たに地域の話合いから始めなければならない地域が多くなってきていることによるものであろうかと思います。  今回の見直しのポイントでありますけれども、このような新たに地域の話合いを活性化させるという課題に対処するため、農地バンクとJA、農業委員会など、地域でコーディネーター役を担ってきた組織とが一体となって農地集約化のための地域の話合いを推進していくことであろうかと存じております。
  149. 里見隆治

    ○里見隆治君 今、まさに県単位の中間管理事業と、そして地域の話合い、これをうまくつなげていくんだというお話でございました。  私は愛知県の選出でございますけれども、実は、愛知県はこの前から存在しておりました農地利用集積円滑化事業、これ非常に積極的に進めてまいりましたので、ほかの道府県でいいますと、北海道、栃木、長野、新潟などと並んで、この農地利用集積円滑化事業においては相対的に高い実績を示しております。  それがゆえに、昨年、この中間管理事業についての見直し案が出ましたところ、地元の農業関係者の皆さん、やや戸惑いを感じておられたというのが正直なところです。自分たちはこうやってしっかり集積をしているじゃないかと、何も後から出てきた新しい団体にそんな余計なことをやってもらわなくていいんだと、そんな言われ方をする方もお見えでございます。そうした中で、今回、これをどちらかを廃止とかいうことではなく、うまく統合していこうと、一体化していこうという、そういう御趣旨だというふうに思います。  そこで、大臣にお伺いをしたいと思いますけれども、何か現場で円滑化事業をしっかり頑張ってきたのにという、そんな思いをお持ちの方に、これ別に決して否定するものではないと思いますので、この円滑化事業の果たしてきた役割、これをどのように評価をされているのか、また今回、その円滑化事業と中間管理事業との統合一体化、これをどういった目的でされようとしているのか、その点、大臣から御答弁いただきたいと思います。
  150. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 農地利用集積円滑化事業の実績は、農地バンク創設以降、ピーク時の三分の一程度まで今減少いたしております。全国的には農地バンク事業への移行が進んでいるものと思われます。  一方、一部の道県におきましては、特色ある取組を行い、現在でも担い手への農地の集積ですとか集約化に寄与しているものと認識もいたしております。今、里見委員指摘をされました御地元愛知県におきましては、円滑化団体であるJAが米、麦、大豆のブロックローテーションに配慮した形で担い手への農地集積に係る土地利用調整を実施している顕著な例もございます。  このため、今回の見直しにおきましては、このような実績ある団体が農地バンクの配分計画案を作成できることとする等によりまして、旧円滑化団体の事業農地バンクの事業として実施できるようにすることといたしております。これによりまして、利用権等の特定を求める農地のリストが県段階で統一をされて、担い手農家にとっても利用する農地集約化のチャンスが更に広がるものと考えているところでございます。
  151. 里見隆治

    ○里見隆治君 そうした意味で、今御答弁お伺いしておりますと、これまでの円滑化団体の役割を否定するものではないということでしょうし、今後もしっかりとその役割を担っていただくということだと思います。  そこで、これ統合一体化だというのはある程度理解は進んでいるんですけれども、制度改正後やや戸惑いがありまして、円滑化団体として集積円滑化事業としても続けられますよと、ただ、こちらに、中間管理事業に乗ってもいいですよと、そういう選択肢を与えられているわけですけれども、実際には、もう様々なインセンティブもありますから、この中間管理事業に移行していくという御希望も多いように聞いております。  そうした中で、地域でこれまで利用調整を行っていた、今大臣答弁いただいたJAなどの地域の取組に支障が出てこないように、また、何か打ち切られるものではないと、継続性があるんだということを改めて確認をしたいと思います。  これは局長からで結構でございますが、改正法の施行に当たって、経過措置等を含めてどのように御配慮をいただけるのか、その点、お教えいただきたいと思います。
  152. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) お答えいたします。  今回の見直しの中で、一部の地域、道県におきまして、大臣が御説明になりましたように、特色のある取組を行っていただいている、それが農地の利用集積につながっているというところについて、いかにしてその方々のプライドなりやる気をそぐことのないように、かつ、この農地の仕事、仲介する仕事というのがあっちではこれがやり、こっちではこれがやりということになかなかならないように、全体として体系立って一体的にできるようにということが一番意を尽くしたと思っているところでございまして、特に愛知県におきましては、私自身を始めといたしまして、経営局の審議官、担当課長、担当室長が相次いで愛知県のJAに赴き、あるいは東京でお迎えし、それで意見交換をして案を作ってきたというふうに考えてございます。  先ほど大臣お話にありましたこの配分計画の原案を作ることができるようにするというアイデアも、このいろいろな話合いの中から生まれてきたものだというふうに理解しております。  加えまして、やはり一気に変わっていくということではなかなか御理解も進まないと思いましたので、この権利義務を引き継ぐ期間については経過期間を三年ほど置くとか、長期の期間を置くということを始めとして、経過措置、それから対象地域についても同じようにするようにするとか、そういうことをやっております。  実は、法律案ができた後もそういうようなもっと細部に至るまでの議論を行っているところでございます。例えば、円滑化事業、県の事業で機構の事業に一体化するとしても、せっかく特色あるブロックローテーション等の取組、これ機構ではなかなかできませんので、そのブロックローテーションの取組をどうやったら続けられるか、それはこの農協という名前がいいのか、あるいは機構の名前がいいのか、あるいは違う名前がいいのかとか、そういう議論をさせていただいたりもしておりますし、今まで円滑化団体としては手数料を取っていたと、これが仕事の質を高めていた面もありますので、これをどうしていくか、委託料の形で解決していくのか、そうでないのかなど、そういう細部に至るまで現場の意見を聞きながら今詰めているところでございます。
  153. 里見隆治

    ○里見隆治君 今お話がありましたとおり、やはり今回の改正のポイントは、県一元化ではなくて地域というところに光を当てるということですから、何かこの中間管理事業に全部糾合するんだというよりも、地域地域の自主性というか、それぞれが誇りを持って動いていただけるような、そうした御配慮をお願いしたいと思います。  この実務のレベルですけれども、様々な費用面、また手間においての御懸念の声もございます。  例えば、私がいただいた御意見としては、統合一体化に当たって農地の権利関係を機構に切り替える移行手続において手間や費用の面で現場の負担とならないようにこれを簡便にしてほしいですとか、あるいは、現行契約を途中契約して機構に移行すると、本来なら改めて登記簿謄本を取ったり手間や費用が掛かるのではないかと。  これ、どこまで実際の手間暇、費用が掛かるかというのはまた実際いろいろと御説明いただかなければなりませんけれども、こうした意見も伺っておりますので、是非現場には丁寧な対応をお願いしたいと思います。この点、いかがでしょうか。
  154. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) お答えいたします。  先ほど委員指摘の点につきましても、団体からの要望もございまして、今回の法律案の附則の第四条第一項におきまして、この権利義務を円滑化団体から農地バンクに一括して承継できるという規定を設けているところでございます。これは、個別に円滑化団体が現在農業者等と結んでおられます現契約を個別に解約して改めて農地バンクと契約を結び直すということになりますと、御懸念のとおり手続が非常に煩雑になりますので、こういう公告による一括承継という形で、そこを簡素化したところでございます。ただ、これについては、移行期間は先ほどお話ししたとおり十分準備しながらやるということで、三年間一括継承できる期間を余裕を持っているところでございます。  その他の点につきましても、今後とも、現場の意見も伺いながら、移行手続の簡素化に努めてまいりたいというふうに考えてございます。
  155. 里見隆治

    ○里見隆治君 次に、新規就農の支援についてお伺いをしたいと思います。  そもそも、我が国農業生産をしっかり維持そして拡大をしていくという点においては、新規参入者、新規就農者確保、これは先ほど来諸先生からお話があったとおりでございます。また、農地の配分計画においても新規就農の視点が大変重要だと考えます。  ただ、新規就農者、当初の様々な、農水省等で御支援をいただいている資金確保、研修、こうした準備はいただいておりますけれども、かといって準備を終えたらすぐ農業に従事できるかというと、必ずしもそうではないということを耳にしております。新規就農の確保耕作放棄の防止などのために、新規就農のタイミングに合わせて農地確保が望ましいというふうに考えます。  まず、これは事実関係をお伺いしますけれども、機構の転貸先として新規就農者の実績どのようになっているか、お伺いいたします。
  156. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) 着実に増えているというふうに認識しております。  まず、制度がスタートした平成二十六年度については年間百二経営体、七十ヘクタール程度が農地バンクを通じて新規就農した実績でスタートしたわけですが、その後年々増加いたしまして、平成二十九年度におきましては、単年度で六百六十四経営体、約千五百ヘクタールの農地新規就農者に転貸されました。この四年間を合計いたしますと、千六百経営体に三千四百ヘクタールの農地新規就農者に転貸されたところでございます。
  157. 里見隆治

    ○里見隆治君 ある程度増えてきているということですけれども、やはりこれはもう桁違いに増やしていかなければ維持ができないというのが認識だろうと思います。  その上で、これは大臣にお伺いをしますけれども、新規就農者のための農地確保という観点でどのような方策が考えられるか、非常にこれは、今回の法律案にかかわらず、もっと広い観点で、大きな政策観点から大臣にお伺いをしたいと思います。
  158. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) ただいま大澤局長から、年々増加をしておりまして、この四年間で合計一千六百経営体に約三千四百ヘクタールの農地を転貸しているとお答えをさせていただきましたが、この新規就農者への農地あっせんが更に円滑に行われるよう、私ども農林水産省といたしましても昨年十月に通知を発出をいたしまして、農地バンクに対して、新規就農相談センター等の関係機関からの情報収集を常に行い、研修生の意向を踏まえながら、あらかじめ農地確保するよう指導をいたしたところでございます。実際に、静岡県ですとか大分県におきまして、新規就農者向けの研修後、円滑に農地確保できるよう、関係機関と連携をして農地の中間保有も進めていく取組が見られているところでもございます。  こうした取組を通じまして、農地バンクを通じた切れ目のない新規就農の促進を進めてまいりたいと考えております。
  159. 里見隆治

    ○里見隆治君 この新規就農という関連で、報道等でもちらほら出ておりますけれども、農業次世代人材投資事業の予算、これは我々も与党としてしっかりチェックをしておりますけれども、昨年度に比べて一割減額だと、百五十四億。これは、昨年度百七十五億から一割以上減額だということでいろいろと自治体で波紋を呼んでいるというような報道がございます。ただ、一方で、政府として支給対象年齢を原則四十五歳未満から五十歳未満に引き上げるとか、非常に期待をされている事業でもございます。  これ、よくよく説明を聞けばなるほどという点もありますので、これは単純に総額が減ったということだけ見ると、何か次世代人材投資後ろ向きなのかというふうにも見えますけれども、なぜ減っているのか、ここはしっかりと御説明をいただく必要があると思います。いかがでしょうか。
  160. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) 今年度の予算の減額の理由でございますけれども、幾つかございますが、一つは、交付三年目に、これは過去の改正で行われたのですが、新規就農者につきましては、地元の事業体や農業関係者による中間評価を実施して、経営が順調に発展している場合には、これは元々は五年間資金を交付される可能性がある事業でございますけれども、早期に卒業するということで、最大百五十万円の経営発展支援金を支払った上で早期に支援を終了するというパターンができました。逆に、経営の継続が三年たってもなかなかこれは難しいんじゃないかというふうに判断を地元の自治体等がされる場合には、農業の断念をアドバイスすると、こういう取組を行うということにしているわけでございます。  これに伴う所要額の変更、あるいは、就農準備段階の研修の事業につきまして、先進農家で研修をしていた部分があるんですけれども、これがかえって、研修だからいいやということで労働時間を余り過重に見積もりながらやってきた例というのも散見されることから、やはり農の雇用事業の中で労働基準もしっかりした上でやっていただこうということで、この先進農家での研修支援を農の雇用事業に移行したわけでございますが、それに伴う所要額の減少、こういうものを見込んで所要の減額となったわけでございます。  典型的に支援を必要とされる方々、最初、まず生活資金が足りない、支援が必要だという方々が徐々にスキルを上げながら五年間この資金を交付するというパターンについては、これまでどおり交付ができるように措置しているわけでございます。そういうことにつきまして、減額の原因、あるいは制度の改善内容等々、現場への説明は丁寧に行ってまいりたいというふうに考えてございます。
  161. 里見隆治

    ○里見隆治君 もう時間ですので終わりますけれども、単に減額をしたというところだけ見ますと非常に後ろ向きに見えますが、そうしたことを丁寧に御説明をいただきたいと思います。  時間が参りましたので、以上で終わります。ありがとうございました。
  162. 儀間光男

    ○儀間光男君 維希の儀間でございます。  農地中間管理事業推進に関する法律等の一部を改正する法律案について質疑をさせていただきます。  この法律が施行されていわゆる五年になるわけで、五年見直しという法律の規定がありまして、それにのっとっての今回の改正案だという認識をいたしております。そういう中で、これまでの管理機構の事業推進等を見てまいりますというと、都道府県別の担い手への農地集積率は、朝からの質問でお答え出ていましたけれども、平成二十九年度で五五・二%を数字が示しております。また、都道府県別で見ると、集積が進んでいる地域と集積率の非常に悪い地域というふうに大別ができるんですね。  そこでちょっと確認も含めて問いたいんですが、集積率が悪い府県で集積が思うように進まなかった要因、あるいはその要因に対する対策は今後どうするのかということについてお答えいただきたいと思います。
  163. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) 御指摘のとおり、この担い手への農地の集積率につきましては、県ごとに、地域ごとに大きな差が見られるところでございます。  北海道のように元々農業経営体の多くが担い手である地域、それから水田率が比較的高い東北、北陸地方においては農地集積が進んでおりますが、進んでいないところにつきましてはいろいろな理由がございますけれども、概してやはり中山間地の占める割合が高い地域、これは中国、四国地方あるいは近畿地方でございます。あるいは、大都市圏を抱える関東、東海地方、こういうところにつきましては農地集積が遅れているといった状況でございます。委員の御地元の沖縄につきましては、加えまして、島嶼部ということもありまして、不在村地主の農地、相続未登記農地を抱えるということ、あるいはサトウキビでは作業委託がむしろ中心になっていると、このような複合的な要因もございまして、その集積率が低いということになってございます。  ここにつきましての方策としては、やはり地域ごとに対策を考えていく、あるいは作物ごとにも考えていくということが一番の、遠い道であるように見えますけれども、やはり近道ではないかなというふうに考えております。  ということで、そういうこともありまして、今回の見直しでは、人・農地プランの作成に向けた地域の徹底した話合い、こういうものを徹底させていくというようなことで、平野委員の御質問の際にも言及させていただきました地図を活用するということで皆さんの現状認識を共有し、新しい方向に向かっての議論を始めていただくと。それを予算面で裏打ちするために、例えば中山間地域の優先枠をつくりましたり、事業活用における農地の最低集積要件を平場と比べて五分の一に緩和すると。そのほか、品目ごとに話合いの場が人・農地プランの話合いの場と少し違う場合には、その品目対策の中での話合いをやっていただくというようなことも盛り込んでおります。  そのような措置を総合的に組み合わせながら、地域ごとの特性に応じた農地集積、集約化の取組を行ってまいりたいというふうに考えてございます。
  164. 儀間光男

    ○儀間光男君 よく理解できたわけですが。  これ、施行当初から今の件は非常に心配されたわけですよ。中山間地は出し手がおっても受け手がなかなかつかまらない。これは非常に経営条件として環境悪いから、担い手も少ない中で更に受け手が少ない、これは当初から予想されておったことで、当初からまた地域で徹底して話合いをすべきであるというようなこと等も議論されたように記憶をいたしております。  これ、二十六年施行前から、議論の段階から、繰り返しになるんですが、私は、それぞれ都道府県の首長、あるいはその下にあって事業を一緒になって推進する市町村長、その人々の姿勢でもっていろいろ格差が生じてくると予想できたんですね。これも何度か言ってまいりましたが、積極的な首長と、まあ適当にという首長と、何とかなるさの首長、ケセラセラですよ、その三タイプがあって、その三タイプによって大きく変わってくるんです。変わってきて、その影響を受けるのは末端の農家、お百姓さんなんですね。だから、そこに格差が生ずるということは、日本の農家、農民、農村に格差を提供してしまうというようなこと等がありますから、これは徹底して格差のない、出ないような方法を考えぬといかぬと思うんですね。そうですね。  だから、それは農地機構も大事だし、それから集積円滑化の組織も大事でございますけれど、今までは機構だけでやってきたんですが、円滑化団体も含めて、対策の方法あるやなしや、どのように考えていらっしゃいますか。
  165. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) 機構を設立以来、いろいろな方々から、農地バンクについての支援は充実しているけれども円滑化団体への支援はないという、もうちょっと地域の実情に合わせるべきじゃないかという御指摘をいただいたこともございます。  我々の今回の解決方法は、せっかく機構を中心に補助事業を充実する体系もできましたし、あるいは相続未登記農地の問題の対応についても措置されたわけですので、今回、特に担い手の方が農地集約化するということになりますと、やはり間に立っていらっしゃる組織の方々がそれぞれ農地のリストを持っていると、農地集約化、担い手の立場に立っても、なかなかいかないんじゃないかということを考えまして、今回については、全体を統合一体化する中で、そういういろいろな支援をこの農地バンクを通じて行うことの一体化することによりまして、農地バンクに関わる支援措置も結果的に使えるようにしようという形で考えているところでございますので、今回の見直しの結果、いろいろなルートを通じた農地の集積という動きが、ある意味で統一的な観点、集積、集約化を進めるという観点からいろいろ機能していくことになるということを期待しているところでございます。
  166. 儀間光男

    ○儀間光男君 つまり、機構と円滑化団体、この二団体を一つにして運営していこうと、こういう認識でいいんですか。
  167. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) お答えいたします。  団体として機構とJAが統合するということは全く想定しておりませんけれども、機能として、例えばJAで、円滑化団体でしっかりやっておられた方々が、今まで農地を調整をしていたものを、これを機構に結び付けることによって、農地の、ある意味でリストとしては統一していくという、担い手にとってどういうふうに農地を使っていくかという考え方については統一していくということでございます。  団体としては、団体の組織を変えるということではなくて、機能を統合するという考え方でございます。
  168. 儀間光男

    ○儀間光男君 分かりました。  しかし、異論がないわけじゃないんですが、時間との関係で次へ進みたいと思います。  本当に、平野先生も、森先生もだったかな、農地面積減少の話が午前中出ました。同じような心配をするんですね。農地面積が年々減っていくわけですよ。この十年間で二百万ヘクタール以上が減っているということで今四百四十四万ヘクタールぐらいだと、こうおっしゃるんですが、毎年毎年これが減っていく状況の中で農地集積率を上げる、これについては全く異論はないのでありますが、毎年毎年減っていく農地面積、これが減れば集積率が上がっていくのは当たり前の話ですね。しっかりしたものは捉えられないと思うんですよ。減る率と上げる率、これを比較検討して適正化をどこに求めるかが農政のあるべき姿だと思うんですね。  ここには、ただ、その集積率を上げていこうと。ところが、私は、分母が、面積が減っていくから集積率は上がったみたいであるけど、分母が減っていくとその成果は余り変わらないということが考えられるんですね。そういう面に対する認識はどういうふうにお持ちなのか。
  169. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) 集積率の計算方法について、まずお答えを技術的にいたします。  今回のその数字でお示ししております担い手への農地の集積率、これにつきましてはその耕地面積をベースに計算しております。これは最も一般的な数字として使うという観点で使ってございますので、毎年農地面積あるいは耕作面積が減っているので、数字を黙っていても上がるだろうということを意図してやっているわけでは全くございません。そこの部分は、いずれにしろ目標を非常に高く置いておりますので、そういう趨勢も別にして、もうともかく担い手に集めていこうという形の、目標を立てる際の一番一般的に農地関係で使われている数字として用いているだけでございまして、自動的に上がるということを意図しているわけではございません。
  170. 儀間光男

    ○儀間光男君 これも含めまして、皆さん、二〇二三年でしたか、に八割を担い手でシェアさせていこうと、五五・二%をね、いうようなことをやっていて、この数字なかなか大変だと思うんですが、これちょっと前に戻った感じがしますけど、二〇二三年、令和五年までに八割まで上げていこうということですが、これはなかなか今のこれまでの経緯を見るというと厳しいような状況がするんですが、その目標値の正当性というか、これを聞きたいのと同時に、今のものに関連して、一方では、政府は農林水産物の貿易輸出、二〇三〇年まで五兆円にしようというんですね。五兆円にしよう、別の目標があるんですよ。  それとの整合性を少し聞きたいんですが、五兆円にするには、これから十年で五兆円へ貿易を持っていこうとするんですが、今の状況では、もう革命的な技術の革新、単収をアップする、革命的にアップする、あるいは耕地面積を革命的に広げる、確保する、そういう営みがないと、五兆円外国に配りながら、国内の食料自給率、それも高める、しかも来年はオリンピックがあって農林水産物需要がうんと高まる。そんなような中で、毎年五千億ずつを積み上げていって十年後に五兆円ということになるんですが、農地面積減少と集積率とのこの関わり、整合性を一体どう求めていくか、見解を賜りたいなと、こう思います。
  171. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) まず、その担い手八割目標についての評価について私の方からお答えをさせていただきます。  これ、現在の数字は五五・二%ということで、二〇二三年に八割を集積するためには、やはり相当程度事業を加速化しなければならないというふうに思っております。他方で、今の農業者の高齢化、減少状況を見ますと、やはり今後、相当程度の農業者が高齢のためリタイアするという可能性は高いと思っております。そういう中で、農業が持続的に発展するためには、一刻も早く担い手が相当程度の農地を使いやすい形で利用していく必要があるというふうに考えています。  そういう中で、仮に目標達成が厳しいので何か見直すということになりますと、生産現場に誤ったメッセージを送ることになりかねないというふうに考えておりまして、そういう意味で担い手八割目標については、大変厳しい目標ではございますけれども、今回の改善措置を講じた上で、更なる農地集約、集積に取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。
  172. 儀間光男

    ○儀間光男君 五兆円との整合性については、大臣、将来も含めて見解いただきたいと思います。
  173. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 我が国の農産物の輸出を大幅に拡大するためには、単収の向上も含めまして、生産コストの低減というものも図っていくことが重要であろうかと思います。  農林水産省におきましては、収量性に優れた品種の開発に積極的に取り組みますとともに、特に労働力不足に対応しつつ生産性を飛躍的に向上させるべく、スマート農業による経営革新を推進しているところでもございます。  平成三十年度の第二次補正予算及び今年度の予算におきまして、ロボット、AI、IoT等の先端技術を生産現場に導入をいたしまして、生産から出荷まで一貫した体系として実証する取組なども支援をすることといたしております。  こうした取組によりまして、スマート農業の技術的な課題をクリアしていきますとともに、コスト削減などの経営改善も効果を明らかにすることで、このスマート農業の社会実装も加速化をいたしますし、輸出促進に向けて我が国農業全体の生産性向上も図ってまいりたいと、このように考えております。
  174. 儀間光男

    ○儀間光男君 大臣、僕、おっしゃることは分からぬでもないんですが、この数字が現実と余りにも懸け離れていると思うんですよ。だから、さっき局長からの、現場に失望感を与えちゃいかぬから高い数字をそのまま維持するとおっしゃったけど、実現の見通しのない数字をずっと最後まで現場に示していても、逆に落差が強くてショックが強いと思うんですね。やっぱり適当な時期に、何というんですか、予測する中で、見直し等も早めに現場に伝えて、いろんなことをやっていかぬといかぬのではないか。  特に強調したいのは、五兆円の貿易達成と、今三十数%しかやっていない自給率。これ、五兆円だと、今の現状で国内を回る物流を全部貿易へ持っていかなきゃならないぐらいの膨大な数字なんですよ。しかもさっき言ったように、毎年毎年耕地面積は減っていくというような中で、さっき言いました爆発的な、いや、革命的な生産革命というか技術革命がないと、それと爆発的な農地面積確保がないと、この数字、なかなか整合性持てない。  五兆円と国内供給、量にしても額にしても本当にどう思いますかね。もう一度、心のうちを聞かせていただきたいと思います。
  175. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 輸出の促進の一兆円を今掲げておりまして、去年、九千六十八億まで参りました。そういう中にありまして、この一兆円の目標を今年は何としてもクリアをしていきたいなと考えております。  一方で、少子高齢化で国内の食市場の規模は今後縮小すると見込まれる一方で、世界に目を向けますと、アジアを中心に食市場の規模は大きく拡大すると見込まれているところでもございます。国内のマーケットに加えまして海外のマーケットが獲得できれば、その分、国内の生産も拡大をいたしますし、食料自給率を押し上げる方向に働くことが期待されますことから、輸出拡大とこの自給率の向上は矛盾するものではないと、このように思っておりますが、引き続き、農林水産物食品の輸出拡大に向けましては、海外での需要拡大、輸出拠点の整備ですとか、諸外国の輸入規制の撤廃、緩和に向けました働きかけ等も進めながら、将来の目標におきましては、今後政府全体におきましても慎重に目標を掲げていくということにもなろうかと思いますので、私どももしっかりと目標に向けて、今申し上げましたようなことの施策を展開をしながら頑張っていくということであろうかと思います。
  176. 儀間光男

    ○儀間光男君 ありがとうございます。そうおっしゃるから、期待しますということにしか最後はならないんですが。  現実考えても、人口も増えて世界市場の需要が大きくなっていく、これはよく分かります。ところが、日本耕地面積のキャパはそんな極端に増えるという予想はできないんですね、できないんです。ですから、おっしゃるような生産高を確保して、しかも為替との競争で五兆円と額も確保してということに果たしてなるんだろうか。その中で国内需要を三九%から、いつまでですか、四五%まで引き上げたいという、中ではその面積は減っていくという。くどいようですが、この整合性がどうしても私の中では納得できない、整理できないんですね。  本当にできるとお思いですか、決意のほどを。いや、希望的なものはいいとして、それは、そうですか、頑張ってくださいとしか言いようがないんですが、ところが今現実を捉えてみるとそこはなかなか難しいというふうに認識するわけですね。それについて、いま一度、僕を説得してくれませんか。
  177. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) なかなか儀間先生を説得するのは難しいかなと、こう思っておりまするけれども、是非御理解をいただきたいなと思いますのは、まずは一兆円の目標を達成をいたしたいという、そういう思いでございます。  今後の新たな目標につきましては、ただいまも申し上げましたように、輸出拡大に向けて、海外での需要拡大ですとか輸出拠点の整備ですとか、また諸外国の輸入規制の撤廃、緩和に向けた働きかけ等を進めてまいりたいと思いますし、世界に目を向けて、先ほども申し上げましたけれども、アジアを中心に食市場の規模というのは大きく拡大すると見込まれております。人口も九十億を想定されるなど、様々な課題がこれからございまするけれども、しっかりとこの目標に向かって私どもは今進めていきたいと考えておりますが、先ほども申し上げましたように、この一兆円超の新たな目標に関しましては、今後また政府を挙げてどのような目標にするかということを打ち出さなければなりませんので、今はその程度のお答えで恐縮でございますが、これで儀間先生を説得できたかどうかというのは私自身も多少疑問に残っておりまするけれども、これからもしっかり説得ができますように頑張らせていただきたいと思います。
  178. 儀間光男

    ○儀間光男君 理解はできましたけど、納得はしていません。次へ移りたいんですが、どうぞそういうことで努力目標達成に頑張っていただきたいと思います。  時間がないので最後の質問になりますので、一つ飛ばして、農地集積バンクについて少し聞いてみたいと思います。  識者の中で、農地機構は失敗だったと、都道府県で一つだから、それを市町村にまで持っていくべきだと。まさに、衆議院の立憲民主党でしたか、そういう論調で議論されておりましたが、なるほどなと思えるところもあるんですが、そこを市町村へ行くと、今度は人的な充足と行政経費の増、持ち出しの増等が出てくるのではないかというような、市町村財政についての心配がされないわけでもないんですが、その辺をどう御理解していただいているかお聞かせください。最後になると思います。
  179. 堂故茂

    委員長(堂故茂君) 時間が来ておりますので、簡潔に答弁願います。
  180. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) まず今回、農地バンクをやめて市町村に事業を移管するわけではございませんので、念のため申し上げておきます。  今回の見直しにおきましては、やはり市町村のレベルでの方々とコーディネーター機能をしっかり連携していこうということでございますが、それにつきましてはやはり資金面での行政経費の確保ということも大事でございます。  今回の見直しに当たりましては、今度、人・農地プランで重要な役割を果たしていただきたいと期待しております農業委員会につきましては、その人・農地プランの作成に必要なアンケート、地図作成への支援、こういうものを予算措置しております。あるいは、JA、旧円滑化団体については、例えばこの農地中間管理機構事業事業推進費の中で、農地バンクからの業務委託費を支援対象としているところでございます。このような予算を有効に活用しながら推進してまいりたいというふうに考えてございます。
  181. 儀間光男

    ○儀間光男君 終わります。ありがとうございました。
  182. 紙智子

    ○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。  農地中間管理機構法の改正案についてお聞きします。  農地バンクができて五年になります。二〇一三年に閣議決定した日本再興戦略で、二〇二三年に全農地面積の八割を担い手に集積する目標を立てました。二〇一七年の到達が五五・二%ということですから、これは目標に遠く及んでおりません。  農林水産省は、地域の話合いが低調であるということや機構と地域のつながりが弱いなどという分析をしておりますけれども、これは現場を置き去りにした政策決定やこの中間管理機構法のスキームに問題があったのではありませんか。
  183. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 平成二十六年の農地バンク創設以来、担い手への農地の集積状況、先ほどから議論がありまするけれども、四八・七%から平成二十九年度には五五・二%に上昇をいたしましたものの、近年、集積率の伸びが鈍っていることも事実でございます。これ、既に農地の集積、集約化の機運がありました平場の水田地帯での取組が一巡をいたしまして、新たに地域の話合いから始めなければならない地域が多くなってきていることによるものでございます。  今回の見直しにおきましては、このような新たに地域の話合いを活性化させるという課題に対処するために、農地バンクとJA、農業委員会など、地域でコーディネーター役を担ってきました組織とが一体となって農地集約化のための地域の話合いを推進していくためのものでございます。  なお、農地バンクにつきましては、創設当初から、農地の集積、集約化推進方法として人・農地プランを法制化をしたり、配分計画の案を市町村が作成可能としたりをいたしまして、地域のつながりを重視したスキームを取ってきたところではございます。  今回の見直しは同じ方向性の中での更なる強化措置だと考えておりまして、従来の方向性を百八十度転換したものではないと考えているところでございます。
  184. 紙智子

    ○紙智子君 農地中間管理機構と地域や農家とのコミュニケーションをどう図るのかということを考えたときに、今回の改正に当たっては農業委員会や農協の役割が大切だということで反省をしたということでしょうか。
  185. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 反省をしたというよりも、いろいろな御指摘等々には真摯に耳を傾けて、今回の見直しの方向性というものをしっかりと打ち出してきたところでございまして、先ほども申し上げましたとおり、従来の方向性を百八十度転換したものとは考えておりません。
  186. 紙智子

    ○紙智子君 反省をしたということかなというふうに受け止めました。  それで、二〇一三年に、産業競争力会議や規制改革会議を旗振り役にして、農地の中間的な受皿を整備することを決めて、短期間に当時法律を可決しました。振り返りますと、成長戦略である日本再興戦略を六月に閣議決定をして、秋にはもう法案を国会に提出して、会期末のぎりぎりにこれ採択を強行したんですね。  今回の改正では、地域の話合いの再活性化を図ると。活性化ではなくて再活性化という表現を使っているわけですけれども、トップダウンで、これ、現場の意見を聞かない安倍官邸農政が行き詰まりつつあるというように思うんです。  そこで、農林水産省は、今回の見直しに当たって、地域の話合いを再活性化するんだということで宣伝をしてきているということもありますから、良くなるのかなというふうに思う人が多いと思うんですね。果たして本当にそうなんだろうかというふうに思って見ていると、これ、農地中間管理機構をつくった本質的なところというのは変わっていないんですよね。  つまり、農地中間管理機構法に三つの目的があります。一つ農業経営の規模を拡大すること、二つ目は農用地の集団化を図ること、三つ目に新規参入を図ることとなっているんですね。特にこの新規参入を促進する規定を作ったというのが、実はこの中間管理機構の大きな特徴だというように言えると思うんです。  基本的なことをお聞きするんですけれども、農外から新規に参入したいというように思うと、どうすればこれは農地を借りることができるんでしょうか。局長
  187. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) お答えいたします。  農地バンクの場合についての御質問と受け止めまして、御説明をいたします。  今後、農地の利用について、まず地域の話合いを進めると、これが大事だとずっと言っております。地域内で担い手が見付からない場合、地域の外の農業者等の経営ノウハウを活用したい場合、こういうときにこの農地バンクを使うということがあり得ると考えております。  具体的には、農外から新規参入したい法人は、まず農地バンクの行う借受け公募に応募するということをやっていただく必要がございます。その後、農地バンクにおきまして、県や市と連携しまして、参入を希望する法人と新規参入を進めたい地域とのマッチングを行うというようなプロセスになってきております。  一つ例を挙げさせていただきますと、山梨県北杜市におきましては、市、県、農地バンクが担い手が不足している地域において住民の意向を積極的に酌み取ると同時に、参入を希望する法人の掘り起こしを進め、醸造用ブドウ栽培を行うワインメーカーの新規参入につなげた、こういう事例もございます。
  188. 紙智子

    ○紙智子君 公募するということですよね、外から入る場合は。  それで、規制改革会議は、農業の外からの参入者を不利にならないように、農業者と公平に扱うように求めて、この公募方式を導入したんですよね。ですから、農外からの参入状況を、これ法人数それから経営面積、活動実態についてどうなっているかということを報告いただきたいと思います。
  189. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) お答えいたします。  平等に扱うということと同じような数字が出るということは必ずしも同じではないと思っておりますけれども、御質問のものにつきましては、平成二十九年度から農地バンクとして悉皆調査を行いまして、農地の転貸を受けた個人又は法人の状況を調べているところでございます。  これによりますと、平成二十九年度において、農外から参入した法人につきましては、転貸を受けた法人数は百四件、これは農地バンクが扱っている転貸を受けた個人も含めますと二万九千九十五件でございますので、農外から参入した法人については全体の〇・四%でございます。それから、その法人の転貸面積につきましては二百十五・四ヘクタール、これは農外じゃない法人とか個人とか全部入れた数字ですが、全体の〇・五%ということでございます。  経営の実態というのはなかなか、こういう統計では、まだ一年しか調査しておりませんのでなかなか出ておりませんけど、先ほどお話ししたような事例を基に我々としては把握しているところでございます。
  190. 紙智子

    ○紙智子君 数字はそういう形で今出てくるんですけれども、実態についてはなかなかつかめないということなんですけど、何でつかめないのかなというふうに思うんですよね。  それで、やっぱり新規参入というのは農地バンクの目玉なんだと思うんですけれども、そうであればやっぱり実態についても明らかにすべきじゃないんでしょうか。
  191. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) 農地バンクの本来、確かにこの再配分の中でしっかりした担い手であるということは大事だと思っておりますので、仮に、この改正前も改正後もそうですけれども、ちゃんと農地が使われていないとかそういう状況があった場合には農業委員会等を通じましてそれを指導していくと、こういう役割は取っておりますけれども、例えば売上げがどうかというのを悉皆調査するというのは、今のところまだ行っていないところでございます。  問題意識としては、どういう形で、単なる事例でなくて、いい状況、経営状況というのをお示ししていくかというのは課題としては持ち帰らせていただきたいと思います。
  192. 紙智子

    ○紙智子君 やっぱり目玉として入れた以上は、ちゃんと一年であってもきちっと把握して、それでこうこうこういう状況になっているということは当然報告してしかるべきだと思うんですよ。そういうのも出さないまま審議を進めてくださいというのでは、やっぱり審議する前提が整わないということになるんじゃないですか。
  193. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) 農外から参入した企業の事例、これにつきましては、農外から参入した事例以外も含めまして、毎年、農地バンクの優良事例という形で年間十件から二十件の事例を示させていただいているところでございますので、全く何もお示ししていないというわけではございません。  そういう中で、さらに、どういう形で、より改善された形でお示しできるのかと、これについては持ち帰らせていただきたいと考えてございます。
  194. 紙智子

    ○紙智子君 やっぱり優良事例だけじゃなくて、ありのままの実態でどうなっているのかということを指し示すべきだと思うんですよね。やっぱりそのことをきちっとやるべきだということを改めて指摘をしておきたいと思います。  今回、新たに認定農業者制度を拡充するということになっているんですけれども、認定農業者を市町村単位にした理由をまずは説明いただきたいと思います。
  195. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) 認定農業者制度につきましては、平成五年の基盤強化法の改正においてできた制度だと認識しておりますけれども、これにつきましては、その創設当時の農業経営の実態を見ますと、同一市町村の区域内で営農する農業者が大半であったと、そういう農業構造であったということを踏まえまして、やはり経営の継続性あるいは農地の利用調整等の適切性、こういうものについては市町村単位で判断することが適切であろうということで市町村認定としたというふうに理解してございます。
  196. 紙智子

    ○紙智子君 改正案では、複数の市町村で活動する場合には都道府県知事が認定をすると、それから、都道府県の区域を越える場合、この場合は農林水産大臣が認定するというふうになっているわけですよね。  広域で活動する場合は、これ地域地続きでなくてもいいというふうに聞いていますが、九州から北、北海道まで広域で農業経営する経営者を農林水産省が認定農業者と認めるということができるということですか。
  197. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) 今回の新しく創設いたします、都道府県、国が認定を行う場合におきまして、営農する地域が地続きであることは求めておりませんので、離れた複数の地域で営農を行う場合であっても認定を受けることは可能でございます。  ただし、これは国、県と認定をする際には市町村の意見を聞くようなところもございますので、あくまで基本は市町村認定に置いた上で、その事務を、複数市町村にまたがる事務を国又は県が代行、代行といいますか、処理するという考え方で制度ができているというふうに理解しております。
  198. 紙智子

    ○紙智子君 聞いたことというのは、要するに、日本でいうと、言ったように、九州から北海道まで含めてつながって認めるということで、できるんですねということで、基本そうだということですよね。  それで、確認しますけれども、例えばタマネギを生産する農業ファーム、例えば、ここは永田町なんですけれども、永田町ファームというのがあるとするとします。そうすると、このファームが農林水産省から認定農業者の資格を取得して、長崎から淡路島、愛知県、北海道と、タマネギを生産して、農協を通さずにスーパーなどの大手の量販店に出荷することは可能になるんでしょうか。
  199. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) 永田町を所管しております千代田区が認定農業者制度としてまず道を開いていまして、その認定基準に従っている必要があります。それが、ほかの地域で行う場合には、それぞれの地域の認定基準に従っている必要があります。その上で、今先生がおっしゃったようなことは可能かどうかと問われましたら、それは可能でございます。
  200. 紙智子

    ○紙智子君 可能であるということになるわけですね。  それで、農協を通すかどうかというのは認定農業者次第ということでもあると思うんですけれども、全国をこうやって股に掛けて活動する認定農業者が生まれる可能性があるということですよね。農業をビジネスとして転換していくアグリビジネスの大きなツールになるんじゃないかというふうに思うんです。地域で頑張って、農協を通じて出荷している家族農業にとっては、これ競争を迫られることになるというふうにも思うんですね。  それで、加えてお聞きしますけれども、認定農業者である農地所有適格法人、この役員要件が今回緩和されるんだけれども、その内容について説明をしていただきたいと思います。
  201. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) この特例につきましては、既存の今いらっしゃる農業者からの要望に基づくものでございまして、いろいろ子会社を設立したりほかの法人に出資したりして、グループ全体として経営発展をしたいという農業者の方がいらっしゃいまして、その中で、グループ会社間で役員を兼務しやすくしてほしいという要望がございました。  これを踏まえて今回措置するわけですけれども、具体的には、まず、既に認定農業者となっている農地所有適格法人、これは、農外、まだ農業を始めていない方は、ですから対象になりません。その子会社が、兼務する役員が親会社の農業に常時従事しているという場合に、当該役員が子会社の農業にも一定期間従事することをこの子会社の方が作る農業経営改善計画に記載して、その市町村の認定を受けると、こういう要件を満たした場合に、認定計画に従って農地法農業常時従事要件が緩和されると、こういう仕組みでございます。
  202. 紙智子

    ○紙智子君 今説明があって、その上で、常時従事条件という話があったんですけれども、常時従事者というのはどういう人をいうのでしょうか。
  203. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) これは幾つか要件がございますけど、典型的な要件は、農地法上、その法人の行う事業に年間百五十日以上常時する者であることということでございます。
  204. 紙智子

    ○紙智子君 今百五十日以上ということだけをお話しされたんですけれども、これ、常時従事者って、一般的に言うと、私なんかも最初そうだったんですけど、農作業する、常時そういうことに関わる人というふうに思っていたんだけど、実際上は、農作業というのは切り分けてあって、田んぼに出て耕うんや整地や水管理などを行う直接的な作業をする人を農作業に従事するという人だと思うんですけれども、常時従事者という言い方は、これ、企画管理事務だとか例えば労務管理とか財務管理を行う人をいうということでよろしいんでしょうか、その理解でよろしいんでしょうか。
  205. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) お答えいたします。  農業には、農作業のほか、労務管理、市場開拓等が含まれます。さらに、その法人が生産した農畜産物の加工販売等の関連事業も含まれます。
  206. 紙智子

    ○紙智子君 もうちょっと分かりやすく説明してほしいんですけれども、常時従事者というのは、企画管理事務だとか労務管理とか財務管理、こういうのを行う人をいうんじゃないんでしょうか。
  207. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) 御指摘のとおりでございます。
  208. 紙智子

    ○紙智子君 実は、これ意外と誤解している人が多いなと思っていて、そういうことなんですよね。  それで、やっぱりアグリビジネスを展開する法人の役員がこの財務管理をやったり、例えば日本人だけじゃなくて外国人労働者の労務管理を行うということも可能になるというふうに考えていいんでしょうか。
  209. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) 農業が、まあアグリビジネスという、先生の使われている言葉にどういう意味合いが込められているのか必ずしも承知しておりませんけれども、一般的に言いまして、農業が発展していきますと、やはり雇用者も必要になってまいります。特に今回、現時点のように、農業者が全体として高齢化、人口減少という中では、そういうことは農業の発展といいますか維持をしていくだけでも必要になってきている場合があると思います。それから、農作物をしっかりした評価を受けて自分の努力に見合った価格で売りたいという場合には、やはりその販売管理、こういうものも非常に大事になってくると思います。  農業というのは、今そういう中でいろいろな形で発展してきているということでございますので、農地法もそういうものに対応して、この常時従事するというのは、単に農作業をするということではなくて、様々な形でその法人の農業を盛り立てていこうと、こういう様々な作業を含むものというふうに我々は考えてございます。
  210. 紙智子

    ○紙智子君 今回の改正で、全国で広域に農業経営を展開する認定農業者の制度をつくるということですよね。さらに、この法人の常時従事要件を緩和すると。これは、新規の参入を促進する上で、最初に三点の目的言いましたけれども、その目的にもかなった方向なんだろうなというふうに思うんです。  それは、農業法人に参加をして、まあアグリビジネスがどういう意味かという話もあったんですけれども、やっぱりビジネスとして取り組んでいくという、企業化してやっていこうというところが多く出てくると思うんですけれども、それを転換していく企業が利用しやすく、活用しやすくしていくということでは新たなツールになるということも言えるんじゃないんでしょうか。
  211. 大澤誠

    政府参考人大澤誠君) 先ほども御説明いたしましたとおり、今回の特例については、その要望してきた方が別に農外の方ではございませんで、農業をしっかりやっておられる方々でございます。実際にどういう事例があったかというのも我々もヒアリングをさせていただきましたけれども、ある県で稲作農業をやっておられます。特定の販路、作り方、販路ということについてその会社のブランドを確立しております。他方で、ほかの県で集落営農をずっと続けておられたんですけれども、なかなかオペレーターの確保が難しいであるとか、このままであるとなかなか経営の次の方向性が見出せないということで、その販路を特定に持っておられるということを捉まえて話合いが行われ、その集落営農の方々が法人化した上で、その特定の販路を持っておられる元気のいい法人の方々の役員を受け入れると、それによって共存共栄を図っていこうと、こういう例だったわけでございます。  そうなりますと、やはり既存の農業者と合意なしにそういう役員に無理やり入るということは当然できませんので、そうやって既存の農業者を押しのけるというよりも、その状況に応じて、合意の下にグループ化というのは行われてくるんだろうなと、そういうことを我々は期待しているわけでございます。  それから、先ほども申しましたとおり、この対象となる親会社につきましては、既に農業を本格的に行っていらっしゃる認定農業者に限定しております。ですので、先生のおっしゃるとおり、農外参入の促進を目的として要件を緩和したということではございませんし、親会社の方では常時従事百五十日という要件は引き続き生きているわけでございますから、それに加えて、その子会社の方で一定程度従事していただくという考え方でございますので、全体として見て、我々の意図として、例えば農外参入を促進するとか新しいツールを提供するとか、そういうことは想定していないところでございます。
  212. 紙智子

    ○紙智子君 今、押しのけてまでやるとかというんじゃなくて共存共栄でやるんだという、発展のためにという話が、それを期待しているという話があって、それはみんな期待はするわけですけれども、だけど、最初にちょっと紹介したように、規制改革会議農業の外からの参入者をやっぱり競争条件としてはちゃんと公平になるようにしなきゃいけないんだとかということも含めて議論の上に立って進んできたということを考えますと、やっぱりそういう心配も拭えない面はあるわけです。  それで、全国展開する農業法人の経営がもし行き詰まったり撤退した場合には、これは農地や農村というのはどうなるんでしょうか。これ、大臣にお聞きしたいなと思います。
  213. 吉川貴盛

    国務大臣吉川貴盛君) 今回の見直しにつきましては、利用状況報告を廃止をいたしますが、農地が適正に管理されていない場合には、農業委員会農地バンクに報告することとしております。このため、農地の利用状況を適正に把握することが引き続き可能となっているところでもございます。  農外から参入した法人が撤退をして農地が適正に利用されないケースにつきましては、農業委員会の報告に基づき農地バンクはその契約を解除することとなっておりまして、農地バンクに一旦農地が戻ってくることとなります。この場合、農地バンクは速やかに新たな担い手を探すとともに、担い手が見付かるまでの間、農地を適正に管理をすることといたしているところでございます。
  214. 堂故茂

    委員長(堂故茂君) 申合せの時間が参っておりますので、おまとめください。
  215. 紙智子

    ○紙智子君 新たな担い手が見付かるまではもしかすると塩漬け状態になるかもしれないなというふうにも思います。  安倍総理が、企業が世界で一番活躍しやすい国にするということで企業の参入や大規模化ということを進めてきたわけで、その具体化が農地中間バンクなんですけれども、今回の改正はその路線を更に推進していくものだろうと、家族農業を中心とした農業や農村の再生よりも農業のアグリビジネスを重視するものになるんじゃないかということを指摘して、質問を終わります。
  216. 堂故茂

    委員長(堂故茂君) 暫時休憩いたします。    午後二時五十三分休憩      ─────・─────    午後二時五十八分開会
  217. 堂故茂

    委員長(堂故茂君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、朝日健太郎君が委員辞任され、その補欠としてこやり隆史君が選任されました。     ─────────────
  218. 堂故茂

    委員長(堂故茂君) 休憩前に引き続き、農地中間管理事業推進に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、参考人として公益社団法人秋田県農業公社理事長佐藤博君、紀ノ川農業協同組合組合長理事宇田篤弘君及び東京大学大学院農学生命科学研究科教授安藤光義君に御出席をいただいております。  この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。  ただいま議題となっております法律案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を頂戴したいと存じますので、よろしくお願いいたします。  本日の議事の進め方について御説明いたします。  まず、佐藤参考人、宇田参考人、安藤参考人の順序でお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、各委員質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっておりますので、よろしくお願いいたします。  それでは、佐藤参考人からお願いいたします。佐藤参考人
  219. 佐藤博

    参考人(佐藤博君) 御紹介いただきました秋田県農業公社の佐藤でございます。  まずもって、参議院の農林水産委員先生方には、日頃から当公社の業務推進並びに当県の農政推進に多大なる御指導、御支援を賜っておりまして、この場をお借りして厚く御礼申し上げたいと思います。  本日は、農地中間管理機構の見直し法案の審議に当たりまして、現場で事業推進を担っております機構の立場から意見を申し上げたいと思いますけれども、前段、配付しております資料等を御覧いただきながら、当公社の取組状況について若干お話ししたいと思っておりますので、御了承願いたいと思います。  当公社は、平成十二年に六つの農業関係団体が統合いたしまして発足して、今年で二十年目を迎えます。年々業務の幅が広がっておりまして、現在は大きく分けて、新規就農や六次産業化のサポート、園芸種苗の供給等の農業振興部門、それから肉用牛振興や特産の比内地鶏の素びな供給等の畜産部門、そして中間管理事業等を中心とした農地管理部門、この三つの分野の業務を職員約九十名で行っております。  機構の組織体制につきましては、配付資料の一ページの上段の方に記載のとおりでございますけれども、特徴的な点を申し上げますと、発足当初から基盤整備との連携が不可欠といった考えから農地改良課を設けたこと、それから、きめ細かな活動を進めるために県北と県南に駐在所を置いたこと、そして、この駐在所を含めまして現場に精通した市町村やJAのOB等有為な人材を大いに活用させてもらっていることでございます。  関係機関、団体との連携につきましては、この一ページの下段の方にありますように、左の方ですね、県の本庁段階、出先段階に推進チームを設置しまして、構成機関、団体それぞれの得意技を生かしながらオール秋田で進めております。  今般の見直しを機に、機構を中心に関係する組織が連携を強めて、一体となって集積、集約化を進めていく体制を整えることの重要性が言われておりますけれども、当県ではある程度その下地ができてきているのではないかと思ってございます。  こうした体制の下で進めてきた五年間の取組を概括しますと、次のページ、二ページの方にありますように、様々な問題は抱えてはおります。そうした中でも、担い手への集積面積が累計で約一万三千五百ヘクタール、計の下段のところですね。このうち新規の集積が約七千ヘクタール。担い手への集積率、これは三十年は含めていません、二十九年度までの分でございますけれども、七ポイント上昇しまして約七四%と、一定の実績を上げることができたと考えてございます。  また、この二ページの下段にありますように、事業を利用した受け手の方々、担い手の方々ですけれども、この評価も、これ本県の独自のアンケート調査でございますけれども、おおむね肯定的な回答となってございます。  こうした実績を確保できた要因、背景といたしましては、四つほど挙げられると思ってございます。まず一つは、先ほど申し上げましたように、市町村、農業委員会、JA、土地改良区など関係機関の協力を得ることができ、事業推進の体制が整っていたこと。二つ目が、これも先ほど申し上げましたけれども、県北、県南への駐在所の設置や、それからモデル地区への現地相談員、これ現在三十四名ほど配置してございます。現場に近いところの機動力、推進力の強化に意を用いてきたこと。三つ目が、これ資料三の方に写真を載せてございますけれども、現地研修会の開催ですとか、それからマスメディアを使ったPR、それと、一番右の下の方にありますように、地元説明会ですとか出張相談会の開催。これは、農家五名集まってもらえれば、いつでもどこでも夜でも行きますよ、伺いますよと、これをモットーにしまして昨年度は二百六十二回現場に出向いたものでありまして、こうした形で様々な機会を捉えて地道にきめ細かな周知に努めてきたこと。  最後の四つ目でございますけれども、資料四ページの方に、次のページにありますように、土地改良サイドとの強力なタッグ、これを組んできたことが挙げられると思います。様々ありますけれども、その中身につきましては、基盤整備と機構を中心とした農地集積、それと園芸メガ団地の整備、これを三位一体で行う、当県の方ではあきた型圃場整備と言っていますけれども、これを強力に進めてきたことですとか、それから、七十五の土地改良区ありますけれども、このうち二十五の土地改良区に業務委託をお願いしているというふうなところでございます。  そういった実績の一方で、五年の取組を通じまして、当県においても、これは資料の五ページの中段の方に記載してございますけれども、中山間地域での集積をいかに進めるのかとか、それから、集積はある程度進んだんだけれども集約化にはまだなかなか至っていないねといったことですとか、さらには、今後増大する事務量をいかにして効率よく対応するかなど、こういった課題が浮き彫りになってきてございます。  こうした状況を踏まえまして、当公社といたしましても、今般の国における五年後見直しに向けまして、これまで様々な機会を通じて国やそれから全国協会に対しまして現場からの提案、要望を出させていただきましたけれども、結論から申し上げまして、その多くが今回の見直し法案並びに関連予算に盛り込まれているということで、評価するものでございます。  以下、この五ページの一番最後のところに①から③まで見直しの柱ごとに意見を若干述べてみたいと思います。  まず、地域の話合いの活性化とその成果としての人・農地プランの実質化についてでございます。  申し上げるまでもなく、農地の集積、集約化は、地域の話合いと合意が基本にないと前に進みません。その意味で、今般の見直しに当たりまして、改めてそうした話合いを促す具体の仕組みですとかそれから段取りというものを明確化したことは、理にかなったもの、的を射たものであろうというふうに考えます。  本県では、先ほど申し上げましたように、土地改良サイドとタッグを組んで圃場整備事業と集積を一体で進めてきておりますけれども、この圃場整備事業採択されて工事が完了するまでには、それこそ何十回となく地域の農家が集まりまして、将来の営農についてけんけんごうごうの話合いが行われます。その話合いの過程で、農地の出し手は誰なのか、受け手は誰になるのか、それから受け手となる集落型の法人の運営をじゃどうするのかということが決まり、将来の設計図であるプランがやはり実のあるものになるんだというふうに思ってございます。  問題は、こうした圃場整備地区以外の地域で、どの組織がプレーヤーとなり、どういった段取りで、何をインセンティブに農家に集まってもらって話合いを促すのか、プランを実質化していくのかということでございます。  幸い、本県では、一ページのところにもちょっと記載させてもらいましたけれども、中段ぐらいですね、平成二十九年度から、あきた農地利用最適化推進一・二・三運動というものを展開してございます。内容は、農業委員、最適化推進委員の一人一人が市町村と二人三脚で三つのステップを踏んで活動を行うというものでございまして、この三つのステップというのは、アンケート調査の実施と、それから人・農地プランの見直しと、それと中間管理事業を活用したマッチング、集積の推進でありまして、まさに今回の見直しの目指すところにつながっていく取組ではなかろうかというふうに思ってございます。  そうした意味からも、この度、農業委員会が地域の話合いのコーディネーター役としてしっかり法的に位置付けられたことは評価したいというふうに思います。  また、資料四ページ、ちょっと戻りまして、資料四の一番下のところに事例として載せてございますけれども、地域によっては、土地改良区が主体となって市町村とうまく連携を取りながら、必要に応じて簡易な基盤整備も組み合わせて、さらには、本年度新たに創設された協力金の集約化タイプ、こうしたものも活用しながら農地の更なる集積と集約化を進めることも有効であると思ってございます。  要すれば、地域の実情に応じて、機構と市町村が司令塔となって、これに農業委員会ですとかJAですとか土地改良区をプレーヤーとして組み入れて、集積の土台づくりに向けて一体となってアイドリングしていくことが肝要というふうに考えてございます。  この取組、その地域の話合いの活性化ですとかプランの実質化ですね、こうした取組はほかの見直しの事項と違って力業で何とかなるものではございませんので、やっぱり十分な成果を得るには多分時間も掛かると思いますが、機構といたしましても地道に粘り強く取り組んでまいりたいというふうに思ってございます。  次に、二つ目の機構の仕組み、事務手続の改善でございます。  利用者側から見ますと、これまで機構事業はちょっと手間と時間が少し掛かり過ぎだというふうなことで、それが機構事業を敬遠する要因にもなっておりました。今回の改正で集積計画と配分計画の一本化が可能となったこと、それから、担い手の農地利用状況報告、これが廃止されたこと、それから、機構からの業務委託に関しまして知事承認が簡略化されたこと、こうしたことで、利用者はもちろんでございますけれども、我々機構としても事務の簡素化につながる改正で大変有り難く思ってございます。  現在、当県の機構の賃貸借の契約の在庫は、借入れや貸付けを合わせた件数で約一万九千件あります。筆数で十一万五千件に上っております。今後、これらの変更ですとか、場合によっては解約、更新の手続が出てまいります。機構自体も当然事務の簡素化には努めてまいりますけれども、国におかれましては、引き続き不断の見直しを行いながら機構の取組を御支援いただくようにお願いしたいと思います。  最後、三つ目の農地利用集積円滑化事業との統合一体化でございます。  結論から申し上げれば、スムーズに機構事業へ統合一体化することが望ましいというふうに考えてございます。地域で複数の制度が混在し、更新時期もばらばらでは、今後本格的に求められる面的な集約化を図ることは難しく、同じ事業制度の中で一元的、一体的に調整することが担い手の効率的、安定的な経営に資するものというふうに考えてございます。なお、こうした考え方は、機構事業の当県の評価委員会、外部の評価委員会でございますけれども、平成二十九年度の取組に対する意見の際にも提言されていることを申し添えたいと思います。  現在、当県の円滑化団体は二十三、大体市町村とJAが半々ぐらいですけれどもありまして、このうち十七団体で約五千ヘクタール強の貸付けストックを持っておりますけれども、直近の新たな貸付実績は六団体の約三百ヘクタールぐらいにとどまってございます。  かつては農協が集積を主導した地域もございましたけれども、今は農地制度に精通した職員も減少しておりまして、そのノウハウを後継者に引き継いでいくにも、実際のところはやっぱりそこまで手が回らないというのが実態でございます。JAの経営上も、農地は機構に任せて、JAは農業生産の拡大なり農業者の所得向上に注力すべきというふうに認識している幹部がほとんどでございます。また、市町村にあっても、特に広域合併していない町村を中心に、やっぱりマンパワーの不足から職員が一人何役もこなしている状況にありまして、今後この円滑化事業を単独で活発に推進していくにはやっぱり現実的には無理があるというふうに考えてございます。  本県では、既に首長さんなり組合長さん等の理解を得ながら、期間満了を迎えた農地を中心に、随時、円滑化事業から機構事業への付け替えを今進めているところでございます。一方で、円滑化団体の事務をこれまで担っているJAですとか市町村にも、機構からこの中間管理事業の業務を委託しておりまして、統合一体化の素地はおおむね整っているのではないかなというふうに見てございます。  基本的な考え方として今重要なことは、やっぱりJAや市町村が円滑化団体としてこれまで現場で蓄積してきたノウハウ、これをこれからも機構と一体となった取組の中でしっかり生かしてもらうこと、それによって法の目指す担い手の経営の効率化なり生産性の向上なり地域農業の維持発展、こういったものに資するように努めることであろうというふうに思ってございます。  もとより、全国的には、北海道さんですとか愛知県さんのように、現に円滑化事業が主体となって集積が行われている地域もありますので、そうした実績ある円滑化団体が配分計画案を作成できるように法律上配慮したことは妥当な措置であろうというふうに思ってございます。  最後に、私から改めて申し上げるまでもなく、農地政策は農政の中でもとりわけ息の長い永続的な取組が求められます。機構の立場から申し上げれば、農家が先祖伝来守ってきた大事な財産である農地を責任を持ってお預かりして、しかも、それを十年、二十年スパンで担い手に貸し出すことで、その担い手の経営基盤にもやっぱり責任を負うことになるわけです。したがって、今般の見直しも、制度の信頼が損なわれることのないように、また時計の針を戻すような、戻して現場が混乱することのないように、制度の根幹を堅持しつつ、運用面での改善なり改革を図ると、そういった内容であるべきではなかろうかと思ってございます。  当公社といたしましても、今般の見直し法案が可決、成立した際には、その内容を踏まえまして、本年度からを新たなステージ、第二ステージとして位置付けて、関係機関、団体と連携を更に密にして、鋭意事業推進に努めてまいりたいと思ってございます。  私からは、意見、説明は以上でございます。ありがとうございました。
  220. 堂故茂

    委員長(堂故茂君) ありがとうございました。  次に、宇田参考人にお願いします。宇田参考人
  221. 宇田篤弘

    参考人(宇田篤弘君) 和歌山県の紀ノ川農協の組合長をしています宇田といいます。本日はどうもありがとうございます。  少しここへ来るまでの時間がなくて、お手元に資料を配付する準備がちょっとできなかったんですが、私は、地域で農業者もまた農業者でない方も、また消費者も含めて、これからの農業をどういうふうにしていくのかということを一緒に考えていく場をつくっていくということが非常に大事だなということを申し上げたいというふうに思っています。  和歌山の場合は、非常に果樹、果物が中心になっておりますので、正直なところ、この中間管理機構の、何といいますか、関心というか、恐らく、生産者のところに行きますと、ほぼ余り関心がないというふうな状態だと思います。  そのことを少し数字で、お手元に資料を配れればよかったんですが、昨日、私は紀の川市の農業委員もしているんですけれども、その中間管理事業の到達が今どんな状況かということで聞いてきたんですけれども、農地面積が三百七十八・二ヘクタールあるんですけれども、この平成二十六年から二十九年の四年間なんですが、資料をいただきましたら、中間管理事業での使用貸借の面積が二ヘクタールです。それから、賃貸借の方が五・四ヘクタールで、合計で七・四ヘクタールしかないんです。それ以外は利用権設定の方ですが、これが六十五・二ヘクタールということで、それはそれなりに農業委員も頑張ってやっているというふうには思っているんですけれども、この数字を見ていただければ先ほど言わせていただいたことがお分かりいただけるんじゃないかなというふうに思います。  そういう中で、紀ノ川農協の私たちが取り組んでいる事例を少し御紹介させていただきながら、その地域の中でやること、私も実際やってきて非常に大事だなと感じているところをお話しさせていただきたいというふうに思っています。  紀ノ川農協は、いわゆるJAグループさんには属さない販売の専門農協です。和歌山の全域を地区とした販売の専門農協で、生活協同組合さんとの産直を軸とした事業を展開しております。和歌山全域で組合員さんが九百名少しですけれども、ほとんどが紀の川流域のところで、約八割ぐらいの組合員さんが占めています。中には、下津、有田、古座川町の農事組合法人さんが団体加盟をしていただいております。現在、売上高は十七億で、JAさんに比べると非常に小さな事業だとは思うんですけれども、品目は、金額ベースでいいますと、順に、トマト、タマネギ、柿、キウイ、ミカンなど、そういったものを生産していたものを生協産直という形で取り組んでおります。  地域でいいますと、和歌山全体ではミカン、梅、柿、桃、ハッサクというような順位になるんですけれども、産直という関係で、野菜がトップに出てくるような状態になっております。キウイフルーツとかタマネギにつきましては有機JASにも取り組んでおります。かんきつ類、柿、タマネギ等では特別栽培農産物にも取り組んでいます。  近年は、取引先様の要望もありましてグローバルGAPに取り組んだり、恐らく和歌山県では私どもだけではないかなと思うんですけれども、認証の方も取得して取り組んでおります。認証は七名しか今取れていないんですが、徐々に増やしていこうということで取り組んでおります。  今、最大のやっぱり課題は担い手、生産量をどう維持していくかということで、これは私どもだけでなくて県内の生産者みんなの思いではあるんですけれども、そんな中で、非常に悩みながらではあるんですが、持続可能な環境保全型農業をどう発展させるかということを一つテーマにし、また、交流ですね、消費者との交流もあるんですが、今までのような単にその産地、農産物の理解を深めるだけでなくて、人的な交流ですね、耕作放棄地再生するに当たってボランティアで参加していただくみたいな、そういう取組も進めていこうということで今始まっております。生協さんの方はSDGsというような考え方で、そういった耕作放棄地再生課題をそういうようなテーマとして捉えて、最近は参加していただいております。農福連携というような取組もしています。  最後に、担い手の育成というところで、和歌山県知事さんの認証も受けながら、トレーニングファームを今設立しました。また、レンタルハウスということで、初期投資の高いものについて紀ノ川農協が先に施設を建ててお貸しするという仕組みも今始めております。それから、少し変わった取組ですけど、婚活なんかも今取り組んだりしております。現在、二回目やりまして、二組今できました。実は、その二組は、紀ノ川農協は出荷しておりません。一組は組合員さんでもありません。でも、それでもいいんではないかということで、第三回目も今企画しようということで考えております。そういう三つの課題を今進めています。トレーニングファームの方は、今四名、研修が今スタートしたばかりです、今始まったばかりです。今後、年間五名の新規就農者を育てていきたいなというふうに思っています。  先ほども言いましたように、和歌山の場合、非常に果物の生産額が全体の六三%を占めています。全国平均が九%というふうに聞いておりますので、非常に果物の比率が高い。しかも、そこが傾斜地です。それを面的に集約していくというところは、正直なところ、非常に難しく感じています。  お隣の五條というところで柿を圃場整備してやられていますけれども、柿のシーズンのときに来ていただく人を、雇用を継続するために、夏にトマトを生産して、一軒当たりが二ヘクタールぐらいのトマトを生産しているというのがあります。ここのトマトの生産者とは共同して今取組を進めているんですけれども、和歌山の場合、そういう限られた地域では可能かも分かりませんけれども、全県見て考えた場合には非常にそれは困難なことだというふうに考えます。  でも、その中で、地域が持続していけるようにということで、この間、まだまだ小さな取組ではあるんですけれども、地域づくりを今展開をしています。  和歌山県の古座川町というところがあります。関西でも高齢化率が非常に高い地域です。六十五歳以上が七〇%を超えています。それから、八十五歳以上の人口が二〇%の地域です。県の方ともいろいろ相談しながら、ここの地域での過疎対策事業をしようということで、古座川町さんの方は非常に、なかなか大変だということで進まなかったんですけれども、知り合いが県の方にいまして、一緒にやろうということで進めさせてもらったんですけれども、当初は七つの集落、これはずっと内陸の方に入った地域になるんですけれども、区長さんに集まっていただいて、県の支援、国の支援もありますよというお話させてもらったんですけれども、正直なところ、もう遅いという声が出てきました。  そんな中で、ここには古座川ゆず平井の里という事業を展開している法人があります。うちの団体に加盟していた組合員さんでもあるんですけれども、そこの職員さん、理事さん、それから、うちの職員、それから、和歌山大学とはインターンシップの提携をして進めているんですけれども、学生さんも入っていただいて、約五十軒ですね、二百七十四世帯あるんですけど、五十軒の聞き取り調査を行いました。  そんな中から、地域の方から三つの要望が出てきました。その七つの集落の中心にあるところのダムにある桜が物すごく古くなっていて、これを何とかもう一回きれいにしたいという高齢者の方からの要望もありました。あとは、買物が大変だというのもありました。それから、ユズが中心になりますけれども、担い手を育成していきたいということで、移住、定住をもっと促進していきたいという、この三つのことをテーマにして寄り合い会を進めて、知事さん宛てに補助の事業をお願いをして、国と県の事業が今進んでいる最中であります。  このとき非常に感銘を受けたといいますか、八十代のおじいさんがそのダムのところの桜をもっときれいにしたいということを言われたんですが、今この人たちがダムの近くに桜植えても恐らく見れないんですね。でも、今植えないと将来の桜がないということで、私の夢をかなえてほしいというようなことを集会の中でお話しされていました。今、たまたまクマノザクラという新しい品種が学会で発表されまして、それを植えていきたいということで、七十代、八十代のお年寄りの方が早くやろう早くやろうということですごく言われているんですね。非常に議論しながら、非常に僕はエネルギーだというふうに思っているんですけれども、非常に諦めていた集落の方たちが今動き始めたところです。私も正直、最初行ったときはなかなか大変な地域だというふうに思ったんですけれども、完成というのはないというふうに思います。ただ、今頑張っているお年寄りの方たちも元気よく継続していくというところは非常に大事ではないかなというふうに思います。  そんな中で、農地をどうしていくかという議論がされたときに、まだそこまでは行っていないんですが、これからその農地を維持していくことになるんですけれども、以前は、空き家のお話をしたときは全然反応がありませんでした。今、空き家を調べようということで地域の方たちが調査に回っていただいています。今、二つの空き家をリフォームしていただいてお試し住宅というのができました。そんなふうに、今まで非常に諦めていた方たちが寄り合い会をして、みんなで話し合っていく中で動き始めたというところです。大きいなと思ったのは、学生さんなんかが入って、きれいなとこやということをたくさん言われるんですね。すごくきれいだとかね。それから、お年寄りがすごくすてきやって言うんですね、何でもできるって。いろんな技術を持っているということをたくさん言われるんですね。そんな中ですごく元気もいただいたんではないかなと思っています。これが一つ事例です。  もう一つは、私の住んでいる紀の川市のところにも今聞き取り調査をやっております。ここはまだまだ若い方がたくさんいてて、聞き取り調査には紀の川市の職員さんであったりJA紀の里さん、地元の総合農協さんですけれども、職員さんであったりとか私どもの職員、それからまた和歌山大学の学生さんも入って、三百戸ほどありますが、ここは今三十戸、皆さんの意見聞いて、七十五歳ぐらい以上の人に聞き取りしようということで、聞き取りが今終わったところです。この地域は祭りをとにかく残していきたい、これはJAの支所長さんが非常に頑張っています。それから、運動会も取り組んでいますが、そんなものを残していきたいという思いがあります。  そんな中で、将来農業の担い手が非常に高齢化していくので、そこにまた新たに新規就農を迎え入れていきたい、空き家を何とかしたいというふうな声があるんですが、実はこういう話はほとんどできていなかったんです。いろんな機会には、何かしないといけないということは思いながら、お酒の席であったりとか愚痴っぽくお話ししているんですけれども、真剣にこういう議論をする場がほとんどなかったんですね。で、私たちの方からやりませんかというお話と、場合によったら国、県の支援がありますよというようなことを含めて始まったんですね。最終的には県、国の支援なしで自力で取りあえず頑張っていこうという話になったんですけれども、そういう、その地域の中でコーディネートする人がいれば、こんなふうに今まで話合いができなかったところも進んでいくんではないかなと思います。農地だけのお話でなくて、集落全体でどんな将来を設計していくのかということを話し合う場をたくさんつくっていくというところがこれから非常に大事ではないかなと思います。  先ほどの古座川のように、普通でしたら、もう本当に大変ですね、六十五歳以上でも、七十五近いと思います。そういう集落で、実際私もどうしていいかというのはあるんですが、でもやっぱりやってみて、いろいろ結論が出てきて、そこからまた話合いして、みんなで進んでいくということを続けていけば何とかなるというのもあるんではないかなと思っています。  農家の方もそうなんですが、行政の方に対しては、してくれ、やってくれないという話が多いんですね、比較的。結局、自分たちがなかなか足を踏み出せないというところがあるんですけれども、自分たちが描いた将来に向かって行動していくということをどうつくり上げていくかということが非常に大事ではないかなと私は思っています。  この間取り組んできて、コーディネートする人がいればそういうことはできるんではないかなと。そういうところに農業委員会だったりとか、行政もそうですけれども、そういう役割の持てる人を育てていく、配置していくということが非常に大事ではないかなと思います。そういう中で、和歌山の場合はなかなか厳しいなと思うんですが、一定程度のその集積していくということが可能ではないかなということを思いました。  以上をもちまして、私の意見とさせていただきます。  どうもありがとうございました。
  222. 堂故茂

    委員長(堂故茂君) ありがとうございました。  次に、安藤参考人にお願いいたします。安藤参考人
  223. 安藤光義

    参考人(安藤光義君) 東京大学の安藤と申します。  このような意見陳述の場を与えていただきまして、大変感謝しております。  農地中間管理機構についての私の評価を以下述べさせていただきたいと思っております。  農地中間管理機構が創設されて五年目を迎えましたが、その成果は決して芳しいものとは言えないと思っております。そうした結果になることは当初から予想されていました。歴史的に振り返ってみると、担い手への農地集積はこれまで市町村や農協が担ってきたのですけれども、それを都道府県レベルで動かそうということ自体にそもそも無理があったということでございます。  初年度に政府が期待した県の実績は最下位に近い成績に終わったと、そういう結果がその証左でありますし、それを踏まえた検討会でも、市町村の重要性が声高に叫ばれていたにもかかわらず、制度の根本的な問題は見直されないまま現在に至ってしまいました。農地集積の鍵を握っているのは地元の取組なのですけれども、それを前提に制度は組み立てられませんでしたし、これまで見直しがされることもなかったということでございます。  最初に、農地中間管理機構の仕組みと狙いを確認しておきたいと思います。  農地中間管理事業のポイントは、機構が農地を借り受けるプロセスと農地を貸し付けるプロセスを切り離した点にあります。これは機構のレーゾンデートルであります。一般的な農地の貸し借りは、貸し手と借り手の間でまとまった話が利用集積計画にのせられる、そういうものでございますけれども、この方式によって、誰に農地を貸すかは機構に白紙委任されることになりました。  機構は、農地の借り手を公募し、適切と判断した相手に農地を貸し付けることになります。その際、これまで別々の借り手に貸していた農地を入れ替えて面的に集約することができるようになるわけです。また、機構集積協力金によって農地の貸し手が増えれば、担い手への農地集積を面的にまとまった形で推進できることになります。さらに、農地の貸付先の決定が機構に一任されたことで、企業の農業参入の促進という効果も期待されたと、こういうことでございます。  しかし、農村の現場では、誰に農地を貸すかは相手との信頼関係が決定的に重要であり、機構への農地の貸付けも、借り手が事前に内定している場合が多く、当初の想定どおりにはならなかったというのが実際のところでした。  そうした中、幾つかの県は実績を上げてきました。共通しているのは、集落営農の推進に熱心に取り組んできた点でございます。富山県は初年度トップの実績でした。ここは、非常に集落営農が盛んな県でございます。集落営農の設立は地元での話合いが不可欠で、そこに中間管理事業が導入されて、集落営農の法人化と同時に機構に農地が貸し付けられたということでございます。また、土地改良事業の実施地区では話合いの場が設けられているので、ここに積極的な働きかけを行って成果を上げたところもあります。秋田県などがこれに当たるわけです。  最近、機構の実績が伸び悩んでいるのは、こうした成果を出しやすい地区が少なくなってきているためではないでしょうか。残されたのは農地を動かすのが難しいところばかりだとすると、制度を見直しても、実績を上げるのは残念ながら容易なことではないと考えるわけです。  機構が抱える根本的な矛盾についてお話をしたいと思います。  最初にお話をしましたように、機構は現地での実動部隊を持ちませんので、市町村や農協と業務委託契約を結んで対応してきました。制度の設計当初からの問題が顕在化しないように手を尽くしてきたというのが幾つかの県の機構を回った私の印象です。中央が設計した制度の不備を農村の現場が必死に補ってきましたが、しかしながら、それにも限界があるというのが率直なところではないでしょうか。  市町村は農政担当職員が不足しております。これまで農地集積に取り組んできたところは別ですけれども、そうした蓄積のない市町村に動いてもらうのは大変なことです。市町村合併以降、地方自治体は弱体化しており、そこに大きな負担を押し付けるのは無理があるということです。今後、重要な役割を担うことが想定されている農業委員会事務局体制についても同様のことが当てはまります。制度から外されていた農協も、農地利用集積円滑化事業に熱心だったところは引き続き頑張っていますし、農地を守るという組合員のための仕事でもあるので業務の委託先にもなっているわけです。しかし、円滑化事業を廃止してしまえば、今後、農協からの協力も得られなくなってしまうかもしれません。すなわち、現在の業務委託体制がうまく機能しなくなる可能性が高いということです。  それを避けるためにも市町村や農協が主体的に動ける制度にしていく必要があるのですが、そうなると、もし本当に市町村、農協、現場に権限を移譲してしまえば、都道府県レベルの機構は不要で、そうしたものを市町村に設置すればよいということになってしまいます。現在の機構は廃止という結論になってしまうわけです。最初からボタンを掛け間違えており、その問題は早くから認識されていたのに問題がここまで放置されてきたというのが参考人の機構に対する評価でございます。  もちろん、機構の実動部隊を市町村に設置する制度も整備されてきました。農業委員会制度の改革です。これによって、農業委員会は機構と連携して農地利用最適化の推進のために働くことが義務となり、農地利用最適化推進委員が設置されることになりました。しかし、農業委員会が市町村や農協、機構が現地に置く専門員らとの連携関係を構築することは容易なことではないようです。また、農地行政の進め方は地域によって異なるため、ひな形を示すことも難しいというのが実際のところです。このように期待薄ではありますが、政府にとっては、機構の実績不振の責任の転嫁先となってくれるという点でメリットがあるのかもしれません。かなり意地の悪い見方ですけれども、御容赦ください。  この後直面することが予想されるであろう機構の制度的な問題点でございます。  二〇一五年センサスは、日本農業が縮小再編過程にあることを明らかにしました。それは、一方では、担い手への農地集積が急速に進む可能性が生じていることを意味しています。利用最適化推進委員が縦横無尽の活躍をする市町村が増えるかもしれないと、こういうことでございます。  そこで、今後、機構の実績が順調に伸びた場合に生じるであろう制度的な問題点ですけれども、一つ目です。これは、借り手からの地代の減額請求への対応と地代の未収の問題です。貸し手が農地を貸しているのは機構であり、借り手が農地を借りているのは機構からであり、地代は両者別個に機構との間で決まっています。そのため、借り手から地代の減額請求があった場合、貸し手と地代引下げ交渉を行うのは機構となります。また、借り手から地代を徴収し、貸し手に地代を支払うのも機構の役割です。機構への農地集積が進めば進むほどそうした責任を負う農地は増えることになりますが、現在の機構の人員体制で対応できるのでしょうか。今後、どこかで米価が下落したときに、地代の未収問題が頻発し、地代減額のための貸し手との交渉に追われることになると思いますが、そうした業務に機構は耐えることができるのでしょうか。  もう一つが、貸し手への地代の円滑な支払です。貸し手が死亡すると相続が発生し、地代の振り込み口座を改めなくてはなりません。この仕事は原則として機構が行うべきものです。機構が取り扱う農地が期待どおり増えた場合そうしたケースが増えると考えられますが、対応できるのでしょうか。地代が現物支払のときもどのように対応しているのでしょうか。原則的に地代は機構が支払うべきものだからです。使用貸借の場合は地代の支払はありませんが、その結果、契約終了時になって、貸し手が死亡していたり行方不明になっていたり、相続人の確定ができないといった問題が判明して貸し手の確定に手間取り、借り手への契約更新ができないといった問題が生じる可能性もあるように思います。  これらは、いずれも機構が農地を借り受けるプロセスと農地を貸し付けるプロセスを切り離したというこの事業のポイントに起因する問題であり、解決は難しいように考えております。  制度改正に関しての論点は、次の四つであります。  一つ目は、協議の場の実質化とはどういう範囲であるかという問題でございます。  地域における農業者等による協議の場の実質化を図ることは重要なポイントです。この点に着目したのは高く評価することができます。ただし、これを政策として進める場合、一定程度共通の理解となるような場をあらかじめ示しておかないと事業は進捗しない可能性があります。以前であれば集落を単位とすればよかったのですが、担い手の経営規模が拡大し複数集落で農地を集積しているような状況を考えますと、その場をどのように設定するかは大変難しい問題だと思います。  大規模な担い手が複数展開しているような地域では、地区を設定するよりも、担い手を組織化し、彼らの間で経営地を交換して農地の面的な集約化のための合意を形成し、その結果を地権者に話して了解を取り付けていった方が、もしかすると事業は進みやすいのかもしれません。  二つ目ですが、機構への利用状況報告義務の廃止の限界です。  機構を通じた場合、解除条件付の賃貸借契約となるため、これは企業への農地貸付けを前提とした制度としてスタートしたためそうならざるを得ないということですが、機構への利用状況報告義務は廃止されたものの、農業委員会への利用状況報告義務は引き続き残ることになるわけです。もし中間管理機構を使わないこれまでの仕組みの賃貸借であれば、農業委員会への利用状況報告義務も不要となるわけです。  三つ目が、機構集積協力金についてでございます。  農地集約化を地域ぐるみで進める観点から、集積、集約タイプに重点を置く方向のように見えますが、それにフィットするような集落営農は既にこれまでの機構の事業に動員されてしまったということです。言わば立ち毛は刈り尽くされた状態にあって、もう一度種をまくところから始めなければならず、思うほどの成果は出ないのではないでしょうか。そうした事態は分かっていながらも、機構のメリットは農地集約、面的集積の実現にあり、これを全面に出さないと制度の存続は難しい状況にあったのではないか、そうした交渉が財務省との間にあったのではないかと参考人は推測しております。  しかしながら、繰り返しとなりますが、事業に動員できる集落営農はほとんど残っていないので、実績が伸びるかどうか大変心もとないというのが率直なところです。例えば、大分県の機構の実績を見ますと、集落営農の利用実績は近年減少傾向にある一方、個人経営の利用実績は大きく増えています。地域集積協力金の出番はなくなってきているというのが分析のようでございます。  また、今後、後継者を確保できない大規模経営の離農が多発することが予想されます。そうした大規模経営の間での農地の貸し借りが今後増えていくのではないでしょうか。これまでのような集落単位での農地集積という時代は終わろうとしているのかもしれません。  また、中山間地域では要件を緩和されるようですけれども、担い手がいなければこの緩和も意味を持ち得ません。中山間地域での担い手育成、農地の受皿づくりは具体的にどうすればよいのか、これについては私も回答を持ち合わせてはいないのですが、機構の事業とは別に考えなくてはならないと思っております。  また、機構が言うところの担い手と人・農地プランの中心経営体、この両者が必ずしも一致していないケースが見られるようでございます。中山間地域では、これが一致していないがために、中心経営体はいるんだけれども機構が対象とするところの担い手がいないので事業が使えない、こういうふうな指摘が、愛知県中央会の方から私いただいておりますので、ここで述べさせていただきたいと思います。  最後になりますが、地代の統一に立ちはだかる壁ということであります。  農地の交換を行って面的集積を実現するためには、地域内での地代の統一が不可欠です。数千円程度の違いであれば何とか調整はできると思いますが、問題は地代無料の貸し借りが増えていることです。これは農地の需給バランスを考えればやむを得ないことかもしれません。通常は低い方の地代に統一していくのですが、さすがに無料に統一することはできませんし、かといって有料にすると、無料で借りている担い手の了解を得ることは難しいわけでございます。  都市近郊、中山間地域では、こうした農地が増える傾向にあります。この地代の無償化自体は担い手の負担を減らす方向に働くので望ましいと言えるのですが、農地の交換にとってはマイナスに作用する可能性があります。  また、地代が無料ということは、言わば地主が身銭を切って農地を維持してくれているということを意味します。しかし、世代が交代すればこうはいかなくなり、結局どこかで眠っていた問題が噴出することにならざるを得ません。日本農業自体がそうなっております。ある意味で私たちの親の世代を頼りにすることはできなくなってきているということです。村や農協に、ある意味で現場にただ乗りしてきた政策も限界に来ているということなのではないかと思います。  以上で私の意見陳述を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  224. 堂故茂

    委員長(堂故茂君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  225. 藤木眞也

    ○藤木眞也君 自由民主党の藤木眞也でございます。  三人の参考人の方には、お忙しい中に、貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。  私は、三年前に当選をして国会議員になったわけですが、その前は熊本県のJAかみましきという農協の組合長をやっておりまして、熊本で約三十年農業者として現場で仕事をしてきた人間であります。  ちょうど私が候補者になった頃に、私の町をこの農地中間管理機構を使って土地の集積をするんだということで集落法人を立ち上げる作業を全力で取り組んだわけですが、私の地域は平たん地域で非常に条件が良くて、二か月半ほどで七百五十ヘクタールほどが一発で集積ができたというような地域でありますが、農協にも地域営農ビジョンというビジョンがありまして、中期的なビジョンの中でやはり集積はするべきだということで、円滑化事業を使いながら少しずつ地ならしをやっている最中にこういう機構が天から降りてきたといいますか、そういうことだったわけですが、やはり現場の皆さん方に説明をしていく中で、えたいの知れない機構だというような捉え方が非常に現場には強かったなというのを感じます。  特に、もしも貸付けをしたときに、返ってこないんじゃないかという心配をされる農家の方が今もまだいらっしゃるということを全国いろいろなところでお聞きするほど、やはり顔が見えないというのが中間管理機構の何か私は弱点なのかなというところを思っております。  先ほどからお話にあるように、やはり条件のいいところはすうっとできていったんだけど、これからなかなか、耕作不利地域、こういったところをどうするんだというのが議論の対象になってくるのかと思います。  そういった中で、私の嫁の実家というのは棚田の地帯でありまして、昨年、私の実家の父も、もう農業が続けられないということで中間管理に預けたいんだというお話を持っていったところ、耕作者を連れてこないと、それは借りはできないですよということで突き返されたということでありまして、さあ今年どうやるんだというのが今一番の課題になっているわけですけれども。  そういった意味でいくと、やはり一番集積を進めなくてはいけない、またそこにしっかり担い手を育てなければいけないという中山間地域、そういった地域でこの集積事業を進めていくために本当にこれは相当な汗をかかなければいけないんだろうというふうに思います。安藤参考人は、元々のボタンの掛け違いなんだというようなお話をされましたけれども、これだけの事業をこの五年間進めてきたということを考えると、やはり前に進めていくというのが私は最大のこれから先の私たちの使命なのかなということを、一定の理解をしております。  そういった意味で、中山間地域でこの事業をうまく回すための参考人の方々のアドバイスといいますか、御助言をいただければと思います。
  226. 堂故茂

    委員長(堂故茂君) じゃ、佐藤参考人の方から順次御発言願います。
  227. 佐藤博

    参考人(佐藤博君) 先ほど配付しました資料にも載せさせてもらいましたけれども、課題の一等最初に、中山間地域における事業推進ということが課題であるというような形で書いてございます。そういうことで、本県でも、この五年間で中山間、特に途中からはここに非常に力を入れてきたことは事実でございます。  この資料にもありますように、始まった当初、その前に、当県の地域は、大体、中山間地域は四割です。ですから、六、四の割合です、平場と中山間は、統計上いうところのですね。そうした中で、当初の実績は、年間の集積した面積は、この資料の五ページにもありますように、七、三なんですね、平場と中山間が。それを、この上段にありますように、中山間を多く抱えるところにちょっと駐在所を先に置かせてもらったり、中山間向けのDVDを作ったり、それから様々な支援策も総動員しながら特に力を入れて頑張ったところ、最近は六、四ぐらいと、大体その地域の面積分母ぐらいになっていると。ただ、それでも、結果とすれば、今時点の集積率は、平場は八五で中山間が五三ということで、まだまだ追い付いていない状況にございます。  そもそも、先ほどほかの参考人先生からも話ありましたように、農地の受け手が少ない、いないわけでございまして、これ、機構事業だけで論じても、これはなかなか無理があるのではないかなと思ってございます。集落営農ですとかぐるみ法人ですとか、それから地域外の法人からの参入ですとか、そういった担い手の育成確保対策の強化も重要であろうと。  ただ、そうはいっても、やっぱり中山間もできるだけ担い手に農地を集積するふんだんの努力というのが私は必要だろうと思っています。その際、見直しに当たってもいろいろな意見をこれまで述べさせてもらいましたけれども、やっぱり平場以上にインセンティブを与えるといいますか、平場以上のプラスアルファの支援策というのを講じることがやっぱり必要だろうと。  この五ページのところにもちょっと当県の県の単独事業を出させてもらいましたけれども、そういった中山間のところを受けてくれる担い手に対しましては、地代の賃借料相当分を、一年目は一万円、二年目は半額ぐらい、やっぱり二、三年耕作しないとそこに慣れませんので、それぐらいのリスクは少し県の方でも応援したらどうだというふうなことで県単独でやりました。こうした形のフォローを是非国の方にもお願いしたいというふうなことをお願いしたところでございます。  それと、まとまった農地を農中に貸し付けるという場合に、やっぱり同じ十ヘクタールをまとめるにしても、平場とはこれは難儀さが違うわけでございますので、ハードルを少し下げてもらえないかという要望をさせてもらったところでございます。そういった点では、集積協力金の要件が緩和されたというのは、一つ評価に値するんだろうというふうに思ってございます。  それと、これからやっぱりどうしても付きまとうのは、条件が悪いと、圃場が悪いもんな、狭いもんなというふうな話ですので、ここはやはり機構関連の農地整備事業、これ中山間の集積を前進させる上で非常に要件が緩くなりましたのでといいますか、まとまる要件が少なくなりましたので、ここをやっぱりしっかりと行って、モデル事業をつくってやっぱり横展開していくのが大事だろうと思ってございます。  なかなかこれ、中山間はこの集積だけでなくて、やっぱり産業政策だけでなく地域政策も絡めていかないと難しい問題だと思ってございます。やっぱり起死回生のホームランというのは私はないと思ってございます。現場でやってみて、ないだろうと。やっぱり単打を積み重ねると。去年のあの夏の甲子園の金農のように、やっぱり送りバントで、スクイズで一点をもぎ取るというようなことを積み重ねて、やっぱり地道に少しずつ成果を上げていくしかないんでないかなというふうに思ってございます。  以上です。
  228. 宇田篤弘

    参考人(宇田篤弘君) 実は昨日も、和歌山県の美山というところがあるんですが、そこに移住してきた御夫婦に会ってはきたんですけれども、先ほど言われましたように、やはり人がそもそも少ない、若い人がいないという状態の中で、そういう人たちがどういうふうにそういう地域に移住、定住していただくかということをやっぱりやっていかないと難しいのではないかと思うんですが、ただ、田園回帰というふうに言われますように、御夫婦で移住される方も多くて、その一つ大きな決め手になっているのは、やはり住む家がいいかどうかということが大きいように思います。  そういうところで成功しているなと思うのが、和歌山県の紀美野町というところがあります。町が頑張ってやってきたんですけれども、今回からその移住者の代表がNPOをこしらえてやっていくということになっているんですが、そこの代表の方含めて今百戸、百世帯移住してきているというふうに言われています。つい先日、テレビでも少し紹介をされていましたけれども、東京大学出てというふうな、御主人がというような話で紹介されていました。そこはやはり住む家がうまくいっているから移住が進んだというのはあると思います。ただ、通勤圏でもあるというのも一部あるのではないかなとは思います。  もう一つは、いざ農業を始めたとして、そういう中山間地域の一番大きな問題はやはり獣害だというふうに思います。鹿も猿もイノシシも、和歌山ならアライグマもいますけれども、和歌山県で大体年間に三億少しの被害額が出ているという報告をしていただいています。そういう柵をそもそも作っていかないといけないとか、それは皆一定の補助をしていただいてあるんですけれども、そういう管理していくことも大変になってきますので、そういったところの手厚い支援なんかは必要なんではないかなというふうに思います。  いずれにしても、地区外から移住、定住を促進するようなことが中山間地域のところでは非常に大事ではないかなと思います。そのことによって、地元の人がまた元気をいただいて、鏡効果というふうに言われたりもしていますけれども、自分たちの地域の良さをもう一回見直していくような機会も実際起こっているんではないかなというふうに思います。  以上です。
  229. 安藤光義

    参考人(安藤光義君) なかなか中山間地域の担い手育成というのは難しい問題だと思っていますが、私が重要だと思っているのは、やはり集落営農の育成がポイントだと思っております。中山間地域等直接支払制度を活用して集落営農をどう設立するか、そして集落営農をどう伸ばしていくかということがやはりベースに置かれるべきかなというふうに思っております。ただ、集落営農もかなり後継者がいなくて大変な状況を迎えておりますので、集落営農に外から後継者をどう入れるかと、こういうことをこれから考えていかないといけないかなと思っています。  また、集落営農の間での広域連携、つまり、弱いところを助けてあげるような、そういう関係をつくっていくということも今後必要になってくるかと思いますが、なかなか水田の条件も良くないところも多いので、ただ単に連携関係、広域連携をすればいいという話じゃなくて、それを可能にするようなそれなりの整備を、特に畦畔管理の負担が中山間地域、非常に大変ですので、それを軽減できるような何らかの整備、あるいはその軽減が図れるような技術革新、この辺りに力を入れていく必要があるかと思っております。  また、そこに人に住んでもらわなければいけませんので、生活環境条件、定住条件の整備も、これは農水省政策を超える部分がかなりあるかもしれませんが、そうしたものと連携しながら定住条件の整備を整えていくということが必要かなと思っております。  私からは以上になります。
  230. 藤木眞也

    ○藤木眞也君 ありがとうございました。  私も、おやじからよく言われていたのは、農家は一人じゃ残れぬぞということをよく言われて仕事をしてきたわけですけれども、今、この集積を担い手に一定程度進めていくというのは私も理解をするわけですが、今回、八割といった数字が具体的に出てきていますし、それが正しいのか正しくないのかといった点では私もいささか疑問があるわけですけれども、やはり集落には、これまで農道であったり用排水の管理であったり、そういった集落機能を存続させるというのも農業にとっては大変大事な作業でありまして、やはり数を一定程度は残さなくてはいけないというのが私は今後の一つ課題だろうと思います。  そういった意味で、もう時間がありませんので、佐藤参考人にお聞きしたいと思いますが、集積を進めて農家にまとめていくという問題と集落機能を残すという問題、この辺をどうバランスを取っていかれようと思っていらっしゃるのか、お聞かせいただければと思います。
  231. 佐藤博

    参考人(佐藤博君) 藤木先生がおっしゃったように、農地はまとめたと、例えば集落型の法人なり集落営農組織でも結構です、まとめたと。そこで問題になるのは、ほかの農家の方々、出し手といいますか、その法人に要するに農地を預けた方々が、農地を預けたがゆえに、あと私はもうそれから全然手を引きますよと、これが一番困るんですね。  そこの集落には多分住まれていると思うんですけれども、とてもじゃないけれども、田植と稲刈りはできるかもしれないけれども、日頃の水管理、畦畔の草刈り等々につきましてはそのお願いされた法人だけでできる話じゃございませんので、やっぱりそこは一定程度、農地を預けたにしても、その法人の中の構成員の一人として、場合によっては、若しくは、そこから作業を再委託されるそのメンバーの一人として、しっかりとそれぞれお互いができる範囲内での役割をこなしていくというのがやっぱり私は大事だと思うんですね。  でないと、先ほど安藤先生がおっしゃったように、中山間地域で集落営農組織、法人をつくったとしても、じゃ、お願いしますねといって、あとはもう知りませんよという話だと、これはなかなか維持できないので、やっぱりそこら辺のところをしっかりと立ち上がるときにお話ししていくというのが大事だろうと。  今、うちの方も水田地帯でございますので、当然ながら集落営農は相当前から力を入れてきてございますし、それなりに熟度は高くなっているんではないかと思っていますけれども、逆に言えば、ちょうど品目横断、自民党さんが下野する前の政策ですけれども、あのときに一生懸命になって集落営農組織立ち上げたんですけれども、あそこで立ち上がったところがちょうど十年ちょっと過ぎぐらいになりまして、当時先頭になっている方々がちょっと少しくたびれを起こしてきているんですね。疲れてきているんですよ。秋田弁で済みません。なものですから、そこの代替わりのところも今非常に悩ましい問題ですね。  農地農地として預けるにしても、やっぱりそれぞれができる役割というものがあるわけですので、そこをやっぱりきっちり参画しながらやっていくと、そこをやっぱり最初に確認しながら進めていくということが私は大事だろうと思ってございます。
  232. 藤木眞也

    ○藤木眞也君 ありがとうございました。終わります。
  233. 小川勝也

    ○小川勝也君 立憲民主党・民友会・希望の会の小川勝也でございます。  北海道選挙区の選出でございまして、北海道は御案内のとおり大規模化が進んで、担い手への集積が先行しております。また、農地については売買が主ということで、府県とかなり風習と現状が違うものですから、変な質問をするかもしれませんので、御容赦いただきたいと思います。  まず、安藤先生にお伺いをしたいと思います。  私たちは五年前、この法案が出てきたときには、いわゆる官邸農政と言われる魔物との闘いで、多分平地を集積させて、そこに企業を参入させるのが狙いなのではないかというふうにうがった見方をしておりました。  五年たって、試行錯誤の末、その狙いについては本来どういうことだったというふうに総括されておられるのか、安藤先生にお伺いしたいと思います。
  234. 安藤光義

    参考人(安藤光義君) 当初できたときは、企業の参入を促進すると、こういう役割を中間管理機構、担う予定だったわけですけれども、実際には、土地利用農業部門でそれだけの参入を実現することはかなり難しかったなというのが正直なところじゃないかなというふうに思っております。それだけ水田農業土地利用農業については収益的にはかなり厳しいというのが実際のところで、そこをはねのけてまで企業が入ってくるというのはちょっとやはり難しかったなというふうに思っております。  また、官邸農政という話がございましたが、これにつきましては、この法案が通るときも国会の方で附帯決議が付きまして、かなり先生方が頑張られたということだと思いますけれども、現場の意向がそれなりに反映されるような状況を何とかつくろうとしていったということだというふうに理解しております。  以上です。
  235. 小川勝也

    ○小川勝也君 私も同じ見立てをしています。もし狙いがあるとすれば、後にコンクリート農地などという法案も審議させていただきましたけれども、首都圏や大規模消費地に近いところの府県域の平らなインターの近くは引き続き狙われているのかなという感想を持っています。  今日、佐藤参考人から秋田でのすばらしい事例を見せていただきました。私どもが数か所視察をした中では、こんなにきれいに集積が進んでいるところはなかったというふうに思っています。  秋田の事例についてお伺いをする前に、もう一点、安藤先生にお伺いをしたいと思いますが、全国の事例をよく研究されている安藤先生の中で、この秋田の成功例というのはどういう評価になっているのか、お尋ねをしたいと思います。
  236. 安藤光義

    参考人(安藤光義君) 秋田県の調査をさせていただきましたけれども、そのときに私の印象に残っているのは、行政の間の連携関係、非常によく取れているなと。機構と農業委員会との連携も非常によく取れていますし、それから、特筆すべきは、地元から推薦された方を機構の、済みません、正式名称私出てきませんが、推進委員という形で指定をして、彼らが地元の信任を受けつつ地域を動かしていくと、こういう制度を取っているというのが、推進委員というのはどこの県も置いているケース結構多いんですけれども、本当に動いてくれる人を地元からの推薦で指定しているという話が非常に印象深かったなというふうに理解しております。そういう点では、県、機構、しっかりしていますけれども、主導権はやはり地元に任せている、そういう運用をしているという点が優れていると。これは秋田だけに限らず、実績を上げている富山県、福井県、共通して言えることかと思っております。  以上です。
  237. 小川勝也

    ○小川勝也君 安藤先生の言葉を借りれば、結構無理やり押し付けられた制度の中で、多分秋田県の皆さんは真面目な方が多いので、本当に努力をされたんだろうというふうに思います。  また、面と向かっておべっかを使うわけじゃありませんけれども、やはり北海道で学ばれて、県庁の農政を担当されて、公社の理事長を務められた佐藤参考人の存在も大きかったんだろうというふうに思います。  それで、私が常々申し上げているのは、担い手に集積をしてしまうとそれ以外の方々が集落にいづらくなると。その代わり、いわゆる耕地農業は合理的な手法をあくまでも追求すべきだけれども、高付加価値を狙う作物はその周辺に必ずあるべきだというのがこの四ページに見せていただいた由利本荘の事例です。水田があって、そのほかにリンドウ、アスパラ、小菊、これがいわゆる収入を得て、そこに農業集落の人口を保つことができるという事例だというふうに思います。  その下にこれまたすばらしい地図の存在があるわけでありますけれども、北秋田の事例についてお伺いをしたいと思います。ここまですばらしい地図ができ上がるということは、やはり地元のすばらしいリーダーの存在がいたのではないか、それから、いわゆる由利本荘のリンドウ、アスパラ、小菊のような米以外の産品がしっかりと脇を支えているのではないかというふうに拝察するわけでありますけれども、佐藤参考人に簡潔に教えていただきたいと思います。
  238. 佐藤博

    参考人(佐藤博君) まず、由利本荘市の鳥海、ここは中山間地域でございますけれども、まさに、先ほどちょっと御説明の中でお話ししました、あきた型の圃場整備、いわゆる基盤である圃場面工事をしっかりとやって、機構を中心にして集積して土地利用型の方の作物の生産コストを下げていく、作業効率を上げていくと。  その上で、それだけだとなかなか北海道のようなわけにいきませんので、秋田県でも、いわゆる農業として自立するには不足なわけですね。そこで、特に本県の場合は米依存体質が非常に強いわけでございますので、何とか園芸品目等をそこに入れて、しっかりとこの法人が回っていくような形で、経営的に回っていくような形でということで、園芸メガ団地をこれにオンして、三位一体で進めていくというパターンでございます。これが中山間でやっている典型的な事例でございます。  下段の方は、確かにいろんな作物はやります、ここはキュウリの産地でございますけれども。ただ、どっちかというと、土地改良区の理事長さんなりが、トップに立っている方が非常に熱心な方で、広域合併した市町村で五つあった土地改良区をまとめながら、それとこれを一緒にやったというふうな事例でございまして、いわゆる換地の経験を生かしてやっていったという、土地改良区が主体となってですね。既に前にもうこれは整備終わっていますので、当時は集積の要件が何もなかったものですからこういう形で、集約という点では何か不十分な形になっていましたものを、簡易な整備をやりながらもう一回シャッフルしたというふうな事例でございます。  こういったものをこれから我々は第二ステージでやっぱり横展開していく必要があるだろうなというふうに思ってございます。
  239. 小川勝也

    ○小川勝也君 重ねて佐藤参考人にお伺いをしたいというふうに思います。  先祖伝来の土地農地という言い方があります。農家に生まれた方々は多分、じいさんの代から作ってきた畑はあそことあそこ、田んぼはこことここというふうに覚えておられて、それで、できれば親が介護が必要になってきたら都会から戻ってこようかと、あるいは定年になったら農家になってもいいなというふうに思っておられる方もおられたと思うんですが、例えば、換地をしてしまったり畦畔を取り除いて大型になったりしたりすると自分の家の農地という思いが小さくなる。それから、あるいは担い手に出してしまうと、戻る場所がなくなるということで、集落に戻るはずの人口が確保できなくなるというようなデメリットが農地の中間管理のこの法律にはあるんではないかというふうに私は想像をしておりました。その点についての佐藤参考人の解説をいただければと思います。
  240. 佐藤博

    参考人(佐藤博君) 小川先生お話が、分からないような感じでもないんですけれども、実際現場でまずそういう感じはないですね、正直申し上げまして。論理的に三段論法でいきますと、そういう感じになるんでないかなというふうなイメージは分からないわけではありませんけれども、現場の方では、もちろん、Uターンしてきて、また、都会に行った方が定年を若干早めて戻ってこられて田んぼやっている方もいらっしゃいます。  ただ、そういった方々もいらっしゃいますけれども、大方のところ、この農地頑張って今まで作ったんだけどこれからどうするのかと、いやいや、このまま荒らしたままで誰も引受手いないと、息子はもう帰ってこないだろうし、娘も嫁いだし、後は戻ってこないという中で、じゃどうするのかと、いや、御先祖様に申し訳ないなという気持ちで、何とか借りてもらえる人がいれば借りてくれないかという方が私は相当多いんじゃないかと思ってございます。  ただ、いや、おばあちゃん、申し訳ないけれども、このままだとなかなか厳しいので、やっぱり少し、今圃場整備やろうとしているので入った方がいいよと、でないと、このままだと誰も、借りる人も、借りたくても借りようがないんだよというようなことも併せてお話ししながら今進めているという最中でございます。
  241. 小川勝也

    ○小川勝也君 私の印象が間違っていたら申し訳ないんですが、兄弟の中で誰か帰って作らなきゃいけないなと思っていたところを、機構に借りてもらって誰かがやってくれてほっとしたと、女房も自分の実家に帰るなんて言ったら賛成もしなかったけど、説得しなくて済んで助かったという方がいるんじゃないかというふうに今でも思っています。  次に、宇田参考人にお伺いをしたいと思います。  和歌山市にも割と近く、阪神地域からそれほど離れていないので、元気のある地域で、果樹や野菜が高く売れるという地域だろうというふうに思います。  しかしながら、日本の人口減少は広くあまねくでありますし、全産業、全業種、全地域に人手不足が来ているわけであります。後継者がいないいわゆる農家というのがどんどんどんどん出てくるんじゃないかというふうに拝察をしているわけでありますけれども、その辺の事情はいかがでしょうか。
  242. 宇田篤弘

    参考人(宇田篤弘君) つい先日、和歌山の人口減少率でワーストフォーだったと思います。それから、空き家率が多分ワーストワンということで報道があったと思うんですけれども、特にこの間、団塊の世代の方たちが非常に頑張ってきたんですけれども、そこが急速にリタイアしていっているような状況を見受けます。  実は、先ほど紀ノ川農協の組合員九百名少しと言ったんですけれども、実はもう名前だけ、亡くなられてということで、出荷のない方が三百人近くもいます。  ですので、自分の集落を見ますと五年後ぐらいに何も手を打たなかったら恐らく半分ぐらいになる可能性もあります。今現役で頑張っている方が八十歳ぐらいまで頑張りたいとおっしゃっているんですけれども、もう五年で八十到達する方もいらっしゃいますので、その方が続けられているのは近くにいる男性の方が支援しているからできているんですね。ですから、そういうものが崩れてきますので、何も手を打たなければ相当速いスピードで急速に担い手が少なくなるというふうな状態だというふうには思っています。
  243. 小川勝也

    ○小川勝也君 想像するに、例えば水田地帯の畦畔除去をして大きな一枚にするというような集積のメリットは、中山間の果樹などについては大変小さいんだろうというふうに思います。  そんな中で、ちょっと先の話になるのかもしれませんけれども、ほかの果樹の果樹地帯で、本当に戸数が少なくなれば、別に傾斜地に果樹がある必要はないので、平らなところに果樹をすればもっともっと効率的に生産が可能なんだと、将来はそういうメリットもあるんだという話を私聞いたことあるんですけれども、和歌山県の紀ノ川農協の地域ではそんな将来展望についてはどういうお答えをお持ちでしょうか。
  244. 宇田篤弘

    参考人(宇田篤弘君) 一概に言えないと思うのは、品目によって、生産物によってその条件が非常に変わってくると思います。  例えばキウイフルーツでしたら、水田跡というのは確かに作業しやすいように思うんですが、水はけが良くないということになってくるとそこは不適地ということになりますので、非常にその辺りが、和歌山の場合は特にその地形が複雑ですので、単純ではないなというふうに思います。  以上です。
  245. 小川勝也

    ○小川勝也君 時間がなくなりましたので、もう一問しようと思ったんですけど諦めます。  五年前の登場のときと勢いが少し変わって、目的も少し変わってきたのかなというのを、最初の安藤先生に対する質問で分かってきました。それから、あるものはしようがないので、何とかこの集積をするということについてはメリットがないわけではありませんので、その周り、中山間にはどうするんだ、それから集落の人口を守るためにはほかにどういう施策が必要なんだということを当委員会でいろんな議論をさせていただければと思います。  ありがとうございました。
  246. 田名部匡代

    田名部匡代君 国民民主党・新緑風会の田名部匡代です。  今日は三名の参考人の皆様、ありがとうございました。順次質問させていただきたいと思います。  今ほど小川委員の方からもありましたけれども、これまでの農林水産業に関連する政策というか、法案、法律というものは、若干どの方向にこれから日本の国の農林水産業また食の安全保障は進んでいくんだろうかと不安を覚えるような気がいたしました。この中間管理機構に関しても、まさに本当の狙いは何なんだろうかと感じましたし、今ほどもあったコンクリート農地、まさにいい農地に巨大な植物工場ができて取り返しの付かないことになってしまうのではないかとか、種子法が廃止になって、そして積み上げた種の知見を提供して日本の食の安全保障は大丈夫だろうかと、その都度そのように感じてきましたし、まさにこれを主導しているのが規制改革推進会議、その現場の実態というものを本当に分かっているのかなと思うことがあったわけですけれども。  今日も一日、法案に対する審議が行われまして、農林水産省の担当局長さんも随分現場の声が現場の声がというふうにおっしゃっていたので、本来のやっぱり農林水産省のあるべき姿、そして私たちがこの場で議論しなければならないのは、いかにやっぱり現場のことを大事にしながら責任を持って日本食料について語っていくかということだと思っています。  そういう意味では、今日、それぞれのお立場で貴重な御意見を聞かせていただきましたことに感謝を申し上げたいと思いますし、まず秋田の佐藤参考人お話を伺いたいのですが、これだけすばらしい体制をつくってこの事業推進されてこられたというのは並大抵の努力ではなかったと思います。今、かといって簡単に同じような取組が全国各地でできるかというと、これまたそう簡単ではないというふうに思うのですが、この事業がこれからも進んでいくに当たって、佐藤参考人から、他のこれから体制をつくっていく皆さんに何かいいアドバイス、まずは何から手掛けることが大事なのか、どう進めていったらいいのか、何か参考になるようなアドバイスがあったらお聞かせください。
  247. 佐藤博

    参考人(佐藤博君) 田名部先生はお隣の県ですけれども、非常にのっけから厳しいといいますか答えづらい質問で、非常に答弁しづらいんですけれども。  やっぱりこれは、私は去年の七月から理事長を拝命していますけれども、その前の理事長がスタート時点から関わっておりましたけれども、取りあえず、藤木先生でしたか、機構の名前が、何か海のものとも山のものとも分からないものに農地を預けてくれといっても、誰も、何だそれはというふうなことで、やっぱり最初に機構をまず覚えてもらわなきゃいけないということで、そこのところに力点を置いて一生懸命になっていろんな、ここにありますように、マスメディアを使ったりとか、それからこちらが出向いていくとか、そういうことでまず機構を覚えてもらう、安心な機関なんですよということを覚えてもらうということが非常にやっぱり大事だったんじゃないかなと。  ここに御当地ヒーローのネイガーの写真ありますけれども、これをやったのは、孫子の代まで、ネイガーは御当地ヒーローですので、孫が非常に来ますと喜びますので、孫子の代まで農地をしっかりと守っていきますよというふうなメッセージと併せて、詐欺防止とかそういったものにもこの御当地ヒーロー使われていますので、決してこの機構はそんないかがわしいものじゃなくて安心して預けてもらえますよということで、それで使わせてもらっているんですけれどもね。  要はしっかりと、安心なところですよと、農地を預けても大丈夫だと、よかったなと思えるような、そういったところですよということをまずしっかりとPRして、そのためには実績を残さなきゃいけないわけですけれども、やっていくということ。  あとは、土地改良関係というのはやっぱり連携が私は大事だと思うんですね。土地改良は、もちろん面工事でもって生産状況を良くする、それが一番ですけれども、やっぱりそれをやることによって法人は立ち上がる、集積される、そして新しい作物が出てくるということで、やっぱりやることによって三つも四つも、何といいますか、その副産物的な成果が出てくると思うんです。ここをやっぱりしっかり連携していくと。多分、どこの県も連携連携と言うと思うんですよ。これが意外と、うちの県に視察に来ますと、そうやって土地改良の部門と、公社部門といいますか、それと一般農地の部分とうまくやっているんですかと、いやあ羨ましいですねと。ちょっと私からすると何が羨ましいのかよく分からないんですけれども、当たり前のような気もするんですけれども。  多分、土地連ですとか土地改良区の方に足しげく行って、トップ同士も非常に意思の疎通ができていますし、そこら辺が職員なり現場の土地改良区なりにもずっと波及していって、それでもってやっていっていけているんじゃないかなと思っていますので。何も奇をてらったものをやっているわけじゃなくて、地道に諦めずに一生懸命やるというところで、まず四の五の言わずに実績を上げないとこれは始まりませんので、そこにやっぱり全力を傾けていくということが大事じゃないかと思います。  ただ、立地条件として秋田が、青森の津軽もそうですけれども、元々水田地帯で、土地利用型のところで、なおかつ昔から集落でもって結いですとか集落営農の下地ができていた、こういう恵まれた条件にあると。例えば宇田組合長のところとはまた違うと。これはやっぱり根底に事実としてあると思いますね。
  248. 田名部匡代

    田名部匡代君 ありがとうございました。  この委員会で視察に行かせていただいたときにも、現場でやっぱり、この人が来る、この人とは話したくないとか、この人が来るから嫌なんだとか、地域との信頼関係とか人と人とのつながりというのは非常に難しいと、そういう中で地道に信頼関係築かれてきたということをお話伺いまして、同じような努力があるんだなということを感じさせていただきました。  ただ一方で、先ほど安藤参考人の方からお話があったように、幾つか直面するであろう制度的な問題点ということも指摘をされました。地代の減額請求への対応であるとか地代未収の問題であるとか、幾つかそういった指摘がなされたわけでありますけれども、それは、現場としては今後、こういう指摘がある中でやはり同じような認識をお持ちなのか。例えばそれに対して何らかの必要な対応をお考えなのか、それともこういうことをやってほしいという御要望があるのか、ちょっと分かる範囲でお話をいただければと思います。佐藤参考人、お願いします。
  249. 佐藤博

    参考人(佐藤博君) 五ページの課題の一番最後の代表的な形で中間保有案件の増加への対応というように書いていますけれども、やはり五年しますと、当初余り目立たなかった問題が少しずつ顕在化してきているのは事実でございます。今先生がおっしゃったような、まさにこれは安藤先生がおっしゃったようなところですね、出てきてございます。  積極的な中間保有だったらいいんでしょうけれども、消極的な中間保有といいますか、今まで要するに受け手として頑張ってきてもらっていた担い手の方が病気になったりですとかけがをした、それから亡くなった、それからちょっと急激に規模拡大したために経営難ということもこれは実際あります。そういった事例、様々な形で地主さんの方に地代を払えないというふうな案件が少しずつ出てきてございます。  当公社としましては、地主さんにお約束した地代ですので、借主から払えないから少し待ってくれと言われたからといってそっちに払わないわけにいきませんので、それはやっぱり当然立替えしながらお支払いするという形にしてございますし、当然一方で、その担い手の方には経営の支援等も含めて何とか来年度以降早めに納めてもらうような形で経営指導も含めてやっていかなきゃいけないというふうに思っていますけれども、これから多分こういった案件というのは少しずつ多くなってきていくだろうと。こういったものに対して、じゃどうやってやっていくのかと。元々の地主さんの方にお返しすれば、それはそれで一番話は簡単でしょうけれども、やっぱり期待して信頼して貸していただいたわけで、我々としても受けたわけですので、やっぱり次の担い手を探すなり、受け手の方の経営を改善するなりということで、いろんな八方様々な手を尽くしながらこれからやっていかなきゃいけないと。  まだここら辺の部分については、いろんなそうした対応マニュアル、例えば弁護士さんの活用も含めて、まだこれからいろんなケースが出てきますので、パターン化しながら、そういった対応の仕方というものを類型化しながらやっぱりこれからやっていかなきゃいけないだろうと。  当県だけではできないことでございますので、全国協会並びに国の方からの御助言もいただきながらやっていかなきゃいけないというふうに思ってございます。
  250. 田名部匡代

    田名部匡代君 ありがとうございました。  次に、安藤参考人にお伺いをしたいと思います。  今日の法案審議の際にも自民党の平野委員の方から、日本耕作農地のその把握についてきちんとできているのかと、どのぐらいが耕作放棄地でどのぐらいが耕作できるような農地であるのか、こういったことはきちんと把握をするべきではないかというようなことを含めてお話がありました。  私も、これから中山間で担い手を育てていくということは現実的になかなか難しいというような状況の中で、日本がそれでも自給率を上げて担い手を育ててというようなところをしっかりつくり上げていくためには、この制度が法改正ができたから進んでいくのかといえば必ずしもそうではないというふうに思っています。  安藤参考人は、この法改正によってこれまでよりは担い手が育っていくと、そして日本農業土地の利用の在り方が変わっていくというふうにお考えなのか、それとも、より幅広い視点で課題があるとすればどのような課題があるとお考えなのか、教えていただければと思います。
  251. 安藤光義

    参考人(安藤光義君) この今回の制度改正ですけれども、現場の方々からすると、以前に比べればかなり使いやすくなったなと、そういう点は私は評価しているものであります。  ただ、制度というのは、結局のところ誰がどう運用するかに懸かっているということで、結局、それをうまく使えているところは実績を上げていますし、うまく使えていないというか、むしろ使える環境にないところはやはりなかなか実績が上がらないということかと思います。  その使える使えないの環境を大きく決めているのは、やはり担い手がいるかいないか。その担い手は、やはり農業収益がそれなりに上がるところは担い手がいますけれども、ないところはなかなか育たない。そうすると、一定程度農業収益が上がるような、あるいは、今は上がらないかもしれないけれども、将来的にはこれぐらいの経営まで持っていけばこれぐらいの所得は上がるだろうと、こういう見通しを立ててあげられるような、そういう経営環境を政策が用意できるかどうかに懸かっているのかなというふうに思います。  ですから、一年、二年で政策がころころ変わるようでは困るわけで、常に長期にわたって経営計画が立てられるような、そういう安定した経営環境を政策が保障してあげるということが私は必要になってくるかなと思っております。  以上です。
  252. 田名部匡代

    田名部匡代君 ありがとうございました。  時間がなくなってまいりましたが、最後に宇田参考人にお伺いをしたいと思います。  私も青森ですので、果樹の王国というか、リンゴの産地であります。同じような課題を抱えているのかなというふうに思っておりました。と同時に、人口減少という問題は全国どこでも同じような問題を抱えているわけですが、お話聞くと非常にそれは厳しい状況に追いやられていると。農地の集積だどうだという前にほかの課題に取り組んでいかなければならないのかなと思いました。  是非、何か今、この農地中間管理機構の問題だけではなくてですね、地域にいらして、より、その農業政策としてもっとこういう支援があれば、移住、定住、こういったことが進むのではないかという何か御要望があるとしたら、お聞かせいただければと思います。
  253. 宇田篤弘

    参考人(宇田篤弘君) 農家の方からJAさんなんかもアンケートを取ったりしているんですけれども、出てくるのは、やはり担い手の問題と価格の安定と、それから耕作放棄地の問題と、それから獣害というこの四つ出てくるんですけれども、一番根っこにあるのは価格が安定しないというところがやっぱりあると思うんですね。私どもは生協産直をして安定させていこうということで努力しているんですけれども、そういったところの特に果物なんというのを評価するのは非常に難しいところがあるんですけれども、セーフティーネットを張っていくというような取組があって、安心してチャレンジしていけるという状況をつくり出すということが非常に大事ではないかなと思います。  以上です。
  254. 田名部匡代

    田名部匡代君 どうもありがとうございました。終わります。
  255. 佐々木さやか

    佐々木さやか君 公明党の佐々木さやかです。今日は三人の参考人先生方、貴重な御意見を頂戴しました。大変にありがとうございます。  この農地の集約という問題について考えますに、やはり農業を担っているのは人であります。ですので、やはり人に光を当てて、人が暮らす、生活をする地域ということに光を当てて重視をしていくということがやはり重要なんだろうというふうに私も思っております。  そういった観点で申し上げますと、今回の法改正では、そうしたところも重視をしながら今回議論をさせていただいているのかなと思っているんですが、やはりこのポイントといたしましては、人・農地プランの実質化ということであろうというふうに思います。  これは、人・農地プランがつくられていたとしても、地域によって実質化の程度といいますか、そういったところは少し様々なところがあると。ですので、この人・農地プランの実質化をどういうふうに進めていくか、この実質化についてのこれまでの課題というところと、これからそうした地域について実質化を実現していくために何がポイントというふうに考えていらっしゃるかということを、三人の参考人先生方それぞれのお立場から教えていただければというふうに思います。よろしくお願いします。
  256. 佐藤博

    参考人(佐藤博君) いろんな課題、中山間は難しい話ですけれども、この人・農地プランの実質化といいますか、地元のその話合い、協議を通じて合意形成を得て集約化をしていくというところが、先ほどの説明でもお話ししましたように、一つの地域で、集落でもいいですけれども、圃場整備やるんだという目的があれば人も集まるんですね。なかなかそういった共通の目的がないと集まりづらくなっているというのがやっぱり実態でございます。これは人・農地プランが民主党の先生方の政権のときにできたときから私は実は感じておりました。  その前に、いろんな生産調整で集落でもって集まって話し合ってくれということは何度となく国の方から言われておりましたし、とりわけ一番大々的にやったのは、品目横断のときに集落営農でもって立ち上げるということで、ほぼうちの県の場合は、全部とは言いませんけれども、相当の数の集落について話合いが行われたわけですね。  ただ、それから何年かたって、十年たって、十五年たって、今になるとなかなか、どういうインセンティブを与えると農家の方が集まってくるのかというところがやっぱり一番肝腎なところだと思うんですね。  ただ、そうはいっても、農家の方も薄々、うちの地域はこのままじゃうまくないなという思いは多分持っているんですね。それを、漠然と持っているそういった不安なり将来に対する、何といいますか、その悲観的な見方というものをきちっと前に出して見せてあげると、いや本当に何とかしなきゃいけないと、こういうふうになるのではないかなと。  そういう点で見れば、やっぱり能力の高いところ、昔から頑張っているところはそれなりの、何といいますか、機は熟してきているのかなと思うんですね。後はそれをいかにそのアクションに結び付けていくのかと。  私、先ほど、どの組織がプレーヤーとなってどういった段取りで何をインセンティブに農家に集まってもらってやっていくのかという話ししましたけれども、まさにそこだと思うんです。それがやっぱりうちの県の場合は一・二・三運動でありますし、それから土地改良区を中心とした農地の集積なり集約化というところだと思うんですね。  秋田の中でも私が出身の県南の羽後町というところは今それをやろうとしてございます。ここは昭和四十年代、五十年代の初めにもう既に三十アール区画に圃場整備は終わっていますので、今更大区画というわけにも、まあいかないわけはないでしょうけれども、なかなかそこまではいかないと。  そこで、じゃどうやって、当時は全然そういった担い手に対する集約も集積もという話はなかったわけですので、混然一体となって担い手が耕地を耕していると。それをきちっと図面に落として、台帳に落として、図面に見せて、そしてこれから話合いを続けていこうということで、役場と町と農業委員会とそれに土地改良区が入って、今その集積、集約のための協議会を新たに立ち上げて、アンケートは全部終わりましたので、一・二・三運動でアンケート終わって、人・農地プランの見直しも終わりましたので、あとはそれを実行に移していくと。シャッフルしていくなり集約するということを今やろうとしています。そういったところをやっぱりつくってこれからいくというのが大事だろうと。  話合いは、私は、人・農地プランをやりますから皆さん来てくださいでは誰も来ないと思います。ですから、その話のきっかけは、例えば中山間の直払いの集まりであったり集落協定の話合いであったり、それから先ほどありましたけれども、農協の地域営農ビジョンの検討会であったり、それから、生産調整の配分はなくなりましたけれども、じゃ来年どうやってやるんだという農協の座談会なり、場合によっては、その地域の用水路なり泥上げなんかでもってコンビニの前で車座になって酒飲んでいるとき、いや、ジュース飲んだりたばこを吸っているときも、これもまた話合いの一つではないかと私は思うんですね、地域の将来を話し合ったり。  だから、そこは構えないで、人・農地プランのために皆さん話し合いましょうなんということを言わないで、そういったいろんな機会を使って、まずは地元の何とかしようというところにしっかり火を付けていって表に出す、可視的に見せるという取組をまずやっていくのが私はいいんじゃないかなというふうに思ってございますし、そういったところをこれからうちの方もアイドリングしていきたいなというふうに思ってございます。
  257. 宇田篤弘

    参考人(宇田篤弘君) 先ほども少しお話しさせてもらいましたけれども、両方のこの何というか、一人一人の方というのは持っていると思う、諦めている自分もあるし、でも一方では何とかしたいという希望を持っている人もいてると思うんですけれども、そういったものをどう引き出していくかというのは、やっぱりみんな集まったりしていくことだと思いますし、聞き取りをしていくというのは非常に大事なんじゃないかなと思っています。入っていきますと、大体二時間ぐらいずうっとお話ししてくれます。どんなふうにして暮らしてきたのか、現状がどうなのかという。で、その次ですよね、実はこんなふうにしたいんだという話をしてくれます。  明治大学の小田切先生が誇りの空洞化というふうにおっしゃったと思うんですけれども、やっぱり自信なくしているというのが非常に強いんではないかなと。見通せないということが一番大きくて、そこに皆さんのお話を聞いていって、それを今度また報告会して返していくと、お互いに共感し合うようなところがたくさんやっぱり出てくると思うんです。  集落の中には、祭りをとにかく頑張って残していきたいだとかという、そんな声も出てきます。私も最初は、担い手がどんどん少なくなってくることを、労働力が足らなくなるというふうな感じ方みたいなことをしていたんですね。でも、移住して定住して農業をする方は、労働力ということでなくて、やっぱり幸せになろうと思って皆さん来るんですよね。そういう受け止め方をして、そういうことを受け入れられるような集落になっていくということが非常に大事でないかなと思っているんです。  そして、その上で、その農業を、そのなりわいとしての農業をどういうふうにそこの地域で発展さすかということを考えていく、全体で皆さんがビジョンを持っていくということができれば、小田切先生も言われているんですけど、そう簡単に集落は潰れないというふうに言われていますけれども、私も実際入ってみて、非常に高齢化していても、諦めないという方たちがたくさんいるということをやっぱり感じました。その辺りが大事だなと思います。  以上です。
  258. 安藤光義

    参考人(安藤光義君) 農地集積のための人・農地プランにしないということが重要なのかなと。これ、とんでもないことを言っているように見えるかもしれませんが、農地を集積して、でも地域の人たちが活力を失ってしまっては何の意味もないわけですよね。結局、入口なり話の持っていき方ですけれども、最初はやはり生活というか暮らしに関わるような話から皆さんに話をして、それで、じゃそれを実現するためには、じゃ農地どうしようかなと、そういうふうな話合いの持っていき方というのはすごく重要かなというふうに思います。実際どういう暮らしぶりをしているのかなという、そういうヒアリングから始めることが重要だという話が宇田参考人からありましたけれども、そういう地道な積み上げから話が聞き出せるんじゃないかなというふうに思っております。  また、集落の目標を掲げるということが、旗を掲げるということが重要で、以前であれば地域営農ビジョンとか集落営農ビジョンとありましたけれども、そうした旗を掲げて自分たちの村をどうしていくんだと、こういうことを考えるということも重要かなと思っています。  ただ、集落はかなり傷んでいて、集落合意といっても簡単ではないかなと思っております。集落の寄り合い開いてもなかなか人は集まってくれないケースが増えてきている中で、じゃどうやって農地を集積して、あるいは面的な集約を図っていくかというときに、私はやはり担い手を集めて話合いをさせるということも重要かなと思っています。大規模な方々、これは平場の条件がいいところの話になってしまうかもしれませんが、彼らは、耕地分散が大きな問題になっていますので、農地の交換とか、必ず話合いに乗ってくれると思うんですよね。そして、話合いをして、彼らに原案を作ってもらって、その結果を今度は集落に戻していくと、こういうことをすると結構動きがあります。例えば、静岡県の磐田市の南部地区というところは、そのように担い手の方々の組織化も行いつつ進めてきました。そうした担い手の方々の連携関係ができていると、もし何か事故とか病気があったときに互いに助け合える関係もつくることができることになるかと思います。  そういう点では、村から積み上げということも重要ですけれども、今の時代は担い手の間の連携関係をつくっていく、そういうふうな仕組み、仕掛けづくりも求められているんじゃないかというふうに思っております。  以上です。
  259. 佐々木さやか

    佐々木さやか君 ありがとうございます。  それぞれのお立場から、また違う視点というところもありますし、また共通の目的とか、旗を掲げるというところ、またアンケートなどを通じてよくその地域の実情、担い手の皆さんのきっとこの思いとかいろんなことをよく聞いていくと、そういう何となく三人の参考人先生方の共通の御意見もあったように思いますし、あと、すごくうれしかったというか、なのは、佐藤参考人や宇田参考人から、そんなに集落は簡単にきっとなくなるものじゃないとか、やっぱり皆さん心の中ではいろんな思いがあって、諦めそうになりながらも、でもやっぱり諦めない、何かそういうすごく希望が持てるような、そういうお話を聞くことができて、非常にうれしい気持ちになりました。  ちょっと残り時間が少ないので、一点、安藤参考人に教えていただきたいんですけれども、佐藤参考人も中間保有案件の増加への対応ということで、地代の未収問題とか貸し手の死亡による相続の発生とか、確かに今後この相続の問題などは非常に増えてくると思いますし、例えばこういう相続の問題などは、事前にこういう相続が例えばスムーズにいくようにとか、事務手続が煩雑にならないようにいろんな予防みたいな、事前に手をできるだけ打っていくようなことももしかしたら必要なのかなと、そんなことも思いながら話を聞いておりました。  安藤参考人は、こういう問題点があるので、この農地中間管理事業の言わば構造的な問題で、なかなか解決が難しいと結論付けてはいらっしゃるんですけれども、やはりこういう問題が起こってきて、少し現実化してきたところには、やっぱり一つの方法としては、先ほど佐藤参考人も少しお話しされました弁護士とかいろんな士業の専門家とか、そういったところとの連携を、外部の専門家との連携というのもどんどんやっていかなきゃいけないのかなと、そんなふうにも思ったんですが、この点についてはどのように、安藤参考人、思われるでしょうか。
  260. 安藤光義

    参考人(安藤光義君) 私が指摘した問題点は、この制度に起因するものなので、どうしても残ってしまう、解決はできない。ただ、その問題が大きくならないようにどう手当てをするか、あるいは予防措置をとるかということになるかと思います。  そういう点では、実際に当事者として一番頭を悩ませている秋田の公社の方が考えていることはやはり現実的な対応策かなと。これを制度改正によって何らかの突破口を見付けるというのはちょっと難しいかなというふうに見ております。  以上でございます。
  261. 佐々木さやか

    佐々木さやか君 ありがとうございました。  以上で終わらせていただきます。
  262. 儀間光男

    ○儀間光男君 日本維新の会・希望の党の儀間でございます。  今日は、三先生方、貴重なお話を聞かせていただきましてありがとうございました。時間も少ないことから、より効果的に活用する意味から、第一問はお三名の先生方共通な質問を差し上げたいと、こう思います。  先刻、今日の先刻ですが、農林水産委員会、この問題の質疑応答がありまして、そこでも少しやったんですけれど、政府は農地を集積をして今五年の実績があるんですが、二十九年度現在で全体の五五・二%を達成したと、集積をですね、いうような数字になっています。見ますというと、耕地面積が二十九年度で四百四十四万四千ヘクタールということを押さえて、政府は、もう一方では、令和五年、二〇二三年までに三百五十五万五千二百ヘクタールの農地を集積する、これ実にハイペースなんですね。しかも、その中の八割、八〇%についてはそれまでに担い手にシェアさせたいというような希望を持っているんです。  それを、積算については時間なくてちょっと取れなかったんですが、この数字を押さえて先生方にお尋ねしたいんですが、この一方で、政府は、今度は二〇三〇年に農林水産物の輸出を五兆円まで持っていこうというようなことがあるんです。そこで、これには、質問として私は大臣には、これを達成するには革命的な生産技術が改革され、あるいは圧倒的な耕地面積農地面積確保しないというとなかなか達成できない、しかも一方では国内の自給率等も含めるというと、この数字は一体どこから来たんだいという話をしたんですが、あくまで目標であるというような押さえ方をして答弁がありました。  お三名の先生方、知見者として、政府のこれどうお考えか、ちょっと所見を賜れれば有り難いなと思います。安藤先生から順に。
  263. 安藤光義

    参考人(安藤光義君) 八割の担い手集積という話ですけれども、実際のところなかなか難しいだろうというふうに思っております。  北海道はほぼ集積が進んでいるような状況で、むしろ担い手が減るのをどう防ぐかと、農家の数をどう減らないようにするかということが課題になっているという状況です。その一方で、中山間地域は担い手がいなくて、これ以上集積しようとしても担い手がいないと。こんな状況になっているかなというふうに思っていて、実際に八割達成できなかったらどなたが責任を取るんでしょうね。そういう状況に多分なるんじゃないかなと。そうなる前に、八割という目標を何らかの理由を付けて引き下げた方がよろしいかなというふうに思っております。  また、担い手に集積したとしても、後継者がいなくてその農地が丸々出てきてしまう、そういう状況がこれから多分広がってくるんじゃないかなというふうに思っております。それに対してどう対応していったらいいか、これがこれから多分、二〇二〇年あるいは二〇二五年の農業センサスを見るとそうした状況が出てくるんじゃないかなと思っております。そうであるがゆえに、担い手間の連携、意思疎通、組織化が私は重要ではないかというふうに考えているということです。  それから、二点目の農産物の輸出の問題ですが、これは何を輸出するかということにも関わってくるかと思います。付加価値が高くて、かなり高い値段でしかも余り量がかさばらないものを売ることができるような状況が生まれれば、それなりの数字は、ただ五兆円というのはかなりの金額ですので、これが実現するかどうかは私ちょっと自信がないですが、そうしたものを幾つか、外国で売れるものをどうマーケットリサーチをして探し当てていくか、この辺りが、農水省というよりもむしろ民間企業にやっていただいた方がいいかと思うんですけれども、腕の見せどころかなというふうに思っております。  私からは以上になります。
  264. 宇田篤弘

    参考人(宇田篤弘君) 先ほどから言っておりますように、やはり中山間地域では八〇%を集積していくというのはほぼもう不可能じゃないかなと私は思っています。しばらくは、やはり担い手の数、農地減少していくのを止めるのは相当エネルギーを注がないと難しいんではないかなと思います。  傾斜地のところから耕作放棄地が広がってきているんですが、最近は、平たん地のところも秋になるとセイタカアワダチソウが黄色い花を咲かせます。もう本当に黄信号みたいな形で平たん地まで及んできていますので、これをどう食い止めるかというのは今の延長線上だけではなかなかやっぱり難しいし、抜本的な対策が要るんじゃないかなと思います。  輸出に関しては、出しませんかというお誘いはたくさんあるんですが、今のお取引先の方に出すので精いっぱいというか、むしろ減るのをどう食い止めるかということがもう精いっぱいの状態に今やっぱりなってきています。輸出が悪いということではないですけれども、やはり、まず地産地消であったり、国内の自給率を高めるということが非常に大事なんではないかなというふうに思っています。  家族農業の十年と言われていますけれども、二〇五〇年辺りのところでの世界の人口を考えると、やはり山間地域の水田地帯も含めて、もう一回米が作れるような状態をつくり出すというのが非常に大事なのではないかなと思います。  以上です。
  265. 佐藤博

    参考人(佐藤博君) 集積の目標にまずつきましては、この農地中間管理機構、機構の法制度ができる前の県の県農政の基本指針でもっての目標が、平成二十九年、担い手への農地集積率を七四%というふうに設定しておりました。その後、この機構制度が出まして、当県では平成三十二年、国が三十五年の担い手への八割ですけれども、当県は発射台が既に高いわけでございますので、平成三十二年に農地集積目標八割にと、三十五年には九割まで持っていこうというふうな目標を立ててございます。  ただ、配付しました資料にもありますように、ちょっと分子の取り方が国の方と当県の取り方は違います。若干国の方にない、今後育成すべき者というものを入れていますので、そこに少しそごは生じてございますけれども、平成三十二年の八割に近い数字は何とか達成していきたいなというふうに思っております。今現在、七四でございますので、多分三十年入れますと七六近くになると思いますので、もう二年でもってそれに近いものにやっていきたいと。  もちろんうちの県が、先ほど申し上げましたように、全国の中でも水田農業地帯であり、土地利用型のそういった農業が主体に営農展開されておりますので、そういった条件が恵まれているといいますか、集積に関しては意外と数字が出やすい地域だということがありますので、うちの県ぐらいは少し頑張って、当然、生産の大宗を担うような生産構造にする、本県の農業をするということはもちろんでございますけれども、あわせて、その実現によって国の御期待に応えることができれば本望だなというふうに思ってございます。  あと、輸出に関しましては、その五兆円の額が妥当なのかどうかということはちょっと私は控えさせてもらいたいと。ただ、現場の方、一年前まで現場でもってそういったことも進めてきた立場から申し上げれば、農家の所得の向上につながるそういった輸出でやっぱりあるべきだろうと、額が多い少ないよりもですね、そういう輸出であるべきだろうというふうに思ってございます。  以上です。
  266. 儀間光男

    ○儀間光男君 輸出五兆、今までの国内での農林水産物の流通の実績等を見ると、九兆から十兆円になんなんとするわけですけれども、本当に行けるかなと、こんな無謀な目標を設定して、途中でこけて農家を失望させるんじゃないかというような心配があったから御見解を賜りました。  それから、安藤先生、教えていただきたいんですが、先生日本農業新聞の昨年十一月十七日と二十五日の新聞を前に見させていただきました。その中で、農地機構に対して、都道府県に一つというところに大きな反省点があり、これ間違いじゃないかと、市町村にすべきだっただろうということと、もう一方では、平成の合併によって市町村が非常に行政的に脆弱をしてきたという御指摘も同時にあるんですが、現状を見るというと、市町村が非常に弱体化する中で財政基盤も非常に脆弱であるということから、これを市町村に移行するというと、不足している人材の確保、あるいは行政需要による行政負担等々の財源がかさんでいく、それは機構の方から支援があったり国から支援があったり、あるいは団体の方から支援があったり、いろいろ方法はあるのかも分かりませんが、その辺の二つのお話をどうまとめてくださるか、教えていただきたいんですが。
  267. 安藤光義

    参考人(安藤光義君) 今の御指摘は、この機構が抱えている本質的な問題ということに関わるものかと思っております。  ただ、今の段階で市町村にもう一度同じものをつくるとなると、これはまた、失われた時間もかなりたっておりまして、なかなか難しいなというのが正直なところかと思います。  ただ、実際にこの仕組みを運用する場合には、機構が全面に出るのではなくて、機構は黒子に、黒子にというか事務処理の黒子に徹して、そして実際の動きは現場でつくっていくというのが肝要かなと思っております。ですから、機構は実績上げていただいていいんですけれども、機構が主役ではなくて現場が主役なんだという、そういう運用を心掛けていただければなというふうに思っております。  ただ、その一方で、御懸念されるように、今、市町村あるいは農協も含めて合併が進んで、現場の体力相当衰えていますので、そこにどういう取っかかりを設けていったらいいか。村もかなり弱体化しているところも多いので、そこのところにどういうまとまりをつくり、そこにてこ入れを、てこ入れと言ったらちょっと失礼ですね、地元の人たちにやる気を持って新しい動きをつくっていっていただけるかと、その仕組みづくりを、これまでの行政の体系等ではなかなかうまくいかなくなってきているので、そこは農政に限らずかなり根本的な問題として今私たち直面しているんじゃないかなというふうに理解しております。  以上になります。
  268. 儀間光男

    ○儀間光男君 ありがとうございました。  それから、宇田先生にお伺いしたいんですが、先生の地域は、僕、日頃から興味を持って見ていたんですが、相対売りというか、畑から直売というか、直売所を多く設けたりして、いわゆる流通の中間をカットしてダイレクトに結ぶのがあちこちで展開されていて、非常に興味を持っていたんですが、おいしいのを安く提供するということで、仲卸やいわゆる市場に、中央市場や地方市場、それを通さぬで、カットしていきなり消費者へ行くという手法があちこちに見えるんですけれど、こういう状況の中で、流通を担うJAや、あるいはその他の流通や、あるいは量販店との直接の取引やあれで、何かちょっと困り事とか弊害とか、そういう不便なところはあるんですか。
  269. 堂故茂

    委員長(堂故茂君) 申合せの時間が参っておりますので、簡潔に御答弁、よろしくお願いします。
  270. 宇田篤弘

    参考人(宇田篤弘君) 不便というか、やはり量を、直売所の場合はそうではないんですが、相対取引の場合はやはり量確保ということと、それから青果さんなんかはやっぱり三か月、四か月前から企画を入れていくというようなことがあります。安定的にその量を確保していくというところが、今のこの高齢化と生産量が少し弱ってきているようなところでは、見通しを立ててお取引していくというのが非常に大きな課題です。  以上です。
  271. 儀間光男

    ○儀間光男君 佐藤先生、済みません。聞きたかったんですが、時間になりまして、黙らなければなりません。お許しください。  ありがとうございました。
  272. 紙智子

    ○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。  今日は、参考人の皆さん、大変貴重な参考になるお話をいただきまして、ありがとうございます。  それで最初に、安藤参考人からお聞きしたいと思うんですけれども、元々この農地中間管理機構の話って、やっぱり非常に担い手が高齢化してきているという中で、農地がそのまま放置されたら大変なのでそこをやっぱり何とかつないでいくというようなことで、特に大変なところに手当てしていくようなものとして議論されてきたように思っていたんですけれども、だんだんちょっと変わってきちゃったなというのがあって、法案出されて以降。それで、安藤参考人の先ほどの話の中でも、やっぱり現場でいろんな矛盾が出てくるんじゃないかということでいろいろ指摘もあったところがやっぱり当たっていて、そこを修正していくという中身があるんだということも含めてお話しされていたと思うんですけれども。  それで、農地中間管理機構というのは三つ目的が、目的というか役割があるということが書かれていて、一つ農業経営の規模を拡大すること、二つ目は農用地の集団化を図ること、三つ目は新規参入を図ることと。この三つ目の新規参入を促進する規定を作ったというのは中間バンクの特徴なんだと思うんですよね。  それで、農業のアグリビジネス化という角度から見ると、やっぱりこれは大きなビジネスチャンスになると。今回、全国的に農業経営を展開できる認定農業者をつくるということですとか、農地所有適格化法人の中でグループ経営を行う際に役員要件を緩和して労務管理を広域で行えるようにするということもあるわけですけれども、そういう意味では、この新たな認定農業者の創設とか法人の役員要件緩和ということなんかの目指しているところというか、その辺をどのように思われているかなということをちょっとお聞きしたいと思うんですけれども。
  273. 安藤光義

    参考人(安藤光義君) そういう点で、今の御指摘の点は、ある意味で農地の、まあ今は賃借権だけですけれども、所有権も含めた自由化に向かうような流れをつくろうということなのかもしれません。  ただ、この中間管理機構の実績でもお分かりになりますように、土地利用農業は余りもうからないですから、そこに入ってくる理由というのはちょっとよく理解し難い部分があるかなというふうに見ております。  ただ、もう一つこの中間管理機構について言うならば、新規参入、新規就農者の育成という点でいうと、全く縁もゆかりもない人たちに農地を貸し付ける仕組みをつくったという面もあって、それなりに新規就農者の育成にとって貢献している面も、これは今先生から御指摘ありましたように、大企業とかアグリビジネスとかそういうものではなくて、本当に農村にやってきた若い人たちに門戸を開放すると、そういう役割を多少ですけれども果たしている部分があるというのも事実かなと思います。  ただ、そのときにこの機構を使う必要が本当にあったのかどうなのかということについては、書類の問題もありますので、書類というのはそれに伴う事務処理の問題も結構ありますので、もしかするとなくてもできた面もあるかもしれないなというのも事実かと思います。  以上です。
  274. 紙智子

    ○紙智子君 ありがとうございました。  それじゃ、宇田参考人にお聞きしたいと思います。  紀ノ川農協の話をされて、販売専門農協ということで、それでトマトとか、それから柿、タマネギ、ミカンなどなど、主要品目ということで取り組まれていると。和歌山県というのはミカンということで、その産地で有名なところだったと思うんですけれども、一九九〇年代にオレンジ、牛肉の自由化が行われて、やっぱり産地が大きな打撃を受けたんだと思うんですね。そういう中で再生産を必死になって努力をしてこられたところだというふうに思うし、耕作放棄になったところなんかも含めて、やっぱりそこを立て直すということで取り組んでこられたんじゃないかと思うんです。  その中で、地域の再生といいますか、先ほどのずっと話を聞きながら、やっぱり再生するための果敢な、何というかな、努力というか、やられているなということを思いましたし、やっぱり立体的に、複合的に、その枠を作るということが先じゃなくて、支えていく人をつくっていく、力を引き出していく、そういうことでのいろんな試みが努力されているんじゃないかなというふうに思って、すごく感銘を受けながら聞いていたんですね、実は。  いろんなつながり、消費者とのつながりとか若い学生も入れ込むとか、そういうこともやりながらやってこられているんですけれども、その点でいうと、今、中山間地で農業再生するというために、そういう大変な苦労というか、さっきは十分語れなかったけれども、いろいろ苦労があったんじゃないかなと思うので、その努力されていることを一つはお聞きしたいのと、もう一つは、やっぱりそういう今努力していることを本当に生かしていくということでいうと、国の支援の在り方といいますか、農地の整備ということも含めて御意見を伺いたいと思います。
  275. 宇田篤弘

    参考人(宇田篤弘君) 苦労はいっぱいなんですけれども、ミカンの、オレンジ輸入自由化のときに減反で、八九年、九〇年、九一年辺りだったと思うんですけれども、その辺りから落葉果樹の方に大転換されていくんですけれども、その品目が従来の産直ということには向かないというか、桃なんかが非常に扱いにくかったということもあって、それと、お取引先もバブルの崩壊の後、消費不況に入っていって、価格がすごく下がり始めた時期があったんですね。  急速に伸びたんですが、またそこから下がっていくというところをどう立て直していくかというところが非常に苦労したんですが、あの当時、とにかく私は、三十八歳から組合長になりましたし、何をしたらいいかよく分からないような状態からやったんですけれども、やっぱり若い人に、すぐ次のことを考えていくということが非常に大事なんじゃないかなというふうに思いました。  ここで、五年辺りも、とにかく次の経営陣どうしようかとか職員をどうしようかとか、担い手をどう育成していくかということを取り組んではきているんですけれども、その中心に据えていくような考え方というのは、全てのことを、やはり消費者の方、社会からも支持されるということが非常に大事なんじゃないかなと。自分たちの利益だけにということではなくて、そのことが非常に社会的に役割があるということを、この産直の中、この事業展開の中で明らかにしていくということが大事なんじゃないかなというふうに思いました。  大変な時期に考えたのが、有機の町づくりというのを考えました。単に安全、安心でなくて、その地域自身が持続性をどう持っていくかということを考えましたし、今もそういう意味では持続できる環境保全型農業をどう展開していくかということを考えたりしています。  それは、農業の持つ本来の機能をどう発揮させていくかという方向を商品を通じて消費者の方に理解していただくという取組が非常に大事なんじゃないかと思うんですけれども、まだ、例えば有機の農産物も、やはり自分の安全、安心だけでとどまっている方が非常に多いというふうに思います。でも、有機農業の求めていることというのは物すごい幅広い内容があるはずなんですが、そのことがまだ消費者の方も作る側の生産者の方にも浸透しないという問題があるというふうに思います。  その辺りを、価値をどう共有していくかというところが非常に大事だと思いますし、そういう点では、若い方の感性、感覚でもって次の見通しを立てていくというところが非常に大事なんじゃないかなというふうに思います。苦労といえば、そういうところを理解していただくということかなというふうに思います。  以上です。(発言する者あり)  先ほども、私というか、農家の方の要望として出てくるのは、結局、担い手、価格、それから耕作放棄地、獣害なんですね。基本的にはやっぱり価格をどう安定さすかというところでいえば、農業の多面的機能、農林水産省が出されたやつで二千二百億円ぐらいあったと思うんですけれども、現在直接支払でされているのが多分七十億ぐらいだったと思うんです。間違っていたらごめんなさい。まだまだ、評価されているにもかかわらず、直接的なそういう農業の多面的機能に対する支援がもっとあれば、安心して農業にチャレンジできるんじゃないかなというふうに思います。  以上です。
  276. 紙智子

    ○紙智子君 ありがとうございます。  それでは、最後、佐藤参考人にお聞きします。  以前、秋田の方にもお邪魔していろいろ説明をいただきまして、ありがとうございました。  それで、佐藤参考人にお聞きしたいのは、ちょっと北海道と本州と大分違いがあるというふうには思うんだけど、農地利用の集積円滑化事業、これはやっぱり農地バンクに今回統合一体化するということなんですけれども、いや本当にこれ統合ということになるのかなというか、円滑化事業の実質的な廃止になるんじゃないのかなという気がして、なぜならば、この農業経営基盤強化促進法にあるこの円滑化事業の条文が見直し案に入っていないということがあるんですね。特に、市町村の基本構想に円滑化事業を記載した上で農業委員会の決定を経なければならないということで、農業委員会の関与が明確に書かれているんですけれども、見直し案にはそれが特に入っているわけではないと。  つまり、ポイントとしては農業委員会の意思決定という問題。農地を流動化させる際に、これまででいえばというか、かつては農地の番人と言われてきた農業委員会の関与というのは重要だったわけなんですけれども、地域に根差したそういう円滑化事業を残して、必要に応じて農地中間バンクと連携するということが現実的なんじゃないのかなというふうにちょっと私なんかは思ってしまうんですけれども、その辺はどうなんでしょう。秋田の場合は相当今もう集約してきているんですけれども、ちょっとお聞きしたいと思います。
  277. 佐藤博

    参考人(佐藤博君) 当県の事情をお話ししますと結論が出ちゃうわけですけれども、やっぱり円滑化の直近の実績、最盛期の一割強ぐらいしかもうなくなっておりますし、先ほど申し上げましたように、もう満期を迎えるものから順次切替えしている状況にございます。  これを、円滑化事業を残して、北海道さんですとかそれから愛知県さんみたいに、頑張っていらっしゃるところはやっぱりきちっとそれはこれからも頑張ってもらう道を残しておくべきだと思うんですね。ただ、大方のところにつきましては、大なり小なりうちの県と同じような状況じゃないかと思うんですね。農協さんの組合長さんにお話ししますと、じゃ任せたと、そうだねということで、これから発展的にこれをやっていくというのはちょっと私は現実問題厳しいと思いますね。ですから、市町村も同じでございます。多分、うちの方の首長なりJAの組合長にアンケート取れば、まずほぼ一〇〇%、機構に頑張ってくれと。  ただ、私、ここで大事なのは、円滑化の制度云々をどうのこうのというよりも、これまでずっと農協さんですとか市町村が頑張ってきた、現場でいろいろと蓄積してきたものがあるわけですね。そうしたノウハウをやっぱり機構が機構事業の中でそれをしっかり生かしてもらうと、引き継いで生かしていくという考え方が大事だと思うんですね。  ですから、極端に言えば、農家にしてみれば、これは出す方も受ける方も、円滑化だろうと何だろうと、やっぱりしっかりと農業経営に資するような形でやってくれればこれは問題ないわけですよね。そう考えますと、やっぱりここ五年で、私は農地政策で五年というのは極めてまだ短い期間だと思うんですね。これでこれを今また元に戻すというのは、私は、現場の方ではとてもでないけどちょっと耐えられないよなと、私でなくて、農協さんなり組合長さんが、首長さんが多分そう言うんでないかなと思いますし、何が困るって、農家が多分一番困るんでないかなと思っていますので。  ですから、ちょっと新聞等で見ましたけれども、大臣お話ししていた都道府県単位の機構なのか市町村単位なのかという、そういった二者択一でなくて、やっぱり一緒にやっていくという考えでいいところをこれからも引き継いでいってやっていくということが、やっぱり今、農家のためにも一番大事なのではないかなというふうに思ってございます。
  278. 紙智子

    ○紙智子君 ありがとうございました。  誰のために本当に役に立つのかということをしっかり考えた方向で推進できるようにしなきゃいけないというふうに思います。  以上で終わります。ありがとうございました。
  279. 堂故茂

    委員長(堂故茂君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の皆様に一言お礼を申し上げます。  本日は、長時間にわたり御出席をいただき、貴重な御意見をいただきました。委員会を代表しまして厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十六分散会