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2019-06-13 第198回国会 参議院 外交防衛委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    令和元年六月十三日(木曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  五月二十八日     辞任         補欠選任      朝日健太郎君     山田  宏君      小西 洋之君     又市 征治君  五月二十九日     辞任         補欠選任      堀井  巌君     末松 信介君      元榮太一郎君     佐藤 正久君      又市 征治君     小西 洋之君  五月三十日     辞任         補欠選任      末松 信介君     堀井  巌君      小西 洋之君     牧山ひろえ君  五月三十一日     辞任         補欠選任      牧山ひろえ君     小西 洋之君  六月五日     辞任         補欠選任      猪口 邦子君     豊田 俊郎君  六月六日     辞任         補欠選任      豊田 俊郎君     猪口 邦子君  六月十日     辞任         補欠選任      猪口 邦子君     関口 昌一君      小西 洋之君     藤田 幸久君  六月十一日     辞任         補欠選任      関口 昌一君     猪口 邦子君      藤田 幸久君     小西 洋之君  六月十二日     辞任         補欠選任      堀井  巌君     こやり隆史君      福山 哲郎君     杉尾 秀哉君  六月十三日     辞任         補欠選任      山本 一太君     徳茂 雅之君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         渡邉 美樹君     理 事                 宇都 隆史君                 中西  哲君                 三宅 伸吾君                 大野 元裕君                 高瀬 弘美君     委 員                 猪口 邦子君                 こやり隆史君                 佐藤 正久君                 武見 敬三君                 徳茂 雅之君                 中曽根弘文君                 山田  宏君                 小西 洋之君                 杉尾 秀哉君                 白  眞勲君               アントニオ猪木君                 山口那津男君                 浅田  均君                 井上 哲士君                 伊波 洋一君    国務大臣        防衛大臣     岩屋  毅君    副大臣        防衛大臣    原田 憲治君    大臣政務官        防衛大臣政務官  鈴木 貴子君        防衛大臣政務官  山田  宏君    事務局側        常任委員会専門        員        神田  茂君    参考人        ANAホールデ        ィングス株式会        社常勤顧問        元統合幕僚長   岩崎  茂君        拓殖大学国際学        部教授海外事        情研究所所長  佐藤 丙午君        国際地政学研究        所理事長        元内閣官房副長        官補       柳澤 協二君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○外交防衛等に関する調査  (平成三十一年度以降に係る防衛計画大綱及  び中期防衛力整備計画に関する件)     ─────────────
  2. 渡邉美樹

    委員長渡邉美樹君) ただいまから外交防衛委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日までに、朝日健太郎君、元榮太一郎君、福山哲郎君及び堀井巌君が委員辞任され、その補欠として山田宏君、佐藤正久君、杉尾秀哉君及びこやり隆史君が選任されました。  また、本日、山本一太君が委員辞任され、その補欠として徳茂雅之君が選任されました。     ─────────────
  3. 渡邉美樹

    委員長渡邉美樹君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  外交防衛等に関する調査のため、本日の委員会ANAホールディングス株式会社常勤顧問・元統合幕僚長岩崎茂君、拓殖大学国際学部教授海外事情研究所所長佐藤丙午君及び国際地政学研究所理事長・元内閣官房長官補柳澤協二君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 渡邉美樹

    委員長渡邉美樹君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 渡邉美樹

    委員長渡邉美樹君) 外交防衛等に関する調査のうち、平成三十一年度以降に係る防衛計画大綱及び中期防衛力整備計画に関する件を議題といたします。  まず、政府から報告を聴取いたします。岩屋防衛大臣
  6. 岩屋毅

    国務大臣岩屋毅君) 政府は、昨年十二月十八日、国家安全保障会議及び閣議において、新たな防衛計画大綱及び中期防衛力整備計画を決定いたしました。以下、これらについて御報告申し上げます。  我が国を取り巻く安全保障環境は、前防衛大綱策定時に想定していたよりも、格段に速いスピードで厳しさと不確実性を増しています。特に、国際社会におけるパワーバランス変化により、国家間の競争が顕在化するとともに、グレーゾーン事態長期にわたって継続する傾向にあります。  また、宇宙サイバー電磁波といった新たな領域利用が急速に拡大したことで、国家安全保障在り方根本から変わろうとしています。さらに、我が国周辺には、質、量に優れた軍事力を有する国家が集中し、軍事力の更なる強化軍事活動活発化傾向が顕著となっています。  こうしたこれまでに直面したことのない安全保障環境の中で、我が国平和国家として更に力強く歩んでいくためには、我が国自身が、国民生命身体財産領土領海領空を主体的、自主的な努力によって守る体制強化する必要があります。このような認識の下、専守防衛前提に、従来の延長線上ではない、真に実効的な防衛力のあるべき姿を見定め、新たな防衛大綱中期防策定いたしました。  新たな防衛大綱では、まず、我が国にとって望ましい安全保障環境を創出すること、また、我が国脅威が及ぶことを抑止すること、そして、万が一、我が国脅威が及ぶ場合には、確実に脅威に対処し、かつ被害を最小化することという、防衛の目標を明確に示し、この達成に必要な三つの手段をそれぞれ強化することとしています。  第一に、我が国防衛体制強化です。  防衛力は、安全保障の最終的な担保です。これまでに直面したことのない安全保障環境現実の下で、国家として存立を全うするため、我が国の主体的、自主的な努力によって防衛力の質、量を強化していかなければなりません。宇宙サイバー電磁波を含む全ての領域能力を有機的に融合させる領域横断作戦を行うことができ、また、平時から有事までのあらゆる段階において、柔軟かつ戦略的な活動を常時継続的に実施できる、真に実効的な防衛力として、多次元統合防衛力構築してまいります。  第二に、日米同盟強化です。  日米安全保障体制を中核とする日米同盟は、我が国のみならず、インド太平洋地域、さらには国際社会の平和と安定及び繁栄に大きな役割を果たしています。日米防衛協力のための指針の下、日米同盟抑止力対処力強化や、自由で開かれた海洋秩序維持強化を含む幅広い分野における協力強化拡大を行ってまいります。  また、在日米軍再編を着実に進め、特に、沖縄については、近年、米軍施設区域返還等負担軽減を一層推進してきているところですが、引き続き、普天間飛行場の移設を含む在沖縄米軍施設区域の整理、統合、縮小、負担分散等により、地元の負担軽減を図ってまいります。  第三に、安全保障協力強化です。  自由で開かれたインド太平洋というビジョンを踏まえ、防衛力を積極的に活用しながら、地域特性相手国の実情を考慮しつつ、多角的、多層的な安全保障協力を戦略的に推進します。この際、日米同盟を基軸とし、普遍的価値安全保障上の利益を共有する国々との緊密な連携を図ってまいります。  これらの実現に向けた防衛力強化は、格段に速度を増す安全保障環境変化対応するため、従来と異なる速度で行わなければなりません。新たな防衛大綱及び中期防では、特に優先すべき事項を可能な限り早期強化するため、既存予算人員配分に固執することなく、資源を柔軟かつ重点的に配分することとしています。  具体的には、領域横断作戦に必要な能力を優先的に強化することとしており、特に、宇宙サイバー電磁波領域における能力海空領域における能力スタンドオフ防衛能力総合ミサイル防空能力機動展開能力防衛力持続性強靱性を重視しています。  同時に、人的基盤強化装備体系見直し技術基盤強化装備調達最適化産業基盤強靱化情報機能強化にも優先的に取り組んでまいります。  あわせて、訓練・演習、衛生、地域コミュニティーとの連携知的基盤にもしっかりと取り組んでまいります。  これらに必要な事業を積み上げた結果、令和元年度から五年間の新たな中期防における防衛力整備の水準は、おおむね二十七兆四千七百億円程度を目途としています。その上で、装備体系見直し装備調達最適化を含め、一層の効率化合理化を進めることによって実質的な財源の確保を図り、おおむね二十五兆五千億円を目途に、各年度予算編成を実施することとしています。また、新たな中期防においては、新規後年度負担に係る国民への説明責任を果たす観点から、新たな事業に係る物件費契約額を明確にすることとし、おおむね十七兆一千七百億円の枠内として示しています。  以上申し述べました新たな防衛大綱及び中期防の下、真に実効的な防衛力構築し、我が国の平和と安全を維持し、その存立を全うするとともに、国民生命身体財産、そして、領土領海領空を守り抜くため、防衛省自衛隊は今後とも全力を尽くしていく所存です。  皆様の御理解と御協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
  7. 渡邉美樹

    委員長渡邉美樹君) 以上で報告の聴取は終わりました。  防衛大臣防衛大臣及び防衛大臣政務官は御退席いただいて結構でございます。  速記を止めてください。    〔速記中止
  8. 渡邉美樹

    委員長渡邉美樹君) 速記を起こしてください。     ─────────────
  9. 渡邉美樹

    委員長渡邉美樹君) これより、平成三十一年度以降に係る防衛計画大綱及び中期防衛力整備計画に関する件について、三名の参考人から御意見を伺います。  本日御出席いただいております参考人の方々を御紹介いたします。  まず、ANAホールディングス株式会社常勤顧問・元統合幕僚長岩崎茂参考人でございます。  次に、拓殖大学国際学部教授海外事情研究所所長佐藤丙午参考人でございます。  次に、国際地政学研究所理事長・元内閣官房長官補柳澤協参考人でございます。  この際、参考人皆様に対し、本委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただき、誠にありがとうございます。  皆様から忌憚のない御意見をいただき、今後の調査参考にさせていただきたいと存じますので、どうかよろしくお願いいたします。  議事の進め方について申し上げます。  まず、岩崎参考人佐藤参考人柳澤参考人の順にお一人十五分以内で順次御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることになっておりますので、御承知おきください。  また、参考人質疑者とも発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず岩崎参考人にお願いいたします。岩崎参考人
  10. 岩崎茂

    参考人岩崎茂君) 本日は、参議院の外防委員会出席し、このような形で安全保障に関する意見を申し上げる機会をいただきましたことは大変光栄なことだというふうに感じております。感謝を申し上げたいというふうに思います。ありがとうございます。  本日は、短い時間ですけれども、私が約四十年間、自衛隊で奉職させていただきました所感も交え、今回新たに策定されました三〇大綱、それから三一中期防について意見を述べさせていただきたいと思います。  申し訳ありません、手続をちょっと必ずしも承知しておりませんでしたので、私が今から申し上げることを事前に配付できていなかったことをおわび申し上げたいというふうに思います。  我が国は、現在、国家安全保障戦略、そして二五大綱、二六大綱平成二十五年の十二月に策定いたしましたけれども、当時、私は統幕長としてこれらの策定に向け、防衛省自衛隊内における検討に積極的に参加しておりました。あれから僅か五年の間に、国家間の相互依存関係が一層拡大、深化する一方、パワーバランス変化加速化、複雑化し、我が国を取り巻く安全保障環境は格段に速いスピードで厳しさと不確実性を増すようになってきております。とりわけ、宇宙サイバー電磁波といった新たな領域が死活的に重要になってきており、陸海空対応してきたこれまでの安全保障在り方根本から変えなければならない時代になってきております。こうした外的要因に加え、安倍内閣総理大臣の下、日米ガイドライン見直し平和安全法制整備など、我が国自身安全保障政策も大きく変わりました。  このように、前大綱策定から僅か五年の間で我が国安全保障環境が大きく変化する中、昨年一月に安倍総理防衛計画大綱見直しを判断されたことは極めて適切な判断であったというふうに考えています。  私は、昨年八月に安倍総理の下に設置された安全保障防衛力に関する有識者懇談会メンバーとして、七回の公式会議と数度にわたる勉強会研修会等に参加し、広範な議論をさせていただきました。議論の詳細を申し上げることは事柄の性質上差し控えますが、国民生命財産と平和な暮らしを守るため、また地域国際社会の平和と安全を確保するためにどのような防衛力が必要なのかについて、三村座長以下、懇談会メンバーと精力的に議論を重ねたところです。  今回の三〇大綱においては、一、宇宙サイバー電磁波等を含む全ての領域における領域横断作戦により我が国防衛を全うできること、二、平時から有事までのあらゆる段階で柔軟で戦略的活動を常続的に行えること、そして三点目は、日米同盟抑止力対処力強化し、その上で多角的、多層的な安全保障協力体制を推進できること、この三点を柱とする多次元統合防衛力構築することとしています。  これは、我が国を取り巻く安全保障環境現実を踏まえれば、軍事専門的な観点から極めて妥当な内容であり、まさに国民を守るために真に必要な防衛力構築のための方向性が明確に示されており、高く評価できるものと考えています。  この多次元統合防衛力構築を図っていく上で私として特に重要であると考えられる以下の五項目について申し上げたいと思います。一点目軍事、非軍事境界線曖昧化、それから二点目は宇宙サイバーのこと、そしてSTOVL機と「いずも」、四点目は技術分野での優位性維持、最後に人的基盤のことについて申し上げたいというふうに思います。  まず第一に、大綱策定の背景となる我が国を取り巻く安全保障環境変化について、軍事、非軍事境界が曖昧になっているという点について申し上げたいというふうに思います。  現在、冷戦期に懸念されていたような主要国間の大規模武力紛争の蓋然性はかなり低くなっているものの、いわゆるグレーゾーン事態は、国家間の競争の一環として長期にわたり継続する傾向にあります。また、いわゆるハイブリッド戦のような、軍事と非軍事境界を意図的に曖昧にし、現状変更を試みる手法は、相手方軍事面にとどまらない複雑な対応を強要しています。  一方、我が国中国韓半島ロシアに囲まれた極東に位置していますが、時間の関係上、これらの国々の軍の近代化活動活発化についての細部は申し上げませんが、中国に関して一点指摘しておきたいと思います。  昨年の七月、我が国の海上保安庁に相当する中国海警部隊が、中国軍最高指導機関である中央軍事委員会による一元的な指揮を受ける武装警察の下に編入されたことは、大変注目をしなければならない事態です。中国海警は、特に平成二十四年以降、我が国尖閣諸島周辺などで活発な活動を行っています。この組織改編により、その活動が海上における法執行にとどまらず、軍事的な意味合いを持つようになるおそれが出てくるからです。  新大綱多次元統合防衛力構築を目指しておりますが、この二つ目の柱として、平時から有事までのあらゆる段階における柔軟かつ戦略的な活動を常続的に行える能力構築がしっかりと明記されていることは極めて重要なことであります。今後、各種事態我が国全体として効果的に対応できるよう、政治の強力なリーダーシップの下、防衛省自衛隊を含む関係各省庁がより緊密な連携を図っていくことが重要だと考えています。  第二に、多次元統合防衛力の重要なポイントであります宇宙及びサイバーについて意見を申し上げたいと思います。  新大綱においては、領域横断、いわゆるクロスドメイン作戦に必要な能力を優先的に強化することとしています。これは、今までの大綱では、特定の分野を優先的に強化するという考え方は必ずしも明確ではありませんでした。新大綱中期では、特に優先すべき事項早期強化するため、既存予算人員配分に固執することなく、資源を柔軟かつ重点的に配分することとしています。これは、限られたリソースを最大限効果的に運用していく観点から極めて重要なことと考えています。  宇宙に関しては、これまで大綱でもある程度の記述はあったものの、私は必ずしも十分ではないと感じておりました。我が国宇宙に関する基本的な考え方宇宙基本計画に示されております。この基本計画は、平成二十年五月、宇宙基本法が制定されたことを受け、平成二十一年六月に宇宙開発戦略本部で最初の計画が決定され、以降、これまでに二回の見直しがされています。最新の計画平成二十八年四月に閣議決定されています。これは、安倍内閣総理大臣指示、これは平成二十六年九月に出されておりますが、国家安全保障戦略を踏まえた内容にしなさいという指示ですが、このことを含んだ大変すばらしい計画となっています。  今回の新大綱は、かかる状況を踏まえて、情報収集通信、測位、宇宙状況監視機能保証はもちろんのこと、相手方指揮統制情報通信を妨げる能力をも含め、平時から有事までのあらゆる段階において宇宙利用優位性確保するための各種能力強化に取り組むことが明記されています。  宇宙は、米国のウィルソン空軍長官言葉にもあるとおり、宇宙抜きでは私たちは安全保障政策議論することはできないというふうな言葉がありますけれども、まさしく今後の安全保障政策を推進する上で最も重要な分野であり、大変高く評価できるものと考えています。  また、サイバーについては、陸海空を含むあらゆる領域での作戦統合的に実施するためにはC4ISRがしっかりと機能しなければならず、その前提として、システムネットワークセキュリティー確保が必要不可欠です。これらがしっかりと機能しなければ領域横断作戦の遂行は不可能です。そのため、システムネットワーク監視能力被害の局限、復旧能力強化は不可欠であると考えております。  加えて、諸外国などのサイバー攻撃に関する技術的動向を踏まえれば、有事における相手方によるサイバー空間利用を妨げる能力整備は極めて重要な課題だと考えています。我が国でこういったことを検討することは難しい点もあろうかと思いますが、現実を見据え、しっかりと取り組んでいくべきと思います。  サイバーについては、民間の重要インフラ防護も喫緊の課題であり、大規模サイバー攻撃等における対応に際し、自衛隊に多くを期待する声も聞かれます。しかしながら、国の重要インフラを防護することは、現在の自衛隊の体力を超える可能性がある任務であります。国家としての対応が必要と考えます。  防衛省自衛隊サイバー分野でどのような任務役割を担うのか、国家としてしっかりとした検討が必要だと考えます。我が国では、今年も来年も国際的なイベント、来年はオリンピック、パラリンピックが控えております。政府自らが主導し、国家としての体制整備を早急に行うべきと考えています。  次に、新大綱中期の目玉でありますSTOVL機の導入と「いずも」護衛艦の改修について、軍事専門的な観点から私の見解を申し上げたいと思います。  現在、中国を始めとする周辺国航空戦力近代化に伴い、太平洋側を始め、我が国周辺海空域において、戦闘機爆撃機、そして空母等活動拡大活発化しているという厳然たる事実があります。  特に、中国海空軍機による活動は年々質的な向上を見せています。平成二十九年には十八回もの沖縄本島宮古島間を通過する飛行がありました。同年八月には爆撃機紀伊半島沖まで進出しています。昨年四月には、沖縄県南方の太平洋上で空母遼寧に搭載されている戦闘機飛行と推定される事象が初めて確認されています。また、今週、防衛省が発表していますが、空母遼寧等沖縄本島宮古島間を通過し、西太平洋に向け航行したとのことです。  今後、このような中国海空軍の東シナ海や西太平洋における活動が一層拡大活発化することが考えられます。このような観点から、我が国防空体制の早急な強化が必要と考えています。  一般的に、戦闘機運用には長い滑走路が必要ですが、このような戦闘機運用できる飛行場の数は、我が国ではそれほど多くありません。特に島嶼部においてはかなり限定的であります。こうした中、我が国STOVL機を導入することになれば、滑走路の短い飛行場でも離発着ができ、戦闘機の柔軟な運用が可能になり、防空能力を格段に向上させることができます。また、これまで必ずしも対応が十分できていなかったと考えられた離島防空や広大な太平洋地域側においても有効な対応ができるようになります。  このような中、我が国特性から、私は、護衛艦からSTOVL機運用することが可能になれば、我が国防衛能力を、特に防空能力を更に充実、向上させることができると確信しております。  太平洋側島嶼部では、現在のところ、自衛隊戦闘機が使用可能な滑走路は硫黄島一か所だけです。また、この広大な空域任務に当たるパイロットの安全確保を図ることも困難な状況です。先ほど申し上げたとおり、最近では西太平洋での中国海空軍活動活発化しています。空母遼寧の進出もあります。また、ロシア爆撃機も、時折、我が国を周回する飛行を行っています。  このような事態を考慮すれば、私は、現職時代、現場を預かる指揮官として、基地からはるか遠方に所在する離島太平洋側での防空体制早期に確立する必要があると感じておりました。そのためには、「いずも」型護衛艦を改修し、STOVL機運用することは極めて有効な方策と考えます。  この「いずも」型護衛艦での戦闘機運用には、いろいろな議論があることは承知しています。課題も多くあることは事実だと思います。しかし、今後予測される事態や将来の防空体制が不十分になる可能性を秘めた事象が起こりつつある事態をこれ以上放置することはできません。防衛力整備には長時間を要します。我が国を取り巻く環境を考慮すれば、軍事専門的な観点から我が国領土領海領空を守るため、また最前線部隊の任務遂行に遺漏なきを期すため、早期に処置すべき事項と考えています。  次に、四つ目に、技術分野について申し上げます。  我が国は、長年、周辺国に対して質的、技術的優位を確保し、我が国の平和と安全を確保してきました。この観点から、我が国にとっては技術的優位の維持確保が極めて重要です。特に、昨今では、AI、情報通信、量子技術等、各分野における急速な技術革新に伴い、軍事装備品にも目覚ましい進展が見られます。各国は、ゲームチェンジャーとなり得る最先端技術を活用した兵器、例えば高精度、長射程の攻撃が可能な極超音速兵器、AIによる自律的に作戦を行うことができる無人機、低コストで弾数の制限がない高出力レーザー兵器などの開発にかなりの資源配分努力を払っております。これらの兵器が実用化されれば、戦闘様相が一変する可能性があります。  軍事技術については、いわゆる西側がかつては圧倒的な優勢を確保しておりましたが、中国は強大な経済力をてこに科学分野での軍と民の相互連携強化等を掲げた軍民融合戦略を進めており、徐々に米国に劣らないようなレベルになりつつあります。こうした中、我々がいつまで技術的優位を維持できるか強く懸念されるところであります。是非、大綱中期に書かれたような施策を積極的に推進していただきたいと考えています。  最後に、人的基盤について私の考えを申し上げたいと思います。  いつの時代でも、組織の中の中核は人であります。このことは、見通せる限りの将来においても不変であると考えています。いかに優秀な装備品であろうとも、これを運用するのは人であり、まさに我が国防衛力の中核は自衛隊員です。  自衛隊員の現在の素質を申し上げると、私はいろいろな国々に……
  11. 渡邉美樹

    委員長渡邉美樹君) 時間が過ぎております。簡潔におまとめください。
  12. 岩崎茂

    参考人岩崎茂君) はい、済みません。  いろいろな国々を訪問しましたけれども、自衛隊員の水準というのはかなり高いレベルにあります。ただ、最近の少子化を考えれば、将来、自衛隊の募集をめぐる状況はかなり厳しいものがあるというふうに感じています。是非、若くて優秀な人材が自衛隊に入りたいと思えるような環境の作為に、防衛省自衛隊、それから政府を挙げて努力していただきたいというふうに考えています。  少し時間をオーバーしましたけれども、申し訳ありません。ありがとうございました。
  13. 渡邉美樹

    委員長渡邉美樹君) ありがとうございました。  次に、佐藤参考人にお願いいたします。佐藤参考人
  14. 佐藤丙午

    参考人佐藤丙午君) 拓殖大学国際学部・海外事情研究所佐藤丙午と申します。  皆さんのお手元に発言内容をお配りしております。  本日は、外交防衛委員会にお招きいただき、どうもありがとうございます。本日は、平成三十一年度以降に係る防衛計画大綱及平成三十一年度から三十五年度中期防衛力整備計画について、学者の立場より所存を申し上げたいと思います。  大綱中期防は、現在の日本を取り巻く安全保障環境と技術動向の影響を受けて変化する軍事力役割を適切に把握し、それに対応するため、必要な手段を確保しているものと考えます。特に、大綱の中で従来の延長線上にない真に実効的な防衛力構築を掲げ、宇宙サイバー電磁波などの新領域における優位性を獲得することの重要性を指摘している点など、日本が直面する課題を取り込んだ対応としては十分に評価できると考えます。  大綱では、これら状況を踏まえ、能力の有機的な結合とその相乗効果により全体として能力を増幅させる領域横断クロスドメイン作戦の重要性を指摘しています。この作戦の理解も、国際社会の、特に米国の軍事動向を踏まえた適切なものであると考えます。  日本は国家安全保障戦略を持ち、その下に大綱中期防が存在します。その意味では、これら二つの文書は、一般的には戦略の下での優先分野を規定する軍事戦略と調達戦略と位置付けることが可能です。  その上で、大綱中期防について四点申し上げたく思います。  第一に、安全保障戦略と軍事戦略の整合性の問題です。  国家安全保障戦略では「戦略環境の変化や国力国情に応じ、実効性の高い統合的な防衛力を効率的に整備し、統合運用を基本とする柔軟かつ即応性の高い運用に努める」とあります。大綱では、それを想定される期間の中で、防衛力の面でどのように実現するかという問いに対する回答になります。  今日の安全保障環境は、安全保障戦略が策定された当時から変化し、さらには大綱自体が制定された時点からも国際政治状況は大きく変化していると感じます。この変化は、主に米国のトランプ政権の安全保障戦略の変化によるところが大きいと思います。さらに、米国では、二〇一八年に輸出管理法が再法制化され、二〇一九年五月には行政命令等により敵対的な国家情報通信技術を盗取することへの規制策が打ち出されました。二〇一九年に入り、米中の対立は技術覇権をめぐるものとしての姿を現しつつあります。つまり、残念なことではありますが、情報通信技術をベースにして世界が二分されつつあると見ることもできるのであります。  領域横断作戦の重要な点は、戦闘の各段階で実力組織の目と耳が極めて重要になることを意味します。お配りした資料一の方にその領域横断作戦のイメージが記されております。その目と耳の中核を担う情報通信技術の信頼性と安全性が領域横断作戦の成否を決めます。大綱でこの作戦の重要性を強調するのであれば、その作戦が成立する各種条件をどのように保護していくかという点も戦略の重要な内容になると考えます。  大綱中期防は、現状を肯定し、将来の方向性を示す上で極めて重要な役割を果たします。しかし、国際政治情勢の変化速度は速いので、それに対応する柔軟性を政策文書の面で今後担保していく措置が必要になると考えます。  第二に、戦略上のコミットメントと予算の均衡の問題です。  これは、一般的にはフォース・コミットメント・バランスと言います。掲げられた政策に対して予算の充当が必要になります。このバランスが崩れると、防衛省自衛隊に求められる能力と保有する資源との間にギャップが生まれ、必要な作戦が実施できなくなります。これは国民の信頼を失う原因となると考えます。  必要な能力確保できない背景には、政策側の問題もあると考えます。  大綱中期防では、基幹部隊の見直し、特に領域横断作戦を実施する上で効率的な部隊運用体制や新たな領域に係る体制強化が指摘され、宇宙、情報ネットワークの常時継続監視の必要性が記されています。また、新しい部隊の新編も盛り込まれています。防衛省自衛隊は、これら任務に加え、従来からの任務も果たしていく必要、責務があると思います。現状の定員、現状の予算でこれら新しい任務役割を果たすことが可能なのかどうなのか、オーバーストレッチであるかどうかということは常に検証していく必要があります。  これは従来から指摘されていた点ですけれども、防衛省自衛隊が自ら検証作業を行うと、組織の特性として、無謬性の神話にとらわれてしまう可能性があります。国会を含めた外部の第三者機関による検証も進めていく必要があると考えます。  この均衡問題では、国内産業基盤の問題も考慮する必要があると考えます。自衛隊が必要な能力を調達する上で、国内の資源で充足するのか、国外の資源に依存するのかという問題は、これまでも防衛省自衛隊の抱える大きな課題でありました。大綱では防衛産業基盤の重要性が指摘され、中期防では人工知能等のゲームチェンジャーとなり得る最先端技術などに重点的に投資する必要性と中長期的な方向性を示す研究開発ビジョンの策定が記されています。中期防では、国内の産業基盤競争原理の導入の必要性とサプライチェーンリスクの問題についても言及されています。  これらを総合的に見ると、防衛産業基盤防衛省自衛隊関係を包括的に見直す方向性が示されていると感じます。この方向性自体は支持するものでありますけれども、産業基盤を構成する企業側の事情を考慮し、基盤の育成、発展に向けた施策を策定する必要があると考えます。しばしば「国が私企業の営業行為を支援するのか」と批判されますが、分断が進む国際社会では、国家と企業が一致結束して営業活動を行うというのが常識になっております。  資料二を御覧ください。これは経団連が二〇一二年に共同開発・生産に関わる四つのモデルを出したものですけれども、これのいずれにおいても国家と企業側の協力がうたわれております。このように、防衛省自衛隊防衛産業を切り離して考えるべきではありません。  第三に、新技術に対する取組の問題です。  さきに、今日の国際社会では国家と企業が結束して防衛技術基盤維持発展させると言いましたが、これは国家と企業の癒着を推奨するものではありません。企業と国家にはそれぞれ異なった利害がありますので、相互の利害を調和させ、それぞれの求める成果を追求すべきというものであります。防衛生産に係るステークホルダーがそれぞれのステークスを持ち寄り、相互の利益を模索する必要があるということを意味しております。  これは、新技術の問題で特に顕著になっていると思います。大綱中期防では、最先端の技術等に対して選択と集中による重点的な投資の重要性が指摘され、企画提案方式の採用を含めた研究開発の合理化が記されています。留意すべき問題は、新技術の開発とその防衛装備への適用は、残念ながら防衛省自衛隊が主導するものではなく、民間側の技術的優位を前提に考える必要があるということであります。  実は、これは国際社会の多くで見られる現象です。中国では、軍民融合というスローガンの下、民間企業の協力を組織化して取り込んでいます。米国でも、先日発表された国防総省のAI戦略の中では、民間のエクセレンスを軍に取り込む必要が指摘されています。防衛省自衛隊が防需を前提に民間企業を管理しようとすると、民間企業は防衛生産基盤の充実に協力しないばかりか、そこに背を向けるようになるのではないかと考えます。  このため、民間企業を防衛生産のステークホルダーと考え、国、企業、アカデミア、市民社会の全ての利害を調和させる方策、すなわちマルチステークホルダーアプローチを採用すべきだと考えます。特に、これは少子高齢化の対策、また戦場の霧の克服、戦闘の合理化など、様々な目的の下で進められる無人兵器システムにおいては必要不可欠であると考えます。資料の三ページ目に、これは特定通常兵器使用禁止制限条約の下で示された兵器のライフサイクルのチャートですけれども、これを見ても、国と国際機関、また企業との協力が必要であるということが示唆されているというふうに考えます。  四番目に、大綱そのものが抱える問題として、見直し時期の問題を指摘させていただきたいと思います。  平成二十六年度以降に係る防衛計画大綱ではおおむね十年程度の期間を念頭に置いたものとされており、今大綱においても同じ文言が使用されています。もちろん、一旦作成した計画を時々の状況に合わせて修正するのは必要であり、今般修正されたことは、日本を取り巻く安全保障環境等の変化が流動的であることを示すものであります。  今回の改定若しくは修正が前大綱内容を否定するものではなく、新たな技術動向や米軍の戦略に合わせて新たな作戦を導入し、そのために部隊の編成等の見直しを行うものであったことは、歓迎すべきものであります。しかし、中期防は、大綱見直し期間の十年を基準に中間との位置付けがされています。大綱の本来である、性格である軍事戦略と調達戦略の方針が余りにも短期間で修正されること、また逆に、長期間にわたって修正されないことも大きな問題を抱えています。  防衛省自衛隊が今後大綱の改正や改定若しくは現状維持が必要と考える際に、その根拠を検討し、その検討結果が政策過程に反映されるような透明度の高い枠組みの構築を目指す必要があると考えます。その説明責任が果たされないと、新規に採用する作戦や戦略の妥当性を検討する機会が失われ、民主主義の下での軍隊に必要な社会との協同が失われるのではないかと危惧します。  最後に、幾つか指摘させていただきたいことがあります。参考人は以下の問題に明確な回答を持っているわけではありませんが、大綱中期防の今後を考えるときにどうしても考慮いただきたい内容とお考えいただければと思います。  まずは、我々は韓国を失おうとしているのかという問題です。  韓国を失うことは、過去数十年にわたって防衛政策の前提であった朝鮮半島問題からの解放と同時に、その反面、更に厄介な新たな問題を抱えることを意味します。  二番目に、安全保障のパラドックスにどう向き合うかという問題もあります。  トランプ政権の安全保障戦略の下では、同盟国や友好国が地域紛争、いわゆるプロキシーウオーを戦うよう組み込まれています。それを日本としてはどう受け止めるのか。  三つ目の問題として、組織化された条約ベースの軍備管理・軍縮の終えんにどう向き合うかという問題です。  国際社会では、条約をベースにした軍備管理・軍縮に対する悲観論が主流になっています。その中で、特に核兵器の問題にどう向き合うのか、真剣に考慮する必要があると考えます。  ここで指摘させていただいた問題は、大綱中期防の価値を落とすものではありません。大綱にも書かれているように、この文書が政策文書として生きたものであり続けるためには、状況変化を取り込み、新たな視点の政策を発展させる必要があります。そのための検討の材料の一つとして、本日は私の所見を述べさせていただいたものであります。  どうも、委員長、ありがとうございます。以上でございます。
  15. 渡邉美樹

    委員長渡邉美樹君) ありがとうございました。  次に、柳澤参考人にお願いいたします。柳澤参考人
  16. 柳澤協二

    参考人柳澤協二君) 柳澤でございます。  時間も限られておりますので、お手元に二枚紙のレジュメ、二〇一八年の防衛計画大綱についてというのを御用意していただいたと思いますが、これに従いましてお話をさせていただきたいと思います。  今度の大綱、非常に、何といいましょうか、意欲的な文書であるなということを感じているわけですが、一つ大きな特徴として、国際情勢認識の捉え方なんですけれども、もう基本的には米中の対立関係というものがあらわになってきている。それを踏まえた中で大綱にある言葉を幾つか抜き出してみますと、一つはパワーバランス変化が加速していると、そして、その中で既存の秩序をめぐる不確実性が増大しているということを言っています。さらに、アメリカの動向として、その既存の秩序の修正を試みる中国ロシアとの戦略的競争が重要課題になっているという指摘、さらに、国家間の競争によって、その一環としてグレーゾーン事態がもう長期的に継続するものと認識しなければならない旨が述べられているわけですが、こういう状況は、この認識そのものを私は否定するつもりは全くありません。  ただ、この中で、我が国防衛力強化の位置付けについて、まさに我が国が自主的に同盟における役割を果たすために防衛力というものが必要であり、そういう防衛力強化がまさに同盟を強化することになるんだという、こういう言い方は、私も長年防衛官僚をやっておりましたけれど、多分初めての、要は同盟の抑止力の中で日本の防衛力を位置付けるという言い方は、もちろん今までも関連はあったわけですが、こういう規定の仕方って初めてじゃないかなという感じがしています。まさに、米中の対立、秩序ということを言っていますが、軍事的には、ありていに言えば覇権をめぐる競争があるわけですけれども、その対決の中で、アメリカとの同盟の抑止力に一層傾倒して、傾斜していくという、こういう思想が背景に流れて大綱ができている。問題は、それが本当にそれでいいのかどうかという議論が必要だということだと思います。  それから、その運用面でございますが、大綱というのは防衛戦略文書としてその運用、それから防衛力整備の指針になるものでありますので運用面の特徴を見ていきたいわけですが、これはもう先に結論を、私の結論的な総括を申し上げますと、米軍と自衛隊の一体化を更に進めていく、そして、数で抑止するというよりは行動によって、いわゆる、何というんでしょうか、戦争理論で言うところの緊急抑止を重視しているということが言えると思います。  具体的な大綱のワーディングとして言いますと、日米防衛協力、特に安保法制によって可能になった、これは米艦の防護等の活動のことですが、それを含めて一層の協力強化するという表現、あるいはインド太平洋における日米共同のプレゼンスをやっていくとか、それから柔軟に選択された抑止措置という言葉で、相手の行動に対して、それに対応したこちらも行動をもって応えるという考え方が示されております。  もう一つは、これは従来からでありますが、グレーゾーン事態長期化する、その中でグレーゾーン事態からの拡大に対するシームレスな対処が必要だということが述べられているわけですが、これについてちょっとコメントを申し上げますと、二〇一八年、この大綱、昨年の十二月十八日ですが、昨年の一月の国会冒頭の施政方針演説の中で安倍総理が強調されていましたのは、昨年、昨年というのは一八年から見た昨年ですから、一七年に、自衛隊が初めてアメリカの艦艇、航空機を防護した、これによって日米同盟はかつてなく強固になったんだということをおっしゃっていました。ちなみに、一七年度には二回行ったわけですが、一八年度には十六回と言われています。  一七年の二回というのは、北朝鮮情勢が緊迫して、米軍がこの日本の近傍に空母や爆撃機を出してきた時期ですから、それに対応したものであったと思いますが、一八年の十六回というのは、恐らく、アメリカが南シナ海あるいは台湾海峡での航行の自由作戦というものを頻度を上げております、これに対応した行動であるんだろうと推測されます。  これは、何もないように工夫しておやりになっているとは思うんですけれど、実際に米軍が出ていくことによって、襲われる心配があるときに米軍の要請を受けて防衛大臣が承認する、そして発動される、そういう任務でありますから、本当にその現場で不測の事態があったときに、自衛隊は戦闘に巻き込まれるリスクを高める要素もある。つまり、同盟が強固になるという、こういう共同行動によって同盟を強固にするというのは、同盟も強固になるんでしょうけれど、一方で、自衛隊が現場で戦闘に巻き込まれるリスクも強固になるものと言わざるを得ないと思っております。  それから次に、柔軟な抑止措置ということですが、これは一五年の日米防衛協力ガイドラインの中でもタイムリーな演習が抑止力を高めるという表現を取っておりますが、これは何かというと、軍事体制を全般を示すことによって相手に乱暴をさせないという一般抑止という概念とは違って、相手が出てきたときに、それにこちらも軍隊をぶつけることによって防衛の意思を示すというか、相手の行動を拒否しようとするという意味では一種の緊急抑止に当たる、あるいは前の前の大綱で言っていた動的抑止と同じ概念だと思いますが、これは非常に実はやり方が難しゅうございまして、相手が本気でやってきた場合に、こちらがそこに、現場に部隊を出せば、それはもう決して抑止が成立することはないわけですし、あるいは、相手がそこでびっくりするほどのことを抑止としてやってしまうと、かえって緊張を高めて相手に対して挑発という意味を持ちかねないという意味で、これはそう言うべくして実際の運用は極めて難しいものであろうと、そこを認識しなければいけないと思います。  それから、もうかねてからのことでありますが、私はグレーゾーン、私も現役の官僚の頃は、なかなか日本の法制の階段の、何ていうんでしょう、垣根が高いものですから、何とかシームレスな対応ということを考えていたんですが、しかし、考えてみると、まさにそのグレーゾーンというのはまだいまだに軍事衝突でない状態であるわけですから、これをシームレスに、例えば海保の手に負えなくなったから自衛隊がシームレスに出ていくというのは、それはこちらが海警行動という警察行動であると主張したって、軍隊が出るというふうに相手は認識する、あるいは国際社会が認識した場合に、事態拡大の引き金を日本側が引くような非難も受けかねないことになるので、やはりここのところはシームレスではなくて、政治がきちんとシームをつくるという思想を取り入れることがむしろ大事なのではないかというふうに思っております。  それから、これもかねてからのことでありますが、島嶼防衛運用上の表現の中で、島嶼を、島を守るためには航空優勢、海上優勢を確保しなければいけない、これはもうそのとおりなんですが、しかし、そこで続けて、万一占拠された場合には速やかに奪回するとあるんですね。これどうやって、つまり、占拠されるというのは航空優勢、海上優勢がないから占拠されているはずなので、そこでどうやって速やかに奪回するんだ、これはもう本当に部隊に私は不可能を強いることになりはせぬかということが心配であったんですが。  もう一つは、一回占拠されてそれを奪回した、そしてどうするんだいという問題なんですね。相手が本気であれば二回目が来るわけですね、三回目が来る、どこまでそれを考えているんだ。どうも恐らくは、占拠されたままでは後の交渉になりませんから、奪回したという一定の優位な、こちらにとって有利な状況をつくって講和に持ち込むという、戦争学で言う講和に持ち込むということが背景にあるんだろうと思うんですが、しかし、こちらが優位な状況で講和に持ち込むことを相手が受け入れるかというのはこれはまた別の問題で、この辺も、本当に政治としてもどう実現していくのか、どう実際に事態が進んでいくのかということを悩んでいただきたいところだと私は考えております。  それから、防衛力整備目標としてのところで申し上げますと、一言で言うと、どこまで行くんだろう、つまり、目標としてここまであればいいよという。私は冷戦時代の昭和五十一年の防衛計画大綱時代防衛官僚として育ってきたわけですが、あの頃は、限定小規模な侵略に対して独力で対処をし、一定期間自力で持久すれば米軍の来援があると、こういうシナリオであらゆるスペクトラムの侵略に対処できるという発想があったんですが、ただ、今のこの立て方ですと、グレーゾーンがあって、そのグレーゾーンから本格的な衝突に至るかもしれない、全ての場面でどう対応していくか、しかも、相手は日本よりはるかに大きな軍事力を持った国、周辺国を相手にしようとするわけですから、どうも本当にその辺が、目標としてどこまで行ったら満足するんだろうかということが見えない、そういう何か息苦しさを感じざるを得ないんですが、具体的には、宇宙サイバー、電子といった新たな領域でのこれはやはり対応が必要なことは私もそのとおりだと思うのですが、平時から有事におけるあらゆる場面で、あらゆる段階での優位を獲得するという目標が示されているんです。  こんなことできるのかというのが、私は、その優位という言葉は、まあそれは望むらくはそのとおりなのでありますが、しかし、戦略というのは願望ではないのですね。何ができるかということを踏まえた上でもっと正確な目標を示さなければ、これは本当に、ここ、まさにどこまで行ったら済むんだろうか。そして、細かい話ですけれども、この大綱の中には、こちらが更に進んでその相手のサイバー利用を攪乱するようなことも書いているわけですが、それってつまり一種のサイバー攻撃をこちらがするということなんですが、それは一体どういう法律的な根拠でやれるんだろうか。多分、武力攻撃ではないのかもしれませんが、あるいは武力攻撃として自衛隊法八十八条で、失礼しました、武力の行使としてやるんだろうか、どうもその辺もはっきりさせる必要があるのではないかと思っています。  それから、長距離巡航ミサイルですとか陸上自衛隊で将来持ちたいという高速滑空弾、これは一種の、まあもちろん防衛のためにやろうとしているわけですけれども、少し前に出せば、あるいはブースターロケットのパワーを上げれば相手の国土まで届く兵器に当然なるわけですから、こういうものを持っていくことをどう考えていくかということも政治としてお考えいただく必要があるだろうと。  二枚目に行きまして、策源地攻撃能力についても、これは同盟全体の抑止力強化のための観点検討するということが言われている。あるいは、「いずも」型護衛艦の空母改修にしても、太平洋の航空優勢の目的が示されているんですね。  これは、私、現職の頃は、もう太平洋を越えて敵が攻めてくるって考えたことなかった、太平洋の向こうはアメリカですから。これは多分、西太平洋が今、米中の軍事バランスの焦点になっている、その西太平洋の恐らく第二列島線の内側の航空優勢をどうするかという問題意識なんだと思うんですけれども、つまり、それって日本の国土の防空というよりは、まあまあ非常に単純に言えばアメリカ軍を守るということなんだねと言われかねない。  あるいは、そうだったとしても、それでいいか悪いかではなくて、まさにこの大綱を貫く思想というのは、そうやってアメリカ軍を、抑止力としてのアメリカ軍を健全に保つことがトータルとしての抑止力なんだという発想で、同盟の抑止力というものを大事にするならばこれも一つの発想としてありということになるんですが、それでいいんだろうかという問題がある。  それから、歴史的な考察のところ、簡単に言いますと、抑止力という言葉で全て説明し尽くされているような感覚でいるんですけれども、実は軍隊の役割というのは歴史とともに変わってきている。第二次大戦までの時代というのは、軍隊は戦って勝つために軍隊が使われた時代ですね。そして、冷戦の時代というのは、戦わないために抑止力として軍隊の存在意義が正当化された時代である。冷戦が終わって対テロの時代になりますと、戦争というよりは秩序の維持あるいは警察的な役割のために軍隊を使わざるを得ない時代があって、そして今日、米中の確執の中で、何というんでしょうか、航行の自由作戦なんかそうですが、これは戦争というよりは政治的な不快感を表明するために軍隊を出している、しかし、そのまま戦争をしようというつもりはないという、こういう軍隊の使い方が今日のトレンドになっている。そういう中で、抑止力という言葉だけでは言い尽くせない、安全保障をめぐる歴史的な変化を今日迎えているのではないかということであります。  結びとして申し上げれば、やはり防衛力にどうやったって限界はあるわけですね。それを、防衛力が足らざる部分をどうするのか、それは私は、一言で言えば、政治が何とかしてくださいということなんですね。それを、その前にアメリカ軍に何とかしてもらおうと思ってしまうと、まあそれはその部分もあるのかもしれませんが、際限なくアメリカ軍に協力しなければいけないし、防衛力もどんどん増やさなければいけないということにならざるを得ないのではないかということです。  本当の最後ですが、大綱の中にも、望ましい安全保障環境を創出するのをまず第一義という表現があります。望ましい安全保障環境って何でしょうかといえば、それは米中の対立がどこかで安定する……
  17. 渡邉美樹

    委員長渡邉美樹君) 時間が過ぎております。
  18. 柳澤協二

    参考人柳澤協二君) はい、申し訳ありません。  米中の関係が安定することが多分一番望ましい安全保障環境なんだろうと思っています。そうなのか、それともアメリカの優位が引き続き保たれるような環境が望ましいのか、そういった根本的な認識について大いに政治の場でも御議論いただくことが必要なんだろうと思っております。  以上です。御清聴ありがとうございました。
  19. 渡邉美樹

    委員長渡邉美樹君) ありがとうございました。  以上で参考人意見陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  20. 宇都隆史

    ○宇都隆史君 自由民主党の宇都隆史です。  三名の参考人の先生方、本当に示唆に富むお話をありがとうございました。  まず、岩崎参考人にお尋ねしたいことなんですが、宇宙に関することです。  先ほど柳澤参考人のお話の中でも、この宇宙サイバー、電子戦、新しい領域が入ってきたんだけれども、これを一体どこまで、どれぐらいの期間でやっていくのかという提言に関して、私も一つ大きなそこには課題を持っております。  アメリカですら、宇宙軍という今度新しいものを創立させるわけですけれども、この宇宙のインフラ維持に関してはとても一国ではやり切れないということで、同盟国にこの宇宙利用、活用、維持整備に関しての協力を求めているという情報も聞いておりますので、今後、自衛隊自身が宇宙を一つの軍事的なインフラとして活用していくときに、JAXAとの連携であったりとか、それから同盟国との役割分担であったりとか、こういうもののいろんなことを考えていくためには、現在は、先ほど発表の中にございました宇宙基本計画、これにのっとってやっているわけですけれども、改めて、この宇宙基本計画を見直すと同時に、防衛省独自としての宇宙運用構想なるもの、どこまでやるのか、どれぐらいまでやるのかということを検討していく必要があると思うんですが、その辺に関しての御意見、いかがでしょうか。
  21. 岩崎茂

    参考人岩崎茂君) ありがとうございます。  宇宙に関しては、皆様御承知のように、我が国は、昭和四十四年だったと思いますが、宇宙の平和利用というのがあって、必ずしも私たち自衛隊がここに関与できない部分がありました。ようやく二〇〇八年になって安全保障に関してもオープンになったわけですけれども、まだまだ宇宙に関して私たちは、ジャスト始めたばかりですので、必ずしも、どこまでやればいいのかとかどういうふうにやればいいのかというのは明確になっていないというふうに思います。今回の大綱に、まさしく初めてこういった宇宙に関する部分を書かせていただいたというふうに思います。  今のところ、私たちが最も関心を持っていますのは、この宇宙を使った情報収集又は測位のこと、それから通信、こういった部分が主だというふうに思っています。少しずつこの分野というのはこの十年間でかなり拡充してきているんではないかなというふうに思っています。日本が元々持っていた例えば宇宙ロケットを飛び上がらせる能力だとかというのは、諸外国にそれほど引けを取るものではありません。かなりの技術を持っているところがありますので、今後は、こういった技術を使いながら、限られた防衛費の中で我々は何をやるかということを検討していかないといけない。まさに今、緒に就いたばかりだというふうに思っています。  防衛省の中では、宇宙を管理する部隊というのをようやくこれから航空自衛隊の中に、これは陸海空の隊員たちが巻き込まれたやつですけれども、こういったのをつくっていく段階ですので、こういったところができた以降、そういった構想をつくっていくんではないかなというふうに思います。  それから、JAXAとの関係は、既に航空自衛隊とJAXAの間で人員の、正式名称は少し失念しましたけれども、リエゾンを送ってかなりのいろんな情報交換をやっています。  それから、米軍との関連ですけれども、米軍は宇宙軍、こういったものを創設することになっていますけれども、この宇宙軍のコマンダーは、元々は横田にいた在日米軍、訂正です、第五空軍の副司令官をやったレイモンド大将ですけれども、彼はかなり日本のこの宇宙の技術というのを掌握しているところがありますので、彼は日本といろんな連携をしたい。例えばSSA、宇宙監視、こういったものではかなりのデータのやり取りを今できるようになっていますし、それから意見交換が頻繁に行われるようになっています。  今後とも、こういった部隊といろいろな情報交換をしながら、今後の我々の方針を決めていく必要があるというふうに思っています。  以上です。
  22. 宇都隆史

    ○宇都隆史君 ありがとうございました。  続いて、佐藤参考人にお伺いしたいところで、佐藤参考人意見陳述の中の第二の部分の国内産業基盤のところについての質問でございますが、参考人は、このいただいたペーパーの中で、分断が進む国際社会では、国家と企業が一致結束して営業活動を行うのが常識になっているので、防衛省自衛隊防衛産業を余り切り離して考えるべきでないという御意見で先ほどいただきました。  私も、まさにそれはそのとおりで、これからよりそこを力強く進めていかなければならないと思っていまして、昨今、この我が委員会においてもですし、国会の中でも、海外から、特に米軍からのFMSの増加、あるいはさらにそれに伴う我が国内のサプライチェーンリスク、こういうのが大きなやはり問題になっております。  一方、前政権の民主党政権時代につくっていただいた遺産でもあります防衛装備品移転三原則については、新しいこういう方針ができたものの、実質として現在完成品を海外に輸出したという実績はいまだにできていないというところが現状なんですね。  それぞれのやはり装備品のコストを落としていくためにも、あるいは国内の産業基盤維持であったりサプライチェーンリスクを回避するためにも、やはりきちんとした形での輸出の体制を整えていく。それに対しては、企業に独自に頑張らせるのではなくて、やはり政府も一体となってその活動に関与していくことが私は必要だと考えますが、そこに関する参考人の御意見をお聞かせください。
  23. 佐藤丙午

    参考人佐藤丙午君) ありがとうございます。  今日の防衛産業の非常に難しい状況というのは、委員皆様も御存じのことと思います。大きな問題は、FMSの問題がありましたけれども、FMSを増加させるということは国内に資金が流れないということでありますので、防衛予算を増やし、調達予算を増やしたとしても、それは国内産業基盤維持につながらないということであります。  しかしながら、輸出をすればコストが自動的に下がるというものでもありませんで、各国の事例を見ている限りにおいては、その完成品を輸出する場合においても、また共同生産においても、コストをどれだけ下げたかということについての実証的なデータをそれほど頻繁に見るものではありません。  したがって、防衛産業の維持発展においては、やはりこれは政策主導で行うべきであり、コストを度外視するというわけではありませんけれども、コストをある程度国の方がかぶるという視点が必要なのかなというふうに思います。  その中で、では、じゃ、経済的な理由で武器の移転また防衛装備品の移転を積極的に進めようということにはそれなりに問題点もありますし、国内のこれまでの経緯を考えますと、それほど簡単に受け入れられるものでもないと思います。そうなってくると、外交政策と産業政策、防衛政策をリンクさせることによって、例えば東南アジア諸国の能力開発であるとか、また海洋の安全保障であるとか、また、先ほど米国との関係指摘されましたけれども、米国との共同作戦の推進であるとか、また先端技術を獲得するための二国間の協力であるとか、かなり焦点を絞った形で、政治が主導する形での産業基盤の育成というのが必要であるというふうに考えております。
  24. 宇都隆史

    ○宇都隆史君 ありがとうございました。  最後に、柳澤参考人に御質問させていただきますが、最後のまさに結言のところで、個々の部分については非常に共感する面もあります。同時に、いわゆる緊急抑止の話でありましたとか、それから、同盟全体の抑止強化のための防衛大綱あるいは防衛力強化というのは少しずれているんじゃないか、そういうような御意見であったやに伺っております。  ただ一方、ちょっと、策源地攻撃能力、今回はこれは大綱に盛り込まれなかったわけですけれども、私は逆に、米国という同盟国に全てを依存するんではなく、その依存の体制を少しずつ減らしながら我が防衛省独自としてできる領域をしっかりと、役割を増やしていくという意味では、一つこの策源地攻撃能力の保有というのは真剣に議論していくべき、逆に、柳澤参考人が言われた、これは同盟国の抑止力のためとかではなくて、日本独自の抑止力拡大意見なんではないかなというふうに認識をしているんですが、この件に関しての御意見をもう少し詳しくお聞かせください。
  25. 柳澤協二

    参考人柳澤協二君) 特にミサイル防衛関係だと思いますけれども、ミサイル防衛、飛んできたミサイルを基本的に一〇〇%は落とせないわけですね。であるがゆえに、では撃たれる前の発射台を破壊すればいいという発想があるわけですけれども、これも一〇〇%全ての発射台を同時に破壊するというのはまず不可能だというふうに言われているわけです。したがって、仮にミサイルが日本を襲った場合にはアメリカの報復というものがあるぞということによって抑止しようという発想になっているわけですね。  これは、しかし、ミサイルの時代というのはもう非常に、今までと違って一発落ちると非常に大きな被害も出る可能性があるわけですから、結局、一〇〇%のミサイルからの安全を確保しようとしたら、私はどちらかというと、そういう発射前に破壊する、発射されたものを破壊する、落ちたらやっつけるという流れだけではなくて、相手がミサイルを撃ってこようとする意図の実現をどうやって、その動機をどうやって防ぐか、まさに対立関係があって戦争になる中でミサイルが飛んでくるわけですから、そういうことを考えた方がいいということで、日本が独自にそういう能力を一部でも持つということが、相手からすれば、それは多分政治宣伝の部分もあるかもしれませんが、相手からしてみれば日本だって攻撃能力を持ったじゃないかということで、これは思わぬ、何というんでしょう、軍拡の引き金にならないとも限らない。  そういうことも含めて考えて、要は、ミサイルからの一〇〇%の安全ということを考えるのであれば、そういう兵器によってやっていくという方向、少なくとも、だけではなくて、どうやって相手がそういうミサイルを使って戦争をするような動機を緩和してなくしていくかという観点も入れる必要があるんじゃないかというのが私の考え方であります。
  26. 宇都隆史

    ○宇都隆史君 ありがとうございました。  三人の参考人の先生方にいただいた非常に示唆に富む御意見を踏まえながら、また次回、我々、政府に対する質疑に臨みたいと思います。  ありがとうございました。
  27. 小西洋之

    小西洋之君 立憲民主党・民友会・希望の会の小西洋之でございます。  まず、参考人の三名の先生方、この度はお忙しい中に当委員会に誠にありがとうございました。それぞれから大変貴重な御見解を賜りました。  私の方では、柳澤参考人中心に伺わせていただくことになろうかと思うんですけれども、よろしくお願いを申し上げます。  まず、この国家安全保障戦略、安保法制、またこの新しい大綱に至るものなんですけれども、私も見ていて、これの致命的な問題というのは、柳澤参考人の御提言とも重なると思うんですが、一言で言うと外交がないと。もう軍事的な路線一辺倒であって、政治が責任を持って主体的に担う、そうした外交在り方というものが見えないということを強く問題意識等持っております。  その上で、この安保法制や新大綱の下で何が国民にとってリスクとして起こり得るのかということからまず伺わせていただきたいんですが、先日、トランプ大統領がやってまいりまして、「かが」ですね、護衛艦、今度空母に改装する、に乗りました。アメリカの大統領が自衛隊を視察するのも初めてのことでありますが、ああいうことも含め、自衛隊とアメリカ軍のもう軍事的な一体化がこうした形で進むと、これは佐藤参考人の方からいただきました、地域紛争に巻き込まれるのではないかという問題提起ではないかというふうに受け止めさせていただいているんですが、いざアメリカが世界のどこかで日本の安全に直接軍事的に関わらないような戦争を起こした場合でも、それにアメリカが来てくれと、「かが」を出してくれと言われれば、日本はもう政治的にも断れないような、そうした状況に今なってしまっているのか。  そうした意味で、国民にアメリカの戦争に引きずり込まれるというようなリスクが生じているのじゃないかというような点について、御見解をお願いいたします。
  28. 柳澤協二

    参考人柳澤協二君) 「かが」にトランプ大統領が乗艦されたときに、正確ではありませんが、新聞報道ですと、これで日本はもっとたくさんのことがやれるようになるよねという趣旨のことをおっしゃっていたと思うんですが、まさに同盟というのは一種拘束されるという意味合いが元々あって、絶えず、巻き込まれる不安と、そしていざというときに見捨てられるんではないかという見捨てられる不安というのがあるわけですね。今、どちらかというと見捨てられる不安を感じるがゆえに、巻き込まれる方の不安はちょっと大目に見ようというか、まさに日米が軍事的、作戦的に一体化できるようにするということは、ある種自動的に巻き込まれることもやむなしという思い切りがそこにあるのかなという気がしています。  それは、当然そこで政府の判断というのは入ると思うんですが、南シナ海なんかは特に我が国にとっても非常に重要なシーレーンであるということも言っている、海洋の自由のような政治的な重要性も強調されている。その中で、何か言われたときに、昔であれば、そんなこととてもできませんよと言えばアメリカもそうだよねということで引き下がったと思うんですが、やってくれと言われて、できるようになったんだろう、だからやってくれと言われて、どうやって断るんだろうかというのが、今のこの大綱までの考え方の中からはどうやっても論理的には出てこないということは言えると思っております。
  29. 小西洋之

    小西洋之君 ありがとうございました。  重ねて、国民に生じているリスクについて伺わせていただきたいと思います。  柳澤参考人にまた伺わせていただきますが、北朝鮮が米朝首脳会談を始める前でございますけれども、アメリカ・トランプ大統領が空母カール・ビンソンなどを派遣しまして、最強、無敵艦隊を派遣すると。そこに自衛隊が共同訓練を実施いたしました。  これは私、政府の公式見解として文書で出しておりますが、戦後、北朝鮮は、在日米軍基地は北朝鮮の敵であると言ってそこに攻撃の意思を示したことはあるんですが、日本国民や日本のその他の地域、東京などですね、それを敵であるというふうに宣言して、いざとなると、最後は核ミサイルで日本の島を沈めるとまで言いましたけれども、そうしたことは言ったことはありませんでした。  そうした日本国民や日本国そのものを敵とみなすという発言をする前に、北朝鮮は様々なそういう公式の声明を、共同訓練をやめないとそうした敵とみなすということをずっと言い続けているんですが、私は思うに、ああいうアメリカの武力による威嚇に対して、日本が、自衛隊が共同訓練を北朝鮮の目の前でやるということは、かえって北朝鮮に攻撃の口実等々を与えることによって国民にそうした危険を生じさせているのではないかと。  ただでさえ、アメリカと北朝鮮が戦争になったときには日本の在日米軍基地が攻撃対象になるのに、それ以外の日本国民などに対してもそういう危険を生じさせしめている、極めて合理性を欠く、そうした国家としての行為ではないかと思うんですが、いかがでしょうか、柳澤参考人
  30. 柳澤協二

    参考人柳澤協二君) これも先ほどの宇都先生のお話ともちょっとつながるところはあるんですが、なぜ、ミサイルを北朝鮮は撃ってくるとすればどういう動機に基づいてやるんだろうかということを考えますと、日本と北朝鮮の間に戦争しなければ片付かないような紛争要因というのは、私はないと思っています。あるとすれば、日米安保体制の下で米軍が日本を足掛かりにして北朝鮮を攻撃するかもしれないという、それに対する恐怖が北朝鮮の動機となって日本に対するミサイル攻撃というのが、理屈の上ですよ、理屈ではそういう順序であり得るのかなというふうには思っているんですね。  ですから、そこでは、何というんでしょうか、協力は当然私はあり得るとは思うけれども、それを政治的なメッセージにまでするというのは、それが果たして政治の姿勢としていいやり方なのかどうかというのは議論の余地は大いにあるんだろうなというふうに思っております。
  31. 小西洋之

    小西洋之君 重ねて柳澤参考人に、日米同盟とは一体本質的に何なのかということを少し見解を伺わせていただきたいと思います。  私の理解ですが、日本にある在日米軍基地がなければ、横須賀の海軍基地がなければアメリカはアジア太平洋地域、インド洋も含めて、海軍力を保持できない。また、嘉手納などの空軍基地がなければ航空兵力も軍事のプレゼンスというものをもう保持できない。すなわち、超大国でさえいられなくなる。そうした在日米軍基地に対して、日本は高度の技術力を提供し、思いやり予算、そして在日米軍基地を守るのは自衛隊でございます。アメリカ軍が守るのではなくて自衛隊が日本の国土として守ることは日米ガイドラインでも書いております。  つまり、こうした同盟関係、地球儀を何回回転させても、アメリカにとって日米同盟ほど重要な同盟国はない。にもかかわらず、そして基地を提供して、そうしたことをしているにもかかわらず、安倍総理が言うのは、自衛隊がいざというときにアメリカを守らなければ日米同盟が崩壊するというふうに言っております。そうしたことはないというのが安倍政権以前の自民党政権の見解、双務条約であると。私もそこの本質は今なお変わらないというふうに思います。  そうしたときに、まさに国家安全保障戦略、安保法制、今回の新大綱は、先生がおっしゃっているとおり、日本の自衛隊防衛力を高めることと同時に、それはもうアメリカとのその抑止力の一体化の強化にもなるとまでなっているものなんですが、果たしてそこまでする必要が、この外交安全保障政策的に考えたときにあるのかどうか。日米同盟は、私は立憲会派ですけど、立憲会派も日米同盟は、もう党の基本文書で深化とまで書いています、維持は当然、深化とまで書いてある。にもかかわらず、そこまでアメリカにしてあげる必要があるのかということを、日米同盟の本質をどう考えているのか、ちょっと御見解をお願いいたします。
  32. 柳澤協二

    参考人柳澤協二君) 非常に大きなポイントで、なかなかどうお答えしたらいいのか難しいんですけれど。  日米が一方的に片務的な同盟関係かというと、私はこれは、以前、湾岸戦争の前の段階でなかなか自衛隊を出せないようなときに、日本は戦費百三十五億ドルの貢献をし、そして、その影響を受けて実は防衛予算が、中期防が一千億円減額されたときがあったんですね。そのときに、自民党の防衛庁長官でいらっしゃった池田行彦先生だったと思いますが、日本はちゃんと基地を貸しているという形で、やっている中身は違うけれど対等の関係にあるじゃないかということを言って憤慨されていたのを実はお話聞きながら思い出していたんですけれども。  そういう、片務的か双務的かというのは同量同質のものでやるかどうかという問題とは違うんだろうと。その性格は今でも基本的には通用するんだろうと思っておりまして、確かに横須賀の存在というのが実は太平洋の距離を克服するために米海軍にとっても極めて重要な、世界中で空母を修理できるところというのは米本土を除いて恐らくこの東半球では横須賀しかないわけですから、アメリカにとって日米同盟は非常に重要だということは当然言えるわけですね。  そういうことを踏まえた上で、何というんでしょうか、どこまでも際限なく協力しなければいけないんだというようなオブセッションにとらわれることなく、我が国としてアメリカに対しても中国に対しても言いたいことを言う、言える根拠というのはやはりあるんだという前提で物を考えていく必要があるのかなという感じは持っております。
  33. 小西洋之

    小西洋之君 ありがとうございました。  また、重ねて。柳澤参考人が最後おっしゃっていただきました、全体を通じて、その政治の役割軍事力の、防衛だけではなくて、政治の役割。それは、外交など広く、あるいは安全保障、広い意味での安全保障も含めて実現していくものだと思うんですが、そうしたものが、私も、国家安全保障戦略以降、我が国国家戦略として、また実際の行動として決定的に欠けていると思います。  それが制度上も欠けてしまったのが、実は、国家安全保障戦略策定によって廃止された国防の基本方針。かつての国防の基本方針の第一項には、「国際連合の活動を支持し、国際間の協調をはかり、世界平和の実現を期する。」というふうに書いております。こうした概念が国家安全保障戦略上はもう一言残らずなくなってしまっております。  私も、今、国連が現実に機能していない、戦後も現実に機能しなかった、しかも、トランプ大統領のアメリカ・ファーストは、安全保障理事国という国連憲章上の法的責任を自ら放棄したとんでもない考え方、行動だと思います。ただ一方で、二国間あるいは日本のその地域の、おける地域間、様々な国々、また国連、そうしたところともしっかりと連携しながら、またそうした関係などを機能させながら、軍事外交を中心とした日本のその安全保障、全体としての安全保障、さらには、それを言うと、軍事のための軍事ではなくて、平和を守り維持するための、平和創造のための防衛であり外交というものを展開していかなきゃいけないと思うんですが、そうした取組がやはり政治には決定的にこの間欠けていたのではないかというふうに私は思います。  じゃ、具体的に政治としてどうしたことを取り組んでいくべきでないかということについて柳澤参考人に御見解をいただきたいとともに、岩崎参考人、また佐藤参考人に、そうした、私も、申し上げましたように、日米同盟はしっかり現実的に維持しなければいけないと思います。ただ一方で、軍事ばかりが大きく出てしまっているのではないか、政治としてのなすべき役割といったものが、もっと果たすべき役割というのが日本としてあるのではないか。それは、日本の憲法の下の政治の在り方、あるいは日本の経済力、あるいは国力ですね、国力として、もう中国と軍拡競争して勝てるわけないわけですから、これ、現実路線、現実に。そうしたときの政治の役割、これからの安全保障における政治の役割について、それぞれ岩崎参考人佐藤参考人の御見解をいただきたいと思います。  お願いいたします。
  34. 渡邉美樹

    委員長渡邉美樹君) では、岩崎参考人から。よろしいですか。  簡潔にお願いいたします。時間がもうありません。
  35. 岩崎茂

    参考人岩崎茂君) 我が国は、平成二十五年十二月に我が国安全保障戦略をつくりましたけれども、これをよく読んでみますと、必ずしも軍事的なことだけではなくて、外交のこともしっかり書かれてあります。別に国防の基本方針が私は失われたというふうには全く思っていません。ですので、あの中に精神そのものは全て盛り込まれているというふうに考えています。  それから、日米条約に関しては、必ずしも軍事同盟だけではなくて、当然、外交のこと、それから経済のこと、これがしっかり書かれてありますので、その都度その都度いろんな事象事象によって注目される分野が少し変わってくることは確かですけれども、これは全ての面において機能するべき条約だというふうに考えています。  最も大きな、これを運営していく場合に大きな要素というのは、当然のことながら、私たちは民主主義国家ですので、政治です。政治に従って、私たち自衛隊は全てこれを国会又は私たちの指揮官であります総理大臣の下に行動するというのが私たちの任務だというふうに思っています。
  36. 渡邉美樹

    委員長渡邉美樹君) 佐藤参考人、同様に、簡潔にお願いいたします。時間が来ております。
  37. 佐藤丙午

    参考人佐藤丙午君) ありがとうございます。  同盟の問題について申し上げますと、冷戦期とは同盟の価値が大きく異なっております。その中で、特に、軍事同盟という側面もそうですけれども、政治同盟としての側面というのが非常に強くなっているというふうに感じます。  その中で、国として、政治の役割というのは、やはり、今、安全保障戦略の中で書かれている軍と外交安全保障外交の両輪をいかに組み合わせてやっていくかという視点が必要でありまして、外交だけ、軍だけというわけではなくて、それのコンビネーション、組合せをどういうふうに操作していくかということを重視していただきたいというふうに考えます。
  38. 渡邉美樹

    委員長渡邉美樹君) 柳澤参考人、同様に、時間がありませんので。
  39. 柳澤協二

    参考人柳澤協二君) 私が発想する起点は、クラウゼビッツが言うように、戦争とは政治目的達成の手段であるということです。つまり、国としての目的、目標を達成するために、片やで力ずくでやるというのがある、もう一つは外交、政治で妥協しながらやるという、二つのやり方はいつでも多分あるんだろうと。その中で、こちらで勝てばいいのか、あるいは何が何でも勝たなきゃいけないのか、それとも、それはそうもいかないとすれば、政治がどこかで引くことを是認するかということだと思うんですね。  その場合に何が大事かというと、一番難しいのは国内世論をどう説得するかということ。ですから、個々の政治がいろんな外交を展開するというのは私は別に否定はしませんが、私が一番期待する役割というのは、そういう技術的な問題というよりは、本当にその国民の世論をどう、どっちの方向に引っ張っていくのかというところに政治の一番大きな基本的な役割があるのではないかということであります。
  40. 小西洋之

    小西洋之君 終わります。  参考人の先生方に心から御礼申し上げます。ありがとうございました。
  41. アントニオ猪木

    アントニオ猪木君 元気ですか。元気があれば何でもできる。元気があれば梅雨前線も全国に行き渡ったということで、アジサイの花も雨に打たれて、きれいに浮き浮きしています。私の気持ちをあなたに伝えたい、ツーユー。余り英語で言うのは駄目ですかね。まあいつもこんな感じで始まりますので、びっくりしたと思いますが。  本当に、世の中が元気でなくちゃ困るということなんですが、私も大分体にがたが来ましたが、とにかく、先ほどもいろいろ貴重なお話をお聞きしながら、まずは戦後七十何年たって、私も戦中派なんですが、本当に何でこんなに世界がぎくしゃくして、それで本当にあしたにでも戦争だみたいな話になっていくのかなと。本来は国連が中心でもっともっと平和というものを構築しないといけない。  そんな中で、一つ、八九年のときに国会に出ていたときにロシア関係をよくやっておりまして、一つに、当時、宇宙ごみということをちょっと勉強させてもらいました。そのときには、それほど宇宙に関しては皆さんの意識はなかったと思うんですが、今、本当に皆さんも、いろんなところにも記事になっておりますが、大変これは危険なあれだと思います。  そういう中で、一つ岩崎参考人に、宇宙ごみを今後どういう形で収集して、どういうふうにしたらいいのか、お聞かせください。
  42. 岩崎茂

    参考人岩崎茂君) 必ずしも私は宇宙の専門家ではありませんけれども、先ほど少し紹介させていただいたように、今、日本の自衛隊とそれから米軍の宇宙コマンドのところが宇宙監視、これ状況把握のための監視ですけれども、これについていろんなデータのやり取りをし始めました。  今、宇宙ごみと言われるものが、ごみというふうに呼ぶのはもしかすると大変失礼な部分もあるかもしれません、どなたか、どこかの国がちゃんと保有している分もあるのかもしれませんので。たしか一インチ以上のものというのは二万五千ぐらい浮遊しているというふうに認識していますけれども、我々が使っている人工衛星、それから各国が使っている人工衛星、特に低軌道にあるもの、三百から六百キロぐらいのところにあるものは、もしかするとこの浮遊物にぶつかる可能性があるわけですね。この状況をよく監視していないと、もしかすると私たちが使っているいろんな衛星を失ってしまうことがありますので、日米で今データのやり取りをして、もしその衝突の可能性がある分は、衛星は少しの推力を持っていますので、これを回避してまた元に戻す、こういった操作をJAXAも、それから米軍、アメリカが持っているものもやっていますけれども、この浮遊物を除去できるのかどうかというのは、先ほど申し上げたとおり、法律的にはまだ明確になっていない部分があります。もしかすると、どこかの国は、いやいや、これは俺の所有物だから触ってはいけませんというふうなこともあると思いますので、是非、これは国際共同の中でいろいろな議論をして、この浮遊物に対してどのような対策があるのかというのを話し合って決めていただきたいというふうに思っているところでございます。  以上です。
  43. アントニオ猪木

    アントニオ猪木君 次に、佐藤参考人にお聞きしたいと思います。  トランプさんがこの間来られましたし、その前はサウジアラビアへ行かれて、新聞の記事ですけど、これは、十二億円武器を売ったと。日本でも相当買わされる。今後、イージス・アショアの問題もあります。我々から見ていると、何か武器商人、セールスマンやっているんじゃないのかという、こういうことをこういう席で余り言わないかもしれませんが、本音の話をさせてもらうと。そうすると、どうしてもやっぱり国というのはそんな感じで動いているのかなという気もいたしますが。  そこで、防衛生産と民生技術という部分で、これからのやはり提携というのか、その辺は余り公にできないのかもしれませんが、その点についてお聞かせください。
  44. 佐藤丙午

    参考人佐藤丙午君) ありがとうございます。  民間の学者である私が恐らくそういう防衛の機密に関わる情報に触れるということはないと思うので、そういう防衛生産の秘密に関わるところに触れることはないと思うんですけれども。  トランプ大統領が各国に防衛装備を売り込んでいるというイメージというのは広く宣伝されているところでありますし、それがアメリカの経済再生戦略の一部であるというふうに指摘されるのも事実であろうかなというふうに思います。  ただ、トランプ政権の武器輸出政策においても、前政権の武器輸出のガイドライン若しくはアメリカの国内の武器輸出の規制措置に準拠したものでありますので、それまでのアメリカの政策を変更してまで武器を売買、取引を行っているわけではないということをまず指摘させていただきたいというふうに思います。  第二点なんですけれども、国の外交防衛という問題、先ほど小西委員の方から御指摘がありましたが、やはり国の外交政策は、恐らく言葉だけでは足りない部分というのがあるんではないかなというふうに思います。それを何らかの形にする必要があるときに、その形にするときの一つの象徴が防衛装備であり防衛技術協力であり共同生産であるという側面は、武器取引についていろいろ批判的な御意見が日本の国内で多い中であったとしても、それは厳然たる事実であろうかなというふうに思います。  ただ、日本として、そういう防衛生産、防衛装備協力というのを外交の柱として据えるというのは、これまでの国内の世論を考えると十分ではない面もあると思いますので、そこは慎重に、これまでの平和国家としての日本の在り方を考慮しつつ、その中で外交力として防衛装備の利点を生かすためにどういうふうな措置が必要なのかということを検討していく必要があるのではないかというふうに思っております。
  45. アントニオ猪木

    アントニオ猪木君 次に、柳澤参考人にお聞きしたいと思いますが、イラクの本を読ませてもらったらイラクの話も出てまいりましたが、この中で一番、AI兵器というんでしょうかね、キラーロボットというんですか、この辺のやはり我々が予測も付かない何か進化なのか、これからどういうふうに変わっていくのかという部分で、専門的にその辺の意見を聞かせてもらえれば。自動的な、高度な自動化でこれから戦争が行われるような、そんな予測も付かない事態にならないと一番いいんですが、お聞かせください。
  46. 柳澤協二

    参考人柳澤協二君) ありがとうございます。  そのAI兵器の問題は実は佐藤丙午先生が御専門なんですけれども、私が防衛実務の経験者としての捉え方を申し上げさせていただきますと、もちろん、ですから、どの目標をやっつけるという明確なミッションを与えた場合に、AIは一番正確に間違いなくそれを効率的にやってくれる、それは兵器に応用しても当然そうなるんだろうと思うんですね。  問題は、そこで、人間がどのようにそこを、どのようなミッションを付与し、そして、そのミッションを付与する以前に、お互いにその辺が、相手が何をするか分からない状況の下で、お互いがAIを持った兵器で武装する、あるいは兵器体系そのものを運用するということになると、実は相手が何をしたいかを考える間もなく、一定の行動に対して一定の、何というか、一定の動きを察知したら自動的にそれで反応して攻撃しなければならないような状況になりかねない。  以前、白黒時代の映画でありました。「博士の異常な愛情」というような題だったと思いますが、そういう、相手側からミサイルが来たら自動的に報復の核ミサイルがアメリカに向かって飛んでいくというのをソ連がつくって、それが止まらなくなってしまったという状況を描いた映画なんですけれども、AIに依存するというのは、効率性を求める余りAIに依存することによって、そういうかえって人間を破滅に導く効果もあるという意味で、非常に、これからどういうふうにそれを扱っていくのか、それはむしろ本当に人類的な、人類史的な課題になってきているのかなと私は思っております。
  47. アントニオ猪木

    アントニオ猪木君 佐藤参考人にお聞きしますが、AIの方はそういうことだったんですが、一つには、やはり地雷除去ということで私もカンボジアへ行ったりなんかしたことがあるんですが、今、やはりこれは南北関係でもそこは大変な地雷があるということで。  そこで、このAIを使った形での地雷除去というんでしょうかね、大変、あるところでは技術も進んでいるということを聞きましたが、その点についてお聞かせください。
  48. 佐藤丙午

    参考人佐藤丙午君) ありがとうございます。  AIを使ったといいますか、いわゆる無人兵器システム若しくは無人システムの中でAIを活用する形で、人間が到底入り得ないような場所若しくは非常に危険であって人間が入らない方がいい場所において、無人兵器システム若しくは無人システムを使って作戦運用を行うというのは間々見られる事例でございます。委員がおっしゃったように、地雷除去の部分においても、無人の地雷除去の方策を検討しているという話はよく聞きますし、その中にAIが活用されているという話はよく聞きます。  ただ、一つAIについて大きな誤解があるなというふうに思うのは、AIを使うことによって全て自動的に何かが行われる、若しくは機械が全てを判断してやってくれるというものではなくて、そのAIを搭載したものの中にも、アルゴリズムであるとかいろんなデータを入れることによって、どういうふうに動かすか、どこまで動くかということはやはり人間がコントロールすべきものですし、人間がコントロールしない限り、無軌道に行動して機械が操作されてしまうものであろうかなというふうに思います。そこに関する規制を国際的に設けることは非常に重要であるというふうに考えております。
  49. アントニオ猪木

    アントニオ猪木君 岩崎参考人にお聞きしたいと思いますが、グレーゾーンというあれが出てまいりますが、インドとパキスタンのところにワガという町がありまして、前はあそこは毎日こういうイベントをやっていまして、両方がお祭り気分で、大分前は大変な国境紛争があったところですが、これからグレーゾーンというものがまだまだいっぱい出てくるかもしれませんが、こういうものについて、一つには話合いしかないんだろうと思うんですが、その点についてお聞かせください。
  50. 岩崎茂

    参考人岩崎茂君) 今、アントニオ猪木議員がおっしゃったとおりだというふうに思っています。  グレーゾーンというのは、第二次世界大戦以降のこの世界を考えると、先ほど申し上げたとおり、なかなか大国間の本格的な武力紛争というのは起こりにくい、起こしにくいような状況になってきているというふうに思います。でも、その中で、いろいろな利権争いのために、本格的なものではなくて、少しの小競り合いみたいなものが進んでいっているというふうに思います。  これをなくすためには、今言われたとおり、一番目はやっぱり話合いをすること、それから二番目は、もし仮に我が国のことを考えると、主権が侵されるような事態になることを防ぐためにはしっかりとした対処力を持っておくこと、これが必要だというふうに思っています。  必ずしもインド、パキスタンの例というのは私はそれほど承知しておりませんのでコメントはいたしませんけれども、こういった外交、それからしっかりとした軍事を持っておくことが大切ではないかなというふうに思っています。  以上です。
  51. アントニオ猪木

    アントニオ猪木君 日本は、これから平和というものが本当におろそかになって、その部分では大きな旗を振って世界へ行くべきだと思うんで、今、イランに安倍総理が行かれていますが、その辺も、新聞の論評を読む限りではどうなのか分かりませんけど、日本の我々、このせっかく貴重な御意見をいただいたのに、それを生かせるような我々も努力していきたいと思います。  ありがとうございます。
  52. 高瀬弘美

    ○高瀬弘美君 公明党の高瀬弘美です。  今日は三人の参考人の先生方、大変にありがとうございました。  まず初めに、佐藤参考人にお伺いをしたいと思います。  今回の防衛大綱中期防につきましては、抑止力維持しながら憲法の範囲を逸脱しない、このことを強調していますけれども、この点についての参考人の御見解をお伺いしたいと思います。
  53. 佐藤丙午

    参考人佐藤丙午君) ありがとうございます。  憲法の問題については、やはり我々が法治国家であり近代国家である以上、憲法の規定の中で政策が実行されるのは当然だと思います。しかし、同時に、軍事安全保障の面で見たときに、抑止力というのが平和を担保するための手段として活用されてきたということも、これはまた否定し得ない事実であります。  論点として非常に重要なのは、では、今の安全保障環境の中で抑止力を担保するために現状の憲法で十分なのかどうなのか、もし不十分であればそれをどう変えるのか、もし十分であるんだとすれば、その中で、いわゆる現行憲法の中で抑止力をどの程度まで向上させることができるか、そのための技術はどういうものがあるのか、またそのための手段としてどういうものを組み合わせていくのか。先ほど外交軍事という話を申し上げましたけれども、抑止力というのは、ただ単に軍事力だけではなくて、外交交渉、外交関係というのもある意味で言ってしまえば相手を抑止する力になるわけであります。  したがって、抑止力をただ単に軍事力と捉えて、その軍事力の行使だけを考えるのではなくて、様々な国の力、いわゆる、よくホール・オブ・ザ・ガバメント・アプローチと言いますけれども、国家全体の力をいかに結集させていくかということが極めて重要だと思っております。その際に、軍事力を含めた政策手段の話の中で我々はタブーを設けるべきではないというふうには考えております。
  54. 高瀬弘美

    ○高瀬弘美君 ありがとうございます。  続けて、佐藤参考人にお伺いをしたいと思います。  今日のお話の中で、二ページ目のところに当たりますけれども、今回、防衛省自衛隊が新たな任務を負うことになる、現状の定員、現状の予算でこれらを果たすことが可能であるかどうか、オーバーストレッチの状態になっていないかどうかということを検証していく必要があるという御指摘がございました。その具体的な形としまして、国会を含めた外部の第三者機関等による検証を進めていく必要があるのではないかという御指摘でございました。  私、この点、大変大事な御指摘だと思っておりますけれども、一方で、どうしてもこの防衛省自衛隊の情報というのは機密情報、軍事情報が関わってまいりますので、こういう検証機関をつくるというのは非常に高度な技術も必要ではないかというふうに考えますけれども、参考人がイメージをされていらっしゃるモデルがあったりですとか、あるいは他国の例としてこのような検証を行っているような例があれば教えていただければと思います。
  55. 佐藤丙午

    参考人佐藤丙午君) ありがとうございます。  民主主義の社会においては、当事者以外の人間若しくは当事者以外の機関による検証というのが、不断の検証というのが、透明性を高め、民主主義の基盤を守るものであるというふうに考えております。しかし、同時に、防衛については、機密、非常に大きな防衛秘密等々関わってきますので、第三者とはいえ、それに容易に触れることができないという現実も理解しております。  その間のバランスを取ることを考える際には、やはり国会の役割が非常に重たいというふうに考えております。国会の方々、先生方がどの程度の防衛機密に触れることができるかできないのか、また、そういう秘密に触れた場合にどれだけ情報を外に出せるのか出せないのかということは一つ論点としてお考えいただきたいと思いますし、既にいろんな形で存在しているとは思いますけれども、国会内にそういう秘密会のようなものを設けて、国会議員が全てにおいて責任を負うという意味において情報を入手し、その中で判断し、それを外に出さずに国会の中で責任を持って判断するというふうな形も一つの在り方だろうというふうに思っております。  同時に、例えばドイツにおけるSWPのような議会が設置するシンクタンクによる検証、また、アメリカにおける、かつて国防評価パネルというのがありましたけれども、そういう国会が委任する形で評価を行うという方式、いろんな形があろうかと思いますけれども、それは国会議員の先生方が民主主義社会の中で国会の果たすべき役割を中心にお考えいただき、適切な形を模索していただければというふうに考えております。
  56. 高瀬弘美

    ○高瀬弘美君 ありがとうございます。大変大事な御提案だと思いますので、しっかりと受け止めさせていただきたいと思います。  続きまして、岩崎参考人にお伺いをしたいと思います。  今回の大綱の中にサイバー防衛部隊の新設というのが入っておりまして、日本が今後取り組んでいくわけでございますけれども、このサイバー対策の面におきまして、人材面で今後必要となる取組とハード面の設備等で必要な取組と二つあるというふうに考えますけれども、参考人がお考えになるこのサイバー防衛のために今後日本としてとるべき措置、これについて教えていただければと思います。
  57. 岩崎茂

    参考人岩崎茂君) ありがとうございます。  サイバー防衛隊の新設というのは、少し言葉の使い方が適切でないかもしれません。私が、平成二十六年の三月、まだ現役の当時ですけれども、サイバー防衛隊なるものを九十数名で立ち上げましたので、既にこの部隊というのは市ケ谷を中心として現存しています。ただ、能力的にどこまであるのかというのはなかなかまだ、まさに緒に就いたばかりのところがあります。  自衛隊の中には今まで通信部隊で活躍していた隊員たちが多くいますので、これは陸海空の部隊でいますので、その中にはかなりの能力を持った人たちが現存しています。当然、民間の中に、それからまた、世界的に見て、いろいろなサイバーのような競技会も行われていますので、そういったレベルはかなり高い人たちが存在していることは確かです。こういった現状の中で、私たちは徐々に今このサイバー部隊を、サイバー防衛隊を大きくしていき、私たちの何らかの行動をする場合の例えば妨げにならないような防御をしていかないといけないというふうに考えています。  人については、当然のことながら、もし優秀な人たちが外にいれば、それは公募でも募集することができますけれども、ただ、基本的には、よく考えていかないといけないのは、例えばアメリカは一時期そういったことをやったことがありますけれども、その公募で入ってきた人たちがどの程度の忠誠心、ロイヤリティーを持っているかというのは問題になると思います。つまり、サイバーで活躍する人たちというのは、自分たち、例えば私たちが守りたいネットワークだとか又はインフラの構造をよく知らないといけないわけですね。それを知った上で、もしこの人たちが民に流出していくということになると、逆に今度は私たちを攻撃するかもしれないというふうな不安もありますので、よくよくその辺は見極めながら人を育てていかないといけない、又はリクルートしていかないといけないというふうに思っています。  それから、機材については、日本のいろいろな企業がかなりの技術を持ったものを持っていますので、逐次そういったものを導入しながら私たちはやっていかないといけないというふうに考えているところです。  以上です。
  58. 高瀬弘美

    ○高瀬弘美君 大変にありがとうございました。  改めまして、佐藤参考人にお伺いしたいと思います。  佐藤参考人は、完全自律型の致死性兵器システム、いわゆるLAWSの御専門家でもいらっしゃいますけれども、私も委員会の中でも何回か質問をさせていただいておりまして、このLAWSというのは規制が必要であるというふうに考えております。  総理とか外務大臣からの御答弁の中でも、LAWSを開発する意図はないと、必ずそういう御答弁いただいているんですが、一方で、人口減少における我が国においては、部隊の省人化、無人化という点から、それに寄与するデュアルユースも可能なAIのシステム開発については阻害されてはならないと、このような形で御答弁をいただいております。  このような中で、日本としてはLAWSは開発しないけれども両方に使えるようなAIのシステム開発はやっていくという、この制約の中でどのように日本としては開発を進めていけばよいのか。今後、防衛省の中でそういう開発も進んでいくんだと思いますけれども、この点について御見解をお伺いしたいと思います。
  59. 佐藤丙午

    参考人佐藤丙午君) ありがとうございます。  LAWSの問題については、数年前より国連の特定通常兵器使用禁止制限条約の締約国会議の中に非公式専門家会議、その後、政府専門家会議という形で議論が進んできております。今年の八月に今年度会議が、政府専門家会議が開催されて、そこで締約国会議に結論を提出するという段取りになっております。  その議論の中で、日本政府は繰り返しLAWS、いわゆる無人致死性兵器システムの開発を行っていないというふうに表明しております。しかしながら、無人致死性兵器システム、LAWSを開発していない、採用する気はないというのは、これはアメリカも、それこそイスラエルも、ほかの国も同じような立場を表明しておりまして、それほど諸外国と立場が変わるものではありません。  LAWSの議論を進める中で一つ分かってきたことが、いわゆる最後の致死性の部分を兵器に自動的に委ねるということと兵器自体の運用を自動化していくということの間にやっぱり大きな違いがある、しかしながら、そこは技術的に大きな違いがないというのが大きな課題として取り上げられております。その境界のどこに線を引くのか、それを線を引くことに、法律、条約でそれを行うことが可能なのか、それとも各国の自発的意思に委ねるのかどうなのか、それが今の国連のCCWにおける議論の焦点になっております。  その中で、日本の自衛隊も、また日本社会全体としても無人化、AIを使用した無人化を進めることはいろんな意味においてメリットがありますし、利点があると思います。問題は、その無人の兵器システム、若しくは無人のシステムが最後の致死性を帯びる段においてどれだけ人間の責任が、若しくは指揮官、司令官の責任が担保されるようになるかというのが大きなポイントだというふうに思います。  その点については、国際社会議論を聞いている限りにおいては、日本の立場とアメリカ、イスラエル、中国にしてもロシアにしてもそれほど変わるものではなく、ただ、その中の、その先の技術的な問題においてどういうふうな手段が適切かということについての意見が分かれているようであります。
  60. 高瀬弘美

    ○高瀬弘美君 大変にありがとうございます。  最後に、柳澤参考人にお伺いをしたいと思います。  繰り返しの質問になるかもしれませんが、先ほど、参考人の冒頭の御意見の中で、グレーゾーン自衛隊を出せば事態拡大のおそれがあるという御指摘がございました。むしろその自衛隊以前に政治の役割をつくる必要があるという点ございましたけれども、ここをもう少し深く御説明をいただければと思います。具体的に、どのようなシステムをここで想定されていらっしゃるのか。お願いいたします。
  61. 柳澤協二

    参考人柳澤協二君) 例えば、例えばというか、主な問題意識は尖閣の問題なんでありますけれども、あれは、私は実は野田政権のときに若干雑なやり方で国有化をしたというのが非常に今日問題を長引かせている大きな要因になっていると思うんですが、要は、お互い、お互いというか、日本は正式には領有権の問題は存在しないという立場ですが、相手はそう思っていないわけですね。国有化の実態をキャンセルするような形の行動を海警を通じて取ってきている。  しからば、今はコーストガードという位置付けの船が来ているけれども、それに対して日本の警察機関が間に合わないときに自衛隊は海上警備行動、治安出動というような形で自衛隊が代わって行く枠組みは今あるわけですね。であるがゆえに、そこは一足飛びに自衛隊を出せば相手は海軍を出してくる口実ができるという側面もあるので、案外それが相手の狙いかもしれないということを考えなければいけない。  ですから、絶えずシームレスに、警察機関が間に合わなければ自衛隊が出ていくんだというのは、それはやはり国内の論理であって、他国相手の紛争の中で同じように考えてシームレスにやることが本当に、何というんでしょう、少なくとも賢いやり方なんだろうかということはよっぽど考えなければいけない。絶えずそこに政治の、何というんでしょうか、ガイダンスと、そしてその両政府の間の意思疎通がなければ、これもう本当に、何というか、いつどこでどう拡大するか分からないし、どこまで行くか分からないような状況が生まれかねない。その意味では非常に危険な状況があるがゆえに、政治が、まず政治の役割がなければならないのではないかということを考えております。
  62. 高瀬弘美

    ○高瀬弘美君 三名の参考人の先生方、大変にありがとうございました。  以上で終わります。
  63. 浅田均

    ○浅田均君 日本維新の会、浅田均でございます。  三人の先生方、今日は貴重な御意見を頂戴いたしまして、本当にありがとうございます。  私の方からは、まず岩崎参考人に、今日お話しいただいたことと、それからこの資料としていただいております我が国防衛政策の現状と課題ということに関して、何点かまずお話を聞かせていただきたいと思います。  岩崎参考人は、我が国防衛政策の現状と課題というところで、中国軍事費が日本の三倍、少なくとも三倍になっている、三倍以上になっていると。で、ロシア軍事費が日本の二倍になっていると。で、中国は、先ほどお話ありましたけれども、第二列島線を越えて、もう空母が太平洋進出して、そこにもう戦闘機も積んでいると、そういうお話がありました。また、ロシアは北方領土に新型の対艦ミサイルを配備しているというふうにお書きになっております。  これらの動きに対して、中国ロシアの動きに対して警戒監視の強化が必要であるというふうにお書きになっておりますけれども、先生が想定されております警戒監視強化というのは現在の自衛隊の装備で可能なのか、あるいは米軍の協力が必要なのか、どういうふうにお考えでしょうか。
  64. 岩崎茂

    参考人岩崎茂君) それは何に書かれてあったのか、ちょっと私は明確には覚えていませんけれども。  私は、いろんなところで講演したり、いろんなものに書いていますけれども、中国軍事費というのはたしか二〇〇八年ぐらいに我が国防衛費を上回りましたけれども、その後も十数%、年々多くしていって、いわゆる中国が公開している分の軍事費でも我が国の三倍以上になっているというのが現実だというふうに思っています。彼らは経済力をてこにいろいろな近代的な兵器だとか、それから活動活発化させているというのが今の現状だというふうに思っています。  それから、ロシアについても、一九九一年にソ連が倒れたわけですけれども、それ以降、十五年程度はほとんどの活動は観測されなかったんですけど、二〇〇七年に常時警戒飛行というのを宣言して以降、我が国を時々周回をするような偵察行動を取っているわけです。そして、北方領土の方にも新たに戦闘機を配備したというふうな報道もありますし、それから、先ほど委員が御指摘のあったような、対艦ミサイルを配備したというふうな報道もございます。  これに対して我々は、日常、日頃からいろいろなところで警戒を行っています。対空警戒、それから水上面の警戒、こういったところを中心にしていますけれども、この警戒が全て完璧かというふうな質問をされれば、なかなか完璧というようなところまでは行かないというふうに思っています。  例えば、私たちはADIZというふうな防空識別圏を設定していますけれども、この防空識別圏の全てを監視できているかというと必ずしも十分でない部分もありますけれども、ただ、ほぼこの防空識別圏の中をレーダーで監視できているというふうに思っています。一部分、例えば低高度だとか、又は非常に遠方にある、小笠原の遠方だとかというのは必ずしも監視できていないところもありますけれども、できているというふうに申し上げられるというふうに思います。  今後、例えば中国の海空軍が西太平洋で進出していろんな活動をしていますけれども、もしかすると私たちはやっぱりそういったことにも備えておかないといけないということを考えれば、今後ともこの警戒監視能力というのはやはり上げていかないといけない。  例えば、海上自衛隊は今まで四十八隻の護衛艦でやっていましたけれども、今ようやく五十四隻まで増産をしているところです。こういったこと、それから、海上保安庁は私たちとは当然違う組織でありますけれども、海上保安庁も巡視船を持って海上における警戒監視をやっていますけれども、海上保安庁の方もこの船を増産し、全国でいろいろな監視をやっているところであります。全ての国の持てる能力を使ってこれをやっていくべきだというふうに思っています。  以上です。
  65. 浅田均

    ○浅田均君 もう一点お尋ねしたかったのは、その警戒監視というものに関しまして、アメリカ軍の協力が必要とお考えでしょうか。
  66. 岩崎茂

    参考人岩崎茂君) 我々は当然同盟国ですので、いろいろなデータのやり取りというのは必要だというふうに思っています。  ただ、一義的に、我が国の例えば対空監視、それから水上の監視というのは我々自身が持つべきだと私は思っています。当然のことながら、何か急激な変化があったときにはそちらの方に集中しなければいけませんので、もしかすると手薄になる部分もあるかもしれません。そういったときには当然同盟国の助けを借りるということもあり得るというふうに思いますが、一義的には自分たち自身でこの警戒監視についてはやるべきだというふうに思っています。
  67. 浅田均

    ○浅田均君 続けて岩崎先生にお尋ねいたしますが、我が国中国に対して、我が国というより日米軍事同盟も含めてでありますが、中国に対して十分な抑止力を持っているというふうに今御認識でしょうか。
  68. 岩崎茂

    参考人岩崎茂君) 抑止力になっているかどうかというのは相手がどう考えるかの話ですので、これは中国に聞かないといけないというふうに思いますけれども、私は、今の自衛隊体制、それから日米同盟の現状を考えれば、十分に抑止は効いているというふうに考えています。ですので、この七十数年間、私たちはこの平和を享受できているというふうに認識しています。
  69. 浅田均

    ○浅田均君 続きまして、柳澤参考人にお尋ねいたしますが、今日のお話の中にもありましたし、この資料の中にもお書きになっているんですが、中国が、自国にとって脅威の基盤である米国を日本が助けている限り、日本を攻撃する意思が生じざるを得ませんというふうにお書きになっておりますけれども、今、岩崎参考人の方からお話ありましたように、例えば警戒監視という点で、日本だけでは完璧でないと、米軍の協力を得て警戒監視をやっていると、そういう現状も中国に対しては、中国は日本がアメリカと一体になって何かやっているというふうに認識していると柳澤さんはお考えでしょうか。
  70. 柳澤協二

    参考人柳澤協二君) 前段、ちょっと引用されたところは私は特に、よく分からないところでありますが、中国との関係では、私は二つの問題が日本にとってはあると思っています。一つは、日中固有の問題としての尖閣の問題、それからもう一つは、米中が競争関係、対立関係にある中で、アメリカの側に付いている日本と中国関係がどうかという問題があると思うんですね。  もう私、前者の方は、日本独自の主権の問題については、これは基本的に日本が何とかせにゃいかぬ問題であると思っておりますし、そして、米中の競争というのか対立というのか、その中で果たして日本の役割がどれだけ効いているかというのは、実は、何というんでしょうか、物の数からいっても体制からいっても、やはりそこは中国は基本的にアメリカを意識し、アメリカ軍を見ているということだと思うんですね。  ただ、そこに日本の自衛隊が入っていくというのは、実は計算を若干複雑にするという意味で、米中の間に仮に何らかの抑止力と言われる共通認識がある場合に、そこに自衛隊が入っていくというのは、実は必ずしも安定要因にはならない側面もある。そこら辺をどう考えていくのかな。  私は、日本の力が、日本の、軍事バランスに及ぼす日本の防衛力というのはそんなに大きなものだとは思っていません。一方で、そこは、ですから、あくまでも米中の力関係の問題であるわけで、ただ、そこで、自衛隊が行動でいろんなことをやるというのが果たして本当にうまいやり方なのかなというのは若干疑問と言わざるを得ないというふうに思っております。
  71. 浅田均

    ○浅田均君 それでは、続けて柳澤参考人にお尋ねいたします。  これ、配られている資料なんですが、日本を戦争に巻き込む危険な新防衛大綱計画というタイトルの記事でございます。この中に、日米の一体化が中国に対する抑止力強化になったとしても、それ以上に抑止が破れて実際に米中が戦った場合、日本が巻き込まれて国土が戦場になる危険性があるということを御指摘になっております。抑止が破れるということは具体的にどういう事態を想定されてこういう記事をお書きになったのか、お聞かせいただきたいんですが。
  72. 柳澤協二

    参考人柳澤協二君) 抑止というのは、実は破れたときに初めて抑止力というのが効いていなかったんだというのが後から分かるというふうに一般的に言われているんですが、抑止というのは、だから、破れることはあるという前提で考えなければいけないんだと思っています。  そこで、どういうときに破れるかということを定性的に考えれば、それは抑止の目的が相手にとって、相手が受け入れられる、何というか、相手がそのことを抑止されても我慢できることを抑止するのであれば、相手は多分、我慢して引っ込むんですね。ところが、相手にとってそれが本当に受け入れられないようなことを強制するようなことが抑止の目的であった場合には、それは逆に挑発になりかねないという要素があって、そこのかじ取り、まあ何を言いたいかというと、特に台湾問題についてそういう心配がないとは言えないと思っておりますので、そういうところで仮に実際の紛争があった場合に、まずは米軍の拠点になっている沖縄を中心にする日本というのが、当然、理屈の上では優先的な攻撃目標にならざるを得ない。そういうものであることを認識した上で議論しないと、なかなかリアリティーのある議論にならないのではないかというふうに考えます。
  73. 浅田均

    ○浅田均君 ありがとうございます。  もう時間がありませんので、佐藤先生に一点だけ。  今日のプレゼンの中で一番最後の方におっしゃいました、我々は韓国を失おうとしているのかという問題について、ごく簡単にしかお話を聞けていませんので、朝鮮半島問題からの解放と同時に、更に厄介な新たな問題を抱えることを意味するというふうに御発言もされておりますけれども、これを具体的にもう少し詳しく御説明いただきたいと思います。
  74. 佐藤丙午

    参考人佐藤丙午君) 手短に申し上げます。  日本と韓国の様々なこれまでの不幸な歴史、またその不幸な歴史を乗り越えるべく努力してきた政府役割というのは非常に重たいものがあると思います。ただ、現状の日韓関係を見ている限りにおいては、その努力がどうもうまく最終的に成果を生んでいなかったというふうな残念な気持ちも同時に持っております。  韓国の国内で、また韓国の研究者とも議論を重ねてくる中で、日韓関係は韓国にとってどれだけ重要なのか、また日韓関係は日本にとってどれだけ重要なのかという議論をすることがあります。その中で、韓国の国内の議論を見ている限りにおいて、極めて最近顕著に出てくる議論というのが、日本との関係というのが韓国の安全保障にとってそれほど重要ではないんではないかと。要は、独力でやっていけるか、若しくは米韓同盟で対応することで韓国は日本の助けを必要としていないというふうな議論も出てくるばかりか、また、韓国における核保有の議論もしばしばアカデミックなレベルでは出てくるような状況でもあります。  そういうふうな韓国の国内での議論変化を踏まえたときに、我々は今までのように日米韓を中心として東アジア、北東アジアの安全を担保していくというこれまでの在り方、フレームワークというものが果たして今後維持できるかどうかということについて、疑問を持たざるを得ません。ただ、それを、疑問を持っているというわけではなくて、疑問を持たざるを得ないので、政策の議論の場においては……
  75. 渡邉美樹

    委員長渡邉美樹君) 答弁をおまとめください。
  76. 佐藤丙午

    参考人佐藤丙午君) ごめんなさい。  韓国がなくなったときに、韓国が我々の側にいないときの安全保障政策はどういうものであるかということについて検討すべきだというのがポイントだと思います。
  77. 浅田均

    ○浅田均君 これで終わります。  三人の先生方、ありがとうございました。
  78. 井上哲士

    ○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。  三人の参考人の皆さん、ありがとうございます。  まず、岩崎参考人にお聞きいたしますが、大綱は、米国が同盟のコミットメントを維持するとともに責任分担を要求していると、こういうふうに述べておりますが、アメリカがこの責任分担を強め、要求を強めてきた背景、そして、それが、日本に対する要求はどのように変わってきたのか、その結果、大綱中期防にどのように反映をされているのか。まず、これをお願いいたします。
  79. 岩崎茂

    参考人岩崎茂君) 長年の我が国と米国の条約関係を考えていくと、例えば、その都度その都度、アメリカの国力、国の強さ、それから日本の国力、こういったものによってそれぞれのときの役割分担があるんだろうなというふうに思っています。一番大きく日米の役割分担が変わったのは、ガイドラインの見直しのときだったというふうに思っています。これを反映して今回の大綱がそれぞれの役割を変えてきているというふうに思っています。  私は、トータルで日米で、どこがどういうふうにとかということは具体的にはなかなか申し上げられないところもあるんですけれども、トータルで、それぞれ、その都度その都度、体力によって変えていくべきものというふうに思っています。今回は、アメリカは、例えばオバマ大統領がアメリカはもはや超一流国じゃないというふうな発言をたしかされて、これ正確じゃなかったと思いますけれども、そういった趣旨の発言をされましたけれども、アメリカでさえも相対的に若干弱くなっている部分もある、それを当然同盟国というのは話合いによって補っていくべきだというふうに思います。  この同盟国というのは、やはり私たちに何かいろいろな形で脅威になる、又は何らかの圧力を掛ける者に対してこれを拒否する能力だというふうに思いますので、それぞれの国がその都度その都度話合いで決めていくべきものというふうに考えています。
  80. 井上哲士

    ○井上哲士君 新ガイドラインが大きなポイントだったと言われましたけれども、当時オバマ政権ですが、その後、トランプ政権発足をしているわけですね。  そこで、柳澤参考人にお聞きしたいと思うんですが、トランプ政権の下で今回の、というか、が発足後に今回の大綱が作られていると考えたときに、そういう今のいわゆるアメリカ・ファーストとかやってきたトランプ政権の姿勢が今回の大綱にどのように影響しているかというのはどうお考えでしょうか。
  81. 柳澤協二

    参考人柳澤協二君) さっき申し上げました運用面で日米の一体化を図っていくというのは、実は日本側の一貫した追求するところであったと思います、一五年のガイドラインも含めて、オバマ政権当時からですね。  他方で、今回の大綱に、例えば宇宙サイバー電磁波といった新しいドメインが強調されているようなところは、実は、これは私はやはり昨年の秋口から始まった米中の技術をめぐる確執というのか、中国が技術にキャッチアップしてくることへのアメリカの非常に強い警戒感が反映されてこうなった部分かなというふうに、特にその部分は一番大きなところではないかというふうに思っています。
  82. 井上哲士

    ○井上哲士君 全体として、日本がアメリカとの軍事的一体化の強化がされていると思うんですが、それは一体何をもたらすのかという点で岩崎参考人柳澤参考人にお聞きしたいんですが。  安保法制で、戦闘行為に発進準備中の米国戦闘機にも給油が可能ということになりました。今回、「いずも」型の護衛艦が空母化をするに当たって海上自衛隊が行った調査は、米国の後方支援を目的として、そしてF35Bの垂直着艦が行われるということを前提とした検討をした上で空母化というのが進められているわけですが、まさに空母化される「かが」に先日両首脳が乗り込んで様々な発言したわけでありますが、安倍総理は、西太平洋からインド洋に及ぶ広大な海で米海軍と密接に連携してきたと、こう言い、トランプ氏は、この地域とより離れた地域で複雑な脅威から我々を守ると、こういうふうにも述べました。  実態として、この間、インド洋などへも行って様々な訓練も既に「いずも」などが行ってきたわけですので、こうなりますと、まさに専守防衛の枠を超えて地球的な規模での様々な紛争に両国が介入をしていく、そういうものになってきているんじゃないかと思うんですが、そこの評価と、それがどういうことをもたらすのかということをそれぞれの参考人からお願いしたいと思います。
  83. 岩崎茂

    参考人岩崎茂君) 多分、太平洋、インド洋にわたるような活動というのは、インド洋については、最近始めましたマラバールというインドとの演習のことを言っていると思いますけれども、専守防衛を超えるか超えないかというのは、それはまさしく私たち自衛隊の判断ではなくて政治の判断だというふうに思っています。  私たちの行動が別に政治的に隔離されたわけではありませんし、全てが公表された形で政治に報告されて私たちの訓練、それからいろいろな対処、こういったことが行われていますので、私は専守防衛内の中でしっかりとやられているというふうに認識しております。
  84. 柳澤協二

    参考人柳澤協二君) ちょっと二つの点を申し上げたいと思うんですが、一つは、インド太平洋というビジョンが盛んに語られるんですが、本当に実体があるんだろうかということを考えたときに、特に海上自衛隊の船の数が五十四隻、五十四隻で、船っていうのは、常時高練度で動ける船って三分の一しかありませんので、そうなると、日本を防衛する本来のミッションを果たしながらインド洋まで出かけるというのは、これはもうそれだけで私は多分オーバーストレッチになってくるんだろう。そこは、だから本当に何に重点を置くのかということをよほど決めてやらなければいけないんだろうと思うんですね。  そして、もう一つ、専守防衛ということでいいますと、もう既に、一般論として、兵器というのはいつでも攻撃にも使えるだろうということではあるんですが、特に私が注目しているのは、長距離巡航ミサイルとさっき申し上げた高速滑空弾なんですけれども、そういうものは使いようによっては敵国の奥深くも攻撃することができるようになるわけですね。それを、だからその運用をどうするかということを、別途どう縛るのかということを考えなければいけないわけですけれども、専守防衛というのは、守っているだけじゃ勝てないだろうと、こう言われるんです。しかし、その勝てるって一体何なんだろうかということなんですね。  まさに、相手国の意思を力ずくで変えるということが戦争に勝つということであれば、そういう姿勢は取らないというのが本来日本の専守防衛の一番よって立つ原点の国家像だったと思うんですね。そこを本当に全体としてどう守っていくのか、変えていくのかということが政治に課せられた大きな論点だろうというふうに思います。
  85. 井上哲士

    ○井上哲士君 今のことに関して、運用のことというのがあるわけですけど、そういう敵攻撃能力を考えたときに、能力を持っていても運用でカバーしたらいいんだという考え方と、そもそもそういう敵に脅威を与えるような、そういう能力そのものを持つべきでないという両方の議論があると思うんですけれども、その点、参考人、どうお考えでしょうか。
  86. 柳澤協二

    参考人柳澤協二君) それは、ですから、例えば今までの政府見解でも、ICBMとか攻撃型空母は持っただけで憲法に反するんだという見解を出していました。  実は、ここで挙がっている装備はそれほどの装備ではないと思うんですね。そうしますと、脅威というものは、こちらが受け止めるときもそうですが、相手が受け止めるときも、能力と意図の掛け算で成り立つ概念であるとすると、そうすると、そういう能力を多少持っていたとしても、別途それは運用上の工夫といったような実は生易しい言葉では足りないと思うんですが、本当に政治的にそういう使われ方をしないという担保が別途あれば、理屈の上では相手国脅威を与えないということもあり得るんだろうというふうに思います。
  87. 井上哲士

    ○井上哲士君 政治や外交役割柳澤参考人、強調されているんですが、先ほどから配られている資料と言っているのは、週刊金曜日の二月八日号の論文が私ども資料でいただいているんですけど、そこで強調されているのは、もはや力ずくで中国と張り合うやり方を再考して、いわゆる対立緩和の努力が必要だということを強調されています。そこで、米朝交渉が一つのヒントになるのではないか、それから、今おっしゃった攻撃する能力と意図ということを考えて対応することが必要だというようなことが書かれているんですが、この点、もう少し詳しくお述べいただけるでしょうか。
  88. 柳澤協二

    参考人柳澤協二君) 一つは、さっきも申し上げた、冒頭でも申し上げた際限ない運用の一体化と際限ない軍拡のようなその循環に入ってしまうんではないかという危惧を私は感じざるを得ないんですけれども、それはあくまでも能力に着目すれば、相手の能力がどんどん大きくなる、よってもってこちらの能力もどんどん増やさなければいけないという対抗関係、バランス勘定になっていくわけですね。  そうではなくて、相手がどんなものを持ったとしても、それを我が国を害するために直接使うのかどうかというその意思の部分、動機の部分にどうアプローチするかということを考える、それが、米朝交渉を引き合いに出させていただきましたのは、まさにアメリカは制裁と圧力でもって北朝鮮の意思を変えようとしたけれども、かえって相手の動機を強めて、結束を強めてうまくいかなかった。そこで、去年の六月、強制というよりは、相手が欲しがっている体制保証というような御褒美を先に出すことによって、自発的に相手が意思を変えるようにするという手法が取られようとしたわけですね。  そういうことを考えると、力あるいは軍事力によって解決するということを目指すだけではなくて、あるいは、少なくとも日本のような軍事的に比較的に大きくない国は、それを狙うよりは、もっと相手の国家の意思なり動機にどう働きかけるかということを考えるというのが米朝交渉からのヒントとしても得られるのではないかというふうに考えるということであります。
  89. 井上哲士

    ○井上哲士君 ありがとうございます。  佐藤参考人にお聞きしますけれども、FMSの問題などにもお触れになりました。FMSでもそうですが、同時に、この間のアメリカからの武器購入の経過を見ますと、大体、日米首脳会談の後などにF35の追加購入であるとか、そしてイージス・アショアの購入などが決められると。トランプ氏が日米貿易赤字は駄目だと言ったことに対応して安倍総理がたくさん買ってくれたというような発言も度々されているわけですね。  ですから、どうもそういう言わば貿易赤字の解消とかいうことをもって一連の様々な大量の高額の武器購入がされているということに対する国民的批判も大きいと思うんですけど、この辺の実態をどのように御覧になっているか、お願いしたいと思います。
  90. 佐藤丙午

    参考人佐藤丙午君) 日米会談の後に武器の取引が成立する若しくは会談を通じて日米の武器の取引が喧伝されるというのは、経緯の事実としてはそのとおりだと思いますけれども、そこに因果関係があるかということになると、それは不明確若しくは因果関係はないと考えるのが適切なんではないかなというふうに思います。  やはり、武器を購入し、それをそれぞれの国の中で運用するというのは、国家の戦略若しくは安全保障政策の中で合理化されるものですので、政治的なショーアップとしてそういうふうな文言が使われたとしても、それと安全保障政策における武器の購入というのは別のものだというふうに考えるべきなのではないかというふうに考えます。
  91. 井上哲士

    ○井上哲士君 ありがとうございました。終わります。
  92. 伊波洋一

    ○伊波洋一君 沖縄の風の伊波洋一です。  三人の参考人の皆さん、本日はありがとうございます。  まず、岩崎参考人にお伺いしたいと思います。  さきのインタビューで、大国と大国の小競り合い程度は考えられるが、本格的な米中の衝突はかなり起こり難いと考えられると答えています。私も同意いたします。しかし、先ほど佐藤参考人は、トランプ政権の安全保障政策は、同盟国や友好国が地域紛争を戦うよう組み込まれていますと指摘されました。岩崎参考人が言及された小競り合いは、まさにこの地域紛争ではないか。つまり、米中の衝突の戦場を、今の場合は沖縄県を始めとする南西諸島で受け止めようとするのが今回の大綱なのではないか。南西諸島の島々に住む人々にとっては不安に思っております。  陸上自衛隊のプロモーションビデオを見ますと、小競り合いとはいっても、全国から自衛隊が南西諸島に投入される、まさに戦争です。このように日本国での戦争を前提とするのではなく、国土における戦争を避ける防衛戦略はなかったのでしょうか。
  93. 岩崎茂

    参考人岩崎茂君) 先ほどの、大国間の本格的な武力紛争は起こりにくい、でも、小さな紛争、小競り合いは起こり得る可能性があるというふうに申し上げましたけれども、別にこれはどこかの地域を捉えて発言した内容ではありません。  我々は、これまで何回も防衛計画大綱、それから中期防見直してきましたけれども、基本的には、我が国領域においてそのようなことが起こらないようなために我々の自衛隊整備してきているというふうに思っています。  まさしく、それは今回の大綱でも、その大綱の上位にあるものは国家安全保障戦略ですけれども、戦略、そして大綱中期防を見ても、そういったことを起こさないためにどうするかというふうな方策がこの中に表れているというふうに思っています。それは、外交手段もそうでしょうし、それから、グレーゾーンのときに、いかに自衛隊が直接でなくて、例えば海上保安庁だとかいろんなところが対処をするかというふうなことがこの中に盛り込まれているというふうに考えています。
  94. 伊波洋一

    ○伊波洋一君 私、三年ほど前に参議院出まして外交防衛委員会に所属しておるんですけど、これまで何度も同様の議論をさせてもらっています。自衛隊の海上自衛隊幹部学校の戦略研究会のコラムや、あるいはまたその論文集などにありますように、もう二〇一二年頃から、要するに今のまさに南西諸島で起こっていることをきちんと理論化をして、南西諸島における価値のない島々に自衛隊基地を置くことによって、対中国の抑止とか、そういう無駄な出費がさせることができるんだというふうなことが指摘されて、もう幾つものコラムが書かれているんですね。今回の自衛隊も同様に、南西諸島を主として、テーマとして要綱が作られています。  そういう流れの中で、今、先ほどの、いわゆる米中の戦争は、大国同士の戦争はないけれども、その代わり同盟国周辺では戦争を起こし得るという状況で、長期的な戦略といいますか、それを解消しようという戦略が今行われているのではないかというふうに思うんですね。  それに、日本は日米同盟強化するといっても、これ、日米同盟強化すればするほど日本が戦争に組み込まれていくということになるのが今の状況なのではないでしょうか。そういう意味では、本当に今は、まさに日米同盟というのは、かつて日本が攻撃されたらアメリカが相手をやっつけてくれるということだったけれども、もはや中国が相手だとやっつけてくれないということを前提にしながら今の戦略が成り立っている。こういうまさに米国の盾になることが日米同盟、日本の役割として位置付けられてしまっているのではないかというふうに思えてならないんですね。  つまり、そのこと自体は、日本の自衛隊にとってそういうことへの不安がいろいろ論文にも出ております、幾つか。そのことについて、やはり方向の転換といいますか、をやはり求められているというような思いは、これまでこの役職をされながら思ったことはないんでしょうか。つまり、今の安全保障戦略というのは、本当にこれからどんどん大きくなっていく中国に対して日本が本当に取るべき安全保障政策としては、これがもうベストなんでしょうか。そのことをちょっと私は大きく疑問に思っているものですから、現場で指揮を執られた方としてどのようにお思いになっているのか、是非お聞かせ願いたいと思います。
  95. 岩崎茂

    参考人岩崎茂君) 日米同盟を、又は日米安保条約をどのように評価するかということだというふうに思いますけれども、我々は、当然、国は独立国です。アメリカも独立国です。当然、最終的には私たちがどのような行動をするのかというのは、それは国が決めるべきだ。民主主義の国というのは、当然のことながら議会が決め、総理がこれを判断されるわけですね。  ですので、全くの例えば不安がないのかと言われると、それは隊員によって若干のいろんなその差は出てくるかもしれませんけれども、我々は、考えることは何かというと、国が決めたとおり、議会が決めたとおりに私たちが行動するということが全てだというふうに思います。私は、日米同盟を考えて今まで四十年間やってまいりましたけれども、そういった意味では比較的不安というのを感じたことは少なかったというふうに思います。
  96. 伊波洋一

    ○伊波洋一君 そこで、佐藤先生にお伺いしますけれども、問題点として最後に指摘をしている、いわゆる同盟国や友好国が地域紛争、いわゆるプロキシーウオーを戦うよう組み込まれているということを日本としてどう受け止めるかというのが今問題だと先ほど指摘されました。先生としては、佐藤参考人としては、やはりこのような状況方向性として正しいと思っているのか、あるいは、それからやっぱりそれるべきだと思っているのか、御意見があればお伺いしたいと思います。
  97. 佐藤丙午

    参考人佐藤丙午君) ありがとうございます。  プロキシーウオーについてなんですけれども、大量報復戦略の下におけるプロキシーウオーの意義というものと柔軟反応戦略の下におけるプロキシーウオーの意義というのは大きく異なります。オバマ政権の下、つまり前大綱の下では、そこで行われるプロキシーウオーというのが、米中若しくは米国を含めた大国同士の核戦争に直結しないようにいかに切り離すか、逆に言うとそこに日本の安全保障の脆弱性があったので、日本側としては日米の関係強化したという側面があると思います。  しかしながら、トランプ政権の下では、柔軟反応戦略に近い戦略が採用されておりますので、そこにおけるプロキシーウオーというのはエスカレーションコントロールをする意味においてのプロキシーウオーというものになっていると思います。  そうなったときには、プロキシーウオーを日本が、若しくはその同盟国がいかに戦うか、また、それを、その戦い方の中において日米の戦略的な一体性を高めることによって、そのエスカレーションコントロールをできるように、いかに可能にするようにしておくかということが極めて重要になってきますので、逆に日米の一体化というのが特にトランプ政権の下においては、特にトランプ政権の戦略の下においては必須になってまいります。  見た目上は、プロキシーウオーが戦われるということにおいて、南西諸島の皆様を始め日本の国民自体の不安を高めるものでありますけれども、それが結果的には核戦争を防止し、なおかつ地域紛争のエスカレーションを防ぐ効果につながりますので、そこは見た目上の効果と戦略上の意義というもののアンバランスが生じているんだというふうに思います。  ただ、戦略上の考慮というのが全てにおいて優先されるべきであるとは思いませんので、そこは政治の側でその戦略上の問題とあと現実の見た目というものの調和を図っていくのが重要であろうというふうに考えています。
  98. 伊波洋一

    ○伊波洋一君 先ほどのお話の中では、その次に、いわゆる核兵器問題などを含めて国際条約の在り方、どういうふうに向き合うか。残念ながら、我が国は今、アメリカの言うとおりに核戦略でも国連でもそのような対応をしていますよね。  つまり、でも、今お話しになっている核戦略のエスカレーションというのを、現実の問題として多くの国々ではもう核戦略は使われないものだという意見もいろいろあります。しかし、私たち日本は、その核戦略のエスカレーションを避けるために我が国内を戦場にせざるを得ないというような戦略なんですけれども、果たしてそれ以外の選択肢はないんでしょうか。佐藤先生にお伺いします。
  99. 佐藤丙午

    参考人佐藤丙午君) 冷戦期の西ドイツにおけるエスカレーションに対する恐怖への対応を考えますと、これは核戦略の一体化というふうに当時の西ドイツは向かっております。いわゆる核のシェアリングを行うことによって、核のボタンを、現実的にはそういう問題ではないんですけれども、核のボタンを西ドイツが持つことによって紛争の拡大を防止するという意味における安心感を手にしました。  では、じゃ、今エスカレーションを防止するということにおいて日本が核のボタンを持つということが現実的なんでしょうか。恐らく現実的ではないと思います。しかしながら、核戦略は厳然としてそこに存在します。そこといかに日本の安全保障戦略をリンクさせていくかというのが今の、今回の大綱の一番大きなポイントだと思いますし、核戦略から離れることは理想ではあろうかと思いますけれども、それは現実ではないというのが私の見解でございます。
  100. 伊波洋一

    ○伊波洋一君 最後に、柳澤参考人に伺います。  日本の成長が止まって三十年。世界のGDPシェアでも、二〇〇〇年には一四%を占めた日本が二〇一八年には約三分の一の六%です。一方、中国は二〇〇〇年の四%から四倍の一六%になり、日本の貿易相手国のシェアとしても、米国が二〇〇〇年に二五%だったものが二〇一八年には一五%、中国は一三%から今日二四%になっています。  それの中で、今回の大綱のように、従来の日米同盟強化一辺倒の今の流れは、やはり従来の感覚の中で流れていると思いますね。そういう意味で、アジアとしても五〇%を占めている日本が、やはりこの安全保障政策においても、先ほど御指摘ありました、いろいろ今の大綱の問題点あるのではないかと。  やはり私たちの国が向かうべき流れ、つまり、日米同盟というものを、やはりもっと中国とか含めて、やはり敵対する関係でないようなものに行くべきではないかと私は思うんですけれども、とりわけ、昨年十月二十五日に安倍首相が訪中をして、これまで七年分のものを全部改善をして戻っている今日の現状において、やはり戦争へ向かう道じゃなくて、もう少し友好の道へという方向性を持つべきだと思いますが、そこで、是非、御提言なり御意見なりをお伺いしたいと思います。
  101. 柳澤協二

    参考人柳澤協二君) 私は、基本認識として、日本というのは軍事大国ではあり得ない、むしろミドルパワーであるわけですから、軍事力国家間の対立を解決するという方針は基本的には取れない国であると思っています。  そして、もう一つは、今の日本の置かれた現状の中で何が心配かといえば、るる今もお話、やり取りにありましたように、アメリカと中国のパワーシフトの中で、その米中の対立関係がどのように、戦争になるのかならないのかというときに、その中で日本がどういう役割を果たすか。  もう日本はどうやったってアメリカと中国の間に挟まれた地政学的な条件があるわけですから、そこで軍事大国にはなり得ない我が国がどうやってやっていくかというときは、やはり私は、もうこれは今本当に、何というんでしょうか、ビジョン、アイデアだけでありますけれども、アメリカとももちろん折り合いを付けなければいけませんし、片やで中国とも日本なりの立場で折り合いを付けていかなければいけないんだろうと思うんですね。そういうのを具体的な外交課題の中でどう一つ一つ、少なくとも日本が対立を深めるような、特に米中の対立を更にアクセラレートするようなやり方を取るべきではない、むしろ、そこは日本流のやり方で間を取っていくような方向がおのずと日本の取り得る道として見えるのではないかという感じはしております。
  102. 伊波洋一

    ○伊波洋一君 最後に、今、大綱を見ましても、二十七兆を二十五兆円分使うとか、いろいろ大変厳しい状況の中で時代がどんどん変化している。しかし、もう二十年以上、辺野古問題というのはずっと解決できずにいるんですね、今ね。今でも毎日のように沖縄の人たちが抗議したり、またいろいろと。  こういう、私から見ますと、まさに辺野古問題というのは、安全保障関係からいえばそんなに大きな問題じゃないんじゃないかと。グアムに海兵隊も移っていくし、いろんな可能性あると思うんだけれどもと思うんですが、率直に、御三名の参考人、この辺野古問題へのアドバイスあるいは御意見をいただければ有り難いと思っております。一言ずつでもいいんですけれども、重要であるとか重要でないとか。
  103. 渡邉美樹

    委員長渡邉美樹君) 時間が来ております。簡単にお願いいたします。
  104. 岩崎茂

    参考人岩崎茂君) 辺野古の問題については、当初の頃、私も担当者として議論にいろいろ参加させていただいて、今のような結論を得てこれを進めているところでありますけれども、防衛省自衛隊又は政府として、やはりその趣旨をしっかりと沖縄の方々、県民にしっかり説明をして理解をいただくことが一番ではないかなというふうに思っています。  以上です。
  105. 渡邉美樹

    委員長渡邉美樹君) 佐藤参考人、簡潔にお願いいたします。
  106. 佐藤丙午

    参考人佐藤丙午君) 辺野古問題は非常に重要な問題だと思っております。あの問題を見ていると、いろいろな苦痛の決断の中で決めたこと、それを実行されるまでの間にいろいろ変化が起こること、その問題をどういうふうに取り込んでいくかということが重要だと思っております。問題が速やかに解決されることを祈っております。
  107. 柳澤協二

    参考人柳澤協二君) 先日、二月の県民投票の結果を見ましても、沖縄の民意というのが、普天間はなくしてくれ、そして辺野古に基地は造らないでくれというのがもう大方の民意であるということの前提に立って、果たしてそういう民意を国防のためにどこまで取り入れるのか。そもそも国防の目的って何だといえば、民意が尊重される国だから守りたいわけですから、私は今、そこでちょっと悩んでいます。本当に国防のために民意を、民意の枠というものは超えていいのか超えてはいけないのか、そこのところが基本的に問われている問題かなということで、今、私は個人的にはいろいろ考えております。
  108. 伊波洋一

    ○伊波洋一君 どうも、本日はありがとうございました。
  109. 渡邉美樹

    委員長渡邉美樹君) 参考人に対する質疑はこの程度にとどめます。  この際、一言御礼を申し上げます。  参考人皆様には、長時間にわたり大変有益な御意見をお述べいただき、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十分散会