○大西健介君 「つくろう、新しい答え。」、
国民民主党、大西健介でございます。
私は、
国民民主党・
無所属クラブを代表し、ただいま
議題となりました、政府
提出、
児童虐待防止対策の
強化を図るための
児童福祉法等の一部を改正する
法律案及び野党五会派
提出、
児童虐待を
防止し、
児童の
権利利益の
擁護を図るための
児童福祉法等の一部を改正する
法律案に対して質問をいたします。(
拍手)
冒頭、御代がわりが国民の皆様の祝福の中でつつがなく行われたことを謹んでお喜び申し上げます。
思い返せば、上皇陛下は、
平成二十八年の八月のビデオメッセージで、天皇が健康を損ない、深刻な状態に立ち至った場合、これまでにも見られたように、社会が停滞し、国民の暮らしにもさまざまな影響が及ぶことが懸念されますと述べられました。
昭和天皇の御崩御という悲しみの中で始まった
平成とは異なり、今回は祝賀ムードで令和の幕あけを迎えることができたことに、改めて、御自身の健康よりも国民の幸せを願う大御心に感謝と尊崇の念が自然と湧いてまいります。
同時に、この世界に誇る日本の皇室の安定的な皇位継承策を検討することは、我々に課せられた大きな課題だと改めて思います。
皇位承継資格のある男性皇族が三名のみとなり、女性皇族の御成婚により皇籍を離脱するまでの時間を考えますと、検討のために残された時間は限られております。
共同通信の調査では、女性天皇を認めることに国民の約八割が
賛成をしております。小泉内閣の有識者
会議で女性、女系天皇を容認する
報告書が、また、野田内閣では、皇族減少への
対策として女性宮家創設を軸とする論点整理がまとめられました。これまでの議論で論点は整理されており、安定的な皇位継承策の議論をこれ以上先送りすることは許されないと考えます。
これ以外にも、国会が議論すべき課題は山積をしております。
安倍総理が前提条件をつけずに日朝首脳会談を模索すると表明する一方で、北朝鮮は短距離ミサイルと見られる飛翔体を再び発射いたしました。
また、米中の関係閣僚貿易協議が再開をされましたが、
我が国の経済に与える影響が懸念をされています。
議論から逃げることなく、予算委員会の集中審議を開いて
説明責任を果たすことを強く求めて、
児童虐待の質問に入りたいと思います。
二〇一八年の三月、東京都目黒区で船戸結愛ちゃんが虐待を受けて死亡するという事件が起きました。結愛ちゃんが覚えたての平仮名でノートに書いた、もうお願い許してという悲痛な叫びに胸が張り裂けそうになりました。
私たちは、二度とこの悲劇を繰り返さないために、昨年の六月、
児童福祉司の大幅増員、
関係機関の連携
強化などを
内容とする議員立法を緊急に国会に
提出いたしました。
ところが、与党が法案の審議を拒み続けた結果、二〇一九年一月、千葉県野田市で栗原心愛さんが虐待を受けて死亡するという事件が起き、悲劇は繰り返される結果となってしまいました。
心愛さんが勇気を振り絞ってアンケートに書いた、先生、どうにかできませんかというSOSが踏みにじられ、はかり知れない絶望感の中で亡くなっていったことを想像すると、痛恨のきわみであります。
政府が虐待
防止改正法案を国会に
提出したのは、結愛ちゃんの死から一年以上がたったことしの三月十九日であり、与党が野党の
提出した議員立法の審議を拒否し、政府の対応が後手後手に回ってきたことが悲劇を繰り返す結果になったことは否めないと考えますが、総理はその責任についてどのように考えているのか、真摯な答弁を求めます。
次に、
懲戒権の
見直しについて伺います。
心愛さんの父親の勇一郎容疑者は、逮捕後も、しつけのつもりで、悪いとは思っていないと供述をしています。
どんな理由であっても暴力はいけないという社会規範をつくるためには、
法律で体罰を禁止することだけでは足らず、民法の
懲戒権の
規定を見直すことが不可欠だと思います。
この点、野党案では早急に検討するとしているのに対し、政府案では二年を目途に検討することとしています。その間に痛ましい事件が再発したらどうするのか、総理の見解を伺います。
次に、指導の
措置がとられた家庭が転居する場合の対応について伺います。
虐待が疑われる家庭の転居は、児相の介入逃れのおそれがあり、危険度が高いにもかかわらず、目黒区の事件でも、転居前後における
児童相談所間の引継ぎにおいて必要な情報が適切に共有できていなかったことが指摘をされております。
野党案には、指導の
措置がとられた家庭が転居する際に、
児童相談所が転居を知ったときから、
措置を切れ目なく継続することとし、転居後一カ月間は
措置を解除してはならないということが
法律に明記をされておりますが、野党案の狙いについて、議員立法
提出者にお伺いをいたしたいと思います。
次に、
児童相談所の
措置解除のあり方について伺います。
野田市の事件では、
児童相談所が虐待のリスクを認識していながら、心愛さんは家に戻されることになりました。こうした問題が繰り返されることがないようにするための
措置が必要であります。
野党案では、一時
保護を解除しようとするときは、当該
児童の
意見を聞くものとすること、また、当該
児童の家庭その他の
環境等を勘案しなければならないこととされております。
この点、イギリスやカナダで
制度化されている、虐待を受けている子供の意思を第三者が酌み取り
関係機関などに伝える、いわゆるアドボケート
制度を
我が国でも導入すべきとの
意見がありますが、この点について、総理及び議員立法
提出者のお考えを伺います。
次に、
児童福祉司の増員について伺います。
政府は、二〇二二年度までに約二千人程度の
児童福祉司を増員することにしています。一方で、野党案では、より人員を手厚く配置するため、政府案に加えて、各
児童相談所に
児童福祉司を一人配置することとしています。
児童相談所に対して、一時
保護等の介入を行う
職員と
保護者支援を行う
職員を分けることを求めて、より迅速かつ適切な対応を期待するのであれば、政府案では不十分と考えます。
政府の増員プランで十分と断言できるのか、総理の明確な答弁を求めます。
また、政府案に加えて、各
児童相談所に
児童福祉司を一人配置することとしている野党案の狙いについて、議員立法
提出者に伺います。
児童福祉司を増員するためには、処遇の改善が必要不可欠です。政府は、三月十九日の関係閣僚
会議で、
児童福祉司等に対し手当などによる処遇改善を行うことを決めていますが、具体的にどの程度の改善を行うのか、常勤
職員だけでなく非常勤
職員の処遇改善や非常勤
職員が常勤
職員に転換することの支援も行うのか、総理に伺います。
また、金銭的な処遇改善のみならず、心身をすり減らし、ぎりぎりの状態で
業務を担う
児童福祉司の精神的なケアなどの支援をどう行っていくのかについてもあわせてお答えください。
次に、
児童相談所の
設置促進について伺います。
野党案には、国による児相
職員の
確保等のための財政支援を行った上で、
中核市及び特別区において
児童相談所を必置することを定めていますが、その理由を議員立法
提出者に伺います。
一方で、政府案においては、
中核市及び特別区における
児童相談所の設置を義務化することを見送った理由を総理に伺います。
次に、
関係機関の連携
強化について伺います。
海外では、
児童保護ワーカーと警察官がペアで家庭を訪問し子供を
保護する仕組みになっています。子供の命を救うためには、
児童相談所と警察との連携
強化が必要不可欠です。
児相は、警察との情報共有は
保護者との信頼関係を崩すおそれがあると案件を抱え込む傾向がありますが、それが最悪の結果となることも少なくありません。
既に、ことし一月末時点で、六十九自治体のうち十自治体で全件情報共有が行われていますが、警察との全件共有について、政府としてはどのように考えているのか、総理に伺います。
また、野田市の事件では、児相が心愛さんが自宅に戻ったことを小学校に伝えた記録はなく、児相も学校も帰宅後に一度も家庭訪問をしていませんでした。さらに、心愛さんは、一月七日の始業式以降、小学校を欠席していましたが、学校は児相に長期欠席をしていることを連絡していませんでした。
児童相談所と学校の連携不足に対して、政府はどのような再発
防止策を考えているのか、総理に伺います。
次に、所在不明の子供たちへの対応について伺います。
厚生労働省の乳幼児健診未受診者、未就園児、不就学児等の緊急把握調査フォローアップ結果によれば、四月八日時点で安全確認ができていない子供がまだ六十一人残っています。最後の一人まで安全確認をするよう政府に強く求めます。総理の答弁を求めます。
野党案には、国、
地方公共団体が居住の実態を把握することができない
児童の所在を特定し、必要な支援を行うための
措置を講ずることが
規定されています。
所在不明の子供たちは、虐待を受けるなど危険な状態に置かれているおそれもあり、子供の安全と命を守るためには、
法律で所在の特定や必要な支援を行うことを
規定し、確実に行っていく必要があると考えますが、総理の見解を伺います。
次に、
児童虐待防止対策と密接に関連するDV
対策について伺います。
心愛さんの家庭では父親から母親へのDVがあったことがわかっていますが、多くの専門家がDVと
児童虐待が不可分であることを指摘しています。また、近年ふえている面前DVは、子供の心身に深刻な影響を及ぼします。
野党案には、DV加害者の更生のための指導及び支援の
方法並びにその実施体制について検討することが盛り込まれています。
三月十九日の関係閣僚
会議で示された
対策にも、「加害者対応(加害者
プログラム等)の在り方の検討」とありますが、どのような
プログラムを想定されているのか、総理に伺います。
また、DV被害者の女性を支援するため、経済的自立を促すことが重要であり、就労支援や住宅の
提供に力を注ぐべきです。
一方で、
我が国では、母子家庭の約二割しか養育費を受給できていません。この点、養育費立てかえ払い
制度を含む養育費の支払い
確保のための抜本的な
対策が必要と考えますが、総理の答弁を求めます。
最後に、
平成二十八年度に虐待死した子供の六割超が零歳児であり、そのうち三割以上が生まれたその日に亡くなっています。この点、望まない妊娠や予期せぬ妊娠に対する
対策が不可欠と考えます。
具体的には、子育てが困難と考える親からの相談を出産前から受け付けて特別養子縁組を前提とした里親委託を
推進することや、アフターピルのOTC化やオンライン処方を緩和するなどの
措置が必要と考えますが、総理の答弁を求めます。
少子化、人口減少が
我が国の最大の課題であるにもかかわらず、せっかく生まれてきた、国の宝であるはずの子供たちが虐待によって殺されることはあってはならないことです。
今度こそ、悲劇を繰り返さないために、与野党の枠を超えて
防止対策の抜本
強化に全力を挙げようではありませんか。
以上で、私の質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(
拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君
登壇〕