○浅野哲君
国民民主党の浅野哲です。
私は、
会派を
代表し、また、日々懸命に働き、税金を納めている方々の思いを代弁するつもりで、ただいま
議題となりました
所得税法等の一部を
改正する
法律案に
反対の
立場から
討論を行います。(
拍手)
少子高齢化が進む我が国は、グローバル化の進展による熾烈な国際競争の中にあって、技術革新への
対応のおくれや労働力人口の減少、
社会保障費の増大など、さまざまな困難に直面をしています。
このような中、
国民生活はどうでしょうか。ここ最近で
統計データへの信頼が著しく低下していますが、本来、数字はうそをつきません。
自民党が与党に戻ってから、実質賃金は五%近く低下をしています。また、働く女性や
高齢者がふえているにもかかわらず、GDPの民間最終
消費支出は、二〇一三年に二百九十一・七兆円だったものが二〇一八年になっても二百九十二兆円と、ほとんどふえていないことなどを踏まえれば、アベノミクスによって
国民一人当たりの生活レベルが改善していないことは明らかであります。多くの
国民が生活不安や将来不安を抱えたまま暮らしているのです。
国民生活を改善するという使命の
もと、
平成三十年十一月二十六日に経済財政諮問
会議等の合同
会議で取りまとめられた
消費税率引上げに伴う
対応等に関する基本方針では、駆け込み、反動減の平準化、
社会保障の
充実、低所得者に対する支援策、中小・小規模事業者等への対策などの方針が示されました。しかし、本法案はこれらの方針を満たすものではなく、むしろ、我が国の持続的発展に逆行するおそれがあります。
以下、その
理由を申し述べます。
第一の
理由は、この法案の中身が不十分である点です。我が国の発展に資するどころか、逆に悪化させるおそれがあります。
例えば、
自動車税については、国税の自動車重量税及び揮発油税を
地方へ財源移譲した上で、あわせて年間約五百三十億円の減税を図った点は評価できますが、問題は、与党が今回の見直しをもって最終的な結論と位置づけ、今後の道筋を示さなかった点は大変残念であります。民主党政権時には平年度ベースで自動車重量税を約三千二百億円減税したことと比べると、相対的に規模が小さいと言わざるを得ません。
また、
教育資金を一括贈与した場合に非課税
措置となる
対象が拡大されました。しかし、人口の東京一極集中、特に若者の集中が急速に進んでいる現在、贈与による資金移動は東京への預金集中を加速させ、目先は大丈夫でも、将来的に
地方銀行を弱体化させるおそれがあります。
実際に、過去五年間に全国で増加した預金のうち、五八%が東京に集中しているというデータもあります。麻生大臣も二十七日の
委員会答弁の中で、
地方銀行からの預金流出は間違いないと言い切っておられました。にもかかわらず、
政府のこうした懸念に対する具体的対策は
地方銀行に丸投げです。
安倍政権は一億総活躍
社会を目指すのではなかったのでしょうか。そうであれば、もう少し
地方の声に寄り添うべきだと思います。
地方銀行の衰退は、
地元企業の資金繰りを悪化させ、産業の衰退にもつながりかねません。
政府は、こうした連鎖的な影響をきちんと分析し、十分な対策をとるべきだと思います。
また、住宅については、賃貸住宅の居住者に対する支援が含まれていません。住宅を購入できる経済力のある人だけが優遇を受け、住宅を買えない若者や賃貸住宅に住まざるを得ない方たちなどが
消費増税に伴う家賃
引上げの影響に対して何の支援も受けられないのは不公平ではないでしょうか。
政府は、
消費税の負担相当分を家賃に転嫁すること自体は適正な行為として、取り合う姿勢を見せていませんが、家賃の一定額を所得控除するなど、手はあるはずです。先ほど申し述べた基本方針のうち、低所得者に対する支援策はどこへ行ったのでしょうか。
第二の
理由は、
社会保障の
充実に逆行をしているということです。
それは、
消費税の軽減
税率による減収分約一兆円をどのように補填しているかを見れば明らかであります。
この一兆円のうち、約四千億円は、低所得者が医療や介護を受ける際の支出に上限を設けて
負担軽減を図るための総合合算
制度の見送りによるものです。また、約三千億円は、労働者の給与所得控除の縮小とたばこ
増税、また、約二千億円は、売上高が一千万円以下の免税事業者に対する課税によるものです。残りの一千億円は、
社会保障給付の見直しや低所得者向け給付の簡素化などによって捻出される予定です。
一体、軽減
税率は誰のためのものなのでしょうか。低所得者や免税事業者を支援するはずの財源を食い潰し、複雑なルールで現場の混乱を招き、購買力のある人ほど得をする。この軽減
税率制度は、どう考えても
社会保障の
充実に逆行していますし、低所得者の支援策として余りに稚拙と言わざるを得ません。
麻生大臣は、二十六日の
委員会答弁の中で、
増税が、再び腰折れすることに対する恐怖感があったことは事実だったと明確におっしゃっていたではありませんか。軽減
税率は、今回何としても
増税を実行するために財政当局が無理やりつけたつけ焼き刃だったのではないかと疑念を抱かざるを得ません。
安倍総理、この一兆円があれば、本当に苦しんでいる人たちを助けてあげることができます。軽減
税率ではなく、こうした人々を支えるために
予算を使うべきです。
第三の
理由は、この法案が、富裕層を厚遇し、国の助けを待つ人々の声を無視したものだからです。特にこの点について、私たちはどうしても納得することができません。
自民党は、
平成二十九年末の税制
改正の中で、金融所得課税の見直しを今後の
課題として掲げていました。
金融所得課税は株式の配当や譲渡益に課される税金で、その
税率は約二〇%となっています。この
税率は、一般の給与所得に課される最高
税率五五%に比べると異常に低く、高所得者ほど所得税の負担割合が少なくなる要因となっています。
しかし、本法案の中では、この金融所得課税には全く触れられていません。昨年からことしにかけて、低所得者ほど負担が重くなる所得税の
増税、そしてことしは
消費税の
増税をする一方で、富裕層への課税強化を見送ることは、どう考えても不公平です。
消費税増税を実施するならば、経済的弱者の納得感を得る努力を怠ってはなりません。
それだけではありません。一人親家庭の税負担を軽くする寡婦(寡夫)控除の
対象から未婚の一人親が外れている問題についても、今回盛り込まれませんでした。結婚しているか、していないかにかかわらず、親は愛する我が子を育てようと必死です。一刻も早く見直しを行うべきです。
以上が、本法案に対する主な
理由です。
最後に、一言申し上げます。
今回の毎月
勤労統計の不正は、
国民の信頼を大きく損ねるものでした。そして、毎年の賃金水準改善に取り組んでいる経営者と労働者双方の誠意と努力を踏みにじるものであります。
今回の統計不正ではっきりしたのは、アベノミクスの行き詰まりがいよいよ隠し切れなくなり、賃金伸び率を水増しし、マイナスの実質賃金を隠すために官邸主導で調査方法を昨年一月から変更し、賃金偽装、アベノミクス偽装を行ったということです。
アベノミクスは、日本経済の抱える構造問題にメスを入れることなく、ひたすら痛みどめを打ち続けてきました。その結果、
政府の中に過剰なそんたくと不正、隠蔽体質を生み出し、
国民からの信頼は失われつつあります。そのような事態を招いた組織の長として猛省し、不正の上につくられた本法案は撤回すべきです。
国民民主党は、これからも、税を納める人の
立場に立ち、
国民の生活向上を第一に考えながら、今後も
政府に対して厳しい監視の目を向けていくと同時に、
平成の次にやってくる新たな時代を切り開くための新しい答えを
皆様に御提示していくことをお約束し、私の
反対討論を終わります。
御清聴ありがとうございました。(
拍手)