○内閣
総理大臣(安倍晋三君) 志位議員にお答えをいたします。
毎月
勤労統計事案による
雇用保険や労災保険への
影響、政策判断への
影響、
政府への信用についてお尋ねがありました。
毎月
勤労統計について、不適切な
調査が行われ、セーフティーネットへの信頼を損なう事態を招いたことについて、
国民の皆様におわび申し上げます。
雇用保険、労災保険などの
給付の
不足分については、できる限り速やかに、簡便な手続でお支払いできるよう、万全を期して必要な
対策を講じていきます。
正しい
統計に基づく適切な景気判断をもとに政策判断を行っていくことは、
経済財政運営の基本です。この点、高い専門性と信頼性を有すべき
統計分野において、長年にわたって誤った処理が続けられ、それを見抜けなかった責任について、重く受けとめています。
今回の事案によってGDP等については
影響がないことが確認されていますが、それ以外のどのような
経済指標に
影響が及び得るかについては、現在、関係省庁において
調査を行わせており、まとまり次第、公表させる方針です。
いずれにせよ、
予算案や法案の審議に際しては、
政府として誠実に
対応してまいります。
今回のような事態が二度と生じないよう徹底して検証を行い、信頼を取り戻すことが何より重要であり、再発防止に
全力を尽くすことで、
政治の責任をしっかりと果たしてまいります。
組織的隠蔽の有無についてお尋ねがありました。
厚生労働省の
特別監察委員会においては、先般、それまでに明らかになった事実等について
報告書を取りまとめていただいたところですが、さらに、独立性を強めた形で検証作業を進めていただいているものと承知しています。
今回のような事態が二度と生じないよう徹底して検証を行い、信頼を取り戻すことが何より重要であり、再発防止に
全力を尽くすことで、
政治の責任をしっかりと果たしてまいります。
政治のモラルと毎月
勤労統計事案の真相解明についてお尋ねがありました。
さまざまな問題について、
国民の皆様から指摘があれば、内閣、与党、野党かかわらず、しっかりと説明を尽くすことが
政治家としての責任であると考えます。
毎月
勤労統計の問題については、高い専門性と信頼性を有すべき
統計分野において、長年にわたって誤った処理が続けられ、それを見抜けなかった責任については、重く受けとめています。
いただいた御批判は真摯に受けとめながら、今回のような事態が二度と生じないよう徹底して検証を行い、信頼を取り戻すことが何より重要であり、再発防止に
全力を尽くすことで、
政治の責任をしっかりと果たしてまいります。
家計消費の動向についてお尋ねがありました。
世帯当たりの消費を捉える家計
調査の家計消費支出は、
世帯人員の
減少などから長期的に
減少傾向となっています。
一方で、一国全体の消費を捉えるGDPベースで見ると、二〇一八年七―九月期については、
自然災害の
影響もあり、一時的に押し下げられましたが、消費の基調としては、二〇一六年後半以降、
増加傾向で推移しており、持ち直しています。
また、今回の
消費税率引上げについては、前回の八%への引上げの際に耐久消費財を中心に駆け込み需要と反動減といった大きな需要変動が生じた経験を踏まえ、あらゆる
施策を総動員し、
経済に
影響を及ぼさないよう、
全力で
対応することとしています。
いただいた消費税を全て還元する規模の十二分な
対策を講じ、景気の回復軌道を確かなものとしてまいります。
世界経済のリスクについてお尋ねがありました。
二〇一六年度の当初は、アジア新興国や資源国の
経済の減速など、
世界経済がさまざまなリスクに直面し、需要が腰折れしかねない状況となっていました。
他方、現在は、通商問題の動向、中国
経済の先行き等によるリスクに留意する必要がありますが、
世界経済は米国を中心に緩やかな回復を続けており、
我が国経済も内需を中心とした緩やかな回復が続いています。
なお、二〇一八年七―九月期のGDP成長率がマイナスとなったのは、相次いで発生した
自然災害により、一時的に個人消費が押し下げられたことや輸出がマイナスになったことが大きく
影響していると考えており、景気の回復基調に変化があったとは考えていません。
毎月
勤労統計の事案と消費税についてお尋ねがありました。
毎月
勤労統計について、今回のような事態が二度と生じないよう徹底して検証を行い、信頼を取り戻すことが何より重要であり、再発防止に
全力を尽くすことで、
政治の責任をしっかりと果たしていきたいと考えています。
他方、消費税率の一〇%への引上げについては、全
世代型社会保障の
構築に向け、少子化
対策や
社会保障に対する安定
財源を
確保するために必要なものです。
これまでも、反動減等に対する十二分な
対策を講じた上で、法律で定められたとおり十月に現行の八%から一〇%に引き上げる予定であると繰り返し申し上げており、この方針に変更はありません。
なお、連合の
調査においては、五年連続で今世紀に入って最高水準の賃上げが
継続しており、
所得環境は着実に
改善しているとの判断に変更はありません。
ポイント還元についてお尋ねがありました。
前回、八%への引上げの際には、予想以上に消費の低迷を招き、その後の景気回復にも力強さを欠く結果となりました。
また、大
企業は、消費税の引上げ後、自己負担でセールなどを
実施できるのに対し、中小・小規模
事業者は、大
企業に比べて体力が弱く、競争上の不利もあります。
このため、中小
企業団体からは、消費税率の一〇%への引上げに当たり、強力な需要喚起策などを講じるよう、強い要望が寄せられています。
今回のポイント還元は、こうした
現場の声を踏まえ、中小・小規模
事業者に限定した上で、消費をしっかりと下支えするため
実施することとしたものであります。
その
実施に当たっては、
現場の混乱を回避するため、ポイント還元の
対象となる店舗に還元率を明記したポスター等を張り、消費者の
皆さんが一目でわかる工夫を講じてまいります。
同時に、中小・小規模
事業者の
皆さんの決済端末の導入を全面的に
支援し、その負担をゼロとします。キャッシュレス決済の導入を通じて、中小・小規模
事業者の
皆さんの
現場の生産性
向上にもつなげてまいります。
消費税率の引上げと、富裕層と大
企業に対する
税制の
あり方についてお尋ねがありました。
今回の消費税率の引上げは、全
世代型社会保障の
構築に向け安定
財源を
確保するために必要なものであり、法律で定められたとおり、十月に現行の八%から一〇%に引き上げる予定です。
企業に対する
税制については、
企業が収益力を高め、より積極的に賃上げや設備投資に取り組むよう促す観点から、成長志向の法人税改革に取り組んでまいりましたが、その中でも、租税特別措置の縮減、廃止等による課税ベース拡大により、
財源をしっかり
確保しております。
また、これまで、再分配機能の回復を図るため、所得税の最高税率の引上げや金融所得課税の見直し等の
施策を既に講じてきたところです。
各種の提案に言及していただきましたが、今後の
税制の
あり方については、これまでの改正の効果を見きわめるとともに、
経済社会の情勢の変化等も踏まえつつ、検討する必要があるものと考えています。
「いずも」型護衛艦の改修、スタンドオフミサイル、F35、防衛費に関するお尋ねがありました。
専守防衛は、憲法の精神にのっとった
我が国防衛の基本方針であり、今後とも堅持してまいります。
「いずも」型護衛艦における航空機の運用と所要の改修は、広大な太平洋を含む
我が国の海と空の守りについて、隊員の安全を
確保しつつ、しっかりとした備えを
確保するものです。
また、スタンドオフミサイルは、
我が国の防衛に当たる自衛隊機が相手の脅威の圏外から対処できるようにすることで、隊員の安全を
確保しつつ、
我が国の安全を
確保するものです。
いずれも、自衛のための必要最小限度のものであり、憲法上保有が許されないものではありません。
今般、追加取得を決定したF35については、老朽化した現有のF15を代替するものであります。老朽化するに任せ、放置することは、
国民の命を守る責任を持つ我々としては、無責任な姿勢と言わざるを得ないわけであります。
我が国の防衛に万全を期すため、
我が国の
主体的な判断のもと、その取得を決定したものであり、浪費的爆買いとは、全く的外れな間違いであります。
防衛費に係る三十年度補正
予算案と三十一年度
予算案、新たな防衛大綱と中期防衛力整備計画は、いずれも
国民の命と平和な暮らしを守り抜くため必要不可欠なものであり、削減や計画の中止は考えていません。
我が国の平和と安全の維持は、
国民の命と自由、そして幸せな暮らしの不可欠の前提であり、
安全保障と
社会保障は決して相
対立するものではありません。
防衛力の整備に当たっては、今後とも、
国民生活にかかわる他の
予算の
重要性を勘案し、一層の
効率化、合理化を図り、経費の抑制に努めるとともに、国の他の諸
施策との調和を図ってまいります。
憲法改正についてお尋ねがありました。
まず、憲法審査会の運営については、国会でお決めいただくことであり、内閣
総理大臣としてお答えすることは差し控えますが、今後、憲法審査会の場において各党の議論が深められ、
国民的な理解も深まっていくことを期待しています。
次に、内閣
総理大臣は、憲法第六十三条の規定に基づき議院に出席し、国会法第七十条の規定に基づき、議院の
会議又は委員会において発言しようとするときは
議長又は委員長に通告した上で行うものとされています。憲法第六十七条の規定に基づき国
会議員の中から指名された内閣
総理大臣である私が、議院の
会議又は委員会において、憲法に関する事項を含め、
政治上の見解、
行政上の事項等について説明を行い、国会に対して議論を呼びかけることは禁じられているものではありません。
加えて、憲法第九十九条が憲法遵守義務を定めているのは、
日本国憲法が最高法規であることに鑑み、
国務大臣その他の公務員は、憲法の規定を遵守するとともに、その完全な
実施に努力しなければならない趣旨を定めたものであって、憲法で定める改正手続による憲法改正について検討し、あるいは主張することを禁止する趣旨のものではないと考えます。
沖縄の米軍基地問題、特に普天間飛行場の辺野古移設についてお尋ねがありました。
住宅や学校で囲まれ、
世界で最も危険と言われる普天間飛行場の固定化は、絶対に避けなければなりません。
普天間の全面返還に向け、現在、米軍キャンプ・シュワブの南側海域について、周囲の海域に
影響を与えないよう、埋立海域を全て護岸で閉め切った上で埋立てを進めていますが、サンゴに関しては、護岸で閉め切ると、周囲の海と切り離され、海水の出入りがとまってその生息に
影響が生じるため、海域を閉め切る前に、南側の埋立海域に生息していた保護
対象のサンゴは移植したと聞いております。
なお、サンゴ類の保護
基準は、那覇第二滑走路の工事に伴う埋立ての際の
基準よりも厳しいものであると承知しています。
また、国指定の天然記念物であるオカヤドカリ類や絶滅危惧種に指定されている貝類、甲殻類などについても、
専門家の指導助言を得ながら、南側の工事区域の海岸や海底から他の
地域への移動を適切に
実施していると聞いております。
今後とも、沖縄の
方々の気持ちに寄り添い、基地負担の
軽減に
全力を尽くすとの方針に何ら変更はありません。
沖縄防衛局が
平成二十六年度から
平成二十七年度にかけて行った地盤の
調査に係る
報告書の取扱いについては、同局において法令に基づき
対応したものと承知しています。
米軍キャンプ・シュワブの北側海域については、地盤改良工事が必要であるものの、一般的で施工実績が豊富な工法により、護岸や埋立て等の工事を所要の安定性を
確保して行うことが可能であることが確認されたと聞いており、地盤改良工事の追加に伴い、沖縄県に対して変更承認申請を行う必要があるため、まずは沖縄防衛局において必要な検討を行っていくものと承知しております。
政府としては、現行の日米合意に基づき、抑止力を維持しながら、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現するため、
全力で取り組んでまいります。
なお、
地方自治体における独自の条例にかかわる事柄について、
政府として見解を述べることは差し控えたいと思います。
今後とも、抑止力を維持しながら、基地負担の
軽減に
一つ一つ結果を出してまいります。
原子力政策についてお尋ねがありました。
徹底した省エネ、再エネの最大限の導入に取り組み、原発依存度を可能な限り低減する、これが
政府の一貫した方針であります。
その上で、原発の建設などに伴うコストについては、国ごとの立地
環境や国内
制度、
経済情勢などによって異なるものであり、一概に申し上げることはできません。
同時に、
我が国においては、現在、多くの原発が停止している中で、震災前に比べ、一般家庭で平均約一六%電気代が上昇し、
国民の皆様に
経済的に大きな御負担をいただいている
現実があります。
資源に乏しい
我が国にとって、こうした
経済的なコストに加え、気候変動問題への
対応、エネルギーの海外依存度を考えれば、原発ゼロということは責任あるエネルギー政策とは言えません。
北方領土問題についてお尋ねがありました。
北方領土は、
我が国が主権を有する島々です。この立場に変わりはありません。
日ロ間では、これまで、多くの諸文書や諸合意が作成されてきており、これらの諸文書や諸合意を踏まえた交渉を行ってきています。
その中でも、一九五六年の日ソ共同宣言は、両国の立法府が承認し、両国が批准した唯一の文書であり、現在も効力を有しています。
一九五六年の日ソ共同宣言の第九項は、平和条約交渉が
継続されること及び平和条約締結後に歯舞群島、色丹島が
日本に引き渡されることを規定しています。
従来から
政府が説明してきているとおり、
日本側は、ここに言う平和条約交渉の
対象は四島の帰属の問題であるとの一貫した立場です。
その上で、交渉内容にかかわることや
我が国の交渉方針、考え方については、交渉に悪
影響を与えないためにも、お答えすることは差し控えます。
いずれにせよ、
政府として、領土問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針のもと、引き続き粘り強く交渉していきます。
千島列島の返還についてお尋ねがありました。
我が国の戦後処理の法的な基礎であるサンフランシスコ平和条約において、
我が国は、千島列島に対する全ての権利、権原及び請求権を放棄しており、千島列島の返還を求めることはなし得ません。(拍手)
〔
議長退席、副
議長着席〕
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