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2019-05-22 第198回国会 衆議院 法務委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    令和元年五月二十二日(水曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 葉梨 康弘君    理事 石原 宏高君 理事 田所 嘉徳君    理事 平沢 勝栄君 理事 藤原  崇君    理事 宮崎 政久君 理事 山尾志桜里君    理事 源馬謙太郎君 理事 浜地 雅一君       赤澤 亮正君    井野 俊郎君       鬼木  誠君    門  博文君       門山 宏哲君    上川 陽子君       神田  裕君    木村 次郎君       黄川田仁志君    国光あやの君       小林 茂樹君    杉田 水脈君       中曽根康隆君    百武 公親君       古川  康君    古川 禎久君       和田 義明君    逢坂 誠二君       黒岩 宇洋君    松田  功君       松平 浩一君    山本和嘉子君       関 健一郎君    遠山 清彦君       藤野 保史君    串田 誠一君       井出 庸生君     …………………………………    法務大臣政務官      門山 宏哲君    参考人    (学習院大学法務研究科教授)           大村 敦志君    参考人    (東京児童相談センター児童福祉相談担当課長)  影山  孝君    参考人    (特定営利活動法人特別養子縁組支援グミ会サポート理事長)       安藤 茎子君    参考人    (元家庭裁判所調査官)    (特定営利活動法人非行克服支援センター相談員) 伊藤由紀夫君    参考人    (株式会社エクセリング所属女優)       サヘル・ローズ君    法務委員会専門員     齋藤 育子君     ————————————— 委員の異動 五月二十二日  辞任         補欠選任   奥野 信亮君     木村 次郎君   神田  裕君     百武 公親君   古川  康君     杉田 水脈君   岸本 周平君     関 健一郎君 同日  辞任         補欠選任   木村 次郎君     奥野 信亮君   杉田 水脈君     古川  康君   百武 公親君     神田  裕君   関 健一郎君     岸本 周平君     ————————————— 五月二十二日  民法改正し、選択的夫婦別制度の導入を求めることに関する請願前原誠司紹介)(第一〇六三号)  民法戸籍法差別的規定廃止法改正に関する請願大河原雅子紹介)(第一一八四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  民法等の一部を改正する法律案内閣提出第五一号)      ————◇—————
  2. 葉梨康弘

    葉梨委員長 これより会議を開きます。  内閣提出民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人として、学習院大学法務研究科教授大村敦志君、東京児童相談センター児童福祉相談担当課長影山孝君、特定営利活動法人特別養子縁組支援グミ会サポート理事長安藤茎子君、元家庭裁判所調査官特定営利活動法人非行克服支援センター相談員伊藤由紀夫君及び株式会社エクセリング所属女優サヘル・ローズ君、以上五名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人各位委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多忙の中、御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜れれば幸いに存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。  まず、大村参考人影山参考人安藤参考人伊藤参考人サヘル・ローズ参考人の順に、それぞれ十五分程度意見をお述べいただき、その後、委員質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。  それでは、まず大村参考人にお願いいたします。
  3. 大村敦志

    大村参考人 おはようございます。学習院大学民法を担当しております大村敦志と申します。  このように意見を申し上げる機会をいただきまして、まことにありがとうございます。  私は、法制審議会部会委員部会長として参加しておりましたが、本日は、今回の特別養子法改正につきまして、一人の研究者としての観点からの評価を交えつつ、お話をさせていただきたいと存じます。  まず最初に、今回の改正背景経緯についてお話をさせていただきます。  一九四七年、昭和二十二年に日本国憲法が施行されたのに伴い、民法親族相続編について大改正がなされました。現在の家族法根幹部分はこのときにでき上がったものでございます。  もっとも、このときの改正は、家制度廃止と男女平等、男女平等というのはこの場合は夫婦の平等と父母の平等ということになりますけれども、この実現に重点を置いたものだったため、親子関係成立に関しましては、家制度廃止との関係養子に関する一部の規定加除修正がなされたほかは、ほとんど手がつけられないという状態でございました。  その後、一九八七年に今回の改正対象となりました特別養子制度が設けられましたけれども、この制度は、当時社会問題となっておりました、わらの上からの養子、生まれたばかりの子を実の子として届け出るという便法が行われていたわけですけれども、これに法的根拠を与える制度をつくろうというものでして、主として生まれたばかりの子を対象とするものでございました。そのため、養子となる者の年齢は、原則として六歳未満というふうにいたしておりました。  以上のような結果といたしまして、どのようなことになったかと申しますと、一方で、従来からの養子、これは特別養子が設けられてからは普通養子というふうに呼ばれておりますけれども、これにつきましては、未成年の子の利益に対する配慮が必ずしも十分でない、他方特別養子につきましては、実際にはそれほど使われないという状況になっておりました。  そこで、学界では、しばらく前から、未成年の子を対象とする養子制度について見直しを行う必要があるのではないかという指摘がなされていたところでございます。  特に、特別養子制度につきましては、つくられはしましたものの、初年度、次年度を除きまして、その利用は年間千件を超えたということはございません。最近では五百件前後の数で推移しているものというふうに理解しております。普通養子の件数、こちらは成年養子も含めてですけれども年間八万から九万の間で推移しているのに比べますと、あるいはまた、日本と同様に二種類の制度を持つ国の状況に比べますと、ほとんど使われていないというふうに言ってもよい状況になっております。  そこで、二〇一七年の七月から研究会が設けられまして、関連の問題につきまして検討を行ってまいりました。この研究会は、特別養子中心とした養子制度の在り方に関する研究会という名称でございましたが、この名称が示しますように、特別養子だけではなくて、未成年子対象とする養子制度全般を視野に入れたものでございました。  この中の特別養子に関する問題のうち、制度の使いにくさを解消するという観点から、特に早く改正を要するというものにつきまして、二〇一八年の五月に、先ほど申しました研究会では中間報告というのを取りまとめました。その後、御案内のとおり、法制審議会特別養子制度部会というのが設けられまして、本年一月に要綱案取りまとめられ、これを受けて今回の法案の提出に至ったというふうに理解をしております。  今回の特別養子法改正案においては、幾つかの提案がなされております。今御説明を申し上げました背景経緯との関係に留意いたしまして、二点についてお話をさせていただきます。  第一は、養子となる者の年齢引上げについてでございます。  特別養子制度の創設の際には、生まれたばかりの子を養子とするということが想定されておりましたので、年齢原則として六歳未満というふうにされておりました。しかし、もう少し高い年齢の子についても特別養子を認めてもよいのではないかというのは、学界の支配的な意見であったと思います。実際のところ、特別養子に対応する制度を持つ幾つかの国々では、もっと高いところに上限年齢というのが設定されております。  そこで、先ほど申し上げました研究会法制審部会では具体案を検討いたしましたけれども年齢を引き上げるということ自体については大方の同意は得られたものの、では何歳を上限とするかということにつきましては、幾つかの意見が出されまして激しい議論が交わされ、最後までなかなか意見取りまとめが難しいという状況が続きました。最終的には、十五歳というところに線を引くということで意見集約が図られました。  なぜ十五歳が上限になるかと申しますと、普通養子につきましては、養子となる者が十五歳以上の場合にはあくまでも本人が当事者となって縁組を行うということとされております。このような制度がある以上、十五歳以上の者について、裁判所審判によって親子関係をつくり出すということを認めるべきではないというのが委員会法制審部会の多数意見であったというふうに認識しております。  この考え方を徹底させますと、特別養子縁組審判時、裁判所判断が示された時点において十五歳未満でないと縁組は認められないということになりそうでございます。そうなりますと、裁判所への申立て時点では十五歳未満であっても縁組が認められないという場合が出てまいります。そこで、申立て時点で十五歳未満であれば申立てそのものはできる、しかし、手続中に子供が十五歳に達した場合には子供本人同意を求めなければならないということにいたしました。  その上で問題になったのが、例えば、児童虐待などで保護された子供年齢が満十五歳に近かったというケースでございます。この場合には、特別養子申立てをするのが間に合わない、十五歳までに申立てをするのが間に合わないという事態も出てまいります。そこで、十五歳になる前に養親となるべき者による監護が始まっているということを条件といたしまして、手続が間に合わなかったということについてやむを得ないというふうに思われる場合には例外的に特別養子を認めるというふうな考え方を示しております。  ここで特に強調しておきたいことは、原則はあくまでも十五歳が上限であるというふうに考えてきたということでございます。その上で、手続の進みぐあいによって十五歳未満子供特別養子となれないという事態を避ける、ただし、そのような救済措置があるからということで、手続の開始や進行が遅くならないように十分注意するということは、部会におきましても関係者の間で確認がなされたところでございます。  運用におきましても、ぜひこのような方向で運用を進めていくことが望ましいというふうに考えております。  第二に、手続の改善についてでございます。  特別養子が余り使われてこなかったのは、必ずしも年齢制限だけが原因ではございません。幾つかある他の理由のうちの一つとして、養親となる者にとっての手続の負担の大きさあるいは不安定さが挙げられることがございます。  従来の制度のもとでは、特別養子縁組を認めてもらうためには、養親となる者が裁判所申立てを行い、手続を進める必要がございます。また、特別養子縁組成立させるためには、原則として実親の同意を得なければなりませんけれども手続がかなり進んだ段階で実親の同意が撤回されるということもあり得たわけでございます。  そこで、従来の手続を二段階に分けて考えるということにいたしました。つまり、子供の側に特別養子縁組成立条件を満たしているかということを確認するという段階と、ある特定養親との間の養子縁組を認めるという段階、これを分けて考えるということでございます。  その上で、第一段階につきましては、児童相談所長申立ても認めるということにする。これによって、養親となることを引き受ける者は第二段階だけに関与すればよいということになります。また、第一段階で実親の同意があることが確認されればよいということにされておりますので、第二段階に至って同意が撤回されて手続が無駄になるということもなくなるというふうに期待しております。  もっとも、ここでも、第一段階手続と第二段階手続を分けることによって時間がかかってしまうということは避けなければならないだろうというふうに考えております。そのため、従来と同様、養親となるべき者が第一段階申立てをする場合には、第二段階申立てもあわせて行っていただいて、手続を連続的に進行させる、また、児童相談所長申立ての場合にも、第一段階審判がなされた後、六カ月以内に第二段階申立てをするということにしております。  慎重な手続が必要であるという要請が一方にございますけれども他方で、早く手続を進めるということも必要だというふうに考えております。  最後に、二つのことを申し上げたいと存じます。  第一に、今回の改正は喫緊の課題に対応するものでありまして、養子法に関してはまだほかにも課題が残っているということでございます。法制審部会での意見集約に当たりましては、これに続いて未成年者普通養子についての見直しを行うべきであるという意見が相次いで表明されたということも申し添えておきます。  第二に、家族法改正というのは意見が対立することが多く、立案はなかなか難しいのですけれども、今回はとりわけ立場の違いが大きく、取りまとめは難航したというふうに理解しております。さまざまな機会に表明されました懸念に対して十分な配慮を行い、制度が適切に運用されるということを期待しております。  私の意見は以上でございます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
  4. 葉梨康弘

    葉梨委員長 ありがとうございました。  次に、影山参考人にお願いいたします。
  5. 影山孝

    影山参考人 東京児童相談センター影山と申します。  本日はこういった意見を述べる貴重な機会をいただき、本当にありがとうございます。  私は今、東京児童相談センター児童福祉相談担当課長をしておりますけれども、もともと東京都に福祉職として採用されて、その後はやはり児童相談所現場が二十七年間と、非常に長い間、児童相談所でかかわってまいりました。  そういう意味で、今回のこの特別養子縁組法改正について、児童相談所立場から幾つ意見あるいは現場の実態についてお話をさせていただき、よりよい法改正をしていただければということで述べさせていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。  お手元に資料を配らせていただきました。  まず、東京都の養子縁組里親委託児童数、それから解除児童数を十二年間示させていただきました。実際には、十二年間を平均しますと、毎年二十七人ぐらいのお子さん養子縁組里親委託をし、そのうちの九五%が養子縁組成立している、残念ながら、残りの五%は何らかの事情養子縁組成立に至らなかったというのが現状でございます。  一枚めくっていただいて、養子縁組里親に実際に委託をしていたお子さんがどの程度年齢かということで、ここ二年間の数字をちょっと拾ってみましたけれども、ゼロ歳、一歳で大半を占めております。二十八年度九五%、二十九年度七五%ということで、本当に年少のお子さんたちが今特別養子委託をされているというような現状でございます。  今まで養子縁組お話をさせていただきましたけれども、もう一つ里親制度の中に養育家庭ということで、養育里親、いわゆる養子縁組はしないけれども、一般の御家庭子供を受けていただいて、二年更新ということではありますけれども、特別問題がなければそのまま二年更新しながら委託をする、こういった制度も設けております。こちらについては平均で七十八人ということで、養子縁組以上にやはり養育家庭委託の方が多いというのが現状でございます。  養育家庭の中から養子縁組を結んだというケースについては、ここ四年ほどはゼロではございますけれども、十二年間で十五人程度養子縁組に進んだということで、東京都では、養育家庭養子縁組をもともと登録の段階で分けておりますので、養育家庭を希望される方は、もともとは、そんな養子縁組をしたいというよりも、子供を預かって養育を希望されるという方々中心だというようなことでございます。  それで、私ども養育家庭あるいは養子縁組を検討する際に、家庭養護第一ということをまず常に頭の中に置いております。  レジュメの方は一枚めくっていただきますけれども、二十八年改正児童福祉法でも、児童家庭において健やかに養育されるよう保護者を支援しなければならないということで、まずは何とか保護者を支援し、仮に虐待があったとしても、また虐待のない家庭子供養育してもらう、何とかこれが目指せないかということで取り組んでおります。  このことは、平成二十年に国の方がガイドラインを出していますけれども虐待を行った保護者に対するガイドライン、ここでは、親子分離した場合であっても親子であることに変わりない、再び親子が一緒に生活できるようになることが子供福祉にとって最も望ましいんだということで、まずは何とか親御さんを指導、支援し、再び親子関係をつくってもらう、これを目指しているというようなことでございます。  そのために、家族統合事業ということで、虐待を受けて里親委託をされたり施設でお預かりしている子供、あるいはその保護者に対して、家族合同グループとかあるいはカウンセリング、こういったさまざまな援助を行いながら、何とか家族を再統合するというようなことをまず第一にやっているというのをちょっと述べさせていただきたかったということでございます。  さて、続いて、本題である養子縁組法改正部分でございますけれども養子縁組特別養子縁組によって親子関係を切ってしまうこと、これは実親子関係を切るわけで、本当にそのことが子供にとって望ましいのかどうかというところはなかなか考える部分でございます。  一つは、当然、相続権もなくなる。ある意味で、親御さんがある程度財産を持っていたとしても、特別養子縁組成立によって実親の財産を相続することはなくなります。  また、実務でよく問題になるのが、実親はなかなか面会交流がない、また、なかなか子供にも興味はないんだけれども、おじいちゃん、おばあちゃんは非常にお孫さんのことをかわいがっている。ただ、実際にお孫さんを引き取ってまで育てることは難しい、高齢であるとか、あるいは体調の問題もあって。ただ、本当に定期的に施設あるいは里親さんのところに面会に行ってくれて、誕生日にプレゼントを持ってきてくれたり、あるいは何かのお祝いのときにやってくれる、こういった親族関係までをも特別養子縁組というのはある意味で切ってしまう。  あるいは、兄弟関係もそうです。親御さんはいないかもしれない、ただ、兄弟は仲よく施設で暮らしている。たまたま兄弟そろって養子縁組に出せればいいですけれども、そうではないとなると、それぞれの兄弟関係一つ切れてしまうというようなところがなかなか問題なのかなというふうには思っています。  それからもう一つ特別養子ということで、子捨てという書き方をさせていただきました。中には、生まれてきたお子さんが体が不自由であったりというようなこともございます。そういう中で、そんな子供は育てられない、これはもううちの子じゃないんだから特別養子に出してくれというような希望をされる親御さんもいます。果たして、そういったことをそのまま本当に認めて、すぐに特別養子にしていいのかどうか。  確かに、生まれてきたお子さんが体が不自由であったり障害を抱えていれば親御さんのショックははかり知れないものですし、ただ、その子も自分子供なんだということで、もう一回、時間をかけてでも何とか受け入れていただく、やはりこういった取組も必要なのかな、こういったことについて、すぐに特別養子選択してしまうというのはどうなのかなというふうに考えているところでございます。  ただ、そうはいいましても、実際に、棄児であるとか、実親さんが全く養育意思がない、こういった小さいお子さんたちについては、現行でも特別養子縁組を確実に実施し、親子関係をきちっと子供につくってあげるというような取組をして、先ほど冒頭述べさせていただいたような人数が一定いるというようなことでございます。  それから、下の方でございます、もう一つ養子縁組課題として私どもが考えているのが、やはり離縁が認められないということがあるのかなと思っています。  特別養子縁組成立した場合は、基本的に、仮に養親虐待等を行ったとしても、いわゆる実親の養育ができない場合は離縁ができないというような法制度になっています。  この離縁ができないというのは、いい意味でいえば、やはりこれは親子関係なんだから、法律で切るというのはどうなんだというところはもちろんあると思いますけれども、逆に、離縁ができないことによって親子関係を縛ってしまう。  実際に、養子縁組を結んで小さいときから生活をしてきても、ある程度のところになって、この子のことはもう見れない、あるいは場合によっては虐待をしてしまう、こういったケースもないわけではございません。そういう中で、児童相談所に、もうこんな子は要らない、自分はこんなつもりでもらったんじゃないというような発言があることも事実でございます。  そういったときに、私ども、今は施設でお預かりをしたり、あるいはまた養育里親さん、養育家庭さんに委託をしたりというような対応はしていますけれども、ある意味でつくり上げた親子関係ですから、果たして、それが本当にもうだめなんだとなったときに切れないのかどうか、こういったところは一つ今後検討していかなきゃいけないところかなというふうには思っております。  それから、今回、十五歳ということで、年齢引上げということで、年齢について幾つか述べさせていただきます。  一枚めくっていただいて、九歳の壁というようなところ、あるいは十歳の壁と言われていることもありますけれども、小学校四年生程度のところでございます。子供幼児期を離れて、物事をある程度対象化して認識できるようになるような年齢というところで、これを過ぎた後に養子縁組をしていくというのはいかがなものかということで、やはり、実親の記憶であるとか、なかなか整理もまだ難しい年齢というところで、この辺のところが一つ課題なのかなというふうには考えています。  それから、先ほど大村先生の方から、特別な事情がある場合には十五歳以上も可だというようなことがありました。ただ、十五歳以上の場合には子供意見を聞かなければならないということになっていますので、果たして子供に、事実上、後戻りさせない、できない、判断をさせることに本当にお子さん自身が耐えられるのか。選ぶ、あるいは実親子関係を切らなきゃならないという選択を、子供自身意見を本当に聞いて、それがどれだけその後子供に残っていくかというところは、やはり考えなきゃいけない問題だと思っています。  十五歳以上は、法律上、もちろん子供意見を聞くわけですけれども、十五歳未満であっても、ある程度年齢に、中学生ぐらいの年齢に達していれば、子供意向確認は当然なされるものだと思います。そうしたときに、果たして子供が素直に本当に話ができるかな。特に、もう既に養育里親等養育をされていて、あなた、うちの養子になる、子供になると言われたときに、子供が本当にそのときに正確な意思表示ができるかどうか。自分がここで断ってしまったら、自分の居場所はあしたからどうなるんだ、こういった不安感はやはりかなりあるんだろう。  当然のことながら、そこは丁寧に説明はすると思います、あなたが断ったとしても、別にここにいてもいいのよと。ただ、そうはいっても、そこで断るだけのことがこの年齢お子さんたちに本当にできるのかというところが一つ懸念する部分と、やはり子供の負担感を考える部分でございます。  それから、今回の法改正でも、特に養親子供年齢差というようなことは規定をされていません。もちろん、これは最終的には家庭裁判所判断することですから、家庭裁判所が当然、判断の中でそのことも考慮されるとは思いますけれども、今、養親については、片方は二十以上であればよいということになっていて、今回、十五歳未満というようなことになりますと、一番短くて六歳の差の親子関係が出てくるわけですね。果たしてこの辺のところ、あるいは十八歳未満とした場合にはもっとそれが短くなる、こういったことが本当に適当なのかどうか、これを本当に裁判所の裁量に任せていいのかというところは、やはり一つ懸念する部分でございます。  それからもう一つ年齢要件について懸念している部分は、今回、早期に親子関係成立させ、安定させるということを目的にしているわけではございますけれども、やはり、十五歳というふうに延ばしたことで、親御さん自身が、子供の様子をしばらく見てから養子縁組を検討しようとならないかなというようなところが心配でございます。やはり、受けたときにはなかなか小さいとどんな子かわからない、もうちょっとこの子の発達の様子を見てみよう、あるいは、本当にうちの子にしていいのかどうか見てみようというようなことで、延ばされることがあってはならないだろうというふうに思っています。  それから、最後に二点だけ加えさせてください。  一つは、子供の出自を知る権利でございます。  今、養子縁組それから里親委託ともに、真実告知ということで、どちらも、実親ではないんだということをちゃんと子供に説明をしてくださいということでお願いをしています。ただ、どこまでそれがされているか。あるいは、そうした子供たちが今後、開示請求等で自分の出自を知りたいといったときに、それをどこまでオープンにできるのか、この仕組みが今なかなかないところでございます。  実親にしてみれば、自分が妊娠した経過を知られたくないというところも当然ございますし、子供にしてみれば、自分の親は自分を何で社会的養護あるいは養子にしたのかといったところを知りたいといったことで、やはりこの辺もあわせて検討が必要だろうということで、今、養子縁組等は永年保存ということで通知でも示されていますけれども、そうではない、施設を利用したり養育里親を利用したような、社会的養護を利用した子については二十五歳まで保存すればいいということで国が通知を示しています。  実際、多分、子供たちが大きくなってから、自分の出自を知りたい。自分が実際に子供を産んでみた、ところで自分はどうだったんだろう、あるいは、ずっと仕事をして頑張って、退職してリタイアした、ところで自分は何だったんだろうというところで初めて振り返る場面が非常に多いのではないか。  時々、児童相談所にもふらっと年老いた方がいらっしゃって、自分は実は昔ここでどうも何か相談をされて里親に行ったみたいなんだけれども、そのころの記録はないのかね、こう言われることもあります。ただ、現実にはなかなかそういったのも今は残っていないということで、そこのところはその方のお話を聞くぐらいで終わってしまうということで、やはりこの辺も整理をしていく必要があるだろうと思っています。  最後でございます。  養子縁組成立前後の実親支援ということで、養親子供に対する支援はいろいろ充実していこうということで、フォスタリング機関であるとかいろいろなところが今頑張っているところでございますけれども養子に出してしまった実親さん、やはりこの方というのは、本当にそれでよかったのかどうかということでいろいろ悩んだりすることもある。実際に実親が子供のことをどこまで知れるかという仕組みが今きちっとできていないのが現状でございます。  オープンアダプションとかいろいろなことで、もっと開かれた養子関係があってもいいのではないかということで、例えば面会であるとか通信であるとか写真、あるいは子供の様子を知らせるとか、いろいろな形の養親子関係があってもいいというふうに考えているところでございます。  ちょっと時間を過ぎてしまいました。私の意見はここまでにさせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)
  6. 葉梨康弘

    葉梨委員長 ありがとうございました。  次に、安藤参考人にお願いいたします。
  7. 安藤茎子

    安藤参考人 おはようございます。  私は、特定営利活動法人特別養子縁組支援グミの会サポートの理事長を務めている安藤茎子と申します。  私は、東京都の養育里親で、被虐待児、障害児を受け入れる専門里親の資格もあります。また、これまで二つのNPO法人で、里子や児童養護施設で暮らす子供たち、また出身者の支援をしてきました。グミの会サポートでは、養子に限らず、社会的養護全般の支援も行っています。  本日は、特別養子縁組がよりよい法律に支えられる制度になることを願って、当事者の一人として意見を言える時間を設けていただいたことに感謝しています。どうぞよろしくお願いいたします。  まず、事前にいただいた資料をもとに、三つのことについて本日は意見させていただきます。私からの資料は全部で五枚になっております。  まず一つ目ですが、改正後、特別養子縁組対象年齢が引き上げられることで対象児童がふえることは望ましいことです。しかし、以下のことで手放しで喜べない現状があります。  まず、出自、措置理由は生みの親の養育困難がほとんどで、里子と変わらないのに、特別養子には、里親と比べると、支援がほとんどありません。特別養子縁組をすると実子と同じとみなされるため、長年、社会的養護でありながらも行政からの支援がありませんでした。また、民間あっせん団体の縁組後の支援にはばらつきがあり、グミの会サポートでは特別養子縁組家庭向けの子育て支援を行っていますが、その研修内容のばらつきから、行政主体の縁組のときとは異なる新たな悩みが出てきています。  特別養子縁組ができる年齢制限は現在六歳未満となっていますが、これは養子候補者が幼少のころから養育を開始した方が実質的な親子関係を形成しやすいからだとされています。これは支援がない中で養育することが前提だったからではないかと思います。  養育里親、里子への支援は、チーム養育など体制ができていますが、まだまだ十分ではないと言われています。特別養子縁組は更に支援がありません。中途養育の難しさはもう既に皆様御存じのことと思います。  新生児の特別養子縁組が民間あっせん団体を中心にここ数年ふえてきましたが、実子と比べると、養子の方が障害率、発達におくれのある率が高いと言われています。このことは私が里親特別養子縁組家庭を支援してきた実感とも一致します。これは、生みの親が妊娠期に、望まない妊娠で不安定な状態であったこと、飲酒、喫煙をしていた影響ではないかと思われます。  また、先ほど述べましたが、民間あっせん団体の継続支援にはばらつきがあり、委託時に、赤ちゃん縁組は実子と同じだから愛着障害などありませんと言っているところもあります。アメリカでは胎児うつという言葉があるほど、胎児期からうつ状態で生まれてくる赤ちゃんもいて、新生児の愛着障害の要因とさえ言われています。  一方、養育里親は、支援が多少のばらつきがあるものの、行政からの研修はある一定基準が保たれています。そのため、政令指定都市が異なるからと里親の認識に大きな差があることはありません。  当事者団体として、里親手当などの金銭部分以外で、養育里親、里子と同じレベル若しくはそれ以上の支援、特に発達におくれのある子への支援を求めます。  二つ目です。養子候補者の出自を知る権利についてです。  養子候補者が審判時に十五歳に達している場合には、改正後、その者の同意が必要とされていて、これは普通養子縁組が十五歳からできることを考慮しての基準となっていると聞いています。  資料の三枚目になります。申立て事案審判書の(四)の五行目、申立人両名、これは養父母になります、とも、未成年者養子候補者が養子であることを隠す気持ちはなく、○○にはどこどこに実のお母さんがいると教えてきた、担当調査官の前で未成年者に対し、○○にはどこどこにもお母さんがいるんだよねと言い、未成年者がうんと言う場面があったと記されているように、同意書や調査書という形ではなくても、何らかの形で養子候補者が出自を知っているということを残していただきたいと思っています。  なぜなら、特別養子縁組審判時の資料は、当事者にとって、後年、自分の出自を調べるための貴重な資料になるからです。そして、養子候補者が育ての親、生みの親のことを理解しているか否かについて、子供の知る権利を考慮したものにしていただきたいということです。  専門家ではありませんが、私の要望としては、発達、障害によっても異なりますが、小学生以上の養子候補者には、家裁調査官との会話の中で聞き取るような工夫をしていただきたいと思います。  三つ目です。実親の同意の撤回制限についてです。  現在の実親の親権放棄の同意書は法の定める書類ではないため、縁組成立するまでは、いつでも同意の撤回ができます。そのため、裁判開始後に実親が同意の撤回を求め、特別養子縁組が不成立となった家庭があること、不成立にはならなかったものの不安定な時期を過ごした家庭があることは皆様御存じのことと思います。  改正後の同意の撤回制限は、実親が第一段階手続において行ったものは、二週間経過後は撤回不可となります。これは、養子候補者と養育者が、審判が確定するまでの間、不安定な気持ちで過ごすことなく、縁組成立日を楽しみに待つことができる、とても望ましいことです。  私は、この撤回制限期限を過ぎた同意書に有効期限を設けていただきたいと思います。  これまでに、行政からの措置で養子候補者となった子供委託されている家庭が、里子のままの方が措置費が出る、支援が受けられるとの理由から、縁組を、縁組できるであろう日から先延ばしにするというケースがありました。  資料四枚目、五枚目の養育委託費をごらんください。里親手当、養育手当のほか、進学時の手当などが里子にはあります。  実子の養育でも、思春期の養育は困難なことがあります。ましてや社会的養護の子供の思春期は、性の目覚めと同時に自分の出自を考える時期でもあり、養育者との間で実親子以上の困難なことが多々あります。  十五歳ぎりぎりまで里子でいたことから、思春期問題に突入し、やはり養子縁組をせずに里子のまま養育しようというように思われては、対象年齢を引き上げたことによって、実現するはずである特別養子縁組ができる子供の利益が、養育者のわずかな心の揺れから実現しなくなってしまう懸念があります。  措置費、支援が受けられることから養子縁組をせず、里子のまま、里子である期間を延ばすことで、子供の安定した家庭生活を受ける権利が妨げられる行為になります。このことから、撤回制限期間が過ぎた同意書に有効期限を設けていただきたいと思います。  ケース一つに、二歳の養子候補者を委託され、里子のまま二年が過ぎた家庭に、実母が経済的にゆとりができたから親権放棄を撤回したいとの申出があったというものがありました。自分に経済力がついたから引き取るなんて自分勝手な人、子供がかわいそう、子供のことを全く考えていない実母と、実母を否定する人もいますが、私は否定することができません。  生みの親が妊娠期から大切に育て、おなかを痛めて産んだ我が子を自分養育できないことで、たくさんのことをのみ込みながら書いた親権放棄書。子供に恥ずかしくないように生き、生活をし、経済力をつけて、ふと気がつけば、養親候補者に引き取られて二年以上が経過しているのにまだ養子縁組をしていない、それなら自分の手で育てますという思いに実母がなったとしても、それは自分勝手でも何でもなく、親としての子供への純粋な愛情です。  日本の特別養子縁組制度は、これまでも、今後も、生みの親の支援の予定がありません。せめて、実母がこのような親権放棄後に子供のことを思い、心乱される思いをしなくてもいいように、そして、養子候補者に不利益を与えないためにも、親権放棄の有効期限を定めていただきたいと思います。  以上、特別養子縁組家庭への支援、養子候補者の出自を知る権利、実親の同意の撤回制限の有効期限についての三つの点について、私の意見として述べさせていただきました。  御清聴ありがとうございました。(拍手)
  8. 葉梨康弘

    葉梨委員長 ありがとうございました。  次に、伊藤参考人にお願いいたします。
  9. 伊藤由紀夫

    伊藤参考人 非行克服支援センターの伊藤と申します。  きょうは招致いただきましてありがとうございました。  私は、平成三十年三月に定年後の臨時的任用職員を退職するまで、三十八年間家庭裁判所調査官として働いてきました。調査官としては、家庭裁判所の数多くの少年事件や家事事件について、裁判官の命令を受け、調査、調整活動を行ってまいりましたが、私は実務経験しかない一介の裁判所職員だったにすぎません。特別養子縁組制度に関する民法等改正というこのような場にふさわしいのか、とても心苦しい思いです。そのような立場からの意見として御理解いただければと思います。  特別養子縁組事件において、調査官は、裁判官の命令を受け、養父母になる者、申立人夫婦養子になる者及びその父母の調査をします。具体的には、申立人夫婦と面接し、申立て動機や経緯、生活歴や婚姻歴、経済力等の現状を聴取し、家庭訪問による環境調査を行います。並行して、養子になる者の父母と面接し、特別養子縁組制度について説明した上で、特別養子縁組を了承した経緯、その意思を確認し、書面を作成してもらいます。また、関係機関の担当者と面接し、調査、審判への協力依頼や調査嘱託を行い、申立てまでの経緯の説明や資料提出を求めています。  こうした審判前の包括的調査を行い、一度裁判官に報告をし、試験養育期間に入り、数カ月間の経過観察を行って、裁判官に最終的な調査報告書を提出することが多いと思います。  なお、現状では、養子となる者は六歳未満であり、実際には三歳未満の乳幼児であることが大半であるため、養子となる者の意思確認は行えず、養父母となろうとしている者との愛着関係養育方法の適切さ等について、主に発達心理学、臨床心理学の知見に基づきながら、言表以外の表情や動作等も含めて観察し、最終的な調査報告を行っています。  こうした実務経験を踏まえるなら、今回の、養子となる者の上限年齢を十五歳未満に引き上げること、特別養子縁組の適格性を確認する審判の新設、特別養子縁組成立審判に係る規定の整備、児童相談所長特別養子適格の確認審判手続に参加できる制度の新設等の改正は、現行制度の延長線にあって必要なものと考えられ、基本的に賛成です。  理念的なモデルを想定すれば、家庭環境に恵まれず、時に虐待を受けていた子供が、長年にわたって養育里親のもとで養育監護されていた場合、里親子供特別養子縁組を望むようになり、また、子供の父母も人生の次の段階に入って特別養子縁組を了承できる状態に至ったなら、六歳未満という年齢制限なしに特別養子縁組ができることは望ましいと思います。少しでも制度の利用を促進すること、特に、適切な保護者がいない子供や被虐待子供にとって、新たな家庭環境を整えることは喫緊の社会問題であり、その問題解決のための選択肢を一つふやすことにつながると考えます。  ただ、問題点がないわけではありません。  まず、実務家としては、六歳未満から十五歳未満への引上げは大幅な年齢引上げであり、対象となる子供の成長発達に応じた意見表明できる力の多様さが一気に広がるため、非常に難しい実務になると考えます。  次に、私の拙い実務経験ではありますが、少年事件において比較的重い非行を起こし、逮捕、勾留を経て観護措置となった事件の中で、忘れがたい事件として、特別養子であった少年が起こした事件が三例ありました。どれも、凶悪な非行を起こすタイプというより、精神的、心理的なダメージや問題を抱え、その後の社会適応、改善更生に長時間を要した少年たちでした。自殺防止の配慮も欠かせませんでした。  特別養子縁組の養父母になったとしても、その後の人生の中で夫婦関係が破綻し、家庭が崩壊することはあります。そうした中、養子と養父母の親子関係までも破綻すると、その対立、葛藤は極めて深刻な問題にならざるを得ません。実親にも捨てられ、養父母にも見放された、時には虐待されたという二重の喪失感、絶望感の中で、自分には生きている価値や意味はないといった深い悲しみを抱えていた少年たちだったと思います。  また、非行や犯罪に至ったケースではありませんが、特別養子縁組を解消し、実の父母について戸籍をたどるだけでなく、何らかの接触を願っている方の話を聞いたことがあります。自分の出生事情を知りたいと思うことは切実な基本的人権だと思いますが、現状では、実の父母の戸籍付票や住民票はその子には非開示となっています。  こうした例は、数としてはごくわずかとはいえ、特別養子縁組をすれば、若しくは実の父母との関係を一切遮断すれば全て問題解決になるというわけではないのだということを教えてくれていると思います。  こうした悲し過ぎる事態に至らない解決策の一つは、審判前の包括的調査を十分に行い、特に、養子となる者の意思や意向の確認を慎重に行うことが不可欠だと考えます。  今回の改正では、十五歳未満時点から養父母となる者が継続的に養育監護を行っていた場合、及びやむを得ない事情により十五歳までに申立てができなかった場合については、養子となる者が十五歳以上であっても特別養子縁組が可能とし、ただし、十五歳以上の場合には特別養子縁組についての同意確認しなければならないとしています。子どもの権利条約で規定された子供の成長発達権の保障、子供意見表明権の保障に照らしても必須の手続だと思います。  あわせて、今回の改正では、十五歳未満養子となる者についても、その意思を十分に考慮しなければならないことが議論されてきました。私の思いからすると、みずからの成長発達権や意見表明権について十分に認識できず、みずからの思いを十分に言語化できない年齢にある子供であるからこそ、その意思や意向について慎重に配慮すべきであると特に強調したいと思います。  こうした十五歳未満子供の意思や意向への配慮は、さきの民法改正、家事事件手続法の制定時においても、家事事件の中の親権者や監護者の指定、面会交流、子の引渡しといった、子の監護に関する事件の調査に不可欠なものとして指摘され、子供にとって最善の利益の確保のために重視されてきました。家裁の実務現場では、全ての調査官がこの課題解決のために日夜悪戦苦闘し、研さんを重ねていると言って過言ではありません。しかし、非常に難しい問題です。養子となる者の年齢、発達段階、性格や行動傾向等は多様であり、その言動は必ずしも安定したものではなく、それぞれ個性に応じた調査が必要となります。  例えば、親に不当に叱られたとして家出のかわりに一時保護を求めてきた子供が、三日後にはおうちに帰りたいと泣いて暮らすといったことはよくあることです。すなわち、親子関係の中で、子供の気持ち、意思や意向は揺れ動く。同時に、その父母の気持ちも揺れ動くと思います。特に、長年にわたって父母のもとを離れて暮らし、児童相談所等に対する父母の確執を目の当たりにしてきた子供にとって、特別養子となる判断をすることは相当に心理的負担が重いことであり、子供の意思や意向についての配慮は本当に困難な課題だと言わざるを得ません。  今回の改正では、養子となる者の父母の意思決定について、時間的制限を設け、意思決定を覆させない規律が入っています。これは、父母の考えや感情を整理し、問題解決を進めるために必要な改正と思います。ただ、他方で、特別養子にすることだけが解決ではなく、実の父母との接触を遮断せず、普通養子という選択もあるといった柔軟な運用も必要だと考えます。  児童相談所と父母が激しく対立する場合など、問題が複雑に錯綜した経過がある場合には、子供のための手続代理人を活用することも必要ではないか、そのためには、子供手続代理人選任のための制度的、財政的な改善、国としての子供の成長発達権や意見表明権を保障する対策も必要ではないかと考えます。  加えて、少年事件数の減少は顕著ですが、家事事件数は増加しており、家裁現場は繁忙をきわめています。調査官及び書記官の増員等についても配慮いただければと切望しています。  また、もう一つの解決策として、今回の改正を社会的に定着させるためには、恵まれない子供の継続的な養育監護を目的とする養育里親の拡大充実が不可欠だと考えます。文章にありませんが、欧米と比べると、養子を求めての里親ではなくて、養育をする里親というのが日本はやはり少ないというふうに私は聞いています。  実務経験からいうと、特別養子縁組を希望する里親は、我が子が欲しい、我が子として育てたいという思いが強く、特別養子縁組成立すると、児童相談所等での里親としての研修も受けなくなってしまうことが少なくありません。少子化が進む社会情勢にあって、家庭に恵まれない子供を一人も漏らさず、あえて言えば、養子縁組できるかできないかが目的でなく、恵まれない子供を助けてくださる養育里親の一層の充実拡大が必要ではないでしょうか。  現状児童相談所及び一時保護所も激務に追われています。こうした中、既に実施されつつありますが、年少者の一時保護については可能な限り里親委託とし、一時保護所での集団処遇から里親による個別処遇へと切りかえ、一時保護中の子供への義務教育を保障するといった改善は必須と考えます。  以上、問題が発生している中で一番の弱者である子供、その子供の成長発達権や意見表明権が守られることを願って、養子となる者の意思や意向の確認の難しさの問題、特別養子縁組を解消した場合にみずからの出生事情等を知ることができる権利の問題、養育里親の拡大充実の必要性について述べてきました。  特別養子縁組の利用拡大は、子供への虐待問題の解決策の一つとして有効と思いますが、その利用が急激に増加し、一気に問題解決するといった事態にはなり得ないと考えます。特別養子縁組もできないが、親元に帰すこともできないといった子供たちが多数であり、本法案とは別に、一時保護や養護施設児童自立支援施設等の改善、整備が必要と思います。  実務経験からいうと、本来、児童福祉法と少年法は異なる理念や歴史経過を持っていますが、一時保護所については少年鑑別所の個別処遇を参考に、養護施設についても、各種少年院が年齢や資質に応じて分類されているといった点を参照して、改善を図ることも考えられます。  あり得ないことですが、こんな一時保護所や養護施設は嫌だという思いだけから、子供が拙速に特別養子縁組を希望するといった事態は避けなければなりません。国として、家庭に恵まれない子供たちの権利を重視し、子供たちに伴走する形で支援強化をお願いしたいと思います。  以上でございます。(拍手)
  10. 葉梨康弘

    葉梨委員長 ありがとうございました。  次に、サヘル・ローズ参考人にお願いいたします。
  11. サヘル・ローズ

    サヘル・ローズ参考人 皆さん、おはようございます。  先ほどから、皆様が本当に子供たちのことを思っていろいろな意見を述べてくださって、一人の当事者として後ろでうなずきながら、そうか、こういうふうに考えてくださって法律というのはつくられていくんだなと。  きょうは、今まで画面の向こう側でしか見たことのない世界を見ながら、でも、長年、私はこういう場所で、実は私は孤児院で生活をしていた時期があるんですけれども、一人の子供の当事者としての声を皆様に生で聞いていただけたらなと思っていました。なので、きょうはその機会をいただけて、一人の人間として子供の心を皆様にお伝えできたらなと思っております。よろしくお願いいたします。  私は、実は四歳のときに実の親を亡くしました。四歳から七歳まで三年間を孤児院で、イランの方なんですけれども、生活をしていたんですね。その間、やはり多くの施設で、イランにはたくさんあるんですけれども、その施設に、一人の方が大勢の子供の面倒を見なければいけないので、なかなか一対一の関係というのが生まれないんですね。  皆さん、お子さんはいらっしゃいますか。帰ったら、お父さん、お母さんと言って、子供を抱き締めたり、子供が歩み寄ってきたり、こんなことがあったよという話ができますよね。私たちにはその相手がいなかったんです。話したいことがあっても話せる大人がいない。夜、布団の中で泣いている子がほとんどでした。  子供によっては、やはり自分の親の顔を覚えている子もいます。もちろん戦争で親を亡くしてしまった子もいますし、経済的な理由で捨てられてしまった子たち、また、育てられないという理由で施設に預けられてしまう。さまざまな事情を抱えている子供がいます。でも、みんな、誰かの瞳には映りたい、誰か私たちを見てくれているのかなと、子供なりにモールス信号を送っているんです。  でも、私は別に施設を否定しているわけではなくて、ただし、見られる環境というのは限られてくると思うんですね。だからこそ、早い段階で、子供が心に傷を大きく負う前に、家庭家族という環境をつくってあげてほしいなと思っています。  子供は、ゼロ歳から五歳までが、どういった環境で育つか、どういった愛情を受けるかがとても大事なんです。私は七歳まで施設にいたものですから、正直、今三十三歳なんですけれども、立派になったねと周りには言われるんですが、あのときに埋められなかった親の愛情を引きずっています。いまだに心の中にインナーチャイルドを抱えていて、その子が夜になると泣き出すこともあります。  でも、それをなかなか養母さんには言えないです。養母さんはいろいろな気持ちで、私は七歳で出会って、私を自分のために引き取ってくれたんですけれども、本当は心が痛いんだよということはなかなか言えなかったことが正直あります。だからこそ、早い段階から子供家族のもとで、家庭の中で育つ、法律でしたり、その道、ルールをつくっていってあげてほしいなと思っています。  そのためには、引き取る親にもいろいろと負担がかかっているのは事実です。どうやって子供と向き合ったらいいんだろう、実際に生みの親を捜したいんだろうな、真実告知はいつしてあげたらいいんだろう、ルーツ捜しはどうしてあげたらいいんだろう、もしかしたら嫌われてしまうんじゃないかと、きっと育ての親は悩むと思います。  でも、私は一人の当事者として私が感じたことを言います。私は生みの親も愛していますし、育ての親のことも愛しています。なので、たとえ関係が何かで切れたとしても、育ての親との関係性があれば、話合いができれば、きっと埋まることもたくさんあると思うんですね。そのためには、早い段階から家族になれる、小さいときから誰かに抱き締めてもらえる、母親のにおい、お母さんの味というのをちゃんとわかる環境をつくってあげてほしいなと思っています。  私は、今のお母さんは二番目のお母さんなんですけれども、引き取ってくれたときに私に名前をつけてくれました。それまで名前がなかったです。施設の中で、やはり一対一の関係がないので、誕生日をしてもらえることもなかったですし、抱き締めてくれる大人がいなかったので、外の社会に出たとき、周りの子たちがこんなことを言っていました。うちのお母さんのにおいはこんなにおいなんだ、親ってこんなにおいがするんだねという話をしていたときに、私たちは、施設にいる子は、やはりハグをしてもらったりとか、小さいときに一対一の関係がないので、親のにおいを知らないんですね。なので、皆さんにとってごくごく当たり前のような普通のことが、施設の中で育ってしまう子供たちにはなかなかないこともあります。  ですので、それを守れるのは法律だったりとか、こういう皆さんが動いてくださって、よりよく、子供たちにとって、書類だったり、こういう状態はよくわかりません。ただ、子供は、一日でも早く、家族というものを探していますし、誰かが手を握って、誰かが抱き締めてくれること、子供のためを思って、子供のことを考えて法をつくってくださったり、そして、どういったことが子供の未来につながるかということを考えてもらえたらうれしいです。  先ほど、幼少期にいろいろなことを抱えてしまって、実は犯罪を犯してしまう子もいるというお話を伺っていて、後ろで心が苦しくなりました。その子たちは、そうなりたくてなっているわけではありません。そうさせてしまうのも社会だったり、今までその子たちを見てあげられなかった社会にも、そして世の中にも責任があると思います。だからこそ、他人の子供ではなくて、社会の子供、国の子供だというふうにちゃんと見てあげていただけたらなと心から切に願っています。  一人でも多くの子供たちに、早い段階から家族になれるルールづくり、そして、里親になったり養子縁組をしてくださった親のケアもしてあげられるような道をつくってあげてください。親になる方も勇気が要ります。そして、どうやってやったらいいんだろう、マッチングにも時間が余りにもかかっています。本当はもっと早くなれるのに、審査だったりマッチングだったり、いろいろなルールがあり過ぎて、行けるタイミングを逃してしまう子もいるわけですよね、今現在も、私たちが討論しているこの期間も。待たされている子たち、一日でも早く行きたいな、外の世界に出たいなと思っている子たちのためにも、時間というのはとても大切です。  そして、もう一つだけ言わせてください。  今私はいろいろな施設を回って、いろいろな子供たちと触れています。中には、どう見ても、正直、私から見たら、きっとこの子は外国国籍の子なのかな、どこかの血がまざっているんだろうなと思って聞いても、実の親のことを知らない、若しくは、親のことを知っていても、なかなか迎えに来てもらえない。その子は本当は夢を持っていて、お医者さんになりたかったりとか、大学に本当は行きたかったりとか、でも、なかなかその環境が整っていないので、持っている夢も学びたいこともできない。そして、その子たちがどんどん心を閉ざしてしまう、どんどん社会が嫌いになってしまう、どんどん大人が嫌いになってしまう。  その子たちは悪くはないんです。その子たちは必死で小さいときから訴えています、家族が欲しいと。それに耳を傾けてこなかった現状が、その子たちの目を見ていると、どんどんさめた目になっているな。とても心配になります。さめた目になる子供を減らしてください。そのための皆さんだと思っているので、どうか力をかしてください。  きょうは、こういう場をいただけて、拙い言葉で、意見を皆さん聞いてくださったことを心から感謝をしています。そして、私を産んでくださったお母さん、育ててくれたお母さん、そして日本という、育ててくださったお母さん方、お父さん方に感謝をしています。  皆さんも帰ったら子供を抱き締めてください。そして、まずは施設に足を運んだり、いろいろな団体の意見を聞いてあげてください。よろしくお願いいたします。  ありがとうございました。(拍手)
  12. 葉梨康弘

    葉梨委員長 ありがとうございました。  以上で参考人方々の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  13. 葉梨康弘

    葉梨委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申出がありますので、順次これを許します。国光あやの君。
  14. 国光あやの

    ○国光委員 茨城六区の国光と申します。  本日は、先生方、本当にお忙しい中お越しいただきまして、ありがとうございました。  先ほどサヘルさんがおっしゃった、さめた目をしない子供をつくるということは本当にまさに政治の原点だと思って、私も、済みません、ちょっと涙ぐんじゃったんですけれども、本当に心から感動いたしました。  その気持ちを込めて、ちょっと皆様方にそれぞれのお立場で御質問をさせていただきたいと思います。  まず、大村先生にお尋ねをさせていただきたいと思います。  大村先生は、御発言でもありましたとおり、平成二十九年からの研究会、そして部会、まさにこの法案に係るさまざまなプロセスを、行政の中でも座長として取り組まれておられました。  恐らく最後まで一番大きな課題でありましたのが、何人かの参考人の先生からお話もありました年齢関係だと思います。私もそのときの会議資料を拝見させていただきましたけれども、甲乙丙という案を三案出されて、それを何度も何度も繰り返して、意見を出されていらっしゃったのも拝見をいたしましたけれども、本当におまとめが大変だったと思います。  なかなかベストな解はない。皆様のお話を伺っていても、恐らく、社会的養護や特別養子縁組を、まだ縁組年間五百件しかなくて、年間五十件が年齢のためにひっかかってできないという状況がある中、引上げというのは総論としては必要でございますでしょうし、ただ一方で、なかなか、お話に同じくあったような形で、果たして子供の方、そしてまた養親の方の養育をする力というふうなあたり、このあたりもしっかり考えながら進めていかねばならない。つまり、数ありきではなくて、しっかり中身が伴ったものでなくてはいけないということが本質なのかなというふうに思っております。  その点で、改めて大村先生に、特に年齢ということで、九歳の壁という話もありましたけれども、たしか十三歳という話もあったと思います。最後にここを十五歳というふうに原則として、更に例外をつけられた。これに対して、どういうふうなおまとめが最後あったかということを改めてお伺いをさせていただきたいと思います。
  15. 大村敦志

    大村参考人 御質問どうもありがとうございました。  御指摘のように、この年齢の問題は、最後までなかなか意見が対立していたところでございます。  できるだけ広く特別養子縁組を認めるべきだという立場からしますと、これは十八歳まで認めるということを原則とすべきだ、こういうことになります。それから、先ほど他の参考人からの御発言がありましたけれども、早いうちに養子縁組をすべきであって、年齢が上がるとそれは難しいことになるというお立場からしますと、上げるにしても低い方がよろしいということになりまして、十二歳というのも非常に有力に主張されていたところでございます。  中をとるということでは全くございませんけれども、先ほども私のお話の中で触れさせていただきましたけれども、ともかく上げる必要があるだろう、上げる必要があるというときにどこに線を引けるかというと、どこかに線を引くというのは非常に難しいことでございます。  そこで、現在の普通養子との整合性ということから考えますと、これはもう十五歳というところに線を引かざるを得ないということで、もっと高いところ、もっと低いところという御意見方々にもこれを了解していただいて取りまとめたということでございます。  そうは申しましても、十五歳以上、どうしても必要だという場合がありますので、例外を開く。他方、十五歳ということにいたしましたけれども、やはり早い年齢で行われることが望ましいので、そのように実務の方では工夫をしていただくということで、十五歳というのを原則として打ち出したということでございます。  よろしゅうございましょうか。
  16. 国光あやの

    ○国光委員 ありがとうございます。  本当に年齢は難しい話だと思います。私も子供が十歳なんですけれども、本当に子を持つ立場としても、おまとめいただいたこと自体を、少しでも前進をなさったという努力を心から敬意を表させていただきたいと思います。  続きまして、影山参考人とそれから伊藤参考人にちょっとお尋ねをさせていただきたいと思います。  恐らく現場で、それぞれ、東京児童相談センター、そしてまた家庭裁判所調査官でいらっしゃった御経験の中から、私も地元でよくいただくお声が、特別養子縁組を進めたい、あるいは里親でもそうなんですが、進めたいが、一方で、不調になってしまって戻ってきてしまうという子供が一定数おられて、そのときに、やはり戻ってこられた子供の心理的なダメージというのが本当に大きくて、私も月に一回施設に伺ったり、一時保護所を伺ったりするんですが、やはりかなり、お二人がおっしゃっておられたような、この子の心理的ダメージを考えると、私、もともと医師なんですが、今後、発達して安心、安全に育っていけるんだろうかというぐらいのダメージを受けている。それが、伊藤参考人が取り組まれている一部非行の方にもつながっていってしまっているのかもしれませんが。  里親養子縁組を進めるべき、養親を進めるべきなんですけれども、一方で、不調に終わってしまったときのダメージコントロールといいますか、そのあたりをどのように進めたらよいかということをちょっとお伺いをさせていただきたいと思います。
  17. 影山孝

    影山参考人 質問ありがとうございます。  一つは、特別養子になった場合には、こういった不調になってもある意味で解消ができません。やはりここのところは一つ大きな課題かなというふうに思っております。  ただ、そうはいっても、一定程度の心理的なケアとか、こういうのは児童相談所を始めいろいろな機関がきちっとやっていくということと、やはり里親支援の重要性ですかね。養育里親であろうが養子縁組であろうが、新たな親子関係をつくるわけですから、そこにはかなりの葛藤が、子供にも親側にも両方にあるというふうに思いますので、その辺のところの支援の充実を今以上に図っていかなきゃならないかなというふうに考えております。
  18. 伊藤由紀夫

    伊藤参考人 ありがとうございます。  家裁の実務としては、特別養子として申立てがあって、その認容をしていく、認めていく過程の中で、私自身としては、申立人の方がちょっと無理だというような形で返したというようなことはないんですね。ただ、恐らく、里親委託をして、そこでうまくいかないからというのでまた一時保護所なり養護施設へ戻して、次のという形になる。そういう体験をすることが子供にとってやはりとても大変だろうということはよくわかります。  今度の制度でいえば、あえて言えば、問題のない子だというのをすごく長いこと確認した上で養子縁組みたいな形にもなりやすくて、それは、やはり私は、なるべく早く子供を安定させるためには早い時期に養子縁組ということだと思いますし、それから、特別養子縁組養親になった場合に、その後の支援というのが実は足りないんだということもグミの会の先生の発言からあったと思うので、それも確かだと思います。  先生の御質問に正解というのはないんですけれども、私は、子供を支えるという大人たちが複数いていいんだというふうに思うんです。だから、例えば、一つ里親にお願いをしてうまくいかなかった、では、その次の里親といった場合に、たらい回しということではなくて、里親同士も連携をしている、よくわかっている、あなたのために親となる人が複数いるんだ、要するに、お父さん、お母さんだけじゃないんだ、そういう形で子供の方にイメージしてもらっていける、継続した形で自分が守られているという形のことを保障してもらえるということがすごく大事じゃないかというふうに思います。
  19. 国光あやの

    ○国光委員 ありがとうございます。  親の方への支援というお話がございました。それを受けて、今度は、グミの会の安藤参考人にお尋ねをさせていただきたいと思います。  先ほど冒頭にもおっしゃっていらっしゃった、養育里親、そしてさらに特別養子縁組の方が非常にまだ支援の目が足りなくて、また民間団体の話もなさっていらっしゃいましたけれども、民間団体も少し支援のありようがばらつきがあるということが、私自身も現場を拝見させていただいて、非常に強い課題だなというふうに思っております。  これを、現状がこうだという課題に対して、では、どういうふうに支援の、セーフティーネットの網の目といいましょうか、介入をより充実させていくためにはどうしたらよいかという点を、ぜひ改めてお伺いをさせていただきたいと思います。
  20. 安藤茎子

    安藤参考人 御質問ありがとうございます。  まず、行政からの委託を受けた場合、当初は里子という位置づけで試験養育が始まっていくかと思います。縁組後も、先ほど述べましたように、里親手当、金銭的以外のところでの養子縁組に対する支援、里親子関係に行っている支援を養子縁組にも継続して行っていただきたいと思っています。  それと、これは民間あっせん団体に対しての私の希望なんですけれども、継続支援の標準的なものをつくってもらいたいと思っています。やはり、真実告知のあり方や実母に対する面会など支援団体によって差がありますが、ここの基本基準をつくっていただくことでよりよい支援ができるのではないかと思っています。  行政に対しましてもあっせん団体に対しても同じように思いますが、養子縁組支援者向けの研修というのも、予算をとっていただいて、つくっていただけたらなと願っています。  以上です。
  21. 国光あやの

    ○国光委員 現場の思いを踏まえた本当に貴重な御意見をありがとうございました。  そして、サヘルさんにお尋ねをさせていただきたいと思います。  サヘルさん、私もよくテレビであるいはいろいろな御著作などで御活動は拝見を、しかもうちの主人は大ファンなんですけれども、拝見させていただきまして、本当に多大なる御苦労があった中で、来日をなさってここまで来られているというお姿は、我々としてもやはり敬意を払わなきゃいけないものだというふうに本当に思います。  一つ、その中で、ちょっとこういう聞き方をして大変恐縮なのかもしれないんですが、サヘルさんのように、本当に真っすぐに、インナーチャイルドを抱えていらっしゃるというふうにおっしゃっていましたけれども、それでもなお、社会的にもきちんと自立をしていかれようとして、意思と能力そして行動までが伴っていらっしゃる方というのが、ほかの子供たちも同じようにそういう方に向かってもらえれば、私としても本当にうれしいことだなと思うんです。  ただ、まだまだ、幼い子供も、また思春期の子も、成人してからも、心に傷を負ったままで、インナーチャイルドがそのままのような大人というのもたくさんおります。私もそういう方はよくお話を伺うんですが、そういう方が意識を変えて、行動を変えて社会に参加していくということをどういうふうに進めてあげたらいいのかなということを、ピアレビューじゃないですけれども、ちょっとその辺のアドバイスをぜひいただければと思います。
  22. サヘル・ローズ

    サヘル・ローズ参考人 御質問ありがとうございます。  私は、一見このように凜と、よく言われるんですけれども、強いね、よくここまでこうやって発言できるようになったねとおっしゃってくださるんですが、それは、信じてくれる人がそばにいるからですね。どんな私でも受けとめてくれた養母がいたからです。  と同時に、日本の中でいろいろな施設を回ったときに、正直、ちょっとショックを受けました、日本でこの状態なんだと。この状態はさすがに私は思っていなかったことです。自分の国だったら、ああ、しようがないのかなと思ったことだったんですけれども、日本の施設をいろいろと回って、まず施設の数の多さ、社会的養護下で今生活をしなければいけない子供の数の多さ、そして、施設によっては支援が行き届いていなくて、余りにも格差があるという、この状態の中でこの子たちは生活をしている。  しかも、モールス信号を社会にこんなに出しているのに、社会はこの子たちの存在に気づいているんだろうか。余りにも社会が、最近やっとです、こういう養子縁組でしたり特別養子縁組の話を皆さんがちゃんと、テレビでしたりメディアでしたり、そして皆様が意識をしてくださったこと。でも、数年前までは本当に、いろいろな方々が活動している中でも、なかなかこの声が届かなかった。  であれば、私は、自分の原点がそこにある、日本の中でロールモデルをつくりたい、一人でも多くの子たちに、私は、国は違うかもしれないけれども、同じような状況の中で信じてもらってここまで来た、次はあなたたちの番だよという。その子たちの背中を押せるためには、自分がメディアに出て、自分の名前を知ってもらって、自分が大きくなれば、いろいろな人たちが私の言葉に耳を傾けてくれるんだろうなと。  確かに、普通の当事者、ただの当事者ではありますが、でも、当事者だからこそわかる心の悲鳴があります。それを、その子たちが伝えられなかった分を私がメディアで発信することによって、最近は施設出身の当事者の子たちが率先して前に出るようになりました。なので、どんどん変わってきたなとは思います。  でも、変わってきたからといって、ここで今この歩みをとめないでください。もっともっとレールをちゃんと、強いレールを敷いてあげてもらえるのは、正直、私たちだけではできないことですので、皆様の力をかりたくて、私はこれからも胸を張って発言をしていきたいなと思っています。  そして、後に日本の子たちにバトンタッチをして、日本の施設の数を減らしていきたい、そして子供の数を減らしていきたいなと思っています。なので、よろしくお願いいたします。  ありがとうございます。
  23. 国光あやの

    ○国光委員 ありがとうございました。  実は今の点、今ちょうど、この法務委員会では民法改正案の審議でございますが、別途、厚生労働委員会でも児童福祉法改正案、私、厚生労働委員会の所属でもありまして、きのうは参考人質疑がございました。ぜひ、この民法児童福祉法で、子供の本当に明るい、暗い目をした子を一人でも明るくするように頑張っていきたいと思います。  ありがとうございました。
  24. 葉梨康弘

    葉梨委員長 以上で国光あやの君の質疑は終了しました。  次に、浜地雅一君。
  25. 浜地雅一

    ○浜地委員 公明党の浜地雅一でございます。  まずは、皆様方の貴重な御意見をいただきまして、心から感謝を申し上げたいと思っております。  私も法曹資格を持っておりますけれども、この縁組関係については、いわゆる民法の世界の中だけで勉強しただけで、実際に実務に携わっていらっしゃる方、また実際に御経験をされているお話を聞きまして、やはりこの親族関係というのは非常に重いものであるなと、我々議員としても、やはりこの法案に臨むに当たっては、もっと手綱を締めて、当事者の思いに立って審議をしなきゃいけないなというふうに思い起こさせていただいたことをまずもって感謝を申し上げたいと思っております。  まず、大村参考人にお聞きをしたいと思っています。  今回、特別養子縁組は基本的には十五歳まで引き上げることになりました。今は、当然まだ改正されておりませんので、六歳未満というわけでございますが、先ほど、特別養子縁組の一九八七年の制度の生まれた背景で、わらの上からの養子ということがあったということで、私も、どちらかというと、先ほどの実績にもありましたが、ゼロ歳から二歳児までの方が多いということを聞いております。  ですので、この特別養子というのは、私の知識では、真の親子関係をつくるために、やはり物心がつかないうちから、もしかすると自分の親はもう別にいない、逆に出自を知らなくてもいいぐらいの親子関係をつくることが私は制度趣旨と思っています。  しかし、十五歳まで引上げとなりますと、これは制度趣旨というものがそもそも大きく変わったのではないかなというふうに思っておりますが、先生の学者としてのお立場からしても、今回の特別養子縁組制度はそもそもの制度から大きく制度趣旨が変わったと言えるのか。もし変わったとすると、どういった社会的な事実があって変わったのかという点を御意見をいただければと思います。
  26. 大村敦志

    大村参考人 御質問ありがとうございます。  まず、御指摘いただいたとおりでございまして、現在の状況を見ますと、やはりゼロ歳、一歳というのが圧倒的に多いわけでございます。原則として六歳、そして例外的には八歳までということになっておりますけれども、現に使われている状況を見ますとゼロ歳、一歳というのが多い。  この状況は、わかりませんけれども、新法のもとでも、基本的なトーンとしては、やはり小さい生まれたばかりのお子さんのためにこの制度が使われ続けるというところは変わらないのではないかと思います。ただ、年齢が高くても使いたいという要請がございます。そういう要請にも応えていかなければいけないということで、今回、年齢引上げということを考えております。  そのときに、制度の趣旨が変わるか変わらないかという御質問でございましたけれども、これは見方によるところがあるんだろうと思います。ともかく法的な親子関係をつくり出す、新しい法的な親子関係をつくり出し、古いものは切り捨てるということだけを目指すという方向に動いているのかというと、それはそうではないということで、従前同様、実の親子関係に近いものをつくりたいというところは維持されているのだろうと思います。  ただ、近いという場合に、御指摘のように、生まれたときから実親子のように暮らしていて、本当に近いというものから、いや、そうではないけれども、でも、やはり親子としての関係というのを当事者が感じているというところまで緩めていこうということで、その面では変わりましたけれども、根本のところは大きくは変わっていないというふうに認識しております。  以上でございます。
  27. 浜地雅一

    ○浜地委員 大村参考人、ありがとうございます。  もう一点だけちょっとお聞きをしたいんですが、今回、十五歳まで引き上げたということで、これはいわゆる代諾同意ができない範囲なので、非常に高い年齢まで引き上げられました。しかし、もう一点、御意見の中で、残された問題で未成年養子の問題があるとおっしゃいました。  基本的には、私、お話を聞いていまして、特別養子縁組で十五歳及び十八まで今回は上げますので、未成年養子の問題というのはこちらの方で解消されるのではないかというふうに思っておりますが、残された課題といいますか、今後の課題になると思いますけれども、どういった点が未成年養子の中で問題になっていくのか、開陳をしていただければと思います。
  28. 大村敦志

    大村参考人 御質問ありがとうございます。  まず、特別養子との関係で申しますと、子供家庭を与えるというために養子縁組というのを使おう、そのことはそうなんだろうと思いますけれども選択肢が特別養子だけでよろしいのかという問題があろうかと思います。本日、影山参考人からは、本当に特別養子がよろしいのかというような御意見の開陳がございましたし、伊藤参考人からは、これは選択肢がふえるということだという御指摘がございました。  特別養子制度をつくられて、必要に応じて使われることは望ましいのですけれども、その特別養子を使うという方々が、普通養子が使いにくいから、だから特別養子を使うのだということだとすると、普通養子の方をより使いやすい制度にするということによって、その意味選択肢をふやすということができるのではないかと思います。  細かいことは申しませんけれども、現在の普通養子ですと実方からの干渉が阻止できないというようなことが言われておりますけれども、そのような点につきまして、養親側の権限というのをより明確に示すというようなことが一方で必要だろうというふうに考えております。  他方特別養子の問題ではございませんけれども、いわゆる連れ子養子というのが非常にふえておりますので、これはこれとして単独の問題があるというふうに考えております。  以上でございます。
  29. 浜地雅一

    ○浜地委員 ありがとうございます。  次に、影山参考人にお聞きをしたいと思っています。  先ほどいただきました資料の中で、家庭養護が第一だ、なるべく家庭において育て、一度分離した親子であっても再び親のもとに戻そうというような方針であると、これは平成二十年のガイドラインに書いてあるところでございます。  ただ、今回、さまざまな児童虐待の報道がありまして、児童相談所が実際に御自宅に帰したがためにああいった事件が起きたわけでございますが、ああいった事件を受けて、このガイドラインの方針について、何か実際に職員の皆様方の心理に変化はないのかというのがまず一点でございます。  それともう一つが、要は、家庭に帰そうというものがありながら、今回は児童相談所の所長に申立て権が付与されるわけでございますので、そういったところとの、何といいましょうか、児童相談所としてはなるべく特別養子申立ての方がいいのかなということで、実の親子には、家庭に帰さないような、そういった動きになってしまうのではないかなというふうに危惧するところでございますが、その二点について御意見をいただければと思います。
  30. 影山孝

    影山参考人 御質問ありがとうございます。  一点目の件でございます。  確かに、非常に悲惨な事件が昨年から続いているところで、東京都も関与していた虐待事例でお子さんが亡くなるというようなことがございました。  ただ、そうであっても、私どもが扱っている児童虐待の件数というのは全国で十三万件ございます。その中で警察が事件として取り扱う件数、これは千百から千二百件でございます。ある意味で一%以下なんですね。  私ども、そういう中で、もちろん重篤な案件についてはもっときちっと見きわめをし、本当に家庭に帰せるのかどうか、その辺のアセスメントをきちっとやっていかなきゃいけないというのは重く受けとめているところでございます。  ただ、全ての児童虐待案件が、事件になる案件、あるいはそうだということではなくて、一方で、もっと家庭を支援することで子供がよりよく育っていく、あるいは育てやすくなるんだというような側面もやはり見ていく。そういう意味で、ケースによってはやはり親子再統合を常にやはり頭の中に入れていかなきゃいけないんだろうというふうに思っております。これが一点目でございます。  それから、二点目の御質問をいただいた、児童相談所長申立て権の件でございます。  今回、申立てをするということで、二段階論ということで、一段階目で、この子が特別養子として適当だということを児童相談所長が申し立てるわけでございますけれども、多分、活用できる例としては、親御さんが、今は同意をしているんだけれども非常に不安定な状態にある、いつ同意を撤回するかわからないし、そういう中で、今までですと、申立てをしても何か心配で、もしかすると最後にちゃぶ台返しでひっくり返されるんじゃないかというところを懸念したことについては、早期に申立てを確定することで活用できる。  あるいは、虐待又は悪意の遺棄ということで、この場合には親の同意がなくても特別養子ができるというふうになっているんですけれども、それをどの程度まで家庭裁判所判断していただけるかというのは、今まで審判が出るまでわからなかった。ただ、今回は、その段階を、早い段階で、こんな虐待があって、これはとても家庭には戻せないんだということで申立てをして、裁判所が、これはそうだね、やはりもう特別養子にするしかないと判断していただくことで、逆に特別養子に移せるケースがふえてくるんだろうというふうには考えております。  以上です。
  31. 浜地雅一

    ○浜地委員 ありがとうございます。  続きまして、伊藤由紀夫参考人にお聞きしたいと思います。調査官の御経験がございますので、ちょっとお聞きをしたいと思っています。  これまでも特別養子縁組のときに調査官の調査が入ったわけでございますが、当然、先ほどのお話にもつながると思いますけれども、六歳未満の子、主に一歳や二歳の子を調査をされてきたわけでございます。それが、思春期に達しようかという十五歳程度までのお子さんを今度調査することになるわけでございますので、やはりこれは調査官の調査手法やそういったものに何か大きく影響はどうしても与えてしまうのではないかと思っております。  今後、最高裁を通じて、この調査というものについて何か指針といいますか、こういったものに気をつけてやるべしというものがございましたら教えていただきたいのが一点。  あともう一点、先ほど、養護施設児童自立支援施設にも少年法のような個別処遇を行った方がいいということだったんです。年齢や資質に応じたということがございましたけれども、もう少しそれを具体的にお話しいただきますと助かります。
  32. 伊藤由紀夫

    伊藤参考人 ありがとうございます。  もし今回の制度があって、調査官としての調査で配慮すべき問題点というのは、先ほど参考人の御意見でもありました、九歳の壁若しくは十歳の壁というような問題というのは当然あるだろうと思います。  実務の経験からいうと、一遍に十五じゃなくて、例えば八歳までとか十歳までとかとだんだん延ばしてくれたらいろいろな蓄積ができるのになということも思うけれども、ただ、今の虐待等に関する情勢から考えると、やはり大幅に延ばしていくというのは必要なことだし、司法的な関与ということを裁判所もしていかなきゃいけないというふうに思っています。  野田の事件のことだと思います、虐待死。だから、今度の特別養子だけではなくて、親権の停止というようなことについてももうちょっと制度の改革があれば、これは個人的にはですが、仮に親権を停止できなかったとしても、申立てがあって家庭裁判所調査官家庭訪問できたら、十歳のお嬢さんの命を少しは守れたかもしれない、そういう思いはあります。  そういうような、子供年齢に応じてどう配慮するか、家庭事情に応じてどう配慮するかというのは本当にこれからの課題だというふうに思いますが、一番は、告知されている子なのか、全くされていない子なのかというようなことだと思います。  年齢が上になれば、恐らく事情がわかっていて、それについてはちゃんと説明ができている、受けているということで、ただ、それが曖昧であった場合に、どの段階で誰がそれを説明し、そのことを踏まえて子供の意思を確認するかというようなことについては非常に難しい問題があるだろう。申立てがあって、いきなり、あなたは今のお父さん、お母さんの実の子じゃないよみたいな話というのはやはり難しいわけで、やはりその点についても事前に、どの程度段階になっているかということを関係機関等からお話をいただければな、それが調査のポイントとしては大事なことだと思います。  もう一つの、児童福祉法の考えと少年法は違うんですが、鑑別所というのは、少年法ができて、昭和二十四年から動き始めて、昭和二十年代、昭和三十年ぐらいまで、鑑別所でどういう処遇をするかというのは激論がなされていたと思います。その中で、少年院が集団処遇になるんだから、その前に個別でやろう。だから、少年鑑別所は全て個室です、そこの中でということで。  いろいろなものは省略しますが、ここ十五年、集団生活が苦手な少年はたくさん出ています。だから、その意味では、鑑別所というのは非常に適応しやすいと言ったら変ですけれども、落ちついて考えられる、そういうことがあります。  その経験からいうと、一時保護所というのはとてもいろいろな子たちが共同で暮らしていますので、恐らく個室を設けるようになっています、そういうところもありますが、十分にそれが全国的に広がっているとは言えないということもあって、ぜひ個別で、子供たちが落ちつきやすいように。  それからもう一つの、養護施設児童自立支援施設については、やはりこれも難しいと思います。ただ、少年院は、旧の言葉でいえば、初等といって、十四、十五、それから、中等といっても、学業指導が主なのか職業補導が主なのかというようなことで、分類されているということがあります。ただ、やはり養護施設家庭にかわるべき新たな家庭をということで、寮父、寮母さんがいて、そこに多数の広い年齢層の子が集まって、それで家庭的な雰囲気を味わえれば、その理念は本当に大事なことだと思い、理想だと思います。  ただ、余りにもそこの数が多くなってしまって、もう少し小規模化していかなきゃならないんじゃないかとか、あとは、私は、やはり年齢に応じて、小学校の中学年まで、それから小学校の高学年、中学生といったような形で、年齢層を限定した形の養護施設ということができないのかなというようなことが私の思いでございます。
  33. 浜地雅一

    ○浜地委員 ありがとうございました。  大変残念ながら、もう時間になりまして、安藤参考人とサヘルさんにお聞きすることができません。大変申しわけございません。  しっかりお話を受けとめて、また法案審議に生かしたいと思っておりますので、大変にありがとうございました。  以上で終わります。
  34. 葉梨康弘

    葉梨委員長 以上で浜地雅一君の質疑は終了いたしました。  次に、山尾志桜里君。
  35. 山尾志桜里

    ○山尾委員 立憲民主党の山尾志桜里です。  本当に参考人の皆さん、ありがとうございます。やはり、こうやって参考人の皆さんがそれぞれの立場から、本当に子供たちのため、社会のためという思いでお話をしていただくと、法務委員会も、ふだんは余り見ていない方もいるかもしれないですけれども、ふだん以上に、本当に与党、野党を超えて、やはりいい制度をつくって、いい社会にしていこうという、そんな気持ちでこの国会審議ができることに心から感謝をしたいと思います。本当にありがとうございます。  まず、私、やはりサヘルさんに最初にお伺いをしたいと思います。二つお伺いをしたいと思います。  これまでサヘルさんがさまざまな場で発言をされてきた記事なんかも読んでいます。その中でサヘルさんは、いわゆる養母さんと一緒にイランから日本に来られて、日本に来たときは、だから、そういった形でお母さんといたわけですけれども、それでも、やはり外国から来た子供ということでつらい経験も学校等でされて、でも、そこで出会った給食のおばさんにも本当に温かく育まれてということを語っていらっしゃいます。そういう経験の中から二つお聞かせください。  一つは、この特別養子の日本の制度というのは、今現在、夫婦共同でないと子供養子に迎えることができません。まだ今後結論を出すのは難しいことかもしれませんけれども、お母さんと二人でこうやって日本で過ごしてきた経験を経て、その制度についての考え方や感じるところがあれば。  もう一点は、この法務委員会では、この前、外国人の方をもっと日本にふやしていこうという法案もやっていたんですね。言っていただいて、やはりそれは外国人の子供さんが日本にふえ、そして、必ずしも幸せではない状況で、もしかしたら親を求める環境にもなり得るということにもつながるんだと気づきました。  そこで、サヘルさん自身が日本の社会で感じてきた、やはり外国から来た子供として抱えてきた苦労、あるいはそこで見えた希望、そういうものもお話しいただければと思います。よろしくお願いします。
  36. サヘル・ローズ

    サヘル・ローズ参考人 御質問ありがとうございます。  まず一つ目なんですけれども、私は確かに母と二人で日本に来ました。でも、本音を言いますと、どこかで父親の存在は求めていました。やはり、例えば学校で運動会があったりだとか何かがあるたびに、周りでは家族、それはいわゆる父と母というものがあるので、子供としては、どこかでお母さんとお父さんというものが自分たちにとって家族のあり方というふうに、小さいときから、施設にいるときから、自分の中での家族構造というのが父と母でしたので、母に手を握っていただきながらも、どこかで、こっちで父親の手を握ることができないんだという寂しさもありましたし、母親が一人で私を育てるには相当苦労しました。きっと、父親という存在がいれば、もう一人、夫婦で子育てというものはすると思うので、もう一人家族がいればお母さんの負担も軽くなったんだろうなと思っております。  なので、可能であれば、やはり子供にとっても、そしてどちらの親にとっても、もう一人相手がいて、一人が大変なときに、では、こっちで面倒を見られるよという、お互い相談できる大人がやはり二人いるべきだと思うので、父と母というあり方は必要だというふうに思っています。  そして二つ目。私は正直大変でした、日本に来たとき。外国人ということで、特に国籍、当時、テレビをつければ、イラン人がこういうふうな悪いことをしました、いろいろなことをやりましたという報道がされるたびに、おまえもそうなんだろうと。私の事情を知らない、私はずっとオープンにはしていなかったので、周りの子たちは、普通の家族だと思っていたので、母子家庭で育った子なんだと。あそこでニュースに映った不法滞在者はおまえの親なんだろうと言われることなどたくさんありました。  でも、傷ついていきながらも、私は、日本に来ることができたからこそ、日本というのは多様性は持っていると思います。私を助けてくれたのは最終的に日本の方々なので、私は日本に来て、苦しいときも、大丈夫だと背中を押してくれたのは高校の国語の先生でしたし、私は今、外国人でありますが、正直、余り気にしていないです。母と同じように血のつながりはないですけれども、心でつながり合える。  そして、日本の中で助けてくださったのは多くの日本の方々でした。確かに、いじめられて、苦しくて、自殺もしようとしました。でも、こうやって生きていられるのも、自分を信じて、一番苦しいときに助けてくれた給食のおばちゃんでしたり、御飯がないときに御飯を与えてくれたスーパーのお母さんだったり、気づいたら全員日本の方々で私たち親子のことを背中を支えてくださったんです。  私は、これからもっともっと外国の方々は日本の中にふえていくと思います。肌の色が違ったり、国籍が違ったり、宗教が違ったり。日本の方はよく、私たちは宗教はないとおっしゃるんですけれども、それが逆に平和につながっているとも思います。宗教がないわけではなくて、皆さんの中では、教会にも行くし、お寺にも行くし、神社にも行く、いろいろなことを受け入れているのが自然な日本の文化だと思うので、ぜひ、そのあり方、いろいろな方々が日本を愛する、その日本のあり方は、なぜかというと、日本人は見返りを求めない優しさを持っている国民性なので、もっとそこは胸を張っていいと思います。  これからいろいろな国籍の方々がふえていく、子供が大変になると思うんです。なぜなら、ここはぜひ改善してほしいポイントがあります、外国から来る親御さんの場合、大概、子供は早く言葉を学びます。親は言葉はほとんど習得できません。子育てをするために一生懸命朝から晩まで仕事をしている外国人国籍の親御さんの方が大変な思いをしています。  ですので、そういう外国から来た大人に目を向けてください。そして、親御さんに何かのサポートをしてあげてください。どこに、どうしたら、どうやって区役所に行ったらいいかなどわかりません。なので、そういう外国から来た大人のための国づくり、地盤をつくってあげれば、そこで育つ子供もより生きやすくなるなとは思っています。  ありがとうございます。
  37. 山尾志桜里

    ○山尾委員 ありがとうございました。本当に大切な意見を今みんなでシェアできたと思います。ありがとうございます。  それでは、今度は少し制度的な話をしていきたいんですけれども影山参考人伊藤参考人大村参考人にこの順番でお伺いをしたいんですが、論点は、実親の同意を例外的に不要とする場合の要件というか、考え方についてです。  影山参考人のちょっとこれまでの別の資料なども見てまいりましたけれども、やはり原則的には実親の同意が必要、ただし、例外的に、虐待など養子となる者の利益を著しく害する場合には不要となる。ただ、なかなか難しいケースがあって、虐待とまでは言えないかもしれない、著しく利益を害するとまでは言えないかもしれない、だけれども、限りなく無関心に近いようなケースども実際にはあって、なかなか難しい事案だということをほかの資料で読みました。そういった難しい状況の実情を影山参考人から。  そして、伊藤参考人からは、これは同意を必要とするんだけれども、親の同意がないことをもって養子にできないということはどうなんだろうということで、それを審判の幅の中でどういった形でそしゃくしてきたのか、あるいはいくべきなのかということを伊藤参考人に。  そしてまた、大村参考人には、そういった要件の文言も含めて、今後、法制度として検討し得る余地があるのであれば、その余地等についてお聞かせいただければと思います。
  38. 影山孝

    影山参考人 御質問ありがとうございました。いろいろ見ていただいて、ありがとうございます。  実親の同意が必要ない例外ということで、先ほども申し上げたように、虐待又は悪意の遺棄とその他子供のというようなところで、私どもがやはり一番悩ましく感じるのは、実際にお預かりはしているんだけれども縁組には同意しない、だけれども、では、実際に面会とか何かに施設とかに来てくれるかというとなかなか来てくれない、やはりこういったケースが非常に悩ましい。それが本当に一カ月、二カ月であれば、これはいろいろな事情があるから仕方ないので、それが、それ以上の、例えば半年、一年というふうになってきたときに、やはり非常にそこが悩ましくて、このままいって、もしかしたら、この子は十八歳までお母さんあるいはお父さんも面会に来ないかもしれないよねと。  ただ、実際にそういう方々に対して、では、だったらもう別の親を探しましょうよ、特別養子同意してくださいと言うと、いや、自分はいずれは引き取るつもりだ、あるいは今はちょっと事情があってと、やはりこういったケースが一番悩ましいので、こういったケースについても、多分、今回の二段階論であれば、第一の段階で実親の同意がもらえない、ただしというところで、今後も実親の交流が望めないということで、場合によっては、そこで特別養子と比較という家庭裁判所審判を出していただける可能性があるかなというふうには考えております。
  39. 伊藤由紀夫

    伊藤参考人 御質問ありがとうございます。  とても難しいところだと思いますが、今、影山先生がおっしゃったところがやはり基本だというふうに思います。  あとは、調査官なので、申しわけありません、最終的に決めるのは裁判官の判断ということにもちろんなるんですが、やはりその申立てに至ったところまでの経緯ですね、やはりそこで、先ほど出ていましたけれども、実の親の子供に対する働きかけや接触の状態というようなものが、ほとんどネグレクトに近いというか、放置に近いというような場合とか、それから、子供さんにある種特別な病気があったりいろいろなことがあったとして、それを例えば養父母になる人たちが非常に懸命に支えている、そういう努力があって、そういうことについて実の親の方は全く知らなかったり無関心だったりというようなことがあった場合、やはりそれは子供の幸せを考えて養子縁組にした方がいいんじゃないかというふうに考えていく余地というのは私は生じてくると思いますし、そのことについて二段階の第一段階のところでやはり確認をしていく。  もちろん、そこで実の親御さんが、いや、やはり養子には出せません、これから頑張って子供のことを考えて私もやりますというようなことであれば、それはまたそこで子供のためにということの動きが出てくると思いますけれども、もしそこで整理ができるのであれば進めていくということは可能ではないかというふうに思います。  以上でございます。
  40. 大村敦志

    大村参考人 御質問どうもありがとうございます。  同意不要の場合の要件について、この先、これに何か修正等を加える余地があるかという御質問だったかと思います。  まず一つは、現在の要件は解釈の幅のある要件ですので、現状でかなりの問題については運用はできているのではないかというふうに認識をしています。  ただ、これから従来とは違うパターンのものが、先ほども申し上げましたけれども、出てまいりますので、そういうものが出てきたときに、果たしてこの文言でスムーズに話が進むのかというようなことはあると思いますが、そこは実務の蓄積を見た上で、もし文言に何か支障があるということであれば手直しをするということは考えられるのではないかと思います。  他方、文言に幅があるということは、判断がどうなるかがわかりにくいということでございまして、これにつきましては、先ほど来話題になっておりますけれども、二段階の審査で早目に要件を満たすかどうかについてはわかるように工夫をしているということかと思います。  以上でございます。
  41. 山尾志桜里

    ○山尾委員 ありがとうございました。  そしてもう一つ、これは安藤参考人を始め何人かの方から関連の御指摘があったんですけれども里親制度特別養子制度を社会の中でどういった形でよい役割分担をして支援の両立を図っていくかという、未来像を私たちもやはりつくっていく必要があるなということを今回感じました。  安藤参考人、そして、それぞれ実務ということで、影山参考人伊藤参考人にお伺いをいたしますけれども、その二つの制度の望ましい役割分担、そして、それをかなえていくための制度としての検討課題、それこそ、経済的支援を特別養子になる方、あるいは里親から特別養子に移行する方にも一定程度やはり必要なのではないかというような問題提起もありましたが、そういった点についてお三方から御意見をいただきたいと思います。
  42. 安藤茎子

    安藤参考人 御質問ありがとうございます。  御質問で里親養親の役割分担というお話がありましたが、里親制度ですと、一番短くて一時保護委託の一週間以上となっています。  私は居住区が豊島区ですが、豊島区には子供のショートステイ制度があり、一日からお預かりすることができます。ですので、子供のショートステイ、一日から一週間未満のお預かり、里親の一週間以上からのお預かり、そして特別養子縁組の恒久的な家庭での養育、この三つの役割分担があると私は思っています。  この子供のショートステイや養育里親のところにお子さん委託することで、一時的に親子分離があったとしても、その間、実親さんのところの支援が入ることによって、先ほど影山さんも申し上げていましたが、実親子家庭復帰率が高まると思っています。  私はこのような立場ですが、里親がふえればいい、養親がふえればいいという思いはもちろんありますけれども、それ以上に、地域子育て支援に力を入れて、実親家庭で暮らせる子供がふえるのが最も望ましいと思っています。そのために、地域の子育て資源として子供のショートステイ、里親制度をより充実して、一人でも多くの方が登録していただけることを望んでいます。  それにはやはり、この制度がもっとわかりやすいものであること、中には、里親の体験発表会に来られた方、手当が出ると知らなかった、出るんだったら私もできるかもしれない、また、子供のショートステイ制度を知らなかった方、一週間以上のお預かりはできないけれども、一日、二日、週末ぐらいだったらお預かりできるという方もいます。実際、私、一泊二日程度のお預かりを継続していることで、産後うつのお母さんが子供に向き合えるようになれたという経験もしています。そのため、それぞれの役割を連携して行える自治体になればいいなと願っています。  それと、やはりこの支援にはお金が欠かせない、予算が欠かせないことだと思っています。私が今必要と思っているものは、親への支援はあります、里親研修、養親研修、ショートステイをすれば、その基本基準の支援もあります。でも、委託された子供へのプログラムはありません。里子研修や養子研修のように、当事者たちが集まって受けられる研修もあればなおいいなと思っています。  専門家ではないのでちょっとうまくまとめられませんが、私の意見はここまでとなります。ありがとうございます。
  43. 影山孝

    影山参考人 質問ありがとうございます。  里親制度特別養子、それぞれの支援を今後どういうふうに考えていくかということで、里親制度あるいは養子縁組というと、すぐ児童相談所ということが前面に出されて、もちろん児童相談所がやることを否定することではございません。ただ、児童相談所虐待等で、もうかなりそちらが中心になりつつあるようなところもあり、実際に地域の中でもっと支援をしていくことが必要なのではないか。特に区市町村レベルで、やはり里親さんも地域で生活しているわけですから、そこにいる家庭として、それで一般の家庭以上の何らかのサポートが必要なんだというところで、やはり区市町村の支援を今後、より充実していくことが必要なのかなというふうに考えております。  以上です。
  44. 伊藤由紀夫

    伊藤参考人 ありがとうございます。  私のやったケースの体験からいうと、就学前の一番下の子、それから小学校の二年生の二番目の子、それから一番上が小学校六年生という兄弟がいて、虐待だという形で保護されて、一時保護。その場合に、やはり私、今の制度だと特別養子というような形ではいけない。それから、三人の子供を、やはり兄弟を分離せずに引き受ける里親さんというのがそのときはいないという形で、一時保護所で、それがかなり長期にわたっていたので落ちつきを欠くようになっていたというようなケースがあって、早くからなるべく家庭として落ちつける場所があったらなという、やはりそういう制度が必要じゃないかということがあって養育里親の拡充というようなことをお話しさせていただいたということ、そこには、当然経済的なバックも、それから地域的な支援ということが要ると思います。  ただ、もう一方で、あえて言えば、アメリカの場合はそういう養育里親はたくさんいるんです。ただ、難しい子だと、その養育里親をまた五軒も六軒も渡り歩くみたいな形、そういうようなものにもなってしまう。だから、全て何かで解決できるというわけじゃないんだということも踏まえた上で考えていかなければならないと思っております。  以上です。
  45. 山尾志桜里

    ○山尾委員 ありがとうございました。  本当に参考にさせていただきます。ありがとうございます。
  46. 葉梨康弘

    葉梨委員長 以上で山尾志桜里君の質疑は終了しました。  次に、源馬謙太郎君。
  47. 源馬謙太郎

    ○源馬委員 国民民主党の源馬謙太郎と申します。  参考人の皆様には、貴重なお時間と貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。大変、それぞれの参考人の皆様のお立場と御経験からの御示唆は本当に私たちの参考になりますので、大事にさせていただいて、これからも審議をしていきたいと思います。  まず、安藤参考人にお伺いしたいんです。  先ほどの山尾委員からの御質問と少し重なるところもあると思うんですが、安藤さん御自身が実際に里親になられて、そして養子縁組をされた御経験もあるという記事も拝見をしました。そうした御自身の御経験も踏まえて、日本において、里親制度とそれからこの特別養子縁組、普通養子縁組制度のあり方、今、ちょっと少し重なってしまいますが、どのようにして子供たちを養護していく形が一番最もバランスがとれて、いい組合せになっていくのかということと、どちらの御経験もおありで、それぞれの難しさ、お感じになったことをまずお聞かせをいただきたいと思います。
  48. 安藤茎子

    安藤参考人 御質問ありがとうございます。  私が里子と養子を育てた経験をここで話したと我が家の子供たちが聞くと、自分たちをネタにしゃべってくるなと後で叱られてしまいそうなんですが、私どものところでこれまで里子として委託した子は四人ですけれども家庭復帰などを含めまして、今も恒久的に関係のある子供は二名です。二人とも、二十八歳と二十ということで成人しておりますので、お話しさせていただきたいと思います。  まず、簡単な方から。里子と養子の難しさ、どういうものがあるかといいますと、例えば夜間外出で子供が補導された場合です。  補導件数がふえてくると、当然児相にも報告することになり、場合によっては、家庭が合っていないんじゃないかという質問をされることもあります。ただ単に、子供は、生みの親から離れて、場合によっては学校環境も生活環境もなくして里親家庭に来るわけですから、不安定になるのが当たり前で、それを外で発散しているだけということもあるんですけれども、でも、里親不調ではないかという疑いがかけられてしまいます。その点、養子であれば、補導されても何回も迎えに行けます。  この違いは非常に大きくて、同じように深夜徘回していても、里子には、危険だよということ以上に、措置変更されてもいいのということを言わなければいけません。これは子供にとって非常な不安定材料になります。そのため、もし養子縁組ができる環境の子であれば、年齢制限引上げになることで、里親委託から特別養子縁組に切りかわるチャンスがあるのであれば、それは子供にとって大きな利益だと思っています。  ただ、その反面、実親の思い出をたくさん抱えている子もいます。そのことにより、養子縁組をすることにためらってしまう子供もいます。ここで、ほかの参考人の方からのお話もありましたが、子供は意思表現が乏しいです。うまく自分の思いが伝えられません。だからこそ、養子縁組になるならないの決断に迫られても、答えられないことがあります。  我が家で、里子として関係を持っている子がいます。この子は十二歳のときに我が家に来ました。十五歳のときに養子縁組するかしないかという結論を迫られたら、恐らくしないという結論になっていたと思います。当然、十八歳、措置解除になるときに、養子縁組をするかしないかという話題が親子間で出ましたが、ここで養子縁組しないという結論を出してしまうと、一生この子とは縁組ができない状態でした。というのも、十八歳で、措置されて六年ぐらいで、自分の立ち位置をわかることはできません。先ほど申し上げましたが、里子研修みたいなことがあれば、もう少し自分の立ち位置、自分の今後のことを考える力があったかと思います。  この子には、大学進学しましたので、就職活動するときにもう一度縁組の話をしようということで、十八歳のときにはあえて結論を出しませんでした。結果として、二十五歳のときに普通養子縁組をしています。これは私にとって人生最大の御褒美でした。  特別養子縁組ができるのであれば、この子も特別養子縁組にしたい思いがある子です。それでも、今の法律が六歳までとなっているから特別養子縁組はできません。なので、十五歳からもっと引き上げてほしいという気持ちももちろんありますけれども、まずは、十五歳の子供にどこまでの判断力があるか。やはりこの子に対する伴走者、専門家が欲しいと思います。  なぜなら、児相職員は定期異動でかわってしまいます。子供養育してくれる親以外の伴走者がいません。でも、この親とどんなに仲よくても、親子げんかした次の日は、措置解除になってやると言ってきます。そういった子供の不安定な気持ちの中で、十五歳のときに判断をさせてしまうことに、私はやはり子供にとっての苦労があるんじゃないかなと思っています。  なので、里親制度特別養子縁組制度、普通養子縁組制度、それぞれの制度の中でのメリット、デメリットがありますが、やはり子供にとってどの制度を利用するのが一番いいのかということを、養親里親も含めて、チームで考えられるような状況をつくっていただくことを願っています。  まとまりがなくて申しわけございません。ありがとうございます。
  49. 源馬謙太郎

    ○源馬委員 ありがとうございます。大変参考になりました。  今のお話を受けて、次に、サヘル参考人に伺いたいと思うんです。  今、安藤参考人お話にもありましたとおり、十五歳のときに判断するということの難しさというのが、この制度にはやはりどうしてもあると思います。十五になって特別養子縁組になるときに、みずからそれを同意するということは、実の親と縁を切るという判断をすることになるわけで、もちろんサヘルさんの御経験とは全く違うことですけれども、そういった同じような御経験を、人生を歩まれてきたお知り合いの方もいらっしゃると思います。  その当事者であったお一人から見て、子供にそういう判断を迫ることの難しさと、それから、この制度では、一度特別養子縁組すると離縁ができない、親子関係を再び切ることができないというふうになっていますが、そのことの難しさについても、当事者であった子供側の立場としてどうお感じになるか、お聞かせをいただきたいと思います。
  50. サヘル・ローズ

    サヘル・ローズ参考人 御質問ありがとうございます。  今お話をいろいろと伺っていて、私たちは、親と何か切られたりとか法律的なこととかを施設の中で聞くよりか、その段階を考えるよりかは、自分たちが今、正直、どの選択をしたらいいかがわからないのが事実。かつ、多くの子たちや仲間たちと話していると、やはり、施設で育っていく子たちのほとんどの子は相談できる職員がいない、ちゃんと自分のこれから先どうしていったらいいのか話ができる大人がいないということが問題だと思うんですね。  先ほども御指摘がございましたけれども、本当にもし施設の中で、もっと職員さんのことの対応だったりとか教育をしてもらえることで、職員ではなく、その職員が仕事ではなくて、もちろん仕事で全員やっているわけではないですけれども、数をふやしたりとか、子供年齢に合わせていって、まだ制度が定まっていない中で、やはり施設の中で生活しなきゃいけない子もいるわけですよ。その子たちに、これから年齢を重ねていくたびに、どういったことが起きていて、次にあなたにはどういった道があるのかという案内人がいないんです。それが私は一番問題だと思っています。まず、その大人をふやしてあげてほしい。  そういう環境と、まず、その子たちの道を案内してくれる大人がいない。その子たちが次に当たるのが、大学に行くにしても、自分の社会に進むべき、施設はある一定の時期までしかいられない。もしどこにも身寄りがつくられなかった子たちは、これから社会に出ていったときに、変な言い方ですけれども、ガスの払い方もわからない、家の見つけ方もわからない、保証人になってくれる大人もいない、路頭に迷ってしまうわけですよね。そのために、まず施設の中で信頼できる大人をふやしていくことが、私は今の状態にはすごく必要なんじゃないかなと思っています。  ありがとうございます。
  51. 源馬謙太郎

    ○源馬委員 ありがとうございます。  次に、伊藤参考人影山参考人、お二人にお伺いしたいと思うんです。  これから児童相談所の役割というのはまた更に大きくなって、第一段階申立てもできるようになるということだと思いますが、私が持っている問題意識の中で、第一段階と第二段階を分けて審理がスムーズに進んでいくのではないかということはいいことだと思うんですけれども、仮に、第一段階申立てをしてそこは認められました、実の親から切り離して養子となるべきということは決まったけれども養親とのマッチングが論理的には後からでもいいわけで、そうなったときに、養子となるべきということは決まったけれども養親になるべき人がいないという状況は、まさに子供にとっては一番つらい状況なのではないかな。実の親はだめですよ、ただ、養親となってくれる人もいませんよという状態が一番つらいのかなというふうに感じています。  先ほど伊藤参考人お話の中にもありましたとおり、実親にも捨てられ、養父母にも見放された、これは今申し上げたケースと違いますが、これも伊藤参考人がおっしゃるいわゆる二重の喪失感や絶望感につながるのではないかな。自分には生きている価値や意味がない、まさにそういうふうに思ってしまうような状態にもなってしまうのではないかという懸念があるんですが、このあたりについての御意見をお二人から伺いたいと思います。
  52. 伊藤由紀夫

    伊藤参考人 御質問ありがとうございます。  先生御指摘のようなことがあったら大変だと本当に思います。  ただ、実情としては、第一段階審判をするときに、その子がどんなところで今まで生活してきたのか、それから、今後、当然、特別養子として申し立てられているわけですから、どういったところで養子として育っていくという予定なのかというようなことは、やはり、その時点で仮に施設で生活していたとしても、かなり丁寧に調査していくことになるんじゃないか。  実情としては、実際、里親さんのところで養育をされている、そこの里親さんとの間で特別養子にしたいというような形というのが多いのではないかというふうに思うので、もしそうでないとして、他に、実親は、ごめんなさい、実子としては要りません、養子で構いませんと言ってしまって、だけれども、その後、養親とのマッチングで傷を負ってしまうというような危険性がある場合というのは、私はやはり、かなり具体的に、児童相談所家庭裁判所の連携を強める中で、この子をどういう形で将来を見据えて監護していくのか、養育していくのかということを詰めていく、そういう作業を行って、第一審判を行うというような形になっていくんじゃないかなというふうに思います。
  53. 影山孝

    影山参考人 質問ありがとうございます。  第一段階申立てをして、なかなか養親とのマッチングの段階家庭が見つからない可能性があるのではないか、場合もあるのではないかという御質問をいただきました。  今、東京都で、未委託養子縁組を希望されている方が大体二百家庭ぐらいはあるんですね。それ以外に、もし候補者が見つからない場合には、民間あっせん団体とも連携しながら探すようにというようなことが示されているので、そういったところを活用しながら、何とか、第一段階審判が認められた子については探していきたいというふうに思っています。  ただ、今希望されている方々がほとんど、ゼロ歳、一歳、こういった方々を希望している里親さんなので、今後、十五歳に引き上げられるということで、その辺で、もう少し大きな子供も含めて、特別養子として受けていただける里親さんをどうやってふやしていくか、あるいは、その辺をどうやって皆さん、国民の方々に周知して、希望していただくか、この辺は非常に大きな課題かな。  今受けていただいているのが、ほとんどが、お子さんがいなくて、不妊治療もやったけれどもなかなかお子さんに恵まれない、それだったら、次の段階養子をもらおうかという方々が非常に多いので、やはりその辺はちょっと変えていく必要はあるかなというふうに考えております。
  54. 源馬謙太郎

    ○源馬委員 ありがとうございました。  大村参考人にもお伺いしたかったんですが、時間になってしまいまして、わざわざおいでいただいたのに大変申しわけございませんでした。  皆様の御意見をしっかりと反映して、これからも議論していきたいと思います。  ありがとうございました。
  55. 葉梨康弘

    葉梨委員長 以上で源馬謙太郎君の質疑は終了いたしました。  次に、藤野保史君。
  56. 藤野保史

    ○藤野委員 日本共産党の藤野保史です。  きょうは、参考人の皆様、本当に貴重な御意見、ありがとうございます。  伊藤参考人安藤参考人から、期せずといいますか、子供に伴走するという言葉をいただきました。サヘル参考人からは案内人という言葉もいただきまして、言葉は違うんですけれども、皆さん方それぞれがやはりそうした趣旨ではないかと思って御意見を伺っておりました。そういう制度を、やはり本法案にとどまらず、つくっていかなきゃいけないし、そういう社会をぜひつくっていきたいというふうに思っております。  それでは、質問したいと思います。まず、影山参考人伊藤参考人にお伺いいたします。  今、政府は、児童養護施設などの小規模化あるいは高機能化を図るということで進めているわけですけれども、そのもとで、児童相談所児童養護施設などの職員の皆さんは、伊藤参考人の言葉をかりれば、悪戦苦闘されながら仕事をされている。本当に頭の下がる思いであります。  その上でなんですが、やはり、子供たち一人一人の成長や発達、そして自立の段階に応じた、どういった処遇をしていくかということが大事だと思っております。その中に今回の特別養子もあると思いますし、里親もあると思います。  ただ、現状としましては、例えば、児童養護施設に二万五千人近い子供たちが入って暮らしているということで、お聞きしたいのは、いわゆる一時保護所やあるいは養護施設の改善を今後図っていくといった上で、どのようなことが必要だと感じていらっしゃるか、教えていただければと思います。
  57. 影山孝

    影山参考人 御質問ありがとうございます。  私も以前、児童相談所施設で実際に子供たちと生活した経験がございます。非常にとうとい、ある意味自分をかけて子供たちと向き合っていける仕事だろうと思っていますが、今の児童養護施設の先生方と話していると、なかなか経験が積み重なっていかない。もちろん夜勤もあります、それから、いろいろ難しい子供たちもふえている中で、定着率が非常に悪くて、常に二、三年で職員が異動していくような形になっています。  やはり施設の規模とか何かを、もちろん小規模化するのは私はとてもいいことだと思っていますけれども、ただ、小規模化すれば当然のことながら職員の人数も少なくなる。大きな施設であれば何十人という職員で、場合によってはみんなでバックアップしてやっていけるのが、小規模化することによって本当に少ない人数で対応しなきゃいけない。こういったところで、ましてやそこで経験年数が非常に短いということで、より困難になってまた職員がやめていく、こういうある意味で悪循環に陥っているのかな。  そういう意味では、やはり児童養護施設等で仕事をされている先生方の待遇改善であるとか、あるいはきちっとそういったものをバックアップできる、施設を逆に小さくするのであればバックアップできるような体制、やはりこの辺のところを充実を図っていかなければならないのかなというふうに考えております。
  58. 伊藤由紀夫

    伊藤参考人 影山先生の御指摘はごもっともだと私は思います。私も、だから、小規模化が全てというわけではないと思っていますし、もう一つ言えば、子供は、やはり余りにも同じような子たちだけ集められてというのも、それもどうなのかな。いろいろな子たちがいて、特に、例えば国籍を問わずいろいろな、障害を持っている子も一緒に、そういう環境というのも大事だということも踏まえた上で、ただ、やはり今ある形から少し試みることも必要じゃないかということを一つ思っているということと、私が思っているところは、やはり児童養護施設も、児童福祉法は基本的に地方公共団体になるんですね。ですから、施設によって、別のところの県の施設に移せるかとか、そういうことというのは実務の上でとても問題になるんです。だから、はっきり言うと、もとの家庭が神奈川県にあったとして、実親との距離をちょっととらせたいと思ったときには神奈川県外の施設子供を保護できないかというようなことを考えたときに、なかなか動けないんですね。  やはりそれについては、私は、児童相談所の位置づけについて国としてどういう形でバックアップできるか、職員、設備のことも含めて、連携がとりやすいような形、子供中心に考えて処置ができやすいような形でのバックアップの仕方というのをぜひ考えていただければというふうに思っています。
  59. 藤野保史

    ○藤野委員 あわせて、施設のことにつきましてサヘル・ローズ参考人にお伺いしたいんですが、先ほど、各地の施設を回っていただいているというお話もお聞かせいただきました。その中で、外国の、ルーツといいますか、そういう子供たちとお会いになったということも触れていただきました。  先ほどもお話に出ましたけれども、既に日本には二百七十万人を超える在留外国人の方がいらっしゃって、今般、それに加えまして外国人労働者もふえていく、そういう方向なんですけれども、片や学校に行っていない児童というものがこの間問題になりまして、先般も国会で質問したら、実態をつかんでいないということも明らかになっております。  そのもとで、やはり社会的養護を必要とする子供たち、あってはならないんですけれども、今後そうやってふえていく可能性も否定はできないというもとで、参考人からごらんになってですけれども、お感じになった現状といいますか、とりわけ施設における現状と、もっとこうしたらいいのになと思われた感想などあれば、教えていただきたいと思っております。
  60. サヘル・ローズ

    サヘル・ローズ参考人 御質問ありがとうございます。  私が感じることは、大人のケアだなと思っています。大人が正直、声を出せなくなっている、大人にストレスがかかってしまう。家で、ストレスがかかってしまった親がその感情をぶつけてしまう先が子供だったりするので、私は、まず大人のケアということをしなければいけないんじゃないかなというふうにとても思っているんです。  施設にいる子たちの中で、何人かと話をしていたりすると、お母さん、お父さんはすごく好き、本当は帰りたい、でも、帰ると自分のお父さんに暴力を受けてしまう、でも、お母さんは守ろうとするんだけれども、今度は自分にも手を上げられてしまうから、行き場がない。家族自体が地域から、ある意味つながっていなくて、コミュニケーションをうまく図っていない家族がそれぞれの地域にあって、その家族子供たちが今度被害を受けてしまって、自分の手元に置けない。でも、親も本当は子供に手を上げたいわけでもないし、自分子供を手放したい親なんていないんです、やはり。でも、どうしても社会から受けてしまった圧だったりとかストレスを自分子供にぶつけてしまう親がやはり多いんだなと、子供たちと話していると思います。  そして、施設の話で思うことがあります。これは言っていいかどうかわかりません。すごく頑張っている職員さんもいらっしゃる反面、どこかで職員さんにいろいろとストレスが重なってしまうんでしょうね。それが無意識のうちに、そこの中にいる子供たちによくないことが起きてしまっていることも正直あります。子供たちは、声を上げている子もいます。でも、それは、外に対して、今自分がこの施設で余り居心地がよくないと思っていて声を出していても、ばれてしまったときに守ってくれる外部の人間はいない。中から何とかしなきゃいけない、でも、声を上げることがおびえてできない子がいるのも事実なんです。  そのために、私は、一つ一つ児童養護施設の中で起きてしまっていることも調査することがすごく大切だというふうに今思っているんですね。正直、何人かの子たちと今話していて、助けてほしいと。でも、外部の私たちが中で今起きている出来事に口出しをしてしまうと、その子に今度何が起きるか、もっとひどいことが起きてしまうかもしれないという状態が今起きてしまっているので、今、施設の中で起きている出来事も私は調査をして、中でできてしまっているいろいろな悪循環を改善してもらわなければいけない問題が実はあるということも知っていただきたいなと思っています。  以上です。
  61. 藤野保史

    ○藤野委員 ありがとうございます。  安藤参考人にお伺いしたいんですが、日本では現状としては施設内処遇が多くなってしまっている。この原因といいますか、ちょっと抽象的で申しわけないんですけれども、今後そうした家庭養育をふやしていこうという場合の課題も含めて、お考えを教えていただければと思っております。
  62. 安藤茎子

    安藤参考人 御質問ありがとうございます。  よく言われることは、里親委託をしたらその子を一生育てるのではないかと思われている実親さんが多いということにあります。そのため、子供施設措置と里親措置、どちらにしますかと言われると、施設の方が自分のところにまた戻ってくる可能性が高いんだろうと思って施設措置を選ばれる方が多いように思っています。  あと、それともう一点、里親委託になりますと、家庭復帰する際に実親子交流が開始されますが、里親さんにもそれぞれ家庭の都合があるので日程調整をすることが非常に困難になりますが、施設の場合は、そこは里親家庭と比べるともう少しハードルが低く実親子交流ができます。なので、措置されるときに、家庭復帰率が高い子であれば施設処遇になってしまうことが高くなってしまうのも、ある意味、仕方がないことなのかなと思っています。  ただ、施設も今は小舎化してきて、施設の先生も人員配置の問題で非常に苦労されていて、せんだって、児童養護施設の職員の方とお話ししましたが、やはり家庭復帰を迎える子に対しては、家庭復帰ができない予定でいる子もいる中で、交流をすることに厳しさを感じるとも言っています。  ですので、どちらがいいかとなると、やはり一人一人丁寧に家庭復帰の助走ができるのであれば、里親養育の方がいいように感じております。  以上です。
  63. 藤野保史

    ○藤野委員 ありがとうございます。  大村参考人にお伺いしたいんですが、本法案とは離れてしまうことになるのでちょっと恐縮なんですが、今、多様な家族のあり方というのが広がっておりまして、背景には多様な性のあり方もあると思っております。先ほどサヘル・ローズさんからは、本音としては父親が欲しかったというお話もありますし、日本の多くの社会的な認識というものもあると思います。  他方で、今、野党共同でLGBTの差別解消法案も出しておりますし、全国の自治体ではパートナーシップ条例というのも広がっているというもとで、今回、法制審議会の中で、こうした新しい家族のあり方を含めた議論というのがどのように行われたのか、あるいは先生のお考えなどもあれば、ぜひ教えていただければと思います。
  64. 大村敦志

    大村参考人 御質問ありがとうございます。  御指摘の家族の多様化というのは、これは大きな流れだろうというふうに思っております。法制審議会部会や、あるいはそれに先立つ研究会等では、折々に触れて、それぞれの制度の検討との関係で話題になることは今までもございました。これからもあるだろうというふうに思います。  ただ、今回の問題につきましては、先ほども申し上げましたけれども、緊急を要する問題に対応するということで、そういう問題については正面からは取り上げておりません。  私の考えということでございますけれども、パートナーシップですとか同性婚というような問題は、いろいろな形で日本での認知度というのも次第に高まってきているかと思います。法案のお話を今伺いましたけれども、訴訟等もあちこちでさまざまなタイプのものが今行われていますので、そういうものの結果などを見て、法的にどのように対応するということが考えられ、かつ、どのような選択肢が望ましいのかということについて考えていくことになるのではないかと思っております。
  65. 藤野保史

    ○藤野委員 最後に、伊藤参考人にお伺いしたいと思うんですが、ちょっと時間の関係で、二つまとめて。  一点は、子供手続代理人という御指摘をいただきました。最高裁の事務局によると、二〇一三年から昨年十二月までの六年間で選任数は九十七人にとどまっているといいますか、そうなっている。これについてお聞かせいただきたいのと、あと、家裁の調査官、書記官の増員という御指摘もいただきました。この二点についてお考えを教えていただければと思います。
  66. 伊藤由紀夫

    伊藤参考人 ありがとうございます。  手続代理人については、先生たちよく御存じだとは思うんですが、基本的には、夫婦の離婚調停といった中で、親権について綱引きをしているというか、激しく対立している、面会交流について激しく対立、そういうときに、それぞれのお父さん、お母さんには代理人の弁護士の先生はいますが、子供に沿った形、子供立場を考えて子供に代理人をつけるという形で、ただ、これは、現行は家裁の裁判官の裁量の中でということもあるんですが、実際のことを言うと、対立しているお父さん、お母さんがその弁護士費用を分担するというようなことで、合意があったらできるみたいな形が非常に多いんですね。でも、そうだとすると、既に対立しているし、弁護士さんも安くはないので、更にというようなことがまず起こらないんです。  しかし、紛争性が高かったり子供の緊急性が非常に差し迫っている場合、私はやはり、国として弁護士さんをちゃんとつける、子供のための弁護士さんをつけるというようなことは必要じゃないかというふうに思って、ぜひその辺についての緩和策だったり改善策を。  今度の件に関しましても、先ほどサヘル先生からお話がありましたけれども、継続して話し相手になれる、そういうことも意識した形で弁護士の先生たちにも子供の問題についてかかわってもらえたらというようなことも思いまして、手続代理人の話をさせていただきました。  あともう一つは、家裁調査官、千六百名弱ほどです。成年後見制度が始まるといった二〇〇〇年前後のところで、毎年五名ずつ、五年間で二十五名ふえた。それ以外はほとんどふえていません。  少年事件は本当に減っていますので、少年事件担当という調査官は減っていると思いますが、今、やはり離婚に伴う面会交流の事件とか、すごく難しくなっています。お父さんが、要するに、子育ては母親の問題だろうというようなことではなくて、子育てにやはり自分もかかわりたい、離婚後もかかわりたい、そういうことは当然ふえているわけで、その紛争性が高まっていて、そういうことについて、では具体的にどうやって面会交流をやるか。試行的な面会交流と言っていますけれども家庭裁判所子供に来てもらって試みの面会をするというようなこととか、そういうことというのは、やはりとても手がかかることなんですね。  子供の保護とか育成ということを考えるとすれば、やはり司法の場では家庭裁判所調査官がその担当になると思いますので、予算的には難しいことがあるとしても、ぜひその増員等について考えていただければというふうに思って述べました。
  67. 藤野保史

    ○藤野委員 大変ありがとうございました。  質問を終わります。
  68. 葉梨康弘

    葉梨委員長 以上で藤野保史君の質疑は終了しました。  次に、串田誠一君。
  69. 串田誠一

    ○串田委員 日本維新の会の串田でございます。  参考人の皆様、本当にどうもありがとうございます。  以前、日本の国内ではやった映画の中に「ALWAYS 三丁目の夕日」というのがありまして、その中で、子供二人が都電に乗って、一人がお母さんを捜しに行くシーンがございました。どんなことがあっても自分の父親、母親を知りたいという子供の気持ちというのはあるんだろうなというふうに思います。一九八九年にでき上がりました子どもの権利条約においても、七条で、子供は父母を知る権利を定めております。  そういう意味で、特別養子制度というようなことがあった場合、これを必ずしも徹底する必要はないだろうというのも私も思うんですが、先ほど浜地委員からも、これはかなり制度趣旨が変わったんじゃないかというような質問もありました。  かつての特別養子制度は、ゼロ歳から一歳とか、そういったのが非常に多いという中で、赤ちゃんの時点養子として受け入れたときに、後になって、大人になって、実は、実の父親、母親じゃないんだよということを知られるショックというよりは、実の親と同じように、戸籍上もほとんどわからないような状況養子縁組をするということは必要なんじゃないか。そういうときに、子供の出自というものをあえて告知する必要はないんじゃないかと私も思っているんです。  今回は、その子供年齢が十五歳未満ということで、かなり物事がわかる年齢を、特別養子制度として、親子の縁を切る。先ほど質問の中にも、親子の縁だけじゃなくて、祖父、祖母の、そして兄弟姉妹の縁も切る、そういう状況になるわけです。  そうなったときに、要するに子供の考え、気持ちというものも大事なんじゃないかなというふうに思うんですが、今回の法改正は、家事事件手続法の百六十四条の二の第六項第一号で、「特別養子適格の確認審判をする場合には、次に掲げる者の陳述を聴かなければならない。」という中で、第一号に「養子となるべき者」と書いてあるんですが、(十五歳以上のものに限る。)というようになっているんですね。  一方、民法改正は一条だけ改正がなされています。八百十七条の五だけが改正されて、あとは従来どおりということですので、八百十七条の八によりますと、特別養子縁組成立するには、「養親となる者が養子となる者を六箇月以上の期間監護した状況を考慮しなければならない。」と。  そういったときに、十五歳未満といっても中学生が入る、特別養親のところで暮らすようになる、そのときに、子供として、虐待というか、精神的な虐待も含まれる、とてもつらい、もとの親がいいというような思いを持つ場合もあると思うんですが、この子供の陳述を受ける機会法律上はないんじゃないかというふうに思うんです。  そういうときに、この特別養子制度を採用するに当たっては、子供意見を聞くときというのが、何歳ぐらい以上であれば子供意見を尊重すべきであるかということを、この条文どおり、十五歳以上じゃない限り子供意見は聞かなくていいという考えもあるかもしれないし、もしかしたら、大村先生法制審議会でもずっと携わっているので、私の法律の読み方が間違っているのかもしれませんが、条文上からはそういうふうに読めるんですけれども、皆さんの御意見子供意見というものはどの程度聞く機会が与えられた方がいいのか、それは何歳以上なのか。  例えば、ゼロ歳とか一歳に聞けと言われてもそれは無理だから、特別養子制度は聞かなくていいというのはわかるんですけれども、十五歳未満となれば、子供意見というものも聞く機会があってもいいんじゃないか、尊重されてもいいんじゃないかというふうに思うんですが、各参考人の皆様に意見をお聞かせいただきたいと思います。     〔委員長退席、石原(宏)委員長代理着席〕
  70. 大村敦志

    大村参考人 御質問ありがとうございます。  全員の意見をということですので、手短に申し述べさせていただきます。  御指摘のように、民法上は十五歳というところで線を引きました。このときに、十二歳以上についても民法上も何か対応すべきではないかということは議論はされました。しかし、それにつきましては手続の方で従来も対応しているということで、そちらに委ねるということにいたしました。もっとちっちゃい子については事実上は聞いているというようなことをしていると思いますので、グラデーションがあるんだろう。  十五歳以上はそれを法的なものとして、要件として聞かなければいけない、十五歳から例えば十二歳とかというところは手続的なものとして必要だ、あとは事実上必要だということで、また聞き方も年齢に応じてさまざまな工夫が必要だろうということを審議会の場では確認をしているところでございます。
  71. 影山孝

    影山参考人 御質問ありがとうございます。  十五歳以上は当然のことながらとして、十五歳未満の場合ですけれども、先ほど申し上げたように、やはり聞かれたときにどれだけ子供が本音がしゃべれるかなというようなところと、あとは、制度の説明を誰が、どこで、どういうふうにするのかなと。  ある意味で、今度、新しい養親さんが親になるよというところは割と簡単に説明ができるのかもしれないけれども、実親との関係を切るというのはどういうことなのか、法律上はもう切れますよ、あるいは兄弟親族も含めて切れますよと言われても、十五歳未満お子さんがどこまでわかるかなと。では、おじいちゃん、おばあちゃんにもう会えないのといって、会える会えないは法律の問題ではございませんので、会えることももちろんあるかもしれない、あるいは会わせたくないということもあるかもしれない。その辺の説明を誰かがきちっと今後担っていくことが必要かなというふうに考えております。
  72. 安藤茎子

    安藤参考人 私もこの問題は非常にデリケートな部分を秘めていることが多いと思います。  たとえ十五歳未満であったとしても、養育家庭で一歳、二歳から育ってきた子と、十歳を超えてから来た子とであれば、自分の置かれている立場の理解力も違ってきますし、本当に小さい子であれば、今の現状をなくすことの方が怖いので、子供は何でも今のままがいい、今のままがいいという返事をしてしまうところがあって、本音とか自分の立ち位置を理解してでの返事ができないものと思っています。  そのためには、やはり、最初の意見のときに申し上げましたが、まず調査官が養育者の面接をした際に、子供に対して真実告知をしているかどうか、ここがまずキーポイントになると思います。告知をしているかどうかということで、自分にはもう一組の親がいるということを理解した上での縁組になるからです。  そのため、私は、やはり幼少期、幼児、乳児さんに聞くことは非常に難しいことかと思いますが、小学生以上であれば、障害や発達の状況によっては聞いてもいいのではないかと思っていますが、それが、養子縁組をするよということになると、やはり持っているものをなくすという不安からためらってしまう子供が多いのではないかと思っています。  そのためには、明確な回答になりませんが、やはり子供に対する伴走者、支援者がまずは必要なのではないかと思います。  以上です。
  73. 伊藤由紀夫

    伊藤参考人 審判において、法的なということでは、やはり十五歳以上は必須ということだと思います。  実務を担当した者としては、では、十五歳未満については何もしなくていいか、そんなことは絶対なくて、やはり子供の意思がある程度はっきりしていれば調査で確認をする。それから、意思というほどじゃないとしても、意向みたいなことについては調査で確認し、それを裁判官の審判で生かしていただくということだと思いますし、経験的には、やはり十歳前後から、十歳以上であれば、私は、ある程度説明をし、その上で考えを聞くということは大事じゃないかなというふうに思っています。  ただ一方で、例えば、離婚紛争の中にある小学校低学年の子にお父さんとお母さんとどっちの方がいいと聞く、これは私は調査官としてはやってはいけないことだと思っています。やらなきゃいけないときもあるかもしれない。だけれども、その前にやるべきことはたくさんある。どこで、どっちの方が安心して暮らせるのか、そういうことについて十分、当の子供養子となる人との間の信頼関係をつくった上でこれから先のことを意見を聞いていくというような形になるのかなと思っています。  以上です。
  74. サヘル・ローズ

    サヘル・ローズ参考人 私は逆に、今、皆さんのお話を聞いていて、ずっと考えていました。どんな言葉を言われて、どの年齢で、どう感じたかなと記憶を呼び覚ましていたときに、母が私を引き取ってくださったのが七歳なんですけれども、その七歳のときから、きめ細かく、一年置きに、時間があるたびに、お母さんが、私のことの生い立ちもそうですけれども、やはりどこかに親族は絶対いるので、ゼロではないと思うので、もし捜したかったら協力するよと、私のルーツを捜したかった場合、家族は一緒に協力するよと、年齢の節目節目でお母さんは常に私には聞いてくれていたんですね。  先ほどあったように、本当に子供というのはどう答えたらいいかわからないので、でも、何か悲しませちゃいけないし、今、それで首を縦に振ってしまったらこの人は傷ついてしまうかもしれないからと、のみ込んだことも何度かありました。  でも、母親が、私が中学生のときに、やはり何度も同じ質問をしたんですね。私が今はお母さんをしているけれども、もしどこかで親族を捜したかったらお母さんは協力するし、欲しいでしょう、自分家族、捜したいでしょうと聞かれるたびに、でもそれは、私のかさぶたを何度も剥がす必要はないんじゃないかなと精神的な部分で苦しかった時期も正直あります。なので、正解は本当に当事者としてはわからないです。  ただ、常に聞いてあげること、子供によっては、もしかしたら自分のタイミングでそれを受け入れる子はそれぞれ絶対に違うので、伏せていい問題ではないので、常に聞いてあげて、選択肢を与えることは必要だと思います。子供自分のタイミングで、その子の性格で、私はこう思うという子は、子供自分の言葉でちゃんと発言できるので、その選択肢を与え続けることは必要だというふうには思います。  失礼します。     〔石原(宏)委員長代理退席、委員長着席〕
  75. 串田誠一

    ○串田委員 次に、大村参考人にちょっとお聞きをしたいんですが、先ほど、民法改正というのは一条だけで、あとはずっとほかの条文は生きているということで、この特別養子制度離縁する規定も八百十七条の十に置かれていますね。これ以外は特別養子制度離縁ができないとなっている中で、養親による虐待や悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する場合には離縁をすることができると。  この申出をする者の中に養子が入っていますよね、条文上は。そうすると、これで離縁になるとどうなるかというと、実親の親子関係が回復するとなっているんですね。  そうなると、実親の関係が回復するということになると、いきなり実親にまた戻る状況であるとするならば、六カ月間の期間の中で虐待があったとすれば、子供としては本当は行きたくなかったんだと言っても、それを聞く条文が置かれていない。だけれども、耐えられないといって相談したら、あなたは離縁をする手続があるよと。  離縁をする手続があるからもとの親に戻れるんだということであるなら、最初から、手続を六カ月後に確定するときには、子供の陳述を聞いておけば、実はこういうことをされていたから私は行きたくないんですよといって、こんな離縁手続をしないで済むんじゃないかと思うんです。  あとまた、実親の親子関係が今度は回復するということになれば、実親との間の面会交流も本来はしておかないと、いきなり今度戻るというのもおかしいなと思うんですが、その点について審議会で何か協議はなかったんでしょうか。
  76. 大村敦志

    大村参考人 ありがとうございます。  今の点については、先ほども申し上げましたとおり、まず、数の問題から申しますと、特別養子縁組の解消というのが、今、正確な数字を手元に持っておりませんけれども、やはりごく少数にとどまっているということで、今回の改正のプロセスの中で、そこを改めてほしいという要請が強い形では出ておりません。そういうことで、その問題について正面からまとまった形で検討するということはいたしておりません。  先ほどの御質問の内容についてなんですけれども、数が少ないということを申し上げましたけれども、これはやはり、最初につくったときには、基本的には実親子と同じ関係をつくるということで、解消は認めないというのが原則だというふうに考えていた。そうではあるけれども、例外的にやむを得ない場合にだけ、実方の親の方の環境が整えば、それで戻せることにしようということでありまして、非常事態に関する逃げ口みたいなものとしてつくられたものでありますので、これをいろいろな形でつくり込んで利用していくということを必ずしも考えていなかった、そういうものだというふうに認識しております。
  77. 串田誠一

    ○串田委員 大変参考になりました。どうもありがとうございました。
  78. 葉梨康弘

    葉梨委員長 以上で串田誠一君の質疑は終了いたしました。  次に、井出庸生君。
  79. 井出庸生

    ○井出委員 井出庸生と申します。長野県の出身でございます。  きょうは、参考人の皆さん、本当にありがとうございました。  私、法務委員会に五年近くずっといるんですが、恐らく長く記憶に残る参考人質疑となる、そんな冒頭の陳述を五名の方からいただいたと思います。  私、大変この分野は不勉強でして、参考人の方をどなたかお呼びしようと考えたときに、地元で家庭養護を進めているキッズドリームというNPO法人が軽井沢にございまして、そちらの方に少し相談して、きょう傍聴にも来てくださっているんですが、各党そういった御縁があって、きょう、五人のすばらしい参考人の皆さんがここに一堂に会されたことに、各党にも感謝を申し上げたいと思います。  早速質問に入ります。  大村先生にまずお尋ねしたいんですが、年齢引上げで、ほかの先生方から九歳の壁というような話もございましたし、できるだけ早いうちに、お母さん、ハグをしてくれる人というような議論もございました。法制審の中で、年齢引上げについての運用面、当然、もう改めて申し上げるまでもありませんが、年齢が高くなれば、いろいろな要素があって、今までの積み重ねがないわけですから、ちょっと難しいということは容易に想像できるのかなと思うんですが、運用面について何か御議論ですとか、法務省に対しての注文とか、法務省がこんなことを言っていたとか、そのあたりをちょっと議論があれば紹介いただきたいと思います。
  80. 大村敦志

    大村参考人 御質問ありがとうございました。  この新しい制度について、御指摘があったように、今まで想定しなかったような年齢お子さん方が対象になることがございますので、いろいろわからないことが出てくるということで、十分に各方面で対応について考える必要があるということについては何度も議論したところでございます。  それから、これが御質問に答えることになるかどうかわからないんですけれども運用ということで法制審委員から出ていたことの一つといたしまして、確かに年齢は引き上げてほしい、ただ、では実際に高い年齢でどのくらい縁組がなされるかというと、年齢を引き上げてほしいというふうに御希望になっている方々からも、実際にはそう高いところで縁組をするということは例外的なことだろうと。しかし、それでもやはり例外がないわけではないので、それについて道を開いておいていただきたいということでしたので、繰り返しになりますけれども、十五歳まで引き上げたからということで、十五歳に近いところまでたくさんのものが出てくるということではないということを前提に考えているというふうに思います。
  81. 井出庸生

    ○井出委員 ありがとうございます。  あと、もう一つ大村さんに伺いますが、影山先生のお話の中で養親子供との年齢差の話があったかと思いますが、そのあたりは法制審で何かその議論があったかどうか、ちょっと教えてください。
  82. 大村敦志

    大村参考人 ありがとうございます。  年齢差につきましては、最初の段階から、年齢差要件を設けるべきかどうかということは検討課題として挙げてございました。  外国の例を見ても年齢差要件を設けているところがございますので、今回、このように子供年齢を上げるということで、親の方についても年齢差の要件を設けるべきではないかということはかなり検討いたしました。  ただ、これも実情について申し上げますと、やはり結構高い年齢の方が養親になっていることが多いのではないかということで、先ほど御指摘ありましたけれども、理屈の上では三歳差とかいうことはあり得るわけですけれども、実際、そういうことはほとんど起こらないだろうという見通しがございました。その上で、どのぐらいの年齢親子として適切なのかということについては、裁判所の御判断に委ねるということでよろしいのではないかというようなことが検討されました。  余計なことを一言申し上げますと、年齢が高い方が多くて、高過ぎるという人もいるのではないかというような御指摘もありまして、下を設けると上も設ける必要があるのではないかというようなことも議論されまして、そうなりますと、裁判所にお任せするしかないかなというようなことに落ちついたという次第でございます。
  83. 井出庸生

    ○井出委員 ありがとうございます。  本当に最終的にはケース・バイ・ケースだと思いますので、そういう御議論だったのかなと思います。  次に、影山先生にお伺いしたいんですが、子供の出自を知る権利のところですね。養子縁組里親委託ともに真実告知を推奨している、ただ、その一方で、国の指針では、養子縁組等は記録の永年保存、他の社会的養護事例は二十五歳までの保存だというお話がございました。  他の社会的養護事例は二十五歳まで、記録は二十五歳までとっておけばいい、その点についてはやはり思い切った改善が必要、永年保存というものが必要だということはお考えですか。
  84. 影山孝

    影山参考人 御質問ありがとうございました。  やはり、先ほどもちょっと申し上げたように、もちろん養子縁組は必ず必要だと思っておりますし、ただ、実際に、養子縁組ではなくても、施設で長く、あるいは養育里親で長く生活をされてきた方もいて、そういう方々が本当に自分の過去のことを知りたいとなったときに、二十五歳で今は基本的にないということになってしまうので、これはどうなのかなと、私はやはり残しておくことが必要だろうと。  ただ、当然のことながら、どこまで開示できるかというのは、本人の情報だけではなくて親の情報とかそういったことも当然含まれますので、ここは慎重に検討しなきゃならないだろうと。  ただ、慎重に検討する間にも、場合によってはどんどん廃棄されている可能性もあるので、いざ、きちっと整理ができました、でも、もう既に二十五を過ぎた人の情報はありませんから、これはこれからの問題ですよというのでは、実際に本当に知りたい方々がやはり知れない状態ができてしまうので、やはり何らかの形で、検討を始めるときには、もう少なくとも当面は残しておくというような体制を組む必要があるだろうと考えております。
  85. 井出庸生

    ○井出委員 ありがとうございます。  次に、サヘルさんに伺いたいんですが、事前にサヘルさんの発言されているものを少し見させていただいて、イランの施設にいらっしゃったときに、お母さんと会われたときに第一声でお母さんと呼んだんですと。私たちにとっては、施設に来てくれる人たちが母親みたいな存在になると。施設に入った仲間と一緒に、日々来る人たちに自分たちの親になってくださいと必死に訴えていたのを今でも覚えていますと。  私も養護施設にお邪魔したことがあるんですが、そんなに頻繁に行っているわけではなくて、初めてお邪魔したときに、お話を政治家として伺いたいということで、お子さんのいない時間帯にお邪魔したんですね。その分、職員の皆さんのお話はじっくり聞けたのかなとも思うんですけれどもお子さんのいるその施設の姿というものを見るべきだったなという思いもございます。  あともう一つは、私の知っている養護施設は、地域の活動ですとかには大変積極的に参加をしてくださっているんですが、ただ、やはり、ではそこにお子さんがいるかというとなかなか難しい問題があって、これは私の私見なんですが、当然、その施設に入っているお子さんに対して、地域の人間も理解もあるし、配慮もしているつもりなんですけれども、ただ一方で、少しそっとしておくみたいな、それがかえって施設と地域との交流を、そっとしておくというのがマイナスに働いてしまっているんじゃないかなという思いが少しありまして、イランでいらっしゃった施設と、それと、今、日本の施設をいろいろ回っていただいて、施設のオープン性といいますか、開かれたあり方みたいなところについてのちょっとお考えを教えてください。
  86. サヘル・ローズ

    サヘル・ローズ参考人 御質問ありがとうございます。  私がいたイランの施設では、子供たちは、来た大人が自分たちの親になってくれるかもしれないというのを小さいときからもう理解をしていたんですね。なので、その日になると、その日だけ特別にきれいな洋服を私たちは着させてもらって、髪の毛とかを結わえて、大人が来たらにこにこして笑うんだよということをずっと言われていたので、大人が来るたびに、ああ、今チャンスをつかまないと次がないかもしれないという必死の思いで、来た大人に対して、みんなにこにこして笑っていました。  ただ、本当に残念だなと大人になって思うのは、ゼロ歳から五歳ぐらいまでは本当に引取り手はあらわれやすいんです。なぜなら、やはりその子の心のケアのことも考えて、なるべく小さいときから引き取って、徐々に段階を見て真実告知をするという段階ができるんですが、五歳以上にどんどんなっていきますと、どうして自分がそこにいるのか、子供によっては素直にやはり施設員の方に聞いてしまうんですね。そうすると、やはり自分はもしかしたら要らなかった子なのかもしれないと、子供はやはり状況がまだ全てを理解できるわけではないので、ネガティブな方に捉えてしまう子たちもいるんです。  なので、みんな小さいときから、来た大人はみんなあなたたちの味方になるから、親になってくれるかもしれないから頑張ってねと聞かされていたので、私たちは必死ににこにこしていました。  日本の場合はまた状況はちょっと違うんですけれども、日本の場合は本当にびっくりするぐらい逆でした。イランの場合は、今も行くと、子供たちは寄ってきてくれて、お姉ちゃん、お姉ちゃんと、帰り際には写真を渡してくれて、後ろにはメッセージが書いてあって、お母さんになってと、イランの子たちだったり、カンボジア、インドネシアでも、いろいろな施設、外国の方では、子供たちは必死で親になってと訴えるんです。日本の場合は真逆でしたね。子供たちは自分たちが置かれている状況をよく理解しています、正直。なので、言葉にはしないです。目で訴えてくる子がほとんどだなと思います。  そして、よく施設の場合、本当に、初めて行かれる方々は、ちょっとやはり暴力的な子がいたりとか、力がやたらと強いなと、やはりぶつかってくる子がいるんですね。でも、その子たちは暴力的になろうと思っているわけではなくて、ちょっとした、グーでぶってしまったりとか、お姉ちゃんを見る目がにらんでいる、あれは決して敵対視しているわけではなくて、でも、どうせ僕たちは見てもらっていないんでしょう、どうせ、また次回来てねと言っても来ないんでしょうと、どこかでもう希望を失っている子たちの目だったんです。日本は今その現状の子が多いんです。その子たちを変えてあげることが必要。私も最初につくばの施設に行ったときに、また来るねと言ったら、うそだね、みんなまた来ると言って来ないんだよと。  そういう施設でも一生懸命地域とのコミュニティー、コミットをしようと思って、いろいろお祭りを開催したりとか、芸人さんを呼んでほしいとか、著名人の方々が来て、その方々が来るおかげで地域の人が遊びに来てくれて、その施設の子たちがやっている屋台で私たちの状況を見てもらえれば、施設という名前だけれども、この子たちは普通の子たちなんだ、同じように夢を持っていて、同じように家族を求めている普通の地域の社会の子供だということを訴えようと、施設施設なりの努力はしています。それを感じました。  なので、地域の方々も、そこに触れちゃいけないとか、何か聞いちゃいけないのかなではなく、まず一歩を踏み入れてみてほしい。一歩、現状を聞いて、子供たちに会いに行ってほしいなと心から願っています。  ありがとうございました。
  87. 井出庸生

    ○井出委員 ありがとうございます。  もう残り時間がありませんので、影山先生と安藤先生に簡潔に伺いたいんですが、児童相談所と、それからまた、そういう養子縁組を進めていこうという人たちと、それから養護施設、それぞれ皆さん一生懸命取り組んでいただいていると思うんですが、実の親とのおつき合いがあったりですとか、現状として、里親委託が日本は進んでいないという現状もあり、かつまた、施設の方では施設の方として、一人一人だっこというわけにはいかないけれども、責任を持ってやっているというような、そういう職業意識というものもあると思うんです。  そこの連携が、本当に少し間違えると、それぞれがそれぞれの思いに閉じこもってしまって、それが逆に子供の利益のためにならないんじゃないかなと思うんですけれども、その三者の連携のあり方について一言ずつお願いしたいと思います。
  88. 影山孝

    影山参考人 御質問ありがとうございました。  先生おっしゃるように、やはりそれぞれの機関がきちっと連携していかなければ子供たちの幸せは守れない、これは本当にそのとおりだと思っています。  そのために私どもは本当に努力をしていますし、また、今回、一つの民法改正ということで、ある意味子供にとっての選択肢がよりふえるというようなことがなされるということでございますので、これに基づいて、私ども、今まで以上に連携を強化しながら、その中で本当に活用できる制度を最大限、実務的に活用していきたいというふうに考えております。  以上です。
  89. 安藤茎子

    安藤参考人 御質問ありがとうございます。  児童相談所里親、またあっせん団体や児童養護施設についての連携ですけれども、今、東京都では、チーム養育として、一人の里子に対する支援が、養育里親、児相だけではなく、児童養護施設や地域の子育て支援も含めたチーム養育となってきています。この連携が、今はまだぎこちない連携ですけれども、もっとやわらかな連携になれば、更に子供にとって利益のある支援になると思っています。  やはり一番望んでいることは、児相と里親、対立することがあります。それは、子供の利益をお互いが求めていってしまうからです。ここが非常に残念なことなんですけれども、児相は、親の情報を持っていても、親のプライバシーの問題で里親に言えないことがあるので、里親はそれを知らずに児相と対立してしまうというところが出てきています。  もっと地域子育て支援を拡充していけば、親が、児相ではなく地域の子育て支援環境のところで、もっと手近なところで連携を持って、里親も地域の子育て支援の資源として活躍できれば、もっと子供の利益につながるものだと思っています。  以上です。
  90. 井出庸生

    ○井出委員 終わります。本当にありがとうございました。
  91. 葉梨康弘

    葉梨委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。  参考人方々には、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時三分散会