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影山参考人 東京都
児童相談センター、
影山と申します。
本日はこういった
意見を述べる貴重な
機会をいただき、本当にありがとうございます。
私は今、
東京都
児童相談センターで
児童福祉相談担当課長をしておりますけれ
ども、もともと
東京都に
福祉職として採用されて、その後はやはり
児童相談所の
現場が二十七
年間と、非常に長い間、
児童相談所でかかわってまいりました。
そういう
意味で、今回のこの
特別養子縁組の
法改正について、
児童相談所の
立場から
幾つか
意見あるいは
現場の実態について
お話をさせていただき、よりよい
法改正をしていただければということで述べさせていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
お手元に資料を配らせていただきました。
まず、
東京都の
養子縁組里親の
委託児童数、それから
解除児童数を十二
年間示させていただきました。実際には、十二
年間を平均しますと、毎年二十七人ぐらいの
お子さんが
養子縁組里親で
委託をし、そのうちの九五%が
養子縁組が
成立している、残念ながら、残りの五%は何らかの
事情で
養子縁組成立に至らなかったというのが
現状でございます。
一枚めくっていただいて、
養子縁組里親に実際に
委託をしていた
お子さんがどの
程度の
年齢かということで、ここ二
年間の数字をちょっと拾ってみましたけれ
ども、ゼロ歳、一歳で大半を占めております。二十八年度九五%、二十九年度七五%ということで、本当に年少の
お子さんたちが今
特別養子で
委託をされているというような
現状でございます。
今まで
養子縁組の
お話をさせていただきましたけれ
ども、もう
一つ、
里親制度の中に
養育家庭ということで、
養育里親、いわゆる
養子縁組はしないけれ
ども、一般の御
家庭に
子供を受けていただいて、二年更新ということではありますけれ
ども、特別問題がなければそのまま二年更新しながら
委託をする、こういった
制度も設けております。こちらについては平均で七十八人ということで、
養子縁組以上にやはり
養育家庭委託の方が多いというのが
現状でございます。
養育家庭の中から
養子縁組を結んだという
ケースについては、ここ四年ほどはゼロではございますけれ
ども、十二
年間で十五人
程度が
養子縁組に進んだということで、
東京都では、
養育家庭と
養子縁組をもともと登録の
段階で分けておりますので、
養育家庭を希望される方は、もともとは、そんな
養子縁組をしたいというよりも、
子供を預かって
養育を希望されるという
方々が
中心だというようなことでございます。
それで、私
どもが
養育家庭あるいは
養子縁組を検討する際に、
家庭養護第一ということをまず常に頭の中に置いております。
レジュメの方は一枚めくっていただきますけれ
ども、二十八年
改正の
児童福祉法でも、
児童が
家庭において健やかに
養育されるよう
保護者を支援しなければならないということで、まずは何とか
保護者を支援し、仮に
虐待があったとしても、また
虐待のない
家庭で
子供を
養育してもらう、何とかこれが目指せないかということで取り組んでおります。
このことは、平成二十年に国の方が
ガイドラインを出していますけれ
ども、
虐待を行った
保護者に対する
ガイドライン、ここでは、
親子分離した場合であっても
親子であることに変わりない、再び
親子が一緒に生活できるようになることが
子供の
福祉にとって最も望ましいんだということで、まずは何とか
親御さんを指導、支援し、再び
親子関係をつくってもらう、これを目指しているというようなことでございます。
そのために、
家族再
統合事業ということで、
虐待を受けて
里親委託をされたり
施設でお預かりしている
子供、あるいはその
保護者に対して、
家族合同グループとかあるいはカウンセリング、こういったさまざまな援助を行いながら、何とか
家族を再統合するというようなことをまず第一にやっているというのをちょっと述べさせていただきたかったということでございます。
さて、続いて、本題である
養子縁組の
法改正の
部分でございますけれ
ども、
養子縁組、
特別養子縁組によって
親子関係を切ってしまうこと、これは実
親子関係を切るわけで、本当にそのことが
子供にとって望ましいのかどうかというところはなかなか考える
部分でございます。
一つは、当然、
相続権もなくなる。ある
意味で、
親御さんがある
程度財産を持っていたとしても、
特別養子縁組成立によって実親の
財産を相続することはなくなります。
また、実務でよく問題になるのが、実親はなかなか
面会交流がない、また、なかなか
子供にも興味はないんだけれ
ども、おじいちゃん、おばあちゃんは非常に
お孫さんのことをかわいがっている。ただ、実際に
お孫さんを引き取ってまで育てることは難しい、高齢であるとか、あるいは体調の問題もあって。ただ、本当に定期的に
施設あるいは
里親さんのところに
面会に行ってくれて、
誕生日にプレゼントを持ってきてくれたり、あるいは何かのお祝いのときにやってくれる、こういった
親族関係までをも
特別養子縁組というのはある
意味で切ってしまう。
あるいは、
兄弟関係もそうです。
親御さんはいないかもしれない、ただ、
兄弟は仲よく
施設で暮らしている。たまたま
兄弟そろって
養子縁組に出せればいいですけれ
ども、そうではないとなると、それぞれの
兄弟関係も
一つ切れてしまうというようなところがなかなか問題なのかなというふうには思っています。
それからもう
一つ、
特別養子ということで、子捨てという書き方をさせていただきました。中には、生まれてきた
お子さんが体が不自由であったりというようなこともございます。そういう中で、そんな
子供は育てられない、これはもううちの子じゃないんだから
特別養子に出してくれというような希望をされる
親御さんもいます。果たして、そういったことをそのまま本当に認めて、すぐに
特別養子にしていいのかどうか。
確かに、生まれてきた
お子さんが体が不自由であったり障害を抱えていれば
親御さんのショックははかり知れないものですし、ただ、その子も
自分の
子供なんだということで、もう一回、時間をかけてでも何とか受け入れていただく、やはりこういった
取組も必要なのかな、こういったことについて、すぐに
特別養子を
選択してしまうというのはどうなのかなというふうに考えているところでございます。
ただ、そうはいいましても、実際に、棄児であるとか、実親さんが全く
養育意思がない、こういった小さい
お子さんたちについては、現行でも
特別養子縁組を確実に実施し、
親子関係をきちっと
子供につくってあげるというような
取組をして、先ほど冒頭述べさせていただいたような人数が一定いるというようなことでございます。
それから、下の方でございます、もう
一つ、
養子縁組の
課題として私
どもが考えているのが、やはり
離縁が認められないということがあるのかなと思っています。
特別養子縁組が
成立した場合は、基本的に、仮に
養親が
虐待等を行ったとしても、いわゆる実親の
養育ができない場合は
離縁ができないというような
法制度になっています。
この
離縁ができないというのは、いい
意味でいえば、やはりこれは
親子関係なんだから、
法律で切るというのはどうなんだというところはもちろんあると思いますけれ
ども、逆に、
離縁ができないことによって
親子関係を縛ってしまう。
実際に、
養子縁組を結んで小さいときから生活をしてきても、ある
程度のところになって、この子のことはもう見れない、あるいは場合によっては
虐待をしてしまう、こういった
ケースもないわけではございません。そういう中で、
児童相談所に、もうこんな子は要らない、
自分はこんなつもりでもらったんじゃないというような
発言があることも事実でございます。
そういったときに、私
ども、今は
施設でお預かりをしたり、あるいはまた
養育里親さん、
養育家庭さんに
委託をしたりというような対応はしていますけれ
ども、ある
意味でつくり上げた
親子関係ですから、果たして、それが本当にもうだめなんだとなったときに切れないのかどうか、こういったところは
一つ今後検討していかなきゃいけないところかなというふうには思っております。
それから、今回、十五歳ということで、
年齢引上げということで、
年齢について
幾つか述べさせていただきます。
一枚めくっていただいて、九歳の壁というようなところ、あるいは十歳の壁と言われていることもありますけれ
ども、小学校四年生
程度のところでございます。
子供が
幼児期を離れて、物事をある
程度対象化して認識できるようになるような
年齢というところで、これを過ぎた後に
養子縁組をしていくというのはいかがなものかということで、やはり、実親の記憶であるとか、なかなか整理もまだ難しい
年齢というところで、この辺のところが
一つの
課題なのかなというふうには考えています。
それから、先ほど
大村先生の方から、特別な
事情がある場合には十五歳以上も可だというようなことがありました。ただ、十五歳以上の場合には
子供の
意見を聞かなければならないということになっていますので、果たして
子供に、事実上、後戻りさせない、できない、
判断をさせることに本当に
お子さん自身が耐えられるのか。選ぶ、あるいは実
親子関係を切らなきゃならないという
選択を、
子供自身の
意見を本当に聞いて、それがどれだけその後
子供に残っていくかというところは、やはり考えなきゃいけない問題だと思っています。
十五歳以上は、
法律上、もちろん
子供の
意見を聞くわけですけれ
ども、十五歳
未満であっても、ある
程度の
年齢に、中学生ぐらいの
年齢に達していれば、
子供の
意向確認は当然なされるものだと思います。そうしたときに、果たして
子供が素直に本当に話ができるかな。特に、もう既に
養育里親等に
養育をされていて、あなた、うちの
養子になる、
子供になると言われたときに、
子供が本当にそのときに正確な
意思表示ができるかどうか。
自分がここで断ってしまったら、
自分の居場所はあしたからどうなるんだ、こういった不安感はやはりかなりあるんだろう。
当然のことながら、そこは丁寧に説明はすると思います、あなたが断ったとしても、別にここにいてもいいのよと。ただ、そうはいっても、そこで断るだけのことがこの
年齢の
お子さんたちに本当にできるのかというところが
一つ懸念する
部分と、やはり
子供の負担感を考える
部分でございます。
それから、今回の
法改正でも、特に
養親と
子供の
年齢差というようなことは
規定をされていません。もちろん、これは最終的には
家庭裁判所が
判断することですから、
家庭裁判所が当然、
判断の中でそのことも考慮されるとは思いますけれ
ども、今、
養親については、片方は二十以上であればよいということになっていて、今回、十五歳
未満というようなことになりますと、一番短くて六歳の差の
親子関係が出てくるわけですね。果たしてこの辺のところ、あるいは十八歳
未満とした場合にはもっとそれが短くなる、こういったことが本当に適当なのかどうか、これを本当に
裁判所の裁量に任せていいのかというところは、やはり
一つ懸念する
部分でございます。
それからもう
一つ、
年齢要件について懸念している
部分は、今回、早期に
親子関係を
成立させ、安定させるということを目的にしているわけではございますけれ
ども、やはり、十五歳というふうに延ばしたことで、
親御さん自身が、
子供の様子をしばらく見てから
養子縁組を検討しようとならないかなというようなところが心配でございます。やはり、受けたときにはなかなか小さいとどんな子かわからない、もうちょっとこの子の発達の様子を見てみよう、あるいは、本当にうちの子にしていいのかどうか見てみようというようなことで、延ばされることがあってはならないだろうというふうに思っています。
それから、
最後に二点だけ加えさせてください。
一つは、
子供の出自を知る権利でございます。
今、
養子縁組それから
里親委託ともに、真実告知ということで、どちらも、実親ではないんだということをちゃんと
子供に説明をしてくださいということでお願いをしています。ただ、どこまでそれがされているか。あるいは、そうした
子供たちが今後、開示請求等で
自分の出自を知りたいといったときに、それをどこまでオープンにできるのか、この仕組みが今なかなかないところでございます。
実親にしてみれば、
自分が妊娠した経過を知られたくないというところも当然ございますし、
子供にしてみれば、
自分の親は
自分を何で社会的養護あるいは
養子にしたのかといったところを知りたいといったことで、やはりこの辺もあわせて検討が必要だろうということで、今、
養子縁組等は永年保存ということで通知でも示されていますけれ
ども、そうではない、
施設を利用したり
養育里親を利用したような、社会的養護を利用した子については二十五歳まで保存すればいいということで国が通知を示しています。
実際、多分、
子供たちが大きくなってから、
自分の出自を知りたい。
自分が実際に
子供を産んでみた、ところで
自分はどうだったんだろう、あるいは、ずっと仕事をして頑張って、退職してリタイアした、ところで
自分は何だったんだろうというところで初めて振り返る場面が非常に多いのではないか。
時々、
児童相談所にもふらっと年老いた方がいらっしゃって、
自分は実は昔ここでどうも何か相談をされて
里親に行ったみたいなんだけれ
ども、そのころの記録はないのかね、こう言われることもあります。ただ、現実にはなかなかそういったのも今は残っていないということで、そこのところはその方の
お話を聞くぐらいで終わってしまうということで、やはりこの辺も整理をしていく必要があるだろうと思っています。
最後でございます。
養子縁組成立前後の実親支援ということで、
養親と
子供に対する支援はいろいろ充実していこうということで、フォスタリング機関であるとかいろいろなところが今頑張っているところでございますけれ
ども、
養子に出してしまった実親さん、やはりこの方というのは、本当にそれでよかったのかどうかということでいろいろ悩んだりすることもある。実際に実親が
子供のことをどこまで知れるかという仕組みが今きちっとできていないのが
現状でございます。
オープンアダプションとかいろいろなことで、もっと開かれた
養子関係があってもいいのではないかということで、例えば
面会であるとか通信であるとか写真、あるいは
子供の様子を知らせるとか、いろいろな形の養
親子関係があってもいいというふうに考えているところでございます。
ちょっと時間を過ぎてしまいました。私の
意見はここまでにさせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)