○柿沢
委員 柿沢未途でございます。
アメリカのオレゴン州ポートランドという都市は、知る人ぞ知る、今注目の町であります。全米で一番クリエーティブでイノベーティブでオーガニックでスタートアップも多くて、先進的な町づくりが進んでいる。全米で一番格好いい、全米で一番住みたい町と言われているのがポートランドなんですね。
このポートランドという都市なんですけれども、
児童虐待対策でも私たちが見習うべき
取組を行っています。
資料の一枚目、ちょっとずらずらずらっと視察
報告書からの抜粋をつけさせていただいていますけれども、オレゴン州では、カーリー・シーハンちゃんという三歳の女の子が
虐待死した、それを防げなかったという悔恨と反省から、その名をつけたカーリー法、カーリーズローというのができて、二〇〇八年にオレゴン州の州法として施行されています。
アメリカでは、全ての州において、
子供にかかわる全ての専門職、つまり、
保育士、学校教員、クラブチームのコーチ、養護教諭、心理士、カウンセラー、スクールカウンセラー、ソーシャルワーカー、看護師、
医師、警察官、検察官等々ですけれども、これらの
子供にかかわる専門職全て、
子供の安全に何らかの疑いを見つけた場合、それが
虐待であるかどうか、加害者は誰かにかかわらず、全て通告することが義務づけられている。通告しなかった場合の罰則
規定も設けられております。
そして、オレゴン州においては、
虐待通告ホットラインが受理した通告内容は全てチャイルド・プロテクティブ・
サービス、CPS、
子供虐待とネグレクトだけに特化している
児童相談所と、警察のチャイルド・アビュース・チーム、CATといいますけれども、つまり
児童相談所と警察が全部共有するということになっている。後ほど詳しく
紹介しますけれども、MDT、マルチディシプリナリーチーム、多機関連携チームというのを組んで
虐待事例の
対応に多機関連携で当たるという
仕組みも、全米で一番早くオレゴン州で
整備をされています。
このようにもともとかなり先進的だったんですけれども、そんなオレゴン州であっても、身体的な
児童虐待については司法面接やまた系統的全身診察の
実施が限られる傾向にあったそうです。そんな中で、オレゴン州で二〇〇五年、
先ほど申し上げたカーリー・シーハンちゃんの、三歳の女の子に不審なけがが見つかって
虐待通告をされた。
ホットラインから連絡を受けたCPS、
児童相談所のソーシャルワーカーが、日本でいえば
児童福祉司ですけれども、一般の
医師にカーリーちゃんを見せたところ、
保護者が主張するとおり事故による外傷であるということで、CPSはこのとき一時
保護を見送った。自宅に帰されたカーリーちゃんは、その後間もなく、エスカレートした
虐待によって死亡してしまった。このカーリーちゃんの事件が大きな衝撃を与えたということなんですね。
それで
先ほど申し上げたカーリーちゃんの法、カーリー法ができて、これによって、未就学児に身体的
虐待が疑われるときは、一般医ではなくてトレーニングを受けた
虐待専門医に通告受理後四十八時間以内に必ず診察を受けさせなければいけない、こういうことが定められたそうであります。
ちなみに、アメリカは、二〇〇九年にはアメリカ全土において、チャイルド・アビュース・ペディアトリシャンという、
虐待専門の
小児科医制度がつくられています。
資料一枚目の下の方をごらんいただくと、オレゴン州では、
虐待の通告の経路も、
医師、
医療機関からの通告が全体の一〇%を占めているという状況でもあります。しかるに、資料の二枚目、きのうの
参考人質疑で東京都
児童相談センターの西尾次長の資料にありましたが、黒囲みのところではなくて
医師のところを見れば、
医療機関からの
虐待通報というのは日本は二%ということになっているわけです。
オレゴン州では、カーリーちゃんの悲しい事件から、一般医ではだめだ、
虐待専門医でなければだめだというところまでなっている。しかるに、日本には、
虐待専門医と言えるだけの診断スキルを持ち
研修を受けた
医師、残念ながら国内にもほとんどいないのではないかというふうに思います。
まず、お伺いをいたしますけれども、日本にこうした
虐待専門医と言えるだけの
医師はどれだけ存在しているのかということをお伺いしたいと思います。