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小川敏夫君
立憲民主党・
民友会の
小川敏夫です。
まず初めに、この本
会議の場におきまして大変に残念なことがあったことを一言述べさせていただきます。
やはり
参議院の良識の府として、特にこの
議場、この壇上は、場内何があっても冷静に沈着に対応する場であるにもかかわらず、大変な暴言あるいは乱暴行為が行われたこと、大変に残念であるということを述べさせていただきます。
立憲民主党・
民友会、
国民民主党・新緑風会、
日本共産党、希望の会、沖縄の風を代表して、
法務大臣山下貴司君の
問責決議案の提案
趣旨を
説明させていただきます。
まず、
決議案の案文は次のとおりでございます。
本院は、
法務大臣山下貴司君を問責する。
右決議する。
でございます。
問責を問うその
理由でありますが、まず第一に、山下法務大臣は、
国会を冒涜する、
議論の府である
国会のこの
議論を実質的に空洞化して、立法権のその
議論を封殺してその存在意義を抹殺するような、そうした
内容の
法案を提案した、まさにそのこと自体が許されざる行為でありまして、法務大臣のこの職を問うに値することでございます。
では、なぜこの
法案の
提出が
国会を冒涜し、我々立法府のこの
議論の実質を奪うものであったか、そのことについて
説明をさせていただきます。
今回
審議いたしておりますこの入管等管理に関する
法律の改正案、新たに
外国人労働者を受け入れようという、そういう
内容の改正案でございます。これは、
日本の社会の在り方あるいはこれまでの雇用の在り方に大きな影響を与えるものでありますし、また、国民の間にも様々な意見があり、
議論があるところでございます。であるならば、やはり慎重に丁寧に、そして実質がある
議論を重ねた上で
国会のこの意思をまとめて立法化する、これが本来の立法府の姿ではないでしょうか。
この
外国人労働者の
受入れ、
議論するためには、まず第一に、どういう人を受け入れるのですかと、これが
議論の最も根本であるわけでございますが、では、どういう人を入れるのか
議論しようと
思いましても、実は、どういう人を入れるのか、その基準は
法律には規定してありません。後から省令で決めるということであります。
しかし、どういう人を入れるのかという
議論をしてその上で法の賛否を決めようというんだけれども、いうものですけれども、どういう人を入れるのかを決めないまま賛否を問うて、万が一成立したらその後決めるよというのでは、これは
議論になりません。
議論にならないにもかかわらず、
議論にならない状態の
法律を提案してきたわけでありますから、ですから、私は、法務大臣は、この立法府を冒涜した、立法府のこの
議論というものを経ないそうした
法案を
提出してきた、その
責任者としてのその
責任は重大である。しかし、それは立法府として到底認容することができないものでありますから、法務大臣にはやはりその
責任を問うということでございます。
どういう人を受け入れるのか、その基準は法が制定されたら後から省令で決めるよと。じゃ、どういう人を入れるのか、その基準ではなくて、もし基準が決まったならどういう手続でそれを決めるのか、それも
法律ができた後に省令で決めるということであります。
どういう人の、その
技能だけではありません。今は
技能の水準、そして
技能の水準のその確認方法を述べたわけでありますけれども、そのほかにも
日本語の能力、これがどの程度の能力を必要とするんですか、これも後から決めます。その能力を確認する、その認定はどういうふうにして認定するんですか、それも後から決める。
外国人労働者を受け入れる
受入れ機関、
機関とは何ですかと聞いたら、民間
会社、個人事業主が入るそうです。というよりか、実際には民間事業主、事業
会社や個人事業者が主体でしょう。
法律用語として
機関という
言葉を使っているわけでありまして、何か公的存在を想像させるような
機関という
意味ではなくて、実際には事業主、事業
会社でございます。
では、
外国人労働者を受け入れることができるその事業
会社はどういう基準で受け入れることができるんですかと、
法律ができてから省令で決めるということであります。あるいは、受け入れる
会社の中には派遣
会社も許容されるということでありました。まあ、法務大臣の
説明では例外的だということでありますけれども、では、派遣
会社が認められるその基準は何ですか、後から省令で決めるということであります。
そして、何よりも大切な受け入れた
外国人労働者の保護や支援、これについて
法律は、
受入れ会社は
外国人労働者を支援する支援計画を定めなくてはいけないと規定してあります。では、その支援計画は具体的にどういうことが盛り込まれるんですか、これも後から省令で決めるということであります。
あるいは、派遣
労働者が滞在資格を得るためには
受入れ会社との間で雇用契約を
締結する、その雇用契約の
内容を規定するとありました。では、どういうふうにその雇用契約は規定するんですか、それも後から省令で決めるということでございます。
あるいは、そもそも、もっともっと遡って、大きな方針として、この
外国人労働者を受け入れるその大きな基本の考え方、基本方針、これはどういうものでありますか、
法律ができた後に決めると。
あるいは、
分野別に受け入れる、その
分野別の
受入れの状況についても、
分野別の運用方針、これも定めるとありますが、これも後から決めるというものであります。
じゃ、我々は、この
法律について立法府の
責任として
議論をするときに、どういう
議論をしたらいいんでしょうか。全部
法律が決まった後、
賛成してください、それで
法律が通ったら具体的に決めますよということは具体的な
議論ができないわけでありまして、具体的な
議論を持ちかけても、それは後から決めますから、後から省令でしっかりと決めますからというその意気込みを聞くだけであります。
立法府は、しっかりと、その
法律の中身をしっかりと把握して、
議論して、問題点があればそれをただし、積極的に進めるところがあれば積極的に
賛成し、そして国民のための
法律を立法していく、これがその責務でございまして、その責務を果たすためには、当然ながら、この
法律はどういう
内容なの、具体的なことまで明らかになってからでないと実のある
議論はできない、これは当然のことではないでしょうか。
ですから、このように
法律が通った後にすべからくを決める、これは要するに、俺に任せてくれ、いいだろうという白紙委任、全権委任でしょうか。それは、まさに立法権の放棄でございます。その立法権の放棄に相当するようなそういう
法律案を全くの反省もなく提案してきて、そして、その状態のまま成立させようとしている法務大臣は、やはり法務大臣としてふさわしくない、そのように考えておるわけでございます。
このように、今回のこの
入管法改正案、立法府のその存在意義を損なうものでありますが、また、今回の
法律は大変に重要な
欠陥がございます。
それは、
外国人労働者、これは単なる
労働力ではなくて、一人の生活を持つ
人間でございます。その
外国人労働者を温かく迎え入れる、支援を行うということは大変に重要なことでございまして、これはしっかりと
法律の根本から規定しなければならない、確保しなければならないものでございます。しかし、今回のこの改正案、受け入れる
外国人労働者に対する支援は大変に不安なものでございます。
この
法律は、先ほど述べましたように、随所にすべからく、後で決める、後で決めるということでございましたが、なぜかこの
外国人労働者の実施に関しましては
法律に明記されております。どういうふうに明記されているか。実に不十分な形で明記されておるわけでございますが、
外国人労働者を支援するのは、その
外国人を受け入れた事業主が支援するということが決められております。あるいは、その受け入れた事業主から委任を受けた支援事業主が、支援事業
会社あるいは事業主体が行うことができるということが書いてあります。それだけでございまして、それ以外に国やそのほかの公的な支援というものについては全く記載してございません。
今回の
審議の過程の中で、現行の
技能実習制度、この問題点が大きく浮き彫りになり、そして悲惨な
実習生の
実態が明らかになりました。今回の改正案は、そうした
技能実習の修了者をそのまま無試験で相当な
技能があると認めて在留資格を認めるという構造になっておりますが、そうした中では、今の
技能実習生が置かれているような、人道的に批判を受けるような、そういう
扱いをそのまま踏襲するような
制度であってはなりません。
しっかりとその反省の上に立って、支援の実質が実るような、そういう
法案でなくてはいけない、そういう
制度を創設する
法案でなくてはいけないと思っておりますが、大変残念なことに、
外国人労働者を受け入れる事業主が支援するという、ただそれがこの改正案に定められた
外国人労働者の支援の枠組みでございます。
外国人労働者を受け入れるその雇用主、そのほとんどは利益を追求する
会社でございます。そして、
外国人労働者を支援する費用は
外国人労働者に負担させてはいけないという法務大臣の
説明でございます。そうしますと、
外国人労働者を受け入れた
企業は利益を追求する
会社でありますけれども、支援を厚くして費用を掛ければ掛けるほど自分の
会社の利益が減るという、そういう構造を抱えているわけでございます。そうした
受入れ事業
会社に支援を任せるだけで、
外国人労働者のその支援策は十分なのでございましょうか。
この
外国人労働者、昨日、
法務委員会で、私は
安倍総理と大変珍しいことに意見が一致いたしました。私が、
外国人労働者を支えること、支援すること、これは、
外国人労働者のその人権を守る人道的な対応であるということは当然のこととして、それだけでなくて、
外国人労働者に安定してしっかりと働いていただくことは我が国の
産業界の支えになる、発展のその貢献者となる、また、万が一
外国人労働者がドロップアウトして、違法滞在、そうした非合法な世界に入れば、それが社会不安の一つの
原因となる、ですから、
外国人労働者らをしっかりと保護し支援することは大切ですねと
安倍総理にお尋ねしましたところ、
安倍総理もそのとおりであるという答弁をいただきまして、私と
安倍総理の考えは、
外国人労働者を支援しなければならないという点では完全に一致いたしました。
ただ、残念なことに、しかし、今回のこの改正案では、
外国人労働者を雇用する民間事業
会社に支援を任せるだけで、公的な枠組みを持たないのでは不十分ではないですかという指摘に対しては、
安倍総理は明確には答えていただけませんでした。
やはり公的な支援が必要である、そして、そうした
外国人労働者をしっかりと支えることは我が国の国際的な評価を高める、国家の品格を高める、それが大変重要なことでありますが、仮にそうした支援をないがしろにすれば、我が国は国際社会から人道的な非難を受けることになるでありましょう。まさに、今回のこの改正案は、そうした
外国人労働者の保護、支援の面において大変に
欠陥があるというふうに指摘させていただきます。
このように、今回のこの改正案は、そもそも
国会を冒涜し、立法権をないがしろにするということと同時に、国際的な人道的な批判を我が国にもたらしかねない大変に不十分、あるいは出し直していただかなければいけない悪い
法律であると
思いますが、そうした
法律を無反省のまま提案した、そして、その
採決を求め、成立させようと邁進している法務大臣は、やはりその職を離れていただかなくてはなりません。これが法務大臣に問責を求める第一の
理由でございます。
もう一つの
理由がございます。
そもそも、法務大臣は誰のために職務を行うのでしょうか。仮に
法務省が何らかの不正、不適切な行為を行ってしまったときに、法務大臣はいかなる態度、
姿勢を取るべきでありましょうか。私は、国民の側に立って、そうした不正、不適正な行為についてはしっかりと事実を究明し、不正を正し、二度とそのような不正が起こらないように対応するというのが私は法務大臣の国民に対する重要な
責任であると
思います。
しかし、今回の
審議の過程の中で
法務省は、例えば低所得などを
理由に失踪したそうした人に対して、より高い
賃金を求めて
転職したという、表現を変えて国民をあたかもだますような
説明をいたしました。あるいは、失踪した
労働者のうちの失踪
理由として
最低賃金以下と述べた人が二十二名であるにもかかわらず、それはあたかも
最低賃金以下の総数であるかのような、誤解を招く
説明をしておりました。
こうした事実については、しっかりと法務大臣は国民の側に立って
法務省を正すのがその
責任、しかし、残念なことに、法務大臣は適切な対応をいたしておりません。そのような国民に背を向けるようなそうした法務大臣は、やはりその任に値いたしません。
そのことを申し上げまして、私は、法務大臣の問責
理由とさせていただきます。
各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。(
拍手)
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