○小熊慎司君
国民の小熊慎司です。
私は、
国民民主党・
無所属クラブを代表して、また、本年は、戊辰百五十年の節目の年であります。会津人として会津魂を持って、さらに、一八九〇年、
明治二十三年十一月二十九日、本日は第一回の
国会が
開会をされた記念すべき日でもあります。
国会議員として、原点、初心に立ち返り、
経済上の
連携に関する
日本国と
欧州連合との間の
協定の
締結について
承認を求めるの件に対し、
反対の
立場から
討論をいたします。(
拍手)
資源に恵まれない
我が国は、これまで対外貿易により
経済発展を遂げてまいりました。
我が国にとって、公平かつ公正で、透明性の高いルールに基づく自由貿易体制の維持は、死活的に重要と言っても過言ではありません。
世界に保護主義的な動きが広がる今、自由貿易の旗を高く掲げて、これを守っていく強固な意思を世界に示していくこと、そして、価値観や利益を共有する
EUとの間で、自由貿易を引き続き推進するための協力を更に
強化していくことは重要です。
また、二〇一一年三月十一日の東
日本大震災、東京電力福島第一原子力発電所の事故から七年八カ月以上を経た今もなお、福島県を始めとする
地域の産品に対し輸入規制をかけている国や
地域がある中で、
EUは昨年十二月、福島県産の米など十県の食品に対する輸入規制を緩和することを決定いたしました。
この日・
EU・
EPAの
締結を追い風として、福島県を始めとする
地域の産品について、
EUへの輸出が拡大していくことが大いに期待をされております。しかしながら、日・
EU・
EPAについては、懸念される点、
政府の
説明が十分でない点が依然残されています。
本
協定では、重要五品目のうち米は譲許の
対象から除外されたものの、豚肉・牛肉、乳製品、砂糖については、衆参
農林水産委員会決議を全く守れていないと批判されたTPPとほぼ同水準の譲許を
EUに対してもしてしまいました。
その上さらに、ソフト系チーズ、パスタ、SPF製材等の品目においては、TPPの水準を超える譲許を余儀なくされています。
政府は、本
協定による
農林水産物への
影響について、約六百億から一千百億円の生産額の
減少が生じるとする一方、TPPと同様に、体質
強化策による
生産コストの低減、品質
向上や経営安定対策などの国内対策により、引き続き生産や農家所得が
確保され、国内
生産量が維持されるとの
説明を繰り返しています。
しかし、生産額が
減少するのに、なぜ農家所得や国内
生産量が維持できるのか、具体的にどのような国内対策を講じることによりそれが可能になるのかなどについては、本院での短い審議では全く明らかになりませんでした。
また、さまざまな国内対策の財源である関税収入が本
協定の
締結により更に
減少することが見込まれる中、国内対策のための財源をどう
確保していくのかについても、
政府による明確な回答はありませんでした。
このような状況で、安全でおいしいものが食べたいと願う私たちの食を支えながら、日々厳しい
環境の中で努力されている農業従事者の
方々の懸念をどうして払拭することができるのでしょうか。
特に、乳製品の
全国の生産
減少額が最大二百三億円に上るとされる中で、そのうち九割もの
影響を受けることになる北海道の酪農従事者の
方々に対して、この先も安心して生産を続けられますよとどうして断言できるのでしょうか。
また、来年一月にも始まると見られる日米物品貿易
協定、いわゆるTAG交渉について、FTAではないと言い続ける
政府が、ここでも詭弁を弄しているのではないかという懸念を到底拭うことはできません。
我が党は、自由貿易の推進や
EUとの協力の
重要性を十分に
理解しております。しかし、
政府の誠実な
説明、十分な審議がないまま、大きな問題点のあるこの
協定に
賛成することはできません。
更につけ加えれば、八つのILO基本条約のうち、
我が国が批准していない百五号条約と百十一号条約について、
政府は、日・
EU・
EPAはこれらの条約の批准を義務づけているわけではないとの
説明を繰り返しています。しかし、百七十を超える国、つまり世界のほとんどの国が
締結しているこれらの条約を
我が国がいまだに
締結しておらず、しかも、その批准に向けた検討が何十年もの間一ミリたりとも進んでいない、そういうことに強い違和感を拭えません。
今回、基本的人権を重視する
EUとの間で
EPAを
締結するに当たり、
我が国のそうした姿勢そのものが問われていることになるのだと思います。条約違反でないからいいということではありません。
この二つのILO条約の批准については、可能な限り早く検討を進め、
成果を示していくことを強く求めます。
さらに、そもそもこの
協定の
委員会における審議の
日程が、
与野党間の
合意を得ることなく、
委員長職権により拙速に決められました。そして、関係
委員会との
連合審査会を開くこともなく、わずか一日、たった四時間半の審議により採決に至ったことは極めて遺憾であり、不誠実な
委員会運営をここに強く抗議いたします。
これはまさに、政権にとって都合の悪いことを
野党から追及される機会をできるだけ少なくするために、わずか四十八日間という短い
臨時国会を開き、その会期内に、入管難民
法改正案や、また
漁業法改正案といった重要
法案の審議の陰で本
協定の
承認手続をさっさと済ませようとする
政府のこそくで
国会軽視の姿勢のあらわれであると言わざるを得ません。
しかも、この
臨時国会は、閣僚の外遊が多いことがあらかじめわかっている時期に開かれています。
国民の代表機関であり、国権の最高機関である
国会をこのように軽視する姿勢で、
政府は、
EUに対して、
我が国と
EUは民主主義、基本的人権、法の支配という基本的価値を共有する重要なパートナーだと胸を張って言えるのでしょうか。
このような
政府・
与党の姿勢を到底認めることはできないということを改めて申し述べさせていただきます。
最後に、今の
政府・
与党に最も欠けているのは、
政府の政策によってマイナスの
影響が避けられないのであれば、そのことを曖昧にしたり、ごまかしたりせずに、
国民に真摯に
説明する姿勢です。
どうせこれを言ってもわかってもらえないからしようがない、そんな思いで真実を語らない政治は、
国民を信じていない不誠実な政治です。
私たちは、
国民の皆さんを信じて、常に真実を語る努力をしなければなりません。ごまかしや不誠実な政治とは決別をし、正直で公正、そして謙虚で丁寧な政治を希求し、
国民の皆さんから信頼を得た上で、未来につながる新しい答えをつくることが政治の真の
役割であることを強く申し上げて、
反対討論とさせていただきます。
御
清聴ありがとうございました。感謝いたします。(
拍手)